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日常のこととかオリジナル小説のこととか。
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ashita
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性別:
女性
職業:
地主(土地貸してます)
趣味:
漫画やアニメを見るのが好きです。最推しはフーディーニ ♡
自己紹介:
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ブログ、もう書かないと思ってました。

けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。

小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。

純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。

元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。

ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。

小説、ぼちぼちマイペースに書いてゆきます。

よろしくお願い致します。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

お知らせ。

イラストは現在「ナノハナ家の日常」に載せております。サイドバーにリンクあります。

また、「カラクリよろずや」にて無料のフリーイラスト素材配布もはじめました✩.*˚

フリーイラスト素材も増やしていく予定です(*'ᴗ'*)

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

模倣・無断転載などは、ご遠慮ください。

ブログの小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。

小説・純愛偏差値に関しましては、武家名・貴族名(程度による) / 及び、武官の階級 / 扇子・羽子板・花札・百人一首・紙飛行機などのアイテム使用方法の模倣の一切を禁じております。

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X @kigenzen1874

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〈資格履歴〉

2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
→漢方コーディネーター 合格
→薬膳調整師 合格

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〈資格証明バナー〉

鉛筆デッサンマスター®認定試験資格取得証明
絵画インストラクター資格資格認定証
宝石鑑定アドバイザー資格認定試験資格取得証明
鉱石セラピスト資格資格保持証明
茶道アドバイザー資格認定試験資格取得証明
お点前インストラクター資格資格認定証
着物マイスター®資格認定試験資格取得証明
着付け方インストラクター資格資格認定証
サイキックアドバイザー®資格資格証明
サイキックヒーラー資格資格保持証明
アンガーカウンセラー®資格資格保持証明
アンガーコントロール士資格資格認定証
漢方コーディネーター®資格認定試験資格保持証明
薬膳調整師®資格認定試験資格保持証明
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純愛偏差値 未来編 一人称版 42話

《ナミネ》

朝目が覚めると私はヨルクさんに強く抱き締められていた。
グルグル妖精さんのマンションから戻って2日後だった。ヨルクさん幸せそうに寝てる。

今日は、森の湖に行く日。
私はヨルクさんを起こさないように登山服に着替えようとした。
「ナミネ……」
あ、起きちゃった。
「おはようございます、ヨルクさん」
ヨルクさんは私を離さなかった。また、紅葉の香りが強くなる。私はヨルクさんの背中に腕を回し、何度もヨルクさんを好きだと言った。
朝から体力を使ってしまった。

ヨルクさんは部屋にいる時はずっと私にくっついている。特に映像撮影が終わって戻って来てからは殆ど離れない。
交際前のヨルクさんからじゃ考えられない。

「ヨルクさん、今日は森の見ずに行くので早く着替えないといけません」
「うん」
あれ、離してくれない。どうしたんだろう。
「ヨルクさん、私着替えます!」
「ナミネ……ナミネは、最近出会った芸能人たちに推しとかいるの?」
「いないです」
「そっか」
え、どうして悲しそうにするの?
「とにかく着替えてください!私も着替えます」
「分かった」
私とヨルクさんは登山服に着替えた。ヨルクさんは私の脱ぎ捨てたルームウェアを洗濯カゴに入れた。
長旅になりそうだし、山登るから髪、お団子にしておこっと。
「ナミネ、可愛い」
「ヨルクさんは今日もダサイですね!」
「今、朝食作るからね」
ヨルクさんは部屋を出て階段を降りて行った。私はテレビを付けてソファーでゴロゴロした。すると、落ち武者さんが入って来た。
「え、何でいるんですか?」
「昨日泊まったけど?」
「い、いつですか!」
全然知らなかった。でも、どうしているの?というか、私とヨルクさんがいるところ、ナノハナ家かクレナイ家に住み込んでいるような……。
「学校から帰ってそのまま来たけど?」
「そ、そうですか」
「あんたら、朝から激しいな」
「み、見てたんですか?」
落ち武者さんがいると、何だか身が狭くなるなあ。
「どうだろうね?」
てか、落ち武者さん、もう登山服に着替えてる。
ヨルクさんが朝食を持って入ってきた。
「ナミネ、朝食出来たよ……って、何で落ち武者さんいるの?」
落ち武者さんは私とヨルクさんの朝食を半分ずつお皿に入れた。
「僕のことは気にしなくていいけど?」
「ねえ、最近、私とナミネのいるとこに泊まってるよね。居候してるの?どうして自分の家に帰らないの?」
「まあ、強気なナミネと2人きりになりたいからって、そう怒るなって。2人も3人も変わんないだろ」
「と、とにかく食べましょう!戻りはいつになるか分かりませんので」
ヨルクさんは、すっかり不機嫌になってしまった。けれど、不機嫌ながらも朝食を食べた。
落ち武者さん、やっぱりセレナールさんのことで家に帰りたくないのかな。セレナールさんも、頻繁にクレナイ家に泊まっているわけでもないし。でも、森の湖に行くってことは、ラルクがまだセレナールさんを愛している証拠だと思う。ラルク、少しでも遠い過去のこと分かるといいよね。
私もヨルクさんの作った朝食を食べた。
「2人とも準備はしっかり出来てるか?」
「はい、昨日ヨルクさんと2度確認しました。ラルクがいるので遭難はしないと思います」
「じゃ、30分後に紅葉駅行く」
本当に落ち武者さん、どうして最近居候みたいなことしているのだろう。あ、そういえば、グルグル妖精さんのマンションで、みんなが遠い前世の大人の私の映像見た時に綺麗とか美人って言ってたな。本当なのかな。私、大人になったら綺麗になれるの?
「あの、私って大人になったら綺麗になるのでしょうか?」
「僕は綺麗だと思うけど?」
うーん、今からだと考えられないや。
「ナミネはずっと可愛いよ。大人になるにつれ、可愛さは増すけど、私は2歳の頃からナミネのこと、ずっと妹のように可愛がってきたから。ナミネはいつまでも可愛いよ」
可愛い……か。ヨルクさんの中では私って、成長しても子供なのかな。早くヨルクさんと釣り合うような大人っぽさが欲しいんだけど。
朝食を食べ終わると、私たちは集合場所である紅葉駅に向かった。

紅葉駅に着くと、みんな登山服を着てリュックを背負っていた。
え、エルナさんも行くの?
「あの、エルナさんも行くんですか?」
「ええ、そうよ」
落ち武者さんが行くからかな。でも、帰りはいつになるか分からないから、お嬢様が行くのは少し心配だ。

みんなは森の湖駅までの切符を買うと電車に乗った。
森の湖駅から森の湖までは、一般人なら3日はかかると言われている。今では行く人なんていなくなってしまったけど。
森の湖に入ると、時間は古代に巻き戻された空間になり、2時間以内に出なければならないらしい。
2時間。その間に現代に繋がる何かを見つけなければ。
「皆さん、森の湖を出て山を下りたら一度どこかのレストランに入りますが、それまでは非常食になります。具合が悪くなったらすぐに知らせてください」
「分かったわ。私は体力面は大丈夫だけど、セレナールは手術からまだそんなに経ってないのに大丈夫なの?」
やっぱりセナ王女はサバイバルには慣れてる。武家のみんなも大丈夫だろうけど、やっぱり、それ以外の人は心配である。
「ええ、大丈夫よ。当時の私見てみたいもの」
セレナールさん、髪下ろしてる。登山服は登山服でもレギンス吐いてないし。
「ヨルクさんは大丈夫ですか?」
「私は大丈夫だよ」
「ナミネ、森の湖を下りるまでは完全なサバイバルだ。誰がいつどうなるかは分からない」
「うん、そうだよね」
誰か1人でも熱を出したりしたら、最悪、進むメンバーと戻るメンバーに分かれるかもしれない。誰も倒れたりしないと良いのだけど。
「皆さん、携帯のバッテリーは2つ持っていますか?」
「ええ、持ってるわ」
「私は4つ持ってるわよ」
「カナエも持ってます」
(省略)
妖精村の携帯は日本村のよく分からないスマホとかいう端末とは違ってガラパゴス携帯なのである。韓国村が日本村より遅れているように妖精村も日本村に遅れているのだ。妖精村もいつかバッテリーがすぐになくなるスマホとかになるかと思うと私は正直いや。今の暮らしだって便利が便利とは感じなくて、昔の空気を懐かしむのに。
「ナミネ、いちいち聞くな。準備が出来てないヤツはそれまでのヤツだ」
「分かったよ、ラルク」
ラルク、気を張りつめているの?セレナールさんが森の湖にいなかったらって不安になっているの?
「ラルク、そういう言い方ないんじゃないの?ナミネはみんなのこと心配してるんだよ」
「ヨルクお兄様は引きこもりだったから何も知らないでしょうけど、サバイバルは一人一人が自己管理しなくてはいけません。それが出来ないなら、森の湖に行く資格さえないのですよ」
「ねえ、ラルクっていつも上から目線だよね。困ったら助け合いなんじゃないの?」
ヨルクさん、気持ちは分かるけど、ラルクの言うように、自己管理が出来ないと、その人は悪い言い方だけど足でまといになっちゃうんだよ。
「あんたら、兄弟喧嘩で体力無駄にすんな」
今日のラルクは精神的に余裕がない。ラルクがみんなを引っ張らないで誰が引っ張っていくの。私は不安になっていた。
30分ほど経って終着駅の森の湖駅に着いた。みんなは、駅員さんに切符を渡して改札口を出た。

いよいよ勝負の時だ。私も気を引き締めた。
駅から15分ほど歩いたら、森の入り口が見えてきた。ここを通ればもう引き返せない。
「痛い!」
セレナールさんが分厚い草に足が当たってかすり傷を負った。
「あの、誰か予備のレギンス持ってませんか?」
「持ってないわね」
「私も……」
「カナエはありますが、セレナールとではサイズが合いません」
「というか、森に入るのに素足なことが準備不足なんじゃない?」
困ったな。森の湖までは、まだまだあるし、道はどんどん険しくなる。草はみんなの太ももまでは生えてるし、このままだとセレナールさんが足にたくさん傷を負ってしまう。
「セレナール先輩、テントを張るところまでは我慢してください」
「ラルク……痛いわ……」
「セレナールさん、今なら引き返せます。帰ったほうが良いのではないでしょうか?」
「ちょっと慣れてるからってナミネってすぐに上から目線なのね」
セレナールさんは帰る気はない。だとしたら、私もこれ以上心配はしない。長旅での無駄な体力は使いたくない。
私は黙って歩いた。
30分ほど経っただろうか。ラルクが立ち止まって地図を確認しはじめた。
「ラルク、今どの辺?」
「ここら辺だ」
え、殆ど進んでない。これだと、本当にいつ帰れるか分かんないよ。

1時間も経つとユメさんが息切れしはじめ、セレナールさんの足は、どんどん傷が増えていた。ハーフソックスか。せめて靴下がもう少し長かったらな。
てか、セレナールさん具合悪そう。
その時、ヨルクさんが私の汗を拭いた。
「あ、すみません」
「ナミネ、大丈夫?」
「私は平気です。でも、ユメさんが息を切らしてます」
「ユメさん、酸素ボンベ持ってますか?」
えっ、まだ早いよ。ここで使ったら後は誰かに借りるしかない。
「持ってるわ」
「辛いなら使ったほうが良いです」
ユメさんは酸素ボンベを使った。これで、酸素ボンベが切れたら、体力のある誰かから借りるしかない。ヨルクさんも、こういうところは、あまり経験ないのかな。

