忍者ブログ
日常のこととかオリジナル小説のこととか。
カレンダー
09 2026/10 11
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
プロフィール
HN:
ashita
Webサイト:
性別:
女性
職業:
地主(土地貸してます)
趣味:
漫画やアニメを見るのが好きです。最推しはフーディーニ ♡
自己紹介:
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

ブログ、もう書かないと思ってました。

けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。

小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。

純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。

元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。

ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。

小説、ぼちぼちマイペースに書いてゆきます。

よろしくお願い致します。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

お知らせ。

イラストは現在「ナノハナ家の日常」に載せております。サイドバーにリンクあります。

また、「カラクリよろずや」にてフリーイラスト素材について考えるブログはじめました✩.*˚
不定期に更新していく予定です。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

模倣・無断転載などは、ご遠慮ください。

ブログの小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。

小説・純愛偏差値に関しましては、武家名・貴族名(程度による) / 及び、武官の階級 / 扇子・羽子板・花札・百人一首・紙飛行機などのアイテム使用方法の模倣の一切を禁じております。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

X @kigenzen1874

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
ブログ内検索
QRコード
フリーエリア
〈資格履歴〉

2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
→漢方コーディネーター 合格
→薬膳調整師 合格

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
〈資格証明バナー〉

宝石鑑定アドバイザー資格認定試験資格取得証明
鉱石セラピスト資格資格保持証明
茶道アドバイザー資格認定試験資格取得証明
お点前インストラクター資格資格認定証
着物マイスター®資格認定試験資格取得証明
着付け方インストラクター資格資格認定証
サイキックアドバイザー®資格資格証明
サイキックヒーラー資格資格保持証明
アンガーカウンセラー®資格資格保持証明
アンガーコントロール士資格資格認定証
漢方コーディネーター®資格認定試験資格保持証明
薬膳調整師®資格認定試験資格保持証明
[32] [33] [34] [35] [36] [37] [38] [39] [40] [41] [42] 
純愛偏差値 未来編 一人称版 122話

《ヨルク》

「いきなり何するんですか!」
突然ミネスさんに引っぱたかれたナミネはミネスさんを突き飛ばした。がナルホさんが受け止めた。
「ナミネ、ミネスも悪気があって言ったわけじゃないんだし、ここで争いは止めようか」
けれど、ナミネはかなり怒っている。
私はナミネがラハルさんやズームさんにチヤホヤされていて思わず突っかかってしまった。ただでさえ褌のことでナミネの機嫌を損ねているのに。
「私帰ります!」
私は咄嗟にナミネの腕を掴んだ。
「ナミネ、ごめん」
言葉に詰まった。というか言葉が出てこない。
「もういいです!ヨルクさんはそういうふうに私を見て嘲笑っていたのですね!婚約破棄です!」
どうして上手くいかないのだろう。せっかくナミネの恋愛感情を取り戻したのに。諍いばかりで仲睦まじい見知らぬカップルが羨ましくなることさえある。
「ナミネ、どうしたらいい?」
もうナミネを失いたくない。褌は履けないけど失いたくない。
「私、色々いやになりました。元々あったこと殆どなかったことにして、みんなはそれでいいかもしれませんが、私は複雑な気持ちです」
歴史を変える。それはとてつもなく気力がいる。
「ナミネって本当ワガママ。私は何でも持ってるのに駄々こねる女は嫌い」
ミネスさんも折れない。
「ミネス!ナミネさんは何もしてないだろ!」
ズームさんは当然ナミネの肩を持つ。
「お兄ちゃんには私の気持ちなんて一生分からない!」
どれだけ想っても振り向いてもらえない。私もいやってほど経験した。けれど、私とミネスさんの場合は色々違う。
その時、ナミネは扇子でミネスさんを吹き飛ばした。そして逃げようとしたところをズルエヌさんが掴まえた。
「ナミネからチラシ配りに来たんだから、ちゃんと配ろうね」
ナミネはズルエヌさんに抱き着いた。何だか複雑な気持ちだ。私はいつも頼りにされない。
「とりあえずミネスは無事だよ。ナミネ、辛いのはみんな同じだしミネスだけ責めるのはやめようか」
ナルホさんも咄嗟に動ける。
「どうして私ばかりが色々言われなきゃいけないんですか!」
ナミネは気が強い。気に入らないことがあれば納得いくまで追求し続ける。
「お子ちゃまミネス。アンタが悪い」
落ち武者さんはミネスさんに扇子を突き付けた。
「僕も先に手を出したミネスが悪いと思うよ」
ラハルさんもナミネの味方についた。
「ふーん、男たぶらかすってこういうことなんだ。ハシタナイと私は思う」
ミネスさんも折れない。落ち武者さんは扇子をミネスさんの肩に乗せた。
「痛い!」
伝統の扇子は少し触れただけで痛みが走る。
「ちょっとのことで痛いように、アンタから叩かれた強気なナミネも痛いんだよ!」
二人とも心身共に痛んだだろう。けれど、私は何も出来なかった。
「酷いね。みんなして私をイジメる。二人の問題なのにナミネ側に付かれて私は不利になる」
それ以上は何も言わない。
「不利?誰が誰の味方しようが僕の勝手だと思うけど?」
ミネスさんは黙っている。そして、地面に手を当てた。何が起きたのだろう。
「セルファ。君の負けだよ」
ミネスさんは涙を零しながら微笑んだ。
「セレナール先輩がいない!マモルさんも!」
ラルクは完全に慌てている。
「え、少し前までいたよね。てか、マモルさん帰ってなかったんだ」
ナミネはズルエヌさんから離れキョロキョロしはじめた。これって不味い状況なのでは。万が一のことがあればナミネがテナロスさんにお願いしたことが一人分消えてしまう。
「おい、お子ちゃまミネス。アンタ何した!」
落ち武者さんは羽子板をミネスさんに突き付けた。
「今頃ことがはじまってるんじゃない?」
そんな……殆どのことが元に戻ったのに、今ここでセレナールさんが黒鈴酷華にあえば、なんのためにナミネがテナロスさんにお願いしたのか分からないし、グループは諍いとなる。
その時、ナミネがキクスケさんを呼び出した。
「ミネスさんを40代の80キロの非モテに黒鈴酷華させてください」
え……。
「待って!元に戻す!」
ミネスさんは何かを携帯に打ち込みはじめた。
「いいえ、私の意思は変わりません。ミネスさんが私に攻撃したからです!攻撃は倍返しです!」
久しぶりにナミネの目の色が紫色になっている。
「お願い!許して!私が悪かった!」
だったらどうしてナミネを叩いたのだろう。
ナミネはミネスさんの服を引き裂いた。
「だったら早く元に戻してください!」
ナミネ、かなり怒ってる。
「分かった……」
ミネスさんは泣きながら携帯に打ち込んだ。そして数分後。セレナールさんがチラシを配っていた。
「セレナール先輩、大丈夫ですか?」
ラルクはセレナールさんに駆け寄った。
「ずっとチラシ配ってたわよ」
ミネスさんは、一度時間を進めてナミネに言われ時間を戻したということなのだろうか。ミネスさんにしても落ち武者さんにしても、そういう能力があるから少し羨ましい。けれど、悪用すればとんでもないことになりかねない。
ナルホさんなミネスさんに法被を着せた。
「これでいい?私は帰る。祭りにも行かないし行く気にもなれない。イジメられてトラウマになりそう」
ミネスさんはよろけながら立ち上がった。そこをナミネがミネスさんのお腹を蹴った。ミネスさんはその場に倒れた。
「痛い!」
「ワガママ言わないでください!先にイジメたのはどっちですか!」
セレナールさんは無事に戻った。けれど、ナミネは納得していない。
「ナミネ、やめなさい!」
「ナミネ、やめようか」
ナナミさんとナルホさんなナミネに扇子を突き付けた。
「私はミネスのほうがワガママだと思うわ。私はミネスみたいに嫉妬で人を傷付けたことはない。お嬢様だからって何でも思い通りにいくと甘やかされて育てられてきたのね」
リリカお姉様はどこまでもナミネの肩を持つ。不自然なほどに。
「痛い……痛い……」
ミネスさんはお腹を押さえ蹲った。
シャム軍医が駆け付けミネスさんを診た。
「軽い内出血起こしているから僕はミネスを月城総合病院に連れて行くよ」
ナミネはやはり手加減しなかったか。
「車手配するわ。一緒に来る人は来て」
ナルホさんとナナミさんしか着いていく様子はない。ズルエヌさんとズームさんは着いて行かなくて良いのだろうか。
セナ王女は携帯で別荘の運転手を呼び出した。
「ヒロイン気取りで私を悪者扱いですか!カンザシさんがどうなってもいいのですね!」
ナミネ……もうやめて。私が悪かった。何度も言おうとしてるのに言葉に出ない。
「ごめん……私が悪かった……カンザシに手を出さないで……」
何だかミネスさんがかわいそうだ。そして、カラルリさんも車が来るなり乗り込んだ。私はナミネを抱き締めた。
「ごめん、ナミネ!私が悪かった!」
褌は着れないけれど、これ以上ナミネに傷ついて欲しくない。
「もういいです!どうせ全部私が悪いです!私も祭りには行きません!」
ナミネに振り払われてしまった。
「祭りに行く云々はともかくとして、チラシを配るって決めた以上は全部配ってくれるかな?」
ズルエヌさんはミネスさんが心配ではないのだろうか。
「ナミネ、何も祭りは今日だけじゃないんだし、行ける時に行けばいい。とにかくチラシを配り終えよう」
ラルクはすんなりナミネに近付ける。同い歳だから?それともついこないだまでナミネが好きだった人だから?正直ラルクばかりに懐かれるのは胸が痛む。
「そうだね。もう割り切るよ」
ナミネはラルクの横でチラシを配りはじめた。ナミネはナノハナ家の法被がよく似合っている。小さい頃からそうだった。いつも商店街の人から『可愛いね』と褒められていた。
今のナミネの心境がどのようなものであるのか、外側からでは分からない。

