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日常のこととかオリジナル小説のこととか。
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ashita
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女性
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地主(土地貸してます)
趣味:
漫画やアニメを見るのが好きです。最推しはフーディーニ ♡
自己紹介:
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ブログ、もう書かないと思ってました。

けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。

小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。

純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。

元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。

ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。

小説、ぼちぼちマイペースに書いてゆきます。

よろしくお願い致します。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

お知らせ。

イラストは現在「ナノハナ家の日常」に載せております。サイドバーにリンクあります。

また、「カラクリよろずや」にて無料のフリーイラスト素材配布もはじめました✩.*˚

フリーイラスト素材も増やしていく予定です(*'ᴗ'*)

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

模倣・無断転載などは、ご遠慮ください。

ブログの小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。

小説・純愛偏差値に関しましては、武家名・貴族名(程度による) / 及び、武官の階級 / 扇子・羽子板・花札・百人一首・紙飛行機などのアイテム使用方法の模倣の一切を禁じております。

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〈資格履歴〉

2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
→漢方コーディネーター 合格
→薬膳調整師 合格

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〈資格証明バナー〉

鉛筆デッサンマスター®認定試験資格取得証明
絵画インストラクター資格資格認定証
宝石鑑定アドバイザー資格認定試験資格取得証明
鉱石セラピスト資格資格保持証明
茶道アドバイザー資格認定試験資格取得証明
お点前インストラクター資格資格認定証
着物マイスター®資格認定試験資格取得証明
着付け方インストラクター資格資格認定証
サイキックアドバイザー®資格資格証明
サイキックヒーラー資格資格保持証明
アンガーカウンセラー®資格資格保持証明
アンガーコントロール士資格資格認定証
漢方コーディネーター®資格認定試験資格保持証明
薬膳調整師®資格認定試験資格保持証明
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純愛偏差値 未来編 一人称版 92話

《ナミネ》

パーティーの途中で、突然現れたレタフルという人魚。今日は人間の姿でいる。けれど、まさかのキクスケさんが主人公の未来望遠鏡に登場しているユウサクさんが今彼だなんて。少しぶっ飛んでいる気がする。
それでも、ヨルクさんがレタフルさんを愛していた事実がなかったことは、よかったけれど、どことなくまだ安心しきれていない自分がいる。
「ナヤセス殿〜!ここに人魚いますよ」
ナヤセス殿はすぐに飛んで来た。それにしても、この人魚、帰りどうするんだろう。ユウサクさん怒らせて、送ってもらえるのだろうか。
「はじめて見たよ。今日は人間の日なんだね。血液採取してもいいかな?」
「ええ、構わないわ」
ナヤセス殿はレタフルさんの血液を採取しはじめた。人魚って何型なんだろう。
「ヤオビクニ型だ。はじめて採取した。人魚の肉を食べれば不老不死になって、人魚の血を体内に入れれば殆どの病が治ると言われている。けれど、今や人魚は天然記念物だから、昔のような儀式的なことは一切行えないけどね」
ヤオビクニ型。はじめて聞く。女神のヨウセイ型のようなものなのだろうか。
「ねえ、ラルク。この人魚、今日帰れなかったら不味くない?」
「完全に不味いな。レタフルさんはパーティーが終わったら、僕らで送り届けるしかない。人魚の湖町は行ったことないけれど、宿がないなら、テント張って一晩過ごすしかないな」
やっぱりそうなっちゃうか。でも、このまま帰さないと死んじゃうかもしれないし、送り届ける人らだけで送り届けるしかない。
「てか、ユウサク、あんた今何してんのさ?」
「農作業……」
え、flowerグループの社員なんじゃないの?いつから農家になったのだろう。
「あの、ユウサクさんて、キクスケさんの大学の同期ですよね?」
「そうだけど、昔に死んだよ。あの頃は景気もよく大手企業で務められたけど、今は大学出てても就職にありつけないんだ」
「そのこと、サトコさんは知ってるんですか?」
「知らないよ。言うに言えないし、大手企業で務めてるって嘘ついてる」
もし、ヨルクさんが会社クビになって、農作業していて、私にはクビになったこと何も言ってくれなかったらいやだな。というか、それサトコさんが知ったら別れるか別れないかの危機に陥るんじゃないだろうか。
「人魚の湖の近くに農家があるんですか?」
「うん、もう誰も住んでないような家が並んでて、何もないところだよ。流石に電気、ガス、水道はあったけどね」
何という都落ちだ。けれど、農業も立派な職業だし、それで食べていけているなら問題はないか。サトコさんからは別れ切り出されそうだけど、それならレタフルさんと一緒になればいい。
「パーティーまだあるんだから、あんたらは、石鹸作り体験でもしてろ!パーティーが終われば登山着に着替えて、レタフル送り届ける」
1日のことだから、サバイバル服じゃなくて登山服で大丈夫か。
「ラルク、石鹸作り体験行こ」
「そうだな、まだ時間あるしな」
私はラルクと石鹸作り体験に向かった。パーティーが終わるなり、どこの誰だか分からない人魚を送り届けないといけないのは心が重たいけど、今はイベントを楽しもう。
石鹸作り体験コーナーには、それなりに人がいる。やっぱり普段馴染みないものほど人は興味を示すものなのかもしれない。
私は材料を混ぜはじめた。
「ねえ、ラルク。レタフルさん、どう思う?」
「顔は普通よりかは綺麗なほうかもしれないけど、痩せすぎな気がして、ちょっとタイプからは外れるな」
レタフルさんはユメさんより痩せている。ヨルクさんは、痩せすぎな人が好みなのだろうか。恋愛感情はないとはいえ、目の前でタイプとか言われたら、やっぱりいい気はしないし、それにレタフルさんがヨルクさんやアルフォンス王子と出会う前のことを何も知らない。大昔とはいえ、ヨルクさんが夢中になった女がいたらいやだな。私はヨルクさん以外の人とも恋愛したし、ヨルクさんのこと責められる立場じゃないけど、それでもヨルクさんが他の人と大恋愛してた事実があったら受け止めきれないと思う。
「あんた、何個型に入れてんのさ」
あ、考えごとしてたら、石鹸いっぱい作っちゃった。
「えへへ」
「なあ、ズーム。あの人、本当に人魚なのか?」
「さっきから何度もメンバーがそう言ってただろ!」
ロォラさん、石鹸作り慣れてる。今となっては、ズームさんをイジメてたキラキラ女子とは思えないな。
「ズームも人魚に興味あるのか?」
「少なくとも、あのレタフルって人魚は痩せすぎていて、どこに魅力があるのか分からないし、人魚の湖で少し見たら二度までもは行かないだろうな」
「昔は痩せてなかったんだ。セレナールのようにスタイルがよかった。顔も一目見ただけで恋に落ちたし。だから、余計にヨルクに心変わりされたことが胸が痛む」
アルフォンス王子いたんだ。人って、体型でそこまで変わるものなのだろうか。太ったりしたら魅力に欠けるかもしれないけど、痩せただけで顔つきまで大きく変わるものなのかな。
「ねえ、ラルク。人って体型で印象変わる?」
「まあ、多少はそうだろうな。けど、ナミネはナミネでいいと僕は思うけど」
そうなのかなあ。ヨルクさんって、ナナクサガユさんみたいに太った人がタイプかと思いきや、現在のやせ細ったレタフルさんがタイプとか言い出すし、ヨルクさんのタイプよく分からない。
「君も人魚の湖に行くの?」
「ナミネが心配だからね」
「じゃあ、私も行く!君は2人の人を好きになったらどうする?」
「唐突な質問だね。そんな経験ないけど、もしそうなったら、どっちとも交際しないよ」
「君は真面目だね。私は卑怯かも」
「君のしたいようにしたらいいと僕は思うけどね」
何だかんだでズームさんとロォラさんて心の距離近いし、結局ナルホお兄様とミネスさんだって1月に色んなこと変えたのに、また元に戻っている。2組とも自覚なし。ナルホお兄様にはカナエさんがいるのに、やっぱりミネスさんとのほうが話しやすいのだろうか。
「あ、お2組とも仲が宜しゅうことで」
「気のせいですよ、ナミネさん。僕は異性として見れない人はノーカウントなので」
異性として見れない。どこがだ。今となっては学校で1番仲良いのではないのだろうか。
「ねえ、ラルク。どう思う?」
「まあ、そんなもんだろ。ナミネだって、ヨルクお兄様への気持ちに気付くまでかなり時間かかっただろ?」
それはそうだけど、最後の天使村であのようなお願いをしてしまったわけで、それがなかったら、妖精村時代も変わらずヨルクさんのこと好きだったと思う。
「うーん、最後の天使村で、あんなお願いしちゃったからなあ。ね、この先、ラルクに本当に好きな人が出来たら心から応援するよ」
「その必要はない。僕はヨルクお兄様みたいに何でも許せる人間ではないから、セレナール先輩との関係は壊れてるけど、新たに好きな人が出来たとしても気持ちは伝えない」
ラルク、どうしてそんなこと言うの。私はラルクに幸せになってほしい。セレナールさんとの恋愛が偽物だったからって諦めてほしくないよ。
「ラルクは幸せになっていいんだよ!ヨルクさんは、ただのMなだけ!許せないならそれでいいんだよ。新しく好きな人出来るの待とうよ」
私はラルクを抱き締めた。ラルクへの好きは確かに好きだったけど、ヨルクさんのほうが、もっともっと好きだった。けれど、どれだけ愛していても相手が浮気したり壊れてしまう時は、とことん壊れるものだ。
「あんたらさ、どんな関係なわけ?」
「え、ラルクとは、ずっと一緒でしたし学年も同じで大切な存在です」
「僕は男女の友情なんて存在しないと思うけど?」
そういう考え方はメジャーかもしれないけど、私とラルクは特別なの。
「ねえ、2人とも離れて!そんな関係じゃないでしょ!」
ヨルクさんは、ラルクから私を引き離した。ヨルクさんって、こんなにヤキモチ妬きだっけ。
「私、ヤキモチ妬く男、嫌いです!ラルクとは幼なじみでずっと一緒だったんです!大切な人の幸せ応援するのは当然なことでしょう!」
私は立ち上がるなり、パーティー会場を出てトイレに走った。

また、ヨルクさんのこと突き放してしまった。ヨルクさんは誰よりも大切な人なのに。どうしていつも些細なことで拗れてしまうのだろう。私は恋愛向けではない。でも、ヨルクさんと一緒にいたい。
トイレは案の定汚れている。来客者が汚したのなら仕方がない。私はウエットティッシュでトイレを拭いて、タライで手を洗った。あ、これヨルクさんからもらったナプキンだ。ここで使おう。ヨルクさんのマグボトルの水飲みすぎたかな。レタフルさんの送り届けもあるし、気を付けないと。
時計を見ると14時。停電のため、パーティーは14時半までだ。戻らないと。
客室の扉を開くと、ヨルクさんがいた。
「ナミネ、さっきはごめんね。レタフルさんのことで気を張りつめてた。ナミネとの間に溝出来てほしくなくて」
私はヨルクさんに抱き着いた。ヨルクさんの紅葉の香り。私の大好きな香り。
「溝が出来てもヨルクさんとは離れません」
「ナミネ……」
「あんたら、なんでいつもそうなのさ。雨降って来たから来客も帰りはじめてる!向こうで宿がなければテント張るし、レタフル送り届ける準備しろ!」
雨が降り出しているのか。人魚の湖に行く人は、登山服に着替えて、リュック対応のレインウェアを着ないと。
私たちはパーティー会場に向かった。

パーティー会場には殆どの人がいなくなっていた。
「本日は、停電の中、お越しくださりありがとうございました。雨が降ってきましたので、予定より早くパーティーを終えます。気を付けてお帰りになられてください。また、このようなパーティーを開くことがありましたら、是非来てください。お帰りの際は、受け付けでレインコートを受け取ってください」
閉会式が終わった。使用人たちが片付けをしはじめている。来客者も慌ててパーティー会場を出て行った。来客者の殆どは馬で来ていたのだろう。そして、私たちも馬で人魚の湖まで行かないといけない。
「皆さん、これからレタフルさんを人魚の湖まで送り届けます。送り届ける人は、登山服に着替え、リュック対応のレインウェアを来てください。無線は絶対に忘れないでください。レタフルさんのことは0時までに送り届けないといけません。ですので、馬に乗れない人は送り届けは、ご遠慮していただけると助かります。宿がなければテントを張ります」
行かないのはユメさん、委員長、アヤネさん、ミネルナさん、カラン王子だけか。
「じゃ、女はここで男は廊下で着替えろ!」
男性陣が廊下に出たあと、私たちは登山服に着替えた。パーティーのあとは、ナノハナ家に戻るとばかり思っていたからリュックは少し軽くしてある。けれど、朝には戻るわけだから足りるだろう。私はレインウェアを着た。靴はスニーカーだけど仕方ない。一応サバイバルに適しているし、少々濡れてもやむを得ないだろう。

