日常のこととかオリジナル小説のこととか。
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ashita
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女性
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地主(土地貸してます)
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漫画やアニメを見るのが好きです。最推しはフーディーニ ♡
自己紹介:
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ブログ、もう書かないと思ってました。
けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。
小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。
純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。
ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。
小説、ぼちぼちマイペースに書いてゆきます。
よろしくお願い致します。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
お知らせ。
イラストは現在「ナノハナ家の日常」に載せております。サイドバーにリンクあります。
また、「カラクリよろずや」にて無料のフリーイラスト素材配布もはじめました✩.*˚
フリーイラスト素材も増やしていく予定です(*'ᴗ'*)
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
模倣・無断転載などは、ご遠慮ください。
ブログの小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
小説・純愛偏差値に関しましては、武家名・貴族名(程度による) / 及び、武官の階級 / 扇子・羽子板・花札・百人一首・紙飛行機などのアイテム使用方法の模倣の一切を禁じております。
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X @kigenzen1874
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ブログ、もう書かないと思ってました。
けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。
小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。
純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。
ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。
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〈資格履歴〉
2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
→漢方コーディネーター 合格
→薬膳調整師 合格
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〈資格証明バナー〉

2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
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〈資格証明バナー〉

純愛偏差値 未来編 一人称版 86話
《ナミネ》
私たちはガタイの大きな男を交番の人に引き渡した後、お姉さんを家まで送り届け、タルリヤさんの家へと向かった。
お姉さんによると、ガタイの大きな男はたまに町に下りてきては、年頃の女の子をイジワルしているらしい。イジワルされた女の子の4割は自殺しているとか。けれど、この町にお墓を建てることは政府が許していないため、死んだ人は残酷にもごみ捨て場に置かなければならないのである。差別されている町だからといって無慈悲にもほどがある。
タルリヤさんの家に着くと16時を回っていた。明日は、果物係はカギで崖を登らなければならないため、料理係は早めの夕ご飯作りに取りかかった。
私はヨルクさんがお団子にした髪をほどき、炎の舞で髪を乾かした。こんなふうに髪を下ろすのも久しぶりだ。お風呂に入れず、ずっと髪を結んでいたから。
「あ、ミツメさん、ここでは指定の下着を着てください。ガーゼ布が薄いため、目立つ下着だと、ヨルクさんのようにダサイパンツが丸見えになってしまいますので」
「何故、私を侮辱する。私は慣れたものしか着ない」
セレナールさんほどではないけど、いくら慣れていないからといって指定した下着着てこないヨルクさんもヨルクさんだ。ダサイパンツがステテコもどきから丸見えでは、彼氏と思われるのが何だか恥ずかしい。
「分かりました。空き家にある余っているものを着ればいいんですよね?」
「はい、全てフリーサイズですので、ヨルクさんによると胸の大きな人でも、ゆったり着ることが出来るそうです」
「ねえ、どうして私のこと馬鹿にするの?私はみんなのためにロォラさんと作ったんだよ!ナミネの下着が透けないためにも下着は布を二重にしたし」
ヨルクさんは、ちょっとした言葉に過剰反応をする。ワンピースもフリーサイズとはいえ、身長高い人は、ミニスカみたいになっているし。
