日常のこととかオリジナル小説のこととか。
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ashita
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地主(土地貸してます)
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漫画やアニメを見るのが好きです。最推しはフーディーニ ♡
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ブログ、もう書かないと思ってました。
けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。
小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。
純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。
ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。
小説、ぼちぼちマイペースに書いてゆきます。
よろしくお願い致します。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
お知らせ。
イラストは現在「ナノハナ家の日常」に載せております。サイドバーにリンクあります。
また、「カラクリよろずや」にて無料のフリーイラスト素材配布もはじめました✩.*˚
フリーイラスト素材も増やしていく予定です(*'ᴗ'*)
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
模倣・無断転載などは、ご遠慮ください。
ブログの小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
小説・純愛偏差値に関しましては、武家名・貴族名(程度による) / 及び、武官の階級 / 扇子・羽子板・花札・百人一首・紙飛行機などのアイテム使用方法の模倣の一切を禁じております。
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X @kigenzen1874
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現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。
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が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
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〈資格履歴〉
2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
→漢方コーディネーター 合格
→薬膳調整師 合格
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〈資格証明バナー〉

2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
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2025年01月20日
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2025年04月17日
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2025年07月01日
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〈資格証明バナー〉

純愛偏差値 未来編 一人称版 85話
《ナミネ》
この蓮華町に来て、ひと月が経とうとしている。
みんな、それぞれの役割にも慣れてきたし、食糧や衣類、石鹸、トイレの紙などの日常品も確保出来つつある。
順調に進んでいるかのように見えたのに、カラルリさんに続いて今度はアルフォンス王子が崖から転落した。
ここでは、少しも気を抜けない。上手くいっていても、またすぐに問題は起きてしまう。本当、どうしたものか。
「あんたら、また何かあったのかよ」
「あ、落ち武者さん、アルフォンス王子が崖から転落したんです。崖には途中で止まった伝説ワイヤーがありました。止まってしまった時に、思わず手を離してしまったかと思われます」
お武家ワイヤーも王室ワイヤーも速度はかなり早い。当たり前のように上まで行くと思っていたものが突然泊まってしまったら、人はイレギュラーな事態に混乱してしまう。
「一目惚れカラルリの次は、平凡アルフォンスか。今日はナヤセスもロォハもいないから、詳しいことは分かんないな。とりあえず、テントの中に寝かせておけ。あと、市場でもやっぱり小麦粉は貴重品でこれだけしか買えなかった。塩と砂糖は指定の500gずつ買えたんだけどね?」
そうか、小麦粉があれば多くの料理が作れる。値段も野菜ほどではないけれど、収穫量が多いため、町の人が手の出せる値段で売っているらしいし。
「そうですか。小麦のある場所探してみます」
私はとりあえずアルフォンス王子をテントの中に寝かせた。アルフォンス王子、とても震えている。予測もしていない事態に気持ちが着いていかなくて混乱したのだろうか。
けれど、カラルリさんにしてもアルフォンス王子にしても、何かあった時に舞などで対処出来ないのはどうしてだろう。もう遠い昔の力量はないのだろうか。
その時、カンザシさんが倒れた。
「カンザシさん!」
そっか、あの時カンザシさんごと飛び降りたから、カンザシさんも精神的にかなり滅入ってしまったのか。過呼吸起こしてる。私はカンザシさんをワラの上に寝かせ、リュックからビニール袋を取り出し、カンザシさんの口元に当てた。
「お2人ともしばらく休んでいてください」
「ナミネさん、行かないでください」
「すみませんが、ここに来た以上、みんな働いて暮らしているんです。私もやることがあるので、休んでいてください」
私はカンザシさんに掴まれた手を振りほどき、テントから出た。
そっか、落ち武者さんも一応加熱係だから手が離せない。
「ミツメさん、すみませんが赤いテントの中にある女子トイレの掃除してきてもらえないでしょうか?便器は紙に消毒液を付けて拭いて、置いてあるビニール袋は、この町のゴミ捨て場に捨てます。簡易トイレなので、ビニール袋を取り出して括って新しいビニール袋を付けてください」
「あんた、それは流石に酷だろ」
「私もミツメがやることではないと思う。ミツメは差し入れも持って来てくれたんだし、他の作業をさせるべきと思うが」