外に出ると大雨だ。王室の馬がいる。
「ねえ、ラルク。王室の馬、仮面かぶいてるよ」
「撃球だってそうだろ」
もう随分と行っていない。キクリ家ではやく大会が行われているそうだけれど。そういうスポーツ系はヨルクさん、全くやらないし。下手でも、ヨルクさんの有志見たいんだけれどなあ。
「じゃ、馬乗れないヤツは乗れるヤツに乗せてもらえ!」
アルフォンス王子、ちゃっかりレタフルさんを馬に乗せている。何だかんだで帰るところなだけに、ユウサクさんも行かなきゃならないか。
「あ、セレナールさん。服、指定しましたよね?こんな大雨なのにレインコート1つ着ないのでは濡れてしまいます」
みんなレインウェア着ているのに、どうしてセレナールさんだけ着替えさえしていないのだろう。
「そんなの聞いてないもの」
私は、みんなの前で言ったのに。セレナールさんて、本当人をイラつかせる。
「セレナールはお留守番ね」
「リリカ、本当に聞いてなかったのよ」
「セレナール、私のを着ろ」
カラルリさんって、セレナールさんに甘い。やっぱり、ずっと妹同然の存在として可愛がってきたからかな。セレナールさんは、カラルリさんのレインウェアを着た。
「ラルク、一緒に乗ろ」
「あんた、それだとバランス悪くなるだろ。クソレタフルを0時までに送り届けないといけないからね?本来、電車3本分の道だからね?」
電車3本分。実際に馬走らせると、どのくらいで着くのだろう。停電となると乗れるのは馬くらいだから遠くの移動は厄介だ。
「ヨルクさんは、馬乗れますよね。誰か、馬乗れない人、私の馬に……」
「私がナミネと一緒に乗る!」
ヨルクさんは、馬に乗れるのに。
「君の馬に乗せてくれる?」
「いいよ」
そっか。ナルホお兄様もカナエさんも乗馬は得意だから別々になっちゃうか。
私とヨルクさん、ラルクとロォハさん、ユウサクさん、カラルリさんとセレナールさん、落ち武者さんとエルナさん、ナルホお兄様とミネスさん、ズームさんとロォラさん、リリカさんとラハルさん、アルフォンス王子とレタフルさん、セナ王女とミツメさん、ナナミお姉様とナヤセス殿、カナエさんとカンザシさん、ミナクさん。
ユウサクさんは、乗ってきた馬があるから、どうしても偶数になりきらない。って、ズームさん、馬乗れたんだ。
「じゃ、行く。とにかく飛ばせ!」
私は、落ち武者さんから渡された地図を元に赤線で引かれたルートを見た。ここからだとかなり距離がある。それでも0時までにレタフルさんを送り届けないと。私は地図をレインウェアのポケットにしまうと、馬を走らせた。ユウサクさん以外の馬は全て親衛隊が使う馬だ。武家にも速度の出る馬はたくさんいるけれど、やっぱり王室の馬は違う。
常歩は長距離移動には向いているものの、時速5~6キロしか出ない。速歩は1時間走らせることは可能だが、時速13~15キロが限界。駆歩は20~30キロ出るが30分しか走らせられなく長距離には向いていない。襲歩の場合だと60~70キロ出るが、たったの5分しか走らせることが出来ない。
けれど、親衛隊の馬はフェアリーサラブラーといって乗る人によれば、時速170キロ出せる。遠い昔は、貴族や一般市民の乗る馬と王室の乗る馬は、ほぼ同じだったが、王室の武官が馬を早く走らせているうちに、馬も進化し、フェアリーサラブラーが生まれたらしい。今となっては伝説話だが。
前にはセナ王女がいる。最近のセナ王女は、どことなく垢抜けている気がする。
「ねえ、ラルク。セナ王女、速いよね」
「もう、フェアリーサラブラーのプロだな」
「後ろの人、着いてこれるかな」
「まあ、レタフルさんさえ時間内に人魚の湖に入ればいいからな」
けれど、何か様子がおかしい。でも、この時の私は大雨で周囲がよく見えていなかった。
私はフェアリーサラブラーに乗るのははじめてである。生きている間に乗れるとは思っていなかった。セナ王女は、この馬でずっと訓練してたんだな。
時計を見ると15時半。別荘を出たのが15時くらいだから、30分経ったのか。けれど、まだ殆ど進めていない。150キロは出しているのに。人魚の湖ってどれだけ遠いの。

私たちはガムシャラに馬を走らせた。
時刻は19時。それでも、まだ中間地点だ。霧が出てきている。セナ王女は見えなくなっているし、後方も同じ。
その時、後方でおかしい音がした。
「落ち武者さん、後ろで何が起きてるか見てもらえませんか?」
「りょーかい。エルナ、手綱しっかり持て!」
「分かったわ!」
落ち武者さんは立ち上がって後ろを見た。
「おい、不味いぞ。時速90キロで平凡アルフォンスがクソレタフルと落馬しかけてる!」
そんな……。これでは、アルフォンス王子とレタフルさんが命を落としてしまうかもしれない。
「ラルク!」
「戻るしかないな」
一刻を争う。戻らないと。
「ヨルクさん、すみませんが引き返します」
「うん、分かった」
私とラルクは、引き返しアルフォンス王子の馬に向かって馬を走らせた。気付かなかったけど、アルフォンス王子って、それなりに後方にいたんだ。その時、アルフォンス王子の馬が竿立ちした。このままでは、アルフォンス王子とレタフルさんが落馬してしまう。私とラルクはもうスピードで馬を走らせ、アルフォンス王子の馬のところで止まると、私はアルフォンス王子をラルクはレタフルさんを受け止めた。
「僕はレタフルさんを乗せるから、ナミネはアルフォンス王子乗せろ!」
「分かった、ラルク!ヨルクさん、ロォハさんを乗せてゆっくり来てください」
「うん、分かったよ。ナミネ、気を付けてね」
ロォハさんはラルクの馬からヨルクさんの馬へ移動し、ラルクはレタフルさんを乗せ、私はアルフォンス王子を乗せて、再び速度を出して走らせた。
けれど、どうして竿立ちなんかしたのだろう。アルフォンス王子の乗り方が不安定だったのだろうか。
時刻は21時。もう間に合うかどうかも分からない。
「ラルク、21時だよ」
「ギリギリというレベルではないな。それでも向かうしかない」
もし、間に合わなかったらどうなるのだろう。
「甘えセナに無線飛ばす」
何の無線だろう。
落ち武者さんは、無線を手に持った。
「甘えセナ、人魚の湖に着いたら、湖の水をタライに入れろ!」
『こちらセナ。了解』
間に合わなくても僅かな湖の水だけで、こと足りるのだろうか。でも、ないよりかはマシかもしれない。
停電の中、こんなことに巻き込まれたくなかった。けれど、放っておいたら、それはそれで後悔するだろう。
地面が土のところに入った。さっきより走りにくい。
霧も濃くなってきて後方が見えない。
「ヨルクさん、大丈夫ですか?」
私は無線で話しかけた。
『大丈夫だよ』
「あんた、なんで顔だけヨルクだけなのさ」
あ、つい無意識にヨルクさんのことしか考えてなかった。
「い、いえ、皆さんのこと心配してますよ。地面もぬかるんでますし」
「あんたさ、もっとマシな嘘つけないわけ?」
落ち武者さんて、最初から距離感近かったように思うけど、それって私からじゃなく、落ち武者さんから私に歩み寄ってたからなんだ。昔からの知り合いなのだろうか。
馬を走らせる速度が落ちてゆく。だんだん進みにくくなっている。ぬかるんだ地面に、どんどん時間を奪われてゆく。

時刻は23時半。
まだ、距離はあるのに……。それでは間に合わない。それでもギリギリまで走らせるしかない。多分、私は諦めかけている。この世に生きたものは、いつかは死んでゆくものだし。レタフルさんも転生して新しい人生を歩めば今より……。
ダメだ。この進みにくさで思考がマイナスになっている。
それでも、コクコクと0時に近付いている。
「どうしてヨルクなんだ……」
アルフォンス王子の眠そうな声。また落馬されては困る。
「アルフォンス王子、目を覚ましてください!あと少して0時です!」
「分かっている。けれど、永遠だと思っていた。カナエには悪いが、それでもレタフルだけが私の生きる全てだった。レタフルと別れた瞬間から私は自暴自棄になった」
今更知る事実に私は戸惑いさえ持てなかった。それでも、アルフォンス王子の性格は何度も疑った。それさえも、時代の流れだと位置付けしてしまっていたと思う。あれだけ冷静沈着で、カナエさんを心から愛していたアルフォンス王子が、失恋で、ここまで変わってしまうものなのか。
きっと、私もそうかもしれない。ヨルクさんに愛想つかれたら、アルフォンス王子みたいに冷酷な人間になっている気がする。
「レタフルさんのことは、いつ思い出したんですか?」
「カナエと交際してすぐだ」
それで、カナエさんにピルなんか飲ませていたのか。
「どうしても、レタフルさんじゃないとダメなんですか?」
「ナミネだってヨルクが他の女と交際していたら今みたいな幸せを失うだろ」
ああ、そうか。他者視点だと分からないけど、自分がなってみたら、他者からすれば、とんでもない人間に見えてしまうものか。
「確かにそうですが……」
ダメだ。言葉を失ってしまった。
「どうして人は心変わりなどしてしまうのだろう。この世に永遠というものはないのだろうか」
愛してやまない人がいれば、誰だって永遠を求む。私だって、大昔にヨルクさんが誰かを愛していたりしたら、いっぱい悩むだろうし、今心変わりされたら、とてもじゃないけど耐えきれない。
私の見た夢はいったいなんだったのだろう。
「0時、3分前だ!もう間に合わない。強気なナミネ、ラルクごとクソレタフル吹き飛ばせ!」
「分かりました!ラルク、頑張って!」
私は扇子を開いて、ラルクごとレタフルさんを人魚の湖に向けて吹き飛ばした。

……

あとがき。

最近、クレナイ家 三兄弟 描きました。

何千年、何億年も、同じ人のみを愛することの方が無理かもしれません。でも、ずっと想ってる側からすれば、受け入れがたい事実ですね。

あれだけ冷静沈着で余裕のあったアルフォンスの現代が悲しすぎます。

……

この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
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純愛偏差値 未来編 一人称版 91話

