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日常のこととかオリジナル小説のこととか。
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ashita
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性別:
女性
職業:
地主(土地貸してます)
趣味:
漫画やアニメを見るのが好きです。最推しはフーディーニ ♡
自己紹介:
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ブログ、もう書かないと思ってました。

けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。

小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。

純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。

元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。

ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。

小説、ぼちぼちマイペースに書いてゆきます。

よろしくお願い致します。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

お知らせ。

イラストは現在「ナノハナ家の日常」に載せております。サイドバーにリンクあります。

また、「カラクリよろずや」にて無料のフリーイラスト素材配布もはじめました✩.*˚

フリーイラスト素材も増やしていく予定です(*'ᴗ'*)

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

模倣・無断転載などは、ご遠慮ください。

ブログの小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。

小説・純愛偏差値に関しましては、武家名・貴族名(程度による) / 及び、武官の階級 / 扇子・羽子板・花札・百人一首・紙飛行機などのアイテム使用方法の模倣の一切を禁じております。

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X @kigenzen1874

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〈資格履歴〉

2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
→漢方コーディネーター 合格
→薬膳調整師 合格

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
〈資格証明バナー〉

鉛筆デッサンマスター®認定試験資格取得証明
絵画インストラクター資格資格認定証
宝石鑑定アドバイザー資格認定試験資格取得証明
鉱石セラピスト資格資格保持証明
茶道アドバイザー資格認定試験資格取得証明
お点前インストラクター資格資格認定証
着物マイスター®資格認定試験資格取得証明
着付け方インストラクター資格資格認定証
サイキックアドバイザー®資格資格証明
サイキックヒーラー資格資格保持証明
アンガーカウンセラー®資格資格保持証明
アンガーコントロール士資格資格認定証
漢方コーディネーター®資格認定試験資格保持証明
薬膳調整師®資格認定試験資格保持証明
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純愛偏差値 未来編 一人称版 82話

《ナミネ》

「ねえ、ラルク。メロンがあるよ」
「全部採取しろ!メロンは重たいからナミネが持て!僕はイチゴを持つ。それから、天候が悪くなってきている。メロン採取したら、戻るぞ!」
「うん、分かった」
私は急いでメロンを取りに行った。けれど、メロンはいくつもの木に絡まりついていた。これでは間に合わない。私は百人一首を投げ木に絡まりついたメロンのつるを切り、扇子で持ってきた袋に入れた。
「みんなそろそろ帰るぞ!」
ラルクの言った通り今にも雨が降りそうだ。私たちは崖を下り、タルリヤさんの家に走った。

まだ雨は降っていない。降り出したら、濡れちゃ行けないものは家に入れないと。
「ナヤセス殿、これは市場に売りに行く用ですので、原型を崩さず成分調べてください」
「このようなイチゴは生まれてはじめて見た。新種だ。すぐに調べる」
新種。一つだけしかなかったってことは、滅多に生えないのだろうか。
「ナミネさん、魚釣れましたよ」
「ありがとうございます」
って、多っ!!これだけあれば、干し魚には困らないだろう。それにしても、どうやってこれだけの魚釣ったのだろう。
「あ、リリカさん。ズームさんが、魚釣ってくれました。一部を市場に売って一部は焼いて食べて、あとは干し魚にしてもいいですか?」
「ええ、ズームが釣ったものだからそれで構わないわ。けれど、もうすぐ雨が降るから、イチゴも魚も氷の舞で保存して、明日市場に売りに行くわ」
雨が降ると色々厄介だ。
「分かりました」
イチゴはナヤセス殿が成分を調べるのを待つとして、今日食べる魚以外は氷の舞で冷凍して森林の結界をかけた。これで、盗まれることもなし。
「ナミネ、これでいい?」
「あ、ミネスさんは偵察に行かれてましたね。では、ありがたく……」
細かっ!ミネスさんも、ズームさんに似て、絵の才能があるのか。とりあえず私はミネスさんの描いた絵を写真に撮った。後でみんなに赤外線送信しよう。
「落ち武者さん、市場はどうでしたか?」
落ち武者さんは写真を私に見せた。肉や干し魚、野菜はあるものの、やっぱり昨日と違っている。ほぼ腐っている米が大々的に売り出されていて、まさかの煮物が売られている。肉と干し魚は今日はやたら少ない。衣類も殆どない。これでは戦後の配給より酷い。
「これはもはや市場とは呼べませんね」
「本当の古代ではこれが通用してたんだろうね?」
確かに本当の古代では当たり前のように買う人がいただろう。けれど、現代では値段に差があったり、腐ったものでも値上がりしているから、殆どは売れ残り捨てることになるだろう。
「ナミネ、服も下着も縫ったよ。市場で売られていたように全てフリーサイズだから、みんな着れると思う。胸の大きな人でも」
最後の言葉がめちゃくちゃ余計すぎる。ヨルクさんみたいに気の利いた言葉ひとつ言えない人がどうして女の子からモテるのだろう。
「ありがとうございます、ヨルクさん、ロォラさん。今日の作業は終えてください。もうすぐ雨が降りますので」
「ああ、分かった」
ロォラさんとヨルクさんは、持って来たソーイングセットに針と糸をしまい、布を片付け、作った着替えを空き家に入れた。
「洗濯係の人は今すぐ洗濯物を空き家に入れてください!」
「ええ、分かったわ」
「うん、そうする」
「了解」
(以下略)
「で?今日何もしなかった人は今後どうするおつもりですか?ミネルナさん、アヤネさん、セレナールさん」
その瞬間、アルフォンス王子が今朝余った煮物をアヤネさんの頭にかけた。
「おい、何もしてないヤツ!こっちは、必死で果物取ってきたんだ!それなのに、食器がこのままってどういうことだ!」
アルフォンス王子は怒りに身を任せ、ミネルナさんとセレナールさんの頭にも余った煮物をかけた。が、ロォハさんがミネルナさんを庇った。
「アルフォンス王子、ミネルナには薬草の研究を手伝ってもらう。それで許して欲しい」
「分かった。何かしら役割をするならそれでいい。けれど、あとの2人はここでずっと何もしないつもりか!」
アルフォンス王子はもう一度、セレナールさんとアヤネさんの頭に余った煮物をかけた。腐っているとはいえ、タルリヤさんのお母様が作ってくれたのに、怒りに身を任せ人にかけるだなんて胸が痛む。そりゃ、私も何もしてない人に苛立ちはあるけれど。
「ナミネ、1番大きいテント張るぞ!」
「分かった!ラルク!カナエさん、すみませんがセレナールさんとアヤネさん、ロォハさんの汚れを落としてもらえませんか?」
テントはみんなで入る。汚されるわけにはいかない。
「分かりました。カナエに任せてください!」
「カナエ、甘やかすことないわ。ロォハのだけ落としてちょうだい」
「しかし、リリカさん、テントが汚れると後々厄介です」
「2人には空き家に入ってもらえばいいだけよ」
ここではリリカさんには逆らえない。可哀想だけれど、ここで役に立てないのなら、テントでの会議に加わったところで結局メンバーの怒りを買うだけだろう。
「おい、ナミネ、早くしろ!」
「うん、今する!」
私とラルクは、ラルクの持って来た1番大きなテントを張りはじめた。ズームさん、ナナミお姉様、落ち武者さん、エルナさん、カラン王子、ユメさん、委員長も手伝ってくれて完成。
テントはとても大きくて、団体で来た私たちみんなが寝泊まり出来る大きさだった。こういう時、妖精村のデザイナーさんは凄いなあて感じさせられる。
「ナミネ、成分取れたから返すよ」
「はい」
私はナヤセス殿から受け取った金のイチゴを氷の舞で冷凍し、森林の結界をかけると、魚と金のイチゴをヨルクさんたちと寝泊まりしている空き家に置いた。
そして、今夜食べる魚を持ってテントに入った。
「はあ、疲れた。ええと、では、これが今夜食べる魚です。次に、今日ミネスさんが町を……」
「その前に言うことがあるわ」
私が話している途中でリリカさんが、それを遮った。そして、突然、大雨が降り出した。
「果物係、薬草係は大がかりだから、休んでいても無理もないけど、テントを張る時、手伝わなかった人はどうしてかしら?」
その時、セレナールさんとアヤネさんが入って来た。2人とも、市場のワンピースに着替えていて、頭にはヨルクさんかロォラさんが作っただろうヘアキャップをしている。雨で髪を洗い流したのだろうか。ロォハさんはサバイバル服が汚れただけだから、汚れはすぐに取れたわけか。
「ごめん、ここの暮らしをどうしても妖精村のみんなにも知ってもらいたくて、写真撮ったり紙にまとめてた」
「ラハルはいいのよぉ。他の人は理由行ってくれるかしら?」
ひぇー、ラハルさんだけ特別扱い。けれど、確かにここの暮らしを妖精村の人たちにも知ってもらう必要はあると思う。
「悪い、せっかく作った着替えだから濡れないようにヨルクと空き家に持って行ってた」
「それならテントは張れなくて当然ね。ハッキリ言うわ!ミネルナ!セレナール!アヤネ!あなたたち本当に何もしないのね!今夜は3人が魚料理作ってちょうだい」
え、料理の出来ない人に魚を裁かせるの?もう生のものがそのまま出てくること目に見えている。あれ、セレナールさん、指定の下着着ていない。事前に白いスポーツタイプの下着って言っておいたのに。まあ、下着はミナクさんが買ったのとヨルクさんとロォラさんの手作りがあるから、今後はそれを着てもらえばいいか。けれど、今のだとガーゼ布薄いからワンピースからピンク色のレースの下着見えている。アルフォンス王子とカラルリさんガン見してるし。
「ちょっとヨルクさん、どこ見てるんですか!」
「え、疲れてボーッとしてただけだよ」
「セレナール、どうして指定の下着着てこなかったのかしら?」
やっぱり下着は白でかつスポーツタイプのものでないと目立って仕方がない。
「何も聞かされてなかったのよ」
また責任転嫁。流石に気分を害してしまった。
「あの、セレナールさん、私、みんなの前でちゃんと言いました!」
私は証拠映像を見せた。
「わ、忘れてしまったのよ!」
聞いてないだの、忘れただの、都合が悪くなったらすぐに意見変えて、そういう態度、苛立つ。
「ちょっとヨルクさん、いちいち見ないでください!セクハラですよ!」
「え、さっきから何の話?」
そっか。ヨルクさんは常にあのダサイ下着しか着てないから話の内容が分からないのか。
「ですから、ここには白いガーゼ服しかないから、下着はスポーツタイプのものを着てくるように行ったんですけど、セレナールさんが別のもの着てきたんです」
ヨルクさんはチラッとセレナールさんを見て目を逸らした。
「そ、そっか」
「リリカ、今後はミネルナには薬草の研究を手伝ってもらうから、今日の夕ご飯作りだけで許してもらえないかな?」
「分かったわ。けれど、ロォハもミネルナも実際に現地に行くことが条件よ」
「分かった。カナエとナルホに連れてもらう」
これで、今後のミネルナさんの役割は決まった。
「それじゃあ、ミネルナ、セレナール、アヤネはタルリヤの家に行って魚を調理してくれるかしら?」
「でも、雨が……」
雨くらい何だって言うの。タルリヤさんの家、すぐそこじゃない。それにこの3人、本当にちゃんと料理出来るのだろうか。
「あの、一つだけ魚の捌き方の見本を見せますので、この手順でやってください」
私はサバイバルナイフを取り出し、魚を机に置くとウロコから落としはじめた。
「まず、このようにウロコを落としてください。次に頭を切り取り、内蔵は必ず抜き取って湖の水でしっかり洗います」
私は扇子で大きめの茶碗を湖まで運ばせ水を入れると、その水で魚を洗った。
「次はお腹に包丁を入れスライスさせ、背側も同じようにします。最後に魚を裏返し、今度は表とは逆の順番、背側、腹側と包丁を入れ、これで三枚おろしです。この作業をした後、みんな分の量に切って焼くなり(湖の水で)煮るなりしてください。セレナールさんは持ち前の千里眼でアニサキスを取り除いてください」
私はサバイバルナイフを消毒液につけ、布で拭き、机も同じように拭いた。そして、扇子で茶碗をタルリヤさんの家に戻した。
「ナミネ、カッコイイ」
「ナミネ、魚捌けるの?」
ここで、おじいさんの修行が役に立って良かった。
「3人とも見た?残りの2匹の魚もナミネがやった通りに捌いてちょうだい!」
ミネルナさんとセレナールさん、アヤネさんは魚2匹と私が三枚おろしにした魚をタルリヤさんの家に持って行った。果たしてどんな料理になるのだろうか。その時、ヨルクさんが私の肩を揉んだ。
「お疲れ様、ナミネ」
「ありがとうございます、ヨルクさん」
ふう、このままヨルクさんにもたれかかっていたい。恐らく今日の夕ご飯に使った魚3匹は無駄になるだろう。それでも、チームワークの乱れがどれだけサバイバルに不利になるのか、3人にはちゃんと学習して欲しい。リリカさんもそれが目的で敢えて3人に料理させたのだと思う。
1時間ほど経っただろうか。ミネルナさんとセレナールさん、アヤネさんが魚料理を持って来た。
「セレナールとアヤネは着替えててサバイバル服着てたの私だけだったから、私が湖まで水を汲みに行ったわ。魚のことは2人に任せてた」
なるほど。ミネルナさんは孤立しないためにも敢えて最初に自分の無実を語ったわけか。それにしても、魚のスープ?私、ちゃんと裁き方教えたのに、横にブツ切りになってるし、ウロコも取れてないし、完全に生の部分がある。まさかとは思って見てみたら、アルフォンス王子のところに内蔵が入っていた。
「ミネルナは仕方ないとして、あのさ、ナミネの捌き方ちゃんと見てなかったわけ?」
「見たつもりです」
ダメだ。アルフォンス王子めちゃくちゃ怒ってる。このテントを汚されるわけにはいかない。
「あの、誰か体力の余ってる方、空き家で焚き火起こし魚を焼いてもらえませんか?」
「その必要はないわ。やる気のない者がチームにいると、どれだけチームワークが乱れるか知ってもらいたかったの。魚3匹無駄になったけど、これが今日の夕ご飯よ」
やっぱりリリカさんは厳しい。でも、ここで甘やかしてしまえば、やる気のない人は余計に甘えてしまう。
「リリカさん、アルフォンス王子のは内蔵だけですがどうしますか?」
「それも経験のうちね」
うわー、内蔵なのに交換なしか。リリカさんの指示だし、私は見て見ぬふりをしてしまった。その瞬間、アルフォンス王子はアヤネさんに魚の内蔵を投げつけようとした。私は扇子で魚の内蔵をテントの外に出した。
「あの、アヤネさんもセレナールさんも、ご自分のこの料理食べれますか?食べてみてもらえませんか?」
「それは出来ないです」
「ねえ、どうしてミネルナさんは咎められないわけ?理不尽じゃない!」
やはりそうなるか。人に出しておきながら自分は食べない。だったら、どうしてもっと丁寧に料理してくれなかったのだろう。もう指摘する気にもなれない。
私は無言で魚を他のお皿に移し、お箸で皮を取ると、炎の舞で魚を十分に加熱した。これで食べられる。ラルクと落ち武者さんも同じことしてる。
「あ、ヨルクさん、それ生の部分あるので食べないでください」
私はヨルクさんの分も炎の舞で魚を加熱した。本当は剣の舞は真剣勝負に使われるものなんだけどな。こういうところで使うとは思ってもみなかった。
「ありがとう、ナミネ」
私は加熱した魚を食べた。うっ、ハチミツで味付けしてある。料理の出来ない人の料理は恐ろしい。それでも魚は栄養になる。
「あ、落ち武者さん、今後は市場で敢えて加熱不十分な肉を安値で買ってきてもらえませんか?ここで加熱し直したらいいと思うんです」
「りょーかい」
ロォラさんは初日に安全な肉を買ったけれど、それではコストが高くつく。炎の舞を使える人なら加熱し直せる。これで、今後は果物、薬草、魚、肉の確保は出来そうだ。
「なあ、私は物事には限界があると思う。せっかくズームが釣った魚をこんな風に無駄にして少しも悪いと思わないのか?それも作った本人が残すなんて、おかしいと思う」
ついにロォラさんが啖呵をきった。
「私、料理出来ないんです」
「私も出来ないわ」
それがこの2人のいいわけか。見苦しい。
「私は出来る出来ないを言ってるんじゃない。ナミネは捌き方の見本を見せている。その通りにやれば火は通ったはずだ。ちゃんと見ていないこと。料理をする時も食べる人の気持ちを全く考えてない。ただ、与えられた役目を終わらせることしか考えてない3人に問題があると私は言ってるんだ」
「あの、料理が出来るからって出来ない人をそうやって悪く言っていいのでしょうか?上から目線ではなく、対等に話すことから学ばれたほうがいいと思います」
アヤネさんって、いざと言う時はそうやって相手の言葉潰す人なんだ。
「私は対等に話している。魚はここでは貴重なのに、これはあんまりだ。それを少しも反省しないところが学習不足だと思う」
「貧乏人は普段調理しにくいものしか買えないんですね」
貧乏人?貴族だからって言っていいことと悪いことがある。
「アヤネ、お前何様だ!」
アルフォンス王子はアヤネさんを殴り付けた。
「やめてください!」
それに続くかのようにセナ王女はセレナールさんを殴り付けた。
「痛い!何するの!」
セレナールさんとアヤネさんは殴られた反動でバランスを崩し、地面に叩き付けられてしまった。
「ねえ、ラルク、カラルリさん、魚焦がしてるよ」
「ナミネさ、今それどころじゃないだろ」
「ロォラ、食べれるところだけ食べよう」
「分かったよ、兄貴」
「ラハル、私の分もあげる」
リリカさんはどこまでもラハルさんには甘い。
武士なのに、炎の舞がちゃんと使えない。
ロクに料理も出来ない。
崖を登れるからって上から目線で人を殴りつける。
ここのチームワークはめちゃくちゃだ。
セナ王女は何だかんだで炎の舞で加熱し、魚を食べた。
「うっ、不味すぎる。本当に苛立たせる人たちね」
「あ、ヨルクさん、すみませんが、生焼けの人の魚を炎の舞で加熱してもらえませんか?」
「……」
え、この無言は何?私は繰り返し言おうとした。
「10までしか出来ない……」
10……。それでは十分に加熱が出来ない。今日のところは魚は諦めてもらうしかない。私やラルクは果物採取のため、体力を無駄に使うことは出来ない。けれど、このままでは食事の取れない人が出てきてしまう。
「エルナさん、すみませんが洗濯係から洗い物係に変わってもらえないでしょうか?今日はこの大雨ですので洗い流す程度で構いません」
このまま誰も洗い物をしないのでは、流石に食器に汚れが溜まって、新しい料理を入れられない。誰かにやってもらわないと。
「分かったわ」
エルナさんは、タライに余った料理を入れると、雨水でお皿を洗い流して机に重ねて置いた。
そして、結局この日は、みんな機嫌を損ねたまま、このテントの中で休むこととなった。

