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日常のこととかオリジナル小説のこととか。
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プロフィール
HN:
ashita
Webサイト:
性別:
女性
職業:
地主(土地貸してます)
趣味:
漫画やアニメを見るのが好きです。最推しはフーディーニ ♡
自己紹介:
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ブログ、もう書かないと思ってました。

けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。

小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。

純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。

元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。

ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。

小説、ぼちぼちマイペースに書いてゆきます。

よろしくお願い致します。

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お知らせ。

イラストは現在「ナノハナ家の日常」に載せております。サイドバーにリンクあります。

また、「カラクリよろずや」にてフリーイラスト素材について考えるブログはじめました✩.*˚
不定期に更新していく予定です。

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模倣・無断転載などは、ご遠慮ください。

ブログの小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。

小説・純愛偏差値に関しましては、武家名・貴族名(程度による) / 及び、武官の階級 / 扇子・羽子板・花札・百人一首・紙飛行機などのアイテム使用方法の模倣の一切を禁じております。

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X @kigenzen1874

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〈資格履歴〉

2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
→漢方コーディネーター 合格
→薬膳調整師 合格

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〈資格証明バナー〉

鉛筆デッサンマスター®認定試験資格取得証明
絵画インストラクター資格資格認定証
宝石鑑定アドバイザー資格認定試験資格取得証明
鉱石セラピスト資格資格保持証明
茶道アドバイザー資格認定試験資格取得証明
お点前インストラクター資格資格認定証
着物マイスター®資格認定試験資格取得証明
着付け方インストラクター資格資格認定証
サイキックアドバイザー®資格資格証明
サイキックヒーラー資格資格保持証明
アンガーカウンセラー®資格資格保持証明
アンガーコントロール士資格資格認定証
漢方コーディネーター®資格認定試験資格保持証明
薬膳調整師®資格認定試験資格保持証明
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純愛偏差値 未来編 一人称版 116話

《ヨルク》

ナミネの後に続いて私もテントの外に出た。やはり、頂上などここからは見えない。
正直、カナエさんが転落だなんて思ってもみなかった。いつも万全の体制で挑んでいるのに。
『甘えセナ!命綱投げろ!』
ズームさをとミネスさんは救命クッションを置いたが、知らない誰かが乗っている。
『ダメだわ!風が強すぎて投げられない!』
「カナエさん!」
ナミネが走り出した。けれど、救命クッションに落ちたら下敷きになった者の命も危ないし、今あの場所にナミネが行ってもしナミネに何かあったら……。
「カナエなら大丈夫だよ。ちゃんと結界の中でパラシュート開いてる」
そっか。万が一の対策はカナエさんなら万全か。
「でも、この凄まじい突風。下に着くまでに結界破られるかもね」
え、だったらカナエさんは……。
「クッションに乗ってる人を払うこと出来ませんか?」
ぶつかれば、両者の命が失われることもある。
「わざと妨害してるんだよ。僕らのチームがたくさん原石採取してるから。だから、ズームとミネスに数式書かせてるよ」
わざと?命に関わることなのに、原石取れないからって、他所のチームを妨害するのか。
「私、カナエさんのところまで行きます!」
ナミネ、行っちゃダメだ。
「さっき、危ないことはしないって約束したよね?」
「はい……」
カナエさんが無事に着陸出来るかどうかも分からない。よりによってカナエさんが……。
『ナミネ!カナエ先輩を受け止めろ!この先、カナエ先輩の戦力が欠けては不利になる!』
何言っているの?ラルク。ラルクは昔からそうだ。ひとたび危機に陥れば人に命令する。
『おい、アンタ何言ってんだ!ミイラ取りがミイラになるだろうがよ!』
落ち武者さんは究極の策は取らない。
「カナエは大丈夫だから、ナミネはテントに入ろうね」
ズルエヌさんはナミネを抱っこしてテントに戻した。
「カナエ、私はカナエがいなければ!」
「アルフォンス王子も大人しくしてようね」
助かるというのはどうやって分かるのだろう。
「ナヤセス殿……」
ナミネは泣きそうになりながらナヤセスさんを見た。
「命は大丈夫だし、今後も支障はなく刺客でいられる。ただ、場合によっては骨折をするかもしれない。でも、みんなそれは覚悟の上だよね?」
そういうことか。だいじには至らないが、命に別状はない負傷はありうるかもしれないということか。それでも、チームで行動しているため、命の保証は最大限心がけている。
『カナエ、無傷で着陸したよ〜!』
良かった。厳しいけれど、いつも姉のように接してくれたカナエさん。いつも料理を教えてくれるカナエさん。私は小さい頃からカナエさんを実の姉のように思っていた。小柄なのに意外に美人で幼ながらにドキドキしてしまっていたけれど。
『カナエ、本当に良かった。カナエなしでは、もう私は生きていけない』
本当に復縁したのだろうか。いっときの同情なら、また同じことになる気がする。
『男尽くしカナエ、アンタなんでスランプになってんだ!』
私もそれが気になる。ずっと安定していたカナエさんの突然のスランプは裏に何かありそうというか、何かがあったとしか思えない。
「カナエさん、大丈夫ですか?」
「アヤネ、どうせカナエのこと心の中では笑っているのでしょう」
人というのは、ひとたび風が吹けば立場が変わる。ついこないだまでは、ずっとアヤネさんが孤立していたのに、今はカナエさんが自分のカラに閉じこもろうとしている。
「誤解です。私は本当にカナエさんのことを心配しています」
「カナエのことは放っておいてください!」
本当にどうしたのだろう。
『アンタ、何があったんだよ!』
「カナエだって女の子なんだから、乙女の悩みくらいあるよ」
乙女の悩み!?カナエさんにしては珍しいというか、何だかパッとしないな。
私は女子(おなご)の心は分からない。この時のカナエさんが、かつてのアルフォンス王子を求め心寂しく感じていたことを全く知らなかった。そして、ここにいる殆どのメンバーが気付かなかったと思う。
「あと5分もすれば風は引くから、みんなパラシュートで降りて来て!」
みんなが降りて来たら灰色病院に戻れる。原石もかなり採取出来た。その時、ナミネがテントを少し開けて外の様子を伺った。
え、クッションに乗っている人らが崖を登ろうとしている?
「ズルエヌさん……」
「ハッキリ言って自業自得だと思うよ。他人の力借りて登れる崖じゃないのに、それでもお金に目が眩んでるんだよ。この町の救助隊に連絡するまでしか出来ないな」
人生一発逆転。狙う人は狙うだろう。そして、そういう人は己の限界というものを知らない。
「今!パラシュートで下りて!」
ズルエヌさんは、時計騎士の中の時計騎士なんだな。
『分かったわ!』
「あの、結界と数式の力で登ってる人います」
普通は自分と自分の大切な人さえ良ければ他は目に入らないのが現代人の特徴だろうけど、今のナミネは不安定そうに心配そうに見ず知らずの人を見ている。
「さっきも言った通り、自業自得。こっちで面倒見ることは出来ないよ」
どうしようも出来ないことはどうしようも出来ない。私たちだって、また学校に戻って赤線町に行かなくてはならない。
『みんな着地』
セナ王女からの無線。
「じゃあ、テント畳んで戻ろうか」
ズルエヌさんが支持した瞬間、リリカお姉様の叫び声が聞こえた。テントの中にいる全員が外に出た。
何人かが転落したのか下に横たわり血を流していた。
「ナヤセス殿、治療を」
「ダメだね。今戻らないと、また直ぐに突風が拭いて僕たちはミイラ取りになる。この町の救助隊に連絡する」
やむを得ないか。自業自得というのも事実ではあるし。見て見ぬふりは気が引けるけど、突風でみんながバラバラになってしまえば、それこそ大問題だ。
「治療するよ。洞窟の中で治療する」
ナヤセスさん……。医師免許があるとはいえ、自分の命もかかっているのに、この状況で見ず知らずの他人の命を救う決意をするだなんて。医師の中の医師というか、なんかもう次元の違う人に思えてくる。
「ナヤセス1人に負担かけられないから僕も治療する」
シャム軍医……。
「シャム軍医が残るなら私も一緒にいるわ!」
セナ王女は本当変わった。と私は思う。最初からシャム軍医が彼氏ならきっと上手くいっていた気がする。
「アンタらどうしようもないな。とっととコイツら洞窟に運べ!」
結局なんだかんだで、みんな放っておけないんだ。赤の他人を。
「私が三人、ラルクが二人を運びます!」
「ナミネ、三人骨折、二人は脳を打撲した重症患者だから、僕とシャム軍医で……」
「大丈夫だよ。ナミネとラルクは伝説武官の時に医療の基礎知識学んでいるから。ナミネは軍医見習いもしていたし、ここはナミネとラルクに任せて僕たちは洞窟に移動してクッションなどの必要なものを設置しよう」
ナミネが軍医見習い?全く知らなかった。ナミネは何度も軍人をしているが、軍医見習いは、はじめて聞いた。
ナミネの全てを知っていたようで、案外知らないことあったんだな。
ナミネは骨折した三人をかつぎ、ラルクは脳を打撲した二人をかついだ。そして、全速力で走った。
私たちも自転車を全力でこいだ。
洞窟の真ん中のところで、シャム軍医とナヤセスさんがクッションと医療器具を用意して、そこにナミネとラルクが患者を一人ずつ仰向けに並べていった。
「じゃあ、僕たちは重症患者の応急処置、ズルエヌ、ズーム、ミネスは骨折患者の応急処置。応急処置が出来たら灰色病院に搬送!」
「あ、私も手伝います」
「僕も手伝います!」
ナミネとラルクは基礎とはいえ、知識があるからこういう時に役に立つ。
「じゃあ、ラルクはミネス、ナミネはズームを手伝って」
そして、応急処置は行われた。
医療器具は限られているのにシャム軍医とナヤセスさんのオペ技術が凄い。神業だ。そして、セナ王女のシャム軍医への眼差しが恋する乙女のようなものであることは私にも伝わってくる。今思えば、カラルリさんよりずっとお似合いだ。
「みんな終わったかな。じゃあ、ナミネとラルクが患者を運んで手の空いてる人は片付け。灰色病院で落ち合おう」
ズルエヌさんの指示にナミネとラルクは患者を抱え猛ダッシュした。そして、シャム軍医とナヤセスさんは医療器具を片付けはじめ、ズームさんはクッションなどを片付けはじめた。
私たちは地面を拭いた。
「シャム軍医、助かるの?」
「僕は大丈夫だと思うし、そう信じたい」
赤の他人ではあるが、目の前であのような場面を目にすれば放っておけないのもまた人間というものだろうか。
「じゃ、灰色病院行く」
落ち武者さんの声とともに、私たちは灰色病院へ向かいはじめた。
『ナミネです。五人とも応急処置が完璧だったそうで、手術は行われず、点滴を受けています。しかし、重症患者二名はいつ目を覚ますか分からないそうです』
見ているだけでも凄まじかったが、やはり応急処置を超え、完璧なオペだったのか。
『ズルエヌ。こっちは出来るだけの処置はしたから、延命治療かを選ぶ状況になったとしても、そこまでは責任持てないし、命取り留められただけでも運がいいと思う』
思いたくはないが、自己責任には変わりない。その人らが貧乏でその日その日の暮らしで家族を助けたく、どうしようもなかったとしてもだ。
現代では、どうしようもなくなった家庭の保護制度だってある。通るか通らないかは政府が決めることだが。役場で申請すれば、最低限の生活を提供される可能性だってあるのだ。
けれど、氷河期町同様、職にありつけるかは分からない。2020年現代で、まさかの就職氷河期に陥るとは誰が予測出来ただろう。予測出来た人がいたとしても、どうしたら生活していけるなんてフェアリーチューバーでも公表しないだろうな。

