日常のこととかオリジナル小説のこととか。
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ashita
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地主(土地貸してます)
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漫画やアニメを見るのが好きです。最推しはフーディーニ ♡
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ブログ、もう書かないと思ってました。
けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。
小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。
純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。
ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。
小説、ぼちぼちマイペースに書いてゆきます。
よろしくお願い致します。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
お知らせ。
イラストは現在「ナノハナ家の日常」に載せております。サイドバーにリンクあります。
また、「カラクリよろずや」にて無料のフリーイラスト素材配布もはじめました✩.*˚
フリーイラスト素材も増やしていく予定です(*'ᴗ'*)
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
模倣・無断転載などは、ご遠慮ください。
ブログの小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
小説・純愛偏差値に関しましては、武家名・貴族名(程度による) / 及び、武官の階級 / 扇子・羽子板・花札・百人一首・紙飛行機などのアイテム使用方法の模倣の一切を禁じております。
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X @kigenzen1874
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けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。
小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。
純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
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〈資格履歴〉
2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
→漢方コーディネーター 合格
→薬膳調整師 合格
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〈資格証明バナー〉

2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
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→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
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→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
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2025年08月04日
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〈資格証明バナー〉

純愛偏差値 未来編 一人称版 77話
《ナミネ》
「ナミネさんからもらってないなら意味がない!どうして僕だけ苦労しなきゃいけないんだ!どうして僕だけ親ガチャ運ないんだ!苦労した分だけみんなから嫌われて、こんなのあんまりだ!」
このような親の不倫によるテテなし子の育て親による虐待は妖精村でも問題にはなっているが、福祉センターも全ての人は救いきれず、小さい間に保護されるケースも少ない。
ナヤセス殿は、赤ちゃんの時に育ての親から孤児院に入れられ、そこでイジメられるものの、研究員の仕事をし、今の地位を築いたが、ナヤレス殿は育ての親からの虐待に耐え切れず、今もまともな暮らしを出来ずに苦しんでいる。
また、妖精村は10歳から結婚が出来るため、小学低学年の小さい子供しか保護はしてくれず、高校生にもなると保護センターも相手にはしてくれない。
『もう少し頑張れないかな?』
『自分でどうにか出来ないかな?』
『甘えててもどうにもならないよね?』
世間は人が思うよりずっと厳しい。
自分で道を切り開けない人ほど、人への依存を求めてしまう。
カンザシさんがヨルクさんのチョコを盗んだのも1種の病気であると思う。幼少時代に虐待を受けていた人は、成長するとともに過去の恐怖が強まり、他者に対して攻撃的になりやすい。これをイルージョンと呼ぶらしい。
親から逃げて一人暮らしをしても、仕事が上手くいかず、そのうちに生活保護を申請し、現実を見なくなる人も後を絶たない。
そういう意味では、今現在、会場の前でセナ王女とミネスさんのバトルは無いものねだりのワガママにも思えてくる。
その時、ユメさんと委員長が来た。
「もうセナさんたちがああだから、クラフにチョコ渡し会出来なくって、さっき渡しちゃった」
「あー、あれはもう誰にも止められませんね」
セナ王女とミネスさんのバトルは激しい。けれど、証拠からもミネスさんが有意になっていいはずなのに、幸運の女神はセナ王女に微笑んでいる。まさか、セナ王女の背後に誰かいるのだろうか。でも、助けたくない。セナ王女はともかく、私の何世紀もの青春を奪ったミネスさんには一欠片の慈悲も持ち合わせていない。
「まあ、渡せただけマシだと思うけど?」
「ナミネ、チョコが入るようにツーショット撮っていい?フェアリーZ広場に投稿したいから」
「分かりました」
ラハルさんは私があげたチョコを指に挟んで私とのツーショットを撮った。シャッターを押す前にゴールドがジャンプして私とラハルさんの真ん中に入った。
「いい写真撮れましたね!」
ラハルさんが写真をフェアリーZ広場に投稿すると、私はその投稿写真を保存した。
「ラルク、本命チョコよ!」
うわぁ、見た目ぐちゃぐちゃだ。ラルク可哀想。
「あの、それって今作ったんですか?」
「そうよ。向こうでチョコ作り体験してるわ」
そうだったのか。そこで、ヨルクさんのチョコ作り直そうかな。
「ラルク、チョコ作り体験行こうよ!」
「そうだな。ホワイトデーの練習として作っとくか」
「じゃ、僕もいく」
「みんなしてどうして僕を無視するんですか!」
カンザシさんをスルーして、私とラルク、落ち武者さん、ズームさん、ロォラさん、ヨルクさんはチョコ作り体験へと向かった。
セナ王女とミネスさんのバトルでチョコ作り体験も殆ど人がいなかった。焼くと時間かかるし、生チョコにしようかな。私は溶かしたチョコに生クリームを入れた。
混ぜた後、私は氷の舞でチョコを少し固めた。
「ラルク、見て。馬の交尾。人間と殆ど変わらないよね」
「いや、ちょっと違うだろ」
「ナミネ、恥ずかしいからやめて!」
ここ人殆どいないのに何が恥ずかしいのだろう。ヨルクさんって冗談が全然通じない。
「別にここ身内しかいませんし、恥ずかしいも何もありませんよね」
「こういうところで、そういうことしないで!」
「えっ、でもヨルクさん、ト……」
言いかけて私は口を塞がれた。所詮、男は人間も動物も同じだ。
「セレナール先輩、また作るんですか?市販でいいと言ったでしょう」
「だって、ラルクに愛情伝えたいもん」
「んー!んー!」
ヨルクさんに口を塞がれ喉から声を出すとゴールドがヨルクさんの手を振り払った。私は生チョコを星の型に入れて青色のパウダーでグラデーションした。仕上げに氷の舞で程よく固め、冷たくした。型から取り出すと、クッキングシートをラッピング用の箱に入れた。
「ヨルクさん、ケーキではないですが、見た目はさっき渡したのと似てますので、2度目の本命チョコです」
私はヨルクさんに星型の本命チョコを渡した。
「ありがとう、ナミネ。凄く嬉しい」
ヨルクさんは星型の生チョコを写真に撮った。その瞬間、カンザシさんが、星型のチョコを手に取り食べてしまった。はあ、二度目か。
「カンザシ、あんたどういうつもりだ」
「あの、カンザシさん、あなたどういう神経してるんですか?」
「カンザシ!いい加減にしろ!」
私は余った生チョコに赤色のパウダーでグラデーションするとハートの型に入れて氷の舞で固めると型から出した。
「僕だけ除け者なんですね。みんなイジメって楽しいですか?」
私はゴールドの上に乗ってハート型の生チョコを唇に当てた。
「ラハルさん〜!写真撮ってください〜!」
「ナミネ、モデルみたいだね」
ラハルさんは私とゴールドのツーショットを撮った。
「ナミネ、フェアリーZ広場に投稿していい?」
「はい、構いません」
ラハルさんがフェアリーZ広場に投稿すると、私はその写真を保存した。そして、ハート型の生チョコを加えるとヨルクさんの袖を引っ張った。
「ナミネ、凄く美味しい」
ヨルクさんは私を抱き締めた。
「ほら、記念写真だ」
落ち武者さんは私とヨルクさんにメールをした。添付画像を開くと、ハート型の生チョコを加える私とハート型の生チョコを見つめるヨルクさんと私の写真があった。うん、絶妙なバランスだ。
「今年はナミネの本命チョコ食べられて幸せ」
1粒でもヨルクさんに食べてもらえてよかった。私はカップル日記を開いた。
『ナミネから星型の青色のグラデーションのチョコケーキもらった。妖精村はじめてのナミネからの本命チョコ。嬉しすぎる。生きてて良かった』
『1つ目のナミネからの本命チョコなくなっちゃったけど、2つ目の星型の青色のグラデーションの生チョコもらった。幸せすぎる』
『ハート型の1粒に込められたナミネの想い』
ヨルクさん、3つとも投稿してる。妖精村時代、両想いになってはじめての本命チョコ。何だか私も嬉しい。
「ナミネ、イルカさんのチョコだよ」
「わあ、可愛い!」
私は即写真に撮った。そして、食べようとした時、カンザシさんが床に落とし、踏み付けた。私は思わずカンザシさんを引っぱたいた。
「カンザシ、あんた出てけ!」
その時、ユメさんがカンザシさんの肩にイエローカードを貼った。そして、マイクを手に持った。
「本日は私の彼氏の誕生日会にお越しくださりありがとうございます。皆様には楽しんでもらいたいですが、行動は慎んでください。暴れたり、人に迷惑をかけるなどの行為をした人には私がイエローカードを貼ります。レッドカードを貼られた者は即退場とします。それでは引き続き、誕生日会を楽しんでください」
1つ目のチョコがなくなった時点でユメさんに知らせれば良かったかな。とりあえず写真だけは残っているから私はカップル日記に投稿をした。
『チョコ作り体験にて、ヨルクさんが青いイルカの生チョコを作ってくれた。食べれなかったけど、想い出の写真だけでも投稿』
これでよし!
あれ、コメントついてる?
『カンザシ:ナミネさんの手作りチョコ、すっごく美味しかったです』
こういうの何だかいや。
「ズームは、こういうパーティーよく行くのか?」
「メンバーで行く時は最後までいるけど、後は顔出しだけだ!」
「ねえ、ラルク、テテなし子って育ちが悪いよね」
「あんた、テテはあんたの家にいるだろうが」
いるけどさ。やっぱり、ちゃんと両親揃って……両親揃って……あれ、分かんないや。
「まあ、こればかりは忍耐力だわな。カンザシさんには耐えきれないんじゃないか?」
「あー、そうだねー。ラルクなんて私の目の前で熱湯かけられてたもんね」
ラルクの母親は子を純粋に愛し育てていたが、ミナクさんが3歳の時、交通事故にあって、それから、ヒステリーを起こすようになってしまったのだ。それが原因で、クレナイ家の子はナノハナ家でよく遊んでいた。ラルクは持ち前の能力で耐え切り、ミナクさんは第3母屋のおばあ様おじい様のところに逃げ、ヨルクさんだけが気絶するまで酷い虐待を受けていた。クレナイ家のお母様は今でもナノハナ家に相談に来ている。
「まあ、ズームさんとこみたいに幸せな家庭ってなかなかないわな」
「だねー。浮気とかナノハナ家だけだしさー」
「難しいね。僕のところは、ごくごく普通の一般家庭だけど、お金持ちのナミネやラルクが苦労してるとは全然予想もつかなかったよ」
「あー、はたからは見えませんからね」
そう。隣の芝生は青い。けれど、フタを開ければそうでないことのほうが世の中多い。愛し合っての結婚のはずなのに、時が経てば結婚式で誓い合った気持ちは枯れ果てる。仮面夫婦が多いそうだが、やはり、不倫する人もそれなりにいる。コミリやレイン漫画のように。
「あの、ズームさん、このチョコ良かったら……」
「ありがとうございます、アヤネさん」
「あの、落ち武者さん、男たちにフェアリーングかけて、タイプの女性聞き出してもらえませんか?」
「りょーかい」
落ち武者さんは、ヨルクさん、ズームさん、ラハルさん、カンザシさん、ミツメさん、ミナクさん、カラン王子、アルフォンス王子、委員長にフェアリーングをかけた。
「あんたらの好きな女のタイプ言ってみろよ。ついでに、この会場の中なら誰かも言え!」
「私は綺麗で黒髪で胸が大きい人かな。ミネルナさんが綺麗だと思うけど、黒髪じゃないからこの中にはいないかな」
ヨルクさんって極度の面食いだ。私のこと本当に好きなのだろうか。
「僕は今でもナミネさんです。前世の美しいナミネさんにはかなり惹かれましたが、現世の可愛らしいナミネさんにはすぐに心奪われました」
はあ、ズームさんの彼女だったら、喧嘩とかなく穏やかな交際が出来そう。
「僕もナミネ。具体的には前世のナミネだけど、現世では演技力に惹かれた。ナミネには多くの魅力があると思う」
ラハルさんも私を推してくれている。
「ナミネさんです。好きで好きでたまらなくて、もう心が爆発しそうです」
カンザシさんのコメントはいらないや。
「ナミネさんのキュートさが好きです」
ミツメさんの事件解決してから、すっかり好かれちゃった。
「私はミネスに惚れてる。でも、胸はDカップ以上、ウエストは64cm以下、身長は155cm〜158cm、清楚で純粋な女がタイプだ。会場内ならミネルナさんだろうか」
うわー、兄弟揃って被ってるよ。クレナイ家三兄弟は何故にこうまで面食いなのだろう。それにミネスさんが好きとか言っておきながらミネルナさんがタイプってどういうこと?
「僕は優しくて勇敢な人です。前世だったらカナエさんでしたが、今はナミネさんです」
カラン王子と結婚したら玉の輿だ。カラン王子は浮気なんてしないだろうし、幸せな結婚生活が送れそう。
「私はタイプで言うならこの中にはいないな」
え、カナエさんのことが好きなんじゃないの?
「僕は清楚でセクシーなモデルのような女性がタイプです。ロォラさんて綺麗だなて思います」
委員長って、意外にも……ませてる。
落ち武者さんはフェアリーングを解いた。
「ラルク、これじゃあ、誰が彼氏か分かんないよ」
「まあ、本心と核心てヤツだな」
はあ、ヨルクさんは核心では綺麗な人が好きなのか。
「ナミネ、違うから!私はただ、一般論言っただけだから!」
「ヨルクさんて面食いですね。それに対して、私にはいっぱい票が入ったので、お婿さん選び放題です」
「ナミネ、待って!私、ずっとナミネのこと見てきた!小さい頃からずっと!ナノハナ家ではじめてナミネを見た時可愛いって思った!だから、ずっと縁談の話持ちかけに行った!」
何か、嘘くさく聞こえるのは私だけだろうか。
「大勢の殿方が私を支持する中、彼氏のヨルクさんはミネルナさんなんですね。何かチョコあげて損しました。あれ全部義理チョコなんで」
「滑稽ですね。ナミネさんの彼氏のヨルクさんがナミネさんだと言わないなんて。浮気症なんじゃないですか?もう既に他の人に目をつけているかもしれませんね」
「あの、カンザシさんって、ナミネの兄ってだけですよね?私はナミネが1歳の頃から、ずっとナミネのこと見てきたんです。カンザシさんもそろそろ新しい恋したらどうですか?」
「本当にムカつきますね。ズーム!僕とナミネさんを今すぐ婚姻させろ!でないと自殺する!」
滑稽なのはどっちだろう。もうズームさんの背中の勾玉のアザは消えているのに。ラルクの我慢によってだけど。
「あ、ここで死ぬとユメさんの別荘がいわく付き物件になってしまうので、死ぬなら他でどうぞ」
「ナミネさん、よくもそんなこも言えますね!本当に死にます!」
「だから、ここ以外なら死んでもいいと言っているでしょう!」
その時、ナルホお兄様に腕を掴まれた。
「あの、ハッキリ言います!私を襲わせて貯金ゼロになったのは事実ですよね?それのどこが落ち武者さんのフェアリーングの誤りなんですか?」
「確かに、あの時は馬鹿なことをしたと思っている。けれど、そうした理由が僕には分からないんだ」
分からない?よくヌケヌケと嘘が言えるよね。ナルホお兄様の言葉と行動が正反対で、私はナルホお兄様を受け入れるとか許すとかいう概念が持てなかった。
私はナルホお兄様の脇腹を蹴った。
「目の前でカナエさんが襲われても、理由が分からないで済ませられるんですか?」
「それは出来ないけど、僕はナミネに嫌われたままでいたくない」
「じゃあ、カナエさんの前でミネスさん犯してください。そうすれば、ナルホお兄様との関係を元通りにします」
「出来ないよ」
結局、汚いことしても許して欲しくて、カナエさんとも上手くやっていきたいだけじゃん。私は扇子でナルホお兄様をミネスさんの元に移動させ、ミネスさんのドレスを脱がさせた。そして、ミネスさんのドレスと下着をゴミ箱に入れさせた。
憎しみたくないのに、いやなことされてから元の関係に戻りたいとか言われると、めちゃくちゃ苛立ってしまう。
ナルホお兄様は扇子でゴミ箱からミネスさんのドレスと下着を取り出したが、私は扇子でハサミを動かしミネスさんのドレスと下着を切り刻んだ。
ナルホお兄様は上着を脱ぎミネスさんに着せようとしたが、私は扇子でセナ王女のドレスを脱がせミネスさんに着せると、ナルホお兄様を素っ裸にした。ナルホお兄様はキクスケさんを呼び出し番人部屋に移動した。少しすると、元の服を着たナルホお兄様が戻って来た。下着姿になったセナ王女はミネスさんを殴り続けた。
ナルホお兄様は走ってミネスさんを助け、セナ王女に岩の結界をかけた。そして、ナルホお兄様はミネスさんを連れてこちらに向かってきた。
「ナミネ、ミネスには手を出さないで欲しい。ミネスとは愛し合っているから、それを壊さないで欲しいんだ。ナミネが死にたいなら死んでもいいよ。無理に生きてることはないんだよ。でも、僕とミネスの関係を壊すことだけはやめてほしい」
結局、原点に戻っている。ナルホお兄様はもうそういう人なのだ。優しくて、あどけない笑顔を見せていたナルホお兄様は、もう戻ってくることはない。私はナルホお兄様を無視した。
「ナミネ、聞いてるかな。ナミネが死にたいなら死んでもいい。だから、ミネスとの関係は壊さないで欲しい」
「平和ボケなナルホ、あんた何言ってるか分かってんのか?男尽くしカナエはどうしたんだよ?」
「カナエとは交際してるよ」
ユメさんはナルホお兄様とミネスさんの肩にレッドカードを貼った。2人はパーティー会場から即退場となった。
「強気なナミネ、今すぐキクスケ呼び出せ!」
「分かりました」
私は呼び出しカードでキクスケさんを呼び出した。
「お呼びでしょうか」
「なあ、平和ボケなナルホどうなってんだよ!」
「ナルホさんは天使村時代、ミネスさんと大恋愛をしていました。けれど、結婚後は喧嘩の日々で、魔が差したのでしょう。ナミネさんとヨルクさんを妬むようになり、ナミネさんとヨルクさんの食事に少しずつ毒を盛り、ヨルクさんが先に亡くなると、ナルホさんはナミネさんに、無理に生きていなくてもいい死んでもいいんだよと毎日のように言い、ナミネさんは自殺しました。けれど、ナミネさんの死後、ナルホさんは自分のした恐ろしいことに気づき、何度も悔やみました。悔やんで過ごした時間があまりにも長く、今のナルホさんの精神状態は限界を超えています」
ヨルクさんを暗殺したのカンザシさんじゃなかったの?いったいどうなっているの?
「顔だけヨルクを毒殺したのはカンザシと姉さんだろうが!」
「ミネスさんがナノハナ家に来たことで、少しずつ過去が変わりはじめているのです。私たちも全力を尽くして修復に向けていますが、過去は物凄いスピードで変わっていって、もしかしたら、現世に支障をきたすかもしれません」
ミネスさんが原因だったんだ。けれど、歴史は変えられないはずなのに、どうして変わっていっているのだろう。このまま過去が変わり続けたらどうなるのだろう。
あれ、ゴールドが何か咥えてる。
「ゴールド、何咥えてるの?」
「古代式のチェーン。ナミネ、それ逆物質じゃないのか?」
私はすぐにキクスケさんを呼び出した。
「お呼びでしょうか」
「あの、ゴールドがこれ咥えてたんですけど、これって逆物質ですか?」
「まさにそうです!今すぐ、初代天使村に戻して来ます!これで、歴史の乱れも現代も元通りになります!では、これにて失礼!」
キクスケさんはゴールドが咥えていたネックレスを持って天使村に向かって行った。けれど、私はもうナルホお兄様のことを信じられなくなっていた。
夕方になり、パーティーが終わると客は帰って行った。今日はユメさんの別荘に泊まるから私たちはリビングに行った。すると、ナルホお兄様とミネスさんが戻って来ていた。
「お子ちゃまミネス、あんた逆物質持ち込んだだろ!どれだけ強気なナミネ傷付けたら気が済むんだ!」
「違う!わざとじゃなかった!でも、どうしてもカンザシが身に付けてるネックレスが欲しかった!それを持ち帰っただけで、とんでもないことになるとは思わなかった!」
歴史を変えることは出来ない。それでも、逆物質を持ち帰った時だけ変わるのか。
今思えば、ナルホお兄様がおかしくなったのは、ミネスさんが来てからだ。それでも、私とナルホお兄様の間には深い亀裂が入ってしまっている。
その時、伝説初級武官が現れた。伝説初級武官はミネスさんをあっという間に取り囲んだ。
「どうして!誰か助けて!」
このバトル、まだ続いていたのか。
「人を辱めたら何らかの形で返ってくるでしょう。でも、好きにしてください。その代わり自己責任ですので助けは求めないでください。鬱陶しいので」
「待って!これまでのこと、本当に悪かったと思ってる!ナミネの何世紀にも渡る青春奪った自覚もなかった!でも今は償いたいと思ってる!」
人は窮地に陥った時だけ人に助けを求める。けれど、今の場合、あちら立てればこちら成り立たずだし、セナ王女からは危害加えられていないから助ける義務なんてないと思っていた。
……
あとがき。
逆物質持って帰った時だけ歴史は変わるんですね。
歴史って何でしょうね。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
《ナミネ》
「ナミネさんからもらってないなら意味がない!どうして僕だけ苦労しなきゃいけないんだ!どうして僕だけ親ガチャ運ないんだ!苦労した分だけみんなから嫌われて、こんなのあんまりだ!」
このような親の不倫によるテテなし子の育て親による虐待は妖精村でも問題にはなっているが、福祉センターも全ての人は救いきれず、小さい間に保護されるケースも少ない。
ナヤセス殿は、赤ちゃんの時に育ての親から孤児院に入れられ、そこでイジメられるものの、研究員の仕事をし、今の地位を築いたが、ナヤレス殿は育ての親からの虐待に耐え切れず、今もまともな暮らしを出来ずに苦しんでいる。
また、妖精村は10歳から結婚が出来るため、小学低学年の小さい子供しか保護はしてくれず、高校生にもなると保護センターも相手にはしてくれない。
『もう少し頑張れないかな?』
『自分でどうにか出来ないかな?』
『甘えててもどうにもならないよね?』
世間は人が思うよりずっと厳しい。
自分で道を切り開けない人ほど、人への依存を求めてしまう。
カンザシさんがヨルクさんのチョコを盗んだのも1種の病気であると思う。幼少時代に虐待を受けていた人は、成長するとともに過去の恐怖が強まり、他者に対して攻撃的になりやすい。これをイルージョンと呼ぶらしい。
親から逃げて一人暮らしをしても、仕事が上手くいかず、そのうちに生活保護を申請し、現実を見なくなる人も後を絶たない。
そういう意味では、今現在、会場の前でセナ王女とミネスさんのバトルは無いものねだりのワガママにも思えてくる。
その時、ユメさんと委員長が来た。
「もうセナさんたちがああだから、クラフにチョコ渡し会出来なくって、さっき渡しちゃった」
「あー、あれはもう誰にも止められませんね」
セナ王女とミネスさんのバトルは激しい。けれど、証拠からもミネスさんが有意になっていいはずなのに、幸運の女神はセナ王女に微笑んでいる。まさか、セナ王女の背後に誰かいるのだろうか。でも、助けたくない。セナ王女はともかく、私の何世紀もの青春を奪ったミネスさんには一欠片の慈悲も持ち合わせていない。
「まあ、渡せただけマシだと思うけど?」
「ナミネ、チョコが入るようにツーショット撮っていい?フェアリーZ広場に投稿したいから」
「分かりました」
ラハルさんは私があげたチョコを指に挟んで私とのツーショットを撮った。シャッターを押す前にゴールドがジャンプして私とラハルさんの真ん中に入った。
「いい写真撮れましたね!」
ラハルさんが写真をフェアリーZ広場に投稿すると、私はその投稿写真を保存した。
「ラルク、本命チョコよ!」
うわぁ、見た目ぐちゃぐちゃだ。ラルク可哀想。
「あの、それって今作ったんですか?」
「そうよ。向こうでチョコ作り体験してるわ」
そうだったのか。そこで、ヨルクさんのチョコ作り直そうかな。
「ラルク、チョコ作り体験行こうよ!」
「そうだな。ホワイトデーの練習として作っとくか」
「じゃ、僕もいく」
「みんなしてどうして僕を無視するんですか!」
カンザシさんをスルーして、私とラルク、落ち武者さん、ズームさん、ロォラさん、ヨルクさんはチョコ作り体験へと向かった。
セナ王女とミネスさんのバトルでチョコ作り体験も殆ど人がいなかった。焼くと時間かかるし、生チョコにしようかな。私は溶かしたチョコに生クリームを入れた。
混ぜた後、私は氷の舞でチョコを少し固めた。
「ラルク、見て。馬の交尾。人間と殆ど変わらないよね」
「いや、ちょっと違うだろ」
「ナミネ、恥ずかしいからやめて!」
ここ人殆どいないのに何が恥ずかしいのだろう。ヨルクさんって冗談が全然通じない。
「別にここ身内しかいませんし、恥ずかしいも何もありませんよね」
「こういうところで、そういうことしないで!」
「えっ、でもヨルクさん、ト……」
言いかけて私は口を塞がれた。所詮、男は人間も動物も同じだ。
「セレナール先輩、また作るんですか?市販でいいと言ったでしょう」
「だって、ラルクに愛情伝えたいもん」
「んー!んー!」
ヨルクさんに口を塞がれ喉から声を出すとゴールドがヨルクさんの手を振り払った。私は生チョコを星の型に入れて青色のパウダーでグラデーションした。仕上げに氷の舞で程よく固め、冷たくした。型から取り出すと、クッキングシートをラッピング用の箱に入れた。
「ヨルクさん、ケーキではないですが、見た目はさっき渡したのと似てますので、2度目の本命チョコです」
私はヨルクさんに星型の本命チョコを渡した。
「ありがとう、ナミネ。凄く嬉しい」
ヨルクさんは星型の生チョコを写真に撮った。その瞬間、カンザシさんが、星型のチョコを手に取り食べてしまった。はあ、二度目か。
「カンザシ、あんたどういうつもりだ」
「あの、カンザシさん、あなたどういう神経してるんですか?」
「カンザシ!いい加減にしろ!」
私は余った生チョコに赤色のパウダーでグラデーションするとハートの型に入れて氷の舞で固めると型から出した。
「僕だけ除け者なんですね。みんなイジメって楽しいですか?」
私はゴールドの上に乗ってハート型の生チョコを唇に当てた。
「ラハルさん〜!写真撮ってください〜!」
「ナミネ、モデルみたいだね」
ラハルさんは私とゴールドのツーショットを撮った。
「ナミネ、フェアリーZ広場に投稿していい?」
「はい、構いません」
ラハルさんがフェアリーZ広場に投稿すると、私はその写真を保存した。そして、ハート型の生チョコを加えるとヨルクさんの袖を引っ張った。
「ナミネ、凄く美味しい」
ヨルクさんは私を抱き締めた。
「ほら、記念写真だ」
落ち武者さんは私とヨルクさんにメールをした。添付画像を開くと、ハート型の生チョコを加える私とハート型の生チョコを見つめるヨルクさんと私の写真があった。うん、絶妙なバランスだ。
「今年はナミネの本命チョコ食べられて幸せ」
1粒でもヨルクさんに食べてもらえてよかった。私はカップル日記を開いた。
『ナミネから星型の青色のグラデーションのチョコケーキもらった。妖精村はじめてのナミネからの本命チョコ。嬉しすぎる。生きてて良かった』
『1つ目のナミネからの本命チョコなくなっちゃったけど、2つ目の星型の青色のグラデーションの生チョコもらった。幸せすぎる』
『ハート型の1粒に込められたナミネの想い』
ヨルクさん、3つとも投稿してる。妖精村時代、両想いになってはじめての本命チョコ。何だか私も嬉しい。
「ナミネ、イルカさんのチョコだよ」
「わあ、可愛い!」
私は即写真に撮った。そして、食べようとした時、カンザシさんが床に落とし、踏み付けた。私は思わずカンザシさんを引っぱたいた。
「カンザシ、あんた出てけ!」
その時、ユメさんがカンザシさんの肩にイエローカードを貼った。そして、マイクを手に持った。
「本日は私の彼氏の誕生日会にお越しくださりありがとうございます。皆様には楽しんでもらいたいですが、行動は慎んでください。暴れたり、人に迷惑をかけるなどの行為をした人には私がイエローカードを貼ります。レッドカードを貼られた者は即退場とします。それでは引き続き、誕生日会を楽しんでください」
1つ目のチョコがなくなった時点でユメさんに知らせれば良かったかな。とりあえず写真だけは残っているから私はカップル日記に投稿をした。
『チョコ作り体験にて、ヨルクさんが青いイルカの生チョコを作ってくれた。食べれなかったけど、想い出の写真だけでも投稿』
これでよし!
