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日常のこととかオリジナル小説のこととか。
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ashita
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女性
職業:
地主(土地貸してます)
趣味:
漫画やアニメを見るのが好きです。最推しはフーディーニ ♡
自己紹介:
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ブログ、もう書かないと思ってました。

けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。

小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。

純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。

元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。

ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。

小説、ぼちぼちマイペースに書いてゆきます。

よろしくお願い致します。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

お知らせ。

イラストは現在「ナノハナ家の日常」に載せております。サイドバーにリンクあります。

また、「カラクリよろずや」にて無料のフリーイラスト素材配布もはじめました✩.*˚

フリーイラスト素材も増やしていく予定です(*'ᴗ'*)

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

模倣・無断転載などは、ご遠慮ください。

ブログの小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。

小説・純愛偏差値に関しましては、武家名・貴族名(程度による) / 及び、武官の階級 / 扇子・羽子板・花札・百人一首・紙飛行機などのアイテム使用方法の模倣の一切を禁じております。

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X @kigenzen1874

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〈資格履歴〉

2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
→漢方コーディネーター 合格
→薬膳調整師 合格

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〈資格証明バナー〉

鉛筆デッサンマスター®認定試験資格取得証明
絵画インストラクター資格資格認定証
宝石鑑定アドバイザー資格認定試験資格取得証明
鉱石セラピスト資格資格保持証明
茶道アドバイザー資格認定試験資格取得証明
お点前インストラクター資格資格認定証
着物マイスター®資格認定試験資格取得証明
着付け方インストラクター資格資格認定証
サイキックアドバイザー®資格資格証明
サイキックヒーラー資格資格保持証明
アンガーカウンセラー®資格資格保持証明
アンガーコントロール士資格資格認定証
漢方コーディネーター®資格認定試験資格保持証明
薬膳調整師®資格認定試験資格保持証明
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純愛偏差値 未来編 一人称版 97話

《ヨルク》

私は、綺麗でスタイルよくて胸の大きな女子(おなご)など興味はない。所詮見た目など当てにはならないのである。けれど、どうしてか、ズルエヌさんには、思ってもないことを話してしまった。そのことで、またナミネが怒ってしまった。
何度も何度も常に思っているけれど、私はナミネが1歳の頃からナミネのことを妹のように可愛がり結婚を決めていた。いつも、ナミネが心配で仕方ないのに。
私はキッチンでナミネの夜食を作ったあと、客間に行った。
すると、ナミネが戻って来ていた。
「ナミネ、夜食作ったから、お腹すいたら食べて」
人魚のランプ買っておいてよかった。火は使わないから安全だし。
「はい」
ナミネ、お風呂に入れなかったから、ナミネの身体拭いてあげないと。
「ナミネ、身体拭いてあげる」
私はボディーシートを取り出してナミネの身体を拭いた。キクリ家の浴衣っと。どこもまだ浴衣置いてあるんだな。
私は大人用の浴衣をナミネに着せた。帯のところを2回折れば子供でも着れる。
「じゃ、今夜はここで寝る」
落ち武者さんとエルナが入って来た。
「ねえ、落ち武者さん。どうしていつも付きまとうの?部屋ならいっぱいあるよね」
「また僕だけ仲間外れ?」
どうしてそうなるの。落ち武者さんはエルナといればいいじゃない。
「落ち武者さんは、しつこいわよ」
落ち武者さんは、他のところには行かず、いつも私とナミネのところに来る。
「ナミネ、布団敷いたから一緒に寝ようね」
「はい」
このままキクリ家でいるのだろうか。キクリ家は何だか、そこまで馴染みがある場所とは感じられない気がする。
私はナミネの手を握ったまま眠りについた。

朝目が覚めると、ナミネはまた横にいなかった。普通の時は、いつも寝過ごすくらいの勢いで眠っているのに。
私は浴衣の上に羽織を来て中庭に向かった。
すると、ナミネとラルクが水汲みをしていた。こういう時のナミネはキビキビ動く。
私も洗濯をしなくては。中庭の端のほうでは使用人が洗濯をしている。ナミネとラルクが中庭からいなくなったあと、私はタンクから水をタライに入れて洗濯をしはじめた。
「あの、新しく入った使用人でしょうか?」
振り向くと、高校生くらいの女の子がいた。
「あ、いえ。私は……」
「ちょっと、その子はクレナイ家の坊っちゃまよ」
キクリ家の使用人はベテランが多い。
「あ、すみません」
「いえ、新しく入った使用人ですか?」
クレナイ家にも若い使用人はいるけれど、今の時代ゆえ学校と掛け持ちをしている。
「はい、まだ見習いなんです」
「若いのに大変ですね」
「いえ、住み込みでもしないと学校に通えませんから」
現代でも、タルリヤさんほどではないが、学校に通うお金のない者もいる。
「ちょっとヨルクさん!何口説いてるんですか!」
ナミネ、第3居間にいるのでは。そういえば、私たちは登山服しか持って来てなかったから着るものが浴衣しかない。私は羽織を脱いでナミネの肩にかけた。
「ナミネ、寒いでしょ」
「綺麗でスタイルよくて胸が大きくてよかったですね!ヨルクさん好みじゃないですか!」
「ねえ、どうして、そういうこと言うの?私は毎日ナミネの洗濯してるのに!何故、私を侮辱する」
「ヨルクさんが女たらしだから言ってるんです!」
交際前はしおらしかったナミネが、今ではすっかりいびるようになっている。
「私は女たらしなどではない」
「では、私は学校に行きますので」
「まだ早いでしょ」
今日は学校の日だっけ。停電してから曜日の感覚があまりない。私は洗濯が終わると洗濯物を絞って、タライの水を用水路に繋がる溝に流した。洗濯物を客間に干すと私も第3居間に行った。

やはり、第1居間と第3居間とでは、こうまでメンバーが違うものなのか。セリルさんとカラルリさんは同い年なのに、不思議なもんだな。ナミネの知っている遠い昔では、皆がカラクリ家の同じ居間に集まっていたのに。あの時は、みんな同年代だったからだろうか。
「ここでは、使用人が何でもしてくれます。けれど、このような非常事態だからこそ私は自己管理というものを大切にしたいのです。だから、学校から帰ったら私はナノハナ家に戻ります。1つ言うなら私は、アヤネさんとセレナールさんには来て欲しくありません」
いつも使用人に頼ってばかりのナミネが、ここでそう出るとは……。
「あの、私は反省しています。私もナノハナ家に行きたいです」
「あたかもリーダー気取りしちゃって、何なのよ!兄さんに言いつけるから!」
ナミネがナノハナ家に行くと行ったら、どうしてか、みんなも行きたがる。その時、リリカお姉様がセレナールさんを引っぱたいた。
「あれだけ人間関係壊しておいて、その言い方は何かしら?こっちは、ラルクと交際されているだけで迷惑なの!」
「ごめんなさい、リリカ!あれは、全てアヤネに聞かれたから答えるしかなかったのよ!」
セレナールさんは、いつから変わってしまったのだろう。もし、昔のセレナールさんだったら、仲良く出来ただろうか。
今度はナミネがセレナールさんの腰を蹴った。ナミネ、物凄く怒ってる。
「はい、無駄話はそこまでにして!携帯配るから」
携帯?既に持っているのに、何故配布するのだろう。けれど、ミネスさんは、この場にいるみんなに携帯を配った。
「アンタ、この携帯何なのさ」
「この携帯は、おじいちゃんの会社で開発してる試作品。このメンバー内(登録している人)なら通信が出来る。月々の料金はかからない。つまり、無線が携帯になったようなもの。データ移行は簡単だから。今後は、この携帯使って」
まるで、恋するカードランカーのようだ。あのアニメは、主人公の親友の母親の会社が、まさにこの携帯のようなものを開発していたはず。
「あの、この携帯って、あとで返却するのでしょうか?」
「ううん、あげる」
随分と気前がいいな。この携帯、いくらするのだろう。
「アンタのじいさん何してんのさ?」
「skyグループの会長」
skyグループ。flowerグループやplantグループ、GMグループと並ぶ大手企業だ。やっぱり、ブランケット家は生活規模が違う、違いすぎる。
「これパンフレットなので、よかったら見といてください」
ズームさんは、みんなにパンフレットを渡した。えっ、この携帯商品化されるなら、こんなにもするの?というか、全体的に商品が高すぎる。
「ズームの家って金持ちなんだな。将来はアヤネみたいな貴族と結婚するのか?」
「今、結婚の話してないだろ!ロォラ!」
あ、ナミネの携帯が開いたまま床に落ちている。私はナミネの携帯を拾った。チラッと皇帝陛下と皇后陛下が見えた気がする。真ん中に写ってた子は誰だろう。
「ナミネ、携帯落ちてたよ」
「勝手に見ないでください!」
ナミネは私を突き飛ばした。どうして、携帯拾ったのに突き飛ばされなければいけないのだろう。
「ねえ、なんでそういう言い方するの?私はただ、ナミネの携帯が開いたまま落ちてたから踏んだらいけないと思って拾ったのに!最近のナミネ、全然可愛くないよ!おしとやかさ、全然ないし!私、もっと健気で可愛くって素直な女の子が好きだから!」
やらかしてしまった。この停電で、みんながピリピリしているのだろうか。
「そうですか。学校行きます」
ナミネは立ち上がった。
「アンタら、もっと仲良くしろよ!とりあえず、携帯のデータ移行はしとくように!」
私はナミネを避けるように第3居間を出た。

妖精村全域が停電してからの学校は、私服の人もいるし、来ない人もいる。それだけ、暮らしが安定していないのだろう。武家はともかく、一般家庭はどのように過ごしているのだろう。
私自身も月水金の全ては登校出来ていないが。というか、このメンバーも投稿は疎らだ。この先、どうなるのだろう。週6回の投稿が週3回の部活はなしの5時間目までになってしまい、みんな勉強は追いつけていない。中学生の私はいいかもしれないけど、セナ王女やカラルリさんとか、高校3年生の人は進路のこととか悩んでいないだろうか。
結局、学校までの道はナミネとは一言も話さなかった。

クラスに入ると暗い。天気は曇りだし、窓から入る恒星の光のみだ。これだとナノハナ家やキクリ家よりも暗い。
とりあえずデータ移行は出来た。商品化されたら私では買えないから慎重に扱わないと。私は久しぶりにカップル日記を開いた。

『カラルリと復縁しました♡』
セナ王女、また恋愛モードになってる。今度は幸せになってほしい。気になること多々だが。

『ロォハの医師免許取得祝い』
ミネルナさんと、ロォハさん仲良しだな。

『ユメとは森の湖には行けなかったけど、人魚の湖に来た』
あの時は、森の湖南駅の存在を知らなくて、かなり遠回りさせてしまった。クラフとユメさん連れて、また森の湖に行くのもありかも。

『スーパーでの落ち武者さん』
エルナの投稿はじめて見たかも。2人は復縁しないのだろうか。

閲覧用で登録してる人も増えてるから、初期より、随分賑やかになったな。

『人魚を見つめるヨルクさん』
『ヨルクさんの浴衣姿』
ナミネ……ちゃんと仲直りしたい。

みんな紀元前村でのこともいっぱい投稿している。遡れないくらいに。みんなで行ったところのデータは落ち武者さんが持ってるし、これで遠い未来にも残せる。
今、私たちが色んなところを巡っているように、遠い未来はデジタルとアナログで日記を残せたらも思っている。