私たちは灰色病院に着くなり患者の様子を見に行った。
「どうして助けた。あんな暮らしするくらいなら死んだほうがマシだった」
そうは言っても、骨折程度で死にはしないだろう。まさか、あのまま氷河期町で凍死でもするつもりだったのか?
「私のせいです。私があんな登り方しなければ……」
ナミネ……。私がナミネを問い詰めたせいで、ナミネの心の行き場をなくしてしまった。
「行こうか。こっちは善意で助けたのに死んだほうがマシなんて話にならない。家族は病院側が呼ぶだろうし、もうこの人らと関わるのはこれで最後」
いつもニコニコしているズルエヌさんにしては珍しい。しかしながら、ズルエヌさんは一度死んでいる。いくらお金持ちとはいえ、死んでしまえばそこでお終いだ。
「じゃ、平凡アルフォンスの部屋行く」
落ち武者さんが歩き出すと共に、みんなも歩き出した。かと思えば、セナ王女が患者を引っぱたいた。
「なによ!私たちは、あなたたちに生きてほしくて全力で助けたんじゃない!死にたいなら今すぐ死になさいよ!」
セナ王女……泣いている……?
「セナ元帥、応急処置は僕たちが決めたことですし、この人たちも僕のような生活をして来たのでしょう。後のことは医師に任せて僕たちは休みましょう」
シャム軍医はセナ王女の手を握った。
「……そうね」
妖精村は平等な村かと思っていたが、色んなところを旅しているうちに平等どころか、生活にさえなっていない人たちをたくさんみて、正直複雑な気持ちだ。貴族たちはなんの苦労もなく社交界を楽しんでいるというのに。

お、重たい。と思い目を覚ませばナミネが私の上で爆睡している。苦しいけど、今起こしてナミネの疲れが残るのも良くない。
「セルファ……。私、セルファが好き」
この二人、何度告白し合ってるんだ。そりゃあ、過去には色々あったかもしれない。浮気も今でも許せないかもしれない。でも、明らか両想いじゃないか。
「僕もエルナが好き。けど……」
落ち武者さんも、終わった関係とか言っておきながら思いっきり告白しているし。
「セルファが今でもナミネのこと好きなのは分かってる。それでも、セルファ以外は考えられない」
エルナ……。
「幼なじみのエルナを差し置いて、あの時、強気なナミネに惹かれてしまったことは僕でもどうしたらいいか分からなかったし、今でもどう位置付けしたらいいのか分からない。僕は確かに強気なナミネの美貌に惹かれた。でも、倒れた僕のことを保健室まで運んでくれた時、好きだと思った。分からない、分からないんだよ!エルナが好きなのに強気なナミネを忘れられない」
ダメだ。何を言っているのか全く理解出来ない。でも、今になって落ち武者さんがナミネを好きだということは明確になった。落ち武者さんも男だ。可愛いナミネに惹かれたのも無理もないかもしれない。
「平行線ね。ナミネは成長すればセレナールより美人になるわ。ズームもラハルもナミネの美貌に惹かれたじゃない。あなたもね。でも、ナミネは手に入らない。このまま誰とも付き合わないつもり?」
会話が複雑になってきたな。美人……か。ナミネはずっと可愛いんだけどな。
「話してるとこ悪いけど、ナミネはヨルクじゃないとダメなんだよ。遠い昔に友人に頼まれ縁談勧めたらヨルクがいいって聞かなくってね」
ナミネ……。大勢の中から、いつも私のこと想ってくれていたのか。片想いじゃなかった。ナミネとの力量の差は気になっていたけど、ナミネは私といて幸せだったなら、とても嬉しい。
「平和ボケなナルホ、アンタ息潜めるの上手いな。顔だけヨルクは強気なナミネ上に乗せたまま盗み聞きしてたのに」
えっ、気付いてたの?だったら、何故告白なんかし合っていたのだろう。
「私はただ、ナミネが重たくて起きたけどナミネ起こしたくなくて動けずにいるだけだから」
気付いてたなら一言言ってくれれば良かったのに。盗み聞きなど聞こえが悪い。
「遠い昔、妖精村学園で強気なナミネは、いつもアンタと腕組んで嬉しそうにアンタのこと見てた。どうしてか分からない。僕だって女の一人や二人幸せに出来るのに、どうしてアンタなのか」
複雑というか、エルナの前でよく言えるなって思う。
「ねえ、落ち武者さんはエルナがいるよね?」
「恋は複雑なのよ。私なんか、あの時、カラルリと添い遂げちゃったし」
セナ王女も起きていたのか。セナ王女の古代の頃はナミネから聞いた程度だけれど、少なくともあの頃はセナ王女にとっては、カラルリさんだったのだと思う。
「甘えセナ、アンタは恋に恋しすぎなんだよ!」
何だか分からなくなってきた。私はナミネ以外を本気で好きになったことないし、正直時代によってパートナーが変わる現象は分からないかもしれない。
「私も分からないのよ。カラルリのことは好きだった。でも、軍事基地では仕事が忙しかったから。けれど、好きだったと思うのよ。シャム軍医の診察は受けていたし、シャム軍医とは仲良くしてたわ」
仕事が忙しい時は確かに恋愛のことを考える余裕はないかもしれない。けれど、聞いているとやはり色々分からない。
「私は好きな人二人いてもいいと思う!少なくともナルホと結婚した時、カンザシを見捨てて良かったと思った。でも、今はガンザシのこと好きでたまらない」
ますます分からない。
「ハッキリ言ってカンザシは僕はオススメ出来ないけど?結婚したら浮気されまくられるの目に見えてるだろうがよ!」
私もそうは思うが、ミネスさんのカンザシさんへの想いは一言二言では言い表せない気がする。
「分かってる!でも、カンザシが好き!」
「お子ちゃまミネス。アンタどうしようもないな。何なら僕が養ってあげようか?」
落ち武者さんのほうが分からない。どう見てもエルナのこと好きなのに、よく他の女子(おなご)口説けるな。
「カンザシがダメならナルホと結婚する!」
「そんな約束してないよね?カンザシさんを好きな状態で僕と一緒になっても幸せになれないと思うよ」
ミネスさんは少しはナルホさんのこと好きだと思うけど、今はカンザシさんしか見えていないのだろうか。
「ヨルクさん……お腹いっぱいです……」
寝言か。ナミネは可愛いな。けれど、重くてそろそろ限界かもしれない。
「じゃ、あと30分で晩飯だ!みんな起こすからね?」
時間というものは実に早い。ここに戻ってきたかと思えば、もう夕ご飯の時間か。そして、明日にはここを発つ。原石も十分に採取出来たし、カラルリさんの転生ローンも返せそうだ。
また学校もはじまるし、休みの日にはひたすら旅だ。それが私たちの宿命なのだろう。
「セナ元帥、休めましたか?」
「ええ、バッチリよ」
メンバーが起き出してきたか。相変わらずナミネは私の上で熟睡している。
最初は氷河期町でバイトだなんて、ただただ不安で仕方なかったけど、みんなが協力すれば成し遂げられることもある。私はそんなに役には立てていなかったけど、学ぶことはそれなりにあったと思う。出来れば二度と来たくはないけれど。
その時、落ち武者さんが電気を付けた。
「そろそろ晩飯」
けれど、ナミネは熟睡したままだ。
「セナさん、よく考えたんだけど、転生ローンを返し終えたら、またやり直したい!ゼロからセナさんと愛を育みたい!」
……。正直、言葉が出てこない。
時すでに遅しというのは、こういうことを指すのだろうか。そうでなくても、聞いているだけで虚しくなる。
「あのね、カラルリ。みんなもそうだけど、報告が遅れたわね。私、シャム軍医と交際しているの」

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あとがき。

具合悪く更新遅れてます。
でも、純愛偏差値を終わらせる気はないです!