まあ確かにそうなんだよね。いきなり来たミツメさんに女子トイレの掃除をさせるのは無理があるか。女子トイレはもう諦めるしかないな。
「やります。リーダーに無理矢理連れてこられたとはいえ、このような、まるで古代のような町だとは思っていませんでした。皆さんの苦労お察しします。僕に出来ることなら何でもします」
はあ、ミツメさんは真面目だ。ここではしっかり働いてくれそう。けれど、女子トイレはいくらミツメさんが掃除しても、どの道同じことの繰り返しだ。ミツメさんにも、この町の暮らしを知ってもらわなくては。女子トイレのことは一旦放置しよう。
「あ、やっぱり女子トイレの掃除はいいです。ミツメさんは今後の役割はリリカさんの指示に従ってください」
私は、この町のことをミツメさんに説明した。川はこの町の人の飲み水であること、トイレのも含め全てのゴミはゴミ捨て場に持って行くこと、公衆浴場は3キロ先だからお風呂には入れないこと、崖を登る果物係や薬草係、洗濯係、買い出し係、加熱係などの役割で回していること、着替えは薄いガーゼ布の上下セットなことなどを話したのである。けれど、ミツメさんは真剣な表情をしていた。
「あ、カンザシさんは過呼吸でテントの中で横になっています」
「そうですか。リーダーのことは僕が面倒を見ます」
ミツメさん、優しすぎる。カンザシさんのワガママで連れてこられたのに、持ってくるべきものはちゃんと持って来ているみたいだし、ここへ来る覚悟がそれとなく伝わってくるよ。
「カンザシさんは、この町での生活はかなり厳しいと思います。あと、タルリヤさん、小麦取れる場所ありませんか?」
「家の裏に少しだけ生えてるよ」
「分かりました。それを採取して石臼で小麦粉を作ります」
私はタルリヤさんの家の裏に向かおうとした。
「その作業、僕がやります!」
どうしよう。来たばかりなのに、いきなり作業をさせて身体がもつだろうか。
「ナミネ、私がミツメさんを市場に連れて行って石臼買ってくるから、ナミネは休んでて。ナミネ、顔色悪いよ。クラフ、少しの間、洗濯任せてもいい?」
アルフォンス王子が目の前で転落し、一歩間違えたら命を落としていただろうから、私も動転しているのかもしれない。
「はい、大丈夫です。小麦粉作れるといいですね」
「では、すみませんが石臼の購入お願いします。私は適当な空き家で休んでいます」
「ナミネ、1人で何もかも考えなくていいからね」
ヨルクさんは私の頭を撫でた。何だか、恋人と言うより兄みたいだ。
ヨルクさんとミツメさんが市場に向かうと私は適当な空き家で横になった。
「おい、会議はじまるぞ。気分どうだ?」
落ち武者さん……。私、眠ってしまってたんだ。時計を見れば、まだ12時。どうして早く帰ってきたのだろう。ここでの暮らしは、私は4時に起きて水を汲み、6時に朝食、7時半からそれぞれが役割をし、15時半に作業は終わり、16時から会議、18時に夕ご飯、21時に就寝である。こんなに早く帰ってきたってことは、また何かあったのだろうか。
「あの、まだ12時ですが」
「果樹園に果物が殆どなかったんだよ。それで、薬草係に紙飛行機飛ばして今日の作業は中断になって、平凡アルフォンスとカンザシやミツメのことについて話し合うことになった」
果樹園に果物が殆どない!?こういう時期は今後も続くのだろうか。突然の予想外の出来事に私は戸惑った。
「そうですか。今テントに行きます」
私は落ち武者さんとテントに向かった。
テントでは、カンザシさんとアルフォンス王子が起き上がっていた。
「ナミネ、アルフォンス王子はどこも悪いところはなかったよ。映像見たセルファによると、伝説ワイヤーで登っている途中に伝説ワイヤーが突然止まった弾みでアルフォンス王子は手を離してしまったみたいなんだ。ズームさんによると伝説ワイヤーは故障したみたいで、ここの職人さんでも直せないし新しく作ることも出来ないらしい」
やっぱりアルフォンス王子は、伝説ワイヤーが止まった時に手を離してしまったのか。確かにものは完璧ではない。いつ故障してもおかしくないものである。けれど、修理も出来なければ、オーダーも出来ないなんて。伝説ワイヤーは1つしか持って来てないのに、アルフォンス王子みたいに壊れてしまえばどうしたらいいの?
「そうでしたか。今後、アルフォンス王子はどのような役割をするのでしょうか?」
「そのことなんだけど、セナ王女がワイヤーではなく、カギで登れる人のみ果物係をすべきだと言ってるの。明日、カギで登れるか果物係全員が試すわ。それと、今日みたいに果物が殆どない日が1週間続いたら、果物係は別の役割に回るしかないと思うの。例えば、動物捕獲係とかね。
ミツメはしばらくは小麦粉係、カンザシは洗い物係をしてちょうだい」
逆物質の逆バージョンとでも言うべきだろうか。やはり、古代の暮らしだからこそ、崖を登るにも古代のもののほうがワイヤーほどは壊れる心配がなく登ることが出来るのかもしれない。
「分かりました。頑張って小麦粉作ります」
「分かりました……」
カンザシさんは、本当にサボらずちゃんと作業出来るのだろうか。それにやっぱり女子トイレの件はそのままか。カギは市場で買わなくても崖を登ることを想定して来た人はみんな持っている。私は明日、必ずカギで登り切る。
あれ、アルフォンス王子の顔が青ざめている。どうしたんだろう。
「カラルリ、伝説ワイヤー貸してくれないか?」
「別に構わないけど、カギで登れないと果物係から外されるんだろ?」
「頼む!私だけカギで登ることは免除して欲しい!他のダサイ係なんてとてもじゃないけど出来ない!」
はあ、アルフォンス王子がカギで登れないなら、これからはアルフォンス王子も何もしないってこと?そんなの許せない。
「あの、加熱係は炎の舞使いますので、かなり難易度の高い役割で、今はカラルリさんだけなので、もう1人欲しいと私は思っています」
「無理だ!私は果物係しかやらない!」
アルフォンス王子ってワガママ。カナエさんはこんな男と別れて正解だったと思う。
「あら、森で動物捕まえてきてくれてもいいのよ?とにかく明日からはカギで登る。それが出来ないなら他の役割することね」
アルフォンス王子は一度転落してるんだし、カギも使えないなら他の安全な役割をしたほうがいい。アルフォンス王子はもう果物係は無理だ。
「あの、ここで何もしない人はタルリヤさんの家のご飯のみ食べて、みんなが一生懸命取ってきたものは食べないでください!そんな権利ありませんから!」
「私も同感ね。今後、何もしてない人が人の取ってきたもの食べようとするから阻止するわ!」
これで、約3人はこの家のご飯しか食べられない。係の人が一生懸命取ってきたものを何もしない人に食べられてはチームワークの乱れに繋がる。
「おい、誰に向かって口聞いてんだ、リリカ」
アルフォンス王子はタロットカードをリリカさんに突き付けた。が、リリカさんは扇子で一瞬にして吹き飛ばした。
「ナミネがあなたを助けなかったら、あなた死んでたかもしれないのよ?命あるだけ感謝しなさい!今から公衆浴場に行くわ!」
公衆浴場。やっとお風呂に入れる!
