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ブログ、もう書かないと思ってました。
けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。
小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。
純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。
ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。
小説、ぼちぼちマイペースに書いてゆきます。
よろしくお願い致します。
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お知らせ。
イラストは現在「ナノハナ家の日常」に載せております。サイドバーにリンクあります。
また、「カラクリよろずや」にて無料のフリーイラスト素材配布もはじめました✩.*˚
フリーイラスト素材も増やしていく予定です(*'ᴗ'*)
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模倣・無断転載などは、ご遠慮ください。
ブログの小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
小説・純愛偏差値に関しましては、武家名・貴族名(程度による) / 及び、武官の階級 / 扇子・羽子板・花札・百人一首・紙飛行機などのアイテム使用方法の模倣の一切を禁じております。
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X @kigenzen1874
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現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。
純愛偏差値は今年100話を迎えました。
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が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
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〈資格履歴〉
2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
→漢方コーディネーター 合格
→薬膳調整師 合格
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〈資格証明バナー〉

2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
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→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
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2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
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2025年08月04日
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〈資格証明バナー〉

純愛偏差値 未来編 一人称版 83話
《ナミネ》
私はカラルリさんが眠りにつくのを見届けたあと、崖に置いてきた武家伝説ワイヤーを回収しに行った。
カラルリさんはヨルクさんと違って武士向けである。遠い昔はセナ王女との力量の差に劣等感を抱いていたりもしたそうだけれど。それでも、キクリ家の跡取りとしては申し分のない力量を持ち合わせていると思う。そんなカラルリさんがオリジナルワイヤーの点検不足というミスをおかすだなんて、いったいどうしてだろう。
私は考えながらトボトボと歩いていた。
タルリヤさんの家に戻り、空き家の畳んである洗濯物を見たら汚れと洗剤が残っていた。私はすぐに洗濯係の元に行った。
「あの、洗濯係の皆さん、洗濯物に汚れと洗剤がついています。今から私がお手本を見せますので、よぉく見ていてください」
私はヨルクさんのパンツを掴み、汚れている部分に洗剤を直接つけた。
「まず、汚れが目立っているところには先に洗剤を付けて叩き棒の先でトントンと優しく叩いてください」
そして、私は委員長とユメさんのタライにヨルクさんのパンツを入れた。
「次はこのように押しながら洗ってください。汚れも落ち綺麗になったら、右の洗い流しようのタライで、もう一度押します。絞っても洗剤の泡が出なくなったら、絞って水気を取り、元に戻すと隣のシートに置いていってください」
「あんた何してんのさ」
「あ、落ち武者さん、洗濯係の洗濯物が汚れていたので指導しています」
少々の汚れや洗剤が残ることは仕方ないのかもしれないけれど、それでも、正しい方法でやれば綺麗に乾く。役割を与えられたからには出来ればしっかりやって欲しい。
「ナミネ、どうして私のパンツ持ってるの?返して!」
「ヨルクさん、洗濯係の人の洗濯が汚れていたり洗剤がついていたりしたので指導していたんです」
「ナミネは洗濯係じゃないよね?着替えも、みんな分作れたし、今後は私がみんなに教えるからナミネは勝手なことしないで!」
ヨルクさんはどうしてパンツのことになると、こうまでムキになるのだろう。私はただ、洗濯の指導をしていただけなのに。
そういえば、ガーゼ布の服がやたら多い。数日前に、一度サバイバル服を洗濯することになって、今はガーゼ服を着ているけれど、毎日洗濯に出している人が多い気がする。下着でも3日は持ちこたえてほしいのに。これでは洗濯係の仕事が増える一方だ。
「でも、僕は強気なナミネの指導あったほうがいいと思うけど?」
「私も参考になったわ」
「僕も参考になりました」
「ナミネって何でも出来るんだな」
ここでも、おじいさんの修行が役に立ってよかった。
「ナミネは洗濯係じゃないんだから果物だけ取ってきて!」
「お言葉ですが、ヨルクさんの手洗い知識は遠い昔のものと、手洗いマークがついている衣類に限りますよね?つまり、他は洗濯機を使っていることになります。ですが、ここでは全て手洗いをしなければなりません。手洗いは、その布の種類によって異なります。ヨルクさんは、その全ての手洗い方法で洗濯をするとこが出来るのですか?」
その瞬間、ヨルクさんは泣きはじめた。えっ、また?今度は何が理由?どうしてヨルクさんってすぐに泣くのだろう。ミナクさんみたいに適当に受け取ればいいのに。
「ナミネは、今や料理も洗い物も出来るようになったんだね。私なんか必要ないよね」
「あ、そうではありません。今日はカラルリさんが崖から落ちて私も気が気でないんです。すみません、私の言い方がキツかったです」
ヨルクさんはハンカチで涙を拭いた。まるで少し昔の夫に浮気された妻のようだ。
「なあ、組み合わせ変えないか?私とヨルクは洗濯出来るから、カラン王子とタルリヤはそのままで、私はユメさんと、ヨルクはクラフと組めばいいんじゃないか?」
「あ、では、それでお願いします。私、ちょっとトイレに行くのでヨルクさんをお願いします」
こんな時に生理が来てしまった。私は慌ててリュックから布ナプキンを取り出し、ガーゼパンツを持つと赤いテントに走った。
え、何これ。トイレが2つともゴミ出しされてない。もはや汚物が盛り上がっていて、座るに座れない。おしっこもしたいしな。どうしよう。
私は咄嗟に青い男子用のテントに入った。こっちは、ちゃんとゴミ出しされている。誰かに見られては困るから私は霧の結界をかけた。そして、パンツを履き替え、ナプキンを付けて、汚れたパンツを持ってテントから出ると霧の結界を解いた。
けれど、このままでは怒りが収まらない。私はもう一度、赤いテントに入り、ビニール袋に入ったものを2つ取り出し、固結びで括ると、新しいビニール袋を被せた。括ったビニール袋はそのまま置いておいて、みんなのところへ向かった。
はあ、どうしてこうもチームワークが取れないのだろう。
「ナミネ、さっきはごめんね。ナミネのほうが難易度高い役割してるのに……。突然ナミネが家事まで出来るようになったから焦った」
「あ、いえ、私が出しゃばりすぎました」
「ナミネ、生理なの?痛みは大丈夫?痛み止め5箱持ってきたから無理しないで使って!布ナプキンも15枚あるから!汚れた下着は私が洗っておく!」
何故そんなに持ってきているのだろう。そんなにあるなら、1日目、セレナールさんが痛みを訴えた時に分ければよかったのに。私はヨルクさんにパンツを渡した。
「あ、ではお願いします。痛み止めは大丈夫です。ここはサバイバルですし、痛みが起きたらカナエさんの薬使いますので。でも、布ナプキンはありがたく使わせてもらいます。痛み止めは、いざとなった時のために厳重に保管しておいてください」
「うん、分かった。ナミネ、休む時は休んで」
「はい」
私は洗濯を手につけると湖の水で手を洗った。
気がつけば日が傾きはじめている。果物係と薬草係が戻ってきた。洗濯係も今日は引き上げ、みんなテントに入った。
あれ、机がなくなっている。けれど、このほうがスペースもあって、みんなと話しやすい。
「あの、本題の前に行っておきたいことがあります!