その後、酷い大雨が止むと、果物、薬草、魚を落ち武者さんが市場で高値で売ってきてくれて、加熱不十分の肉をかなり値切りして安値で買って来てくれた。こちらの食糧は隣人にも分けるから少なくはなるけれど、食糧と薬は確保出来るようになって来たと思う。
日にちが経ち、滞っていた、この町の人の飲み水である川も流れるようになり、私たちはまた水を飲めるようになり、命を繋ぎ止められることも出来た。
ミネルナさんもロォハさんの研究の手伝いをし、ちゃんと役割をするようになったし、ナヤセス殿もたびたび薬草の研究をするようになった。
けれど、セナ王女、アルフォンス王子の双子はアヤネさんとセレナールさんを何かと責め立てる。
チームワークは乱れているものの、順調に進んでいるかのように思えていた。
けれど、それは私の思い込みでしかなかった。

ある日、いつものように果物係で急な崖を登っている時、カラルリさんのお武家オリジナルワイヤーが崖の真ん中で切れてしまい、カラルリさんは、そのまま真っ逆さまに転落して行った。私は咄嗟に伝説ワイヤーから手を離し、崖から飛び降り、カラルリさんを受け止めた。
私はカラルリさんを地面に寝かせ、カラルリさんの持っていた途切れたオリジナルワイヤーを見た。原因はカラルリさんの点検不足だった。急な崖とはいえ、ちゃんとしたオリジナルワイヤーなら、ある程度の重力は持ち堪えることが出来る。けれど、サバイバルゆえ、出来れば特殊ワイヤーを使って欲しかった。それも点検不足なら意味がないけれど。私はナルホお兄様に安全のことを指摘され、特殊ワイヤーから伝説ワイヤーに切り替えた。
私がカラルリさんを上に連れて行くことも出来るが、今日のところは戻ってもらおう。
「あの、カラルリさんが崖から転落してしまったので、私はカラルリさんを連れてタルリヤさんの家に戻ります。すみませんが、今日の収穫お願いします」
「分かったわ!ナミネ、あなたも今日は休みなさい」
リリカさんは周りをよく見ている。いくら体力のある人でも、たまに休みを挟まなければ長くは続けられない。
「はい、ありがとうございます!」
「本当、カラルリは使えないな」
「いっそ、カラルリを果物係から外すべきだと思うわ」
やっぱり、こういう時でもセナ王女とアルフォンス王子は慈悲なしだ。
「セナ王女、アルフォンス王子、そのことは帰って皆さんが集まってから話し合いたいと思っています!カラルリさん、行きましょう」
声をかけたものの、カラルリさんは横たわったままだった。私はカラルリさんを背負って、とぼとぼとタルリヤさんの家に向かった。

「あんたらどうしたのさ」
あ、落ち武者さん帰って来てたんだ。
「カラルリさんが崖から転落したんです。咄嗟に私が受け止めましたが、原因はオリジナルワイヤーの点検不足です」
「栄養失調だね?」
「栄養失調だね」
落ち武者さんとナヤセス殿が同時に言った。栄養失調?カラルリさんは、ここで出されている煮物も食べているのに。それなのに栄養失調?
「あの、カラルリさんはここで出されている煮物も食べています。栄養失調というのはおかしくないですか?」
「ナミネ、いくら煮物を食べていても、その素材は腐っている。それを体内に入れたとしてもエネルギーにはならないんだよ」
そういうことか。ここの煮物はいくら食べても空腹を満たすだけで、何の力にもならないのか。
「姉さんの持ってたビタミンサプリでも飲ませて寝かせとけ」
私はリリカさんに事情を書いた紙飛行機を飛ばした。リリカさんからは1錠だけならビタミンサプリを使ってもいいと返事が来た。私はカラルリさんにビタミンサプリを1錠飲ませたあと、テントに運び、ワラの上に寝かせた。
みんなが帰って来たら、今後のカラルリさんの役割をどうするかの会議だ。私は複雑な気持ちでいた。

……

あとがき。

うーん、アヤネとセレナールは何だか可哀想。2人の今後の役割はどうなるのだろう?

けれど、せっかく町の人の飲み水である川も流れ、それぞれの役割が馴染んできたところなのに、今度はカラルリが崖から転落。

先が思いやられます。

……

この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
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純愛偏差値 未来編 一人称版 81話