「ラルク、はじめての公衆浴場だね」
「そうだな。かなり歩くけど、流石にずっと風呂入ってなかったから、そろそろ入らないとな」
「ナミネ、公衆浴場では絶対布2枚巻いて」
どうしてヨルクさんって、こうやっていつも束縛みたいなことするの?公衆浴場は男女兼用なんだし、この町の人はまず布なんて巻かないだろう。
「ていうか、みんな水着持って来てるだろ。それ着たらいいと思うけど?」
「水着で入るも布巻くのもみんなの自由にして」
私は水着も布もいらない。けれど、念の為持って行こう。
「分かりました」
「石鹸はここに置いておきますので一人一つ持って行ってください」
石鹸いっぱいある。ズームさん、ハイスピードで量産してるんだ。
「ありがとうございます、ズームさん。あ、ミツメさんとカンザシさんはここで休んでいてください。ここから3キロ先なので」
「僕も行きます」
「リーダーが行くなら僕も行きます」
結局こうなるのか。私は少しずつカンザシさんから離れ、ヨルクさんの腕を組んだ。でも、古代の公衆浴場って……ヨルクさん変な気起こさないといいけど。
公衆浴場まではやや遠い。みんなのペースに合わせると30分では着けない。この往復が明日の崖登りに支障を来さなければいいのだけれど。私はゆっくり歩いた。
途中、何人か息切れしたものの、50分で公衆浴場に着いた。公衆浴場はを積み重ねられ作られた、そこそこ広い建物だった。
「ラルク、公衆浴場だよ!」
「だな」
「ナミネ、水着は絶対に着て!」
「分かりました!着ますけど、でも、ここは古代の暮らしなんですから、ヨルクさんこそ変な気起こさないでください」
「私はそのような気など起こさない」
中に入ると、思っていた通り服を脱ぐのも男女同じ場所だった。年頃な綺麗な人もいる。なんだかな。私はワンピース着たまま水着に着替えた。
「ナミネ、ビキニだったの?」
もう、いちいち何?
「下着の代わりに持って来たんですから、当然でしょう!何も着ないだけマシですよね?」
「う、うん、そうだね」
公衆浴場はお風呂は温泉のようだった。というか、かなり広い。私は髪をお団子にした。
「ナミネ、身体洗ってあげる」
2人の時はいつもヨルクさんに洗ってもらっているけど、公衆浴場だとそういうのは恥ずかしい。けれど、ここは人はそれなりにいるけれど、広いから誰も見てないか。
「はい」
ヨルクさんはズームさんが作った石鹸を泡立たせ、持って来たボディタオルで私の身体を洗いはじめた。何だか、ここに来てからずっと恋人らしい時間持てなかったから、少し新鮮。
「あの、ここって洗顔とかシャンプーとかってありますか?」
え、どうして知らない人に話しかけるの?それも黒髪の胸の大きなスタイルのいい美人。結局ヨルクさんって、これが目的だったんだじゃん。
「ふふっ、はじめて来たのね。ここは石鹸のみよ。髪も顔も身体も全て置いてある石鹸を使うのよ」
「そうなんですね。ボディタオルやバスタオルもないんですか?」
「身体はみんな手で洗ってるわ。バスタオルどころかここはタオルさえないのよ。出る時はみんな持って来た市場の布で身体拭いてるわ」
ここにあるのは、手洗い石鹸のようなものだ。それで顔を洗えば顔が荒れてしまう。21世紀にして家にお風呂がないどころか、公衆浴場通いで、そこには石鹸1つしか置かれていない。タオルさえも仕入れられないなんて、何度も思うが現代人には過酷すぎる生活だ。
あれ、セレナールさんと、リリカさん、ナナミお姉様、ロォラさん、セナ王女、カナエさんはタオル1つ巻いてない。
「あの、お姉さん。ここでは男性は女性を口説かないのですか?」
「ここは公衆浴場で、みんないるからタイプの子がいても、みんな素知らぬ顔してるわ。こんなところで変なことされても迷惑だしね」
なるほど。一応TPOはわきまえているというわけか。けれど、ここに来ている男は殆どセレナールさんを見てる。何だかいやだな。
「あの、お姉さんも合意でしてるんですか?あと、ここの暮らしはお姉さんにとってどんな感じでしょうか?」
「ふふっ、可愛らしい妹さんね。私はいくらここが古代の暮らしのままとはいえ、好きでもない人には許さないわ。それにここにいる男性は論外かしら。そうね、私は崖は登れないし、市場で野菜を買うしかなくて、いくら縫い物をしても、暮らしていけるほどのお金はもらえない。何より、ここで生まれた人はこの町から出ることは許されないから学校に行けないことが何より辛いわね」
お姉さんは、ナノハお姉様くらいの歳だろうか。私たちみたいに妖精村に生まれていたら学校にも行けて花盛りの今をめいいっぱい楽しめていただろうに。青春1つ出来ずこの町で歳をとっていくだなんて、何だか可哀想。
「あんた、そこそこ綺麗だし、果物とか男から分けてもらえないのかよ?」
「果物じゃないけど最初は干し魚とか分けてくれていたわ。でも拒み続けていたら、そのうち誰も何もくれなくなった。私は長女だから、下の子たちを養っていかないといけないけど、流石にこんな町でも綺麗な身体は貫きたいの」
この町の男は見返りを求めるのか。汚い。心が穢れている。この町の人には助け合いというものがないのだろうか。