私たちは半時間ほどチラシを配り続けた。
今の時期がちょうどいい気がする。梅雨はあるものの、商店街の上はアーケードが付いていて雨の日でもチラシ配りは出来る。紅葉町は何だかんだでそこまで田舎ではないのかもしれない。都会ではないが。
「じゃあ、一旦帰って浴衣着たい人は着て祭り行く人はまとまって行くよ。明後日からは雨が降るから今日か明日行った方がいいかもね」
え、ミネスさんのことはどうするのだろう。チラシを配り終えた私たちはナノハナ家へ歩きはじめた。
「あの、月城総合病院行かなくてもいいのでしょうか?」
やっぱり気になってしまう。拗れたとはいえ、ミネスさんもメンバーの一人だし。
「ミネスは大丈夫だよ。あの子はずっとカンザシに片想いし続けていたから、あの子なりにいつも気を張りつめてるんだよね。ナミネと拗れた今は会わないほうがいいと僕は思うよ」
そうか。一見めちゃくちゃ楽しそうに見える人でも、その人の心の中までは分からない。ミネスさんは私たちの知らないところで、たくさん苦しんできたんだ。
「そうですよね……」
私はまだまだ甘い。好きな女子(おなご)一人満足させられない。そんな自分に嫌気もさす。
「ラルク、夕飯は屋台で買おうよ」
結局何だかんだでナミネは祭りに行くのか。ナミネと拗れたままは胸が痛む。
「そうだな。ナミネは夜食も買っておけよ」
私は二人の会話の中には入れない。褌一つでこうなるものなのだろうか。私は無言のまま歩いた。

ナノハナ家では第四居間でミネルナさんとカンザシさんが言い争っている。そもそも二人にしていて大丈夫だったのだろうか。
「あの、今から祭りに行く準備はじめますが、お二人ともどうなさいますか?」
チラシ配り来なかったってことは興味がないのだろうか。
「行くわ」
「僕も行きます」
って、行くのか。
『こちらセナ。ミネスは無事よ。今からそっちに行って私たちも祭りに行くわ』
え、いつから無線イヤホン繋がっていたのだろう。
『了解。18時にここ出るから』
ズルエヌさん落ち着いてるなあ。それにしてもミネスさんとナミネが同じ場にいても大丈夫だろうか。
『セナさん、浴衣着せてあげる』
なんだか、余計な会話も入っている。
『カラルリ、私たちもう別れてるの。他の人に着せてもらうわ』
一年前の今頃はカラルリさんがセナ王女の浴衣を着せていたっけ。けれど、今年は違う。たった一年でここまで変わるものなのか。
「ナミネ、今年はどの浴衣にする?」
案の定、返事は返って来ない。
『こちらナヤセス。ミネス、ナミネを傷付けるのはやめてもらえるかな?ナミネはまだ不安定なんだ。叩かれたりしたら今後も今みたいになると思う』
ナヤセスさんは、どこまでもナミネ想いだ。
『本当にごめん!カンザシだけは傷付けないで!』
こういう言葉はナミネを余計に苛立たせる。
『ミネス!余計なこと言うな!どうしてナミネさん傷付けるんだ!』
案の定ナミネはカンザシさんに扇子を突き付けている。
『疲れた。もう好きにしたらいいと思う。私は知らない』
ミネスさんがカンザシさんを見捨てた?
「ナミネ、放っておけ。一方的に突っかかるヤツなんか何言っても無駄だろ」
ラルクはそうやっていつもナミネをなだめる。
「そうだね。頭悪い人と関わるだけ無駄だね」
ナミネはわざとカンザシさんの足を引っ掛け転ばせて笑った。
「とりあえず、マモルは出てってくれる?後の人は浴衣着せられる人は一人で着れない人に着せて」
ズルエヌさんはクールというか無駄がないというか、家族を心配しないのだろうか。
「そんな、僕はセレナールさんと確かにFメモリイをしたのに、なかったことになってて、痴漢で懲役。こんなのあんまりっす」
世の中には色んな人がいる。言葉では通じない人も。
そして、セレナールさんはマモルさんを引っぱたいた。
「最低ね。なかったことにはなったけど私は確かにあなたに黒鈴酷華された。どれだけ絶望したことか」
何だかどこにいても癒しがない。ナミネには口も聞いてもらえないし。そして、ズルエヌさんは武官を呼んでズルエヌさんを無理矢理追い出した。正直、ニンジャ妖精のリーダーに戻れただけでもマシだと思うが。
その時、セナ王女たちが戻って来た。
「ミネス、ちゃんとナミネさんに謝って欲しい」
カンザシさんは頭から血を流していた。
「カンザシ、大丈夫!?ナミネ、本当にごめん!私が悪かった!お願いだから許して!」
ナミネはミネスさんを無視した。
「ラルク、着替えようよ」
ナミネは一度気分を害すると、なかなか口を聞いてくれない。
「そうだな。みんなの着付けもしないといけないし」
ラルクにだけは余程のことがない限り、機嫌を損ねない。
「ラルク、私の着付けて!」
セナ王女はカラルリさんから逃げるようにラルクの隣に立った。
「セナさん、悪いけど、ラルクは私の着付けするから」
セレナールさんはラルクの腕を組んだ。
「僕があみだくじで決めるから、その通りにしてくれる?あまりごちゃごちゃ言ってると祭り行けなくなるよ?」
ズルエヌさんはとことん仕切る。落ち武者さんが仕切っていた頃が少し懐かしい。
「カンザシ、さっきはごめん。私は一生カンザシを支える」
ミネスさんはカンザシさんを抱き締めた。
「見ているだけで鬱陶しいわ。二人は祭り来なくていいから」
リリカお姉様は二人を蔑んだ。
「ねえ、セレナール。あなたラルクから想われてもないのに見苦しいわよ」
セナ王女も気が強い。けれど、着付けくらい誰が誰のしてもいいのではと思うが。
「あみだくじって言ったよね。自己責任でモタモタする人は置いてくよ」
ズルエヌさんもズルエヌさんでハッキリ物を言うタイプだ。
「ふふっ、セナさん苛立ってるわね」
何故ここで余計に人がいやな気持ちになる言葉をかけるのだろう。
「シャム軍医、祭り楽しみましょうね」
二人はずっと昔から仲が悪かった。ナミネが見たり誰かから聞いたことだけれど。もう犬猿の仲という運命は変えられないのかもしれない。
「セナさん、私がセナさんの着付けみたいだから客間行こうか」
カラルリさんがセナ王女の着付け係……。めちゃくちゃ運が悪すぎる。そして、セレナールさんはクスクス笑っている。
「私、浴衣着ないわ」
セナ王女は機嫌損ねてしまった。
「あ、セナ王女。私が着付けます」
せっかくの祭りなのに、このままではセナ王女がかわいそうだ。
「ヨルク。私とセナさんに口挟まないでくれる?」
口を挟むも何も私はセナ王女が祭りを楽しめるよう名乗り出たのだけど。
「ヨルク、放っておきなさい。あみだくじの意味ないでしょ」
リリカお姉様も空気を読むより自分の感情を優先させる。
「じゃあ、セナ王女だけはヨルクが着付けてくれるかな?」
流石のズルエヌさんも、ここはあみだくじの結果を変えた。
「分かりました」
私はセナ王女の着付けを行うことになった。

セナ王女とズームさんを客間に案内して私はセナ王女から着付けをはじめた。
「セナ王女はピンクが似合いますね」
ピンクの牡丹の着物。ナミネはずっと菜の花の着物を着続けているから菜の花以外の着物を間近で見るのは何気に新鮮だ。
「そうかしら。青い風鈴のも気になったけど」
確かに似合うかもしれない。けれど、私から見てセナ王女はピンクのほうが似合っている気がする。
「そうかもしれませんね。まだ他にも祭りはありますから」
水色の帯を巻いて完成。そして、私はズームさんを着付けはじめた。
「ねえ、カナエとアルフォンスって運命じゃなかったのかしら」
唐突の質問に私はどう答えていいか分からなかった。しかし、その件に関してはカナエさんからも疑問めいたことを聞いている。
「遠い昔は運命のように感じるのですが……」
分からない。少なくとも私はナミネ以外の女子(おなご)と結婚しても女性として愛することは出来なかった。
「うーん、でもカランと愛し合っていたカナエのほうがイキイキしていたように感じるのよね」
それはそうかもしれない。あの二人ならベストカップルだっただろう。
「そうですね。お似合いだったでしょう」
ズームさんの着付けが終わった頃、携帯にメールの着信音が鳴った。私は自分の着付けの前に携帯を開いた。キクスケさんからだった。
『現世ではミドリさんが複数人から黒鈴酷華を受けましたが、本来はナミネさんが受けるべきことでした。ずっと受けてきたのはナミネさんでした。それを見るに見兼ねた誰かがミドリさんに変えたと思われます』
そんな……ナミネが、黒鈴酷華の対象になっていたのか。
「ヨルク、来てちょうだい」
ナノハさん。私は客間を出てナノハさんに着いて行った。
「ナミネには黙っててほしいの」
え、どうしてメールの内容を知っているのだろう。
「はい、ナミネには黙ってます」
いつの時代のことだろう。ナミネがかわいそうすぎる。
「ミドリお姉様が嫌いなわけでもない。憎いわけでもない。けれどナミネをずっと可愛がってきた私としては見ていられなかった。何度転生しても同じ結果になる。私はダメな姉。それでもナミネに幸せになってほしかった」
ナミネはミドリさんと同じ苦しみを味わっていたのか。けれど、ミドリさんになればなったでナミネは別の苦しみを味わった。運命はどうしてこうも残酷なのだろう。
「あの、いつの時代のことでしょうか?」
私は全然知らない。記憶にないってことは相当昔なのだろう。
「村の名前も分からないくらいずっとずっと昔のことよ。ナミネは今のミドリお姉様のように15歳で黒鈴酷華にあった。けれどミドリお姉様と違ってナミネは毎回生きていた。そして、穢されたからとヨルクとの縁談を破談にして赤線町で暮らしていたの」
そんな……あんまりすぎる。ナミネは強くなかったのだろうか。
「あの、ナミネはその時もナノハナ家に生まれたんですよね?強くはなかったのでしょうか?」
ナミネがそこやらのゴロツキに負けるとは思えない。
「強かったわ。けれど、何者かがナミネの力量を奪ったの」
そんなことって……。いったい誰がナミネの力を奪ったのだろう。
「そうでしたか……」
ダメだ。頭が真っ白になる。
「ナミネの嘘を信じてナミネにフラれたと信じ込んでナミネを諦めるヨルクもかわいそうで仕方なかった」
そうだったのか。ナミネは本当のことを話せず私から去っていったのか。
「カンザシですよ。ナミネさんを傷付けたのは」

