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日常のこととかオリジナル小説のこととか。
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ashita
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女性
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地主(土地貸してます)
趣味:
漫画やアニメを見るのが好きです。最推しはフーディーニ ♡
自己紹介:
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ブログ、もう書かないと思ってました。

けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。

小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。

純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。

元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。

ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。

小説、ぼちぼちマイペースに書いてゆきます。

よろしくお願い致します。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

お知らせ。

イラストは現在「ナノハナ家の日常」に載せております。サイドバーにリンクあります。

また、「カラクリよろずや」にて無料のフリーイラスト素材配布もはじめました✩.*˚

フリーイラスト素材も増やしていく予定です(*'ᴗ'*)

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

模倣・無断転載などは、ご遠慮ください。

ブログの小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。

小説・純愛偏差値に関しましては、武家名・貴族名(程度による) / 及び、武官の階級 / 扇子・羽子板・花札・百人一首・紙飛行機などのアイテム使用方法の模倣の一切を禁じております。

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〈資格履歴〉

2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
→漢方コーディネーター 合格
→薬膳調整師 合格

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〈資格証明バナー〉

鉛筆デッサンマスター®認定試験資格取得証明
絵画インストラクター資格資格認定証
宝石鑑定アドバイザー資格認定試験資格取得証明
鉱石セラピスト資格資格保持証明
茶道アドバイザー資格認定試験資格取得証明
お点前インストラクター資格資格認定証
着物マイスター®資格認定試験資格取得証明
着付け方インストラクター資格資格認定証
サイキックアドバイザー®資格資格証明
サイキックヒーラー資格資格保持証明
アンガーカウンセラー®資格資格保持証明
アンガーコントロール士資格資格認定証
漢方コーディネーター®資格認定試験資格保持証明
薬膳調整師®資格認定試験資格保持証明
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純愛偏差値 未来編 一人称版 84話

《ナミネ》

「あんたら抜け駆けして修行までしてたのかよ。だから、家事1つ出来なかった強気なナミネが、いきなり家事出来るようになったんだな」
「あ、抜け駆けとかそういうのではないです!ナルホお兄様があんな状態だったので、行き場がなく、ラルクと折り鶴に乗っていたら、森の湖南町に着いてたんです」
落ち武者さんて兄弟いるのに、いつも寂しがり屋さんだ。それも過去の風邪の悪化が原因だろうか。その時、誰か1人でも落ち武者さんの傍にいてたらよかったのに。
「とにかく、妖精村戻ったら、そのじいさんとこ行く」
「あ、はい。そういえば、森の湖南町は天然記念物でダンゴロさんが所有しているそうです」
神様が所有者というのも意外だけれど、そうまでして残しておく理由があるんだろうな。
「へえ、エロじじいが所有者ってわけか。だったら、あのレストランがあるのも理解出来るな」
「今後は、師範の奥様の家に通いましょう。ここでの暮らしのヒントが得られるかもしれません」
「だね〜!やっぱり、ここは達人の知恵が大事だよね」
「あんたらは果物係で忙しいだろうから、僕が頻繁に行く」
まさかの落ち武者さんが抜け駆け!タルリヤさんの家のご飯が食べれたものではないからって、おばあさんの家で食べるのだろうか。
「落ち武者さん、私の分のお菓子も残しておいてください」
「あんた、僕が長居するとでも思ってんの?一目惚れカラルリの作業もあるから、市場に寄ったあと、挨拶程度に寄るだけだけど?」
ああ、そうか。落ち武者さんは、カラルリさんと一緒に加熱作業するんだった。

タルリヤさんの家に戻るとリリカさんがいた。
「あ、リリカさんー!」
「ナミネ、それどうしたの?ラルク、どこでもらったの?落ち武者さん失礼なことしてない?」
ヨルクさんていつもこう。ヨルクさんには近所の人付き合いというものがないのだろうか。
「あんた、何で僕だけに言うのさ。ばあさん家でもらってきたんだよ」
「その家どこ?今すぐお礼に行ってくる」
はあ、ヨルクさんて、ちょっともらってきただけで悪いことしたような言い方で何だかモヤモヤする。それに、おばあさんは完全に他人というわけではないのに。
「市場の近くのログハウスっぽいとこだけど?」
「分かった、ちょっと行ってくる」
ヨルクさんはそそくさに市場方面へ向かって行った。
そういえば、みんなもうサバイバル服からガーゼ服になってるから、男性陣はステテコみたいで、めちゃくちゃダサイ。ヨルクさんなんか、スポーツタイプのパンツじゃなく、いつものダサイパンツ映ってて余計にダサイ。けれど、遠い昔、アランさんのセイさんはパンツしか履いてなかったんだっけ。何だか、男性陣には目も向けられないよ。
「あ、リリカさん。市場の近くに住むおばあさんから、小麦粉と卵とココナッツオイルもらってきました。これでホットケーキが作れると思うんです。なので、ナヤセス殿とロォラさんに作ってもらえたらと思いまして……」
もうあの不味い魚料理は食べたくない。ちゃんとした人に了解をして欲しい。
「まあ、こんなに!お礼はヨルクが行ったから問題ないわね。みんな!ナミネとラルクとセルファが貴重な食糧もらってきてくれたわよ!ここで何もしてない人は、いい加減、トイレのものゴミ捨て場に持って行きなさい!」
あのゴミ、まだ残ってるんだ。こんなだとどうせ、女子トイレは便器も汚れてるんだろうな。
「じゃあ、ホットケーキは私とナヤセスで作る」
はあ、これでやっとまともなご飯が食べられる。
「ナミネ、僕が料理してる姿、写真に撮ってくれないかな?」
「ラハルのことなら私がするわよ!」
これは推しというより、なんと呼ぶべきなのだろうか。2.5次元の普段接することも出来ない芸能人が目の前にいるもんな。
「あ、どれも貴重な食糧ですので、焦がさないようお願いします」
「ああ、分かってる」
「ナミネ、僕の手料理楽しみにしててね」
ナヤセス殿は私の頭を撫でた。
「はい」
そこへズームさんが来た。
「喜んでいるところ申し訳ないのですが、湖の魚を毎日釣り続けていたら、そろそろ魚がいなくなってきました。なので、明日、僕は、町の職人さんに携帯浄水器と万が一の時のための点滴を1つずつ注文しに行こうかと思います。無論点滴の針は、この町の技術ではある程度は太いでしょうけど。納得いく商品であれば、今後のために追加注文するつもりです。その後は僕は石鹸を作ります。手洗い、食器洗い、洗濯に必要でしょうから」
そうか、職人さんに作ってもらう方法があったか。特に携帯浄水器は非常事態に必要になってくる。そういえば、未来医師の学び舎でも似たようなシーンがあったなあ。
「え、ええ、お願いするわ。みんな聞いたかしら?することがなくなれば、次のことを考える。それが出来ないとここでは生きていけないわよ?セレナールとアヤネ、ミネスは明日から何をするのかしら?自力で崖を登っても構わないのよ?」
何もしてない人は、セレナールさんとミネスさん、アヤネさんの3人だ。せめて、トイレのゴミ捨てだけでもしてくれたらかなりマシなのに。
「へえ、お兄ちゃんみたいに頭脳戦はまかり通るってわけ。この家には人参がある。市場でも安値で売ってる。どうせ腐っているんだったら別の用途にしたほうが効率はよくなると思う。私は薄い紙、つまりトイレットペーパーの代用品を作る。そうすれば、コストもかなり削減出来る。文句ある?」
ミネスさんはズームさんに似て頭脳明晰だ。ここではズームさん同様頭脳戦でチームワークに乗るつもりか。何だか悔しい。いくら、武士としての力量があっても、頭脳明晰な人は体力使わずに色んなことが出来てしまう。あっ、でも、火を通す過程はどうするのだろう。
「ですが、野菜をギリギリまで煮るのはどうするのですか?」
「ナミネっておバカさんね。お兄ちゃんが数式書けるように私も書けるの。あと、電池の使わない押すだけミキサーを私も職人にオーダーする」
電池を使わない押すだけミキサー。妖精村だとそれなりに出回っている。それなら職人も作れるかもしれない。
「じゃあ、ミネスはトイレットペーパーの代用品製作をお願いするわ。アヤネとセレナールはどうするのかしら?」
「み、水汲みをします」
「それは毎朝ナミネがしてるわ!」
2人は黙り込んでしまった。
「あの、何もしないのでしたら、トイレ掃除とかトイレのゴミを流石に捨ててもらえませんか?」
「何よ!ナミネがやりなさいよ!」
「あのですね……」
「ナミネ、もういいわ。放っておきましょう」
本当何なの。果物係はただでさえ崖を登る命懸けの役割なのに。トイレのゴミ捨てなんて命全然かけないじゃん。
あれ、ビニール袋に入れたおばあさんの手作りクッキーがなくなってる。
「ねえ、ラルク。おばあさんの手作りクッキーなくなってるよ」
「クッキーだけなら諦めろ!」
「本当に次から次へと問題起こるわね!」
その時、ヨルクさんが戻って来た。え、何持ってるの?またもらってきたのだろうか。
「ナミネ、ただいま。銀のリンゴもらってきたよ」
何故ヨルクさんだけ特別なものをもらえるのだろう。ナヤセス殿はヨルクさんに近付いた。
「ヨルク、成分調べていいかな?」
「はい、どうぞ」
落ち武者さんが写真を撮ったあと、ナヤセス殿は銀のリンゴの成分を調べはじめた。
崖の上の果樹園は毎日変わっている。けれど、特別なものは頻繁には手に入らないだろう。1世紀おきとか、それよりもっと見ることが出来ないかもしれない。
トイレ行かなきゃ。私はトイレに走った。

女子トイレの便器は誰かのもので汚れている。どうして汚した人は綺麗にしないのだろう。もう片方のトイレは何もないから私はもう片方のトイレを使った。
やっぱり布ナプキンだと紙のナプキンと違って早いめに変えないといけない。けれど、背に腹はかえられない。私は布ナプキンを変えると汚れた布ナプキンをビニール袋に入れてトイレを出た。

「ナミネ、それ洗っておくね」
「はい、お願いします」
私はヨルクさんに汚れた布ナプキンを渡した。
「ねえ、布ナプキンって自分で洗うんじゃなかったの?ナミネだけ特別扱いなんて卑怯だわ」
セナ王女はちょっとしたことに反応する。
「あの、今だから言いますが、女子トイレの便器が汚れているんです。今から落ち武者さんにフェアリーングかえてもらいましょうか」
「イジメはやめてください!」
犯人はアヤネさんだったのか。
「あの、アヤネさん。自分のもの自分で綺麗に出来ないんですか?」
「私じゃありません」
「では、落ち武者さんにフェアリーングかけてもらいます」
「やめてください!どうしてイジメるんですか!」
アヤネさんは羞恥心からか泣きはじめた。泣いたってどうにもならないのに。ただ、どうして自分で汚したものは自分で元通りにしないのか。その精神が理解し兼ねる。
「アヤネはトイレ掃除しないなら今日のホットケーキは抜き!クッキー盗んだアルフォンス王子もね」
「証拠でもあるのかよ」
「私もセルファにフェアリーングかけてもらおうかしら」
「ロクなご飯食べれてなかったから思わず食べてしまった。今回だけは許して欲しい」
落ち武者さんがいると、みんな自白する。けれど、クッキーだって貴重な食糧なのに。それを1人で全部食べるなんてやっぱり許せないよ。