1時間目は、小テストだけで終わってしまった。
その時、ミネスさんからもらった携帯が鳴った。ナミネからのメールだった。
『ヨルクさん、今朝はごめんなさい』
ナミネ……よかった……拗れてなくて。
『ううん、お昼にお弁当渡すね』
キクリ家では何でも使用人がしてくれる。けれど、私は非常事態の前から、ずっと家事は自分でしてきた。私もナノハナ家で、ナミネのお世話をしようと思う。
その時、扉が開いてナミネが入って来た。
「ナミネ!」
「ヨルクさん、会いに来ましたよ〜」
何だか、2年生だった頃を思い出す。実感もないまま3年生になってしまったから、ナミネが2年生になった実感もあまり持てていないかもしれない。
「アンタら、何だかんだで仲良いな。とりあえず、紀元前村までは、かなり遡って来たつもりだから、そろそろ休憩挟むために、今度の休みは営業してる店で、ゆっくりしようと思うけど?」
確かに、私たちは冒険と言うべきだろうか。少しでも多くの過去を知るために少々突っ走り過ぎたのかもしれない。古い時代だなんて、一生かけても辿り着けるところまで行けるか分からないのに。この調子では大人になっても、探し続けるだろうか。それとも、大人になれば、メンバーは解散してしまうのだろうか。
「そうですね。私たち、かなりの頻度で知ることのみに集中していましたもんね。そろそろ休憩をしても私はいいと思います」
「あえて聞くけど、アンタらは大人になっても探し続けるわけ?」
やっぱり落ち武者さんも思うか。大人になれば、仕事をしなくてはならないし、結婚しているのなら、尚更自由時間なんて持てない。
「私は大人になっても、みんなと巡り続けたいです!」
ナミネは、やっぱりどこまでも諦めないよね。答えに辿り着くまで。
「僕もナミネと同じ意見です。はじめたからには、納得いくところまで辿りたいです」
ラルク、いつの間に来ていたのだろう。
「そうね、私も落ち武者さんと結婚するから付き合うわ」
「なんでアンタと結婚するのさ」
「僕も仲間に加わった以上は最後まで付き合うよ」
以外にも、みんな知りたいことがあるのか、過去を遡ることに関しては前向きだ。私もそうだけど。
「わ、私も仲間に加わる!」
ナミネが最後まで探し続けるなら私もそうする。こういうのを、同じ船に乗った同士とでも言うのだろうか。
今はズームさんとか有力な人材がいるから、初期の頃より過去の真相が掴めそうな気がする。
そういえば、ルリコさんのことは、あの後、ズルエヌさんが交番に届けるに変更したみたいだ。
「そういえば、ナヤセス殿とズルエヌさん、同じマンションだそうです」
流石はブランケット家。あのような高級なマンションをすんなり契約出来るとは。生まれながらにして恵まれている人って本当にいるんだなあ。
「へえ、金持ちは違うね?」
そうは言えども落ち武者さんとて、天の川村にいた頃は、相当稼いでいたのでは。
「ねえ、ラルク。2時間目も自主学習だけど、自主学習と行っても、自分で教科書進めていかないといけないから、このまま停電続けば留年する人出そうだね」
「ナミネ、留年は高校からだろ。それに委員長が教壇に立って教えてるんだから教師いなくてもいいだろ」
確かに、単位は高等部からだけど、担任が教科書を進めないだなんて、いささか問題があるようにも感じる。
その時、チャイムが鳴り出し、ナミネとラルクは慌ててクラスへ戻って行った。

2時間目も小テスト。
これ、意味があるのだろうか。こちらは、全く教科書が進んでいない。高等部に進学するには中学3年生という今の時期は大切なのに。
妖精村学園に通ってる大半は、幼稚園から大学まで、そのまま通うけれど、中には中学から、或いは高校から転校していく人もいる。けれど、私は妖精村学園に入ったからには、大学までは通いたいと思っている。
その時、落ち武者さんが教壇に立った。
「じゃ、数学の教科書進める」
「セルファ、今は小テストの時間よ!戻りなさい!」
「クソ担任、アンタやる気あんのかよ?このままだと、みんなが高等部に進めないんだぞ?」
落ち武者さんの言うように、習ったところばかり小テストで出されても、前には進めない。来年は高等部に進学だし、私もそれなりの知識を身に付けたい。
「席に戻りなさい。勝手なことは認めないわ!」
「へえ、アンタ何のつもりだ?生徒に勉強教えないで、何のために僕らを学校に通わせてんのさ?アンタがいつまでもそうなら、教室に取り付けた防犯カメラ、校長に見せつけるぞ!」
落ち武者さんは、相変わらず気が強い。それにしても、幾度となく前世で学んだことが、時間が経つと、こうも忘れてしまうものなのだな。それに、私は20代半ばあたりのことまでは覚えているけれど、それ以降は殆ど覚えていない。天使村は30代辺りまで朧気に覚えているが、妖精村は30代のことなんて殆ど思い出せない。覚えていることといえば、遠い昔、ナミネがラルクを追いかけ、ミナクお兄様に嫁いでいた時のこと。それ以外は全て覚えていない。ナミネはどうなのだろう。
気が付けば担任が国語を教えはじめた。もうすぐ5月。ひと月のロスなら、どうにでもなる。2年生の時は、ナミネとの交際もあり、早く感じたけれど、3年生はどうだろう。1年後にはセナ王女やカラルリさん、セリルさんたちも大学生だ。そうなれば、今の関係も変わるかもしれない。そう考えると、よみかた のように、私たちにはまだ時間があるのだと思わせられる。

2時間目が終わるなり、2人の高校生が来た。
「君がセリルの弟なのか?」
「そうだけど、アンタ誰?」
2人とも、よく似ている。というか確実に姉妹だ。
「高等部3年の委員長メノリだけど、セリルがいなくなったんだ」
セリルさんが……いったい何があったのだろう。
「ま、この学園内のどこかにはいると思うけど?」
「同じクラスにミナクの弟がいると聞いたが、いないぞ」
やっぱり、私はラルクやミナクお兄様とは全然似ていないのだろうか。
「アンタさ、どこの誰だか知らないけど、顔だけヨルクはここにいるけど?」
「そうか。全く似てないな」
何だか地味に突き刺さる。
「あの、ミナクお兄様がどうかされましたか?」
「どうもこうも、ミナクに弄ばれた貴族がクラス中に押しかけて、当の本人は逃げたんだ」
過去のこととはいえ、忘れた頃に罰せられるものなのか。
「そうでしたか。兄がご迷惑をおかけして申し訳ありません」
私はラルクにメールをしようとした。
「じゃ、ミナクのクラス行く」
「え、落ち武者さんはセリルさん探さないといけないよね」
「どうせ自信失くしたとかだろ。セリルのことだから、探されたくはないだろうし?」
そんな感じだろうけど、本当に突然どうしたのだろう。悩みごとでもあったのだろうか。セリルさんは、ナミネが病んでしまった時に相談に乗ってくれたから、今度は私たちが助けたいのだけれど。

ひとまず、私たちはメナリさんと共に高等部1年3組へ来た。
なんと言うか、ひと昔前の荒れた教室のようだ。当の本人は、いないにも関わらず貴族のみで暴れている。
「じゃ、紙に名前と住所書いてミナクに対して思うこと書け!」
落ち武者さんは、一瞬フェアリーングをかけた。すると、貴族たちは教壇にある紙を取りはじめた。物凄い勢いで書いている。
「ナナミお姉様、大丈夫ですか?」
ナミネ、来てたのか。
「べ、別にミナクのことなんて何とも思ってないわよ!」
「ナナミ、アンタ顔に出すぎ」
セナ王女とも別れたし、今のミナクお兄様はフリーだ。ナナミさんならリリカお姉様も歓迎するだろう。あとは、本人の気持ちというところか。
「ねえ、ラルク。いっそのこと、ミナクさんによつぎ、いっぱい作ってもらったら?」
「ナノハナ家ほどじゃないけど、クレナイ家も庶子は跡継ぎに出来ないし、庶子だらけになっても、ウチでは育てられないから、それこそ孤児院に預ける未来になるだろ!」
クレナイ家は、昔は庶子も育てていたらしいけど、今では、やはり家族は嫡子を求めるだろう。私は責任が取れないのなら簡単に子供など作るべきではないと思う。ミナクお兄様の場合は遊びだったけれど、それもよくはない。
現代でも武家は、ちゃんと活動している。それを思うと、縁談は真面目に行うべきだ。去年のセナ王女やセレナールさんのようにはなってほしくない。
「おい!天然ラァナ!ここで何してんだ!」
「セルファ……セリルがカナコに手紙残していなくなったの」
落ち武者さんは、ラァナさんから手紙を受け取った。
『カナコさん
今までありがとうございました』
まるで、別れの手紙のようだ。
あれだけ常に自信のあったセリルさんが、このようなことになるなんて想像したこともなかった。いったいどうして……。少しも予想が出来ない。
「で?カナコはどうしてんのさ?」
「レイカとセリル探しに行ったわ!」
「セリルも人騒がせなヤツだね?」
落ち武者さんは、少しも心配ではないのだろうか。もし、私がカナコさんの立場なら、心配で仕方ない。ナミネが手紙残していなくなったら、私はナミネが見つかるまで探し続けるだろう。
こういう問題は他人事ではない気がする。いつ、自分も同じ状況になりうるか分からない。
私はナミネを見た。

ナミネは、今朝私が作ったお弁当を食べていた。

……

あとがき。

セリルに何があったのでしょう。
セリルの「はい、そこまで!」が聞けなくなるのは寂しいです。

……

この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
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純愛偏差値 未来編 一人称版 96話