「ナミネさん、少し2人になれませんか?」
どうして、カンザシさんって自分の都合しか考えないの?ここはナノハナ家とは違う。少しの時間の乱れが命取りにもなる。
「あの、明日は重要な役割をしなければならないので、夕ご飯食べた後はすぐに寝ます」
「リーダー、ここは妖精村とは違うんです。リーダーはリーダーの役割をこなしてください!」
本当その通りだ。体力を削ってまで、お喋りするほどの余裕なんて、ここの暮らしにはないのだ。その時、料理係が今日の夕ご飯を運んで来た。今日はカラン王子か。
「ラルク、ドーナツだよ!」
「カラン王子、セレナールとアヤネには与えなくていいわ」
リリカさんはどこまでも厳しい。けれど、ここでのリーダーはリリカさんだ。
「クラスでは優しくしてくれていたのに、どうしてここでは冷たくするんですか!」
「サバイバルって、人の本性がよく分かるものよ。こんな暮らしてもナミネやナナミは少しも文句を言わない。けれど、あなたは何もしない上に文句ばかり。根はいやな女だったのね」
何もしない人は本当に苛立つ。私はアヤネさんとセレナールさんに下剤を飲ませると岩の結界をかけた。
「アヤネさん、セレナールさん、このまま、ここでご飯抜いていると、そのうち脚気になりますよ?いい加減トイレ掃除してください!しないなら、妖精村に戻しません!一生その結界の中で暮らしてもらうことになります!選ぶのはあなた方です」
さあ、どう出るか。流石に通しで水は与えるけど、それだけだ。トイレに間に合わなくても私が知ったことではない。
「わ、分かりました!今すぐしますから、結界解いてください!」
「分かったわよ!このゲス女!やるから結界解きなさいよ!」
やはり、ここでお漏らしをするわけにはいかないか。
「では、ミツメさん、証拠の動画撮ってきてください」
念には念を入れねば。結界を解くなりサボられては困る。
「分かりました」
私は結界を解いた。セレナールさんとアヤネさんは慌ててテントを出てトイレに向かって行った。続くようにミツメさんも2人を追いかけた。
「あの、セナ王女、カギで崖を登って落ちそうになった時に、舞で対処して上まで登るのはありでしょうか?」
「ええ、もちろんありよ。武器も完璧ではない。咄嗟の対応が出来るのならカギで登れることを認めるわ」
よし、これなら私とラルクは余裕だ。ただ、今後はもうワイヤーは使えず、果物係は全員カギで登らなくてはならない。特に崖から下りる時に重たい荷物を背負いながら下りるのは慎重になる必要がある。前みたいに気が抜けないのは確かだ。それでも、2人も転落しているゆえ、暮らしが古代なら現代のものは逆に合わないのかもしれない。
「分かりました」
私はヨルクさんにもたれかかった。服はダサイけど、ヨルクさんはいつもいい香り。
「ナミネ、明日は無理しないで。果物係でなくても役割はいっぱいあるんだし」
「大丈夫です」
やっぱり何だかんだ言って、一度果物係になれば、それを引退するのは詫びしいものである。自分はもう用済みなんだって自責するだろうし、何がいけなかったのか考え込むと思う。そういう意味ではアルフォンス王子の気持ちも分からなくもない。
30分ほどするとセレナールさん、アヤネさん、ミツメさんが戻って来た。
「ミツメ、動画見せてちょうだい」
ミツメさんはリリカさんに携帯を渡した。
「これでようやく女子トイレは綺麗になったわね。アヤネ、セレナール、ここではそれぞれの役割をこなさなければならないの。もし、妖精村で一人暮らししていて、トイレが故障してそのままにしておいたらどうなる?水道、お風呂も壊れてそのままにしておいたらどうなるかしら?ここにはみんながいるけど、1人になった時のことも考えなさい!」
リリカさんはクレナイ家でも、いつも仕切っているのだろうか。学校とは全然違うリリカさんの姿。ここにいるメンバーくらいしか知らない。
「分かりました……今後は何かしらします」
「分かったわよ!けれど、トイレは溜まってきたと感じた人が処理する決まりは、今後は遂行して!」
今後は本当にセレナールさんとアヤネさんはここで与えられた役割をしてくれるのだろうか。
「ええ、今後は溜まったと感じた人が処理をし、汚した人は汚れを掃除してちょうだい。それと、ズーム、石鹸は十分に出来たから他の作業してくれるかしら?小麦がなくなったからミツメは洗濯係に回ってくれる?」
そっか。ズームさん物凄いスピードで作ってたから石鹸は市場で余るほどなのか。
「この町で十分な栄養を取るのは厳しいため、脚気の患者が病院にしばしばかけこんでいるそうです。果物と薬草を分けていただけるならサプリメントを作ろうかと思いますがいかがでしょうか?」
サプリメントか。それなら脚気も防げるし、楽に栄養を補給することが出来る。カラルリさんが加熱で食べ物を作りそれを市場に売っているなら、それに加えサプリメントも市場で売り出されたら買う人は多くいるはずだ。
「分かりました。洗濯係に回ります」
「サプリメントか。考えたわね。じゃあ、明日からズームはサプリメントを作ってちょうだい」
「ねえ、ラルク。公衆浴場に行ったからアヤネさんの酷い体臭もなくなってよく眠れるね」
「ナミネ、今そんな話全然してなかっただろ」
案の定アヤネさんは泣きはじめた。アヤネさんってどうしてこんなにメンタルが弱いのだろう。
「いい加減、このようなイジメはやめてください」
「はいはい、すみませんでしたー!」
アヤネさんは泣きながらテントを出て行った。
「あんたさ、そろそろ人なじるのやめな」
「ですが、アヤネさんはまた何もしません。それにこんなにメンタル弱くてはここではやっていけません!」
アヤネさんはずっと何もしていない。ここひと月も。それなのに当たり前のように楽して暮らして。私はそういう人は嫌いだ。
「ナミネの言う通りよ。アヤネは何もしないわ。何もしないままここで甘え続けていたのよ。私、そんな人間大嫌いよ!」