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

あとがき。

また新たな真実を知ることになりましたね。
どうしてここまで残酷なことが続くのでしょう。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。

現在、小説に関する模倣(程度による)の一切を禁じております。
詳しくはこちらを参照→ 禁止事項

無断転載もご遠慮ください。
PR


Happybirthday !!!
ヨルク(♡´▽`♡)

一生懸命作ったものの、やっぱり私には才能ないみたい。ごめんね、上手く出来なくて。
でも愛情込めて作りました。

ヨルクにはずっと幸せでいてほしいです。
何世紀経ってもずっと。

もしかしたら、転生で過去に遡ることもあるかもしれません。
また紅葉橋でナミネを持ち続けてしまうかもしれません。

それでもヨルクな乗り越えられる。
信じられる。
自分で未来を切り開ける。

どうか、ナミネとこの先何百年、何千年、何万年。
幸せになってください。

ずっとヨルクのこと大好きですし、応援しています。

2024.07.07

オリジナル小説 純愛偏差値 誕生日
純愛偏差値 未来編 一人称版 121話

《ナミネ》

「あの、セレナールさんをリークしたのラァナさんのようです」
私は突然来たヨナラタスさんからのメールを落ち武者さんに見せた。
「そっか。でも僕は恨めない」
だろうね。他の人だったら何がなんでも相手の人生壊していただろうに、ラァナさんに対してはそうしない。落ち武者さんも落ち武者さんで見かけによらず恋多き男だ。
「そうですよね……」
現世でラァナさんは、恐らくタルリヤさんと一緒にはならない。テナロスさんにお願いしたことは全てエミリさんの犠牲と引き換えだったが、やはりそのうちにエミリさんも気付くだろうか。でも、皇太子様は古代の時と同じ、エミリさんのことは特別扱いするような気がする。
あれだけ色々あったから、それがなくなって正直気持ちが着いていかない。
それに、セレナールさんをリークしたのがラァナさんだったなんて、とてもじゃないけど信じられない。されど、人というのは内側に怒りを込めている生き物だ。実のところ外側からじゃ何も分からない。
「じゃ、第三居間行く」
本音では落ち武者さんもショックな部分はあると思う。それでも、相手がラァナさんなら落ち武者さんは何が起きても恨まない。実の姉のように慕ってきた人なのだから。

第三居間では、既に朝ご飯が用意されていた。
武家はどこも朝からガッツリしている。私はいつものように一瞬でたいらげた。
「ナミネ、いつもよく噛んでって言ってるでしょ」
ヨルクさんはそう生きてきたかもしれないけれど、私は軍人や武官をしていたし、ゆっくりな朝など存在しなかった。
「あの、私ゆっくりな朝とかなかったんですよね。特に軍人時代は速く残さず食べなければなりませんでした」
いつ敵軍が来ても対応し切れるよう、妖精軍に与えられる時間は殆どなかった。
「うーん、そっか。でも、お腹壊さないでね」
そうは言われても多い量を一気にたいらげたらそうもいかない。それでも私は過去の時間は既に身体に取り込まれている。人は心より身体で覚えた方が習慣になって忘れにくい。どんな物ごとでもだ。
その時、テレビからニュースが流れた。
『これまで使って来たイジワル・イヤガラセというワードは、皇帝陛下の命令により黒鈴酷華と呼び方が変わることになりました』
物事の呼び方もどんどん変わってゆく。昔はそのまま表記されていたこともそれなりにあったのに。現代はそれが許されなくなっている。正直ややこしくて何がなんだか分からなくなってくる。
『続きまして。昨夜、桜木町のトンネルで複数の女子高生らしき人物が何者かに黒鈴酷華された模様です。一人の女子高生が交番に駆け込んだことで事件は判明しました。桜木町警察は全力で犯人の捜索をしています』
まさか……カンザシさんじゃないだろうか。私たちも夜中にテナロスさんにお願いはしたが、カンザシさんのことまでは含まれていない。カンザシさんか、或いはナヤレス殿か。どちらにしても私の実の兄だ。ナノハナ家にマスコミが押し寄せたりしたら武家としての信用問題に関わってくる。女子高生には申し訳ないけど、赤の他人が犯人であってほしい。
「ナヤレスだろうね?」
落ち武者さん、何か証拠でもあるのだろうか。
「あの現場でも見たんですか?」
想像だけでは断定出来ない。断定されても困る。
「さっきアンタの携帯鳴ったけど、ナヤレスからじゃないの?」
携帯?全く気付かなかった。私は携帯を開いた。確かにナヤレス殿からだ。全然連絡なかったのに、どうして今連絡を寄越してきたのだろう。
『ナミネ、助けてほしい。原石採取のバイトでもして、お金くれないかな?もう耐えきれない』
原石採取のバイトって。私たち、それをしてそれでもカラルリさんの転生ローン残ったままなのに。
『あの何があったんですか?』
やはり、ナヤレス殿なのだろうか。
『生活保護打ち切りになった。これでは生活出来ない』
打ち切り?一体どうしてそうなったのだろう。
『あの、昨夜どこにいましたか?』
『あの事件なら僕じゃない。とにかく助けてほしい』
ナヤレス殿ではなかった。落ち武者さんの読みが外れた瞬間だった。
「あ、ナヤレス殿ではないようです」
私は落ち武者さんにナヤレス殿とのやり取りを見せた。
「ふーん、僕はナヤレスを疑うけどね?生活保護なら月城総合病院で診断書でも書いてもらえば?」
そうか、診断書があれば受けられる。
『生活保護は月城総合病院で診断書書いてもらえばまた受けられると思います』
ハル院長次第だけども。
『分かった、行ってみる』
どうにか生活を繋ぐことが出来たらいいのだけれど。私は出来ればナヤレス殿関連のことには関与したくない。ナヤレス殿がセレナールさんに揺らいでタリさんとの仲も壊れてしまったのだから。面倒ごとはごめんだ。
「あの、皆さんごめんなさい。私、皆さんと仲良くしたいです」
とりあえず、リリカさんのことはアヤネさんが覚えている部分だけは消去してもらった。でも、リリカさんは許さないだろう。
「よく言うわ。あなた昨日なんて言ったの?赤線町が?」
やっぱり相当怒っている。リリカさんが誰にも言わずずっと隠し通してきたことだから、どこで調べたかは分からないけど、アヤネさんのやり方は卑怯だったと思う。
「えっと、すみません、覚えてません」
言い逃れだろうか。
「覚えてない?いいえ、覚えてるわ。私は確かに赤線町に送られた。でもそれは繁盛している老舗のイケメンお坊ちゃまと結婚するため。あの後、私は幸せに暮らしたわ。残念ね。人の不利な過去を引き出せなくて」
リリカさんは強い。昨日あれだけアヤネさんから罵倒されたのに強気な姿勢だ。
「私もリリカさんが客を取っていたとか嘘をつくの良くないと思うんですよね。証拠あるんですか?」
証拠はもう消えている。嘘をついても無駄だ。
「すみません、カッとなって言ってしまいました」
リリカさんはアヤネさんに味噌汁をかけた。
「あら、ごめんなさい。見えなかったの」
アヤネさんは爵位ある家柄だからメンバーを見下してきた。だから、孤立した。
「居間を汚すリリカもリリカだけど、いくら貴族だからって武家を下に見ないでほしいわね」
今はカナナさんがキクリ家を仕切っている。聞くところによるとカナミさんは夜通し勉強しているらしい。
「本当にすみません」
アヤネさんも自分に合うグループに入ったらいいのに。
「じゃ、ナノハナ家行く」
セナ王女たちは既に着いているみたいだけど、どうなるのだろう。少し気が重たい。

ナノハナ家、第四居間にはセナ王女、シャム軍医、ミネスさん、カンザシさん、ユメさん、委員長、ミツメさん、マモルさん、ミネルナさんがいた。
「ミネルナさん、Fメモってどういうことですか?僕を捨てるんですか?」
え、いきなり何の話だろう。そもそも、ミネルナさんがロォハさんと交際した時点でいくら幼少期両想いだったとしても失恋なのでは。
「お姉ちゃん、余計なこと書かないで!カンザシは不安定なんだから!」
ミネスさんのカンザシさんへの執着は時折怖くなる。
「ミネルナ。アンタ本当にロォハとしたのかよ?」
落ち武者さんは何故疑うのだろう。
「それは……」
え、嘘だったの?どうして……。
「フェアリーングかけるぞ!」
「してないわ……そういう雰囲気にはなったけど最後まではしてない」
どうして嘘なんか書いたのだろう。
「口付けはしたんですか?桃花触られたんですか?中花触られたんですか?」
何かカンザシさんが女々しく見える。それに、このやり取りちょっと重たい。せっかくみんなゼロに戻ったのに。
「ラルク、来て」
私はラルクの手を取って部屋に向かった。この時、落ち武者さんが私に小型盗聴器を取り付けていたことを私は全く知らなかった。そして、落ち武者さん、ヨルクさん、ナルホお兄様が私とラルクの会話を盗み聞きしていることも。