1時間半経つと落ち武者さんが蹲った。
「落ち武者さん!」
「先に行け!」
「セルファは身体が弱いのよ。私が見てるわ」
「ダメです。遭難してしまいます」
私は落ち武者さんのリュックを腕にかけ、落ち武者さんを背負った。
「ナミネ、落ち武者さんの容態は?」
「疲労だよ、ラルク」
「ねえ、1番小さいナミネが落ち武者さん背負ったらナミネまで倒れちゃう」
「だったらヨルクお兄様が背負ってください」
ラルク、何をそんなに苛立っているの?
「ナミネ、私が背負う」
「私は大丈夫です」
ヨルクさんだと体力が持たない。
「だったらせめて落ち武者さんの荷物だけでも持たせて」
うーん、どうしよう。心配してくれるのは嬉しいけど、2人分の荷物を持つって簡単じゃないんだよな。
「いえ、私が持ちます。ヨルクさんは無事に森の湖に辿り着くことだけを考えてください」
「ナミネ、私そんなに役に立たない?」
「そうじゃないです!全体を考えてのことです!」
ヨルクさん、こんな時に不安にならないでよ。ヨルクさんは戦争経験とかないのだろうか。
「そっか、ナミネ、無理しないでね」
「はい」
「強気なナミネ、あんた先に行け!」
「ナミネ!落ち武者さんは必要だ!背負って行け!」
「言われなくてもそうするよ!ラルク!」
こんなところで仲間割れするわけにはいかない。けれど、ユメさんが苦しそう。
「ラルク、足が痛い!助けて!」
「セレナール先輩、甘えないでください。自業自得でしょう」
セレナールさんの足、かなり血が出てる。
「ラルク、セレナールさんに包帯巻いてあげて!」
包帯があれば、少しでも切り傷は減る。
「そんなの自分で巻けばいいだろ」
どうして……。セレナールさんはラルクの彼女なんだよ。
「セレナールさん、座ってください」
え、どうしてヨルクさんがセレナールさんの面倒見るの?私の心はモヤモヤしていた。ヨルクさんはセレナールさんの足を消毒して包帯を巻いた。
「ありがとうヨルク」
もう、どうしてラルクが手当てしないの。
「セナ王女、休憩スポットはどの地点でしょうか?」
「3時間、そろそろね」
「いえ、このまま進みます」
「ダメよ!お父様が言ってたわ!どれだけ体力があっても休憩は必ず取らないといけないって!ここで休憩するわ!」
やっぱりセナ王女が1番経験豊富。出来れば体力ある経験者のみで来るのがベストなんだけどな。登山はデパートに行くのとは訳が違うし。
「分かりました。休憩します」
はあ、良かった。ノンストップとか流石にありえないよ。
みんなはリュックからシートを出して、そこに座った。私は落ち武者さんに水を飲ませた後、落ち武者さんを横にした。
「ナミネ、落ち武者さんの容態は?」
「かなり疲れてる。でも、一晩寝れば回復はすると思う」
ラルク、セレナールさんも大変なんだよ。
「酸素ボンベなくなったわ。誰か分けてくれないかしら?」
「ユメさん、ハッキリ言って面倒。こういうところは初心者が来るところではない」
いくら経験者だからって、そういうの酷くない?
「あの、アルフォンス王子、森の湖は、ここにいるみんなの手がかりを探すために向かってるんです!いくら経験者だからって、未経験者を悪く言わないでください!」
「私は事実を言ったまでだ」
何て冷たい人なのだろう。
「ユメ、僕の使って」
「ありがとう、クラフ」
ユメさんは委員長の酸素ボンベを使った。
3時間。現時刻は13時過ぎか。でも、先はまだまだある。夕方になる前にテントだって張らないといけない。
「落ち武者さん、もうすぐですよ」
「ナミネ、勝手なこと言うな!先はまだまだある!」
「ねえ、ラルク、どうして1人で仕切るの?実際、もうすぐテント張らなきゃいけないでしょ!」
「ヨルク、黙ってろ!」
ああ、みんな言葉足らず。私もだけど。ラルクの言う通りだけどさ。でも、落ち武者さんは仲間じゃん。
「ヨルクさん、ラルクが正しいんです。落ち武者さんはそこまでではありませんが、命がかかった場合、いくら救助が必要でも、死にそうでも、苦しそうでも、その人に大丈夫とか、必ず助けるとかそういうこと言っちゃいけないんです。保証なんてどこにもないからです」
「でも、それはマニュアルだよね。私は必ずしもマニュアルが正しいとは思わないよ」
そうなんだけどさ。ダメなんだよ、ヨルクさん。窮地に立たされた人の精神を安定させたら。
「ヨルクさん、生きるか死ぬかの時、人は気を張りつめます。そんな人に大丈夫、必ず助けると言ってその人の精神を安定してしまえば、その人の張り詰めた気は緩みます。そうなれば、その人は助かろうというより、助かると思い込み、逆に気が弱くなり死に直面するんです。不安いっぱいで気を張りつめているからこそ、その揺るぎない精神が人を救うんです」
「あんた、伝説武官研修生の時に教わったのか」
「はい」
人の精神は矛盾している。窮地な時こそ、優しい言葉をかけて欲しいだろうけど、人というのは崖っぷちに立たされた心で自分自身を救うのである。戦に行く軍人がヘラヘラしていられないように、生きるか死ぬかの窮地に立たされた人も同じだ。気が緩んだ瞬間に、その人の精神は弱ってしまう。死にそうな人を安心させてはいけないのだ。助かるまでは何がなんでも気を緩めてはいけない。不安定な張り詰めた心こそが、皮肉にも助かる道を作るものだ。
「そっか……」
え、ヨルクさん泣いてる?私は咄嗟にヨルクさんの涙を袖で拭いた。
「ヨルクさん、泣かないでください。落ち武者さんはまだ生きてます」
「おい、勝手に僕を今にも死にかけの人に仕立てんなよ」
「ずっと不安だった……。ナミネ、芸能人ともすぐに打ち解けるし、ナミネ、歌が上手い人やイケメン俳優を好きになるんじゃないかって。私、強くないし、芸能人みたいにイケメンじゃないし、何の役にも立たないから……」
何故、自分がイケメンなことに気付かない。ヨルクさんの鈍さには着いていけないものがある。
私はただ友達として話していただけなのに。
「ヨルクさん、私が好きなのはヨルクさんです!芸能人な方々には友達として接していました。私は、優しくて、いつも美味しい料理作ってくれて、生理前にナプキン渡してくれて、私のこと心配してくれるヨルクさんが好きなんです!この先もヨルクさんしか見ません!」
「ナミネ……」
ヨルクさんは昔から泣き虫だ。表面上はクールを装っているけど、私が支えないとヨルクさん、すぐに泣いちゃう。
その時、セレナールさんが倒れた。
「セレナールさん!」
凄い熱だ。落ち武者さんより酷い。毒のある草がセレナールさんの足を傷付けたのだろうか。だとしたら、今すぐ毒を抜かないと。
「ラルク!セレナールさん、凄い熱!」
「本当に面倒のかかる人だな」
どうしてそんなこと言うの。もうラルクが分かんないよ。
「毒草です。今すぐ包帯を解いて毒を抜かなければなりません」
やっぱり毒が体内に入っていたのか。どうしてラルクはセレナールさんにレギンスを履かせなかったのだろう。
カナエさんはセレナールさんの包帯を解いて、足に塗り薬を塗ってまた包帯を巻いた。そして、解熱剤を飲ませた。
カナエさん、遠い前世、紀元前村にいた時の感染症の看病のこと今でも忘れてないんだ。
「セレナール先輩のことは、花火上げてここに置いてく」
「ダメだよ、ラルク!そんなことしたら、命が危ないよ」
「だったら、ナミネが落ち武者さんとセレナール先輩を連れて行け!」
「それは無理があるわ!2人も担いだらナミネの身体が持たない!」
うーん、どうしたらいいの。どうしてラルクがセレナールさんを背負わないの。
「カナエがセレナールを背負います!」
「カナエ、セレナールのことは放っておこう。私はカナエの身体のほうが心配だ」
誰もセレナールさんを背負わないならどうするの。こんなところに置いていくと夜が危ないし。
「私がセレナールを背負う」
カラルリさん……。良かった。これで、薬が効いてセレナールさんの状態が回復するのを待つだけ。

次の地点でテントを張る。
私たちは再び歩き出した。

……

あとがき。

一旦区切ります。

走り書きのほうでは、割と早く森の湖に着いたのに、ここでは何故か長いです。セルファが倒れてセレナールは熱出すし。
走り書きのまんまとはいきませんね。

果たしてナミネたちは、無事に森の湖に辿り着くことが出来るのでしょうか。
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純愛偏差値 未来編 一人称版 41話

《ヨルク》

グルグル妖精さんのマンションで、カンザシさんと私は弾き語りをした。
正直なところ、私はかなり不安に陥っていた。ラハルさんはイケメンだし、何だかよく分からないけどカンザシさんと双子レベルだと言われるし、ナミネが芸能界に染まって、収入のいい芸能人に惹かれてしまわないか。思うほどに胸が痛んだ。

ナミネのしたいことは応援はするつもりである。でも、ニンジャ妖精さんやサムライ妖精さんがいる中、やっぱり不安だった。カンザシさんに弾き語りしてもらっていた時のナミネは凄く嬉しそうだったし、見ているだけで胸が張り裂けそうだった。

ナミネを取られたくなくて少しナミネに素っ気なくしてしまっているかもしれない。こんなことではダメだ。私のつまらない嫉妬でナミネの人間関係が狭くなってしまっては逆にナミネに嫌われてしまう。

私はナミネの彼氏なのだから、もっと堂々としていたい。

「あの、皆さんの好きなタイプってどんな人ですか?」
ナミネは社交的だから、知り合ってまもない人とでもすぐに打ち解けてしまう。
「僕は、黒髪の腰まであるロングヘアで身長は157cmくらいでスタイルいい思いやりのある女性かな」
「難しい例えですな。元カノさんの写真見せてもらえますか?」
「いいよ」
ラハルさんはナミネに元カノさんの写真を見せた。どんな人なのだろう。やっぱり綺麗な人なのだろうか。
「ふむふむ、確かに黒髪のロングヘアですな。けれど、腰まで長くはありませんな」
「この人とは見た目じゃなくて気が合ったから交際したんだよ」
気が合うか……。私とナミネはどうなんだろう。小説のことはよく話すけど、ナミネは昔の漫画ばかり見てるし、私は深夜アニメを見ていて、聴いている曲も全然違う。
「僕はナミネさんみたいに可愛くておっとりした女の子が好みです」
「カンザシさんってお世辞下手ですね」
ナミネは笑いながらカンザシさんの肩を軽く叩いた。
ん?他のメンバーさんの顔が青ざめてる?どうしてだろう。
「僕もナミネさんみたいに愛嬌があって可愛らしい女の子が好みです」
やっぱり、カンザシさんとレオルさんはナミネのことが好きなんだ。
「ふむふむ、レオルさんは私に興味があるのですな」
こういうやり取り不安になる。カンザシさんは音楽の才能あるし、レオルさんは俳優業もしているし。こういうところに住めるのは、相当稼いでいるのだと思う。大御所になれば、VIPクラスだ。ナミネは何もない私をどう思っているのだろう。
「ロクメさんとシュリさんはどのような女子が好みですかな?」
あれ?この間は何だろう。答えたくないのだろうか。
「エルナさんですかね」
「僕もエルナさんかな……」
「あなたたち、あからさまな嘘ってすぐにバレるわよ?」
え、嘘なの?エルナって、クラスでもそこそこ人気だし、モテるほうなんだけどな。
「僕はカナエさんです」
フタバさんって、可愛らしい系が好みなのか。
「見る目がありますな。カナエさんは家事のエキスパートなのです!結婚すれば、毎日尽くしてもらえますぞ!」
「悪いけど、カナエは私の彼女だから誰にも渡さない」
アルフォンス王子ってハッキリ言うよね。
「なあ、カンザシとレオル、あんたら、これ見ても強気なナミネが好みだと言えるのか?」
突然落ち武者さんはある映像を再生した。

カラーだけど、映像はそこそこ古そうだ。
伝説最上級武官の制服を着た25歳くらいのナミネが更衣室で、脱いだ服をそのままにして出ようとしていた。そこへ、同僚らしい女の子が入って来た。
『ナミネ係長、またですか。これだと、踏んでしまうじゃないですか』
『でも、めんどくさいですし』
『本当、仕方ないですね』
部下?らしき女の子はナミネの脱ぎ捨てた服をロッカーに入れた。

ナミネは更衣室から出てキッチンに行くと、置いてあるお菓子をポロポロ零しながら食べた。
『あ、部長!私もコーヒーお願いします!』
『ナミネ君は人使いが荒いな』
部長は苦笑しながらナミネにコーヒーを入れた。ナミネはコーヒーをポタポタ落としながら飲んだ。