時を超えて……でしょうか。
今となっては、シャムとのほうがお似合いに見えてしまいます。

カラルリがセナを大切に出来ていたら関係は歪まなかったのかな。切ないです。

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この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。

現在、小説に関する模倣(程度による)の一切を禁じております。
詳しくはこちらを参照→ 禁止事項

無断転載もご遠慮ください。
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純愛偏差値 未来編 一人称版 115話

《ナミネ》

そんな……ナクリお姉様が……!!
確かに私は一度はお武家連盟会議で同意した。それが、ほぼ決定になったものの、いきなりカナコさんによってターサスヒ王女に変更された。そこからは変わらないと思っていた。なのに、どうして……。
正直、一度決まったものが、このような形で変えられてしまうことは納得いかない。私だって見捨てたのに、それでも納得いかないのだ。
儀式で舞うナクリお姉様。顔色も悪く涙を流している。
セイさんが儀式を進めた後、ものの一瞬でナクリお姉様は青春を失った。
『では、これにて儀式を終了致します。ずっと、廃止されていた儀式の再開はいかがでしたか?少しでも楽しまれた方がいたなら光栄です。それともう一つ。儀式の最中で妖精村全域停電は解除されました。これで普通の暮らしが戻ってきましたね。きっと、儀式のおかげかもしれません。また、生贄女性は春風病院に運ばれます。以上でアナウンスを終了します』
私はセリルさんを扇子で吹き飛ばした後、カナコさんの服を扇子で引き裂いた。
「一度だけ聞きます。どうして決定したことを独断で変更して、またナクリお姉様に戻したのですか?」
慌ててレイカさんが武官の制服を奪いカナコさんに着せたが、私はまた扇子で引き裂いた。
「ナクリにしてない……」
本当だろうか。
「ナミネ、やめようか。そもそも、ナミネも会議では同意してたよね?」
私はナルホお兄様とナナミお姉様に扇子を突き付けられた。ダメだ。動けない。
「僕は、独断で動いたカナコさんに問題があると思います。人は一度決定したものを覆されたら気持ちが追いつけない生き物です。もし、カナナさんが、カナエさんが生贄でも、カナコさんは誰も恨まずにいられますか?」
ラルク……。
「私もラルクに同意見ね。カナコさんどうかしてると思うわ」
リリカさん……。
この時の私は、生贄をナクリお姉様にしたのがセイさんだということも、カナコさんとセリルさんの仲がそれなりに前から拗れていたことも全く知らなかったのである。
ほぼ白空鈴で踊らされたナクリお姉様……。ずっと恨んでいたけれど、こんな理不尽な形で正気を失われたくはない。正当に償ってほしかった。
「ナクリのことは償うわ」
償うって何?自分は綺麗なハツのまま大学生活を満喫するのに、ナクリお姉様はもう立ち直ることは出来ないだろう。
「償うってなんですか?自分は何も傷ついていないのに、ナクリお姉様を犠牲にした後に何が出来ると言うのですか!」
死ぬほど恨んでいた。けれど、身内の問題を他所の家庭にどうこうされたくはなかった。
「僕もアンタのやり方気に入らないね」
落ち武者さんは、ナルホお兄様とナナミお姉様の扇子を振り払った。私はカナコさんのお腹を踏み付けた後、アラレもないカナコさんの姿を写真に収めた。
「お願い!これ以上カナコを傷付けないで!」
レイカさんはカナコさんを抱き締めた。
「納得いきません!」
その時、ラルクが私の肩を叩いた。
『ナミネ、一旦引こう。このままではミドリさんの居場所がなくなってしまう。ミドリさんを孤立させてはいけないし敵に回ってもいけない。今後ミドリさんの力は必ず必要になる。争った記憶はテナロスさんに消してもらえ!』
ミドリお姉様にとっては、これが一つの区切り。悲しいけどそれが事実なのだ。
私はラルクのスピード手話に返答をした。
『分かったよ、ラルク』
私はテナロスさんにメールをし、儀式終了からのこの場にいるメンバーの記憶を消してもらった。
『アンタら気をつけろよ。メンバーの誰か一人でも気付いていたら大事だからね?』
落ち武者さんのスピード手話。過去に習ったのだろうか。そういう仕事に就いていたのだろうか。
「とにかく、今すぐ春風病院に行くぞ!」
私たちは自転車で春風病院へ向かった。

春風病院に着くなり、私は受け付けへ走った。
「あの、ナノハナ家の者です」
「ナクリさんですね。こちらへどうぞ」
私たちは、受け付けの人に着いて行った。
病室を開けるとナクリお姉様は眠っていた。
「家族かな?」
お医者さんだ。
「あ、はい、そうです」
「第三に傷は付いてなくて、洗浄も行ったよ。後は、本人の心の問題だね。カウンセリングが必要だから、紅葉町の月城総合病院に紹介状を書いておいたから、必ず受診して」
心の問題……。私は今、何をどう感じているのだろう。
「はい、分かりました」
カナコさんたちが入って来た。顔を見るだけで苛立つ。けれど、今は我慢しないと。
「じゃ、ナクリ起きる前に行くか。原石採取も明日がラストだ。一度、紅葉町に戻って原石を買い取ってもらってから、赤線町行く」
そっか。突然、停電も終わったし、学校もはじまる。いつまでもは灰色町にいられない。原石もそれなりに溜まったし、明日の一日で切り上げて、カラルリさんの転生ローンが返しきれたらそれでいい。
赤線町は行きたくないけれど、第二王室は何か手がかりあるかもしれないし……。
「そうですね……」
私たちは、病室を出て灰色病院へと向かった。

あと一日。とても長かった気がする。そして、物凄く疲れた。生きるってこういうものなのだろうか。
「ナミネ、ちょっと来て」
なんだろう。ヨルクさんは、家族用の部屋に私を入れた。
「なんですか?」
「結界かけて」
結界?重要な話なのだろうか。
「分かりました」
私は壁の結界をかけた。
「ナミネ、テナロスさんて誰?ミドリさんの力って何?」
どうして記憶消えてないの?てか、あのスピード手話見えてたの?
「テナロスさんは天使村3番目の番人です。ミドリお姉様が本当の皇女なんです」
話してよかったのだろうか。ラルクだけに教えるつもりが、結局ヨルクさんも知ることになってしまった。
「皇女?ミドリさんはナノハナ家の人じゃないの?」
ダメだ。ナクリお姉様のことで今は一人になりたい。
「あの、私疲れてるんです!ナクリお姉様があのような形で人生奪われ、私も堪えてるんです!ヨルクさんにとっては他人ごとかもしれませんが、私は辛いんです!」
ヨルクさんだって自分の兄弟が同じ目に合えば心の余裕などなくなるだろうに。
「ごめん。ナミネのこと心配だったからダンゴロさんに記憶残してもらった」
あの場にダンゴロさんいたの?
「心配?何もしてくれなかったくせに何が心配ですか!ヨルクさんだって、生贄がリリカさんだったら、こうやって話すことなんてしないでしょう!」
ヨルクさんは、どこか自分勝手だ。一人になりたい時はこうやってあれこれ聞いて、私が引き止めた時は私を突き飛ばして一人になる。
「ごめん。でも、ラルクは知っていたのに、私には話してくれなかったことが悲しかった」
何それ。恋人だからって何でもかんでも話すわけではないだろうに。
「ワガママですね。自分の都合悪い時は私を責めるくせに。私が辛い時は慰めてもくれない。いつもいつも!今日だって助けてくれたのはラルクと落ち武者さんでした!ヨルクさんは、ただ見ているだけでした!」
ダメだ。相当疲れている。
「そっか。私はいつも役立たずだね。もう何も聞かない」
人を引き留めておいてまたいつものように私を責める。慰めてくれたっていいじゃない!
「ヨルクさん」
ヨルクさんは何も答えなかった。私はヨルクさんの頬を五発殴り、倒れたところで脇腹を数回蹴った後、結界に閉じ込めて部屋を出た。

今日の夕ご飯はカレーライス。
「アンタ、顔だけヨルクどうしたのさ?」
「知らないです」
一晩結界に閉じ込めておくくらい問題ないだろう。
その時、携帯が鳴った。
『ナミネ、ごめんね』
ヨルクさん……。行かなきゃ!私は立ち上がり、ヨルクさんの元へ向かった。
あれから30分程度しか経っていないはず。

扉を開けたらヨルクさんは結界の中で脇腹を押さえてうずくまっていた。そんな……、私強くしたつもりなかったのに。私は結界を解いてヨルクさんの元へ駆け寄った。
「ヨルクさん、ヨルクさん!」
返事がない。私はヨルクさんを背負って診察室へ走った。

診察室に入ると私はヨルクさんをベッドに寝かせた。
「あの、ヨルクさんが……」
医師はヨルクさんを診察した。
「軽い炎症を起こしてますね。薬を出しますので朝昼晩、食後に飲んでください」
「分かりました」
私が薬を受け取ると医師は診察室を出た。
「ヨルクさん、ごめんなさい」
私はヨルクさんの手を握った。
どうして手が出てしまったのだろう。どうしていつも拗れてしまうのだろう。

ヨルクさんの手を握ったまま眠ってしまっていた。時計を見れば夜中の二時。
「ナミネ?」
ヨルクさん、起きてるんだ。
「ヨルクさん!ごめんなさい!もう二度とヨルクさんを傷付けません!」
本当にごめんなさい。自分でもどうしてあんなことしてしまったのか分からない。でも、ヨルクさんを失いたくないから……。
「ナミネ、距離置こう」
今なんて言ったの?距離を置く?
「待ってください!私を捨てないでください!」
お願い……ヨルクさん……。
「ナミネ、私に何したか分かってるの?ナミネにメールしたのは結界から解放されたかっただけだから。あんなことされて簡単に今まで通りなんて出来るわけないじゃない!」
そっか。ヨルクさんの中に私はもういないんだ。
「分かりました。ヨルクさんとお別れします。赤線町にも行きません。しばらくはナヤセス殿のマンションで住みます」
私は診察室を出ようとした。するとヨルクさんが私の手を掴んだ。
「そうじゃなくって!そうじゃない!別れるとかじゃなくて、少しの間、関わらない方がいいと思ったって意味」
距離を置く。別れるとかじゃない。関わらない方がいい。結局自分の都合のいいように物事運ぼうとしてるだけじゃない。
「私の辛い時は慰めの一つの言葉もかけてくれず、私が追いつまったら距離を置く。いつも己の都合のいいようにしか物事を運ぼうとしないんですね」
私はヨルクさんの手を振り払った。
「ごめん、ナミネがそこまで追いつまっていることには気付けなかった。自分勝手だと思う。ナミネを支える。距離は置かない。辛い時にナミネを支える」
何言ってるの、今更。
「今更なんなんですか!全て終わって自由の身になってから支えるとか、どこまでも都合のいい人ですね!ヨルクさんとは別れます!」
「待って!言葉間違えた!ナミネと話したくて呼び出したけど途中で拗れて殴られて惨めな気持ちになった。別れるなんて言わないで!」
どこまで人を馬鹿にしたら気が済むの。
私はヨルクさんを引っぱたいた。
「馬鹿にしないでください!身勝手にも程があります!」
「ナミネ、お願いだからちゃんと話し合おう」
私、こんな身勝手で自分のことしか考えられない人と交際してたんだ。本当馬鹿みたい。
「もう放っておいてください!」
私はヨルクさんを突き飛ばした。
「アンタ、何やってんだ!」
「ヨルクさんに一方的にフラれました!赤線町にも行きません!明日原石採取したら、ナヤセス殿のところに行きます。もう旅はしません!」
私が捨てないでとすがった時は怒ったくせに。
「事情は分かった。アンタ、とりあえず寝ろ」
「はい」
「ナミネ、待って!」
私は診察室を出てアルフォンス王子の病室へ向かった。