夕方になり、みんなはテントに入り、ロォラさんとナヤセス殿のホットケーキを食べることになった。ホットケーキは家で食べるのより半分小さい大きさだけれど、ここでは貴重な食べ物だ。
ちなみに、ラハルさんはラストのホットケーキの焼く姿をリリカさんにバッチリ撮ってもらったらしい。
トイレ汚したままのアヤネさんの分はないけれど、これでやっと美味しい料理が食べられる。私はホットケーキにハチミツをかけた。美味しい……。これで料理係が決まれば、あの不味い魚料理から開放される。そうだ、こういう手段もあった。
「あの、今後の料理係ですが、洗濯係の人がローテーションするのはどうでしょう?」
ローテーションなら、毎日作らなくてもいい。みんなはどう考えるだろう。
「本来なら何もしてない人に作ってもらいたいところだけど、貴重な食糧を無駄にするわけにもいかないし、私はそれで構わないわ」
よし!リリカさんのOKが出た。あとは、洗濯係の人の気持ちだ。
「ええ、そうするわ。毎日じゃないなら、そこまで疲れないだろうし」
「僕も少しずつ料理学びながら作る」
「料理経験は殆どないですが僕も頑張ります」
「ああ、私もそれで構わない」
「親の料理しか見てなかったけど僕なりにやってみるよ」
「ナミネ、美味しい料理作るからね」
やった!洗濯係はみんな賛成してくれた!これで、貴重な食糧に関しては美味しい料理を味わえる。ありがとう、みんな。
「ありがとうございます。掛け持ちは辛いかもしれませんが、お願いします。もし、担当の日、具合が悪い人は無理せず、次の日の担当者に作ってもらってください」
魚はもう湖に殆どいないから、今後は市場に売り出されないだろうし、ここにある分だけだけど、干物なら普通に食べれると思う。それに、果物に肉もあるから、ここの料理に加えたら栄養も取れるだろう。何より、市場で小麦粉が手に入れば、ココナッツオイルでホットケーキが作れるのは大きな収穫だ。ホットケーキは卵がなくても作れるし、今後の貴重な食べ物の1つになると思う。まあ、ここには牛乳もベーキングパウダーもないし、卵もないと家で食べるようなホットケーキとはまた違うけど、それでも美味しく食べれるのはとても嬉しい。それに小麦粉は色んな料理が出来る。クッキーもそうだし、ナンとか、ドーナツ、蒸しパン。おやきなんて小麦粉と塩があれば作れる。調味料はここで全ては揃えられないけど、小麦粉は、ここでは欠かせない。
「あ、落ち武者さん、明日、市場で追加で小麦粉と砂糖と塩を買ってきてもらえませんか?小麦粉があれば、ドーナツや蒸しパン、ナンなど幅広いものが作れます。小麦粉と塩だけあれば、おやきを作ることも出来ます。今後、小麦粉はここでかなり役立ってくれると思うのです」
「りょーかい。じゃあ、小麦粉と砂糖、塩に加え、ズームの石鹸作りの油と灰買ってくる」
「石鹸作りの材料は、既に揃えてあります」
「あんた、仕事早いな」
ズームさんは、市場で油を買いに行き、灰は何度か焚き火を起こしたあとのものをかき集めたらしい。手作り石鹸は、普通は灰ではなく、荷性ソーダか精製水が使われるが、ここには当然のごとくそれがない。ちなみに、古代では荷性ソーダか精製水の代わりに灰を使っていたそうだ。石鹸て古代からあったんだなあ。そして、ズームさんは四角い容器も持って来ているから石鹸作りの準備は万全だ。
「あ、ハチミツもお願いします」
「それなんだけど、うちにあるのは何世紀も前のもので、今はハチ1匹ここにはいないから、ハチミツは市場にはもう売り出されてないんだ」
えええええ!あれ、何世紀も前のものだったの?全然気づかなかった。次からは砂糖かけて食べよう。
「そうですか。逆に存在しなくなったものもあるのですね」
これが時代というヤツだろうか。それにしてもハチがいないだなんて実に不可思議だ。
その時、ヨルクさんが私にストールのようなものをかけた。
「ありがとうございます、ヨルクさん」
そうか、昼間はそれなりの気温を保っているけれど、今は冬で夜はマイナス20度を超えることもある。女性陣はノースリーブのワンピースだし、男性陣は長袖とはいえ、そもそもガーゼ布自体が薄い。けれど、ここで冬物のコートを手に入れるにはそれこそイノシシを捕まえなければならない。今は、ヨルクさんが作ってくれたガーゼ布二枚重ねのストールでしのぐしかない。あれ、ちょっと待てよ。
「あの、崖の上の果樹園が毎日変わるなら綿が生えていることもあるかもしれませんよね?綿が手に入れば、それをガーゼ布に入れてケープを作るのはどうでしょう?」
「それもなんだけどね、果樹園はあくまで食べられる果物しか生えてないんだよ。あるとしたら薬草のほうだろうけど、僕は遠い昔からここで綿を見たことがないんだよね」
えっ、ありそうなのにないのか。綿を収穫すれば、ケープ的なコートが作れるのに、残念。
「そうでしたか。ここの服は生地が薄いですし、コートがないと暮らしも大変ですね」
確かに古代に贅沢なものなんてないか。ここでの期待はあまりよくない。気を引き締めなければ。
「ねえ、ラルク。アヤネさんね、便器に大っきいの付けたんだよ。これで愛しのズームさんに嫌われたね」
「ナミネ、食事中に言うなよ!」
「どうしてイジメるんですか!」
アヤネさんは泣きながらテントを出た。私は今度はズームさんの膝に頭を乗っけて上目遣いでズームさんを見た。
「ズームさん、ロォラさんの手料理食べれて幸せですね。ロォラさんは家事かなり出来ます。お嫁さんにしたくなった?なった?」
「ロォラのことは女としては見れません。僕はかつてのあなた以上の恋愛をしたことはありませんよ」
えっ、私のどこがいいのだろう。それに、ロォラさんとズームさんて息ピッタリで恋人みたいなのに。
「とりあえず、女子トイレの便器が汚れたままだなんて、ありえなさすぎるわ。それに、もうすぐビニール袋も変えないといけないのに。何もしない人はどうして何もしないのかしら。セレナール!明日、トイレ掃除しなさい!しないと、食事は抜きよ!」
私は起き上がり、再びヨルクさんの横に座った。
そうなんだよね。このままだと、テントから溢れてしまいそうだ。
「リリカ、流石に汚いものは触れないわ!」
「ゴム手袋持ってきたじゃない!」
「持って来てない!」
はあ、セレナールさんは、どうして必要なものは全て置いてきたのだろう。ここでの暮らしも少しずつ慣れはじめ、食糧も確保出来るようになって来た。けれど、何もしない人や女子トイレの問題は少しも解決しない。どうしたものか。

その後、ズームさんは町の職人さんに携帯浄水器と点滴をオーダーで作ってもらった。携帯浄水器はペットボトルのように大きく容器は重たいが、湖の水で試したらちゃんと使えたのである。また、点滴はやはり針に関しては限界があったが、ナヤセス殿が着いて行き、直接目にして使えるものと判断し、ズームさんは携帯浄水器と点滴を追加で15個注文した。そして、予定通り、油と灰、水で順調に石鹸を作りはじめている。
ミネスさんも宣言した通り、職人さんにオーダーした押すだけミキサーが出来上がるなり、他はタルリヤさんの家にあるものでトイレットペーパーの代用品である薄い紙を作りはじめたのである。ミネスさんもズームさんに似て手先が器用で、ペラペラの紙が仕上がっていった。まさに神業。これでトイレットペーパーは市場で買わなくて済む。といっても、ここの暮らしは古代並ゆえ、分厚く固い紙がずさんに巻かれているだけなのだ。それゆえ、ミネスさんが作った薄紙のほうが使いやすいのである。
料理係は、洗濯係から毎日1人料理し、次の日には別の人が料理をするというローテーション型になり、普段料理をしていない人はヨルクさんやロォラさんに学び苦戦しながらも美味しい料理を作ってくれている。
カラルリさんは、炎の舞を使い、果物をドライフルーツに、残った魚を干し魚に、加熱不十分の市場の肉を十分に加熱したり干し肉を落ち武者さんの指示の元、休憩を挟みながら量産してくれている。
何もしない2人や女子トイレの問題は相変わらずだが、ここで生活するものがどんどん増えていっている。順調にことは運んでいっているかのように思えた。けれど、カラルリさんの件もあり、私は気を抜けなかった。出来れば私も薬草のほうを見てみたいが、果物係のワイヤーを使って登っている人が心配だ。ナルホお兄様とカナエさんは毎日ワイヤーを点検しているから大丈夫だろうけど、果物係のほうは点検していない人のほうが多い。また事故が起きなければいいのだが。

テントに入っていても今日は随分と寒い。私は寝袋の中に入りながら干し魚を食べた。
「強気なナミネ、あんた、それは流石にやりすぎだろ」
「あ、はい……焚き火起こしてきます」
私は寝袋から出て外で焚き火を起こした。すると、みんなも焚き火に当たりに来た。こういう日のタルリヤさんの家のご飯を食べるのはキツイものがある。それでも、食べないと。
その時、上空から強い音がした。
えっ、芸能事務所のヘリコプター!?ヘリコプターが着陸するとカンザシさんとミツメさんが下りてきた。
「あの、どうして来たんですか?」
「ナミネさんが、ここにいると聞いていても経ってもいられなくて来てしまいました」
とは言うものの、2人とも私服だ。でも、バッチリとコートを着ている。
「最初に言っておくわ!ここは電気もガスも水道も何もない。21世紀にして古代の暮らしのまんまなの。だから、私たちは、それぞれ役割を決めて暮らしてる。あなたたちも今すぐ帰らないのなら何かしらしてちょうだい。あと、ここで暮らすならヘリコプターは戻すことよ」
ミツメさんはともかくとして、カンザシさんが出来ることなんてあるのだろうか。
「分かりました。ヘリコプターは戻します」
ミツメさんはヘリコプターを戻した。
「ナミネさん、差し入れです」
「ありがとうございます、ミツメさん」
私はミツメさんから、差し入れを受け取った。
「果物係はそろそろ行くわよ!」
「あ、すみません。私はもう行かなくてはならないので、分からないことがあれば、ここに残っている人に聞いてください」
「ナミネさん、気をつけてください」
カンザシさんは私を抱き締めた。
「だ、大丈夫です。ここに来てずっとやっていることですし」
私はカンザシさんを振りほどくと、果物係のメンバーと共に崖に向かった。

何故かカンザシさんが着いてきた。
「あの、下で待っていてもらえませんか?」
「僕も果樹園を見たいです」
うーん、1人背負えば下りる時、果物があるから困る。でも仕方ないか。
「分かりました。しっかり捕まっていてください」
私はカンザシさんを背負うと伝説ワイヤーをいつものように上に引っかけ、登りはじめた。中間地点まで来た時、アルフォンス王子が突然崖から転落した。私は咄嗟に伝説ワイヤーから手を離しカンザシさんを背負ったまま飛び降りた。どうにかアルフォンス王子を受け止められたものの、アルフォンス王子は酷く混乱している。私は伝説ワイヤーを回収した。
ふと上を見るとアルフォンス王子の伝説ワイヤーが崖の中間地点より上のほうで止まっている。突然止まった伝説ワイヤーを思わず離してしまったのだろうか。そもそも、どうしてこれまで使えた伝説ワイヤーが途中で動かなくなったのだろう。私は扇子でアルフォンス王子の伝説ワイヤーを回収した。
「あの、アルフォンス王子が崖から転落しました。なので、アルフォンス王子をタルリヤさんの家に連れて行きます」
「分かったわ!ナミネも今日は休みなさい!帰ったら会議よ!」
「はい、分かりました」
私はカンザシさんを下ろすとアルフォンス王子を背負い、トボトボとタルリヤさんの家に向かって歩きはじめた。

……

あとがき。

女子トイレの問題、どうにかならないんですかね。

そういえば、古代にも小麦粉はありますよね。石臼というものを使って作っているそうですね。小麦粉がなくなっても、小麦を入手出来たらナミネたちの小麦粉は確保出来そう。

それにしても、今度はアルフォンス王子が転落。
いったいどうしたものか。

……

この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
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純愛偏差値 未来編 一人称版 83話

《ナミネ》

私はカラルリさんが眠りにつくのを見届けたあと、崖に置いてきた武家伝説ワイヤーを回収しに行った。
カラルリさんはヨルクさんと違って武士向けである。遠い昔はセナ王女との力量の差に劣等感を抱いていたりもしたそうだけれど。それでも、キクリ家の跡取りとしては申し分のない力量を持ち合わせていると思う。そんなカラルリさんがオリジナルワイヤーの点検不足というミスをおかすだなんて、いったいどうしてだろう。
私は考えながらトボトボと歩いていた。

タルリヤさんの家に戻り、空き家の畳んである洗濯物を見たら汚れと洗剤が残っていた。私はすぐに洗濯係の元に行った。
「あの、洗濯係の皆さん、洗濯物に汚れと洗剤がついています。今から私がお手本を見せますので、よぉく見ていてください」
私はヨルクさんのパンツを掴み、汚れている部分に洗剤を直接つけた。
「まず、汚れが目立っているところには先に洗剤を付けて叩き棒の先でトントンと優しく叩いてください」
そして、私は委員長とユメさんのタライにヨルクさんのパンツを入れた。
「次はこのように押しながら洗ってください。汚れも落ち綺麗になったら、右の洗い流しようのタライで、もう一度押します。絞っても洗剤の泡が出なくなったら、絞って水気を取り、元に戻すと隣のシートに置いていってください」
「あんた何してんのさ」
「あ、落ち武者さん、洗濯係の洗濯物が汚れていたので指導しています」
少々の汚れや洗剤が残ることは仕方ないのかもしれないけれど、それでも、正しい方法でやれば綺麗に乾く。役割を与えられたからには出来ればしっかりやって欲しい。
「ナミネ、どうして私のパンツ持ってるの?返して!」
「ヨルクさん、洗濯係の人の洗濯が汚れていたり洗剤がついていたりしたので指導していたんです」
「ナミネは洗濯係じゃないよね?着替えも、みんな分作れたし、今後は私がみんなに教えるからナミネは勝手なことしないで!」
ヨルクさんはどうしてパンツのことになると、こうまでムキになるのだろう。私はただ、洗濯の指導をしていただけなのに。
そういえば、ガーゼ布の服がやたら多い。数日前に、一度サバイバル服を洗濯することになって、今はガーゼ服を着ているけれど、毎日洗濯に出している人が多い気がする。下着でも3日は持ちこたえてほしいのに。これでは洗濯係の仕事が増える一方だ。
「でも、僕は強気なナミネの指導あったほうがいいと思うけど?」
「私も参考になったわ」
「僕も参考になりました」
「ナミネって何でも出来るんだな」
ここでも、おじいさんの修行が役に立ってよかった。
「ナミネは洗濯係じゃないんだから果物だけ取ってきて!」
「お言葉ですが、ヨルクさんの手洗い知識は遠い昔のものと、手洗いマークがついている衣類に限りますよね?つまり、他は洗濯機を使っていることになります。ですが、ここでは全て手洗いをしなければなりません。手洗いは、その布の種類によって異なります。ヨルクさんは、その全ての手洗い方法で洗濯をするとこが出来るのですか?」
その瞬間、ヨルクさんは泣きはじめた。えっ、また?今度は何が理由?どうしてヨルクさんってすぐに泣くのだろう。ミナクさんみたいに適当に受け取ればいいのに。
「ナミネは、今や料理も洗い物も出来るようになったんだね。私なんか必要ないよね」
「あ、そうではありません。今日はカラルリさんが崖から落ちて私も気が気でないんです。すみません、私の言い方がキツかったです」
ヨルクさんはハンカチで涙を拭いた。まるで少し昔の夫に浮気された妻のようだ。
「なあ、組み合わせ変えないか?私とヨルクは洗濯出来るから、カラン王子とタルリヤはそのままで、私はユメさんと、ヨルクはクラフと組めばいいんじゃないか?」
「あ、では、それでお願いします。私、ちょっとトイレに行くのでヨルクさんをお願いします」
こんな時に生理が来てしまった。私は慌ててリュックから布ナプキンを取り出し、ガーゼパンツを持つと赤いテントに走った。