女子トイレは盛り上がり座れない状態でした。どうして誰もゴミ出ししないのですか?2つともビニール袋ごと取り出して上を結んで置いておきましたので、何もしてない人がゴミ捨て場まで持って行ってください!
それから、洗濯物ですが、ガーゼ服は最低でも5日は着てもらえませんか?でないと、洗濯係が追いつきません!」
リリカさんはため息をついた。
「セレナール!ミネス!アヤネ!ゴミ捨て場に行ってきなさい!」
「私、町の様子描いたからいかない!本当に少しも何もやってない人が行くべき」
「そのような汚いものは触れません」
「私も行けないわ」
この3人なんなの。あれだけ盛り上がっていても何も思わないのだろうか。トイレのことは死活問題なのに、それを処理しないなんて信じられない。誰も捨てに行かないなら、今後も男子トイレ使おう。
「私が行くわ」
「エルナは洗い物係で1日中動いてるんだから行く必要ないわ。指名した3人が行かないのなら勝手にしなさい!後悔するのは自分たちよ!ナミネもこれからはビニール袋括ったりしなくていいわ。やるべき人がやることだから」
「はい、分かりました」
もう女子トイレなんか使うものか。ゴミ出しせず放置したら、そのうち身体が汚れるだろう。そうなって、はじめて気づけばいい。
「あの、あくまで個人的な意見ですが、今日カラルリさんが崖から転落したのはオリジナルワイヤーの点検不足によるものでした。私は一度転落した人はもう崖に登らないほうがいいと思うのです。あの高さでしたら私が受け止めなければ死んでいたかもしれません。
そこで、炎の舞を使えるのでしたら、落ち武者さんがストップかけるところまで、果物をドライフルーツにする、生の魚を干し魚にする、加熱不十分の肉を十分に加熱する作業を行って欲しいと思うのです。皆さんはどう思いますか?」
一度転落した人がまた果物係を続けるのは危険な気がする。それに、ドライフルーツ、干し魚、肉の加熱をする人がいないと今後の食事にも困る。
「そうね。点検不足の時点で、崖に登ってもらっては困るわ。私もカラルリさんには炎の舞で食糧を増やす係に回って欲しいわね」
「私も一度転落したカラルリには崖登りは無理だと思う。ただでさえカギ使わずワイヤーに頼ってる時点でどうかと思うわ。カギで登れない人は果物係から外れて欲しいくらいだわね」
「ハッキリ言って、誰も助けなければ死んでいたとか迷惑すぎる」
リリカさんと、セナ王女、アルフォンス王子はカラルリさんに果物係から外れることを望んでいる。
ちなみに、カギなら私とラルク、リリカさん、ナナミお姉様だったら登れるだろうけど、ミナクさんとアルフォンス王子はどうなのだろう。けれど、果物を持った状態だから、やはりワイヤーは欠かせない。
「分かった。正直、今日のことで自信なくなったし、今後は食糧加熱係をするよ」
カラルリさんの自信喪失は残念だけれど、食糧加熱係はどうしても必要だから、ここはカラルリさんにやってもらおう。
「では、落ち武者さんが市場から戻ってから作業お願いします」
「じゃあ、決まりね。明日は頭を冷やすためにも1日休みにするわ。今日はセレナール、ミネス、アヤネが魚料理してくれるかしら」
リリカさんはセレナールさんに扇子をセナ王女はミネスさんに短剣をアルフォンス王子はアヤネさんにタロットカードを突き付けた。
「わ、分かったやる」
「や、やるわ」
「やりますが、失敗しても怒らないでください」
これでまた不味い料理を食べることになるのか。
「これがナミネが魚捌いた時の映像だから、これ見ながらやってちょうだい」
リリカさんはオリジナルモニターをミネスさんに渡した。
セレナールさんとミネスさん、アヤネさんはタルリヤさんの家に向かった。言うまでもなく、ここにはガスなどない。市場で売っている小枝に火打石で火をつけ、煮物や焼き物を作らなくてはならない。
「ねえ、ラルク、来て」
「急になんだよ」
私はラルクの手を引っ張り、テントを出て適当な空き家に入った。
「あのね、ラルク、ヨルクさんに卵渡したおばあさんに会いに行こうよ。これがミネスさんが描いた町の絵」
私はラルクに画像を見せた。あの時、みんなに赤外線送信するはずだったけど、リリカさんが遮り、まだみんなには渡せていない絵なのだ。ラルクは画像を拡大した。
「まあ、鶏飼ってる家はこの一軒だわな」
「へえ、あんたらだけで抜け駆けってわけ?」
落ち武者さん、いつの間に来たのだろう。
「あ、えっと、その……」
「僕も行くけどね?」
「分かりました。けれど、他の人には知られないようにしてください」