朝だ。
少しは眠れただろうか。けれど、メンタルがやられてる。
朝食も殆ど食べられなかった。
「ナミネ、昨日はごめん!」
今は話したくない。
「皆さん、すみませんが先に行ってます」
私は病室を出た。

一人で乗る自転車は私を寂しくさせる。私自身ヨルクさんに引き止められてもムキになることしか出来なかった。ヨルクさんは何でも許してくれる。どんなことがあっても私から離れていかない。ずっとそう思い込んで来た。こんな時に限って今更ナルホお兄様の言葉を思い出す。
『ヨルクもいつまでもは待ってくれないよ』
分かってる。そんなの分かっている。けれど、自分でも受け入れられない問題をひとたび抱えれば、人の心情を考える余裕などなくなるのもまた事実である。
氷河期町に近づくほどに猛烈な寒さが私を襲う。
けれど、今日で最後だ。馴染んできたところで、春風町とも灰色町ともお別れだ。それはそれで切ないものがある。

氷河期町は、今日も何人かのチャレンジャーがいる。今日の私は物凄く調子が悪い。私は一つの苦無を投げ、伝説ワイヤーを投げた苦無に引っかけた。やってはいけないことだと分かりながらも、何かが私を急かせ、私は伝説ワイヤーで登っては、また苦無を投げ伝説ワイヤーで登ることを繰り返した。
下のほうで悲鳴が聞こえる。まさか、私の真似をした人が転落したのだろうか。それでも振り返ってはいけない。この崖を登りきらないと。適当なショップで買ってきたワイヤーを使う人間に問題がある。要は自己責任だ。
不思議なものだ。伝説ワイヤーを使えば45分も経たないうちに頂上に辿り着けた。私はスコップで氷を掘った。
思いのほか、今日はたくさん原石を採取することが出来た。これならまだまだ採取出来る。私は他のところも掘りはじめた。
『強気なナミネ、アンタ何やってんだ!ワイヤー使うのは禁止だろ!下りは絶対にするな!』
落ち武者さん!?もうみんな来たの?
『ナミネ!今から行くから!』
ヨルクさん……登らないで……。下りたらもう一度話がしたい。
戻りはパラシュートを使う。最終日なのに、判断力を失った今の私には何も残っていなかった。
早く登れたからとて、原石採取はやはり疲れるものである。私は少し手を止めた。
『おい、顔だけヨルク!何やってんだ!ワイヤーは禁止と言っただろ!強気なナミネだったからこそ、苦無を正確に刺せたんだ!アンタ下りろ!』
ヨルクさんがワイヤーで登っているの!?
『ナミネとちゃんと話がしたい!』
ヨルクさん、下りて!
『ヨルク、下りようか。今日の君は登れないよ』
ズルエヌさんの声。それでも多分ヨルクさんはこちらに向かっている。
みんなが登り始めて30分は経っただろうか。
『ヨルク!パラシュート開いて!』
『兄さん、数式が追いつきません!』
ヨルクさん?何があったの?
『誰か、顔だけヨルクに命綱投げろ!』
私は命綱を投げる前に崖から飛び降りていた。ヨルクさんが地面に直撃する前にズームさんの数式が間に合い、私はヨルクさんを受け止めた。
「ヨルクさん!ヨルクさん!ヨルクさん!」
私は知らず知らずの間に涙を零しそれが氷と化していた。
「ナミネ……」
「ヨルクさん、死なないでください!私が悪かったです!二度とヨルクさんを一人にしません!」
ヨルクさん、死なないで……。死なないで!!
「ヨルクは大丈夫だよ。二人ともテントに入ろうか」
「はい」
私はヨルクさんをお姫様抱っこしたままテントに入った。
『アンタら今日は休んでろ!』
落ち武者さん怒ってる。
「で?ナミネはどうしてワイヤーで登ったのかな?」
「昨日ヨルクさんと揉めて、あまり眠れなくて、気持ちがモヤモヤしていました。ラスト日だから早く採取したいと、とても焦っていたと思います。ヨルクさんとはちゃんと話し合うつもりでした」
原石採取したら話し合うつもりだった。
「今日が最終日だから、明日からはもうここには来ないけど、今後は如何なる場合でも決められた指示に従うって約束してくれるかな?」
私の一人無双だった。結局、私があんな真似したために、ヨルクさんを失いかけた。
「はい、すみません」
ヨルクさんのことで、団体行動を忘れていた。もう二度と独断で動かない。ヨルクさんのためにも。
「ナミネさん、ヨルクさん。紅茶どうぞ」
「ありがとうございます、ズームさん」
私とヨルクさんはズームさんから紅茶を受け取った。
「ナミネ、本心じゃなかった。ラルクは知っているのに私は知らなくて、ないがしろにされた気持ちになって、思わず距離置こうって言ってしまった。別れるとかそういうのじゃなくて、自分が惨めだったんだ」
ヨルクさん……。全然気付かなかった。
「すみません。ないがしろにしたつもりはありませんでした。でも、もうヨルクさんに惨めな思いはさせません。だから、今日みたいに危ない真似はしないでください。ヨルクさんがいなければ生きていけません」
ヨルクさんの支えがあったから私は安心して旅先で自由に行動出来ていた。ヨルクさんへの想いを思い出した時、どれだけヨルクさんが掛け替えのない存在か思い知らされた。
「ごめんね。私のために飛び降りてくれたんだよね。ナミネがいてくれればいい。もう変にムキになったりはしない」
私は紅茶を置いてヨルクさんを抱き締めた。紅葉の香り。私の大好きな香り。こんなに愛おしい人を私は酷く傷付けた。もう二度と同じ過ちを繰り返したくない。
「私もヨルクさんがいればそれていいです。もう姉妹のことは考えません」
ナクリお姉様には自力で立ち上がってもらうしかない。みんなそうやって生きているのだ。
「まあ、ナミネが飛び降りたのは予想外だったけど、ナミネが受け止めなかった場合、ヨルクは数箇所骨折ってとこだったかな」
命は無事だったんだ。
「そうですか。本当に馬鹿な真似をしたと思っています」
「私が愚かでした。ナミネに憎まれ口叩いてナミネを混乱させて……」
ヨルクさんの左の頬まだ赤い。脇腹の炎症もまだ酷いのだろうか。
「いいんじゃない?好きな人に見向きもされないより、両想いでいるほうが」
そうだった。私がミネスさんとナルホお兄様を引き離してしまったんだった。どうして私っていつもこうなのだろう。壊すことしか出来ない。
『ミネス!僕はカンザシさんがミネスに全く何も感じてないとは思わないよ!』
「だったら、ナルホが付き合ってよ!もうカンザシに散々フラれてきて、それなのに尽くせば振り向いてもらえるって期待して、私もうボロボロだよ!」
やっぱり、互いに気付いてないだけで、この二人両想いなんだ。
『大人になったら考えるよ』
どうして今すぐ交際しないのだろう。好き合っていても上手くいかない恋人で溢れた世の中なのに。
「ヨルクさん、今日採取した原石です。これ虹色に輝いているのでヨルクさんにあげます」
私は原石をヨルクさんに握らせた。
「ありがとう、ナミネ。大切にするね」
『悪いけど、その原石も売り出すからね?少しでも多く売らないと足りないなんてことになっちまえば、ここに来た苦労も水の泡だからね?』
そっか。元々は、カラルリさんを助けると私が言い出したことだったんだ。
「写真に撮るから大丈夫だよ。原石は売るね」
ヨルクさんは、原石を写真に撮った後、私に戻した。
紅葉町に戻ったら、携帯も充電して、今後は二つ携帯を持つことが出来る。て、このテントの中でも充電出来るかな。
「あの、ことテントで携帯充電出来ますか?」
「出来るよ。ここに置いて」
え、置くだけでいいの?私はそろっと、ずっと電源が切れた携帯を置いた。充電されている。これもskyグループの商品だろうか。
「キャンプで携帯ないと困る人いるから、恒星の光で充電が出来る、置くだけ充電器が開発されたんだ。今、おじいちゃんの会社で人気の商品だよ」
これも恒星の光で動いているんだ。もうブランケット家とは何もかもが違いすぎて調子が狂ってしまう。
『今日は原石がたくさん採れるわ』
やっぱり今日は特別多い日なんだ。
「流石はセナ元帥です」
その時、テントに物凄い音が当たった。
『おい!突然の突風だ!みんな木にロープで身体巻け!』
『分かったわ!』
私は思わずテントを出た。けれど、案の定、上までは見えない。
『おい、男尽くしカナエ何やってんだ!早くしろ!』
『カナエ!!!』
この日、突如強い突風が吹いて、カナエさんは上手くロープを扱えず崖の頂上から転落した。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

あとがき。

アルフォンスと復縁したカナエ。
けれど、氷河期町の原石採取ではあまり力を発揮出来ず。
カナエには珍しくもスランプでしょうか?