あれ、コメントついてる?
『カンザシ:ナミネさんの手作りチョコ、すっごく美味しかったです』
こういうの何だかいや。
「ズームは、こういうパーティーよく行くのか?」
「メンバーで行く時は最後までいるけど、後は顔出しだけだ!」
「ねえ、ラルク、テテなし子って育ちが悪いよね」
「あんた、テテはあんたの家にいるだろうが」
いるけどさ。やっぱり、ちゃんと両親揃って……両親揃って……あれ、分かんないや。
「まあ、こればかりは忍耐力だわな。カンザシさんには耐えきれないんじゃないか?」
「あー、そうだねー。ラルクなんて私の目の前で熱湯かけられてたもんね」
ラルクの母親は子を純粋に愛し育てていたが、ミナクさんが3歳の時、交通事故にあって、それから、ヒステリーを起こすようになってしまったのだ。それが原因で、クレナイ家の子はナノハナ家でよく遊んでいた。ラルクは持ち前の能力で耐え切り、ミナクさんは第3母屋のおばあ様おじい様のところに逃げ、ヨルクさんだけが気絶するまで酷い虐待を受けていた。クレナイ家のお母様は今でもナノハナ家に相談に来ている。
「まあ、ズームさんとこみたいに幸せな家庭ってなかなかないわな」
「だねー。浮気とかナノハナ家だけだしさー」
「難しいね。僕のところは、ごくごく普通の一般家庭だけど、お金持ちのナミネやラルクが苦労してるとは全然予想もつかなかったよ」
「あー、はたからは見えませんからね」
そう。隣の芝生は青い。けれど、フタを開ければそうでないことのほうが世の中多い。愛し合っての結婚のはずなのに、時が経てば結婚式で誓い合った気持ちは枯れ果てる。仮面夫婦が多いそうだが、やはり、不倫する人もそれなりにいる。コミリやレイン漫画のように。
「あの、ズームさん、このチョコ良かったら……」
「ありがとうございます、アヤネさん」
「あの、落ち武者さん、男たちにフェアリーングかけて、タイプの女性聞き出してもらえませんか?」
「りょーかい」
落ち武者さんは、ヨルクさん、ズームさん、ラハルさん、カンザシさん、ミツメさん、ミナクさん、カラン王子、アルフォンス王子、委員長にフェアリーングをかけた。
「あんたらの好きな女のタイプ言ってみろよ。ついでに、この会場の中なら誰かも言え!」
「私は綺麗で黒髪で胸が大きい人かな。ミネルナさんが綺麗だと思うけど、黒髪じゃないからこの中にはいないかな」
ヨルクさんって極度の面食いだ。私のこと本当に好きなのだろうか。
「僕は今でもナミネさんです。前世の美しいナミネさんにはかなり惹かれましたが、現世の可愛らしいナミネさんにはすぐに心奪われました」
はあ、ズームさんの彼女だったら、喧嘩とかなく穏やかな交際が出来そう。
「僕もナミネ。具体的には前世のナミネだけど、現世では演技力に惹かれた。ナミネには多くの魅力があると思う」
ラハルさんも私を推してくれている。
「ナミネさんです。好きで好きでたまらなくて、もう心が爆発しそうです」
カンザシさんのコメントはいらないや。
「ナミネさんのキュートさが好きです」
ミツメさんの事件解決してから、すっかり好かれちゃった。
「私はミネスに惚れてる。でも、胸はDカップ以上、ウエストは64cm以下、身長は155cm〜158cm、清楚で純粋な女がタイプだ。会場内ならミネルナさんだろうか」
うわー、兄弟揃って被ってるよ。クレナイ家三兄弟は何故にこうまで面食いなのだろう。それにミネスさんが好きとか言っておきながらミネルナさんがタイプってどういうこと?
「僕は優しくて勇敢な人です。前世だったらカナエさんでしたが、今はナミネさんです」
カラン王子と結婚したら玉の輿だ。カラン王子は浮気なんてしないだろうし、幸せな結婚生活が送れそう。
「私はタイプで言うならこの中にはいないな」
え、カナエさんのことが好きなんじゃないの?
「僕は清楚でセクシーなモデルのような女性がタイプです。ロォラさんて綺麗だなて思います」
委員長って、意外にも……ませてる。
落ち武者さんはフェアリーングを解いた。
「ラルク、これじゃあ、誰が彼氏か分かんないよ」
「まあ、本心と核心てヤツだな」
はあ、ヨルクさんは核心では綺麗な人が好きなのか。
「ナミネ、違うから!私はただ、一般論言っただけだから!」
「ヨルクさんて面食いですね。それに対して、私にはいっぱい票が入ったので、お婿さん選び放題です」
「ナミネ、待って!私、ずっとナミネのこと見てきた!小さい頃からずっと!ナノハナ家ではじめてナミネを見た時可愛いって思った!だから、ずっと縁談の話持ちかけに行った!」
何か、嘘くさく聞こえるのは私だけだろうか。
「大勢の殿方が私を支持する中、彼氏のヨルクさんはミネルナさんなんですね。何かチョコあげて損しました。あれ全部義理チョコなんで」
「滑稽ですね。ナミネさんの彼氏のヨルクさんがナミネさんだと言わないなんて。浮気症なんじゃないですか?もう既に他の人に目をつけているかもしれませんね」
「あの、カンザシさんって、ナミネの兄ってだけですよね?私はナミネが1歳の頃から、ずっとナミネのこと見てきたんです。カンザシさんもそろそろ新しい恋したらどうですか?」
「本当にムカつきますね。ズーム!僕とナミネさんを今すぐ婚姻させろ!でないと自殺する!」
滑稽なのはどっちだろう。もうズームさんの背中の勾玉のアザは消えているのに。ラルクの我慢によってだけど。
「あ、ここで死ぬとユメさんの別荘がいわく付き物件になってしまうので、死ぬなら他でどうぞ」
「ナミネさん、よくもそんなこも言えますね!本当に死にます!」
「だから、ここ以外なら死んでもいいと言っているでしょう!」
その時、ナルホお兄様に腕を掴まれた。
「あの、ハッキリ言います!私を襲わせて貯金ゼロになったのは事実ですよね?それのどこが落ち武者さんのフェアリーングの誤りなんですか?」
「確かに、あの時は馬鹿なことをしたと思っている。けれど、そうした理由が僕には分からないんだ」
分からない?よくヌケヌケと嘘が言えるよね。ナルホお兄様の言葉と行動が正反対で、私はナルホお兄様を受け入れるとか許すとかいう概念が持てなかった。
私はナルホお兄様の脇腹を蹴った。
「目の前でカナエさんが襲われても、理由が分からないで済ませられるんですか?」
「それは出来ないけど、僕はナミネに嫌われたままでいたくない」
「じゃあ、カナエさんの前でミネスさん犯してください。そうすれば、ナルホお兄様との関係を元通りにします」
「出来ないよ」
結局、汚いことしても許して欲しくて、カナエさんとも上手くやっていきたいだけじゃん。私は扇子でナルホお兄様をミネスさんの元に移動させ、ミネスさんのドレスを脱がさせた。そして、ミネスさんのドレスと下着をゴミ箱に入れさせた。
憎しみたくないのに、いやなことされてから元の関係に戻りたいとか言われると、めちゃくちゃ苛立ってしまう。
ナルホお兄様は扇子でゴミ箱からミネスさんのドレスと下着を取り出したが、私は扇子でハサミを動かしミネスさんのドレスと下着を切り刻んだ。
ナルホお兄様は上着を脱ぎミネスさんに着せようとしたが、私は扇子でセナ王女のドレスを脱がせミネスさんに着せると、ナルホお兄様を素っ裸にした。ナルホお兄様はキクスケさんを呼び出し番人部屋に移動した。少しすると、元の服を着たナルホお兄様が戻って来た。下着姿になったセナ王女はミネスさんを殴り続けた。
ナルホお兄様は走ってミネスさんを助け、セナ王女に岩の結界をかけた。そして、ナルホお兄様はミネスさんを連れてこちらに向かってきた。
「ナミネ、ミネスには手を出さないで欲しい。ミネスとは愛し合っているから、それを壊さないで欲しいんだ。ナミネが死にたいなら死んでもいいよ。無理に生きてることはないんだよ。でも、僕とミネスの関係を壊すことだけはやめてほしい」
結局、原点に戻っている。ナルホお兄様はもうそういう人なのだ。優しくて、あどけない笑顔を見せていたナルホお兄様は、もう戻ってくることはない。私はナルホお兄様を無視した。
「ナミネ、聞いてるかな。ナミネが死にたいなら死んでもいい。だから、ミネスとの関係は壊さないで欲しい」
「平和ボケなナルホ、あんた何言ってるか分かってんのか?男尽くしカナエはどうしたんだよ?」
「カナエとは交際してるよ」
ユメさんはナルホお兄様とミネスさんの肩にレッドカードを貼った。2人はパーティー会場から即退場となった。
「強気なナミネ、今すぐキクスケ呼び出せ!」
「分かりました」
私は呼び出しカードでキクスケさんを呼び出した。
「お呼びでしょうか」
「なあ、平和ボケなナルホどうなってんだよ!」
「ナルホさんは天使村時代、ミネスさんと大恋愛をしていました。けれど、結婚後は喧嘩の日々で、魔が差したのでしょう。ナミネさんとヨルクさんを妬むようになり、ナミネさんとヨルクさんの食事に少しずつ毒を盛り、ヨルクさんが先に亡くなると、ナルホさんはナミネさんに、無理に生きていなくてもいい死んでもいいんだよと毎日のように言い、ナミネさんは自殺しました。けれど、ナミネさんの死後、ナルホさんは自分のした恐ろしいことに気づき、何度も悔やみました。悔やんで過ごした時間があまりにも長く、今のナルホさんの精神状態は限界を超えています」
ヨルクさんを暗殺したのカンザシさんじゃなかったの?いったいどうなっているの?
「顔だけヨルクを毒殺したのはカンザシと姉さんだろうが!」
「ミネスさんがナノハナ家に来たことで、少しずつ過去が変わりはじめているのです。私たちも全力を尽くして修復に向けていますが、過去は物凄いスピードで変わっていって、もしかしたら、現世に支障をきたすかもしれません」
ミネスさんが原因だったんだ。けれど、歴史は変えられないはずなのに、どうして変わっていっているのだろう。このまま過去が変わり続けたらどうなるのだろう。
あれ、ゴールドが何か咥えてる。
「ゴールド、何咥えてるの?」
「古代式のチェーン。ナミネ、それ逆物質じゃないのか?」
私はすぐにキクスケさんを呼び出した。
「お呼びでしょうか」
「あの、ゴールドがこれ咥えてたんですけど、これって逆物質ですか?」
「まさにそうです!今すぐ、初代天使村に戻して来ます!これで、歴史の乱れも現代も元通りになります!では、これにて失礼!」
キクスケさんはゴールドが咥えていたネックレスを持って天使村に向かって行った。けれど、私はもうナルホお兄様のことを信じられなくなっていた。
夕方になり、パーティーが終わると客は帰って行った。今日はユメさんの別荘に泊まるから私たちはリビングに行った。すると、ナルホお兄様とミネスさんが戻って来ていた。
「お子ちゃまミネス、あんた逆物質持ち込んだだろ!どれだけ強気なナミネ傷付けたら気が済むんだ!」
「違う!わざとじゃなかった!でも、どうしてもカンザシが身に付けてるネックレスが欲しかった!それを持ち帰っただけで、とんでもないことになるとは思わなかった!」
歴史を変えることは出来ない。それでも、逆物質を持ち帰った時だけ変わるのか。
今思えば、ナルホお兄様がおかしくなったのは、ミネスさんが来てからだ。それでも、私とナルホお兄様の間には深い亀裂が入ってしまっている。
その時、伝説初級武官が現れた。伝説初級武官はミネスさんをあっという間に取り囲んだ。
「どうして!誰か助けて!」
このバトル、まだ続いていたのか。
「人を辱めたら何らかの形で返ってくるでしょう。でも、好きにしてください。その代わり自己責任ですので助けは求めないでください。鬱陶しいので」
「待って!これまでのこと、本当に悪かったと思ってる!ナミネの何世紀にも渡る青春奪った自覚もなかった!でも今は償いたいと思ってる!」
人は窮地に陥った時だけ人に助けを求める。けれど、今の場合、あちら立てればこちら成り立たずだし、セナ王女からは危害加えられていないから助ける義務なんてないと思っていた。
……
あとがき。
逆物質持って帰った時だけ歴史は変わるんですね。
歴史って何でしょうね。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
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純愛偏差値 未来編 一人称版 76話
《ヨルク》
2月14日。
今日はバレンタイン。そして、クラフの誕生日。私たちは、ユメさんの別荘の誕生日会に来ている。ナミネからはまさかの手作りチョコをもらった。ホワイトチョコにパウダーを混ぜたのか青色がグラデーションになっていて、綺麗な星型のチョコケーキだった。料理1つ出来ないナミネが1人で作っただなんて、本当に泣きそうになった。何より、ナミネからの本命チョコは嬉しすぎて言葉にならない。
気付けば、ナミネたちがパーティー会場を出た。私はナミネを追いかけた。
「ナミネ、どこへ行くの?」
「ロォラさんのお着替えです」
ロォラさん。ドレス着てなかったのか。
「そっか。ユメさんのドレス借りるの?」
「はい」
けれど、身長は明らかユメさんのほうが高い。その点は短い丈のドレスを選べばいいだろうけど、問題は……。
2階のクローゼットにはたくさんの洋服があった。えっと、パーティードレスは……。凄い数だな。流石は貴族。
「ねえ、落ち武者さん。ロォラさんとユメさんでは体型違うくない?」
「あんた、どこ見てんのさ。そんなもんチャック少し開けて、ストールで誤魔化せばいいだろ」
落ち武者さんのほうがバッチリ見てるじゃない。ストールといっても、ウエストとか大丈夫だろうか。ユメさん、かなりガリガリだけれど。
「ラルク、このドレスとかロォラさんに似合いそうじゃない?」
「派手すぎるだろ。ロォラさんは赤より白が似合うと僕は思うけどな」
白か。何だか結婚式の新婦みたいになりそうだな。
「ロォラ、あんた何カップだよ?」
「Dだけど」
「どうするラルク?ユメさん見るからにAカップだよ」
「例えば、こういうストレッチタイプのノースリーブだったら入るんじゃないか?」
確かに、白のレースで伸び縮み出来るのならロォラさんも苦しくなく身動き出来そうだ。
「じゃ、ロォラ、適当な場所でこれ着てこい」
「分かった」
ロォラさんはドレスを持って場所を移動した。
「ズーム、チャック上げてくれないか?」
「あ、私が行きます」
アヤネさんはロォラさんの元へ走った。少しすると、アヤネさんとロォラさんが戻って来た。
「わあ、ロォラさん似合ってるー!」
「で?着心地はどうなんだ?」
「ピッタリだと思う」
ロォラさんて、ドレス着るとセクシーなんだな。普段はオシャレしないのだろうか。
「じゃ、アヤネ、あんた、ロォラのメイクしろ」
「はい」
アヤネさんはドレッサーデスクでロォラさんのメイクをしはじめた。化粧水をコットンに染み込ませ、顔に塗り、次に下地。ファンデーションはパウダーのものではなく、リキッドタイプのものを薄ら塗り、淡いピンクのチークに、淡い赤のリップ。髪は三つ編みのアップヘアに白い花のバレッタを付けて完成。
「ロォラさん、お姫様みたい!ズームさん、ドキッとした?した?」
「ナミネさん、僕は先日お答えした通りです。それ以外の答えはありません」
ズームさん、今でもナミネのこと好きなのか。ロォラさんとは似合っているようにも見えるのだが。
「私もズームさんのこと大好きですよ。ズームさんの時計騎士姿の大ファンです!」
「ナミネさんにそう言っていただけると嬉しいです」
何か、ナミネとズームさん、距離感縮まっているような。
「靴はこれでも履いとけ!」
透明のヒール。まるでガラス姫。
「あ、ああ、分かった」
「わあ、ロォラさん、ガラス姫みたい!」
「じゃ、会場に戻る」
私たちはメイクアップしたロォラさんを連れてパーティー会場へ戻って行った。
パーティー会場では騒ぎが起きていた。
セナ王女がマイク越しに彼氏をミネスさんに寝盗られたと騒ぎ、その時の写真をばらまいていた。
泣きながらその場に崩れるミネスさんをよそに、貴族たちは大笑いしている。貴族って生まれながらにして何でも持っているイメージがあるが、それでも人の不幸がおかしいのだろうか。
「とりあえず、写真回収するぞ!」
落ち武者さんとナミネとラルクはばらまかれた写真を扇子で全て回収した。ナミネたちはいつも扇子で物とか操作しているけれど、いったいどうやっているのだろう。
その時、テレビからニュースが流れた。
『ブランケット家の次女が第6王女の婚約者を寝盗り婚約破棄になったことで、王室はブランケット家の次女を訴える方針でいるそうです』
一方がいくら別れると言っても納得せず付きまとう人は付きまとう。私もナミネに別れを切り出されたら、どこまでも追いかけてしまうかもしれないが。
「本当、どこまでブランケット家を恥晒しにしたら気が済むの?」
「ミネルナ、まだ詳細は分かってないし、とりあえずミネスを他の場所に移そう」
「兄貴!」
ロォラさんは突然走り出して、躓いて転んだ。咄嗟に私はロォラさんに駆け寄った。
「大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ」
私はロォラさんを起こした。
「いたっ」
やっぱり足を挫いていたか。
「ロォラさん、今主治医呼びますから待っててください」
「別に何ともないからいい」
「ねえ、ラルク、ヨルクさんて美人しか目に入らないのかな」
「まあ、ロォラさんは魅力的だしな」
もうっ、こんな時にどうしてそうやって茶化すの。こうなったらナヤセスさんを呼ぶしかない。私はナヤセスさんにメールをした。ナヤセスさんは走ってこっちに向かって来た。
「骨に異常はなし。捻挫だね。受付で湿布もらってくる」
「あ、私が行きます」
「ねえ、ラルク。ヨルクさんてカッコイイ姿を美人に見せたいのかな」
「ヨルクお兄様はずっと引きこもりだったから、外に出て綺麗な人がいっぱいいろことに気付いて、少しでもモテようとしてんだろ」
どうして、こういう時にナミネとラルクは何もしないで、ただ見ているの。
「ロォラ、大丈夫か?」
「ズーム、私は大丈夫だ」
ズームさんはロォラさんの足に湿布を貼って、ヒールのない透明の靴に履き替えさせた。やっぱりズームさんは気が利く。
「ありがとう、ズーム。あ、さっきミネルナさんと兄貴が出て行った」
「姉さんはすぐ怒るから放っておけ!」
王室がブランケット家を訴えたらどうなるのだろう。そもそも、あれはなかったことになっているのに、写真が残っているだなんて……。
「大丈夫ですか?お姫様」
……。何この展開。
「ああ、大丈夫だ」
ミナクお兄様はロォラさんを立ち上がらせた。
「お美しいですね。どこから来られたんですか?」
「向日葵町だ」
ズームさんとは同じ町ではないのか。それより、もう恥ずかしくて他人のフリしたい。
「随分遠くから来られたのですね。彼氏と一緒じゃないんですか?」
何故口説く。てか、ミネスさんはどうなったの?