《ナミネ》

私は、すっかりアヤネさんに流されてしまっていた。ラルクだけは気付いている。逆にこれ以上、気付く人がいては困る。ミドリお姉様は、ただでさえ一度死んでいる。ここでミドリお姉様の力をみんなに知られてしまっては、ナノハお姉様の名誉も傷付けてしまうし、ミドリお姉様を狙う人ばかりになってしまう。気を付けなくては。
せっかく、ヨルクさんが懲役2年にしてくれたのに、それを変えてしまうだなんて。私は私を信じられなくなってしまっていた。
「お願いです、助けてください!」
すがるルリコさん……。けれど、あとの祭りだ。
「アンタ、鬱陶しいから消えろ」
落ち武者さんは、扇子でルリコさんをキクリ家から出した。外ではルリコさんの叫び声が聞こえる。私のせいとはいえ、めちゃくちゃ近所迷惑。
「どうして、みんなして私をイジメるんですか!」
「アンタ、なんで天然ラァナ傷付けた!」
ラァナさんと落ち武者さんは、お隣さんだった。落ち武者さん、ラァナさんに懐いているみたいだし。
「アヤネさん、いくら気に入らないことがあったとしても、このような形で人を傷付けてもいいのでしょうか?僕は理解しかねます」
「なあ、セリル。この場にいる全員にフェアリーングかけろ!」
それをしても、人のいやな本心を知ってしまうに過ぎない。今、アヤネさんの本心を知っても、もう誰も同情なんてしないだろう。
「僕は、あくまで話し合いに参加するだけで、それ以上のことはしないよ」
「セリル!アンタ、天然ラァナが笑い者にされてもいいのかよ!」
「人は全員平等にとまではいかない。けれど、どれだけ許せないことがあっても、アヤネを攻撃するほど、ラァナさんも苦しむよ」
私は平等だなんて思ったことさえない。結局、いつも余裕のある人間が勝者だ。アヤネさんは、公爵家に生まれて随分と楽して生きてきたのだろう。
「セリル、アンタ、ズームに出し抜かれてから億劫になってんじゃないのか?だったら、僕が……」
「せっかく生き返ったんだし、ズルエヌが、この場収めたら?」
ズルエヌさんは、時計騎士なのではないのだろうか?
「ではでは、皆さんはまだ、ここにいらっしゃるようなので……。
改めまして、僕はブランケット家のズルエヌです。
まず、何か言いたいことがある人はいますか?」
え、これ何?フェアリーングじゃない。何かわからないけど、全く解けない。
「あの日、ラァナを1人で帰らせるべきではなかった。今でも悔やんでる。セリルが発見したラァナは酷い姿だった。もし、誰かがラァナと一緒に帰っていれば……ラァナは自分で自分を縛ることなんてなかった」
カナコさん……。親友のラァナさんが、あんな目にあって、もう7年目。セリルさんが発見した時には無惨な姿で横たわっていたらしい。
「カナコさんは、自分を責めるほどラァナさんのことが好きなんだね。起きてしまった過去は変えられないけれど、大学に通ってるってことは、ラァナさんの時間が確実に進んでいる証拠なんじゃないかな?」
そうは言っても、あんな無惨な目にあって、全て忘れられるはずがない。そんなの……そんなの……。
「綺麗事です!ズルエヌさんは綺麗事で解決ですか?」
「どうして綺麗事だと思うのかな?」
どうしてって……。
「あんな無惨な形で発見されて、セリルさんが来るまでどれだけ怖かったか!大学に通っていてもラァナさんの闇は続いているんです!」
「闇はいけないことかな?」
何この人。ズームさんに似てないし、セリルさんみたいに平和的に解決してくれないじゃない。
「いけないとは思いません!でも、ないほうがいいに決まってるじゃないですか!」
「ナミネは闇のない人間を見たことがあるのかな?」
質問ばかり。ズルエヌさんって、人をイラつかせる。
「私が言っているのはそういうことではありません!誰だって闇はあります!けれど、トラウマを抱えるほど苦しむのはあってはならないでしょう!人は誰もが普通のラインで生きれたらって、私はそう思うんです!」
「もし、ナミネが思ってることを実現するには、ナミネがこの村を納めるくらいの力がないといけないよね」
何なの!めちゃくちゃ苛立つ。
「ただ、思ってるだけと言っているでしょう!私は実現するとまでは言っていません!そもそも、あなた何なんですか!失礼極まりないですね!私だって時計騎士の資格持ってます!あなたに負けません!」
「そっかそっか、頑張って取ったんだね。ズームがそうさせたのかな?じゃあ、せっかくだから、このストップウォッチで勝負しようか」
時計騎士ならストップウォッチを完璧に扱わなければならない。私だって試験には受かっている。ストップウォッチも何度も使った。
「分かりました!負けたら、あなたが失礼な人間であることを認めてください!」
「分かったよ。僕が負けたらね」
私はズルエヌさんからストップウォッチを受け取った。
え、何これ。ゼロの数が半端ない。試験でも、こんなの使ったことないよ。
「じゃあ、目をつむって60秒きっかりで止めてくれるかな」
「わ、分かりました」
同様してはダメだ。私だって正確に時刻を読み取れる!
「じゃあ、ズーム、10秒後に合図して」
私は目をつむった。
「分かりました」
そろそろだ。
「はじめ!」
私はストップウォッチを押した。1、2、3、4……10、11……21、22……34、35……46、47……52、53……57……今だ!私はストップウォッチを止めた。
「じゃあ目を開いて」
私は目を開いた。
え、嘘……。なんで……。
「強気なナミネ、60.002547614564521064321457612543!得体の知れないズルエヌ、60.000000000000000000000000000000!勝者、得体の知れないズルエヌ」
負けた。それも、物凄い差で。
「あ、あなた、何がしたいんですか!」
「人はね、得意不得意があるんだよ。僕やズームみたいに運動は苦手だけど時計騎士として時間に狂いのない仕事して来た人間もいれば、ナミネみたいに伝説最上級武官で運動のことなら1寸の狂いもない人間もいるよね。
要は、本人にしか分からないんだよ。これは、他者が意見をしてはいけないってことじゃなくて、その人が受けた痛みは本人にしか分からないんだ。だから、誰かの痛みを他者が無闇に位置付けちゃ、余計にその人のことが分からなくなるんだよ。
ナミネがラァナさんのことを位置付けしたのは、ナミネ自身の経験じゃないかな。人は自分が経験したこと以外は言葉に出来ないからね」
確かに、私は私の持論押し付けていたかもしれない。けれど、それは、その人のことが心配だからで……心配だからで……。それを安易に位置付けとか言われたら、こちらも気分が悪い。
「アドラー心理学ですか。確かに人は自分の経験したこと以外は言えません。知らないからです。けれど、無闇に位置付けと言いますが、それは、相手を思ってのことです!必ずしも相手の心に寄り添う必要はありませんよね。押し付けでも、お節介でも、それでも、伝えなければいけないこと、生きていたらたくさんありますよね?」
「誰の何を思ったのかな?」
「いや、だから、ラァナさんが7年前に無惨な状態で発見されて、それをカナコさんやレイカさんが自分を責めていることに対してです!」
今その話してたじゃない。いきなりストップウォッチ計らさせられたけど。元々はアヤネさんがラァナさんを侮辱したことを話し合ってるんじゃないの!
「本当にカナコさんやレイカさんは、ラァナさんが無惨な形で発見されたことに対して自責しているのかな?どうしてそう思うのかな?」
何この人。この人こそ、いったい何が言いたいの?
「だから、そう言っているじゃないですか!」
「発見されたことに対して。どうしてナミネはそう表現したのかな?1番怖いのは発見された時かな?」
そうか。私はミドリお姉様の死後の姿しか知らない。あまりにも無惨な姿すぎて、襲われている時のことなんて考えたことなかった。ミドリお姉様は、仏になってからではなく、襲われている時が1番怖かったんだ。
「私はミドリお姉様の死後の酷すぎる姿しか知りませんでしたから。ラァナさんも、発見された時はそうかと思ったんです。ミドリお姉様の時は、もう仏だったので襲われた時のことを考える余裕なんてありませんでした」
「やっと、冷静に話してくれたね。
ミドリが死んだ日、僕も死んだ。今でも刃物を見ると怖いよ。ミネスはナミネみたいに悲しんではくれないし。
ナミネ、人は表と裏があるんだよ。人を疑う時、人に対して苛立つ時は、冷静に話をしないと、その人のことを少しも知ることが出来ないんだよ。ナミネに欠けているのは、人を知ろうとする心かな」
そうかもしれない。おじいさんにも似たようなこと言われた。けれど、いくら頑張っても、やっぱり私は冷静さに欠けてしまう。私はズルエヌさんとは違う。
「でも、出来ないんです!
カンザシさんにヨルクさんとの幸せ壊されてから変な病気になるし、妖精村時代は全てヨルクさんとの青春を失いました。
だから、強くならなきゃって必死で……」
私はただ、ヨルクさんを失いたくなくて……。
「それでいいんだよ。出来ないことは出来ない。何の問題もないよ。
ナミネはヨルクとの青春守りたいんだよ。アヤネもそうなんじゃない?自分の踏み込んでほしくないところ、いっぱい踏み込まれて、かつてのナミネのように自分の心の居場所失ってるんじゃないかな?
許せないなら、それはそれで仕方ないけれど。何故人が悲しむのか、怒るのか、安心するのか。それは100人いれば100通りの答えがあるんだよ」
そういうことか。ここにいるメンバーが当たり前だろうことを当たり前と言うことで、みんなが、そんなふうに感じて、アヤネさんがメンバーから弾かれてしまったというわけか。
ズルエヌさんからしてみれば、ちゃんと話し合えば折り合えると言いたいのか。人の心は無数の線で絡まりあっている。自分とさえ折り合えないのに他者との諍いなんか、私にはどうにも出来ないよ。
あれ、最初の変な感じが再び起きている。
「そうですか。言い分は分かります。私だって、みんなと仲良くしたいです。大勢いるから、そこから少人数同士が仲良くするとかの理屈抜きで、仲良くしたいです。でも、私にとって最も大切なのはヨルクさんなんです!どうしても、いつも常にヨルクさんのことが気になって、周りのことが疎かになってしまうんです!そこに悪気はありません」
やだ、どうしてこんなこと言っちゃったの。
「僕も本音ではエルナとのこと、まだ答え出せてない。エルナが好きでたまらない。でも、強気なナミネのことも好き。強気なナミネが傷付けられたら、相手許せない」
あれ、ナノハナ家でも、落ち武者さん私のこと好きって言ってた。あの時は嘘と思って相手にしなかったけど。でも、どうなってるの。
「カナエだって諍いは好みません。でも、アルフォンス王子様が変わってしまったことや、お兄様のことを思うと、本当の意味で楽しめない自分がいるのです」
カナエさんも突然、話し出した。
「みんなで仲良く。そんな余裕ないんです。不幸に生きているだけで精一杯で、人を妬んで苦しんで、生きるために生きるためのことをしたら、人から嫌われて、僕だって苦しいんです」
カンザシさんて、案外表裏ないんだな。
「僕もグループ付き合いは公平に物事を考えたいです。でも、僕自身の悩みや将来のことを考えると回っていかないんです」
ラルク……。助けたいよ。
「決して周りがどうでもいいわけではありません。でも、ナミネのことが心配で仕方ないんです。ナミネのことだけで頭がいっぱいで、周りのこと考えたくても考えられないんです」
ヨルクさん……。ダメだ、こんなふうに言われたら余計に離れられなくなるよ。
「私も仲良くしたいです。人のこと馬鹿にしたりしたくありません。でも、馬鹿にされたら悔しくて、気付いたらまた別の誰かを傷付けてしまっているんです」
そうだよね。好きで人を傷付けたがる人なんていない。
「はい、ズルエヌの能力披露でしたー!」
ズルエヌさんが引き出していたのか。
「だいたい分かったかな?平たく言えば、みんな仲良くしたいんだよ。でも、それぞれの問題と向き合いすぎるあまりに君たちは拗れちゃうんだね」
簡単に言っているのだけれど、ズルエヌさんの理屈は難しい。それでも、みんなの気持ちが同じところに平行していることは、それとなく分かった気がする。
「つまり、昔は皆が心ひとつにしていたのが、時が流れ、一人一人の道が違うようになり、このようになっているということでしょうか?」
ラルクは飲み込みが早い。けれど、私はラルクみたいに自分で解釈するのは苦手だ。
「そうだね。昔は法律も少なかったし、皆がこの村をよくするためにと、心をひとつにしていたね。つまり、みんなの目標は同じだったんだよ。
でも、現代は色んな職業が存在して、世帯持って家のローンなんかも払ったりして昔のようにはいかなくなってしまったね。
けれど、紀元前村にいた時はどうだったかな?みんなが同じ空間で過ごして心ひとつにしてたんじゃないのかな?
無理に何かしようとしなくていいんだよ。簡単に言えば、最初に戻ってみるのが1番早い方法だと思うけどな。1日でいいから出会った頃のように、どこか遊びに行ってみるとかね」
確かに、紀元前村にいた時はみんなが心をひとつにしていた。まるで、遠い昔に戻ったかのように。妖精村に戻ってしまえば、また生活は戻ってしまったけれど。
1日なら、またあの頃のように過ごせるかもしれない。ヨルクさんとの交際前は1人でいたわけだし。今は私の面倒はヨルクさんが見てくれているけれど、それまでは使用人に全てしてもらってたし、恋愛なんてコリゴリだった。
あれ、あの変な感じ、今はなくなっている。いったい何だったのだろう。
「あの、ズルエヌさんは、恋人の浮気を許せますか?」
「遠い昔に二度許したことはあるけど、三度目は流石に冷めちゃって別れたよ」
やっぱり誰も浮気なんて許さない。ヨルクさんは、どうして許してしまうのだろう。
「セリル、アンタもストップウォッチやってみろよ」
「僕は時計騎士じゃないからね」
「アンタ、いつからそんな弱気になったのさ」
「あーあ、お兄ちゃんのせいで、セリル自信なくしちゃった」
けれど、遠い昔はセリルさんには何の力もなかったんじゃないの?でも、人は一度力を付けてしまえば元には戻れない。私がそうであるように。
「ズルエヌさんは最強ですか?」
「最強だったら、ストーカーに刺されて死んだりしてないよね」
ストーカー。そういえば、ズームさんから聞いたような聞いてないような。
「ズルエヌは要領悪いからね」
時計騎士完璧にこなしてるなら要領悪いとは言わない気がする。
「ズルエヌさん、ヨルクさんに、さっきの変な呪術かけてもらえませんか?」
「いいけど」
ズルエヌさんは、変な呪術をヨルクさんにかけた。
「ヨルクから話すことはあるかな?」
「私はナミネが浮気しても、心変わりして戻って来ても別れないですし、ナミネ意外を愛するなんて考えられないです」
ヨルクさん、私もうヨルクさんに何されてもいいよ。
「どうしてナミネ以外考えられないのかな?」
「ナミネ以外愛したことないですし、他の女子(おなご)と縁談で婚姻しても、どうしても愛せませんでした。綺麗でスタイルがよく、胸の大きな人はたくさんいますが、一緒にいて安らげて本当の意味で心を許せるのはナミネだけなんです。これからもナミネのお世話をしたいし、ナミネをいっぱい笑顔にしたいです」
やっぱり、さっきの取り消す。綺麗でスタイルよくて胸の大きな人って何?そんなに胸胸言うなら好みの女と付き合えばいいのに。
あ、変な呪術が解けている。
「うーん、これはナヤセスの分野だね。人間、何千年、何億年と経てば、愛する人も必然的に変わると、随分前に研究者が証明しているけれど、ここまでずっと同じ人を愛し続ける子も珍しいね」
えっ、でも、カナコさんとセリルさんもそうなんじゃないの?
「あの、カナコさんとセリルさんも、ずっと愛し合ってます」
「まあ、大人の事情かな」
お、大人の事情?そんなふうに言われたらめちゃくちゃ気になってしまう。
「大人の事情ってなんですか?」
「ナミネ、ズルエヌさんは随分ヒント言っただろ」
「え、全然分からないよ」
「セリルはカナコだけじゃないんだよ。妖精村時代はそうだったかもしれないけど、もっと前はクソ女に騙されてたんだよ」
え……全然知らなかった。セリルさんとカナコさんこそ永遠かと思ってた。
「そ、そうだったんですか……」
「正直、ナミネとヨルクの関係は僕もずっと気になってたよ。ズルエヌさんの言うように、人は1人のみを何世紀も愛し続けるには無理があると思う。時代と共に出会う人も違ってくるしね」
この時の私は、妖精村の前はカナコさんがセリルさんに気持ちを伝えられずにいたことを知らなかった。そして、2人は相変わらず、どこかで好き合っていたことも知らなかったのである。
「僕もナミネとヨルクのことは調べてはいるんだけど、今のところ収穫なし。2人がずっと愛し合ってきたとしか答えが出ないんだよね。氷河期もあっただろうに、ここまで互いを求め合っているだなんて珍しすぎて、2人の過去を知りたくなったよ」
私とヨルクさんの関係って、そんなに珍しいのだろうか。
「ナミネ、夜食は何がいい?」
「い、いりません!綺麗でスタイルよくて胸の大きな姫君がいいなら、そう言えばいいでしょう!ヨルクさんて浮気性ですね!いつも湖行くたび興奮してましたもんね!」
私はまたヨルクさんを突き飛ばしてしまった。
「ナミネ、違うから!そういう人がいても、小さい頃から妹同然に可愛がってきたナミネのことが好きって意味だから!」
いつも妹って言うけど、何?胸の大きな人がいいんでしょ。
「ヨルクさん、今から綺麗でスタイルよくて胸の大きな人とお楽しみだから、行くよ、ラルク!」
私はラルクの手を引っ張って中庭に向かった。