その時、研修生の19歳くらいの若い女の子たちが来た。
『はあ、どっかにいい男転がってないかな』
『え、もう既に彼氏いるじゃん』
『駆け出しミュージシャンなのよ!これじゃあ、友達にも紹介出来ないし将来が不安だわ』
『私も彼氏バイトだけどさ、でも、まだ結婚て歳でもないよね』
『あ、玉の輿に乗りたいなら、こういうパーティーに参加してみてはどうですか?』
ナミネは突然若い子の会話の輪に入っていった。若い研修生たちは、ナミネのパンフレットを眺めた。
『ナミネ係長、婚カツ云々の前に零したお菓子とコーヒー、ちゃんと片付けてください!それに、ナミネ係長みたいにだらしない女だと彼氏に振られますよ?』
『えっ、でも、私の彼氏、毎日家事してくれているんです』
『その彼氏はニートなんですか?』
『時計騎士です』
『えっ、時計騎士!?エリートじゃないですか!写真見せてくださいよ!』
ナミネは部下の女の子に写真を見せた。
画面からでは見えない。どんな人なのだろう。
『めちゃくちゃイケメンじゃないですか!年齢はいくつですか?』
『28歳です』
『はあ、ナミネ係長みたいな美人はだらしなくても、すぐにエリート捕まえられるんですね』
『駆け出しミュージシャンのコンサートで知り合ったんです。出会いはどこに隠れているか分かりませんぞ、若者よ!』
『私、パーティー行きます!』
『私も!』
『私も!』
若い女の子たちは、ナミネが手に持ってるパンフレットを受け取った。
『さて、今日も気合い入れて頑張りますぞ!』
映像はそこで途切れていた。

「まあ、あんたらが前世信じるかはあんたらの判断に任せるけど、今と面影あんだろ」
ナミネは確かに伝説武官をよくしていた。というか、プライベートだけでなく、職場でもだらしなかったの!?
「ナミネさんてチャーミングですね。前世の記憶らしきものはたまに夢で見ます。僕は家事もやってますし、ナミネさんが一生懸命働くなら支えたいと思います」
レオルさんはやっぱりそうか。人が良さそうだもんな。
「まるで、さっきラハルが言ってた好みの女だな。ラハルって面食いだよな」
「普通にさっきの映像の人、僕はかなり好みだけど」
ナミネは成長するにつれて可愛さが増していく。今は幼いけど、高校生にもなれば、今よりずっと可愛くなるだろう。
「僕も前世はあると思っています。大人になったナミネさんはとても綺麗ですね。ナミネさんほどの美しさならモテるでしょう。僕もめちゃくちゃ好みです」
「カンザシこそ、面食いなんじゃないのか」
ラハルさんもナミネに興味があるのだろうか?クールだから分からない。
「僕はただ好みだと言っただけだ。カンザシはいちいち突っかかるからめんどくさい」
ラハルさんとカンザシさんは仲が良くないのだろうか。
「てか、セレナールさんも美人だけど、さっきの映像の女めちゃくちゃ美人!一度でいいから、あんな美人と交際したいなあ」
ルイクルさん、やっぱりセレナールさんのこと、かなり狙ってる。芸能人から好かれるほどの美人さって……。
「僕もセレナールさんがめちゃくちゃタイプだけど、さっきの映像の人、美人すぎる。お持ち帰りしちゃいたいな」
ヨリスケさんまで……。
「僕もセレナールさんが綺麗すぎると思うけど、さっきの映像の人のほうが綺麗な気がする」
セイスケさんも……。
やっぱり不安になってくる。今でもナミネ可愛いのに、大人になるにつれ、どんどん可愛くなるから、街を歩けばよく声かけられてたし、伝説武官の時も同僚の憧れの的だったし、彼氏は私なのに、そんなの無視するから、ナミネが誰かに取られてしまわないかいつもいつも不安だった。
現世でもやはり同じ悩みは出てくるのか。
「私からしたらナミネはやっぱり妹同然だから、幼く見えるな」
「私もミナクさんのことは兄同然の存在なので、これからもずっとそうだと思います」
ミナクお兄様も小さい頃からナミネと一緒にいたからなあ。
「じゃ、顔だけヨルクと別れたら僕がもらってやるよ」
「落ち武者さん冗談キツすぎます。落ち武者さんは仲間なので恋愛対象には入りませんよ」
そうだったんだ。ナミネ、落ち武者さんには結構懐いてるけど、恋愛対象には入らないのか。良かった。
「振られたわね、落ち武者さん」
「別にもう恋なんてずっとしてないけどね?」
「あの、ナミネさんの彼氏ってラルクさんじゃないんですか?」
えっ、さっきセレナールさんがラルクと交際してるって話してたのに、どうしてカンザシさんはナミネの彼氏がラルクだと思ったのだろう。スタジオでナミネとラルクまたイチャイチャしていたのだろうか。
「あ、ラルクは幼なじみです。私、ヨルクさんと交際してるんです」
「え、そうだったんですか。何か意外です」
「あ、セナ王女はラブリーフェアリーなどのサイトを彼氏に見られるのいやなんですけど、皆さんは見てますか?」
もう、ナミネどうしてそんなこと聞くの。私はナミネの幼さに心が振り回されっぱなしだった。
「僕はそういうのは全く興味ありませんが、ラハルとレオルはガッツリ見てます」
「えっ、意外です。カンザシさんが1番見てるかと思いました」
え、またニンジャ妖精さん顔が青ざめている。どうしたのだろう。
「ナミネさん妄想しすぎですよ。実際はラハルとレオルが興味ありありですよ」
「カンザシって、堂々と嘘つくよね。そういうところ嫌い」
「もう末期だね」
カンザシさんの言ってることは事実でないということなのだろうか。何だか、この関係ややこしい。
「レオル、ナミネさんの前だからって、いい子ちゃんぶっても意味ないぞ。対して歌も上手くない演技も下手なくせに、いかがわしいサイトだけはちゃっかり見てるもんな」
「でも、そういうもんじゃないかしら。クラフは表では優等生な委員長だけど、高校に上がる頃には普通に見てるし」
「ユメ!」
ナミネが変な話題振るから、空気乱れたけれど、やっぱりみんな歳頃だなって感じてしまう。けれど、男子トークにグイグイ入っていくナミネもナミネだと思う。
「危ないですなあ。セナ王女はカラルリさんのラブリーフェアリー閲覧を知ってカラルリさんの携帯を真っ二つにしたのですぞ!」
「女性からしたらアウトなサイトって感じですか?」
「そりゃそうよ!あんなの浮気だわ!彼女がいるなら見る必要ないもの」
セナ王女って気が強い。私だったら絶対彼女にしたくないタイプ。
「ということは、レオルとラハルはアウトってことですね」
「本当に見てるなら完全アウトね。彼女いない時期なら仕方ないかもしれないけど、彼女出来たなら見るのやめないと別れを切り出されるわよ」
その時、お手伝いさんがたこ焼き器に混ぜた材料を流し込んだ。たこ焼き器か。一台あったらナミネが喜びそう。
「レオルもラハルもロクメもシュリもほどほどにしろよな」
え、何か増えてる?
「ぼ、僕はそんなに見てないよ」
「僕も忙しいし」
カナエさんがたこ焼きをひっくり返すなり、私もひっくり返しはじめた。そして、お皿に入れた。
「はい、ナミネ、たこ焼きだよ」
「ありがとうございます、ヨルクさん」
「熱いから一気に食べないでね」
「はい」
みんなはたこ焼きを食べはじめた。このたこ焼き、ダシが効いてる。ソースなしでも食べれそう。
「あつつ……ねえ、ラルク、桜木町の鹿の公園って踏み場ないよね」
「まあ、仕方ないだろ。放し飼いだし」
「もう、ナミネ、吐き出さないで。食事中に変なこと言わないで」
私はナミネの吐き出したたこ焼きをほぐした。どうして鹿の話なんかするの。
「あんた、強気なナミネの保護者かよ。まだ子供なんだし少しは自由にさせてやれ」
「でも、ナミネが下品なこと言うから」
「強気なナミネは自分から話しかけて、みんなも楽しんでるだろうが。何も話さないあんたと違って」
はあ、結局は場を盛り上げた人の勝ちみたいな展開か。確かに私はナミネと違ってあまり人に話しかけたりしないけど……。
ナミネがみんなに話しかけるほど私は不安になっているのかもしれない。それにしても、手紙を送ったと聞いてるけど、普通芸能人って、一般の人に返事とか返すものなのだろうか。
不安になりたくないのに、ナミネの社交的さが私を不安にする。
その時、突然落ち武者さんが、シュリさんの袖をめくった。
え、タバコの押し当てた跡?
「あんた、これ誰にされた」
「また、タツマキ妖精さんですか?ラルク、締めようよ」
もう、締めるなんて軽々しく言わないでよ。
「まあ、本当にタツマキ妖精さんならな」
ナミネはシュリさんの手に薬を塗った。
「シュリさん、イジメられてるんですか?」
「え、えっと……」
ん?どうして言わないのだろう。タツマキ妖精ってメンバーがそんなに怖いのだろうか。
「1つ言うならタツマキ妖精はカンザシしか標的にしてないけどね」
え、どういうことだろう。巻き込まれたのだろうか。
「ラハル、どういうことだ」
「ニンジャ妖精がデビューしたての頃だよ。タツマキ妖精とテレビで共演した時、カンザシがタツマキ妖精に『歌は下手なのにどうして有名になったんですか?』て聞いて、その後、カンザシはタツマキ妖精からイジメの的にされたんだよ」
芸能界の裏事情とかよく聞くけれど、イジメってやっぱり気分が悪い。少なくとも私はいい気はしない。
「なるほど。芸能界あるあるってわけか。シュリ、あんた、タツマキ妖精にされたのか?」
「あ、いえ、街で知らない人とぶつかった時に……」
何だか歯切れが悪いな。
「こんなに打ち明けられないなんて、まるで犯人がこの中にいるような感じに思えるね」
「え、でも、みんな仲間じゃないですか」
その時、伝説武官が現れた。階級はどのくらいだろう。伝説武官は真っ先にカナエさんを狙った。やっぱり、アルフォンス王子と交際する限り狙われ続けられるのか。
「ラルク、落ち武者さん!」
「はいよ」
落ち武者さんが伝説武官を扇子で吹き飛ばした後、ナミネは百人一首を全て投げた後、花札で一人一人を拘束した。はあ、私もナミネほどの力量があれば……。
ラルクは羽子板で、1人の肩を叩いた。
伝説武官は悲鳴をあげた。
「あんたら、狙いなんだよ」
「言わないなら全員を羽子板で叩きます!」
「貴族のお嬢様からアルフォンス王子の女の人生壊せと頼まれた」
やっぱりカナエさん、色んな人に妬まれてるんだ。5人雇ったってことは少なく見積って5000万円かな。1人いくらか分からないけど。
「あんたら皇室送りにする」
「待ってくれ!」
「給料は前払いされてるだろうがよ!それで当面生きてけ!」
そう言うと落ち武者さんは問答無用で、伝説武官を皇室送りにした。その時、カンザシさんとレオルさんがナミネに駆け寄った。
「ナミネさんカッコよすぎです!」
「またドラマの参考になりました!ナミネさんは僕の憧れです!」
「そんなことないです。私は普通の中学生です!」

そして、タコパが終わるとまた雑談がはじまった。
「とにかく、セナ王女とセレナールの体験談はパンフレットに載せるね」
「ええ、お願いするわ」
「私も」
ラハルさんはノートに取ったメモを確認した。きっちりした人なんだな。あ、色々あって渡すの忘れてた。
「ナミネ、遅くなったけど、撮影お疲れ様」
私は菜の花とかすみ草の花束をナミネに渡した。
「ありがとうございます、ヨルクさん!」
「ナミネ、今日はゆっくり休もうね」
「はい」
やっぱりナミネ可愛すぎる。
その時、カンザシさんがタバコを吸い始めた。
えっ、ここグルグル妖精さんのマンションだよね。って、またみんな笑ってる。
「ねえ、どうして笑うの?私じゃないよね?」
もうっ、どうしてあたかも私が吸っているような雰囲気になるの?
「もう限界。グルグル妖精は誰もタバコ吸わないんだよね。ハッキリ言って迷惑だ。自分家に帰って欲しい」
ラハルさんは窓を全開にした。
「もう傑作ね」
えっ、リリカお姉様……笑ってる?
「リリカお姉様!私じゃないですよね!どうしてみんなあたかも私が吸ったような雰囲気作るの?おかしいよね?」
「あんた、いちいち反応しすぎだ」
もう、本当何なの!他人の空似とかいっぱいあるじゃない。どうして、私とカンザシさんを重ねるの。
「皆さんは何か格闘技やってますか?」
どうしてタバコで騒いでる時にそんなこと聞くの。
「はい、空手やってます」
「ふむふむ、カンザシさんはお強いのですな」
「ナミネさんに比べたら足元にも及びません」
「他の人は何かやってますか?」
「格闘技じゃないけど、毎朝ジョギングしてる」
マモルさんて、他の人より身体つきガッチリしてるけど、ジョギング効果なのかな。
「ふむふむ、良い心がけですな」
「シュリとロクメもちょっとはナミネさん見習え!」
「シュリさんとロクメさんは運動不足ですかな?良くないですな。お便秘になりますぞ」
「ナミネ、恥ずかしいからやめて!どうしてそんなこと言うの!」
もう、私とカンザシさんを重ねたり、ナミネは変なことばかり言うし、恥ずかしい。
「便秘云々はともかくとして、僕は誰がいつトレーニングするかは、その人の自由だと思うけど。少なくとも強制することじゃないよね。そんなにトレーニングしたいならカンザシ1人ですればいいと思う」
やっぱりラハルさんって意見ハッキリ言う人だなあ。確かに、トレーニングといっても、その人によってメニュー全然違うし、人に言われてするものでもないか。
「そうやって、いい子ちゃんぶってても、いつか化けの皮剥がれるぞ、ラハル」
「人のマンションでタバコ吸ってる人に言われたくないけどね」
その時、ナミネがカンザシさんのタバコを取り上げた。
「いけませんなあ、まだお若いのに。血流が悪くなりますぞ?」
ナミネはカンザシさんのタバコの火を扇子で消してゴミ箱に捨てた。あれ、またニンジャ妖精さんの顔が青ざめてる?いったい何なんだろう。
ラハルさんは、ため息をつきながら窓を閉めた。