「りょーかい」
話が済んだゆえ、私たちは再びテントに戻った。
テントでは既に魚料理が置かれていた。
はあ、案の定またブツ切りの生焼けスープ。私やラルクは炎の舞で魚を焼いた。えっと、今度はカラン王子のところに内蔵が入ってる。
「あ、カラン王子、私の魚食べてください」
「いえ、僕はいいです」
「でも、少しでも栄養つけた方がいいと思います」
「では、半分だけいただきます」
カラン王子は私の魚を半分お皿に入れた。炎の舞使えない人には可哀想だけれど、崖を登る人は少しでも体力を残しておかなければならない。
「一目惚れカラルリそこでストップ」
カラルリさん焦がさずに済んだ。これだと、予定通り食糧加熱係が務まりそうだ。アルフォンス王子は焦がしている。アルフォンス王子って、こんなに出来ない人だっけ。
「ねえ、ラルク、アルフォンス王子が魚焦がしてるよ」
「ナミネ、放っておけ」
「おい、そこの3人、どこまで魚無駄にしたら気が済むんだ!」
「アルフォンス王子が炎の舞失敗しなければ食べれたのにね」
その瞬間、アルフォンス王子はミネスさんを殴り付けた。
「痛い!やめて!」
ミネスさんは料理出来たはずなのに、どうして中途半端なものを出したのだろう。まさか、サボっていたのだろうか。けれど、何もしない人には、だんだん愛想が尽きてきた。けれど、アルフォンス王子はセレナールさんとアヤネさんも殴り付けたのである。
遠い昔はこんな人じゃなかったのに。
「痛い痛い痛い!!」
「やめてください!!」
「だったら、まともな料理作れ!」
アルフォンス王子は3人の横腹を蹴ってテントを出た。
しかし、炎の舞を使えても焦がしてしまえば意味がない。アルフォンス王子って、こんなにも力が使えない人だっけ?
「殴られたくなければ、ちゃんとした役割をするか、まともな料理を作ることね」
ここでもリリカさんは慰めるどころか逆に厳しい言葉をかける。でも、こういった問題は本人がやる気を出さなければ意味がないのである。
アルフォンス王子はどこへ行ったのか戻って来なかった。この日は、ヨルクさんと同じ寝袋の中で眠った。私はヨルクさんの紅葉の香りに包まれた。が、テント内から何か変な臭いがする。セレナールさんや、アヤネさん、ミナクさん、ミネスさんの体臭が特に酷い。そういえば、ここに来てから一度も公衆浴場に行っていなかった。ボディシートだけでは限界がある。そろそろみんなを公衆浴場に連れて行く必要があるかもしれない。一部の人の体臭でなかなか眠れなかったが気付いたら私は眠っていた。
早朝4時。
私はテントを出た。ラルクと落ち武者さんもいる。まだみんなは起きていない。
「じゃ、行く」
私たちは、ヨルクさんに卵を渡したおばあさんの家に向かいはじめた。
「ねえ、ラルク。何か、寝る時に一部の人の体臭キツイんだよね」
「まあ、風呂に入ってないからな」
「ヨルクさんは全然そんなことないのに、セレナールさんとかアヤネさんとかさ、もう臭くってなかなか眠れなかったよ」
「あんた、人の姉さん指摘してるけど、みんながみんな特殊なあんたみたいに菜の花の香りがずっと続くわけじゃないからね?風呂入らないと臭うのは当然だからね?」
それはそうだけど、臭いの問題もまたチームワークの乱れに繋がりそうな気がする。けれど、ラルクも落ち武者さんもこれだけお風呂に入っていないのに臭わない。兄弟でも違うものなんだな。
「でも、ミナクさんもクレナイ家の人間なのに紅葉の香りどころか、もうトイレの臭いのようなものが漂ってくるんです」
ヨルクさんは離れていても紅葉の香りがしていて、ラルクとリリカさんは近付けば少しだけ紅葉の香りがする。なのに、ミナクさんだけ体臭が酷いのだ。
「あんた、それ本人の前で言ったら怒られるぞ。とりあえず、ばあさんに会った後、公衆浴場の下見行く」
下見か。確かに今日行っておいた方がいいよね。
「分かりました」
えっと、地図によるとだいたいこの辺か。ん?他の家はどれもレンガを積み上げた洞窟のような家なのに、ここだけまるでログハウスのような家だ。鶏もいる。
「じゃ入る」
「あの、ごめんくださーい」
声をかけると中から人が出てきた。70歳くらいの女性だろうか。
「あら、いらっしゃい」
おばあさんは中に入れてくれた。家の中は、タルリヤさんの家とは違い、清潔感があり、果物が並べられている。それだけでなく、家の中に井戸まである。
「あの、この果物はみんなおばあさんが取ってきたんですか?」
「そうよ。ここでは貴重な食べ物だから、たまに取ってきてはこうやって並べているのよ」
