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日常のこととかオリジナル小説のこととか。
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ashita
Webサイト:
性別:
女性
職業:
地主(土地貸してます)
趣味:
漫画やアニメを見るのが好きです。最推しはフーディーニ ♡
自己紹介:
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ブログ、もう書かないと思ってました。

けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。

小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。

純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。

元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。

ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。

小説、ぼちぼちマイペースに書いてゆきます。

よろしくお願い致します。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

お知らせ。

イラストは現在「ナノハナ家の日常」に載せております。サイドバーにリンクあります。

また、「カラクリよろずや」にて無料のフリーイラスト素材配布もはじめました✩.*˚

フリーイラスト素材も増やしていく予定です(*'ᴗ'*)

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

模倣・無断転載などは、ご遠慮ください。

ブログの小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。

小説・純愛偏差値に関しましては、武家名・貴族名(程度による) / 及び、武官の階級 / 扇子・羽子板・花札・百人一首・紙飛行機などのアイテム使用方法の模倣の一切を禁じております。

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X @kigenzen1874

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〈資格履歴〉

2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
→漢方コーディネーター 合格
→薬膳調整師 合格

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〈資格証明バナー〉

鉛筆デッサンマスター®認定試験資格取得証明
絵画インストラクター資格資格認定証
宝石鑑定アドバイザー資格認定試験資格取得証明
鉱石セラピスト資格資格保持証明
茶道アドバイザー資格認定試験資格取得証明
お点前インストラクター資格資格認定証
着物マイスター®資格認定試験資格取得証明
着付け方インストラクター資格資格認定証
サイキックアドバイザー®資格資格証明
サイキックヒーラー資格資格保持証明
アンガーカウンセラー®資格資格保持証明
アンガーコントロール士資格資格認定証
漢方コーディネーター®資格認定試験資格保持証明
薬膳調整師®資格認定試験資格保持証明
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純愛偏差値 未来編 一人称版 67話

《ナミネ》

2020年1月1日。
今日は正月だ。
私は朝起きるなり、ズームさんのお母様のお節が食べたくてそのまま部屋を出ようとした。
「ナミネ、あけましておめでとう」
「あけましておめでとうございます、ヨルクさん」
「今日はお節食べた後はすぐに初詣だから朝から着物着ようね」
「はい」
私はルームウェアを脱ぎ捨てた。
「ナミネ、ここは落ち武者さんもいるから無闇に下着姿にならないで」
ヨルクさんは昨日の夜用意してくれていたのか、私に淡いオレンジ色のかすみ草の着物を着せた。帯は淡い水色。補色って使い方難しいけど、ワンポイントなどは合う時もあったりする。
そして、セミロングの私の髪をヨルクさんは上手にまとめて菜の花の髪飾りを付けた。
「ナミネ、外雪だからこのケープ上に着て」
着物用の白いケープ。ヨルクさん買ってくれたのだろうか。私は嬉しくてヨルクさんに抱き着いた。
そういえば、遠い遠い昔もヨルクさんと初詣行く時、雪が降っていて、その時は今みたいにケープとかなかったから上に薄いカーディガンを羽織っていたんだっけ。ヨルクさんはいつも番傘をさしてくれていた。
「あんたら新年早々イチャついてんな!今日は混むから早めにここ出るぞ!」
ヨルクさんも着物を着て、落ち武者さんとエルナさんもヨルクさんに着物を着せてもらった。エルナさん、紫似合うなあ。落ち武者さんは髪が銀色なだけにやっぱり白い着物だね。
ちなみに、昨日の晩からナクリお姉様は部屋で引きこもっている。初詣にも行かないらしい。ミドリお姉様はカナコさんたちが迎えに来るそうだ。

第4居間に行くとだいたいのメンバーが揃っていた。そして、見知らぬ女の子が1人いた。私は女の子に駆け寄った。女の子はボブヘアで青いニットセーターに白いミニスカートを履いていた。
「あの、どちら様でしょうか?」
女の子は振り向いた。
「へえ、君がミスコングランプリ。大したことないじゃん」
えっ、初対面でこの対応何?
「第6王女は恋愛依存体質。その隣にいる黒髪の男は女遊びしまくり。第5王子は浮気体質。その隣にいる黒髪ロングヘアの女は男に尽くしすぎ。銀髪の君は精神年齢が幼い。その隣にいる金髪の女は未練ありすぎ。緑の髪の君は趣味にのめり込みすぎ。第7王子は1番を掴めない。銀髪のロングヘアの女はワガママ」
何故この世にこれ程に似た人がいるのだろう。落ち武者さんの親戚だろうか。私は落ち武者さんを見た。
「あんた、僕に喧嘩売ってるわけ?」
「実際そうじゃん」
この人、落ち武者さんの何を知っているのだろう。
「他人の家来ていきなり失礼な態度取るあんたほうが子供だけどね?」
星空レストランで全く同じことしていた人がそれを言うのか。それにしてもこの女の子誰だろう。てか、さっきから、ミナクさん、この女の子ばかり見てる?よく見ると女の子はかなり丈の短いスカートにニットセーターは露出が高い。少し動くと下着が見えてしまいそう。
「あのどちら様でしょうか?」
私はもう一度聞いた。
「へえ、今日は初詣行くんだ。私も着物着たいな」
ダメだ。話が通じない。その時、カンザシさんが入って来た。女の子は真っ先にカンザシさんの元へ走った。
「カンザシ!会いたかった!」
「ミネス、元気だった?」
「うん、元気だよ」
カンザシさんの友達か。って、ミネスさんて人、カンザシさんに抱き着いてる!
「カンザシ、私との交際いつになりそう?」
「ミネスのことはずっと妹として見てきたから、それ以上には見えないよ」
幼なじみだろうか。それにしてもカンザシさんがこういう綺麗系な人を妹以上に見れないだなんて意外。何だかミナクさんのミネスさんに対する視線がまた問題を引き起こしそう。
あれ、ミナクさんの携帯新しくなってる。いつ契約したのだろう。
「ミネス!またそんなはしたない格好して!今すぐ選んでやる!」
「キモイ!近付かないで!」
ズームさんに対してキモイだなんて、この人……。
「あのズームさんは……!」
「へえ、お姉ちゃん彼氏出来たみたいだけど、ただの貧乏人じゃん」
え、ミネルナさんの妹さんと言うことはズームさんの妹さん!?何だか3人とも似てないな。
「私の彼氏悪く言うのやめてくれる?将来は医師になるのよ。あなたこそ、いつまでも叶わない恋追いかけて惨めね」
「お姉ちゃんこそ、偏差値は低い、常に赤点、ピアノも何も弾けない、社交界では友達いない。ブランケット家に相応しくないと思うな」
私はお節を早く食べたくて、ラルクの隣に座った。
「あなた、言ってくれたわね!」
ミネルナさん、コンプレックス感じてるんだ。
「はい、ストップ!お子ちゃまミネスも初詣行くのか?」
「行くよ!カンザシに会いに来たんだもん!」
「この人数だから4班に分けて行動する。お子ちゃまミネスは3班ね」
「分かった。あ、一応みんな連絡先教えといて」
みんなはミネスさんと連絡先交換をした。
「ミネスは何年生?」
「3年生だよ」
「じゃあ、私と同じだな。今度食事にでも行かないか?」
「別にいいけど」
セナ王女がいるのにどうして他の女誘うの?てか、ミナクさん、ミネスさんに明らか一目惚れしてるよね。
「ナミネ、お吸い物と赤飯持ってくるね」
「はい」
私はお節を開けて玉子巻きを食べた。美味しい。もっと食べよう。
「あんたさ、なんで手で食べてんのさ。ちゃんと取り皿に入れろ」
ヨルクさんがいないと思ってたら落ち武者さんが指摘するなんて。それにしても、セナ王女、明らか怒ってるよね。ミナクさん、ずっとミネスさんに話しかけているし。
「ねえ、ラルク。どう思う?」
「まあ一目惚れな感じじゃないか?」
「それアウトじゃん」
その時、ヨルクさんとカナエさんが赤飯とお吸い物を持って来た。
「ナミネ、好きなものお皿に入れてあげる」
ヨルクさんは数の子とかイクラとかカマボコなど色々取り皿に入れてくれた。
「ありがとうございますヨルクさん」
私は一気に食べた。
「美味しいです。もっとください」
「ナミネ、初詣の後は料亭行くんだから、これ以上食べるとお昼入らなくなるよ」
「分かりました」
それにしても、ミネスさんがカンザシさんを好きなら一緒にならないとカンザシさんは一生1人な気がする。逆玉に乗れるチャンスなのに。
「私も着物着たい!」
「ミネス、私が着付ける」
「ねえ、ミナクは私の彼氏なんだから、いちいち邪魔するようなことしないでくれないかしら」
「ミナクが私に話しかけてきてるんだけど」
ズームさんの妹さんなだけあって気が強いなあ。
「僕が着付けるよ。他にも着物着たい人いたら言って」
ミネスさんの他にはナヤセス殿、ロナさん、アヤネさん、ユメさん、委員長、ロォラさんをナルホお兄様が着付けることになった。
「人混むから武家オリジナルイヤホンマイク1人1つ持ってけ」
落ち武者さんはみんなにイヤホンマイクを渡した。武家のイヤホンマイクはかなり遠くまで話し声が届く。音質の改良もされたし、話しかければ声はみんなに聞こえるけど、分かれて行動するから、持っていたほうが、みんなといるみたいで楽しいかもしれない。
「あの、ミネスさんってこれまで付き合った人とかいるんですか?」
「いないよ。カンザシが振り向いてくれるのずっと待ってる。何世紀も前からずっと」
何だかその忍耐力はまるでヨルクさんみたい。ミネスさんって、カンザシさんのこと本気なんだ。
「カンザシさん、悪いことは言いません。ミネスさんと交際しないと将来絶対損します」
「ナミネさん、ミネスはカンザシには渡しません」
そうだった。ズームさんが、大切な妹をだらしないカンザシさんに預けるわけないか。ミネスさんはいくらでもいるけど、カンザシさんと長く交際してくれる人がいないんだよな。
「お兄ちゃん、私とカンザシの恋愛に口挟まないでよ!お姉ちゃんはその貧乏人と付き合ってるじゃん!」
「カンザシと違ってロォハさんは優秀なんだ!姉さんとは真剣に交際してる!兄さんも戻って来たしまた時計騎士目指してる。お前もちゃんと将来のこと考えろ!」
そういえば、ミネスさんてこれまでの前世はどんな職業して来たんだろう。
「あ、ズルエヌ復活したんだ」
何故、1番上の兄を名前で呼ぶところまで落ち武者さんに似ているのだろう。私は小声でラルクに話しかけた。
「ねえ、ラルク。ミナクさん、ずっとミネスさんのこと見てるよ」
「もう完全に惚れてるな」
「セナ王女はどうなるの?」
「いっときの感情か心変わりで決まるんじゃないか?」
その時、落ち武者さんからメールが来た。
『あんたら話丸聞こえ』
落ち武者さんって耳良かったっけ。
『あの、ミナクさんとセナ王女どう思います?』
『2人はもうダメだろ。お子ちゃまミネス見てる時点で甘えセナを女として見れてないんじゃないか?カップル日記見てみろよ』
うーん、1日のことで、そこまで断定出来るものなのだろうか。私はカップル日記を開いた。

『ミナクがお昼作ってくれた』
『ミナクとフェアバ』
『ミナクと添い寝』
『ミナクとFメモリイ♡』
あれ、Fメモリイ頻度かなり減ってなくない?そういうものなのだろうか。でも、まだ付き合って3ヶ月なのに。あれだけ大々的な告白で別れるとか私だったらいやだな。でも、一度カラルリさんと別れてるか。