《ナミネ》

市場から戻るなり、セレナールさんがいきなり、布ナプキンを川で洗いはじめた。そして、その川の水はこの町の人の飲み水で、隣人から反感を買い、私たちは石を投げ付けられる事態となってしまった。
咄嗟にラルクと私は使えなくなった川の水を氷の舞で凍らせ、ゴミ捨て場に捨てたものの、次にこの川が流れるのは5日はかかるらしい。これでは間に合わない。隣人の命さえも危なくなってしまった。
隣人の怒りは収まらなく、私たちは森林の結界をかけて身を守り、結界がかけられない者には結界の使える人が譲渡した。けれど、セレナールさんのことは誰も助けず、隣人が投げる石は全てセレナールさんに当たってしまったのである。
「あの、非常事態ですので、果物と薬草は隣人に全て渡すしかないと思うのです。カナエさん、すみませんが……」
あれ、既に何個か調合してある漢方薬がある。
桂枝、茯苓、牡丹皮、桃仁、芍薬。これを調合したものが現代で言うところの桂枝茯苓丸。葛根湯、麻黄、生姜、大棗、桂枝、芍薬、甘草。これを調合したものが現代で言うところの葛根湯だ。柴胡桂枝湯もある。その他にも安中散や麻黄湯などがある。薬はこれだけあれば、それなりの期間は足りるだろう。
けれど、問題は水だ。水がなければ、生きられない。
「あの、洗濯なら、飲み水ではなく、隣の身体を洗い流している人が使っている湖の水を使えば良かったのではないでしょうか」
そっか。アヤネさんの言う通りかもしれない。私の判断ミスだ。
「ナミネ!あなたのせいよ!あながこの川の水使えって言ったから使ったんじゃない!飲み水どうしてくれるのよ!」
「セレナール!いい加減にしなさい!川と水は1つの橋でしか繋がっていない。効率が悪いわ!それに、ちゃんとタライに入れて洗えばこんなことにはならなかった!責任転嫁も甚だしいわね!」
リリカさんは庇ってくれているけれど、橋もそんなに長くはないし、湖の水を使っていれば、この事態は防げたのかもしれない。セレナールさんが橋を渡ってまで水の水を使っていればの話だけれど。けれど、今は隣人の怒りを沈めるために、果物と薬草を配らないと。
「私の判断ミスかもしれません。でも、今は隣人の怒りを沈めるためにも果物と薬草を全て配布しましょう」
リリカさんはため息をついた。
「やむを得ないわね」
リリカさんは紙飛行機をいくつか飛ばした。少しするとこの町の人が集まって来た。リリカさんは飲み水の事情を説明し、町の人に謝りながら果物と薬草を配布した。そして、セレナールさん以外も謝りながら町の人に果物と薬草を配布したのである。町の人たちは川の水が流れるまではお酒でしのぐと言って戻って行った。とりあえず隣人の怒りを沈めることは出来た。けれど、問題は、せっかく取ってきた果物と薬草がこちらにはゼロになってしまったということだ。
「あの、私の責任なので、今から水分が中にある果物を取ってきます」
「あら、今回の件ってセレナールの責任じゃないかしら?私たちが取ってきた果物までなくなって、責任取るならセレナールだと思うわ」
セナ王女は川で直接洗濯をしたセレナールさんが悪いと位置付けている。
「そうね、私もセレナールの責任だと思うわ。それに、アヤネも無責任なこと言わないでくれるかしら。湖で水浴びしている人はボートのロープ巻いているじゃない。それだけでも、あの湖は泳げない人が入れば溺れることが目に見えているじゃない」
「申し訳ありません。そこまで考えが及びませんでした」
アヤネさんは悪くない。けれど、ミネスさんだって早朝にタライ使っていたのに、飲み水だと私説明したのに、それで洗うセレナールさんは周りのことが考えられていない。
「背に腹はかえられません。あの湖の水を携帯浄水器で飲みましょう。5日ならもつはずです」
とは言ってみたけれど、まさかの2日目で携帯浄水器を使うだなんて先が思いやられる。
「やむを得ないわね。けれど、携帯浄水器は2つしか持ってきていない。後のことを考えなければいけないわね」
「私、携帯浄水器なんて持ってきてないわ!」
どうしてメモで渡したものをセレナールさんは殆ど持っていないのだろう。何故、リュックに入れてこなかったのだろう。
「あの、セレナールさん、私とラルク、必要なものメモして渡しましたよね?布ナプキンにしてもそうですが、どうして必要なものを持ってきていないのですか?」
「だって、布ナプキンなんて普段使わないし、サバイバルグッズなんてどこで売っているか分からないもの。それを書かなかったナミネが悪いわ!」
また責任転嫁。分からないなら聞けばいいのに。携帯浄水器は1人2つしか持っていない。その1つをセレナールさんに渡してしまえば明らか効率が悪くなってしまう。5日。だったら……。
「あの、5日でしたら、1つの携帯浄水器を4人で使いませんか?」
リリカさんも、他の人もため息をついた。
「本当にセレナールのせいで迷惑だわ。とりあえず5日だから1人1つ使うのは勿体ない。ナミネの言うように1つを数人で使うしかないわね。ヨルク、今日はロォラが買ってきた肉を1つ使って料理作ってちょうだい。あとは氷の舞で冷凍して森林の結界かけるから」
「分かりました。ナミネ、行ってくるね」
「はい」
こんなに明日からの5日を長いと思ったことがこれまでにあっただろうか。いつも当たり前にあるものがないということは、こんなにも不便なことだったんだ。
「セレナールさん、ちょっとリュックの中身見せてください」
私は半ば無理矢理セレナールさんのリュックを開いた。えっと、ハンカチに、ポイントカード、財布、コードレスヘアアイロン、少女漫画、手帳、ボールペン、折りたたみ傘、ビタミンサプリ、ドリスポ、便秘薬。え、ビタミンサプリにドリスポ、便秘薬!?
「皆さん、見てください!セレナールさんのリュックからビタミンサプリとドリスポ、便秘薬が出てきました!ドリスポは500mlが4本もあります!」
「ちょっとやめてよ!これ私のなんだから!」
セレナールさんがリュックを取り戻そうとする中、私はセレナールさんのリュックをリリカさんに渡した。
「携帯浄水器の使用は禁止!5日間、みんなで4本のドリスポでしのぐわ!それと、ビタミンサプリと便秘薬も没収!」
これで携帯浄水器は使わなくて済んだ。けれど、ゼロになった果物と薬草は取りに行かないと。
「では、明日はヨルクさんとロォラさんが縫い物をするとして、ゼロになった果物と薬草を取りに行くことに集中しましょう!崖を登れない人は洗濯をしてください。私が湖の水を何個かのタライに入れておきますので。洗剤はタルリヤさんの家のものを水で薄めて使ってください」
洗濯は、ナヤセス殿、ロォハさん、タルリヤさん、エルナさん、カラン王子、ユメさん、委員長がすることになった。私はその分のタライに水を入れるだけ。あれ、アヤネさんは何をするのだろう。
「あの、アヤネさんは何をするのですか?」
「えっと、洗い物をします」
「では、お願いします」
その時、セレナールさんがまた生理痛を訴えはじめた。セレナールさんて古代の身体のはずなのに、どうしてこんなに痛むのだろう。
「今回の件、セレナールのせいなんだから、カナエの薬は使わないで」
やっぱり仲間割れがはじまった。リリカさんは正論しか言わないけれど、セナ王女はどこか支配的で、これではチームワークが乱れてしまう。
「セナさんの気持ちは分かります。けれど、誰にでも間違いはあります。カナエはセレナールに薬を与えます。薬草はまた明日ナルホと取ってきますし」
「みんな真剣にやっているのにセレナールだけ問題起こして何もしないなんて、私認められないわ」
セナ王女の言い分も分かるけど、痛いのを放っておくと余計に悪化してしまう。
「あの、このまま痛みを放っておくとよくないです。ここはカナエさんの薬を飲ませていただけないでしょうか?」
セナ王女は無言で席を立った。セレナールさんはカナエさんがコップに入れた痛み止めを飲んだ。そう、ここでは顆粒ではなく、煎じ薬は全て水を混ぜたものが瓶に入れられているのである。まるで、妖精村半ばみたいだ。
その時、ヨルクさんがご飯を運んで来た。みんなで分けるとなると肉も小さくなるけれど、仕方ない。肉と、干し魚と、玉子巻き?どうして卵があるのだろう。
「あの、卵はどうされたんですか?」
「市場から帰る途中、おばあさんからもらったよ」
「そうですか」
市場には卵なんて売られてなかった。誰かがニワトリを飼っているのだろうか。あれ、何となくラハルさんの肉だけ大きい気がする。
「ラハル、いっぱい食べて」
「リリカ、僕だけ特別扱いしなくていいよ」
何かあってもラハルさんだけは救われる。真っ先に。
「ねえ、私の肉は?」
「ないに決まってるじゃない」
やはり、セレナールさんは肉なしか。それでも、干し魚と玉子巻きはある。ただ、どうしてもこの家で出された煮物も食べないとお腹がすいて仕方ない。僅かなものでは全くエネルギーに繋がらない。それでも、ここの煮物を食べない人が多い。
「ふぅ、食べたあ。では、アヤネさん、お皿洗いお願いします」
「わ、分かりました」
返事はしたものの、アヤネさんはみんなが食べ終わった食器を片付ける気配がない。私はしばらく様子を見てみた。しかし、30分経ってもアヤネさんは洗い物をする気配はなかった。
「あの、アヤネさん、食器洗ってもらえませんか?」
「すみません……出来ません……」
え、何それ。自分で洗い物するって言ったじゃない。
「アヤネさん、私がやります」
「ヨルクさん、甘やかさないでください!アヤネさん、自分からすると言ったのにどうしてしないんですか?みんなそれぞれの役割をしているんです!何もしないで、ご飯食べるなんて贅沢です!アヤネさんが責任を持って食器を洗ってください」
本当訳わかんないよ。貴族だからって何もしなくていいの?ここはサバイバルなんだよ。
「ここで出される食事には虫も入っていますし、殆どの方が残されています。気持ち悪くて触れないです」
「あの、アヤネさん……」
「ナミネ、もういいわ。食器洗いしないのなら、次の日も同じ食器使うことになるわね。それも、煮物残した人のはそのまま。やりたくなければ、やらなくていいわ。食器はこのままここに置いておきましょう」
リリカさんは、やっぱりクレナイ家の長女なだけあるなあと思う。ここで洗わなければ、メンバーに袋叩きされるのは目に見えている。それに、食器は一日一日洗わないと、余計に汚れが溜まってしまう。
「い、いやです!同じ食器を使うだなんて!誰か洗ってください!」
ここでアヤネさんが駄々をこねるだなんて。本当信じられない。
「ねえ、どうする?ラルク」
「まあ、アヤネさんは洗わないだろうな」
だよね。全く洗う気配ないし。
「なあ、アヤネ。ここではチームワークが大切なんだ。アヤネだけ何もしないでは迷惑だし、今後、アヤネだけには果物と薬草は与えないが」
「私たち、今後、与えられた仕事を熟さなければならないのよ!アヤネが何もしないなら誰が洗い物するのよ!」
「アヤネ、みんなはそれぞれの役割をしています。それを虫1つでワガママ言うのはカナエも間違っていると思います」
「アヤネ、私とクラフは洗濯しないといけないし、1番楽な洗い物をしないでは流石に困るわ」
「アヤネ、あんた何様だ!金持ちなら何もしなくていいのかよ!」
案の定、アヤネさん叩きがはじまった。そして、誰もアヤネさんの代わりに洗い物をする人はいない。
「イジメないでください。私は悪いことはしていません」
「は?とことん苛立たせる女だな!5分以内に洗い物をしないなら、湖に落としてやる!」
アルフォンス王子が強行手段を主張した。
「や、やります!」
やっと、やると言った。
「では、お願いします」
「あの、どうすればいいのでしょうか?」
貴族はみんなこうなのだろうか。
「まず、余った食事はタライに入れます。次に別のタライに湖の水を入れて、スポンジに洗剤を付けて食器を洗ってください。次に食事を入れたタライと食器を洗ったタライの中のものをゴミ捨て場に入れます。次に、湖で新しい水をタライに入れて食器を洗い流してください。食事を入れたタライは別のスポンジで洗って、また湖でタライに水を入れて洗い流して終わりです。何度も湖に行くのが面倒なら、一度に必要分のタライに水を入れてください」
「あの、メモに書いてください」
「自分で書いてください!」
アヤネさんは貴族だから、身の回りのことは全て使用人にしてもらっているのだろう。けれど、ここでは与えられた役割はしてもらわないと困る。
「今日のところは私が教えるわ」
うーん、エルナさんは洗濯係なのにな。でも、ここは頼るしかない。
「あ、では、すみませんが、お願いします」
エルナさんは1つ目のタライに余った食事を入れ、湖に行くと複数のタライに水を入れ、川の前で食器を洗った。そして、2つのタライの中のものをゴミ捨て場に捨てに行き、食器を洗い流し、食事の入っていたタライを別のスポンジで洗い、水で洗い流した。アヤネさんは何もせず見ているだけだった。こんなことでは先が思いやられる。
「余った食事を入れるタライには文字を書いておいたわ」
「ありがとうございます。アヤネさん、明日も何もしないなら湖に落ちてもらいます!」
「明日はやります!だから、これ以上私をイジメないでください」
アヤネさんの言い方癪に障る。
「アヤネ、あんたその態度なんだよ!強気なナミネは明日は果物収穫しに行くんだ!洗い物がいやなら強気なナミネと役割変われ!その代わり崖は自力で登れ!」
「どうしてイジメるんですか!あなた方が慣れているからって、そういうものの言い方酷いです」
アヤネさんは泣きはじめた。確かに私もキツく言い過ぎたかもしれない。でも、虫ひとつで動こうとしなかったアヤネさんに苛立った。
「ムカつくわ。今すぐ湖に放り投げてやる!」
セナ王女がキレた。
「本当に明日からはやります!もうイジメないでください!」
その瞬間、セナ王女はアヤネさんを持ち上げ、湖に放り投げた。凄い腕力だ。サバイバルはただでさえストレスが溜まるから、一人一人の言動が誰かを苛立たせることもある。今回のがその例だろう。
「助けてください!私泳げないんです!」
アヤネさんは湖から叫んだ。カナエさんは走って湖まで行き、湖に飛び込んでアヤネさんを救出した。サバイバル服は防水だから身体は濡れてないだろう。けれど、髪は濡れてしまった。
2人が戻って来たところでリリカさんが立ち上がった。
「アヤネ、やりたくないならやらなくていいわ。でも、食器は誰も洗わない。次の日も同じ食器を使うだけだから」
「お願いですからイジメないでください!!」
「イジメ?私はやりたくなければやらなくていいと言っただけよ?」
「それがイジメだと言っているのです!このような経験がお在りの方は余裕でしょうけど、素人にとっては何もかも分からないんです!それを責め立てて庶民は穢らわしいです!」
ダメだ、アヤネさんがキレてしまった。アヤネさんは洗い物ひとつ出来ないから、エルナさんを洗濯係から外して洗い物係に回ってもらったほうがいいのだろうか。
「へえ、それがあなたの言い分なのね。じゃあ、洗い物は放置しておけば?私はもう知らないわ」
もはや、これも経験だろう。洗い物をしなければどうなるか身をもって知ってもらうしかない。そして、メンバーの反感を買ってもらうしかない。それがアヤネさんの選んだことなのだ。