「彼氏はいない」
「ねえ、ラルク、何とかして」
「もう末期症状なので、手遅れでしょう」
手遅れって。ミナクお兄様のせいで、こんな事態になったのに、当の本人は知らんぷりでロォラさん口説いてて、もう最悪の状態だ。
「ねえ、ラルク、垂れ流しのチョコあるよ」
「ナミネ、恥ずかしいからやめて!」
「本当だ、チョコレートが垂れ流れてる!」
「ロォラ!下品なこと言うな!」
あれ、ナミネがいなくなっている。まさかとは思うが……。ナミネはチョコレートフォンデュをそのまま食べようとしている。私は慌ててナミネの元へ走った。
「はい、ストップ!あんた、そのまま食べてどうすんのさ」
「じゃあ、どうやって食べるんだ?」
ロォラさんて、どのような育ちだったのだろう。一見落ち武者さんのような一般市民に見えるが。
「このように食べるのですよ、お姫様」
ミナクお兄様はバナナにチョコをつけ、ロォラさんに渡した。
「あ、ありがとう」
「てか、ミナク、あんた、こんなことしてる場合じゃないだろ!」
「そうは言っても、セナ王女には既に別れ切り出してるし、どこまでも折ってこられて毎日が地獄なんだ」
自分がセナ王女に告白したのに、飽きたからと捨てるからこんなことになったのだろう。ミナクお兄様が責任を取らないで誰が責任を取るというのだ。
その時、またテレビからニュースが流れた。
『ブランケット家 次女は第6王女の婚約者からイジワルされたそうです。けれど、皇帝陛下はブランケット家の次女に少年院送りの処分をくだしました』
どういうことだ。ミネスさんの無実が証明されても尚セナ王女が有利な立場にあるだなんて、セナ王女の背後には誰かついているのだろうか。カンザシさんを守っていたズームさんのように。
その時、ミネスさんが戻って来た。ミネスさんは前に立ち、マイクを持った。
「私はセナにハメられた。セナは気に入らないことがあればすぐに人を辱める。そんなやり方汚いと思う。セナこそ浮気し放題じゃん!」
ミネスさんは写真をばらまいた。
カラルリさんでもミナクお兄様でもない。色んな知らない人とセナ王女がカラーで映っている。
気がつけばまたナミネが傍から離れてる。見ると机に乗ったチョコを鷲掴みにしていた。
「ナミネ、手で掴まないの!」
「でも、この騒動で誰もチョコ食べてないじゃないですか!」
「だからって手で掴むと汚いでしょ!」
「ヨルクさんは私のすることなすことに、いちいち干渉しすぎです!束縛彼氏は嫌われます!」
何故そうなる。私はいけないことをいけないと言っただけなのに。
あれ、端っこの椅子に置いたナミネからもらったチョコがなくなっている。
「ねえ、落ち武者さん、ナミネからもらったチョコなくなってるんだけど、知らない?」
「あんた、大切なものなんで放置してんだよ。犯人はカンザシだな」
まさか、人がもらったチョコレートにまで手を出すだなんて。カンザシさんの人間性を疑ってしまう。
「セルファさん、ヨルクさんがもらったチョコレートを盗んだのはカンザシで間違いないですか?」
「間違いないけど?もう既に胃の中だけどな」
そんな……せっかくナミネからもらった大切なチョコなのに。まだ一口も付けてないのに。妖精村に入って、はじめて私のことを好きな気持ちがあって作ってくれたチョコなのに。
私は心の中でフツフツと怒りが湧いていた。そして、涙が零れていた。
「カンザシ、お前、何でヨルクさんのチョコ盗んだ!」
「ズーム、証拠でもあんのかよ!」
その時、ナルホさんとセリルさんが来た。
「セルファ、ここで白黒ハッキリさせようか。君が僕にしたことは完全な誤りであると」
その瞬間、セリルさんがナルホさんにフェアリーングをかけた。
「ナルホはミネスのことをどう思っているのかな?ナミネのこと本当に死んでもいいと思っているのかな?もし、ナミネがカナエとの交際を反対したらどうするのかな?」
「ミネスのことは放っておけないし、確かにかつて物凄く愛していた存在だと思う。でも、現世ではミネスに対してそこまでの感情は抱いてないな。ナミネが死んでもいいなんてこと思ったことないよ。ナミネのことは小さい頃からいっぱい可愛がってきて、今でもたった1人の僕の大切な妹。だから、ナミネに無視されるのはとても辛い。カナエとの交際を反対されたら、ナミネとじっくり話し合うよ」
セリルさんはフェアリーングを解いた。
落ち武者さんがかけたフェアリーングの時とは全く別の答え。けれど、セリルさんに狂いはない。ナルホさんはナミネのことずっと大切に思っていたんだ。
「フェアリーングで引き出せる人の感情はほぼ無限にあるんだ。セレナールは根底の部分しか引き出せない。これまでのセルファは本心、核心、根底、その人から見ただろうその人、他者から見ただろうその人までは引き出せていたね。でも、今はセルファの能力はもう尽きかけているんだよ。だから、どれだけフェアリーングをかけても人の0.5%を切る闇の部分しか引き出せなかったんだよね」
落ち武者さんの力が尽きかけてる!?だったら、これから落ち武者さんはどうやって闘っていけばいいの?フェアリーングは落ち武者さんの生まれ持った能力なのに。
「落ち武者さん、これ飲んで!」
「あんた、それ強気なナミネが危ない時に買ったもんだろうか」
落ち武者さんの能力がなくなってしまえば、今後の団体行動にも支障をきたす。いったいどうすればいいんだ。その時、ナヤセスさんが来た。
「セルファ、小さい頃に大きな病気にかかったことはあるかな?」
「3歳くらいの頃、風邪引いた。家には誰もいなかった。風邪なのにどんどん悪化して息も出来なくなりかけてた。セリルが帰ってきた時には遅かった。病院で、弱い身体のままいつ命を失ってもおかしくないって言われた」
ナミネは落ち武者さんの手を握った。
「だから、身体があんなに冷たかったのですね」
「落ち武者さん、お願いだから飲んで!」
「いい。ここまで生きられただけでも奇跡だし、あんたらとの思い出も出来たから悔いはない」
ここで落ち武者さんを死なせるわけにはいかない。今すぐ月城総合病院に連れていかなくては。
「ナミネ、必殺技使え!」
「分かった、ラルク!」
ナミネは突然走りだした。慌てて私も着いて行った。
パーティー会場を出るとナミネは誰かに電話をかけている様子だった。
「あの、落ち武者さんが能力尽きかけて今にも死にそうなんです。落ち武者さんを助けてください!!あ、はい、能力は元々持ち合わせていたものまでで大丈夫です。はい、お願いします」
いったい誰に電話をかけているのだろう。番人だって、ひとたび願いごとをすると代償は付き物なのに、落ち武者さんを元の状態に戻すなど、とんでもない代償が伴ってくる。
ナミネ、どうして私ばかり助けて自分のことは何も言ってくれないの。私はナミネと一生を添いとげる伴侶だよ。
ナミネの電話が終わった。私は慌てて会場に戻った。
ナミネは走って落ち武者さんの元に行った。
「落ち武者さん、これで能力は元通りになりました」
「あんた、何した!今すぐ取り消せ!」
落ち武者さん、自分が危ないのに、ここで命を落とすかもしれないのに、ナミネを心配している。落ち武者さんはいつだって慈悲深い。
「落ち武者さん、決して私は危険などおかしていません!何をしたかは誰かの命が危なくなるので言えませんが、何一つ代償は払ってませんし、取引も一切していません!」
「ナヤセス!今すぐ強気なナミネを診察しろ!」
ナヤセスさんはナミネを脈診した。
「ナミネの身体は何ともないよ」
ナヤセスさんは、医師志望の中でも特に優れていて、ひとたび脈診すれば、数年後までの症状を読み取ることが出来る。月城総合病院だけでなく、都会の病院からもスカウトがたくさん来ているほどの有能な人材。我々が武官時代に習った応急処置とはレベルが違いすぎる。
「強気なナミネ、あんた、万が一危険なことで僕を救ったなら即取り消すからな!じゃあ、今度はカンザシ、あんたの証拠を引き出す!」
能力が戻った落ち武者さんはカンザシさんにフェアリーングをかけた。
「カンザシ、あんた何で顔だけヨルクのチョコ盗んだ!」
「ナミネさんが僕だけにチョコくれなくて、僕もナミネさんのチョコが食べたくて、そんな時、ふと椅子を見ればナミネさんがヨルクさんに渡した椅子があって、思わず盗んでしまいました」
やっぱりカンザシさんだったのか。
「盗んで食べて今どんな気持ちだ」
「チョコはとても美味しかったです。けれど、どうして僕にだけくれなかったのか、ナミネさんからチョコもらえたみんなが妬ましいです」
妬ましい。個人的な感情で人の大切なものを盗んでいいとでも思っているのか。落ち武者さんは早くもフェアリーングを解いた。
「あんた最低だな。これでまた強気なナミネから嫌われたな」
「あの、カンザシさん、やっていいことと悪いことの見境が分からないのですか?あなただって死ぬほど手離したくないものの1つや2つあるでしょうに」
ナミネからの本命チョコを勝手に食べられたことに私はかなり苛立っていた。
「そうやってみんなして僕を悪者にするんですね。そういうのイジメって言うんですよ」
開き直るつもりか。それも自分が被害者を装って。
「あんたがどうこう言おうと、もう誰もあんたを信じない。悪者扱いとほざこうが、イジメとほざこうが、僕はあんたをグループに入れない。勝手に仲間はずれにされてろ!」
「酷い言い方ですね。後悔しますよ」
「何の後悔だ、言ってみろよ!」
「ズームはいざとなれば僕の味方をします。ということは、あなた方はズーム異常に聡明な方を味方につけなければいけませんよね?」
その瞬間、ここにいるメンバーは黙り込んだ。
これほどに惨めに生きられる者がこの世にいるだなんて、信じがたいが、もう誰も言葉には出来ない状況だった。
「あー、ゴールドだあ!」
ナミネは1匹のゴールデンレトリバーの元へ駆け寄った。そして、ゴールデンレトリバーを抱き締めるとゴールデンレトリバーの上に乗ってこっちに戻って来た。
「あんた、その犬どこの犬なのさ」
「僕の誕生日に父がくれた犬です」
本当だ。ブランケット家って書いてある。ズームさんは照れながらある映像を再生した。
映像はズームさんの小さい頃のものだった。
どこかの別荘なのだろうか。庭に家族が集まっていた。
『ズーム、誕生日おめでとう』
ズームさんは大きなケーキのローソクを消した。
『ありがとう!母さんの料理は世界一美味しくて、父さんは悪いヤツを懲らしめている。僕も大きくなったら美味しい料理作れる悪者をやっつけるヒーローになる!父さん、母さん大好き』
ズームさんは嬉しそうにケーキを食べた。
『ズーム、新しい家族だよ』
箱から小さな犬が出てきた。生後ひと月くらいだろうか。この犬が今ナミネが乗っているゴールデンレトリバーかな。
『可愛い!父さん、ありがとう!』
ズームさんは小さなゴールデンレトリバーを抱き締めた。
『名前をつけてあげなさい』
『うーん、ゴールド!ゴールドにする!』
ズームさんはゴールドとジャれた。
『散歩に連れていく!』
『遠くへ言っちゃダメだよ』
ズームさんはゴールドを連れて別荘を出て、誰もいないひっそりした道を歩きはじめた。
『ゴールドは今日から僕の家族だよ』
『ワン!』
ズームさんとゴールドは仲睦まじく歩いていた。その時、ゴールドが突然道に飛び出した。目の前にはトラックが迫っていた。
『ゴールド!』
ゴールドを助けようとズームさんも道に飛び出した。トラックの運転手は急ブレーキを踏んだが間に合いそうになかった。その時、幼いナミネがズームさんとゴールドを片手ずつに抱え道の脇に避難した。
『大丈夫ですか?』
ナミネはうずまきキャンディを舐めていた。
『えぇえええええん』
ズームさんは恐怖のあまり大泣きした。
『お家はどこですか?』
ズームさんは泣いたまま何も話せなかった。
ナミネはズームさんを背負い、ゴールドを抱っこしながら歩いた。
映像はそこで途切れていた。
ナミネはゴールドから下りた。
「大きくなったね、ゴールド」
「ズーム、あんた幸せすぎる家庭だな」
本当に恵まれていると思う。富と権力ありがながら、家族仲もいいだなんて、ズームさんは愛されて育ってきたんだな。
「ナミネさん、これがあの時ゴールドが加えていたものです。遅くなりましたが、あなたにあげます」
小瓶の中にたくさんの星型のサファイアの石が入っている。
「い、いえ、ゴールドが命懸けで拾ったものなので受け取れません」
「僕とゴールドを助けてくれたのはナミネさんです。ナミネさんが持っていてください」
「で、では、ありがたくいただきます」
ナミネはズームさんから星型のサファイアの石が入った小瓶を受け取った。
「ズームって狡いよな。何もかも持ってて何一つ不自由したことなくってさ。こんな犬まで飼えて」
「リーダー、もうやめてください!チョコなら僕のがあるので、それもらってください!」
「ナミネさんからもらってないなら意味がない!どうして僕だけ苦労しなきゃいけないんだ!どうして僕だけ親ガチャ運ないんだ!苦労した分だけみんなから嫌われて、こんなのあんまりだ!」
カンザシさんは嘆くかのように吐き出した。
人は何か一つでも生き甲斐があれば、それだけで安定を得られる生き物だ。けれど、全てにツキがなく、何一つ生き甲斐のない者は、ただ這いつくばって生きていかなくてはならない。幸せそうな周りを直視しながら。そして、人一倍苦しいにも関わらず、人に嫌われやすい。
また、カンザシさんのような人はこの世にたくさんいるのだろう。けれど、政府は問題化せず、裏金で遊びたい放題。
この沈黙はしばらく続いていた。
……
あとがき。
その人が苦しいと言えば『苦しい』んです。
抜け出せない人もいるんです。
人の心理は難しいですが、自分がこうだからあなたもこうしろと言うのはよくないですね。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
《ヨルク》
2月14日。
今日はバレンタイン。そして、クラフの誕生日。私たちは、ユメさんの別荘の誕生日会に来ている。ナミネからはまさかの手作りチョコをもらった。ホワイトチョコにパウダーを混ぜたのか青色がグラデーションになっていて、綺麗な星型のチョコケーキだった。料理1つ出来ないナミネが1人で作っただなんて、本当に泣きそうになった。何より、ナミネからの本命チョコは嬉しすぎて言葉にならない。
気付けば、ナミネたちがパーティー会場を出た。私はナミネを追いかけた。
「ナミネ、どこへ行くの?」
「ロォラさんのお着替えです」
ロォラさん。ドレス着てなかったのか。
「そっか。ユメさんのドレス借りるの?」
「はい」
けれど、身長は明らかユメさんのほうが高い。その点は短い丈のドレスを選べばいいだろうけど、問題は……。
2階のクローゼットにはたくさんの洋服があった。えっと、パーティードレスは……。凄い数だな。流石は貴族。
「ねえ、落ち武者さん。ロォラさんとユメさんでは体型違うくない?」
「あんた、どこ見てんのさ。そんなもんチャック少し開けて、ストールで誤魔化せばいいだろ」
落ち武者さんのほうがバッチリ見てるじゃない。ストールといっても、ウエストとか大丈夫だろうか。ユメさん、かなりガリガリだけれど。
「ラルク、このドレスとかロォラさんに似合いそうじゃない?」
「派手すぎるだろ。ロォラさんは赤より白が似合うと僕は思うけどな」
白か。何だか結婚式の新婦みたいになりそうだな。
「ロォラ、あんた何カップだよ?」
「Dだけど」
「どうするラルク?ユメさん見るからにAカップだよ」
「例えば、こういうストレッチタイプのノースリーブだったら入るんじゃないか?」
確かに、白のレースで伸び縮み出来るのならロォラさんも苦しくなく身動き出来そうだ。
「じゃ、ロォラ、適当な場所でこれ着てこい」
「分かった」
ロォラさんはドレスを持って場所を移動した。
「ズーム、チャック上げてくれないか?」
「あ、私が行きます」
アヤネさんはロォラさんの元へ走った。少しすると、アヤネさんとロォラさんが戻って来た。
「わあ、ロォラさん似合ってるー!」
「で?着心地はどうなんだ?」
「ピッタリだと思う」
ロォラさんて、ドレス着るとセクシーなんだな。普段はオシャレしないのだろうか。
「じゃ、アヤネ、あんた、ロォラのメイクしろ」
「はい」
アヤネさんはドレッサーデスクでロォラさんのメイクをしはじめた。化粧水をコットンに染み込ませ、顔に塗り、次に下地。ファンデーションはパウダーのものではなく、リキッドタイプのものを薄ら塗り、淡いピンクのチークに、淡い赤のリップ。髪は三つ編みのアップヘアに白い花のバレッタを付けて完成。
「ロォラさん、お姫様みたい!ズームさん、ドキッとした?した?」
「ナミネさん、僕は先日お答えした通りです。それ以外の答えはありません」
ズームさん、今でもナミネのこと好きなのか。ロォラさんとは似合っているようにも見えるのだが。
「私もズームさんのこと大好きですよ。ズームさんの時計騎士姿の大ファンです!」
「ナミネさんにそう言っていただけると嬉しいです」
何か、ナミネとズームさん、距離感縮まっているような。
「靴はこれでも履いとけ!」
透明のヒール。まるでガラス姫。
「あ、ああ、分かった」
「わあ、ロォラさん、ガラス姫みたい!」
「じゃ、会場に戻る」
私たちはメイクアップしたロォラさんを連れてパーティー会場へ戻って行った。
パーティー会場では騒ぎが起きていた。
セナ王女がマイク越しに彼氏をミネスさんに寝盗られたと騒ぎ、その時の写真をばらまいていた。
泣きながらその場に崩れるミネスさんをよそに、貴族たちは大笑いしている。貴族って生まれながらにして何でも持っているイメージがあるが、それでも人の不幸がおかしいのだろうか。
「とりあえず、写真回収するぞ!」
落ち武者さんとナミネとラルクはばらまかれた写真を扇子で全て回収した。ナミネたちはいつも扇子で物とか操作しているけれど、いったいどうやっているのだろう。
その時、テレビからニュースが流れた。
『ブランケット家の次女が第6王女の婚約者を寝盗り婚約破棄になったことで、王室はブランケット家の次女を訴える方針でいるそうです』
一方がいくら別れると言っても納得せず付きまとう人は付きまとう。私もナミネに別れを切り出されたら、どこまでも追いかけてしまうかもしれないが。
「本当、どこまでブランケット家を恥晒しにしたら気が済むの?」
「ミネルナ、まだ詳細は分かってないし、とりあえずミネスを他の場所に移そう」
「兄貴!」
ロォラさんは突然走り出して、躓いて転んだ。咄嗟に私はロォラさんに駆け寄った。
「大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ」
私はロォラさんを起こした。
「いたっ」
やっぱり足を挫いていたか。
「ロォラさん、今主治医呼びますから待っててください」
「別に何ともないからいい」
「ねえ、ラルク、ヨルクさんて美人しか目に入らないのかな」
「まあ、ロォラさんは魅力的だしな」
もうっ、こんな時にどうしてそうやって茶化すの。こうなったらナヤセスさんを呼ぶしかない。私はナヤセスさんにメールをした。ナヤセスさんは走ってこっちに向かって来た。
「骨に異常はなし。捻挫だね。受付で湿布もらってくる」
「あ、私が行きます」
「ねえ、ラルク。ヨルクさんてカッコイイ姿を美人に見せたいのかな」
「ヨルクお兄様はずっと引きこもりだったから、外に出て綺麗な人がいっぱいいろことに気付いて、少しでもモテようとしてんだろ」
どうして、こういう時にナミネとラルクは何もしないで、ただ見ているの。
「ロォラ、大丈夫か?」
「ズーム、私は大丈夫だ」
ズームさんはロォラさんの足に湿布を貼って、ヒールのない透明の靴に履き替えさせた。やっぱりズームさんは気が利く。
「ありがとう、ズーム。あ、さっきミネルナさんと兄貴が出て行った」
「姉さんはすぐ怒るから放っておけ!」
王室がブランケット家を訴えたらどうなるのだろう。そもそも、あれはなかったことになっているのに、写真が残っているだなんて……。
「大丈夫ですか?お姫様」
……。何この展開。
「ああ、大丈夫だ」
ミナクお兄様はロォラさんを立ち上がらせた。
「お美しいですね。どこから来られたんですか?」
「向日葵町だ」
ズームさんとは同じ町ではないのか。それより、もう恥ずかしくて他人のフリしたい。
「随分遠くから来られたのですね。彼氏と一緒じゃないんですか?」
何故口説く。てか、ミネスさんはどうなったの?
「彼氏はいない」
「ねえ、ラルク、何とかして」
「もう末期症状なので、手遅れでしょう」
手遅れって。ミナクお兄様のせいで、こんな事態になったのに、当の本人は知らんぷりでロォラさん口説いてて、もう最悪の状態だ。
「ねえ、ラルク、垂れ流しのチョコあるよ」
「ナミネ、恥ずかしいからやめて!」
「本当だ、チョコレートが垂れ流れてる!」
「ロォラ!下品なこと言うな!」
あれ、ナミネがいなくなっている。まさかとは思うが……。ナミネはチョコレートフォンデュをそのまま食べようとしている。私は慌ててナミネの元へ走った。
「はい、ストップ!あんた、そのまま食べてどうすんのさ」
「じゃあ、どうやって食べるんだ?」
ロォラさんて、どのような育ちだったのだろう。一見落ち武者さんのような一般市民に見えるが。
「このように食べるのですよ、お姫様」
ミナクお兄様はバナナにチョコをつけ、ロォラさんに渡した。
「あ、ありがとう」
「てか、ミナク、あんた、こんなことしてる場合じゃないだろ!」
「そうは言っても、セナ王女には既に別れ切り出してるし、どこまでも折ってこられて毎日が地獄なんだ」
自分がセナ王女に告白したのに、飽きたからと捨てるからこんなことになったのだろう。ミナクお兄様が責任を取らないで誰が責任を取るというのだ。
その時、またテレビからニュースが流れた。
『ブランケット家 次女は第6王女の婚約者からイジワルされたそうです。けれど、皇帝陛下はブランケット家の次女に少年院送りの処分をくだしました』
どういうことだ。ミネスさんの無実が証明されても尚セナ王女が有利な立場にあるだなんて、セナ王女の背後には誰かついているのだろうか。カンザシさんを守っていたズームさんのように。
その時、ミネスさんが戻って来た。ミネスさんは前に立ち、マイクを持った。
「私はセナにハメられた。セナは気に入らないことがあればすぐに人を辱める。そんなやり方汚いと思う。セナこそ浮気し放題じゃん!」
ミネスさんは写真をばらまいた。
カラルリさんでもミナクお兄様でもない。色んな知らない人とセナ王女がカラーで映っている。
気がつけばまたナミネが傍から離れてる。見ると机に乗ったチョコを鷲掴みにしていた。
「ナミネ、手で掴まないの!」
「でも、この騒動で誰もチョコ食べてないじゃないですか!」
「だからって手で掴むと汚いでしょ!」
「ヨルクさんは私のすることなすことに、いちいち干渉しすぎです!束縛彼氏は嫌われます!」
何故そうなる。私はいけないことをいけないと言っただけなのに。
あれ、端っこの椅子に置いたナミネからもらったチョコがなくなっている。
「ねえ、落ち武者さん、ナミネからもらったチョコなくなってるんだけど、知らない?」
「あんた、大切なものなんで放置してんだよ。犯人はカンザシだな」
まさか、人がもらったチョコレートにまで手を出すだなんて。カンザシさんの人間性を疑ってしまう。
「セルファさん、ヨルクさんがもらったチョコレートを盗んだのはカンザシで間違いないですか?」
「間違いないけど?もう既に胃の中だけどな」
そんな……せっかくナミネからもらった大切なチョコなのに。まだ一口も付けてないのに。妖精村に入って、はじめて私のことを好きな気持ちがあって作ってくれたチョコなのに。
私は心の中でフツフツと怒りが湧いていた。そして、涙が零れていた。
「カンザシ、お前、何でヨルクさんのチョコ盗んだ!」
「ズーム、証拠でもあんのかよ!」
その時、ナルホさんとセリルさんが来た。
「セルファ、ここで白黒ハッキリさせようか。君が僕にしたことは完全な誤りであると」
その瞬間、セリルさんがナルホさんにフェアリーングをかけた。
「ナルホはミネスのことをどう思っているのかな?ナミネのこと本当に死んでもいいと思っているのかな?もし、ナミネがカナエとの交際を反対したらどうするのかな?」
「ミネスのことは放っておけないし、確かにかつて物凄く愛していた存在だと思う。でも、現世ではミネスに対してそこまでの感情は抱いてないな。ナミネが死んでもいいなんてこと思ったことないよ。ナミネのことは小さい頃からいっぱい可愛がってきて、今でもたった1人の僕の大切な妹。だから、ナミネに無視されるのはとても辛い。カナエとの交際を反対されたら、ナミネとじっくり話し合うよ」
セリルさんはフェアリーングを解いた。
落ち武者さんがかけたフェアリーングの時とは全く別の答え。けれど、セリルさんに狂いはない。ナルホさんはナミネのことずっと大切に思っていたんだ。
「フェアリーングで引き出せる人の感情はほぼ無限にあるんだ。セレナールは根底の部分しか引き出せない。これまでのセルファは本心、核心、根底、その人から見ただろうその人、他者から見ただろうその人までは引き出せていたね。でも、今はセルファの能力はもう尽きかけているんだよ。だから、どれだけフェアリーングをかけても人の0.5%を切る闇の部分しか引き出せなかったんだよね」
落ち武者さんの力が尽きかけてる!?だったら、これから落ち武者さんはどうやって闘っていけばいいの?フェアリーングは落ち武者さんの生まれ持った能力なのに。
「落ち武者さん、これ飲んで!」
「あんた、それ強気なナミネが危ない時に買ったもんだろうか」
落ち武者さんの能力がなくなってしまえば、今後の団体行動にも支障をきたす。いったいどうすればいいんだ。その時、ナヤセスさんが来た。
「セルファ、小さい頃に大きな病気にかかったことはあるかな?」
「3歳くらいの頃、風邪引いた。家には誰もいなかった。風邪なのにどんどん悪化して息も出来なくなりかけてた。セリルが帰ってきた時には遅かった。病院で、弱い身体のままいつ命を失ってもおかしくないって言われた」
ナミネは落ち武者さんの手を握った。
「だから、身体があんなに冷たかったのですね」
「落ち武者さん、お願いだから飲んで!」
「いい。ここまで生きられただけでも奇跡だし、あんたらとの思い出も出来たから悔いはない」
ここで落ち武者さんを死なせるわけにはいかない。今すぐ月城総合病院に連れていかなくては。
「ナミネ、必殺技使え!」
「分かった、ラルク!」
ナミネは突然走りだした。慌てて私も着いて行った。
パーティー会場を出るとナミネは誰かに電話をかけている様子だった。
「あの、落ち武者さんが能力尽きかけて今にも死にそうなんです。落ち武者さんを助けてください!!あ、はい、能力は元々持ち合わせていたものまでで大丈夫です。はい、お願いします」
いったい誰に電話をかけているのだろう。番人だって、ひとたび願いごとをすると代償は付き物なのに、落ち武者さんを元の状態に戻すなど、とんでもない代償が伴ってくる。
ナミネ、どうして私ばかり助けて自分のことは何も言ってくれないの。私はナミネと一生を添いとげる伴侶だよ。
