日常のこととかオリジナル小説のこととか。
カレンダー
プロフィール
HN:
ashita
Webサイト:
性別:
女性
職業:
地主(土地貸してます)
趣味:
漫画やアニメを見るのが好きです。最推しはフーディーニ ♡
自己紹介:
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
ブログ、もう書かないと思ってました。
けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。
小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。
純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。
ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。
小説、ぼちぼちマイペースに書いてゆきます。
よろしくお願い致します。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
お知らせ。
イラストは現在「ナノハナ家の日常」に載せております。サイドバーにリンクあります。
また、「カラクリよろずや」にてフリーイラスト素材について考えるブログはじめました✩.*˚
不定期に更新していく予定です。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
模倣・無断転載などは、ご遠慮ください。
ブログの小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
小説・純愛偏差値に関しましては、武家名・貴族名(程度による) / 及び、武官の階級 / 扇子・羽子板・花札・百人一首・紙飛行機などのアイテム使用方法の模倣の一切を禁じております。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
X @kigenzen1874
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
ブログ、もう書かないと思ってました。
けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。
小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。
純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。
ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。
小説、ぼちぼちマイペースに書いてゆきます。
よろしくお願い致します。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
お知らせ。
イラストは現在「ナノハナ家の日常」に載せております。サイドバーにリンクあります。
また、「カラクリよろずや」にてフリーイラスト素材について考えるブログはじめました✩.*˚
不定期に更新していく予定です。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
模倣・無断転載などは、ご遠慮ください。
ブログの小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
小説・純愛偏差値に関しましては、武家名・貴族名(程度による) / 及び、武官の階級 / 扇子・羽子板・花札・百人一首・紙飛行機などのアイテム使用方法の模倣の一切を禁じております。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
X @kigenzen1874
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
最新記事
ブログ内検索
カテゴリー
アーカイブ
フリーエリア
〈資格履歴〉
2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
→漢方コーディネーター 合格
→薬膳調整師 合格
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
〈資格証明バナー〉

2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
→漢方コーディネーター 合格
→薬膳調整師 合格
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
〈資格証明バナー〉

純愛偏差値 未来編 一人称版 49話
《ヨルク》
私はナミネがお風呂から上がった後、落ち武者さんに言われ、ナミネとカンザシさんの様子を見ていた。すると、突然カンザシさんがナミネを抱き締めて、ラハルさんが中に入って行った。
あの時、カンザシさんはナミネに何を言おうとしていたのだろう。それにしても、やっぱりカンザシさんとナミネが密着するのはナルホさんやナヤセスさんとは違う感じがしまくる。もう兄妹を超えて男と女にしか見えない。
ナヤレスさんとでさえ、兄妹に見えたのに、どうしてもカンザシさんだけはナミネの兄とは思えない自分がいた。
私は洗濯物を干した後、再び第4居間に戻った。
すると、ナナミさんが、ミナクお兄様を押し倒していた。え、てか、何があったの?
「ナナミ、わざとぶつかったわけじゃない」
「どう考えてもわざとじゃない!」
「ナナミ、下着見えてる。いい加減、離してくれないか」
「わざと見てるんでしょ!この変態!同級生と貴族含めて約80人の女弄んだあなたに選択肢などないわ!」
うわー、これが俗に言う公開処刑か。みんなも見てるしどうにかしないと。
「ナナミお姉様、ミナクさんを離してあげてください」
その瞬間ナナミさんはナミネを扇子で吹き飛ばした。けれど、ナミネは空中でバランスを取った後、扇子を縦に持ち、畳に着地した。ナミネは何度吹き飛ばされても、いつも器用に着地する。
今日のナミネのパジャマは猫耳フードに短パンのニーハイ……。可愛すぎる。
いけない。今はミナクお兄様のピンチだった。
「おい、シュリ!助けてやれ!」
いつも思うのだが、どうしてカンザシさんはリーダーでもないのに命令するのだろう。って、また一部笑ってる?
「ねえ、どうして笑うの?私じゃないよね?」
「あの、お2人とも大丈夫ですか?」
「助けてください」
ミナクお兄様のヘルプにシュリさんは、ミナクお兄様を引っ張ったがビクともしなかった。ダメだ。リリカお姉様も笑ってて助ける概念忘れてる。
「ねえ、ナナミ、私も見てたけど、ミナクはわざとじゃないと思うわ」
「セナ王女、私は昔からミナクを知ってるんです!あれは明らかわざとです!」
ナナミさんて優しいけど、ナミネとは別の形で気が強い。
「もうダメですな。こういう時のナナミお姉様には何を言っても通用しません。人生諦めが肝心ですな」
その時、落ち武者さんがカップル日記に、ある数式を投稿した。
え、何この数式。というか化学式なのだろうか?
「落ち武者さん、これ本当なのですか?」
「どう見てもそうだろ」
てか、ナミネは数式の意味分かったの?
「ねえ、この数式何?」
セナ王女も不思議がってる。
そういえば、気付かなかったけど、ユメさんとクラフは帰ったのか。それにしても、この数式はいったい……。
「カナエも薄々は気づいていましたが、こればかりは……」
「他人が口出しすることでもないしね」
え、カナエさんとアルフォンス王子も分かるの?
「ねえ、ナミネ、どういうこと?」
「い、いや、それは言えません」
どうして言えないのだろう。ニンジャ妖精さんとラハルさんは落ち武者さんに数式を見せてもらっている。けれど、みんな分からなさそ……いや、待てよ。何となくロクメさんは気づいてる感じしたけど、突っ込んだらいけないパターンなのか?
「ナナミが私を嫌っているのは分かった。でも、だったら、私と関わらなければいいだろ!」
「目に入るから迷惑だし、さっきだってわざとぶつかって来たし!」
「わざとではないと言っているだろ!いい加減離せ!」
どうしたらいいのだろう。ナナミさん、普段はこんな人じゃないのに。3年生の間で何かあったのだろうか。
その時、突然ナミネが歌い出した。
「舞い上がる アドバルーン
この町に はじめての
デパートが できた あの時は
みんな嬉しそうに していたね
10年 20年 少しずつセピアに
変わらないもの なんてない
けれど 本当は みんな思ってる
微笑み合った日 遠のかないで
懐かしい その言葉が 返って胸痛む
もう二度と 訪れない あの時だけの
時間だったから
この町も かつては森だった
なにもない平穏に 僕ら いつも
当たり前のように 和まされていた
こころの中の風景は 色褪せて
今は見かけない アドバルーン
この町も 変わってく
デパートの 屋上の乗り物で
僕ら いつも はしゃいでた
懐かしい その言葉が 返って胸痛む
もう二度と 訪れない あの時だけの
時間だったから
この町も かつては森だった
なにもない平穏に 僕ら いつも
当たり前のように 和まされていた
こころの中の風景は 色褪せて
時流れ 森も町になったんだ
それはそれで 賑わっていて
多分 楽しいけれど 忘れないで
大切なのは いつも 君の中」
ナミネの歌声可愛い。
「あれっ、これってミナクの好きな曲よね?」
そういえば、フェアリー地平線さんの中でも1番聴いていたような……。
ナミネはまた歌った。
「古い夢 今頃になって 叶えたいと願う
あの頃は 青春の 誘惑に負けていた
遠い昔 桜木町で開いてた 小さなコンサート
気が付けば 遊楽に のみこまれていた
自分のしたいこと チャレンジすれば
いつの日か 花咲くと 思い込んでいた
僕が描いた夢は 遠い都の向こう
最終列車も 乗れないまま
帰れないよ このまま帰れない
名もない 夢追い人
あなたの 愛得られず 泣きながら歌った
あの頃は 欲しいもの 得られると思い込んでた
遠い昔 桜木町で開いてた 小さなコンサート
あなたはいつも バイト帰りに 来ていたね
自分のしたいこと チャレンジしても
時経てども 芽を出すことは なかった
僕が描いた夢は 遠い都の向こう
最終列車も 乗れないまま
帰れないよ このまま帰れない
名もない 夢追い人
今の桜木町 空き地になってる
あの場所で かつては賑わって
楽しすぎて 嬉しすぎて
僕の 思い出の空間(せかい)
僕が描いた夢は 遠い都の向こう
最終列車も 乗れないまま
帰れないよ このまま帰れない
はぐれた 夢追い人」
ナミネ、可愛すぎる。
「ナミネ、可愛い」
「これもミナクの好きな曲よね?」
そういえば、ベストアルバムに入ってたっけ。
「放課後になって 降りはじめた雨
色とりどりの傘が 並んでる
ひと目でわかる 君の傘模様
ただ見つめているだけで よかった
商店街ですれ違い こころが痛む
作り笑顔 気付かれていたかな
古い文房具を 手に取る君に
幼い頃を重ね合わせ また花涙溢れる
(途中)」
「これもミナクの好きな曲だわ」
その時、ナナミさんがポロポロ涙を零した。
「そうよ……そうよ……ずっとあんたのこと見てた。ずっとあんたが好きだった」
えええ!ナナミさんってミナクお兄様のこと好きだったのか!?
ナナミさんはミナクお兄様から離れ走って第4居間を出て行った。ミナクお兄様は慌てて追いかけた。私も流れて2人を追った。
ミナクお兄様は廊下でナナミさんの手を掴んだ。
「ナナミ、ごめん……」
「何よそれ……もういいわよ。ミナクって昔から鈍いんだから」
「ナナミ、どうしたらいい」
「どうもこうも、本命出来たんならどうしようもないでしょ」
ナナミさんはミナクお兄様の手を振り払った。
「だったら茶道部入ってよ」
「ナナミ、入部届け出す!」
「本当、どうして本命なんか作ってんのよ」
「ごめん……」
ナナミさんは、2階へ上がって行った。
はあ、ミナクお兄様も、どうしてセナ王女なのだろう。
私たちは再び第4居間に戻った。
第4居間ではみんなは静まり返り、テレビの声だけが聞こえていた。ナナミさんは大丈夫だろうか。
「シュリ、あの暗号解けてたか?僕は解けてたけどな」
え、そうなの?
「カンザシ、嘘に嘘並べると、そのうち誰からも信用されなくなるぞ」
「暗号解けなかったからって僻むなラハル」
何かもうここまで来ると周りにまわって友達なような……。あれ?シュリさん、またタバコの後が……。
「あの、シュリさん、そのタバコの跡、どうしたんですか?」
以前、うやむやなまま帰ってしまったから、今回はちゃんと聞いた。シュリさんは黙ったままだった。
「顔だけヨルク、シュリの上着脱がせろ!」
「えっ、でも……」
「あんたやらないなら僕がやる!」
落ち武者さんは、シュリさんの上着を脱がせた。
えっ、何これ。身体中にタバコの跡……。どうして。いったい誰がこんなことを。
「シュリ、あんた誰にやられた」
「じ、自分でやりました」
「タバコのメーカー教えろ」
「えっと……」
やっぱりイジメなのだろうか。それにしても、これは酷すぎる。かなり辛かっただろう。
「ラハル、あんた誰だと思う?」
「さあね、僕には分からないな」
「言え」
落ち武者さんはラハルさんに扇子を突き付けた。
「落ち武者さん、やめて!ラハルさんは関係ないよね!」
「もうやめましょう。こういうのはイジメられた本人が前向きにならないと解決には向かいません」
ナミネにしては珍しい。いつも、ラルクにどうにかしようと相談してるのに。そうか、ラルクがいないからか?
「いーや、僕は犯人突き止めるけど?」
「落ち武者さんがそう言うなら私も付き合います」
切り替え早っ。
「シュリさん、本当誰なんですか?」
ナミネが聞いてもやっぱり答えない。
「僕の安全を保証してくれるなら答えてもいい」
あ、安全の保証って何?
「ええ、もちろん保証するわ」
てか、どうしてリリカお姉様が答えるの?