え、何これ。トイレが2つともゴミ出しされてない。もはや汚物が盛り上がっていて、座るに座れない。おしっこもしたいしな。どうしよう。
私は咄嗟に青い男子用のテントに入った。こっちは、ちゃんとゴミ出しされている。誰かに見られては困るから私は霧の結界をかけた。そして、パンツを履き替え、ナプキンを付けて、汚れたパンツを持ってテントから出ると霧の結界を解いた。
けれど、このままでは怒りが収まらない。私はもう一度、赤いテントに入り、ビニール袋に入ったものを2つ取り出し、固結びで括ると、新しいビニール袋を被せた。括ったビニール袋はそのまま置いておいて、みんなのところへ向かった。

はあ、どうしてこうもチームワークが取れないのだろう。
「ナミネ、さっきはごめんね。ナミネのほうが難易度高い役割してるのに……。突然ナミネが家事まで出来るようになったから焦った」
「あ、いえ、私が出しゃばりすぎました」
「ナミネ、生理なの?痛みは大丈夫?痛み止め5箱持ってきたから無理しないで使って!布ナプキンも15枚あるから!汚れた下着は私が洗っておく!」
何故そんなに持ってきているのだろう。そんなにあるなら、1日目、セレナールさんが痛みを訴えた時に分ければよかったのに。私はヨルクさんにパンツを渡した。
「あ、ではお願いします。痛み止めは大丈夫です。ここはサバイバルですし、痛みが起きたらカナエさんの薬使いますので。でも、布ナプキンはありがたく使わせてもらいます。痛み止めは、いざとなった時のために厳重に保管しておいてください」
「うん、分かった。ナミネ、休む時は休んで」
「はい」
私は洗濯を手につけると湖の水で手を洗った。
気がつけば日が傾きはじめている。果物係と薬草係が戻ってきた。洗濯係も今日は引き上げ、みんなテントに入った。

あれ、机がなくなっている。けれど、このほうがスペースもあって、みんなと話しやすい。
「あの、本題の前に行っておきたいことがあります!
女子トイレは盛り上がり座れない状態でした。どうして誰もゴミ出ししないのですか?2つともビニール袋ごと取り出して上を結んで置いておきましたので、何もしてない人がゴミ捨て場まで持って行ってください!
それから、洗濯物ですが、ガーゼ服は最低でも5日は着てもらえませんか?でないと、洗濯係が追いつきません!」
リリカさんはため息をついた。
「セレナール!ミネス!アヤネ!ゴミ捨て場に行ってきなさい!」
「私、町の様子描いたからいかない!本当に少しも何もやってない人が行くべき」
「そのような汚いものは触れません」
「私も行けないわ」
この3人なんなの。あれだけ盛り上がっていても何も思わないのだろうか。トイレのことは死活問題なのに、それを処理しないなんて信じられない。誰も捨てに行かないなら、今後も男子トイレ使おう。
「私が行くわ」
「エルナは洗い物係で1日中動いてるんだから行く必要ないわ。指名した3人が行かないのなら勝手にしなさい!後悔するのは自分たちよ!ナミネもこれからはビニール袋括ったりしなくていいわ。やるべき人がやることだから」
「はい、分かりました」
もう女子トイレなんか使うものか。ゴミ出しせず放置したら、そのうち身体が汚れるだろう。そうなって、はじめて気づけばいい。
「あの、あくまで個人的な意見ですが、今日カラルリさんが崖から転落したのはオリジナルワイヤーの点検不足によるものでした。私は一度転落した人はもう崖に登らないほうがいいと思うのです。あの高さでしたら私が受け止めなければ死んでいたかもしれません。
そこで、炎の舞を使えるのでしたら、落ち武者さんがストップかけるところまで、果物をドライフルーツにする、生の魚を干し魚にする、加熱不十分の肉を十分に加熱する作業を行って欲しいと思うのです。皆さんはどう思いますか?」
一度転落した人がまた果物係を続けるのは危険な気がする。それに、ドライフルーツ、干し魚、肉の加熱をする人がいないと今後の食事にも困る。
「そうね。点検不足の時点で、崖に登ってもらっては困るわ。私もカラルリさんには炎の舞で食糧を増やす係に回って欲しいわね」
「私も一度転落したカラルリには崖登りは無理だと思う。ただでさえカギ使わずワイヤーに頼ってる時点でどうかと思うわ。カギで登れない人は果物係から外れて欲しいくらいだわね」
「ハッキリ言って、誰も助けなければ死んでいたとか迷惑すぎる」
リリカさんと、セナ王女、アルフォンス王子はカラルリさんに果物係から外れることを望んでいる。
ちなみに、カギなら私とラルク、リリカさん、ナナミお姉様だったら登れるだろうけど、ミナクさんとアルフォンス王子はどうなのだろう。けれど、果物を持った状態だから、やはりワイヤーは欠かせない。
「分かった。正直、今日のことで自信なくなったし、今後は食糧加熱係をするよ」
カラルリさんの自信喪失は残念だけれど、食糧加熱係はどうしても必要だから、ここはカラルリさんにやってもらおう。
「では、落ち武者さんが市場から戻ってから作業お願いします」
「じゃあ、決まりね。明日は頭を冷やすためにも1日休みにするわ。今日はセレナール、ミネス、アヤネが魚料理してくれるかしら」
リリカさんはセレナールさんに扇子をセナ王女はミネスさんに短剣をアルフォンス王子はアヤネさんにタロットカードを突き付けた。
「わ、分かったやる」
「や、やるわ」
「やりますが、失敗しても怒らないでください」
これでまた不味い料理を食べることになるのか。
「これがナミネが魚捌いた時の映像だから、これ見ながらやってちょうだい」
リリカさんはオリジナルモニターをミネスさんに渡した。
セレナールさんとミネスさん、アヤネさんはタルリヤさんの家に向かった。言うまでもなく、ここにはガスなどない。市場で売っている小枝に火打石で火をつけ、煮物や焼き物を作らなくてはならない。
「ねえ、ラルク、来て」
「急になんだよ」
私はラルクの手を引っ張り、テントを出て適当な空き家に入った。

「あのね、ラルク、ヨルクさんに卵渡したおばあさんに会いに行こうよ。これがミネスさんが描いた町の絵」
私はラルクに画像を見せた。あの時、みんなに赤外線送信するはずだったけど、リリカさんが遮り、まだみんなには渡せていない絵なのだ。ラルクは画像を拡大した。
「まあ、鶏飼ってる家はこの一軒だわな」
「へえ、あんたらだけで抜け駆けってわけ?」
落ち武者さん、いつの間に来たのだろう。
「あ、えっと、その……」
「僕も行くけどね?」
「分かりました。けれど、他の人には知られないようにしてください」
「りょーかい」
話が済んだゆえ、私たちは再びテントに戻った。

テントでは既に魚料理が置かれていた。
はあ、案の定またブツ切りの生焼けスープ。私やラルクは炎の舞で魚を焼いた。えっと、今度はカラン王子のところに内蔵が入ってる。
「あ、カラン王子、私の魚食べてください」
「いえ、僕はいいです」
「でも、少しでも栄養つけた方がいいと思います」
「では、半分だけいただきます」
カラン王子は私の魚を半分お皿に入れた。炎の舞使えない人には可哀想だけれど、崖を登る人は少しでも体力を残しておかなければならない。
「一目惚れカラルリそこでストップ」
カラルリさん焦がさずに済んだ。これだと、予定通り食糧加熱係が務まりそうだ。アルフォンス王子は焦がしている。アルフォンス王子って、こんなに出来ない人だっけ。
「ねえ、ラルク、アルフォンス王子が魚焦がしてるよ」
「ナミネ、放っておけ」
「おい、そこの3人、どこまで魚無駄にしたら気が済むんだ!」
「アルフォンス王子が炎の舞失敗しなければ食べれたのにね」
その瞬間、アルフォンス王子はミネスさんを殴り付けた。
「痛い!やめて!」
ミネスさんは料理出来たはずなのに、どうして中途半端なものを出したのだろう。まさか、サボっていたのだろうか。けれど、何もしない人には、だんだん愛想が尽きてきた。けれど、アルフォンス王子はセレナールさんとアヤネさんも殴り付けたのである。
遠い昔はこんな人じゃなかったのに。
「痛い痛い痛い!!」
「やめてください!!」
「だったら、まともな料理作れ!」
アルフォンス王子は3人の横腹を蹴ってテントを出た。
しかし、炎の舞を使えても焦がしてしまえば意味がない。アルフォンス王子って、こんなにも力が使えない人だっけ?
「殴られたくなければ、ちゃんとした役割をするか、まともな料理を作ることね」
ここでもリリカさんは慰めるどころか逆に厳しい言葉をかける。でも、こういった問題は本人がやる気を出さなければ意味がないのである。
アルフォンス王子はどこへ行ったのか戻って来なかった。この日は、ヨルクさんと同じ寝袋の中で眠った。私はヨルクさんの紅葉の香りに包まれた。が、テント内から何か変な臭いがする。セレナールさんや、アヤネさん、ミナクさん、ミネスさんの体臭が特に酷い。そういえば、ここに来てから一度も公衆浴場に行っていなかった。ボディシートだけでは限界がある。そろそろみんなを公衆浴場に連れて行く必要があるかもしれない。一部の人の体臭でなかなか眠れなかったが気付いたら私は眠っていた。