やっぱりリリカさんも同じ考えだ。ここでは、それぞれが与えられた役割をこなさなければ暮らしていけない。それをずっと何もしないなんて言語道断だ。
あれ、カンザシさんがテントの中にいる。エルナさんはとっくに洗い物しているのに。
「あの、カンザシさん、洗い物して来てくれませんか?エルナさん1人ではエルナさんに負担がかかります」
「どうして命令するんですか。だったらナミネさんも一緒にしてください」
何その言い方。私は明日からカギで崖を登らなくてはならないのに。
「カンザシ、ここでは与えられた役割はちゃんとする!サボる人がいればそれだけ効率が悪くなるのよ!ナミネは朝4時に起きて水汲みをしてるわ!7時半には崖を登って、そこから15時半まで作業をしているわ!あなたに同じことが出来るのかしら?ナミネに倒れられては困るの。だから、無闇にナミネに無理強いをしないでちょうだい」
ここでもリリカさんはビシッとキメる。数年後はカナコさんやレイカさんみたいに成長していそう。どこも長女はしっかりしてるんだなあ。
「分かりました」
カンザシさんは気を落としながらトボトボとテントを出て行った。
この日も私はヨルクさんと同じ寝袋でぐっすり眠った。後から聞くところによると、夜中にカンザシさんが自分の寝袋に私を入れようとしたところを落ち武者さんが気付いて阻止したらしい。ミツメさんはともかく、カンザシさんがここにいては調子が狂う。
早朝4時。
私はいつものように水汲みをした。けれど、この日は雨が降っていた。私はリュックからビニール袋を取り出し、タライ2つにかけた。
ここに来てからヨルクさんに一度も起こしてもらっていない。おじいさんの修行効果だろうか。
5時半になるとみんな起きはじめた。
「あの、セナ王女、今日は雨ですが果物はどうしますか?」
「もちろん決行よ!雨だからといって1日でも休めば、1日分の食糧は消える。ここでは一日一日働かないといけないの」
サバイバル慣れしているせいか、セナ王女の言い分は筋が通っている。雨の日の崖上りは晴れている日に比べたら随分難易度は高いが、私は登りたい。自分の限界を知りたいのだ。
「分かりました」
私を含めみんなレインコートを来ている。
「ナミネ、このポシェットに折りたたんだ箱と、果物入れる薄いリュック入れたから」
「ありがとうございます、ヨルクさん」
そっか、これまではワイヤーで登っていたからリュックを背負っていたけれど、これからはカギで登るからリュックよりポシェットのほうがいい。ヨルクさんから渡されたのは腰に巻く大きめのポシェットだった。ここへ来てはじめて使う。
朝食は、この家の煮物とドライフルーツだった。あれ、水に味がある。
「ねえ、ラルク。水に味があるよ」
「ロォラさんが余ったフルーツの皮で味付けしてくれたんだよ」
余った皮。ロォラさんって無駄のない人なんだなあ。ナノハナ家ではどれだけ捨てていたことか。妖精村に帰ったら私も試してみようかな。
そして、いよいよ崖に向かう時間が来た。
「ナミネ、無理は絶対しないで。果物係以外にも役割はあるから」
「私は大丈夫です」
雨は小降りから大降りになっている。
果物係は崖へと向かいはじめた。
地面は泥に水が混ざって、ところどころ大きな水溜まりが出来ている。私はカギを取り出した。本来ならカギ縄といって、クモのようなカギの部分を引っかけ、縄を掴み登って行くのだが。ここに来る前のセナ王女の指示でカギ縄ではなく、カギのみで直接登るものをみんな持って来ているのだ。また、カギはクモ型ではなく、1本のストレートフックになっている。これではまるで釣りの道具のようだ。けれど、釣り用ほど細くはなく、1.5センチほどの太さで、全長はだいたい25センチほどだろうか。このカギを両手に持ち登っていくのだ。そして、命綱を付けることも許されなかった。このような登り方は妖精村の武官くらいだろう。
私は崖で靴の泥をはらうと、釣り用具の大きい版のようなカギで崖を登ろうとした。はじめて使うが、やはりこれまでワイヤーを使っていただけに難易度の高さが手に取るように分かる。持ち手のカギは確実なところに引っかけないといけないし、足も確実なところを踏む必要がある。今日は大雨ゆえ、滑りやすくなっている。私は下のほうでシュミレーションしたあと、ゆっくり崖を登りはじめ、コツを掴むと少し速度を速めて中間地点からは猛スピードで崖を登った。
果樹園に着くと既にセナ王女とラルクがいた。やはり、2人は慣れているか。続いてナナミお姉様、リリカさんが来た。その時、風が吹いてミナクさんが飛ばされた。
「ミナク!」
ナナミお姉様は咄嗟にロープを投げた。
「大丈夫だ、ナナミ!」
ミナクさんは花の舞で少し上に上がり、無事に果樹園に着いた。あとは、アルフォンス王子だが……。足を上手く引っかけられないのか、ずっと下で苦戦している。そして焦りが見られた。足場を見つけられないのなら、崖を登るのは無理だろう。
「アルフォンス!あなたは戻って他の作業してちょうだい!」
見かねたセナ王女が声をかけた。しかし、アルフォンス王子は諦めようとしなかった。これも果物係引退への拒否感からだろう。私がアルフォンス王子の立場でも足掻いたかもしれない。自分の力量を否定されるような場面に陥ると誰もが、力不足な自分を嘘だと認めないものである。
「あの子も頑固ね。とりあえずアルフォンス以外合格よ!」
セナ王女はアルフォンス王子を失格にした。このような場面は見たくなかったが、誰もが何でもかんでも出来るわけではない。アルフォンス王子にとっては、かなりの屈辱だろうけど、これも1つの経験だ。
あれ、小さな人間がいる。
「ねえ、ラルク。コビトがいるよ」
「ナミネ、今すぐ捕まえろ!」
私はコビトの元へ走った。するとコビトは逃げなかった。
「久しぶり、ナミネ」
え、知り合いなの?でも、私は知らない。
「あの、どちら様でしょうか?」
「僕も忘れられたもんだね。僕はここの果樹園を管理しているフルート」
ここには管理者がいたのか。だから毎日果物がかわっていたわけか。よく見ると今日は果物が多い。