「ラハル、あんたの身の安全は保証する」
「カンザシだよ」
え、カンザシさんが?どうして仲間を……。みんなは突然騒ぎはじめた。
「皆さん黙ってください!まずはカンザシさんの話を聞きましょう!」
ナミネ、どうしてカンザシさんを庇うの。やっぱりカンザシさんに気があるのだろうか。実の兄に。
「いや、ラハル、あんたから話せ。その次にカンザシだ」
「言うつもりなかったけど、シュリのことがみんなに知られたから話さざるを得なくなったけど。カンザシは、これまで付き合ってた彼女にDVしてたんだよ。何人か病院送りになったし。デビュー後は何かあればニンジャ妖精のメンバーを殴り、グルグル妖精やサムライ妖精のことも殴ってるんだよ。怒った時のカンザシは誰も手が付けられない。だから、みんなカンザシのこと嫌ってるよ」
まるでナミネじゃないか。兄も兄なら妹も妹と言うことなのだろうか。しかし、カンザシさんは男だから、殴られた彼女はカンザシさんとの別れを選んだだろう。私もナミネとはかなり力量の差があるから、例えるならカンザシさんの元カノだろうな。
「じゃ、次カンザシ」
「デビューしてすぐ、タツマキ妖精さんとテレビで共演しましたが、僕が誤った発言をして、その後、タツマキ妖精さんからイジメを受け、メンバーに助けを求めましたが、誰も助けてくれず……」
「その矛先がメンバーに向いたってわけだな」
うーん、何だか歯切れが悪いというか、だったら、どうして他のグループも殴る必要あるのだろう。
「みんなはどう思う?」
え、ここでみんなに聞くの?
「私個人としては出来れば仲間は見捨てて欲しくない。私なら見捨てない」
ミナクお兄様、何て白々しいのだろう。これ、聞く意味あるのか?
「私も仲間を見捨てるのは良くないと思うわ。明らかイジメじゃない。私も同じことされてきたから、見捨てられるのはいやだわ!」
セレナールさんもそうきたか。
「そうね、仲間なら助けるべきだと思うわ」
セナ王女も……。
「カナエも仲間を見捨ててはいけないと思います!」
「私も仲間を見捨てるなんて考えられないな」
……。
何故だ。何故、ニンジャ妖精さんが悪い方向に意見が進む。明らかおかしい。けれど、弱い立場の私が反対意見をすれば、袋のネズミだ。その時、ナミネがカンザシさんを抱き締めた。
「カンザシさん、辛かったんですね。でも、1人で耐えなくていいんです。タツマキ妖精さんはラルクがケリ付けましたし、もう攻撃はしないでしょう。カンザシさんがイジメられたら私が助けます!」
「ナミネさん……」
カンザシさんはナミネの腕の中で泣いた。
何なんだ、このやり取りは。これじゃあまるで、メンバーが悪いと言ってるようなものではないか。
しかし、人というのは、ひとたび同じ闇に触れてしまえば、その闇を共感し、育てようとする生き物だ。理由は孤立したくないからだ。だから、理解されない人ほど、同じ境遇の人に出会えば余計に絆を深めようとする。
「じゃ、仲間見捨てたメンバーが悪いってことで……で締めくくりたいが、強気なナミネ、あんたレオルに今のことメールして意見求めろ!」
「分かりました」
はあ、やっとカンザシさんから離れてくれた。
ナミネは携帯を持つとレオルさんにメールをした。
「返信来ました」
ナミネは携帯を机に置いた。
『はい、確かにカンザシには暴力癖があります。僕も殴られ、3度も病院送りにされました。カンザシは何度オーディション受けても通らず、ラハルや僕のことを妬んでいるんです。彼女持ちの人から何度も女の子取ってますし。正直みんなカンザシのことは嫌いだと思います』
やっぱり経験者は嫌うよね。それでも、芸能人だから、隠してたのか。
「なるほどね、ラハルと同じ意見ってわけか。カンザシ、あんた病院行け!どっかの強気なナミネの兄みたいになる前にな!」
「落ち武者さん、明日は私はラルクを探しに行きます」
「じゃ、エルナ、あんたが連れて行け」
「分かったわ」
「僕も行く」
私もナミネが心配だからカンザシさんの付き添いは出来ない。今のところ、エルナとラハルさんだけか。他の人にも着いていってもらいたいのだけど。
「ねえ、カンザシ、私の大切なラハルを傷付けたらどうなるか分かるかしら?」
「ぜ、絶対にラハルには手を出しません!」
「リリカお姉様、やめてください!まずは病院で病名聞いて治療しないといけないでしょう!」
ラハルさんのみ守られても他の人が殴られたら意味がないではないか。
「カナエとアルフォンス王子もカンザシさんの付き添い行ってくれるかな?僕もラルク探すから」
「分かりました。カナエもカンザシさんの付き添いをします」
「分かった、私はカナエに着いて行く」
ナルホさんはやっぱりラルクを探すのか。ナミネも元気なさそうだし、ラルクは今どうしているのだろう。
「ナミネは今夜はナルホさんと一緒に寝るんだよね?」
「はい」
その時、ナミネの携帯が鳴った。
「またメール来ました」
ナミネは携帯を机に置いた。
『この際だから、ニンジャ妖精の所得事情教えます。カンザシが月9万円ほどで、他のメンバーは3万円ほどです』
今度はサンゾウさんからか。恨みというのは怖いな。しかし、あのような高級マンションに住んでいるのに、今の月収では足りなくないか?支払いはどうやっているのだろう。月200万円のマンションらしいが。
え、シュリさんが殴られてる!?
「はい、ストップ!あんた、シュリ殴っても現状変わらないだろうが!」
落ち武者さんは止めに入った。
それにしても、女癖の悪さ、金遣いの荒らさ、まるで、以前のミナクお兄様だな。
ナミネは、返信をしているのだろうか?
カンザシさんが落ち着いた後、みんなはそれぞれの部屋に入って行った。
深夜何時だ?落ち武者さんとエルナさんが……。もう、これでは眠れないではないか。私はナミネの部屋を出て階段を降りた。
あれ、2つ目の客間から物音がする。私は客間の前に立つと、少し扉を開けて中の様子を伺った。
そんな、まさか……。
私は有り得ない光景を目にした。念の為に撮影しておこう。それにしても、セレナールさんの声……響く。カンザシさん、ナミネのこと好きな素振りしてセレナールさん狙いだったの?
「ヨルク……」
え、どうして私の名前呼ぶの?
「ヨルク、好き!」
……。
私は好きじゃない。もうこうなったら落ち武者さん呼ぼう。
私は階段を駆け上がり、再びナミネの部屋に入った。
「落ち武者さん!!」
「何だよ!今取り組み中なんだけど?」
「セレナールさんとカンザシさんが大変なの!」
私は撮影した動画を落ち武者さんに見せた。
「あの野郎、姉さんに手を出しやがったか」
落ち武者さんはナミネの部屋を出た。私とエルナも落ち武者さんを追いかけた。
もう一度、あの部屋に入ると……セレナールさんの身体中にアザがあり、マモルさんがセレナールの上に乗っていた。
落ち武者さんはマモルさんを突き飛ばし、カンザシさんを殴り付けた。
「あんたら、姉さん襲ったのか!」
「セルファ!カンザシとマモルにイジワルされたわ!」
「2人とも絶対許さない」
エルナはセレナールさんに服を着せた。
「ち、違うんです!セレナールさんとは合意でした!」
確かに私が見た時はいやがってる雰囲気ではなかったけど。
「姉さんはイジワルだと言ってるだろ!」
「セレナールさんから誘ってきたと思ったらヨルクさんの名前呼ぶから思わず手が出てしまいました。それで、マモルに渡しました」
「あんた、自分のやったこと分かってんのかよ!今すぐマスコミにリークしてやる!エルナ、姉さんにアフターピル飲ませろ」
「分かったわ」
エルナはセレナールさんにアフターピルを飲ませた。けれど、何かおかしい。
「あの、セレナールさん、どうして私の名前呼んだんですか?」
この間はなんだ。
「ヨルクだと思ったの!だから、許したのにカンザシだったし、殴られて、マモルに回されたわ!」
「どうしてですか!セレナールさんはラルクのこと好きなんじゃないんですか?」
「好きよ!でも、ナミネが羨ましいの!ラルクは効率いい交際しかしてくれない。私もヨルクに愛されたかったの」
気持ち悪い。同情するけど気持ち悪い。私はセレナールさんのこと、そんなふうに見れない。咄嗟に私は携帯を取り出し、キクスケさんにセレナールさんが私を犯さないようお願いをした。ナミネのためにも穢れるわけにはいかない。
けれど、今はセレナールさんが穢されている。
落ち武者さんは、カンザシさんとマモルさんをひたすら殴り続けた。
「セルファ!やめて!このままじゃ死んでしまうわ!」
「エルナ、今すぐリークしろ!」
「分かったわ」
エルナはマスコミに電話をした。
けれど、どうしてだ?どうして、カンザシさんもマモルさんも何も言わない。芸能生命が絶たれようとしているのに。
……。
「ダメだ!2人のどっちかにバックが着いてる!」
落ち武者さんは2人を拘束した。
「吐け!」
「ヨルクさん……?」
ナミネが起きてきた。……てか、みんないる?
「ナミネ、寝てようか」
私はナミネを抱っこした。すると、ナミネは手足をバタバタさせた。
「ちゃんと説明してください!」
「姉さんがこの2人に犯されたんだ。カンザシのことは顔だけヨルクだと思ったらしい」
その瞬間、ナミネの目の色が紫色になった。
「ヨルクさんを抱こうとしてたんですか?どうしてですか!セレナールさんはラルクのことが好きでしょう!ヨルクさんじゃなくてラルクのことが好きでしょう!」
「セルファ、兄さん呼んで……」
セレナールさん、相当ショック受けてる。でも、私もショックを受けていた。
「分かった、今すぐセリル呼ぶ」
「なるほど、君たちがセリルさんの妹弟なんだね。とりあえず、セルファは僕の部屋に来てくれるかな?セレナールさんはカナエが月城総合病院に連れて行ってくれるかな?カラン王子はナミネを客間に連れて行って寝かしつけてくれるかな?リリカさんはマモルさんとカンザシさんから話聞いてくれる?」
落ち武者さんはかなり怒って2人を殴り付けようとしたがナルホさんが部屋に連れて行った。そして、みんなはナルホさんの指示通りに動いた。
それにしても、ナルホさんが初対面のカラン王子にナミネを預けるなんて珍しい。逆にこういう時は、私よりカラン王子のほうがいいのかもしれない。
「部屋に戻るわよ、ヨルク」
「うん」
「ヨルクさん、ナミネさんのことは朝になったら第4居間に連れて行きます」
「あ、お願いします」
私はセレナールさんに疑念を抱きながら、カンザシさんとマモルさんを軽蔑しながら、落ち武者さんを心配しながら、エルナとナミネの部屋に戻って行った。
この世は誰もが幸せになれないのだろうか。
私は先程の光景を見て絶望していた。
……
あとがき。
走り書き書いても、なかなかその通りにはいかないものですね。
小説の時間軸で2ヶ月も早まってしまいました。
ラルクの行方は分からないまま……。
セレナールはカンザシによってマモルに引き渡されてしまうし、純愛偏差値はとにかく悲しいのです。
マモルとカンザシの芸能生命はどうなるのでしょうね。
《ヨルク》
私はナミネがお風呂から上がった後、落ち武者さんに言われ、ナミネとカンザシさんの様子を見ていた。すると、突然カンザシさんがナミネを抱き締めて、ラハルさんが中に入って行った。
あの時、カンザシさんはナミネに何を言おうとしていたのだろう。それにしても、やっぱりカンザシさんとナミネが密着するのはナルホさんやナヤセスさんとは違う感じがしまくる。もう兄妹を超えて男と女にしか見えない。
ナヤレスさんとでさえ、兄妹に見えたのに、どうしてもカンザシさんだけはナミネの兄とは思えない自分がいた。
私は洗濯物を干した後、再び第4居間に戻った。
すると、ナナミさんが、ミナクお兄様を押し倒していた。え、てか、何があったの?