《ヨルク》

「あんたら、何してんのさ。もうすぐはじまるから、とっとと配置につけ!」
「落ち武者さん、それがカンザシさんがこの写真ナミネに見せて、ナミネ大泣きちゃって」
カンザシさんは、どうしていきなりこんな写真見せてきたのだろう。それにこれだけ古いと私かカンザシさんか分からない。
「強気なナミネ、この写真、別に密着してるわけでもないだろ。真相は人魚の湖で確認するって言ってただろ。今日は大切な日なんだから、ちゃんと1日やり切れ!」
ナミネ、どうして写真1枚でこんなにもショックを受けるのだろう。私はレタフルなんて人魚を知らない。
「はい……すみません……」
私はナミネを立ち上がらせた。何か言葉にしようとした時、ナミネはラルクのところへ行ってしまった。
「カンザシ、あんた、あとで覚えとけよ!平凡アルフォンスも、いつまでそうしてんのさ。時代が違えばパートナーだって違うだろ、普通」
「レタフルは、怪我をした時、知らない男に手当してもらったと言っていた。もしかしたら、その男がヨルクでレタフルはヨルクに心変わりして私との交際をやめたのかもしれない」
手当て。やっぱり全く覚えていない。そもそも、どうしてカンザシさんが、この写真持っているかも分からないし、ナミネが心配だ。
「それが事実だったとしても、今日1日はやり切れ!」
「けれど、事実を言って何が悪いんですか!受け取り方は相手の問題でしょう!」
こんな大切な日を台無しにしようとしているカンザシさんの気持ちが全く分からない。紀元前村でのことは私たちが命懸けで暮らした証なのに。
「あんた、本気で言ってるのかよ!今すぐ転生させてやろうか?」
「セルファ、セナ王女がマイク持ってる。はじまるわ」
そういえば、気付いたら貴族や一般市民でパーティー会場は埋め尽くされている。セナ王女が持っているのは電池式のマイクか。予備の電池も一応は買っているが、そう多くはない。
「落ち武者さん、ナミネが心配だからナミネのところに行きたいんだけど」
「今あんたが行っても余計に追い詰めるだけだろ!ラルクに任せとけ!平凡アルフォンス、あんたここの別荘の主だろ!写真1枚でクヨクヨしてんな!」
こういう時にナミネを慰められないのは悔しいし辛い。私よりラルクのほうが癒されるのだろうか。何だか複雑な気持ちだ。彼氏の私が傍にいて励ましてあげたかった。
セナ王女はセッティングされたスクリーンの前に立った。
「本日は、妖精村全域が停電の中、お越しくださりありがとうございます。本日は、皆様にも知ってもらいたいことがあり、あえてこの状況でパーティーを決行しました。
紀元前村は先進国です。しかし、1つの町だけ差別を受け、まるで古代のような暮らしをしています。その町は蓮華町です。
友人が蓮華町出身で、話を聞いて直接行ってみたところ、その環境は酷いものでした。電気、ガス、水道は一切なし。まさに、今の妖精村のような状況ですね。けれど、蓮華町は、この紅葉町とは異なりすぎています。市場で野菜は買えますが、殆ど腐っています。学校にも通えず、職業もなく、女性は家事をし、男性は食糧を取りに行くのが蓮華町の1日です。果物や薬草は崖の上にあり、家族のために登った人が何人も転落死しています。かといって、新鮮な魚や肉は高くて手が出せません。お風呂に入りたくても家にはなく、公衆浴場まで通わないといけないのです。
衣類は、今まさに私とカランが着ているものしかありません。
私たちは蓮華町で約2ヶ月過ごしました。果物係、薬草係、加熱係、洗濯係、料理係、洗い物係などに役割を分けて、それぞれがそれぞれの役割をして暮らしていました。
そうしているうちに感染症コロディーが町で流行り、私たちは感染者の看病をしたのです。蓮華町に病院はありますが、ひとたび感染症が流行れば満員になります。そのため、私たちは紀元前村と妖精村の皇帝陛下の許可を得て医者志望のナヤセスとロォハが患者の治療を行いました。コロディーが終息したあと、2人はその功績が認められ、医師免許を取得しました。そのお2人がこちらの高校生です。
今日、机に置かれているものは全て紀元前村で作っていた料理を再現しました。石鹸作り体験や紙作り体験も行っております。
話は長くなりましたが、今から後ろにあるスクリーンで、私たちがどのような暮らしをしていたのか、映像を流します。妖精村が停電の今、少しでも何か感じ取っていただけたら嬉しいです。
また、トイレや手洗いなど分からないことは使用人に聞いてください。
それでは、パーティースタート!」
セナ王女は演説を終わるなりマイクを置いた。来客者は映像を見はじめた。この映像で普段何不自由ない暮らしをしている貴族たちに蓮華町の暮らしの厳しさが少しでも伝わればいいのだが。私たちが死ぬ気で過ごした2ヶ月だから伝わって欲しい。
その時、ナミネが来た。
「ナミネ!大丈夫?」
「ヨルクさん、お腹痛いです」
ナミネ、顔色が悪い。
「ナミネ、すぐに痛み止めとマグボトル持ってくるから待ってて!」
「はい」
私はロッカーに入れたリュックを取り出し、マグボトルと痛み止めを持った。ナミネやラルクは結界を物凄い数値でかけることが出来る。けれど、私も10までならかけられるから、カンザシさんにイタズラされないためにも念の為かけている。
結界も舞も公式は10までだが、研究者によって、それ以上か があることが分かり、公式ではないものの、最後に想定と言うことで使うことが出来る。その研究者による結界と舞の公式以上の数値は古代には既に存在していたのだ。
「ナミネ、痛み止めとマグボトルだよ」
「ありがとうございます、ヨルクさん」
ナミネは私からマグボトルと痛み止めを受け取った。
こういう時、頼ってくれると嬉しい。やっぱりナミネの役に立ちたい。
来客者は料理を食べながら映像を見ている。
「お水に味がついてる」
ナミネの驚いた顔、可愛い。
「果物の皮で味付けしたんだよ」
「てか、あんた、そのマグボトル大きすぎだろ」
「ナミネが飲み物に困らないように大きいの持ってきたの!」
「ナミネ、ナミネって、あんたの頭の中それしかないのかよ」
誰だってそうだろうに。落ち武者さんとてエルナのこと特別扱いだし。普通だと思う。
「ヨルクさん、大好き」
ナミネ……。生きててよかった。もう二度とナミネに振り向いてもらえないと思っていただけに、現世は悔いのないものにしたい。私はナミネの手を握った。
「そうやって見せ付けていてもヨルクさんがレタフルさんを好きだった事実は変わりませんよ」
いくらナミネのことが好きだからって、今のナミネの彼氏は私だし、こういう邪魔のされ方は気に食わない。
「気にすることないわ。カンザシは焦ってる。余裕があるなら、こんなふうに言葉のみで追い詰めたりしない。人魚の湖まで待てばいいだけのことよ」
エルナって落ち武者さんの元カノなだけに、気が強い。相手の策略に簡単にハマったりはしないんだろうな。
「カンザシさん、私は前世で他の男と交際したように、ヨルクさんも、たくさんの嫁がいたんです。だから気にしません」
何だか複雑な気持ちにさせられる言葉だけれど、今私たちは愛し合っている。ちゃんと同じ気持ちで。だから、カンザシさんにはどうかナミネを諦めてほしい。
「ナミネさん、好きでもない女と結婚するのと、本気で惚れた女と大恋愛するのとでは違いますよね。本気で惚れた女は何世紀経っても忘れられないものです。ナミネさんがいくらヨルクさんのことが大好きでもヨルクさんはナミネさん以上にレタフルさんを愛していたんです」
私はナミネ以上に愛した女子(おなご)などいない。カンザシさんのハッタリとしか思えない。
「へえ、あんた、それ証明出来るわけ?映像でもあるわけ?人魚の湖は乗り継ぎが必要でクレナイ家からは遠い。それを定期的に通ってた証拠でもあるのかよ!」
「ご自分で調べたらどうです?」
「なるほどね?手駒はないってわけ」
「言葉ではなんとでも言えますよね。人は直接見て聞いてはじめて自覚するものなんですよ」
いくらナミネのことが好きでも、こんなやり方で私とナミネを引き裂こうだなんて気分が悪い。
「ヨルク、今すぐ確認したい。もういても経ってもいられない」
何故ここでアルフォンス王子自ら巻き込まれる。私もナミネも悩んでいるというのに、ことを荒らげられては困る。
「アルフォンス王子、気持ちは分かるんですけど、流石に今すぐはどうこう出来ないです」
その時、ナミネがまた料理を手で掴んで食べている。私はナミネを机から下ろした。
「ナミネ、手で食べないで。今、お皿に入れるから」
「はい」
私は紀元前村で使っていた今にも折れそうなお箸ではないものの、お箸で料理をお皿に入れてナミネに渡そうとしたら、今度は私がナミネ用に持って来たマグボトルの水をナミネがカブ飲みしている。
「ナミネ、そんなに飲んだらトイレ行きたくなるでしょ!ほら、この料理食べて」
私はナミネからマグボトルを取り上げ、ナミネに料理の入ったお皿を渡した。
「はい」
その時、ナミネが私に何かを握らせた。手を開いてみるとスフェーンの原石だった。
「ナミネ、これどうしたの?」
「蓮華町の市場で買いました」
あの時、ナミネを怒らせて砕けてしまったスフェーン。けれど、また買ってくれたんだ。
「ありがとう、ナミネ。大切にするね」
私はマグボトルと痛み止めとスフェーンを一度リュックに入れに行った。何だかんだでナミネは私を想ってくれている。私は少し浮かれていた。
スクリーンの映像が終わったのか、映像ではなく、写真が流れはじめた。
「では、ひと通り私たちの紀元前村での暮らしの映像を見てもらったところで、蓮華町出身のタルリヤに話を聞いてみましょう。
また、スクリーン映像の感想はよかったら意見箱に入れてください」
セナ王女はタルリヤさんにマイクを渡した。
「はじめまして、紀元前村出身のタルリヤです。僕はかなり昔から紀元前村の蓮華町で暮らしています。基本この世の仕組みは、転生後も同じところに生まれますから。それでも、古代はよかったんです。紀元前村は発展途上国で、全ての町が同じ暮らしをしていましたから。どこも同じだと不思議とその時代に染まりますよね。でも、2020年現代も蓮華町のみが差別を受け、古代のような暮らしをしているんです。セナ王女も仰ったように、電気、水道、ガスは存在しません。
蓮華町には恋愛感情もないので、世帯を持つ人も少ないです。蓮華町の人は殆どお金なんて持っていません。だから、だいたい腐った煮物しか食べるものはないです。けれど、蓮華町に生まれるたびに、辛いというかコンプレックスになったのは、学問を学べないことです。誰だって学校に行きたいし、将来の進路を決めて、それに向かって進みたいものです。蓮華町にいる限り未来はありません。だから、僕は妖精村の紅葉町に引っ越してきたんです。今は生活保護を受けながら学校に通っています。僕はたまたま引っ越すことが出来ましたが、蓮華町の周りには高い囲いがあって、隣町に行くことさえ許されません。
今でも多くの蓮華町民が苦しくてもどかしい暮らしを送っています。ナミネたちが実際に僕の故郷を見に来てくれたことには感謝しています。また、映像を撮ってくれたラハルさん、このパーティーを開いてくれたセナ王女にも感謝です。
今はどうにもならないことだとは思いますが、いつか蓮華町も、この紅葉町のような暮らしが出来ることを心より祈っております。
本日は停電の中、お越しくださりありがとうございます」
タルリヤさんは一礼をしてマイクをセナ王女に戻した。
もし、私がタルリヤさんの立場だったらどうしていただろう。私には何の力もない。だから、流されるまま死ぬまで暮らしていた可能性が高いだろう。
「スクリーン映像の暮らしをタルリヤさんは大昔からしています。今だからこそですが、電気、水道、ガスは必要ですよね。昔はそんなものありませんでしたし、妖精村も、今の蓮華町と似たような暮らしをしていたでしょうけど。現代は、もう昔ではありません。まして、古代のような暮らしなんて考えられませんよね。タルリヤさんから、直接話を伺ったところで、引き続きパーティーをお楽しみください」
セナ王女はマイクを置いて、こちらに向かって来た。
「あー、喉乾いた」
セナ王女はグラスに入ったフルーツで味付けした水を飲んだ。そういえば、ミナクお兄様とはどうなったのだろう。ミナクお兄様は最近しょっちゅう、ナナミさんの部屋に行っているみたいだけど、2人は交際しているのだろうか。
「セナ王女は、レタフルさんを知ってますか?」
ナミネ、やっぱり気にしてるんだ。
「ええ、知っているわ。その昔、と言っても、妖精村半ばくらいかしら。あの近くの別荘で住んでたのよ」
「アルフォンス王子は、カナエさんよりレタフルさんが好きですか?この写真は事実ですか?」
ナミネは、私とレタフルさんのツーショットをセナ王女に見せた。
「そうね、アルフォンスは、カナエと交際していたけど、人魚の湖でレタフルに会ってから心変わりしたのよ。写真は色褪せているからヨルクかカンザシか分からないわね。けれど、私が知っている限り、その後レタフルが交際したのは確かに人間だったけど、ヨルクではないはずよ」
やはり、私ではなかったか。では、いったい誰と交際していたのだろう。その人がレタフルさんが心変わりした人なのだろうか。
「レタフルさんは心変わりしたのですか?」
「そこまでは分からないわね。本人が話さなかったから。けれど、人魚は結婚すれば人間になるの。レタフルは彼と盛大な結婚式を挙げていたわ」
結婚すれば人間になるだなんて、まるでおとぎ話の世界だ。
「そうですか。レタフルさんは、幸せになったのですね」
「どうかしらね。何となく、本命ではない気がしたけどね」
そういうパターンか。本命の人とは一緒になれない何かしらの事情があって、別に交際した人と結婚したわけか。
「レタフル!」
え、ここにいるの?
ふと少し遠くを見るとアルフォンス王子が貴族の腕を掴んでいる。
「ナミネ、レタフルさんをこっちに連れてくるぞ!」
「分かった!ラルク!」
ナミネとラルクはレタフルさんか分からない貴族を連れに行った。
「顔だけヨルク。あんたは、机の下で隠れてろ」
え、どうして。でも、ナミネたちがこっちに向かってくる。私は咄嗟に机の下に隠れた。ナミネたちが貴族を連れてくるなり、落ち武者さんはフェアリーングをかけた。
「あんた、レタフルか?」
「ええ、そうよ」
ダメだ。ここからだと何も見えない。
「この写真の相手はコイツで間違えないか?」
多分、カンザシさんのことを聞いているのだろう。
「ええ、そうよ」
「コイツの名前なんだ?どういう関係だったんだ?」
何だか緊張してきた。
「ヨルクよ。ひと目見た瞬間、一目惚れして、私の傷の手当てをしてくれたわ。ずっと好きで今でも好きでたまらないの。でも、会ったのは、この一度だけ。写真もその時に撮ったものなの」
何故、重要なところを間違える。ナミネは私とカンザシさんを間違えたことないのに。
「で、あんた人間だけど、結婚したのか?」
「いいえ、独身よ。彼の馬で帰るわ」
彼氏いるのか。でも、何だかアルフォンス王子みたいな状況だな。
「どいつと付き合ってんだ?」
「ユウサクさんという普通の人よ」
まさか、ここで未来望遠鏡のキクスケさんの大学の同期の名前が上がるだなんて思ってもみなかった。
「その彼氏は、あんたがコイツ好きなこと知ってんのかよ」
「知らないわ。ただ、もう会えないかと思って新しい道を歩んだのよ」
人は何百年、何千年も1人の人を待ってはいられない。その人は今を生きなくてはいけないから。
「強気なナミネ、ユウサク連れてこい!」
「分かりました」
ナミネはユウサクさんを連れに行った。少しすると、ナミネの足音が聞こえてきた。
「なあ、ユウサク。あんた、サトコとはどうしたんだよ?」
「今も交際している」
何なんだ、それ。完全な二股じゃないか。本命はどっちなのだろう。
「あんたら揃って同じことしてんだな。レタフルもコイツが忘れられないらしいぜ」
「レタフル!どういうことだ!俺を裏切っていたのか!」
何故、自分のことは棚に上げる。
「違う!もう大昔のことで、一度しか会ったことなくて、その人とは何もないわ!300年待ったけど、もう二度と会えないと思って、新しい道を歩むことにしたの」
ユウサクさんとで、本当に幸せになれるのだろうか。私は立ち上がってズームさんの後ろに隠れた。
「疑似恋愛ですよ」
「疑似恋愛?」
つまり、レタフルさんは本気で私を好きではないということなのだろうか。
「人魚は1番に見た目を重視します。レタフルさんは、ハンサムなアルフォンス王子に惹かれたものの、それよりイケメンなあなたを好きにはなりましたが、あくまで人魚の本能である見た目のみです。言ってしまえば人魚も本当の意味では恋愛感情を知らないのでしょうね」
そういうことか。何だか、不憫だな。アルフォンス王子がカナエさんより好きになった人魚なのに。
「ごめんなさい、ユウサク。私、片想いでも構わない。ヨルクと再会して、私、自分の気持ち偽れない」
レタフルさんはカンザシさんに抱き着いた。その瞬間、カンザシさんは、レタフルさんを殴り付けた。
「あなた方、どこまで僕を侮辱したら気が済むんですか!」
「ヨルク……どうして……」
カンザシさんは、またレタフルさんを殴った。
「やめてくれ!レタフルはかつて私の恋人だった」
落ち武者さんが、レタフルさんから本心を聞き出したことで、アルフォンス王子はボロボロだ。ボロボロながらにアルフォンス王子はレタフルさんを抱き締めた。
「強気なナミネ、これで疑いは晴れたか?ま、人魚の湖は、近いうちに行くけどね?」
「ヨルクさんの想いも聞いてもらえないでしょうか?」
「りょーかい。顔だけヨルク、あんた、レタフルのことどう思ってる」
ダメだ。落ち武者さんの、フェアリーングに逆らえない。
「綺麗な人だなあて思うし、結構タイプ。水着姿見てみたい。会ったこととか全然覚えてないけど、毎日眺めてたい」
落ち武者さんは、ため息をついた。
「で、レタフルとはどうなりたいんだよ。強気なナミネはどうするんだよ」
「どうこうなりたいわけじゃないけど、目の保養というか……。ナミネとは別れないよ」
ダメだ。ナミネに嫌われてしまった。人の本心というのは、知るべき時に知るものであって、知らないほうがいいことのほうが断然に多い。
落ち武者さんは、フェアリーングを解いた。
「ナミネ、レタフルさんに恋愛感情はないから!」
「ヨルクって双子だったの!?」
何故そうなる。
「あ、レタフルさん、ヨルクさんが、あなたの水着姿見たいらしいので着てもらえませんかね?」
「いらない!そんなのいらない!私が好きなのはナミネだから!」
私はナミネを抱き締めた。
「レタフルなんか、こっちから願い下げだ!この不細工人魚!」
ユウサクさんは怒ってしまった。
「ヨルク、どうして!そんな子供より私のほうがずっと綺麗でしょ?」
「ずっとずっと昔からナミネのこと好きだったんです!レタフルさんのこと何とも思ってないですし、やっとの思いでナミネと交際出来たので、邪魔しないでください」
「あんたも気の多い男だな。こんな下賎な女、僕なら絶対にいやだけどね?」
私だって別に好きとかじゃないし、タイプかもしれないけど、人魚と交際とか考えられないし、ナミネ以外の女子(おなご)を好きになったことなどない。
「私はナミネ以外の人好きになったことないの!」
「ミネス、この不気味な人魚を不細工な男と結婚させてほしい」
「いいよ。適当な人探しとく」
「やめて!私はただ、片想いでもいいからヨルクを想っていたいの!邪魔しないで!私の幸せ奪わないで!」
どうしたものか。レタフルさんが、私とカンザシさんを間違えたことで、カンザシさんは完全にキレてしまった。
セナ王女はカンザシさんの肩にイエローカードを貼った。