翌日、私は早朝に起き、昨日言った洗濯係用の水をタライに入れ、叩き棒と洗濯板を置いておいた。洗濯は2人1組でやってもらおう。タライにも限りがあるし。
少しするとみんな起きてきて席についた。
「川の横にタライに水を入れておきました。洗濯は基本、2人1組で行ってください。洗濯の仕方はエルナさんに聞いてください。明日からは洗濯係の皆さんが水を入れてくださいね」
「ええ、分かったわ」
「うん、そうするよ」
私はいつもの煮物を食べ終わると、扇子でお茶碗をタライに入れると、そのまま湖まで持っていき、お茶碗を洗って机に戻した。扇子を扱える人は私と同じことをした。それだけアヤネさんの信用は落ちているのだ。
「ナミネ、気を付けて行ってきてね」
「はい」
食べ終わるとみんなはそれぞれの配置についた。
「あ、落ち武者さん、今日の市場の様子見てきてもらえませんか?」
「りょーかい」
市場といえども、スーパーのように毎日同じ品物が並んでいるとは限らない。果物係はそれなりにいるから、落ち武者さんに行ってもらうことにした。
薬草係はカナエさんとナルホお兄様と少ないけれど、ここは詳しい人に任せるしかない。ナヤセス殿とロォハさんは毎日は体力的に行けないらしい。それに2人には何かあった時に患者を診てもらわないと。
ミネスさんは町の偵察に言ったけれど、ミネルナさんとセレナールさん、アヤネさんは何もしていない。本当こういうの困る。けれど、私ももう果物を入手して来ないと。
そして、私とラルク、リリカさん、ナナミお姉様、セナ王女、アルフォンス王子、カラルリさん、ミナクさん、それに加えタルリヤさんは果物がある崖へと向かった。

あれ、初日に来た時と何かが違うような気がする。私は携帯で撮った写真を見た。えっ、初日にはない果物があったり、木の位置も何か変わってる。どういうこと?
「あの、タルリヤさん、これが初日に来た時の写真ですが、今日来たら全然違いますよね」
「僕は崖を登れないから、ここの事情は殆ど知らないんだ。けれど、昔ここに来ていた人の記録によると、ここは毎日何かが変わっているらしい」
木とか固定されているのに、毎日変わっている?どうしてだろう。
「その記録って今も見れますか?」
「何世紀も昔のだからどうだろう。僕は新聞で読んだだけだからね」
何世紀も昔なら残っている可能性は低いし、探している時間もない。今は、4日後に流れる川の水のためにも体力は温存しないと。
「そうですか」
あれ、イチゴがある。この寒い冬だというのに。
「ねえ、ラルク、イチゴがあるよ」
「ナミネ、イチゴは潰れやすいから、箱に入れろ!」
「うん。そうするね。あっ!金のイチゴ!」
この果樹園は一体何なのだろう。金のイチゴなんてはじめて見る。私は写真に撮った。
「金のイチゴ!?食べてみたいわ!」
「セナ王女、悪いけど、そのイチゴはナヤセスに成分調べてもらったら市場に売りに出すわ」
そうだよね。今後のことを考えると、果物や薬草を売った終わったお金で肉を買わないと。ていうか、イチゴが生えているってことは、ここの土持って帰れば、新鮮な野菜を育てることが出来るのではないだろうか。
「あの、イチゴの生えているところの土を持って帰れば、畑で新鮮な野菜が作れるのではないでしょうか?」
「そのことなんだけど、研究者によると、ここの果樹園は乱してはいけないらしい。果物の採取はしても問題ないけど、ここの土や果物の木ごと持って帰った人はみんなその日のうちに突然死してるんだ」
この果樹園、ますます分からなくなってきた。土くらい持って帰ったっていいと思うのに。毎日果物が入れ替わって、土ひとつ持って帰ることが出来ない。この果樹園には絶対何か秘密が隠されている。
川の件が収まれば、薬草のところも見に行く必要がある。
「そうですか。土さえも持って帰れないのですね。良きものを町の人に与えられないと、暮らしはなかなか変わりませんね」
私は3つの箱にイチゴを入れ終わった。念の為、金のイチゴだけ、プラスチックの小さい容器に入れた。
「そうだね。果物は市場には滅多に出されないし、ここまで来れる人がそもそも殆どいない。結局、ここでまともな暮らしは出来ないんだよね」
15年間も現世でここに暮らしていただなんて。タルリヤさんには同情してしまう。人口は増えても、若い者は学校に行くことさえ出来ない。そんなことでは、この町は進化しない。
ここへは来たけれど、ここを変えることは出来ない。私は、いや私だけではない。みんなは結局傍観者であることをもどかしく感じているだろう。

あれ、端っこのほうにメロンがある。

……

あとがき。

いつも波乱万丈ですが、ここに来てからは更に波乱万丈……。

……

この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
純愛偏差値 未来編 一人称版 80話

《ナミネ》

紀元前村の蓮華町に来て2日目。
遠い昔の紀元前村にはトイレはなかったが、今は蓮華町に関しては政府から一家庭につき、1つの簡易トイレが配布されている。と言っても、その簡易トイレは、私たちが非常用に持って来たものとそんなに変わりはなく、溜まってきたら自分たちで処分しなければならない。具体的に蓮華町には、まとめてゴミを捨てる場所があり、たまに政府がそのゴミたちを処理しに来るらしい。
ちなみに、蓮華町だけはテレビも固定電話も携帯電話もエアコンも存在しない。公衆電話さえもないのである。
交番はあるが、いざとなった時は連絡も出来ないのだ。病院だって同じ。どれだけ命の危機が迫っていても救急車とか存在しないゆえ、自力で病院まで行くしかない。
みんな起きてきた。電気毛布がないせいか、少し寒そうだ。
「皆さん、おはようございます。今日は市場の下見に行きます。ただ、妖精村のスーパーとは違い、品物には限りがあるので、着替えも、みんな分は買えないと思います。
洗濯に関してはヨルクさんに教えて貰ってください。洗う時も流す時も必ずラタイに入れてください。川の水はこの町の皆さんの飲水ですので。後、布ナプキンに関しては各自で洗濯をお願いします。
それと、果物はドライフルーツに、魚は干物にすると日持ちがよくなると思いますが皆さんはどう思いますか?」
「そうね。縮むけど、毎日の食事は必要だし、私はそれで構わないわ」
「僕もそのほうが効率がいいと思います」
「まあ、取ってきてもそのままにしてたら腐るしな」
(省略)
これでドライフルーツと干物の件はまとまった。かつて無人島に漂流した人が、釣った魚を干物にして生き延びたドキュメンタリーを見たことがある。
「ドライフルーツにすることは構わないけど、果物はここでは貴重だから、ここの食事と共に食べてもらうわ」
リリカさんは、やはり厳しい。けれど、ドライフルーツだけを食べていたら食糧はすぐに尽きてしまう。やむを得ない。
「はい、それで構いません」
私は同意したが、何人か反対意見が出た。
その時、セレナールさんがお腹を押えた。
「お腹が痛いわ。誰か痛み止め分けてくれないかしら」
セレナールさんは、森の湖で何も学習していなかったのだろうか。ミネスさんは痛み止めを飲んでいる。
「あの、痛み止めは1人1人分ですので、どうしても痛いなら病院で薬を処方してもらうしかないと思います」
セレナールさんは準備不足が多い。これではいつまで身体がもつか分からない。
「ねえ、セレナールって、どういうつもりでここに来たの?あなた何にもしてないじゃない!ハッキリ言って迷惑だわ!」
やはりセナ王女はサバイバルに慣れているゆえ、慣れてない人の気持ちが分からなくて、すぐに攻撃してしまう。
「痛み止めはカナエのを使ってください」
カナエさんはセレナールさんに痛み止めを渡した。同時にリリカさんは、ため息をついた。
「迷惑かけるだけかけて何もしない人は帰って欲しいわ」
「ごめん、リリカ。やれることはやるわ」
とりあえず、セレナールさんの生理痛はこれで治まる。これだけの気温差だから仕方ないかもしれない。
「あと、トイレですが、これは絶対に必要ですので、男子用、女子用を2つずつテントを組み立てその中に入れませんか?溜まって来たら、溜まった時にした人が捨てに行くのはどうでしょう?」
「私は構わないわ」
リリカさんはOKと。
「では、テントと簡易トイレを組み立ててから市場に行きましょう」
私は、ここでの朝食を食べ終わった。やっぱり、何日も前の冷蔵庫に入れていない煮物は、食べる人が殆ど少ない。でも、食べないと体力がもたなくなる。今日中にドライフルーツを作らなければ。
「ラルク、テント張るよ」
私たちは簡易トイレを4つ組み立て、テントを張りはじめた。やはり、ここでも動かない人がいる。無理にしろとは言わないが洗い物1つしない人はどうするのだろう。
とりあえずテントは、私とラルク、落ち武者さん、ズームさん、委員長、ユメさんで張り終えた。そこに2つずつ簡易トイレを入れて完了っと。
「あの、言わせてもらいますが、ここではチームワークが必要です。協力しない人がいるなら、その人の日常品の配布は削減させてもらいます」
「私、生理痛で動けなかっただけだから」
「でしたら、今後はみんなが取ってきた果物と名前、薬草と名前、その効力をナヤセス殿のメモ書きを見て、このノートにイラスト付きで清書してもらえませんか?」
これくらいはしてもらわないと正直、1日何もしないでは、果物を取ってきたチームとそのうち口論になってしまう。
「分かった。それはやる」
あれ、ヨルクさんは朝食に手もつけていない。どうしたのだろう。
「ヨルクさん、どうかしましたか?」
「昨日の夕ご飯を無理して食べたら夜中からお腹痛くて……」
私はため息をついた。どうして、次から次へと問題が出てくるのだろう。
「今テントを張りましたのでトイレに行ってください。青が男性用です」
ヨルクさんは走ってテントに向かった。
「最初に言っておきますが、今のヨルクさんのような症状が起きたら下痢止めは禁忌です。けれど、食事を取らなければ体力が落ちます。私も薬草を取りに行きますので、お腹を壊した人のために、柴胡、半夏、桂枝、黄芩、人参、芍薬、生姜、大棗、甘草を煎じます」
お腹を壊した時に、それを薬で止めてしまうのは返って逆効果だ。柴胡、半夏、桂枝、黄芩、人参、芍薬、生姜、大棗、甘草を調合したものは現代で言うところの柴胡桂枝湯である。下痢をした後に飲むと次第に腹痛はなくなり、下痢もそのうちに繰り返さなくなる。ここでは、数日前の煮物を食べてお腹を壊す人もそれなりにいるだろう。そして、その煮物に使われている野菜は最初から殆ど腐っている。
「ナミネはナミネでやることがあるので、薬に関してはカナエとナルホが煎じて、瓶に入れ、それぞれの用途をシールで貼っておきます」
確かに、私とラルクはこの町の全体像を確認しなければならない。薬草のことはカナエさんとナルホお兄様に任せよう。
「では、薬草のことはカナエさんにお任せします」
その時、ヨルクさんが戻ってきた。
「ヨルクさん、具合はどうですか?」
「まだ少し違和感がある気がする」
そう、ひとたびお腹を壊せば、全体の体力が奪われてしまう。私は箱ごと持って来た柴胡桂枝湯をひと袋ヨルクさんに渡した。
「今日は市場の下見がありますので、これ飲んでください」
「うん、ごめんナミネ」
柴胡桂枝湯は、20分もあれば効果が出て、そこそこ体力がある人なら活動も出来るようになる。ひと袋さえ貴重だけれど、今後はカナエさんとナルホお兄様が煎じてくれる。
「ねえ、彼氏だからって特別扱いするのはおかしいと思うの。セレナールが苦しんでいる時は病院に行けと言ったのに、酷くない?」
セナ王女はとことん揚げ足を取る。
「お言葉ですが、生理痛と下痢は違いますよね。セナ王女は漏らしながら過ごせと仰るのですか?それ、隣人に怒られますよ?」
「な、何よ!特別扱い反対よ!」
その時、アルフォンス王子、ミネルナさん、ミネスさんが腹痛を訴えた。ミネスさんはさっき痛み止め飲んでいたから、やはり朝食が当たってしまったのか。やむを得ない。私は3人に柴胡桂枝湯を渡した。
「トイレは行ってきてください」
柴胡桂枝湯はいつ飲んでも構わない。トイレの前でも後でも。けれど、早く薬草を入手しなければ、私の柴胡桂枝湯だけでは足りなくなってしまう。それこそ病院に行かなくてはならない。
「カナエさん、すみませんが、今日の市場見学は行かずに薬草を取ってきてもらえないでしょうか?」
「分かりました。痛み止めと腹痛に効く薬を作るのです」
「ナミネ、心配はいらないよ。薬は何種類か煎じておくから。ナミネは市場の下見行っておいで」
2人には別の日に市場に行ってもらおう。今はすぐに薬草が必要な状況だ。
「すみません、お願いします」
ヨルクさんも、ミネスさんも、アルフォンス王子も、ミネルナさんも体調は落ち着いてきたみたいだ。出発するとするか。市場はここから700mくらいのところにあるからすぐに着くだろう。