このおばあさん、あの崖登れるんだ。って、干し肉もある!まさか、この肉たちもおばあさんが狩りで動物を捕まえたのだろうか。
「あの、この干し肉たちは……」
「これも私が森に行ってイノシシと鹿を捕まえて干し肉にしたのよ」
おばあさんが捕まえてきたの?何だかまるで、このおばあさん、森の湖南町の古民家の私とラルクを世話してくれたおじいさんに似ている気がする。
「ばあさん、あんた武士かよ?」
「武士ではないわ。私の実家は代々呉服屋をしてるのよ」
「じゃあ、何でこんなに強いんだよ!」
「さあ、どうしてかしらね」
おばあさんは私たちに紅茶とお菓子を出してくれた。紅茶……茶葉なんてここにあったっけ。それにクッキーもバター売ってないのにどうやって作ったのだろう。
「あの、紅茶って市場に売ってるんですか?バターもですか?」
「ふふっ、まだまだ若いわね。紅茶や緑茶の茶葉はたまに市場で売られているわ。小麦粉も。バターがなくてもクッキーはココナッツオイルで作れるわよ」
そうか、取ってきたココナッツをオイルにしたのか。だとしたら、市場で小麦粉買ってココナッツが手に入れば、ホットケーキも作ることが出来る。もう不味い料理は食べられないし、これ以上食糧も無駄に出来ない。料理係を変えてもらおう。
「おばあさんは、ずっとここにいるんですか?」
「元は妖精村出身よ。けれど、遠い昔に親にここに置き去りにされたの。気付いたら親は船に乗って戻って来なかった。右も左も分からない私はガムシャラで生きた。余ったご飯を分けてもらい、必死に生き延びた。そんなある日、崖の上に果物がある話を耳にして行ってみたけれど、全く歯が立たなかった。でも、私は諦めなかったわ。何度も崖を登ろうとした。そのうちに素手で登れるようになってきた。けれど、浮かれるあまり命懸けということを忘れていたのね。私は果物1つ取れないまま崖の中間地点から転落して死んだわ」
おばあさんにも、そんな残酷な過去があったのか。誰だってはじめから強いわけではない。私もそうだった。
「じゃあ、どういう経緯で今の暮らししてんだよ」
「転生した時、妖精村ではなくて、またこの町に生まれてきたの。私は崖の上の果物は諦めて、貧しい暮らしをしてた。けれど、ある日、若い夫婦が私に果物を分けてくれた。けれど、不思議なものね。男性のほうは死なないの。歳は少しずつ取っていくけれど、奥さんが亡くなって、しばらくしたらまた別の人と世帯を持っていた。気付けば私はその男性に弟子入りしていた。私は厳しい修行の元、3回転生した時には弟子を持てるまで成長していたわ。この家は当時腕の立つ大工に作ってもらって、誰にも渡らないよう皇帝陛下に登記してもらったの。私は転生するたびにここに住んだ。そして、時は流れ、私は師匠と結婚し、妖精村の森の湖南町で住みはじめた。質素な暮らしだったけれど、それなりに幸せだったわ」
死なない男性で森の湖南町が住処!?それってまさか……!!
けれど、おばあさんは、言ってしまえば、その男性の現世のみの奥さんなわけか。この世にずっとなんてことは存在しない。けれど、遠い昔に知り合ったのに、結婚まで随分と時間がかかったもんなんだなあ。
「あんた、結婚したのに、なんでここで1人で済んでんだよ。亭主とはもう別れてんのかよ?」
「ここに来たのは私の気まぐれな旅行。時が来れば夫の元に帰るわ」
「あの、おばあさんの旦那さんてサラハって人ですか?私、そのおじいさんに、半年森の湖南町の古民家でラルクと一緒に修行してたんです!」
「ええ、そうよ。あの人、もう長く弟子なんて取っていなかったのに珍しいわね」
やっぱり、おじいさんの奥さんだったんだ。世間は狭いもんだ。国境を越えてまで出会える。まるで運命みたい。けれど、出会えてよかった。おじいさんも元気にしているだろうか。
「あの、師範の奥様はもう弟子は取らないのでしょうか?」
「私も夫と同じで、もう随分弟子は取ってないわ」
そっか、もう2人とも弟子は取らないんだ。自由な暮らしを求めているのだろうか。
「そうですか。また来てもいいですか?」
え、もう帰るの?ふと時計を見れば12時前。私たち、こんなにも居座っていたんだ。私は紅茶を一気に飲み干し、出されたクッキーをビニール袋に入れた。
「ええ、いつでも来てちょうだい。僅かな情報を与えるくらいしか出来ないけどね。ここで会ったのも何かの縁でしょうから、これ持って帰りなさい」
ココナッツオイルと、小麦粉、卵。たくさんある。これだけあれば、みんなの食事も十分に作れるけど、こんなにもらっていいのだろうか?