「ナナミ、わざとぶつかったわけじゃない」
「どう考えてもわざとじゃない!」
「ナナミ、下着見えてる。いい加減、離してくれないか」
「わざと見てるんでしょ!この変態!同級生と貴族含めて約80人の女弄んだあなたに選択肢などないわ!」
うわー、これが俗に言う公開処刑か。みんなも見てるしどうにかしないと。
「ナナミお姉様、ミナクさんを離してあげてください」
その瞬間ナナミさんはナミネを扇子で吹き飛ばした。けれど、ナミネは空中でバランスを取った後、扇子を縦に持ち、畳に着地した。ナミネは何度吹き飛ばされても、いつも器用に着地する。
今日のナミネのパジャマは猫耳フードに短パンのニーハイ……。可愛すぎる。
いけない。今はミナクお兄様のピンチだった。
「おい、シュリ!助けてやれ!」
いつも思うのだが、どうしてカンザシさんはリーダーでもないのに命令するのだろう。って、また一部笑ってる?
「ねえ、どうして笑うの?私じゃないよね?」
「あの、お2人とも大丈夫ですか?」
「助けてください」
ミナクお兄様のヘルプにシュリさんは、ミナクお兄様を引っ張ったがビクともしなかった。ダメだ。リリカお姉様も笑ってて助ける概念忘れてる。
「ねえ、ナナミ、私も見てたけど、ミナクはわざとじゃないと思うわ」
「セナ王女、私は昔からミナクを知ってるんです!あれは明らかわざとです!」
ナナミさんて優しいけど、ナミネとは別の形で気が強い。
「もうダメですな。こういう時のナナミお姉様には何を言っても通用しません。人生諦めが肝心ですな」
その時、落ち武者さんがカップル日記に、ある数式を投稿した。
え、何この数式。というか化学式なのだろうか?
「落ち武者さん、これ本当なのですか?」
「どう見てもそうだろ」
てか、ナミネは数式の意味分かったの?
「ねえ、この数式何?」
セナ王女も不思議がってる。
そういえば、気付かなかったけど、ユメさんとクラフは帰ったのか。それにしても、この数式はいったい……。
「カナエも薄々は気づいていましたが、こればかりは……」
「他人が口出しすることでもないしね」
え、カナエさんとアルフォンス王子も分かるの?
「ねえ、ナミネ、どういうこと?」
「い、いや、それは言えません」
どうして言えないのだろう。ニンジャ妖精さんとラハルさんは落ち武者さんに数式を見せてもらっている。けれど、みんな分からなさそ……いや、待てよ。何となくロクメさんは気づいてる感じしたけど、突っ込んだらいけないパターンなのか?
「ナナミが私を嫌っているのは分かった。でも、だったら、私と関わらなければいいだろ!」
「目に入るから迷惑だし、さっきだってわざとぶつかって来たし!」
「わざとではないと言っているだろ!いい加減離せ!」
どうしたらいいのだろう。ナナミさん、普段はこんな人じゃないのに。3年生の間で何かあったのだろうか。
その時、突然ナミネが歌い出した。
「舞い上がる アドバルーン
この町に はじめての
デパートが できた あの時は
みんな嬉しそうに していたね
10年 20年 少しずつセピアに
変わらないもの なんてない
けれど 本当は みんな思ってる
微笑み合った日 遠のかないで
懐かしい その言葉が 返って胸痛む
もう二度と 訪れない あの時だけの
時間だったから
この町も かつては森だった
なにもない平穏に 僕ら いつも
当たり前のように 和まされていた
こころの中の風景は 色褪せて
今は見かけない アドバルーン
この町も 変わってく
デパートの 屋上の乗り物で
僕ら いつも はしゃいでた
懐かしい その言葉が 返って胸痛む
もう二度と 訪れない あの時だけの
時間だったから
この町も かつては森だった
なにもない平穏に 僕ら いつも
当たり前のように 和まされていた
こころの中の風景は 色褪せて
時流れ 森も町になったんだ
それはそれで 賑わっていて
多分 楽しいけれど 忘れないで
大切なのは いつも 君の中」
ナミネの歌声可愛い。
「あれっ、これってミナクの好きな曲よね?」
そういえば、フェアリー地平線さんの中でも1番聴いていたような……。
ナミネはまた歌った。
「古い夢 今頃になって 叶えたいと願う
あの頃は 青春の 誘惑に負けていた
遠い昔 桜木町で開いてた 小さなコンサート
気が付けば 遊楽に のみこまれていた
自分のしたいこと チャレンジすれば
いつの日か 花咲くと 思い込んでいた
僕が描いた夢は 遠い都の向こう
最終列車も 乗れないまま
帰れないよ このまま帰れない
名もない 夢追い人
あなたの 愛得られず 泣きながら歌った
あの頃は 欲しいもの 得られると思い込んでた
遠い昔 桜木町で開いてた 小さなコンサート
あなたはいつも バイト帰りに 来ていたね
自分のしたいこと チャレンジしても
時経てども 芽を出すことは なかった
僕が描いた夢は 遠い都の向こう
最終列車も 乗れないまま
帰れないよ このまま帰れない
名もない 夢追い人
今の桜木町 空き地になってる
あの場所で かつては賑わって
楽しすぎて 嬉しすぎて
僕の 思い出の空間(せかい)
僕が描いた夢は 遠い都の向こう
最終列車も 乗れないまま
帰れないよ このまま帰れない
はぐれた 夢追い人」
ナミネ、可愛すぎる。
「ナミネ、可愛い」
「これもミナクの好きな曲よね?」
そういえば、ベストアルバムに入ってたっけ。
「放課後になって 降りはじめた雨
色とりどりの傘が 並んでる
ひと目でわかる 君の傘模様
ただ見つめているだけで よかった
商店街ですれ違い こころが痛む
作り笑顔 気付かれていたかな
古い文房具を 手に取る君に
幼い頃を重ね合わせ また花涙溢れる
(途中)」
「これもミナクの好きな曲だわ」
その時、ナナミさんがポロポロ涙を零した。
「そうよ……そうよ……ずっとあんたのこと見てた。ずっとあんたが好きだった」
えええ!ナナミさんってミナクお兄様のこと好きだったのか!?
ナナミさんはミナクお兄様から離れ走って第4居間を出て行った。ミナクお兄様は慌てて追いかけた。私も流れて2人を追った。
ミナクお兄様は廊下でナナミさんの手を掴んだ。
「ナナミ、ごめん……」
「何よそれ……もういいわよ。ミナクって昔から鈍いんだから」
「ナナミ、どうしたらいい」
「どうもこうも、本命出来たんならどうしようもないでしょ」
ナナミさんはミナクお兄様の手を振り払った。
「だったら茶道部入ってよ」
「ナナミ、入部届け出す!」
「本当、どうして本命なんか作ってんのよ」
「ごめん……」
ナナミさんは、2階へ上がって行った。
はあ、ミナクお兄様も、どうしてセナ王女なのだろう。
私たちは再び第4居間に戻った。
第4居間ではみんなは静まり返り、テレビの声だけが聞こえていた。ナナミさんは大丈夫だろうか。
「シュリ、あの暗号解けてたか?僕は解けてたけどな」
え、そうなの?
「カンザシ、嘘に嘘並べると、そのうち誰からも信用されなくなるぞ」
「暗号解けなかったからって僻むなラハル」
何かもうここまで来ると周りにまわって友達なような……。あれ?シュリさん、またタバコの後が……。
「あの、シュリさん、そのタバコの跡、どうしたんですか?」
以前、うやむやなまま帰ってしまったから、今回はちゃんと聞いた。シュリさんは黙ったままだった。
「顔だけヨルク、シュリの上着脱がせろ!」
「えっ、でも……」
「あんたやらないなら僕がやる!」
落ち武者さんは、シュリさんの上着を脱がせた。
えっ、何これ。身体中にタバコの跡……。どうして。いったい誰がこんなことを。
「シュリ、あんた誰にやられた」
「じ、自分でやりました」
「タバコのメーカー教えろ」
「えっと……」
やっぱりイジメなのだろうか。それにしても、これは酷すぎる。かなり辛かっただろう。
「ラハル、あんた誰だと思う?」
「さあね、僕には分からないな」
「言え」
落ち武者さんはラハルさんに扇子を突き付けた。
「落ち武者さん、やめて!ラハルさんは関係ないよね!」
「もうやめましょう。こういうのはイジメられた本人が前向きにならないと解決には向かいません」
ナミネにしては珍しい。いつも、ラルクにどうにかしようと相談してるのに。そうか、ラルクがいないからか?
「いーや、僕は犯人突き止めるけど?」
「落ち武者さんがそう言うなら私も付き合います」
切り替え早っ。
「シュリさん、本当誰なんですか?」
ナミネが聞いてもやっぱり答えない。
「僕の安全を保証してくれるなら答えてもいい」
あ、安全の保証って何?
「ええ、もちろん保証するわ」
てか、どうしてリリカお姉様が答えるの?
「ラハル、あんたの身の安全は保証する」
「カンザシだよ」
え、カンザシさんが?どうして仲間を……。みんなは突然騒ぎはじめた。
「皆さん黙ってください!まずはカンザシさんの話を聞きましょう!」
ナミネ、どうしてカンザシさんを庇うの。やっぱりカンザシさんに気があるのだろうか。実の兄に。
「いや、ラハル、あんたから話せ。その次にカンザシだ」
「言うつもりなかったけど、シュリのことがみんなに知られたから話さざるを得なくなったけど。カンザシは、これまで付き合ってた彼女にDVしてたんだよ。何人か病院送りになったし。デビュー後は何かあればニンジャ妖精のメンバーを殴り、グルグル妖精やサムライ妖精のことも殴ってるんだよ。怒った時のカンザシは誰も手が付けられない。だから、みんなカンザシのこと嫌ってるよ」
まるでナミネじゃないか。兄も兄なら妹も妹と言うことなのだろうか。しかし、カンザシさんは男だから、殴られた彼女はカンザシさんとの別れを選んだだろう。私もナミネとはかなり力量の差があるから、例えるならカンザシさんの元カノだろうな。
「じゃ、次カンザシ」
「デビューしてすぐ、タツマキ妖精さんとテレビで共演しましたが、僕が誤った発言をして、その後、タツマキ妖精さんからイジメを受け、メンバーに助けを求めましたが、誰も助けてくれず……」
「その矛先がメンバーに向いたってわけだな」
うーん、何だか歯切れが悪いというか、だったら、どうして他のグループも殴る必要あるのだろう。
「みんなはどう思う?」
え、ここでみんなに聞くの?
「私個人としては出来れば仲間は見捨てて欲しくない。私なら見捨てない」
ミナクお兄様、何て白々しいのだろう。これ、聞く意味あるのか?