早朝4時。
私はテントを出た。ラルクと落ち武者さんもいる。まだみんなは起きていない。
「じゃ、行く」
私たちは、ヨルクさんに卵を渡したおばあさんの家に向かいはじめた。
「ねえ、ラルク。何か、寝る時に一部の人の体臭キツイんだよね」
「まあ、風呂に入ってないからな」
「ヨルクさんは全然そんなことないのに、セレナールさんとかアヤネさんとかさ、もう臭くってなかなか眠れなかったよ」
「あんた、人の姉さん指摘してるけど、みんながみんな特殊なあんたみたいに菜の花の香りがずっと続くわけじゃないからね?風呂入らないと臭うのは当然だからね?」
それはそうだけど、臭いの問題もまたチームワークの乱れに繋がりそうな気がする。けれど、ラルクも落ち武者さんもこれだけお風呂に入っていないのに臭わない。兄弟でも違うものなんだな。
「でも、ミナクさんもクレナイ家の人間なのに紅葉の香りどころか、もうトイレの臭いのようなものが漂ってくるんです」
ヨルクさんは離れていても紅葉の香りがしていて、ラルクとリリカさんは近付けば少しだけ紅葉の香りがする。なのに、ミナクさんだけ体臭が酷いのだ。
「あんた、それ本人の前で言ったら怒られるぞ。とりあえず、ばあさんに会った後、公衆浴場の下見行く」
下見か。確かに今日行っておいた方がいいよね。
「分かりました」
えっと、地図によるとだいたいこの辺か。ん?他の家はどれもレンガを積み上げた洞窟のような家なのに、ここだけまるでログハウスのような家だ。鶏もいる。
「じゃ入る」
「あの、ごめんくださーい」
声をかけると中から人が出てきた。70歳くらいの女性だろうか。
「あら、いらっしゃい」
おばあさんは中に入れてくれた。家の中は、タルリヤさんの家とは違い、清潔感があり、果物が並べられている。それだけでなく、家の中に井戸まである。
「あの、この果物はみんなおばあさんが取ってきたんですか?」
「そうよ。ここでは貴重な食べ物だから、たまに取ってきてはこうやって並べているのよ」
このおばあさん、あの崖登れるんだ。って、干し肉もある!まさか、この肉たちもおばあさんが狩りで動物を捕まえたのだろうか。
「あの、この干し肉たちは……」
「これも私が森に行ってイノシシと鹿を捕まえて干し肉にしたのよ」
おばあさんが捕まえてきたの?何だかまるで、このおばあさん、森の湖南町の古民家の私とラルクを世話してくれたおじいさんに似ている気がする。
「ばあさん、あんた武士かよ?」
「武士ではないわ。私の実家は代々呉服屋をしてるのよ」
「じゃあ、何でこんなに強いんだよ!」
「さあ、どうしてかしらね」
おばあさんは私たちに紅茶とお菓子を出してくれた。紅茶……茶葉なんてここにあったっけ。それにクッキーもバター売ってないのにどうやって作ったのだろう。
「あの、紅茶って市場に売ってるんですか?バターもですか?」
「ふふっ、まだまだ若いわね。紅茶や緑茶の茶葉はたまに市場で売られているわ。小麦粉も。バターがなくてもクッキーはココナッツオイルで作れるわよ」
そうか、取ってきたココナッツをオイルにしたのか。だとしたら、市場で小麦粉買ってココナッツが手に入れば、ホットケーキも作ることが出来る。もう不味い料理は食べられないし、これ以上食糧も無駄に出来ない。料理係を変えてもらおう。
「おばあさんは、ずっとここにいるんですか?」
「元は妖精村出身よ。けれど、遠い昔に親にここに置き去りにされたの。気付いたら親は船に乗って戻って来なかった。右も左も分からない私はガムシャラで生きた。余ったご飯を分けてもらい、必死に生き延びた。そんなある日、崖の上に果物がある話を耳にして行ってみたけれど、全く歯が立たなかった。でも、私は諦めなかったわ。何度も崖を登ろうとした。そのうちに素手で登れるようになってきた。けれど、浮かれるあまり命懸けということを忘れていたのね。私は果物1つ取れないまま崖の中間地点から転落して死んだわ」
おばあさんにも、そんな残酷な過去があったのか。誰だってはじめから強いわけではない。私もそうだった。
「じゃあ、どういう経緯で今の暮らししてんだよ」
「転生した時、妖精村ではなくて、またこの町に生まれてきたの。私は崖の上の果物は諦めて、貧しい暮らしをしてた。けれど、ある日、若い夫婦が私に果物を分けてくれた。けれど、不思議なものね。男性のほうは死なないの。歳は少しずつ取っていくけれど、奥さんが亡くなって、しばらくしたらまた別の人と世帯を持っていた。気付けば私はその男性に弟子入りしていた。私は厳しい修行の元、3回転生した時には弟子を持てるまで成長していたわ。この家は当時腕の立つ大工に作ってもらって、誰にも渡らないよう皇帝陛下に登記してもらったの。私は転生するたびにここに住んだ。そして、時は流れ、私は師匠と結婚し、妖精村の森の湖南町で住みはじめた。質素な暮らしだったけれど、それなりに幸せだったわ」
死なない男性で森の湖南町が住処!?それってまさか……!!
けれど、おばあさんは、言ってしまえば、その男性の現世のみの奥さんなわけか。この世にずっとなんてことは存在しない。けれど、遠い昔に知り合ったのに、結婚まで随分と時間がかかったもんなんだなあ。
「あんた、結婚したのに、なんでここで1人で済んでんだよ。亭主とはもう別れてんのかよ?」
「ここに来たのは私の気まぐれな旅行。時が来れば夫の元に帰るわ」
「あの、おばあさんの旦那さんてサラハって人ですか?私、そのおじいさんに、半年森の湖南町の古民家でラルクと一緒に修行してたんです!」
「ええ、そうよ。あの人、もう長く弟子なんて取っていなかったのに珍しいわね」
やっぱり、おじいさんの奥さんだったんだ。世間は狭いもんだ。国境を越えてまで出会える。まるで運命みたい。けれど、出会えてよかった。おじいさんも元気にしているだろうか。
「あの、師範の奥様はもう弟子は取らないのでしょうか?」
「私も夫と同じで、もう随分弟子は取ってないわ」
そっか、もう2人とも弟子は取らないんだ。自由な暮らしを求めているのだろうか。
「そうですか。また来てもいいですか?」
え、もう帰るの?ふと時計を見れば12時前。私たち、こんなにも居座っていたんだ。私は紅茶を一気に飲み干し、出されたクッキーをビニール袋に入れた。
「ええ、いつでも来てちょうだい。僅かな情報を与えるくらいしか出来ないけどね。ここで会ったのも何かの縁でしょうから、これ持って帰りなさい」
ココナッツオイルと、小麦粉、卵。たくさんある。これだけあれば、みんなの食事も十分に作れるけど、こんなにもらっていいのだろうか?
「あの、こんなにたくさんもらってもいいのですか?」
「私は今やここでの暮らしに何一つ不自由はしていないからね。あなたたちは、まだ若いし、ここに来たばかりで大変でしょう。でも、挫けないで頑張んなさい!」
「はい、私逃げ出しません!どんな逆境も乗り越えてみせます!」
そうだ、チームワークの乱れだの、料理の不味さだの、一つ一つ気にしていても仕方がない。私は私の出来ることをここでやっていこう。
「じゃ、また来る」
「では、僕もまた来ます」
「おばあさん、ありがとうございました」
私は小麦粉、落ち武者さんはココナッツオイル、ラルクは卵を持って、おばあさんの家を出た。おばあさんの家は市場の近くにあるから、来ようと思えばまた来れる。おばあさんがおじいさんの元に帰るまで、今度はおばあさんの教えをしっかり聞こう。
「じゃ、一度タルリヤの家戻る」
貴重な食材をもらったため、私たちは一度タルリヤさんの家に戻ることにした。

……

あとがき。

トイレの問題はもはや死活問題。けれど、そこで男子トイレに入っちゃうのがナミネなのよね。

アルフォンス王子が肉を焦がした時も声に出しちゃうし。
ナミネは武士として強いけれど、心はどこか幼げ。

それにしても、世間って狭いものなんだな。
国境を越えて出会えるだなんて。出会うべきして出会ったとしか思えないくらい。

おじいさんもおばあさんの転生後、また一緒になって欲しいかも。

……

この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
純愛偏差値 未来編 一人称版 82話

《ナミネ》

「ねえ、ラルク。メロンがあるよ」
「全部採取しろ!メロンは重たいからナミネが持て!僕はイチゴを持つ。それから、天候が悪くなってきている。メロン採取したら、戻るぞ!」
「うん、分かった」
私は急いでメロンを取りに行った。けれど、メロンはいくつもの木に絡まりついていた。これでは間に合わない。私は百人一首を投げ木に絡まりついたメロンのつるを切り、扇子で持ってきた袋に入れた。
「みんなそろそろ帰るぞ!」
ラルクの言った通り今にも雨が降りそうだ。私たちは崖を下り、タルリヤさんの家に走った。