夜も更け、私たちは部屋を借りて眠りについた。ナミネは疲れていたのか、すぐに眠ってしまった。
「おやすみ、ナミネ」
私はナミネの頭を撫でた。

朝起きて、お手伝いさんの作った朝食を食べると、私たちは紅葉町に帰ることにした。
「また来ます〜!皆さんお元気で」
「ナミネ、映画のDVDまた渡す」
「はーい!」
ナミネは笑顔で手を振りながら、芸能人のみんなとお別れをした。

紅葉町に戻った時にはみんなクタクタだった。

けれど、シュリさんをイジメた人は誰なのか私たちは分からないままだったのである。

……

あとがき。

いつも、ハードモードが多いだけに、比較的平和な回って、書いていて、ちょっと調子狂っちゃうかも。

芸能界編も書きたい場面でしたが、ナミネたちには、ちゃんとした目標があるので、前世を遡って欲しいです。

最後に、シュリをイジメていたのは誰なんでしょうね。
純愛偏差値 未来編 一人称版 40話

《ナミネ》

飛べない翼の映画撮影が終わった後、私たちはグルグル妖精さんのマンションに来た。グルグル妖精さんのマンションはバルコニー付きの6LDKの高級マンションだった。ちなみに、今日は他のメンバーは泊まりらしい。
けれど、何故かサムライ妖精さんとニンジャ妖精さんもいる。自分たちのマンションに帰らないのだろうか。

ヨルクさんとカンザシさん。こうやって同じ空間で見てみると似てはいるけど、やっぱり違う。今はカンザシさんのほうがややヨルクさんより身長は高いけど、大人になればヨルクさんのほうが高くなるだろう。

そして、ラハルさんは、私が話したセナ王女とセレナールさんの経験を、直接本人に聞きたいと言った。映画の上映前までに本人の体験談としてパンフレットに載せるらしい。

まずはセナ王女から話しはじめた。
「私、カラルリと交際していたの。カラルリとは確かに愛し合ってた。運命だと信じてたし、私のためにフェアリーウィンラサッヴァの指輪買ってくれたし、私が妊娠した時も責任取ると優しくしてくれた。でも、ある日、カラルリの家でカラルリが作った食事食べたら流産したの。カラルリは中絶薬を食事の中に盛っていた。私は食後、大量出血と酷い痛みに襲われ手術を受けた。けど、私の中にはもう子供はいなくなっていた。信じていた彼氏にあんな卑劣なことをされて今でも悔しくてたまらないわ。皇帝陛下はカラルリを不問にしたからカラルリは何の罰も受けずのうのうと生きているし、あの時の記憶が蘇る度苦しくなるの」
セナ王女は大粒の涙を零していた。あの時のことを思い出すと、私も胸が痛むし、あんなこと絶対に繰り返しちゃいけない。
「セナさん、本当に悪かったと思ってる。こんなにもセナさんが苦しむとは思っていなかった。ただ、大人になって互いに就職してから、また作ればいいと思ってた。本当にごめん。許されないことだけど、謝るしかないし、もう一度チャンスが欲しい。セナさんを失って、もう生きる希望が全くない。助けて、セナさん」
今更遅いよ。セナ王女に泣きついたって、カラルリさんのしたこと誰が見ても許されないんだよ。メンバーから出ていって欲しいくらいいやな存在になっている。
「当事者じゃないから、あまり厳しいことは言えないけど、でも、絶対やってはいけないことだよね。まして、愛する彼女にそんなこと……。とてもじゃないけど考えられない。2人の問題だけど、でも、こんなこと二度と繰り返して欲しくないし、こういう事件的なことは、この世の誰にもして欲しくないよ。ニュースで放送されたりしたら誰もが悲しむと思う」
ラハルさんの表情、凄く真剣。今みたいな思いで、あの映画撮影を演じたんだろうな。私も真剣だったよ。凄く真剣だった。こんな悲しいこと二度と同じ空間に居合わせたくない。

次はセレナールさんが話した。
「私はラルクと交際していて、妊娠したのだけど、私は今日撮影した映画のように5000年前の女性の体質で、第1で妊娠が出来て、お腹の子の成長も普通の人の2倍のスピードなの。妊娠7週目なのに、14週目同等で、中絶は出来ない時期に差し掛かってた。セナ王女がカラン王子の別荘で食事会を開いてくれて、食べ終わった時は何もなかったのだけど、その日の夜中に酷い出血と腹痛に襲われて、病院に行って手術を受けた。目が覚めたら流産したと言われ、誰かが食事にトケイ草を入れたと。中期流産の中期中絶だったから、胎児はえぐり出された。顔と胴体は切り離されていて足も……。それを見た時は信じられない気持ちになった。せっかく授かった子の死産届と埋葬をしなくてはいけなくて……。今でも絶望の毎日よ。どうしてアルフォンス王子がトケイ草を入れたのか、もう私の子は戻ってこないのに、アルフォンス王子は何の罰も受けずカナエと幸せに生きている。絶対に許せないし一生恨むと思う」
あの時、みんなはセナ王女を疑った。けれど、アルフォンス王子だった。いったい何のために?けれど、よく思い出すと『カナエを差し置いて』みたいなこと言ってた。カナエさんのためだとしたらその理由は何なの?
「ナミネから話を聞いて、脚本家はセレナールのほうを主な題材としたらしいよ。妊娠中期の流産だなんて、さぞ辛かったと思う。撮影での取り出された胎児は作り物だけど、本物の生きた赤子となると、僕だったら絶対やり切れない。小さな命を奪った犯人を許すことなんて出来ないし、パートナーとの苦しみの日々になると思う。トケイ草を入れて生きた命を殺すなんてあってはならないことだね。どうして産まれるはずの命を奪ったのか僕はその理由を知りたい」
私もアルフォンス王子がセレナールさんを流産させた理由は気になる。分かっても、もうセレナールさんの子供は戻ってこないけど。それでも、ちゃんと知りたい。
セナ王女の子供もセレナールさんの子供も殺されてしまったけど、次の人生では別の母親の元で幸せになれる。私はそう信じたい。死んで終わりじゃない。死んでから次の人生を生きる時、幸せであれば人は救われる。そして、次の人生でアルフォンス王子を見つけ出して正当な方法で罰して欲しい。
罰せられるべき人間はちゃんと罰せられるべきだと思う。
「あのさ、警察が私だと決めつけたらそれで決定なわけ?違うだろ!何の証拠もなしに私に罪を擦り付けて。今の録音警察に突き出してやる!」
「やめて!警察があなただと断定したから言ったし、あなたなのよ!」
確かに私たち証拠は見ていない。今の段階でアルフォンス王子だと決め付けるのは早いのだろうか。アルフォンス王子じゃなければ、誰がやったの?もう分からないよ。
「平凡アルフォンス、これあんただろ!一時的に時間巻き戻して撮影した!言い逃れする気かよ!」
落ち武者さんは携帯の映像を再生した。本当にアルフォンス王子だ。でも、何かがおかしい。そうだ、これだ!
「これ左から光が入っているのに影も左になっています!」
「本当だわ。どういうことなの?」
「なるほど。時間巻き戻しすぎたか。けど、あんた、前世では姉さんの子供殺したんだな」
「前世とかくだらないこと言わないでくれる?」
うーん、アルフォンス王子じゃないってこと?
「けど、この映像あれば警察はどっち信じる?」
「カナエです!カナエがやりました!アルフォンス王子様を責めないでください!」
えっ、嘘だよね?カナエさん、いつも幸せそうなのに。セレナールさんを妬んだとか考えられない。
「カナエ、許さないわ!今すぐ死になさいよ!」
「カナエ、あなた、妊娠したら同じことされるわよ」
私もそう思う。赤ちゃん小さかったけど、もう手も足もあったのに。ちゃんと人間になりかけていたのに!
「実行したのはカナエでしょうけど、誰かがカナエに命じたんじゃない?セナさんか、アルフォンス王子か」
「私は違うわ!ユメさん、証拠もないのに憶測で物事言うの良くないと思うの」
「そうよね、ごめんなさい」
誰かが命じた。確かにカナエさん単独でしたとも思えない。アルフォンス王子に命じられたのかな。
セレナールさんは、お手伝いさんからヤカンを奪いカナエさんに熱湯をかけた。
「セレナール!もう我慢出来ない!カナエにばかり嫌がらせして!」
「私がカナエにされたことはもっと辛いことよ!」
お手伝いさんはカナエさんの手当てをした。ラハルさん、セレナールさんの苦しみを真剣に見てる。何だかこの空間がとても重たい。
「もう終わったことなのよ。他人の家で騒がないで!」
リリカさんの怒鳴り声にみんなは静まった。
「あの、このマンションって月額いくらですか?」
「200万円だよ」
えええええ!めちゃくちゃ高い。デビューして2年でこんなマンションに住めるものなのだろうか。
「凄いですね!皆さんいっぱい稼いでるんですね!」
「1人、ひと月100万円は稼ぐこと目標にしてて、支払いは1人40万円。今のところ活動は順調だし、もっと有名になるために、コツコツ積み重ねるつもりだよ」
「ラハルさんは努力家ですな」
はあ、芸能界デビューしたら完全VIPなのか。まだ高校生なのに自立してて凄いな。
「ラハルってすぐ自慢するよな。僕も同じマンションだけど、月々の支払いは全て僕だけど?」
「えっ、カンザシさんて、音楽だけで、そんなに給料いいんだ。皆さん、学校との両立大変じゃないですか?」
「アルバムがいっぱい売れていますので。学校もちゃんと通っています」
そっか。正式にデビューしたら、一般人とは遠い人なんだ、芸能人って。全然知らなかったよ。
「あ、せっかくなので、弾き語り聴いてみたいです!」
あれ、今ラハルさんの声遮った?気のせいだろうか。カンザシさんはリビングにあるギターを持った。
「弾いて欲しい曲とかありますか?」
「あ、じゃあ、花餅シルエットさんの二度と訪れない青春時代でお願いします」
「随分古い曲ですね」
「懐メロ好きなんです」
「そうですか。じゃあ、弾きます」
カンザシさんは、二度と訪れない青春時代を弾き語りしはじめた。

「あの日 君が流した 涙の場面を 繰り返し
卒業式の前日に こころを駆け巡る
素直すぎた君は 微笑みいつも 絶やさず
ずっと前から 慈しんでいた

突然の夕立ちに 傘を持たずに走った
懐かしのアルバム 押し入れの中

途切れ途切れの 記憶だけど
振り返れば 色褪せて
過ぎ去った 青春時代

粉雪舞っている 薄着で町を走った
よく行く商店街 今も変わらず

途切れ途切れの 記憶だけど
振り返れば 色褪せて
過ぎ去った 青春時代

途切れ途切れの 記憶だけど
振り返らない これからは
今だけを 見つめてく」

やっぱり、プロって上手なんだ。カラルリさんが聴いてたチューリップ妖精さんとは全然違うし、私も駆け出しミュージシャンのフェアリーチューブ見てみたけど、パッとしなかった。
カンザシさん、歌上手い。
「あ、やっぱりアルバムで聴くより直接聴いたほうがとても心に響きます。カンザシさんは、お歌が上手ですな」
「そう言って頂けると嬉しいです。他にも弾いて欲しい曲ありますか?」
「えっと、ミツバ団子さんのセピアな日記お願いします」
「また古い曲ですね」
カンザシさんはセピアな日記を弾き語りしはじめた。ストロークアレンジだ。何だかカンザシさんの弾き語り好きだな。