『カナエにスコーンを作った』
『カナエにブラックダイヤモンドの指輪を買った』
何だかこの2人も別れそう。カナエさんの投稿が全然ない。

『ユメとフェアバでクリスマス限定のドリンク注文』
あ、2つ並べるとハートの形になってる。

『ロォハとバイクで海に行った』
ミネルナさんもカップル日記はじめたんだ。

『ナミネが手編みのマフラーをクリスマスプレゼントに用意してくれた。
物凄く嬉しいし、大切に使う。
ありがとう、ナミネ』
ヨルクさん、投稿してくれてたんだ。

「じゃ、初詣行く。リストのメンバーで行動しろ!」
私がカップル日記見てるうちに、ミネスさんたち着物に着替えてる。ロォラさんて着物着ると雰囲気変わるなあ。

紅葉神社に着くと物凄い人混みだった。この神社、普段は全然人いないし、そこまで大きな神社ではないのに、この町の人は正月になれば、ここに来る。遠い昔は元旦でも人なんか殆どいなかったのに、時代も変わったもんだ。
「ラルク、おみくじ引きに行こうよ」
「そうだな」
私がラルクとおみくじを引きに行こうとした時、ヨルクさんは私の手を掴んだ。
「ナミネ、私たちは1班で行動するから勝手にはぐれないで」
「はい」
私はヨルクさんを見つめた。少し近い前世ならみんな着物着ていたのに、この100年ですっかり変わってしまって、今では西洋の文化が入って来て日常的に着物を着ている人は殆どいない。
ヨルクさんの着物姿を見れるのも今では正月くらいになってしまった。
「ねえ、ラルク、このまま歩いていても全然進まないよね」
「そうだな。お昼、料亭行けないかもな」
困ったな。お腹も空いてきた。私はナヤセス殿によじ登った。あ、商店街のおじさん屋台開いてる。私はこっそりメンバーから離れ屋台に近付いた。
「おじさん、あけましておめでとうございます!」
「ナノハナ家とこのナミネか。大きくなったな。これ、おじさんからのサービスだよ」
「ありがとうございます!」
私はイカ焼きを持って、再びこっそり1班に戻った。イカ焼き。とってもいい香り。
「ナミネ、何食べてるの?」
「イカ焼きです。屋台のおじさんからもらいました」
「料亭で昼ご飯食べれなくなっても知らないからね」
ヨルクさんはすぐにガミガミ言う。まるで嫁をいびる小姑みたいだ。その時、カンザシさんからイヤホンマイク越しに声が飛んで来た。
『ナミネさん、どうしてもあのドラマの共演はしてもらえないでしょうか?』
みんなに聞こえてるのに、どうして終わった話をまた言うの?
『カンザシ、どのドラマ?』
『1000年の恋だよ、ミネス』
1000年の恋というのか。それにしても、いくらドラマとはいえラブシーンでヨルクさんを裏切るようなことは絶対出来ないし、何より、私は綺麗な身体でいたい。
『カンザシ、まだ配役は未定だよね。ナミネ以外の女優となら交渉してあげる』
あの時、カンザシさん、もう主役決まったような言い方だったけど、全く決まってなかったんだ。嘘ついていたわけか。
『ミネス、どうしてもナミネさんと共演したい。頼む、契約して欲しい』
どうしてカンザシさんはそこまで私に拘るのだろう。
『ナミネとだけはダメ。どうしてもナミネと共演したいなら実力で主役勝ち取って。聞くけど、カンザシはどうして彼氏持ちのナミネと関係持とうとするの?』
実力で主役になられても私はヒロインは演じない。
『ナミネさんのことが好きだから。それにナミネさんは僕の実の妹だ』
『実の妹でも、婚姻が法律で認められた以上はナミネとだけは絶対ダメ』
女の勘というものなのだろうか。ミネスさんは昔のカンザシさんと私の関係に薄々気付いている気がする。今のカンザシさんにとって私が本命ならカンザシさんのことを本気で想ってるミネスさんが認めるわけがない。
「なあ、カンザシ、あんた強気なナミネの処女奪ってどうする気だ?あんた正気か?」
何か癪に障る言い方だけど、ミスコングランプリも取ったし表向きでは清純派装わないと。
『ナミネさんには、これから結婚まで僕のことを好きになってもらえたらそれでいいと思っています。1000年の恋では少し痛いかもしれませんが、ナミネさんとの愛の絆が欲しいんです。それをバネに芸能活動頑張りたいんです』
もはや、ものの考え方が狂ってる。一方的な恋愛感情など成立しない。カンザシさんのは愛でも友情でもない。ただのエゴにすぎない。
「ハッキリ言います!私は芸能人ではありません!ドラマのシーンとはいえ、穢れるのはいやなんです!私は綺麗な身体のままでいたいんです!私の彼氏はヨルクさんです!カンザシさんを男として好きになることはこの先ないでしょう!だから、このようなドラマを私に押し付けないでください!私はヨルクさんと幸せになるんです!」
今のカンザシさんには何を言っても伝わらないだろう。それでも、私はヨルクさん以外の人に抱かれたくない。ヨルクさんとの幸せは何がなんでも私が守り抜く。現世ではカンザシさんに幸せを奪われたりなんかしない。
『ナミネさんはまだ子供です!今処女を喪失したほうがより魅力的になります!僕がナミネさんを女にします!』
やっぱり何一つ伝わらなかった。私はカンザシさんを無視した。
行列は少し進んだみたいで賽銭箱が見えてきた。
「ラルク、賽銭箱見えてきたよ。お金入れようよ!」
「そうだな」
私とラルクは賽銭箱に向けてお金を投げ入れ、扇子で鈴を鳴らした。
「ラルクに素敵なお嫁さんが見つかりますように」
「なんで僕のこと願うんだよ。それに普通は声に出さないからな」
「でも、ラルクに幸せになって欲しいから」
「恋だけが幸せじゃないだろ!」
けれど、ラルクにはいいお嫁さん見付けて幸せな結婚生活を送って欲しい。これまでセレナールさんに騙されてきた分。
うーん、おみくじはまだ遠いな。お守りも買いたいけどそれもまた遠い。私は人混みに埋もれていた。
その時、前の高校生くらいの女の子が振り向いた瞬間悲鳴をあげた。
「この人、この人にイジワルされた!」
女の子はヨルクさんを指さしている。
「あの、それっていつのことですか?」
「1年前、桜木町の廃墟が並ぶ通路を歩いていたら、いきなり後ろから口を塞がれ古民家に連れ込まれそこで、この人に犯されたわ!この顔一度見たら忘れない!私の人生を壊した人。絶対に許せない!」
桜木町に廃墟なんてあるんだ。けれど、どうしたらいいのだろう。ヨルクさんが連行されてしまったら、ヨルクさんが責め続けられ、ヨルクさんは無実の罪を認めてしまうかもしれない。
「あんた、その時着ていた服は今でもそのまま保管してあるのかよ?イジワルしたのは1人か?」
「ええ、念の為保管してるわ。そう、この人のみに犯されたわ!」
「じゃ、警察に連れて行くのは1人でいいよな?本当にあんたが犯人と言ってるのが犯人か?それともこっちか?」
落ち武者さん、カンザシさんを連れてきてくれたんだ。女の子はかなり驚いた表情をしている。
「そんな……双子だなんて知らなかった」
何故そうなる。けれど、この人にはヨルクさんかカンザシさんか選んでもらわないと。
「ミィナ、どっち?」
「えっと……」
落ち武者さんは書類を出した。
「警察に連れて行くからには冤罪なんてことはあっては困るからね?もう一度言うけど連れて行けるのは1人だ!このうちのどちらかなんておかしいからな!万が一、間違っていた場合、名誉毀損であんた訴える。訴えられたくなかったら、この書類にサインしろ!」
落ち武者さん強気に出た。確かに間違っていたなんてことになれば、侮辱罪が成立する。被害者であろうと、関係のない人をイジワル犯に仕立て上げることは許されない。
「そんな……。被害者は私なのにどうしてこんな仕打ち受けないといけないのよ!あんまりじゃない!2人とも連れて行くわ!」
「あんた馬鹿だな。2人連れて行けば、無罪だったほうは名誉毀損であんたを罪に問えるし、あんた下手したらレイプ被害者どころか関係ない人イジワル犯に仕立てあげた加害者だろうが!だから、警察に連れて行くなら1人選んで、今この書類にサインしろ!」
私は落ち武者さんの書類に目を通した。
『万が一、警察署に連れて行った人物がイジワル犯でなかった場合は、85万円の示談金を支払う』
ミィミさんはとても悩んでいる様子。
「ミィミ、せっかく犯人見付けたんだから、ここで逃したらミィミが余計に辛くなるよ。辛いけど当時のことよく思い出して、どちらかを警察に連れて行こう」
やはり、レイプ犯は逃したくないわけか。誰だってそうだろうけど、犯人が2人のどちらか分からない状態での決断は無計画であると私は思う。何より、この人が持っている証拠は当時犯行現場で着ていた服のみ。
「分かった。私もここで逃したくないし、ちゃんと訴えて前に進む!当時は黒髪で身長もそれなりに高くて、服は柄のトレーナーにダボダボのカーゴパンツを履いていた。こっちの人よ!」
これでミィミさんはカンザシさんを訴えられなくなったか。柄のトレーナーにカーゴパンツなんてヨルクさんは着ない。この人、勢いあまりの無計画すぎる。せめて、普段の服装とか、髪はいつ染めたのか聞けばいいのに。
「じゃ、顔だけヨルクを連れて行く。みんな今から、1班は紅葉町警察署行くから、初詣終わった班は先に桜木町の料亭行ってろ!」
私たち1班は、突然現れたミィミさんとその彼氏と共に紅葉町警察署に向かった。

紅葉町警察署に着くと、ミィミさんが事前に連絡していた両親がミィミさんが当時着ていた制服を持って来た。そして、警察はミィミさんに当時のことを詳しく聞いた後、その時に着ていた制服の指紋を調べた。
結果は当然のごとくヨルクさんのものとは一致しなかった。
「なあ、この指紋と照合してみろよ」
カンザシさんが普段持ち歩いているティッシュだろうか。警察はすぐにティッシュについている指紋とミィミさんの制服についている指紋を照合した。
結果は見事に一致した。
「ミィミ、あんたをイジワルしたのは顔だけヨルクじゃなくて、もう1人のほうだったんだよ!示談金はきっちり払ってもらう!」
「そんな……そんな……こんな仕打ちあまりに酷すぎる!あなたたちには人の心というものがないの?」
「は?間違えたのあんただろ!イジワル犯の顔もまともに覚えられないのかよ!」
その瞬間、ミィミさんはカッターナイフを取り出し、暴れはじめた。私はすかさず扇子を私のほうに向け、その弾みでミィミさんは私に突っ込んだ。ミィミさんのカッターナイフは私の腕を刺した。警察は傷害罪で現行犯逮捕し、私は婦人警察の手当を受けた。
「待って!身体が勝手に動いたの!私は被害者よ!もう1人のほうを連れて来て!」
ヨルクさんに害を及ぼす者は芽から摘み取ってあげないと。誰であれ、ヨルクさんを貶める人は私が許さない。どんな手を使ってでもヨルクさんとの幸せは誰にも壊させない。
「じゃ、後はカンザシの動機聞くだけだな」
ヨルクさんは無言で泣いていた。私はヨルクさんの手を握った。

……

あとがき。

新年早々からハードモードなみんな。
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純愛偏差値 未来編 一人称版 66話

《ヨルク》

私は女神の湖でダンゴロさんに神様呼び出しカードをもらった。ナミネのために使おうと思う。それにしても、ミナクお兄様もアルフォンス王子もカラルリさんもやたら女神に話しかけていて、セナ王女とカナエさんはかなり機嫌を損ねている。

あれ、ナヤセスさんは何をしているのだろう。えっ、女神の血液を抜いている?
「女神の血液はヨウセイ型と特殊な血液型で、どんな病気でも治すことが出来るよ。けれど、ここにいる女神だけの血液だけで全人類を治すことは出来ないからね。これ以上の女神の血液採取は認めないよ」
ダンゴロさんの言葉にナヤセスさんは咄嗟に女神から離れた。
ヨウセイ型。聞いたことがない。けれど、ヨウセイ型の血液があればどんな病でも治せるだなんて、遠い昔に知っていたらナミネの病を治したかった。

あ、ナルホさんがミドリさんを連れて戻ってきた。私は2人の元に駆け寄った。
「ナルホさん!」
ミドリさん、全然変わってない。
「久しぶりね、ヨルク」
「お久しぶりです、ミドリさん」
もう3年は経つのか。ここを出たら大学生の姿になるのかな。あれ、ナミネはどうしたのだろう。
「ナルホさん、ナミネはどうしてるの?」
「旧友と話してると思うよ」
「そっか、私も天界に行ってくるね」
その時、ダンゴロさんが近付いてきた。
「本当は逆物質の持ち帰りは禁じてるけど、今日だけ特別に3つまで持ち帰っていいよ」
「本当ですか?ありがとうございます!」
もし、ナミネとの想い出のものがあれば入手したい。
私はナミネを探すため天界に続く通路を通った。

天界は古民家が並んでいて、とても賑わっている。みんなが幸せな暮らしをしていることが伝わってくる。ナミネはどこにいるのだろう。
「久しぶりだな、ヨルク」
えっと、この人誰だろう。
「あの、どなたでしょうか?」
「僕も忘れられたもんだな。妖精村半ば頃の学友のキザクだよ」
ダメだ、やっぱり思い出せない。
「そ、そうなんだ。あ、ナミネどこにいるか分かる?」
「ナミネなら道端で泣いてたぞ」
「え、どうして?何かあったの?」
「さあな。ここを真っ直ぐ行ったらいるから行ってやれよ」
私は急に不安になり走った。ナミネ、いったい何があったのだろう。私が走っていると前からナミネが泣きながら歩いて来た。
「ナミネ、どうしたの?何があったの?」
ナミネは何も言わず私に抱き着いた。
「ヨルクさん、ごめんなさい」
ごめんて何が?
「ねえ、ナミネ……」
「私、もうヨルクさんを待たせません!」
旧友に昔のことを聞いたのだろうか。
「ナミネ、歩ける?3つまでならここにあるの持って帰れるみたいだから、市場で何か見よう?」
「はい」
私とナミネは手を繋ぎながら市場に向かった。

天界の市場は天使村の市場とは違ってとても穏やかだ。それにものも豊富。
「ナミネ、どれが欲しい?天界限定品もあるよ」
ナミネはとても落ち込んだ様子だ。こういう時、彼氏として何をしてあげたらいいのだろう。
ふと見るとナミネは透明のモルモット女神のぬいぐるみを持っていた。
「それにする?」
「はい」
天界なだけあって、全てが変わったものばかりだ。ん?全てを治す薬?説明書きを見ると、どんな病でも治せる薬らしい。ただし、使えるのは一度だけ。何かあった時のために買っておこう。
「ナミネ、他に欲しいのある?」
「これだけでいいです」
あと1つなら全てを治す薬をもう1つ買おう。私は、透明のモルモット女神のぬいぐるみと全てを治す薬2つを購入した。