……

この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
純愛偏差値 未来編 一人称版 90話

《ナミネ》

妖精村に戻って来た私は、再びダラけた生活になり、身の回りの世話はヨルクさんがしていた。そんな中、私は、ある夢を見てヨルクさんを警戒するようになる。
けれど、物事というのは上手くいかないものだ。
今度は、妖精村全域停電し、電気、水道、ガスが使えなくなってしまった。皇室からの文によるも復旧は未定。これでは、紀元前村のサバイバルと同じだ。オマケに紅葉町には公衆浴場なんてないし。
「皆さん、最初に話しておきます。ナノハナ家でも、野菜や果物は栽培していますが、これは私たちのサバイバルなので、買い出しは私たちでやるべきだと思うのです。それと、このような状況になり、学校は週に3回となりましたが、この紅葉町には公衆浴場なんて存在しません。森の湖で水浴びをするか、お風呂にタライで水を入れたあと、炎の舞で温める必要がありますが、その場合、皆さんに手伝ってもらう必要がありますし、効率が悪いです。1人1つのタライで身体や髪を洗ったほうが効率的と思われます」
紀元前村では学校行かなくてよかったから何日もお風呂に入らなくてよかったけど、妖精村では、こんな時なのに学校に行かなくてはならない。だとしたら、お風呂には入っておきたい。
「そうね、あの広いお風呂にタライで水を入れても時間の無駄になるから、1人1つのタライで身体と髪洗ったほうがいいわね」
私も、それが効率いいと思う。少ない水を炎の舞で温め、それで洗ったほうがいいだろう。お風呂に入れないまま学校に行くよりかはマシだ。
「大型貯水タンク200リットルは2つを庭に置きます。部屋を汚されるのは困りますので。それではセナ王女、明日必要なものを読み上げてください」
大型貯水タンク、本当はキッチンに置きたいけれど、慣れてない人が使って、濡れてしまったら最悪床ごと変えないといけないかもしれない。
「じゃあ言うわね。ランプは机1つずつにおきたいから、ここにあるのより小さいのがほしいわ。あと、料理は紀元前村で作ってたものを並べたい。いつも貴族が集まるパーティーだけど、大型スクリーンに紀元前村での映像を流したいわね。石鹸作り体験、紙作り体験もしたいわ」
紀元前村での映像か。それはいい考えだと思う。ナヤセス殿とロォハさんの有志も見てもらえるし。何より、映像を多くの貴族が見ることによって、寄付金が得られたら……。今の状況では無理か。停電になって、我が暮らしが大変だもんな。
「では、映像はラハルさんが用意して、料理係の指導はヨルクさんがしてください。ランプは明日、蔵で探しておきます。石鹸作りの材料一式はズームさん、紙作りの材料一式はミネスさんにお願いしてもいいですか?」
小さいランプなら少し昔に使っていた気がする。
「うん、映像は持っていくね」
「分かった。紀元前村の料理並べるね」
「はい、石鹸作りに使ったものは全て持っていきます」
「分かった。道具はタルリヤの家の使ってたから、紙作りの材料は妖精村のになるけど持ってく」
こんな時だけど、こんな時だからこそ知ってもらいたい。私たちが紀元前村で、どんな暮らしをしていたかを。妖精村全域が停電した今、みんなに知ってもらおう。

早朝4時。
私とラルクは水汲みをしていた。アルフォンス王子は寝ているのか来ない。200リットルの大型貯水タンクとなると、何度も井戸から水を汲まないといけない。
遠い昔、井戸は当たり前のように使われていた。それゆえ、ナノハナ家には11個の井戸が存在していた。改装された今残っているのは5つだけど。
「ラルク、これくらいでいいね。タライには木のフタしておこ」
「ああ、これだけあれば十分だろ。水が必要な時、ここまで来るのは不便なところだけどな」
「紀元前村では当たり前だったんだし、今回もなんとかなるよ」
「そうだな。今日のパーティー成功させるか!」
「だね!」
私とラルクは客間で仮眠を取ることにした。

「ナミネ、ここにいたの?探したんだよ」
私はヨルクさんの声で目が覚めた。時計を見ると6時。私は布団から出た。
「4時にラルクと水汲みをしていました」
「そっか。ナミネ、それって……」
そう、私は紀元前村で着ていた薄いワンピースを着ている。下着も紀元前村のものを身に付けている。ワンピースはノースリーブだから流石にカーディガンを羽織るけれど。
「はい、パーティーとはいえ、みんなの栄光を知ってもらう日です。私はこの格好で行きます。ですから、ヨルクさんも紀元前村で着ていた服でパーティーに行ってください」
「いや、それはちょっと……」
「ラルクも落ち武者さんも紀元前村で着ていた服と下着で挑みます。ヨルクさんだけ、いい服着てたら、せっかくのパーティーが台無しになってしまうかもしれません」
「うーん……」
ほら、やっぱり自分でダサイって自覚してるじゃん。ヨルクさんて見た目ばかり気にしている。小学生の頃だって、ミナクさん真似して夏はタンクトップと半ズボン着てたし。
「ラルク、ヨルクさん、着ないって。みんな着るのにね」
「それ不味いだろ。今回のパーティーは僕たちの紀元前村での暮らしを知ってもらうために行われるのに、1人だけ別の着てたら信用を失いかねないな」
そうなんだよね。みんな恥を忍んで、あのステテコモドキ着るのに、ヨルクさんだけ別の着られたら、来る人に本当に紀元前村で大変な暮らしをしていたのか疑われてしまう。
「ロングカーディガンでも羽織ればいいのにね」
「分かった、着る!私1人が雰囲気壊すわけにはいかないから!」
ダメだ。あのダサイ格好をヨルクさんが着るだなんて笑いそう。けれど、ヨルクさんの前では普通にしていないと。
「では、そうしてください。私とラルクは第4居間に行きます」
「ナミネ、これから毎日4時に起きて水汲みするの?」
「はい」
「そっか。無理しないで」
これはサバイバルだ。手を抜くわけにはいかない。みんなの暮らしがかかっている。私は髪を結ぶと第4居間に向かった。

第4居間では机に3つランプがついていた。
「あの、アルフォンス王子。どうして水汲み来てくれなかったんですか。妖精村全域停電なんです!これは第2のサバイバルです!与えられた役割はしてもらわないと困ります!」
「すまない。明日は必ずする」
本当だろうか。水汲みをナメているのではないのだろうか。
「アルフォンス王子、明日水汲みしなかったら、洗濯係をしてもらうわよ」
ここでもリリカさんは仕切り役だ。
「分かった。明日からは絶対サボらない!」
サボった?まさか、わざと来なかったのだろうか。だとしたら、腹立つ。水汲みだって体力のいる仕事なのに。
「ナミネ、今からパーティーに出す料理作るから、朝食は使用人が作ったの食べてね」
「はい、ヨルクさん。頑張ってください」
ヨルクさんたち、どんな料理作るんだろう。パーティーではいっぱい食べよう。石鹸作り体験も紙作り体験もする。
私は使用人が持って来た朝食を食べはじめた。ご飯と味噌汁とシャケ。何だか質素な和食だ。それでも紀元前村で食べていた、あの煮物に比べたら、やっぱり何だかんだで妖精村は揃っていると思わされる。
「ほら、新聞だ」
テレビは見れないけど新聞は来るのか。って、手書き!?そっか、コピー機が使えないから手書きするしかないんだ。
読んでみると、停電に便乗して真夜中のスーパーで窃盗が起きる。防犯カメラも作動しないし、いくらランプを付けても夜は暗い。災害の時ほど盗みを働く人は出てくる。紅葉町も平和とは言えないな。
「あ、落ち武者さん、それって……」
「さっき、買い出しに行ってきた。紀元前村で使ってた材料買ってきたから顔だけヨルクに渡す。スーパー、かなり混んでたけどね?」
やはり、この非常事態。商店街は人で溢れているのか。特に、非常用リュックを買っていない人は慌てて買いに行く人もいそう。トイレとか死活問題だもんな。
「セナ王女、階段とか危ないですので、電池なしの懐中電灯を置いてはいかがでしょう?」
貴族はいつも膨らんだスカートのドレスで来るから、ランプだとスカートに引っかかった時が厄介だ。
「そうするわ」
「ねえ、ラルク。朝食が質素だね」
「朝なんだから少ないほうがいいだろ」
そうだろうか。私はいっぱい食べたい。けれど、この非常事態では食べられる食事も限られている。その点も紀元前村の時のようだ。テレビも付けられないと朝の時間が長く感じる。
時計を見ると7時。停電ひとつで、こんなにも時間って進まないものなのか。紀元前村では常に動いていたからなあ。
パーティーは10時から。そろそろ準備しはじめたほうがいいだろうか。
その時、ヨルクさんが来た。え、もう終わったの?しかも、あの服に着替えてるし。ダ、ダサイ。せめて、指定の下着履いてくれていたら……。
「ナミネ、色々説明したらズームさんが既にノート取ってて、料理係はかどってるよ」
私は咄嗟にヨルクさんから目を逸らした。
「そ、そうですか。私たちはそろそろパーティー会場のセッティングをしに行こうかと思っています」
私はラルクにもたれかかった。
「そっか、じゃあ私も一緒に行くね」
「ヨ、ヨルクさん。寒いのでカーディガン羽織ってください」
「ずっとではないけど、パーティーの時、少しだけカーディガンは脱いでもらうから」
カーディガンがあると紀元前村の時の雰囲気出ないもんね。今は4月だし紀元前村にいた時ほど寒くはないから少しくらいノースリーブでいても大丈夫か。
「はい、承知しています」
みんな集まって来た。どうしても男性陣のステテコもどきは目立って仕方ない。落ち武者さんとかナルホお兄様みたいに、あどけない人は不自然じゃないんだけどな。
とりあえず、トイレ行っておこう。