この部屋もかなり久々だ。
「どうしたんだよ、ナミネ」
私は使用人にお菓子とジュースを持ってこさせた。
「ラルク、セレナールさんとはやり直せそう?」
なんだかんだで気になってしまう。あれだけ好きになった人なのにここでラルクが冷めてしまったらセレナールさんは一人になってしまう。
「普通に好きだけど。綺麗だし、はじめて見た時の恋愛感情は確かにある。けど」
け、けど!?
「どうしたの?」
どうして区切ったのだろう。
「セレナール先輩は僕の一番ではないと思う。どこかに一番愛する人がいる気がする」
ダメだ。何か話についていけない。
「そっか。でも、前みたいに憎んでなくて良かった。ちゃんとセレナールさんに恋愛感情あって良かったよ。一番の人のことはよく分からないけど、セレナールさんへの気持ちが恋愛感情なら結婚してもいいと思う。勿論どの道選んでも私はラルクを応援するけど」
そうだ。ラルクの選んだ道を応援しよう。色々あったのだし、当時の感情をセレナールさんに抱けないのも無理もないと思う。
「そうだな。本当は一番の人と一緒になりたいけど、別にセレナール先輩のこと嫌いではないし、寧ろはじめて会った時の感情を抱いてる。でも、煮えきらなくてちょっと辛いな」
煮え切らない……か。ラルクの言う一番てなんだろう。私はヨルクさんが他の女と結婚した時も一番より目の前の恋人をちゃんと見てたと思う。ラハルさんとかズームさんとか。交際時は確かに幸せだった。満たされていた。
「ねえ、ラルクの言う一番って何?」
ラルクの恋愛観がちょっと分からない。
「簡単に言えばセレナール先輩より愛おしくて燃える恋愛」
全然簡単じゃない。そもそも、それ誰のことなのだろう。もしかして、シャナ?でも、氷河期町にはいなかった。それに遠い昔、私の軍人時代シャナはナヤセス殿と猛恋愛していたはず。
「うーん、その相手ってシャナ?」
他に思い浮かばない。
「そうかもな」
何かハッキリしない返事だな。
「そっか。現世でもどこかにいるよ!私たちと同い歳だろうし、また仲良くなれるよ」
そう、絶対にどこかにいる。信じたい。あの時間をまたみんなで過ごしたい。
「そうだな。ナミネ、愛してる」
今更だな。
「私もだよ、ラルク!ラルクをこの世で一番愛している!」
私たちはいくら精神年齢がとんでもないものでも、まだ中学生だ。私とラルクの愛してるの意味が具体的にどういうものなのか多分私もラルクも今は分からないと思う。
「愛で溢れてるね?」
え、落ち武者さん!?ヨルクさんとナルホお兄様も……。どこから聞かれていたのだろう。
「あ、いや、みんな仲間ですし」
遠い遠い昔からのご縁。
「ナミネ、この部屋掃除して衣替えするから第四居間に行っておいで」
その第四居間が荒れていたからここに避難したのに。
「あ、でも、第四居間は居づらいです」
ずっとカラルリさんのために、みんなで頑張っていたから休みたい。
「そっか……」
それ以上は言わない。
「あ、そう言えば、紅葉神社で開かれる紫陽花祭りのチラシ配り用のヨルクさんが着る法被と褌用意しました。今日の夕方みんなで配りに行きませんか?」
毎年、どうしてかヨルクさんのサイズのものをずっと用意し続けていた。ヨルクさんが私に渡せなかったマフラーを毎年編んでいたように。
「私はそのようなハシタナイ格好などしない。普通に配る」
どうしてヨルクさんて時折固くなるのだろう。私、ヨルクさんのこと未だに分かんないや。
「でも私、毎年ヨルクさんのサイズを特注していたんです。いつかヨルクさんが着る時のために!ヨルクさんが私に渡せないマフラーを毎年編んでくれていたように、私もヨルクさんの法被と褌用意していたんです!だから着てください!私たちの記念のためにも!」
着てほしい!私のヨルクさんへの愛情を受け取ってほしい!
「法被だけもらっておく」
法被だけ?どうして?
「あの、褌ももらってください!祭りと言えば法被と褌です!ヨルクさんにバッチリキメてほしいです!」
やっぱり、古代からの風習は現代も受け継いでほしい。
「ねえ、褌なんてほぼ裸でしょ?そんな格好して配れって言うの?何故私を辱める」
えっ……私はヨルクさんのために……。
「私はヨルクさんに着て欲しくて……!」
どうして……どうして……冷たい態度を取るのだろう。
「私は褌など着ない。そのような恥ずべき格好をするくらいなら死んだほうがマシだ」
何それ。信じられない。信じられないよ!私は無意識にポタポタ涙が零れていた。
「もういいです!行くよ、ラルク」
私はラルクの手を引っぱって部屋を出た。
「アンタさ、何も褌はないだろ」
落ち武者さん、第四居間に戻るのだろうか。
「落ち武者さんが知らないだけです。ミナクさんもカラルリさんもナルホお兄様もラルクも小さい頃に褌儀式は済ませています。ヨルクさんは逃げたんです!」
そう。ヨルクさんはこの町の伝統をいやだいやだと泣きわめいて誰も手がつけられなく説得も出来ずにここまで来た。ヨルクさんだけ伝統儀式は行っていないのだ。
「そうは言っても子供の頃と今では違うだろ。顔だけヨルクはプライド高いから着れないんだよ。チラシ配りはいいけど、一目惚れカラルリの転生ローンの問題もあるし、無断でナノハナ家出るのはなしだからね?」
プライドが高い。でも私は心を込めて用意した。
「分かってます。居場所がないだけです」
第四居間はカンザシさんが荒らして安らげない。
「客間に入ってたらいいだろ?」
そうは言っても何だか落ち着かない。ヨルクさんに私の愛情を否定されて苛立たしく悲しくなっている。
「ナミネ、今からチラシ配りしよう」
そうか、別に夕方からでなくてもいいや。
「そうだね、ラルク」
私とラルクは使用人から法被を受け取り商店街へ向かった。

あれ、カナエさん?
「あ、カナエさん配ってたんですね」
だったら私も一緒に行けば良かった。ヨルクさんの相手なんかしてないで。
「男尽くしカナエ、平凡アルフォンスと上手くいってないのか?」
落ち武者さん、やっぱり着いてきてる。ナノハナ家の法被。落ち武者さんは似合わない。
「別にカナエはチラシ配りをしたかっただけです」
上手くいってなかったんだ。ずっと昔からだろうか。それに私からしてみれば、あんなの恋愛詐欺だ。
「でも、恋愛なんて大抵が上手くいかないのは当然というか、それなりにありふれていると僕は思うけどな」
さっきのラルクの話、イマイチ理解出来てない。セレナールさんのこと、出会った当初の時のような感情のままなら、それは幸せな恋なのではないだろうか。それより一番って何?
「あの、カナエさんはどうしたいんですか?」
私はヨルクさんしかいないけど、その中でラハルさんやズームさんとも普通に交際出来ていた。でも、私が心の底から癒されていたのはヨルクさんだと思う。
「カナエはカラン王子様を選ぶべきでした」
えっ、でもそれって好きとかじゃなく無難に生きたいっていう風に聞こえるけど。
「あの、カナエさんはカラン王子のこと好きなんですか?」
恋愛感情あるのだろうか。
「遠い昔、一度だけそういう時もありました。今は友達として好きです。カナエはカラン王子様と幸せになりたいです」
うーん、そういう結婚概念もなくはないか。古い映画のように、結婚と恋愛は違うって割り切るとそれがその人の中では正しいになってしまうし。要はカナエさんは猛恋愛より平凡な交際を望んでいるということなのか。
「でも、カランは強気なナミネ好きみたいだし無理だと思うけど?」
落ち武者さんって分かんない。ちゃんと恋愛経験はしてるのにエルナさんとは復縁してないし、人の恋愛はとやかく言うし。
「カナエも分かっています。けれど、カナエだって愛されたいのです」
なるほど。カナエさんは愛することより愛されることを今は求めているのか。昔のカナエさんは好きになった人にはとことん尽くして尽くして尽くしまくる人だった。けれど、カナエさんも一人の女。男から愛されたいのは普通な感情だ。
「そうですよね。やっぱり一方的に愛すことより、相手から全力で愛されてみたいですよね」
そこは私も共感する。
「カナエはナミネが羨ましいです」
私?さっき思いっきりヨルクさんから褌突き返されたけど。
その時、みんながこちらへ向かって来た。
「もー、チラシ配るなら声かけてよ」
と言われても第四居間は行くに行けなかったし。
「シャム軍医……今彼女がいて、昔の縁(えにし)と出会ってしまったら……僕は……」
え、ここでも恋バナ?
ナヤセス殿は遠い昔、シャナと猛恋愛していた。もし、現世でもシャナが見つかればナヤセス殿は……多分どちらも選べない。傷付けたくないから。
「んー、シャナは生まれてきているかどうかも分からないんだよね。もし、シャナに会ったとしても、その時に決めればいいと思うよ。自分に嘘ついた恋愛なんて続かないから」
そうだよね。私は、小さい好きから大きな好きまで恋愛感情としてカウントしているけど、ナヤセス殿は一途だからそうもいかないだろう。
「そうですよね。存在しているかも分からない。そして僕は今現在は今の彼女を愛している。運命とさえ感じました。そういうものですよね」
そういうものだ。ナヤセス殿とロナさんはお似合いだ。別れて欲しくはないけれど、シャナが生きているかどうかも気になる。
「セナさん、白梅咲かせてほしい。二番でも構わないからセナさんの白梅がほしい」
あれだけFメモリイしておいて今更って思う。
「やめて。もうカラルリとは終わった関係。私は白咲さえしてないことになった。カラルリと友達以上になれないわ」
何だか切ない。去年は運命の人と信じて仲睦まじい恋人同士だったのに。
「私は転生ローンがまだ残っている。それなのに好きな女に逃げられたら私は生きてゆけない。絶鈴華したらセナさん後ろ指さされる人生だよ」
男も女も怖い。いざ自分が不利な立場になれば相手の幸せを奪おうとする。
「転生ローン返済は手伝うわ。でもシャム軍医に捧げるものをカラルリに捧げられない!」
恋愛って難しい。セナ王女の心がここまで変わるとは一年前は予測さえ出来なかった。
「あ、ラハルさんはもし、この人と出会っていたら一目惚れしますか?」
私は唐突にシャナの写真を見せた。いつもラハルさん私が綺麗だから告白したって言ってたから私と同い歳のシャナなら好きになるのではと何となく思ってしまった。
「しないと思う。確かに綺麗な子だとは思うけど、僕がナミネを好きなのは一緒にいて楽しいから。僕を癒してくれるのは常にナミネだったからだよ」
えっ、私といて楽しい……。ラハルさんはそう感じていたんだ。
「僕もです。ナミネさんは人を縛り付けたりしませんし、ナミネさんの笑顔が僕の生き甲斐でした」
ズームさんも。私ってそんなに楽しそうにしていたのだろうか。
「私ってそんなに楽しそうに見えますか?」
あれ、ヨルクさんいつからいたのだろう。今の話聞かれていたかな。
「ナミネってすぐそうやって男引っかけるよね。知らない土地行っても男掴まるんじゃない?」
どうして……どうしてそんなこと言うのだろう。私はヨルクさんのこと好きだから縁談を決めたのに。
「私はヨルクの言ってること分かる。ナミネは常に恵まれすぎている。でも、ハメを外したら男は逃げてゆく。ラハルもお兄ちゃんもナミネを忘れられずにいる。それだけでナミネは狡い」
そんな、私は私で一人になりながらもズームさんやラハルさんと知り合って交際してきたにすぎない。どうして狡いになるのだろう。ミネスさんは私のこと嫌いなのだろうか。
「あの、ミネスさん。私はその時その時の人生を歩んできました。それを狡いって酷くないですか?ミネスさんこそ何でも手に入るじゃないですか!」
その瞬間私はミネスさんに引っぱたかれた。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