「あの、こんなにたくさんもらってもいいのですか?」
「私は今やここでの暮らしに何一つ不自由はしていないからね。あなたたちは、まだ若いし、ここに来たばかりで大変でしょう。でも、挫けないで頑張んなさい!」
「はい、私逃げ出しません!どんな逆境も乗り越えてみせます!」
そうだ、チームワークの乱れだの、料理の不味さだの、一つ一つ気にしていても仕方がない。私は私の出来ることをここでやっていこう。
「じゃ、また来る」
「では、僕もまた来ます」
「おばあさん、ありがとうございました」
私は小麦粉、落ち武者さんはココナッツオイル、ラルクは卵を持って、おばあさんの家を出た。おばあさんの家は市場の近くにあるから、来ようと思えばまた来れる。おばあさんがおじいさんの元に帰るまで、今度はおばあさんの教えをしっかり聞こう。
「じゃ、一度タルリヤの家戻る」
貴重な食材をもらったため、私たちは一度タルリヤさんの家に戻ることにした。
……
あとがき。
トイレの問題はもはや死活問題。けれど、そこで男子トイレに入っちゃうのがナミネなのよね。
アルフォンス王子が肉を焦がした時も声に出しちゃうし。
ナミネは武士として強いけれど、心はどこか幼げ。
それにしても、世間って狭いものなんだな。
国境を越えて出会えるだなんて。出会うべきして出会ったとしか思えないくらい。
おじいさんもおばあさんの転生後、また一緒になって欲しいかも。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
《ナミネ》
私はカラルリさんが眠りにつくのを見届けたあと、崖に置いてきた武家伝説ワイヤーを回収しに行った。
カラルリさんはヨルクさんと違って武士向けである。遠い昔はセナ王女との力量の差に劣等感を抱いていたりもしたそうだけれど。それでも、キクリ家の跡取りとしては申し分のない力量を持ち合わせていると思う。そんなカラルリさんがオリジナルワイヤーの点検不足というミスをおかすだなんて、いったいどうしてだろう。
私は考えながらトボトボと歩いていた。
タルリヤさんの家に戻り、空き家の畳んである洗濯物を見たら汚れと洗剤が残っていた。私はすぐに洗濯係の元に行った。
「あの、洗濯係の皆さん、洗濯物に汚れと洗剤がついています。今から私がお手本を見せますので、よぉく見ていてください」
私はヨルクさんのパンツを掴み、汚れている部分に洗剤を直接つけた。
「まず、汚れが目立っているところには先に洗剤を付けて叩き棒の先でトントンと優しく叩いてください」
そして、私は委員長とユメさんのタライにヨルクさんのパンツを入れた。
「次はこのように押しながら洗ってください。汚れも落ち綺麗になったら、右の洗い流しようのタライで、もう一度押します。絞っても洗剤の泡が出なくなったら、絞って水気を取り、元に戻すと隣のシートに置いていってください」
「あんた何してんのさ」
「あ、落ち武者さん、洗濯係の洗濯物が汚れていたので指導しています」
少々の汚れや洗剤が残ることは仕方ないのかもしれないけれど、それでも、正しい方法でやれば綺麗に乾く。役割を与えられたからには出来ればしっかりやって欲しい。
「ナミネ、どうして私のパンツ持ってるの?返して!」
「ヨルクさん、洗濯係の人の洗濯が汚れていたり洗剤がついていたりしたので指導していたんです」
「ナミネは洗濯係じゃないよね?着替えも、みんな分作れたし、今後は私がみんなに教えるからナミネは勝手なことしないで!」
ヨルクさんはどうしてパンツのことになると、こうまでムキになるのだろう。私はただ、洗濯の指導をしていただけなのに。
そういえば、ガーゼ布の服がやたら多い。数日前に、一度サバイバル服を洗濯することになって、今はガーゼ服を着ているけれど、毎日洗濯に出している人が多い気がする。下着でも3日は持ちこたえてほしいのに。これでは洗濯係の仕事が増える一方だ。
「でも、僕は強気なナミネの指導あったほうがいいと思うけど?」
「私も参考になったわ」
「僕も参考になりました」
「ナミネって何でも出来るんだな」
ここでも、おじいさんの修行が役に立ってよかった。
「ナミネは洗濯係じゃないんだから果物だけ取ってきて!」
「お言葉ですが、ヨルクさんの手洗い知識は遠い昔のものと、手洗いマークがついている衣類に限りますよね?つまり、他は洗濯機を使っていることになります。ですが、ここでは全て手洗いをしなければなりません。手洗いは、その布の種類によって異なります。ヨルクさんは、その全ての手洗い方法で洗濯をするとこが出来るのですか?」
その瞬間、ヨルクさんは泣きはじめた。えっ、また?今度は何が理由?どうしてヨルクさんってすぐに泣くのだろう。ミナクさんみたいに適当に受け取ればいいのに。
「ナミネは、今や料理も洗い物も出来るようになったんだね。私なんか必要ないよね」
「あ、そうではありません。今日はカラルリさんが崖から落ちて私も気が気でないんです。すみません、私の言い方がキツかったです」
ヨルクさんはハンカチで涙を拭いた。まるで少し昔の夫に浮気された妻のようだ。
「なあ、組み合わせ変えないか?私とヨルクは洗濯出来るから、カラン王子とタルリヤはそのままで、私はユメさんと、ヨルクはクラフと組めばいいんじゃないか?」
「あ、では、それでお願いします。私、ちょっとトイレに行くのでヨルクさんをお願いします」
こんな時に生理が来てしまった。私は慌ててリュックから布ナプキンを取り出し、ガーゼパンツを持つと赤いテントに走った。
え、何これ。トイレが2つともゴミ出しされてない。もはや汚物が盛り上がっていて、座るに座れない。おしっこもしたいしな。どうしよう。
私は咄嗟に青い男子用のテントに入った。こっちは、ちゃんとゴミ出しされている。誰かに見られては困るから私は霧の結界をかけた。そして、パンツを履き替え、ナプキンを付けて、汚れたパンツを持ってテントから出ると霧の結界を解いた。
けれど、このままでは怒りが収まらない。私はもう一度、赤いテントに入り、ビニール袋に入ったものを2つ取り出し、固結びで括ると、新しいビニール袋を被せた。括ったビニール袋はそのまま置いておいて、みんなのところへ向かった。
はあ、どうしてこうもチームワークが取れないのだろう。
「ナミネ、さっきはごめんね。ナミネのほうが難易度高い役割してるのに……。突然ナミネが家事まで出来るようになったから焦った」
「あ、いえ、私が出しゃばりすぎました」
「ナミネ、生理なの?痛みは大丈夫?痛み止め5箱持ってきたから無理しないで使って!布ナプキンも15枚あるから!汚れた下着は私が洗っておく!」
何故そんなに持ってきているのだろう。そんなにあるなら、1日目、セレナールさんが痛みを訴えた時に分ければよかったのに。私はヨルクさんにパンツを渡した。
「あ、ではお願いします。痛み止めは大丈夫です。ここはサバイバルですし、痛みが起きたらカナエさんの薬使いますので。でも、布ナプキンはありがたく使わせてもらいます。痛み止めは、いざとなった時のために厳重に保管しておいてください」
「うん、分かった。ナミネ、休む時は休んで」
「はい」
私は洗濯を手につけると湖の水で手を洗った。
気がつけば日が傾きはじめている。果物係と薬草係が戻ってきた。洗濯係も今日は引き上げ、みんなテントに入った。
あれ、机がなくなっている。けれど、このほうがスペースもあって、みんなと話しやすい。
「あの、本題の前に行っておきたいことがあります!