朝早くに来たつもりだけど、人は少しいる。この町も24時間営業なのだろうか。
「あ、タルリヤさん、蓮華町は24時間営業ですか?」
「交番はそうだけど、市場は夕方には店仕舞いするし、他のとこもね。病院は一応時間外診療はやってるけど」
夕方には店仕舞いか。少し早い気もする。その日取ってきた肉や魚を売り出すと同時に買わないと品切れになってしまう。いや、肉や魚は野菜に比べたら随分高い。買う人いるのだろうか。
「タルリヤさん、肉や魚は野菜に比べたらかなり高いですが、どうしてでしょうか?市場には果物や薬草は売られていないのですか?」
「ここの土は使えないものばかりで、政府から肥料は配布されてないんだ。だから、いくら種を撒いても、その野菜は新鮮なものには育たず今の市場で売っているようなものしかない。米も同じ。それに対して肉や魚は猟師や漁師が毎日新鮮なものを取ってくるから、その分値段が高いんだ。買う人はたまに果物や薬草をここに売りに来て、お金にして買ってる。売れなかった肉や魚は毎日酒場で猟師や漁師の友達が食べてるよ」
米と野菜は殆ど食べれないものばかりというわけか。それでも、お金がないからみんな傷んだ米と野菜を買うしかないのか。
それに対して、猟師や漁師は毎日新鮮な肉と魚を食べることが出来る。ただ、肉は明らか1人分なのにイノシシの肉は1つ60000円、鹿の肉は1つ50000円とこんなのぼったくりだ。干した魚は1つ20000円だけれど、それでも高い。これが手間賃というヤツなのだろうか。
「極端ですね。けれど、果物や薬草を取りに行ける人がいるのですね」
「まあね。ほんの僅かしかいないけど、そういう人のみが肉や魚を食べられるんだよね」
「そうですか。ここでは米や野菜がダメな分、新鮮な肉や魚は貴重なのですね」
値段的に納得いかないけど、ここでは一人一人が工夫して生きていかなきゃいけない。結局、ここでも腕の立つ人しかまともな食事は出来ないのか。
「おっちゃん、私昨日ここに来たばかりで何も分からないんだよな。仲間もご飯殆ど食べれてなくて困ってるんだ。肉と干し魚、もっと負けてくんないか?」
「お嬢ちゃん、こっちも商売だからね。まけることは出来ないよ」
「けどさ、売れ残った分って勿体なくないか?干し魚はともかく、肉は日持ちしないだろ?別にここに売り出されてないものじゃなくても構わないから、端っこの切り落とした店には売り出されてない肉だけでも分けてくれないか?」
確かに妖精村でも、牛の肉は形の整った部分だけ売り出され、切り落としのものは捨てられている。
「お嬢ちゃん、詳しいねえ。ここに並んでない切り落としのものは10000円にしとくよ。いつも市場に並んでないのはこういうのだよ」
市場の主は切り落とした肉をロォラさんに見せた。それにしても本来捨てるものを10000円だなんて高すぎる。
「うーん、やっぱり切り落としたものはやめておく。イノシシはこっちとこっち、鹿はこっちとあっちの肉をまけてほしい!」
どうして急に考えを変えたのだろう。ここに売られている肉を安く買い占められたら得なのに。けれど、ロォラさんは既に4つを手に取っている。
「どうしてこの4つなのかな?」
「売れ残った肉食べて食中毒起こした人いるんじゃないか?この4つ以外は十分に加熱がされていない。その場合、寄生虫が肉の中にいたり、熱や吐き気、腹痛などを起こすE型肝炎ウイルスもいる。その他、酷い腹痛や血便、死ぬ恐れがある腸管出血性大腸菌も存在している。それは全て十分な加熱がされていないからだ。だから、この4つ以外は買わない」
専門家でもないのに、どうしてこんなに詳しいのだろう。
「こりゃたまげた。おっちゃんの負けだ。イノシシの肉は1つ20000円、鹿の肉は1つ8000円、干し魚は1つ5000円。これ以上はまけられないよ」
「じゃあ、イノシシの肉2つ、鹿の肉2つ、干し魚全部買う」
ロォラさん、大きく出た。でも、正しい判断だと思う。ただでさえ高い肉と干し魚が値引きされて、更にはロォラさんの目利きで肉は全て十分に加熱されている。ここで買ったほうが有利だと思う。落ち武者さんがみんなに現金渡しているし。
「あいよ、全部で116000円だよ」
ロォラさんは、主にお金を渡した。
「また来る」
「はあ、今日は店仕舞いだな。余った肉は加熱しないと」
市場の主は肉たちを引き上げはじめた。
「ロォラ、あんた詳しいな。確かにあんたの選んだののみが安全な肉だ」
「小さい頃から商店街のおじさんの店、たまに手伝ってるからな」
ロォラさんて以外。私も商店街のおじさん、おばさんには随分可愛がられてきたけど、ロォラさんは商店街のお店の手伝いまでしてたのか。
「今後はあんたが市場に買い出しに行け!」
「え、でも洗濯物が……」
「他のヤツにやらせる」
「分かった。市場には私が行く」
下見だけのつもりだったけど、ロォラさんのおかげで肉と干し魚の確保は出来た。
「とても美人ですね」
え、今度は何?
「あら、引っ越してきたのかしら?」
「いえ、友達の家にしばらくお世話になることになりました。ここの男性用と女性用の下着と服、もう少し安くしてもらえませんか?」
今度はロォラさんに続いてミナクさんが値切りをしている。
「うーん、こっちも商売だからねえ」
「そこを何とかお願いします。あなたのような美しいお姉さんがいるなら、私は毎日ここへ通います」
ミナクさんは、1輪の薔薇を市場の女主に渡した。てか、その薔薇どこから出てきたの?
「もう、仕方ないわねえ。全て半値にするわ。これ以上はダメよ」
「では、全て買います」
ミナクさんは女主にお金を渡した。これで、全員とはいかないけど、着替えを入手することが出来た。
「うーん、出来たら全員分欲しいな。なあ、ここにある原反って売り物なのか?」
少し色褪せている。けれど、原反なんて買ってどうするのだろう。
「売り物よ。昨日入ってきたものだけど、状態が良くないから今なら5000円ね」
「だったら、買う!あ、その30番の糸もお願い」
ロォラさんは女主にお金を渡した。
「あの、その原反どうするんですか?」
「みんなの下着と服作るんだ」
ロォラさんて裁縫出来るんだ。何だか人って見かけによらないな。
「あ、ロォラさん、下着と服作りは私がやります。ロォラさんは市場に行かなければ行けないので」
「分かった。じゃあ頼む。私も市場から戻って来たら作業する」
これで、裁縫はロォラさんとヨルクさんがすることになったけれど、その分、洗濯係が減ってしまった。あ、塩と砂糖買っておかなきゃ。
「おじさん、塩と砂糖ください」
「お嬢ちゃん可愛いね、特別に半額にしておくよ」
「ありがとうございます!では、200gずつお願いします!」
「全部で2000円だね」
私は主にお金を支払った。
「あんたずる賢いな」
「えっ、私何してません」
遠い昔は、感染症が流行った時に、塩と砂糖がなくなり経口補水液が作れなくなった。けれど、みんなで協力して代用品を作って患者に与えたらしい。こんな環境だからいつ感染症が流行るか知れたもんじゃない。確保しておくものは確保しておかないと。
「あの、肉と干し魚はあまりに高すぎます。私たちも果物と薬草を売ったほうがいいと思うのです。無論、私やラルクが狩りに行ってもいいですが。あと、洗濯係が少なすぎるのも問題かと」
「そうね。流石に、あの値段では、頻繁には買えないわね。やむを得ない。果物と薬草は隣人に配布する頻度を減らして市場に売るわ!あと、手の空いてる人は洗濯係に回ってちょうだい!それから、今日、安全な肉を入手出来たのはロォラの手柄だから今後、ここで役に立てない人は肉も干し魚も抜きよ!」
やっぱりリリカさんが仕切ると、みんな引き締まる。何人か反論の声もあるが、リリカさんは方針を変えない。肉だって買えたのもかなり少ないし、何もしない人が食べるとチームワークが乱れてしまう。
「では、釣りは僕がやります」
え、ズームさんが?何かいい釣竿でも持ってきたのだろうか。
「とりあえず、下見はこのくらいにして帰るわよ」
リリカさんの声と共に、みんなはタルリヤさんの家に戻りはじめた。

ふう、あの値段をみたせいか下見だけで精神的に疲れた気がする。
「あ、塩と砂糖は経口補水液に使ってください」
私はリリカさんに塩と砂糖を渡した。
「ナミネは気が利くわね。みんな、ここではチームワークが大切よ!常にメンバーのことを考えながら動いて!」
その時、セレナールさんが、タライに水を入れず、川でそのまま布ナプキンを洗いはじめた。私たちはセレナールさんにかけよった。
「あの、セレナールさん、それこの町の人全員の飲水なんです!どうしてタライに入れてくれなかったんですか!血の流れた水なんか飲めないじゃないですか!」
私はセレナールさんから布ナプキンを取り上げた。
「何よ!洗濯機ないし分からなかったんだから仕方ないでしょ!いちいち怒らないでよ!」
その瞬間、リリカさんがセレナールさんを引っぱたいた。
「あなた何てことをしてくれたの!これじゃあ、町の人の反感買うだけじゃないの!あなた1人でどうにかしなさい!」
「待って、リリカ!悪気はなかったのよ!許して!」
けれど、時すでに遅し。隣人の人が気づきはじめ、こちらに向かって石を投げはじめた。
「私たちの飲み水返せ!この泥棒グループが!」
川の水はセレナールさんの血で汚れて、しばらく飲むことは出来ない。隣人が怒るのも無理はない。とりあえず、氷の舞を使って汚れた水を全て取り除かないと。
「ラルク!」
「ああ、やるか」
私とラルクは氷の舞を使って川を凍らせた。凍らせた川はラルクが扇子でゴミ捨て場に放り投げた。あれ、川の水が流れない。
「あの、タルリヤさん、川の水はいつ流れますか?」
「一度止めたから5日は流れないよ」
5日。これでは間に合わない。食べ物なら2〜3週間食べなくても人は生き延びれるが、水は4~5日飲めなければ命を落としてしまう。私たちはサバイバル2日目で命の危機に晒されてしまった。

……

あとがき。

今回もナミネ視点です。

魚にもアニサキスはありますが、まあここでは干し魚なのでアニサキスの危険性は殆どないとして、鹿やイノシシの肉は怖いですね。加熱不足が原因で死に至ることもあるので。

世界のどこかでも紀元前村の蓮華町のような暮らしをしている人はいるのでしょうか。(ニュース見てないので分からないですが)