ナミネの電話が終わった。私は慌てて会場に戻った。
ナミネは走って落ち武者さんの元に行った。
「落ち武者さん、これで能力は元通りになりました」
「あんた、何した!今すぐ取り消せ!」
落ち武者さん、自分が危ないのに、ここで命を落とすかもしれないのに、ナミネを心配している。落ち武者さんはいつだって慈悲深い。
「落ち武者さん、決して私は危険などおかしていません!何をしたかは誰かの命が危なくなるので言えませんが、何一つ代償は払ってませんし、取引も一切していません!」
「ナヤセス!今すぐ強気なナミネを診察しろ!」
ナヤセスさんはナミネを脈診した。
「ナミネの身体は何ともないよ」
ナヤセスさんは、医師志望の中でも特に優れていて、ひとたび脈診すれば、数年後までの症状を読み取ることが出来る。月城総合病院だけでなく、都会の病院からもスカウトがたくさん来ているほどの有能な人材。我々が武官時代に習った応急処置とはレベルが違いすぎる。
「強気なナミネ、あんた、万が一危険なことで僕を救ったなら即取り消すからな!じゃあ、今度はカンザシ、あんたの証拠を引き出す!」
能力が戻った落ち武者さんはカンザシさんにフェアリーングをかけた。
「カンザシ、あんた何で顔だけヨルクのチョコ盗んだ!」
「ナミネさんが僕だけにチョコくれなくて、僕もナミネさんのチョコが食べたくて、そんな時、ふと椅子を見ればナミネさんがヨルクさんに渡した椅子があって、思わず盗んでしまいました」
やっぱりカンザシさんだったのか。
「盗んで食べて今どんな気持ちだ」
「チョコはとても美味しかったです。けれど、どうして僕にだけくれなかったのか、ナミネさんからチョコもらえたみんなが妬ましいです」
妬ましい。個人的な感情で人の大切なものを盗んでいいとでも思っているのか。落ち武者さんは早くもフェアリーングを解いた。
「あんた最低だな。これでまた強気なナミネから嫌われたな」
「あの、カンザシさん、やっていいことと悪いことの見境が分からないのですか?あなただって死ぬほど手離したくないものの1つや2つあるでしょうに」
ナミネからの本命チョコを勝手に食べられたことに私はかなり苛立っていた。
「そうやってみんなして僕を悪者にするんですね。そういうのイジメって言うんですよ」
開き直るつもりか。それも自分が被害者を装って。
「あんたがどうこう言おうと、もう誰もあんたを信じない。悪者扱いとほざこうが、イジメとほざこうが、僕はあんたをグループに入れない。勝手に仲間はずれにされてろ!」
「酷い言い方ですね。後悔しますよ」
「何の後悔だ、言ってみろよ!」
「ズームはいざとなれば僕の味方をします。ということは、あなた方はズーム異常に聡明な方を味方につけなければいけませんよね?」
その瞬間、ここにいるメンバーは黙り込んだ。
これほどに惨めに生きられる者がこの世にいるだなんて、信じがたいが、もう誰も言葉には出来ない状況だった。
「あー、ゴールドだあ!」
ナミネは1匹のゴールデンレトリバーの元へ駆け寄った。そして、ゴールデンレトリバーを抱き締めるとゴールデンレトリバーの上に乗ってこっちに戻って来た。
「あんた、その犬どこの犬なのさ」
「僕の誕生日に父がくれた犬です」
本当だ。ブランケット家って書いてある。ズームさんは照れながらある映像を再生した。
映像はズームさんの小さい頃のものだった。
どこかの別荘なのだろうか。庭に家族が集まっていた。
『ズーム、誕生日おめでとう』
ズームさんは大きなケーキのローソクを消した。
『ありがとう!母さんの料理は世界一美味しくて、父さんは悪いヤツを懲らしめている。僕も大きくなったら美味しい料理作れる悪者をやっつけるヒーローになる!父さん、母さん大好き』
ズームさんは嬉しそうにケーキを食べた。
『ズーム、新しい家族だよ』
箱から小さな犬が出てきた。生後ひと月くらいだろうか。この犬が今ナミネが乗っているゴールデンレトリバーかな。
『可愛い!父さん、ありがとう!』
ズームさんは小さなゴールデンレトリバーを抱き締めた。
『名前をつけてあげなさい』
『うーん、ゴールド!ゴールドにする!』
ズームさんはゴールドとジャれた。
『散歩に連れていく!』
『遠くへ言っちゃダメだよ』
ズームさんはゴールドを連れて別荘を出て、誰もいないひっそりした道を歩きはじめた。
『ゴールドは今日から僕の家族だよ』
『ワン!』
ズームさんとゴールドは仲睦まじく歩いていた。その時、ゴールドが突然道に飛び出した。目の前にはトラックが迫っていた。
『ゴールド!』
ゴールドを助けようとズームさんも道に飛び出した。トラックの運転手は急ブレーキを踏んだが間に合いそうになかった。その時、幼いナミネがズームさんとゴールドを片手ずつに抱え道の脇に避難した。
『大丈夫ですか?』
ナミネはうずまきキャンディを舐めていた。
『えぇえええええん』
ズームさんは恐怖のあまり大泣きした。
『お家はどこですか?』
ズームさんは泣いたまま何も話せなかった。
ナミネはズームさんを背負い、ゴールドを抱っこしながら歩いた。
映像はそこで途切れていた。
ナミネはゴールドから下りた。
「大きくなったね、ゴールド」
「ズーム、あんた幸せすぎる家庭だな」
本当に恵まれていると思う。富と権力ありがながら、家族仲もいいだなんて、ズームさんは愛されて育ってきたんだな。
「ナミネさん、これがあの時ゴールドが加えていたものです。遅くなりましたが、あなたにあげます」
小瓶の中にたくさんの星型のサファイアの石が入っている。
「い、いえ、ゴールドが命懸けで拾ったものなので受け取れません」
「僕とゴールドを助けてくれたのはナミネさんです。ナミネさんが持っていてください」
「で、では、ありがたくいただきます」
ナミネはズームさんから星型のサファイアの石が入った小瓶を受け取った。
「ズームって狡いよな。何もかも持ってて何一つ不自由したことなくってさ。こんな犬まで飼えて」
「リーダー、もうやめてください!チョコなら僕のがあるので、それもらってください!」
「ナミネさんからもらってないなら意味がない!どうして僕だけ苦労しなきゃいけないんだ!どうして僕だけ親ガチャ運ないんだ!苦労した分だけみんなから嫌われて、こんなのあんまりだ!」
カンザシさんは嘆くかのように吐き出した。
人は何か一つでも生き甲斐があれば、それだけで安定を得られる生き物だ。けれど、全てにツキがなく、何一つ生き甲斐のない者は、ただ這いつくばって生きていかなくてはならない。幸せそうな周りを直視しながら。そして、人一倍苦しいにも関わらず、人に嫌われやすい。
また、カンザシさんのような人はこの世にたくさんいるのだろう。けれど、政府は問題化せず、裏金で遊びたい放題。
この沈黙はしばらく続いていた。
……
あとがき。
その人が苦しいと言えば『苦しい』んです。
抜け出せない人もいるんです。
人の心理は難しいですが、自分がこうだからあなたもこうしろと言うのはよくないですね。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
純愛偏差値 未来編 一人称版 75話
《ナミネ》
「ワシは遠い遠い大昔、天使村よりずっと昔に儀式で人魚の肉を食べさせられた。それ以降、身体は不老不死となり、何世紀もの時代を見てきた。もう自分の歳さえ忘れてしもた。人というのは己の考えのみが全てだと思い込み、自分と違う意見を潰すためにすぐに戦をする。ワシも最初は何も持っとらんかった。普通に結婚して妻子はいたけど、些細なことでお偉いさんに殺されてしもた。あの時は悔しくてたまらんかった。結局この世は金と権力を持っている者が暗黙に下々の人を支配する。ワシは最初の妻子を殺された悔しさで、ある人に弟子入りして武術を極めた。師匠のお陰でワシは次の妻子は守り抜くことが出来た。だが、そこで問題になったのは周りからの妬みじゃ。すぐにワシの暗殺計画が行われたが、その頃のワシは刺客を送り込まれても負けん強さになってた。けど、不老不死の人生は思った以上に長く、その後、何度も皇帝陛下に妻子を殺された。いくらワシが何もしとらんでも、周りがひとたび妬めば、ワシの幸せは意図も簡単に壊された。ワシは強さや出世だけでは何もならんと嘆いた。
2人はまだ若い。けど、妬まれても憎んだらあかん。やられてやり返す。それが戦の原因や」
おじいさんは数え切れないほどの人生をノンストップで生きてきたんだ。何も持っていなければ、守るべきものを守れなかったとただ、悔しい思いをする。けれど、強さや地位だけでは周りの妬みで幸せを潰されてしまう。私とヨルクさんも妬まれていたのだろうか。やられてやり返せば戦に繋がるか。人と人の調和というものはとても難しい。
「そうでしたか。確かに誰でも最初から上手くはいきませんね。私ももう何度も転生して、いくつもの前世がありますが、未だに未熟です。おじいさんは早くから弟子を取っていたんですか?」
「仕事をやめて道場を開いた。多くの弟子を鍛えてきた。けど、今度は道場破りや。道場は守れても多くの弟子を失った時、ワシは道場をやめた。その後、職を転々としたけど、完全な幸せを得ることは出来んかった。ワシの話はここまでじゃ。2人はまだ鍛えなあかんことがいっぱいある。けど、もう帰る時や」
えっ、まだここにいたい。おじいさんと一緒にいたいよ。
「い、いやです!私、おじいさんとここで住みます!」
「師範、ここはいったい何なんですか?この町には師範しか住んでいないのですか?」
そういえば、人なんて見かけない。どうしてここがあるのだろう。
「ここは天然記念物じゃ。今は神様が所有しとる。レストランもな。何軒か人は住んどる」
そうだったのか。全く気づかなかった。ここ、ダンゴロさんの所有地なんだ。
「まだ、ここにいさせてください!」
「ワシは1人じゃが、ナミネには家族がいる。来たい時にいつでもここに来ればいい」
離れたくない。ここにいたい。でも、ヨルクさんも心配してるし……。そろそろ、現実世界に戻らないといけない時が来たのか。
「はい……私、いっぱいここに来ます!だから、おじいさんもずっとここにいてください!」
この夜、私はおじいさんと一緒にお風呂に入って一緒の布団で寝た。現実なんか見たくない。ずっとここにいたい。死ぬまで修行して平凡に暮らしたい。けれど、朝は一瞬でやって来た。
手ぶらで来た私たちは荷造りするものもなく私はおじいさんに別れを告げた。
「師範、長い間、指導して頂きありがとうございました。これからも指導よろしくお願いします」
「おじいさん、ありがとうございました。また絶対にここに来ます!」
私はおじいさんとの別れが悲しくてポロポロ涙を零した。
「何があっても堂々としとればええ。結局は悪いことしたモンに返ってくるんやから」
「はい、私負けません!」
私はおじいさんに抱き着いた。
「気を付けて帰りや」
おじいさんは私とラルクに何かを渡した。
「おじいさんも元気で過ごしてください!」
私は名残惜しくもおじいさんから離れ、ラルクと来た時の折り鶴に乗ってナノハナ家に向かって行った。
ナノハナ家に行くと、何故かメンバーみんなが来ていた。まるで私とラルクが今日帰ることを知っていたように。玄関のカレンダーを見ると、まだ2月8日だった。あの古民家並ぶ町では半年も過ごしたのに、こっちでは時間、殆ど進んでなかったんだ。やっぱり、あの町がダンゴロさんの所有地だから時間の流れが違うのだろうか。
第4居間に入ると、ゴージャスな料理が並べてあった。
「ナミネ、おかえり」
「ヨルクさん!」
私はヨルクさんに抱き着いた。
「あんたら今までどこに行ってたんだよ。こっちはどこ探してもいないし心配したんだぞ!」
「すみません……」
私は席に座り、鯛を手で掴んだ。
「ねえ、ミナク、考え直して!悪いところは全て直すから!」
「すみません、セナ王女。私はミネスを好きになりました。もう関係も持っていますし、ミネスだけを大切にしながら生きていこうと思っています」
この2人、まだ決着ついてなかったのか。ミネスさんとのことはなかったことになっているのに、ミナクさんの記憶は消されてないわけか。
「ナミネ、話を聞いてもらえるかな?」
やっぱり、ナルホお兄様話しかけてきた。私はナルホお兄様を無視した。
「ナミネ、僕はカナエと交際することになったよ。でも、ナミネが反対するなら交際は取り止めにする」
人は息を吐くかのように嘘を着く。この嘘は何のための嘘だろう。少なくとも私にはくだらないものに見えた。
「お子ちゃまミネスの次は男尽くしカナエか。あんたの嘘はもう通用しないんだよ。録音してナノハに渡すまでだけどね?」
「セルファがそうしたいならそうしてもらって構わない。今の僕はナミネを傷付けることは一切言わないよ」
いくら私を傷つけたのが次元の違うナルホお兄様だったとしても、私はまだ疑っている。落ち武者さんはナルホお兄様にフェアリーングをかけた。
「平和ボケなナルホ、あんた、強気なナミネを傷付けないて言ったけど、強気なナミネが男尽くしカナエとの交際反対したらどうするわけ?お子ちゃまミネスとは交際しなくていいわけ?」
「ナミネが反対してもカナエとは別れないよ。ナミネが死にたいなら死んでもいいと思う。無理に生きなくてもいいと思うんだ。ミネスのことは放っておけないし、愛していた。でも、現世で交際は出来ない。ナミネのこと一度も愛したことがないよ。僕の恋愛さえ上手く行けばナミネのことはどうでもいいし、ナミネも無理に生きることないと思うよ」
これがナルホお兄様の核心。けれど、私はどうしてこれほどまでにナルホお兄様から恨まれているのだろう。私、過去に何かしたのだろうか。落ち武者さんはフェアリーングを解いた。
「あんた最低だな。今すぐナノハに知らせてくる」
その瞬間、ナルホお兄様は落ち武者さんからボイスレコーダーを奪い取った。
「セルファはそうやって人が思ってもないことを言わせて人間関係を壊してきたんだね。セルファは今、幸せかな?人を貶めることでしか憂さ晴らし出来ないなんて僕は可哀想だと思うけどな」
その時、ラルクがナルホお兄様からボイスレコーダーを奪い取った。けれど、突然5人の妖精村中級武官が現れた。
「ナルホに頼まれてナミネを可愛がりに来た」
「あ、ナミネはあの子です」
私は思わずミネスさんを指さした。すると5人の妖精村中級武官はミネスさんに襲いかかった。ミネスさんは、あっという間に服を脱がされた。
「やめて!助けて!私じゃない!」
「前金は払ったから中止にしてくれるかな!」
ナルホお兄様がストップをかけると妖精村中級武官はミネスさんから離れ逃げようとした。ここで逃がしてたまるか!私は立ち上がり、5人の妖精村中級武官の口の中に大量の睡眠薬を投げ込んだ。5人の妖精村中級武官は一瞬にしてその場に倒れ込んだ。ラルクは妖精村中級武官5人をまとめて拘束した。
私たち瞬発力が上がっている。おじいさんの訓練効果だろうか。
「全財産注ぎ込んだのに、よくも台無しにしてくれたね、ナミネ!」
全財産注ぎ込むほどに私のことを恨んでいたのか。ナルホお兄様の気持ちを知ったら、もうナルホお兄様のことを兄とは思えなくなっていた。ナクリお姉様がかつてミドリお姉様をハメたように、人の裏の感情は誰にも分からない。私はもうナルホお兄様とは関わらない。好きに生きればいいと思う。
「ラルク!ボイスレコーダーを今すぐナノハに届けろ!」
「ここにいるよ。ナルホの庭園が壊されていたから来てみたら案の定」
庭園が壊されている?いったい誰が壊したのだろう。
「庭園壊されたのはいつ頃だ!」
「5分前、ナナミがトイレに行った時はあったらしいんだけど、トイレから出て来たら壊されていたらしいよ」
「強気なナミネはずっとここにいたから、犯人は別の者だな」
私の無実は証明された。ナノハお姉様はラルクからボイスレコーダーを受け取った。もうナルホお兄様は人間じゃない。バケモノだ。
「カナエ、考え直してくれ。こんなバケモノと交際していたらカナエが不幸になってしまう」
今のナルホお兄様だったら、もうアルフォンス王子のほうがマシに見えてくる。
「カナエはナルホとは別れません。ナルホ、植物はコノハ家で育てているものがあります。またカナエと一緒に庭園を復旧しましょう」
「ありがとうカナエ。ここまでみんなから悪者にされて心もズタズタで、僕にはもうカナエしかいないよ」
もう私の知っているナルホお兄様はどこにもいない。目の前にいるのは憎しみだらけのナルホお兄様。
「それじゃあ、私はお母様に知らせてくるね」
ナノハお姉様はラルクが捕まえた妖精村中級武官を抱え、第4居間を出た。落ち武者さんは今度はミネスさんにフェアリーングをかけた。
「お子ちゃまミネス、今どう思ってんだよ」
「ナルホのことが好きで好きでたまらない。なのに、一瞬でカナエに奪われ、カナエが憎くて仕方ない。カナエには痛い目にあってもらう」
人の心は汚れている。その汚れを何かで隠しているにしか過ぎない。生きれば生きるほど人は恨み合うのである。
落ち武者さんは今度はズームさんにフェアリーングをかけた。
「ズーム、これでもまだお子ちゃまミネスの味方すんのかよ!」
「僕は今でもナミネさんのことが好きです!でも、ナミネさんにはヨルクさんがいます。だから大丈夫とミネスを救うことに専念しました。けれど、ミネスは長年に渡ってナミネさんの幸せを奪ってきました。僕はいつかその報いは受けることになるだろうと思っていましたが、それが今になったようです。ナミネさんが傷付いた時、反省しました。もう僕はミネスを助けません」
ズームさん……。私、何も知らずズームさんのことも恨んでしまってた。私は咄嗟に鯛を加えたままズームさんに抱き着いた。
「ズームさん、ごめんなさい。私、何も知りませんでした。現世では一緒にはなれませんが、ズームさんのことはお守りします」
「あんた、鯛落ちてんだろうが」
落ち武者さんは鯛を拾った。
「何だかいい気味。人の男奪ったらミネスみたいに不幸になるのね」
ミネスさんは声を殺して泣いていた。けれど私は少しも同情が出来なかった。寧ろ、奪った幸せを返して欲しいとも思っていた。
初代天使村でヨルクさんが毒殺されていなければ、妖精村時代もヨルクさんと恋人でいれた。妖精村からが紀元後だから、妖精村時代だけでも私は21世紀も幸せを奪われたことになる。それに紀元前を加えると、私の幸せはかなりの年月奪われたことになる。そう思うと私は許せなかった。
「ラルク、もうすぐバレンタインだね」
「その日、クラフの誕生日だから私の別荘で誕生会開くの」
委員長ってバレンタインが誕生日だったのか。
「そうなんですね。ラルク、私たちも行こうよ!」
「そうだな。チョコ食べれるかもしれないしな」
「あの垂れ流しのチョコあると嬉しいな」
「変な言い方すんなよ。チョコレートフォンデュだろ」
チョコ、何作ろうかな。ヨルクさんと、ラルク、落ち武者さん、ナヤセス殿、ミツメさん、ラハルさん、ズームさん、カラン王子、委員長、おじいさん……。ヨルクさんには特別なもの作りたいな。
「ナミネ、バレンタインは何作って欲しい?」
「え、えっと、チーズケーキ」
「うん、分かった。作るね」
ヨルクさんもクラスメイトからいっぱいチョコもらうのだろうか。
「落ち武者さん、ラルクが伝説最上級武官に合格したんです!」
「じゃ、お祝いしないとな。今から風呂で語り合おうぜ」
「はい」
「ねえ、落ち武者さん、どうしてナミネとお風呂に入ろうとするの?ナミネは私と入るから!」
その夜、私は落ち武者さんたちとお風呂で雑談し、久しぶりにヨルクさんと一緒に寝た。
後から聞くところによると、あのゴージャスな料理は私の帰りを待つヨルクさんが毎日カナエさんと作っていたそうだ。
2月14日。
バレンタインの日がやって来た。私は昨日作った星空トリュフとヨルクさんに渡す星型ケーキを押し入れに隠している。学校から帰ってきて、ユメさんの別荘のパーティーで渡すつもりだ。おじいさんには手紙と共に紙飛行機でチョコを飛ばした。喜んでくれるといいな。
学校に行くなりラルクは女の子からたくさんチョコをもらっていた。ラルクはこれまでずっとイジメられっ子のフリをして、わざと赤点を取っていたのだ。クレナイ家の跡取りにならないために。けれど、将来のことを考え、現実と向き合い、学校でも本領を発揮するようになったのである。そのせいで、私は学年1位から学年2位に下がってしまった。
それにしても、ラルクがこんなにモテていただなんて。イジメられていた時は誰も助けようとしなかったのに。
横を見ると紙袋が下げてある。中身を見るとチョコだった。私もチョコもらえるんだ。お腹空いた時に食べよう。
私はヨルクさんが気になり2年5組に向かった。
案の定、ヨルクさんの周りには多くの女の子が集まっていて手提げ袋2個も持っていた。私はヨルクさんのクラスに入った。
「ヨルクさんはモテますな」
「ナミネ!」
ナルホお兄様も少しもらっているし、落ち武者さんも手提げ袋1つはある。
「ヨルクさんはどの女子(おなご)が好みなのですかな?」
「ナミネだけだよ」
その時、ナルホお兄様は私の手を掴んだ。
「ナミネ、ちゃんと話をしてくれないかな?」
「あの、どちら様でしょうか?」
私はナルホお兄様に掴まれた手を振りほどくと落ち武者さんのところへ行った。
「本命はいるのですかな?」
「あんたはチョコくれないわけ?」
「チョコならもうこんなにたくさんあるではありませんか」
「はい、落ち武者さん。本命チョコよ」
わあ、エルナさんって、やっぱり落ち武者さんのこと今もずっと好きなんだ。何だか、この2人、もどかしいな。
「エルナ、あんたお菓子作れんのかよ」
「作ったわよ」
その時、私の同級生が来た。
「ナ、ナミネ、本命チョコ」
「わあ、ありがとう。私チョコ大好きなの。有難く受け取っておくね」
「ナミネの紙袋いっぱいだったから、もう1つつりさげておいた」
「そうだったんだね。ルサフク君は気が利くね」
「ナミネ、今フリーなら……」
その時、ヨルクさんが前を遮った。
「ナミネのお友達かな?私はナミネの彼氏だよ」
「そ、そうですか」
ルサフク君は泣きながら走って行った。
「ヨルクさん、あんまりじゃないですか!ルサフク君待って!」
私はルサフク君を追いかけた。
私やラルクは2袋のチョコが入った紙袋を持ちながらナノハナ家に戻り、私はドレスに着替え、ドレス用のバッグとチョコの入った紙袋を持つとヨルクさんやラルク、落ち武者さんと共にユメさんの別荘に向かった。
ユメさんの別荘のパーティー会場は委員長の誕生日会が名目なのに貴族の人が沢山来ていた。
私は早速、ヨルクさんと、ラルク、落ち武者さん、ナヤセス殿、ミツメさん、ラハルさん、ズームさん、カラン王子、委員長にチョコを渡した。
「私の手作りチョコなんです」
「何だ、くれるなら学校でとっとと渡せよ」
「ナミネ、これ味大丈夫なのかよ」
「ナミネさん、ありがとうございます」
「ナミネ、くれるの?凄く嬉しい!ありがとう!」
チョコを渡したみんなは箱を開けた。そこには星空がモチーフにした世界が広がっていたのである。お菓子作りとか前なら全然していなかったけど、1つのアートと思うことで楽しく作ることが出来た。これもおじいさんの修行効果かもしれない。
「あんた、意外に想像力豊かだな」
落ち武者さんはトリュフを1つ食べた。
「あんた、料理でも勉強してたのか?」
「ナミネ、センスあるね」
「ナミネにしては何かクオリティ上がってるな」
「前なら料理とか全然してなかったんですけど、お菓子作りも1つのアートだと思うと気持ちが入ったんです」
みんな喜んでくれてる。
「てか、なんで顔だけヨルクのだけ違うのさ」
「彼氏だからです」
「ナミネ、凄く綺麗に出来てる。帰ったら食べるね」
ヨルクさんは写真に撮った。そういえば、随分とカップル日記見てなかったな。私はカップル日記を開けた。
『ナミネ、いつ帰ってくるかな』
『ナミネ、ちゃんと食べているだろうか』
『ナミネが早く帰ってきますように』
『早くナミネに会いたい』
(以下略)
ヨルクさん、私が帰ってきた時のために、毎日手の込んだ料理作ってくれてたんだ。
『コノハ家でナルホの植物育てているのです』
カナエさん、アルフォンス王子のところからは退会してナルホお兄様と新しく登録したんだ。
『ユメと雪だるま作った』
委員長は相変わらずだな。
『カンザシとオシャレなカフェに来てる』
ミネスさん、カンザシさんと登録したんだ。カンザシさんは閲覧用だろうか。何か、見られていると思うと気が重たいな。
『ラルクにバレンタインチョコ作った』
セレナールさん、相変わらず料理下手。
コメント欄を見ると少し荒れている。
『セナ:ミネスの泥棒猫!』
『アルフォンス:カナエ、戻ってきて欲しい』
『セナ:お漏らしミネス(画像)』
『カラルリ:セナさん、もう一度チャンスが欲しい』
(以下略)
セナ王女、ミネスさんに悪口書きまくりだ。
その時、セレナールさんが走ってズームさんにぶつかり、ズームさんはセレナールさんの下敷きになった。
「いやっ!気持ち悪い!離れて!」
何その言い方。
「あの、セレナールさん、そういう言い方失礼だと思います」
「ナミネっていつも上から目線だけど、あなたが同じ立場ならどうなのよ!」
セレナールさんは起き上がると私をズームさんの上に押し倒した。またズームさんと濃厚な口付けをしてしまった。私は起き上がり、ズームさんを起こした。
「あのね、ズームさん。ズームさんにとっては、たいしたことないのかもしれない。でも、私にとっては、たった1つのはじめての体験だったの」
「青空交換日記ですか」
「正解です!」
「ナミネ、今の演技良かったよ。そのドラマ、リメイクされるみたいだけど、ナミネが主役ならヒットしそう」
リメイクされるんだ。色んな村で放送はされていたけれど、昔のドラマが現代風になるのは少し寂しいものがあるけれど、それもまた現代の暮らしの1つなのだろう。
「ズーム!本命チョコだ!」
「ロォラ!その格好は何だ!一軍女子でパパ活してるわりに、ドレス1つも持ってないのか!」
「こういうところがあるって知らなかったし、ブランドのバッグが欲しくて……。それに私は二軍女子だ」
ロォラさんで二軍女子なのか。だったら、一軍女子はどんな女の子なのだろう。ロォラさんって、柄物のトレーナーにジーンズが多いけど、それでも容姿端麗だから着飾らなくても映えている。
「あの、ドレスだったらユメさんに借りたらどうですか?」
「汚したら悪いし、いい」
「あんた、せっかくバレンタインでズームに本命チョコ渡したんだから、ズームにドレス姿見せてやれ!アヤネはメイクしろ!ユメ、ドレス借りるぞ!」
落ち武者さん、めちゃくちゃ強引。でも、私もロォラさんはドレス着たほうがいいと思う。せっかくズームさんいるんだし。
「ええ、構わないわ。2階のクローゼットにあるわ」
「はい、分かりました」
私とラルク、落ち武者さん、アヤネさん、ズームさんはロォラさんを連れて2階へ向かった。
……
あとがき。
古代編の純愛はどこへいった。
どうして現代編ではセナとカラルリ、カナエとアルフォンス別れちゃうの。あの時の互いが互いを求め合っていた時間はあの時だけのものなの?