「そ、そうですか。あの、ここは果物が毎日変わってますよね?果物が殆どない日もあるのですか?」
「僕の気まぐれで変えてる。果物があまりない日もあるよ。でも、気まぐれだから毎日そんなことはしないけどね」
そうだったのか。とりあえず、果物はこれからも定期的にあることは分かった。
「あの、ここの果物って自由に取っていいんですよね?でも、土を持っていくのがダメなのはどうしてですか?」
「ここまで来れたなら果物は自由に取っていいよ。この際だから言うけれど、ここの果樹園は特別なところでそれを僕がマニュアル通りに管理しているから当然禁止事項はあるよ。ただでさえ小さな果樹園なのに土を取られたらここの果物に支障が出るからね。ここにある土は特別な土だから、少しも持ち帰ることは禁止。事故なら仕方ないけど、わざと枝を折るのも禁止。木ごと持ち帰りも禁止。勝手に別のもの植えるのも禁止。とにかく果樹園を勝手に変えるような真似をしなければ大丈夫」
雇われ管理者だろうか。けれど、私を知っているということは、私はここに来たことがあるんだ。果樹園に管理者がいるということは薬草園にも管理者がいるのだろうか。
それにしても、私はここに来た記憶なんて全くない。
「あの、私は昔、ここに来たことがあるのでしょうか?」
「そうだね。悲しい話だけど、大昔、妖精村に生まれたナミネはナノハナ家の5女だった。けれど、赤ん坊の時に産婦人科で取り違えられてしまい、ここの紀元前村の家族の子として育てられた。でも、ナミネが5歳になる頃に育て親は産婦人科で取り違えられたことを知り、ナノハナ家から本当の子を連れてくるなりナミネを家から追い出したんだ。小さいナミネは空き家で1人で住みはじめ、ある日、この崖を登って果物を取りに来たんだよ。その後、ナミネは町の人気者となった。ナミネが14歳になった頃、ヨルクはナミネを迎えに来たけどナミネはここが家だと言って、ヨルクと結婚し、ヨルクは家事をナミネは崖を登って果物や薬草を取って暮らしてたんだよ。僕とはナミネが老いて亡くなるまで、ずっと仲良しの友達だったんだよね」
私にそんな過去があったんだ。取り違えられて、いっときは育ての親だったのに、本当の子供と暮らせるようになれば、私を追い出しただなんて、酷い。話を聞いているだけでも苛立ってきた。
でも、ヨルクさんはどうやってここまで私を迎えに来たのだろう。そもそもナノハナ家の人間は誰も私を迎えに来なかったの?
「あの、その時、ナノハナ家の人は誰も私を迎えに来なかったのでしょうか?ヨルクさんはどうやってここまで来たのですか?」
「ナノハナ家の人間は、ナミネの育ての親が近いうちに連れて行くと嘘をついて、それを信じてずっと待ってた。ここには妖精村と紀元前村に繋がる洞窟のような通路があるんだよ。無論徒歩だと最低でも20日はかかるけど、ヨルクはナミネを迎えに行く一心で24日かけて歩いて来たんだよ。今もその通路は森の手前にあることにはあるけれど、妖精村まで繋がっているかは分からないね」
そういえば、遠い昔、セレナールさんやカナエさんたちがここに来た時にセイさんは通路を通って来たはず。あまりに昔のことだから今も通れるかは分からないけど、ヨルクさんは私のために24日もかけて来てくれたんだ。今と変わらず、ずっと私のことを愛してくれていたんだ。
「そうでしたか。その通路の存在は聞いたことはあります。フルートさんと私は、仲良しだったんですね。あの、フルートさんは、ずっとここにいるんですか?薬草園のほうも管理者がいるのでしょうか?」
「僕は毎日ここにいるよ。薬草園のほうは双子の兄のヤクゼンが管理してる」
かつての私は、ここでひとりぼっちになってもフルートさんがいたから、ここでの暮らしをやっていけたのだと思う。きっと、私にとってフルートさんは家族のようなものだったんだろうなあ。
「久しぶりに会えた記念にあげる」
フルートさんは私に金のリンゴを3つ渡した。3つ!?そんなにもらっていいのだろうか。
「あの、このような貴重なものを3つももらっていいのでしょうか?」
「いいよ。銅の果物は人の病を60%治す。銀の果物は人の病を80%治す。金の果物は人の病を完全に治すんだ。市場には売り出さずナミネや友達が困った時に持っておいて。まあ、感染症の人に与えてもいいけど。3つでは足りないだろうね。1人長さは0.5センチで横幅は薄切りで効果が出るよ。あまり人のために使いすぎないでね」
感染症が出たらこのリンゴで多くの人の命が助かる。けれど、私たちは経口補水液も作れるし、点滴もある。1つは家に持って帰りたいところだ。
「分かりました。大切に使います」
「ナミネ、そのリンゴ、何もしてない誰かさんに盗まれないためにも私が厳重に結界かけて保管するから渡してくれるかしら?」
リリカさんは果物係として、ここで食べる果物は全て管理している。リリカさんに預ければ安心だ。
「はい、分かりました。あの、1つは持って帰りたいのですがいいでしょうか?」
「ええ、構わないわ」
私はリリカさんに金のリンゴ3つを渡した。今日はパイナップルがいっぱい生えていて、私はフルートさんと話している間にたくさんのパイナップルを収穫した。
「フルートさん、ここにいる間は毎日来ます。そして、妖精村に戻ったあともきっと来ます」
「待ってる。何世紀も待ってるよ」
フルートさんから貴重な金のリンゴをもらったはいいけれど、帰ると今度はアルフォンス王子の今後の役目について話し合わなければならない。
フルートさんに会えたことはとても嬉しいが、ここでの暮らしの現実を思うと私の心は気が重たかった。
崖を下りる時は登る時とは違って風の舞が使えるから空中に浮きながらも楽に下りられた。そして、私たちは果物を持ってタルリヤさんの家に向かいはじめた。いよいよ、長い会議がはじまる。
……
あとがき。
やっと女子トイレが綺麗になった。
のはいいけれど、今度はアルフォンスが何もしなくなるフラグ?