まだ雨は降っていない。降り出したら、濡れちゃ行けないものは家に入れないと。
「ナヤセス殿、これは市場に売りに行く用ですので、原型を崩さず成分調べてください」
「このようなイチゴは生まれてはじめて見た。新種だ。すぐに調べる」
新種。一つだけしかなかったってことは、滅多に生えないのだろうか。
「ナミネさん、魚釣れましたよ」
「ありがとうございます」
って、多っ!!これだけあれば、干し魚には困らないだろう。それにしても、どうやってこれだけの魚釣ったのだろう。
「あ、リリカさん。ズームさんが、魚釣ってくれました。一部を市場に売って一部は焼いて食べて、あとは干し魚にしてもいいですか?」
「ええ、ズームが釣ったものだからそれで構わないわ。けれど、もうすぐ雨が降るから、イチゴも魚も氷の舞で保存して、明日市場に売りに行くわ」
雨が降ると色々厄介だ。
「分かりました」
イチゴはナヤセス殿が成分を調べるのを待つとして、今日食べる魚以外は氷の舞で冷凍して森林の結界をかけた。これで、盗まれることもなし。
「ナミネ、これでいい?」
「あ、ミネスさんは偵察に行かれてましたね。では、ありがたく……」
細かっ!ミネスさんも、ズームさんに似て、絵の才能があるのか。とりあえず私はミネスさんの描いた絵を写真に撮った。後でみんなに赤外線送信しよう。
「落ち武者さん、市場はどうでしたか?」
落ち武者さんは写真を私に見せた。肉や干し魚、野菜はあるものの、やっぱり昨日と違っている。ほぼ腐っている米が大々的に売り出されていて、まさかの煮物が売られている。肉と干し魚は今日はやたら少ない。衣類も殆どない。これでは戦後の配給より酷い。
「これはもはや市場とは呼べませんね」
「本当の古代ではこれが通用してたんだろうね?」
確かに本当の古代では当たり前のように買う人がいただろう。けれど、現代では値段に差があったり、腐ったものでも値上がりしているから、殆どは売れ残り捨てることになるだろう。
「ナミネ、服も下着も縫ったよ。市場で売られていたように全てフリーサイズだから、みんな着れると思う。胸の大きな人でも」
最後の言葉がめちゃくちゃ余計すぎる。ヨルクさんみたいに気の利いた言葉ひとつ言えない人がどうして女の子からモテるのだろう。
「ありがとうございます、ヨルクさん、ロォラさん。今日の作業は終えてください。もうすぐ雨が降りますので」
「ああ、分かった」
ロォラさんとヨルクさんは、持って来たソーイングセットに針と糸をしまい、布を片付け、作った着替えを空き家に入れた。
「洗濯係の人は今すぐ洗濯物を空き家に入れてください!」
「ええ、分かったわ」
「うん、そうする」
「了解」
(以下略)
「で?今日何もしなかった人は今後どうするおつもりですか?ミネルナさん、アヤネさん、セレナールさん」
その瞬間、アルフォンス王子が今朝余った煮物をアヤネさんの頭にかけた。
「おい、何もしてないヤツ!こっちは、必死で果物取ってきたんだ!それなのに、食器がこのままってどういうことだ!」
アルフォンス王子は怒りに身を任せ、ミネルナさんとセレナールさんの頭にも余った煮物をかけた。が、ロォハさんがミネルナさんを庇った。
「アルフォンス王子、ミネルナには薬草の研究を手伝ってもらう。それで許して欲しい」
「分かった。何かしら役割をするならそれでいい。けれど、あとの2人はここでずっと何もしないつもりか!」
アルフォンス王子はもう一度、セレナールさんとアヤネさんの頭に余った煮物をかけた。腐っているとはいえ、タルリヤさんのお母様が作ってくれたのに、怒りに身を任せ人にかけるだなんて胸が痛む。そりゃ、私も何もしてない人に苛立ちはあるけれど。
「ナミネ、1番大きいテント張るぞ!」
「分かった!ラルク!カナエさん、すみませんがセレナールさんとアヤネさん、ロォハさんの汚れを落としてもらえませんか?」
テントはみんなで入る。汚されるわけにはいかない。
「分かりました。カナエに任せてください!」
「カナエ、甘やかすことないわ。ロォハのだけ落としてちょうだい」
「しかし、リリカさん、テントが汚れると後々厄介です」
「2人には空き家に入ってもらえばいいだけよ」
ここではリリカさんには逆らえない。可哀想だけれど、ここで役に立てないのなら、テントでの会議に加わったところで結局メンバーの怒りを買うだけだろう。
「おい、ナミネ、早くしろ!」
「うん、今する!」
私とラルクは、ラルクの持って来た1番大きなテントを張りはじめた。ズームさん、ナナミお姉様、落ち武者さん、エルナさん、カラン王子、ユメさん、委員長も手伝ってくれて完成。
テントはとても大きくて、団体で来た私たちみんなが寝泊まり出来る大きさだった。こういう時、妖精村のデザイナーさんは凄いなあて感じさせられる。
「ナミネ、成分取れたから返すよ」
「はい」
私はナヤセス殿から受け取った金のイチゴを氷の舞で冷凍し、森林の結界をかけると、魚と金のイチゴをヨルクさんたちと寝泊まりしている空き家に置いた。
そして、今夜食べる魚を持ってテントに入った。
「はあ、疲れた。ええと、では、これが今夜食べる魚です。次に、今日ミネスさんが町を……」
「その前に言うことがあるわ」
私が話している途中でリリカさんが、それを遮った。そして、突然、大雨が降り出した。
「果物係、薬草係は大がかりだから、休んでいても無理もないけど、テントを張る時、手伝わなかった人はどうしてかしら?」
その時、セレナールさんとアヤネさんが入って来た。2人とも、市場のワンピースに着替えていて、頭にはヨルクさんかロォラさんが作っただろうヘアキャップをしている。雨で髪を洗い流したのだろうか。ロォハさんはサバイバル服が汚れただけだから、汚れはすぐに取れたわけか。
「ごめん、ここの暮らしをどうしても妖精村のみんなにも知ってもらいたくて、写真撮ったり紙にまとめてた」
「ラハルはいいのよぉ。他の人は理由行ってくれるかしら?」
ひぇー、ラハルさんだけ特別扱い。けれど、確かにここの暮らしを妖精村の人たちにも知ってもらう必要はあると思う。
「悪い、せっかく作った着替えだから濡れないようにヨルクと空き家に持って行ってた」
「それならテントは張れなくて当然ね。ハッキリ言うわ!ミネルナ!セレナール!アヤネ!あなたたち本当に何もしないのね!今夜は3人が魚料理作ってちょうだい」
え、料理の出来ない人に魚を裁かせるの?もう生のものがそのまま出てくること目に見えている。あれ、セレナールさん、指定の下着着ていない。事前に白いスポーツタイプの下着って言っておいたのに。まあ、下着はミナクさんが買ったのとヨルクさんとロォラさんの手作りがあるから、今後はそれを着てもらえばいいか。けれど、今のだとガーゼ布薄いからワンピースからピンク色のレースの下着見えている。アルフォンス王子とカラルリさんガン見してるし。
「ちょっとヨルクさん、どこ見てるんですか!」
「え、疲れてボーッとしてただけだよ」
「セレナール、どうして指定の下着着てこなかったのかしら?」
やっぱり下着は白でかつスポーツタイプのものでないと目立って仕方がない。
「何も聞かされてなかったのよ」
また責任転嫁。流石に気分を害してしまった。
「あの、セレナールさん、私、みんなの前でちゃんと言いました!」
私は証拠映像を見せた。
「わ、忘れてしまったのよ!」
聞いてないだの、忘れただの、都合が悪くなったらすぐに意見変えて、そういう態度、苛立つ。
「ちょっとヨルクさん、いちいち見ないでください!セクハラですよ!」
「え、さっきから何の話?」
そっか。ヨルクさんは常にあのダサイ下着しか着てないから話の内容が分からないのか。
「ですから、ここには白いガーゼ服しかないから、下着はスポーツタイプのものを着てくるように行ったんですけど、セレナールさんが別のもの着てきたんです」
ヨルクさんはチラッとセレナールさんを見て目を逸らした。
「そ、そっか」
「リリカ、今後はミネルナには薬草の研究を手伝ってもらうから、今日の夕ご飯作りだけで許してもらえないかな?」
「分かったわ。けれど、ロォハもミネルナも実際に現地に行くことが条件よ」
「分かった。カナエとナルホに連れてもらう」
これで、今後のミネルナさんの役割は決まった。
「それじゃあ、ミネルナ、セレナール、アヤネはタルリヤの家に行って魚を調理してくれるかしら?」
「でも、雨が……」
雨くらい何だって言うの。タルリヤさんの家、すぐそこじゃない。それにこの3人、本当にちゃんと料理出来るのだろうか。
「あの、一つだけ魚の捌き方の見本を見せますので、この手順でやってください」
私はサバイバルナイフを取り出し、魚を机に置くとウロコから落としはじめた。
「まず、このようにウロコを落としてください。次に頭を切り取り、内蔵は必ず抜き取って湖の水でしっかり洗います」
私は扇子で大きめの茶碗を湖まで運ばせ水を入れると、その水で魚を洗った。
「次はお腹に包丁を入れスライスさせ、背側も同じようにします。最後に魚を裏返し、今度は表とは逆の順番、背側、腹側と包丁を入れ、これで三枚おろしです。この作業をした後、みんな分の量に切って焼くなり(湖の水で)煮るなりしてください。セレナールさんは持ち前の千里眼でアニサキスを取り除いてください」
私はサバイバルナイフを消毒液につけ、布で拭き、机も同じように拭いた。そして、扇子で茶碗をタルリヤさんの家に戻した。
「ナミネ、カッコイイ」
「ナミネ、魚捌けるの?」
ここで、おじいさんの修行が役に立って良かった。
「3人とも見た?残りの2匹の魚もナミネがやった通りに捌いてちょうだい!」
ミネルナさんとセレナールさん、アヤネさんは魚2匹と私が三枚おろしにした魚をタルリヤさんの家に持って行った。果たしてどんな料理になるのだろうか。その時、ヨルクさんが私の肩を揉んだ。
「お疲れ様、ナミネ」
「ありがとうございます、ヨルクさん」
ふう、このままヨルクさんにもたれかかっていたい。恐らく今日の夕ご飯に使った魚3匹は無駄になるだろう。それでも、チームワークの乱れがどれだけサバイバルに不利になるのか、3人にはちゃんと学習して欲しい。リリカさんもそれが目的で敢えて3人に料理させたのだと思う。
1時間ほど経っただろうか。ミネルナさんとセレナールさん、アヤネさんが魚料理を持って来た。
「セレナールとアヤネは着替えててサバイバル服着てたの私だけだったから、私が湖まで水を汲みに行ったわ。魚のことは2人に任せてた」
なるほど。ミネルナさんは孤立しないためにも敢えて最初に自分の無実を語ったわけか。それにしても、魚のスープ?私、ちゃんと裁き方教えたのに、横にブツ切りになってるし、ウロコも取れてないし、完全に生の部分がある。まさかとは思って見てみたら、アルフォンス王子のところに内蔵が入っていた。
「ミネルナは仕方ないとして、あのさ、ナミネの捌き方ちゃんと見てなかったわけ?」
「見たつもりです」
ダメだ。アルフォンス王子めちゃくちゃ怒ってる。このテントを汚されるわけにはいかない。
「あの、誰か体力の余ってる方、空き家で焚き火起こし魚を焼いてもらえませんか?」
「その必要はないわ。やる気のない者がチームにいると、どれだけチームワークが乱れるか知ってもらいたかったの。魚3匹無駄になったけど、これが今日の夕ご飯よ」
やっぱりリリカさんは厳しい。でも、ここで甘やかしてしまえば、やる気のない人は余計に甘えてしまう。
「リリカさん、アルフォンス王子のは内蔵だけですがどうしますか?」
「それも経験のうちね」
うわー、内蔵なのに交換なしか。リリカさんの指示だし、私は見て見ぬふりをしてしまった。その瞬間、アルフォンス王子はアヤネさんに魚の内蔵を投げつけようとした。私は扇子で魚の内蔵をテントの外に出した。
「あの、アヤネさんもセレナールさんも、ご自分のこの料理食べれますか?食べてみてもらえませんか?」
「それは出来ないです」
「ねえ、どうしてミネルナさんは咎められないわけ?理不尽じゃない!」
やはりそうなるか。人に出しておきながら自分は食べない。だったら、どうしてもっと丁寧に料理してくれなかったのだろう。もう指摘する気にもなれない。
私は無言で魚を他のお皿に移し、お箸で皮を取ると、炎の舞で魚を十分に加熱した。これで食べられる。ラルクと落ち武者さんも同じことしてる。
「あ、ヨルクさん、それ生の部分あるので食べないでください」
私はヨルクさんの分も炎の舞で魚を加熱した。本当は剣の舞は真剣勝負に使われるものなんだけどな。こういうところで使うとは思ってもみなかった。
「ありがとう、ナミネ」
私は加熱した魚を食べた。うっ、ハチミツで味付けしてある。料理の出来ない人の料理は恐ろしい。それでも魚は栄養になる。
「あ、落ち武者さん、今後は市場で敢えて加熱不十分な肉を安値で買ってきてもらえませんか?ここで加熱し直したらいいと思うんです」
「りょーかい」
ロォラさんは初日に安全な肉を買ったけれど、それではコストが高くつく。炎の舞を使える人なら加熱し直せる。これで、今後は果物、薬草、魚、肉の確保は出来そうだ。
「なあ、私は物事には限界があると思う。せっかくズームが釣った魚をこんな風に無駄にして少しも悪いと思わないのか?それも作った本人が残すなんて、おかしいと思う」
ついにロォラさんが啖呵をきった。
「私、料理出来ないんです」
「私も出来ないわ」
それがこの2人のいいわけか。見苦しい。
「私は出来る出来ないを言ってるんじゃない。ナミネは捌き方の見本を見せている。その通りにやれば火は通ったはずだ。ちゃんと見ていないこと。料理をする時も食べる人の気持ちを全く考えてない。ただ、与えられた役目を終わらせることしか考えてない3人に問題があると私は言ってるんだ」
「あの、料理が出来るからって出来ない人をそうやって悪く言っていいのでしょうか?上から目線ではなく、対等に話すことから学ばれたほうがいいと思います」
アヤネさんって、いざと言う時はそうやって相手の言葉潰す人なんだ。
「私は対等に話している。魚はここでは貴重なのに、これはあんまりだ。それを少しも反省しないところが学習不足だと思う」
「貧乏人は普段調理しにくいものしか買えないんですね」
貧乏人?貴族だからって言っていいことと悪いことがある。
「アヤネ、お前何様だ!」
アルフォンス王子はアヤネさんを殴り付けた。
「やめてください!」
それに続くかのようにセナ王女はセレナールさんを殴り付けた。
「痛い!何するの!」
セレナールさんとアヤネさんは殴られた反動でバランスを崩し、地面に叩き付けられてしまった。
「ねえ、ラルク、カラルリさん、魚焦がしてるよ」
「ナミネさ、今それどころじゃないだろ」
「ロォラ、食べれるところだけ食べよう」
「分かったよ、兄貴」
「ラハル、私の分もあげる」
リリカさんはどこまでもラハルさんには甘い。
武士なのに、炎の舞がちゃんと使えない。
ロクに料理も出来ない。
崖を登れるからって上から目線で人を殴りつける。
ここのチームワークはめちゃくちゃだ。
セナ王女は何だかんだで炎の舞で加熱し、魚を食べた。
「うっ、不味すぎる。本当に苛立たせる人たちね」
「あ、ヨルクさん、すみませんが、生焼けの人の魚を炎の舞で加熱してもらえませんか?」
「……」
え、この無言は何?私は繰り返し言おうとした。
「10までしか出来ない……」
10……。それでは十分に加熱が出来ない。今日のところは魚は諦めてもらうしかない。私やラルクは果物採取のため、体力を無駄に使うことは出来ない。けれど、このままでは食事の取れない人が出てきてしまう。
「エルナさん、すみませんが洗濯係から洗い物係に変わってもらえないでしょうか?今日はこの大雨ですので洗い流す程度で構いません」
このまま誰も洗い物をしないのでは、流石に食器に汚れが溜まって、新しい料理を入れられない。誰かにやってもらわないと。
「分かったわ」
エルナさんは、タライに余った料理を入れると、雨水でお皿を洗い流して机に重ねて置いた。
そして、結局この日は、みんな機嫌を損ねたまま、このテントの中で休むこととなった。

その後、酷い大雨が止むと、果物、薬草、魚を落ち武者さんが市場で高値で売ってきてくれて、加熱不十分の肉をかなり値切りして安値で買って来てくれた。こちらの食糧は隣人にも分けるから少なくはなるけれど、食糧と薬は確保出来るようになって来たと思う。
日にちが経ち、滞っていた、この町の人の飲み水である川も流れるようになり、私たちはまた水を飲めるようになり、命を繋ぎ止められることも出来た。
ミネルナさんもロォハさんの研究の手伝いをし、ちゃんと役割をするようになったし、ナヤセス殿もたびたび薬草の研究をするようになった。
けれど、セナ王女、アルフォンス王子の双子はアヤネさんとセレナールさんを何かと責め立てる。
チームワークは乱れているものの、順調に進んでいるかのように思えていた。
けれど、それは私の思い込みでしかなかった。

ある日、いつものように果物係で急な崖を登っている時、カラルリさんのお武家オリジナルワイヤーが崖の真ん中で切れてしまい、カラルリさんは、そのまま真っ逆さまに転落して行った。私は咄嗟に伝説ワイヤーから手を離し、崖から飛び降り、カラルリさんを受け止めた。
私はカラルリさんを地面に寝かせ、カラルリさんの持っていた途切れたオリジナルワイヤーを見た。原因はカラルリさんの点検不足だった。急な崖とはいえ、ちゃんとしたオリジナルワイヤーなら、ある程度の重力は持ち堪えることが出来る。けれど、サバイバルゆえ、出来れば特殊ワイヤーを使って欲しかった。それも点検不足なら意味がないけれど。私はナルホお兄様に安全のことを指摘され、特殊ワイヤーから伝説ワイヤーに切り替えた。
私がカラルリさんを上に連れて行くことも出来るが、今日のところは戻ってもらおう。
「あの、カラルリさんが崖から転落してしまったので、私はカラルリさんを連れてタルリヤさんの家に戻ります。すみませんが、今日の収穫お願いします」
「分かったわ!ナミネ、あなたも今日は休みなさい」
リリカさんは周りをよく見ている。いくら体力のある人でも、たまに休みを挟まなければ長くは続けられない。
「はい、ありがとうございます!」
「本当、カラルリは使えないな」
「いっそ、カラルリを果物係から外すべきだと思うわ」
やっぱり、こういう時でもセナ王女とアルフォンス王子は慈悲なしだ。
「セナ王女、アルフォンス王子、そのことは帰って皆さんが集まってから話し合いたいと思っています!カラルリさん、行きましょう」
声をかけたものの、カラルリさんは横たわったままだった。私はカラルリさんを背負って、とぼとぼとタルリヤさんの家に向かった。

「あんたらどうしたのさ」
あ、落ち武者さん帰って来てたんだ。
「カラルリさんが崖から転落したんです。咄嗟に私が受け止めましたが、原因はオリジナルワイヤーの点検不足です」
「栄養失調だね?」
「栄養失調だね」
落ち武者さんとナヤセス殿が同時に言った。栄養失調?カラルリさんは、ここで出されている煮物も食べているのに。それなのに栄養失調?
「あの、カラルリさんはここで出されている煮物も食べています。栄養失調というのはおかしくないですか?」
「ナミネ、いくら煮物を食べていても、その素材は腐っている。それを体内に入れたとしてもエネルギーにはならないんだよ」
そういうことか。ここの煮物はいくら食べても空腹を満たすだけで、何の力にもならないのか。
「姉さんの持ってたビタミンサプリでも飲ませて寝かせとけ」
私はリリカさんに事情を書いた紙飛行機を飛ばした。リリカさんからは1錠だけならビタミンサプリを使ってもいいと返事が来た。私はカラルリさんにビタミンサプリを1錠飲ませたあと、テントに運び、ワラの上に寝かせた。
みんなが帰って来たら、今後のカラルリさんの役割をどうするかの会議だ。私は複雑な気持ちでいた。

……

あとがき。

うーん、アヤネとセレナールは何だか可哀想。2人の今後の役割はどうなるのだろう?