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
《ナミネ》
「ワシは遠い遠い大昔、天使村よりずっと昔に儀式で人魚の肉を食べさせられた。それ以降、身体は不老不死となり、何世紀もの時代を見てきた。もう自分の歳さえ忘れてしもた。人というのは己の考えのみが全てだと思い込み、自分と違う意見を潰すためにすぐに戦をする。ワシも最初は何も持っとらんかった。普通に結婚して妻子はいたけど、些細なことでお偉いさんに殺されてしもた。あの時は悔しくてたまらんかった。結局この世は金と権力を持っている者が暗黙に下々の人を支配する。ワシは最初の妻子を殺された悔しさで、ある人に弟子入りして武術を極めた。師匠のお陰でワシは次の妻子は守り抜くことが出来た。だが、そこで問題になったのは周りからの妬みじゃ。すぐにワシの暗殺計画が行われたが、その頃のワシは刺客を送り込まれても負けん強さになってた。けど、不老不死の人生は思った以上に長く、その後、何度も皇帝陛下に妻子を殺された。いくらワシが何もしとらんでも、周りがひとたび妬めば、ワシの幸せは意図も簡単に壊された。ワシは強さや出世だけでは何もならんと嘆いた。
2人はまだ若い。けど、妬まれても憎んだらあかん。やられてやり返す。それが戦の原因や」
おじいさんは数え切れないほどの人生をノンストップで生きてきたんだ。何も持っていなければ、守るべきものを守れなかったとただ、悔しい思いをする。けれど、強さや地位だけでは周りの妬みで幸せを潰されてしまう。私とヨルクさんも妬まれていたのだろうか。やられてやり返せば戦に繋がるか。人と人の調和というものはとても難しい。
「そうでしたか。確かに誰でも最初から上手くはいきませんね。私ももう何度も転生して、いくつもの前世がありますが、未だに未熟です。おじいさんは早くから弟子を取っていたんですか?」
「仕事をやめて道場を開いた。多くの弟子を鍛えてきた。けど、今度は道場破りや。道場は守れても多くの弟子を失った時、ワシは道場をやめた。その後、職を転々としたけど、完全な幸せを得ることは出来んかった。ワシの話はここまでじゃ。2人はまだ鍛えなあかんことがいっぱいある。けど、もう帰る時や」
えっ、まだここにいたい。おじいさんと一緒にいたいよ。
「い、いやです!私、おじいさんとここで住みます!」
「師範、ここはいったい何なんですか?この町には師範しか住んでいないのですか?」
そういえば、人なんて見かけない。どうしてここがあるのだろう。
「ここは天然記念物じゃ。今は神様が所有しとる。レストランもな。何軒か人は住んどる」
そうだったのか。全く気づかなかった。ここ、ダンゴロさんの所有地なんだ。
「まだ、ここにいさせてください!」
「ワシは1人じゃが、ナミネには家族がいる。来たい時にいつでもここに来ればいい」
離れたくない。ここにいたい。でも、ヨルクさんも心配してるし……。そろそろ、現実世界に戻らないといけない時が来たのか。
「はい……私、いっぱいここに来ます!だから、おじいさんもずっとここにいてください!」
この夜、私はおじいさんと一緒にお風呂に入って一緒の布団で寝た。現実なんか見たくない。ずっとここにいたい。死ぬまで修行して平凡に暮らしたい。けれど、朝は一瞬でやって来た。
手ぶらで来た私たちは荷造りするものもなく私はおじいさんに別れを告げた。
「師範、長い間、指導して頂きありがとうございました。これからも指導よろしくお願いします」
「おじいさん、ありがとうございました。また絶対にここに来ます!」
私はおじいさんとの別れが悲しくてポロポロ涙を零した。
「何があっても堂々としとればええ。結局は悪いことしたモンに返ってくるんやから」
「はい、私負けません!」
私はおじいさんに抱き着いた。
「気を付けて帰りや」
おじいさんは私とラルクに何かを渡した。
「おじいさんも元気で過ごしてください!」
私は名残惜しくもおじいさんから離れ、ラルクと来た時の折り鶴に乗ってナノハナ家に向かって行った。
ナノハナ家に行くと、何故かメンバーみんなが来ていた。まるで私とラルクが今日帰ることを知っていたように。玄関のカレンダーを見ると、まだ2月8日だった。あの古民家並ぶ町では半年も過ごしたのに、こっちでは時間、殆ど進んでなかったんだ。やっぱり、あの町がダンゴロさんの所有地だから時間の流れが違うのだろうか。
第4居間に入ると、ゴージャスな料理が並べてあった。
「ナミネ、おかえり」
「ヨルクさん!」
私はヨルクさんに抱き着いた。
「あんたら今までどこに行ってたんだよ。こっちはどこ探してもいないし心配したんだぞ!」
「すみません……」
私は席に座り、鯛を手で掴んだ。
「ねえ、ミナク、考え直して!悪いところは全て直すから!」
「すみません、セナ王女。私はミネスを好きになりました。もう関係も持っていますし、ミネスだけを大切にしながら生きていこうと思っています」
この2人、まだ決着ついてなかったのか。ミネスさんとのことはなかったことになっているのに、ミナクさんの記憶は消されてないわけか。
「ナミネ、話を聞いてもらえるかな?」
やっぱり、ナルホお兄様話しかけてきた。私はナルホお兄様を無視した。
「ナミネ、僕はカナエと交際することになったよ。でも、ナミネが反対するなら交際は取り止めにする」
人は息を吐くかのように嘘を着く。この嘘は何のための嘘だろう。少なくとも私にはくだらないものに見えた。
「お子ちゃまミネスの次は男尽くしカナエか。あんたの嘘はもう通用しないんだよ。録音してナノハに渡すまでだけどね?」
「セルファがそうしたいならそうしてもらって構わない。今の僕はナミネを傷付けることは一切言わないよ」
いくら私を傷つけたのが次元の違うナルホお兄様だったとしても、私はまだ疑っている。落ち武者さんはナルホお兄様にフェアリーングをかけた。
「平和ボケなナルホ、あんた、強気なナミネを傷付けないて言ったけど、強気なナミネが男尽くしカナエとの交際反対したらどうするわけ?お子ちゃまミネスとは交際しなくていいわけ?」
「ナミネが反対してもカナエとは別れないよ。ナミネが死にたいなら死んでもいいと思う。無理に生きなくてもいいと思うんだ。ミネスのことは放っておけないし、愛していた。でも、現世で交際は出来ない。ナミネのこと一度も愛したことがないよ。僕の恋愛さえ上手く行けばナミネのことはどうでもいいし、ナミネも無理に生きることないと思うよ」
これがナルホお兄様の核心。けれど、私はどうしてこれほどまでにナルホお兄様から恨まれているのだろう。私、過去に何かしたのだろうか。落ち武者さんはフェアリーングを解いた。
「あんた最低だな。今すぐナノハに知らせてくる」
その瞬間、ナルホお兄様は落ち武者さんからボイスレコーダーを奪い取った。
「セルファはそうやって人が思ってもないことを言わせて人間関係を壊してきたんだね。セルファは今、幸せかな?人を貶めることでしか憂さ晴らし出来ないなんて僕は可哀想だと思うけどな」
その時、ラルクがナルホお兄様からボイスレコーダーを奪い取った。けれど、突然5人の妖精村中級武官が現れた。
「ナルホに頼まれてナミネを可愛がりに来た」
「あ、ナミネはあの子です」
私は思わずミネスさんを指さした。すると5人の妖精村中級武官はミネスさんに襲いかかった。ミネスさんは、あっという間に服を脱がされた。
「やめて!助けて!私じゃない!」
「前金は払ったから中止にしてくれるかな!」
ナルホお兄様がストップをかけると妖精村中級武官はミネスさんから離れ逃げようとした。ここで逃がしてたまるか!私は立ち上がり、5人の妖精村中級武官の口の中に大量の睡眠薬を投げ込んだ。5人の妖精村中級武官は一瞬にしてその場に倒れ込んだ。ラルクは妖精村中級武官5人をまとめて拘束した。
私たち瞬発力が上がっている。おじいさんの訓練効果だろうか。
「全財産注ぎ込んだのに、よくも台無しにしてくれたね、ナミネ!」
全財産注ぎ込むほどに私のことを恨んでいたのか。ナルホお兄様の気持ちを知ったら、もうナルホお兄様のことを兄とは思えなくなっていた。ナクリお姉様がかつてミドリお姉様をハメたように、人の裏の感情は誰にも分からない。私はもうナルホお兄様とは関わらない。好きに生きればいいと思う。
「ラルク!ボイスレコーダーを今すぐナノハに届けろ!」
「ここにいるよ。ナルホの庭園が壊されていたから来てみたら案の定」
庭園が壊されている?いったい誰が壊したのだろう。
「庭園壊されたのはいつ頃だ!」
「5分前、ナナミがトイレに行った時はあったらしいんだけど、トイレから出て来たら壊されていたらしいよ」
「強気なナミネはずっとここにいたから、犯人は別の者だな」
私の無実は証明された。ナノハお姉様はラルクからボイスレコーダーを受け取った。もうナルホお兄様は人間じゃない。バケモノだ。
「カナエ、考え直してくれ。こんなバケモノと交際していたらカナエが不幸になってしまう」
今のナルホお兄様だったら、もうアルフォンス王子のほうがマシに見えてくる。
「カナエはナルホとは別れません。ナルホ、植物はコノハ家で育てているものがあります。またカナエと一緒に庭園を復旧しましょう」
「ありがとうカナエ。ここまでみんなから悪者にされて心もズタズタで、僕にはもうカナエしかいないよ」
もう私の知っているナルホお兄様はどこにもいない。目の前にいるのは憎しみだらけのナルホお兄様。
「それじゃあ、私はお母様に知らせてくるね」
ナノハお姉様はラルクが捕まえた妖精村中級武官を抱え、第4居間を出た。落ち武者さんは今度はミネスさんにフェアリーングをかけた。
「お子ちゃまミネス、今どう思ってんだよ」
「ナルホのことが好きで好きでたまらない。なのに、一瞬でカナエに奪われ、カナエが憎くて仕方ない。カナエには痛い目にあってもらう」
人の心は汚れている。その汚れを何かで隠しているにしか過ぎない。生きれば生きるほど人は恨み合うのである。
落ち武者さんは今度はズームさんにフェアリーングをかけた。
「ズーム、これでもまだお子ちゃまミネスの味方すんのかよ!」
「僕は今でもナミネさんのことが好きです!でも、ナミネさんにはヨルクさんがいます。だから大丈夫とミネスを救うことに専念しました。けれど、ミネスは長年に渡ってナミネさんの幸せを奪ってきました。僕はいつかその報いは受けることになるだろうと思っていましたが、それが今になったようです。ナミネさんが傷付いた時、反省しました。もう僕はミネスを助けません」
ズームさん……。私、何も知らずズームさんのことも恨んでしまってた。私は咄嗟に鯛を加えたままズームさんに抱き着いた。
「ズームさん、ごめんなさい。私、何も知りませんでした。現世では一緒にはなれませんが、ズームさんのことはお守りします」
「あんた、鯛落ちてんだろうが」
落ち武者さんは鯛を拾った。
「何だかいい気味。人の男奪ったらミネスみたいに不幸になるのね」
ミネスさんは声を殺して泣いていた。けれど私は少しも同情が出来なかった。寧ろ、奪った幸せを返して欲しいとも思っていた。
初代天使村でヨルクさんが毒殺されていなければ、妖精村時代もヨルクさんと恋人でいれた。妖精村からが紀元後だから、妖精村時代だけでも私は21世紀も幸せを奪われたことになる。それに紀元前を加えると、私の幸せはかなりの年月奪われたことになる。そう思うと私は許せなかった。
「ラルク、もうすぐバレンタインだね」
「その日、クラフの誕生日だから私の別荘で誕生会開くの」
委員長ってバレンタインが誕生日だったのか。
「そうなんですね。ラルク、私たちも行こうよ!」
「そうだな。チョコ食べれるかもしれないしな」
「あの垂れ流しのチョコあると嬉しいな」
「変な言い方すんなよ。チョコレートフォンデュだろ」
チョコ、何作ろうかな。ヨルクさんと、ラルク、落ち武者さん、ナヤセス殿、ミツメさん、ラハルさん、ズームさん、カラン王子、委員長、おじいさん……。ヨルクさんには特別なもの作りたいな。
「ナミネ、バレンタインは何作って欲しい?」
「え、えっと、チーズケーキ」
「うん、分かった。作るね」
ヨルクさんもクラスメイトからいっぱいチョコもらうのだろうか。
「落ち武者さん、ラルクが伝説最上級武官に合格したんです!」
「じゃ、お祝いしないとな。今から風呂で語り合おうぜ」
「はい」
「ねえ、落ち武者さん、どうしてナミネとお風呂に入ろうとするの?ナミネは私と入るから!」
その夜、私は落ち武者さんたちとお風呂で雑談し、久しぶりにヨルクさんと一緒に寝た。
後から聞くところによると、あのゴージャスな料理は私の帰りを待つヨルクさんが毎日カナエさんと作っていたそうだ。
2月14日。
バレンタインの日がやって来た。私は昨日作った星空トリュフとヨルクさんに渡す星型ケーキを押し入れに隠している。学校から帰ってきて、ユメさんの別荘のパーティーで渡すつもりだ。おじいさんには手紙と共に紙飛行機でチョコを飛ばした。喜んでくれるといいな。
学校に行くなりラルクは女の子からたくさんチョコをもらっていた。ラルクはこれまでずっとイジメられっ子のフリをして、わざと赤点を取っていたのだ。クレナイ家の跡取りにならないために。けれど、将来のことを考え、現実と向き合い、学校でも本領を発揮するようになったのである。そのせいで、私は学年1位から学年2位に下がってしまった。
それにしても、ラルクがこんなにモテていただなんて。イジメられていた時は誰も助けようとしなかったのに。
横を見ると紙袋が下げてある。中身を見るとチョコだった。私もチョコもらえるんだ。お腹空いた時に食べよう。
私はヨルクさんが気になり2年5組に向かった。
案の定、ヨルクさんの周りには多くの女の子が集まっていて手提げ袋2個も持っていた。私はヨルクさんのクラスに入った。
「ヨルクさんはモテますな」
「ナミネ!」
ナルホお兄様も少しもらっているし、落ち武者さんも手提げ袋1つはある。
「ヨルクさんはどの女子(おなご)が好みなのですかな?」
「ナミネだけだよ」
その時、ナルホお兄様は私の手を掴んだ。
「ナミネ、ちゃんと話をしてくれないかな?」
「あの、どちら様でしょうか?」
私はナルホお兄様に掴まれた手を振りほどくと落ち武者さんのところへ行った。
「本命はいるのですかな?」
「あんたはチョコくれないわけ?」
「チョコならもうこんなにたくさんあるではありませんか」
「はい、落ち武者さん。本命チョコよ」
わあ、エルナさんって、やっぱり落ち武者さんのこと今もずっと好きなんだ。何だか、この2人、もどかしいな。
「エルナ、あんたお菓子作れんのかよ」
「作ったわよ」
その時、私の同級生が来た。
「ナ、ナミネ、本命チョコ」
「わあ、ありがとう。私チョコ大好きなの。有難く受け取っておくね」
「ナミネの紙袋いっぱいだったから、もう1つつりさげておいた」
「そうだったんだね。ルサフク君は気が利くね」
「ナミネ、今フリーなら……」
その時、ヨルクさんが前を遮った。
「ナミネのお友達かな?私はナミネの彼氏だよ」
「そ、そうですか」
ルサフク君は泣きながら走って行った。
「ヨルクさん、あんまりじゃないですか!ルサフク君待って!」
私はルサフク君を追いかけた。
私やラルクは2袋のチョコが入った紙袋を持ちながらナノハナ家に戻り、私はドレスに着替え、ドレス用のバッグとチョコの入った紙袋を持つとヨルクさんやラルク、落ち武者さんと共にユメさんの別荘に向かった。
ユメさんの別荘のパーティー会場は委員長の誕生日会が名目なのに貴族の人が沢山来ていた。
私は早速、ヨルクさんと、ラルク、落ち武者さん、ナヤセス殿、ミツメさん、ラハルさん、ズームさん、カラン王子、委員長にチョコを渡した。
「私の手作りチョコなんです」
「何だ、くれるなら学校でとっとと渡せよ」
「ナミネ、これ味大丈夫なのかよ」
「ナミネさん、ありがとうございます」
「ナミネ、くれるの?凄く嬉しい!ありがとう!」
チョコを渡したみんなは箱を開けた。そこには星空がモチーフにした世界が広がっていたのである。お菓子作りとか前なら全然していなかったけど、1つのアートと思うことで楽しく作ることが出来た。これもおじいさんの修行効果かもしれない。
「あんた、意外に想像力豊かだな」
落ち武者さんはトリュフを1つ食べた。
「あんた、料理でも勉強してたのか?」
「ナミネ、センスあるね」
「ナミネにしては何かクオリティ上がってるな」
「前なら料理とか全然してなかったんですけど、お菓子作りも1つのアートだと思うと気持ちが入ったんです」
みんな喜んでくれてる。
「てか、なんで顔だけヨルクのだけ違うのさ」
「彼氏だからです」
「ナミネ、凄く綺麗に出来てる。帰ったら食べるね」
ヨルクさんは写真に撮った。そういえば、随分とカップル日記見てなかったな。私はカップル日記を開けた。
『ナミネ、いつ帰ってくるかな』
『ナミネ、ちゃんと食べているだろうか』
『ナミネが早く帰ってきますように』
『早くナミネに会いたい』
(以下略)
ヨルクさん、私が帰ってきた時のために、毎日手の込んだ料理作ってくれてたんだ。
『コノハ家でナルホの植物育てているのです』
カナエさん、アルフォンス王子のところからは退会してナルホお兄様と新しく登録したんだ。
『ユメと雪だるま作った』
委員長は相変わらずだな。
『カンザシとオシャレなカフェに来てる』
ミネスさん、カンザシさんと登録したんだ。カンザシさんは閲覧用だろうか。何か、見られていると思うと気が重たいな。
『ラルクにバレンタインチョコ作った』
セレナールさん、相変わらず料理下手。
コメント欄を見ると少し荒れている。
『セナ:ミネスの泥棒猫!』
『アルフォンス:カナエ、戻ってきて欲しい』
『セナ:お漏らしミネス(画像)』
『カラルリ:セナさん、もう一度チャンスが欲しい』
(以下略)
セナ王女、ミネスさんに悪口書きまくりだ。
その時、セレナールさんが走ってズームさんにぶつかり、ズームさんはセレナールさんの下敷きになった。
「いやっ!気持ち悪い!離れて!」
何その言い方。
「あの、セレナールさん、そういう言い方失礼だと思います」
「ナミネっていつも上から目線だけど、あなたが同じ立場ならどうなのよ!」
セレナールさんは起き上がると私をズームさんの上に押し倒した。またズームさんと濃厚な口付けをしてしまった。私は起き上がり、ズームさんを起こした。
「あのね、ズームさん。ズームさんにとっては、たいしたことないのかもしれない。でも、私にとっては、たった1つのはじめての体験だったの」
「青空交換日記ですか」
「正解です!」
「ナミネ、今の演技良かったよ。そのドラマ、リメイクされるみたいだけど、ナミネが主役ならヒットしそう」
リメイクされるんだ。色んな村で放送はされていたけれど、昔のドラマが現代風になるのは少し寂しいものがあるけれど、それもまた現代の暮らしの1つなのだろう。
「ズーム!本命チョコだ!」
「ロォラ!その格好は何だ!一軍女子でパパ活してるわりに、ドレス1つも持ってないのか!」
「こういうところがあるって知らなかったし、ブランドのバッグが欲しくて……。それに私は二軍女子だ」
ロォラさんで二軍女子なのか。だったら、一軍女子はどんな女の子なのだろう。ロォラさんって、柄物のトレーナーにジーンズが多いけど、それでも容姿端麗だから着飾らなくても映えている。
「あの、ドレスだったらユメさんに借りたらどうですか?」
「汚したら悪いし、いい」
「あんた、せっかくバレンタインでズームに本命チョコ渡したんだから、ズームにドレス姿見せてやれ!アヤネはメイクしろ!ユメ、ドレス借りるぞ!」
落ち武者さん、めちゃくちゃ強引。でも、私もロォラさんはドレス着たほうがいいと思う。せっかくズームさんいるんだし。
「ええ、構わないわ。2階のクローゼットにあるわ」
「はい、分かりました」
私とラルク、落ち武者さん、アヤネさん、ズームさんはロォラさんを連れて2階へ向かった。
……
あとがき。
古代編の純愛はどこへいった。
どうして現代編ではセナとカラルリ、カナエとアルフォンス別れちゃうの。あの時の互いが互いを求め合っていた時間はあの時だけのものなの?
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
純愛偏差値 未来編 一人称版 74話
《ナミネ》
ナルホお兄様とズームさんに見捨てられた私はラルクを連れてナノハナ家から逃げ出した。何もしていないのに2人に裏切られるとは思わなくてかなり傷付いた。もうナノハナ家には戻りたくない。
「ナミネ、神様ブロック出来る番人呼び出せ!」
そんなことが出来る番人なんているのだろうか。けれど、聞いてみるしかない。私はヨナラタスさんにメールをした。
『あの、神様ブロック出来る番人ていますか?』
『妖精村3番目の番人のテナロスか番人ではないがミドリかだ』
ミドリお姉様が?どうしてミドリお姉様にそのような力があるのだろう。天界で何か入手したのだろうか。
私はとりあえず、ミドリお姉様にメールをした。
『ミドリお姉様、お助け下さい。添付映像のように、私、ナルホお兄様に自分の恋愛が成就するなら死んでもいいと言われたんです。オマケにズームさんからも見捨てられました。神様呼び出しカードを持っているヨルクさんはナルホお兄様が拉致しています。神様ブロックをしていただけませんか?』
『うん、分かった。ヨルクが神様呼び出しカードでダンゴロさん呼び出しても願い叶えなければいいんだね。ナミネ、私はナミネの味方だよ。だから、もっと楽しく生きて。ナルホや他者のことで傷つく必要なんてないから』
天界ではミドリお姉様にかなり自論を押し付けてしまった。そんな私の頼みなんて叶えてくれるのだろうか。
『すみません、ミドリお姉様。お願いします』
私は念の為、3番目の番人のテナロスさんを呼び出した。気が付けば、私とラルクが乗っていた折り鶴は森の湖南駅付近の古民家が並ぶ町に到着していた。
「あ、はじめまして。ナミネと申します。あの、ミドリお姉様に神様ブロックをお願いしたのですが、不安なんです」
「はじめまして。テナロスです。ミドリさんは神様ブロックを必ず行いますよ。少しの間ですが、ここで気分転換して行ってください。用事のある時はいつでも呼んでくださいませ」
「あ、はい。今後ともよろしくお願いします」
暗くなった夜の町に灯りがつくとテナロスさんはいなくなっていた。屋根がワラの古民家も色が付いていて、今も人が住んでいるようだった。というか、通りすがる人が出て来たから人が住んでいるのだ。
私とラルクは空いている古民家に入った。
「わあ、2階もあるし、電気も水も使えるよ!」
私は早速、暖炉に火をつけた。けれど、ここは圏外だし、私たちは一時的にタイムスリップしている。でも、今の私にとって現代の人と関わらなくていいのは気が楽かもしれない。
「ナミネ、最後にナルホさんの携帯にアクセスして、ナルホさんのクラスメイトのココリさんに『ずっと君だけを見てた。君はいつも真面目で一生懸命で、そんな君の姿に惹かれたんだ。僕と交際してくれないかな?』とメールしたんだ。ココリさんは喜んで『とても嬉しい!私ナルホと交際する』と返信してきた。けど『嘘だよ、試してみただけ。君のような不細工とは付き合えないな。いい男見つけてね』て返信しといた。履歴は全て削除済みだ」
ココリさんて、ヨルクさんのこと狙ってた人だよね。あまり男ウケしなさそうな感じの人だったような。ナルホお兄様に弄ばれて堪えるだろうなあ。
「わー、傑作だね!これでココリさんに何かあったらナルホお兄様の全責任だね!」
もう誰がどんな不幸に巻き込まれても私は知らない。恋愛が大切だから死んでもいいよとか、私が苦しんでも妹が大切だから私に苦しめとか、そんな自分のことしか考えられない人は一度痛い目見ないと分からないと思う。
みんな守りたい人のみを大切にして私を辱めるのなら、私も同じことで返す。容赦はしない。
私はパソコンで
『君たちのような不細工は僕は1人も相手に出来ない。
好きになるなら僕以外の人にしてくれるかな?
パパ活のスケジュールばかりいれて気持ち悪いし、僕の半径50m以内に入れば、その人の親御さん職業失うよ?