客間の扉を開けると、まさかとは思っていたけど案の定、便座に大きいのがついている。私は写真に撮ったあと、ウエットティッシュで落として便座を拭いたら、ナプキンを取り替えた。念の為、ナプキン入れは大きめのにしてあるけど、誰も掃除しなさそう。とにかく、この写真、リリカさんに見せないと。
私は再び第4居間に戻って行った。

「あの、今トイレに行ったら、こういう状態だったんですけど!どうして自分で汚したのは自分で掃除してくれないんですか!」
私は画像をみんなに見せた。案の定、アヤネさんは目を背けた。
「本当、迷惑ね。ナミネは、ただでさえ水汲みで忙しいのに、こういうの困るわ」
「アヤネさん、あの部屋には電池式のカメラ取り付けています。紀元前村の時の二の舞にならないように。今後掃除しないなら、カメラの映像を今すぐズームさんに見せてきます!」
カメラなんて取り付けていないけど、もうここまで来たら取り付けちゃおうかな。
「やめてください!どうしてプライバシーの侵害的なことをするんですか」
「お言葉ですが、紀元前村にはプライバシーもヘチマもありませんでした!」
これって、自白してるも同然じゃない。どうして、自分で汚したものをそのままにするのだろう。教育がなってない。
「アヤネ、今後、自分で汚したものを掃除しないのなら、ここを出ていってもらうわ!自分の別荘で使用人に何もかもやってもらいなさい!」
それがいいと思う。貴族は結局、自分のことは全て使用人に丸投げだ。人のこと言えないけど、私はトイレを汚したりなんかしない。そもそも、武士はある程度トイレが長い仕組みになっている。それに対して貴族は内官並にトイレが近い。
「分かりました。別荘には戻りたくないので、今後は必ず同じ過ちは繰り返しません」
好きな人がいると、傍にいたいというわけか。既にロォラさんがロックオンしてるのに。
「あ、セナ王女の別荘にも簡易トイレを置かないといけませんね」
「そうなのよ。すっかり忘れていたわ。料理係の料理が出来次第、みんなで手伝ってくれるかしら」
ここでは凝固剤も使えるし、ナプキンとかトイレットペーパーとかウエットティッシュなど、必要なものは置かないと。
「ナミネ、パーティーは長いし、普通のナプキンよりこっちのほうが、あまりトイレ行かなくていいんじゃない?薄型で目立たないし」
しまった。思わずヨルクさんを直視してしまった。ステテコもどきから、あのダサイパンツ透けてる。
「いらないです!!」
私は無意識にヨルクさんを突き飛ばしてしまった。ヨルクさんは後ろ向けに尻もちをついた。
「そっか。余計なお世話だったね」
「ごめんなさい、ヨルクさん!使います!」
私はヨルクさんを起こし、抱き締めた。ヨルクさん、ごめんなさい。大切な彼氏なのに、恥ずかしいとか思ってしまって。
ヨルクさんは私の頭を撫でた。
「ナミネは悪くないよ。痛み止めも無理せず飲んでね」
「はい」
どうして突き飛ばしてしまったのだろう。今になって後悔している。いつも私のことを考えてくれるヨルクさん。何世紀も待っていてくれたヨルクさん。愛おしくて仕方ないよ。
「セナ王女、飲み物はフルーツで味付けした水がいいと思うのですが、だとしたら、タンクも運ばないといけません。私とラルクは水を運ぶので、折りたたみ式トイレや付属品、ランプ、料理、その他必要なものは、他のメンバーで運んでもらえますか?移動は徒歩になるので、重たいものは力のある人が運んだほうがいいと思います」
ナノハナ家からセナ王女の別荘までだと、キクリ家からより少し遠くなる。今は徒歩で運ばないといけないから、どうしてもキクリ家は通らないといけない。
「水も簡易トイレもキクリ家から運んだほうが効率いいとカナエは思います」
そっか、それだと、ナノハナ家から持っていくより体力的に楽だ。
「分かりました。私とラルクはキクリ家から水を持って行きます」
「じゃあ、私とリリカとナナミは簡易トイレね」
「僕は箱に入れてランプを運びます」
ミツメさんはランプと。グラスはセナ王女の別荘にあるから、持って行かなくてもよし。あれ、でも、セナ王女の別荘に簡易トイレないのだろうか?
「あのセナ王女の別荘に簡易トイレってないですか?」
「私、非常時はトイレって殆ど使わないから非常用トイレは全てビニール袋なのよ。カランのなら1つあるけど、足りないわ」
そうか、セナ王女もそんなにトイレに行かない体質なのか。どうしても、武士、騎士と内官とでは暮らしに差があるな。
「そうですか。ではキクリ家から運ばなくてはいけませんね」
「足りないものは私の別荘から持って行って」
そうだった。キクリ家よりユメさんの別荘がセナ王女の別荘に1番近いんだった。
「では、足りないと気づいた時は体力のある人がユメさんの別荘に行かなくてはなりませんね。ここから持って行くもの以外は全てキクリ家から持って行きましょう」
「料理は落とされたりしたら困るから、私やカラン王子など丁寧に運べる人が運ぶ」
グラスやランプは変えが効くけれど、料理だけは、何としても確実に持って行かないといけない。
「そうですね。では、料理はロォラさん、カラン王子、ナヤセス殿、ロォハさん、ヨルクさんが持って行ってください」
「分かりました」
「ナミネ、心配いらないよ」
「分かった」
「うん、分かった。頑張るね、ナミネ」
役割は決まった。私は白いカーディガンを着てリュックを背負った。いよいよ、年度はじめビッグイベントがはじまる。

私たちはナノハナ家を出て、キクリ家で一旦止まって、私とラルクはキクリ家の井戸から水を汲んでナノハナ家に置いているほどの大きなタンクではないものの、100リットルのタンクに水を入れた。セナ王女たちも簡易トイレをリュックに入れ、ミツメさんは箱にランプを入れた。ここでもセレナールさんとアヤネさん、ミネルナさんは何もしないが、他の人は薬やタライ、消毒液などを運んだ。
「ねえ、ラルク。アヤネさんて、内官だよね」
「今それ言うなよ」
「ナミネの言う通りアヤネは内官よ。簡易トイレがなかったらどうするのかしらね」
やはり、思うことは皆同じだ。リリカさんもアヤネさんを内官と言っている。
「内官て、どういうことですか」
「ねえ、ラルク。アヤネさんて頭も悪いんだね」
「現代の内官は昔とは違うだろ」
そうだろうか。違うところなんて、手術がほぼ成功するところだけのようにしか思えないけど。まあ、今はオムツもあるし、内官も間に合うか。
「あんた、なんで内官に拘るのさ」
「簡易トイレ汚すのがアヤネさんばかりだからです。アヤネさんは臭いです」
「だから、なんで内官なわけ?」
落ち武者さん、本気で言っているのかな。
「内官は手術をします。その手術によって、トイレがかなり近くなり、間に合わないこともあるんです。今でこそオムツがありますが、それがなかった時代は決して今みたいに綺麗なものではありませんでした。制服だって毎日洗濯出来るわけではありませんし」
「そゆこと。ま、汚したのはアヤネなわけだから言われても仕方ないだろうけど。内官には失礼だけどね?」
失礼かもしれないけど。遠い昔は制服汚してたのは事実だし、それって周りからしたら結構迷惑だと思う。国王とかどうしていたのだろう。側近なだけに、悪くも言えないだろうし。
あ、セナ王女の別荘が見えてきた。やっぱりキクリ家から運んだほうが楽だった。
「あの、どうして私ばかり侮辱するんですか!」
「お言葉ですが、アヤネさんて便秘薬飲んでますよね?紀元前村で、やたらカナエさんの調合した便秘に効く薬が減っていました。出すもの出すのはいいですが、それを掃除しないことを私は指摘しているんです!」
この時の私は、アヤネさんが極度の便秘症で、便秘薬も非刺激的のものではなく、刺激的のものを毎日飲んで、だんだん効かなくなって酷い時は1箱飲んでいることを知らなかった。
「今後は掃除すると言ったではありませんか!あんまりです!」
アヤネさんは泣きはじめた。
「ナミネ、やめようか。トイレの件は分かった。言ってくれれば僕が掃除するから、誰か1人を攻撃するのはやめよう」
ナルホお兄様って平和主義だけど、何だかカナエさんとは恋人というより友達に見えるんだよな。
「はいはい、すみませんでしたー!」
私たちはセナ王女の別荘に入りはじめた。

今から10時までに、セッティングしなければ。水はどうしても零してしまうと大変だから、私とラルクは別荘の庭にタンクを置いた。水が出るところにタライを置いて、横に石鹸。これで完了。
4階でパーティーが行われるから、他の係は4階の客室に簡易トイレと付属品を設置したら、料理とランプは机に置いて、紙作り体験と石鹸作り体験の道具は四角い木の机に置いた。
今日は天気がいいからカーテンを開けると、そこそこ明るい。昔の人はこんなふうに過ごしていたんだな。
料理、美味しそう。少しつまみ食いしてもいいかな。私は、料理に手を伸ばした。
「ナミネ、何してるの?」
「い、いえ、何もしていません」
ヨルクさん、いつも私のこと見てるのかな。私はヨルクさんに抱き着いた。
「そうやって見せ付けるのやめてください。元々は僕とナミネさんが愛し合っていたんです。でも、兄妹だから、何度も縁談話持ってくるヨルクさんを家族は選んで、僕とナミネさんは引き離されたんです」
いったい、いつの話をしているのだろう。カンザシさんと兄妹でも、私はずっとヨルクさんのことが好きだったはず。カンザシさんの言っていることがよく分からない。
「あの、カンザシさん……」
「レタフルさんとヨルクさんは恋人でした。これが証拠の写真です」
私はカンザシさんから渡された写真を見た。かなり古いものだけれど、確かにヨルクさんだ。私は涙が零れていた。
「そんな……嘘だろ……」
アルフォンス王子も傷付くと同時に私は大泣きしてその場に崩れた。

……

あとがき。

内官の方、ごめんなさい。でも、死ぬリスクもあるのに、暮らしのために人生の選択してたんだね。

これ現実だったら非常用品を徒歩で運ぶの大変そう。

ヨルクを突き飛ばしちゃうけど、そのことで、ヨルクのことを改めて大切だと気づくナミネ。2人にはずっと恋人でいてほしい。セナやカラルリ、カナエやアルフォンスみたいになってほしくない。2組も今のナミネとヨルクほど愛し合っていたのに。
もし、次、純愛偏差値を別の時代で書くとしたらナミネとヨルクも拗れていたらいやだな。

……

この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
純愛偏差値 未来編 一人称版 89話

《ヨルク》

妖精村に戻ってきたナミネは、紀元前村にいた時とは別人になったかのようにナノハナ家では何もせずゴロゴロしている。それだけ、紀元前村では張り切っていたのだろうか。けれど、また私がナミネのお世話をする役目が出来て、とても嬉しい。
紀元前村でもナミネとは一緒の寝袋で寝ていたけれど、こっちに戻ってきてからも一緒にお風呂に入っているし一緒に寝ている。
でも、突然知ってしまったレタフルという人魚の存在。私は、そのような人魚に会ったことさえない。けれど、ナミネはレタフルという人魚の存在を気にして落ち込んでいる。どうにか励ましたくて可愛い下着ショップに誘ってみたものの……。
「ヨルクさん、セクハラです!」
ナミネは泣きながら第4居間を出て行ってしまった。
「あんたも不器用だな。強気なナミネはサイズが大きくなったんだよ」
「えっ、そうだったの!?」
いつもナミネの洗濯をしているのに全く気づかなかった。私はナミネを励まそうとして逆にナミネの乙女心を傷付けてしまったのか。このままではナミネに嫌われてしまう。
私はキッキンで、紀元前村で作っていた材料でスコーンを作った。

「ナミネ、入るよ」
私はスコーンを持ってナミネの部屋に入った。扉を閉めると私は机にスコーンの入ったお皿を置いた。洗濯物を見ると確かにAカップからBカップになっている。
毎日一緒にお風呂に入っているのに全く気づかなかったなんて恥ずかしい。ナミネはショックだったのか布団に横になっている。
「ナミネ、ごめんね。紀元前村で使っていた材料でスコーン作ったから食べて」
「ヨルクさんは浮気者です!すぐに心変わりします!胸の大きな人がいれば、そっちに乗り換えます!出てってください!」
多分ナミネは泣いている。私はナミネ以外を好きになったことはない。けれど、ラルクの結界でナミネとアルフォンス王子の会話を聞いていたとも言えず、私は慰めの言葉1つ見つけられずにいた。
「このスコーン、なかなかイケるじゃん」
ふと見ると、ナミネのために作ったスコーンを落ち武者さんが食べていた。
「ねえ、どうして落ち武者さんが食べてるの!ナミネのために作ったんだけど」
「これだけあるんだから1つくらいいいだろ」
まあ、1つならいいけれど。出来ればナミネに食べてほしい。
「ヨルクさん、出てってください!」
「ナミネ、何があったの?このままナミネに嫌われたままだといやだからちゃんと話したい」
私はナミネの布団をめくった。すると、ナミネは布団の中でポテトチップスを食べていた。しかも、布団にポロポロこぼれている。
「ナミネ、どうして布団の中で食べるの!布団が汚れてるじゃない!」
ナミネはそそくさに布団から出て、机に置いたスコーンを凄い勢いで食べはじめた。私はナミネが汚した布団を小型の掃除機で綺麗にした。
「浮気者はこうやって女の胃袋つかむんですね」
今度は机が汚れている。
「ナミネ、私は浮気なんてしてない!小さい頃からずっとナミネのこと見てきた。ナミネ、ちゃんと話そ」
「浮気者と話すことなんてありません!」
いくら夢を見たとはいえ、その言い方、癪に障る。
「どうして私が浮気者なの?証拠でもあるの?」
「今はありませんが、近いうちに出てきます!」
「何それ!話し合いもせず、いきなり私を浮気者扱いして気分が悪い!もういい!お風呂入る!」
心が狭いだろうか。レタフルという人魚のことで突然ナミネから無実の罪を着せられ、私も対処のしようがなく、怒ってしまった。