けれど、せっかく町の人の飲み水である川も流れ、それぞれの役割が馴染んできたところなのに、今度はカラルリが崖から転落。

先が思いやられます。

……

この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
純愛偏差値 未来編 一人称版 81話

《ナミネ》

市場から戻るなり、セレナールさんがいきなり、布ナプキンを川で洗いはじめた。そして、その川の水はこの町の人の飲み水で、隣人から反感を買い、私たちは石を投げ付けられる事態となってしまった。
咄嗟にラルクと私は使えなくなった川の水を氷の舞で凍らせ、ゴミ捨て場に捨てたものの、次にこの川が流れるのは5日はかかるらしい。これでは間に合わない。隣人の命さえも危なくなってしまった。
隣人の怒りは収まらなく、私たちは森林の結界をかけて身を守り、結界がかけられない者には結界の使える人が譲渡した。けれど、セレナールさんのことは誰も助けず、隣人が投げる石は全てセレナールさんに当たってしまったのである。
「あの、非常事態ですので、果物と薬草は隣人に全て渡すしかないと思うのです。カナエさん、すみませんが……」
あれ、既に何個か調合してある漢方薬がある。
桂枝、茯苓、牡丹皮、桃仁、芍薬。これを調合したものが現代で言うところの桂枝茯苓丸。葛根湯、麻黄、生姜、大棗、桂枝、芍薬、甘草。これを調合したものが現代で言うところの葛根湯だ。柴胡桂枝湯もある。その他にも安中散や麻黄湯などがある。薬はこれだけあれば、それなりの期間は足りるだろう。
けれど、問題は水だ。水がなければ、生きられない。
「あの、洗濯なら、飲み水ではなく、隣の身体を洗い流している人が使っている湖の水を使えば良かったのではないでしょうか」
そっか。アヤネさんの言う通りかもしれない。私の判断ミスだ。
「ナミネ!あなたのせいよ!あながこの川の水使えって言ったから使ったんじゃない!飲み水どうしてくれるのよ!」
「セレナール!いい加減にしなさい!川と水は1つの橋でしか繋がっていない。効率が悪いわ!それに、ちゃんとタライに入れて洗えばこんなことにはならなかった!責任転嫁も甚だしいわね!」
リリカさんは庇ってくれているけれど、橋もそんなに長くはないし、湖の水を使っていれば、この事態は防げたのかもしれない。セレナールさんが橋を渡ってまで水の水を使っていればの話だけれど。けれど、今は隣人の怒りを沈めるために、果物と薬草を配らないと。
「私の判断ミスかもしれません。でも、今は隣人の怒りを沈めるためにも果物と薬草を全て配布しましょう」
リリカさんはため息をついた。
「やむを得ないわね」
リリカさんは紙飛行機をいくつか飛ばした。少しするとこの町の人が集まって来た。リリカさんは飲み水の事情を説明し、町の人に謝りながら果物と薬草を配布した。そして、セレナールさん以外も謝りながら町の人に果物と薬草を配布したのである。町の人たちは川の水が流れるまではお酒でしのぐと言って戻って行った。とりあえず隣人の怒りを沈めることは出来た。けれど、問題は、せっかく取ってきた果物と薬草がこちらにはゼロになってしまったということだ。
「あの、私の責任なので、今から水分が中にある果物を取ってきます」
「あら、今回の件ってセレナールの責任じゃないかしら?私たちが取ってきた果物までなくなって、責任取るならセレナールだと思うわ」
セナ王女は川で直接洗濯をしたセレナールさんが悪いと位置付けている。
「そうね、私もセレナールの責任だと思うわ。それに、アヤネも無責任なこと言わないでくれるかしら。湖で水浴びしている人はボートのロープ巻いているじゃない。それだけでも、あの湖は泳げない人が入れば溺れることが目に見えているじゃない」
「申し訳ありません。そこまで考えが及びませんでした」
アヤネさんは悪くない。けれど、ミネスさんだって早朝にタライ使っていたのに、飲み水だと私説明したのに、それで洗うセレナールさんは周りのことが考えられていない。
「背に腹はかえられません。あの湖の水を携帯浄水器で飲みましょう。5日ならもつはずです」
とは言ってみたけれど、まさかの2日目で携帯浄水器を使うだなんて先が思いやられる。
「やむを得ないわね。けれど、携帯浄水器は2つしか持ってきていない。後のことを考えなければいけないわね」
「私、携帯浄水器なんて持ってきてないわ!」
どうしてメモで渡したものをセレナールさんは殆ど持っていないのだろう。何故、リュックに入れてこなかったのだろう。
「あの、セレナールさん、私とラルク、必要なものメモして渡しましたよね?布ナプキンにしてもそうですが、どうして必要なものを持ってきていないのですか?」
「だって、布ナプキンなんて普段使わないし、サバイバルグッズなんてどこで売っているか分からないもの。それを書かなかったナミネが悪いわ!」
また責任転嫁。分からないなら聞けばいいのに。携帯浄水器は1人2つしか持っていない。その1つをセレナールさんに渡してしまえば明らか効率が悪くなってしまう。5日。だったら……。
「あの、5日でしたら、1つの携帯浄水器を4人で使いませんか?」
リリカさんも、他の人もため息をついた。
「本当にセレナールのせいで迷惑だわ。とりあえず5日だから1人1つ使うのは勿体ない。ナミネの言うように1つを数人で使うしかないわね。ヨルク、今日はロォラが買ってきた肉を1つ使って料理作ってちょうだい。あとは氷の舞で冷凍して森林の結界かけるから」
「分かりました。ナミネ、行ってくるね」
「はい」
こんなに明日からの5日を長いと思ったことがこれまでにあっただろうか。いつも当たり前にあるものがないということは、こんなにも不便なことだったんだ。
「セレナールさん、ちょっとリュックの中身見せてください」
私は半ば無理矢理セレナールさんのリュックを開いた。えっと、ハンカチに、ポイントカード、財布、コードレスヘアアイロン、少女漫画、手帳、ボールペン、折りたたみ傘、ビタミンサプリ、ドリスポ、便秘薬。え、ビタミンサプリにドリスポ、便秘薬!?
「皆さん、見てください!セレナールさんのリュックからビタミンサプリとドリスポ、便秘薬が出てきました!ドリスポは500mlが4本もあります!」
「ちょっとやめてよ!これ私のなんだから!」
セレナールさんがリュックを取り戻そうとする中、私はセレナールさんのリュックをリリカさんに渡した。
「携帯浄水器の使用は禁止!5日間、みんなで4本のドリスポでしのぐわ!それと、ビタミンサプリと便秘薬も没収!」
これで携帯浄水器は使わなくて済んだ。けれど、ゼロになった果物と薬草は取りに行かないと。
「では、明日はヨルクさんとロォラさんが縫い物をするとして、ゼロになった果物と薬草を取りに行くことに集中しましょう!崖を登れない人は洗濯をしてください。私が湖の水を何個かのタライに入れておきますので。洗剤はタルリヤさんの家のものを水で薄めて使ってください」
洗濯は、ナヤセス殿、ロォハさん、タルリヤさん、エルナさん、カラン王子、ユメさん、委員長がすることになった。私はその分のタライに水を入れるだけ。あれ、アヤネさんは何をするのだろう。
「あの、アヤネさんは何をするのですか?」
「えっと、洗い物をします」
「では、お願いします」
その時、セレナールさんがまた生理痛を訴えはじめた。セレナールさんて古代の身体のはずなのに、どうしてこんなに痛むのだろう。
「今回の件、セレナールのせいなんだから、カナエの薬は使わないで」
やっぱり仲間割れがはじまった。リリカさんは正論しか言わないけれど、セナ王女はどこか支配的で、これではチームワークが乱れてしまう。
「セナさんの気持ちは分かります。けれど、誰にでも間違いはあります。カナエはセレナールに薬を与えます。薬草はまた明日ナルホと取ってきますし」
「みんな真剣にやっているのにセレナールだけ問題起こして何もしないなんて、私認められないわ」
セナ王女の言い分も分かるけど、痛いのを放っておくと余計に悪化してしまう。
「あの、このまま痛みを放っておくとよくないです。ここはカナエさんの薬を飲ませていただけないでしょうか?」
セナ王女は無言で席を立った。セレナールさんはカナエさんがコップに入れた痛み止めを飲んだ。そう、ここでは顆粒ではなく、煎じ薬は全て水を混ぜたものが瓶に入れられているのである。まるで、妖精村半ばみたいだ。
その時、ヨルクさんがご飯を運んで来た。みんなで分けるとなると肉も小さくなるけれど、仕方ない。肉と、干し魚と、玉子巻き?どうして卵があるのだろう。
「あの、卵はどうされたんですか?」
「市場から帰る途中、おばあさんからもらったよ」
「そうですか」
市場には卵なんて売られてなかった。誰かがニワトリを飼っているのだろうか。あれ、何となくラハルさんの肉だけ大きい気がする。
「ラハル、いっぱい食べて」
「リリカ、僕だけ特別扱いしなくていいよ」
何かあってもラハルさんだけは救われる。真っ先に。
「ねえ、私の肉は?」
「ないに決まってるじゃない」
やはり、セレナールさんは肉なしか。それでも、干し魚と玉子巻きはある。ただ、どうしてもこの家で出された煮物も食べないとお腹がすいて仕方ない。僅かなものでは全くエネルギーに繋がらない。それでも、ここの煮物を食べない人が多い。
「ふぅ、食べたあ。では、アヤネさん、お皿洗いお願いします」
「わ、分かりました」
返事はしたものの、アヤネさんはみんなが食べ終わった食器を片付ける気配がない。私はしばらく様子を見てみた。しかし、30分経ってもアヤネさんは洗い物をする気配はなかった。
「あの、アヤネさん、食器洗ってもらえませんか?」
「すみません……出来ません……」
え、何それ。自分で洗い物するって言ったじゃない。
「アヤネさん、私がやります」
「ヨルクさん、甘やかさないでください!アヤネさん、自分からすると言ったのにどうしてしないんですか?みんなそれぞれの役割をしているんです!何もしないで、ご飯食べるなんて贅沢です!アヤネさんが責任を持って食器を洗ってください」
本当訳わかんないよ。貴族だからって何もしなくていいの?ここはサバイバルなんだよ。
「ここで出される食事には虫も入っていますし、殆どの方が残されています。気持ち悪くて触れないです」
「あの、アヤネさん……」
「ナミネ、もういいわ。食器洗いしないのなら、次の日も同じ食器使うことになるわね。それも、煮物残した人のはそのまま。やりたくなければ、やらなくていいわ。食器はこのままここに置いておきましょう」
リリカさんは、やっぱりクレナイ家の長女なだけあるなあと思う。ここで洗わなければ、メンバーに袋叩きされるのは目に見えている。それに、食器は一日一日洗わないと、余計に汚れが溜まってしまう。
「い、いやです!同じ食器を使うだなんて!誰か洗ってください!」
ここでアヤネさんが駄々をこねるだなんて。本当信じられない。
「ねえ、どうする?ラルク」
「まあ、アヤネさんは洗わないだろうな」
だよね。全く洗う気配ないし。
「なあ、アヤネ。ここではチームワークが大切なんだ。アヤネだけ何もしないでは迷惑だし、今後、アヤネだけには果物と薬草は与えないが」
「私たち、今後、与えられた仕事を熟さなければならないのよ!アヤネが何もしないなら誰が洗い物するのよ!」
「アヤネ、みんなはそれぞれの役割をしています。それを虫1つでワガママ言うのはカナエも間違っていると思います」
「アヤネ、私とクラフは洗濯しないといけないし、1番楽な洗い物をしないでは流石に困るわ」
「アヤネ、あんた何様だ!金持ちなら何もしなくていいのかよ!」
案の定、アヤネさん叩きがはじまった。そして、誰もアヤネさんの代わりに洗い物をする人はいない。
「イジメないでください。私は悪いことはしていません」
「は?とことん苛立たせる女だな!5分以内に洗い物をしないなら、湖に落としてやる!」
アルフォンス王子が強行手段を主張した。
「や、やります!」
やっと、やると言った。
「では、お願いします」
「あの、どうすればいいのでしょうか?」
貴族はみんなこうなのだろうか。
「まず、余った食事はタライに入れます。次に別のタライに湖の水を入れて、スポンジに洗剤を付けて食器を洗ってください。次に食事を入れたタライと食器を洗ったタライの中のものをゴミ捨て場に入れます。次に、湖で新しい水をタライに入れて食器を洗い流してください。食事を入れたタライは別のスポンジで洗って、また湖でタライに水を入れて洗い流して終わりです。何度も湖に行くのが面倒なら、一度に必要分のタライに水を入れてください」
「あの、メモに書いてください」
「自分で書いてください!」
アヤネさんは貴族だから、身の回りのことは全て使用人にしてもらっているのだろう。けれど、ここでは与えられた役割はしてもらわないと困る。
「今日のところは私が教えるわ」
うーん、エルナさんは洗濯係なのにな。でも、ここは頼るしかない。
「あ、では、すみませんが、お願いします」
エルナさんは1つ目のタライに余った食事を入れ、湖に行くと複数のタライに水を入れ、川の前で食器を洗った。そして、2つのタライの中のものをゴミ捨て場に捨てに行き、食器を洗い流し、食事の入っていたタライを別のスポンジで洗い、水で洗い流した。アヤネさんは何もせず見ているだけだった。こんなことでは先が思いやられる。
「余った食事を入れるタライには文字を書いておいたわ」
「ありがとうございます。アヤネさん、明日も何もしないなら湖に落ちてもらいます!」
「明日はやります!だから、これ以上私をイジメないでください」
アヤネさんの言い方癪に障る。
「アヤネ、あんたその態度なんだよ!強気なナミネは明日は果物収穫しに行くんだ!洗い物がいやなら強気なナミネと役割変われ!その代わり崖は自力で登れ!」
「どうしてイジメるんですか!あなた方が慣れているからって、そういうものの言い方酷いです」
アヤネさんは泣きはじめた。確かに私もキツく言い過ぎたかもしれない。でも、虫ひとつで動こうとしなかったアヤネさんに苛立った。
「ムカつくわ。今すぐ湖に放り投げてやる!」
セナ王女がキレた。
「本当に明日からはやります!もうイジメないでください!」
その瞬間、セナ王女はアヤネさんを持ち上げ、湖に放り投げた。凄い腕力だ。サバイバルはただでさえストレスが溜まるから、一人一人の言動が誰かを苛立たせることもある。今回のがその例だろう。
「助けてください!私泳げないんです!」
アヤネさんは湖から叫んだ。カナエさんは走って湖まで行き、湖に飛び込んでアヤネさんを救出した。サバイバル服は防水だから身体は濡れてないだろう。けれど、髪は濡れてしまった。
2人が戻って来たところでリリカさんが立ち上がった。
「アヤネ、やりたくないならやらなくていいわ。でも、食器は誰も洗わない。次の日も同じ食器を使うだけだから」
「お願いですからイジメないでください!!」
「イジメ?私はやりたくなければやらなくていいと言っただけよ?」
「それがイジメだと言っているのです!このような経験がお在りの方は余裕でしょうけど、素人にとっては何もかも分からないんです!それを責め立てて庶民は穢らわしいです!」
ダメだ、アヤネさんがキレてしまった。アヤネさんは洗い物ひとつ出来ないから、エルナさんを洗濯係から外して洗い物係に回ってもらったほうがいいのだろうか。
「へえ、それがあなたの言い分なのね。じゃあ、洗い物は放置しておけば?私はもう知らないわ」
もはや、これも経験だろう。洗い物をしなければどうなるか身をもって知ってもらうしかない。そして、メンバーの反感を買ってもらうしかない。それがアヤネさんの選んだことなのだ。