再び女神の湖に戻るとセナ王女がミナクお兄様の携帯を真っ二つに割っていた。その時、ナミネが湖に走って行った。慌てて私も追いかけた。
「ナミザお姉様、また会いに来ます」
「ナミネ、幸せになるのよ。カンザシも」
ナミネとカンザシさんだけの姉。何だか信じ難いけど、私にも知らない歴史がたくさんあるのだろう。
「姉さん、僕、今は芸能人なんです」
「ああ、カンザシはよく駆け出しミュージシャンやっていたわね。あの頃は売れていなかったけど、貴族だったから、一生続けてたわね」
カンザシさんが貴族って以外。ワンルームのアパートに暮らしているイメージが強いかもしれない。
「ナミザさん、お久しぶりです」
「久しぶり、ズーム」
ズームさんとも知り合いなのだろうか。
「2人は覚えているか分からないけど、私たちの家の近くにズームは住んでいたのよ」
「そうでしたか。大昔は私とズームさんは幼なじみだったのですね」
人の縁というのは分からないものだ。ナミネとズームさんは昔のカンザシさんのコンサートで知り合ったものだと思っていたけれど、大昔は幼なじみという近い存在でもあったのか。
「ナミネ、よく聞いて。人生に運命なんてないの。全て人の意思で作り上げたものなのよ。悪いことをしたら何らかの形でその人に返ってくる。人を恨んではダメよ。ヨルクと幸せになって」
運命なんてない。どうしてそう言い切れるのだろう。私とナミネはずっと運命だと信じてきたのに。それともナミネと私の意思が繋がりをもたらしているのだろうか。
「もう誰も恨みません!私、ヨルクさんと幸せになります!」
ナミネ……。
その時、セナ王女がミナクお兄様の話しかけた女神に攻撃しようとしたがダンゴロさんが止めた。
「ここにいる女神は全員僕の契約彼女だ。手を出すことは許さない」
「セナ王女、少し世間話をしていただけです。どうかお許しください」
虚しくもミナクお兄様の真っ二つに割られた携帯は湖にプカプカ浮かんでいる。私はミナクお兄様の携帯を拾った。この端末代は払わなければならないけど、新しい携帯にデータ移行は出来るだろう。
「そろそろ時間だ!ここを出るぞ!」
もうそんな時間か。セナ王女とカナエさん、怒ったままだけど、連れて帰らないと。あれ、ナミネ何持っているのだろう。
「ナミネ、それ何?」
「ヨルクさんが天界にいた時に友達の家に置いていったものです」
どうして私の下着持って来てるの!
「ナミネ、それここに置いていって!3つまでしか持って帰れないから!」
「1人3つまでです!ルール違反ではありません」
そうか。1人3つか。それなら惜しいことをしてしまった。けれど、人間あまり欲を出しすぎるのもよくない。
「いいから置いていって!」
私はナミネからパンツを取り上げ、ダンゴロさんに渡した。
「天界が夜になる時間だよ。みんな帰らないとね」
天界には朝昼晩とあるのに、女神の湖はずっと明るいのか。
「エロじじい、最後に聞く!妖精村の象徴は姉さんなはずなのに、どうして姉さんは幸せになれないんだ?」
「そんな都市伝説どこで聞いたか分からないけど、妖精村の象徴はミナコだよ」
どういうことだ?妖精村の象徴はセレナールさんではなかったのか?ミナコさんだなんてはじめて聞いた。けれど、ダンゴロさんは神様だ。ダンゴロさんの言っていることのほうが正しいのかもしれない。
「そっか……姉さんじゃなかったんだ」
「まあ、妖精村以外では女神候補だったかもしれないけど、少なくとも僕からしたらセレナールは女神候補失格だね。ミナコのほうがずっと魅力的だから」
その基準はいったい何なのだろう。私には綺麗の基準がイマイチよく分からなかった。
「あの、女神の湖にはまた来れるんですよね?あと、あの市場は天界に暮らす人にとってはあまり必要のないものな気がするのですが」
「来ることは出来るよ。僕も女神もずっとここにいる。でも、天界の人は転生しているかもしれないね。あの市場は遥か昔の神様が死者が転生する時に持って行けるものを買えるために作られたんだよ。でも、今では、天界の人の娯楽になってるけどね。さあ、そろそろみんな帰るんだ」
私たちは走って女神の湖に繋がる天使の湖の時と同じ理屈の途切れた橋に向かった。ダンゴロさんが時間を止めてくれていたおかげで、みんなは無事に途切れた橋を渡り終えた。
あ、ナミネの脱ぎ捨てたコート!私は咄嗟にナミネを見た。するとナミネはちゃっかりコートを着ていた。

帰りの電車の中は、かなり気まずい空気で、セナ王女は機嫌を損ねたままだった。帰ったら、みんなにお蕎麦とナミネに月見うどんを作らないと。
「あの、今日は皆さんそれぞれのお家に帰って明日の予定も一旦なしにしませんか?ナミネもこんな状態ですし」
今は少しでもナミネを休ませてあげないといけないと思う。
「ねえ、ラルク。ヨルクさん、私のせいにしてるよ」
「まあ、ナミネと2人きりで過ごしたいんじゃない?」
え、ナミネもう大丈夫になったの?あれだけワンワン泣いていたのに。
「ナミネ、もう大丈夫なの?」
「はい」
そっか。良かった。
「ヨルク、携帯ショップに行って、新しい携帯買っておいてくれないか?」
「何言ってるんですか!ご自分でしてください」
私はミナクお兄様に女神の湖で拾った真っ二つに割れた携帯を渡した。
「あんたらさ、何があったんだよ」
何だか聞くまでもない気がする。
「ミナクがいきなり女神に綺麗だとか今度ランチしようとか言い出したのよ!目の前で浮気されて黙っていられないわ!」
ミナクお兄様、セナ王女がいるのに何故……。
「アルフォンス王子様は今すぐホテルに行こうって女神の手をひっぱってました」
アルフォンス王子が分からない。何故カナエさんがいるのに堂々と浮気しようとする。
「セナ王女、私はただ天界での道を聞いていただけです」
よくぬけぬけと嘘が言えるよね。
セナ王女はミナクお兄様を引っぱたいた。
「カラン、ミナクの新しい携帯はあなたが代わりに買いなさい。後からミナクの名義にすればいいわ!もちろんデータ移行込みで。データ移行直後の携帯を私に見せてちょうだい」
「分かりました」
「セナ王女、お待ちください。数々のセナ王女との想い出が入っておりますゆえ、データ移行は長くなりますので私の時間が空いている時に行きます」
人というのは嘘をついても、その嘘をいつまでもはつき続けられないものなのである。いつかは人にバレてしまう。嘘をつく人は嘘に嘘を上塗りするけれど、結局は知られてしまうのだ。墓場まで持って行ける嘘などこの世には存在しない。
「ヨルクさん、明日のお節は母が用意して、もうナノハナ家に届いてますので、それを皆さんで分けてください」
えっ、ミミリ先生わざわざ作ってくれたんだ。
「あ、すみません。有り難くいただきます」
「あ、ズーム、私ロォハと付き合うことになったの」
こないだ出会ったばかりなのに、もう交際だなんて、これが現代でいうところのスピード恋愛なのか!?
「そうですか。お幸せになってください」
「ミネルナさん、交際相手ってお金持ちなんですか?」
あれ、急にカンザシさんが焦りだした。
「ううん、一般家庭の人よ。でも、医師を目指してるの」
あれから結局、医師を目指すことにしたのか。月城総合病院も心強いだろうな。
「そうですか。でも、そんな恋愛長くは持たないと思います」
どうしてカンザシさんは否定的なのだろう。この時の私はカンザシさんとミネルナさんが互いに互いが知らないまま、かつて両想いだったことを知らなかった。
「とても相性がいいの。カンザシも早く彼女見つけて幸せになって」
ミネルナさん幸せそう。
「私も報告があるの。皇太子様から復縁迫られて、もう一度交際することになったわ」
そうだったのか。けれど、カラルリさんはどうなるのだろう。
「セナさん、ミナクと上手くいってないなら私ともう一度交際して欲しい」
同情は出来ないけど、何故こうも未練たらしいのだ。
「中絶薬盛ったカラルリとは絶対に復縁しないわ!残念だったわね。エミリにフラれて」
カンザシさんは突然タバコを吸いはじめた。何故急にタバコなのだろう。ミネルナさんとロォハさんの交際を聞いてから何だかおかしいような。ミネルナさんに片想いでもしていたのだろうか。だったら、どうしてナミネに過度に迫るのだろう。
「で、男尽くしのカナエと平凡アルフォンス、甘えセナとミナクは今後どうすんのさ?」
「カナエはアルフォンス王子様に裏切られて、もう信じることが出来ません」
「私はカナエを裏切ったりなどしていない。ただ、ホテルのレストランで天界のこと聞こうと思っていただけだ。カナエを失いたくない」
ホテルに誘うことがもう裏切りだと思う。カナエさんならいくらでもいるし、早いうちにアルフォンス王子とは別れたほうがいい気がする。
「私はミナク次第かしら。他の女と話さないなら考えてもいいわ」
もう拷問だな。身勝手に人の心は縛れないのに。
「落ち武者さんなんか、女神のまとっている布捲ってたわよ」
いらぬ情報を聞いた気がする。落ち武者さんて、あどけない顔して変態だったのか。
「僕、そんなことしてないけど?」
「ねえ、ラルクは何買ったの?」
「女神の湖カード。これで購入すれば20%キャッシュバックなんだよな」
「えー、そんなのあったんだ。私も欲しかった!ヨルクさんて気が利かない」
何故私のせいにする。そういうのがあれば便利かもしれないけど、浪費しない人なら普通にクリスタルカードで十分な気もする。
結局、セナ王女とミナクお兄様、カナエさんとアルフォンス王子は仲違いしたまま電車を降りてナノハナ家に向かった。

ナノハナ家に着くと、みんなお風呂に入り出した。私とカナエさんはお蕎麦を作りはじめた。
「私も手伝います」
「アヤネさん、お風呂で温まらなくていいんですか?」
「はい。まだわだかまり解けてませんし」
そっか。アヤネさんは遠い昔のカラルリさんとの浮気のことでみんなから白い目で見られていたんだっけ。
「そのうちみんなも理解してくれますよ」
結局、ニンジャ妖精さんもアパートに帰らずここに泊まるみたいだし、お風呂心配だな。その時、第1居間のほうから悲鳴が聞こえてきた。私は咄嗟に第1居間に走った。

第1居間の扉を開けると、ナクリさんが泣き崩れていた。
「嘘でしょ、ミドリ……」
まさか誰も死者が蘇るだなんて思わないだろう。
「ナクリ、私は一生ナクリを許さない。ナクリはピアニストになる資格なんかないよ。私がいなかった3年間どうだった?でもね、私、これから人生やり直すの。もちろんピアニストも目指す。それから、今後はカナコさんのグループに入れてもらうことになったから」
3年。ナノハナ家のみんなにとっては長くて苦痛な時間だった。でも、またミドリさんはこうやって戻って来れた。今度こそ幸せになって欲しい。
「ミドリ、許して……ただミドリが羨ましかった……死ぬなんて思ってなかった!」
「許さないよ。ただ、私からは何もしない。ナクリはナクリで幸せになればいいと思う。私は私で第2の人生送るから」
失われた3年間は戻らないが、ミドリさんは今、大学生となって二度目の人生を送ろうとしている。ミドリさんが戻ってきたことは今後のナクリさんの人生に何らかの支障をきたすかもしれない。それでも、ミドリさんいてこそのナノハナ家なのだ。
「ミドリお姉様……?」
振り向くとナミネが何も着ないで突っ立っていた。落ち武者さんやカンザシさんもいるし、私は慌ててナミネを抱きかかえ2階に走った。

2階の部屋に入ると私はナミネの身体を拭き、下着とルームウェアを着せるとナミネの髪を乾かした。
「ナミネ、今日は大晦日でみんないるんだから裸で家歩かないで」
「はい」
ナミネはいつも私に対しては簡易的な相づちしか打たない。ラルクにだったら突っ込むのに。そのナミネの態度がいつも私を不安にさせていた。
「ナミネ、私といても楽しくない?」
私はまた聞いてしまった。
「以前もその質問しましたよね。私たち交際してもう5ヶ月過ぎたんです!交際当初に比べ恋人らしくもなりました。私もヨルクさんも互いに愛し合っています。ヨルクさんが私に構ってくれるたび、私はヨルクさんの温かさに幸せを感じています。どうして疑うのですか?」
ナミネはそういうふうに思ってくれていたのか。言葉がなくても私といると幸せを感じてくれていたんだね。
「疑ってるわけじゃないよ。私といる時は口数少ないのに対してラルクとはいつまでも話してるから……でも、ナミネが私のこと好きでいてくれる気持ちが分かって安心したよ」
「ラルクは同い年ですし、ずっとクラスも同じで親友だからそれなりに話題もあるだけです!何も口数が少ないからと言って楽しくないわけではありません!ヨルクさんは恋人だから一緒にいて安心するんです!」
ナミネはとても真剣な表情をしている。不安になってしまった自分が情けなく感じてしまった。
「ナミネ、ごめんね。私は何も分かっていなかった。カナエさんに料理任せて出てきたから行かないと」
私が立ち上がろうとするとナミネは私に抱き着いた。ナミネの菜の花の香りが強くなる。私はナミネを強く抱き締めた。ナミネは何度も私のことを好きだと言った。
「あんたら何してんのさ。蕎麦出来たから早く来い!」
落ち武者さんが入って来て私は咄嗟にナミネから離れた。それでもナミネは私に抱き着いてきた。どうしたのだろう。いつものナミネと違う。天界でナミネを見付けてから様子がおかしい気がする。そんなナミネを落ち武者さんは抱きかかえた。
「ほら、行くぞ!」
私たちは第4居間に向かった。