分かってると思うけど、僕がイケメンで君たちはブス。誰にも相手にされないブス。
赤点ばかりとってないで少しは勉強したほうがいいと思うし、将来大丈夫なのかな。とにかく汚物は僕の半径50m以内に入るな!』
と打って印刷して、それをテナロスさんに頼んでロォラさん以外のクラスメイトの一軍、二軍女子の机に置いてもらった。これで、ズームさんのイジメはまた再開するだろう。
私はただ、そっとしておいて欲しかっただけ。でも、それをしてくれず、私を辱めた。だったら、もっと苦しめばいいと思う。私はこれ以上は辱められたくない。だから、もう痛みは擦り付けるしかない。みんなが自己防衛で私を辱めるのなら私も自己防衛をする。
「ナミネ、バックにミドリさんがいることは誰にも話すな。それから、ここではナミネは休んでていいけど、僕はここで伝説武官の試験を受ける。強くなって、もう誰にもナミネを傷付けさせない」
そっか、ラルクなりに色々考えてるんだな。こういう時は、ヨルクさんよりラルクのほうが頼りになる。
私は知らず知らずにヨルクさんへの恋しさをどこかで無理して抱かないようにしていた。
「ラルク、応援してる!ラルクならきっと受かるよ!私、もうラルクしかいないよ。みんな私をイジメるから、私の居場所ないの」
私はラルクにもたれかかった。
「ナミネ、これからは僕がナミネを守る。だからナミネは何も心配せず暮らして欲しい」
「ありがとう、ラルク。ずっと愛してるよ」
「僕もナミネを愛してる」
私は遠い昔から妖精村武官に受かったことが一度もない。現代は妖精村武官も初級から最上級まであるけれど、手が付けられない。強さを求められる伝説武官と違って、妖精村武官は判断力が問われる。私に欠けているのは判断力なのだ。
私から他者に危害は一切加えない。けれど、天使村時代にしてもカンザシさんたちによって、私とヨルクさんの結婚生活は無惨な形で壊された。いくら自分が危害を加えなくても周りはどうしてか私に危害を加える。そんな辱めを受けるほどに、いつしか私の心は限界に達していたと思う。現世では何化されるたび苛立ちが止まらなくなる。私からは何もしてないのにどうしてここまで辱めるのって。気が付いたらコントロールが効かなくなっている。
私にも判断力があれば何か変えられていたのだろうか。判断力ってどうやって身に付けるのだろう。それでも、このまま辱めを受けたままでは帰れない。
その時、テナロスさんが現れた。
「報告です。いまさっき、ココリさんが学校の屋上から飛び降りました。幸い、数箇所の骨折で済み、今は月城総合病院で点滴を受けています。ナルホさんとセルファさん、ヨルクさんは慌ててココリさんに会いに行き、ナルホさんは必死に謝りましたがココリさんはナルホさんを許さず、ナルホさんのご両親を呼び慰謝料請求をしました。負いつまりに負いつまったナルホさんは月城総合病院の屋上から飛び降りましたが、死ねない身体になっているため、身体から血は流れたものの、本体にはなんの支障もなく普通に生きています。ただ、発見した看護師さんによりナルホさんはココリさんと同じ病室にいます。ナルホさんは何度もナミネさんに会いたい、誤解を解きたいと言っていました。ズームさんは放課後のクラスで机の上にある紙を見たクラスメイトにより、ズームさんが過去にイジメられていた画像を大量に送られ、再びズームさんはイジメの対象となりました。ズームさんもナミネさんに謝りたいと言っています。ズームさんもナルホさんももうミネスさんの顔は二度と見たくないそうです。2人ともミネスさんとは縁を切りました。ナルホさんがココリさんを自殺未遂させたとして、お武家連盟会議が開かれました。セルファさんのナミネさんに対するイジメの証拠により、ナルホさんの庭園は処分され、ナルホさんは植物研究員にはなれないようナノハナ家のお母様が手続きしました。また、ナルホさんとズームさんにはミネスさんが危機に陥っても助けない。一生ナミネさんを償うという誓約書にサインをしました」
正直、ココリさんのことは傑作だと思う。でも、ナルホお兄様が私を侮辱していなければこうはなっていなかったし、同情は出来ない。
それに、私は謝りたいだとか会いたいなどの上辺だけの感情に私は騙されたりしない。恨まれるなら恨まれればいい。イジメられるならイジメられればいい。それが私の日常となんの関係があるのだろう。
「ナミネ、ナルホさんとズームさんは反省なんかしていない!ナミネの元気な姿を見れば、またミネスさんを可愛がりナミネのことを馬鹿にする。2人とは口を聞くな!」
「分かってるよ、ラルク。私もそこまで馬鹿じゃないよ」
2人のことは二度と許さない。それどころか、2人の現世での幸せを全て奪い取ってやる。
「遠い昔、ナルホさんにも愛した人はいました。けれど、つまらない男と裏切られ、ナルホさんは恋愛恐怖症になったんです。でも、何度か恋愛した中にミネスさんがいて、ミネスさんとは大恋愛の末、唯一恋愛結婚した人でした。今の2人にはその時の記憶はありませんが。今でも大恋愛した過去が2人を結びつけているのでしょう。しかしながら、大恋愛の上に結婚した2人は上手くいかず仮面夫婦として一生を過ごしたのです。結婚するなりナルホさんが植物に夢中になり、ミネスさんはそんなナルホさんに愛想が尽き、ナルホさんの知らないところで浮気を繰り返していました」
私は思わず笑ってしまった。私にはミネスさんのほうが大事だから死ねと言ったナルホお兄様が結婚後は愛も慈悲も何もない生活を送っていただなんて。無様にもほどがある。けれど、その事実を聞いた私は安心してしまっていた。人を辱めて幸せになれるはずなんかない。
「そうでしか。いくら好き合っても心が離れ離れになることもあるんですね」
「結婚とはそういうものなのかもしれませんね。では、また何かあればお呼びくださいませ」
テナロスさんは番人部屋に戻って行った。
結婚とは何なのだろう。私とヨルクさんは結婚後も愛し合っていたけれど、誰にでも優しいナルホお兄様とミネスさんの結婚後が大したことないと知って、何だか呆気なくなってしまった。
「ナミネ、こっちの手駒は誰にも見せるな!寧ろ、弱いフリを何も持ってないフリを見せ続けろ!」
「うん、分かってるよ、ラルク。こちらの札見せたら相手の思う壷だもんね」
そう、こちらの手駒など決して見せたりはしない。私の背後にミドリお姉様がいることも。テナロスさんがいることも。
私はすかさずヨナラタスさんを呼び出した。
「あの、4人に伝言伝えてもらえませんか?ズームさんにはこう伝えてください。『まさかかつてあれほどに愛し合い、現世でも支え合うと約束したズームさんに裏切られるとは思ってもいませんでした。人を辱めた気持ちはどうですか?今幸せですか?』。ナルホお兄様にはこう伝えてください。『私はナルホお兄様を決して許しません。ナルホお兄様のことが憎くて憎くてたまりません。けれど、好きなら仕方ありません。ミネスさんとお幸せに』。ココリさんにはこう伝えてください。『ナルホお兄様はココリさんを弄んだ後、大金持ちのミネスさんと交際しました』。ヨルクさんにはこうお伝えください。
『ヨルクさん、ナルホお兄様とズームさんにイジメられて辛いよ!このままじゃ辱め受けたままでは帰れないよ!私死ぬかもしれない!ヨルクさんが2人を懲らしめて!私を2人のイジメから助けて!!助けてヨルクさん、助けてヨルクさん!!!』」
「分かった。今伝えに行く」
ヨナラタスさんは去って行った。
ここは圏外だから、誰からの連絡も受け取れないし、ナノハナ家がどうなっているかも分からない。
「あのね、ラルク。私、妖精村武官試験受けるよ」
「そっか。でも、あまり無理すんな」
恨みたくないのに恨んでしまう。すぐに許したいのに許せない。これも、歴史がそうさせたのだろうか。天使村時代、衰弱して楽しいはずのヨルクさんとの結婚期間がほぼ台無しになってしまったこと。こんなのあんまりだと思う。どうして私ばかりが苦しまなければならないのか分からない。
でも、ズームさんのことはやりすぎた気がする。
私はテナロスさんを呼び出した。
「あの、ズームさんのイジメを取り消してもらえないでしょうか?」
「分かりました。こちらもお話があります。あの後、セルファさんがヨナラタスさんの録音をナノハさんに聞かせたところ、ナノハさんは、みんなの前でミナクさんにミネスさんをイジワルさせました。ナルホさんは泣きながらミネスさんに好きだと告白し、一生償うと言いましたが、初を好きでもないミナクさんに奪われたミネスさんはナルホさんに一生恨むと言い、ナルホさんは部屋でキクスケさんを呼び出しナミネさんを襲わせるよう依頼しましたが、キクスケさんは規則に反すると断りました。そのことをセルファさんはナノハさんに報告し、ミネスさんはまたミナクさんからイジワルをされました。その時にミナクさんはハッキリセナ王女に別れを告げ、セナ王女はミネスさんを目の敵にしたのです。また、ミネスさん、ナルホさん、カンザシさんは何世紀にも渡り、本当に愛する人と愛し合えないことから愛情欠落ヒステリー症候群に陥ってます。ズームさんはナミネさんを何世紀にも渡って苦しめたことを反省し、ミネスさんのことは長い年月の報いだと諦め、すぐにナミネさんとの和解を求めています」
愛情欠落ヒステリー症候群?私だって、ヨルクさんと引き離された期間は相当なものだったのに、甘えないで欲しい。ミネスさんがイジワルされたとか、そんなの私には関係ない。勝手にしてって思う。
ズームさんのことは何だか私が突っ走りすぎた気がする。一応謝っておこう。
ミネスさんが来てから現世が変わりつつある気がする。
「そうですか」
私は言葉が見つからなかった。もう現世では仲の良い兄妹ではいられないんだ。テナロスさんが去った後、私はズームさんとヨルクさんに手紙を書いた。
『ズームさんへ
私たちの間には色々誤解があったのかもしれません。戻り次第話し合いたいですが、ナルホお兄様がいつ私を襲わせるかと思うと戻るに戻れません
ナミネ』
『ヨルクさんへ
彼氏なのにどうして何もしてくれないのですか!私は何もしてないのにナルホお兄様から襲わせる依頼をされて怖くてたまりません!1週間以内に、あの優しかった頃のナルホお兄様に戻してくれなければヨルクさんとは破断します!ナノハナ家にも戻りません!見て見ぬふりするヨルクさんなんか大嫌いです!もし、1週間以内にナルホお兄様を説得出来なければ、破断だけでなくヨルクさんを50代女性にイジワルさせます!
ナミネ』
私はこの二通をヨナラタスさんに頼んで2人に渡してもらうようお願いをした。
翌日、ラルクの作った朝食を食べた。
「何だか、新婚夫婦みたいだね、ラルク」
「それはちょっと違うだろ。ナミネ、今日は無理すんな」
「分かってるよ、ラルク」
朝食を食べ終わると私とラルクはテナロスさんの番人部屋に行った。
テナロスさんの番人部屋にある扉を開けると私は、妖精村初級武官体験の申し込みをして、早速体験をした。が、全く適わなかった。悔しくて私は何度も体験をした。気が付けば150回も体験をしたがダメだった。
私は試験会場を出てテナロスさんによって古民家に戻してもらった。
「ナミネ、伝説最上級武官受かった!」
おめでとう、ラルク。私は声に出せないままポロポロ涙を流した。
「ナミネ、どうしたんだ?」
「ラルク、私ダメなの!妖精村初級武官の体験150回も受けたけど全く歯が立たなかった。私には判断力ないのかな。これだと帰ってもナルホお兄様に打ちのめされるだけだよ。悔しいよ、ラルク。私悔しい」
ラルクは私を抱き締めた。
「ナミネ、焦ることはない。僕らにはまだ時間がある。来年も再来年も試験受ければいい。ナミネ、この町の上のほうの古民家に住む武芸にかなり長けた達人と呼ばれるおじいさんがいるんだ。弟子入りしないか?」
そうか。一人の力だから及ばないんだ。誰かに習うことが出来れば何かが変わるかもしれない。
「する!弟子入りするよ!」
私とラルクは早速、達人のおじいさんの元へ向かった。
達人のおじいさんの家は近くにあった。表札にはサラハとある。ここの人サラハっていうんだ。
「ごめんくださいー!」
中からおじいさんが出て来た。
「あの、僕たち、あなたに弟子入りしに来ました」
「もう随分と弟子を取っとらんな。この町も時期に現世に戻る。そうなれば、水道も電気も通らなくなって、この寒い時期を耐えなければならぬ。それでも、訓練を受けたいか?ワシは手を抜かんぞ?」
そっか。テナロスさんが一時的にタイムスリップさせてくれていて、町が賑わってたんだ。
「はい!私、おじいさんの訓練受けます!どれだけ厳しい訓練でも耐え切って見せます!」
「中に入れ」
私とラルクはおじいさんの家の中に入った。見事に電気もガスも水もない。おじいさんはずっとこんな環境で暮らしていたのだろうか。
「伝説最上級武官か。懐かしいのう。ラルクはいざと言う時の判断力は優れているが、妖精村武官は大人でも通っている者は少ない。ナミネは、判断力と冷静さに欠けとる!どんなに不利でも持つべきものを持っていれば常に堂々としていられる。相手のことも恨まずにいられる。でも、誰かに陥れられたと相手を憎む者は弱いんだ。心がな。どけだけ武術に長けていても、肝心の心が弱くては結局恨みが芽生えるだけじゃ。ここで訓練する間は妖精村武官のことも恨みのことも全て忘れて訓練のみに集中しなされ!番人の報告は受けてもいいが番人に伝言を頼んだり手紙を託したり、折り鶴や馬、紙飛行機の使用は禁止じゃ!では、今から隣町のスーパーに紙に書いたものを買ってくるのじゃ!」
「は、はい!」
「分かりました!ナミネ、行くぞ!」
私とラルクは隣町のスーパーまで走りはじめた。
おじいさんの訓練は厳しいものだった。
焚き火をつけることも許されず、朝は4時起き。そこから川へ水を汲んで、家の掃除をして、食事を作る。明るいうちに川に洗濯に行き、家に戻るとスーパーに買い出しに行った。洗濯物が乾いたら取り込んで、夕ご飯を作ってお風呂を沸かす。
合間に、武術訓練が入る。1日に殆ど休みはない。唯一の休みは日曜日の午後からの半日。何だかまるで僧侶の訓練のようだ。これで判断力が身に付くのだろうか。私は毎日ヘトヘトになりながらもおじいさんの訓練を続けた。
そして、気が付けば半年が過ぎていた。
そんなある日、テナロスさんが現れた。
「申し上げにくいのですが、ナミネさんを傷付けたナルホさんは別の次元のナルホさんで、1月の前半に何らかの形で入れ替わってしまったようです。セルファさんが気付くなり、ナルホさんは元の次元に戻り、本当のナルホさんが戻ってきました。ナルホさんはミネスさんがミナクさんにイジワルされたことをなかったことにしました。ナルホさんはナミネさんにとても会いたがっています。ヨルクさんもナミネさんのことをとても心配しています」
私は突然の報告にとても戸惑った。私が憎んだナルホお兄様は別人だったなんて。これでは私が馬鹿みたいだ。
「そうですか。しかし、またナルホお兄様とミネスさんは交際するんですよね?」
「現世ではそうならないと思います。もうナルホさんには既にミネスさん以外の想い人もいます。本人は自覚していませんが」
お、想い人?また変な人だったら私が被害被るだけじゃない。
「あの、想い人って……」
「戻って来たナルホさんは庭園が壊されていたことに胸を痛めました。そんな時、お武家連盟会議で、カナエさんが、ナミネさんを傷付けたのは次元の違うナルホさんだから今のナルホさんには庭園を続ける資格はあると発言し、過半数の同意を得、カナエさんはナルホさんの庭園をナルホさんと一緒に復旧しはじめています。2人は少しずつ惹かれ合っているでしょう。また、争いはないと判断したミドリさんは神様ブロックを解きました」
カナエさんか。ミネスさんはどうなるのだろう。でも、もう私の憎んだナルホお兄様じゃないのなら、また仲睦まじい兄妹に戻れるだろうか。
「そうですか。すぐに信じることは難しいですが、戻った時に確認します」
おじいさんの家で暮らしているうちに、おじいさんは家族のような存在になっていた。3人で笑いあっているうちに、ずっとここにいたいと思うようにもなっていた。
……
あとがき。
74話まで来ましたが、まだまだ秘密はたくさんあります。
走り書きでは、ミネスとナルホが交際する感じだったのに、何故か、改めて書くと別の展開になってしまった。
でも、カナエをずっと1人にしておくわけにはいかないから、これはこれで仕方ないのかも。
セナとミナクは何だか悲劇……。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
《ナミネ》
ナルホお兄様とズームさんに見捨てられた私はラルクを連れてナノハナ家から逃げ出した。何もしていないのに2人に裏切られるとは思わなくてかなり傷付いた。もうナノハナ家には戻りたくない。
「ナミネ、神様ブロック出来る番人呼び出せ!」
そんなことが出来る番人なんているのだろうか。けれど、聞いてみるしかない。私はヨナラタスさんにメールをした。
『あの、神様ブロック出来る番人ていますか?』
『妖精村3番目の番人のテナロスか番人ではないがミドリかだ』
ミドリお姉様が?どうしてミドリお姉様にそのような力があるのだろう。天界で何か入手したのだろうか。
私はとりあえず、ミドリお姉様にメールをした。
『ミドリお姉様、お助け下さい。添付映像のように、私、ナルホお兄様に自分の恋愛が成就するなら死んでもいいと言われたんです。オマケにズームさんからも見捨てられました。神様呼び出しカードを持っているヨルクさんはナルホお兄様が拉致しています。神様ブロックをしていただけませんか?』
『うん、分かった。ヨルクが神様呼び出しカードでダンゴロさん呼び出しても願い叶えなければいいんだね。ナミネ、私はナミネの味方だよ。だから、もっと楽しく生きて。ナルホや他者のことで傷つく必要なんてないから』
天界ではミドリお姉様にかなり自論を押し付けてしまった。そんな私の頼みなんて叶えてくれるのだろうか。
『すみません、ミドリお姉様。お願いします』
私は念の為、3番目の番人のテナロスさんを呼び出した。気が付けば、私とラルクが乗っていた折り鶴は森の湖南駅付近の古民家が並ぶ町に到着していた。
「あ、はじめまして。ナミネと申します。あの、ミドリお姉様に神様ブロックをお願いしたのですが、不安なんです」
「はじめまして。テナロスです。ミドリさんは神様ブロックを必ず行いますよ。少しの間ですが、ここで気分転換して行ってください。用事のある時はいつでも呼んでくださいませ」
「あ、はい。今後ともよろしくお願いします」
暗くなった夜の町に灯りがつくとテナロスさんはいなくなっていた。屋根がワラの古民家も色が付いていて、今も人が住んでいるようだった。というか、通りすがる人が出て来たから人が住んでいるのだ。
私とラルクは空いている古民家に入った。
「わあ、2階もあるし、電気も水も使えるよ!」
私は早速、暖炉に火をつけた。けれど、ここは圏外だし、私たちは一時的にタイムスリップしている。でも、今の私にとって現代の人と関わらなくていいのは気が楽かもしれない。
「ナミネ、最後にナルホさんの携帯にアクセスして、ナルホさんのクラスメイトのココリさんに『ずっと君だけを見てた。君はいつも真面目で一生懸命で、そんな君の姿に惹かれたんだ。僕と交際してくれないかな?』とメールしたんだ。ココリさんは喜んで『とても嬉しい!私ナルホと交際する』と返信してきた。けど『嘘だよ、試してみただけ。君のような不細工とは付き合えないな。いい男見つけてね』て返信しといた。履歴は全て削除済みだ」
ココリさんて、ヨルクさんのこと狙ってた人だよね。あまり男ウケしなさそうな感じの人だったような。ナルホお兄様に弄ばれて堪えるだろうなあ。
「わー、傑作だね!これでココリさんに何かあったらナルホお兄様の全責任だね!」
もう誰がどんな不幸に巻き込まれても私は知らない。恋愛が大切だから死んでもいいよとか、私が苦しんでも妹が大切だから私に苦しめとか、そんな自分のことしか考えられない人は一度痛い目見ないと分からないと思う。
みんな守りたい人のみを大切にして私を辱めるのなら、私も同じことで返す。容赦はしない。
私はパソコンで
『君たちのような不細工は僕は1人も相手に出来ない。
好きになるなら僕以外の人にしてくれるかな?
パパ活のスケジュールばかりいれて気持ち悪いし、僕の半径50m以内に入れば、その人の親御さん職業失うよ?
分かってると思うけど、僕がイケメンで君たちはブス。誰にも相手にされないブス。
赤点ばかりとってないで少しは勉強したほうがいいと思うし、将来大丈夫なのかな。とにかく汚物は僕の半径50m以内に入るな!』
と打って印刷して、それをテナロスさんに頼んでロォラさん以外のクラスメイトの一軍、二軍女子の机に置いてもらった。これで、ズームさんのイジメはまた再開するだろう。
私はただ、そっとしておいて欲しかっただけ。でも、それをしてくれず、私を辱めた。だったら、もっと苦しめばいいと思う。私はこれ以上は辱められたくない。だから、もう痛みは擦り付けるしかない。みんなが自己防衛で私を辱めるのなら私も自己防衛をする。
「ナミネ、バックにミドリさんがいることは誰にも話すな。それから、ここではナミネは休んでていいけど、僕はここで伝説武官の試験を受ける。強くなって、もう誰にもナミネを傷付けさせない」
そっか、ラルクなりに色々考えてるんだな。こういう時は、ヨルクさんよりラルクのほうが頼りになる。
私は知らず知らずにヨルクさんへの恋しさをどこかで無理して抱かないようにしていた。
「ラルク、応援してる!ラルクならきっと受かるよ!私、もうラルクしかいないよ。みんな私をイジメるから、私の居場所ないの」
私はラルクにもたれかかった。
「ナミネ、これからは僕がナミネを守る。だからナミネは何も心配せず暮らして欲しい」
「ありがとう、ラルク。ずっと愛してるよ」
「僕もナミネを愛してる」
私は遠い昔から妖精村武官に受かったことが一度もない。現代は妖精村武官も初級から最上級まであるけれど、手が付けられない。強さを求められる伝説武官と違って、妖精村武官は判断力が問われる。私に欠けているのは判断力なのだ。
私から他者に危害は一切加えない。けれど、天使村時代にしてもカンザシさんたちによって、私とヨルクさんの結婚生活は無惨な形で壊された。いくら自分が危害を加えなくても周りはどうしてか私に危害を加える。そんな辱めを受けるほどに、いつしか私の心は限界に達していたと思う。現世では何化されるたび苛立ちが止まらなくなる。私からは何もしてないのにどうしてここまで辱めるのって。気が付いたらコントロールが効かなくなっている。
私にも判断力があれば何か変えられていたのだろうか。判断力ってどうやって身に付けるのだろう。それでも、このまま辱めを受けたままでは帰れない。
その時、テナロスさんが現れた。
「報告です。いまさっき、ココリさんが学校の屋上から飛び降りました。幸い、数箇所の骨折で済み、今は月城総合病院で点滴を受けています。ナルホさんとセルファさん、ヨルクさんは慌ててココリさんに会いに行き、ナルホさんは必死に謝りましたがココリさんはナルホさんを許さず、ナルホさんのご両親を呼び慰謝料請求をしました。負いつまりに負いつまったナルホさんは月城総合病院の屋上から飛び降りましたが、死ねない身体になっているため、身体から血は流れたものの、本体にはなんの支障もなく普通に生きています。ただ、発見した看護師さんによりナルホさんはココリさんと同じ病室にいます。ナルホさんは何度もナミネさんに会いたい、誤解を解きたいと言っていました。ズームさんは放課後のクラスで机の上にある紙を見たクラスメイトにより、ズームさんが過去にイジメられていた画像を大量に送られ、再びズームさんはイジメの対象となりました。ズームさんもナミネさんに謝りたいと言っています。ズームさんもナルホさんももうミネスさんの顔は二度と見たくないそうです。2人ともミネスさんとは縁を切りました。ナルホさんがココリさんを自殺未遂させたとして、お武家連盟会議が開かれました。セルファさんのナミネさんに対するイジメの証拠により、ナルホさんの庭園は処分され、ナルホさんは植物研究員にはなれないようナノハナ家のお母様が手続きしました。また、ナルホさんとズームさんにはミネスさんが危機に陥っても助けない。一生ナミネさんを償うという誓約書にサインをしました」
正直、ココリさんのことは傑作だと思う。でも、ナルホお兄様が私を侮辱していなければこうはなっていなかったし、同情は出来ない。
それに、私は謝りたいだとか会いたいなどの上辺だけの感情に私は騙されたりしない。恨まれるなら恨まれればいい。イジメられるならイジメられればいい。それが私の日常となんの関係があるのだろう。
「ナミネ、ナルホさんとズームさんは反省なんかしていない!ナミネの元気な姿を見れば、またミネスさんを可愛がりナミネのことを馬鹿にする。2人とは口を聞くな!」
「分かってるよ、ラルク。私もそこまで馬鹿じゃないよ」
2人のことは二度と許さない。それどころか、2人の現世での幸せを全て奪い取ってやる。
「遠い昔、ナルホさんにも愛した人はいました。けれど、つまらない男と裏切られ、ナルホさんは恋愛恐怖症になったんです。でも、何度か恋愛した中にミネスさんがいて、ミネスさんとは大恋愛の末、唯一恋愛結婚した人でした。今の2人にはその時の記憶はありませんが。今でも大恋愛した過去が2人を結びつけているのでしょう。しかしながら、大恋愛の上に結婚した2人は上手くいかず仮面夫婦として一生を過ごしたのです。結婚するなりナルホさんが植物に夢中になり、ミネスさんはそんなナルホさんに愛想が尽き、ナルホさんの知らないところで浮気を繰り返していました」
私は思わず笑ってしまった。私にはミネスさんのほうが大事だから死ねと言ったナルホお兄様が結婚後は愛も慈悲も何もない生活を送っていただなんて。無様にもほどがある。けれど、その事実を聞いた私は安心してしまっていた。人を辱めて幸せになれるはずなんかない。
「そうでしか。いくら好き合っても心が離れ離れになることもあるんですね」
「結婚とはそういうものなのかもしれませんね。では、また何かあればお呼びくださいませ」
テナロスさんは番人部屋に戻って行った。
結婚とは何なのだろう。私とヨルクさんは結婚後も愛し合っていたけれど、誰にでも優しいナルホお兄様とミネスさんの結婚後が大したことないと知って、何だか呆気なくなってしまった。
「ナミネ、こっちの手駒は誰にも見せるな!寧ろ、弱いフリを何も持ってないフリを見せ続けろ!」
「うん、分かってるよ、ラルク。こちらの札見せたら相手の思う壷だもんね」
そう、こちらの手駒など決して見せたりはしない。私の背後にミドリお姉様がいることも。テナロスさんがいることも。
私はすかさずヨナラタスさんを呼び出した。
「あの、4人に伝言伝えてもらえませんか?ズームさんにはこう伝えてください。『まさかかつてあれほどに愛し合い、現世でも支え合うと約束したズームさんに裏切られるとは思ってもいませんでした。人を辱めた気持ちはどうですか?今幸せですか?』。ナルホお兄様にはこう伝えてください。『私はナルホお兄様を決して許しません。ナルホお兄様のことが憎くて憎くてたまりません。けれど、好きなら仕方ありません。ミネスさんとお幸せに』。ココリさんにはこう伝えてください。『ナルホお兄様はココリさんを弄んだ後、大金持ちのミネスさんと交際しました』。ヨルクさんにはこうお伝えください。
『ヨルクさん、ナルホお兄様とズームさんにイジメられて辛いよ!このままじゃ辱め受けたままでは帰れないよ!私死ぬかもしれない!ヨルクさんが2人を懲らしめて!私を2人のイジメから助けて!!助けてヨルクさん、助けてヨルクさん!!!』」
「分かった。今伝えに行く」
ヨナラタスさんは去って行った。
ここは圏外だから、誰からの連絡も受け取れないし、ナノハナ家がどうなっているかも分からない。
「あのね、ラルク。私、妖精村武官試験受けるよ」
「そっか。でも、あまり無理すんな」
恨みたくないのに恨んでしまう。すぐに許したいのに許せない。これも、歴史がそうさせたのだろうか。天使村時代、衰弱して楽しいはずのヨルクさんとの結婚期間がほぼ台無しになってしまったこと。こんなのあんまりだと思う。どうして私ばかりが苦しまなければならないのか分からない。
でも、ズームさんのことはやりすぎた気がする。
私はテナロスさんを呼び出した。
「あの、ズームさんのイジメを取り消してもらえないでしょうか?」
「分かりました。こちらもお話があります。あの後、セルファさんがヨナラタスさんの録音をナノハさんに聞かせたところ、ナノハさんは、みんなの前でミナクさんにミネスさんをイジワルさせました。ナルホさんは泣きながらミネスさんに好きだと告白し、一生償うと言いましたが、初を好きでもないミナクさんに奪われたミネスさんはナルホさんに一生恨むと言い、ナルホさんは部屋でキクスケさんを呼び出しナミネさんを襲わせるよう依頼しましたが、キクスケさんは規則に反すると断りました。そのことをセルファさんはナノハさんに報告し、ミネスさんはまたミナクさんからイジワルをされました。その時にミナクさんはハッキリセナ王女に別れを告げ、セナ王女はミネスさんを目の敵にしたのです。また、ミネスさん、ナルホさん、カンザシさんは何世紀にも渡り、本当に愛する人と愛し合えないことから愛情欠落ヒステリー症候群に陥ってます。ズームさんはナミネさんを何世紀にも渡って苦しめたことを反省し、ミネスさんのことは長い年月の報いだと諦め、すぐにナミネさんとの和解を求めています」
愛情欠落ヒステリー症候群?私だって、ヨルクさんと引き離された期間は相当なものだったのに、甘えないで欲しい。ミネスさんがイジワルされたとか、そんなの私には関係ない。勝手にしてって思う。
ズームさんのことは何だか私が突っ走りすぎた気がする。一応謝っておこう。
ミネスさんが来てから現世が変わりつつある気がする。
「そうですか」
私は言葉が見つからなかった。もう現世では仲の良い兄妹ではいられないんだ。テナロスさんが去った後、私はズームさんとヨルクさんに手紙を書いた。
『ズームさんへ
私たちの間には色々誤解があったのかもしれません。戻り次第話し合いたいですが、ナルホお兄様がいつ私を襲わせるかと思うと戻るに戻れません
ナミネ』
『ヨルクさんへ
彼氏なのにどうして何もしてくれないのですか!私は何もしてないのにナルホお兄様から襲わせる依頼をされて怖くてたまりません!1週間以内に、あの優しかった頃のナルホお兄様に戻してくれなければヨルクさんとは破断します!ナノハナ家にも戻りません!見て見ぬふりするヨルクさんなんか大嫌いです!もし、1週間以内にナルホお兄様を説得出来なければ、破断だけでなくヨルクさんを50代女性にイジワルさせます!