「ナミネ、洗顔で顔洗うから目をつむって」
ヨルクさん、洗顔持って来たんだ。って、みんな持って来ているけど、なんか、容量が地味に多いような。
「はい」
「仲の良い兄妹なのね」
「彼女です。私の兄弟は、彼女の隣に座っているのが弟で、緑色の髪の女の子の隣にいるのが兄で、金髪で浴場の端っこにいるのがあねです」
「あら、そうだったの。全然似てないのね」
ヨルクさんは私の顔を洗い流し、次は髪を洗いはじめた。やっぱり、クレナイ家はヨルクさんだけ似てないか。
「お姉さんは、ここまでくるの大変じゃないですか?」
「ううん、家この近くだから。寧ろ、市場に通うのが体力いるわね」
公衆浴場の近くに家があるのか。頻繁にお風呂に入れるか、毎日楽に市場に通えるか、どっちがいいだろう。やっぱり、市場だろうか。ヨルクさんは私の髪を洗い流すと再び私の髪をお団子にした。
「私たち妖精村から来たんですけど、果物も干し魚もあるので、少し分けます」
「ううん、いいの。ここでは自力で生きていかないといけないから。それ相応な暮らしをしていくわ」
この人、根がしっかりしている。セナ王女なんて、失恋ひとつで騒ぎ立てるのに。私もそうだけどさ。この町の人は生きることが目標で、生きるために必死で働いているんだ。
「あんたさ、そこそこいい女なんだから、いい男見つけて幸せになれ!」
「ちょっとヨルクさん、どこ見てるんですか!ヨルクさんって胸の大きな人が好きですよね!いっそ、このお姉さんと一緒になればどうですか?」
本当いやになっちゃう。ヨルクさん、ずっとお姉さんのほうばっかり見てて、いやらしいったらありゃしない。
「ねえ、どうしてそういうこと言うの?私はナミネが話してたから話聞いてただけで、変な感情とかないから!決めつけないで!」
どうせ落ち武者さんにフェアリーングかけてもらったら、いやらしい本心話すだろうに。あー、やだやだ。私は無言でズームさんのところに行った。
「ロォラ、タオルくらい巻け!」
「でも、みんなありのままだぞ?ズーム」
私はズームさんの膝の上に頭を乗せた。
「ロォラさんてセクシーですよね。他の男に見られたくない?ない?」
ズームさんは無言で私にタオルをかけた。そうだった。ヨルクさんに身体洗ってもらう時に水着脱げちゃったんだった。ああいった白いビキニって私のような小さいサイズ売ってないんだよね。大きめの買ったら、スルリと脱げちゃった。
「僕は何度も話した通りです」
うーん、ズームさんて、あまり恋したことないのかな。いや、かつてのカンザシさんに元カノを取られたってことは、そこそこ恋愛はしているはず。
「水着、大きいのしかなかったんです。だから脱げちゃった。えへへ」
「ナミネ、水着脱いで何してるの?お風呂入るよ。早く水着着て!」
私は起き上がった。
「水着大きいから脱げちゃったんです!あ、ズームさん、タオルありがとうございました」
私は水着を着るとヨルクさんに手を引っぱられ、浴場に入った。
温かい。お風呂なんて何日ぶりだろう。当たり前のことが、ここではそうではない。お風呂に入ることがこんなに尊いものだと感じたのははじめてだと思う。
その時ヨルクさんは私を膝の上に乗せた。ヨルクさんの紅葉の香りが心地いい。このまま眠ってしまいたい。
「はい、ストップ!ここ公衆浴場だからね?あんたら2人で入っているわけじゃないからね?」
私は咄嗟にヨルクさんから離れた。
「ねえ、落ち武者さん、公衆浴場に来てから、ずっと私たちの近くにいたよね?」
「別にどこにいてもいいと思うけど?」
「もういい!ナミネ、身体洗えたから汚れも落ちたね」
「はい」
その時、さっき話していたお姉さんがヨルクさんにぶつかった。
「大丈夫ですか?」
「助けて!」
え、何が起きたのだろう。ふと横を見るとガタイの大きな男が年頃の綺麗な女の子を押し倒していた。
「なあ、あの男誰だよ」
お姉さんは起き上がった。
「普段は森で住んでいて、たまに町に下りてきては気に入った女性を次々に襲っているの。あの男に初を奪われた子も何人もいるわ!」
そういえば、遠い昔、ターリャさんが皇太子様を公衆浴場まで連れて行き、その帰りに、長身のガタイの大きな男が襲いかかってきた。その時はターリャさんが男を倒したけれど。あの時の男なのだろうか。
「ナミネ、交番に紙飛行機飛ばせ!」
「分かった、ラルク!」
私は交番に紙飛行機を飛ばした。ラルクが男を拘束しようとした時、リリカさんがギリギリのところで襲われている女の子を助け、男を思いっきり殴った。そして、花札で男を拘束した。
少しすると、交番の人が来た。暮らしは古代とはいえ、交番の人まで市場のステテコもどき姿だと調子が狂ってしまう。
交番の人が男を連れて行こうとした時、男は自力で拘束を解くなり、こちらに向かって来た。狙いはお姉さんか。
「ラルク!」
「ああ」
私が男を押さえている間にラルクは公衆浴場に置いてある緊急用の縄を持ち、男を縄で拘束した。お姉さんは泣きながら倒れるようにヨルクさんにもたれかかった。
……
あとがき。
伝説ワイヤーよりカギ登りを指定したセナ。
ナミネは無事カギで崖を登ることが出来るのだろうか?