女子トイレは盛り上がり座れない状態でした。どうして誰もゴミ出ししないのですか?2つともビニール袋ごと取り出して上を結んで置いておきましたので、何もしてない人がゴミ捨て場まで持って行ってください!
それから、洗濯物ですが、ガーゼ服は最低でも5日は着てもらえませんか?でないと、洗濯係が追いつきません!」
リリカさんはため息をついた。
「セレナール!ミネス!アヤネ!ゴミ捨て場に行ってきなさい!」
「私、町の様子描いたからいかない!本当に少しも何もやってない人が行くべき」
「そのような汚いものは触れません」
「私も行けないわ」
この3人なんなの。あれだけ盛り上がっていても何も思わないのだろうか。トイレのことは死活問題なのに、それを処理しないなんて信じられない。誰も捨てに行かないなら、今後も男子トイレ使おう。
「私が行くわ」
「エルナは洗い物係で1日中動いてるんだから行く必要ないわ。指名した3人が行かないのなら勝手にしなさい!後悔するのは自分たちよ!ナミネもこれからはビニール袋括ったりしなくていいわ。やるべき人がやることだから」
「はい、分かりました」
もう女子トイレなんか使うものか。ゴミ出しせず放置したら、そのうち身体が汚れるだろう。そうなって、はじめて気づけばいい。
「あの、あくまで個人的な意見ですが、今日カラルリさんが崖から転落したのはオリジナルワイヤーの点検不足によるものでした。私は一度転落した人はもう崖に登らないほうがいいと思うのです。あの高さでしたら私が受け止めなければ死んでいたかもしれません。
そこで、炎の舞を使えるのでしたら、落ち武者さんがストップかけるところまで、果物をドライフルーツにする、生の魚を干し魚にする、加熱不十分の肉を十分に加熱する作業を行って欲しいと思うのです。皆さんはどう思いますか?」
一度転落した人がまた果物係を続けるのは危険な気がする。それに、ドライフルーツ、干し魚、肉の加熱をする人がいないと今後の食事にも困る。
「そうね。点検不足の時点で、崖に登ってもらっては困るわ。私もカラルリさんには炎の舞で食糧を増やす係に回って欲しいわね」
「私も一度転落したカラルリには崖登りは無理だと思う。ただでさえカギ使わずワイヤーに頼ってる時点でどうかと思うわ。カギで登れない人は果物係から外れて欲しいくらいだわね」
「ハッキリ言って、誰も助けなければ死んでいたとか迷惑すぎる」
リリカさんと、セナ王女、アルフォンス王子はカラルリさんに果物係から外れることを望んでいる。
ちなみに、カギなら私とラルク、リリカさん、ナナミお姉様だったら登れるだろうけど、ミナクさんとアルフォンス王子はどうなのだろう。けれど、果物を持った状態だから、やはりワイヤーは欠かせない。
「分かった。正直、今日のことで自信なくなったし、今後は食糧加熱係をするよ」
カラルリさんの自信喪失は残念だけれど、食糧加熱係はどうしても必要だから、ここはカラルリさんにやってもらおう。
「では、落ち武者さんが市場から戻ってから作業お願いします」
「じゃあ、決まりね。明日は頭を冷やすためにも1日休みにするわ。今日はセレナール、ミネス、アヤネが魚料理してくれるかしら」
リリカさんはセレナールさんに扇子をセナ王女はミネスさんに短剣をアルフォンス王子はアヤネさんにタロットカードを突き付けた。
「わ、分かったやる」
「や、やるわ」
「やりますが、失敗しても怒らないでください」
これでまた不味い料理を食べることになるのか。
「これがナミネが魚捌いた時の映像だから、これ見ながらやってちょうだい」
リリカさんはオリジナルモニターをミネスさんに渡した。
セレナールさんとミネスさん、アヤネさんはタルリヤさんの家に向かった。言うまでもなく、ここにはガスなどない。市場で売っている小枝に火打石で火をつけ、煮物や焼き物を作らなくてはならない。
「ねえ、ラルク、来て」
「急になんだよ」
私はラルクの手を引っ張り、テントを出て適当な空き家に入った。
「あのね、ラルク、ヨルクさんに卵渡したおばあさんに会いに行こうよ。これがミネスさんが描いた町の絵」
私はラルクに画像を見せた。あの時、みんなに赤外線送信するはずだったけど、リリカさんが遮り、まだみんなには渡せていない絵なのだ。ラルクは画像を拡大した。
「まあ、鶏飼ってる家はこの一軒だわな」
「へえ、あんたらだけで抜け駆けってわけ?」
落ち武者さん、いつの間に来たのだろう。
「あ、えっと、その……」
「僕も行くけどね?」
「分かりました。けれど、他の人には知られないようにしてください」
「りょーかい」
話が済んだゆえ、私たちは再びテントに戻った。
テントでは既に魚料理が置かれていた。
はあ、案の定またブツ切りの生焼けスープ。私やラルクは炎の舞で魚を焼いた。えっと、今度はカラン王子のところに内蔵が入ってる。
「あ、カラン王子、私の魚食べてください」
「いえ、僕はいいです」
「でも、少しでも栄養つけた方がいいと思います」
「では、半分だけいただきます」
カラン王子は私の魚を半分お皿に入れた。炎の舞使えない人には可哀想だけれど、崖を登る人は少しでも体力を残しておかなければならない。