「ハート型の四葉のクローバーを見つけ
私はあなたの着物の帯の中に差し込んだ
その時 微笑んでいたあなたの顔は
暗くて 真っ暗で 何も見えなくなっていた

時間の歪みで あなたに触れる事さえ出来ない
今ここに 同じこの時に あなたはいるのに
私を慈しんでくれていた 時代と重ならない
悲しくて 苦しくて 私はただただ混乱していた

イタズラしたのは神様じゃない そんなこと
そんなこと 分かっていたよ

筆跡は同じなのに 書かれている内容は少し違う
それでも 真新しい日記を 離せずにいた
夜空 見上げれば ほんの僅かな星が
私を見下すように 悲しく笑っていた

読みかけの本を 開いてみたら あの時の
ハート型の四葉のクローバーが 栞として
挟んであったよ けれどそれはもう色褪せていた
薄ら微笑む あなたは 今は着物を着ていない

イタズラしたのは神様なんだよ そうやって
そうやって 私は私の心を守った

筆跡は同じだった あなたは覚えていたんだね
それなのに 新しい日記は目の前で古びれてゆく
夜空 見上げれば 満天の星たちが
私とあなたを 包み込むように 輝いていた

あまりにも遠い昔に 出会っていたのかな
もう 夢と現実の区別がつかないよ

あなたの手に私の手を重ね 綴ってみた
2人の過去 そして2人の今 2人の未来
夜空 見上げれば 電灯に邪魔された星たちが
私とあなたの今の居場所を 教えてくれた」

カンザシさんの弾き語りを聴いていたらメンバーのゴタゴタが薄らいでいた。
「やっぱりプロなんだなあて感じます。一般人の私からしたら芸能人って遠い存在というか、遠くから応援してます」
「ナミネさんには近くで応援して欲しいです」
「あのさ、同じマンションなんだから、とっとと帰ってくれる?」
しまった。私、やらかしちゃったよ。
「あ、すみません、私が引き留めてしまいました」
そうだよね。みんな帰らなきゃいけないよね。
「ナミネのせいじゃないよ。聴きたい曲なら僕が弾くよ。カンザシは帰るから」
「おい、ラハル、調子に乗ってんな。貴重なナミネさんの撮影だったし、ナミネさんの仲間の体験談聞いて何が悪い」
どうしよう。私のせいで何だか空気悪くなっちゃった。私は苛立ったカンザシさんが投げたギターをキャッチしてヨルクさんに渡した。
「ヨルクさん、弾いてください」
「え、私?何弾くの?」
「カンザシさんの駆け出し時代の雪涙です」
「うーん、ナミネとCD少し聴いただけだから弾けるか分かんないよ」
そう言いながらもヨルクさんはピックを持ってギターを弾きはじめた。雪涙。どこかで聴いたことあるんだよな。

「朝目を覚ますと 誰もいない
ひとりぼっちは 慣れているはずなのに
カーテンを開けると ぼたん雪
昨日買い溜めしといて 良かったよ

小さい頃はよく 雪合戦したっけ
何となく今は あの頃に戻りたい
今年の冬もまた 長引きそう
僕は窓についた ツララ眺めてた

誰にだって 上手くいかない時はあるよ
諦めたって構わない 逃げたって構わない

遠い昔の夢は まだ色褪せていない
追いかけ追いかけ 追いかけたまま
遠すぎると 分かりながらも
走り続ける 雪涙

誰もいない教室 青春の一コマ
誰かの噂なんて 何も聞こえない
傘をさして 踏んでく雪道
次第に空は オレンジに染まる

僕にだって 言えないこといっぱいあるよ
誰も知ることのない 僕のひみつ

古代からの夢 まだまだカラフル
青春の延長線は 時に寂しいけれど
粉雪とぼたん雪の 繰り返し
窓を開ければ 雪涙」

ヨルクさんの弾き語りはどこかクセがある。でも、私は温かさを感じていた。あれ、サムライ妖精さんとニンジャ妖精さん、ヨルクさんを見てる?
「ねえ、どうしてみんな笑うの?」
「ヨルク、お前代役してもバレなさそうだな」
「ミナクお兄様、どういう意味ですか!私とカンザシさん、全然違いますよね?」
「そうだね、ヨルクとカンザシは全然違う」
ラハルさんはカンザシさんを見た。ラハルさんの違うってどういう意味だろう。ここ数年で、知らないアイドルグループもそれなりにデビューしたし、ライバル同士で、あまり仲良くしてないのかな、ラハルさんとカンザシさん。
「ラハル、上から目線してられるのも今だけだぞ」
「とっとと帰って欲しいんだけど」
「あ、ニンジャ妖精さんの他のメンバーさんもソロもしてるんですか?」
あれ、この間は何だろう。私、変なこと言ったかな?
「してないです……」
「僕もしてないです……」
シュリさんとロクメさんが答えてくれた。
「そうなんですね。やっぱり、自分で詞を書いて曲作るって難しそうですもんね」
「シュリ、ロクメ!ギターの練習サボるな!」
カンザシさんて、思ったより厳しいんだな。
「ダメだわ。私も双子に見えてきた」
「リリカお姉様!」
双子かあ。まあ、双子には見えなくもないけど、何だか雰囲気が全然違うんだよな。
「あ、皆さんはやっぱり恋愛禁止ですか?これまでに付き合った人いますか?」
「恋愛は禁止です。僕はこれまで付き合った人はいませんが、ラハルは3人ほどいます」
そうなんだ。何か以外。カンザシさんは絶対誰かと交際してると思ったんだけどな。
「もうお手上げ。誰かカンザシ連れて帰って」
その時、ラハルさんが取った出前が届いた。
「ラルク、お寿司だね」
「だな。久しぶりに食べるな」
「ナミネ、ちゃんとご飯も食べて」
「え、私食べてます」
何でそんなことまで覚えてるの、ヨルクさん。
ヨルクさんたちはナノハナ家のみんなでよく外食をしていた。回転寿司に行った時の私は毎回……。
「私覚えてるから!ナミネ、ネタばかり食べてご飯全て残してたの!店員さん困ってたんだよ!」
やっぱり覚えていたのか。
「ナミネってやっぱり学校と全然違うね。学校では勉強も運動も出来て学年1可愛い女の子なのに」
「そんなことないよう。委員長の勘違いだよう。私別に可愛くないし、可愛い子なんてクラスにいっぱいいるよ」
「ラルクと話してる時も学校モードなのがビックリした」
えっ、私、学校でも家でも普通にしてるつもりなんだけどな。
「えー、そんなことないよう。私、みんなに同じように接してるよ?ね?ラルク?」
「まあ、ナミネはナミネだな」
ラルクってセレナールさんのことばかりで、全然私のこと知らないんだよな。
「ねえ、ラルク、タコパ楽しみだね」
「正直、ナミネが最初からそのキャラで僕に接してたら、すっかり騙されてたよ」
えっ、ラハルさんまで?どこが違うのだろう。全然意識してないんだけどな。そりゃ、ダサイところまでは見せれないから、少しはいい子ちゃんかもしれないけど、みんなだってそうでしょ?
「えっ、私は全然意識してないです」
「僕も、ナミネさんが最初にあのキャラで僕に接していたら信じ込んでいました」
カンザシさんまで!?
「ええっ、私、本当に学校でも家でも同じです」
その時、お手伝いさんが温かいお茶を配って行った。セレナールさんはまたカナエさん目がけてかけようとしてる。私は咄嗟にセレナールさんからお茶を奪い取った。
「ここで暴れるのやめてください!みんなに迷惑じゃないですか!」
「ナミネって、いい子ちゃん気取りね。Fメモリイも知らないのに、映画撮影なんかしちゃって」
何それ。セレナールさんが細工したからラルクもいやがっていたのに。それに、飛べない翼はセナ王女が世の中に広めて欲しいて言ってたから私はラハルさんに話したんだよ。
「ナミネは才能あるよ。それにナミネはセレナールのために最後まで取り乱さず演じきったんだよね」
ラハルさん……。やっぱりいい人なんだなあ。
「ミナク、お寿司入れて」
「かしこまりました、セナ王女」
「ナミネさん、どれが食べたいですか?僕がお皿に入れます」
「だ、大丈夫です。自分で入れます」
私は慌ててお皿を取った。するとヨルクさんが私からお皿を取り、私の好きなネタを入れた。
「ほら、ナミネの好きなもの入れたから食べて。ナミネ、自分で入れられないんだから、わざわざ入れようとしないで。お寿司崩れちゃう」
そこまで言わなくてもいいのに。ヨルクさんって何でもしてくれるけど、みんなの前だと恥ずかしいよ。
「はい」
私はお寿司を食べはじめた。
「ラハル、お寿司入れたわ」
「ラハル、お寿司入れたわ」
リリカさんとナナミお姉様はラハルさんにいっぱいお寿司を入れた。食べ切れるのかな。てか、みんなの分は?
「ナナミお姉様、やめてください。みんなの分がなくなります」
「いいよ。ニンジャ妖精は帰るから」
ラハルさん、サッパリしてる。
「サムライ妖精はいいのかよ。嫌がらせだな」
「レオルとは今度ドラマで共演するし、この際だから打ち合わせしようと思ったけど、もういい加減誰かカンザシ連れて帰ってくれる?」
ラハルさん、相当苛立ってそう。でも、イケメン同士だと何だか画になるなあ。
「エルナ、寿司入れた」
「あら、彼氏気取りかしら?落ち武者さん」
落ち武者さんって、まだエルナさんのこと好きなのかな。私は落ち武者さんに、お寿司を入れた。
「はい、落ち武者さん」
「あんた、崩れすぎだろ」
「もう、ナミネ、余計なことしないで。しかもそれ取り箸じゃないよね」
ヨルクさんて、お姑さんみたい。どうしてもっとこう、中学生の青春を気楽に楽しめないのかな。
「ナミネさんって見かけによらず不器用なんですね」
「えっ、そ、そうですか?」
カンザシさんの笑顔ってヨルクさんとは全然違う。でも、何だかいい。
結局、ニンジャ妖精さんは自分たちのマンションには帰らず、グルグル妖精さんのマンションに居座り続けた。そして、お寿司を食べ終わった頃、タコパがはじまった。

……

あとがき。

一旦区切ります。

カンザシはナミネと一緒にいたくてマンションに戻らないんですよね。

さて、芸能人と関わり、実際に映画撮影までしたナミネ。
今後、どうなっていくのでしょうか。

そして、ラルクとセレナールの関係も心配です。
純愛偏差値 未来編 一人称版 39話

《ヨルク》

セレナールさんは流産をした。
誰かが盛ったトケイ草によって。
いったい誰が……。みんなはセナ王女を疑っているみたいだけど、何となく違う気がする。

夜中にここに来たのに、もう明け方になっている。ナミネは大丈夫だろうか。
「ナミネ、聴き取りが終わったら帰って寝ようね」
「はい」
夜中にクレナイ家の第1母屋でセレナールさんが騒いだから、みんなそれに起こされ、今の時間まで、ほとんど寝ていない。

今回のセレナールさんの流産はセナ王女の時とは違って、中期の流産で死産届も埋葬も必要になる。まして、胎児を殺すなど、現代の法律では不同意堕胎容疑となる。
だから、ハル院長は妖精村警察に通報したのだと思う。

妖精村警察の人が来ると、一人一人に聴き取りを行った。警察はアルフォンス王子が容疑者だと断定し、連行しようとしたが、アルフォンス王子はF938を出し、警察はアルフォンス王子を連行出来なくなってしまった。

「F938か。そんなもので一時しのぎしても君は、いずれ自分のしたことは何らかの形で返ってくるよ」
今のハル院長は多分怒っている。私も苛立たしい。王族だからって何でもかんでもF938で免れるだなんて。

警察官が帰って行った後、私は眠そうなナミネをクレナイ家に連れて帰り、私の部屋の布団に寝かせた。セレナールさんは2日入院することとなった。二度までも同じ現場に直接居合わせてナミネはどう思っただろう。ナミネは1人で抱え込みやすいから私は心配した。