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。

現在、小説に関する模倣(程度による)の一切を禁じております。
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無断転載もご遠慮ください。
純愛偏差値 未来編 一人称版 114話

《ヨルク》

ナミネが帰ってきたのは翌日だった。
「ナミネ、どこ行ってたの?心配したんだよ」
どうして何も言わないで、ここから出ちゃうの。
「シャム軍医の家に泊まってました」
泊まる?何故その必要があるのだろうか。
「ねえ、それより誰が姉さんハメたのか割り出してくれないかしら?」
セナ王女のお姉様……?
「得体の知れないズルエヌ。アンタやるか?」
え、今から何がはじまるの?
「いやあ、僕もハツだから、いつ選ばれるか分からない不安があるからね。セルファがするといいよ」
ズルエヌさん、ずっと天界にいたから高校1年生で止まったまま現世に戻されたんだっけ。
「じゃ、はじめる。甘えセナの姉のターサスヒ、ハメたのこの中にいんのか?」
昨日ニュースで放送されていた第二王室の王女?セナ王女のお姉様だったの?それって、つまり庶子ということだろうか。
けれど、第二王室は女王制なのに、国王が妾を作るなんて奇妙だな。
写真見る限りは、セナ王女にはあまり似ていない。綺麗で、身長も高く、黒髪をまとめていて、胸が大きくスタイルのいい女子(おなご)だ。メアラスさんと同じくらいタイプかもしれない。
「顔だけヨルク。アンタ、ターサスヒのことどう思う?」
え、それ今全然関係ないよね。
「正直、ミネルナさんより綺麗で黒髪でスタイル良くて胸が大きいところがタイプだし、出来れば水着姿見たいけど少し身長が高い気がする」
いたっ!案の定ナミネに扇子で叩かれてしまった。
「ヨルクさん最低です!そんなに胸胸言うならターサスヒ王女に水着姿見せてと言えばいいじゃないですか!」
何故、いつもいつも私ばかりが責められなければならない。ターサスヒ王女ほどの美人を見たら誰だって魅力を感じるだろうに。別に付き合いたいとかじゃないから、そこまで怒らなくてもいいのに。
「別に付き合いたいとかじゃないし、綺麗だなって思っただけだから!」
ナクリさんで決定したと思えば、いきなり第二王室の存在が発見され、ターサスヒ王女が生贄に選ばれるなんて、誰が予測できよう。
「綺麗、黒髪、スタイルがいい、胸が大きい。まるで成長したナミネね」
え、言われてみれば、ナミネは成長すればするほど身体も成熟していくけど、ナミネは綺麗というより可愛い系だと思うが。
「じゃ、話戻す。ターサスヒ、ハメたの誰だ?」
何故、私のみをハメた。
てか、誰も名乗り出ないじゃない。
「第二王室の存在発見されたの昨日でしょ?だとしたら、誰かがハメるというのも変な話だね」
確かに、もう消滅したはずの第二王室が突然発見されて、そこに誰かが加わっているなら、既に第二王室の存在を知っていたことになる。
「既に第二王室の存在を知っているのって限られてますよね。例えば、セイさんのお母様なら知らないはずはありません」
ラルクの言うようにセイさんの母親くらいしか思いつかない。
「母さんは娘をハメるような人間ではないわ!」
親が子をハメるなんてセイさんのお母様はしないだろうな。ナヤレスさんやカンザシさんの育て親じゃあるまいし。
「うーん、セリルが知ってるみたいだよ」
ズルエヌさんってセリルさんみたいな存在かと思っていたけれど、もっとエリートな気がする。
「言え!セリル!」
落ち武者さんは、セリルさんに扇子を突き付けた。正直、仲の良い兄弟が拗れてしまう光景は見ていていい気はしない。私はラルクにいやってほど嫌われてきたというのに。
「カナコさんだよ……」
カナコさんが!?ナクリさんに決まった時点で引かなかったのだろうか。
「関係ない人間を犠牲にするなんて許せないわ!」
セナ王女、めちゃくちゃ怒っている。けれど、ここでカナコさんに決まってしまえば、それこそ歴史が変わってしまう。
「アルフォンス王子様!」
「カナエ……?」
このタイミングで目覚めるとは。
「アルフォンス!大丈夫?今医師を呼ぶわ!」
セナ王女は、病院の無線で受付にアルフォンス王子の目覚めを伝えた。数分後、医師が来た。
「まだ、激しい運動は出来ませんが、大人しく療養していれば、完治するでしょう。薬を出しておきますので、朝昼晩の食後に飲んでください」
これで、アルフォンス王子の問題は解決したが、ターサスヒ王女の問題は長引きそうだ。
「アルフォンス王子様、カナエが間違っていました。カナエはずっとアルフォンス王子様のお傍にいます」
カナエさんはアルフォンス王子を抱き締めた。
「カナエ……生きてて良かった……あの時、死ななくて良かったよ。考え直してくれてありがとう」
これは、幸せと呼ぶのだろうか。誰にも分からないだろうけど、変わり果てた者に愛情を注ぐのは科学的にも困難であると証明されている。
「目覚めたとこ悪いんだけど、アンタの姉が生贄に決められたけど?」
それだけで分かるのだろうか?
「えっと、どの姉?」
「ターサスヒ」
少し沈黙が流れた。
「えっ、姉さん生きてたの?」
やはり、そうなるか。
「あの、でもカナコさんは第二王室の存在知りませんでしたよね?だったら、ターサスヒ王女がどのような人物かも知らないはずです」
ナミネの言う通り、カナコさんも第二王室の存在など知るわけがない。
「普通に、そのセイって子なんじゃないの?その子は王子じゃないんでしょ?」
やっぱり、ズルエヌさんは勘がいい。自分の身元なんて役場に行けば分かる。けれど、ターサスヒ王女はセイさんの実の姉。何の恨みがあるというのだろうか。そもそも、兄弟仲悪かったっけ?
「セイだね。身分差で随分私たちのこと恨んできたし」
えっ、本当にセイさんなの?
「そんな、セイが……。でも、セイのことは恨めないわ」
どこの家庭も兄弟は庇い合うものか。
『緊急速報です。生贄制度ですが、今日の14時から行われることになりました。また、進行人(古代は道化師)は紅葉町に住むアランさんに決まりました。では、絶世の美女と呼ばれるターサスヒ王女の赤花咲をお楽しみください』
今日!?ダメだ、間に合わない。
「ふふっ、カナコさん怒らせるなんて自業自得ね」
「セレナール、今なんて言ったの?」
セナ王女はセレナールさんに短剣を突き付けた。
「やめてよ!ここ病院よ!」
「これがターサスヒ王女か。ちょー美人だな。こんな女が彼女だったらなあ」
どうして、こういう時にミナクお兄様は場違いな発言をするのだろう。
「アンタ、やめなさいよ!今どういう状況か分かってるでしょ!」
ミナクお兄様は、ナナミさんの肩を抱いた。
「私はナナミにならなくて良かったと思っている。ナナミが選ばれるくらいなら無理にでもナナミのハツをもらってた」
よくまあ、そんな恥ずかしいことが言えるもんだ。聞いているこっちが恥ずかしい。
「何よ!あなたとだけは交際しないわ!この女たらし!」
現時刻は10時過ぎ。時間がなさすぎる。このままでは本当にターサスヒ王女が生贄になってしまう。
「時間ないけど、どうするわけ?」
落ち武者さんも、セレナールさんが免除されたからって他人事みたいに言って。
「あまり、こういうことに口を挟みたくはありませんが、要はターサスヒ王女から別の人に変えればいいということですよね?」
珍しくアヤネさんが口を挟んだ。
「ええ、そうだけど。そんなこと出来るの?」
出来ていれば苦労はしないだろう。
「貴族には貴族の裏事情があります。貴族というのは、ひとたび都合が悪くなれば直ぐに貴族ガチャを引いています。私も父が所有する券が3枚あります。けれど、運が悪ければ、昔の旧友だったり、別のご姉妹が出てしまう場合もあります。どうなされますか?」
貴族ガチャ?何なんだそれは。
しかし、どこの世界にも表あれば裏もある。貴族ということは、相当な何かを隠して生きているのだろうか。
「引くわ!姉さんから変えられるなら!」
セナ王女は、見た目通りチャレンジャーだな。
「分かりました」
アヤネさんは無線を手に取った。
「ロリハー家・次女・アヤネ。別荘にいる武官は今すぐZコース三回お願いします」
『かしこまりました。ただ今開始致します』
これ、本当に大丈夫なのだろうか。
「僕も、口を挟む立場じゃないけど、例えターサスヒ王女から別の人になったとしても、絶対誰かが犠牲にならなければならないわけだよね?それも僕らによって見ず知らずの人の人生が奪われるとなったら、下手したら刺されるかもしれないよ?」
問題はそこだ。誰かが犠牲にならなければならない。それが、公式に選ばれた者なら誰も文句は言えないだろうけど、こんなところで、我々がコソコソ、全く知らない人間にすり替えるのは、正直間違った行動にも思えてくる。
「分かってる!分かってるわよ!でも、どうしようもないの!今、姉さんの人生が台無しになれば、私も幸せになれない!」
セナ王女はその場に泣き崩れた。私も、ナミネが犠牲になるなら、同じことをしていたかもしれない。人というのは、いやってほどに、自分と自分の大切な人さえ良ければ他は犠牲になっても涼しい顔している生き物だ。
「セナ元帥、どうかご自分をお責にならないでください。誰だって道を踏み外すことはあります。僕はセナ元帥に同意します」
シャム軍医はセナ王女を立ち上がらせた。
「シャム軍医……」
『アヤネ!あなた何しているの?今すぐやめさせなさい!!』
アヤナさんの声。アヤナさんって、少しヤンキータイプに見えたけど、本当はまともな人間なんだ。
『アヤナ!私がアヤネに無理を言ったの!どうしても姉さんを犠牲にしたくなくて!』
『セナ王女。お気持ちお察し致します。しかしながら、アヤネの安易な行動で、セナ王女のお命が危うくなる場合もございます。中断をオススメします』
どこも、長女はしっかりしているものなのだな。クレナイ家もそうだし。ナノハナ家も。
『結果が出ました。一人目・カラクリ家・次女エミリ。二人目・コノハ家・次女レイナ。三人目・第一王室・第10王女コソナ様。どうなされますか?』
セナ王女は、首を横に振った。
『却下でお願いします』
はあ、めちゃくちゃ緊張が走っていた。
『アヤネ!後で覚えておきなさいよ!』
「アヤナには私から文を書くわ」
セナ王女もアルフォンス王子もずっと顔が青ざめている。
「いいえ、お姉様はいつもああなんです。いつも私のお気に入りを取り上げたり、私を嘲笑ったり……。姉妹中は最悪です」
本当にそうだろうか。なんか、そうは見えない気がするのは気のせいだろうか。
「人見下しアヤネ。アンタ鈍すぎ」
「本当に、私、姉から嫌がらせ受けて来たんです!」
姉妹というのも難しいものだな。現に、ミドリさんとナクリさんも、犬猿の仲だったわけだし。
「人見下しアヤネ、アンタ不治の病なんだよ!けど、そんなアンタを長生きさせるために、アヤナが小さい頃からアンタに輸血し続けてんだ!アヤナはアンタのこと愛してんだよ!」
そうだったのか。どこから情報得たかは知らないけど、やっぱりアヤナさんは、アヤネさんのことをいつも想っていたんだ。
「そ、そんな。有り得ませんわ!」
「だったらこれみて見ろ!アヤナがアンタ救った記録のコピーだ」
どうしてそんなものまで持っているのだろう。まさか、この病院に記録があるのか?
「う、嘘でしょ……。お姉様が……」
「アヤナは、アンタのためだけにやりたいことを諦めてきた。アンタもっとまともな人間になれ!」
アヤネさんは渡された記録と共に泣き崩れた。
「ごめんなさい。私も知っていたけど、アヤナに口止めされていたの」
よく考えればセナ王女が知らないわけないか。
「じゃあ、次は私ね」
え、どうしてエルナが!?
その瞬間、落ち武者さんがエルナを押し倒した。
「アンタは何もするな!時間内に僕が解決する!」
ナミネのこと好きとか言っておきながら、結局今もエルナのこと好きじゃない。しかも、ナミネは写真まで撮ってるし。
「セルファ。世の中にはどうにもならないこともあるのよ。それを動かすには誰かが黒幕にならなきゃいけないの」
エルナ……。ずっとそうやって生きてきたのか。強い人間ほど、抱えるものも重たい。
「絶対に認めない!エルナは黒幕になんかなるな!これからは、アンタの問題は全て僕が引き受ける」
何故、今告白をする。
「私はそんな弱い人間ではないわ」
エルナは強い。でも、抱える物ごとにも限りがある。
「じゃあ、アルフォンス王子も目覚めたことだし、続きは春風神社で話し合おうか」
12時!?時間が経つのは実に早い。特に揉めごとが長引いている時は皮肉にも早いものだ。
「じゃ、自転車で行く」
そうか、この前、私が馬飛ばして交番で注意されたもんな。あの時、ナミネは春風神社に行ったのだろうか。