フルートと再会出来たナミネ。
けれど、何世紀ぶりなのだろう。ずっと生きている者は死者の転生を待たなければならない。そういう運命も悲しい気がする。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
《ナミネ》
私たちはガタイの大きな男を交番の人に引き渡した後、お姉さんを家まで送り届け、タルリヤさんの家へと向かった。
お姉さんによると、ガタイの大きな男はたまに町に下りてきては、年頃の女の子をイジワルしているらしい。イジワルされた女の子の4割は自殺しているとか。けれど、この町にお墓を建てることは政府が許していないため、死んだ人は残酷にもごみ捨て場に置かなければならないのである。差別されている町だからといって無慈悲にもほどがある。
タルリヤさんの家に着くと16時を回っていた。明日は、果物係はカギで崖を登らなければならないため、料理係は早めの夕ご飯作りに取りかかった。
私はヨルクさんがお団子にした髪をほどき、炎の舞で髪を乾かした。こんなふうに髪を下ろすのも久しぶりだ。お風呂に入れず、ずっと髪を結んでいたから。
「あ、ミツメさん、ここでは指定の下着を着てください。ガーゼ布が薄いため、目立つ下着だと、ヨルクさんのようにダサイパンツが丸見えになってしまいますので」
「何故、私を侮辱する。私は慣れたものしか着ない」
セレナールさんほどではないけど、いくら慣れていないからといって指定した下着着てこないヨルクさんもヨルクさんだ。ダサイパンツがステテコもどきから丸見えでは、彼氏と思われるのが何だか恥ずかしい。
「分かりました。空き家にある余っているものを着ればいいんですよね?」
「はい、全てフリーサイズですので、ヨルクさんによると胸の大きな人でも、ゆったり着ることが出来るそうです」
「ねえ、どうして私のこと馬鹿にするの?私はみんなのためにロォラさんと作ったんだよ!ナミネの下着が透けないためにも下着は布を二重にしたし」
ヨルクさんは、ちょっとした言葉に過剰反応をする。ワンピースもフリーサイズとはいえ、身長高い人は、ミニスカみたいになっているし。
「ナミネさん、少し2人になれませんか?」
どうして、カンザシさんって自分の都合しか考えないの?ここはナノハナ家とは違う。少しの時間の乱れが命取りにもなる。
「あの、明日は重要な役割をしなければならないので、夕ご飯食べた後はすぐに寝ます」
「リーダー、ここは妖精村とは違うんです。リーダーはリーダーの役割をこなしてください!」
本当その通りだ。体力を削ってまで、お喋りするほどの余裕なんて、ここの暮らしにはないのだ。その時、料理係が今日の夕ご飯を運んで来た。今日はカラン王子か。
「ラルク、ドーナツだよ!」
「カラン王子、セレナールとアヤネには与えなくていいわ」
リリカさんはどこまでも厳しい。けれど、ここでのリーダーはリリカさんだ。
「クラスでは優しくしてくれていたのに、どうしてここでは冷たくするんですか!」
「サバイバルって、人の本性がよく分かるものよ。こんな暮らしてもナミネやナナミは少しも文句を言わない。けれど、あなたは何もしない上に文句ばかり。根はいやな女だったのね」
何もしない人は本当に苛立つ。私はアヤネさんとセレナールさんに下剤を飲ませると岩の結界をかけた。
「アヤネさん、セレナールさん、このまま、ここでご飯抜いていると、そのうち脚気になりますよ?いい加減トイレ掃除してください!しないなら、妖精村に戻しません!一生その結界の中で暮らしてもらうことになります!選ぶのはあなた方です」
さあ、どう出るか。流石に通しで水は与えるけど、それだけだ。トイレに間に合わなくても私が知ったことではない。
「わ、分かりました!今すぐしますから、結界解いてください!」
「分かったわよ!このゲス女!やるから結界解きなさいよ!」
やはり、ここでお漏らしをするわけにはいかないか。
「では、ミツメさん、証拠の動画撮ってきてください」
念には念を入れねば。結界を解くなりサボられては困る。
「分かりました」
私は結界を解いた。セレナールさんとアヤネさんは慌ててテントを出てトイレに向かって行った。続くようにミツメさんも2人を追いかけた。
「あの、セナ王女、カギで崖を登って落ちそうになった時に、舞で対処して上まで登るのはありでしょうか?」
「ええ、もちろんありよ。武器も完璧ではない。咄嗟の対応が出来るのならカギで登れることを認めるわ」
よし、これなら私とラルクは余裕だ。ただ、今後はもうワイヤーは使えず、果物係は全員カギで登らなくてはならない。特に崖から下りる時に重たい荷物を背負いながら下りるのは慎重になる必要がある。前みたいに気が抜けないのは確かだ。それでも、2人も転落しているゆえ、暮らしが古代なら現代のものは逆に合わないのかもしれない。
「分かりました」
私はヨルクさんにもたれかかった。服はダサイけど、ヨルクさんはいつもいい香り。
「ナミネ、明日は無理しないで。果物係でなくても役割はいっぱいあるんだし」
「大丈夫です」
やっぱり何だかんだ言って、一度果物係になれば、それを引退するのは詫びしいものである。自分はもう用済みなんだって自責するだろうし、何がいけなかったのか考え込むと思う。そういう意味ではアルフォンス王子の気持ちも分からなくもない。
30分ほどするとセレナールさん、アヤネさん、ミツメさんが戻って来た。
「ミツメ、動画見せてちょうだい」
ミツメさんはリリカさんに携帯を渡した。