中庭の井戸は綺麗になっていた。
私は壁の結界をかけた。
「あのね、ラルク。ミドリお姉様は皇帝陛下と皇后陛下の子供なの。なかなか子供が出来ない2人のために、お母様が代理出産したんだよ。2卵生混合受精だからミドリお姉様には母親も父親も2人いるの」
「つまり、本当の皇女はミドリさんか。3つ子にならなかったのは何かしら理由があるんだろうな。ナミネ、このこと誰にも言うなよ」
言うに言えないよ。
「言わないよ。皇女変わっちゃうし、ミドリお姉様にはずっとナノハナ家でいてほしいし」
「なんで、アンタらだけ、いつも抜けがけすんのさ」
落ち武者さん、通しで入って来たんだ。千里眼で口元読まれてたかな。
「あ、落ち武者さん、このことは……」
「言わないけどね?けれど、これで辻褄が合った。アンタの紙飛行機だけミドリの刻印押してあったわけか。アンタ、気を付けろよ。アンタの振る舞い1つで、ミドリは危険に晒されるんだからな」
本当に反省してる。私はミドリお姉様のことより自分の苛立ちを優先してしまってた。
「はい、もう安易な行動はしません!ミドリお姉様にはずっとナノハナ家にいてほしいですし」
「とにかく、誰かに聞かれたら不味いから戻るぞ。顔だけヨルクも落ち込んでたぞ」
そんなこと言われても、あんなふうにピンポイントで好み言われたら本当に私を好きなのか疑ってしまう。なのに、ヨルクさんから離れることなんて出来ない。どうしてか分からない。ずっとずっと昔からヨルクさんのことが愛おしい。

キクリ家の中に入ると、第1居間のランプの明かりは消えていて、第3居間の明かりがついていた。

……

あとがき。

上記のようなストップウォッチが本当にあったら、正確に押せる人いるのだろうか。

どうして、いつもみたいにセリルがまとめなかったのか。

それでも、メンバーで行動してから、それなりの歳月も経って、みんなの、あり方が変わってしまったのかも?

……

この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
純愛偏差値 未来編 一人称版 95話

《ヨルク》

私は人魚の湖で1枚の写真にショックを受け、勢いでナミネに別れを告げてしまった。ナミネはすがることなく、私の別れを受け入れてしまったのである。
その後、キクリ家の庭ではアヤネさんが、ラァナさんとミドリさんの過去を打ち明け、ナミネは正気を失ってしまった。
私は何も出来なかった。セリルさんがいなかったら、ナミネはアヤネさんに酷い暴力を奮っていたかもしれない。
アヤネさんとは仲良くなれると思っていたのに、紀元前村から、みんなとの関係が変わってしまったようにも思う。
キクリ家に来るのは久しぶりだ。ここも昔と変わっていないな。
ナミネと2人きりの客間。何だか気まずい。けれど、ちゃんと誤解解かないと。
「ヨルクさん、お腹すきました」
「あ、うん、今夜食作ってくるね」
私が立ち上がろうとしたら、ナミネは私の袖を掴んだ。
「ヨルクさん、もう別れるなんて言わないでください。私、ヨルクさんに捨てられたら生きていけません」
「絶対言わない!ごめんね、ナミネ」
私はナミネを抱き締めた。
どうして、あの時、たかがあの写真1枚で混乱したのだろう。ナミネだって私のことしか見てないのに。
「ヨルクさん、トイレに行きたいです」
「うん、分かった。私も行く」
私はナミネのポーチを持って外のトイレにナミネを連れて行った。

ナミネが出てくると、またビニール袋を持っていた。
「また汚してしまいました」
「ナミネ、まだ生理多いの?」
「はい」
「分かった。汚したのは洗っておくね」
私はナミネからビニール袋を受け取った。
家の中に入るとルリコさんがいた。あまりに久しぶりだから一瞬誰か分からなかった。
「お風呂が湧いております」
「入ってもいいのですか?」
「はい、この非常事態ゆえ、第1母屋の管理を任されております」
「なんか、大勢で押しかけてすみません」
ルリコさん、全然変わってない。
「ルリコさん、お久しぶりです。元気でしたか?」
「お久しぶりです、ナミネお嬢様。カラルリ坊っちゃまの様子がずっとおかしく心を病んでおります」
カラルリさんは、失恋してから、ずっとああだ。
「カラルリさんは、もうセナ王女を愛していた時のカラルリさんではありません」
「あの日、中絶薬を盛ったのは私です。カラルリ坊っちゃまには大学まで行って欲しかったのです。中卒では就職なんて殆どありません。妊娠1つで人生を台無しにして欲しくなかったです」
ルリコさんだったのか。けれど、今更話したところで、セナ王女の心はもうカラルリさんにはないだろう。
「ルリコ、あんた、自分のしたこと分かっているのか?」
落ち武者さん、エルナ。第3居間にいるかと思ってた。
「私はカラルリ坊っちゃまの世話係です。カラルリ坊っちゃまを中卒で働かせるわけにはいきません」
「だったら、人殺してもいいのかよ?」
「本当に愛し合っているなら、結婚後、子供は作ればいいだけの話です。お風呂が冷めてしまいますよ」
「あ、入ってきます。ナミネ、私が戻るまで、さっきの部屋にいるんだよ」
「はい」
ナミネを置いて行くのは不安だったが私は、お風呂に向かった。

五右衛門風呂。
まだあったんだな。出来ればナミネと入りたかった。昔はラルクとナミネと入っていた。
紀元前村に、妖精村の停電で、なかなかナミネと2人になれる機会がない。ナミネは、色んな人と恋愛して来たかもしれないけど、やっぱり私にはナミネしかいない。もう二度とナミネを突き放したりしない。私がいないと、ナミネのお世話をする人がいなくなってしまう。私はどこまでもナミネのお世話をし続けたい。
私はナミネの汚した下着に少しの水と石鹸を付けて、またビニール袋に入れた。明日タライでまとめて洗おう。
私は髪と身体を洗って、お風呂を出た。