それからは、セレナールさんはアルフォンス王子を恨み、学校の階段からアルフォンス王子を突き落としたり、落ち武者さんはカナエさんがアルフォンス王子にピルを飲まされる映像や、セレナールさんの送り届けの途中で襲われた映像をカナエさんの学年にばらまいたりした。ロングさんが止めるものの犯罪なのに裁かれずF938で逃げ切ったほうに言えと落ち武者さんは強気に出て、ロングさんはアルフォンス王子の説得をした。ロングさんに何を言われたのか分からないが、その後のアルフォンス王子は酷く怯えていた。
王室は更に窮地に追い込まれた。落ち武者さんが、王室の3分の1の慰謝料を国王に払わせたのだ。セナ王女とアルフォンス王子はアパートからも追い出され、古い空き家住まいとなったが、耐えきれずセナ王女はクレナイ家にアルフォンス王子はキクリ家に居候をした。

後日、飛べない翼の撮影をするため、私はナミネと虹色街のスタジオに来た。が、何故かみんな着いてきた。
私はとりあえずラハルさんに挨拶しようと駆け寄った。
「あの、いつも姉がご迷惑をおかけしまして……」
あれ?ラハルさん驚いたような表情をしてる?何故だろう。
「姉って?」
「リリカお姉様です」
「え、君がリリカの弟……。全然似てなさすぎてビックリした」
その時、リリカお姉様とナナミさんが来た。
「ほら、ヨルクはあっち行って」
私はリリカお姉様に扇子で吹き飛ばされた。

ナミネのところへ行くと、みんな私を見ながら笑っていた。
「ねえ、何?どうして笑うの?」
「もう双子レベルだな」
「本当ね。写真よりずっとそっくりでビックリしたわ」
双子?そっくり?誰と誰のことだろう。
「ヨルクさん、あちらがニンジャ妖精さんです」
「あ、そうなんだ」
て、ニンジャ妖精さんもサムライ妖精さんもガッツリ、セレナールさんのこと見ている。セレナールさんも術後だから無理に来ることなかったのに。
「ラルク、全然気付いてないね」
「まあ、ヨルクお兄様は鈍いからな」
え、何のこと?落ち武者さんまで笑っているけど、私には何がそんなにおかしいのかさっぱり分からなかった。

撮影がはじまるため、ナミネとラハルさんは指定の制服に着替え、ナミネはメイクをしてもらった後、髪を三つ編みにしてもらっていた。
セーラー服姿のナミネ可愛すぎる。

「飛べない翼 撮影スタート!」
そして、撮影ははじまった。

新学期。
中学2年生のナミネは勉強も運動も出来て、クラスの男子の憧れの的だった。

そんなある日、ナミネは高等部1年生のラハルさんに呼び出された。
「ナミネ、好きだ。僕と交際して欲しい」
「はい、私、ラハルさんと交際します」
ナミネはあっさりラハルさんの告白をOKした。

その後、2人は休日になると、ファミレスに行ったり、映画を見に行ったり、ウィンドウショッピングを楽しんでいた。
誰が見ても仲良しのカップルだった。

ナミネは、はじめての彼氏だったけれど、ラハルさんに頻繁に手作りのお菓子を渡した。
「あの、美味しくないかもだけど……」
「ナミネ、ありがとう。凄く嬉しいよ」
ラハルさんはいつもナミネの手作りお菓子を嬉しそうに食べていた。

ナミネとラハルさんは、互いの家を行き来するようになっていた。

季節は巡り、春から夏へと移り代わっていた。
ある日、ナミネの部屋でナミネとラハルさんが勉強をしていたら、ラハルさんはナミネをベッドに押し倒した。
「ナミネ、好きだ」
「私もラハルさんが好き」
「してもいい?」
「うん、ラハルさんに全てを捧げるよ」
ナミネはラハルさんにセーラー服を脱がされタンクトップ姿になった。
「ナミネ、0.3ミリhappy付けなくてもいいよね?」
「うん、ラハルさんならいいよ。それに現代は第3破らないと妊娠しないから」
そして、ラハルさんはことに及んだ。
避妊もせずに。

その後も、ラハルさんは頻繁にナミネを抱いた。
ナミネもラハルさんも、とても幸せそうだった。

季節は巡り秋となった。

いつものようにナミネとラハルさんはナミネの部屋にいた。
「あのね、ラハルさん、私、妊娠したの。8週目だって」
「そ、そっか。責任はちゃんと取るよ。だから心配しないで。僕たちの子供、2人で育てていこう」
「ありがとう、ラハルさん」
ナミネはラハルさんに抱き着いた。

ナミネはラハルさんの言葉を聞いて嬉しそうに母子手帳を眺めていた。けれど、ナミネは5000年前の女性の身体の作りで、第1で妊娠するように出来ていた。更には、他の人の2倍のスピードでナミネのお腹の子は成長していった。これは5000年前の妊婦さんに稀にあったことだったのである。
ナミネはまだ妊娠8週目なのに、お腹の子はまるで妊娠15週目のような大きさになっていた。

ナミネがラハルさんを信じる一方で、ラハルさんは仲の良い友達に話していた。
「彼女妊娠したんだけど、正直責任までは取れない」
「それヤバイだろ」
「流産でもしてくれたらな」
「それならトケイ草を料理の中に混ぜて食べさせれば6〜20時間の間に流産するらしいぜ」
友達の言葉を聞いたラハルさんはスーパーで大量のトケイ草を買った。

数日後、ラハルさんはナミネに手料理を振舞った。
「ナミネ、栄養満点の料理だから食べて元気な子産んで」
「美味しそう!ラハルさんが作ったの?」
「うん、ナミネに栄養つけて欲しくて」
「ありがとう!」
ナミネは嬉しそうにラハルさんの手料理を食べた。
「美味しい!ラハルさんは料理上手だね」
ナミネはラハルさんの手料理を完食した。
大量のトケイ草が入っているとも知らずに。

その夜、ナミネは大量の出血を起こし腹痛を訴えた。ナミネの両親は近くの産婦人科にナミネを連れて行った。
ナミネは緊急オペを受けたものの、お腹の子は流産して、中期中絶となった。

ナミネが目覚めると医師は説明をした。
「残念ですが中絶流産です。トケイ草ですね。それも大量に検出されました。トケイ草は普通の人には害は及びませんが、妊娠している人の体内に入ると6〜20時間内に流産します。トケイ草は昨日食べただろうお粥の中に入っていました。また、中期中絶ですので、死産届と埋葬が必要になります。これがあなたのお腹にいた子です」
医師はナミネにえぐり出され、顔や身体がぐちゃぐちゃになった胎児を見せた。
「これが……私の赤ちゃん……」
ナミネは嗚咽をあげながら大粒の涙を零し続けた。

ナミネは2日の入院の後、死産届を出し、胎児を埋葬した。その足でナミネはラハルさんの家に上がり込んだ。
「ラハルさん、お腹の子いなくなったよ。どうしてこんなことしたの……!」
ナミネは涙を流した。
「やっぱりまだお互い学生だし、子供とか重たいなあて感じた。でも、子供なら大人になってからまた作ろうよ」
ラハルさんの言葉にナミネは泣きながらラハルさんを引っぱたいた。
「私、許さないよ。何年経っても許さないよ。ラハルさんを訴えるね」
「え、ナミネ、待って!ほんの気の迷いだった。悪かったと思ってる」
「これが私たちの赤ちゃんだよ!」
ナミネはラハルさんにバラバラになった胎児を見せた。ラハルさんは吐いた。

2ヶ月後、ラハルさんの裁判は行われた。
「被告を懲役40年に処する」
ラハルさんは刑事裁判で有罪となった。

ナミネは毎日母子手帳を握り締めながら泣き続け、ラハルさんは少年院で自分のしたことに何度も後悔をした。

ナミネとラハルさんは二度と会うことはなかった。

「カット!OK!」
2時間に及ぶ映画撮影は無事に終わった。

撮影後、ナミネとラハルさんは映画に対するコメントを残した。
「これは実際にあったことです。しかしながら、いくら産まれてきていなくても生命は宿っているんです。そんな1つの小さな命を無理矢理奪ってしまうなんて、あまりに悲しすぎます。僕は、このようなことが決して起きないよう、今回の飛べない翼の主役を演じました。少しでも皆さんの心に届いたらと思います」
続いてナミネがマイクを持った。
「芸能人でない私にヒロインが務まるかとても悩みましたが、私もラハルさんと同じで妖精村の恋人たちに伝えるためにヒロインを演じることを決意しました。映画では、お腹の中の子はヒロインの中から羽ばたくことは出来ず、1つの翼である小さな命が奪われてしまいました。まさに飛べない翼です。けれど、決してあってはならないことです。人を好きになり交際するとはどういうことなのか、愛とは何なのか、この映画を見た全ての人に考えて欲しいと思います」
後に、このコメントは映画の最後やDVDの最後に登場することになる。また、映画がテレビで放送される頃にはテレビでも流れるかもしれない。

2時間に及ぶ映画を演じきったナミネとラハルさんは汗だくで、マネージャーによって、メイクを落とされると別の服で出てきた。
「ナミネ、大丈夫?」
「はい!やり切った感があります!」
「ナミネ、ありがとう。ナミネが教えてくれたから、作品として形になって僕たちは演じることが出来た」
「こちらこそありがとうございます。ラハルさんが相手だったので演技もしやすかったです」
ナミネは芸能人なんて目指したことないのに。演技の才能には驚かされた。このまま芸能界に入るのだろうか。それでも、ナミネが決めた道なら応援したい。私はそう思った。
「ナミネ、はじめてとは思えない演技力だよ。芸能界デビューしないのがもったいないくらい」
「ラハルさんのサポートあってこそです」
その時、カンザシさんとレオルさんが駆け寄ってきた。
「ナミネさん、迫真の演技でした!」
「ナミネさん、ナミネさんの演技が多くの人に伝わるといいですね」
「レオルさん、カンザシさん、ありがとうございます」
後ろを見ると、セナ王女とセレナールさんが泣いていた。悔し泣き……。
気が付けば夕方になっていて、今日はグルグル妖精さんのマンションに泊まることになった。

グルグル妖精さんのマンションに行く前、みんなは温泉に寄った。
「ナミネ、混浴行くの?」
「いえ、今日は女湯入ります」
「そっか、後で限定品のお土産買おうね」
「はい」
ナミネが混浴に入らなくて良かった。カンザシさんもレオルさんもナミネのことずっと見てるし。
私が男湯に入るとメンバーはあまりいなかった。というか、サムライ妖精さんもニンジャ妖精さんも混浴に行ったの?まさかセレナールさん目当てで?尚更ナミネが女湯に入ってくれて良かった。

私が温泉から出るとナミネは椅子に座っていた。
「ナミネ、ゆっくり出来た?」
「はい」
「お土産屋さん見に行こうか」
「はい」
私とナミネは手を繋いでお土産屋さんを見た。するとナミネはロバのぬいぐるみを2つ持った。
「動物園のロバはこんなふうにメスを追いかけていました。メスは逃げていました。交尾は難しいものですな」
「ナミネ、どうしてそういうこと言うの!お土産買わないよ!」
「そうですか」
「もう、変なこと言わないで好きなの選んで」
全くナミネはどうしていつも変なことばかり言うのだろう。その時、みんな上がってきた。
「ミナク、このたこ焼き妖精のストラップ、お揃いで持ちましょうよ!」
「はい、セナ王女。今買ってきます」
「ナミネさん、何か買うんですか?」
「うーん、迷ってます」
やっぱり、マモルさんとフタバさんはセレナールさんのこと見てるし、サムライ妖精さんだってサンゾウさんとレオルさん以外セレナールさんのこと見てる。
「ラルク、私、温泉うさぎのストラップが欲しいわ」
「分かりました」
「温泉に入るカピバラ妖精さん可愛いです」
「そっか、じゃあ、そのストラップお揃いで持とうか」
私はカピバラ妖精のストラップを2つ手に取った。
「カピバラ妖精さんは温泉の中でメスを追いかけるわけですな」
「もう、変なこと言わないで!」
「ナミネって見かけによらず直球だね」
「でも、事実です!オスはメスと交尾することしか考えてません!」
「生きるためだからね」
生きるためかあ。でも、こんなところで交尾とか、ナミネって可愛いけど何だか変なこと言われると恥ずかしい。人目もあるし。
「じゃあ、カピバラ妖精にするからね!もう変なこと言わないで!」
私はカピバラ妖精のストラップを2つ購入した。
「あれはビタミン不足ですな」
もう、本当何?まるで私がおかしいみたいじゃない。
「ナミネさんが送ってきてくれた映像、参考になりました!ナミネさんが伝説最上級武官だなんて最初は信じられませんでしたが、映像を見てとても関心持ちました!撮影の参考にします」
「レオルさんのお役に立てたなら良かったです!」
「ナミネ、あの花の舞の映像かなり良かったよ。PV化出来るか聞いてみる」
「本当ですか?嬉しいです」
ナミネ、まるで芸能界デビューしたみたい。何だか距離が遠く感じる。その時、ナミネが私の手を握った。ナミネ……。
温泉を出るとみんなはグルグル妖精さんのマンションに向かった。グルグル妖精さんとサムライ妖精さんは同じマンションらしい。でも、何故かサムライ妖精さんも着いてくる。