「私も仲間を見捨てるのは良くないと思うわ。明らかイジメじゃない。私も同じことされてきたから、見捨てられるのはいやだわ!」
セレナールさんもそうきたか。
「そうね、仲間なら助けるべきだと思うわ」
セナ王女も……。
「カナエも仲間を見捨ててはいけないと思います!」
「私も仲間を見捨てるなんて考えられないな」
……。
何故だ。何故、ニンジャ妖精さんが悪い方向に意見が進む。明らかおかしい。けれど、弱い立場の私が反対意見をすれば、袋のネズミだ。その時、ナミネがカンザシさんを抱き締めた。
「カンザシさん、辛かったんですね。でも、1人で耐えなくていいんです。タツマキ妖精さんはラルクがケリ付けましたし、もう攻撃はしないでしょう。カンザシさんがイジメられたら私が助けます!」
「ナミネさん……」
カンザシさんはナミネの腕の中で泣いた。
何なんだ、このやり取りは。これじゃあまるで、メンバーが悪いと言ってるようなものではないか。
しかし、人というのは、ひとたび同じ闇に触れてしまえば、その闇を共感し、育てようとする生き物だ。理由は孤立したくないからだ。だから、理解されない人ほど、同じ境遇の人に出会えば余計に絆を深めようとする。
「じゃ、仲間見捨てたメンバーが悪いってことで……で締めくくりたいが、強気なナミネ、あんたレオルに今のことメールして意見求めろ!」
「分かりました」
はあ、やっとカンザシさんから離れてくれた。
ナミネは携帯を持つとレオルさんにメールをした。
「返信来ました」
ナミネは携帯を机に置いた。
『はい、確かにカンザシには暴力癖があります。僕も殴られ、3度も病院送りにされました。カンザシは何度オーディション受けても通らず、ラハルや僕のことを妬んでいるんです。彼女持ちの人から何度も女の子取ってますし。正直みんなカンザシのことは嫌いだと思います』
やっぱり経験者は嫌うよね。それでも、芸能人だから、隠してたのか。
「なるほどね、ラハルと同じ意見ってわけか。カンザシ、あんた病院行け!どっかの強気なナミネの兄みたいになる前にな!」
「落ち武者さん、明日は私はラルクを探しに行きます」
「じゃ、エルナ、あんたが連れて行け」
「分かったわ」
「僕も行く」
私もナミネが心配だからカンザシさんの付き添いは出来ない。今のところ、エルナとラハルさんだけか。他の人にも着いていってもらいたいのだけど。
「ねえ、カンザシ、私の大切なラハルを傷付けたらどうなるか分かるかしら?」
「ぜ、絶対にラハルには手を出しません!」
「リリカお姉様、やめてください!まずは病院で病名聞いて治療しないといけないでしょう!」
ラハルさんのみ守られても他の人が殴られたら意味がないではないか。
「カナエとアルフォンス王子もカンザシさんの付き添い行ってくれるかな?僕もラルク探すから」
「分かりました。カナエもカンザシさんの付き添いをします」
「分かった、私はカナエに着いて行く」
ナルホさんはやっぱりラルクを探すのか。ナミネも元気なさそうだし、ラルクは今どうしているのだろう。
「ナミネは今夜はナルホさんと一緒に寝るんだよね?」
「はい」
その時、ナミネの携帯が鳴った。
「またメール来ました」
ナミネは携帯を机に置いた。
『この際だから、ニンジャ妖精の所得事情教えます。カンザシが月9万円ほどで、他のメンバーは3万円ほどです』
今度はサンゾウさんからか。恨みというのは怖いな。しかし、あのような高級マンションに住んでいるのに、今の月収では足りなくないか?支払いはどうやっているのだろう。月200万円のマンションらしいが。
え、シュリさんが殴られてる!?
「はい、ストップ!あんた、シュリ殴っても現状変わらないだろうが!」
落ち武者さんは止めに入った。
それにしても、女癖の悪さ、金遣いの荒らさ、まるで、以前のミナクお兄様だな。
ナミネは、返信をしているのだろうか?
カンザシさんが落ち着いた後、みんなはそれぞれの部屋に入って行った。
深夜何時だ?落ち武者さんとエルナさんが……。もう、これでは眠れないではないか。私はナミネの部屋を出て階段を降りた。
あれ、2つ目の客間から物音がする。私は客間の前に立つと、少し扉を開けて中の様子を伺った。
そんな、まさか……。
私は有り得ない光景を目にした。念の為に撮影しておこう。それにしても、セレナールさんの声……響く。カンザシさん、ナミネのこと好きな素振りしてセレナールさん狙いだったの?
「ヨルク……」
え、どうして私の名前呼ぶの?
「ヨルク、好き!」
……。
私は好きじゃない。もうこうなったら落ち武者さん呼ぼう。
私は階段を駆け上がり、再びナミネの部屋に入った。
「落ち武者さん!!」
「何だよ!今取り組み中なんだけど?」
「セレナールさんとカンザシさんが大変なの!」
私は撮影した動画を落ち武者さんに見せた。
「あの野郎、姉さんに手を出しやがったか」
落ち武者さんはナミネの部屋を出た。私とエルナも落ち武者さんを追いかけた。
もう一度、あの部屋に入ると……セレナールさんの身体中にアザがあり、マモルさんがセレナールの上に乗っていた。
落ち武者さんはマモルさんを突き飛ばし、カンザシさんを殴り付けた。
「あんたら、姉さん襲ったのか!」
「セルファ!カンザシとマモルにイジワルされたわ!」
「2人とも絶対許さない」
エルナはセレナールさんに服を着せた。
「ち、違うんです!セレナールさんとは合意でした!」
確かに私が見た時はいやがってる雰囲気ではなかったけど。
「姉さんはイジワルだと言ってるだろ!」
「セレナールさんから誘ってきたと思ったらヨルクさんの名前呼ぶから思わず手が出てしまいました。それで、マモルに渡しました」
「あんた、自分のやったこと分かってんのかよ!今すぐマスコミにリークしてやる!エルナ、姉さんにアフターピル飲ませろ」
「分かったわ」
エルナはセレナールさんにアフターピルを飲ませた。けれど、何かおかしい。
「あの、セレナールさん、どうして私の名前呼んだんですか?」
この間はなんだ。
「ヨルクだと思ったの!だから、許したのにカンザシだったし、殴られて、マモルに回されたわ!」
「どうしてですか!セレナールさんはラルクのこと好きなんじゃないんですか?」
「好きよ!でも、ナミネが羨ましいの!ラルクは効率いい交際しかしてくれない。私もヨルクに愛されたかったの」
気持ち悪い。同情するけど気持ち悪い。私はセレナールさんのこと、そんなふうに見れない。咄嗟に私は携帯を取り出し、キクスケさんにセレナールさんが私を犯さないようお願いをした。ナミネのためにも穢れるわけにはいかない。
けれど、今はセレナールさんが穢されている。
落ち武者さんは、カンザシさんとマモルさんをひたすら殴り続けた。
「セルファ!やめて!このままじゃ死んでしまうわ!」
「エルナ、今すぐリークしろ!」
「分かったわ」
エルナはマスコミに電話をした。
けれど、どうしてだ?どうして、カンザシさんもマモルさんも何も言わない。芸能生命が絶たれようとしているのに。
……。
「ダメだ!2人のどっちかにバックが着いてる!」
落ち武者さんは2人を拘束した。
「吐け!」
「ヨルクさん……?」
ナミネが起きてきた。……てか、みんないる?
「ナミネ、寝てようか」
私はナミネを抱っこした。すると、ナミネは手足をバタバタさせた。
「ちゃんと説明してください!」
「姉さんがこの2人に犯されたんだ。カンザシのことは顔だけヨルクだと思ったらしい」
その瞬間、ナミネの目の色が紫色になった。
「ヨルクさんを抱こうとしてたんですか?どうしてですか!セレナールさんはラルクのことが好きでしょう!ヨルクさんじゃなくてラルクのことが好きでしょう!」
「セルファ、兄さん呼んで……」
セレナールさん、相当ショック受けてる。でも、私もショックを受けていた。
「分かった、今すぐセリル呼ぶ」
「なるほど、君たちがセリルさんの妹弟なんだね。とりあえず、セルファは僕の部屋に来てくれるかな?セレナールさんはカナエが月城総合病院に連れて行ってくれるかな?カラン王子はナミネを客間に連れて行って寝かしつけてくれるかな?リリカさんはマモルさんとカンザシさんから話聞いてくれる?」
落ち武者さんはかなり怒って2人を殴り付けようとしたがナルホさんが部屋に連れて行った。そして、みんなはナルホさんの指示通りに動いた。
それにしても、ナルホさんが初対面のカラン王子にナミネを預けるなんて珍しい。逆にこういう時は、私よりカラン王子のほうがいいのかもしれない。
「部屋に戻るわよ、ヨルク」
「うん」
「ヨルクさん、ナミネさんのことは朝になったら第4居間に連れて行きます」
「あ、お願いします」
私はセレナールさんに疑念を抱きながら、カンザシさんとマモルさんを軽蔑しながら、落ち武者さんを心配しながら、エルナとナミネの部屋に戻って行った。
この世は誰もが幸せになれないのだろうか。
私は先程の光景を見て絶望していた。
……
あとがき。
走り書き書いても、なかなかその通りにはいかないものですね。
小説の時間軸で2ヶ月も早まってしまいました。
ラルクの行方は分からないまま……。
セレナールはカンザシによってマモルに引き渡されてしまうし、純愛偏差値はとにかく悲しいのです。
マモルとカンザシの芸能生命はどうなるのでしょうね。
PR
純愛偏差値 未来編 一人称版 48話
《ナミネ》
ナルホお兄様が紀元前村からナノハナ家に帰ってきた。
けれど、ナルホお兄様は帰るなり、私とカンザシさんに、兄妹であることを告げたのである。カンザシさんとは出会って間もないし、正直信じられなかった。けれど、DNA鑑定では確実にお父様の子だし、私とカンザシさんは兄妹確定となった。
このことはまだ、落ち武者さん、ヨルクさん、エルナさんしか知らない。まして、芸能界で知られてしまったら大騒ぎだ。
それに、よりによってヨルクさんも一緒に聞いていたから、ヨルクさん、大泣きしちゃって私は胸が痛んだ。ヨルクさんとカンザシさんは瓜二つ。でも、性格は全然違う。私とカンザシさんは赤の他人同然かもしれない。だから、ヨルクさんが不安がるのも無理はないのかも。カンザシさんのことはあくまで兄以上の存在としては見ることは出来ない。それに、カンザシさんってなんだかんだで女いっぱいいそう。
私はカンザシさんが実の兄だと知った時はとても嬉しかった。けれど、カンザシさんはそうではない気がする。
カンザシさんのことでヨルクさんを不安にしたくない。私はカンザシさんへの接し方にとても迷いを覚えた。
落ち武者さんからは、遠い前世に私がカンザシさんとラハルさんと交際していた映像を見せられた。ヨルクさんも見た。ヨルクさんが大泣きしたらどうしようと思ったけれど、ヨルクさんは私の遠い前世のことを受け入れてくれた。更には、私とカンザシさんが一緒ににお風呂に入っても良いと言ってくれた。
無理してるのだろうか。でも、それだけ私のこと思ってくれているのなら、私もヨルクさんを悲しませることはしたくない。
あの後、ヨルクさんは油が飛び散ると危ないから先に第4居間にいるよう言った。ヨルクさんは私のこと子供扱い。私もう中学生なのに。けれど、そんなヨルクさんの優しさが私は好きで好きでたまらなかった。
第4居間では意外に賑わっていた。
「えっと、つまり、セルファのお姉様はセレナールで、ラハルさんは、セナ王女とセレナールの妊娠体験をナミネから聞いて、映画化したんだね」
飛べない翼。個人的には多くの妖精村の人に知ってもらいたい。
「うん、絶対にあってはならないことだから、脚本家に話したらすぐに作品にしてくれたんだ。それと、今回のラルクの問題に役立つかどうか分からないけど、花夢物語のパンフレット渡しておくよ」
ラハルさんはナルホお兄様に花夢物語のパンフレットを渡した。
「ナミネだけラハルと共演狡い!」
やっぱりナナミお姉様はそうくるか。
「ナナミはオーディション残念だったね。演技がちょっと固いね。リリカはコマーシャルのオーディション合格おめでとう」
リリカさん、受かったんだ。てか、2人ともいつ受けたの!?