ナミネ』
私はこの二通をヨナラタスさんに頼んで2人に渡してもらうようお願いをした。
翌日、ラルクの作った朝食を食べた。
「何だか、新婚夫婦みたいだね、ラルク」
「それはちょっと違うだろ。ナミネ、今日は無理すんな」
「分かってるよ、ラルク」
朝食を食べ終わると私とラルクはテナロスさんの番人部屋に行った。
テナロスさんの番人部屋にある扉を開けると私は、妖精村初級武官体験の申し込みをして、早速体験をした。が、全く適わなかった。悔しくて私は何度も体験をした。気が付けば150回も体験をしたがダメだった。
私は試験会場を出てテナロスさんによって古民家に戻してもらった。
「ナミネ、伝説最上級武官受かった!」
おめでとう、ラルク。私は声に出せないままポロポロ涙を流した。
「ナミネ、どうしたんだ?」
「ラルク、私ダメなの!妖精村初級武官の体験150回も受けたけど全く歯が立たなかった。私には判断力ないのかな。これだと帰ってもナルホお兄様に打ちのめされるだけだよ。悔しいよ、ラルク。私悔しい」
ラルクは私を抱き締めた。
「ナミネ、焦ることはない。僕らにはまだ時間がある。来年も再来年も試験受ければいい。ナミネ、この町の上のほうの古民家に住む武芸にかなり長けた達人と呼ばれるおじいさんがいるんだ。弟子入りしないか?」
そうか。一人の力だから及ばないんだ。誰かに習うことが出来れば何かが変わるかもしれない。
「する!弟子入りするよ!」
私とラルクは早速、達人のおじいさんの元へ向かった。
達人のおじいさんの家は近くにあった。表札にはサラハとある。ここの人サラハっていうんだ。
「ごめんくださいー!」
中からおじいさんが出て来た。
「あの、僕たち、あなたに弟子入りしに来ました」
「もう随分と弟子を取っとらんな。この町も時期に現世に戻る。そうなれば、水道も電気も通らなくなって、この寒い時期を耐えなければならぬ。それでも、訓練を受けたいか?ワシは手を抜かんぞ?」
そっか。テナロスさんが一時的にタイムスリップさせてくれていて、町が賑わってたんだ。
「はい!私、おじいさんの訓練受けます!どれだけ厳しい訓練でも耐え切って見せます!」
「中に入れ」
私とラルクはおじいさんの家の中に入った。見事に電気もガスも水もない。おじいさんはずっとこんな環境で暮らしていたのだろうか。
「伝説最上級武官か。懐かしいのう。ラルクはいざと言う時の判断力は優れているが、妖精村武官は大人でも通っている者は少ない。ナミネは、判断力と冷静さに欠けとる!どんなに不利でも持つべきものを持っていれば常に堂々としていられる。相手のことも恨まずにいられる。でも、誰かに陥れられたと相手を憎む者は弱いんだ。心がな。どけだけ武術に長けていても、肝心の心が弱くては結局恨みが芽生えるだけじゃ。ここで訓練する間は妖精村武官のことも恨みのことも全て忘れて訓練のみに集中しなされ!番人の報告は受けてもいいが番人に伝言を頼んだり手紙を託したり、折り鶴や馬、紙飛行機の使用は禁止じゃ!では、今から隣町のスーパーに紙に書いたものを買ってくるのじゃ!」
「は、はい!」
「分かりました!ナミネ、行くぞ!」
私とラルクは隣町のスーパーまで走りはじめた。
おじいさんの訓練は厳しいものだった。
焚き火をつけることも許されず、朝は4時起き。そこから川へ水を汲んで、家の掃除をして、食事を作る。明るいうちに川に洗濯に行き、家に戻るとスーパーに買い出しに行った。洗濯物が乾いたら取り込んで、夕ご飯を作ってお風呂を沸かす。
合間に、武術訓練が入る。1日に殆ど休みはない。唯一の休みは日曜日の午後からの半日。何だかまるで僧侶の訓練のようだ。これで判断力が身に付くのだろうか。私は毎日ヘトヘトになりながらもおじいさんの訓練を続けた。
そして、気が付けば半年が過ぎていた。
そんなある日、テナロスさんが現れた。
「申し上げにくいのですが、ナミネさんを傷付けたナルホさんは別の次元のナルホさんで、1月の前半に何らかの形で入れ替わってしまったようです。セルファさんが気付くなり、ナルホさんは元の次元に戻り、本当のナルホさんが戻ってきました。ナルホさんはミネスさんがミナクさんにイジワルされたことをなかったことにしました。ナルホさんはナミネさんにとても会いたがっています。ヨルクさんもナミネさんのことをとても心配しています」
私は突然の報告にとても戸惑った。私が憎んだナルホお兄様は別人だったなんて。これでは私が馬鹿みたいだ。
「そうですか。しかし、またナルホお兄様とミネスさんは交際するんですよね?」
「現世ではそうならないと思います。もうナルホさんには既にミネスさん以外の想い人もいます。本人は自覚していませんが」
お、想い人?また変な人だったら私が被害被るだけじゃない。
「あの、想い人って……」
「戻って来たナルホさんは庭園が壊されていたことに胸を痛めました。そんな時、お武家連盟会議で、カナエさんが、ナミネさんを傷付けたのは次元の違うナルホさんだから今のナルホさんには庭園を続ける資格はあると発言し、過半数の同意を得、カナエさんはナルホさんの庭園をナルホさんと一緒に復旧しはじめています。2人は少しずつ惹かれ合っているでしょう。また、争いはないと判断したミドリさんは神様ブロックを解きました」
カナエさんか。ミネスさんはどうなるのだろう。でも、もう私の憎んだナルホお兄様じゃないのなら、また仲睦まじい兄妹に戻れるだろうか。
「そうですか。すぐに信じることは難しいですが、戻った時に確認します」
おじいさんの家で暮らしているうちに、おじいさんは家族のような存在になっていた。3人で笑いあっているうちに、ずっとここにいたいと思うようにもなっていた。
……
あとがき。
74話まで来ましたが、まだまだ秘密はたくさんあります。
走り書きでは、ミネスとナルホが交際する感じだったのに、何故か、改めて書くと別の展開になってしまった。
でも、カナエをずっと1人にしておくわけにはいかないから、これはこれで仕方ないのかも。
セナとミナクは何だか悲劇……。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
純愛偏差値 未来編 一人称版 73話
《ラルク》
恋は盲目と言うが、実際そうなのかもしれない。ナミネが泣きそうになりながら、ナルホさんから死んでもいいと言われたって言った時は正直驚いた。恋愛には少しも興味なさそうなナルホさんが、心奪われたミネスさんを失いたくないあまりに、前を見失ってしまうだなんて、信じられなかった。
でも、僕もセレナール先輩に本気だった頃はナミネのことを傷付けてしまっていた。セレナール先輩の本性を知ってからは、すっかり目が覚めてしまったけれど。今となっては物凄く後悔している。僕は、セレナール先輩には確かに一目惚れしたけれど、本当に好きだったのは、ずっと僕に寄り添ってくれていたナミネだと気付かされた。でも、その頃にはもう遅かった。
せっかく僕を好きでいてくれたナミネはヨルクお兄様と交際してしまった。
そんな僕は今、二度目の桜木町のカフェにいる。
二度目。そう、僕らは一度ここに来て、キクスケさんに今朝の7時に時間を巻き戻してもらったのだ。
「最初は恩人であるセナ王女を心から愛してた。けれど、だんだん交際当初のようには見れなくなって、はじめてミネスを見た時、恋に落ちた。このような感情を抱いたのははじめてだ。ミネスのことが好きで好きでたまらない」
もういっそのことミネスさんと交際すればいいと思う。セナ王女のことは本気かと思っていたのに、結局、時間が経てば飽きてしまったのか。
「でも、それってセナさんはどうなるの?セナさんはミナクとの別れを認めないと思うわ」
いくら認めなくても人の心は縛れない。
「ていうか、甘えセナと別れて、お子ちゃまミネスと交際出来なかったらどうするんだよ」
「それが怖くてセナ王女とは別れるに別れられない。でも、女として見れなくて交際も辛い。早くミネスの温もりに包まれたい」
どれだけ馬鹿なんだ。1人になりたくないから好きでもない女と無理に交際しても続かないし、関係は今よりもっと悪くなる。
「あの、ミネスさんと交際出来る可能性が100%でなければ私はセナ王女とは別れないほうがいいと思うんです」
時間稼ぎか。けれど、どれだけ考えても抜け道などない気がするが。
「いや、それは流石に私のメンタルが持たない」
だったら、どうしろと言うんだよ。その時、落ち武者さんがある映像を見せた。
映像はリアルタイムだろうものだった。
ナルホさんとミネスさんが庭園を歩いている。
『ナルホ……私ナルホと交際したい!』
『分かった』
ナルホさんはすんなりミネスさんの告白を受け入れた。
『でも、ナミネはどうするの?』
『そうだね、今のナミネは君のこと嫌っているし、僕との交際は絶対認めないと思う。本当に死ぬかもしれない。でも、僕は、苦しいのにナミネは無理に生きなくてもいいと思うんだ。死にたいなら死んだらいいと思うんだ。それがナミネの幸せだと思ってる。今は君を支えることに全力を尽くすよ。ナミネのことは気にしなくていいよ』
恋は盲目と言うが、ナルホさんが恋愛でこんなにも残酷になれるなんて、少し痛々しく感じる。ナミネは真剣な表情をして見ている。
『ナルホ、ありがとう!嬉しい!私、ナルホと幸せになる!』
ミネスさんはナルホさんに抱き着いた。
落ち武者さんは一旦ここで映像を止めた。
「ミナク、お子ちゃまミネスはもう平和ボケなナルホの女だ!甘えセナと別れてもお子ちゃまミネスとは交際出来ないからね?」
「そんな……ナルホの野郎、いつの間に口説きやがったんだ。これじゃあ、セナ王女と別れられないじゃないか」
どうしてこんなにも見苦しいのだろう。どれだけ足掻いてもミネスさんとは一緒にはなれないのに。
「じゃ、今からナノハ依存ズルエヌに送るメール文書打つ」
落ち武者さんはズルエヌさんにメールを打ちはじめた。このメールがトドメになるわけか。今日は普通の話し合いのつもりが、人生をかけた話し合いになってしまった。
「じゃ、これ送る」
『ナノハ依存ズルエヌ。今すぐナノハと別れてミドリと付き合え!言わせてもらうけど、あんたの妹、これだけのことしたんだけど?どう償うつもり?まさかこのまま見て見ぬふりして僕の大切な人の人生奪う気じゃないよね?そんなことすると、あんたの大切な妹の映像と画像全て世の中にばら撒くよ?世間の目に晒されるか少年院に入れるか今すぐ答え出せ!』
いきなり知らない人からこれを送られてきたらかなりキツイだろうな。けれど、ミネスさんのしたことは犯罪だし、正直償って欲しいというのが本音。
少しすると返信が来たようだ。
「返信来た」
『妹が多大なご迷惑をおかけして申し訳ありません。ナノハには今別れるメールを送りました。妹は少年院に入れます。近々そちらに謝罪に行きます』
かなり真面目な人だな。まあ、ミネスさんがこのまま少年院で償ってくれるならナミネも安心して毎日を過ごせると思う。
落ち武者さんは続きを再生した。
映像には、地下室の拷問部屋にてナノハさんとレイカさん、ミネスさん、ナルホさん、その他武官がいた。
『ナルホ、今ズルエヌからメール来た。その女との交際は認めないよ』
ナノハさんはそれなりに怒っている様子だった。
『ナノハお姉様、僕は自分の人生は自分で決めます。ミネスとは別れません』
ナノハさんはナルホさんを引っぱたいた。
『レイカさん、お願い出来るかしら』
『ナノハ、本当にいいの?後戻り出来ないわよ?」
「構いません。ナルホがこんな女に騙されナミネを傷付けるなら現実を見せて目を覚まさせます』
『分かったわ』
レイカさんはミネスさんの拘束を解いて、ミネスさんの服を脱がした。
『やってちょうだい』
『ミネス!ナノハお姉様、やめてください!僕はただミネスと交際したいだけです!ナミネはこの世が苦しい子だから死にたいなら死ねばいいと思っただけです!ミネスをここで傷付けたらナノハお姉様に復讐します』
『やれるもんならやってみなさい、ナルホ』
ミネスさんは、悲鳴と共に5人の武官にイヤガラセされた。
『第3破られたのに私生きてる。死にたいのに死ねない!ナルホ、君を一生恨む!』
『ミネス!僕は何もしてない!ミネスのことは一生かけて僕が支える!』
ミネスさんはミドリさんの時同様、無惨な状態なのに、何もなかったかのように動いている。
『ナルホ、よくも私をハメてくれたね!お兄ちゃんに言って、ナルホの今後の幸せ全部奪ってやる!』
『ミネス、僕は本当にミネスを幸せにしたくて交際した!』
ナルホさんは突然の事態についていけないのか、大粒の涙を流した。
あれ、ナルホさんの背中にヘクタナが貼られてある。
落ち武者さんは停止ボタンを押した。
「ラルク、ヘクタナだよ!」
「そうだな。誰かが貼ったのか、自然と貼り付いたのか」
ヘクタナ。貼られた者は、貼った者を主君とし、何がなんでも従い続ける。
「ミネスが、そっとしておいて欲しいと何度も訴えるナミネさんを傷付けてしまったことは本当に申し訳なく思っています。けれど、あんな愚かな子でも僕の妹なんです」
そうだよな。ズームさんからして見れば1番見たくないし、このままにはしないだろう。その時、ヨルクお兄様とダンゴロさんが来た。
「ヨルクさん!」
「ダンゴロさん、正月からナミネさんとミネスが仲違いした部分だけ省いてください」
ズームさんは泣きながら訴えた。
「別にいいけど。それじゃあ、2人が仲違いした場面は別のもので埋めておく。ただ、忠告するなら、今後2人が仲違いしたら、また元に逆戻りだよ。辛いだろうけど、ナミネはミネスに攻撃されても我慢するしかないね」
そんな、またナミネが犠牲になるなんて。どうしてこの世はこれほどまでに理不尽なのだろう。
「分かりました。ズームさんのためにも、私が我慢します!その変わり、ヨルクさんには誰もが手出し出来ないようヨルクさんの身の安全は確保してもらえないでしょうか?」
ナミネはいつも自分のことより、他人を心配する。
「分かった。じゃあ、ヨルクの身の安全の確保はしとく。今言うけど、ヘクタナはカンザシがミネスに貼ろうとして間違えてナルホに貼ったんだよ。それから初代天使村でヨルクを毒殺した中にはミネスもいるよ。だから、ナミネのイライラは簡単には治まらないだろうね」
まさか、ミネスさんがヨルクお兄様の毒殺に協力したのか?もう何がなんだか分からなくなってきた。
「エロじじい、どういうことだ!後、強気なナミネの精神状態の安定も確保しろ!ズームの背中のアザと効力はなくしたままにしろ!」
「カンザシとセレナールがヨルク毒殺計画を立てた時、お金のないカンザシはミネスに計画を打ち明け共犯者にした上で毒草買わせ、何かあれば全てミネスに罪を擦り付けるつもりだった。けれど、ミネスは他の村に逃げた。君の力量ならナミネの精神状態安定の確保は40%だね。ズームの背中のアザと効力が消えてるのはラルクがセレナールと別れないまでね。別れたら元に戻るからね」
ミネスさんは毒草を買っただけ。それでも計画は知っている。いざとなればカンザシさんの味方につくということか。それに40%は低すぎる。ないよりマシだが。何となくミネスさんは元に戻ったに対して、これからはナミネのみ我慢というのは不公平だ。
「じゃあ、頼みは聞いたから戻るね」
ダンゴロさんは女神の湖に戻って行った。
「なあ、ズーム!お子ちゃまミネスは元に戻って今後も強気なナミネイジメるのに対して強気なナミネはそれ我慢して調和保つのは不公平だろ!あんた、自分の妹さえよければ他はどうでもいいのかよ!今すぐセリル呼ぶぞ!」
落ち武者さんもここは出るとこ出るか。
「ミネスのことは本当に申し訳なく思っています。ただ、僕はナミネさんを犠牲にはしません。ミネスがナミネさんを攻撃したら必ず庇います」
「だったら、なんで今まで傍観してた!セリル呼ぶぞ!」
「映像のような事態になるとは思っていませんでした。反省しています。今後はナミネさんを全力で守ります」
僕と落ち武者さんとズームさんでナミネを守ればナミネは壊れずに済むかもしれない。
とりあえず、正月、紅葉神社でヨルクお兄様がイタズラ犯に間違えられたことは偶然通りかかったカナコさんが証拠がないなら連れて行かせないとヨルクお兄様を庇い、ミィミさんは泣きながら諦めて去って行った。
ライオンのオリの鍵のことは、そのまま僕たちがヨルクお兄様を助けた。
グルグル妖精さんのマンションでミネスさんがナミネを叩いたことは、ナミネが泣きながら僕の手を握り、僕と朝までカラオケにいた。
ミネスさんが今日ナミネを襲わせる計画は、そのまま朝早く出て回避して来た。
今のナルホさんとミネスさんの関係は友達と言ったところだろうか。ミネスさんはカンザシさんにベタ惚れで、ズームさんの背中のアザが消えたことも知らずニンジャ妖精さんのマンションの家賃払っている。
過去は微妙に変えられている。問題はこの先だ。
今になって僕はセレナール先輩との恋愛を重視したあまり、伝説武官に辿り着けなかったことを後悔した。
僕が強くなってナミネを守らなければ。
僕は念の為、変えられる前の現実の映像をナヤセスさんとナルホさんにメールした。
『セルファからも同じ内容のメールが来たけど、僕はナミネにあんなこと言ったりはしないよ。確かな確証を掴めるまで待ってもらえるかな?』
『分かりました』
けれど、ナルホさんとミネスさんは誰が見ても惹かれ合っていた。2人が交際するもの時間の問題だろう。
「じゃ、話し合いの続きする」
その時、ヨルクお兄様が泣き崩れた。
「ナミネ……どうして……自分のお願いしないで、私の安全の確保なんて言ったの……もうナミネに犠牲になって欲しくない」
「ヨルクさん、私はヨルクさんに無事でいて欲しいんです」
こういうやり取りは気に食わない。僕がナミネの彼氏だったらナミネは自分のことだけ考えていられたのに。
「顔だけヨルク、今日はミナクと甘えセナのことについて話に来た。だから、泣いてないで、あんたもメニュー注文して話し合いに加われ!」
「ラルク、お腹すいたよ」
そういえば、ここに来てから何も注文していなかった。
「注文しろよ。ほら、ここにトマト妖精のパンケーキあるぞ」
「じゃあ、それにする」
ナミネが注文すると共に、みんなも同じものを注文した。
「言っておくけど、綺麗に別れないと一目惚れカラルリみたいなことになるぞ!」
カラルリ先輩……。あれはもう悲劇としか言いようがない。
「助けて欲しい」
「ミナクさんはセナ王女を女として見れなくなったことが原因で別れたいのですか?それともミネスさんに心変わりしたからですか?」
「分からない。けれど、ミネスに出会ってから毎日毎日ミネスのことが頭から離れない。ミネスの美人さ、ミネスの胸元、ミネスの太もも、全てが美しくて触れたいけれど、触れられないもどかしさが辛い」
遅い一目惚れというわけか。セナ王女のことは恩人というポジションだろうか。散々女遊びしてきたのに、今更初恋で戸惑うだなんてミナクお兄様らしくない。
「でも、ミネスさんとは交際は無理だと思います。いくら時間戻したりしても、これまでの経験で過去は何も変わらないことが証明されています。いずれはミネスさんとナルホお兄様は好き合うでしょう。その上でセナ王女のことはどうしますか?妊娠させてないなら今が別れ時だと思うのですが」
ナミネの言う通り、時間は巻き戻って、過去の一部が書き換えられたが、また同じことは起きるはず。
「セナ王女とはどうやって別れたらいいのか分からない。それにやっぱりミネスと交際出来ないと私はダメになってしまう」
何がダメになってしまうだ。自分の恋愛も自分で処理出来ず次に進めるわけがない。
「じゃ、今夜はお子ちゃまミネスと混浴させてやるよ」
「本当か?」
「ああ、みんないるけどな。そこでお子ちゃまミネス口説け!じゃ、ナノハナ家に戻る」
落ち武者さんは多分、セナ王女の前でミナクお兄様がミネスさんにアプローチしているのを見せつけてカタをつけるつもりだ。
僕たちはユメさんと委員長と解散したらタクシーを拾ってナノハナ家に戻って行った。
ナノハナ家に戻るなりナミネはナルホさんの部屋に行った。
「ナルホお兄様、私はもうナルホお兄様のことを兄とも何とも思っていません。私の兄はナヤセス殿だけです。一言それを言いに来ました」
ナミネは時間を巻き戻す前にナルホさんに死んでもいいと言われたことを確実に根に持っている。
「ナミネ、僕はその時のことを覚えていないし、ミネスに恋愛感情もない。ナミネのことは小さい頃から可愛がってきたし、僕が大切なのはナミネだよ。万が一ミネスと交際することになってナミネが反対したら別れるし、僕は大好きなナミネに嫌われるのは辛いな」
ナルホさんの本音ってどうなっているのだろう。一見これも本心に聞こえるけど、落ち武者さんがフェアリーングでナルホさんの本心を引き出したらどんな答えになるのだろう。
「あんた、もう既に強気なナミネの信用失ってんだよ!」
落ち武者さんはナルホさんにフェアリーングをかけた。
「平和ボケなナルホ、あんたお子ちゃまミネスのことどう思ってんだ?お子ちゃまミネスと強気なナミネ、どっちが大事なんだよ?強気なナミネがあんたとお子ちゃまミネスの交際反対して死ぬって言ったらどうするんだよ?」
「ミネスのことは放っておけない。どれだけミネスが悪いことしても僕はミネスを放っておけないし必ずミネスを助ける。ナミネよりミネスが大事。ミネスと交際することになってナミネが反対して死ぬと言ったら、ナミネは死んでもいいと思うんだ。無理に生きてなくていいと思う。ナミネが死ぬことで楽になれるなら僕も嬉しいよ。死ぬかどうかはナミネの判断だし、僕はミネスとの幸せを選ぶ」
落ち武者さんはフェアリーングを解いた。人は誰しも裏表があると言うが、ここまでの違いが出てくるのものなのだろうか。これではまるで詐欺レベルではないか。
「これがあんたの核心だ。本心ではなく核心なんだよ!せいぜい、ナノハにバレないようにしろよ!バレたらお子ちゃまミネスは死んで、後悔するのあんただから」
「そっか。セルファはこうやって人が眠っている感情らしきものを引き出して人と人とを仲違いさせてるんだね。今となってはナミネとの関係を拗れさせたミネスを憎くさえ感じるよ。大切なのはナミネなのに、ナミネの信用失って、一歩間違えればナノハお姉様に人生奪われて。正直やり切れないよ」
いったい、本心と核心てなんなんだ。核心が変えられない感情なら、ナルホさんはミネスさん意外とは恋愛をしないと言うことになる。天使村の前だってある。そんな昔からナルホさんはミネスさんのみを愛してきたのか?とてもじゃないけど信じられない。
「ナルホお兄様、私は一生ナルホお兄様を恨みます。今のお言葉ナノハお姉様に録音を聞かせます!ミネスさんがそれだけ大事ならミネスさんと心中してくれませんか?」
ナミネの目の色が紫色になっている。
「ナミネ、ナノハお姉様に話すのはやめてくれるかな?今回の件、確証はどこにもないよね?もし、あのような結末になれば、ズームさんにどうお詫びするのかな?僕は何も覚えていないし、ミネスに恋愛感情はないし、大切なのはナミネ。これがどうしても信じられないならナノハお姉様に言うといいよ。あんな形でミネスが死んだらナミネはズームさんの信用を失い、後悔して苦しむのはナミネだよ。その覚悟があるなら好きにするといいよ」
「ナルホお兄様、後悔するのはあなたです。行くよ、ラルク」
ナミネは僕の手を引っ張って窓を開けると折り鶴に乗ってナノハナ家を出た。その後のことはどうなったか、分からない。けれど、念の為、今回のことを僕はズームさんにメールをした。
『セルファさんから同じ報告が来たところです。ナミネさんのことを守ると言って守れなかったからミネスがナルホさんと交際したらミネスはレイカさんの拷問で無惨な形で死ぬだろうと言われました。ただ、僕はナルホさんがナミネさんを見捨てるとは思えないんです。でも、ナミネさんは誰が何を言わなくてもナルホさんがミネスを好きな限り、いずれミネスはまた同じ形で死んでしまうと言っていました。僕自身行き詰まっています。決して自分とミネスさえよければいいわけではありません。それでも結局はミネスが助かればナミネさんが傷付いてしまう。でも、僕はミネスのあんな無惨な姿は見たくありません。ラルクさん、僕はアザを背負います。だからセレナールさんとは別れてください』