灰色病院から自転車で春風神社までは、わりと近かった。しかし、生贄など気分の悪いものに、こうも人が集まるものなのだな。
「セリル、人を不幸に突き落とした気持ちはどうかしら?」
カナコさん、来ていたのか。
「カナコさん、僕には何をしても構いません。でも、関係のない人間を巻き込むのはやめてください」
今のカナコさんにどこまで通用するのだろう。
「あら、先に陥れたのはあなたじゃない。あなたにとやかく言う権利はないわ」
カナコさんは容赦がない。
「第二王室とか関係ないでしょう!」
カナコさんとセリルさんは、あれ程に仲良しで誰が見てもベストカップルだったのに、拗れる時はこうまで仲が悪くなるものなのか。
「ターサスヒ王女が苦しむのを存分にご覧なさい」
「カナコ、やめなさいよ。私たちが生贄にならないと決まった時点でこんなことしなくても良かったじゃない。何がそんなに気に入らないのよ」
カナコさんもレイカさんも少し前までは窮地だった。
その時、セナ王女がカナコさんに短剣を突き付けた。
「今すぐ姉さんを解放しないと、キクリ家を滅ぼすわよ!」
セナ王女の目、黄色になっている。
「あら、やれるものならやってみなさい」
カナコさんが嘲笑った瞬間、セナ王女は短剣でカナコさんの服を切り裂いた。
「な、何するの!」
カナコさんはバラバラになった衣類をどうしようも出来ず、代わりにレイカさんがカーディガンをカナコさんにかけた。同時に、レイナさんはセレナールさんにミネラルウォーターをかけた。
「冷たい!」
「あなたのせいよ!あなただけには、もっと苦しんでもらうわ!」
もう人間関係がめちゃくちゃだ。
「やってみなさいよ。ほら!ほら!」
レイナさんが、セレナールさんを蹴ろうとした時、ヤマヨリさんがレイナさんを押し倒した。
「きゃーーー!」
「レイナ!」
セレナールさんは不幸と引き換えに、ずっとヤマヨリさんを後ろ盾にしていたのか。
その隙にセナ王女がレイカさんの着せたカーディガンを短剣で切り刻んだ。
「分かった!分かったわ!今すぐターサスヒ王女を生贄から解除するから、これ以上カナコを辱めないで!」
生贄儀式の前に、カナコさんの霰もない姿に男たちはカナコさんに釘付けになってしまった。
「早くしなさいよ!」
セナ王女の怒りで、レイカさんは慌てて紙飛行機を飛ばした。
「セリル、一生恨んでやる……!」
カナコさんは泣きながらセリルさんを睨みつけた。
「セナ王女、お願いだからカナコさんには手を出さないで!」
「あら、私に口答えする気?」
強気なセナ王女の目の前にはキクスケさんがいた。
「カナコさんが辱めを受ける前に時間を戻してもらえませんか?」
「かしこまりました」
ものの数秒で時間が戻っている。けれど、セナ王女は再び目に見えないスピードでカナコさんの服を引き裂いた。再び時間を戻すよう依頼をするセリルさん。このやり取りはしばらくの間続いた。
「ダメだった。皇帝陛下の決断は変えられなかったわ」
レイカさんは恐る恐る皇室からの文をセナ王女に見せた。セナ王女の怒りはマックスになり、セナ王女は短剣でレイカさんの服まで引き裂いた。
「私より弱い人間が、よくも私を陥れられたわね。自分の力量と向き合うことね」
セリルさんは咄嗟に服を脱ぎ、レイカさんに着せた。
「ごめん、レイカ。私のせいだわ。遠い昔、ターサスヒ王女にされた仕打ちを思い出すたびに怒りが止まらなかった」
ターサスヒ王女が何かしたのか?
「あの、ターサスヒ王女は何をしたのでしょう?」
ナミネ、いつの間にうずまきキャンディ買ったの。私は咄嗟にナミネからうずまきキャンディを取り上げた。
「あれは、妖精村初期だった。セリルとの婚約が決まった矢先に、ターサスヒ王女はセリルを呼び出し、睡眠薬で眠らせて朝起きたらセリルは白梅咲になっていた。私とセリルの人生を壊したターサスヒ王女が今でも憎くてたまらない」
ターサスヒ王女は、セリルさんに片想いしていたのか。カナコさんは続けた。
「白梅咲となったセリルは、ターサスヒ王女と無理矢理結婚させられ、私は一人残されたまま誰とも結婚しないまま年老いたわ」
なんだか、絡まりあった人間関係だな。
「つまり、男女の情愛のもつれということですね」
どうしてナミネは空気のひとつも読めないのだろう。
「それを先に私に話すべきだったわね。でももう遅い。いくら姉さんが過去にあなたに何かしても、無断で姉さんを辱めた時点で、あなたも過去の姉さんなのよ!あなたは王室で赤花咲をすることが決まったわ。これからは自分の行動を見直すことね」
セナ王女の容赦ない発言にカナコさんはセリルさんを殴り付けた。
「うーん、やめようか。ここでセリル殴ってもなんの解決もしないよね」
セリルさんを殴るカナコさんの手をズルエヌさんが掴んだ。
「姉さんを生贄にしないなら、カナコさんの赤花咲は取り消してもいいわよ?」
あちらもこちらも全力で怒りをぶつけ合っている。強い者同士の諍いほど怖いものはない。
「分かったわ……」
カナコさんは青ざめた顔で紙飛行機を飛ばした。けれど、皇帝陛下の決断は変わらなかった。
セナ王女がカナコさんに再び短剣を突き付けた時、儀式のアナウンスが流れた。
『只今より、春風神社での儀式を行います。それでは生贄の方に舞を舞ってもらいましょう』
いよいよはじまってしまった。
「姉さん!!」
セナ王女は全力で泣き叫んだ。
けれど、出てきたのはナクリさんだった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

あとがき。

アヤネの誤解が解けたのは良かったのですが……。

カナコとセリルの拗れは前代未聞。
現世で二人はどうなってゆくのでしょう。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。

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無断転載もご遠慮ください。
純愛偏差値 未来編 一人称版 113話

《ナミネ》

時を経て、セナ王女とシャム軍医は恋の花で結ばれた。これで良かったのか悪かったのか、そんなの私には分からない。現に、カラルリさんからアヤネさんとの交際宣言したわけだし。アヤネさんのほうは、まだズームさんを諦めきれてないのは明確だけれど。簡単に、昔の付き合いだからと復縁していいものなのだろうか。
また、病院の無線が流れてる。
『廃止を継続するとお伝えした、春風神社の生贄制度ですが、貴族による復活署名が集まり、皇帝陛下も廃止解除に向かっています。もし、春風神社にて生贄制度を行う場合は、生贄に選ばれた女性が指定の着物を着て舞を踊り、進行人に選ばれた男性に白花を触れられたあと、皇室の武官による赤花咲が行われ、その最中に進行人が雪流零を行います。生贄女性は美しくスタイルが良い女性、進行人は女受けしない低収入の男性、武官は体重80キロ越えとなり、三人ともハツであることが決定致しました。かつて、男性陣が楽しみにしていた生贄制度、実現されるのでしょうか?』
廃止になったんじゃなかったの?女性は、オモチャなんかじゃないのに。貴族はいつの時代も人で楽しみを得る。全員ハツってことは、限られてしまう。それこそ、本当にカナコさんになる恐れも……。
その時、リリカさんの元に紙飛行機が落ちた。リリカさんは紙飛行機を開けるなり、セレナールさんを殴り付けた。
私は落ちた紙飛行機を拾った。
『生贄制度は現実になるわ。候補も出てる。
私、レイカ、レイナ、リリカ。
誰かが裏で糸を引いているとしか思えない。