「でも、ラハルと共演出来ないなんて意味ないわ」
「リリカ、最初から思い通りにはならないよ。まずは知名度知ってもらうことからはじめたほうがいいと思う」
ラハルさんてコツコツタイプだよね。ヨルクさんとは違った形で。優等生というか、リーダーシップというか。
そういえば、カナエさんとカンザシさんの苛立ちの感情がすれ違ったことが解除されてから、アルフォンス王子とカナエさん、何か前より仲良くなってる。
ということは、今のカンザシさんは相当な苛立ちを抱えているのだろうか。
その時、セレナールさんが立ち上がった。
「納得いかないわ!みんな幸せなのに、どうして私がラルクに捨てられなきゃいけないのよ!全てカナエのせいよ!兄さんに言いつけてやる!」
「セレナール、落ち着くのです!あれはカナエの意思ではありませんでした。カナエはカナエで自分とは全く違う感情に苦しめられていたのです」
まさか、カナエさんとカンザシさんの苛立ちの感情が入れ替わっていたことによって、セレナールさんとの仲は険悪モード、森の湖では歴史を変えてしまうことになってしまうだなんて。
「とりあえず今日はニンジャ妖精さんは適当に客間使ってくれるかな、ラハルさんも」
「ありがとうございます」
「何言ってるの?ラハルは私の部屋に泊まるに決まってるじゃない!」
今日はみんな帰らなさそう。
「ナミネさん、近々、こちらでもアパート借りようと思ってます」
「えっ、どうしてですか?」
「ナミネさんといつでも会いたいからです」
えええええ!知り合って間もないし、兄妹だと知ったのも今日なのに、どうして。それとも事実を知ったからこそ、カンザシさんは私と過ごせなかった時間を今から作ろうとしているのだろうか。
「そ、そうですか。この辺の物件安いので、アパートはいくらでもあると思います」
「奇遇だな、カンザシ。僕も、この辺にアパート借りようと思ってるんだ」
えええええ!ラハルさんまで!?いったい何のために?
その時、ヨルクさんと落ち武者さんが料理を運んで来た。わあ、天ぷらが可愛い形になってる。うどんに付けて食べるのかな。
私は写真を撮った。
「エルナ、料理作った」
「あら、彼氏気取りかしら?落ち武者さん」
やっぱり、この2人どう見ても好き合ってるじゃん。どうして復縁しないのだろう。
「ヨルクもセルファも料理上手なんだね。ナミネは毎日ヨルクの料理食べてるのかな?」
「はい、ヨルクさんとはナノハナ家とクレナイ家を行き来してまして、いつもご飯作ってもらってます」
「そっかあ、まるで新婚さんみたいだね」
え、そ、そんな。私も早く大人になってヨルクさんと結婚したいけどさ。
「ミナク、適当に天ぷら、お皿に入れてくれるかしら」
「かしこまりました、セナ王女」
ミナクさんはセナ王女の天ぷらをお皿に入れはじめた。セナ王女って、ミナクさんには甘えっぱなし。人のこと言えないけど、ユメさんと付き合ってた時はミナクさん別人だったよね。
「ナミネ、ナミネの好きな天ぷら入れたから一緒に食べようね」
「はい」
私はラルクに何度もメールしているけど、ラルクからは全く返ってこなかった。ラルク、家にも帰らないでどうしてるの?
その時、カンザシさんが天ぷらを落とした。
「シュリ、食え」
え、どうして。カンザシさん、何か怒ってるの?
「あ、落ちたものは私が処分しますので、新しいの食べてください」
ヨルクさんはカンザシさんが落とした天ぷらをティッシュで取るなりキッチンに持って行った。
「自分の落としたものを人に食べさせようとするなんて最低だな」
ヨルクさんが戻って来た時、リリカさんとミナクさん、セナ王女が笑った。
「ねえ、どうして笑うの!私じゃないよね!」
「あ、ラハルさんは花夢物語どう思います?」
私は無理矢理話題を変えた。
「あれは、原作者の失恋を描いた物語なんだよね。原作者は永遠の愛を求めるものの、そんなものは存在しないとラストはハッピーエンドにならなかったんだ。でも、取材の時は、決して歴史を変えてはいけないとも言ってたよ」
そっか。あの映画は元々はラノベだったのか。何だか話聞いてると、今のラルクみたいだな。
「ナミネさん、お風呂上がり2人になれませんか?」
「え、でも……」
私はヨルクさんを見た。
「ナミネ、私に気を遣わないで、好きな時間過ごして」
ヨルクさん……。
「そ、それじゃあ、1時間ほどなら……」
「楽しみにしてます!」
何だか気まずい。カンザシさんは実の兄だけど、ナルホお兄様やナヤセス殿とは違う。やっぱりまだ赤の他人だ。
「ナミネ、もうすぐ生理だよね。このポーチにいつもの入ってるから」
えええ、どうしてこんな大勢の前で言うの?恥ずかしすぎる。でも、生理が来る気配なんてない。気になっていたけど、少し前から時間がおかしい。完全に遅れてる。落ち武者さんは気づいてるだろうけど、ヨルクさんは気付いてなさそう。
「あ、ありがとうございます……」
私は俯きながらポーチを受け取った。
「ナミネ、お腹痛い?」
どうしてまだ聞くの?
「いえ、多分遅れてるだけだと思います」
「えっ、でもナミネって初でしょ?」
このタイミングで聞いてくるセナ王女……。
「あら知らないの?天の川村で研究してるのよ。好き合うカップルが1日12時間以上いることで妊娠する可能性の見込みがあるって」
そういえば、ニュースでも見たことある。けれど、妊娠しても9.9割の女性は化学流産してるとか。
「そうだったの。医術も発展したものね」
「ナミネ、妊娠してたら絶対責任取るから!学校やめて働いて、ナミネとお腹の子の面倒見るから!」
ヨルクさんも真に受けないでよ。
「本当に遅れてるだけですから!」
そう、時間の速度が明らか遅れてる。
けれど、生理は遅れるのに、カナミさんの件は既になかったことになりカナミさんの記憶から消えている。妖精村は不可思議だ。
え、セナ王女泣いてる?
「カラルリもヨルクのように彼女に尽くしまくる人だったら……中絶薬を盛られた悲しみは今も消えない……」
セナ王女……。確かにヨルクさんは責任を放棄はしない。けれど、カラルリさんがどうしてセナ王女を流産させたのかも分からない。
「セナ王女、カラルリさんはおかしくなってしまったんです。私なら必ずセナ王女の責任を取ります。どうか、私との未来をお考えください」
「ミナク……。私にはもうミナクしかいないわ」
セナ王女はミナクさんにもたれかかった。
「ニンジャ妖精さんやラハルさんは、もし自分の彼女が妊娠したらどうしますか?」
「うーん、今は責任取れないかなあ。もう少し軌道に乗ってから結婚は考えたいから今は諦めてもらうと思う」
マモルさんもやっぱり責任は取れないんだ。デビュー仕立てはお給料あまり良くないのかな。でも、だったら、あんな高価なマンションには住めないよね。
「僕も今は無理です……」
シュリさんもかあ。
「僕は責任は取りますが、すぐには結婚は出来ないので、養育費を払いながら大人になったら転職して養います」
ロクメさんは何か他とは違う発言。大学までは行くから、すぐには一緒になれないのかな。
「僕も中絶促すと思います」
フタバさん……怖い……。
「僕は責任取ります。今よりも安いアパートにはなりますが、芸能界のお給料で支えたいです」
カンザシさん、ちょっと意外かも。何となくミナクさんと同じ空気してるから、責任は取らないかと思ってた。
「僕も責任は取るし、別のアパートに引っ越して学校はやめて芸能界の給料で養ってく」
ラハルさんはカンザシさんと少し意見重なってる……?
「ラハルの給料で養えるのかよ」
「そういうカンザシこそ月給いくらなんだ」
やっぱりこの2人仲悪いのかな?
「僕は月に160万円は稼いでいる」
えっ、カンザシさんてそんなに稼いでいるんだ。
「カンザシさん、デビュー仕立てなのに凄いですね」
「今から貯金しておきたいので」
貯金かあ……。まだまだ先の話かも。
「ナミネ、話してばかりいないで食べて」
ヨルクさんは私に天ぷらを食べさせた。
「あ、ニンジャ妖精さんとラハルさんは、このパンツどう思いますか?」
私は洗濯カゴから取り出したヨルクさんのパンツを見せた。
「ナミネ、やめて!どうしてこういうことするの!何故私のみを攻撃し傷付け貶める」
「付きまとう罪は奈落の底」
「ふざけないで!煉獄女官見習いは見てないって言ってるでしょ!」
ヨルクさんって、すぐに怒る。
「正直、そういうのは小学生で卒業してると思う。ダサイって言うか……」
マモルさんにダサイって言われてる。
あれ、他は意見なし?何だか呆気ないな。
「ナルホお兄様とナヤセス殿も同じものを履いています」
「どうして、今パンツの話してるのかな?」
「ナルホ、お前オシャレに疎いの全然変わってないな」
ミナクさんはファッション雑誌よく見てるもんな。
「もう、返して!下着なんて何履いてもいいでしょ!ナミネ、こういうの良くないよ」
「でも、ヨルクさんはいつも私の下着見てますよね?」
「変な言い方しないで!洗濯物干さないといけないから仕方ないでしょ!」
「はいはい、すみませんでしたー!」
私はヨルクさんから離れ、落ち武者さんの隣に座った。それにしても、高校生での妊娠はやっぱり責任取れない人が多いのか。
食べ終わった私はナルホお兄様とお風呂に向かおうとした。
「ナミネ、湯冷めしないでね」
「はい」
ヨルクさんは私にカーディガンをかけた。
ナルホお兄様とかなり久しぶりのお風呂。
「意外だね」
「え?」
「ラルクラルク言ってたナミネがヨルクと交際してるなんて」
あ、ナルホお兄様は途中から紀元前村に行ったから、その後のことは何も知らないんだっけ。でも、実際のところ、私自身少し前まではラルクのこと好きだったんだよな。
「あ、私もずっとラルクのこと好きでした。でも、ある時に知ったんです。天使村時代はずっとヨルクさんのこと好きだったと。でも、初代天使村でヨルクさんとの結婚後、3年でヨルクさんは突然死してしまい、私はショックでその3ヶ月後に自殺したらしいです。そのせいで、ヨルクさんとの結婚後、私は衰弱死していたとか。私は、最後の天使村の時の番人に二度とヨルクさんを好きにならないようお願いして妖精村時代はラルクのこと好きになってしまってたみたいです。でも、今はヨルクさんのことしか想ってません」
本当、最後の天使村であんなお願いするんじゃなかった。ヨルクさんと2人で乗り越えていくべきだったんだと後から思い知らされた。
「そっか。ヨルクは優しいし、どんなナミネでも受け止めてくれるから、ナミネも幸せになれると思う」
ヨルクさんは優しい。その優しさに私はいつも甘えてしまう。
「あ、やっぱりそうですかね」
「でも、喧嘩した時、いつまでもナミネが拗ねたままだと、ヨルクもいつまでもは待たないからね。それから、万が一ナミネが妊娠したらヨルクは大学に行けなくなってしまう。今の時代、中学中退では就職なんてないからね。ヨルクは大学を卒業するべきだと思うよ」
いつまでも待たないか。まるで、これまでの最後の紅葉橋のよう。ヨルクさんは、他の人と結婚して幸せだったのかな。
妊娠か。リスクを視野に入れてなかったわけではないけど、やっぱりヨルクさんと愛し合いたい。
「そうですね。でも、私はヨルクさんを中学中退にはしません。私が休学してヨルクさんにはそのまま学校に通ってもらいます。でも、毎回ヨルクさんから求めてきて……それはもう毎日のように……」
この時の私は、ヨルクさんと落ち武者さん、エルナさんが立ち聞きしていることを全く知らなかったのである。
「分かった。じゃあ、せめて行為後は僕の庭園で作った薬草のお茶飲んでくれる?ピルとかトケイ草とは違って、体内には何の影響もないから」
ナルホお兄様はカナエさんと似ていて植物に興味がある。カナエさんはどちらかというと薬草だが。ナルホお兄様は紀元前村で植物の研究をしていたらしい。将来は植物研究員を目指すとか。
「分かりました。あ、カラルリさんはどうして中絶薬なんか盛ったのでしょうか。まるで、私の知ってるカラルリさんとは別人です」
「人は何世紀も経てば変わるものだよ。いつかヨルクもナミネ以外の人好きになるかもね」
え……少しずつ変わってるってこと?ヨルクさんと付き合えなくなる……?