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
《ナミネ》
この蓮華町に来て、ひと月が経とうとしている。
みんな、それぞれの役割にも慣れてきたし、食糧や衣類、石鹸、トイレの紙などの日常品も確保出来つつある。
順調に進んでいるかのように見えたのに、カラルリさんに続いて今度はアルフォンス王子が崖から転落した。
ここでは、少しも気を抜けない。上手くいっていても、またすぐに問題は起きてしまう。本当、どうしたものか。
「あんたら、また何かあったのかよ」
「あ、落ち武者さん、アルフォンス王子が崖から転落したんです。崖には途中で止まった伝説ワイヤーがありました。止まってしまった時に、思わず手を離してしまったかと思われます」
お武家ワイヤーも王室ワイヤーも速度はかなり早い。当たり前のように上まで行くと思っていたものが突然泊まってしまったら、人はイレギュラーな事態に混乱してしまう。
「一目惚れカラルリの次は、平凡アルフォンスか。今日はナヤセスもロォハもいないから、詳しいことは分かんないな。とりあえず、テントの中に寝かせておけ。あと、市場でもやっぱり小麦粉は貴重品でこれだけしか買えなかった。塩と砂糖は指定の500gずつ買えたんだけどね?」
そうか、小麦粉があれば多くの料理が作れる。値段も野菜ほどではないけれど、収穫量が多いため、町の人が手の出せる値段で売っているらしいし。
「そうですか。小麦のある場所探してみます」
私はとりあえずアルフォンス王子をテントの中に寝かせた。アルフォンス王子、とても震えている。予測もしていない事態に気持ちが着いていかなくて混乱したのだろうか。
けれど、カラルリさんにしてもアルフォンス王子にしても、何かあった時に舞などで対処出来ないのはどうしてだろう。もう遠い昔の力量はないのだろうか。
その時、カンザシさんが倒れた。
「カンザシさん!」
そっか、あの時カンザシさんごと飛び降りたから、カンザシさんも精神的にかなり滅入ってしまったのか。過呼吸起こしてる。私はカンザシさんをワラの上に寝かせ、リュックからビニール袋を取り出し、カンザシさんの口元に当てた。
「お2人ともしばらく休んでいてください」
「ナミネさん、行かないでください」
「すみませんが、ここに来た以上、みんな働いて暮らしているんです。私もやることがあるので、休んでいてください」
私はカンザシさんに掴まれた手を振りほどき、テントから出た。
そっか、落ち武者さんも一応加熱係だから手が離せない。
「ミツメさん、すみませんが赤いテントの中にある女子トイレの掃除してきてもらえないでしょうか?便器は紙に消毒液を付けて拭いて、置いてあるビニール袋は、この町のゴミ捨て場に捨てます。簡易トイレなので、ビニール袋を取り出して括って新しいビニール袋を付けてください」
「あんた、それは流石に酷だろ」
「私もミツメがやることではないと思う。ミツメは差し入れも持って来てくれたんだし、他の作業をさせるべきと思うが」
まあ確かにそうなんだよね。いきなり来たミツメさんに女子トイレの掃除をさせるのは無理があるか。女子トイレはもう諦めるしかないな。
「やります。リーダーに無理矢理連れてこられたとはいえ、このような、まるで古代のような町だとは思っていませんでした。皆さんの苦労お察しします。僕に出来ることなら何でもします」
はあ、ミツメさんは真面目だ。ここではしっかり働いてくれそう。けれど、女子トイレはいくらミツメさんが掃除しても、どの道同じことの繰り返しだ。ミツメさんにも、この町の暮らしを知ってもらわなくては。女子トイレのことは一旦放置しよう。
「あ、やっぱり女子トイレの掃除はいいです。ミツメさんは今後の役割はリリカさんの指示に従ってください」
私は、この町のことをミツメさんに説明した。川はこの町の人の飲み水であること、トイレのも含め全てのゴミはゴミ捨て場に持って行くこと、公衆浴場は3キロ先だからお風呂には入れないこと、崖を登る果物係や薬草係、洗濯係、買い出し係、加熱係などの役割で回していること、着替えは薄いガーゼ布の上下セットなことなどを話したのである。けれど、ミツメさんは真剣な表情をしていた。
「あ、カンザシさんは過呼吸でテントの中で横になっています」
「そうですか。リーダーのことは僕が面倒を見ます」
ミツメさん、優しすぎる。カンザシさんのワガママで連れてこられたのに、持ってくるべきものはちゃんと持って来ているみたいだし、ここへ来る覚悟がそれとなく伝わってくるよ。
「カンザシさんは、この町での生活はかなり厳しいと思います。あと、タルリヤさん、小麦取れる場所ありませんか?」
「家の裏に少しだけ生えてるよ」
「分かりました。それを採取して石臼で小麦粉を作ります」
私はタルリヤさんの家の裏に向かおうとした。
「その作業、僕がやります!」
どうしよう。来たばかりなのに、いきなり作業をさせて身体がもつだろうか。
「ナミネ、私がミツメさんを市場に連れて行って石臼買ってくるから、ナミネは休んでて。ナミネ、顔色悪いよ。クラフ、少しの間、洗濯任せてもいい?」