翌日、私は早朝に起き、昨日言った洗濯係用の水をタライに入れ、叩き棒と洗濯板を置いておいた。洗濯は2人1組でやってもらおう。タライにも限りがあるし。
少しするとみんな起きてきて席についた。
「川の横にタライに水を入れておきました。洗濯は基本、2人1組で行ってください。洗濯の仕方はエルナさんに聞いてください。明日からは洗濯係の皆さんが水を入れてくださいね」
「ええ、分かったわ」
「うん、そうするよ」
私はいつもの煮物を食べ終わると、扇子でお茶碗をタライに入れると、そのまま湖まで持っていき、お茶碗を洗って机に戻した。扇子を扱える人は私と同じことをした。それだけアヤネさんの信用は落ちているのだ。
「ナミネ、気を付けて行ってきてね」
「はい」
食べ終わるとみんなはそれぞれの配置についた。
「あ、落ち武者さん、今日の市場の様子見てきてもらえませんか?」
「りょーかい」
市場といえども、スーパーのように毎日同じ品物が並んでいるとは限らない。果物係はそれなりにいるから、落ち武者さんに行ってもらうことにした。
薬草係はカナエさんとナルホお兄様と少ないけれど、ここは詳しい人に任せるしかない。ナヤセス殿とロォハさんは毎日は体力的に行けないらしい。それに2人には何かあった時に患者を診てもらわないと。
ミネスさんは町の偵察に言ったけれど、ミネルナさんとセレナールさん、アヤネさんは何もしていない。本当こういうの困る。けれど、私ももう果物を入手して来ないと。
そして、私とラルク、リリカさん、ナナミお姉様、セナ王女、アルフォンス王子、カラルリさん、ミナクさん、それに加えタルリヤさんは果物がある崖へと向かった。

あれ、初日に来た時と何かが違うような気がする。私は携帯で撮った写真を見た。えっ、初日にはない果物があったり、木の位置も何か変わってる。どういうこと?
「あの、タルリヤさん、これが初日に来た時の写真ですが、今日来たら全然違いますよね」
「僕は崖を登れないから、ここの事情は殆ど知らないんだ。けれど、昔ここに来ていた人の記録によると、ここは毎日何かが変わっているらしい」
木とか固定されているのに、毎日変わっている?どうしてだろう。
「その記録って今も見れますか?」
「何世紀も昔のだからどうだろう。僕は新聞で読んだだけだからね」
何世紀も昔なら残っている可能性は低いし、探している時間もない。今は、4日後に流れる川の水のためにも体力は温存しないと。
「そうですか」
あれ、イチゴがある。この寒い冬だというのに。
「ねえ、ラルク、イチゴがあるよ」
「ナミネ、イチゴは潰れやすいから、箱に入れろ!」
「うん。そうするね。あっ!金のイチゴ!」
この果樹園は一体何なのだろう。金のイチゴなんてはじめて見る。私は写真に撮った。
「金のイチゴ!?食べてみたいわ!」
「セナ王女、悪いけど、そのイチゴはナヤセスに成分調べてもらったら市場に売りに出すわ」
そうだよね。今後のことを考えると、果物や薬草を売った終わったお金で肉を買わないと。ていうか、イチゴが生えているってことは、ここの土持って帰れば、新鮮な野菜を育てることが出来るのではないだろうか。
「あの、イチゴの生えているところの土を持って帰れば、畑で新鮮な野菜が作れるのではないでしょうか?」
「そのことなんだけど、研究者によると、ここの果樹園は乱してはいけないらしい。果物の採取はしても問題ないけど、ここの土や果物の木ごと持って帰った人はみんなその日のうちに突然死してるんだ」
この果樹園、ますます分からなくなってきた。土くらい持って帰ったっていいと思うのに。毎日果物が入れ替わって、土ひとつ持って帰ることが出来ない。この果樹園には絶対何か秘密が隠されている。
川の件が収まれば、薬草のところも見に行く必要がある。
「そうですか。土さえも持って帰れないのですね。良きものを町の人に与えられないと、暮らしはなかなか変わりませんね」
私は3つの箱にイチゴを入れ終わった。念の為、金のイチゴだけ、プラスチックの小さい容器に入れた。
「そうだね。果物は市場には滅多に出されないし、ここまで来れる人がそもそも殆どいない。結局、ここでまともな暮らしは出来ないんだよね」
15年間も現世でここに暮らしていただなんて。タルリヤさんには同情してしまう。人口は増えても、若い者は学校に行くことさえ出来ない。そんなことでは、この町は進化しない。
ここへは来たけれど、ここを変えることは出来ない。私は、いや私だけではない。みんなは結局傍観者であることをもどかしく感じているだろう。

あれ、端っこのほうにメロンがある。

……

あとがき。

いつも波乱万丈ですが、ここに来てからは更に波乱万丈……。

……

この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
純愛偏差値 未来編 一人称版 80話

《ナミネ》

紀元前村の蓮華町に来て2日目。
遠い昔の紀元前村にはトイレはなかったが、今は蓮華町に関しては政府から一家庭につき、1つの簡易トイレが配布されている。と言っても、その簡易トイレは、私たちが非常用に持って来たものとそんなに変わりはなく、溜まってきたら自分たちで処分しなければならない。具体的に蓮華町には、まとめてゴミを捨てる場所があり、たまに政府がそのゴミたちを処理しに来るらしい。
ちなみに、蓮華町だけはテレビも固定電話も携帯電話もエアコンも存在しない。公衆電話さえもないのである。
交番はあるが、いざとなった時は連絡も出来ないのだ。病院だって同じ。どれだけ命の危機が迫っていても救急車とか存在しないゆえ、自力で病院まで行くしかない。
みんな起きてきた。電気毛布がないせいか、少し寒そうだ。
「皆さん、おはようございます。今日は市場の下見に行きます。ただ、妖精村のスーパーとは違い、品物には限りがあるので、着替えも、みんな分は買えないと思います。
洗濯に関してはヨルクさんに教えて貰ってください。洗う時も流す時も必ずラタイに入れてください。川の水はこの町の皆さんの飲水ですので。後、布ナプキンに関しては各自で洗濯をお願いします。
それと、果物はドライフルーツに、魚は干物にすると日持ちがよくなると思いますが皆さんはどう思いますか?」
「そうね。縮むけど、毎日の食事は必要だし、私はそれで構わないわ」
「僕もそのほうが効率がいいと思います」
「まあ、取ってきてもそのままにしてたら腐るしな」
(省略)
これでドライフルーツと干物の件はまとまった。かつて無人島に漂流した人が、釣った魚を干物にして生き延びたドキュメンタリーを見たことがある。
「ドライフルーツにすることは構わないけど、果物はここでは貴重だから、ここの食事と共に食べてもらうわ」
リリカさんは、やはり厳しい。けれど、ドライフルーツだけを食べていたら食糧はすぐに尽きてしまう。やむを得ない。
「はい、それで構いません」
私は同意したが、何人か反対意見が出た。
その時、セレナールさんがお腹を押えた。
「お腹が痛いわ。誰か痛み止め分けてくれないかしら」
セレナールさんは、森の湖で何も学習していなかったのだろうか。ミネスさんは痛み止めを飲んでいる。
「あの、痛み止めは1人1人分ですので、どうしても痛いなら病院で薬を処方してもらうしかないと思います」
セレナールさんは準備不足が多い。これではいつまで身体がもつか分からない。
「ねえ、セレナールって、どういうつもりでここに来たの?あなた何にもしてないじゃない!ハッキリ言って迷惑だわ!」
やはりセナ王女はサバイバルに慣れているゆえ、慣れてない人の気持ちが分からなくて、すぐに攻撃してしまう。
「痛み止めはカナエのを使ってください」
カナエさんはセレナールさんに痛み止めを渡した。同時にリリカさんは、ため息をついた。
「迷惑かけるだけかけて何もしない人は帰って欲しいわ」
「ごめん、リリカ。やれることはやるわ」
とりあえず、セレナールさんの生理痛はこれで治まる。これだけの気温差だから仕方ないかもしれない。
「あと、トイレですが、これは絶対に必要ですので、男子用、女子用を2つずつテントを組み立てその中に入れませんか?溜まって来たら、溜まった時にした人が捨てに行くのはどうでしょう?」
「私は構わないわ」
リリカさんはOKと。
「では、テントと簡易トイレを組み立ててから市場に行きましょう」
私は、ここでの朝食を食べ終わった。やっぱり、何日も前の冷蔵庫に入れていない煮物は、食べる人が殆ど少ない。でも、食べないと体力がもたなくなる。今日中にドライフルーツを作らなければ。
「ラルク、テント張るよ」
私たちは簡易トイレを4つ組み立て、テントを張りはじめた。やはり、ここでも動かない人がいる。無理にしろとは言わないが洗い物1つしない人はどうするのだろう。
とりあえずテントは、私とラルク、落ち武者さん、ズームさん、委員長、ユメさんで張り終えた。そこに2つずつ簡易トイレを入れて完了っと。
「あの、言わせてもらいますが、ここではチームワークが必要です。協力しない人がいるなら、その人の日常品の配布は削減させてもらいます」
「私、生理痛で動けなかっただけだから」
「でしたら、今後はみんなが取ってきた果物と名前、薬草と名前、その効力をナヤセス殿のメモ書きを見て、このノートにイラスト付きで清書してもらえませんか?」
これくらいはしてもらわないと正直、1日何もしないでは、果物を取ってきたチームとそのうち口論になってしまう。
「分かった。それはやる」
あれ、ヨルクさんは朝食に手もつけていない。どうしたのだろう。
「ヨルクさん、どうかしましたか?」
「昨日の夕ご飯を無理して食べたら夜中からお腹痛くて……」
私はため息をついた。どうして、次から次へと問題が出てくるのだろう。
「今テントを張りましたのでトイレに行ってください。青が男性用です」
ヨルクさんは走ってテントに向かった。
「最初に言っておきますが、今のヨルクさんのような症状が起きたら下痢止めは禁忌です。けれど、食事を取らなければ体力が落ちます。私も薬草を取りに行きますので、お腹を壊した人のために、柴胡、半夏、桂枝、黄芩、人参、芍薬、生姜、大棗、甘草を煎じます」
お腹を壊した時に、それを薬で止めてしまうのは返って逆効果だ。柴胡、半夏、桂枝、黄芩、人参、芍薬、生姜、大棗、甘草を調合したものは現代で言うところの柴胡桂枝湯である。下痢をした後に飲むと次第に腹痛はなくなり、下痢もそのうちに繰り返さなくなる。ここでは、数日前の煮物を食べてお腹を壊す人もそれなりにいるだろう。そして、その煮物に使われている野菜は最初から殆ど腐っている。
「ナミネはナミネでやることがあるので、薬に関してはカナエとナルホが煎じて、瓶に入れ、それぞれの用途をシールで貼っておきます」
確かに、私とラルクはこの町の全体像を確認しなければならない。薬草のことはカナエさんとナルホお兄様に任せよう。
「では、薬草のことはカナエさんにお任せします」
その時、ヨルクさんが戻ってきた。
「ヨルクさん、具合はどうですか?」
「まだ少し違和感がある気がする」
そう、ひとたびお腹を壊せば、全体の体力が奪われてしまう。私は箱ごと持って来た柴胡桂枝湯をひと袋ヨルクさんに渡した。
「今日は市場の下見がありますので、これ飲んでください」
「うん、ごめんナミネ」
柴胡桂枝湯は、20分もあれば効果が出て、そこそこ体力がある人なら活動も出来るようになる。ひと袋さえ貴重だけれど、今後はカナエさんとナルホお兄様が煎じてくれる。
「ねえ、彼氏だからって特別扱いするのはおかしいと思うの。セレナールが苦しんでいる時は病院に行けと言ったのに、酷くない?」
セナ王女はとことん揚げ足を取る。
「お言葉ですが、生理痛と下痢は違いますよね。セナ王女は漏らしながら過ごせと仰るのですか?それ、隣人に怒られますよ?」
「な、何よ!特別扱い反対よ!」
その時、アルフォンス王子、ミネルナさん、ミネスさんが腹痛を訴えた。ミネスさんはさっき痛み止め飲んでいたから、やはり朝食が当たってしまったのか。やむを得ない。私は3人に柴胡桂枝湯を渡した。
「トイレは行ってきてください」
柴胡桂枝湯はいつ飲んでも構わない。トイレの前でも後でも。けれど、早く薬草を入手しなければ、私の柴胡桂枝湯だけでは足りなくなってしまう。それこそ病院に行かなくてはならない。
「カナエさん、すみませんが、今日の市場見学は行かずに薬草を取ってきてもらえないでしょうか?」
「分かりました。痛み止めと腹痛に効く薬を作るのです」
「ナミネ、心配はいらないよ。薬は何種類か煎じておくから。ナミネは市場の下見行っておいで」
2人には別の日に市場に行ってもらおう。今はすぐに薬草が必要な状況だ。
「すみません、お願いします」
ヨルクさんも、ミネスさんも、アルフォンス王子も、ミネルナさんも体調は落ち着いてきたみたいだ。出発するとするか。市場はここから700mくらいのところにあるからすぐに着くだろう。