「そんなの絶対いやです!私、来世も来来世もその後もヨルクさんと結婚します!」
「カラルリさんは少し飽きっぽいからね。今の時代、携帯通して色んなこと出来るから。でも、セナ王女の妊娠のことは軽く見てたんじゃないかな。今は諦めて大人になってからまた作ればいいと」
そうなんだよね。でも、だからって責任取らないなら取らないでセナ王女に産ませる選択肢を与えるのが筋だろうに。
「ですが、産むか産まないかはセナ王女が決めることですよね」
「交際を続ける以上、セナ王女はカラルリさんに責任を取るよう何度も迫ったと思うよ。でも、セナ王女は何もしなくても化学流産だったのに対して、セレナールのほうは完全な殺人だよね」
セナ王女は、まだ胎嚢とまではいっていなかった。けれど、確かに妊娠の兆候はあった。セレナールさんの場合は中期だったから、手続きも色々大変だったと思う。
「私はアルフォンス王子が何を考えているのか分からないです」
「葛藤してるんだろうね。本当にカナエにピルを飲ませてるのならカナエはキープ状態。カナエより良い人と恋仲になった時のためにカナエには妊娠させてないのだと思う。でも、セレナールの妊娠で魔が差したんだろうね」
アルフォンス王子の中では何も定まっていないけど、いざ、セレナールさんの幸せを見たら妬みの感情を抱いたというわけか。
「あの、ラルクはどうなるのでしょう」
タイミング悪い時にナルホお兄様が帰ってきたあまり、私はナルホお兄様と兄妹らしい会話は全然出来ていなかった。
「時を超えての恋愛は成り立たないと思うよ。やっぱり、何千年も離れた人より、同じ時代に生きる人と幸せになりたいって人は思うものなんだよね」
「ということは、歴史通りセレナールさんは皇太子様と一緒になってラルクとは別れるということですか?」
「多分ね」
ラルク……可哀想……。支えてあげたい。せっかく、森の湖にいるセレナールさんと交際したのに、幸せになれないなんて。ラルク、この先どうするの。
「ラルクは幸せになれないんですか?」
「正直、僕はラルクはナミネと交際すると思ってた。でも、ナミネはヨルクを選んだ。今のラルクは現世のセレナールのことは愛していない。だとしたら、ラルクはゼロから好きな人に出会う必要があるよね」
難しいな。でも、セレナールさんのことが一目惚れなら、綺麗な人紹介したら、その人と幸せになってくれるかな。
「ナミネ、そろそろ出るよ」
「はい」
私とナルホお兄様がお風呂から出るとカンザシさんが待っていた。そうだった。1時間だけ時間取るって言ったの私だった。2人きりだなんて何だか気まずいな。私はカンザシさんを2階の客間に案内した。
カンザシさんと2人きりの空間。何を話していいか分からない。というか、どうしてカンザシさんは私と2人になりたいのだろう。とりあえず無難に弾き語りしてもらおうかな。
「あ、とりあえず弾き語りしてもらえませんか?」
「はい、どの曲にしますか?」
えっとどうしようかな。
「あ、では、フェアリー地平線さんのマスカットお願いします」
「好きなんですか?」
「私は聴かないんですけど、ミナクさんが好きなんです」
「そうなんですか。でも、何だかそんな感じもしますね」
カンザシさんは、マスカットを弾き語りしはじめた。
この時の私も、ヨルクさんと落ち武者さん、エルナさんが立ち聞きしていることを全く知らなかった。
「どうして君は 美しさ求めるの
黄昏の浜辺で まわる 君は
こんなにも 美しいのに
君の心 今すぐ 理解してあげれないけど
少しは 頼ってほしいと 願うもの
いつからか 部屋には1つも鏡が存在しない
誕生日に コンパクトミラー渡したら
いらないと 泣きながら その場で壊された
気持ちと気持ちが 折り合わない いつかの夏
季節巡り少しは 理解してたと思ってた
それでも 頼ってくれない 切ないよ
いつからか 部屋には1つも鏡が存在しない
誕生日に プリザーブドフラワー渡したら
ありがとうと 作り笑顔で 受け取った
気持ちと気持ちが すれ違う いつかの夏
いつからか 部屋には1つも鏡が存在しない
誕生日に 満天の星空の下で思いを伝えた
ごめんなさい 君は言う 心を開けないと
気持ちと気持ちを 寄り添わせたい いつかの夏」
カンザシさんさんの弾き語りは好き。
それに、落ち武者さんに見せてもらってた映像では、カンザシさん、駆け出しミュージシャンだったな。
時を経て、今はプロになったんだね。
「カンザシさんは、お歌が上手ですな。えっと、次は……」
「ナミネさん」
えっ、急に何?やっぱり2人きりなんて気まずいよ。
「え、な、何ですか?」
って、私抱き締められてる!?
カンザシさんの汗ばんだタバコのにおい……。お、思い出した!
カンザシさんって、汗かくとヒロシノさん並の体臭で、同棲してた頃、私何度も気絶しそうになってたんだ!それに、あの時のカンザシさん、ヒモだった!今は私の兄だなんて、どんな巡り合わせなのだろう。
「おい、カンザシ!2人きりになればこんなことするなんて最低だな」
え?ラハルさん?てか、ヨルクさんや、落ち武者さん、エルナさんもいる!
「じゃ、僕らも弾き語り聞かせてもらう」
みんな入って来た。
カナエさんが歴史変えてヨルクさんと拗れた時に私が行った桜木町の空き地は、遠い昔、カンザシさんがコンサート開いてた場所だったんだ。
私は遠い昔の一コマを眺めていた。
……
あとがき。
何だか一気に詰め込んじゃった。
もう少しゆっくりがいいのかな。
他の人視点でも書きたいのに、なかなか出来ずにいる。
でも、書きたい。
たまには間に挟みたいです。
《ナミネ》
ナルホお兄様が紀元前村からナノハナ家に帰ってきた。
けれど、ナルホお兄様は帰るなり、私とカンザシさんに、兄妹であることを告げたのである。カンザシさんとは出会って間もないし、正直信じられなかった。けれど、DNA鑑定では確実にお父様の子だし、私とカンザシさんは兄妹確定となった。
このことはまだ、落ち武者さん、ヨルクさん、エルナさんしか知らない。まして、芸能界で知られてしまったら大騒ぎだ。
それに、よりによってヨルクさんも一緒に聞いていたから、ヨルクさん、大泣きしちゃって私は胸が痛んだ。ヨルクさんとカンザシさんは瓜二つ。でも、性格は全然違う。私とカンザシさんは赤の他人同然かもしれない。だから、ヨルクさんが不安がるのも無理はないのかも。カンザシさんのことはあくまで兄以上の存在としては見ることは出来ない。それに、カンザシさんってなんだかんだで女いっぱいいそう。
私はカンザシさんが実の兄だと知った時はとても嬉しかった。けれど、カンザシさんはそうではない気がする。
カンザシさんのことでヨルクさんを不安にしたくない。私はカンザシさんへの接し方にとても迷いを覚えた。
落ち武者さんからは、遠い前世に私がカンザシさんとラハルさんと交際していた映像を見せられた。ヨルクさんも見た。ヨルクさんが大泣きしたらどうしようと思ったけれど、ヨルクさんは私の遠い前世のことを受け入れてくれた。更には、私とカンザシさんが一緒ににお風呂に入っても良いと言ってくれた。
無理してるのだろうか。でも、それだけ私のこと思ってくれているのなら、私もヨルクさんを悲しませることはしたくない。
あの後、ヨルクさんは油が飛び散ると危ないから先に第4居間にいるよう言った。ヨルクさんは私のこと子供扱い。私もう中学生なのに。けれど、そんなヨルクさんの優しさが私は好きで好きでたまらなかった。
第4居間では意外に賑わっていた。
「えっと、つまり、セルファのお姉様はセレナールで、ラハルさんは、セナ王女とセレナールの妊娠体験をナミネから聞いて、映画化したんだね」
飛べない翼。個人的には多くの妖精村の人に知ってもらいたい。
「うん、絶対にあってはならないことだから、脚本家に話したらすぐに作品にしてくれたんだ。それと、今回のラルクの問題に役立つかどうか分からないけど、花夢物語のパンフレット渡しておくよ」
ラハルさんはナルホお兄様に花夢物語のパンフレットを渡した。
「ナミネだけラハルと共演狡い!」
やっぱりナナミお姉様はそうくるか。
「ナナミはオーディション残念だったね。演技がちょっと固いね。リリカはコマーシャルのオーディション合格おめでとう」
リリカさん、受かったんだ。てか、2人ともいつ受けたの!?
「でも、ラハルと共演出来ないなんて意味ないわ」
「リリカ、最初から思い通りにはならないよ。まずは知名度知ってもらうことからはじめたほうがいいと思う」
ラハルさんてコツコツタイプだよね。ヨルクさんとは違った形で。優等生というか、リーダーシップというか。
そういえば、カナエさんとカンザシさんの苛立ちの感情がすれ違ったことが解除されてから、アルフォンス王子とカナエさん、何か前より仲良くなってる。
ということは、今のカンザシさんは相当な苛立ちを抱えているのだろうか。
その時、セレナールさんが立ち上がった。
「納得いかないわ!みんな幸せなのに、どうして私がラルクに捨てられなきゃいけないのよ!全てカナエのせいよ!兄さんに言いつけてやる!」
「セレナール、落ち着くのです!あれはカナエの意思ではありませんでした。カナエはカナエで自分とは全く違う感情に苦しめられていたのです」
まさか、カナエさんとカンザシさんの苛立ちの感情が入れ替わっていたことによって、セレナールさんとの仲は険悪モード、森の湖では歴史を変えてしまうことになってしまうだなんて。
「とりあえず今日はニンジャ妖精さんは適当に客間使ってくれるかな、ラハルさんも」
「ありがとうございます」
「何言ってるの?ラハルは私の部屋に泊まるに決まってるじゃない!」
今日はみんな帰らなさそう。
「ナミネさん、近々、こちらでもアパート借りようと思ってます」
「えっ、どうしてですか?」
「ナミネさんといつでも会いたいからです」
えええええ!知り合って間もないし、兄妹だと知ったのも今日なのに、どうして。それとも事実を知ったからこそ、カンザシさんは私と過ごせなかった時間を今から作ろうとしているのだろうか。
「そ、そうですか。この辺の物件安いので、アパートはいくらでもあると思います」
「奇遇だな、カンザシ。僕も、この辺にアパート借りようと思ってるんだ」
えええええ!ラハルさんまで!?いったい何のために?
その時、ヨルクさんと落ち武者さんが料理を運んで来た。わあ、天ぷらが可愛い形になってる。うどんに付けて食べるのかな。
私は写真を撮った。
「エルナ、料理作った」
「あら、彼氏気取りかしら?落ち武者さん」
やっぱり、この2人どう見ても好き合ってるじゃん。どうして復縁しないのだろう。
「ヨルクもセルファも料理上手なんだね。ナミネは毎日ヨルクの料理食べてるのかな?」
「はい、ヨルクさんとはナノハナ家とクレナイ家を行き来してまして、いつもご飯作ってもらってます」
「そっかあ、まるで新婚さんみたいだね」
え、そ、そんな。私も早く大人になってヨルクさんと結婚したいけどさ。
「ミナク、適当に天ぷら、お皿に入れてくれるかしら」
「かしこまりました、セナ王女」
ミナクさんはセナ王女の天ぷらをお皿に入れはじめた。セナ王女って、ミナクさんには甘えっぱなし。人のこと言えないけど、ユメさんと付き合ってた時はミナクさん別人だったよね。
「ナミネ、ナミネの好きな天ぷら入れたから一緒に食べようね」
「はい」
私はラルクに何度もメールしているけど、ラルクからは全く返ってこなかった。ラルク、家にも帰らないでどうしてるの?