……

この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
純愛偏差値 未来編 一人称版 79話

《ナミネ》

ヨルクさんが、ひょんなことから誤ってステリンさんのキュート動画を保存したことから、セナ王女がもう反論し、私たちは落ち武者さんから勧められたフェアリー知恵袋を見た。
けれど、見れば見るほど、いやがる女性にとっては不利な気もしてきた。ミナクさんとカンザシさんが戻ったところで……。
「では、落ち武者さん、この中で誰がキュート動画を見ているのかフェアリーングかけてください」
私は落ち武者さんに真相を確かめるようお願いをした。落ち武者さんはこの場にいる全員にフェアリーングをかけた。
「じゃ、聞く。この中でキュート動画見てるヤツは手を上げろ!」
ふむふむ、アルフォンス王子、カラルリさん、ミナクさん、委員長、カンザシさん、ラハルさん、ミツメさん、ロォハさんが手を挙げた。
もう殆どじゃん。
あれ、ヨルクさんは手を挙げてない。
「ヨルクさんは手を挙げてませんなあ。誰の何を見ているのですか?」
「顔だけヨルク、あんた誰の何見てんだ」
「ナナクサガユさんと、カロナーラさん、ヨツキさんのグラドル動画」
ナナクサガユさんは、あの太った人だよね。カロナーラさんとヨツキさんを調べてみたら、そこそこ美人。そして巨乳。3人とも高校生か。
「顔だけヨルク、その動画見てどう感じてるんだよ」
この時、ヨルクさんが『何故私にばかり聞く』と思っていることなど誰も知らなかった。
「水着着た姿でプール泳いでたり、海辺走っているところ、寝転ぶところとか綺麗で興奮する。でも、動画だと物足りない。別に推しでもないし」
何かヨルクさんてよく分からない。私のこと好きっていつも言ってるのに、結局美人好きじゃん。
「じゃ、彼氏がキュート動画見ること反対なヤツは手を挙げろ」
えっと、セナ王女、アヤネさん、カナエさん、ロナさん、リリカさんか。
「キュート動画、グラドル動画見てるヤツは彼女がいやだと言ったらどうすんだ?」
「私はそういうのは束縛だと思うし、見続ける」
アルフォンス王子は話し合いもしないのか。
「彼女には見ないって言ってコッソリ見る」
カラルリさん、それいつかバレるよ。
「彼女には携帯のバグだと言って誤魔化す」
ミナクさんも、バレるよ。
「話し合います」
委員長ってやっぱり真面目だな。
「殴ります」
カンザシさんって何もかもめちゃくちゃ。
「僕も束縛はいやだし、お互いのプライベートには入り込まない関係でいたい」
ラハルさんらしい意見と言ったらそうだけど、以前交際していた彼女とはどうだったんだろう。
「話し合うしかないなあと思います」
ミツメさんも意外に真面目。
「一定の期間やめて、コッソリ再開する」
ロォハさんてそういう人だったんだ。
「私はやめるかな。ナミネのほうが大事だし」
だったら、何故見ている。
「じゃ、あんたら他に言いたいことあるか?」
「ハッキリ言ってミナクには裏切られたわ!ミナクはそういうの見てないと思ってた!それに今ここで白黒ハッキリさせたい!」
いきなり話題が逸れた。もうミナクさんの心は戻ってこないのに……。でも、私も同じ状況ならしがみつくと思う。
「セナ王女とは別れたので、これ以上話すことはありません」
あれだけ大々的な告白しておいて、別れる時は一方的だなんて、セナ王女が納得するはずないのに。
「なんで別れたいんだよ?理由言え!」
「セナ王女のこと女として見れなくなった。魅力感じないというか……。ミネスを見てはじめて、これが本当の恋だと気づいて、セナ王女とはこれ以上は交際出来なくなった」
女として見れない。女が1番言われたくないこと。私も同じこと言われたら新しい子恨むと思う。
「あんまりだわ……。ミナクのこと信じていたのに、こんな形で裏切られて……。ミネスが憎い!ミネスをめちゃくちゃにしてやりたい!」
やっぱりそうなってしまうのか。
「甘えセナ、あんた、お子ちゃまミネスに危害加えて幸せになれんのかよ!」
「なれない。でも、どうしたらいいか分からないの。愛を失うって耐えきれない……」
「あんたならいくらでもいるだろ」
「いるけど、遠い昔のような大恋愛がしたいの!」
何か、ややこしい展開になって来た。確かに、あの時の2人は誰が見ても羨むカップルだった。2人とも思いやりあったし。でも、現世ではそうではない。あの頃の2人はもうどこにもいない。
その時、ヨルクさんが膝の上に私を乗せて抱き締めた。私は手足をバタバタさせた。落ち武者さんはフェアリーングを解いた。
「顔だけヨルク、あんた何してんのさ」
「あ、ごめん。ボーッとしてた」
私はヨルクさんから降りて、運ばれてきた食事を食べはじめた。私はゴールドにグラタンを食べさせた。
「じゃ、今からステリン懲らしめる」
どうするのだろう。私は落ち武者さんの横に行った。落ち武者さんはステリンさんのフェアリーZ広場にアクセスした後、2つ目の投稿の画像をすり替えた。落ち武者さんはステリンさんにメールをした。
『ステリン、言いにくいんだけど、フェアリーZ広場の2番目の投稿、不味いんじゃないかな?』
即ステリンさんから返信が来た。
『え、嘘!めちゃくちゃショック!私、清純派でやってるのに……どうしよう』
『こればかりはどうしようもないと思うけど?』
その後、ステリンさんはフェアリーZ広場に鍵をかけた。これでステリンさんも自信なくしたかも。

この夜、私はヨルクさんとゴールドと一緒に寝た。石鹸と紅葉の香りに包まれた夜。とても幸せな夜であった。

その後、やはりセナ王女はミネスさんを目の敵とし、ミナクさんとの別れを認めることはなかった。アルフォンス王子は何度もカナエさんに復縁を迫るものの、もうカナエさんはナルホお兄様との新しい道を歩みはじめている。

そして、いよいよタルリヤさんの実家である紀元前村の蓮華町に行く日がやって来た。私たちは森の湖に行った時のような重装備で挑むことになっていた。私はサバイバル服に着替えると髪をポニーテールに結んだ。重装備とはいえ、いつ家に戻れるか分からないし、服も1つしか換えは持つことが出来ない。非常食も恐らく足りないだろう。向こうでも食事は出るが、食べれたものではない。遠い昔ではアランさんと皇太子様が何日も前の腐りかけた野菜たちを煮込んだご飯は受け付けなかった。恐らく、メンバーの何人かは向こうで出されるご飯は食べられないだろう。現代離れするため、精神的なケアも必要だ。

私たちは、タルリヤさんも含めナノハナ家で集合すると、4班に分けてヘリコプターで紀元前村まで移動した。やはり国境を超えるわけだから4~5時間は移動にかかった。
紀元前村の蓮華町に着くと、一度ヘリコプターはナノハナ家に戻した。

タルリヤさんから聞いてはいたが、本当に当時のままだった。家は、レンガで積み上げられた洞窟のようなところで、ところどころ空き家はあるが、とてもじゃないけど、現代の家とは思えない。女性はガーゼ布で作られたまるで下着のようなワンピースを着ていて、男性はステテコのようなものを着ていた。
ふとヨルクさんを見るとゲンナリしている。
「では、皆さん、説明します。
私たちは旅行に来たのではありません。この地はもはやサバイバルです。それでも来たのはタルリヤさんが本当に現代も遠い昔である古代と変わらぬ暮らしをしているかを確認するためです。
私たちは非常食を持ってきましたが、ここでも食事は出ます。しかし、何日も前の余り物の煮物です。
ここでは、女性は家事をし、男性は食糧を捕獲しに行く毎日です。市場では野菜などは売っていますが、殆ど傷んでいます。
果物はあの向こうに見える左の崖の上にあります。薬草は右の崖の上にあります。しかし、あの崖を登り、多くの男性が今でも転落して亡くなっています。
言うまでもなく、ここには洗濯機など存在しません。みんな川で洗濯をしています。着替えは毎日は出来ないでしょう。市場で売っている服は町の住民を見れば分かるでしょう。
寝所は適当に空き家を使いましょう。公衆浴場は存在しますが、ここから3km先です。無駄な体力を使うことはオススメ出来ないので、手持ちの拭くだけシートで身体を拭くか、川で手持ちの石鹸で洗ったほうが効率的でしょう。
感染症は今でもたまにあります。不織布マスクがなくなれば布マスクを使ってください。ここではケガをしても救助隊はいませんのでそのつもりでいてください。医師は存在します。
最初に言っておきますが、ここでの仲間割れは厳禁です!
では、タルリヤさん、どうして今や先進国の紀元前村が、このように古代の暮らしのままなのか説明をお願いします」
みんなを見るととても真剣な表情をしている。そして、サバイバル経験のない者は怯えている。もしものことがあれば、ヘリコプターを要請して妖精村に帰ってもらうしかない。ここは森の湖の時とは訳が違う。
「古代紀元前村は、どこも同じ暮らしをしていた。けれど、次第に時は流れ、次第に紀元前村は発展していった。でも、ここだけは、ずっと変わらなかった。町長が建築士を要請しても拒まれ、今でも町を変えることは出来ずにいる。その訳は、古代より少し先に身分制度が人によって作られてしまったからだ。当時、蓮華町に存在した皇室も今は都会に引っ越している。貴族はこことは比べ物にならないくらい豪華な生活をしている。一般市民だって普通の暮らしをしている。けれど、この町は気付けば村八分と呼ばれるようになっていた。最先端技術が進む中、ここだけ時間が止まっているんだ。学校なんてお金がなくて通えないし、そもそもここには職業そのものが存在していない。医師はいるけれど、感染症が起きた時は病院に患者は入り切らず多くの患者が外でワラのシートの上で苦しんでいる。そして、この蓮華町だけ恋愛感情を知る人間は殆どいなくて、合意で男女は交わっている。中には無理矢理する人もいる。2020年なのに、こんな暮らしに耐えきれず、僕は妖精村に引っ越したんだ」
時代の流れで、ここだけ差別を受けてしまったのか。けれど、この現実を皇帝陛下は完全に無視している。ここは誰が見ても酷い暮らしだ。村八分というより、日本村で言うところの部落だろうか。いや、それよりも酷い。何もかもが発展しているこの時代に古代の暮らしをしている町が存在しているだなんて、妖精村では考えられない。いや、妖精村も私が知らないだけで、こういった町が存在しているのかもしれない。
「そうでしたか。この町だけが差別を受けるようになってしまったのですね。この時代で学校も行けず職業もないと、まさに古代的な暮らしのループですね。タルリヤさんには妖精村で大学まで通って青春を謳歌してもらいたいと思います。では、次にかつてここに来たことのあるカナエさんの話を聞きましょう」
「カナエは、応援として遠い昔、この紀元前村に来ました。つまり、来るのは二度目ですが、暮らしが全く当時のままです。
服装に関してはカナエは着物、セレナールはドレスで来ましたが、動きやすさを重視するなら市場で売っているワンピースがちょうど良かったです。ですが、ここの暮らしは決して楽なものではありませんでした。カナエは薬草をエミリは果物を取りに行き、それを他の住民の人たちに配りました。返ってくるものは数日前の手料理でしたが、カナエたちは隣人と仲良くすることを重視したのです。人は1人では生きていけません。感染症が起きた時は、果物や薬草を分けた隣人たちも手伝ってくれました。カナエとしては、今回も果物や薬草は隣人の人に分け、隣人たちと仲良くしたいと思っています」
今着ているサバイバル服は軽くて動きやすい。防水にも長けているから川の中にもそのまま入ることが出来る。サバイバル服だけはなくしてはいけないと思う。けれど、古代にそのようなものはなかった。ここでは着るものも何着か必要になってくる。
果物や薬草を市場で売らず隣人に分け与えるのは正しいかもしれない。市場に出回れば、買えない人も出てきて諍いになりかねない。2020年現代も隣人との交流は必要だろう。
「皆さん、聞きましたか?カナエさんによると、この町は遠い昔と少しも変わっていないそうです。私も、取ってきた果物や薬草は市場で売るより隣人に分け与えたほうが効率がいいと思います。
ただ、今着ているサバイバル服は軽くて動きやすく、防水にも優れているので、絶対になくさないようにしてください。
それと、サバイバルとはいえ、向き不向きがあります。出来ないことを無理にしなくても構いません。果物や薬草を取りに行ける人は取りに行き、市場に買い出しに行く人、川で洗濯する人、食器の洗い物をする人、川で魚を取る人、山でキノコなどを取る人、それぞれがそれぞれに合ったことをしてください。
では、まず手始めに、ここに置かれたタルリヤさんのお家のご飯を残さず食べてください」
洗濯や洗い物は危険度が少ないだろう。果物や薬草も私やラルク、カナエさんが入れば十分だろう。けれど、市場にはまず新鮮な食べ物など置かれていないだろう。
「不味い!」
「うっ、無理だわ」
「このようなもの食べれるわけがない」
「臭いが既に無理です」
(以下略)
やはり、サバイバルに適していない人のほうが断然的に多い。えっと、完食できたのは、タルリヤさん以外だと、私とラルク、落ち武者さん、カナエさん、カラルリさん、カラン王子、ミナクさん、ナルホお兄様、ナヤセス殿、リリカさん、ナナミお姉様か。
かつて食べていたセレナールさんは現世では食べられず、サバイバルに強いセナ王女とアルフォンス王子も食べられないか。
「カラン王子は、どうやって食べ切れたのですか?」
「僕は小さい頃、母と共にこのような町の支援をしていました。母は言ってました。出された食事は町の人の精一杯のおもてなしだから食べるようにと」
人は地位や名誉、お金で決まるものではない。親が子を正しく導けば、その子は良き方向に育つ。カラン王子は次の国王と言っても過言ではない。
「聞きましたか、ヨルクさん。ここの食事はこの町の人にとっては欠かせないものなのですよ」
「何故、私のみに言う」
「本当に情けないわね。ヨルクもそうだけど、セレナールは一度ここに来ているのに食べられないし、セナ王女は育ちの悪さで食べれないなんて。クレナイ家に相応しくないわ」
うわー、リリカさん厳しい。ズームさんのためとはいえ、セレナールさんが少しでも変わろうとしないとラルクとは釣り合わない。もう昔とは違うんだ。
「では、今日は果物のある場所を見に行き、明日は市場に買い足しに行こうと思います。果物のある場所は皆さん行かれますか?」
みんな気になるのか、果物のある場所はタルリヤさんの案内の元、メンバー全員が向かいはじめた。