あとがき。

恋が切なすぎる回でした。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。

現在、小説に関する模倣(程度による)の一切を禁じております。
詳しくはこちらを参照→ 禁止事項

無断転載もご遠慮ください。
純愛偏差値 未来編 一人称版 120話

《ヨルク》

「どうして!どうしてなのよ!いったい誰がこんなこと!!被害者は私なのに!」
セレナールさんはその場に崩れ落ちた。
「いったい誰が姉さんハメたんだ?この場で確かめてもいいんだぜ?」
落ち武者さんは言うものの誰一人慌てた様子はない。メンバーの中にはいないのか?
「ふふっ、少しいい気味ですわ。間違って一方的に相手をイジワル扱い。もう未来はありませんわね」
ナミネがきっかけでアヤネさんはまた元に戻ってしまった。セレナールさんはアヤネさんを引っぱたいて、アヤネさんを押し倒し殴り付けた。
「セレナール、やめようか」
ズルエヌさんは二人を引き離した。
「え、ズルエヌさん……」
驚くのも無理ないか。カンザシさんのいない間に戻って来たわけだから。
「復活したけど?」
生前もこうだったのだろうか。
「今、カナコお姉様から連絡が来たけどカンザシを泊めることは出来ないって」
どの家庭でもそうなるだろう。ましてやイジワル犯など……。
「セナ、私とカンザシも泊めてくれない?」
ミネスさんはどうしてここまでカンザシさんを庇うのだろう。被疑者をかくまえば犯人蔵匿罪が成立してしまう。けれど、戻って来た元犯人を庇ったところで何の罪にも問われない。それでも、セレナールさんとカンザシさんの今後の同行は不可能だろう。
「構わないけど。もうすぐ迎えが来るからその車に乗って」
キクリ家がダメなら別荘に移動するわけか。正直私はイヤガラセの罪に問われた人間はメンバーから外れてもらいたい。そんな人間にナミネをストーカーされたくない。
「ミネスは頑固だから何言っても通用しないようだけど、自分の行動はちゃんと責任持つんだよ」
ズルエヌさんは案外放任主義なのか。
「分かってる。でも、私はカンザシを見捨てられない」
カンザシさんからしたら利用しているだけなのに。なんだか、ミネスさんが憐れに感じてしまう。カナエさん同様、ミネスさんなら男なんて選びたい放題だろうに。よりによって犯罪者に恋愛感情を抱いて人生まで助けるなど、私だったら考えられない。
「迎えが来たわ。行くわよ」
今、セナ王女もここにはいられない。このメンバーどうなってしまうのだろう。
そして、ミネスさんとカンザシさんはセナ王女とシャム軍医に着いて行った。って、え、カラルリさんも追いかけて行った!?流石に別荘までは行かないよな。
「一目惚れカラルリは無理矢理車に乗り込むだろうね?」
え、それって余計に拗れるだけでは。
「落ち武者さん、誰かが連れ戻したほうが……」
と言っても夜も更けてきた。
「どの道、明日はナノハナ家だろ!とっとと寝るぞ!」
やむを得ない。カラルリさんのことは別荘のほうで何とかしてもらうしかないな。
「ナミネ、寝ようか」
私はナミネの手を握った。
「はい」
私はナミネを客間に連れて行こうと立ち上がった。
「ちょっと待ってよ!このままだと私はまたトラウマを味わうことになるわ!」
やっぱりセレナールさんは引き止めるか。これみんな眠れるのか?
「言いたくないけど、私はセレナールがメンバーを掻き乱してると思うわ。本当迷惑」
リリカお姉様は容赦ない。
「お願い、リリカ……冷たくしないで……同い歳なのに……私は仲良くしたいのに……」
セレナールさんも人によってコロコロ態度が変わる人だな。
「ラルクを欺いた時点で、あなたの信用はガタ落ちなのよ!顔も見たくないわ!」
セレナールさんは確かにラルクを傷付けた。けれど、私から見てセレナールさんは本気でラルクを愛していたようにも思える。
「違う!ラルクのことは本当に心から好きだった!」
遠い昔、突然ラルクがナミネと一緒に帰らなくなった時点でセレナールさんはラルクに少しずつ心を許していた。私はそう思う。
リリカお姉様はセレナールさんを殴り付けた。
「リリカ、アンタこれ以上姉さん邪険にするなら僕も出るとこ出るけど?」
落ち武者さんはリリカお姉様に扇子を突き付けた。
「あなたが今のセレナール見て私を攻撃するように、私もラルクを傷付けられて許せないの!」
去年のラルクは我を見失っていた。小さい頃からラルクを特別扱いしてきたリリカお姉様にとってラルクのことは譲に譲れないだろう。
「ラルクの件は分かった。僕が償えることはする。だから、姉さん殴るな!」
落ち武者さんって何だかんだで兄弟仲いい。私とは大違いだ。

あれは私が幼稚園の年長の頃だった。
『ラルク、本屋さん行こうか』
私は歳の近い弟が出来たことを心から嬉しく感じていた。だから、ラルクが生まれた時は、たくさん可愛がった。
『ヨルクお兄様、何か勘違いしてませんか?』
ラルクは私を睨み付けるような目で見た。
『勘違いって?』
『先に生まれたからって兄だとか思ってます?僕はヨルクお兄様のことを兄だと思ったことは一度もありません。今後もヨルクお兄様とお出かけはありませんので』
ずっと可愛がってきた弟から思いっきり避けられた時はかなりショックを受けた。
『そっか、分かった』
それから私はクレナイ家で孤立するようになった。頻繁に行くナノハナ家で会うナミネを実の妹と思うことで自分の世界観を築けていたと思う。そして、ナミネとの時間は私にとってかけがえのないものとなっていった。

「分かったわ。でも嫌いな人を好きにはなれないしラルクのことも認めない」
もし今ラルクがセレナールさんと別れたらどうなるのだろう。ズームさんはまたカンザシさんに自由を奪われる。
「リリカ、本当に悪かったと思ってる。一生かけてラルクに償うわ」
今のセレナールさんはラルクが好きなのだろう。けれど、多分遅い。恋人になった時点で嘘偽りなく愛し合うべきだった。
「そういえばリリカさんって遠い昔、武官に囲まれたことありましたよね?」
アヤネさんは急に数枚の写真を床に置いた。リリカお姉様は無言で写真を回収してアヤネさんを扇子で叩いた。
「痛い!都合が悪ければ暴力ですか?私知っているんですよ、リリカさんの身に何があったか。ここで映像付きで暴露しましょうか?」
リリカお姉様に何があったと言うのだろう。あれだけ、リリカお姉様に無下に扱われてきただけに、アヤネさんも反撃にかかったというところだろうか。けれど、私はやっぱり実の姉の秘め事は守りたい。
「そうやって権力で人を脅すことしか出来ないのね。殺してあげましょうか?」
リリカお姉様は折れない。けれど、見るからに明らか不利なのはリリカお姉様だ。
「脅しているのはどっちかしら?みんな、リリカさんは赤線町でお仕事してたんですよ。好きでもない人に赤花咲して本当に可愛そうですわ。お武家様は歳頃になれば捨てられるんですね」
赤線町?赤花咲?リリカお姉様が?
「人見下しアヤネ。アンタ、話まとまってきたとこで何で拗れさせる真似した?」
落ち武者さん、ナナミさん、カナエさん、ラルク、ナミネはアヤネさんに扇子を突き付けた。
「あら、脅迫ですか。無線越しに叫びますわよ」
アヤネさんは言うものの、落ち武者さんがアヤネさんを扇子で叩き、カナエさんはアヤネさんを蹴りつけた。
「そこまでよ!ここで問題起こすなら出ていってちょうだい!」
カナナさんは扉を開けるなり、アヤネさんに対して攻撃モードのメンバーを扇子で吹き飛ばした。が、ナミネとラルクは突っ立っている。
「ナミネ、ラルク。アヤネさんはせっかく独りじゃないって自信持てたところなんだよ。ここまでするのはやめようよ」
ナミネがカナエさんを庇ったことが原点だろうけど、問題は思ったより広がりすぎた。
「弱いヨルクお兄様がそれ言います?」
ラルクはいつも私を下に見ていた。今も。
「ねえ、どうしてそういう言い方するの?私、ラルクが生まれた時嬉しかったんだよ?でも、ラルクは……ラルクから私を嫌ったんじゃない!」
私はどうしてラルクから嫌われているのか未だに分からないままだ。
「僕はヨルクお兄様を嫌った覚えはありません」
その時、ナルホさんが二つの扇子を重ね合わせパチンと鳴らした。
「とりあえず、色々納得いかないかもしれないけど、アヤネは今晩僕といてくれるかな?」
ナルホさんは諍いをとにかく好まない。
「分かりました……」
ナルホさんはアヤネさんの手を取り部屋を出た。
というか、元々セレナールさんが引き止めたからこうなったような。