ただでさえ広いお風呂。1人で入ると余計に広く感じる。
少し眠ってしまっただろうか。ふと、横を見るとナミネがいた。
「ナミネ!」
ナミネは無言で私にもたれかかった。紀元前村で公衆浴場に入ったのは1回だけだから、こっちに戻って来てからナミネと2人きりで、お風呂に入るのは新鮮な気持ちだ。いつもは落ち武者さんに邪魔されるから。
「ヨルクさんは、本当に私と結婚するのですか?」
「するよ!ずっとナミネと一緒になりたくて、縁談書持って来てた。返事なくても、それでもナミネと交際したくて諦めなかった。あの日、思い切って告白してよかったと思ってる!」
ナミネは今どんな気持ちだろう。やはり、見知らぬ人魚のことで落ち込んでいるだろうか。それでも、私はこの先、何世紀経とうと、ずっとナミネを好きでいる。ナミネ以外だなんて考えられない。
「ヨルクさん、絶対心変わりしないでください。私を捨てないでください」
ナミネ、いったいどんな夢を見たの。こんなにも落ち込んでいるだなんて可哀想に。
「絶対に心変わりなんかしない!私は何世紀経とうとナミネと、ずっと一緒にいる!」
「ヨルクさん、人魚の湖は、お留守番していてください」
何故そうなる。今は信用してもらえないのだろうか。けれど、そこに行かないわけにはいかない。ちゃんと、ナミネが精神を病んだ原因のレタフルという人魚に会って話を聞かないと。
「ナミネ、私も行くよ」
私はナミネの手を握った。
「あんたら、仲良いな」
「ねえ、落ち武者さん、どうしていつも邪魔するの?せっかくのナミネと2人きりの時間なのに」
「ここ、あんたらだけの風呂じゃないだろ。もうすぐみんな入ってくるし、みんなに出てけって言うのかよ」
もう、そんな時間になっていたのか。ナミネはポテトチップスとスコーンをいっぱい食べたから夜食は、お粥でも作っておこう。
「ナミネ、夜食にお粥作るから、お腹すいたら食べて」
「はい」
私はお風呂から上がりキッチンへ向かった。

ナミネのお粥っと。
私は玄米と白米を混ぜて塩で味付けして上に梅干しを乗っけた。ナミネの部屋に持って行こうとすると、ナミネが濡れた髪のままで後ろにいた。
「ナミネ、髪濡れてる。部屋に行こっか」
「はい」
私はナミネを連れて部屋に行った。

お粥を机に置くと、私はナミネの髪をタオルで拭いて乾かしはじめた。ナミネの髪も定期的に乾かしている。紀元前村では、ナミネはずっとお風呂に入らず髪を後ろで結んだままだったから、こっちに戻ってきてからの暮らしは何気なく新鮮だ。
ナミネ、少し髪が伸びただろうか。また伸ばすのかな。
「ナミネ、お腹すいたら、お粥食べてね」
「はい」
ナミネはテレビを付けて私にくっついた。ナミネ、可愛すぎる。私がナミネを抱き締めた瞬間、落ち武者さんが入って来た。
「ねえ、落ち武者さん、どうして家に帰らないの?」
「みんないるんだからいいだろ」
「でも、ここじゃなくても客間とかあるでしょ」
「僕だけ仲間外れってわけ」
また、この狡い反応。どうして客間に行かず私とナミネとの時間を邪魔するのだろう。
「そうじゃないけど……」
後からエルナも来た。これでは、紀元前村のテントの中の時と変わらない。
「エルナも帰らないの?お家の人とか心配しない?」
「やっぱり紀元前村での名残がなかなか消えないのよ。今は役割なんてないのに、それでも、あの時の時間が忘れられないわ」
みんなそういうものなのか。私はナミネがいるからナノハナ家に留まっているけれど、みんな共に暮らしていた紀元前村でのことが頭から離れないのかな。私もナミネと交際していなくて片想いのままだったら、ナミネに近づくためにここに来ていたかもしれない。
「そういうもんなんだね」
「強気なナミネ、僕、副委員長なんだ」
何故こういう時に関係のない話で自慢する。
「わあ、やっぱり落ち武者さん社交的だから、そういうの似合いますね!こっちはまた委員長は同じです」
そして、何故私以外の人と話す時、ナミネは明るくなるのだろう。
「あんたは副委員長とかしないのかよ?」
「私は作業とかめんどくさいので、そういうのはしてません。副委員長は、おっとりした女の子です。茶道部もラルクが部長をするかで話し合ってます」
何故、3年生の私を差し置いてラルクが部長をするのだ。
「へえ、あんたら、また同じクラスってわけ。僕も茶道部入ろうかな。甘えセナやセリルたちも高校3年生になったし、進路とか忙しそうだから、僕らが遊んでられるのも今のうちだね?」
「ですよねー!けど、ナヤセス殿も進路はもう決まってますし、カラルリさんは家業継ぐでしょうでし、何だかんだで今年もいっぱい遊べるんじゃないんですか?落ち武者さんも是非、茶道部に入部してください。もうミナクさんもナナミお姉様も高等部に行ってしまったから今の茶道部は案外自由なんですよね」
何故、急に明るくなる。さっきまで、めちゃくちゃ落ち込んでいたのに。
「じゃ、僕とエルナ、茶道部入る」
何故、エルナも入ると決めた。私もナミネと楽しく会話したいんだけどな。私が話しかけると、やっぱりナミネは暗い気持ちになるだろうか。
「分かりました。入部手続きしたら、その日から入れますので」
「ナミネ、そろそろ寝ようか」
「今日はエリートを目指す教室があるので起きてます」
今日というより、それ明日だよね。あまり夜更かしすると明日に響くだろうから心配だな。
「ナミネ、それは0時半からだから、録画して今度見よう。明日のお祝い会のほうが重要だし」
どうしてかナミネは膨れてしまった。そして、私の作った夜食のお粥をレンジで温めると食べはじめた。ナミネってどうしてすぐに食べるのだろう。これだと、またナミネがお腹すいた時のために何か作らないと。
「ナミネ、それ夜食に作ったんだよ。お腹すいても我慢してね」
「ヨルクさん、意地悪です!私、晩ご飯も食べてないんです!」
スコーン食べてたから、夕ご飯入らないと思って、あえて夜食作ったのに。けれど、今のナミネは精神的に不安定だから刺激するのもよくない。
「分かった。別の夜食作ってくるから、エリートを目指す教室見たらすぐ寝てよ?ナヤセスさんとロォハさんのお祝い会行けなかったら後悔するのナミネだからね」
「ヨルクさん、いちいちうるさいです!エリートを目指す教室見てもちゃんと起きれます!」
もうっ、どうして、こんなに憎たらしくなっちゃったの。そういえば、ナミネ、生理遅れてる。生理前でイライラしているのだろうか。仕方ない。夜食だけ作り直してこよう。
「ナミネ、夜食だけ作ってくるね」
「はい」
私は部屋を出て夜食を作りに行った。

キッチンに入るなり停電して、炎の舞を十分に使えない私は咄嗟にイチゴとミカンのフルーツサンドと、フルーツスムージーを作った。あまりクリームは使いたくなかったが、停電してしまっては仕方ない。それにしても、どうして突然停電したのだろう。すぐに復旧するだろうか。
私は再び部屋に戻ろうとした。
「ズーム!もう、あのマンションの家賃払いきれない!これまでみたいに払え!」
「カンザシ!僕にはもうその義務はない!自分の力で稼いで払え!」
カンザシさんとズームさんが口論しているが、私はナミネの夜食を持って行こうとした。すると、誰かが私に抱き着いた。
「ナミネ?」
もし、ナミネじゃなかったらどうしよう。変に誤解されるのもいやだし、ナミネかどうか確かめないと。
「ヨルクさん、どこ触ってるんですか!セクハラです!」
ナミネだった。
「うん、ごめん。暗くてよく見えないからナミネじゃないと、またナミネと喧嘩になると思って」
「だからって、どうしてそういうところ触るんですか!」
でも、それしか確かめる方法ないし、とにかくナミネでよかった。
「ヨルクさんて、女なら誰にでも反応するんですね!」
「ナミネ、やめて!私は後々誤解のないようナミネかどうか純粋に確認しただけだから!」
どうしていつも触ってくるの。本当、色んな意味で交際前だと考えられない。ナミネが私に心を許してくれているのは嬉しいけれど、変な罪を着せられるといやな気持ちになる。
「ナミネ、停電して火が使えないからフルーツサンドとスムージー作ったから、お腹すいたら食べて」
「今食べます」
えっ、ナミネいっぱい食べてたじゃない。どうしてこんなに食べるの?
「ナミネ、今日はいっぱい食べたし、これ以上食べるとお腹壊すよ。それに私、太った人無理だから!」
「ヨルクさんて、体型で決めるんですね。じゃあ、私が太れば関係も終わりですね」
「そうじゃなくって……」
私はただ、ナミネに食べすぎてほしくないだけなのに。ナミネの管理は難しい。
「ちょっと、何騒いでるの!」
セナ王女、起きてきたのかな。
「あ、カンザシさんが、金銭面で騒いでいまして」
「マンションとか見栄はらなくてもアパートで十分でしょ。明日のお祝い会、停電していても決行するから!」
停電でも決行?けれど、朝が来て明るくなっても電気もガスも水道も使えない。これではまるで紀元前村の蓮華町だ。
「しかし、電気もガスも水道も使えないんですよ?」
「何言ってるのよ!私たちには紀元前村で過ごした経験があるじゃない!携帯が必要な人はバッテリーでも持ってくることね」
そうか。携帯はバッテリーが持つ限り使えるのか。けれど、携帯のバッテリーなんてサバイバル用でしか買ってないから2つくらいしか持ってない。
「ねえ、ラルク。私ね、携帯のバッテリー20個あるの」
何故そんなに持っている。目が慣れてきた。ラルクだけでなく、メンバーの過半数が来ているのか。
てか、ナミネがさっき私が作ったフルーツサンド食べてる!それにナミネの部屋で携帯のバッテリーなんて見たこともない。まさか、ナミネ、押し入れに色んなもの詰め込んでいるのでは。
「なあ、ズーム……」
「ねえ、ナミネ!それ夜食だって言ったよね?それに、また押し入れグチャグチャになってるの?停電終わったら片付けるから!水は必要だから今からスーパーで箱買いしてくる」
ここは紀元前村の蓮華町と違って、飲み水の川など存在しない。停電が続くのなら色々買い溜めしておかないと。
「水なら庭に井戸があります。使用人が保管しているガスコンロもありますし、蔵には昔使っていたランプもあります」
そうか、確かに武家にはまだ井戸が存在している。ガスコンロとランプがあるならサバイバルにはなるけれど、過ごせなくもない。
あれ、ナミネのルームウェアが汚れている。
「ナミネ、生理なんじゃないの?今、ポーチと簡易トイレ組み立てるから待ってて!」
「はい」
私は慌ててサバイバルリュックを取りに部屋に戻った。

ナミネの部屋に入ると、ナミネの生理用品が入ったポーチと着替えと、簡易トイレとトイレットペーパーを持って、1回の適当な客間に簡易トイレを設置して、トイレットペーパーとポーチ、着替えを置いて、再び第4居間に戻った。