「一目惚れカラルリそこでストップ」
カラルリさん焦がさずに済んだ。これだと、予定通り食糧加熱係が務まりそうだ。アルフォンス王子は焦がしている。アルフォンス王子って、こんなに出来ない人だっけ。
「ねえ、ラルク、アルフォンス王子が魚焦がしてるよ」
「ナミネ、放っておけ」
「おい、そこの3人、どこまで魚無駄にしたら気が済むんだ!」
「アルフォンス王子が炎の舞失敗しなければ食べれたのにね」
その瞬間、アルフォンス王子はミネスさんを殴り付けた。
「痛い!やめて!」
ミネスさんは料理出来たはずなのに、どうして中途半端なものを出したのだろう。まさか、サボっていたのだろうか。けれど、何もしない人には、だんだん愛想が尽きてきた。けれど、アルフォンス王子はセレナールさんとアヤネさんも殴り付けたのである。
遠い昔はこんな人じゃなかったのに。
「痛い痛い痛い!!」
「やめてください!!」
「だったら、まともな料理作れ!」
アルフォンス王子は3人の横腹を蹴ってテントを出た。
しかし、炎の舞を使えても焦がしてしまえば意味がない。アルフォンス王子って、こんなにも力が使えない人だっけ?
「殴られたくなければ、ちゃんとした役割をするか、まともな料理を作ることね」
ここでもリリカさんは慰めるどころか逆に厳しい言葉をかける。でも、こういった問題は本人がやる気を出さなければ意味がないのである。
アルフォンス王子はどこへ行ったのか戻って来なかった。この日は、ヨルクさんと同じ寝袋の中で眠った。私はヨルクさんの紅葉の香りに包まれた。が、テント内から何か変な臭いがする。セレナールさんや、アヤネさん、ミナクさん、ミネスさんの体臭が特に酷い。そういえば、ここに来てから一度も公衆浴場に行っていなかった。ボディシートだけでは限界がある。そろそろみんなを公衆浴場に連れて行く必要があるかもしれない。一部の人の体臭でなかなか眠れなかったが気付いたら私は眠っていた。
早朝4時。
私はテントを出た。ラルクと落ち武者さんもいる。まだみんなは起きていない。
「じゃ、行く」
私たちは、ヨルクさんに卵を渡したおばあさんの家に向かいはじめた。
「ねえ、ラルク。何か、寝る時に一部の人の体臭キツイんだよね」
「まあ、風呂に入ってないからな」
「ヨルクさんは全然そんなことないのに、セレナールさんとかアヤネさんとかさ、もう臭くってなかなか眠れなかったよ」
「あんた、人の姉さん指摘してるけど、みんながみんな特殊なあんたみたいに菜の花の香りがずっと続くわけじゃないからね?風呂入らないと臭うのは当然だからね?」
それはそうだけど、臭いの問題もまたチームワークの乱れに繋がりそうな気がする。けれど、ラルクも落ち武者さんもこれだけお風呂に入っていないのに臭わない。兄弟でも違うものなんだな。
「でも、ミナクさんもクレナイ家の人間なのに紅葉の香りどころか、もうトイレの臭いのようなものが漂ってくるんです」
ヨルクさんは離れていても紅葉の香りがしていて、ラルクとリリカさんは近付けば少しだけ紅葉の香りがする。なのに、ミナクさんだけ体臭が酷いのだ。
「あんた、それ本人の前で言ったら怒られるぞ。とりあえず、ばあさんに会った後、公衆浴場の下見行く」
下見か。確かに今日行っておいた方がいいよね。
「分かりました」
えっと、地図によるとだいたいこの辺か。ん?他の家はどれもレンガを積み上げた洞窟のような家なのに、ここだけまるでログハウスのような家だ。鶏もいる。
「じゃ入る」
「あの、ごめんくださーい」
声をかけると中から人が出てきた。70歳くらいの女性だろうか。
「あら、いらっしゃい」
おばあさんは中に入れてくれた。家の中は、タルリヤさんの家とは違い、清潔感があり、果物が並べられている。それだけでなく、家の中に井戸まである。
「あの、この果物はみんなおばあさんが取ってきたんですか?」
「そうよ。ここでは貴重な食べ物だから、たまに取ってきてはこうやって並べているのよ」
このおばあさん、あの崖登れるんだ。って、干し肉もある!まさか、この肉たちもおばあさんが狩りで動物を捕まえたのだろうか。
「あの、この干し肉たちは……」
「これも私が森に行ってイノシシと鹿を捕まえて干し肉にしたのよ」
おばあさんが捕まえてきたの?何だかまるで、このおばあさん、森の湖南町の古民家の私とラルクを世話してくれたおじいさんに似ている気がする。
「ばあさん、あんた武士かよ?」
「武士ではないわ。私の実家は代々呉服屋をしてるのよ」
「じゃあ、何でこんなに強いんだよ!」
「さあ、どうしてかしらね」
おばあさんは私たちに紅茶とお菓子を出してくれた。紅茶……茶葉なんてここにあったっけ。それにクッキーもバター売ってないのにどうやって作ったのだろう。
「あの、紅茶って市場に売ってるんですか?バターもですか?」
「ふふっ、まだまだ若いわね。紅茶や緑茶の茶葉はたまに市場で売られているわ。小麦粉も。バターがなくてもクッキーはココナッツオイルで作れるわよ」