客間を開けるとナミネはいなかった。私は荷物を置いて浴衣のままナミネを探した。
歩いていると第1居間から物音がする。私は恐る恐る第1居間の扉を開けた。すると、セナ王女が泣きながら暴れていた。こうなると誰も止められない。
「どうして、どうして、私の子供殺したのよ!犯人があなただと分かっていれば、カラルリと別れたりしなかったわ!」
ルリコさんは、セナ王女からずっと殴られ続けている。カナコさんとレイカさんが止めようとしても近づくことさえ出来ない。ルリコさんが気絶するたび、セナ王女はルリコさんに水をかけて起こした。
「ねえ、落ち武者さん、どうして余計なことしたの?」
「は?余計なこと?無断で食事に盛るとか犯罪だろ!この後、警察に突き出す」
「待って!ルリコは、キクリ家に必要な人間なの!」
ナミネもいる。ラルクの隣りに。この状況下はナミネにもよくないし、早くここからナミネを連れ出さないと。
「私もいやだな。好きな男の子供妊娠して、それを赤の他人に中絶薬なんて盛られたりしたら。中絶薬って普通は病院で処方してもらうものだし、相手の許可なく盛れば、やっぱり犯罪だよ。いくら学生だからって、他人の決めることじゃないと思う。人の命を殺めるかなんて。そんなの当人同士が決めることだよ。ルリコさんは立派な人殺しでしかないと私は思う」
ナミネ、ナミネが妊娠したら、私はナミネもナミネのお腹の子供も必死に守り通す。ナノハナ家でナミネのこと見てるし、少々休学しても復学したら、遅れはあっても普通に学べるし。
「そうだね。僕もルリコさんは、決してやってはいけないことをしたと思うよ。カラルリが望んだことじゃない。カラルリは悩んでた。その悩みの種を殺人という形で他人が終わらせて、今、カラルリはどんな状況かな?ルリコさん、あなたがカラルリの幸せを奪ったのですよ」
セリルさんもルリコさんの肩は持たない。化学流産とはいえ、そこに人の手が加われば殺人ということか。それに時期的にセナ王女の妊娠発覚から、キクリ家での食事まで期間はあった。着床していたなら、もう立派な殺人だ。
「僕もルリコさんは殺人を犯したと思います。そんなルリコさんを何もなかったかのようにキクリ家で働かせていたのは、これはもう犯人蔵匿罪として、キクリ家も罪に問われる問題かと。ルリコさんは、一度でもセナ王女の子供のお墓参りに行ったんですか?カラルリ先輩の将来が安泰なら周りのことは、どうでも良かったんじゃないですか?その判断がカラルリさんの将来を、セナ王女との関係を壊してしまったんです。僕たちがここにいる以上、誰かが通報しないと、ここにいる全員が、いずれは重要参考人として事情聴取されるでしょう」
確かに、ここを拠点として、しばらく滞在するなら、私たちも重要参考人となる。まだ時効も過ぎてないし、そもそも殺人に時効はなくなった。もう一昔前ではないのだ。
「セナさん、通報するから、もう暴力はやめて!法で裁いてもらえばいいのよ!このルリコって使用人には懲役がつくわ。刑務所で苦しめばいいのよ」
「じゃ、紙飛行機飛ばす」
その時、カナミさんが落ち武者さんを阻止しようとして、返り討ちにあった。
「あんた、弱い。僕に勝てるとでも思ったわけ?あんたごと皇室に飛ばしてやろうか?」
「待って!分かった、もう阻止はしない」
カナミさんは落ち武者さんには適わないと諦めた。
「ねえ、みんな、犯罪がどうこう言ってるけど、ルリコさんを通報するかは、セナ王女とカラルリ、もしくはキクリ家が決めることじゃないかな?他人が首を突っ込むことではないと思う」
確かにナノハさんの言う通りかもしれない。匿っているのは、このキクリ家なわけだし。
「僕もナノハお姉様の言うように、当事者でもないのに他人が首を突っ込む問題ではないと思うよ」
やはり、ナルホさんもそう出るか。
「お言葉ですが、ナルホお兄様。セナ王女が救急で病院にかかる時、私やラルクもいました。仲間は他人ですか?もし、ナルホお兄様の大切な人が同じ目にあっても他人ですか?」
「ナミネ、それは飛躍してるよね。いくらナミネがセナ王女の病院に付き添っても、ナミネは当事者じゃないんだよ」
また、ナミネの目が紫色になっている。
「ねえ、ラァナやレイカさんは、今回の件、どう思うかしら?」
あれ、ミドリさんは以前のようにオドオドしていない。気のせいだろうか。
「私は、ここでルリコさんを見過ごしたら、またルリコさんは同じことすると思う。他人のことだからって声もあるけど、私は犯罪者が野放しになるのは怖いし、そういうのいけないと思うの。誰も通報しないなら、私が交番に行く」
ラァナさんも過去に何かあったみたいだけど、やはり、それが原因で犯人と位置付けされる人物を恐れているのだろうか。
「カナコ、悪いけどルリコは、もうキクリ家の使用人ではなく、殺人者よ。いくら有能な人でも人を殺せば匿っちゃいけないのよ」
リーダーとも言えるレイカさんの答えがハッキリした。
「私も同じよ。ナノハは、他人って言ってるけど、その言葉がラァナを脅かすの。他人ならラァナが苦しんでいいのかな?犯人が野放しされるほどに、怯える人はたくさんいるの!」
「酷い言い方するのね。私が何かした?ミドリお姉様はいつもそう。長女だからって下の人間を支配する」
あれ、ナノハナ家を仕切っているのはナノハさんなのではないのだろうか。そもそも、ミドリさんは引っ込み思案な気がする。
「あはは、イジワルされた同士慰め合って滑稽」
その瞬間、カナコさんがアヤネさんを蹴り飛ばした。急所に当てたか。アヤネさんは凄い悲鳴をあげた。
「カナコさん、暴力はやめてください!」
セリルさんは必死でカナコさんを止めている。
「なあ、重要な話してるんだから、アヤネは黙っててくれないか?」
「あら、貧乏人の二軍女子。顔もブスだし、パパ活三昧。お金あげましょうか?」
「私は慣れてるから何言われてもいいけど、言われていやな人間もいるって、アヤネは分からないのか?」
ロォラさんって気が強い。更に気の強いズームさんと一緒になれば将来……。
「セナ王女、これが最後の質問です。皆さんの意見の間を取って、セナ王女本人に決めてもらいます。死んだ人は生き返りませんが、でも、セナ王女を陥れたルリコさんを、どうしたいのか、正確に言葉にしてもらえませんか?」
ナミネ、それを聞いてどうするのだろう。
「私は、ずっとカラルリが仕組んだことだと、どうにも出来ないと思い、別れることを決意した。けれど、カラルリが何も知らなかったのならカラルリに罪はないと思う。でも、ルリコさんのことは許せない。遠い昔から私を嫌っていたみたいだけど、よもや殺人なんて絶対私は許さない。ルリコさんには体重200キロの激ブサ武官の妾となって、毎日の拷問、無期懲役、7つ先までの来世は不細工に生まれニートとなって不幸になってほしい」
あまりにも重たい刑だな。それでも、セナ王女がそう思うなら、誰も口出しは出来ない。
「甘えセナ、あんた勘違いしてないか?僕はただ、このクソルリコを通報すると言っただけで、あんたの希望は聞いてないけど?」
「落ち武者さんは黙っていてください!セナ王女、それだけですか?」
ナミネのこの余裕はどこから出ているのだろう。強い番人でもいるのだろうか。
「ええ、私の子はもう帰って来ないから、だからせめてルリコさんにはそれ相応の罰を与えてほしい」
「セナ王女の子供なら、もしかしたら天界にいるかもしれません。セナ王女の気持ち次第ですが、カラルリさんと復縁して月に1度会いに行くのもいいかもしれませんね。では、セナ王女の言った通りの罰をルリコさんには受けてもらいます」
「待って!病院に運ばれた時、セナ王女は着床してたの?してなかったら、殺人罪は成立しないから!」
私は咄嗟に事実確認を求めた。
「してたんだよ!甘えセナは妊娠してたんだよ!だから、こうやって、みんなが自分の身勝手な意見してんだろうが!」
して……たのか。てっきり化学流産かと思い込んでいた。あの時、既にセナ王女の中には胎嚢が存在したんだ。
「セナ王女本人が決めたわ。これでも不服?ナノハ?ナルホ?
ナノハ、あなたはセリルに会って心理学の道を歩んだけど、才能がなくって、いつも自暴自棄になってたわね、ナクリのように。裏で何してたのかしらね?近年、犯罪者を野放しにしたことで二次被害が起きているのよ。あなたは自分さえよければいい人間ね」
ミドリさん、いつからこんなにも強気になったのだろう。カナコさんのグループに入れてもらったからだろうか。
「酷いわ……。私のことそんなふうに思っていたのね」
ナノハさんは、珍しく泣きはじめた。私は咄嗟にナノハさんに駆け寄った。
「ナノハさん、泣かないでください。ナノハさんは私が辛い時、いつも慰めてくれました。私はそんなナノハさんが大好きなんです」
「ヨルク……」
ナノハさんは私を抱き締めた。やっぱり大学生の身体は大きい。中学生の私からしたら、ナノハさんは大人だ。
「強気なナミネ、1回だけ言う。僕は、ただ殺人犯したクソルリコを通報するだけで、妾だの拷問だの来世が不幸だの望んでないからね?強気なナミネ、いくら甘えセナの言うことでも、その通りにするのはやり過ぎだ!」
「そうですか。では、私は何もしませんので、ご自分で思うような内容の紙飛行機を飛ばしてください」
ナミネは急に素知らぬ顔をした。
「じゃ、飛ばす」
落ち武者さんは皇室に紙飛行機を飛ばした。
数分後、返事が来た。落ち武者さんは紙飛行機を開けた。私は横目で落ち武者さんの返事を見た。
『ルリコを不問に処する』
どうしてだ。ルリコさんがしたことは決してしてはいけないこと。それなのに、どうして皇帝陛下は不問にするのだろう。
「あ、みんな今更だけど。殺人罪ではないからね。不同意堕胎罪だよ。懲役も半年から7年と、そこまで長くはなく、無期懲役とまではいかないんだよね」
突然のナヤセスさんの言葉に、みんな、それぞれが焦っていたことを思わせられた。言われてみれば、外に出てきてないのなら殺人罪は成立しない。セナ王女のお腹の子供の命が奪われてしまったから殺人と錯覚してしまっていたのかもしれない。
人は、多数の言葉に惑わされる生き物だ。私もその1人なのだろう。
「はい、これでルリコさんは不問になりました。よかったですね、ナルホお兄様。ご自分の思い通りになって。普段ストレス溜め込んでるの見え見えですよ。で、落ち武者さんが仕切られたのですから、この結果で幕を閉じるとしますか。ルリコさん〜まだここにいていいそうですよ〜!」
「強気なナミネ、あんた何した?」
落ち武者さん、かなり怒っている。
「何もしていません。落ち武者さんの説得力のなさでしょう。私を疑う前に、皇室に理由を聞いてはいかがでしょうか?」
「あんたが何もしてないなら、もういい」
「落ち武者さん、私が飛ばすから落ち込まないで」
その時、メンバーたちが突然紙飛行機を飛ばしはじめた。
数分後、返事は来るものの、どれもルリコさんを不問にする内容だった。いや、ラルクのだけ違う。
「落ち武者さん、これが限界です」
ラルクは落ち武者さんに文を見せた。
『ルリコを皇室で1日の初級武官による1時間の拷問に処する』
「ダメだ。全然罰になってない。これじゃ、不問と同じだ」
「落ち武者さん、私が紙飛行機飛ばすから待ってて」
私は皇室に向けて紙飛行機を飛ばした。
数分後、返事が来た。私は紙飛行機を開いた。
『ルリコを、懲役2年に処する』
まともなのが返ってきた。
「いつも、何の能力もないアンタが人を動かすんだな」
「うーん、でも、みんなのも不問ばっかだったし」
落ち武者さん、かなり落ち込んでいる。どうしたらいいのだろう。ラルクの文でさえ、1日限りの罰則なのに。
「セナ王女、懲役2年となりましたが、問題ないですか?」
「みんな、どうして私の問題に首突っ込むのよ!懲役2年だなんて、認められないわ!ナミネ……礼は弾む。だから……」
「皆さん分かりましたか?これは皆さんの意思で決める問題ではありません!セナ王女、自ら意見をする問題です!それを、我がごとのように勝手な真似をして、不問ばかりじゃないですか!皇帝陛下を動かすのは人の真心です!上辺だけの内容で皇帝陛下は動きません!私は本人が意見するべきだと思いますので、セナ王女の意見を尊重します!」
ナミネは紙飛行機を皇室に飛ばした。
数分後、返事が来た。ナミネは紙飛行機を開いた。
『ルリコは体重200キロの不細工な武官の妾となって、毎日の拷問、無期懲役、7つ先までの来世は不細工に生まれニートとなり不幸になる処分を下す』
何故だ。何故、ナミネが飛ばしたらセナ王女の言う通りになるのだ。
「アヤネがナミネを怒らせたから、キクリ家の問題がめちゃくちゃになったじゃないですか!」
その時、カナナさんがアヤネさんを殴り付けた。
「強い人怒らせて、他人の家めちゃくちゃにして気は済んだかしら?」
「暴力はやめてください!お父様に言いつけますよ!」
「へえ、今度は権力。だったら、私はアヤネの敵にまわる。ロリハー家とブランケット家、強いのはどっちかな?」
「卑怯です!みんなしてどうして私のみをイジメるんですか!」
そうか、アヤネさんがラァナさんとミドリさんの過去を嘲笑ったから、ナミネは内心激怒してるんだ。
「カナエや、この家の人が怒るのも分かるけど、セナ王女がセナ王女の意思を伝えた結果なんだから、呑むしかないんじゃないか?」
「ルリコの件は、これで終わり。セナ王女の意思なら何も言えない。でも、ラァナとミドリを侮辱したアヤネのことは今から話し合うわ」
カナコさんが、ルリコさんを切った。皇帝陛下の決断は絶対だ。セナ王女が、そこまで苦しむなら誰も何も言えない。
「助けてください!私はカラルリ坊っちゃまのことを思ってしたまでです!このような罰を受けるなら今すぐ死にます!」
「どうぞどうぞ、死にたい人は好きにしてください」
ラルクはため息をついた。
「本来なら単独で動いたナミネを問うべきことでしょうけど、ナミネが一度怒れば終始つきません。ヨルクお兄様の返事の処分でよかったものの、あえてめちゃくちゃにして。加害者にも加害者側のそれ相応の処分というものがあるんですよ。アヤネ先輩、あなたがしでかしたことなので、全てあなたが元に戻してください。この拗れた人間関係を」
「どうしてイジメるんですか!」
「ハッキリ言って僕も胸糞悪いね?懲役2年でいいものを、それ以上の罰にするほど、強気なナミネ怒らせて、アンタ何様だ!天然ラァナ傷付けた落とし前はつけてもらうから!」
落ち武者さんとラァナさんはお隣さんだっけ。落ち武者さんが帰ってきた時には、ラァナさんは、どん底から復帰していた感じなのだろうか。
「ラルク、ごめん!私、ミドリお姉様侮辱されて、また前見えてなかったよ」
「ナミネのせいじゃない。人を怒らせて、冷静さを奪って嘲笑うアヤネ先輩が悪い!」
ラルクとナミネは抱き締め合った。正直ナミネの彼氏としてこういうのを見るのは辛い。
「セナさん、本当にごめん!私は月に1度、私たちの子供に会いに行く。女神の湖に」
私はカラルリさんが完全に白とは思っていない。女神の湖にいるのなら、育てなくていいから、何も背負わなくていいから楽だろう。
「カラルリ……私、もう一度カラルリと交際する」
この時の私は何も知らなかった。ナミネが飛ばした紙飛行機にミドリさんの刻印が押されていたことを。ミドリさんはナミネの紙飛行機に刻印を押すために、わざとナノハさんを挑発したことを。

……

あとがき。

セリルが適わない人が2人も出てきてしまった。
現世では最強なはずのセリルが、ズームとミドリには適わない。

けれど、ナミネが不本意に怒れば怒るほど、ミドリの力が知られてしまうかもしれません。

キクリ家に集合しても、内容はとても悲しいです。

……

この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
純愛偏差値 未来編 一人称版 94話

《ナミネ》

「なあ、そこのあんた。これ皇帝陛下かよ?」
「それに関しましては今となっては正確なことは分かりません。皇帝陛下が五つ子だったという噂もありますし、この町で分かる人はいないと思います」
例え、皇帝陛下が五つ子だったとしても、妖精村の前だと今の皇帝陛下ではない。だから皇帝陛下が、こんなに着飾った服を着ているのは何だか奇妙だ。
人魚の肉を食べるなら、その時の皇帝陛下のはずだと思うのだけど。
「ねえ、ラルク。これって本当に皇帝陛下なのかな」
「どう見たって皇帝陛下だわな」
うーん、じゃあ、皇帝陛下は、かなりの年月を生きてきたということなのだろうか。昔のことほど、分かる人は、だんだんいなくなる。時間とともに風化して、正確なことは本人のみしか知らない。
「皇帝陛下ですね。現代の皇帝陛下は、大昔、紀元前村の皇帝陛下をしていたと言われています。背景も今の蓮華町に似ていますし。実際のところどうか分かりませんが」
言われてみれば、背景は今の蓮華町だ。だとしたら、皇帝陛下は、どこかのタイミングで妖精村に移り住んだのだろうか。
とりあえず、他の写真も見ないと。私はアルバムを何個か机に乗せた。
すると、皇帝陛下と皇后陛下とミドリお姉様が仲睦まじそうに映っていた。ミドリお姉様とナクリお姉様は、一卵性の双子だ。けれど、あまり似ていない。でも、この写真だとミドリお姉様のチャームポイントであるソバカスはなく、髪も綺麗なストレートのロングヘアだ。
その時、キクスケさんからメールが来た。圏外なのに、どうしてメールが来るのだろう。私はメールを開けた。
『皇帝陛下と皇后陛下の間にはなかなか子供が出来ませんでした。そこで、あなたのお母様がミドリさんを代理出産したのです。その時に、あなたのお父様との受精卵と皇帝陛下と皇后陛下の受精卵が混合しました。妖精村特有の、2卵生混合受精です。
けれど、その時にナクリさんも同時に妊娠しました。ミドリさんとナクリさんは双子として生まれましたが、ミドリさんには母親も父親も2人います。ですが、似たような時期に賤民が皇帝陛下の子を生みました。それがレオナルド第1王子です。その後、クリレータ皇女とレナード皇太子が生まれました。でも、本当の皇女はミドリさんなのです。この真実を公にしてはならないと、皇帝陛下はミドリさんをナノハナ家の子として育てるよう、あなたの母親に言いました。もし、真実が公になれば、クリレータ皇女は皇女を剥奪されるでしょう』
ミドリお姉様が皇帝陛下と皇后陛下の娘だったの?本当の皇女はミドリお姉様?じゃあ、いつかミドリお姉様は皇室に行くのだろうか。いつも親しくしていたミドリお姉様が皇女と聞くと、何だか遠い存在に感じてしまう。
『あ、でも皇帝陛下って人魚の肉食べたんですよね?だったら、子供いっぱいいるんじゃないんですか?』
『残念ながら、皇帝陛下の食べた肉は人魚の肉ではありませんでした。ゆえに、皇帝陛下は何度も転生しています』
なんだ、人魚の肉じゃなかったんだ。紛らわしい写真だな。
けれど、ミドリお姉様が皇帝陛下と皇后陛下の子供という事実は誰にも知られてはいけない。隠し通さないと。でないと、皇室を揺るがす事態になってしまう。
「ナミネ、ちょっといいかな?」
「はい、なんでしょう、ナヤセス殿」
ナヤセス殿は私を誰もいないところに連れて行った。ここの図書館は本はたくさんあるけど、飲み物も飲めて、ゆったり出来る空間だな。
「ナミネはね、ヨウセイ型なんだよ。だから、無闇に血を分けちゃダメだからね。ヨウセイ型は常に90%を維持していないといけない。70%で老いて来て、40%で老人のような姿になってしまう。30%で死を彷徨うんだ」
「そうですか。どういう経緯でヨウセイ型なのかは分かりませんが、血は分けません。私はヨルクさんと生きます!」
「悪いけど、その話聞かせてもらったぜ」
落ち武者さん、ラルク。まあ、血液型の話なら別に聞かれてもいいか。
「あ、ラルクと落ち武者さんいたんですね」
「ナミネの血液は絶対使わない!ナミネがヨウセイ型なのも誰にも知られないようにする」
ラルク……。
「強気なナミネのことは僕らで守るから安心しろ!」
落ち武者さん……。
「ナミネのおばあさんが昔、女神だったんだよ」
おばあ様が女神……。そんなの聞いたことない。
「あ、では、他の姉たちもヨウセイ型なのでしょうか?」
「ナミネとミドリさんだけだよ」
やっぱり、ミドリお姉様は特別なんだ。皇帝陛下と皇后陛下の子供ってだけで、一国の皇女だもんな。出来ることなら遠くへ行かないでほしい。
「じゃ、参考になるものは、ある程度写真に撮ったからキクリ家行く」
私たちは図書館を出ようとしたが、ヨルクさんが泣き崩れたままだった。
「あんた、いつまでそうしてんのさ」
「ヨルクさん、帰りますよ。別荘には井戸がないのでキクリ家に向かいます」
私はヨルクさんを立たせようとした。けれど、ヨルクさんに突き飛ばされた。
「馬鹿にしないで!」
「ヨルクさん、しっかりしてください!」
落ち武者さんは、ヨルクさんを背負い図書館から出て、通路を通ると人魚の湖から出た。