「ナミネ、4番目の客間に簡易トイレ設置したから行ってきて!着替えとポーチもあるから!汚れたのはビニール袋に入れて持って来て!」
「はい」
ナミネは第4居間を出た。紀元前村から戻って来て、また簡易トイレを使うことになるとは思わなかった。本当、いつ何が起きるか分からない。備えは常に必要だ。
「顔だけヨルク、皇室からだ」
皇室から知らせが入ったのか。私は落ち武者さんから文を受け取った。
『現在、妖精村全域停電。復旧は未定。
皇室』
やはり、いつ復旧するか分からないのか。
その時、ラルクがランプを人数分持って来て、炎の舞で明かりを灯した。こんな夜だとランプがあるとないとでは全然違う。
「みんな、第2のサバイバルよ!簡易トイレは男女別に客間に2つ置いて、ガスコンロは通常通りキッチンで使って、水は井戸で汲んだのをタンクに入れるわよ!」
リリカお姉様、いつ戻ってきたのだろう。これじゃあ、もうはたからみたらラハルさんと恋人だな。けれど、ラハルさんや、ここにいない人は大丈夫だろうか。
「分かったわ!また役割決めないとね!」
その時、ナミネが戻ってきた。
「ナミネ、大丈夫?汚れた衣類は後で洗っておくね」
「はい」
ただ、ここには果樹園も薬草園もない。スーパーやドラッグストアで色々買わないと。
「セナ王女、簡易トイレの設置が終わったら、明日のお祝い会で必要なものを紙に書き出してくれませんか?」
そうか、お祝い会でも不足のないよう準備をしなければならない。セナ王女も、どうしてこんな時に決行をするのだろう。
「分かったわ。簡易トイレの設置、お願い出来るかしら」
「はい。皆さん、再びサバイバルがやって来ました。サバイバルとはいえ、電気、水道、ガスが止まっただけで、あとのものは存在しますが、それでも、洗濯器は使えません。お風呂も湧かせません。ガスコンロも限りがあります。ここには果樹園も薬草園もないので、おおむね混むだろうスーパーに買い出しもしに行かないといけません。簡易トイレの設置は私とラルク、落ち武者さんて行います。ヨルクさんは、ここにいない人たちに連絡してください。注意点ですが、タライで洗濯はしますが、分厚いコートとかは流石に入り切りません。もう4月なのでカーディガン程度にしてください。では、取り掛かります」
さっきまで、ゴロゴロしていたナミネは、また紀元前村の時のように仕切りはじめた。何故ナミネはいつもキビキビ動かないのだろう。仕事とプライベートというヤツなのだろうか。
ナミネとラルク、落ち武者さんは簡易トイレ設置のため、第4居間を出た。私は、ラハルさんと、ロォラさん、ナヤセスさんに連絡をした。
『あの、妖精村全域が停電ですが大丈夫ですか?』
『ああ、アニキいるし私は大丈夫だ。明日、決行だってな。セナ王女も曲げない人だな』
ロォラさんは大丈夫と。ロォハさんは医者だから、持ち前の知恵で乗り切るだろう。
『大丈夫だよ。色々買い溜めもしてたしね』
ナヤセスさんも大丈夫。やはり、こういった時の買い溜めはスペースがあるのなら、買っておくに越したことはない。
『こっちでは普通の暮らししたかったけど、慣れてるからね。僕は何もなくてもやっていけるよ』
こういう時に1番強いのは、やはり経験者より、その暮らしが当たり前だった人か。色々考えさせられるなあ。
『今日1日は大丈夫だけど、明日からそっちでお邪魔してもいい?』
『はい、大丈夫です。明日はナノハナ家で朝食取ってください』
ラハルさんは、やはり電気、ガス、水道が止まると調理も出来ないし不便だよね。
「リリカお姉様、明日からラハルさん、ここで過ごすそうです」
「今すぐ迎えに行くわ!」
何ともリリカお姉様らしい。ラハルさんのこととなると、奈落の果てまで着いて行きそうだ。
リリカお姉様と入れ違いにナミネたちが戻って来た。
「皆さん、今、客間に2つずつ簡易トイレを設置しました。女子用はナプキン、サニタリーパンツ、汚れた衣類を入れる箱を置いています。けれど、ここはナノハナ家。極力汚さないでください。何度も言いますが、これはサバイバルです。地面に簡易トイレわ置くのと、家の中に置くのとでは天と地の差です。我が家を汚されては困りますので、トイレ掃除は私がします。それと、ここには果樹園も薬草園もないため、スーパーに買い出しに行かないといけません。買い出しは私とラルクで行きます」
これが仕事モードのナミネなのだろうか。ダラけている時とは全然違う。
「いや、僕とエルナで行く」
買い出し。こんな状況では買えるかどうかも分からない。品物を人より先に取るには落ち武者さんやエルナが相応しいだろう。
「では、買い出しは落ち武者さんとエルナさんにお願いします。私はトイレ掃除と水汲みをします。水は洗濯用のタライと飲み水用のタンクに入れます」
「ナミネがそんなのすることないわ。トイレ掃除は、アヤネとセレナールにさせるわ。ここでも、紀元前村の時と似たような役割がよさそうね」
リリカお姉様、もう戻ってきたのか。ラハルさんのアパートはここから近いというけれど、本当に近いんだな。
「ミツメさん、素朴な疑問ですが、こういう時でもマンションの家賃て取られるのでしょうか?」
「はい、借りている以上は停電が起きたとはいえ、家賃は払わなくてはなりません。もうここまで来るとリーダーに借金してもらうしかありません」
「カンザシのことは私が助ける!マンション代も私が払う」
タルリヤさんは、かなりの困難な中、生きてきたというのに、パトロンのいる人は、こうまで楽が出来るものなのか。
「ナミネとラルクは水汲み係、カナエとナルホは植物係、セルファとエルナは買い出し係、セナ王女とナナミ、私は加熱係、カラン王子、ユメさん、クラフ、ズームは料理係、アルフォンス王子、カラルリさん、ヨルク、ミネスは洗濯係、セレナール、アヤネ、ミネルナ、カンザシ、ミツメはトイレ係をしてちょうだい」
私は洗濯係か。紀元前村の時と同じだな。
「洗濯係なんて出来ない。せめて加熱係に回してほしい」
紀元前村では、あれほど加熱係をいやがっていたのに、ここでは崖に登らなくてもいいから、難易度の高い加熱係を希望したか。
「それなら、水汲みをしてくれないかしら?ナミネとラルクだけでは足りないわ」
「分かった。ナミネとラルクがするのならやる」
何故、ナミネとラルクに拘る。あれ、ラハルさんは何をするのだろう。ここでも、リリカお姉様がいるからラハルさんだけはのんびりしてられるのだろうか。
「トイレ掃除なんていやです」
「私もいやだわ」
「どうして私がトイレ掃除なのよ!」
やはり、セレナールさん、アヤネさん、ミネルナさんは拒絶するか。
「与えられた役割をしない人は自分の家に帰りなさい!エンジンも限られているから馬で帰ることになるだろうけどね」
3人は黙り込んでしまった。予期せぬ、第2のサバイバル。乗り切れるだろうか。その時、セナ王女が明日必要なものをみんなに見せた。

……

あとがき。

サバイバルの後でまたサバイバル!

……

この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
純愛偏差値 未来編 一人称版 88話

《ナミネ》

感染症コロディーが蓮華町に流行り出して3日が経った。看病しているメンバーが疲れて来ているのは目に見えている。コロディーは体内の菌を出し切れば10日で治るそうだが、患者は1日目の夜中に嘔吐だけでなく下痢もするようになり、みんなは患者のお尻も拭きはじめた。
ユメさんは貴族ゆえ、かなり抵抗があるみたいだが、それでも頑張ってくれている。
みんな食事もしているし、20時には寝ているものの、このまま患者の看病をし続ければ、この中のメンバーが感染してもおかしくない。
患者は嘔吐と下痢を何度も繰り返すため、消毒液も半分になった。その時、ユメさん、カラン王子、ミネルナさんが倒れた。
「ユメさん!カラン王子!ミネルナさん!」
私が駆け寄るより前にナヤセス殿とロォハさんが診察をした。疲労からかコロディーに感染していた。私とラルクは3人を結界の中に運んだ。
コロディーは止むどころか悪化している。体内から菌を出そうとしているからだろうか。経口補水液もすぐになくなるから、定期的に作らなくてはならない。
「あの、コロディーはまだ完治の方法が分からない病気ですし、リンゴを使うのもやむを得ないのではないでしょうか」
「ナミネ、僕は全員を必ず救う。リンゴは使わないよ」
ナヤセス殿。あくまで持ち前の医療の知識で治すつもりなのか。それでも、熱の酷い人はナヤセス殿とロォハさんが交互で夜中も診ているから、熱冷ましの薬が与えられ、患者の熱は最高でも41度までで治まってくれている。
みんなは、患者の清潔を常に保った。
私は毎日4時に水を汲んでいる。タライの横にはズームさんの作った石鹸と消毒液を置いているのである。
その時、アヤネさんとアルフォンス王子が顔が真っ青なまま、こちらへ向かって来た。ナヤセス殿が診察したところ、コロディーに感染していた。私とラルクは2人を結界の中へ運んだ。
逃げていても感染する時はする。それが感染症なのだ。

コロディーが流行り出して6日が経つと、患者の体内から菌が減っていた。患者の嘔吐も下痢も水っぽくなっていて、酷い時に比べたら、かなり拭きやすくなったと思う。
ロォラさんが作ってくれた布オムツも活躍していた。
点滴を打つ患者も少なくなり、みんな経口補水液を飲むようにもなって来た。あとひと息、あとひと息だ。私たちは辛いながらも患者を救うため、持ち堪えていた。
けれど、コロディーが終息したら、私たちは妖精村に戻る。2ヶ月近くいたこの蓮華町ともお別れだ。そう思うと少し寂しい。

コロディーが流行り出して14日後、結界にいた患者は全員完治し、金が1回鳴った。
「コロディーが終息したぞ!」
「やっと治った!」
「本当辛かった!」
「これでやっと元の暮らしに戻れる!」
(以下略)
蓮華町にやって来たコロディーは終息した。
私は結界を解き、患者だった人に着替えを配った。コロディーに使用したものはワラの敷物やタライも含め全てゴミ捨て場に捨てた。
メンバーのみんなもエプロンを処分し、新しい服に着替えた。
その時、お姉さん家族が来た。
「ナミネ、今更だけどごめんなさい。あの頃の私は、いいところに生まれたナミネに嫉妬してナミネを妖精村に戻さなかった。今となっては取り返しのつかないことをしてしまったと思っている。謝って済むことではないけれど、謝るしかないわ」
「ナミネ、何度も相談に来てくれていたのに、わざと何もしなくて辛い目に合わせてごめんなさい。ここにいる以上、私の人生は楽しむことさえままならないけど、反省しながら生きていく」
お姉さんと私が産婦人科で取り違えられて、どのくらい経ったのだろう。大昔のこととはいえ、フルートさんから聞いた時はショックだったけど、時を超えて謝ってくれた。私も、お姉さんにはやり過ぎたかもしれない。妖精村に戻ったら、お姉さんに下された皇室の罰は番人にお願いして、なかったことにしてもらう。それでも、ここでの暮らしは辛いだろうけど。
「謝っていただいただけで、もういいです。私は明日ここを発ちます。短い間でしたが再び出会えてよかったです。どうか、お元気に過ごしてください」
「もう帰るのね。もう、同じ過ちは繰り返さない。ナミネ、元気でね」
「私は、また縫い物の仕事をして市場に売るわ。妖精村に戻っても、ここで過ごした時間忘れないでね」
今のお姉さんは、いい人だ。古代のような暮らしを受け入れ必死に生きている。辛い場所ではあるかもしれないけれど、お姉さんには、ここでやるべきことをして生きて欲しい。この町が他の町と同じ暮らしになるまで、諦めないでほしい。
「はい、この町はきっといつか変わります。それまで頑張ってください」
お姉さんと母親は一礼すると家族とともに家に帰って行った。

私とラルクと落ち武者さんは、おばあさんの家に行き挨拶をし、必ずまた来ると言った。私は別れの悲しさからさ、おばあさんに少しの間抱き着いていた。
おばあさんは、妖精村に戻っても、ここでの暮らしは忘れないで今後に役立ててと言っていた。おばあさんとは、妖精村でまた会えるかもしれない。それまで、私はガムシャラに生きる。ここの暮らしで学んだように。
その後、タルリヤさんの家に戻るとフルートさんとヤクゼンさんらしきコビトが別れの挨拶に来た。私は2人とも抱き締めた。泣きながら抱き締め、また会おうと約束をした。

ここでの食事は、これで最後だ。
煮物を作ってくれたタルリヤさんのお母様にも感謝をしないと。
その時、紙飛行機が飛んで来た。私は紙飛行機を開いた。
『この度の働き、ご苦労だった。ナヤセスとロォハの功績を認め、2人を正式な医師に認定する。 紀元前村 皇帝陛下』
中には証明書も入っていた。私は2人に証明書を渡すと同時に紙飛行機の内容も見せた。これで2人は晴れて医師だ。妖精村に帰ったらお祝いをしないと。

翌日、私たちは不要なものは全てゴミ捨て場に捨て、テントを畳んだ。タルリヤさんのお母様に挨拶をすると、みんなナノハナ家のヘリコプターに乗って妖精村へと帰って行った。
最初は、現場を見たら帰るつもりだったけれど、流れで2ヶ月少し、この蓮華町で暮らした。右も左も分からない状況だったし、仲間割れもしたけれど、ガス、電気、水道は全てない。携帯も繋がらない。蓮華町の周りには囲いがあって、隣町にさえ行けない。古代のような暮らしは、これからも続くだろう。その暮らしの厳しさを私たちは身を持って知った。ここで学んだことは絶対に忘れない。

妖精村に戻って、どれだけの日が経っただろう。私は紀元前村での暮らしの疲れが一気に出て、ずっと眠り続けていた。私は寝ぼけながらも、テナロスさんを呼び出し、お姉さんが受けた罰をなかったことにしてもらった。
紀元前村では、毎日のように働いていた私だけど、いざナノハナ家に戻ると、私はまたダラけていた。
そんな私も中学2年生になっていた。また、ラルクと委員長と同じクラスだ。まだまだ人生これからだ。
この先、またヨルクさんといっぱい喧嘩するだろうし、そのたびにどちらも傷つくだろう。それでも私はヨルクさんをもう二度と待たせない。ヨルクさんを心から愛していることを二度と記憶から消さない。まだ、交際して1年も経っていないけど、今ではこんなにも愛おしい。
私にはヨルクさんがいる。
それが生きるみなもとなのだ。