その時、カンザシさんが天ぷらを落とした。
「シュリ、食え」
え、どうして。カンザシさん、何か怒ってるの?
「あ、落ちたものは私が処分しますので、新しいの食べてください」
ヨルクさんはカンザシさんが落とした天ぷらをティッシュで取るなりキッチンに持って行った。
「自分の落としたものを人に食べさせようとするなんて最低だな」
ヨルクさんが戻って来た時、リリカさんとミナクさん、セナ王女が笑った。
「ねえ、どうして笑うの!私じゃないよね!」
「あ、ラハルさんは花夢物語どう思います?」
私は無理矢理話題を変えた。
「あれは、原作者の失恋を描いた物語なんだよね。原作者は永遠の愛を求めるものの、そんなものは存在しないとラストはハッピーエンドにならなかったんだ。でも、取材の時は、決して歴史を変えてはいけないとも言ってたよ」
そっか。あの映画は元々はラノベだったのか。何だか話聞いてると、今のラルクみたいだな。
「ナミネさん、お風呂上がり2人になれませんか?」
「え、でも……」
私はヨルクさんを見た。
「ナミネ、私に気を遣わないで、好きな時間過ごして」
ヨルクさん……。
「そ、それじゃあ、1時間ほどなら……」
「楽しみにしてます!」
何だか気まずい。カンザシさんは実の兄だけど、ナルホお兄様やナヤセス殿とは違う。やっぱりまだ赤の他人だ。
「ナミネ、もうすぐ生理だよね。このポーチにいつもの入ってるから」
えええ、どうしてこんな大勢の前で言うの?恥ずかしすぎる。でも、生理が来る気配なんてない。気になっていたけど、少し前から時間がおかしい。完全に遅れてる。落ち武者さんは気づいてるだろうけど、ヨルクさんは気付いてなさそう。
「あ、ありがとうございます……」
私は俯きながらポーチを受け取った。
「ナミネ、お腹痛い?」
どうしてまだ聞くの?
「いえ、多分遅れてるだけだと思います」
「えっ、でもナミネって初でしょ?」
このタイミングで聞いてくるセナ王女……。
「あら知らないの?天の川村で研究してるのよ。好き合うカップルが1日12時間以上いることで妊娠する可能性の見込みがあるって」
そういえば、ニュースでも見たことある。けれど、妊娠しても9.9割の女性は化学流産してるとか。
「そうだったの。医術も発展したものね」
「ナミネ、妊娠してたら絶対責任取るから!学校やめて働いて、ナミネとお腹の子の面倒見るから!」
ヨルクさんも真に受けないでよ。
「本当に遅れてるだけですから!」
そう、時間の速度が明らか遅れてる。
けれど、生理は遅れるのに、カナミさんの件は既になかったことになりカナミさんの記憶から消えている。妖精村は不可思議だ。
え、セナ王女泣いてる?
「カラルリもヨルクのように彼女に尽くしまくる人だったら……中絶薬を盛られた悲しみは今も消えない……」
セナ王女……。確かにヨルクさんは責任を放棄はしない。けれど、カラルリさんがどうしてセナ王女を流産させたのかも分からない。
「セナ王女、カラルリさんはおかしくなってしまったんです。私なら必ずセナ王女の責任を取ります。どうか、私との未来をお考えください」
「ミナク……。私にはもうミナクしかいないわ」
セナ王女はミナクさんにもたれかかった。
「ニンジャ妖精さんやラハルさんは、もし自分の彼女が妊娠したらどうしますか?」
「うーん、今は責任取れないかなあ。もう少し軌道に乗ってから結婚は考えたいから今は諦めてもらうと思う」
マモルさんもやっぱり責任は取れないんだ。デビュー仕立てはお給料あまり良くないのかな。でも、だったら、あんな高価なマンションには住めないよね。
「僕も今は無理です……」
シュリさんもかあ。
「僕は責任は取りますが、すぐには結婚は出来ないので、養育費を払いながら大人になったら転職して養います」
ロクメさんは何か他とは違う発言。大学までは行くから、すぐには一緒になれないのかな。
「僕も中絶促すと思います」
フタバさん……怖い……。
「僕は責任取ります。今よりも安いアパートにはなりますが、芸能界のお給料で支えたいです」
カンザシさん、ちょっと意外かも。何となくミナクさんと同じ空気してるから、責任は取らないかと思ってた。
「僕も責任は取るし、別のアパートに引っ越して学校はやめて芸能界の給料で養ってく」
ラハルさんはカンザシさんと少し意見重なってる……?
「ラハルの給料で養えるのかよ」
「そういうカンザシこそ月給いくらなんだ」
やっぱりこの2人仲悪いのかな?
「僕は月に160万円は稼いでいる」
えっ、カンザシさんてそんなに稼いでいるんだ。
「カンザシさん、デビュー仕立てなのに凄いですね」
「今から貯金しておきたいので」
貯金かあ……。まだまだ先の話かも。
「ナミネ、話してばかりいないで食べて」
ヨルクさんは私に天ぷらを食べさせた。
「あ、ニンジャ妖精さんとラハルさんは、このパンツどう思いますか?」
私は洗濯カゴから取り出したヨルクさんのパンツを見せた。
「ナミネ、やめて!どうしてこういうことするの!何故私のみを攻撃し傷付け貶める」
「付きまとう罪は奈落の底」
「ふざけないで!煉獄女官見習いは見てないって言ってるでしょ!」
ヨルクさんって、すぐに怒る。
「正直、そういうのは小学生で卒業してると思う。ダサイって言うか……」
マモルさんにダサイって言われてる。
あれ、他は意見なし?何だか呆気ないな。
「ナルホお兄様とナヤセス殿も同じものを履いています」
「どうして、今パンツの話してるのかな?」
「ナルホ、お前オシャレに疎いの全然変わってないな」
ミナクさんはファッション雑誌よく見てるもんな。
「もう、返して!下着なんて何履いてもいいでしょ!ナミネ、こういうの良くないよ」
「でも、ヨルクさんはいつも私の下着見てますよね?」
「変な言い方しないで!洗濯物干さないといけないから仕方ないでしょ!」
「はいはい、すみませんでしたー!」
私はヨルクさんから離れ、落ち武者さんの隣に座った。それにしても、高校生での妊娠はやっぱり責任取れない人が多いのか。
食べ終わった私はナルホお兄様とお風呂に向かおうとした。
「ナミネ、湯冷めしないでね」
「はい」
ヨルクさんは私にカーディガンをかけた。
ナルホお兄様とかなり久しぶりのお風呂。
「意外だね」
「え?」
「ラルクラルク言ってたナミネがヨルクと交際してるなんて」
あ、ナルホお兄様は途中から紀元前村に行ったから、その後のことは何も知らないんだっけ。でも、実際のところ、私自身少し前まではラルクのこと好きだったんだよな。
「あ、私もずっとラルクのこと好きでした。でも、ある時に知ったんです。天使村時代はずっとヨルクさんのこと好きだったと。でも、初代天使村でヨルクさんとの結婚後、3年でヨルクさんは突然死してしまい、私はショックでその3ヶ月後に自殺したらしいです。そのせいで、ヨルクさんとの結婚後、私は衰弱死していたとか。私は、最後の天使村の時の番人に二度とヨルクさんを好きにならないようお願いして妖精村時代はラルクのこと好きになってしまってたみたいです。でも、今はヨルクさんのことしか想ってません」
本当、最後の天使村であんなお願いするんじゃなかった。ヨルクさんと2人で乗り越えていくべきだったんだと後から思い知らされた。
「そっか。ヨルクは優しいし、どんなナミネでも受け止めてくれるから、ナミネも幸せになれると思う」
ヨルクさんは優しい。その優しさに私はいつも甘えてしまう。
「あ、やっぱりそうですかね」
「でも、喧嘩した時、いつまでもナミネが拗ねたままだと、ヨルクもいつまでもは待たないからね。それから、万が一ナミネが妊娠したらヨルクは大学に行けなくなってしまう。今の時代、中学中退では就職なんてないからね。ヨルクは大学を卒業するべきだと思うよ」
いつまでも待たないか。まるで、これまでの最後の紅葉橋のよう。ヨルクさんは、他の人と結婚して幸せだったのかな。
妊娠か。リスクを視野に入れてなかったわけではないけど、やっぱりヨルクさんと愛し合いたい。
「そうですね。でも、私はヨルクさんを中学中退にはしません。私が休学してヨルクさんにはそのまま学校に通ってもらいます。でも、毎回ヨルクさんから求めてきて……それはもう毎日のように……」
この時の私は、ヨルクさんと落ち武者さん、エルナさんが立ち聞きしていることを全く知らなかったのである。
「分かった。じゃあ、せめて行為後は僕の庭園で作った薬草のお茶飲んでくれる?ピルとかトケイ草とは違って、体内には何の影響もないから」
ナルホお兄様はカナエさんと似ていて植物に興味がある。カナエさんはどちらかというと薬草だが。ナルホお兄様は紀元前村で植物の研究をしていたらしい。将来は植物研究員を目指すとか。
「分かりました。あ、カラルリさんはどうして中絶薬なんか盛ったのでしょうか。まるで、私の知ってるカラルリさんとは別人です」
「人は何世紀も経てば変わるものだよ。いつかヨルクもナミネ以外の人好きになるかもね」
え……少しずつ変わってるってこと?ヨルクさんと付き合えなくなる……?
「そんなの絶対いやです!私、来世も来来世もその後もヨルクさんと結婚します!」
「カラルリさんは少し飽きっぽいからね。今の時代、携帯通して色んなこと出来るから。でも、セナ王女の妊娠のことは軽く見てたんじゃないかな。今は諦めて大人になってからまた作ればいいと」
そうなんだよね。でも、だからって責任取らないなら取らないでセナ王女に産ませる選択肢を与えるのが筋だろうに。
「ですが、産むか産まないかはセナ王女が決めることですよね」
「交際を続ける以上、セナ王女はカラルリさんに責任を取るよう何度も迫ったと思うよ。でも、セナ王女は何もしなくても化学流産だったのに対して、セレナールのほうは完全な殺人だよね」
セナ王女は、まだ胎嚢とまではいっていなかった。けれど、確かに妊娠の兆候はあった。セレナールさんの場合は中期だったから、手続きも色々大変だったと思う。
「私はアルフォンス王子が何を考えているのか分からないです」
「葛藤してるんだろうね。本当にカナエにピルを飲ませてるのならカナエはキープ状態。カナエより良い人と恋仲になった時のためにカナエには妊娠させてないのだと思う。でも、セレナールの妊娠で魔が差したんだろうね」
アルフォンス王子の中では何も定まっていないけど、いざ、セレナールさんの幸せを見たら妬みの感情を抱いたというわけか。
「あの、ラルクはどうなるのでしょう」
タイミング悪い時にナルホお兄様が帰ってきたあまり、私はナルホお兄様と兄妹らしい会話は全然出来ていなかった。
「時を超えての恋愛は成り立たないと思うよ。やっぱり、何千年も離れた人より、同じ時代に生きる人と幸せになりたいって人は思うものなんだよね」
「ということは、歴史通りセレナールさんは皇太子様と一緒になってラルクとは別れるということですか?」
「多分ね」
ラルク……可哀想……。支えてあげたい。せっかく、森の湖にいるセレナールさんと交際したのに、幸せになれないなんて。ラルク、この先どうするの。
「ラルクは幸せになれないんですか?」
「正直、僕はラルクはナミネと交際すると思ってた。でも、ナミネはヨルクを選んだ。今のラルクは現世のセレナールのことは愛していない。だとしたら、ラルクはゼロから好きな人に出会う必要があるよね」
難しいな。でも、セレナールさんのことが一目惚れなら、綺麗な人紹介したら、その人と幸せになってくれるかな。
「ナミネ、そろそろ出るよ」
「はい」
私とナルホお兄様がお風呂から出るとカンザシさんが待っていた。そうだった。1時間だけ時間取るって言ったの私だった。2人きりだなんて何だか気まずいな。私はカンザシさんを2階の客間に案内した。
カンザシさんと2人きりの空間。何を話していいか分からない。というか、どうしてカンザシさんは私と2人になりたいのだろう。とりあえず無難に弾き語りしてもらおうかな。
「あ、とりあえず弾き語りしてもらえませんか?」
「はい、どの曲にしますか?」
えっとどうしようかな。
「あ、では、フェアリー地平線さんのマスカットお願いします」
「好きなんですか?」
「私は聴かないんですけど、ミナクさんが好きなんです」
「そうなんですか。でも、何だかそんな感じもしますね」
カンザシさんは、マスカットを弾き語りしはじめた。
この時の私も、ヨルクさんと落ち武者さん、エルナさんが立ち聞きしていることを全く知らなかった。
「どうして君は 美しさ求めるの
黄昏の浜辺で まわる 君は
こんなにも 美しいのに
君の心 今すぐ 理解してあげれないけど
少しは 頼ってほしいと 願うもの
いつからか 部屋には1つも鏡が存在しない
誕生日に コンパクトミラー渡したら
いらないと 泣きながら その場で壊された
気持ちと気持ちが 折り合わない いつかの夏
季節巡り少しは 理解してたと思ってた
それでも 頼ってくれない 切ないよ
いつからか 部屋には1つも鏡が存在しない
誕生日に プリザーブドフラワー渡したら
ありがとうと 作り笑顔で 受け取った
気持ちと気持ちが すれ違う いつかの夏
いつからか 部屋には1つも鏡が存在しない
誕生日に 満天の星空の下で思いを伝えた
ごめんなさい 君は言う 心を開けないと
気持ちと気持ちを 寄り添わせたい いつかの夏」
カンザシさんさんの弾き語りは好き。
それに、落ち武者さんに見せてもらってた映像では、カンザシさん、駆け出しミュージシャンだったな。
時を経て、今はプロになったんだね。
「カンザシさんは、お歌が上手ですな。えっと、次は……」
「ナミネさん」
えっ、急に何?やっぱり2人きりなんて気まずいよ。
「え、な、何ですか?」
って、私抱き締められてる!?