話には聞いていたが、とても険しい崖だ。未経験者はまず登れない。この崖をエミリさんはカギのみを使ってタルリヤさんを背負いながら登って行ったのか。
「先程も話したように、この崖を登り多くの男性が転落死しました。折り鶴は使ってもらっても構いませんが、怖い人は下で待っていてもらって構いません。写真を撮ってきますので」
「えー、行きたい!」
「うーん、ではラルクに背負ってもらってください」
やはり、これだけ急なほぼ直面の長い崖でも、その上が気になるのだろう。
その時、セナ王女が命綱もロープもなしでカギのみで崖を登りはじめた。
「今のセナ王女の登り方が、当時エミリさんが登っていた方法です。登り方は皆さんお得意な方法でどうぞ」
さて、私はお武家特殊ワイヤーで登ろう。
「ヨルクさんは登らないのですか?」
「……」
何故何も言わないのだろう。
「あ、では、お先に行ってます」
「待って!置いていかないで!」
まさか登れないのだろうか。ヨルクさんは優しい。でも、とても女々しい。
「仕方ないですね。しっかり捕まっていてください」
「うん、ごめん」
私はヨルクさんを背負うと特殊ワイヤーを気に巻き付け上に登った。私とラルク、落ち武者さんは登れない人のために、何度か登り下りした。

まるで、アダムとイブの果樹園だ。
「はい、ここはエミリさんとタルリヤさんが愛し合った場所です」
「あんた、なんで余計なこと言うのさ」
「ここに、多くの果物が存在しているのは、殆どの人が日常的に諦めているからです。だから、果物はそのまま残っています。崖を登り下り出来る人は、持って来た袋に果物を詰めてください」
ここで何人か何もせず座っている人がいる。まあ、初日だからいっか。
「あのさ、何もしてない人って、自力で崖も登ってないよね?楽してると思わないの?」
やはり指摘する者は指摘するか。アルフォンス王子こそ、昔の力量は持ち合わせていないのに。
「ラハルは何もしなくていいわ!」
ここで生まれる変な差別。リリカさんはどこまでもラハルさん推しなんだな。
「じゃあ、ラハル以外動いてくんない?」
カナエさんと別れたからアルフォンス王子はいつもより苛立っている。
「あ、写真を取るだけでも構いません。今日は下見ですので、果物見ているだけでも大丈夫です。ラハルさんはまたドラマの題材にでもしてください」
「ナミネ、監督みたい」
「えへへ」
ここは私の思い出の場所ではないけれど、かつてカラクリ家にいた人の大切な思い出の場所だから。一度来てみたかったんだよね。
えっと、ズームさんは地図を描いているのか。めちゃくちゃ細かっ!
「生理が来ちゃった」
「私も」
ミネスさんとセレナールさんが突然のハプニング。1日目でサバイバル服を汚すのは良くない。
「誰か、パンツ貸していただける方いますか?」
「あんた、それズレてるだろ」
その時、カナエさんが木の下にある大きな草をちぎった。
「この草は吸収性があります。一時的に使用してください。けれど、帰ったら持って来た布ナプキンに付け替えてください」
「分かった」
「私、ナプキン持って来なかった」
「セレナールってどれだけ人に迷惑かけたら気が済むのかしら?貧乏なくせにお嬢様気取りもいいところね」
やっぱり、不慣れな人がいるとセナ王女みたいに目の敵にする人も出てくる。
「あ、布ナプキンなら市場にもあるので明日買ってください。それと、夜は絶対に崖は登らないでください。夜は真っ暗になり気温もかなり下がります。どれだけ慣れていても夜の崖登りは危険ですのでしないでくださいね。
ナヤセス殿、どうですかな?」
「正直驚いたよ。古代のままの町が現代にもあるだなんて。目を疑った。でも、この果樹園はとても見事だと思う。当時の状態がそのまま残っているからなのか、無農薬で妖精村にはない特殊な成分も入っている。医者志望として来てよかった」
ナヤセス殿はここに来てから果物の成分を調べている。また月城総合病院に情報提供するのだろうか。ナヤセス殿は都会の病院からもオファーが来ているが、何もなかった頃、ハル院長の研究チームに入れてもらい、命をつなぎとめたことで、ナヤセス殿は将来の就職先は月城総合病院1本しか考えていないのである。
「それは良かったですな。薬草が生えている場所もここと似たようなところなので、興味があるならカナエさんに連れて行ってもらってください」
「薬草はカナエとナルホが取ってきますので、見学希望者は着いてきてください」
カナエさんとナルホお兄様はとにかく植物や薬草に詳しい。正直、交際して良かったのかもしれない。
「僕も行きたい」
「ロォハが行くなら私も行く」
「なあ、ズームも行かないか?」
「言われなくても行く!」
「でしたら、私も行きたいです」
ロォハさんにミネルナさん、ズームさん、ロォラさん、アヤネさん。薬草見学チームも随分集まった。
「では、市場を見た次の日を予定していますので、紙に名前を書いてカナエに渡してください。カナエとナルホが連れて行きます」
座っている人もいたけれど、果物は随分集まった。これを隣人に分けて隣人と仲良くなれればベストだ。
「では、日が暮れる前にタルリヤさんの家に戻りましょう」
私とラルクと落ち武者さんは果物を先に下ろした後、下りれないメンバーを下に下ろして行った。

タルリヤさんの家に着く頃には陽が傾いていた。
「あ、今後ですが、崖も登れなくて釣りも出来ない人は、お皿洗い、洗濯に回ってもらっていいですか?」
「いやよ、私、遠い昔も何もしてなかったから」
「私もいや!洗濯とか気持ち悪い」
セレナールさんとミネスさんは何もしない気でいるのだろうか。セナ王女だって今後は果物取りに行くというのに。
「私は構わないわ」
「僕とユメも大丈夫」
「私も別に構わないが」
エルナさんと、委員長、ユメさん、ロォラさん。少し少ないけど、頼むしかないか。
「ではお願いします。足りなければ、私とラルクも洗濯物をします」
ここで、おじいさんの修行が役に立つ。
「あのさ、ナミネとラルクには鹿とか捕まえてきて欲しいんだけど」
「この町には猟師がいますので、肉類なら市場で高値で買えます」
アルフォンス王子は何故1日目からチームワークを乱すのだろう。何だかいやだな。
「あ、では、この町の地図を配りますのでなくさないでください」
私はみんなに地図を配った。1日目はどうにか終わったけれど、この先が心配だ。大きくチームワークが乱れないといいのだが。
果物はリリカさんが管理しているため、無闇に食べられず、夕ご飯はみんな殆ど食べれなかった。
私とラルク、落ち武者さん、エルナさん、ヨルクさんは空き家に入った。

……

あとがき。

セルファではなく、珍しくナミネが今回はリーダー。

果たして、このサバイバルで、みんなは何を得られるのだろう。

……

この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
純愛偏差値 未来編 一人称版 78話

《ヨルク》

パーティーが終わると、私たちはユメさんの別荘のリビングに来たのだが、突然、武官が現れミネスさんに襲いかかった。けれど、誰も助けようとしない。正直、私もナミネとの幸せを壊した共犯者には情けをかけたくない。
「クゥン」
ゴールドがミネスさんを見ながら鳴いた。
「ゴールド、ミネスさんが好きなの?やっぱり家族だもんね」
ナミネは武官に百人一首を投げた。百人一首は猛スピードで武官の周りをグルグル回りはじめた。次にナミネは花札を投げ、武官を拘束した。私も花札は持っているが殆ど使わない。花札はつがいになっているのを投げるのだが、1枚目を投げて、2枚目を投げたら拘束。けれど、ナミネは慣れているから、いつも2枚同時に投げている。
「ミネス、この際だから言っておくね。個人的なワガママな思いで逆物質持ち込んで、僕とナミネの関係を引き裂いて何かメリットでもあったかな?僕はたくさん苦しんだ。君の顔は二度と見たくないくらいにね」
「ナルホ、ごめん!ちょっとしたことが、おおごとになると思ってなかった!必ず償う!」
「ナルホ、遅くなりましたがバレンタインのチョコです。カナエの手作りなのです」
「ありがとう、カナエ」
カナエさんがアルフォンス王子と別れられたことは良かったかもしれないけれど、ナルホさんとナミネの間には大きな亀裂が入ってしまった。
「ゴールド、今日は一緒にお風呂入ろうね。ラルクも一緒に入ろうよ」
「そうだな。クレナイ家はペット禁止だからいい記念になるだろうしな」
「じゃ、僕も入る」
何故、私が含まれていない。
「ねえ、落ち武者さん、どうしてナミネと一緒にお風呂入りたがるの?ナミネは私と入るから」
「あんたさ、少人数で入ってたら、みんなが入れないだろうが。1班と2班に分けて入るから、この用紙で確認しとけ!」
「ズーム、このドレスどうしたらいいんだ?」
「脱衣所に置いておいて。着替えは脱衣所のルームウェア着ていいわ」
ユメさんの別荘って何だか懐かしい。いつもセナ王女の別荘だったから。
「分かった」
「先にメイクだけ落としますね」
アヤネさんはコットンにクレンジングオイルを染み込ませ、ロォラさんのメイクを取ると、再びコットンに化粧水を染み込ませ、ロォラさんのメイクを拭き取った。最後に髪も元に戻した。
「じゃ、風呂行く」
「なあ、ズーム、裸で入るのか?」
「自分で考えろ!」
「入る時はバスタオルがあります」
1班にカンザシさんがいないだけでも、まだマシかな。

脱衣所に着くと、ナミネは堂々と脱ぎはじめた。ミネルナさんも、ロォラさんも普通に脱いでる。あんまり気にしないのだろうか。
「ねえ、ラルク。ヨルクさん、ミネルナさんのこと見てるよ」
「美人と混浴出来るから浮かれてんだろ」
何故、私を侮辱する。
「私、そんなピンポイントで見てないから!こじつけないで!」
「あんた、明らかミネルナのことガン見してただろ」
何故、私を悪者にする。
「行くよ、ゴールド!」
「あ、ナミネ、ちゃんとタオル巻いて!」
ナミネにタオルを巻かせるとナミネはゴールドとラルクとお風呂に向かって行った。
「ほら、ミネルナが脱いでるぞ」
「私は興味ない」
と言っても、ミネルナさんスタイルいいなあ。
「じゃ、行くぞ、エルナ」
「あ、待って!」
私は慌てて落ち武者さんを追った。