人魚の湖の外は晴れている。
「私はここに残る。ユウサクさんの家でお世話になる。ナミネ、別れよう」
「あんた、本気で言ってんのかよ!強気なナミネしかいないと気づいた時には遅いんだぞ!」
「もういいです!別れるもここに残るも好きにしてください!縁談は完全に取り消しますし、復縁はありません!お互い別々の人と幸せになりましょう!」
たかが写真1枚で別れとか、本当腹立つ。あたかも私が悪いことしたように言われて、こっちも気分が悪い。ヨルクさんなんか好きに生きればいい。私はもう知らない。
「アルフォンス王子、乗ってください」
「あ、ああ」
私はアルフォンス王子を乗せると猛スピードで馬を走らせた。別荘にいるメンバーには、落ち武者さんが紙飛行機飛ばしてキクリ家に集まるよう伝えたらしい。
昨日の大雨で、地面はぬかるんでいるが、それでも昨日よりかはマシだ。また、ここに来ることがあるだろうか。

キクリ家に着くと、どうやら別荘にいたメンバーも集まっているようだ。
「ラルク、水汲みしよ」
「そうだな」
私とラルクは中庭に行った。そして、井戸から水を汲み上げた。
あれ、この水、泡がある。誰かが井戸の中に石鹸で洗ったタライの水ごと入れたんだ。
「ラルク、この井戸使えないよ」
「ナミネ、こっちもだ。カナコさんに知らせよう」
私とラルクは家の中に入ろうとした。すると、声が聞こえてきて、再び戻ったのだ。
「ねえ、ラァナさんて、中学生の時、イジワルにあったのよね?」
ラァナさん来てたんだ。てか、どうしてアヤネさんがそれを知っているの。
「何の話かしら」
「この映像見て」
「やめて!!!」
私はアヤネさんのお腹を蹴ろうとした。けれど、その前にカナコさんがアヤネさんを殴り付けた。
「カナコさん、暴力はやめてください!とにかく事情聞きましょう!」
セリルさんがアヤネさんからカナコさんを引き離した。ラァナさんは泣いている。
「あの、カナコさん、この井戸、泡が入ってるんです。まるで誰かが、石鹸で洗った何かをタライごと井戸に入れたような」
「はあ、この非常事態に井戸も使えないなんて不便だわ」
この後、カナコさんは修理屋を呼ぶことになるのである。
「アヤネ、井戸使えなくしたのは君だね」
やっぱり、アヤネさん、ここでも迷惑かけているのか。
「紀元前村に行ってから、私みんなからイジメられてばかりで、辛いんです。でも、私、みんなみたいに慣れていなくて全部分からないのに。無理矢理いやなことさせられたり、笑われたり。こっちに戻って来てからも内官とか笑わられて。けれど、何をどうしたらいいか分からないんです!」
分からない?とぼけるのも、いい加減にしてほしい。
「あの、アヤネさん、自分でトイレ汚したのに放置してましたよね!紀元前村では何もせず、汚いことはしたくないと馬鹿にしてるのはどっちですか!」
「アヤネは、どうして井戸にタライの汚れた水ごと入れたのかな?」
「庭には捨てられないと、井戸に入れてしまったんです」
何それ。私ちゃんと説明したよね。
「その場合は別のタライに入れてと言ったじゃないですか!自分で忘れて責任転嫁とかどういう神経してるんですか!」
「アヤネは言われても覚えきれなかったのかな?」
「はい、はじめてのことなので全くわからないです。なのに、分からないがイジメの対象になって、やり切れませんでした」
私たち、そんなにアヤネさんのこと蔑ろにしていたのだろうか。私は普通に教えていたつもりだったんだけど。
「でも、いくらストレス溜まったからといって、ラァナさんイジメたら、余計にしんどいこと増えるよね?ラァナさんもいやな気持ちになるし、ラァナさんの友達からも怒り買っちゃうし。ナミネ、ラルク、みんなもアヤネのことは分かるまで教えてあげてくれないかな?」
あ、みんな戻って来てたんだ。なんだかんだで、ヨルクさんもいる。ユウサクさんの家に住むんじゃなかったの?
「私は平等に接してきたつもりだったし、洗濯係でなかったから何も分からなかったわ。アヤネが苦しんでいたことも」
セナ王女は、確かに色々は言っていない。
「カナエもキツく言ったつもりはありません」
「私はアヤネが、お嬢様だからと逆に見下されていると思っていたわ」
ユメさんとアヤネさんとでは、アヤネさんのほうが階級が高く、王室の人間とも多く接しているはず。
「アヤネは不器用だね」
頭のいいミネスさんからしたら、頭の回らない人は全員不器用なのだろうか。
「皆さん酷いです!カナエもリリカもナミネもめちゃくちゃキツくて、あんなのイジメでした!」
どっちがイジメなのだろう。私はアヤネさんには随分迷惑かけられたけど。
「カナエはアヤネをイジメてません!」
「イジメって思うなら、そうやって私たちのせいにするなら、自分の家に帰ればいいでしょ!どうしてここにいるのよ!」
あーあ、カナエさんもリリカさんも不快な気持ちになっている。
「何も分からない。でも、みんなといたいんです!そういう気持ち、どうして分かってくれないんですか!」
家には家族がいるだろうに、どうして、みんなに拘るのだろう。そっか、ズームさんがいるからか。
「アヤネさん、紀元前村で何もしなかった時点でアウトですよ!愛しの王子様は、もはやロォラさんに気持ちが向いています。アヤネさんが、どれだけ愛しの王子様の傍にいたくても、王子様の心はロォラ姫に向いていて、そのうち2人は付き合うんです!」
「どうして、どうして、そんなこと言うんですか!」
アヤネさんは、混乱したのか力の弱いユメさんに掴みかかり、引っぱたいた。
「痛い!何するの!」
「これがアヤネの本性よ。汚いわね」
だんだん、アヤネさんに不利な方向に向かっている。
「あなたも本当に懲りませんね。僕はロォラを女として見たことはありませんよ」
兄妹揃って無自覚なのか。
「誰だか知らないけど、同年多いし、仲良くしようと思ってたし、チームワーク考えてたつもりだけど、アヤネが汚いことはしたくないとアヤネから、みんなを蔑ろにしたんだ」
そうなんだよね。今は2年生だけど、高校1年生だったんだよな。
「みんなの言い分も分かったよ。でも、みんなも分からないことの1つや2つあるよね?それを間違えるたびに指摘されたら、いやな気持ちにならないかな?誰にでも出来ないこと、どうしていいか分からないことはあるんだよ。せっかく知り合ったんだし、アヤネと仲良くしてあげてくれないかな?」
「分かりました。僕なりに努力はします」
ラルク……。ラルクが心がけるなら私も……。
「カナエもカナエなりに努力はしてみます」
「分かった。アヤネにやる気があるなら協力はする」
「アヤネ次第かな」
「アヤネ次第だと思うけど?」
「紀元前村では、一人一人が自分のことしか考えられない状況でした。ゆえに、僕らの配慮が足りなかったかもしれません。今後はアヤネさんのことも気を配るつもりです。けれど、ナミネさんの指導は間違っていなかったと僕は思っています」
ズームさんは紀元前村での映像をセリルさんに渡した。ズームさんは、やっぱり気が回る。
「私はいや!何もしてないのに暴力振られて、理不尽だわ!こんな怪物と一緒には暮らせない!ズームにフラれて当然だわ!」
「僕もユメを殴る人には帰ってもらいたいです」
誰でも自分が不利な立場になれば、思ってないことを言ってしまったり行動に出てしまったりする。
「とりあえず、ユメさんの件は後で話し合おうか。ズームさんも気を配るって言ってるし、一旦アヤネの苦手の件は、みんなのサポートで様子を見るってことでいいかな?」
「はい、ラルクも努力するなら私も努力します!」
その時、ユメさんがアヤネさんを蹴りつけた。あーあ、キクリ家がめちゃくちゃだよ。どうして、人は迷惑ばかりかけてしまうのだろう。
「あなたたち、何やってるの?」
レイカさんも来てるんだ。やっぱり3人仲良いな。私はラルクだけでいいけど。
「レイカ、アヤネって子がラァナの過去持ち出してイジメてて、紀元前村でも何もしなかったらしいわ。オマケにキクリ家の井戸使えなくされるし、散々よ」
「まあ、貴族ってそういう生き物なんじゃない?けれど、誰がそのアヤネって子にラァナのこと話したのかしら?」
みんなの視線がセレナールさんを向いている。というか、セレナールさん以外誰がいるのだろう。
「姉さん、あんた、なんでチームワーク乱すのさ」
「セレナール、やっていいことと悪いことがあるよね?ラァナさんがどれだけ傷ついたか分かる?」
「なあ、話が見えてこないんだが。セレナールは、そのラァナって人の何を話したんだ?」
ロォラさんは何も知らない。知るはずがない。けれど、ここで公にしたら、またラァナさんが立ち直れなくなる。天界にいたミドリお姉様のように。
「ロォラ、人には言いたくない秘密の1つや2つあるんだ」
「でも兄貴、私はあいまいは嫌いだ。ちゃんとハッキリ話し合うべきだと思う」
その時、ミドリお姉様とズルエヌさんが来た。
「ラァナ、どうしたの?」
「ミドリ……」
ラァナさんはミドリお姉様に泣きついた。
「ミネス、元気にしてた?」
「元気元気。ズルエヌが死んでる間もね」
やっぱり、どこか落ち武者さんに似ている。
「あ、ズルエヌさん、ナノハお姉様は……」
「もうすぐ来るよ。こっちの大学入って、マンションも契約したから、たまに来てるよ。キクリ家には、これから同級生のみんなに挨拶に来たんだよ」
ズルエヌさん、こっちの大学通うんだ。マンションも近くだろうか。ズルエヌさんも、カナコさんもレイカさんもラァナさんもミドリお姉様も大学2年生か。
「そうだったんですね」
「ラァナ、中に入りましょう」
「みんな誰かに庇われて不公平よ!ミドリさんだって、とんでもないイジワルされたくせに!」
私は泣きながらアヤネさんに大量の下剤を飲ませたあと、残飯をアヤネさんにかけ、アヤネさんを井戸に落とそうとした。
「ナミネ、落ち着こうか」
気が付いたらセリルさんに抱き締められていた。
「セレナールさん、覚えていてください」
「兄さん、助けて!ナミネがイジメる!」
その瞬間、カナコさんがセレナールさんを引っぱたいた。気付いたらミドリお姉様とラァナさんはいなくなっていた。
「あの人がセレナールの兄なのか?」
「どう見ても似てるだろ!ロォラ!」
セレナールさんが、裏でこんなことしていただなんて全く知らなかった。
「僕はナミネをキクリ家に連れて行くから、ラルクはアヤネを頼めるかな?」
「分かりました」
ヨルクさんの声が聞こえる。けれど、私は気絶するように眠ってしまっていた。