数日後、落ち武者さんを連れてラルクと森の湖南町に行ったら、何故かヨルクさんが後から着いてきて、おじいさんに挨拶をした。ヨルクさんは律儀に取り寄せた高価なお菓子をおじいさんに渡したのだ。その日は、息子さん夫婦やお孫さんも来ていた。1年に1度は里帰りをしているらしい。
おじいさんは相変わらず元気にしていた。おばあさんの話をすると、おじいさんは涙を流していた。おじいさんとしては、おばあさんが転生してもまた一緒になりたい気持ちはあるものの、人が亡くなってから転生するまでには60年から3億年かかる。おじいさんは、いつも愛した人の転生を待っているうちに他に好きな人が出来てしまっていたようだ。どれだけ愛し合ってもいなくなった相方を待つというのは、かなりの忍耐力がいるものだ。妖精村では平均転生するまで100~150年はかかる。そんな年月を1人で待つのは辛い。他に好きな人が出来ても不思議ではないと思う。それでも、またおばあさんが転生した時には一緒になって欲しい。何となくだけど、おばあさんとおじいさんにはずっと愛し合っていてほしい。そんな気がするのだ。
お孫さんといっても、20歳を過ぎていて、その日、私はおじいさんと一緒にお風呂に入った。
紅葉町に戻る時、おじいさんには絶対またいっぱい来ると言った。

翌日、自分の部屋で寝ていた。そして夢を見ていた。
夢の中は未来だろう世界だった。
私とヨルクさんは、当たり前のように恋人だった。けれど、ヨルクさんは次第にナノハナ家に来なくなっていた。
ある日、私がクレナイ家のヨルクさんの部屋に行くと、ヨルクさんは他の女と愛し合っていた。
『ヨルクさん、どういうことですか!』
『ずっと話そうと思ってたんだけど、なかなか話せなくて今になった。ナミネ、ごめん。好きな人が出来た。ナミネとはもう一緒にいられない』
そんな……。ずっと私だけを愛してくれていたヨルクさんが心変わりだなんて、とてもじゃないけど信じられない。また、ハメられたのだろうか。
しかし、番人に聞いても変わったことは何もなく、ヨルクさんは本当に心変わりをしたらしい。番人によると、いくら、大昔からずっと愛し合っていても、いつかはその気持ちも色褪せて少しずつ過去になっていって、別の未来が用意されているらしい。
私はヨルクさんをたぶらかした女が許せなくて、ある夜、ヨルクさんの部屋にカンザシさんを布団に寝かせた。
翌日、ヨルクさんが目を覚ますと、別の布団の中で女とカンザシさんは愛し合っていた。ヨルクさんは、かなりショックを受けたものの、女が事情を説明するとヨルクさんは泣きながら女を許した。
悔しい。
どうしたらヨルクさんを取り戻せるの。
私は嫉妬のあまり、女をナノハナ家に連れて、客間に閉じ込めた。また、岩の結界をかけて外に出れないようにした。
そんなある日、客間を開けると、女は人魚の姿をしていた。女は2週間に一度人魚の姿になるらしい。
私は、人魚の尾ヒレを切り落とした。人魚は悲鳴をあげた。その時、ヨルクさんが来た。
『どうしてこんなことするの!結界解いて!病院連れていくから!』
『解きません!私、ヨルクさんがいないとダメなんです!心変わりしないでください!私のところへ戻ってきてください!』
『ナミネって最低だね。私の好きな人にこんなことして!大嫌いだよ』
ヨルクさんが私に対して思ったこともない感情。ヨルクさんを奪ったこの女が憎くて仕方がない。けれど、時間が経つごとに尾ヒレの切断によって人魚は人間に戻れなくなるらしい。
『お願い!元に戻して!このままだと人間に戻れないわ!』
『戻しません!この泥棒猫!』
そのまま朝が来ると人魚は倒れていた。
『レタフルさん!』
『ヨルク……愛してる……この先もずっと……私を忘れないで……』
人魚は息を引き取った。
ヨルクさんは大粒の涙を零しその場に崩れた。
『レタフルさん、行かないで……愛してる……』
『ヨルクさん、目を覚ましてください!』
その瞬間、ヨルクさんは私を引っぱたいた。
『よくこんなことが出来たよね!ナミネのこと一生恨むから!』
その後、クレナイ家に行ってもヨルクさんは会ってくれず、私はひたすらヨルクさんが部屋を出るのを待って話しかけたが全て無視をされた。
『ヨルクさん、無視しないでください!』
翌日、目を覚ますと書き置きがしてあった。
《天の川村に引っ越します。さようなら。
ヨルク》
『ヨルクさん!!』
私は走ってクレナイ家に向かったがヨルクさんは既に妖精村を出たあとだった。
もし、私があの女のこと我慢していれば、片想いでもヨルクさんの傍にいられたの?
全て私が悪いの?
どうしてヨルクさんは心変わりしてしまったの?
片想いでも私はそれで耐えられたの?

「お願い、ヨルクさん行かないで!!」
気が付くと私は目を覚ましていた。
部屋には誰もいない。
「ヨルクさん!ヨルクさん!ヨルクさん!」
私は慌てて布団から出た。
「あんた、どんな夢見てたんだよ。すんごいうなされてけど?」
落ち武者さん、いたんだ。
「あの、夢の中でヨルクさんが心変わりしたんです!」
「ただの夢だろ」
確かに夢だったけど、物凄くリアルだった。
「夢の中は未来でしたが、私たちは人魚の湖に行きますよね?もし、その時にレタフルという人魚がいたら……」
「未来で顔だけヨルクは、その人魚に乗り換えたんだな?だったら、そのレタフルって野郎がいたら本人に聞くしかないな」
そうだよね。夢のことだけで判断しても仕方ないけれど、本当にいたら怖い。ヨルクさんとは、どんな関係だったのだろう。やっぱり恋人かな。夢の内容が本当なら、ヨルクさんが心変わりした理由が知りたいのだけど、どうすればいいのだろう。
「ヨルクさんが心変わりした理由が知りたいです!」
「あんた、流石に焦りすぎ。明日はナヤセスとロォハの医師免許取得祝いだし、そもそも心変わりしたかなんて、その話だけでは判断し兼ねる。とにかく、あんたは明日のことだけ考えろ!顔だけヨルクは何だかんだで、ずっと、あんたを愛してきたんだ!」
そうは言われても、やっぱり気になってしまうのが乙女心。私はヨルクさんみたいに、いつまでも待てる人ではない。ヨルクさんの心が私から離れてしまえば私は他の人を好きになるかもしれない。それでも、ヨルクさんとはやっとの思いで恋人になれたのだから心変わりなんて絶対にいや。
「分かってるんですけど……」
「もうすぐ夕飯だから第4居間行くぞ」
あれ、部屋で食べないのだろうか。私は落ち武者さんに言われるまま第4居間に向かった。

第4居間では、何故か過半数のメンバーが集まっていた。
「あ、皆さん、いらしてたんですね」
「やっぱり、紀元前村の暮らしの名残が残っちゃって」
セナ王女、あれからミナクさんとはどうなったのだろう。ミナクさんはナナミお姉様と話しているけれど、ミナクさんとセナ王女のその後の恋愛事情全く知らないや。
「あー、ですよね」
「ナミネ、銀のリンゴはヨルクが持ってて、金のリンゴ1つはセナ王女、もう1つは私が持ってるけど、それでいいかしら?」
そういえば、病気を治すリンゴもらったんだっけ。
「はい、それで構いません」
あんな夢を見ただけにヨルクさんが同じ空間にいると気まずい。
「あの、この中でレタフルという人魚を知っている方いますか?」
「名前は知ってるけど、それ以上知りたかったら2人で話してくれる?」
って、実在してるの!?凄く怖いけど聞くしかない!
「はい、お願いします」
私とアルフォンス王子は第4居間を出て適当な客間に向かった。

客間に入ると、お互い座布団に座った。
この時、別の客間でラルクが闇の結界をかけて、落ち武者さんとヨルクさんが私とアルフォンス王子の話を盗み聞きしていることは全く知らなかったのである。
結界なんて遠い昔に消滅したのに、また復活するなんて思ってなかった。結界があると有利な面、盗み聞きし放題な気がして微妙な気持ちだ。
「レタフルとはカナエと出会った後に人魚の湖で知り合った。ひと目見るなり恋に落ち、私は毎日人魚の湖に通うようになっていた。そのうちにレタフルと両想いになってカナエに別れを告げた。レタフルと知り合ってからは何度転生してもカナエがどうしても2番になってしまって、今でもレタフルを忘れられずにいる」
人物を変えれば私が見た夢そのまんまだ。人魚の湖にいるだなんて会うのめちゃくちゃ気まずい。けれど、会ってレタフルさんからも話を聞かないと。
「そうでしたか。アルフォンス王子にそのような過去があったとは知りませんでした。どうして今はレタフルさんとは交際していないのですか?」
「私とレタフルは確かに愛し合っていた。けれど、ある日、レタフルは理由も言わず私に別れを告げた。私は何度も人魚の湖に行ったけれど、取り合ってもらえず、現世ではまたカナエと交際していたけど、レタフルのことがどうしても忘れられず、カナエとは上手くいかなかった」
そうだったのか。カナエさんを超える好きな人がアルフォンス王子にいたというわけか。そして、その想いは今でも続いている。
「そうでしたか。あの、レタフルさんて他に交際していた人とかいますか?例えばヨルクさんとか」
「ヨルクではないが、大昔に大恋愛した男がいるとは聞いていた」
「もしかして、レタフルさんて、人間になったりします?」
「ああ、2週間に一度人間になる。私は毎週レタフルが人間になる日を心待ちしていた。レタフルが人間になった夜は朝まで愛し合った」
やっぱり人間になるんだ!私が見た夢、ただの夢じゃないかもしれない。
「私、夢を見たんです。未来の夢でした。ヨルクさんと交際していたのに、ヨルクさんはレタフルさんに心変わりするんです。そのレタフルさんがまさか実在していただなんて、とてもじゃないけど受け入れがたいです」
「そうであったか。未来となると正夢の可能性もあるな。どれだけ愛し合っていても、時が経てば、その人以上に好きになる人も出てくる。ヨルクはどうか分からないが、少なくとも私は、この世で最も美しいのはカナエだと思っていた。けれど、レタフルに会って、その思いは打ち砕かれた。好きで好きでたまらなくて、ずっと一緒にいても飽きるどころか幸せで、出来ることならレタフルが私をフッた理由を知りたい」
カナエさんではなくレタフルさんか。ヨルクさんも、いつか私より好きな人が出来るのかな。
実在なんてして欲しくなかった。けれど、実在していたと聞いたからには、レタフルさんから聞き出せるだけのことは聞き出さないと。
「近いうちに人魚の湖に行くので、レタフルさんとちゃんと話し合ったほうがいいと思います。私もレタフルさんには聞きたいことがたくさんありますので」
「そうだな。随分と時代は流れた。久々に行くなら、あの時のことを全て話し合おうと思う」
人魚の湖行きは私とアルフォンス王子にとっては、精神的かなりダメージを抱くかもしれない。正直、今から気が重たい。けれど、もしかするとアルフォンス王子とレタフルさんの復縁もあるかもしれない。ヨルクさんはレタフルさんを見たらどう思うだろう。
話が終わると私とアルフォンス王子は再び第4居間に戻って行った。

第4居間に入ると、ミナクさんの風俗通いがセナ王女にバレ、セナ王女はミナクさんを責めながらミナクさんを殴り付けていた。メンバーでいると、いつも騒がしい。けれど、1人よりかはきっとマシだ。
そういえば、ミナクさん、妖精村に戻って来てからナナミお姉様の部屋にしょっちゅう出入りしている。
ううん、今はそんなことよりレタフルさんとヨルクさんが本当に恋愛していたかどうかだ。
「強気なナミネ、見ろよ。ラハルが編集した紀元前村での動画が放送されてるぜ」
私はテレビに目を向けた。私たちのサバイバル生活が映っている。
「本当ですね。少しでも多くの人がこれを見て、蓮華町も現代の暮らしが出来るようになるといいですよね」
こんなふうに紀元前村でのサバイバルの映像をみると、私たちが紀元前村に行ったことも無駄ではなかったと思える。私たちが、あの場所で必死に生きたことが大勢の人に伝わってほしい。
「ナミネ、下着変えた?前のはもう着ないの?」
え、どうして今聞くの?いくら彼氏だからってサイズ変わったこと教える必要があるのだろうか。ヨルクさんて、どうしてこんなにデリカシーがないの。
「はい」
「そっか。小さいサイズ売ってるお店見付けたから今度行こうね」
小さいサイズ?ワンサイズ大きくなったのに、どうして気付いてくれないの?ヨルクさんは私と一緒にお風呂入ってても何も思わないのだろうか。結局胸の大きな綺麗な人にしか興味ないのだろう。レタフルさんのこともあるし、私は気分を害していた。
「ヨルクさん、セクハラです!」
私は泣きながら第4居間を出て部屋に戻って行った。

……

あとがき。

古代編でもそうでしたが、やはり紀元前村のサバイバルが終わると気が抜けて、スランプに陥ってしまいました。
けれど、小説は書きたいので、更新遅れてでもゆっくり書いていきたいなあと思っています。

この小説は出来るだけ長く続けたいです。

続けられるかな。

……

この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
Copyright (C) 2009 雨の音を聴きながら, All right Resieved.
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