第4居間では既にお蕎麦とナミネの月見うどんが並べられていた。
「すみません、カナエさん」
「いえ」
その時、テレビからナミネがミスコングランプリに選ばれた時の映像が流れた。ナミネは制服の上に赤いマントを羽織り、大きなトロフィーを持っていた。
感想を聞かれるとナミネはこう答えた。
『まだまだ未熟な私が、このようにグランプリに輝くことが出来たのも、心温かい皆々様の一つ一つの投票という愛情のおかげです。今回グランプリに輝けたことで、今後、更に精進することを決意しました。私の出演作品を見てくれている方々には日々感謝しています。春には写真集を出す予定なので、興味のある方は是非1度ご覧になってください。では、この辺で失礼します。皆様の今後の健闘を心よりお祈り申し上げます』
ナミネは一礼するととびきりの笑顔を見せた。
ナミネ、可愛すぎる。けれど、これでナミネはまた有名になってしまった。遠い存在になってしまわないか不安である。
ふと、ラハルさんのフェアリーZ広場を見るとミスコングランプリの時のナミネとのツーショットが投稿されていた。カンザシさんのフェアリーZ広場も同じだった。
「みんな、強気なナミネの今の映像欲しいならDVD持ってけ!」
私はすぐに手に取った。
「そういえば、セレナールはミスコンどうなったのよ」
セレナールさんも応募していたのだろうか。けれど、ナミネは応募は勝手に映画撮影した時の事務所がしていたそうだが。
「わ、私は応募してないわ」
「私、セレナールがミスコン応募用紙書いてるの見たわよ」
セナ王女、ミナクお兄様のことで機嫌悪いからセレナールさんに矛先が向いているのか。
「結局応募はしなかったのよ」
この時、本当は応募していたらしいが、ナミネがミスコングランプリに輝いてしまったことでセレナールさんが言い出せなかったことをみんなは知らなかったのである。

明日は初詣に行くから、カナエさんと机の片付けをした後、私はお風呂に入って部屋に戻った。

……

あとがき。

この時、めちゃくちゃ体調が悪くて、ところどころよく分からない内容で繋げてしまってる。

それにしても、もう大晦日。1話から書き始めた頃を思い出すと、もうこんなに進んだんだなって自分でもビックリ。

これからも、みんなが予定通りに過去を辿っていけますように。
純愛偏差値 未来編 一人称版 65話

《ナミネ》

カンザシさんから共演して欲しいと言われたドラマのパンフレットを見て、ふと思い出した。
その昔、舞台女優の演技中に名場面があり、観客席はファンの客で埋まっていた。しかし、それを違法と見なした当時の皇帝陛下は妖精村警察に舞台会場に張り付かせた。警察が見張る中、舞台女優はいつものように演じたが、あるシーンが近付くと観客席から、いくつもの叫び声がコダマした。舞台女優を純粋に応援する男性は逮捕されて欲しくなかったのだ。けれど、舞台女優は逮捕されると分かっていても演じてしまったのだ。その舞台女優は現行犯逮捕となった。
私は、何故それ式のことでその舞台女優の人生が奪われなければならなかったのか苛立たしく思った。現代だって、ドラマや映画でリアルな名場面を演じていたり、第3を喪失し撮影中に命を落としている女優だってそれなりにいる。無論、第3を喪失させた関係者は警察に捕まっているが。
私はこの制度自体がおかしいと感じている。女優にだってプロ意識がある。その作品で、そうしたいと感じたのなら、そうさせてあげるべきだと思う。何故法律は個人の自由を奪うのか、この時の私は理解が出来なかった。

大晦日になるとズームさんとミネルナさんが帰ってきた。ナノハナ家では正月をいつものメンバーで過ごすため、メンバーは既に集まっていた。ズームさんはみんなにお土産を渡すと私を客間に連れて行き、当時のミドリお姉様のことを調べた結果、ある真実が明らかになったと私にある映像を見せた。

映像は、ミドリお姉様が突然死した日のものだった。
ミドリお姉様が放課後、変える準備をしていた時、ナクリお姉様が理科室でガラの悪い同級生5人にお金を渡していた。
『少しだけミドリにイタズラしてくれないかしら』
『けど、姉なんだろ。流石に出来ないわ』
ナクリお姉様はカッターナイフをガラの悪い同級生1人に突き付けた。
『少しイタズラしてって言ってるの』
『わ、分かった。回して第1だけ喪失させればいいんだな』
話がつくと、ナクリお姉様は理科室を出た。
ミドリお姉様は、友達との下校中、5人のガラの悪い同級生5人と遭遇した。ミドリお姉様の友達はミドリお姉様に『助けを呼びに行くから時間を稼いで欲しい』と言って4人揃って逃げて行った。
そこへナクリお姉様が現れた。
『助けて、ナクリ』
『コンビニ行ってからまた来る』
ナクリお姉様は一旦その場を離れた。けれど、ものの数分だった。ミドリお姉様はガラの悪い同級生5人にイヤガラセされた。ナクリお姉様は少しイタズラして欲しいと言っていたのに、ガラの悪い同級生は興奮し、第2を破り、最後の人が第3を破った。
そうとも知らないナクリお姉様は現場に戻った時、ミドリお姉様は無惨な姿で亡くなっていた。怖くなったナクリお姉様はその場から逃げた。
そして、何事もなかったかのようにナノハナ家で普通に過ごしていた。その夜、ナノハナ家ではミドリお姉様のお通夜が行われた。
映像はそこで途切れていた。

本当の犯人はナクリお姉様だったなんて……。私は涙が止まらなかった。そして、涙が止まらないまま、私は第1居間に走った。

第1居間にはナノハお姉様もいたが、私はナクリお姉様にズームさんからもらった映像を見せた。
「私、絶対ナクリお姉様を許しません!今は普通に暮らせていても、時がそれを許さないでしょう!必ず報いの受ける時が来ます!」
私は泣きながらナクリお姉様に訴えた。
「待って!死ぬだなんて思ってなかった!私だってピアニスト目指してた!でも、ミドリのほうが才能があって私には才能がなかった。それが悔しくて、少しミドリに痛い目にあってもらおうと思っただけ!死ぬなんて本当に思ってなかった!許して!」
たかがピアニストという夢が叶わないからってミドリお姉様を亡き者にしただなんて本当に許せない!
「ナクリお姉様は人間ではありません!バケモノです!これはいつか公になってナクリお姉様の結婚生活が破綻するでしょう!」
悔しくて悔しくて人の命を奪ったナクリお姉様が穢らわしくて、私はナクリお姉様の脇腹を数回蹴った。
「ナクリお姉様、最低ね。これ、世間に公になったら、あなた、タダじゃ済まないよ」
「ナノハ、私は死なせるつもりはなかった!」
今この場でナクリお姉様を殺してしまいたい!けれど、こんなことをして許されるはずがない。仲の良い姉妹だと思っていたのに。そんなのは表面上で、ナクリお姉様はミドリお姉様への劣等感を抱え続けた挙句、ミドリお姉様を殺めてしまった。表と裏は違う。どんなに仲良しに見えても裏では人は何を考えているか分からない。私はミドリお姉様を亡き者にしたナクリお姉様を恨みながら扇子でナクリお姉様を強く吹き飛ばし、泣きながら第1居間を出た。

第4居間に戻ると、みんな既に支度をしていた。
今日は大晦日だというのに女神の湖に行く日なのだ。
「ナミネ、どうしたの?」
「何でもありません」
この日は、ズームさんがカンザシさんも行く必要があると判断し、ナヤセス殿、ナルホお兄様も行くことになった。
ヨルクさんは私に新しいコートを着せた。
「ありがとうございます、ヨルクさん」
ヨルクさんは、私はオレンジ系が似合っているからと、淡いオレンジのワンピースコートを買ってくれたのだ。

女神の湖に行く途中の電車の中では、カナエさんとアルフォンス王子が仲違いしたままだった。カナエさんは、昔のアルフォンス王子が見知らぬ女性とホテルに行ったことが堪えたらしい。
ミナクさんはアヤネさんを軽蔑しているし、セナ王女はカラルリさんを軽蔑していた。

女神の湖に着くとズームさんが時間を遅らせた。
気温はわりと温かく私はコートを脱ぎ捨てた。それにしても女神の湖なだけに、湖には数名の女神が水浴びをしている。女神はどの人も古代のような簡易的な布を身体に巻いていた。けれど、1人だけ貴族のようなドレスを着ている。
「ナミネさん、あの緑の髪の女神があなたとカンザシの実の姉ですよ」
私とカンザシさんの実のお姉様……?私とカンザシさんは緑の髪の女神に近付いた。
「あの、ナミネですが、私とカンザシさんのお姉様なのでしょうか?」
私は信じられないながらも話しかけた。
「久しぶりね。そうよ。私がナミネとカンザシの実の姉のナミザ。何世紀もあなたたちの実の姉だった。でもそれは、ここにいる間だけ。転生すれば他人になるわ」
「そうですか。ナミザお姉様は、どうして女神になったのですか?」
「女神になったのは妖精村に入ってからだけど、辛かったのよ。綺麗な容姿に生まれてこなかったことが。何度もあなたを羨みそして妬んだわ」
今の容姿と人間時代の容姿は違うのか。はじめて会うけれど、私とカンザシさんだけの姉なのか。
「どうして私とカンザシさんだけのお姉様なのですか?」
「遠い遠い大昔、あなたとカンザシは兄妹だった。あなたとカンザシはナノハナ家の父親が実の父親だけど、私はロメルカーター伯爵家の両親の娘だったわ」
父親違いの姉妹だったのか。その時、年配の男性が女神の湖に入って、女神たちを触りはじめた。この人誰だろう。
「おい、エロじじい!あんた誰だよ!」
「僕は妖精村の神様のダンゴロだけど?」
神様?この人が?
「神様って何なんだよ!ここにいる女神はあんたが支配してんのかよ!」
「神様だからその名の通り何でも出来るよ。妖精村を破壊することもね。ここにいる女神はみんな人間時代は貧しい娼婦だった。そんな暮らしを抜け出したい者をここに連れて来た。もちろん僕と交際前提でね。ここに来たばかりの女神はみんな純白だったよ。けれど、ミナコだけが未だに許してくれないんだよね」
ミナコさん……。もしかして、あのドレスを着た人だろうか。ダンゴロさんは湖から出て来た。そして、ヨルクさんにカードを渡した。
「ここに来た記念にあげる」
「あの、これは……」
「神様呼び出しカードだよ。僕を呼び出せば君の願いを聞く。けれど、聞ける願いは力量によるから聞けないのもあるけどね」
神様呼び出しカード!?私やラルクのほうが力量は上なのに、どうしてヨルクさんだけもらえるの?
ていうか、ここに来てからミナクさんもアルフォンス王子もカラルリさんも女神のことやたら見てる?何だかまた揉めそうでやだな。
ダンゴロさんはまた湖に入って1人の女神の布を外して抱き着いた。女神も人間界で貧しい暮らしをするより、ここで豊かな暮らしをしていたいのだろうか。
「エロじじい!なんでヨルクだけが、あんた呼び出せるカードもらえるんだよ!」
「まあそれはともかくとして、ナミネ。君が望むならミドリを人間界に連れて行っていいよ。人間界に行けば、本来の年齢に戻るけどね。既にナノハは恋人のズルエヌを人間界に連れて行ったよ」
えええええ!スルエヌさんってもしかしてズームさんのお兄様!?そんなことより、ミドリお姉様がもう一度人間界で生きることが出来るの?それなら何としてでもミドリお姉様を説得しなければ!
「あの、ミドリお姉様は今どこにいますか?」
「あの通路を通れば天界。転生してない死者が暮らしてる。そのどこかにいるよ」
「分かりました。ありがとうございます!」
私は天界に続く通路へと走った。

通路を抜けると賑わった街がそこには存在した。家は古民家風だけど、レストランやカフェ、市場、美容院などお店もしっかりある。ここが天界なのか。ミドリお姉様はどこにいるのだろう。
「ナミネ、ミドリお姉様は2ブロックの2-3にいるって」
「ナルホお兄様!」
私はナルホお兄様と2ブロックの2-3へ走った。