お風呂の中ではゴールドとナミネが泳いでいる。
「ねえ、ラルク。人魚の湖があるらしいね。でも、やっぱり、今のタルリヤさんの実家見に行くほうが先だよね」
「まあな。これだけの年数が経っているにも関わらず古代のまんまなんて考えにくいからな」
本当に古代の暮らしから少しも現代へと更新されていないのだろうか。そんなことって本当にあるのだろうか。妖精村では考えられない。
その時、カンザシさんが入って来てナミネのタオルを取ってしまった。ゴールドはカンザシさんの手に噛み付いた。
「カンザシさん!私に恨みでもあるのですか!」
私はナミネに再度タオルを巻いた。
「ナミネ、外の露天風呂行こう」
私はナミネを連れて、外に出た。まだ、冬だからお湯に浸からないと寒い。ナミネにあんたことするだなんて本当信じられない。私はナミネを抱き締めた。
「ナミネ、大丈夫?」
「私、ムカつきます」
「そうだよね。でも、こんなところで関わらないほうがいいよ」
万が一のことがあれば、私は耐えきれない。私はナミネの頬に手を当てた。
「あんたら何してんのさ」
「わっ!落ち武者さん、ビックリさせないでよ!」
私は咄嗟にナミネから離れた。
「カンザシがズームの背中に勾玉のアザがなくなっていることに気づいて焦ってる。2番目風呂では、甘えセナがミナクとお子ちゃまミネスの携帯割ったらしいぜ」
セナ王女、執念深い。ナミネはゴールドの身体を洗いはじめた。けれど、カンザシさんが暴れはじめたため、みんなはお風呂から出はじめた。
「ナミネ、私たちもそろそろ出よう」
私はゴールドの身体を流した。
「はい」
「念の為、結界かけて出るぞ!」
私はナミネの結界に入り、急いでお風呂から出た。

リビングに戻ると、セナ王女がミナクお兄様とミネスさんを責めていた。
その時、何かが鳴った。え、私の携帯?
『ヨルクさんが同級生のステリンさんのキュート動画を保存しました』
携帯が喋った。てか、私ステリンに興味ないし保存なんてしてない!けれど、このままではナミネに誤解されてしまう。
落ち武者さんは私の携帯を取り上げた。
「あんた、身近な女のいかがわしいの保存してどうすんのさ」
「違う!私、保存なんてしてない!」
誰が私をハメたのだろう。
ステリンは容姿端麗でクラスメイトの男の子からも人気の一軍女子だ。メールはそれなりにくるけど、私からは殆ど返していない。
「落ち武者さん、その動画見せてください!」
えっ、待って!声に出す間もなく、落ち武者さんは動画を再生した。

1つ目の動画は中年おじさんと、2つ目の動画はイケメン男優とだった。
どちらにしても、ステリンは『ダーメ』と言って、終了までひたすらじらしていた。それがステリン節なのである。

ステリンは、何も見せない、何も許さないことで、純粋キュート女優と呼ばれるようになり、一気に多くのファンがついた。
ファンはステリンの作品にコメントをしていた。
『純粋すぎる!』
『若いのに偉い!』
『純粋なステリンを応援する』
『どこまでも応援する』
『ずっと続けてほしい』
『自然な演技が魅力的』

妖精村では中学1年生からキュート女優をすることが許可されている。ステリンは綺麗系だけど、地味な女の子イジメていたりするし、私はあまり好きではない。それに、中学生だと幼いし、魅力も感じない。高校生くらいなら少しは魅力も感じただろうけど。
「ねえ、ラルク、ヨルクさん、こういうの見てるんだ。こういうのって流行ってるのかな?」
「まあ、露骨でなく、かつ純白守ってるところが男心くすぐるんだろうな」
「あの、皆さんはどう思います?」
何故そこで聞く。
「こんなの完全に浮気じゃない!同級生のキュート動画見るなんて絶対許せない!」
セナ王女はやっぱり、どれもこれも許せない派か。
「カナエはアルフォンス王子様と交際していた時なら即別れていたと思います」
「私は気にしないわ。ただの動画だし」
エルナって意外に寛大なんだ。
「私は少しいやです。比べられているみたいで」
アヤネさんは同級生との比較を気にするタイプか。
遠い昔は、妖精村ラブラブ雑誌1つしかなかったから、こういうややこしい問題は出てこなかったけど、現代はこういうのが原因で別れるカップルも多いらしい。現に遠い昔のセレナールさんだって、突然貴族の間で流行りだした映像を皇太子様が見たことから拗れはじめた。
「あんたこれ、メール開いた時点で保存される仕組みになってるだろうが。ステリンは表では清楚な一軍女子演じてるけど、裏ではパパ活してんだよ。地味にあんたのこと狙ってるし気をつけろよ。それから、ステリンの演出に憧れて何人かのクラスメイト女子がステリンにそそのかされ、体験の段階で第1を喪失してショックで登校拒否してたりもするからな」
ステリンはずる賢い。何も知らないクラスメイトにキュート女優の面接のことを誤魔化して教えたのだろう。ステリンみたいに清楚でいられると思い込んだクラスメイトが何人かステリンにハメられたわけか。
でも、これでナミネは私を誤解せずに済んだだろうか。
その時、カンザシさんとミナクお兄様がトイレに駆け込んだ。なんて単純な生き物なのだろう。
「なあ、ズーム。あの動画のどこがいけないんだ?兄貴なんかもっとハードル高いの見てるけど」
「ロォラ、嘘はよくないよね」
「ロォラ!見てるのが同級生のだから、いやがる子もいるって話してただろ!」
「うーん、私の元カレ、同級生を盗撮してたけどな」
何故それを許す。ロォラさんてイマイチ分からない。
「あ、これカンザシさんが持ってたDVDだ」
ナミネは勝手にカンザシさんのDVDを再生した。
……。
めちゃくちゃ気持ち悪い。こういうの絶対無理。
アルフォンス王子もカラルリさんもバッチリ見てる。
「ねえ、ラルク。何か女の子の清楚感ないよね」
「まあ、男性用に作られたわけだからな」
「気持ち悪い!」
私は思わず消してしまった。
「あのさ、いいところ何だから消すのやめてくれる?」
アルフォンス王子は再生した。
「アルフォンス王子様と別れてよかったのです」
「こんなの浮気だわ!彼女を裏切ってるじゃない!」
カナエさんはともかくとして、セナ王女はどこまでも許せない人なのか。
「とりあえず、古代に発行された妖精村ラブラブ雑誌は痴漢やイジワル防止に作られたんだ!動画も同じだ!理解出来ないヤツはフェアリー知恵袋に似たような悩みが投稿されているから、それでも参考にしてろ!」
そうか。現代はフェアリー知恵袋がある。それなら、ベストアンサーの回答が参考になるかもしれない。
「ラルク、フェアリー知恵袋見てみようよ!」
「ナミネが調べろよ」
「キーワードは?」
「彼氏 キュート動画とかじゃないか?」
ナミネはさっそく調べ始めた。私も調べようと思った頃にはナミネが検索結果を出していた。
「あー、いっぱい件数出てきたよ!」
「ナミネ、私にも見せて」
「はい」
私とナミネは1つ目の相談者の投稿を見た。

《相談者A

真剣な悩みです。
冷やかしとか積極はやめてください。

交際して4ヶ月の彼氏がいるのですが、私に隠れてキュート動画を見ているんです。正直、私は他の女の子のキュートを見ることが理解出来ないしめちゃくちゃいやです。

彼氏には何度もいやなことを伝えたのですが、その時は『もう見ない』と言っていたのに、少しするとまた見ていました。私としては裏切られた気持ちです。
再度、彼氏にいやなことを伝えたところ『鬱陶しい』と言われ、その後、携帯にロックをかけられてしまいました。

彼氏のことはまだ好きなので別れることは考えていません。
けれど、彼氏のキュート動画閲覧はいやでいやで仕方ありません。

どうしたらいいでしょうか。》
女の子って、これほどまでに彼氏のキュート動画閲覧をいやがるものなのか。だったら、世の中のカップルはどうしているのだろう。
えっと、この相談に対するベストアンサーは……。
《ベストアンサー

古代に発行された妖精村ラブラブ雑誌の進化版が現代のキュート動画です。リアリティがあるため、中には怪訝する女性も多いでしょうけれど、原点を遡ると痴漢やイジワル防止に作られたものなのです。

男性の脳内は、好きな人への愛情とは別に、美しい人を見た時にドーパミンとセロトニンが分泌されます。
男性は原始時代から、出来るだけ有能な遺伝子を残したいという本能が組み込まれているのです。それはまた、無意識な感情で本人でさえなかなか気づくことのない感情です。

言ってしまえば、彼氏さんがキュート動画を見るのも無意識な感情で止めることはほぼ不可能に近いですね。簡単に言うと、美しい絵画を見て美しいと感じるようなものなので、主さんが極度に気にすることはないと思いますが、気にしてしまうのが現代の女性の特徴かもしれません。

けれど、キュート動画を見るのは無意識の感情で何の悪気もないので、あなたがまだ交際を続けたいのなら、少し遠くから見守ってあげませんか?》
美しい人を見た時にドーパミンとセロトニンが出る。有能な遺伝子を残したい。
いわゆるこれが核心というものなのだろうか。
1つだけだと、何となく分からないから、もう1つ見てみよう。
私は他の相談投稿を見た。

《投稿者 匿名

私は高校2年生です。
交際して8ヶ月の彼氏がいるのですが、特定のキュートレディとキュートチャットしているんです。ただのチャットだけでなく、キュートレディに要望を答えてもらうために、チップ(お金)払ってるんです。
彼氏がキュートチャットに注ぎ込んだ額は250万円を超えています。
交際当初は、結婚資金を2人で貯めようと話していたのに、まさか彼氏が銀行から借金してまでキュートチャットをしているとは思わなくて驚きました。
課金しなくてもいやなのに、借金までする人と交際を続けていいのか不安になっています》
もうミナクお兄様レベルだな。時代ゆえ、求めれば求めるほどなくなるのはお金か……。
《ベストアンサー

人は、ハマりすぎると、どれだけお金を使ったかなんて考えなくなりますからねえ、。

課金をしていない状況なら話し合いもありだったかと思いますが、大金を課金してまで、あなたとの将来よりキュートチャットを選ぶなら、その彼とは別れることをオススメします。

高校生とまだ若いんですし、早く別れて、あなたの未来を大切に考えてくれる人と一緒になれるよう応援しています。》
確かに、パートナーとの未来を考えられないのなら、自ずと別れに繋がっただろう。この中にもキュートチャットをしている人いるのだろうか。それにしてもミナクお兄様、トイレに行ってから遅いな。何してるのだろう。

「なあ、ズームもキュート動画見るのか?」
「見るわけないだろ!あんな下品なの!」
「ズームさんは童貞ですか?」
「本当に人のプライベートに土足で踏み込んで来るんですね」
そういえば、カップル日記にそれっぽいこと書いてない人って分からないな。落ち武者さんは思いっきりエルナとしてたけど。人って見かけに寄らないから表の顔だけでは何も分からない。
「お兄ちゃんは童貞だよ。そっち関連のことほ全くノータッチ」
「あ、そうなんですか。ナヤセス殿もそうです」
「へえ、意外だね。彼女のひとりやふたりいるかと思ってた」
「孤児院から抜け出して、そこから色々大変だったからね。動画なんて存在さえ知らなかったよ」
何故、亀裂の入ったミネスさんとナミネが仲良くしている。女という生き物が私には理解し兼ねる。
「さて、皆さん、フェアリー知恵袋は見ましたか?1万人を超える人が彼氏のキュート動画閲覧をいやがってます。しかし、キュート動画閲覧は男にとって子孫を残すための動画でもあります。だとしたら、熟女版キュート動画を見れば皆さん気になりませんよね?」
何故そうなる。そこまで縛られたら何も見れないではないか。
「確かに熟女なら見てもいいって思えるかも」
セナ王女って、そういうタイプだったのか。
「私も熟女なら構いません」
アヤネさんまで……。
「では、落ち武者さん、この中で誰がキュート動画を見ているのかフェアリーングかけてください」
私が誤ってステリンの動画を保存してしまったとはいえ、事態は変な方向に向かいつつあった。

……

あとがき。

昨日、めちゃくちゃお腹痛くて小説書けなかったよ。
今日は二度寝してから書いてるけども。

何か、ヨルクの携帯から変な展開になってしまった。

……

この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
Copyright (C) 2009 雨の音を聴きながら, All right Resieved.
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