アルフォンス王子が目の前で転落し、一歩間違えたら命を落としていただろうから、私も動転しているのかもしれない。
「はい、大丈夫です。小麦粉作れるといいですね」
「では、すみませんが石臼の購入お願いします。私は適当な空き家で休んでいます」
「ナミネ、1人で何もかも考えなくていいからね」
ヨルクさんは私の頭を撫でた。何だか、恋人と言うより兄みたいだ。
ヨルクさんとミツメさんが市場に向かうと私は適当な空き家で横になった。
「おい、会議はじまるぞ。気分どうだ?」
落ち武者さん……。私、眠ってしまってたんだ。時計を見れば、まだ12時。どうして早く帰ってきたのだろう。ここでの暮らしは、私は4時に起きて水を汲み、6時に朝食、7時半からそれぞれが役割をし、15時半に作業は終わり、16時から会議、18時に夕ご飯、21時に就寝である。こんなに早く帰ってきたってことは、また何かあったのだろうか。
「あの、まだ12時ですが」
「果樹園に果物が殆どなかったんだよ。それで、薬草係に紙飛行機飛ばして今日の作業は中断になって、平凡アルフォンスとカンザシやミツメのことについて話し合うことになった」
果樹園に果物が殆どない!?こういう時期は今後も続くのだろうか。突然の予想外の出来事に私は戸惑った。
「そうですか。今テントに行きます」
私は落ち武者さんとテントに向かった。
テントでは、カンザシさんとアルフォンス王子が起き上がっていた。
「ナミネ、アルフォンス王子はどこも悪いところはなかったよ。映像見たセルファによると、伝説ワイヤーで登っている途中に伝説ワイヤーが突然止まった弾みでアルフォンス王子は手を離してしまったみたいなんだ。ズームさんによると伝説ワイヤーは故障したみたいで、ここの職人さんでも直せないし新しく作ることも出来ないらしい」
やっぱりアルフォンス王子は、伝説ワイヤーが止まった時に手を離してしまったのか。確かにものは完璧ではない。いつ故障してもおかしくないものである。けれど、修理も出来なければ、オーダーも出来ないなんて。伝説ワイヤーは1つしか持って来てないのに、アルフォンス王子みたいに壊れてしまえばどうしたらいいの?
「そうでしたか。今後、アルフォンス王子はどのような役割をするのでしょうか?」
「そのことなんだけど、セナ王女がワイヤーではなく、カギで登れる人のみ果物係をすべきだと言ってるの。明日、カギで登れるか果物係全員が試すわ。それと、今日みたいに果物が殆どない日が1週間続いたら、果物係は別の役割に回るしかないと思うの。例えば、動物捕獲係とかね。
ミツメはしばらくは小麦粉係、カンザシは洗い物係をしてちょうだい」
逆物質の逆バージョンとでも言うべきだろうか。やはり、古代の暮らしだからこそ、崖を登るにも古代のもののほうがワイヤーほどは壊れる心配がなく登ることが出来るのかもしれない。
「分かりました。頑張って小麦粉作ります」
「分かりました……」
カンザシさんは、本当にサボらずちゃんと作業出来るのだろうか。それにやっぱり女子トイレの件はそのままか。カギは市場で買わなくても崖を登ることを想定して来た人はみんな持っている。私は明日、必ずカギで登り切る。
あれ、アルフォンス王子の顔が青ざめている。どうしたんだろう。
「カラルリ、伝説ワイヤー貸してくれないか?」
「別に構わないけど、カギで登れないと果物係から外されるんだろ?」
「頼む!私だけカギで登ることは免除して欲しい!他のダサイ係なんてとてもじゃないけど出来ない!」
はあ、アルフォンス王子がカギで登れないなら、これからはアルフォンス王子も何もしないってこと?そんなの許せない。
「あの、加熱係は炎の舞使いますので、かなり難易度の高い役割で、今はカラルリさんだけなので、もう1人欲しいと私は思っています」
「無理だ!私は果物係しかやらない!」
アルフォンス王子ってワガママ。カナエさんはこんな男と別れて正解だったと思う。
「あら、森で動物捕まえてきてくれてもいいのよ?とにかく明日からはカギで登る。それが出来ないなら他の役割することね」
アルフォンス王子は一度転落してるんだし、カギも使えないなら他の安全な役割をしたほうがいい。アルフォンス王子はもう果物係は無理だ。
「あの、ここで何もしない人はタルリヤさんの家のご飯のみ食べて、みんなが一生懸命取ってきたものは食べないでください!そんな権利ありませんから!」
「私も同感ね。今後、何もしてない人が人の取ってきたもの食べようとするから阻止するわ!」
これで、約3人はこの家のご飯しか食べられない。係の人が一生懸命取ってきたものを何もしない人に食べられてはチームワークの乱れに繋がる。
「おい、誰に向かって口聞いてんだ、リリカ」
アルフォンス王子はタロットカードをリリカさんに突き付けた。が、リリカさんは扇子で一瞬にして吹き飛ばした。
「ナミネがあなたを助けなかったら、あなた死んでたかもしれないのよ?命あるだけ感謝しなさい!今から公衆浴場に行くわ!」
公衆浴場。やっとお風呂に入れる!