グルグル妖精さんのマンションは6LDKの高級マンションだった。デビューして2年でこのようなところに住めるのだろうか。サムライ妖精さんなんて最近デビューしたばかりだし。やっぱり芸能人って違うんだ。
「へえ、思ったより広いわね」
セナ王女……今は別荘暮らしじゃないのに。
「ラルク、お手伝いさんいるよ」
「エプロン付けてるからそうだろうな」
「あ、すみません〜紅茶2つお願いします〜!」
「ナミネ、恥ずかしいからやめて!」
もう、どうして初対面の人をこき使うの!ここナノハナ家じゃないんだから。
「いいよ。今日は出前も取ったし、タコパもするから」
「そ、そうですか。ナミネ、こっち来て大人しくしてて」
私はナミネを抱きかかえリビングに座らせた。
「あのさ、なんでサムライ妖精とニンジャ妖精がいるの?帰ってくれる?」
「別にいいだろ。ラハルってちょっとドラマとかコマーシャルに出てるからって調子に乗ってるよな」
「はあ、何度もオーディションに落ちてるカンザシに言われたくない」
仲悪いのかな。てか、なんでまたみんな笑ってるの?
「ねえ、どうして私見て笑うの?」
「あんた流石に鈍すぎ。あんたとカンザシ、瓜二つなんだよ」
え?私とカンザシさんが?似てないと思うけど。年齢だって違うし。
「ねえ、ラルク、ヨルクさん、自分の顔が分からないみたいだね」
「そのうち相貌失認になるかもな」
「ちょっと!全然似てないでしょ!もう、みんなこじつけで笑わないで!」
その時、落ち武者さんが黒髪時代のカンザシさんを見せてきた。え、ちょっと似てるかも。でも、似てる人って世の中いくらでもいるし、そんなに大袈裟なリアクションするものなのかな。
「私もラハルとコマーシャル出たい」
「私も!」
「それならオーディション受けないとね」
あれ、ナミネはオーディションとか受けてなかったはずだけれど。
「でも、ナミネは受けてないじゃない!」
ナナミさんも気が強い……。
「ナミネは、スタジオに来た時によく台本読んでてその才能を色んな脚本家や監督に認められたんだよ。だから、ナミネにはまたドラマの仕事が来るかもしれない」
そうだったんだ。そういえば、ナミネって、小学生の時もガラス姫や花雪姫とかのヒロインを文化祭とかで演じてたなあ。あの頃からナミネは既に才能があったのだろうか。
「ナミネだけ狡い!」
「ドラマやコマーシャルに興味あったら、一度オーディション受けてみて。そこで力量分かるから」
ラハルさんはパンフレットをリリカお姉様とナナミさんに渡した。
「ラハルさん〜実家の外観の写真見せてください〜!」
「もう、ナミネ、恥ずかしいからやめて!」
「普通の家だよ。外観とか写してないなあ」
「そうですか」
「ところで、ナミネから聞いた話だけど、直接、本人からその時のこと聞かせてもらえないかな?」
そっか。映画撮影しただけのことあるから、上映までに、パンフレットに記載しないといけないのかな。ここに来て、いよいよ本題に入りかかっていた。

セナ王女とセレナールさんは、ちゃんと話せるだろうか。
ラハルさんは真剣な表情をしていた。

……

あとがき。

何だかいつも長くなっちゃいます。なので、一旦区切ります。

さて、ナミネとラハルが演じた『飛べない翼』ですが、私は、同じ過ちを繰り返す人が出てこないためにも、世の中に伝えていくべきだと思うんです。それで、小説の中に入れました。

まあ、現実世界でも実話を映画化して伝えようとしていますが、なかなか伝わらないものなんですよね。

悲しいですが、それをあえて、ドラマ化、映画化することで多くの人に伝わればいいなと思います。
純愛偏差値 未来編 一人称版 38話

《ナミネ》

10月ももう半ば。
昨日、ラルクからセレナールさんが妊娠したとメールがあった。セレナールさんは5000年前の一部の人が妖精だった頃の身体の作りで第1で妊娠するそうだ。そして、その遥か大昔に稀にいた妊娠すれば、お腹の子は普通の妊婦さんより2倍の速度で成長するとハル院長は言っていたらしい。
まだ、7週目なのに、お腹の子は、まるで14週目のような大きさで、もし中絶するならセレナールさんの場合、後2日以内だそうだ。

けれど、ラルクは避妊していたはず。どうしてセレナールさんは妊娠したのだろう。まあ、これでラルクとセレナールさんの仲が深まったならいいのだけれど。でも、いつも一緒だったラルクが世帯を持つだなんて、ちょっとラルクが遠く感じてしまう。

お昼休み。
私たちはいつもの広場に集まっている。
ラルクからのメールのようにセレナールさんのお腹は、まるで大人の妊婦さんみたい。
「ラルク、これでクレナイ家の跡取りが出来て良かったね」
「まあな」
あれ、あまり嬉しくないのかな。
「クレナイ家は男3人いるから将来は安泰だね」
「ミナクお兄様がいるからな」
うーん、やっぱり嬉しくないのかな。というか、全然嬉しそうじゃない。
妖精村では10歳になれば婚姻届を出すことが可能だ。ラルクとセレナールさんも望めば今すぐ夫婦になれるというわけだ。
「ラルク、入籍はいつするの?」
「僕はまだ中学生だし、セレナール先輩のお腹の子はセレナール先輩の家族が面倒を見て、僕が大学を卒業したら入籍しようって昨日話してた」
今すぐじゃないんだ。そうだよね。まだ中学生だし、今学校辞めて仕事しても、仕事限られちゃうもんね。大学卒業かあ。まだまだ先だな。
「セレナール、妊娠おめでとう。明日、カランの別荘で料理をご馳走してあげるわ」
「ごめんなさい。カラルリがセナさんに中絶薬盛ったこと思い出すと怖いから遠慮しておくわ。この子はちゃんと産んであげたいの」
そうだよね。あんなことあったんだから、行くに行けないよね。
「毒味もさせるし、安全は保証する。それに私の誘いを断るなんて失礼じゃない?」
「わ、分かったわ。行くわ」
何だか無理矢理って感じ。でも、断りにくいよね。私だったら何がなんでも断るけど。だって、今回も何かされそうな気がする。セナ王女は無理矢理中絶させられたのだし、セレナールさんの妊娠を本気で祝福しているのだろうか。

ちなみに、あの後、王室は第1王子や第2王女の働きと皇室の支援もあって、復旧に向かっているそうだ。あの別荘を取り戻せる日も早いかもしれない。

「ナミネ、ラハルさんとコマーシャル出たの?ナミネはラハルさんが好きなの?芸能界デビュー目指してるの?」
えっ、今完全にセレナールさんの話題なのに、どうしてそんなこと言うの?てか、あのコマーシャル、もう放送されてるんだ。
「はい、スタジオ見学したらラハルさんに会って、共演者が来ないからと代わりを頼まれました。ラハルさんは私ではなくナナミお姉様の最推しです。芸能界デビューは全く目指してません」
「そっか。良かった。でも、心配だから今度は私も一緒に行くね」
えっ、めちゃくちゃ気まずい。でも、ヨルクさんを不安にさせたくないし……。
「分かりました」
「出産予定日っていつなの?」
「3ヶ月後くらいらしいわ。もっと早まる可能性もあるみたい」
「私は初期で無理矢理中絶させられたけど、中期ってどんな感じ?」
セナ王女、どうしてそんなこと聞くのだろう。辛くないのかな。それにしても、セレナールさん幸せいっぱい。カップル日記にも
『妊娠発覚ꯁꯧ
現在7週目ꯁꯧ

ラルクとの愛の絆ꯁꯧ
とても嬉しすぎるꯁꯧ

お腹の子供と共に3人で幸せになりますꯁꯧ』
って書いてあったし。
やっぱり嬉しいものなのかな。正直行きたくないけど、主役じゃないし適当に過ごせばいっか。
「うーん、やっと悪阻が落ち着いてきたって感じかしら」
「羨ましいわ。私もミナクとの子供欲しいな」
ミナクさん苦笑してる。
「ナミネも芸能界デビューしたし、ダブルでお祝いね」
「えっ、そんなデビューとかしてませんし、私はいいです。主役はセレナールさんなので。あ、そういえば、ニンジャ妖精さんのライブチケット、皆さんの分ももらってきたので、どうぞ」
私はみんなにニンジャ妖精のライブチケットを渡した。
「ナミネって馬鹿ね。私は行けないのに仲間はずれして、これってイジメよね。ラルク、辛いわ」
ラルクも私もスルーした。
「ねえ、ラルク、今月、森の湖とカナエさんとセイさんが住んでたとこ行くんだよね?」
「ああ、行くまでは遭難の危険もあるけど、テント持って行ったら3日で着くと思う。森の湖にいられる時間は2時間だ。それを超えたらそこから出れなくなってしまう」
「ちゃんと準備していかないとね」
確か、森の湖って遠い昔は、すぐに行ける場所だったのに。どうして現代はこんなに遠い場所になっているのだろう。
「仲間はずれはイジメよ、ナミネ。ストレスになるわ。お腹の子にも悪影響だし、流産したらナミネのせいね」
こういうのがいやだから、スタジオ行って気分転換したんだよね。
「というか、カナエを差し置いて妊娠だとかカナエに悪いとは思わないのか!」
「あら、カナエってピル飲んでるのよね。だったら妊娠出来ないわね。アルフォンス王子はモラハラ男だったのね。カナエ可哀想〜!」
「やめてください!カナエはピルなんて飲んでいません!アルフォンス王子様を悪く言わないでください!」
「そう、じゃあ、飲んでないか、放課後月城総合病院で確認してくれるかしら?」
「カナエはセレナールと違って暇人ではありません!どうしてカナエばかりに攻撃するのですか!」
私の次はカナエさんか。でも、どうしてピルなんて飲ませているのだろう。私だったら、そんな男とは絶対に別れると思う。
セレナールさんも家で療養とかしていればいいのに。
「セレナール!これ以上カナエを攻撃するとお父様に頼んで流産させるぞ!」
「あら、今の王室に何が出来るのかしら?カナエはピル〜カナエはピル〜!学年中に広めちゃおうかしら」
その瞬間、カナエさんがセレナールさんを突き飛ばした。
「痛い!何するの!私、妊娠してるのよ!」
同情はするけど、何かやたらと私責められてばかりだし、巻き込まれたくないや。
「悪いのはセレナールです!セレナールの脱ぎたての靴下は臭いのです!」
カナエさんはセレナールさんの靴下を扇子を開いて遠くへ吹き飛ばした。
「やめてよ!どうして私ばかりイジメるのよ!もう明日行かないわ!カナエのせいよ!」
「カナエ、靴下取ってきなさい」
「カナエは知りません」
「セナ、カナエを攻撃するのはやめろ!セレナールも自分で取ってこい!」
アルフォンス王子、何をそんなに怒っているの?セレナールさん、妊娠してるし、あんな遠くまで取りに行けるわけないじゃない。カナエさんとアルフォンス王子って上手くいってなさそう。

放課後、私とラルクは教壇の中にいた。
「ねえ、ラルク、新しい家族が出来るね」
「ナミネ、この際だからハッキリ言う。僕はセレナール先輩とは結婚しない。養育費も払わなければ認知もしない。こんなハメられ方するとは思わなかった」
「えっ、どういうこと?」
「細工されたんだ。でないと、妊娠7週目なんてありえない。もうセレナール先輩とは潮時だと思っている」
えっ、言ってることが分からない。昼休みは、そんなこと一言も言ってなかったよね。
「ラルク、セレナールさんを愛してないの?」
「分からない。でも、少なくとも遠い昔のような感情は持てない」
どうして?セレナールさんと出会った時、あんなにも喜んでいたのに。変わってしまったの?
「そっか、望まれない子なんだね。ラルクがあまり嬉しそうじゃないのも、もう冷めかかっているんだね。何だか悲しいね」
「僕は、動物園でナミネに酷いことしてしまったのを後悔してる。こんなにもナミネを愛しているのに、どうしてあんなことしてしまったんだろうって」
「もういいよ、ラルク。私たち親友じゃない。もう恨んでないよ。私、ラルクがセレナールさんを愛せないなら仕方ないと思う。セレナールさんにはシングルマザーになってもらって、ラルクは本気で愛せる人と一緒になったらいいと思う」
仕方ないよね。人の心は移ろいやすい。いくら永遠の愛を誓ったとて、一日一日で感情は少しずつ変わってしまうものなのだ。
私とヨルクさんも、いつかすれ違ってしまうのだろうか。ううん、私の気持ちは変わらない。ヨルクさんがいないと、何も楽しめない。私にはヨルクさんが必要。