古民家に近付こうとしたら、ミドリお姉様が家から出て来て洗濯物を干していた。
「ミドリお姉様!」
「ナミネ、ナルホ。久しぶりだね。元気にしてた?」
あの頃から少しも変わらない優しい雰囲気。
「ミドリお姉様をあんな目にあわせたのはナクリお姉様だったんです!神様のダンゴロさんが、もう一度ミドリお姉様が人間界で暮らせるチャンスを与えてくれています!今すぐ人間界に行きましょう!」
私は何となくミドリお姉様が行かない気がして焦っていた。
「そっか。ナクリもピアニスト目指していたけど、いつも機嫌が悪そうだったな。でも、私はナクリを恨んでないよ。人間界かあ。懐かしいけど、今の暮らしとっても幸せだから戻りたくないな」
やっぱりミドリお姉様はここにい続けるつもりなのか。どうやって説得したらいいのだろう。
「ミドリお姉様が逃げたい気持ちは分かるけどさ。ピアニスト目指してたんだよね?今人間界に戻るチャンスを捨ててしまえば後悔すると思うよ」
「そうかもしれないねえ。でも、私は今がいいんだよ」
ミドリお姉様は十分に傷付いた。ナノハナ家には戻りたくないだろう。でも、今連れて帰らないとミドリお姉様はピアニストになれなくなってしまう!
「そんなのただのエゴです!傷つきたくないからずっと平和なところにいたいだけでしょう!でも、それで何か得られますか?いずれここにいる人は皆転生していきます!そんな中、今の暮らしにずっと逃げていたら、いずれ後悔するのはミドリお姉様です!人間界で幸せになろうと思えないのですか?あなたは現実に打ち勝つ心を捨てたのですか?」
私はここに留まって逃げ続けるミドリお姉様にもミドリお姉様を連れ戻せない自分にも苛立っていた。
「そうだね。でも、私は私だから。誰かと比べて生きたりせずマイペースにやっていきたいの」
「それが逃げだと言ってるんです!現実と向き合わないで何と向き合うんですか!ほら、ちゃんと現実見てください!これがあなたの最後の姿です!」
私はミドリお姉様に亡くなった時の写真を見せた。するとミドリお姉様は泣き崩れた。
「やめて!今でも怖いの!どうしてこんないやがらせするの!私だって夢を叶えたかった!でも、死んだ身でどうしろって言うの!」
「お言葉ですがミドリお姉様が死んでナノハナ家がどれだけ不幸になったか。私はあれから酷い悪夢を見るようになったし、あなたの死んだ姿見た時は冷静さを失いました。あなたがここにいるということは生きている人間にあなたの死を全て抱えさせるということです!こっちこそ、そんないやがらせするのやめてください!ほら、ちゃんと現実見てください!」
私はミドリお姉様の最後の写真をミドリお姉様に握らせた。死んだ人間の人生はそこで終わるけれど、残された者は、死んだ人の悲しみを背負って生きていかないといけない。まるで今のミドリお姉様は自殺者みたいだ。自殺したその家族も現実を受け入れられず立ち直れないほどの苦しみを抱きながら生きていかなければならない。言ってしまえば自殺というのは、家族にその後の人生も不幸も丸投げし擦り付ける行為だ。私はそんな無責任な人を許せない。どんなに辛くても苦しくても生きないと他者を深く傷付ける。時には家族の人生そのものを奪い取る。後追い自殺だってある。そんなの間違っている。
「お願い、そっとしといて!もう戻りたくないの!今でもあの時のこと苦しみ続けてる!ここにいたいの!」
本人が1番辛い。そんなの分かってる。でも、逃げて次に苦しむのはその家族だ。けれど、自分の人生は自分が責任を持って生きるべきだと思う。苦しみを家族に丸投げしてもその人は幸せにはなれない。私は自殺もミドリお姉様の生き方も100%悪いとは言わない。ただ、この世に生きたからには1%だけでも自分の人生に責任を持って欲しいのだ。無論、自殺者もミドリお姉様も十分に苦しんだ上での判断。それを他者がどうこう言っても仕方ない。それでも私はミドリお姉様が亡くなって自分を破壊し死んだように生きた。私とて十分に苦しんだのだ。
「ねえ、ミドリお姉様は本当にここにいることが1番いいのかな?絶対後悔しないと言い切れる?今人間界に戻ればもう一度ピアニストを目指せる。でも、ここにい続ければ、人間界で日々訓練している人にどんどん差をつけられてしまうよね。無理に戻ろうとは言わない。でも、このままで本当にいいのかな?ナクリお姉様をそのままにしていいのかな?夢を放棄してそれでいいのかな?絶対に後悔しないなら僕は何も言わないよ」
後悔するに決まってる。今、また夢を置い続ければ成功するかもしれない。でも、何もしないで、ずっとここにいれば、いつか何もしなかった自分を責めることになりうる。
「分からない。どうしたらいい?私、置いていかれたくない。もう一度ピアニストを目指したい……。ピアノが弾きたい……。でも、あの日のことが頭にこびりついてどうしたらいいか分からないの!」
「頭にこびりついているってことは、少なくとも許せてないってことだよね。ミドリお姉様は許したフリをし続けて自分を誤魔化してたんじゃないかな?許せないなら許せないと本人に堂々と言うべきだと僕は思うよ。ピアニストになりたいなら目指すべきなんじゃない?この先は自分で考えてくれるかな」
私もナクリお姉様含め、ミドリお姉様を殺めた人は許せない。けれど、ミドリお姉様本人が逃げたままだと、ナノハナ家は不幸の塊だ。不幸を家族に丸投げするのではなく、ちゃんと自分の人生自分で向き合って欲しい。
「分かった。もう一度だけピアニストを目指してみるよ」
ミドリお姉様……。
「そっか。じゃあ、友達に別れを告げて一緒に人間界に戻ろうか。ナミネ、僕はミドリお姉様を連れて行くからナミネは旧友から昔話でも聞くといいよ」
昔話か。確かに、忘れていた過去を聞くことが出来るかもしれない。
「分かりました。時間以内には戻ります」
ナルホお兄様はミドリお姉様を連れて行った。

私が天界をが歩いていると遥か昔の旧友だろう人が現れた。
「ナミネ?」
誰だろう、全く思い出せない。
「えっと、どちら様でしょうか?」
「学生時代のアルタよ。今もヨルクと付き合っているの?」
「ヨルクさんを知っているのですか?生きていたのはいつですか?ヨルクさんが私に渡したものとか覚えてますか?」
「天使村初期よ。ヨルクがナミネに何を渡していたかは分からないけど、2人が仲違いした日、ヨルクは紅葉橋でナミネを待っていると言ってナミネを何時間も待ち続けてた。でもナミネは現れなかった。その日は途中から雨が降って、それでもヨルクは18時から3時までナミネを待ち続けたわ」
そんな……。私はヨルクさんを紅葉橋に1人にしてしまっていたのか。
「その後どうなりましたか?」
「次の人、風邪で欠席したヨルクの家にナミネが行って仲直りしたわ」
私は涙が零れていた。
「どうして仲違いしたんですか?」
「ヨルクが学年のマドンナと仲良くしていたからよ。それに嫉妬したナミネはヨルクと別れると言い出してナミネの言葉を真に受けたヨルクは紅葉橋で待っているって花束を持ってナミネを待ち続けたのよ」
ヨルクさん、私が来ると思ってずっと待っていたんだ。それなのに、私行かなかっただなんて……。
「そうですか……あの、他に私を知っている人はここにいますか?」
「そうね、天使村初期の終わり頃の学友が2ブロック先にいるわ」
「ありがとうございます」
私は走り出した。
そして、かつての学友に声をかけた。
「あの、私を知ってますか?」
「かなり久しぶりね。ここで会えるとは思わなかった」
「私とヨルクさんの昔話が聞きたいです」
「そうね、ナミネとヨルクは誰が見ても羨むカップルだったわ。でも、2人が婚約した日、2人は仲違いしてナミネはヨルクと別れると言い出したの。ナミネは婚約したのにヨルクが相談で他の女性と会っていたことに嫉妬したのよね。ヨルクは時間を指定して紅葉橋で待っているとナミネに伝え花束を持ってナミネを待ち続けたけどナミネはなかなか現れなかったの。ヨルクが帰ろうとした時、ナミネが紅葉橋に来てヨルクに抱き着いて2人は無事に仲直りしたわ」
そして、その後も私は自分を知る人の元に次々に聞き込みに言ったのだ。みんな、ヨルクさんと私が仲違いした時は、必ずヨルクが時間指定して紅葉橋で待っていると言って花束を持って待っていたけど、嫉妬してすぐにヨルクさんを許せなかった私はヨルクさんを紅葉橋で何時間も待たせた後、紅葉橋に行きヨルクさんと仲直りしていたと言っていたのである。また、ヨルクさんとの結婚後は私はヨルクさんに近づく女性がいればすぐに嫉妬してヨルクに離婚届と共に別れ話を切り出して、その度にヨルクさんはナミネに話し合いを求め、数日後仲直りすると毎回ヨルクさんは菜の花とカスミソウの花束をナミネに渡していたと言っていたのだ。
そして、妖精村時代は天使村時代とは違って私は長い髪を2つに分け三つ編みにしていて、ヨルクとのデートをいつも楽しみにしていたけど、最後のデートの後、ヨルクさんは私に時間指定して紅葉橋で菜の花とカスミソウの花束と婚約指輪を持って私を待ち続けていたと言っていた。けれど、私は紅葉橋には行かず、ヨルクさんは何日も泣いたそうだ。
また、別のエピソードとしては、結婚後、レストランで学友と会っていたヨルクさんを私が見た時、学友がヨルクさんの手を握っていて私は問い詰めたがヨルクさんはそんな関係ではないと何度も否定したものの、私は酷くショックを受け他の男性と関係を持ってしまい、ヨルクさんは許したものの私はヨルクさんを責め続け心を病み入退院を繰り返していたらしい。私の入院中はヨルクさんは毎回私に会いに行き、菜の花とカスミソウの花束を病室に飾っていたそうだ。
そして、私がどれだけヨルクさんの浮気を疑いヨルクを責め続けてもヨルクさんは私を愛し1度も浮気しなかったと学友は私に話してくれた。
それから、ヨルクさんが現世での副委員長である当時の学友から一方的に口付けされていた時は私は泣きながらヨルクさんに別れると言い離婚届を突き付け2週間、社交界で出会った男のマンションに泊まり関係を持っていてヨルクさんが迎えに来て私は帰ったらしい。
学友によると私が落ち着いている時は、ヨルクさんの休日にはヨルクさんとのデートを楽しみ私は常にヨルクさんにくっついて嬉しそうに過ごしていたとも言っていた。ヨルクさんは家事と仕事を両立させながら私を養っていたらしい。私に子供が出来た時、私は酷いうつ病にかかりヨルクさんが家で出来る仕事を見つけ、私の看病をしながら仕事と家事、育児をしていたとか。
誰に聞いてもヨルクさんは生涯私だけを愛し私の入院中も私がヨルクさんに手をあげた時も私が浮気をした時もヨルクさんは私を責めずひたすら私だけを愛し続けていたと言っていたのである。
私は泣きながら天界を走った。

私は自分勝手にヨルクさんを傷付け続けていた。待たせ続けていた。泣かせ続けていた。いっぱい酷いことをしたのに、ヨルクさんと交際する資格なんかないのに、現代で私はヨルクさんを再び愛してしまった。こんな私だけどヨルクさんを手放したくない。
もう二度とヨルクさんを待たせない!
私は石に躓いて転んで泣き続けた。

……

あとがき。

昔の舞台も色々ありますね。

大昔のナミネ……。
純愛偏差値 未来編 一人称版 64話

《ヨルク》

昔のアヤネさんはミナクお兄様から別れを告げられた後、何度もミナクお兄様に許しをこうたが、ミナクお兄様はアヤネさんを無視した。
そして、アヤネさんの浮気が原因で、ミナクお兄様は髪を金髪に染め、黒いピアスをして、女遊びをするようになった。もう純粋だった頃のミナクお兄様はどこにもいなくなっていた。
彼女を作っては気に入らないことがあれば暴力をふるい、すぐに彼女を捨て、新しい彼女を作るの繰り返しだった。
一方、アヤネさんはミナクお兄様と別れてからもカラルリさんと会っていた。カラルリさんはアヤネさんがバイトを終わるまでレストランで待ってアヤネさんのアパートに行っていたのである。
『あの、私との結婚は考えていただけているのでしょうか?』
『もちろんだよ、アヤネ』
カラルリさんはアヤネさんに口付けをした。
ミナクお兄様が女遊びに明け暮れる中、アヤネさんはカラルリさんとの関係を続けていた。
『アヤネ、すまないが仕事が忙しくなってきて、しばらく会えそうにない』
『そうですか。私は気長に待っています』
アヤネさんはカラルリさんがセナ王女と婚約しているだなんて全く知らなかったのだ。
そして、間もなくカラルリさんとセナ王女の結婚式は行われた。
『新郎カラルリさん あなたはここにいるセナ王女を
病める時も 健やかなる時も
富める時も 貧しき時も
妻として愛し 敬い 慈しむ事を誓いますか?』
『私にとってセナさんはこの世に2つとない尊い存在で、どんなセナさんも愛し慈しみ生涯セナさんのみを愛することを誓います』
『新婦セナ王女 あなたはここにいるカラルリさんを
病める時も 健やかなる時も
富める時も 貧しき時も
夫として愛し 敬い 慈しむ事を誓いますか?』
『カラルリとは運命の絆で結ばれています。カラルリはどんな時も私を愛し支えてくれた。そんなカラルリを一生大切にすることを誓います』
2人は指輪交換をした。
ミナクお兄様とセナ王女が結婚式を挙げたことは妖精村新聞にも掲載された。
セナ王女とカラルリさんの婚姻を知ったアヤネさんは、二度とカラルリさんと会うことはないと思っていた。
しかし、カラルリさんは結婚して半年後、再びアヤネさんのアパートに来た。
『カラルリさん、結婚したんですね。すみませんが、もうここには来ないでください。不倫だなんて見つかれば私は支払う慰謝料もありません』
『アヤネ、大学のみんなはアヤネが孤児院育ちなことを知っているの?』
『いえ、知りません』
『私を拒んだら言いふらしちゃおうかな』
『やめてください、困ります!』
『万が一、慰謝料を請求されても私がアヤネの分も支払う。アヤネがいなきゃダメなんだ』
カラルリさんはアヤネさんを抱き締め、そのまま布団の中に連れ込んだ。
一方、キクリ家では。
『セナさん、今日もお疲れ様。ビーフシチュー作ったから』
『ありがとう、カラルリ』
セナ王女はカラルリさんに抱き着いた。
カラルリさんはアヤネさんとの不倫は続け、セナ王女にはいい夫を演じ続けた。
けれど、アヤネさんに彼氏が出来た時、アヤネさんは密かにアパートを移し、その後、カラルリさんと会うことはなかったのである。
映像はそこで途切れていた。