そして、私たちもすっかり寝る時間が遅くなってしまった。
「ナミネ、寝ようか」
私はナミネを布団に入れた。
「はい」
色々あった一日だった。明日はナノハナ家に戻れる。

夜中に目が覚めた。
中庭から物音がする。私は部屋を出て中庭に向かった。
カナナさんが訓練をしていた。私に気付くと手を止めこちらに向かって来た。
「眠れないの?」
「あ、ちょっと目が覚めただけです。いつも訓練してるんですか?」
カナナさんとはあまり話したことはない。そもそも、カナナさんが友達と一緒にいるところさえ見たことがない。
「まあね。私はカナコお姉様ほどの才能もなければカナエみたいに料理が出来るわけでもないし、儚いものね」
カナナさんて自分のことそんなふうに思っていたんだ。
「そんなことないです。カナナさんは強いじゃないですか。キクリ家も十分継げます」
カナナさんは決して弱くはない。遠い昔は、レイカさんとも一緒に仕事をしていたほどだ。
「ヨルクは変わらないわね」
変わらない、と言うほど私のことを知っているのだろうか?
「変わらないですか?」
「ええ、ずっと一途にナミネのこと想い続けていて小さい頃はオネショをラルクのせいにしてたわね」
どうしてカナナさんが知っているのだろう。
「えっ……」
「どの武家でも集まっていたのよ。忘れてるかもしれないけど、みんな仲良しだったのよ」
みんな……仲良し……。
「あ、でも私は兄弟仲あまり良くないですし」
そう思うとキクリ家はまとまりがあると思う。カナコさんがいるからだろうか。
「あなたが知らないだけよ。ラルクはいつもあなたをイジメる同級生を打ちのめしてたわ」
ラルクが!?いつもどこに誘っても酷い言葉しか言わなかったのに。
「ラルクが……」
「そんなものよ、兄弟って。カナコお姉様も放任主義に見えてみんなを心配してる」
カナコさんはそうかもしれない。武家の跡取りと言ったらカナコさんかレイカさんだと遠い昔から言われてきたし。
「カナコさんは人間出来てますから。あ、あの、リリカお姉様って……」
私は言いかけて止めてしまった。
「そうね、アヤネが言ったのは事実ね。武家が流行らなかった時代、武家に生まれた女の子はよく赤線町に出稼ぎに行かされたのよ。リリカは、クレナイ家長女として送られ、お金持ちの商人に赤花咲をされた。その後、何人か客を取った後、リリカは赤花咲の客に無理矢理嫁入りさせられた。その後は子供が出来て一見普通の家庭に見えたけど、暮らしに耐えきれなかったリリカは浮気をして追い出され、また官妓として働いた。あの時のリリカには何の希望もなかったわ」
そんな……。全く知らなかった。リリカお姉様が男性を嫌うのはその過去が原因だったのか。
「そうでしたか……」
「さあ、戻るわよ」
カナナさんは草履を脱いだ。私も廊下に入り、カナナさんは鍵をかけた。

部屋に戻ると、ナミネが呼び出しただろう番人がいた。
「何してるの!」
私は思わず駆け寄った。
「あ、落ち武者さんがセレナールさんの件をなかったことにするよう言ってきまして……」
あのニュースの件か。それがセレナールさんが闇落ちしない術なら致し方ないだろう。
「そっか……」
「でも、セレナールさんが一度もFメモリイをしてないことにすると、他のメンバーもそうなるらしいです。私としてはセナ王女やカナエさんのことを思うとそうしたいのですが……。私とヨルクさんのこともなかったことになってしまいます。エミリさんがアランさんとタルリヤさんの子供を出産して孤児院に預けた設定にすり替えるのと引き換えに」
えっ……私とナミネとのこともなかったことになる……。ちょっと頭が回らない。
「アンタらはまた想い出作ればいいだろ!エミリ犠牲にすることで姉さんも甘えセナも男尽くしカナエもゼロからやり直せるんだ!揉めごとは出来るだけ少ない方がいい!」
それはそうだけど、エミリさんがかわいそうすぎる。でも、セレナールさんのイジワル問題や、セナ王女が中絶薬を盛られたことがなかったことになるのは、やり直せる。私とナミネは心の想い出だけでいい。けど、本当にそれで確定していいのだろうか?エミリさんは子持ちで皇太子様と一緒になれるのだろうか。それでも、確定モード漂う今、私が口出せることは何もなかった。
「すみません、ヨルクさん!もう手段がないんです。テナロスさん、その条件でお願いします」
もう既に落ち武者さんと決めていたのか。
「かしこまりました。その前後の時間は適当なものを挟んでおきます」
テナロスさんは去っていった。少しして、私とナミネとのことはなかったことになっていた。また、後に知ることになるが、ミナクお兄様が女性を弄んだことはなかったことにはならなかったらしい。そして、ラルクが歴史を変えたことはセレナールさんとの喧嘩にすり替わり、ミネルナさんとロォハさんはパーティーにて激的な出会いをしたことは変わっていない。ナミネとラハルさんが出演した映画もそのままだ。
「ラブリー日記見るぞ!」
そういえば、かなりの期間開いてなかった。私は携帯を取り出した。あれ?フェアリー日記になってる?私はフェアリー日記を開いた。

『交際はカラルリともミナクともしていたけど、シャム軍医に咲かせてもらう。今すぐじゃないけど、近い未来、私とシャム軍医は互いの花を咲かせる。愛して愛してどうしようもない』
本当になかったことになっている。セナ王女が中絶薬盛られた事実はなくなっている。セナ王女はシャム軍医と幸せになれる。

『カナエの純白が赤で染る日、私たちは本当の愛で結ばれる』
アルフォンス王子とカナエさんもなかったことになっている。

『いつか、ラルクに咲かせてもらう。
大好きよ、ラルク』
セレナールさんのイジワル事件もなかったことになっている!

『セナさんの花を他の男に奪われるのはいやだ!
必ず私が咲かせる』
カラルリさん側も何もなかったことになっている。

けれど……リリカお姉様だけが不利なものを背負うことになる。私はこのメンバーだけとナミネたちにカナナさんから聞いたことを話した。
「アンタ、さっきお願いすればいいものを。今すぐダンゴロ呼び出せ!」
私はダンゴロさんを呼び出した。
「こっちは夜か」
そうか、女神の湖に夜はなかった。
「あの、リリカお姉様が赤線町で赤花咲され客を取っていた記録を消してもらえないでしょうか?」
過去のこととはいえ、アヤネさんにマウント取られたままではリリカお姉様がかわいそうすぎる。
「まあ、リリカも苦労したからね。アヤネが知ってる前世のみ赤線町で官妓してた記録は消しとくよ」
それではリリカお姉様のトラウマは完全には消えない。それでも、今は選べない。アヤネさんが知っていた事実がなくなるだけでも不幸中の幸いと思うしかない。
「分かりました。それでお願いします」
「分かった。じゃあ、記録から消しとく」
突然ナミネがダンゴロさんの服を掴んだ。
「あの、ナクリお姉様が春風神社で生贄になったことをもう少し軽くすることは……」
そっか、ナミネなりにナクリさんのこと心配してるんだ。
「そうだねえ、ナクリほどのことをしたら慈悲も何もないんだよね。ナクリが立ち上がるしかないね」
悪事を働けば何の助けもなくなってしまうのか。確かにナクリさんはミドリさんにしてはいけないことをした。ミドリさんはそれで命を落とした。ナミネが見た死んだミドリさんの姿は写真でも見たけど相当酷いものだった。
「そうですか……」
「ナミネ、私も力になるから」
私はナミネの手を握った。
「仕方ないです。ナクリお姉様はミドリお姉様を殺しました。でも、ミドリお姉様は今ピアニストを目指しています。悲しいけど進んでいるんです」
悲しいけど進んでいる。私たちのメンバーのようだな。
「君たち何してるのかな?」
ズルエヌさん!
「えっと……その……」
言葉が出てこない。
「別に、元に戻しただけだけど?」
落ち武者さんて、誰が相手でも対等に渡り合える。
「本当に君たちはどうしようもないね」
それが若さなのだろうか。私たち、一億年は生きているはずなのに。同じ過ちばかり繰り返している。人は何世紀経っても変わらない。
「あの、前から思ってたんですけど。ズルエヌさんって、もっと物静かな人でしたよね?」
ナミネ……。
「そうだね。ズームが美しいお嬢さんを連れて来た時は驚いたよ。本気で人を愛せないズームもナミネだけは最後まで愛し通したね」
美しい……。ナミネはずっと可愛いんだけどな。
「答えになってないです」
ナミネもナミネで頑固だ。
「物静かであるのことに対して馬鹿馬鹿しく思っただけだよ」
馬鹿馬鹿しい。そうなのだろうか。私はズルエヌさんみたいにはなれない。ズルエヌさんは持っている人だから。セリルさんのように。
あれ、眠くなってきた。
私たちはズルエヌさんの夢の結界で眠ってしまった。

夜中に寝た割には熟睡したかのようだ。
「得体の知れないズルエヌ、時間巻き戻したな」
ズルエヌさんて何でも出来る。暗殺されたのが嘘みたいだ。
「あ、これ見てください」
ナミネは携帯画面を私に見せた。
セナ王女の投稿か。

『早朝からシャム軍医と下着選び。
紐パンなんてどうかしら?』
紐パン……。セナ王女ならそこそこ似合うかもしれない。

「ナミネ、紐パンとか買わないでね。ああいうの洗いにくいし」
洗いにくい。ナミネはかつて紐パンを履いていたことがあったのか?
「じゃ、朝飯食ったらナノハナ家集合」
あれだけ色んなことがあったのに、全てが……いや殆どのことがゼロになった。これからどうなるのだろう。
私たちの物語はまだまだ序章であった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