ナルホさんもズームさんもミネスさんをナミネを見捨ててミネスさんを守りたいのならナミネが孤立してしまう。結局は恋人又は家族がよければ他人のことはどうでもいい。それが人なのだ。
ナミネはナルホさんのパンツに名前、住所、証明写真を貼って町にばらまいている。
「ナミネ、キクスケさんに、ミネスさん、ナルホさん、ズームさんの3人を死ねない身体にしてもらえ!」
「うん、分かった」
ナミネはキクスケさんにメールし、3人を死ねない身体にしてもらった。もう手段は選べない。この3人が死にたいくらい負いつまった時に生きてもらうしかない。ナミネのためにも。
『そうですか。ナルホさんはナミネを死なせてミネスさんと一緒になると言っている。ズームさんはナミネが傷付いてでもミネスさん優先すると言っている。ナミネのことなんだと思っているんですか!セレナール先輩とは別れません!お2人がナミネを大切にしないと、僕はナミネと2人で転生します。その後のことはあなた方で楽しく生きてください』
『待ってください!ナミネさんに会わせてもらえませんか?転生だけはどうかやめてください』
ぼくはこのやり取りをナルホさんと落ち武者さんに転送した。
『ラルク、そのことなんだけど、平和ボケなナルホはいきなり強気なナミネに嫌われてかなり滅入っている。セリル呼んでフェアリーングかけてもらったら、ナミネが死ぬくらいならミネスとは交際しないって言うんだ。もうわけが分からない』
いったいどういうことなんだ。まるで誰かが裏で糸を引いているような展開じゃないか。お武家連盟会議にかけてナミネを傷付けた人たちに罪を負わせたい。けれど、今それをするとナミネが恨まれ余計にナミネが傷付いてしまう。
『ズームさん、ひとつお聞きします。もし、あなたがナミネの彼氏ならどうしていましたか?』
『もし、僕がナミネさんと交際していたならミネスよりナミネさんを選んだと思います。けれど、今はそうではないので、やはりミネスの命を無駄にすることは出来ません。すみません。ただ、ナミネさんに会わせてもらえませんか?』
ナルホさん、ズームさん共に彼女を選ぶということか。けれど、ナミネはナミネでちゃんと生きている。ナミネを見捨てることは僕が許さない。
『ラルク、キクスケから聞いたんだが、いくらお子ちゃまミネスを死なせたくなくても、強気なナミネが傷付けばどの道お子ちゃまミネスは死ぬらしい。ズームも平和ボケなナルホも十分反省してる。戻ってこい』
誰が裏で糸を引いているのか分からないが、もうミネスさんは既に死ねない身体になっている。だとしたら、ナミネを会わせる必要はない。けれど、神様呼び出しカードを持っているヨルクお兄様がナノハナ家にいる。不利な種は詰んでおかないと。
「ナミネ、神様ブロック出来る番人呼び出せ!」
……
あとがき。
久々のラルク視点です。
ここまで来てラルクが本当に愛している人が分かりましたね。
2人のすれ違いが切ないです。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
《ラルク》
恋は盲目と言うが、実際そうなのかもしれない。ナミネが泣きそうになりながら、ナルホさんから死んでもいいと言われたって言った時は正直驚いた。恋愛には少しも興味なさそうなナルホさんが、心奪われたミネスさんを失いたくないあまりに、前を見失ってしまうだなんて、信じられなかった。
でも、僕もセレナール先輩に本気だった頃はナミネのことを傷付けてしまっていた。セレナール先輩の本性を知ってからは、すっかり目が覚めてしまったけれど。今となっては物凄く後悔している。僕は、セレナール先輩には確かに一目惚れしたけれど、本当に好きだったのは、ずっと僕に寄り添ってくれていたナミネだと気付かされた。でも、その頃にはもう遅かった。
せっかく僕を好きでいてくれたナミネはヨルクお兄様と交際してしまった。
そんな僕は今、二度目の桜木町のカフェにいる。
二度目。そう、僕らは一度ここに来て、キクスケさんに今朝の7時に時間を巻き戻してもらったのだ。
「最初は恩人であるセナ王女を心から愛してた。けれど、だんだん交際当初のようには見れなくなって、はじめてミネスを見た時、恋に落ちた。このような感情を抱いたのははじめてだ。ミネスのことが好きで好きでたまらない」
もういっそのことミネスさんと交際すればいいと思う。セナ王女のことは本気かと思っていたのに、結局、時間が経てば飽きてしまったのか。
「でも、それってセナさんはどうなるの?セナさんはミナクとの別れを認めないと思うわ」
いくら認めなくても人の心は縛れない。
「ていうか、甘えセナと別れて、お子ちゃまミネスと交際出来なかったらどうするんだよ」
「それが怖くてセナ王女とは別れるに別れられない。でも、女として見れなくて交際も辛い。早くミネスの温もりに包まれたい」
どれだけ馬鹿なんだ。1人になりたくないから好きでもない女と無理に交際しても続かないし、関係は今よりもっと悪くなる。
「あの、ミネスさんと交際出来る可能性が100%でなければ私はセナ王女とは別れないほうがいいと思うんです」
時間稼ぎか。けれど、どれだけ考えても抜け道などない気がするが。
「いや、それは流石に私のメンタルが持たない」
だったら、どうしろと言うんだよ。その時、落ち武者さんがある映像を見せた。
映像はリアルタイムだろうものだった。
ナルホさんとミネスさんが庭園を歩いている。
『ナルホ……私ナルホと交際したい!』
『分かった』
ナルホさんはすんなりミネスさんの告白を受け入れた。
『でも、ナミネはどうするの?』
『そうだね、今のナミネは君のこと嫌っているし、僕との交際は絶対認めないと思う。本当に死ぬかもしれない。でも、僕は、苦しいのにナミネは無理に生きなくてもいいと思うんだ。死にたいなら死んだらいいと思うんだ。それがナミネの幸せだと思ってる。今は君を支えることに全力を尽くすよ。ナミネのことは気にしなくていいよ』
恋は盲目と言うが、ナルホさんが恋愛でこんなにも残酷になれるなんて、少し痛々しく感じる。ナミネは真剣な表情をして見ている。
『ナルホ、ありがとう!嬉しい!私、ナルホと幸せになる!』
ミネスさんはナルホさんに抱き着いた。
落ち武者さんは一旦ここで映像を止めた。
「ミナク、お子ちゃまミネスはもう平和ボケなナルホの女だ!甘えセナと別れてもお子ちゃまミネスとは交際出来ないからね?」
「そんな……ナルホの野郎、いつの間に口説きやがったんだ。これじゃあ、セナ王女と別れられないじゃないか」
どうしてこんなにも見苦しいのだろう。どれだけ足掻いてもミネスさんとは一緒にはなれないのに。
「じゃ、今からナノハ依存ズルエヌに送るメール文書打つ」
落ち武者さんはズルエヌさんにメールを打ちはじめた。このメールがトドメになるわけか。今日は普通の話し合いのつもりが、人生をかけた話し合いになってしまった。
「じゃ、これ送る」
『ナノハ依存ズルエヌ。今すぐナノハと別れてミドリと付き合え!言わせてもらうけど、あんたの妹、これだけのことしたんだけど?どう償うつもり?まさかこのまま見て見ぬふりして僕の大切な人の人生奪う気じゃないよね?そんなことすると、あんたの大切な妹の映像と画像全て世の中にばら撒くよ?世間の目に晒されるか少年院に入れるか今すぐ答え出せ!』
いきなり知らない人からこれを送られてきたらかなりキツイだろうな。けれど、ミネスさんのしたことは犯罪だし、正直償って欲しいというのが本音。
少しすると返信が来たようだ。
「返信来た」
『妹が多大なご迷惑をおかけして申し訳ありません。ナノハには今別れるメールを送りました。妹は少年院に入れます。近々そちらに謝罪に行きます』
かなり真面目な人だな。まあ、ミネスさんがこのまま少年院で償ってくれるならナミネも安心して毎日を過ごせると思う。
落ち武者さんは続きを再生した。
映像には、地下室の拷問部屋にてナノハさんとレイカさん、ミネスさん、ナルホさん、その他武官がいた。
『ナルホ、今ズルエヌからメール来た。その女との交際は認めないよ』
ナノハさんはそれなりに怒っている様子だった。
『ナノハお姉様、僕は自分の人生は自分で決めます。ミネスとは別れません』
ナノハさんはナルホさんを引っぱたいた。
『レイカさん、お願い出来るかしら』
『ナノハ、本当にいいの?後戻り出来ないわよ?」
「構いません。ナルホがこんな女に騙されナミネを傷付けるなら現実を見せて目を覚まさせます』
『分かったわ』
レイカさんはミネスさんの拘束を解いて、ミネスさんの服を脱がした。
『やってちょうだい』
『ミネス!ナノハお姉様、やめてください!僕はただミネスと交際したいだけです!ナミネはこの世が苦しい子だから死にたいなら死ねばいいと思っただけです!ミネスをここで傷付けたらナノハお姉様に復讐します』
『やれるもんならやってみなさい、ナルホ』
ミネスさんは、悲鳴と共に5人の武官にイヤガラセされた。
『第3破られたのに私生きてる。死にたいのに死ねない!ナルホ、君を一生恨む!』
『ミネス!僕は何もしてない!ミネスのことは一生かけて僕が支える!』
ミネスさんはミドリさんの時同様、無惨な状態なのに、何もなかったかのように動いている。
『ナルホ、よくも私をハメてくれたね!お兄ちゃんに言って、ナルホの今後の幸せ全部奪ってやる!』
『ミネス、僕は本当にミネスを幸せにしたくて交際した!』
ナルホさんは突然の事態についていけないのか、大粒の涙を流した。
あれ、ナルホさんの背中にヘクタナが貼られてある。
落ち武者さんは停止ボタンを押した。
「ラルク、ヘクタナだよ!」
「そうだな。誰かが貼ったのか、自然と貼り付いたのか」
ヘクタナ。貼られた者は、貼った者を主君とし、何がなんでも従い続ける。
「ミネスが、そっとしておいて欲しいと何度も訴えるナミネさんを傷付けてしまったことは本当に申し訳なく思っています。けれど、あんな愚かな子でも僕の妹なんです」
そうだよな。ズームさんからして見れば1番見たくないし、このままにはしないだろう。その時、ヨルクお兄様とダンゴロさんが来た。
「ヨルクさん!」
「ダンゴロさん、正月からナミネさんとミネスが仲違いした部分だけ省いてください」
ズームさんは泣きながら訴えた。
「別にいいけど。それじゃあ、2人が仲違いした場面は別のもので埋めておく。ただ、忠告するなら、今後2人が仲違いしたら、また元に逆戻りだよ。辛いだろうけど、ナミネはミネスに攻撃されても我慢するしかないね」
そんな、またナミネが犠牲になるなんて。どうしてこの世はこれほどまでに理不尽なのだろう。
「分かりました。ズームさんのためにも、私が我慢します!その変わり、ヨルクさんには誰もが手出し出来ないようヨルクさんの身の安全は確保してもらえないでしょうか?」
ナミネはいつも自分のことより、他人を心配する。
「分かった。じゃあ、ヨルクの身の安全の確保はしとく。今言うけど、ヘクタナはカンザシがミネスに貼ろうとして間違えてナルホに貼ったんだよ。それから初代天使村でヨルクを毒殺した中にはミネスもいるよ。だから、ナミネのイライラは簡単には治まらないだろうね」
まさか、ミネスさんがヨルクお兄様の毒殺に協力したのか?もう何がなんだか分からなくなってきた。
「エロじじい、どういうことだ!後、強気なナミネの精神状態の安定も確保しろ!ズームの背中のアザと効力はなくしたままにしろ!」
「カンザシとセレナールがヨルク毒殺計画を立てた時、お金のないカンザシはミネスに計画を打ち明け共犯者にした上で毒草買わせ、何かあれば全てミネスに罪を擦り付けるつもりだった。けれど、ミネスは他の村に逃げた。君の力量ならナミネの精神状態安定の確保は40%だね。ズームの背中のアザと効力が消えてるのはラルクがセレナールと別れないまでね。別れたら元に戻るからね」
ミネスさんは毒草を買っただけ。それでも計画は知っている。いざとなればカンザシさんの味方につくということか。それに40%は低すぎる。ないよりマシだが。何となくミネスさんは元に戻ったに対して、これからはナミネのみ我慢というのは不公平だ。
「じゃあ、頼みは聞いたから戻るね」
ダンゴロさんは女神の湖に戻って行った。
「なあ、ズーム!お子ちゃまミネスは元に戻って今後も強気なナミネイジメるのに対して強気なナミネはそれ我慢して調和保つのは不公平だろ!あんた、自分の妹さえよければ他はどうでもいいのかよ!今すぐセリル呼ぶぞ!」
落ち武者さんもここは出るとこ出るか。
「ミネスのことは本当に申し訳なく思っています。ただ、僕はナミネさんを犠牲にはしません。ミネスがナミネさんを攻撃したら必ず庇います」
「だったら、なんで今まで傍観してた!セリル呼ぶぞ!」
「映像のような事態になるとは思っていませんでした。反省しています。今後はナミネさんを全力で守ります」
僕と落ち武者さんとズームさんでナミネを守ればナミネは壊れずに済むかもしれない。
とりあえず、正月、紅葉神社でヨルクお兄様がイタズラ犯に間違えられたことは偶然通りかかったカナコさんが証拠がないなら連れて行かせないとヨルクお兄様を庇い、ミィミさんは泣きながら諦めて去って行った。
ライオンのオリの鍵のことは、そのまま僕たちがヨルクお兄様を助けた。
グルグル妖精さんのマンションでミネスさんがナミネを叩いたことは、ナミネが泣きながら僕の手を握り、僕と朝までカラオケにいた。
ミネスさんが今日ナミネを襲わせる計画は、そのまま朝早く出て回避して来た。
今のナルホさんとミネスさんの関係は友達と言ったところだろうか。ミネスさんはカンザシさんにベタ惚れで、ズームさんの背中のアザが消えたことも知らずニンジャ妖精さんのマンションの家賃払っている。
過去は微妙に変えられている。問題はこの先だ。
今になって僕はセレナール先輩との恋愛を重視したあまり、伝説武官に辿り着けなかったことを後悔した。
僕が強くなってナミネを守らなければ。
僕は念の為、変えられる前の現実の映像をナヤセスさんとナルホさんにメールした。
『セルファからも同じ内容のメールが来たけど、僕はナミネにあんなこと言ったりはしないよ。確かな確証を掴めるまで待ってもらえるかな?』
『分かりました』
けれど、ナルホさんとミネスさんは誰が見ても惹かれ合っていた。2人が交際するもの時間の問題だろう。
「じゃ、話し合いの続きする」
その時、ヨルクお兄様が泣き崩れた。
「ナミネ……どうして……自分のお願いしないで、私の安全の確保なんて言ったの……もうナミネに犠牲になって欲しくない」
「ヨルクさん、私はヨルクさんに無事でいて欲しいんです」
こういうやり取りは気に食わない。僕がナミネの彼氏だったらナミネは自分のことだけ考えていられたのに。
「顔だけヨルク、今日はミナクと甘えセナのことについて話に来た。だから、泣いてないで、あんたもメニュー注文して話し合いに加われ!」
「ラルク、お腹すいたよ」
そういえば、ここに来てから何も注文していなかった。
「注文しろよ。ほら、ここにトマト妖精のパンケーキあるぞ」
「じゃあ、それにする」
ナミネが注文すると共に、みんなも同じものを注文した。
「言っておくけど、綺麗に別れないと一目惚れカラルリみたいなことになるぞ!」
カラルリ先輩……。あれはもう悲劇としか言いようがない。
「助けて欲しい」
「ミナクさんはセナ王女を女として見れなくなったことが原因で別れたいのですか?それともミネスさんに心変わりしたからですか?」
「分からない。けれど、ミネスに出会ってから毎日毎日ミネスのことが頭から離れない。ミネスの美人さ、ミネスの胸元、ミネスの太もも、全てが美しくて触れたいけれど、触れられないもどかしさが辛い」
遅い一目惚れというわけか。セナ王女のことは恩人というポジションだろうか。散々女遊びしてきたのに、今更初恋で戸惑うだなんてミナクお兄様らしくない。
「でも、ミネスさんとは交際は無理だと思います。いくら時間戻したりしても、これまでの経験で過去は何も変わらないことが証明されています。いずれはミネスさんとナルホお兄様は好き合うでしょう。その上でセナ王女のことはどうしますか?妊娠させてないなら今が別れ時だと思うのですが」
ナミネの言う通り、時間は巻き戻って、過去の一部が書き換えられたが、また同じことは起きるはず。
「セナ王女とはどうやって別れたらいいのか分からない。それにやっぱりミネスと交際出来ないと私はダメになってしまう」
何がダメになってしまうだ。自分の恋愛も自分で処理出来ず次に進めるわけがない。
「じゃ、今夜はお子ちゃまミネスと混浴させてやるよ」
「本当か?」
「ああ、みんないるけどな。そこでお子ちゃまミネス口説け!じゃ、ナノハナ家に戻る」
落ち武者さんは多分、セナ王女の前でミナクお兄様がミネスさんにアプローチしているのを見せつけてカタをつけるつもりだ。
僕たちはユメさんと委員長と解散したらタクシーを拾ってナノハナ家に戻って行った。
ナノハナ家に戻るなりナミネはナルホさんの部屋に行った。
「ナルホお兄様、私はもうナルホお兄様のことを兄とも何とも思っていません。私の兄はナヤセス殿だけです。一言それを言いに来ました」
ナミネは時間を巻き戻す前にナルホさんに死んでもいいと言われたことを確実に根に持っている。
「ナミネ、僕はその時のことを覚えていないし、ミネスに恋愛感情もない。ナミネのことは小さい頃から可愛がってきたし、僕が大切なのはナミネだよ。万が一ミネスと交際することになってナミネが反対したら別れるし、僕は大好きなナミネに嫌われるのは辛いな」
ナルホさんの本音ってどうなっているのだろう。一見これも本心に聞こえるけど、落ち武者さんがフェアリーングでナルホさんの本心を引き出したらどんな答えになるのだろう。
「あんた、もう既に強気なナミネの信用失ってんだよ!」
落ち武者さんはナルホさんにフェアリーングをかけた。
「平和ボケなナルホ、あんたお子ちゃまミネスのことどう思ってんだ?お子ちゃまミネスと強気なナミネ、どっちが大事なんだよ?強気なナミネがあんたとお子ちゃまミネスの交際反対して死ぬって言ったらどうするんだよ?」
「ミネスのことは放っておけない。どれだけミネスが悪いことしても僕はミネスを放っておけないし必ずミネスを助ける。ナミネよりミネスが大事。ミネスと交際することになってナミネが反対して死ぬと言ったら、ナミネは死んでもいいと思うんだ。無理に生きてなくていいと思う。ナミネが死ぬことで楽になれるなら僕も嬉しいよ。死ぬかどうかはナミネの判断だし、僕はミネスとの幸せを選ぶ」
落ち武者さんはフェアリーングを解いた。人は誰しも裏表があると言うが、ここまでの違いが出てくるのものなのだろうか。これではまるで詐欺レベルではないか。
「これがあんたの核心だ。本心ではなく核心なんだよ!せいぜい、ナノハにバレないようにしろよ!バレたらお子ちゃまミネスは死んで、後悔するのあんただから」
「そっか。セルファはこうやって人が眠っている感情らしきものを引き出して人と人とを仲違いさせてるんだね。今となってはナミネとの関係を拗れさせたミネスを憎くさえ感じるよ。大切なのはナミネなのに、ナミネの信用失って、一歩間違えればナノハお姉様に人生奪われて。正直やり切れないよ」
いったい、本心と核心てなんなんだ。核心が変えられない感情なら、ナルホさんはミネスさん意外とは恋愛をしないと言うことになる。天使村の前だってある。そんな昔からナルホさんはミネスさんのみを愛してきたのか?とてもじゃないけど信じられない。
「ナルホお兄様、私は一生ナルホお兄様を恨みます。今のお言葉ナノハお姉様に録音を聞かせます!ミネスさんがそれだけ大事ならミネスさんと心中してくれませんか?」
ナミネの目の色が紫色になっている。
「ナミネ、ナノハお姉様に話すのはやめてくれるかな?今回の件、確証はどこにもないよね?もし、あのような結末になれば、ズームさんにどうお詫びするのかな?僕は何も覚えていないし、ミネスに恋愛感情はないし、大切なのはナミネ。これがどうしても信じられないならナノハお姉様に言うといいよ。あんな形でミネスが死んだらナミネはズームさんの信用を失い、後悔して苦しむのはナミネだよ。その覚悟があるなら好きにするといいよ」
「ナルホお兄様、後悔するのはあなたです。行くよ、ラルク」
ナミネは僕の手を引っ張って窓を開けると折り鶴に乗ってナノハナ家を出た。その後のことはどうなったか、分からない。けれど、念の為、今回のことを僕はズームさんにメールをした。
『セルファさんから同じ報告が来たところです。ナミネさんのことを守ると言って守れなかったからミネスがナルホさんと交際したらミネスはレイカさんの拷問で無惨な形で死ぬだろうと言われました。ただ、僕はナルホさんがナミネさんを見捨てるとは思えないんです。でも、ナミネさんは誰が何を言わなくてもナルホさんがミネスを好きな限り、いずれミネスはまた同じ形で死んでしまうと言っていました。僕自身行き詰まっています。決して自分とミネスさえよければいいわけではありません。それでも結局はミネスが助かればナミネさんが傷付いてしまう。でも、僕はミネスのあんな無惨な姿は見たくありません。ラルクさん、僕はアザを背負います。だからセレナールさんとは別れてください』
ナルホさんもズームさんもミネスさんをナミネを見捨ててミネスさんを守りたいのならナミネが孤立してしまう。結局は恋人又は家族がよければ他人のことはどうでもいい。それが人なのだ。
ナミネはナルホさんのパンツに名前、住所、証明写真を貼って町にばらまいている。
「ナミネ、キクスケさんに、ミネスさん、ナルホさん、ズームさんの3人を死ねない身体にしてもらえ!」
「うん、分かった」
ナミネはキクスケさんにメールし、3人を死ねない身体にしてもらった。もう手段は選べない。この3人が死にたいくらい負いつまった時に生きてもらうしかない。ナミネのためにも。
『そうですか。ナルホさんはナミネを死なせてミネスさんと一緒になると言っている。ズームさんはナミネが傷付いてでもミネスさん優先すると言っている。ナミネのことなんだと思っているんですか!セレナール先輩とは別れません!お2人がナミネを大切にしないと、僕はナミネと2人で転生します。その後のことはあなた方で楽しく生きてください』
『待ってください!ナミネさんに会わせてもらえませんか?転生だけはどうかやめてください』
ぼくはこのやり取りをナルホさんと落ち武者さんに転送した。
『ラルク、そのことなんだけど、平和ボケなナルホはいきなり強気なナミネに嫌われてかなり滅入っている。セリル呼んでフェアリーングかけてもらったら、ナミネが死ぬくらいならミネスとは交際しないって言うんだ。もうわけが分からない』
いったいどういうことなんだ。まるで誰かが裏で糸を引いているような展開じゃないか。お武家連盟会議にかけてナミネを傷付けた人たちに罪を負わせたい。けれど、今それをするとナミネが恨まれ余計にナミネが傷付いてしまう。
『ズームさん、ひとつお聞きします。もし、あなたがナミネの彼氏ならどうしていましたか?』
『もし、僕がナミネさんと交際していたならミネスよりナミネさんを選んだと思います。けれど、今はそうではないので、やはりミネスの命を無駄にすることは出来ません。すみません。ただ、ナミネさんに会わせてもらえませんか?』
ナルホさん、ズームさん共に彼女を選ぶということか。けれど、ナミネはナミネでちゃんと生きている。ナミネを見捨てることは僕が許さない。
『ラルク、キクスケから聞いたんだが、いくらお子ちゃまミネスを死なせたくなくても、強気なナミネが傷付けばどの道お子ちゃまミネスは死ぬらしい。ズームも平和ボケなナルホも十分反省してる。戻ってこい』
誰が裏で糸を引いているのか分からないが、もうミネスさんは既に死ねない身体になっている。だとしたら、ナミネを会わせる必要はない。けれど、神様呼び出しカードを持っているヨルクお兄様がナノハナ家にいる。不利な種は詰んでおかないと。
「ナミネ、神様ブロック出来る番人呼び出せ!」
……
あとがき。
久々のラルク視点です。
ここまで来てラルクが本当に愛している人が分かりましたね。
2人のすれ違いが切ないです。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。