ミナクお兄様が女遊びをするようになったのは、アヤネさんの浮気が原因だったのか。全く知らなかった。アヤネさんも大人しそうに見えて、人って分からないものだな。
「そういうことか。セナ王女を騙して私の人生をめちゃくちゃにしたのはアヤネさんとカラルリさんだったのか。ハッキリ言って気分が悪い」
ミナクお兄様、めちゃくちゃ怒ってる。
「カラルリを信じていたのに。浮気されていたなんて全く知らなかった。こんなの許せない!」
セナ王女も、はじめて知る真実に混乱した。
「ごめんなさい、ミナクさん。ずっと謝ろうと思っていたのですが、何世紀も経ってしまいました。本当に申し訳なく思っています」
「申し訳なく?何が申し訳なくなんですか?申し訳なく思ってないからズームさんに恋してるんですよね!でも、この映像見てください!私はズームさんと交際していました!」
そうか。ナミネが何の力もない時にミナクお兄様に嫁いだ時のものだったのか。ナミネはアヤネさんにズームさんとの交際映像を送った。
「そ、そうですか。私とズームさんはただの友達ですので」
「そうですか。友達ならどんなアヤネさんでも受け入れてくれますよね?」
ナミネはアヤネさんに何かを大量に飲ませた。
数分後、アヤネさんが立ち上がろうとしたら、アヤネさんはトイレまで間に合わず下してしまった。ナミネはその様子をすかさず撮影していた。
「では、ズームさんに送りますかな」
「やめてください!慰謝料ならいくらでもお支払い致します!」
「金で解決する問題ですか!お母様に言いつけて皇帝陛下に掛け合ってもらいます!」
「どうか許してください」
アヤネさんはお腹を下しながら、ナミネに土下座した。こんな時、彼氏として私はどうすればいいのだろう。
「今、ズームさんにアヤネさんのキュートな映像を送りました!」
アヤネさんは嗚咽をあげながら泣いた。しかし、ナミネの怒りはここで収まらなかった。ナミネはアヤネさんの服を脱がし、汚れたパンツをアルフォンス王子の頭に被せた。
「アヤネ!お前何やってるのか分かってるのか!お父様に言いつけて罰してやる!」
「どうか、許してください」
アヤネさんは、ただただ謝った。アルフォンス王子は王室に紙飛行機を飛ばした後、お風呂へ行った。
「アヤネがお兄様を誘惑してセナさんを陥れるような人だとは思いませんでした!カナエは見損ないました」
「アヤネが……アヤネがミナクを裏切っていなければ私はミナクからDVなんて受けなかった!絶対に許せない!」
カナエさんもユメさんもアヤネさんを批難している。ナミネは、ナミネはどこに行ったのだろう。探すと机の下で眠っていた。私はナミネを机の下から出すとナミネを抱きかかえた。
その時、テレビからニュースが流れた。
『これまでは兄妹又は姉弟の婚姻は認めていませんでしたが、来年の2月から認められるようになりました。これでもう血縁者の禁断の恋はなくなりますね。兄妹、姉弟が今後、堂々と婚姻して幸せになってくれることを妖精村は願っています』
その瞬間、私の中で物凄い不安の種がグルグル回った。けれど、今はナミネを布団に寝かせなければ。私はナミネを抱きかかえ、2階へ上がった。

ナミネの部屋に入ると、私は布団にナミネを寝かせた。
ナミネ、疲れてたんだね。アヤネさん通してのミナクお兄様からのDV辛かったね。助けてあげられなくてごめんね。
ふと机を見るとラッピングしてあるプレゼントがあった。私はメッセージカードを開いた。

『ヨルクさんへ

メリークリスマス!
上手く編めてないけど、クリスマスプレゼントです。

ナミネ』

ナミネ……。
私は早速、プレゼント袋を開けた。すると、黒い手編みのマフラーが入っていた。とこほどころ穴が空いているが、ナミネが私のために編んでくれたかと思うと凄く凄く嬉しくて私は泣いた。
カップル日記に載せよう。
カップル日記を開くとナミネの投稿があった。

『トイレの中まで入って来たストーカーヨルクさん』
とても複雑な気持ちだが、それよりもナミネが私に手編みのマフラーを用意してくれたことが嬉しくて私もカップル日記に投稿をした。

『ナミネが手編みのマフラーをクリスマスプレゼントに用意してくれた。
物凄く嬉しいし、大切に使う。
ありがとう、ナミネ』
ナミネ、お疲れ様。
ゆっくり休んでね。

翌日になると、アヤネさんの件は保留になりみんな家に帰って行った。けれど、カナエさんの機嫌はまだ直らないのかカナエさんはキクリ家に戻って行った。そして、みんなの矛先はまたセレナールさんへと向いていったのである。
また、タルリヤさんは役場に生活保護の申請をしに行ったらしい。

「顔だけヨルク、飯」
えっ、落ち武者さん帰ってなかったの?
「ねえ、どうしていつも家に帰らないの?ナミネとの時間、邪魔されたくないんだけど!」
どうしていつも付きまとってくるのだろう。正直迷惑だ。
「あんたらは幼なじみ同士で家行き来してるのに僕だけ仲間外れなわけ?」
「そうじゃないけど、いくら何でもここまで付きまとわれるのはいや」
勝手にナミネの部屋で寝られるのもいやだし、いい加減普通の暮らしがしたい。
「おはようございます」
ナミネが起きてきた。朝ご飯作らないと。
「ナミネ、今朝ご飯作ってくるからね」
「はい」
私は部屋を出て階段を下りてキッチンに向かった。

キッチンにはカナエさんがいた。
「カナエさん、キクリ家に戻ってたんじゃなかったんですか?」
「キクリ食堂での仕事を終えたので、こっちに来ました」
「そうだったんですね」
アルフォンス王子のところには行かないのだろうか。私は3人分のお粥を作りはじめた。
「カナエはもうアルフォンス王子様を信じることが出来ません」
昔のアルフォンス王子の行動でカナエさんも不安になったのだろうか。
「でも、カナエさんはアルフォンス王子のことが好きなんですよね?」
「カナエが好きなのは遥か昔、カナエに優しくしてくれたアルフォンス王子です。今はすっかり変わってしまいました」
確か、遠い昔はみんなが助け合ってアルフォンス王子もセナ王女も純粋だったとナミネが言っていたな。
「すぐに答えを出す必要はないと思います。しばらく距離を置いてみてはどうでしょう」
「そうするしかありませんね」
「では、私は朝食を持って行きます」
天使の湖でのことはカナエさんはかなりショックを受けているようだ。私は作ったお粥を持って2階に上がった。

ナミネの部屋に入るとニンジャ妖精さんがいた。
「ナミネさん、結婚してください」
そうか。兄妹でも結婚出来るようになるんだっけ。
「カンザシさん、勝手に入って来ないでください。兄妹では結婚出来ませんし、私はヨルクさんと結婚します」
ナミネはまだ法律が改正されることを知らないんだ。
「兄妹で結婚出来るよう法律が改正されるんです。絶対ナミネさんを幸せにします」
カンザシさんは無理矢理ナミネを私から奪おうとするつもりなのか。けれど、そうはさせない。
「カンザシ、あんた紙切れ1枚で強気なナミネを縛るつもりか。幸せにする?ふざけんな!天使村で強気なナミネから顔だけヨルク奪ったのあんただ!あんたが毒殺したんだ!」
「そんな昔のこと知りません!今は今です!僕はナミネさんと結婚したいんです!」
その瞬間、ナミネがカンザシさんを引っぱたいた。
「いつも一方的で自分のことしか考えられないんですね!ヨルクさんを毒殺し、私とヨルクさんを雇った不良に無理矢理別れさせ、私、カンザシさんが憎くて仕方ありません!」
「どうして分かってくれないんですか!ナミネさんってワガママですね!自分さえ良ければそれでいいんですか!」
なんて強引な人なんだ。こんな人には絶対ナミネを渡せない。
「やめてくれないか!頼むからナミネに近付かないで欲しい!」
ナヤセスさん、来ていたのか。
「お願いです。ナミネさんを僕にください!」
「話にならないな!」
ナヤセスさんは無理矢理カンザシさんを部屋から出した。私は咄嗟にカンザシさんがナミネと婚姻しないようメールでキクスケさんにお願いをした。
「ナミネ、朝食だよ」
私はお粥を机に置いた。
「ありがとうございます、ヨルクさん」
ナミネは嬉しそうにお粥を食べた。ナミネの笑顔を見る瞬間はとても幸せを感じる。
「ナミネ、クリスマスプレゼントだよ」
私は昨日の夜押し入れの中で見付けた天使村の市場の星型のサファイアの石を渡した。
「わあ、これあの後現代まで眠っていたんですね!ヨルクさん、大切にします」
ナミネは箱に星型のサファイアの石を入れた。大切なものを入れておく箱だろうか。はじめて見る。
「ナミネ、今日はカフェに行こうか」
昨日は天使村のレストランで散々だったからナミネにはゆっくり美味しいものを食べて欲しい。
「はい、ではラルクとユメさん、委員長、カラン王子も誘います」
出来ればナミネと2人で行きたかったのだけど、落ち武者さんがいるからどの道無理か。でも、当たり障りないメンバーならまあいっか。あ、カナエさんも来ているから一応誘っておこう。