あとがき。

ここまで来て全てがゼロに!?
あれだけ色々あったのに。

でも、セナにとっては良かったのかもね。

やり直せる者、やり直せない者。
分かれますね。

リリカもいつか……。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。

現在、小説に関する模倣(程度による)の一切を禁じております。
詳しくはこちらを参照→ 禁止事項

無断転載もご遠慮ください。
純愛偏差値 未来編 一人称版 119話

《ナミネ》

「アヤネさんに熱湯かけられました!」
私は他のメンバーがキクリ家のキッチンに入って来たところで叫んだ。
「ったく、アンタ本当に手段選ばないな」
咄嗟に落ち武者さんは氷の舞で私の身体を冷やし、ナヤセス殿は残りの手当をして私の火傷は跡形も残らなくなった。
そして、一部始終を見たリリカさんはアヤネさんを引っぱたいた。
「何してくれるのよ!ナミネはクレナイ家に嫁ぐ跡取りなのよ!もうあなたの顔なんて見たくないわ!メンバーから外れてちょうだい!」
言葉でアヤネさんを苛立たせたのは私。けれど、手を出したほうが負け。アヤネさんが自分で言ったことだ。
「誤解です!私はカナエさんから暴力を受け、ナミネさんから暴言を吐かれました!」
だったら人に熱湯をかけていいのだろうか?
「私は暴力ふるったカナエと暴言で追い詰めたナミネのほうが悪いと思うわ」
ラルクはセレナールさんが本気でラルクを好きならと修復を選択している。それなのにセレナールさんは何も分かっていない。かつてのカナエさんへの恨みを今晴らしたいのだろうか。
そして、リリカさんはセレナールさんも引っぱたいた。
「あなた、どこまで腐っているの?」
よほど強く叩かれたのかセレナールさんは床に叩き付けられた。
「どうしていつも私を責めるのよ!カナエの暴力は許されるの?私は違うと思う」
まだ正論を重ねるわけか。
「アヤネ、いくらナミネが色々言ったからって、こんなことでは何も解決しないし、ナミネに傷が残ったらどうしてくれるんだ」
ナヤセス殿は、ナルホお兄様より私のことを妹として可愛がってくれている。手紙のやり取りだけの期間も、ずっと私のことを心配してくれていた。
「そんな、あんまりです!被害者は私なのにどうしてみんなして私を袋叩きするのですか!」
私とて別にアヤネさんのみを悪者にしようとしたわけではない。カナエさんの事情を汲み取ろうとせずカナエさんに対し上から目線のアヤネさんを注意したまでだ。
「別に誰もアヤネが悪いとは言ってないし少なくとも私はそうは思わない。でも、手が出ればカンザシと同じになると思う」
カンザシさん。久しぶりに聞く名前だ。実の兄とは言え、少なくとも私はミネスさんと対立はしたくない。
「とりあえず、今日はキクリ食堂の夕ご飯を食べるとして、アヤネとカナエは少し僕と話そうか。後のみんなは第三居間に行くなり客間に行くなりしてくれるかな?」
ズルエヌさんは、どこかセリルさんに似ている。少し前のセリルさんも今のズルエヌさんみたいに平和的な解決を望んでいる。
「はい、私は客間で休んでます。少し疲れました」
私は立ち上がるなり客間へ向かった。

ここも随分と変わった。遠い昔は第一居間でみんなで茶菓子を食べていたっけ。キクリ家は、私の思い出の場所でもある。
私は別に悪意があってアヤネさんに刃を剥けたのではない。カナエさんが不憫だと思ったからだ。
カナエさんはアルフォンス王子の女癖の悪さを知っているようで知らない。カナエさんが知っているアルフォンス王子の女癖の悪さは、あくまで結婚後である。
私は、遠い昔セナ王女の部下だった。セナ王女は21歳にして空軍の元帥だった。そして、エースパイロットだった。そんなセナ王女はある日、17歳だった私を陸軍基地から空軍基地に呼び寄せた。17歳の私は身長もセナ王女より高く髪も伸びて何故か空軍基地のアイドル的存在というかムードメーカーだった気がする。そして、海軍基地で大将を務めていたのがアルフォンス王子だった。あの頃、アルフォンス王子はカナエさんと出会う前で、綺麗な女性軍人を見ては誘惑していた。時には女性軍人を妊娠させたこともあった。けれど、アルフォンス王子は誰も側室にはしなかった。病院代も払わず認知もせず、里帰りした女性軍人はナヤセス殿が働く紅葉病院で政府の支援とともに出産まで通っていた。
アルフォンス王子は、複数の前世で女癖が悪かった。時には妊娠させた女性軍人に薬草を盛っていたこともあったのだ。アルフォンス王子の女癖の悪さは軍法会議には問われなかった。
軍事基地から紅葉町に戻り、カラクリ家でお世話になることになった時に、アルフォンス王子はカナエさんと出会った。アルフォンス王子にとっては初恋だっただろう。カナエさんにはとにかく尽くしていた。そして、アルフォンス王子の軍事基地時代を知らないカナエさんは表面上純粋なアルフォンス王子に惹かれた。けれど、軍事基地時代を共に過した私からしてみればアルフォンス王子はセイさんと同じだ。流石は血縁者だとも思う。
もし、あの時、私が全てを話していてカラン王子との交際を勧めていたら状況は変わっていただろうか。それでも、幸せいっぱいのカナエさんに打ち明けることは出来なかった。
恐らくだけど、現世でもアルフォンス王子はカナエさんだけではない気がする。何となくだけれど、リリカさんに好意を抱いているように見えなくもない。
「ナミネ、キクリ食堂のご飯持って来たよ」
心配そうに見つめるヨルクさんから私は目を離した。
「ありがとうございます、ヨルクさん」
私はカツ丼定食を食べはじめた。
「で?アンタなんで男尽くしカナエの味方したのさ?」
落ち武者さん、エルナさん、ラルク……!今日はこのメンバーで相部屋だろうか。
私は落ち武者さんに軍事基地でのこと、アルフォンス王子の女癖の悪さを話した。別に隠すつもりはなかったけれど、もう遠い昔のことだったから、私でもそれなりに忘れていた。シャム軍医に再開するまでは。
「ふーん、でも人見下しアヤネのほうはやっと落ち着いて来てたんだぜ?手を出したほうが悪いのは当然だけど。男尽くしカナエがカランと交際しても好きになれてたかは分からないと思うけど?」
アヤネさんを再び不安定にしたのは私だ。あの時カナエさんは確かにアルフォンス王子を選んだ。セイさんと別れてアルフォンス王子と交際したのである。けれど、それかてカラン王子と出会う前の出来事である。
「うーん、そうかもしれませんが、少なくとも私だったら平和にカラン王子を選んでいたと思うんですよね」
私ならカラン王子を選んでいた。遠い昔、ラハルさんやズームさんを選んだように、私は『幸せ』を選ぶ生き物だと思う。
「アンタはそうだろうけど、男尽くしカナエは平凡アルフォンスが好きだったんだよ。その平凡アルフォンスが現世で変わり果てたから悩んでるんだろうがよ。ま、女癖の悪さは別れの原因にはなると思うけどね?」
分からない。本当に好きだったのだろうか。今となってはあやふやだ。
「分からないんですよね。軍事基地にいた時のセナ王女とシャム軍医を見ていたら、カナエさんとアルフォンス王子の関係ってなんだろうって」
私には分からない。あの時、ヨルクさんとは離れて暮らしていて、たまにヨルクさんが差し入れ持って来ていたけれど。私は少なくともあの時は、離れていても婚約者はヨルクさんだけだと思っていた。
「へえ、その頃から甘えセナら出来てたんだ。一目惚れカラルリとのことは間違いだったかもな。けど、僕は男尽くしカナエはこのまま平凡アルフォンスと一緒になっとくべきだと思うけど?カランは既にアンタを好きだろうがよ」
カラン王子がどうして私を好きになったかは分からない。私だってカラン王子のとんでもない元カノと同じなのに。
「私、トイレ行ってきます」
話がよく分からなくて私は一旦部屋を出た。

廊下を歩いているとリリカさんとラハルさんがいて私は咄嗟に自分に霧の結界をかけた。
「前々から、ナナミとは違うと思ってたわ。ナナミは恋愛出来るもの。でも私は違う。人を好きになったことなんかない。けど、ラハルなら結婚してもいいって思う」
これは告白なのだろうか。推しとしてラハルさんを好きということなのだろうか。そして、この時の私は落ち武者さんに小型カメラを取り付けられていたことを全く知らなかったのである。
「僕なら結婚してもいい。それは本当に恋愛感情なのかな?確かにナナミとリリカの応援が違うのは会って気付いたよ。でも僕は今でもナミネ忘れられない。ナミネが好きなんだよね、妹としてじゃなくて異性として」
なんか、聞いてはいけないことを聞いてしまった気がする。私もラハルさんのことは嫌いではないし、寧ろ好きなほうだ。けれど、交際していた時の好きではないけれど。
「分かってる。ナミネがいるから、芸能界の仕事減らして紅葉町でアパート借りたこと。別にナミネに嫉妬してるわけじゃない。ただ、ラハルにとってナミネの何に魅力感じたのかなあて」
この段階ではリリカさんがラハルさんを推しではなく異性として好きか分からない。ナナミお姉様の場合は小さい頃からずっとミナクさんのこと見てて、グルグル妖精デビューの瞬間にラハルさんのことめちゃくちゃ推していたけど。
「リリカには悪いけど、ナミネのことは一目惚れだった。数多くの女の中から、はじめて美しいと感じる子だった。だから、ナミネの個展で名刺交換して、その後はナミネを食事に誘いまくった。芸能界デビューも決まってたし、同棲した時にはナミネとの結婚を考えてた。でもカンザシに全て壊されて、その後適当な子と付き合って結婚したけど心は満たされなかった。僕にとってナミネは全てだった。ナミネがいたから芸能界も頑張れた」
美しい。ズームさんも似たようなこと言ってたけど、私ヨルクさんから美しいとか言われたことない。いつも、ナミネは可愛いねって、まるで妹扱いだった。でも、ヨルクさんとは確かに愛し合っていたと思う。
そして、カンザシさんが引き裂かなければ私はラハルさんと結婚していただろう。
「そう。確かに、成長したナミネはセレナールを追い越すすらいの美貌だものね。私、多分ラハルが好き。少しは考えてほしい」
これって告白なのだろうか?好きなのはそうだろうし、推しを超えてリリカさんとラハルさんは現実で友達だ。それだけでなく、旅を共にした戦友でもある。
「うーん、多分じゃ好きとは言えないよ。でも一つ言うならナミネと出会っていなければリリカと交際していたかもね」
ラハルさんも何故思わせぶりなこと言うのだろう。
「そうね、私も分からない。ラハルを恋愛対象として好きなのか。でも、好きラハルにならFメモリイさえも許せる」
うーん、やっぱり分からない。自分を許すイコール好きとも限らないし。
ダメだ、さっきヨルクさんが持ってきた夕飯一気に平らげたからお腹痛くなってきた。私は忍び足でリリカさんとラハルさんの前を通りトイレに向かった。