「これでようやく女子トイレは綺麗になったわね。アヤネ、セレナール、ここではそれぞれの役割をこなさなければならないの。もし、妖精村で一人暮らししていて、トイレが故障してそのままにしておいたらどうなる?水道、お風呂も壊れてそのままにしておいたらどうなるかしら?ここにはみんながいるけど、1人になった時のことも考えなさい!」
リリカさんはクレナイ家でも、いつも仕切っているのだろうか。学校とは全然違うリリカさんの姿。ここにいるメンバーくらいしか知らない。
「分かりました……今後は何かしらします」
「分かったわよ!けれど、トイレは溜まってきたと感じた人が処理する決まりは、今後は遂行して!」
今後は本当にセレナールさんとアヤネさんはここで与えられた役割をしてくれるのだろうか。
「ええ、今後は溜まったと感じた人が処理をし、汚した人は汚れを掃除してちょうだい。それと、ズーム、石鹸は十分に出来たから他の作業してくれるかしら?小麦がなくなったからミツメは洗濯係に回ってくれる?」
そっか。ズームさん物凄いスピードで作ってたから石鹸は市場で余るほどなのか。
「この町で十分な栄養を取るのは厳しいため、脚気の患者が病院にしばしばかけこんでいるそうです。果物と薬草を分けていただけるならサプリメントを作ろうかと思いますがいかがでしょうか?」
サプリメントか。それなら脚気も防げるし、楽に栄養を補給することが出来る。カラルリさんが加熱で食べ物を作りそれを市場に売っているなら、それに加えサプリメントも市場で売り出されたら買う人は多くいるはずだ。
「分かりました。洗濯係に回ります」
「サプリメントか。考えたわね。じゃあ、明日からズームはサプリメントを作ってちょうだい」
「ねえ、ラルク。公衆浴場に行ったからアヤネさんの酷い体臭もなくなってよく眠れるね」
「ナミネ、今そんな話全然してなかっただろ」
案の定アヤネさんは泣きはじめた。アヤネさんってどうしてこんなにメンタルが弱いのだろう。
「いい加減、このようなイジメはやめてください」
「はいはい、すみませんでしたー!」
アヤネさんは泣きながらテントを出て行った。
「あんたさ、そろそろ人なじるのやめな」
「ですが、アヤネさんはまた何もしません。それにこんなにメンタル弱くてはここではやっていけません!」
アヤネさんはずっと何もしていない。ここひと月も。それなのに当たり前のように楽して暮らして。私はそういう人は嫌いだ。
「ナミネの言う通りよ。アヤネは何もしないわ。何もしないままここで甘え続けていたのよ。私、そんな人間大嫌いよ!」
やっぱりリリカさんも同じ考えだ。ここでは、それぞれが与えられた役割をこなさなければ暮らしていけない。それをずっと何もしないなんて言語道断だ。
あれ、カンザシさんがテントの中にいる。エルナさんはとっくに洗い物しているのに。
「あの、カンザシさん、洗い物して来てくれませんか?エルナさん1人ではエルナさんに負担がかかります」
「どうして命令するんですか。だったらナミネさんも一緒にしてください」
何その言い方。私は明日からカギで崖を登らなくてはならないのに。
「カンザシ、ここでは与えられた役割はちゃんとする!サボる人がいればそれだけ効率が悪くなるのよ!ナミネは朝4時に起きて水汲みをしてるわ!7時半には崖を登って、そこから15時半まで作業をしているわ!あなたに同じことが出来るのかしら?ナミネに倒れられては困るの。だから、無闇にナミネに無理強いをしないでちょうだい」
ここでもリリカさんはビシッとキメる。数年後はカナコさんやレイカさんみたいに成長していそう。どこも長女はしっかりしてるんだなあ。
「分かりました」
カンザシさんは気を落としながらトボトボとテントを出て行った。
この日も私はヨルクさんと同じ寝袋でぐっすり眠った。後から聞くところによると、夜中にカンザシさんが自分の寝袋に私を入れようとしたところを落ち武者さんが気付いて阻止したらしい。ミツメさんはともかく、カンザシさんがここにいては調子が狂う。
早朝4時。
私はいつものように水汲みをした。けれど、この日は雨が降っていた。私はリュックからビニール袋を取り出し、タライ2つにかけた。
ここに来てからヨルクさんに一度も起こしてもらっていない。おじいさんの修行効果だろうか。
5時半になるとみんな起きはじめた。
「あの、セナ王女、今日は雨ですが果物はどうしますか?」
「もちろん決行よ!雨だからといって1日でも休めば、1日分の食糧は消える。ここでは一日一日働かないといけないの」
サバイバル慣れしているせいか、セナ王女の言い分は筋が通っている。雨の日の崖上りは晴れている日に比べたら随分難易度は高いが、私は登りたい。自分の限界を知りたいのだ。
「分かりました」
私を含めみんなレインコートを来ている。
「ナミネ、このポシェットに折りたたんだ箱と、果物入れる薄いリュック入れたから」
「ありがとうございます、ヨルクさん」
そっか、これまではワイヤーで登っていたからリュックを背負っていたけれど、これからはカギで登るからリュックよりポシェットのほうがいい。ヨルクさんから渡されたのは腰に巻く大きめのポシェットだった。ここへ来てはじめて使う。
朝食は、この家の煮物とドライフルーツだった。あれ、水に味がある。
「ねえ、ラルク。水に味があるよ」
「ロォラさんが余ったフルーツの皮で味付けしてくれたんだよ」
余った皮。ロォラさんって無駄のない人なんだなあ。ナノハナ家ではどれだけ捨てていたことか。妖精村に帰ったら私も試してみようかな。
そして、いよいよ崖に向かう時間が来た。