桜木町の新しく出来たカフェに来たけれど、何故かカンザシさんもいる。話によると、ナルホさんが突き放しすぎるのも良くないとナヤセスさんを説得したらしく、この日はナミネを心配したナヤセスさんも着いてきた。
「ナミネ、どれにする?」
ここのカフェ、まるで……。
「何だか、昨日行ったレストランの料理みたいですね」
本当、昨日のレストランの料理みたいにキャラクターが浮かび上がっている。それでも、クオリティは昨日のレストランのほうが高かったような気もする。
「何だか、セナさんいないと気が楽だわ」
確かに、セナ王女がいると変に仕切られて場の空気が重たくなる。
「あ、カンザシさん、今朝は突き放してしまってすみません。ちょっと結婚とか言われて混乱したんです」
「僕こそごめんなさい。ナミネさんと一緒になりたい気持ちに急かされていました」
けれど、これって結局はナミネとの交際と結婚を望んでいるわけだよな。兄妹での結婚が出来るようになったのはとても不安である。
「カンザシさんのことは極力支えます。妹として。でも、結婚は出来ません。それと、兄妹での結婚が法律で認められた以上は、あくまで普通の兄妹としてしか接することは出来ません。ヨルクさんを不安にさせたくないんです」
ナミネは私との交際を選んでくれている。今のところカンザシさんとの婚姻は考えていない。安心してもいいのだろうか。けれど、この付きまとう不安はなんだろう。
「分かりました。ナミネさんのことはあくまで妹として接します」
「はい!あ、カンザシさんもミツメさんもドラマ出演決まったんですね」
ミツメさんは確かオーディション受かったんだっけ。
「はい、オーディションを受けたら偶然受かりました」
ナミネの前だから嘘をつくしかないのだろうか。ズームさんからは、ナミネに付きまとわないようドラマ撮影のスケジュール入れたと聞いているけれど。
「そうなんですね!頑張ってください」
「ナミネ、飛べない翼の続編映画、またラハルさんと出るの?」
「続編というか、姉妹策です。忘れられた翼で、歴史を変えられた2人の女性が妊娠して一方の記憶が戻った瞬間にパニックになり、譲渡で死産にしてしまう、セレナールさんとエミリさんがモデルになった内容です。セレナールさんは私、皇太子様はラハルさん、エミリさんはクノイチ妖精さんのヒトツメさん、アランさんはシュリさん、タルリヤさんはロクメさんが演じることになりました。飛べない翼は書籍化もしていますし、その流れで忘れられた翼も世に広めようということになったそうです」
姉妹策か。似たような内容ではあるが、飛べない翼がヒットしたからなあ。けれど、忘れられた翼は配役も多く大がかりになりそう。
「そっか。飛べない翼、書籍化されて良かったね。忘れられた翼もヒットするといいね」
ヒョンなところからナミネが突然芸能活動をしはじめた気がする。それに、今思い出したが、ナミネは2019年中学生部門のミスコングランプリに輝いたんだった。だんだんナミネが遠くなるようで時折寂しくも感じる。
「これ、強気なナミネのミスコングランプリの時の写真だ。欲しいヤツは持ってけ」
真っ先にカンザシさんが手に取った。ミツメさんもカラン王子もラルクもナヤセスさんも。私も手に取った。ほんのり化粧してマントを羽織ってトロフィー持ってるナミネ可愛すぎる。確か、この時、ナミネが優勝会見行ったんだっけ。色々ありすぎてリアルタイムでは見れなかったから、落ち武者さんから録画もらおう。
「私、クジラのクリームシチューにします」
「うん、一緒に食べようね」
「ユメ、この前食べられなかったタコのカレーライスにしよう」
「そうね」
カナエさんやカラン王子も海系のメニューにしている。よく見ると、壁に昨日行ったレストランのような写真がある。説明書きを見ると、天使村時代にあったレストランを妖精村半ば頃再現され、それを現代でも再現したのか。何だか歴史って尊い。
「あのね、ラルク。昨日、レストランでヨルクさんトイレの中まで入ってきたの」
何故、今それを言う。セナ王女たちがいなくて良かった。
「もう変質者だな」
「間違って入ったの!それに後ろ向いてたでしょ!」
どうして私を覗きみたいな言い方するの!
「でもね、あの後ヨルクさん……」
咄嗟に私はナミネの口を塞いだ。
「んーんー!」
「ナミネ、変なこと言わないで」
私はナミネの口から手を離した。
「あ、カナエさん、アルフォンス王子はどうしたんですか?」
何故、呼ばなかった人のことを聞く。
「カナエはもうアルフォンス王子様のこと信じられません!」
「何かあったんですか?」
「昔のアルフォンス王子様は綺麗な天使を口説いていました」
でもあれは、綺麗と言うより派手なような。
「でも、あの時代には恋愛感情がなかったそうです。子孫を残すことが使命みたいな」
本当にそうだろうか。私は天使村時代もずっとナミネのこと愛していたし、何より、カンザシさんがナミネをピンポイントで狙っていたのが何よりの証拠だ。あの時代に恋愛感情はあったと私は位置付けてしまう。
「好き合って交際したのに綺麗な人がいれば、その人と子孫を残したがるだなんて獣みたいでカナエはいやです!」
カナエさんってこんなに嫉妬深かったっけ。エミリさんも、あの後カラルリさんを許したのに。
「ラルクはどう思う?」
何故ラルクに聞く。
「まあ、ミナクお兄様がいかがわしいサイト見てるようなもんなんじゃないのか?」
「じゃあ、浮気じゃないね!カナエさん大丈夫ですよ。あの時代って原始時代みたいなもんですし」
原始時代って。それは少し違うだろう。現代だって彼女いても結局学年のマドンナ的存在に憧れている光景よく見かけるし。
「カナエは何度も許そうとしました。けれど、どうしても許せないのです!」
「うーん、難しいですね。でも、カラルリさんがテンネさんにコメントするようなものではないでしょうか」
それはそれで何かと問題ではないだろうか。
「あんな水着姿で歌手気取りなんてカナエには理解出来ません!それにチューリップ妖精さんて、写真会は水着の上からならお触りOKですよね。そんなの浮気なのです。ナミネはどうなのですか?」
「私は、2人でいる時に携帯ばかり見ていたらいやですが、ヨルクさんは私に隠れていかがわしいサイト見ていますので」
何故誤解を招く言い方をする。まるで私がフェアリーチューバーに入れ込んでいるみたいではないか。
「ナミネ、やめて!私、フェアリーチューバーなんて見てないし推しもいないから!」
「ラルク、ヨルクさん、メアラスさんの画像いっぱい保存してるのに推しいないんだって」
メアラスさんはプロの女優じゃない。それに私はドラマが面白いから見ているだけだ。
「どうしてそんな言い方するの!私、メアラスさんのドラマ好きだから見てるだけなの!」
「どんな画像だよ」
ナミネはラルクに携帯を見せた。
「人気女優みたいだしチューリップ妖精さんに比べたらジャンル違うんじゃないか?」
「同じだよ。だって、天使の湖で例えるなら両方推しじゃん」
ナミネは私がメアラスさんのドラマ見るのがいやなのだろうか。
「言い出したらキリがないわよ。現代は現代。天使の湖は水浴び中の天使にアルフォンス王子が声かけたからカナエは悩んでいるのよ」
あ、エルナいたんだ。落ち武者さんが誘ったのか。
「うーん、何だか分からなくなりました」
「あの後、アルフォンス王子は声かけた人とホテルに入っていきました。カナエは理解出来ません!」
そうだったのか。いくら昔のアルフォンス王子とはいえ、目の前でそんな場面見たら彼女としては複雑な気持ちになるか。
「あの、ナミネさん、このドラマのヒロイン演じていただけませんか?主役は僕なので」
カンザシさんはナミネにチラシを渡した。えっ、これって、本当に女優目指している人が出るようなドラマ……。
「すみません、こういうのは出来ません」
かなり昔から女優はドラマの中でリアルに本番をする人が多く、中には女優魂を見せるためにドラマで処女を喪失する人もいる。更には最後まで女優であったことを伝えるためにドラマの中で第3を喪失し、亡くなる女優もいた。現代もドラマで若くして亡くなる女優がいる。
カンザシさんはドラマを口実にナミネを抱くつもりだ。油断出来ない。
「こういうのやめてくれないか?ナミネはヨルクと交際してるんだ。ドラマとはいえ、ナミネが穢れる姿は見たくない」
ナヤセスさんかなり怒っている。正直私も苛立たしい。カンザシさんはどんな手を使ってでもナミネを自分のものにしようとしている。私はカンザシさんを信じられなくなった。

……

あとがき。

カンザシを放っておけないナミネ。
けれど、カンザシはナミネをヨルクから奪い取ろうとしている。

カナエもアルフォンスと仲違いしてしまったし。

現代編は色々忙しい。
純愛偏差値 未来編 一人称版 63話

《ナミネ》

「はあー、スッキリしたあ。広いトイレですなあ」
えっ、どうしてヨルクさんがいるの!?一応後ろ向いてるけど。ヨルクさんは過保護だけれど、ここまで来ると、何だかもうストーカー。私は手を洗うと逃げるようにトイレを出ようとしたが、ヨルクさんに手を掴まれた。な、何?
「ナミネ、私といる時、楽しくない?」
どうして今そんなことを聞くの?私たち付き合ってもう5ヶ月過ぎたんだよ。
「た、楽しいです!ヨルクさんと趣味の話したり、一緒にいることそのものが楽しいです!どうしてそんなこと聞くんですか?」
「そっか、分かった」
何、この暗い雰囲気。
「わ、私、トイレ出ます」
「待って!」
え、何なの?
ヨルクさんは後ろから私を抱き締めた。そういえば、私、天使の湖に下着脱ぎ捨てたままだったんだ。ヨルクさんの紅葉の香りが強くなる。私はヨルクさんのことで頭がいっぱいになった。
私から離れるとヨルクさんは、私の手を握ったまま無言でトイレを出た。

テーブルに戻ったけれど、気まずい。
「強気なナミネ、あんた髪乱れてる。顔だけヨルク、腰パンになってる。ここレストランだ!弁えろ!」
落ち武者さんに指摘された私は咄嗟に髪を括り直した。ヨルクさんのせいなのに、どうして私まで怒られなきゃいけないの。私は恥ずかしくて俯いた。
「ナミネ、クジラのビーフシチュー可愛いね。分けてあげる」
ヨルクさんは何もなかったかのように料理の写真を撮った。ビーフシチューの上にクジラが浮かび上がっている。私も珍しくて写真に撮った。けれど、トイレの時は、あんなに縋るような態度だったのに、どうして今は普通でいられるのだろう。
「ラルク、食べあいっこしましょうよ」
「セレナール先輩、ストーカーはやめてください」
ラルクはセレナールさんのことを完全に拒否していた。
「セレナールさんて諦め悪いよね」
「ナミネ、今のイジメ兄さんに言いつけてやる!」
セレナールさんは私を目の敵にした。
「ラルク、獣がほざいてるね」
「欲情したメスゴリラだな」
私は思わず笑ってしまった。その瞬間、セレナールさんは水をテーブル全体にかけた。私と、ラルク、落ち武者さんはお皿を持って避けたが、他のメンバーの料理は水浸しになった。
「あーあ、メスゴリラさんやっちゃったね」
アルフォンス王子はカナエさんのこともあってか、セレナールさんを殴り付けた。
「何人の料理に水かけてんの?人の迷惑考えないのかよ!」
アルフォンス王子はセレナールさんを殴り続けた。
「ご、ごめんなさい。許して……」
落ち武者さんは扇子でアルフォンス王子を吹き飛ばした。セレナールさんは大声で泣きはじめた。
「セレナール、何がそんなに気に入らないのよ」
エミリさんはセレナールさんを追いつめる。
「これじゃあ食べられないわ。セレナールって気に入らないことがあればすぐにみんなに迷惑かけるのね」
セナ王女もせっかくの料理を台無しにされてかなり怒っている様子。
「あの、私とラルクと落ち武者さんの料理は無事なので、みんなで分けますか?」
「では、そうします」
「ユメ、そうしよっか」
「そうね」
「はい、僕もそれでいいです」
アヤネさんとユメさん、委員長、カラン王子は分けることに賛成したけど、他のメンバーは機嫌を損ね、注文し直した。オマケにセナ王女はセレナールさんに水をかけた。
セレナールさんはひたすら大泣きしていた。
私とヨルクさんの料理はアヤネさんに分け、落ち武者さんの料理はユメさんと委員長に分け、ラルクの料理はカラン王子に分けた。
はあ、せっかくシェフが一生懸命作ったのに、セレナールさんのせいで一口も食べない料理がいくつもあるよ。この店には申し訳ない気持ちだ。
しかし、セナ王女たちが料理を注文し直したところ、お店側はこちらの落ち度と見なし、注文拒否をした。セナ王女は王女である証を見せたもののお店側の意思は変わらなかった。
「セナ王女、ここはラルクから分けてもらいましょう。少しでも食べておかないと帰りが辛くなります」
「分かったわ」
ミナクさんの説得でセナ王女とミナクさんはラルクから分けてもらった。
「カナエは濡れた料理で構いません」
「私もカラルリと分けるわ」
カナエさんとエミリさん、カラルリさんも仕方なしに水浸しの料理を食べることになったが、アルフォンス王子だけが、納得せずセレナールさんを責め続けた。
「セレナール!水浸しになった料理は全部お前が食べろ!」
「分かったわ」
セレナールさんが水をかけたのは変わらないし、正直同情は出来なかった。けれど、何か引っかかる。セレナールさんが変わってしまったのは、紀元前村から戻ってきてからだ。
皇室にいる時までは誰よりも純粋な人だった。エミリさんも、カナエさんも。
タルリヤさんが元凶だとしか思えない。

落ち武者さんが支払いを終えた後、みんなは不機嫌そうにレストランを出た。
「じゃ、帰る」
みんなは、天使の湖へと向かいはじめた。
市場を通ると可愛らしいアクセサリーがいっぱいある。買いたいけど買えないのが残念。それにしても、古代でもこのように現代でも通用するような商品が手がけられているんだな。古代のハイテクさが伝わってくる。
天使の湖に通じる通路を通ろうとした時、伝説初級武官が現れた。えっ、60人はいる。
「セレナールをここから出すわけにはいかない」
セレナールさんが目的か。
落ち武者さん以外は咄嗟にセレナールさんから離れた。私もヨルクさんを庇いながらセレナールさんから離れた。
「みんな置き去りにしないで!助けて!」
正直置いて行きたい。でも、置いて行くとまた現代が変わってしまいかねない。
私は百人一首を全て投げた。しかし、百人一首が伝説初級武官の回りを回る前に伝説初級武官は百人一首を剣で切り、百人一首は全て地面に落ちた。
嘘でしょ。この時代の伝説初級武官強い。
「伝説武官は古代ほど任務が多かったから現代より強いんだ」
そんな……。いったいどうしたらいいの。
「強気なナミネはエルナと顔だけヨルクを天使の湖まで連れて行け!」
「はい!」
私はヨルクさんとエルナさん、ユメさん、委員長を連れて天使の湖の通路を通った。

天使の湖までは追ってこられない。ヨルクさんを安全な場所に連れてきたのだから戻らなければ。
「ヨルクさん、待っていてください」
「えっ、ナミネ行くの?どうして?ナミネ、ここにいて!」
ヨルクさんは私の手を掴んだ。
「ヨルクさん、全員でここを出なければなりません。私は必ず戻ります!」
私はヨルクさんに掴まれた手を振りほどいた。
「ナミネ、行かないで!!」
泣き出すヨルクさんをよそに私は天使村の町へ戻って行った。