カナコ』
リリカさんが候補に!?わ、私のせいだろうか。私が生贄制度を一瞬でも復活させなければ、武家のみんなを混乱させる羽目にならなかったかもしれない。今になって罪悪感を抱くだなんて。
「アンタ、いくら不利な状況でも殴るのはアウトだろ」
落ち武者さん、扇子突き付けてる。
「リリカ、全て僕のせいだよ。僕が四人全員選ばれないようどうにかするから時間をくれないかな?」
きっと、あの頃のセリルさんは世間知らずだった。
「セリルさんが悪いとは思っていません。けれど、自分の問題をナミネに押し付け、ナミネの人生を壊したセレナールは償うべきだと思います」
リリカさん、かなり怒っている。
「リリカさん、私が代わりにやります!」
ナナミお姉様……。ダメだ、姉妹を巻き込むなんて思ってなかった。
「ナナミ、絶対するな!ナナミのことは選ばせない!」
ミナクさん、まさかナナミお姉様と……。
「ナナミの出る幕ではないわ。全てはセレナールが起こした問題だもの!ナナミを犠牲になんかさせないわ!」
リリカさん、自分の危機が迫っているのに守るべきものは守る勇敢な人。
「じゃあ、今日はシャム軍医の家には行けないね」
ズルエヌさんこそ選ばれるかもしれないのに、その余裕はどこから出てくるのだろう。
「ごめんなさい。私、シャム軍医の家に行くわ」
セナ王女は、武家の問題には関係なしか。ハツというわけでもないし。
「ナミネ、僕らも行くぞ」
え、でも……
「アンタら、抜け駆けし過ぎだろ」
落ち武者さんも行くの?何のために?
流されるまま、私は、騒がしい病室を抜けて、セナ王女とシャム軍医に着いて行き、ラルクと同じ馬に乗った。
春風町を通り抜け洞窟へ。灰色町からだと、春染めにいた時と、そう距離は変わらない気がする。
私たちは洞窟の真ん中に馬を停め、そこから洞窟を歩いた。
「甘えセナ、アンタ、シャムとの関係バレるなよ?紅葉町に戻るまでは」
どうして洞窟の中でそんな話するのだろう。バレたとして、何か問題でもあるのだろうか。
「えっ!わ、私は……」
やっぱり、周りに気付かれてないと思ってる。
「僕は黙ってるよ。セナ元帥のためにも」
カラルリさんのことだから、セナ王女がシャム軍医と交際してるなんて知ったら、セナ王女に復縁迫りそう。
「今日も家だからって何もすんな」
落ち武者さん、どうして他人の恋路にとやかく言うのだろう。
「え、ええ。何もしないわ」
「あの、別に良くないですか?お二人はもう恋人なんですし」
落ち武者さんが決めたって仕方ないじゃない。
「ダメだ。遠い昔、元々はシャムと交際するはずだったんだ。それが先にカラクリ家に行ったために、一目惚れカラルリと交際することになっちまった。このままアンタらが深い関係になれば、歴史が変わる」
そんな……じゃあ、どうしろって言うの。
「そんな……やっと手に入れた幸せだから、シャム軍医を手放したくないわ!」
セナ王女……。
「だったら、紅葉町までは絶対Fメモはすんな!紅葉神社でつがい守り買うまでは距離置け!」
まだ帰れないのに。なんだか不憫だ。
「分かったわ。シャム軍医との未来のためにも今は我慢する」
なんだか不安だな。
氷河期町だ。とても寒い。
「今日は天候が荒れてるな」
天候なんてあるの?
「天候ですか?」
「そうだよ。一見、吹雪に見えるけど、晴れの日、雨の日、曇りの日があるんだよ」
とてもそうは見えない。
「でも、今日もバイトの人いますけど」
あの人らどうなるのだろう。諦めて帰るのかな。
「今日は無理だね」
「そうですか」
距離置くって言ったばかりなのに手繋いでる。それくらいならいいのかな。
「ねえ、さっき、本当はシャム軍医と交際するはずだったって言ってたわよね?それってどういうことなの?」
何気に私も気になる。
「アンタ、軍事基地いる時からシャムのこと好きだったんだよ。でも、アンタ仕事ばっかで気持ち押し込めてた。そういう雰囲気になったことあっただろ?」
私は、陸軍基地から空軍基地に移動し、紅葉町には戻れず戦死する。
「うーん、思い出せないわ」
私も全く分からない。
「すみません……」
え、何かあったの?
「何?」
「それは……」
「早く言いなさいよ!」
カラルリさんは運命じゃなかったんだ。
「急患で寝る場所が殆どなかった時にセナ元帥と隣で浴衣でしたので、誤って……」
タコ部屋なんて何回もあったような。
「うーん、私は寝てたのよね?」
「起きてました」
え……。
「えっ、私何か言ってた?」
「ただ何も言わず僕の手を握りました」
好きだったんだ。でも、戦争だったから、セナ王女は恋愛を捨てた。
「そ、そうだったのね」
民家が見えて来た。意外に大きい。
「ここが僕の家です」
私は真っ先にシャム軍医の家の中に入った。
「意外に広いのね。一人暮らしで二階建てって何だか寂しいわね」
ナヤセス殿も高級マンションに住んでるけど、私は一人でも広い家がいいな。
「この町は家族連れが多いですから」
氷河期町の人同士が結婚して世帯を持つというわけか。なんだか急に部屋が温かくなってきた。
「あの、当時の軍事基地時代のアルバムはありますか?」
「あるよ。ちょっと待ってて」
氷河期町は外があんな寒さじゃなければ住みやすいのに。あれ、ここにも無線がある?
『生贄制度ですが、決行になりました。生贄になる女性は、ブランケット家の長女に多くの票が入りましたが、皇帝陛下が認めず、今のところキクリ家・長女、コノハ家・長女次女、クレナイ家・長女に多くの票が集まっています。また選ばれた生贄女性が緑風華をしないよう監視が着いています。生贄儀式が終わったあとも本人が落ち着くまで監視は付けられます』
なんだか、聞いていて気分が悪い。あの時は、怒りで自分を制御出来なかったけど、改めて聞くといい気はしない。
「指定の着物もこういうのらしいぜ」
突然ラルクが携帯画面を見せてきた。
「えっ、こんなの着てないようなもんじゃない」
私の時は、着物を何重にも重ねられていて、進行人はヨルクさんで、赤花咲の時には三人全員が白空鈴でなければならない。
透けた着物。これも貴族の娯楽見物の一つなのだろうか。
「結局、貴族は人の傷付く姿見ることしか楽しみないんだよ」
なんだか、そういうのいやだ。けれど、貴族こそ美しい女性とやらに当てはまるのではないだろうか。
「これだよ」
シャム軍医が机に古いアルバムを置いた。
「ありがとうございます。結構あるんですね」
私はアルバムを開いた。
「みんなに配布されるからね」
そっか。私は戦死したからアルバム渡されなかったんだ。
「アンタ、軍服似合ってるな」
「そうでしょうか。私は武官の方が向いている気がします」
でも、ひとたび戦争が起きれば武家から一般人まで駆り出されてしまう。貴族は手続きで免除出来るけど。
「アンタ、成長すれば綺麗になんだよ」
落ち武者さんは、私の頬に触れた。
「そうかな。ナミネはどちらかというと子供っぽかったイメージあるけどな。僕はセナ元帥のほうが美しいと思ってたよ」
私って子供っぽいの?
「アンタはそうだろうがよ。甘えセナに一目惚れしたんだからな。でも、男の殆どが強気なナミネくどいてただろ」
確かに言い寄ってくる男は多かった。でも、あの時の私は恋愛なんてしている余裕などどこにもなかった。青春を戦争に捧げたのだ。
「そうね。ナミネが空軍基地に来てからは、男は夜な夜なナミネに言い寄ってたわ」
所詮、男など女の見た目で決め付ける生き物だ。
あ、最後の集合写真と、私が出発する時の写真。
「私、戦死したんですよね」
もう昔のことなのに涙が出てくる。
「ナミネは生きて戻ったよ。そして、ヨルクと同じアパートに住んで、そこに僕とセナ元帥も居候した。同じアパートにはカナコさんとセリルもいたよ」
戦死してない?生きて戻った?
歴史が変わっている。
「ラルク、歴史が……!」
「ああ、変わってるな。僕は確かにナミネの葬儀に行った」
いったい何が起きているのだろう。
「歴史が変わっています。セナ王女のカラルリさんの失望が原因のようです。このまま変わり続ければ、現世そのものが変わってしまいます」
キクスケさん!?なんか、久しぶりな気がする。
「どうすればいいの?」
「あの時、軍事基地で一瞬の出来事とはいえ、シャム軍医と愛し合った上でカラルリさんを選んだ事実を思い出す必要があります。覚悟は出来ていますか?」
大丈夫なのだろうか。やっと、シャム軍医と落ち着いたのに。この時って、私がミナクさんに嫁いだ一つ前だろうか。その時に既にセナ王女は、カラルリさんと出会っていたんだ。
「出来てるわ。私はシャム軍医との未来を歩む」
「分かりました。それでは全てを受け入れてください」
キクスケさんは、セナ王女の頭に手をかざした。
「私、あの日……シャム軍医と……。それなのにどうしてカラルリと交際なんかしてしまったの……」
セナ王女は涙をポロポロ零した。
「セナ元帥、今からはじめましょう。それに、全く相手にされてないと思っていたセナ元帥が一瞬でも僕を受け入れてくれたこと生涯を終えるまで生き甲斐になっていました」
二人の恋はなんだか素敵。こんなふうに、ヨルクさんも私を待っていてくれていたのかな。
「じゃ、甘えセナとシャムの問題は解決したから、あとは生贄の問題だな」
どうにかしなくてはならない。いったいどうすれば……。
「お父様に頼んでみるわ」
ミネルナさんは免除された。だったら、上の者が動けばどうにかなるのだろうか。
「ナミネ、無線でお武家連盟会議するそうだぞ」
無線で?まあ、今は集まること出来ないから仕方ないかもしれないけど。私は無線を手に持った。
『これより、緊急お武家連盟会議を行います。テーマは生贄制度についてです。意見のある者は合図を行ってください』
やはり、進行はレイカさんか。
誰かが合図を鳴らした。
『レイナ、意見をどうぞ』
どうして誰の合図か分かるのだろう。
『セレナールを刑事裁判にかけるべきだと思います』
予想はしていたけど、セレナールさんに矛先は向く。
『私もレイナと同意見です。元凶はセレナールにあると思います』
カナミさんまでもセレナールさんに責任を取らせようとしている。
『リリカ、意見をどうぞ』
『私もセレナールを罰するべきだと思います。カナコさん、レイカさん、レイナさん、私。誰かが生贄になれば武家の株は下がります』
けれど、セレナールさんを罰しても、セレナールさんは生贄にはならず、苦しむのは他の誰かだ。
[ナミネ、歴史変わったぞ]
ラルクからのモーラス信号。そして、無線から聞こえる物凄い音。
『何をしたのよ!セレナール!!』
どうして?地獄村の生贄がリリカさんに変わってる。
[ラルク、何があったの?]
[姉さんには後ろ盾があるんだよ。昔の番人・ヤマヨリのな]
そういえば、ウルクさんの前がヤマヨリさんだったっけ。セレナールさんのピンチには必ず現れると伝説にもなっていた。
「ナミネ、元に戻せ!」
それしかないか。このままだと、リリカさんがおかしくなってしまう。
「あの、二階お借りします」
私は二階へ駆け上がった。携帯を取り出し、テナロスさんにメールをした。
《かしこまりました》
これで元に戻るはず。私は階段を下りた。
生贄はセレナールさんに戻っている。
[ダメだ。また戻された]
えっ……。セレナールさんは、袋叩きにならないようにヤマヨリさんに命令してるの?私はまた携帯でテナロスさんにメールを送信した。生贄はセレナールさんに戻ったが、また直ぐにリリカさんに戻されてしまった。これではイタチごっこだ。
『セリル、聞こえてるわよね?あなたのこと絶対に許さない!』
カナコさん、完全に怒ってる。正直いやだ。ベストカップルだったカナコさんとセリルさんが拗れてしまうのは。
『カナコ、今は堪えて!いっときの感情でセリルを責めたら後悔するわ』
レイカさんは冷静だ。生贄に選ばれるかもしれないのに。
『きゃああああああ!やめて!!』
『リリカ、どうしたの?』
ダメだ。セレナールさんがヤマヨリさんに命令してリリカさんを攻撃してる。
『ふふっ、なんだかいい気味です。いつも大口叩いているリリカさんが襲われている姿。でも、ハツじゃないと生贄にはなれませんね』
やっぱり、アヤネさん性格悪すぎる。正直、関わりたくない。
『じゃあ、やめようか。もうすぐセレナールは皇室に連行されるからね』
『お願い、見逃して!少しカッとなっただけなんです!』
皇室でもどこでも行けばいい。
『話、戻しますが、私はナクリお姉様を推薦します』
全く予測をしていなかったわけではないけれど、ナノハお姉様が切り出すのは意外だし、同じ経験をすることに意味があるのか今となっては分からない。
『では、生贄はナクリという方向で話を進めますが、異議のある者は申し出てください』
『確かにナクリお姉様は罪を犯しました。だからといって、僕は家族を犠牲にしたくありません』
やはり、ナルホお兄様はどこまでも自分の平和とやらを貫こうとする。
『一人の意見のみを通すことは出来ないわね。会議参加者の過半数が反対すればそれに従います。けれど、このまま誰も異議がないのであれば、ナクリで進めたいと思います』
ナクリお姉様は、もはやみんなの敵に回ってしまっている。正直私も、リリカさんたちが犠牲にならないためには、ナクリお姉様に犠牲になって解決出来たらと思う。
『その進行の仕方は強引だと思います』
『では、私の進行が強引だと思う者は名乗り出てください』
無論、誰も名乗り出ない。
『待って!ミドリ、許して!一生かけて償う!』
人は人を攻撃して敵を作った後に不利な立場に立たされたら情けなくもすがる生き物だ。
『許さないよ。私もナクリでいいと思う』
『こんなこと言うの気が引けるけど、ナクリはそれだけのことしたわけだし、同じことされたらって、みんな怖がってるわ。私もナクリは痛い目見るべきだと思う』
カナコさんからも嫌われたナクリお姉様。大学も休学しているし、もはや孤立無援だ。人を陥れた者には何の慈悲も与えられない。
『私はアヤネを推薦します』
リリカさん……。この分かれた意見は、グループの人間関係を拗れさせてしまう気がする。
『ふふっ、私はハツじゃないから生贄にはなれませんわ』
『ハツにすることは今の医療技術では可能よ』
確かに第一まで戻すことは現代では可能だ。
『どうしていつも私ばかりを犠牲にするんですか!』
『自分からハツじゃないって言って惨めね』
アヤネさんも嫌われている。
『では、ハツは復活出来るということで、セレナール、ナクリ、アヤネで投票を取ります。順番に名前を言ってください』
セレナールさんが加わるなら選択は一択。
『私はセレナールさんを推薦します!』
最後までの投票を聞いて、セレナールさんとナクリお姉様の接戦の中、セレナールさんに決まった。
『待って!助けて兄さん!』
セリルさんは何も言わない。
『セリル、あなたとの縁もここまでよ!あなたもあなたの家族も不幸にしてやる!』
あれ、今一瞬周りのものがブレた?
『では、生贄はナクリで皇室に紙飛行機を飛ばします。これにて会議を終了します』
無線が切れた。誰かが、時間を動かしたんだ。セリルさん……?ではない。まさか……落ち武者さん!?
「悪いけど、これ以上、姉さんに傷付いてもらうわけにはいかないからね?」
歴史の何がセレナールさんをずっと追い込んでいるのは分からない。でも、私としてはセレナールさんには、色々言いたいことがある。
『緊急速報です。伝説となっていた第二王室が赤線町の森の奥に発見されました!そのことで、村中が騒ぎとなり、生贄制度は第四王女であるターサスヒ様に圧倒的な票が入り、皇帝陛下も認めざるを得なくなり、生贄はターサスヒ様に決定致しました。第二王室では圧倒的な美貌を持つと言われているターサスヒ様が儀式の主役になったのは、多くの貴族たちに反響を呼ぶことでしょう』
第二王室。遠い昔、アルフォンス王子が住んでいたところだ。赤線町に現代も存在していたのか。けれど、ターサスヒなんて聞いたことがない。
でも、第二王室は第一王室とは違ってどちらかというと女王制度だ。なのに、王女を生贄に差し出していいのだろうか。
その時、下着姿でセナ王女が下りてきた。
「嘘でしょ!いったい誰が……!」
王室同士の付き合いでもあったのだろうか。
「アンタさ、服くらい着ろよ」
シャム軍医も慌てて下りてきてセナ王女にバスローブを羽織らせた。
「もう消え去ったと思っていました。けれど、今も存在していたのですね。恐らくセナ王女とアルフォンス王子をよく思わない人の陰謀でしょう」
陰謀!?もうナクリお姉様でいいじゃない。どうして、いちいちコロコロ変えるの。
「許せないわ!犯人見付けて必ず拷問してやるわ!」
「そのターサスヒって王女はアンタの何なんだよ」
遠い昔もいたのだろうか。
「姉よ!母さんの子なのよ!」
そんな……まさか……!!