学校帰り、私はクレナイ家のお風呂でヨルクさんと一緒にいた。今日はセナ王女とセレナールさんも来ている。
「あ、ヨルクさん、セナ王女のことあったじゃないですか。それ、ラハルさんに話したんです。そしたら、ある脚本家が『飛べない翼』という脚本を書きまして、その映画のヒロイン演じることになりました。主役はラハルさんです。私も映画とかドラマまではと思ったんですが、迂闊なことして後で後悔する人がいるかと思うと、世の中の学生に現実を伝えたくなったんです」 
あの後、脚本家が内容を走り書きしたことはラハルさんからのメールで知ったけど、まさかヒロインをラハルさんが私を指名するとは思わなかった。でも、ヒロインを演じる以上は全ての学生に伝えたい。
ちなみに、台本も中絶薬で流産させるんだよな。
「そっか、ナミネがやりたいなら応援する!撮影見に行くからね」
「ヨルクさん……」
良かった。反対されるかと思ってたけど、すんなり受け入れてくれた。
「ヨルクさんはもし、0.3ミリhappyに私が細工したらどうします?」
「ナミネのことは責任取る。細工でも何でもナミネのことなら私がナミネの面倒を見る」
ヨルクさん凄く真剣。こうやって見ると、やっぱりカッコイイなあ……。ヨルクさんは優しいし、何でも許してくれる。私はそんなヨルクさんに甘えっぱなしなのだ。

お風呂から上がると私はヨルクさんの部屋の布団でゴロゴロしていた。
「あ、ヨルクさん、あの、細工のことなんですけど、最近友達が細工されたんです」
「ラルクでしょ?」
えっ、どうして知ってるの?
「どうして知っているんですか?」
「何となくそう思った」
な、何となくって。って、私ヨルクさんに喋っちゃったよ。その時、リリカさんとセレナールさんが入って来た。いったいどうしたのだろう。あっ、ラハルさんグッズ渡さなきゃ。
「リリカさん、スタジオでもらったラハルさんグッズです」
「ありがとう。ありがたく頂くわ」
リリカさんは私からラハルさんグッズを受け取った。何かよく分からないけど、ラハルさんもカンザシさんもレオルさんもやたら私にグッズくれるんだよね。非売品ももらっちゃったし。
「ヨルク、よく聞いて。ラルクがセレナールに細工されたの。セレナールも認めたわ」
えっ、どうやって吐かせたのだろう。
「リリカお姉様、もう今更です」
「セイに中絶同意書を書かせたから、今から月城総合病院に行くわ!」
「リリカ、許して!孤児院に預けるから中絶だけはどうか許して!」
え、孤児院って何?そんな軽い気持ちで産むの?
「リリカお姉様、落ち着いてください。何も無理矢理中絶させなくても、孤児院に預けて、表向きには流産したことにしたらいいでしょう。ただ、一筆ラルクが別れると決めたらそれを受け入れると書かせたほうがいいとは思いますが」
リリカさんは、ため息をついた。
「分かったわ。セレナール、一筆書いてちょうだい!それから、明日の食事会は私も行くわ」
「わ、分かった」
セレナールさんは、誓約書を書いてリリカさんに渡した。私も、せっかく授かった命だし、セナ王女の時みたいに無理矢理中絶は流石に悲しすぎると思う。ラルクが結婚望まなければ、孤児院も仕方ないかもだけど、どこかで生きているなら、殺すよりマシだと思う。分かんないけど、お腹の中の子供には何の罪もないから。

翌日、私たちはカラン王子の別荘に来ていた。
「ねえ、ラルク、カラン王子の別荘広いね」
「そうだな。王妃の家族は余程の金持ちなんだな」
「セレナール、セナ王女みたいに中絶薬盛られないようにね」
「ユメ!」
ユメさん、嫉妬してる?ユメさんには委員長がいるのに。今は子供より今しかない青春を楽しんだらいいと思うんだけどな。
「ユメさんて、怖い〜!負け犬の遠吠えかしら?」
「何ですって!」
その時、アルフォンス王子がユメさんの背中を押した。その結果、セレナールさんは転んだ。
「やめてくれるかしら。不愉快だわ」
リリカさんの声にみんなは黙り込んだ。
でも、アルフォンス王子はどうしてそんなにもセレナールさんの妊娠を許せないのだろう。
「私だってラルクの彼女がセレナールだなんて物凄くいやだわ!別れて欲しいし、子供だなんて早く気づいて中絶させれば良かったと思ってる。でも、我慢してるのよ!」
リリカさん、認めてなかったんだ。
「分かった。リリカがそう言うなら私もセレナールのことは我慢する。正直、セナがあんなことされて、食事会なんて気分悪いけど」
そうなんだよね。どうして、中絶薬盛られたセナ王女が、この食事会を計画したのか私も謎だった。まさか、セナ王女、何かしたりしないよね?
「リリカ、あんた姉さんのこと馬鹿にしてんのかよ。だったらなんでここにいんだよ!」
「馬鹿にはしてないわ。ただ、クレナイ家の嫁には相応しくないと言っているの。ラルクの縁談を何度もナミネに送ったけど、ナノハさんはヨルクを選んだ。同じクレナイ家だし、ヨルクの縁談がまとまるならと、ナミネは諦めて他の縁談探してたら、セレナールとちゃっかり交際しちゃって。見守っていたら細工で妊娠して、流石に怒りが収まらなかったわ」
えええええ!私、ラルクと交際してたかもしれなかったんだ。でも、ナノハお姉様は、どうしてヨルクさんを選んだのだろう。
「なるほど、そゆこと。姉さん、あんた細工で妊娠したのかよ」
「セルファ違うのよ。不良品だったのよ!」
確かに不良品も中には存在する。でも、ラルクも細工されたって言ってた。
「あ、とりあえず食事運ばれてきましたし、温かいうちに食べませんか?」
「そうね」
「セレナール、使用人が毒味済みよ」
「そう、それじゃあ安心ね」
私たちは運ばれて来た食事を食べはじめた。もち米のお粥かあ。健康によさそう。
「セレナール!細工で妊娠したのですね!まるで望まれない妊娠ですね!」
その瞬間、セレナールさんはカナエさんを引っぱたいた。
「もうハッキリ言うわ!弟たちにはもっとまともな彼女と交際して欲しかった!セレナールは何の能力もないのに、ワガママばかり。セナ王女もワガママでめんどくさい女。こんなことならミナクだけでも、エミリと交際させるべきだったわ!」
エミリさんかあ。可愛いし強いし、頭もいいし、縁談もいっぱい来てるんだよね。でも、まさかの皇太子がエミリさんの心掴んじゃったからなあ。
「リリカお姉様、セナ王女は、私を元に戻してくれた恩人です。私がはじめて本気で愛した人です。どうかお怒りをお静めください」
ミナクさん、すっかり別人。でも、セナ王女はカラルリさんが見ていたようなラブリーフェアリーは認めてない。ミナクさん、上手くやれるのかな。
それに、リリカさんは誰とも交際しないのだろうか。
「美味しいね、ラルク」
「そうだな。お粥って普段食べないけど、工夫すると案外いけるな」
「ナミネ、今度お粥作ってあげる」
「ヨルクは昔から料理好きですね」
「カナエさんには叶いませんけど、趣味でやっています」
そっか。カナエさんもカップル日記によく料理中の画像載っけてたりするなあ。アルフォンス王子はカナエさんの料理、頻繁に載せてるし。分からないんだよなあ。誰が見ても理想のカップルなのに。
「あ、落ち武者さんもエルナさんとカップル日記登録しませんか?」
「私は構わないわ」
「相手がエルナってとこが癪に障るけど、みんなの投稿見れるなら投稿する」
エルナさんと落ち武者さんはカップル日記を登録しはじめた。
あ、セレナールさん投稿してる。

『今日は私の妊娠祝いのためにカラン王子の別荘で食事会。
とても美味しそうな料理。

元気な子を産んで、ラルクと幸せになるぞꯁꯧ』
セレナールさん、ラルクはセレナールさんとは結婚しないんだよ。セレナールさんもいい人見つかるといいね。

『ナミネに作ってあげたい』
ヨルクさん……。やっぱり私、ヨルクさんじゃないとダメ。

『今度ユメと一緒に料理する』
委員長は本当にユメさんのこと好きなんだなあ。何かMake Loveは偽り!?のユメさんとは違いそうだけど。

みんな完食した。今回は何もなかった。本当良かった。ラルクと一緒になれなくても、セレナールさんにはシングルマザーとしてでも幸せになって欲しい。

その晩、私はクレナイ家でヨルクさんと布団の中でお喋りしていた。セナ王女とセレナールさんもお泊まりだった。
私が眠りについた頃、クレナイ家の第1母屋はドタバタしていた。どうしたんだろう。
私は目を覚ました。
「ヨルクさん……?」
「ナミネ、セレナールさんが、出血して痛み訴えてるの。今から月城総合病院に行くけど、ナミネはどうする?」
え……どういうこと?私は頭が回っていなかった。
「い、行きます!」
私はルームウェアのまま、クレナイ家 運転手の車に乗り込んだ。

月城総合病院に着くとセレナールさんの緊急オペがはじまった。みんなはセレナールさんのお腹の子の無事を願った。
「はあ、こんなことだろうと思ったわ」
「リリカ、まだ分からないわよ」
「そうじゃなくて、何かされたのは事実じゃない!セナ王女の時みたいに」
どうして?みんな完食してたよね。味も美味しかったし、中絶薬なんて入ってなかった。それなのに……二度までも罪もない子が……。

2時間後、オペは終わった。セレナールさんは病室のベッドに移された。
「トケイ草だね。トケイ草は毒味では分からないし、2日も経てば体内から消えてしまう。普通の人には害はないけれど、妊娠してる人の体内に入ったら6〜20時間の間に流産するんだよ。セレナールは7週目とはいえ、お腹の子は14週目くらいに育っていたから、初期中絶は出来ず、中期中絶になるんだ。死産届は役所に届けないといかないし、埋葬もしないといけない。また一度だけ聞くね。誰が何のためにこんなことしたのかな?」
みんなは真っ先にセナ王女を見た。
「これがセレナールから取り出した胎児だよ。出来るだけ形を壊さないように心がけたけど、セレナールの身体を優先したらこれが最善策だった」
そんな……頭と胴体が……。
ミナクさん、ユメさん、セナ王女、アルフォンス王子、ヨルクさん、カラルリさんは吐いた。
ラルク、ラルクは!?
「ラルク、大丈夫!?」
「ああ、何ともない。食事会って聞いた時点で何となく予想はしてた」
え、だったら、どうして止めなかったの?ラルク、どうして!!

1時間後、セレナールさんは目を覚ました。
「どうなったの?私の子は?」
「セレナール、流産よ。誰かがあなたにトケイ草を盛ったのよ」
「そんな……いったい誰が……!誰が私の子を殺したのよ!死刑にしてやるわ!!」
セレナールさんは大泣きした。
「残酷だけど、取り出した胎児は死亡届と埋葬が必要だわ」
リリカさんはセレナールさんから取り出された箱に入った胎児をセレナールさんに見せた。
「いやぁあああああああああ!!!!返して!!!生きて返してよ!!!!!」
「姉さん、あんたの子もう死んでんだ。犯人は分かってるから皇帝陛下に罰してもらう。帰ろう」
落ち武者さん、せっかく叔父さんになれるかもしれなかったのに……。
「これは殺人だから帰れないよ。これから警察の取り調べがあるからね」
ハル院長は妖精村警察を呼んだようだ。
私たちは警察官が来るのを待った。ここで白黒ハッキリさせないといけない。犯人には生きて償って欲しい。

気が付けば明け方になっていた。

……

あとがき。

文字数多くなったので一旦区切ります。

セナの時は小説内では大袈裟に書いたものの、セレナールはまた別ですよね。

いったい誰がセレナールにトケイ草を盛ったのでしょう。

もしセナの子が生きていたら……セレナールの子が生きていたら……。でも、一度死んだ人間は蘇りません。
Copyright (C) 2009 雨の音を聴きながら, All right Resieved.
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