「ラルク、はじめての公衆浴場だね」
「そうだな。かなり歩くけど、流石にずっと風呂入ってなかったから、そろそろ入らないとな」
「ナミネ、公衆浴場では絶対布2枚巻いて」
どうしてヨルクさんって、こうやっていつも束縛みたいなことするの?公衆浴場は男女兼用なんだし、この町の人はまず布なんて巻かないだろう。
「ていうか、みんな水着持って来てるだろ。それ着たらいいと思うけど?」
「水着で入るも布巻くのもみんなの自由にして」
私は水着も布もいらない。けれど、念の為持って行こう。
「分かりました」
「石鹸はここに置いておきますので一人一つ持って行ってください」
石鹸いっぱいある。ズームさん、ハイスピードで量産してるんだ。
「ありがとうございます、ズームさん。あ、ミツメさんとカンザシさんはここで休んでいてください。ここから3キロ先なので」
「僕も行きます」
「リーダーが行くなら僕も行きます」
結局こうなるのか。私は少しずつカンザシさんから離れ、ヨルクさんの腕を組んだ。でも、古代の公衆浴場って……ヨルクさん変な気起こさないといいけど。
公衆浴場まではやや遠い。みんなのペースに合わせると30分では着けない。この往復が明日の崖登りに支障を来さなければいいのだけれど。私はゆっくり歩いた。
途中、何人か息切れしたものの、50分で公衆浴場に着いた。公衆浴場はを積み重ねられ作られた、そこそこ広い建物だった。
「ラルク、公衆浴場だよ!」
「だな」
「ナミネ、水着は絶対に着て!」
「分かりました!着ますけど、でも、ここは古代の暮らしなんですから、ヨルクさんこそ変な気起こさないでください」
「私はそのような気など起こさない」
中に入ると、思っていた通り服を脱ぐのも男女同じ場所だった。年頃な綺麗な人もいる。なんだかな。私はワンピース着たまま水着に着替えた。
「ナミネ、ビキニだったの?」
もう、いちいち何?
「下着の代わりに持って来たんですから、当然でしょう!何も着ないだけマシですよね?」
「う、うん、そうだね」
公衆浴場はお風呂は温泉のようだった。というか、かなり広い。私は髪をお団子にした。
「ナミネ、身体洗ってあげる」
2人の時はいつもヨルクさんに洗ってもらっているけど、公衆浴場だとそういうのは恥ずかしい。けれど、ここは人はそれなりにいるけれど、広いから誰も見てないか。
「はい」
ヨルクさんはズームさんが作った石鹸を泡立たせ、持って来たボディタオルで私の身体を洗いはじめた。何だか、ここに来てからずっと恋人らしい時間持てなかったから、少し新鮮。
「あの、ここって洗顔とかシャンプーとかってありますか?」
え、どうして知らない人に話しかけるの?それも黒髪の胸の大きなスタイルのいい美人。結局ヨルクさんって、これが目的だったんだじゃん。
「ふふっ、はじめて来たのね。ここは石鹸のみよ。髪も顔も身体も全て置いてある石鹸を使うのよ」
「そうなんですね。ボディタオルやバスタオルもないんですか?」
「身体はみんな手で洗ってるわ。バスタオルどころかここはタオルさえないのよ。出る時はみんな持って来た市場の布で身体拭いてるわ」
ここにあるのは、手洗い石鹸のようなものだ。それで顔を洗えば顔が荒れてしまう。21世紀にして家にお風呂がないどころか、公衆浴場通いで、そこには石鹸1つしか置かれていない。タオルさえも仕入れられないなんて、何度も思うが現代人には過酷すぎる生活だ。
あれ、セレナールさんと、リリカさん、ナナミお姉様、ロォラさん、セナ王女、カナエさんはタオル1つ巻いてない。
「あの、お姉さん。ここでは男性は女性を口説かないのですか?」
「ここは公衆浴場で、みんないるからタイプの子がいても、みんな素知らぬ顔してるわ。こんなところで変なことされても迷惑だしね」
なるほど。一応TPOはわきまえているというわけか。けれど、ここに来ている男は殆どセレナールさんを見てる。何だかいやだな。
「あの、お姉さんも合意でしてるんですか?あと、ここの暮らしはお姉さんにとってどんな感じでしょうか?」
「ふふっ、可愛らしい妹さんね。私はいくらここが古代の暮らしのままとはいえ、好きでもない人には許さないわ。それにここにいる男性は論外かしら。そうね、私は崖は登れないし、市場で野菜を買うしかなくて、いくら縫い物をしても、暮らしていけるほどのお金はもらえない。何より、ここで生まれた人はこの町から出ることは許されないから学校に行けないことが何より辛いわね」
お姉さんは、ナノハお姉様くらいの歳だろうか。私たちみたいに妖精村に生まれていたら学校にも行けて花盛りの今をめいいっぱい楽しめていただろうに。青春1つ出来ずこの町で歳をとっていくだなんて、何だか可哀想。
「あんた、そこそこ綺麗だし、果物とか男から分けてもらえないのかよ?」
「果物じゃないけど最初は干し魚とか分けてくれていたわ。でも拒み続けていたら、そのうち誰も何もくれなくなった。私は長女だから、下の子たちを養っていかないといけないけど、流石にこんな町でも綺麗な身体は貫きたいの」
この町の男は見返りを求めるのか。汚い。心が穢れている。この町の人には助け合いというものがないのだろうか。
「ナミネ、洗顔で顔洗うから目をつむって」
ヨルクさん、洗顔持って来たんだ。って、みんな持って来ているけど、なんか、容量が地味に多いような。