朝早くに来たつもりだけど、人は少しいる。この町も24時間営業なのだろうか。
「あ、タルリヤさん、蓮華町は24時間営業ですか?」
「交番はそうだけど、市場は夕方には店仕舞いするし、他のとこもね。病院は一応時間外診療はやってるけど」
夕方には店仕舞いか。少し早い気もする。その日取ってきた肉や魚を売り出すと同時に買わないと品切れになってしまう。いや、肉や魚は野菜に比べたら随分高い。買う人いるのだろうか。
「タルリヤさん、肉や魚は野菜に比べたらかなり高いですが、どうしてでしょうか?市場には果物や薬草は売られていないのですか?」
「ここの土は使えないものばかりで、政府から肥料は配布されてないんだ。だから、いくら種を撒いても、その野菜は新鮮なものには育たず今の市場で売っているようなものしかない。米も同じ。それに対して肉や魚は猟師や漁師が毎日新鮮なものを取ってくるから、その分値段が高いんだ。買う人はたまに果物や薬草をここに売りに来て、お金にして買ってる。売れなかった肉や魚は毎日酒場で猟師や漁師の友達が食べてるよ」
米と野菜は殆ど食べれないものばかりというわけか。それでも、お金がないからみんな傷んだ米と野菜を買うしかないのか。
それに対して、猟師や漁師は毎日新鮮な肉と魚を食べることが出来る。ただ、肉は明らか1人分なのにイノシシの肉は1つ60000円、鹿の肉は1つ50000円とこんなのぼったくりだ。干した魚は1つ20000円だけれど、それでも高い。これが手間賃というヤツなのだろうか。
「極端ですね。けれど、果物や薬草を取りに行ける人がいるのですね」
「まあね。ほんの僅かしかいないけど、そういう人のみが肉や魚を食べられるんだよね」
「そうですか。ここでは米や野菜がダメな分、新鮮な肉や魚は貴重なのですね」
値段的に納得いかないけど、ここでは一人一人が工夫して生きていかなきゃいけない。結局、ここでも腕の立つ人しかまともな食事は出来ないのか。
「おっちゃん、私昨日ここに来たばかりで何も分からないんだよな。仲間もご飯殆ど食べれてなくて困ってるんだ。肉と干し魚、もっと負けてくんないか?」
「お嬢ちゃん、こっちも商売だからね。まけることは出来ないよ」
「けどさ、売れ残った分って勿体なくないか?干し魚はともかく、肉は日持ちしないだろ?別にここに売り出されてないものじゃなくても構わないから、端っこの切り落とした店には売り出されてない肉だけでも分けてくれないか?」
確かに妖精村でも、牛の肉は形の整った部分だけ売り出され、切り落としのものは捨てられている。
「お嬢ちゃん、詳しいねえ。ここに並んでない切り落としのものは10000円にしとくよ。いつも市場に並んでないのはこういうのだよ」
市場の主は切り落とした肉をロォラさんに見せた。それにしても本来捨てるものを10000円だなんて高すぎる。
「うーん、やっぱり切り落としたものはやめておく。イノシシはこっちとこっち、鹿はこっちとあっちの肉をまけてほしい!」
どうして急に考えを変えたのだろう。ここに売られている肉を安く買い占められたら得なのに。けれど、ロォラさんは既に4つを手に取っている。
「どうしてこの4つなのかな?」
「売れ残った肉食べて食中毒起こした人いるんじゃないか?この4つ以外は十分に加熱がされていない。その場合、寄生虫が肉の中にいたり、熱や吐き気、腹痛などを起こすE型肝炎ウイルスもいる。その他、酷い腹痛や血便、死ぬ恐れがある腸管出血性大腸菌も存在している。それは全て十分な加熱がされていないからだ。だから、この4つ以外は買わない」
専門家でもないのに、どうしてこんなに詳しいのだろう。
「こりゃたまげた。おっちゃんの負けだ。イノシシの肉は1つ20000円、鹿の肉は1つ8000円、干し魚は1つ5000円。これ以上はまけられないよ」
「じゃあ、イノシシの肉2つ、鹿の肉2つ、干し魚全部買う」
ロォラさん、大きく出た。でも、正しい判断だと思う。ただでさえ高い肉と干し魚が値引きされて、更にはロォラさんの目利きで肉は全て十分に加熱されている。ここで買ったほうが有利だと思う。落ち武者さんがみんなに現金渡しているし。
「あいよ、全部で116000円だよ」
ロォラさんは、主にお金を渡した。
「また来る」
「はあ、今日は店仕舞いだな。余った肉は加熱しないと」
市場の主は肉たちを引き上げはじめた。
「ロォラ、あんた詳しいな。確かにあんたの選んだののみが安全な肉だ」
「小さい頃から商店街のおじさんの店、たまに手伝ってるからな」
ロォラさんて以外。私も商店街のおじさん、おばさんには随分可愛がられてきたけど、ロォラさんは商店街のお店の手伝いまでしてたのか。
「今後はあんたが市場に買い出しに行け!」
「え、でも洗濯物が……」
「他のヤツにやらせる」
「分かった。市場には私が行く」
下見だけのつもりだったけど、ロォラさんのおかげで肉と干し魚の確保は出来た。
「とても美人ですね」
え、今度は何?
「あら、引っ越してきたのかしら?」
「いえ、友達の家にしばらくお世話になることになりました。ここの男性用と女性用の下着と服、もう少し安くしてもらえませんか?」
今度はロォラさんに続いてミナクさんが値切りをしている。
「うーん、こっちも商売だからねえ」
「そこを何とかお願いします。あなたのような美しいお姉さんがいるなら、私は毎日ここへ通います」
ミナクさんは、1輪の薔薇を市場の女主に渡した。てか、その薔薇どこから出てきたの?
「もう、仕方ないわねえ。全て半値にするわ。これ以上はダメよ」
「では、全て買います」
ミナクさんは女主にお金を渡した。これで、全員とはいかないけど、着替えを入手することが出来た。
「うーん、出来たら全員分欲しいな。なあ、ここにある原反って売り物なのか?」
少し色褪せている。けれど、原反なんて買ってどうするのだろう。
「売り物よ。昨日入ってきたものだけど、状態が良くないから今なら5000円ね」
「だったら、買う!あ、その30番の糸もお願い」
ロォラさんは女主にお金を渡した。
「あの、その原反どうするんですか?」
「みんなの下着と服作るんだ」
ロォラさんて裁縫出来るんだ。何だか人って見かけによらないな。
「あ、ロォラさん、下着と服作りは私がやります。ロォラさんは市場に行かなければ行けないので」
「分かった。じゃあ頼む。私も市場から戻って来たら作業する」
これで、裁縫はロォラさんとヨルクさんがすることになったけれど、その分、洗濯係が減ってしまった。あ、塩と砂糖買っておかなきゃ。
「おじさん、塩と砂糖ください」
「お嬢ちゃん可愛いね、特別に半額にしておくよ」
「ありがとうございます!では、200gずつお願いします!」
「全部で2000円だね」
私は主にお金を支払った。
「あんたずる賢いな」
「えっ、私何してません」
遠い昔は、感染症が流行った時に、塩と砂糖がなくなり経口補水液が作れなくなった。けれど、みんなで協力して代用品を作って患者に与えたらしい。こんな環境だからいつ感染症が流行るか知れたもんじゃない。確保しておくものは確保しておかないと。
「あの、肉と干し魚はあまりに高すぎます。私たちも果物と薬草を売ったほうがいいと思うのです。無論、私やラルクが狩りに行ってもいいですが。あと、洗濯係が少なすぎるのも問題かと」
「そうね。流石に、あの値段では、頻繁には買えないわね。やむを得ない。果物と薬草は隣人に配布する頻度を減らして市場に売るわ!あと、手の空いてる人は洗濯係に回ってちょうだい!それから、今日、安全な肉を入手出来たのはロォラの手柄だから今後、ここで役に立てない人は肉も干し魚も抜きよ!」
やっぱりリリカさんが仕切ると、みんな引き締まる。何人か反論の声もあるが、リリカさんは方針を変えない。肉だって買えたのもかなり少ないし、何もしない人が食べるとチームワークが乱れてしまう。
「では、釣りは僕がやります」
え、ズームさんが?何かいい釣竿でも持ってきたのだろうか。
「とりあえず、下見はこのくらいにして帰るわよ」
リリカさんの声と共に、みんなはタルリヤさんの家に戻りはじめた。

ふう、あの値段をみたせいか下見だけで精神的に疲れた気がする。
「あ、塩と砂糖は経口補水液に使ってください」
私はリリカさんに塩と砂糖を渡した。
「ナミネは気が利くわね。みんな、ここではチームワークが大切よ!常にメンバーのことを考えながら動いて!」
その時、セレナールさんが、タライに水を入れず、川でそのまま布ナプキンを洗いはじめた。私たちはセレナールさんにかけよった。
「あの、セレナールさん、それこの町の人全員の飲水なんです!どうしてタライに入れてくれなかったんですか!血の流れた水なんか飲めないじゃないですか!」
私はセレナールさんから布ナプキンを取り上げた。
「何よ!洗濯機ないし分からなかったんだから仕方ないでしょ!いちいち怒らないでよ!」
その瞬間、リリカさんがセレナールさんを引っぱたいた。
「あなた何てことをしてくれたの!これじゃあ、町の人の反感買うだけじゃないの!あなた1人でどうにかしなさい!」
「待って、リリカ!悪気はなかったのよ!許して!」
けれど、時すでに遅し。隣人の人が気づきはじめ、こちらに向かって石を投げはじめた。
「私たちの飲み水返せ!この泥棒グループが!」
川の水はセレナールさんの血で汚れて、しばらく飲むことは出来ない。隣人が怒るのも無理はない。とりあえず、氷の舞を使って汚れた水を全て取り除かないと。
「ラルク!」
「ああ、やるか」
私とラルクは氷の舞を使って川を凍らせた。凍らせた川はラルクが扇子でゴミ捨て場に放り投げた。あれ、川の水が流れない。
「あの、タルリヤさん、川の水はいつ流れますか?」
「一度止めたから5日は流れないよ」
5日。これでは間に合わない。食べ物なら2〜3週間食べなくても人は生き延びれるが、水は4~5日飲めなければ命を落としてしまう。私たちはサバイバル2日目で命の危機に晒されてしまった。

……

あとがき。

今回もナミネ視点です。

魚にもアニサキスはありますが、まあここでは干し魚なのでアニサキスの危険性は殆どないとして、鹿やイノシシの肉は怖いですね。加熱不足が原因で死に至ることもあるので。

世界のどこかでも紀元前村の蓮華町のような暮らしをしている人はいるのでしょうか。(ニュース見てないので分からないですが)

……

この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
Copyright (C) 2009 雨の音を聴きながら, All right Resieved.
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