「ラルク、どう?」
「ダメだ。何度百人一首投げてもすぐに落とされてしまう。これだと1人も拘束出来ない。それだけでなく、この時代の時計騎士によって時間進められて、後30分しかない!」
私たちはギリギリのところまで来ている。運が悪ければ、ここに取り残されてしまうかもしれない。私は伝説最上級武官の資格持っているのに伝説初級武官に適わないなんて。それほど現代に比べたら古代は武官を動かす頻度が高く毎日の任務で強くなっているのだろうか。
「みんな、拘束は考えるな!コイツらが怯んだうちにみんなで逃げるぞ!」
「はい、全力を尽くします!」
と行っても、この状況でどうすればいいのか分からない。その時、セナ王女が短剣1つで次々で伝説初級武官を気絶させて行った。後に続かないと!私とラルクとミナクさんは羽子板で伝説初級武官を叩いて気絶させていった。エミリさんは麻痺薬を塗った矢で、伝説初級武官を動けなくさせた。これで全員か。
「みんな、あと8分しかない!天使の湖まで走れ!」
私たちは天使の湖へ繋がる通路を抜けた。

天使の湖ではヨルクさんが泣きながら私の脱ぎ捨てた服を持っていた。あれ、カナエさんまでいたの?とにかく今は、あの途切れた橋まで行かないと!
「ヨルクさん、もう時間がありません!あの途切れた橋まで走りましょう!」
みんなは通って来た途切れた橋に向かって全力疾走した。
しかし、天使の湖を出て橋の近くまで来たところでセレナールさんが倒れた。
「きゃっ!みんな置いていかないで!」
「本当に面倒な女だな」
みんなが走る中、ラルクは吐き捨てた。セレナールさんのことは落ち武者さんが背負った。
残り12秒のところで、みんなは途切れた橋を渡り切った。
「寒っ!」
そうか、今真冬だったんだ。
「ナミネ、パンツ履いて」
「はい」
私がパンツを履いている間にヨルクさんは私に冬用のワンピースとコートを着せた。みんなも服を着ている。って、セレナールさんだけ着てない?
「姉さん、あんた服どうしたんだよ」
「忘れてきたわ」
その時、この寒さとレストランでみんなの水浸しになった料理を1人で食べたせいかセレナールさんはお腹をくだした。
「臭いな。この女迷惑ばかりかけて、今後はメンバーから抜けて欲しい」
カナエさんと仲直り出来ていないアルフォンス王子はセレナールさんを攻撃した。
「とにかく、寒いから早く電車に乗るぞ!」
私たちは天使の湖駅で切符を買い、駅員さんに判子を押してもらうと電車に乗った。

電車の中は温かい。
そうだ。気になることは今答えを知っておこう。私はスピーカーホンにしてタルリヤさんに電話をかけた。
『はい』
「あ、タルリヤさん、聞きたいことがあるんですけど……」
『何かな?』
「遠い昔、タルリヤさんはタイムマシンで皇室に来ましたよね?けれど、タルリヤさんが皇室に来るまでは、セレナールさんもエミリさんもカナエさんも恋愛は順調だったんです。私色々考えたんですけど、タルリヤさんが皇室に来て、みんなを紀元前村に連れて行ってから、セレナールさんたちの恋愛はおかしくなったように思うんです。知っていることがあれば話していただけないでしょうか?」
はぐらかされてしまうだろうか。それでも、今白黒つけないといけない気がする。
『君の言った通りだよ。貧しくてその日その日暮らしの僕の目の前に、ある日突然、未来の人が来た。バイトをすればお金をくれると言われ、僕はすぐに未来へ行った。現代からするとだいたい3500年後だと思う。未来の妖精村に連れて行かれた僕は、人口を減らすよう未来の人に命じられ、僕はタイムマシンで元の時代に戻り、妖精村のカップルを引き裂く任務に着いた。途中で逃げ出したくなったけど、皇帝陛下の命令だと言われ逆らえなかった。セレナールと皇太子様、エミリとアラン、カナエとセイも僕が関係を壊した。でも、生きていくためだったんだ』
あの頃の紀元前村の暮らしはかなり酷いものだった。何日も前のご飯を食べなくてはいけなかったし、さっきの天使村の人みたいに恋愛感情は一切知らず、成り行きで男女は関係を持ち、子孫を残した。
「そうだったんですか。タルリヤさんにも事情がおありだったのですね。今でも人口を減らす任務に就いているんですか?あ、今のターリャさんの写真送って来てもらえますか?」
『うん、今の紀元前村の実家も、あの時と何も変わってない。紀元前村は普通の村へとなって行き、一部の間では色んな研究もされている。けれど、僕が住む町はあの頃のまんまなんだ。だから、妖精村に引っ越した。姉さんはもうセレナールには似てないよ』
まさか、2019年なのに、タルリヤさんが暮らしている町だけ、あの原始的な生活を送っているだなんて!
その時、キクスケさんが現れた。
「お話聞かせてもらいました。タルリヤさんが遠い昔にしたことは規則に反しますので、あの日、皇室にタルリヤさんが来なかったよう書き換え致します。現代のカップル崩壊計画もこちらで阻止させてもらいます。
それと、初代天使村のヨルクさん毒殺事件ですが、調べたところ詳細が分かりました。カンザシさんとセレナールさんの共謀によるものでした。2人はナミネさんとヨルクさんの料理に少しずつ毒を混ぜ、2人が病気になったところでセレナールさんはヨルクさんの看病を、カンザシさんはナミネさんの看病をして、セレナールさんはヨルクさんとカンザシさんはナミネさんと結婚する計画でした。けれど、カンザシさんはヨルクさんの存在を妬み、独断で暗殺しました。カンザシさんはセレナールさんとラルクさんの留守中に家に忍び込み、頭痛に効く薬草を全て附子に変えてしまったのです。何も知らないラルクさんは頭痛を訴えるヨルクさんに煎じた薬をヨルクさんに飲ませ、その夜中、ヨルクさんは突然の心停止で亡くなりました。
それと、先程行かれた天使の湖でのことは、カンザシさんは前の晩にヨルクさんに特殊な惚れ薬と大量の性欲剤を飲ませセレナールさんに恋愛感情を抱き、ナミネさんと別れさせようとしました。けれど、2人が仲直りしたため、カンザシさんは不良を雇い、ある日、ヨルクさんとナミネさんに包丁を突き付け無理矢理別れさせました。
それでは私はタルリヤさんの過去の件を処理して来ますので、これにて失礼」
キクスケさんは去って行った。
横を見ると、ヨルクさんが泣いている。私はヨルクさんの手を握った。タルリヤさんのことはタルリヤさんも生活がかかっていたけれど、カンザシさんがしたことは許せない。私、カンザシさんのこと恨んでしまうかもしれない。実の兄なのに。
「セレナール先輩の人殺し」
「セレナールって最低ね!やっていいことと悪いことがあるでしょう!」
「セレナールが今後このグループに入って来てもみんなで無視する!」
「セレナールは悪魔なのです!」
「セレナールと一緒にいたくない!怖い!」
ラルクとセナ王女、アルフォンス王子、カナエさん、エミリさんはセレナールさんを批難した。
『もしもし、ナミネ?姉さんの画像届いた?』
あ、そうだった。タルリヤさんとの電話中だったんだ。私は慌ててメールを開いた。本当だ。髪は銀髪でショートヘアだけど、全然セレナールさんに似ていない。村の象徴であるセレナールさんは1人だけでなければならないということなのだろうか。それにしても現代のターリャさんは、お世辞にも綺麗とは言い難い。何だか可哀想。
「あ、はい、届きました。セレナールさんとは全然似てませんね。それと、さっきキクスケさんが来て、タルリヤさんはもう今の任務に就くことは出来ません」
『そんな……だったら僕はどうやって食べていけばいいんだ!』
「タルリヤさん、落ち着いてください!生活保護を申請すれば生活出来ます!方法は今送ります」
私は生活保護の手続きをタルリヤさんにメールで送った。
『考えてはみる。とりあえず一旦切るね』
タルリヤさんとの電話は切れた。
すると今度は再びキクスケさんが現れた。
「遠い昔、タルリヤさんが皇室に来たことはなかったことに修正しました。現代は紀元前村に置いてあるタルリヤさんのタイムマシンを回収して、タルリヤさんをカップル崩壊計画の任務から下ろしました。未来の番人にも話をつけ、皇帝陛下は子供を作らないよう呼びかける方針に変えました。以上が報告です」
これでタルリヤさんはもうタイムマシンでの移動が出来なくなる。タルリヤさんにとっては酷だろうけど、仕方のないことだと思う。
「あの、皇室にいたセレナールさんは純粋だったのに、途中からはどうして性格が変わってしまったのでしょうか?」
「妖精は『純』を表す生き物です。恨みや妬み、怒りなどの感情は殆ど持ち合わせていません。しかし、人間は表と裏があります。生きていくために汚い手を使ってでも我が身を大切にし、時に人より優れていると優越感に浸ったり、誰かを支配したりする生き物です。人間になってからのセレナールさんやエミリさんは妖精だった頃の感性を失われたと思われます」
そうなのか。妖精と人間ってそんなにも違うんだ。けれど、今の時代、妖精なんて見たことがない。時代と共に『純』は失われつつあるのかもしれない。
「そうですか」
私は何て答えていいか分からなかった。そして、キクスケさんは去って行った。
けれど、ちょっと待てよ。タルリヤさんは皇室に来なかったよう上書きされたんだよね。だから勿論私の記憶も変えられている。
タルリヤさんは、確かに皇室には来なかった。けれど、あの後、紀元前村から感染病が出たと妖精村に連絡が入り、応援を要求された。皇太子様自ら出向くことでセレナールさんとエミリさんたちも着いていき、紀元前村でセレナールさんたちはタルリヤさんと知り合うことになる。エミリさんはタルリヤさんと浮気をし、紀元前村から戻って来たカラクリ家での歴史は何一つ変わっていない。
番人が動いても歴史は変えられないんだ。
とりあえず私はナルホお兄様とナヤセス殿にキクスケさんから聞かされたことをメールした。
紅葉町駅に着くと、みんなはとりあえずナノハナ家に向かうことになった。

ナノハナ家に着くなり、セレナールさんはお風呂に入り、セレナールさんの汚れた水着は使用人が洗った。
第4居間ではみんながクタクタだった。
「じゃ、今からこれ見てもらう」
え、休めないの?見るって何を?
落ち武者さんは、映像をテレビで再生した。

映像は妖精村半ば頃だろうか。遠い昔の高校生くらいのミナクさんが映っていた。
ミナクさんは、同級生だろうアヤネさんと交際をしているようだった。ミナクさんは、いつも勉強をアヤネさんに教えていた。アヤネさんのアパートは築50年ほどの古い1Kのアパートだったが、それでも、ミナクさんもアヤネさんも幸せそうだった。
2人は外を歩く時は必ず手を繋いでいた。
アヤネさんはレストランのウエイトレスのバイトをしていて、アヤネさんがバイトで遅くなる日は、ミナクさんが合鍵でアヤネさんのアパートで料理を作りアヤネさんの帰りを待っていた。
学校でのお弁当も毎日アヤネさんの分もミナクさんが作っていて、アヤネさんはミナクさんの手料理を喜んで食べていた。
その関係はずっと続くかのように思われた。
けれど、ある日からアヤネさんは風邪で学校を休むようになり、心配になったミナクさんはドリスポや熱冷まし、その他ゼリーなどの差し入れを持って、合鍵でアヤネさんのアパートに入った。
するとアヤネさんは婚約後だろうカラルリさんと布団の中でことの最中だった。ミナクさんはその場に崩れ落ちた。
『嘘だろ……。アヤネさん、なんで?』
咄嗟にアヤネさんとカラルリさんは服を着た。
『ミナク、違うの。少し相談に乗ってもらっていただけよ』
アヤネさんが言うものの、ミナクさんはショックのあまり気を失いそうになっていた。
『アヤネさん、いつから?』
『ミナク、落ち着いて』
『いつからだったの?』
『本当に誤解だから!』
アヤネさんはどうにか誤魔化そうとしていた。
『アヤネさん、その人誰?何故私を裏切ったの?』
『ミナク、お願い信じて!何もしてない!』
『答えてアヤネさん。いつから私を裏切っていたの?理由は?』
アヤネさんは黙り込んだ。
『そっか、もういい』
『待って!2ヶ月前から!いっときの気の迷いだった!どうか許して』
アヤネさんはミナクさんにすがりついた。
『酷いねアヤネさん。もうここには来ないし学校でも話さない』
ミナクさんは合鍵を置いてアパートを出た。

……

あとがき。

レンタル屋さんに行くと、映画 タイムマシンの横に映画 タイムラインがあるんですけど、2つは相反する内容なんです。
私はタイムライン派でしたが、今となってはタイムマシンの深みが分かるようになってきたと思います。

何より、私の書く小説は絶対に歴史は変えられないようになっていますから。歴史を変える小説からはじまってからの今の小説。
私も年月が経って物事の考え方が変わったのかもしれません。

ちなみに、私はアドラー心理学よりフロイト学を信じているので、物語も過去を遡って答えを探すように進めています。

ミナクとアヤネの映像の続きは次回です。
Copyright (C) 2009 雨の音を聴きながら, All right Resieved.
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