目を覚ますと私はキクリ家の客間にいた。窓の外は暗い。もう夜なのだろうか。
「ナミネ、ここにフルーツ置いておくから食べれそうだったら食べて」
私は身体を起こした。
「ありがとうございます、セリルさん」
私はフルーツを一気に食べた。
「ナミネ、大丈……」
私は無意識にヨルクさんを突き飛ばしてしまった。どうせ、もう別れたのだし、関係ない。これからは、私も別の殿方と交際するのだし、ヨルクさんみたいなノロマなんか知らない。
「ヨルクは、ずっとナミネを心配してたんだよ」
「もうヨルクさんとは別れました」
「ナミネ、あの時は不安定になって、思ってもないことを言ってしまった!許してほしい。ナミネと別れたくない!」
今更なに?別れるって言ったのヨルクさんじゃない。
「あ、もう他人ですので出てってください」
「ナミネは昔からヨルクにくっ付いてたね。どの女の子も寄せ付けないように。ナミネは何度転生してもヨルクを好きになってるんじゃないかな?ヨルクは優しいしナミネとお似合いだと思うよ」
「セリルさんだって優しいじゃないですか!」
そうだよ。優しい男なんて、この世にいくらでもいる。何もヨルクさんでなくても。
「優しくなんかないよ。僕はヨルクみたいに何でも許す人間ではないからね」
みんなそう言う。でも、それってどういう意味なのだろう。ラルクもセレナールさんを許しきれなくて愛想が尽きてしまった。
「あの、それって……」
「例えば、愛する人がいたとして、僕はその人を全力で信用するし、全力で助けるけれど、裏切られたなら、そこで縁は切れるよ。みんなそうなんだよ。でも、ヨルクは人の全てを許してる。戦闘向けではないけど、いつもナミネのお世話するヨルクを手放して、ナミネは他の人と幸せになれるかな?」
そりゃそうか。誰だって、浮気とか許せるわけないか。そんなの許せるのヨルクさんくらいだ。セリルさんとカナコさんは、ずっと上手くいっているだろうけど、上手くいってない恋人のほうが世の中多いんだよな。
「ヨルクさんしかいません……ヨルクさんじゃなきゃ本気で愛せません……。あの、セリルさんはカナコさんとは、ずっと上手くいっていたんですか?」
「そうだね。カナコさんは優しいし、気配り上手だから。遠い昔、同棲してた時とか、2人で仲良くやっていたよ」
やっぱり2人は理想の恋人だ。どうやったら、対等な恋人関係でいられるのだろう。
「そうなんですね。やっぱりセリルさんとカナコさんて、どこまでも理想の恋人ですよね」
「どうだろうね。互いに譲り合ってるしね。あ、井戸は修理屋の人が来て、元に戻ったよ。ラァナさんも落ち着いたし、アヤネのことは明日話し合う予定だよ。セレナールのことはごめんね。あの子は何度言い聞かせても反抗的な態度しか取らないんだ」
「い、いえ、セリルさんは悪くないです。タルリヤさんとラァナさんは会えましたか?」
「会えたよ。友達としてね」
あ、そっか。まだラァナさんはセリルさんのこと好きだった。
「そうですか。でも、時を超えてまた会えてよかったです。カラルリさんも、また、あの頃のように元気に……」
「あの後ね、ラァナさんとタルリヤは婚約後、別れたんだよ。カラルリは、随分とやつれたね。去年の4月までは、恋愛とか分からないとか言ってカナエとはしゃいでいたのに。幼なじみとしては心配だよ」
え、かつてのタルリヤさんとラァナさん、別れたの?恋人って分からないものだな。カラルリさんは、遠い昔から少しずつ変わってきたように思う。本当にセナ王女のことが好きだったかも今となっては分からない。
「そうでしたか。全く知りませんでした。恋は分からないものですね」
「そうだね。だからこそ、ナミネはヨルクを手放しちゃダメだよ。知っての通り、トイレは外にボットン便所、料理は火鉢でしてるし、お風呂は五右衛門風呂があるから」
そうだった。キクリ家は、非常事態に備えて昔の作りをそのままにしている。ナノハナ家だと、ボットン便所までは使用人が住んでる離れまで行かないといけない。火鉢はあるけど、五右衛門風呂は第2母屋からだし。
「はい、分かりました」
「じゃ、困ったことあったら、いつでも言ってね」
そう言うとセリルさんは客間から去って行った。
気が付くと、ヨルクさんの紅葉の香りが漂っていた。

……

あとがき。

カラクリ家ではなく、キクリ家で。
古代編の人、集まっちゃいましたね。

結局、ラァナとタルリヤは別れたのか。

今となってはアルフォンスの「ここまで来たらカラルリはセレナールを妹以上に想っているとしか思えない」が意味深に思える。

レイカは、もうアロンとは交際してない。
エミルも、今のターリャとは無理がありそう。

何世紀も経てば変わるもんなんですね。

……

この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
純愛偏差値 未来編 一人称版 93話

《ヨルク》

私たちは、ひょんなことから、レタフルという人魚を送り届けることになった。しかし、別荘を出た時から大雨で、地面が土のところまで来ると、ぬかるんでいて馬の速度が落ちてしまったのである。
そんな時、アルフォンス王子の馬が竿立ちし、アルフォンス王子とレタフルさんが投げ出されそうになり、ナミネとラルクが引き換えし、2人を受け止めた。
ラルクはレタフルさんを、ナミネはアルフォンス王子を、私はロォハさんを乗せて人魚の湖に向かうことになった。

もう間に合いそうにない。
ここでレタフルさんの命は尽きてしまうのだろうか。
「0時、3分前だ!もう間に合わない。強気なナミネ、ラルクごとクソレタフル吹き飛ばせ!」
「分かりました!ラルク、頑張って!」
ナミネは扇子を開いて、ラルクごとレタフルさんを人魚の湖に向けて吹き飛ばしたもよう。
間に合ったのだろうか。後方にいる私には強い霧で前が殆ど見えない。それでも、レタフルさんがどうなったのか確認するため、私は、ぬかるんだ地面を馬で走り続けた。

随分とかかった。案の定、人魚の湖には、みんな到着している。1番遅かったのは、やはり私か。
レタフルさんも人魚の湖に入っている。間に合ったんだ。
あれ、ユウサクさんがいない。そういえば、ユウサクさんの馬だけフェアリーサラブラーではない。普通の農家の馬だ。けれど、ユウサクさんは、人魚の湖町に住んでいる。この辺の土地勘はあるはずだろう。
それにしても、町は、あれだけの大雨だったのに、ここは雨が降っていない。
「じゃ、クソレタフル送り届けたから宿探す」
そうか、もう1時前なのか。そろそろ明日の帰りに向けて休まないと。
「待って!ヨルクはここにいて!」
その瞬間、カンザシさんがレタフルさんを殴りかけた。
「カンザシ、その人魚の結婚相手見つかった」
「お願い!縁談は取り消して!私を自由にさせて!」
「カンザシのこと馬鹿にして、自分だけ幸せになろうと思わないで」
「悪かったと思ってる!双子だなんて知らなかったの!」
何故、双子と間違える。私は双子などではない。そういった時代もあったかもしれないけど、少なくとも今は、カンザシさんはナノハナ家の庶子だ。
「ねえ、ラルク。青い桜が咲いてるよ」
「だな。ロクに花見も出来なかったから、いい機会だな」
青い桜。はじめて見る。妖精村は不可思議だ。
「ナミネ、一緒に写真撮ろ」
私はインカメラにした。
「ちょっと、ヨルクさん!どうして人魚入れるんですか!セクハラです!」
「うーん、でもどうしても入っちゃうよ」
暗いし、そんなに気にするほどのことではないと思うのだけれど。私は、虚しくも青い桜だけ撮った。
その時、ユウサクさんが来た。
「ユウサクさん、すみませんが今夜泊めていただけませんか?」
「いいよ。布団もあるし、適当に使って」
そうか、ユウサクさんの家に泊めてもらうのが手っ取り早いか。けれど、こんな大人数入り切るのだろうか。でも、これ以上の長居は無用だ。
「ねえ、ラルク。湖の向こうに通路があるよ」
「ナミネ、明日にしろ。まずはユウサクさんの家で休むんだ」
「じゃ、ユウサクとこ行く」
レタフルさんが何度も私の名前を呼ぶ中、私たちは人魚の湖を出た。

ユウサクさんの家は人魚の湖から15分ほどだった。この距離なら毎日通えるだろう。
ユウサクさんの家は、旧家で二階建てだった。みんなは玄関で、レインウェアをタオルで拭いた。けれど、セレナールさんにレインウェアを貸したカラルリさんが、ずぶ濡れだ。
カラルリさんは、ユウサクさんにタオルと着替えを借りた。
ここで1人で住むのは寂しいだろうな。
押し入れの中にはたくさんの布団があり、何部屋かに布団を敷いた。疲れたのか、ナミネは眠ってしまった。私はナミネを抱きかかえ、手前の部屋の布団に寝かせた。そして、私もナミネと同じ布団に入った。

朝8時。
こんなにも寝てしまったのか。隣を見るとナミネはいない。
「あんた、いつまで寝てんのさ。もう、みんな食事済ませたぜ?」
「ナミネはどこ?」
「トイレだ」
「トイレ使えるの?」
「この町は、だいたいボットン便所だからね?」
そうか。湖のある町は、何気にどこも古いところが多いな。ナミネ、生理大丈夫だろうか。
「あんた、どこ行くのさ。今日は晴れてるし、もうすぐ人魚の湖行く。さっさと朝食済ませろ!」
「分かった」
朝食って、停電してるのに、ちゃんとしたものあるのだろうか。私はナミネを心配しながらも居間へ向かった。
居間では、みんなラジオを聞いている。
雑穀米に味噌汁、干し魚。ふと見ると火鉢がある。これで料理を作っているのか。
「ユウサクさん、朝食ありがとうございます」
「こんな町だから大したものないけどね。畑で取れないのは無人市場に買いに行ってるし」
畑の野菜に、田んぼのお米、無人市場。まるで紀元前村の蓮華町だな。案外妖精村にも存在していたのか。
「雑穀も作ってるんですか?」
「庭で栽培してる。なんせ自給自足の生活だからね」
大手企業のflowerグループで働いていたエリートが、このような暮らしをしているというのは、どうも不自然に感じてしまう。それでも、今のユウサクさんにとっては、この暮らしが馴染んでるのだろう。
その時、ラジオからニュースが流れてきた。
『数日前から妖精村全域停電しています。復旧は未定。スーパーやコンビニも、お弁当やお惣菜はありません。全て、米や生野菜、生魚、生肉など火を通していないものばかりです。購入しても、ご自宅で加熱しないといけません。カセットコンロも完売してしまいました。殆どのご家庭ではサラダなど火を通さない料理でまかなっているそうです』
ついにガスコンロ完売か。火を通してないとはいえ、食材があるだけ紀元前村の蓮華町に比べたらマシだろうけど、私たちも火鉢で料理したほうが効率よさそうな気がする。
ナミネが来た。
「ナミネ、大丈夫?それもらっておくね」
私はナミネからビニール袋を受け取った。
「あなたたちは、ずっと仲良しね」
「セナ王女は、もう恋愛しないのですか?」
「紀元前村に行ってから考え方も変わったわ。カラルリとは全然運命なんかじゃなかったし、ミナクにはすぐに捨てられたし、恋愛はもうコリゴリよ」
知り合った当初は恋愛にのめり込んでいたセナ王女が、すっかり変わってしまった。それでも、セナ王女なら、いくらでもいるだろう。夢中になれる人でなくても、社交界に行けば、いい人はたくさんいる。
「そうですね。無理に繋ぎ止める恋愛より、いっそ1人で自由に生きてみるのもいいかもしれませんね。大学院まで行くなら、まだまだこれからですし」
「そうね。もうロクでもない男とは付き合わないわ。これからは将来に向けて勉強に励む」
「応援しています」
「ナミネもヨルクと幸せになって」
大学院か。今、ナクリさんが大学を休学しているが、休学も含めたら大学院卒業となると、それなりに年齢がいっているだろう。ちょっと昔までは19歳とかで結婚していたのに、現代では、すっかり晩婚化。40代で結婚する人が、わりと多い。私は大学までだけれど。ナヤセスさんとかなら学生結婚も十分ありうるだろう。セナ王女も、王室頼るなら学生結婚が可能だ。けれど、私はのんびりやっていきたい。きっと、ナミネもそうだろう。
遠い昔はナミネとは学生結婚だったけれど、今はそうもいかない。
「じゃ、人魚の湖行く」
「あ、ユウサクさん、一晩お世話になりありがとうございました」
「ユウサクさん、停電終わったら、また会いに来ます」
人懐っこいナミネは、一晩一緒にいただけなのに歩きながらユウサクさんに、ずっと手を振っていた。