「ナミネ、無理は絶対しないで。果物係以外にも役割はあるから」
「私は大丈夫です」
雨は小降りから大降りになっている。
果物係は崖へと向かいはじめた。
地面は泥に水が混ざって、ところどころ大きな水溜まりが出来ている。私はカギを取り出した。本来ならカギ縄といって、クモのようなカギの部分を引っかけ、縄を掴み登って行くのだが。ここに来る前のセナ王女の指示でカギ縄ではなく、カギのみで直接登るものをみんな持って来ているのだ。また、カギはクモ型ではなく、1本のストレートフックになっている。これではまるで釣りの道具のようだ。けれど、釣り用ほど細くはなく、1.5センチほどの太さで、全長はだいたい25センチほどだろうか。このカギを両手に持ち登っていくのだ。そして、命綱を付けることも許されなかった。このような登り方は妖精村の武官くらいだろう。
私は崖で靴の泥をはらうと、釣り用具の大きい版のようなカギで崖を登ろうとした。はじめて使うが、やはりこれまでワイヤーを使っていただけに難易度の高さが手に取るように分かる。持ち手のカギは確実なところに引っかけないといけないし、足も確実なところを踏む必要がある。今日は大雨ゆえ、滑りやすくなっている。私は下のほうでシュミレーションしたあと、ゆっくり崖を登りはじめ、コツを掴むと少し速度を速めて中間地点からは猛スピードで崖を登った。
果樹園に着くと既にセナ王女とラルクがいた。やはり、2人は慣れているか。続いてナナミお姉様、リリカさんが来た。その時、風が吹いてミナクさんが飛ばされた。
「ミナク!」
ナナミお姉様は咄嗟にロープを投げた。
「大丈夫だ、ナナミ!」
ミナクさんは花の舞で少し上に上がり、無事に果樹園に着いた。あとは、アルフォンス王子だが……。足を上手く引っかけられないのか、ずっと下で苦戦している。そして焦りが見られた。足場を見つけられないのなら、崖を登るのは無理だろう。
「アルフォンス!あなたは戻って他の作業してちょうだい!」
見かねたセナ王女が声をかけた。しかし、アルフォンス王子は諦めようとしなかった。これも果物係引退への拒否感からだろう。私がアルフォンス王子の立場でも足掻いたかもしれない。自分の力量を否定されるような場面に陥ると誰もが、力不足な自分を嘘だと認めないものである。
「あの子も頑固ね。とりあえずアルフォンス以外合格よ!」
セナ王女はアルフォンス王子を失格にした。このような場面は見たくなかったが、誰もが何でもかんでも出来るわけではない。アルフォンス王子にとっては、かなりの屈辱だろうけど、これも1つの経験だ。
あれ、小さな人間がいる。
「ねえ、ラルク。コビトがいるよ」
「ナミネ、今すぐ捕まえろ!」
私はコビトの元へ走った。するとコビトは逃げなかった。
「久しぶり、ナミネ」
え、知り合いなの?でも、私は知らない。
「あの、どちら様でしょうか?」
「僕も忘れられたもんだね。僕はここの果樹園を管理しているフルート」
ここには管理者がいたのか。だから毎日果物がかわっていたわけか。よく見ると今日は果物が多い。
「そ、そうですか。あの、ここは果物が毎日変わってますよね?果物が殆どない日もあるのですか?」
「僕の気まぐれで変えてる。果物があまりない日もあるよ。でも、気まぐれだから毎日そんなことはしないけどね」
そうだったのか。とりあえず、果物はこれからも定期的にあることは分かった。
「あの、ここの果物って自由に取っていいんですよね?でも、土を持っていくのがダメなのはどうしてですか?」
「ここまで来れたなら果物は自由に取っていいよ。この際だから言うけれど、ここの果樹園は特別なところでそれを僕がマニュアル通りに管理しているから当然禁止事項はあるよ。ただでさえ小さな果樹園なのに土を取られたらここの果物に支障が出るからね。ここにある土は特別な土だから、少しも持ち帰ることは禁止。事故なら仕方ないけど、わざと枝を折るのも禁止。木ごと持ち帰りも禁止。勝手に別のもの植えるのも禁止。とにかく果樹園を勝手に変えるような真似をしなければ大丈夫」
雇われ管理者だろうか。けれど、私を知っているということは、私はここに来たことがあるんだ。果樹園に管理者がいるということは薬草園にも管理者がいるのだろうか。
それにしても、私はここに来た記憶なんて全くない。
「あの、私は昔、ここに来たことがあるのでしょうか?」
「そうだね。悲しい話だけど、大昔、妖精村に生まれたナミネはナノハナ家の5女だった。けれど、赤ん坊の時に産婦人科で取り違えられてしまい、ここの紀元前村の家族の子として育てられた。でも、ナミネが5歳になる頃に育て親は産婦人科で取り違えられたことを知り、ナノハナ家から本当の子を連れてくるなりナミネを家から追い出したんだ。小さいナミネは空き家で1人で住みはじめ、ある日、この崖を登って果物を取りに来たんだよ。その後、ナミネは町の人気者となった。ナミネが14歳になった頃、ヨルクはナミネを迎えに来たけどナミネはここが家だと言って、ヨルクと結婚し、ヨルクは家事をナミネは崖を登って果物や薬草を取って暮らしてたんだよ。僕とはナミネが老いて亡くなるまで、ずっと仲良しの友達だったんだよね」
私にそんな過去があったんだ。取り違えられて、いっときは育ての親だったのに、本当の子供と暮らせるようになれば、私を追い出しただなんて、酷い。話を聞いているだけでも苛立ってきた。
でも、ヨルクさんはどうやってここまで私を迎えに来たのだろう。そもそもナノハナ家の人間は誰も私を迎えに来なかったの?