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

あとがき。

殆ど、お武家会議な回でした。

セナとアルフォンスには兄弟がたくさんいますね。
その分、権力争いもありそうですが。

ターサスヒ。
古代編では登場していない人物。

原石採取どころではなくなる展開。
カラルリはどうするのかな。

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この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。

現在、小説に関する模倣(程度による)の一切を禁じております。
詳しくはこちらを参照→ 禁止事項

無断転載もご遠慮ください。
『クレナイハンシ』 修正版

夜紅葉の紙風船 膨らます君に
夢物語 優しく あたためた
秋風に飛ばされて 紙風船 いずこへ
華物語 刹那に 抱きしめた

商店街の回しくじ 止められない君に
後ろを振り返る 溢れる人だかり
バズレを折り鶴に 空へ羽ばたいて
見知らぬ誰かの 元に 届くだろう

変わりゆく 過去を未来を
色褪せないように 守りたい
君の願い 虹の向こうへ

黄色紅葉が 揺れている
歴史の一枚 刻もうと
菜花半紙に 書き留める
セピアに 滲んだ 切灕文字

季節外れの水風船 釣り上げる君に
家族連れの眼差しに 慌てて遠ざけた
ひとつの水風船 寂しげに見つめてる
燈籠流しのチラシ見せる 君は笑顔に

変わりゆく 過去を未来を
色褪せないように 守りたい
君の願い 虹の向こうへ

黄色紅葉が 揺れている
歴史の一枚 刻もうと
菜花半紙に 書き留める
セピアに 滲んだ 切灕文字

赤色紅葉の じゅうたんを
何気に君が 踏みしめる
花火の合図と ともに
集合写真も 色褪せる

本当に 大切なもの
残せないので 溢れてる
それでも 覚えていたい
紅半紙に 筆取って

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あとがき。

『クレナイハンシ』の二番目の歌詞の四行を修正しました。

具体的に
[一つしか流せない 菜花燈籠を
蔵から無断で取り出して 皆で大騒ぎ
各武家の燈籠を 君がため集めて
夜川に流れてゆく 昔と重なり]

[季節外れの水風船 釣り上げる君に
家族連れの眼差しに 慌てて遠ざけた
ひとつの水風船 寂しげに見つめてる
燈籠流しのチラシ見せる 君は笑顔に]
に変えました。

どうしても、燈籠物語に納得いかず、悩んだ結果思いついた水風船にしました。
それ以外はそのままです。

また、あとがき書けたらと思います。

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この作品はフィクションで、登場人物・団体名などは全て架空です。
Copyright (C) 2009 雨の音を聴きながら, All right Resieved.
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