ユウサクさんの家からだと人魚の湖はすぐだった。私たちは人魚の湖の入り口の前に王室の馬を置いた。
「いいか、人魚の湖にいられるのは2時間だからな!みんなストップウォッチ用意しろ!」
私たちはストップウォッチを設定して人魚の湖に入った。
あれ、昨夜は晴れていたのに今日は小雨が降っている。人魚って伝説かと思っていたけど本当にいるんだなあ。
「ちょっと、ヨルクさん。どこ見てるんですか!セクハラですよ!」
「え、本当に人魚いるんだなあて思って」
「じゃあ、人魚のどこ見てたんですか!」
どこと言われても……人魚は人魚だし、なんて答えればいいのだろう。
「普通に湖全体見てたよ」
「ヨルクさんって、いつもそうですよね!いやらしいったらありゃしい!」
またナミネにイタズラされた。
「ねえ、どうしてこういうことするの!何故、私を辱める」
「ねえ、ラルク。ヨルクさん、人魚見て興奮してるよ」
「妖精の水浴びみたいなもんだから仕方ないだろ!」
交際当初のナミネからは、かなり距離を置かれていたけれど、今となっては、すっかり私に気を許している。いいのか悪いのか。
ラルクは人魚に近付いた。
「あの、すみません。あの通路の先ってどうなっているんですか?」
「人魚が人間になった時に過ごす家が並んでるわ。市場もね」
人魚の家まであるのか。1日なら市場も使わないだろうに。
「皆さん、彼氏持ちですか?」
ナミネはすぐ深入りする。
「そうね、人魚同士のカップルや人魚と人間のカップルがいるわね。でも、独り身の人魚もたくさんいるわ」
人間と人魚か。交際が大変そうだな。
「君も人魚に興味あるの?」
「普通かな。僕は人間も人魚も、そんなに変わらないと思ってるよ」
「じゃあ、人魚と付き合えるの?」
「告白されたらね」
ナルホさんのタイプってイマイチよく分からない。でも、ミネスさんとの距離が近いようにも思える。
「すみません、この人とお付き合いしてくださる方いますか?」
「カナエ、もういいんだ。私はセナさんが振り向いてくれるまで、ずっと待つ」
カラルリさんはセナ王女に未練タラタラだな。けれど、私もナミネにフラれたら、どこまでも諦めないだろう。
「じゃ、通路通る」
人魚の家ってどんなふうだろう。町の環境も気になる。

通路を通ると、やはり小さな2人か3人が住めるような森の湖町のような古民家が並んでいた。丸い屋根。こういうの流行っているのだろうか。
ここは晴れている。こういうところの天気も、よく分からないものだな。
歩いているのは、やはり人間なのか。
「ヨルクさん!どこ見てるんですか!そういうのセクハラですし、彼氏と思いたくないです!」
「ねえ、どうしてそういう言い方するの?私はただ、この町を見てるだけなのに」
小さい頃のナミネはあんなに可愛かったのに、どうしてこんなふうになってしまったの。
「ナミネはヤキモチ妬きよ」
「ナミネはすぐ嫉妬するからね」
何故かハモった。
「そうだっけ?」
「そうよ。あなたに近付く同級生がいれば、その子のお弁当放り投げてたわ」
いつの時代の話だろう。
「幼稚園でヨルクと遊んでる子いたら、ナミネはその子突き飛ばしてたよ」
え、でも、その頃ナミネはラルクのこと好きだったんじゃ……。それに、全然覚えていない。
「そ、そうだっけな。エルナとは知り合いだっけ?」
「遠い昔、同級生だったわ。今みたいに落ち武者さんとも同じクラスだったのよ」
そうだったのか。でも、全然覚えていない。
「そ、そっか」
あれ、ナミネが同い歳くらいの男の子と仲睦まじ気に話している。
「あのね、私、レタフルさん送り届けるために紅葉町から来たの」
「随分遠くから来たんだね」
「うん、そうなの。レタフルさんって好きな人いるの?てか、この町って収めてる人いるの?」
「レタフルは、定期的に彼氏変わってるよ。ここは、町長が収めてるよ。町長は、人魚でありながら、大昔に人魚の肉を食べて不老不死になって、いつでも人間の姿になれるんだ」
どこにでも町長はいるが、この町にも存在していたのか。
「あー、なんかね、森の湖南町にも似たような人いるよ」
ナミネとラルクがお世話になった、あのおじいさんのことか。
「そうなんだ。町長は夫が亡くなるたび、また違う人と結婚して子孫作ってるけど、町長と家族でいるのは子供が生きている間だけで、ひ孫までなると、もう他人同然なんだ」
「そっかあ。不老不死の運命も悲しいものなんだね」
子孫がいるのに時の流れと共に他人同然になってしまうのか。長く生きるというのも切ないものだな。
「ナミネ、みんな服来てないから、あまり異性と仲良くしないで」
「私、ヤキモチ妬く男って大嫌いです!ヨルクさんって、小さい男ですね!」
何故、私はいけないのに自分はいいみたいなローカルルールでものを言う。けれど、ナミネと仲違いしたくなくて、私はナミネの手を握った。でも、ナミネは私の手を振り払った。こういう時は、虚しくなるし寂しくもなる。
「あ、あれが町長だよ!」
随分若い人だな。もう少し歳増かと思っていた。
「町長さんー!この町は平和ですか?」
「うーん、難しいわね。子供のために寺子屋も作っているし、職業こそないけれど、人魚以外の何かに転生した時の準備はしているつもりよ。でもね、300年ほど前から、また儀式がはじまったのよ。不老不死を求める貴族が皇室に訴えて、たまに武官が来ては人魚を連れて行かれるの。私は人魚を絶やさないためにも、女には多くの子供を産んでもらってる。それに人魚を天然記念物に指定してもらえるよう、何度も皇帝陛下にかけあってるわ」
不老不死なんてロクな人生遅れないだろうに。貴族というものは無いものねだりをする。そうやって、人魚の湖のような平和なとのころを壊していく生き物なのである。
「人魚って数億年前から存在してますよね。私も人魚がいなくなるのはいやです。人魚の湖町に住む人は、人魚の湖に通うことが楽しみだったりもします。古くから存在するものがなくなって、時代がどんどん変わっていくのは悲しいです」
「そうね、ここは幸い今は当時のまんまだけれど、外の世界は、随分と変わったのよね。私も変わっていくのは苦手だわ。この町の雰囲気はずっとこのままでいてほしいわね」
やはり、皆変わっていくことを恐れる。それは人間だけでなく、人魚も同じなのか。私も、このような空間を見ていると昔を思い出して切なくもなる。あの頃と今、どっちがいいのだろう。
「あの、私、夢を見たんです。彼氏が未来で心変わりしてレタフルさんと交際するんです!それって正夢だったりするのでしょうか?」
ナミネ、ずっとレタフルさんの夢気にしてるんだ。
「うーん、図書館の古い本によると、確かに、そういう夢を見た人は転生後、実際にそうなる確率が高く、ここ最近はその確率が特に高まっているみたい。私も実際に何度も見てきたわ。ある日、人間が人魚を迎えに来るの。人間は前世で夢を見たからだと言っていた。時には、あなたのように心変わりした人間が来て、拗れたりしてる。確実にそうなるわけではないのよ。けれど、私は図書館にもない、もっと古い本に答えが書かれていると思っているわ」
町長さんの発言は、まるで正夢のようなものに聞こえる。けれど、確実ではない。ずっとずっと昔に何かがあって、それが何らかの形で今でも引き継がれているのだろうか。それこそ1つの儀式だ。
「そうですか……」
ナミネ、また落ち込んでる。
「けれど、本当に愛しているなら、いっとき心変わりしても遠い未来でまた愛し合うものよ。私は本命と何度も結婚してるわ。それと、ここに来た記念に市場のものを1人1つ買って帰っていいわよ。何かの参考になるかもしれないから、図書館にも行ってみて。これがここの地図よ」
町長さんはナミネに地図を渡した。
「ありがとうございます!」
「じゃ、市場でもの買って図書館行く」
この町の町長さんは、しっかりしてるんだな。この町みたいな穏やかなところばかりだと争いごともないだろうに。人はいつから争うようになってしまったのだろう。

市場は見たこともないもので溢れていた。
「ナミネ、どれにする?」
「今は非常事態なので、役に立つものを買います」
「ナミネ、それは私が買うから、ナミネは記念に残るようなものを買って」
ナミネは、しばらく考え込んだ。
「はい」
よかった。ナミネには少しでも喜んでほしい。
人魚の灯火。これは電池などがなくても明かりが付いているのか。人魚の水。飲めば長寿。水はほしいけど、ペットボトルだと足りなくなる。
「僕は人魚の薬買うから、あんたは人魚の灯火買え!」
「分かった!ナミネはどうする?」
ナミネは人魚の絵を持っていた。この町にも絵描きさんがいるのだろうか。
「これにします」
「うん、分かった」
私は人魚の灯火と人魚の絵を買った。
「なあ、ズーム。人魚のサプリってあるぞ」
「ロォラ、他に欲しいのないならそれ買っとけ!」
人魚のサプリなんてあるのか。ここの市場は変わっている。遠い昔からそうだったのだろうか。
「分かった、ズーム!」
ロォラさんは人魚のサプリを購入した。
「あ、君、透明人間になれる透明人魚の粉買うの?」
「見てるだけだよ」
こういうところは、普通の町では売ってないものばかりで、逆に何を買えばいいのか分からなくなる。
「透明人魚の粉は僕が買うよ。研究の材料になりそうだ」
ナヤセスさんは、ずっと研究ばかりして来たんだな。
「はい、ストップ!」
突然、落ち武者さんがカンザシさんの持っていたものを取り上げた。
「人魚の恋の瓶。あんた、これ何に使うのさ?」
まさか、ナミネに惚れ薬を飲ませる気なのか!
「それは僕が買うよ」
ナヤセスさんに続いて今度はロォハさんが購入。ここには研究材料がいっぱいだ。
「ただ、見ていただけです!」
「言っとくけど、兄妹、姉弟での婚姻は取り消されるそうだからな!強気なナミネを顔だけヨルクから奪えると思うなよ!」
あの法律なくなるのか。そのほうが私も気持ち的に楽だ。
「僕は、無理矢理ナミネさんと、どうこうなろうと思ってません!ただ、ナミネさんの家族になりたいだけです!」
どこまで信じていいのか分からない。
「じゃ、図書館行く」
ナミネは地図を開いた。人魚の湖って広いんだな。ここからだと、図書館は、そこまで遠くはないか。私たちは図書館に向かって歩きはじめた。

少しすると図書館が見えてきた。図書館も古民家風な建物なのか。この町の風景考えたの誰だろう。
図書館の中はとても広い。1階の作りだけれど、かなりの書物が置いてある。
「ねえ、ラルク。人魚のセレナールさんいるよ」
「ナミネ、念の為、写真に撮っとけ!」
私はナミネに駆け寄った。
他人の空似でもなく、先祖でもなく、セレナールさんそのものだ。セレナールさんは、かつて妖精だったけど、人魚な時もあったのか。
このような大昔の写真が綺麗に保管されているだなんて、ここには修復する人がいるのだろうか。私は本棚を整理しているお姉さんに声をかけた。
「あの、この図書館って、いつ頃からあるのでしょうか?」
「そうね、私が聞いた話では1億年前らしいけど、実際どうだかね」
1億年前。そんなに昔のものが、ここまでいい状態で残っているのか。
「そうですか。随分と歴史あるところなんですね」
妖精村から紀元後だから、その前は全て紀元前になる。何故かカメラだけは古くから存在しているが、それも何か理由があるのだろう。
「町長が変わってからね、図書館もそうだけど寺子屋も託児所も管理者は人間の姿しているのよ。歴史を絶やさないためにね」
「そうでしたか。素敵な発想だと思います」
管理者のお姉さんは来客に呼ばれ行ってしまった。
私はたまたま手に取ったアルバムを開いた。すると、15歳くらいのナミネが男性人魚に抱き締められている写真があった。私はあまりのショックに、その場に泣き崩れた。
「あんた、なにしてんのさ。時間限られてんだから、とっとと参考になるのは写真に撮れ!」
ナミネは、色んな男と恋愛をしてきたんだ。私はナミネしか愛したことないのに。このどうしようもない感情、どうしたらいいのだろう。
「ヨルクさん、どうしたんですか!」
私を立ち上がらせようとするナミネを私は思わず振り払った。
「ナミネって、男ったらしだよね!色んな男と愛し合って、馬鹿にするのも、いい加減にして!」
「私はヨルクさんだけです!ヨルクさん、少し休みましょう」
「放っておいて!」
私は、いつからこんなにヤキモチを妬くようになったのだろう。それとも、疎外感からだろうか。こんなことではナミネに嫌われてしまう。
「ねえ、ラルク。皇帝陛下が人魚の肉食べてる写真あるよ」

……

あとがき。

妖精村には、どうして湖が多いのでしょうね。

もし、本当に物凄く古い時代の写真が現実に残っていたとしたら、私たちは恐竜も見れるのでしょうか。
紀元前1億年前の世界とか予想出来ないです。

……

この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
Copyright (C) 2009 雨の音を聴きながら, All right Resieved.
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