部屋に戻るといきなり落ち武者さんに肩を触られた。
「回収っと」
回収?よく見るとパソコン画面にはリリカさんとラハルさんが映っている。私、知らない間に落ち武者さんにカメラ取り付けられていたのか。
「あの、トイレも見ました?」
私、かなり下しちゃった。
「流石にそこは見てないけど?アンタのプライベートだし」
いや、リリカさんとラハルさんのやり取りも十分プライベートだと思うけど。
「そうですか」
なんだか複雑な気持ちだ。しかも、ラルクもヨルクさんも画面に釘付けだ。
「ここからが、アンタの見てない場面」
いや、これ見てもいいのだろうか。見つかったら大目玉だ。それでも、私は落ち武者さんが再生する映像を見た。

映像は私がトイレに向かった後の場面だった。
『Fメモリイは許さないほうがいいよ。今のリリカはね』
リリカさん純粋だなあ。ナナミお姉様もだけど。
『ラハルは何人かと交際してるじゃない。好きじゃなかったの?』
そういえば、芸能界デビュー前後のラハルさんは彼女いたんだっけ。
『好きだったよ。最初はね。でも、駆け出しは食べていけないから芸能界は諦めろとか、デビュー後は残業一つで浮気疑われて上手くいかず別れたけどね』
こう考えると、芸能人もプライベートととの両立は大変なんだな。
『今誰とも交際しないのってナミネがいるから?』
これ、本当に見てよかったのだろうか。
『うん。最初手紙来た時はナナミと住所が同じだったから同一人物からの手紙だと思ったけど、直接会ってナミネ本人だと気付いた時には、また好きになってた。直ぐにナミネだと分かった。ナミネにヨルクがいても、もうナミネしか見れなくなってた。昔の想い出じゃなく、今として』
どうして私なのだろう。どうして短期間交際していただけの私を現世でも好きなのだろう。
『そういう割には現世で元カノ病院送りにしてるよな。ラハルって優等生ぶって裏ではDVしてるんだな』
え、カンザシさん!?戻ってきたの!?
『カンザシー!』
ミネスさんがカンザシさんに抱きつくところで映像は途切れていた。

「アンタ、モテるな」
カンザシさんが戻って来た。今の状況下で。問題にまた問題が起きる。どうしていつもこうなのだろう。
「あ、私別に自分がモテてるとか、そういうの思ったことないです」
その時、落ち武者さんが私のスカートを捲った。
「落ち武者さんやめて!ナミネは私の彼女だから!」
ヨルクさんは咄嗟に私を抱き寄せた。ヨルクさんの紅葉の香り。私の大好きな香り。
「あの、落ち武者さんとは、旅先で混浴した仲ですし、落ち武者さんのこと仲間だと思っているのでこういうの気にしません」
今更だと思う。旅先では着替えもみんな同じ場所でしてたことが多かったじゃないか。
「やっぱアンタ、男を知らないな」
男を知らない?もう十分に嫌ってほど知り尽くしたつもりだけど。
「うーん、落ち武者さんは無理矢理なことはしないです」
落ち武者さんは、ミドリお姉様を襲った人らともカンザシさんとも違う。落ち武者さんは人の嫌がることはしない。
「ねえ、落ち武者さん。エルナの前でよくそういうの言えるよね」
少しずつ思い出してきているのかもしれない。昔の妖精村学園でヨルクさんと歩いていた時、成長した(あまり今とは変わらないけど)落ち武者さんは常にエルナさんと一緒だった。
「落ち武者さんは恋多き男なのよ」
人って分からない。こんなあどけない顔した落ち武者さんが美人を口説いていたとか。ヨルクさんにもそういう面があるのだろうか。もしそうだったら、ズームさんに交際申し込んでやる。
「エルナは落ち武者さんとの交際後、浮気されて耐えきれずに過ち犯したんでしょ?」
ヨルクさんはどうして知っているのだろう。やっぱり、同学年と一つ歳下では得る情報が違うのだろうか。
「そうね。でも、落ち武者さんは幼なじみだったから直ぐに別れは切り出せなかったわね」
幼なじみ……。私もラルクやヨルクさんだったら、確かに直ぐに別れられないと思う。
「ねえ、ラルクはどう思う?このままカナエさんとアルフォンス王子が交際してもいいのかな」
カナエさんならいくらでもいる。
容姿端麗、文武両道、家事のエキスパート。
いくらでもいるじゃないか。現にカナエさんに届いている縁談書の数は物凄いそうだ。
「何故いつもラルクに聞く」
ヨルクさんって心が狭い。
「顔だけヨルク、どうでもいいだろ」
私がラルクに聞くことのどこが悪いのか未だに分からない。私はただ話を進めようとしているだけなのに。
「僕は、仕方ないと思う。いくらカナエ先輩がカラン王子と一度は恋人だったとはいえ、一度きりだ。現世で一緒になれる確率は極めて低いだろうな」
カナエさんとて一度はカラン王子と恋仲だったのに、どうしてその後は恋仲にはならなかったのだろう。人のこと言えないけど、カラン王子とカナエさんて似合っている気がする。
「そっか。仕方ないよね。アルフォンス王子選んだのカナエさんだし。でも、なんか詐欺に思えるんだよね」
女癖悪い男が、はじめて本気で好きになれる人が出来た。なんてドラマもいいところ。どう考えても恋愛を知らないカナエさんに言葉巧みに言い寄ったとしか思えない。
「アンタさ、それ言い出したらキリがないだろ。好きになったなら詐欺も何もないだろ」
そうなのだろうか。私だったらカラン王子に心を委ねていただろうから、アルフォンス王子は考えられない。そう感じる私も庶子を否定しているようで複雑である。
その時、悲鳴が聞こえた。私たちは部屋を飛出て悲鳴の方向へ向かった。

別の部屋でカンザシさんを見たセレナールさんが尻もちをついている。こうなることを予測してなかったわけではないが、いずれは再会しただろう。私たちと旅を続ける限りは。
「よくも僕を芸能界追放して、自分だけのうのうと暮らせてましたね。あなたが幸せな日常を送っている間、僕は閉鎖病棟に縛られていました。僕はあなたを絶対に許しません!」
こればかりは私もどうしていいのか分からない。イジワルは犯罪だ。けれど、間違えたがどうしても未だに引っかかって仕方ない。
「カンザシ、私が芸能界に戻す!それに私は大切なものごとに対して間違えた無防備なセレナールも悪いと思う。お武家連盟会議でカンザシ追放したけど、セレナールが間違えたことを全村の人が知ったらどうなると思う?」
うーん、被害者はセレナールさんだけど、カンザシさんも何もマモルさんに引き渡すことはなかったと思う。
「僕は100:0でカンザシが悪いと思うけどね。日頃の行いがあまりに悪すぎる。カンザシこそこれまでの悪事を世間に知られたらどうなると思うんだ?」
やはり意見は分かれる。
「いつまでも優等生ぶってムカつくんだよ!ラハル!」
カンザシさんがラハルさんを殴ろうとするのをリリカさんが止めた。
「アンタ、ラハルに指一本でも触れたら命はないと思いなさい」
うわー、推し愛もここまで来るとホラーだ。
「す、すみません。少しカッとなっただけです」
カンザシさんは数歩下がった。
「悪いけど、姉さんを世間に差し出すことはさせない」
落ち武者さん相当怒ってる。
「私はカンザシを芸能界に戻すと言っただけ。セレナールを世間どうこうは考えてない」
一時的とはいえ、ズームさんの勾玉のアザが消えている以上、カンザシさんに協力出来るのはミネスさんだけだ。
「あの、でも私がセレナールさんの立場だったら、やり切れないと思います。未遂ではなくイジワル……イヤガラセじゃないですか」
ダメだ。ミドリお姉様のことを思い出してしまった。
「おい、ナミネ、大変なことになってるぞ!」
ラルクはテレビを付けた。
『イジワルにより閉鎖病棟に入っていたニンジャ妖精のリーダーであるカンザシさんですが、それは偽りだったとのことが判明しました。カンザシさんは一般女性に薬を飲まされ起きた瞬間に叫ばれたそうです。つまりカンザシさんは完全は被害者です。ファンもカンザシさんを陥れた一般女性をかなり批難しています』
そんな……いったい誰が嘘をリークしたのだろう。分からない。けれど、大問題であることは変わりない。セレナールさんは芸能人ではなく一般人なのだから。キクリ家にマスコミが押し寄せたりしたら身動きが取れなくなる。
「どうして!どうしてなのよ!いったい誰がこんなこと!!被害者は私なのに!」
セレナールさんはその場に崩れ落ちた。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

あとがき。

このタイミングでカンザシ戻ってきたか。

力不足で何も出来ない人生も辛いけど、誰かの力を借りてやりたい放題もズレていると思う。

セナとシャムへの批難。
カンザシの出戻り。

本当、トラブルは絶えません。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。

現在、小説に関する模倣(程度による)の一切を禁じております。
詳しくはこちらを参照→ 禁止事項

無断転載もご遠慮ください。
Copyright (C) 2009 雨の音を聴きながら, All right Resieved.
*Powered by ニンジャブログ *Designed by 小雷飛
忍者ブログ / [PR]