そうか、取ってきたココナッツをオイルにしたのか。だとしたら、市場で小麦粉買ってココナッツが手に入れば、ホットケーキも作ることが出来る。もう不味い料理は食べられないし、これ以上食糧も無駄に出来ない。料理係を変えてもらおう。
「おばあさんは、ずっとここにいるんですか?」
「元は妖精村出身よ。けれど、遠い昔に親にここに置き去りにされたの。気付いたら親は船に乗って戻って来なかった。右も左も分からない私はガムシャラで生きた。余ったご飯を分けてもらい、必死に生き延びた。そんなある日、崖の上に果物がある話を耳にして行ってみたけれど、全く歯が立たなかった。でも、私は諦めなかったわ。何度も崖を登ろうとした。そのうちに素手で登れるようになってきた。けれど、浮かれるあまり命懸けということを忘れていたのね。私は果物1つ取れないまま崖の中間地点から転落して死んだわ」
おばあさんにも、そんな残酷な過去があったのか。誰だってはじめから強いわけではない。私もそうだった。
「じゃあ、どういう経緯で今の暮らししてんだよ」
「転生した時、妖精村ではなくて、またこの町に生まれてきたの。私は崖の上の果物は諦めて、貧しい暮らしをしてた。けれど、ある日、若い夫婦が私に果物を分けてくれた。けれど、不思議なものね。男性のほうは死なないの。歳は少しずつ取っていくけれど、奥さんが亡くなって、しばらくしたらまた別の人と世帯を持っていた。気付けば私はその男性に弟子入りしていた。私は厳しい修行の元、3回転生した時には弟子を持てるまで成長していたわ。この家は当時腕の立つ大工に作ってもらって、誰にも渡らないよう皇帝陛下に登記してもらったの。私は転生するたびにここに住んだ。そして、時は流れ、私は師匠と結婚し、妖精村の森の湖南町で住みはじめた。質素な暮らしだったけれど、それなりに幸せだったわ」
死なない男性で森の湖南町が住処!?それってまさか……!!
けれど、おばあさんは、言ってしまえば、その男性の現世のみの奥さんなわけか。この世にずっとなんてことは存在しない。けれど、遠い昔に知り合ったのに、結婚まで随分と時間がかかったもんなんだなあ。
「あんた、結婚したのに、なんでここで1人で済んでんだよ。亭主とはもう別れてんのかよ?」
「ここに来たのは私の気まぐれな旅行。時が来れば夫の元に帰るわ」
「あの、おばあさんの旦那さんてサラハって人ですか?私、そのおじいさんに、半年森の湖南町の古民家でラルクと一緒に修行してたんです!」
「ええ、そうよ。あの人、もう長く弟子なんて取っていなかったのに珍しいわね」
やっぱり、おじいさんの奥さんだったんだ。世間は狭いもんだ。国境を越えてまで出会える。まるで運命みたい。けれど、出会えてよかった。おじいさんも元気にしているだろうか。
「あの、師範の奥様はもう弟子は取らないのでしょうか?」
「私も夫と同じで、もう随分弟子は取ってないわ」
そっか、もう2人とも弟子は取らないんだ。自由な暮らしを求めているのだろうか。
「そうですか。また来てもいいですか?」
え、もう帰るの?ふと時計を見れば12時前。私たち、こんなにも居座っていたんだ。私は紅茶を一気に飲み干し、出されたクッキーをビニール袋に入れた。
「ええ、いつでも来てちょうだい。僅かな情報を与えるくらいしか出来ないけどね。ここで会ったのも何かの縁でしょうから、これ持って帰りなさい」
ココナッツオイルと、小麦粉、卵。たくさんある。これだけあれば、みんなの食事も十分に作れるけど、こんなにもらっていいのだろうか?
「あの、こんなにたくさんもらってもいいのですか?」
「私は今やここでの暮らしに何一つ不自由はしていないからね。あなたたちは、まだ若いし、ここに来たばかりで大変でしょう。でも、挫けないで頑張んなさい!」
「はい、私逃げ出しません!どんな逆境も乗り越えてみせます!」
そうだ、チームワークの乱れだの、料理の不味さだの、一つ一つ気にしていても仕方がない。私は私の出来ることをここでやっていこう。
「じゃ、また来る」
「では、僕もまた来ます」
「おばあさん、ありがとうございました」
私は小麦粉、落ち武者さんはココナッツオイル、ラルクは卵を持って、おばあさんの家を出た。おばあさんの家は市場の近くにあるから、来ようと思えばまた来れる。おばあさんがおじいさんの元に帰るまで、今度はおばあさんの教えをしっかり聞こう。
「じゃ、一度タルリヤの家戻る」
貴重な食材をもらったため、私たちは一度タルリヤさんの家に戻ることにした。
……
あとがき。
トイレの問題はもはや死活問題。けれど、そこで男子トイレに入っちゃうのがナミネなのよね。
アルフォンス王子が肉を焦がした時も声に出しちゃうし。
ナミネは武士として強いけれど、心はどこか幼げ。
それにしても、世間って狭いものなんだな。
国境を越えて出会えるだなんて。出会うべきして出会ったとしか思えないくらい。
おじいさんもおばあさんの転生後、また一緒になって欲しいかも。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
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