「はい」
「仲の良い兄妹なのね」
「彼女です。私の兄弟は、彼女の隣に座っているのが弟で、緑色の髪の女の子の隣にいるのが兄で、金髪で浴場の端っこにいるのがあねです」
「あら、そうだったの。全然似てないのね」
ヨルクさんは私の顔を洗い流し、次は髪を洗いはじめた。やっぱり、クレナイ家はヨルクさんだけ似てないか。
「お姉さんは、ここまでくるの大変じゃないですか?」
「ううん、家この近くだから。寧ろ、市場に通うのが体力いるわね」
公衆浴場の近くに家があるのか。頻繁にお風呂に入れるか、毎日楽に市場に通えるか、どっちがいいだろう。やっぱり、市場だろうか。ヨルクさんは私の髪を洗い流すと再び私の髪をお団子にした。
「私たち妖精村から来たんですけど、果物も干し魚もあるので、少し分けます」
「ううん、いいの。ここでは自力で生きていかないといけないから。それ相応な暮らしをしていくわ」
この人、根がしっかりしている。セナ王女なんて、失恋ひとつで騒ぎ立てるのに。私もそうだけどさ。この町の人は生きることが目標で、生きるために必死で働いているんだ。
「あんたさ、そこそこいい女なんだから、いい男見つけて幸せになれ!」
「ちょっとヨルクさん、どこ見てるんですか!ヨルクさんって胸の大きな人が好きですよね!いっそ、このお姉さんと一緒になればどうですか?」
本当いやになっちゃう。ヨルクさん、ずっとお姉さんのほうばっかり見てて、いやらしいったらありゃしない。
「ねえ、どうしてそういうこと言うの?私はナミネが話してたから話聞いてただけで、変な感情とかないから!決めつけないで!」
どうせ落ち武者さんにフェアリーングかけてもらったら、いやらしい本心話すだろうに。あー、やだやだ。私は無言でズームさんのところに行った。
「ロォラ、タオルくらい巻け!」
「でも、みんなありのままだぞ?ズーム」
私はズームさんの膝の上に頭を乗せた。
「ロォラさんてセクシーですよね。他の男に見られたくない?ない?」
ズームさんは無言で私にタオルをかけた。そうだった。ヨルクさんに身体洗ってもらう時に水着脱げちゃったんだった。ああいった白いビキニって私のような小さいサイズ売ってないんだよね。大きめの買ったら、スルリと脱げちゃった。
「僕は何度も話した通りです」
うーん、ズームさんて、あまり恋したことないのかな。いや、かつてのカンザシさんに元カノを取られたってことは、そこそこ恋愛はしているはず。
「水着、大きいのしかなかったんです。だから脱げちゃった。えへへ」
「ナミネ、水着脱いで何してるの?お風呂入るよ。早く水着着て!」
私は起き上がった。
「水着大きいから脱げちゃったんです!あ、ズームさん、タオルありがとうございました」
私は水着を着るとヨルクさんに手を引っぱられ、浴場に入った。
温かい。お風呂なんて何日ぶりだろう。当たり前のことが、ここではそうではない。お風呂に入ることがこんなに尊いものだと感じたのははじめてだと思う。
その時ヨルクさんは私を膝の上に乗せた。ヨルクさんの紅葉の香りが心地いい。このまま眠ってしまいたい。
「はい、ストップ!ここ公衆浴場だからね?あんたら2人で入っているわけじゃないからね?」
私は咄嗟にヨルクさんから離れた。
「ねえ、落ち武者さん、公衆浴場に来てから、ずっと私たちの近くにいたよね?」
「別にどこにいてもいいと思うけど?」
「もういい!ナミネ、身体洗えたから汚れも落ちたね」
「はい」
その時、さっき話していたお姉さんがヨルクさんにぶつかった。
「大丈夫ですか?」
「助けて!」
え、何が起きたのだろう。ふと横を見るとガタイの大きな男が年頃の綺麗な女の子を押し倒していた。
「なあ、あの男誰だよ」
お姉さんは起き上がった。
「普段は森で住んでいて、たまに町に下りてきては気に入った女性を次々に襲っているの。あの男に初を奪われた子も何人もいるわ!」
そういえば、遠い昔、ターリャさんが皇太子様を公衆浴場まで連れて行き、その帰りに、長身のガタイの大きな男が襲いかかってきた。その時はターリャさんが男を倒したけれど。あの時の男なのだろうか。
「ナミネ、交番に紙飛行機飛ばせ!」
「分かった、ラルク!」
私は交番に紙飛行機を飛ばした。ラルクが男を拘束しようとした時、リリカさんがギリギリのところで襲われている女の子を助け、男を思いっきり殴った。そして、花札で男を拘束した。
少しすると、交番の人が来た。暮らしは古代とはいえ、交番の人まで市場のステテコもどき姿だと調子が狂ってしまう。
交番の人が男を連れて行こうとした時、男は自力で拘束を解くなり、こちらに向かって来た。狙いはお姉さんか。
「ラルク!」
「ああ」
私が男を押さえている間にラルクは公衆浴場に置いてある緊急用の縄を持ち、男を縄で拘束した。お姉さんは泣きながら倒れるようにヨルクさんにもたれかかった。
……
あとがき。
伝説ワイヤーよりカギ登りを指定したセナ。
ナミネは無事カギで崖を登ることが出来るのだろうか?
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
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