「あの、その時、ナノハナ家の人は誰も私を迎えに来なかったのでしょうか?ヨルクさんはどうやってここまで来たのですか?」
「ナノハナ家の人間は、ナミネの育ての親が近いうちに連れて行くと嘘をついて、それを信じてずっと待ってた。ここには妖精村と紀元前村に繋がる洞窟のような通路があるんだよ。無論徒歩だと最低でも20日はかかるけど、ヨルクはナミネを迎えに行く一心で24日かけて歩いて来たんだよ。今もその通路は森の手前にあることにはあるけれど、妖精村まで繋がっているかは分からないね」
そういえば、遠い昔、セレナールさんやカナエさんたちがここに来た時にセイさんは通路を通って来たはず。あまりに昔のことだから今も通れるかは分からないけど、ヨルクさんは私のために24日もかけて来てくれたんだ。今と変わらず、ずっと私のことを愛してくれていたんだ。
「そうでしたか。その通路の存在は聞いたことはあります。フルートさんと私は、仲良しだったんですね。あの、フルートさんは、ずっとここにいるんですか?薬草園のほうも管理者がいるのでしょうか?」
「僕は毎日ここにいるよ。薬草園のほうは双子の兄のヤクゼンが管理してる」
かつての私は、ここでひとりぼっちになってもフルートさんがいたから、ここでの暮らしをやっていけたのだと思う。きっと、私にとってフルートさんは家族のようなものだったんだろうなあ。
「久しぶりに会えた記念にあげる」
フルートさんは私に金のリンゴを3つ渡した。3つ!?そんなにもらっていいのだろうか。
「あの、このような貴重なものを3つももらっていいのでしょうか?」
「いいよ。銅の果物は人の病を60%治す。銀の果物は人の病を80%治す。金の果物は人の病を完全に治すんだ。市場には売り出さずナミネや友達が困った時に持っておいて。まあ、感染症の人に与えてもいいけど。3つでは足りないだろうね。1人長さは0.5センチで横幅は薄切りで効果が出るよ。あまり人のために使いすぎないでね」
感染症が出たらこのリンゴで多くの人の命が助かる。けれど、私たちは経口補水液も作れるし、点滴もある。1つは家に持って帰りたいところだ。
「分かりました。大切に使います」
「ナミネ、そのリンゴ、何もしてない誰かさんに盗まれないためにも私が厳重に結界かけて保管するから渡してくれるかしら?」
リリカさんは果物係として、ここで食べる果物は全て管理している。リリカさんに預ければ安心だ。
「はい、分かりました。あの、1つは持って帰りたいのですがいいでしょうか?」
「ええ、構わないわ」
私はリリカさんに金のリンゴ3つを渡した。今日はパイナップルがいっぱい生えていて、私はフルートさんと話している間にたくさんのパイナップルを収穫した。
「フルートさん、ここにいる間は毎日来ます。そして、妖精村に戻ったあともきっと来ます」
「待ってる。何世紀も待ってるよ」
フルートさんから貴重な金のリンゴをもらったはいいけれど、帰ると今度はアルフォンス王子の今後の役目について話し合わなければならない。
フルートさんに会えたことはとても嬉しいが、ここでの暮らしの現実を思うと私の心は気が重たかった。
崖を下りる時は登る時とは違って風の舞が使えるから空中に浮きながらも楽に下りられた。そして、私たちは果物を持ってタルリヤさんの家に向かいはじめた。いよいよ、長い会議がはじまる。
……
あとがき。
やっと女子トイレが綺麗になった。
のはいいけれど、今度はアルフォンスが何もしなくなるフラグ?
フルートと再会出来たナミネ。
けれど、何世紀ぶりなのだろう。ずっと生きている者は死者の転生を待たなければならない。そういう運命も悲しい気がする。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
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