カンザシさんの汗ばんだタバコのにおい……。お、思い出した!
カンザシさんって、汗かくとヒロシノさん並の体臭で、同棲してた頃、私何度も気絶しそうになってたんだ!それに、あの時のカンザシさん、ヒモだった!今は私の兄だなんて、どんな巡り合わせなのだろう。
「おい、カンザシ!2人きりになればこんなことするなんて最低だな」
え?ラハルさん?てか、ヨルクさんや、落ち武者さん、エルナさんもいる!
「じゃ、僕らも弾き語り聞かせてもらう」
みんな入って来た。
カナエさんが歴史変えてヨルクさんと拗れた時に私が行った桜木町の空き地は、遠い昔、カンザシさんがコンサート開いてた場所だったんだ。
私は遠い昔の一コマを眺めていた。
……
あとがき。
何だか一気に詰め込んじゃった。
もう少しゆっくりがいいのかな。
他の人視点でも書きたいのに、なかなか出来ずにいる。
でも、書きたい。
たまには間に挟みたいです。
純愛偏差値 未来編 一人称版 47話
《ヨルク》
もしも、記憶が抜けた1週間のことを、私がちゃんと割り切れていれば。あの時、ナミネを疑いナミネを突き放さなければ。
カナミさんはクラスのど真ん中で辱めを受けることはなかったし、アルフォンス王子のものも切断されることはなかった。
全て私のせい。私のせいなのだ。
私はナミネを突き放して取り返しのつかないことをしてしまった。
カナミさんは1週間経たないと元に戻らない。
あれからもナミネはカナミさんを攻撃した。カナミさんは酷い状態になり、閉鎖病棟で暴れまわっているらしい。
こんなことなら、ナミネの話をちゃんと聞くんだった。
もう、周りの人を巻き込ませない。
二度とナミネを突き放さない。
そう決めた頃、ナミネから、ラルクが本当に好きなのは森の湖にいるセレナールさんで、ラルクは時を超えた恋愛をしようとしていると聞かされた。
もし、ラルクと森の湖にいるセレナールさんの恋愛が成就してしまえば、また歴史が変わってしまう。そうなれば、もう一度、私とナミネは交際していた事実を忘れてしまう。ラルクは、どうして自分のことしか考えられないのだ。
あれ、でも、引っかかることがある。
森の湖を抜けて誰もいない古い民家が並ぶところにあるレストランで……。
『は、はい、お代官様』
『あんた全然変わんねえな』
記憶を失って、みんな初対面のはずだったのに、落ち武者さんは、ナミネに『変わらない』と言った。まるで、ナミネのことを知っているかのように。
私は落ち武者さんを疑った。
「ねえ、落ち武者さん、あの時、古い民家が並ぶとこにあるレストランでナミネに『変わらない』って言ったよね?落ち武者さん、まさか記憶失ってなかったの?」
「全て覚えてたよー!でも、あの時、あんたらに事実話しても信じてくれてたわけ?まさか、あんたらが拗れたこと僕に責任転嫁するつもりじゃないよね?」
やっぱり覚えていたのか。別に私は責任転嫁するつもりではない。でも、覚えてるなら覚えてるで黙っていることもないと思う。けれど、確かに、あの時、落ち武者さんが事実話してもナミネは悩んだだろうし。もう何が正しいのか分からない。
「落ち武者さん、だったら、せめて、覚えていることをみんなに話すべきだったんじゃないですか?私とヨルクさんの仲が拗れるの見て楽しかったですか?」
やっぱりナミネは怒るよな。
「あんたらさ、何かあれば僕に全て丸投げかよ!自力で思い出そうともしないで!だから、別れろと言ったんだよ!その程度の関係ならな!」
その程度の関係……。何も知らないくせに。遠い遠い昔の私の暗殺さえなければ、ナミネと私は普通の恋人でいられた。
「落ち武者さん、ムカつきます。今から森の湖に行って、そこで生涯を過ごしてもらいます」
ナミネは呼び出しカードでキクスケさんを呼んだ。
「分かった。あの時、あんたらに忠告しなかった分、今回は全力を尽くす!だから、ここで仲間割れはやめろ!」
「分かりました。二度と私を陥れないでください」
ナミネは落ち武者さんを1発殴るとキクスケさんを番人部屋に戻した。え……エルナが殴られてる?落ち武者さんを庇ったのか?
「あんた、エルナを殴るな!」
落ち武者さんは、1分前に時間を戻し、必然的にキクスケさんが現れた。ナミネは素早く、番人?だろう人を5人呼び出した。
「キクスケ、今すぐラルクと森の湖にいる姉さんを交際させろ!」
「残念ながらそれは出来ません。歴史を変えるなどと規則に反したことは出来ません」
番人が6人。いったいどうなるのだろう。落ち武者さんも、エルナが好きなら好きで一言言ってくれればいいのに。
「では、私が呼び出した番人さん。落ち武者さんを徹底的に私に従わせ、落ち武者さんを森の湖に連れて行き、そこから出さないでください!」
「待て!分かった!あんたにはもう逆らわない!けれど、エルナを殴ることだけはやめろ!」
「はい?何かあれば全て私に責任転嫁ですか?落ち武者さんが言ったセリフですよ!人には自分で記憶思い出せと言ったわりに、エルナさん1人守れず責任転嫁ですか!落ち武者さんは自己中です!ワガママです!あなたの親は貧乏の脳なしです!いい加減にしてください!」
こうなった時のナミネは手が付けられない。ナミネに何かあれば、ナノハナ家が動く。そうなれば、いくら抗議しても悪者にされてしまう。
「分かった。僕の負けだ。あんたのこと好きだった。だから、空白の1週間黙ってた」
って、いきなり告白?そもそも本当なのか?
「セルファの言ってることは本当よ!セルファはナミネのことが好きで、たびたび私に相談してたわ!」
「白々しい嘘も甚だしいですね。落ち武者さんはエルナさんが殴られて、また私を陥れようとしていたではありませんか。私、ミドリお姉様のことで辛いんです!幸せだった日常が突然壊れてしまったんです!私だってみんなみたいに普通に生きたかったです!でもどうすればいいか分からないんです!」
ナミネは泣きはじめた。私はナミネを抱き締めた。過去のニュース記事でも見たけれど、ミドリさんの死に方は尋常ではない。
「悪かった。今からはあんたに尽くす。だから、戻らない過去より、今の仲間を見ろ」
ナミネはしばらく泣いていたが、番人たちが戻った頃、ナミネは落ち着きはじめた。正直ほっとした。伝説最上級武官の資格を取ったナミネは遥かに強くなった。何かあれば、力で人を縛りかねない。
数日後、私たちはまたナミネの部屋に集まり、話し合った。
「とりあえず、カップル日記から見るぞ」
私たちはカップル日記を見た。
えっ、遠い昔のセレナールさんとラルクがカップル日記をはじめてる?私はラルクと遠い昔のセレナールさんのカップル日記を開いた。
『セレナール先生と交際しました。
時を超えての恋愛ですが、やっぱり好きな人と交際したいので、自分の意思を貫きました。
今後は僕が森の湖に通います』
いったいこんな最短でどうやって殆ど知らない森の湖にいるセレナールさんを口説いたのだろう。
『未来から来たラルクと交際しました。
携帯とやらをもらいました。
時を超えての恋愛。
はじめての経験だけどラルクを大切にします』
いったい何が起きているのだ。私にはさっぱり分からなかった。
私はコメント欄を見た。
『セレナール:ラルク、考え直して!そんな恋愛成り立たないわ!それに歴史を変えたことになるのよ!皇太子様と交際できなければ、現世に支障が及ぶわ!』
『セナ:何だかよく分からないけど、私は祝福するわ』
『カナエ:カナエも祝福します』
『ユメ:いったいどうなってるの?幸せならそれでいいかもしれないけど』
つまり、現世のセレナールさんのみが不利になったというわけか。こんな恋愛、続くわけがないのに。ラルクも馬鹿だな。
一度退会したアルフォンス王子は、また再開して、カナエさんと仲直りし、カナエさんはアルフォンス王子の別荘に住んでいるわけか。
ユメさんとクラフも順調。
セナ王女とミナクお兄様も上手くいっているようだ。
「このままだと、ラルクは間違いなく姉さんとは上手くいかず、どん底に落ちるね」
けれど、こんなのラルクの自己責任じゃない。
「もう別れさせたほうがいいのでしょうか」
「もう遅いね。歴史は変わってしまったからね?」
そういえば、時を超えた恋愛と言えば、ナミネがラハルさんと映画撮影してたよな。ラストどうなったんだろう。
「ナミネがラハルさんと撮影した花夢物語は最後どうなるの?」
「ラハルさんは何度ピアノを弾いても過去には戻れず2人は別れます」
ハッピーエンドではないのか。歴史は変えられないということなのだろうか?
「そっか、悲しい話なんだね」
「それでも、とても愛し合ってました。その愛が長く続かなかったというだけの話です。ラルクも、少しでも幸せになれたのなら、私はそれでいいと思います。それと、ヨルクさんの制服とパンツ返します」
「う、うん」
彼女から追い剥ぎにあった私は複雑な気持ちだった。あの後は、落ち武者さんがブレザーで隠してくれたんだっけ。
「あ、しばらく泊まり込みなら洗濯物はここに入れて」
「じゃ、そうする」
その時、玄関のチャイムが鳴った。落ち武者さんは猛スピードで玄関に行った。しまった。私も向かわなくては。
私は急いで階段を下りた。
「で、あんた誰?」
「この家の者だけど。君は誰かな?ナミネの新しい友達かな?」
「へえ、強気なナミネに兄がいたのかよ。全然似てないな」
ナルホさん!?いつ戻って来たのだろう。とにかく私はナルホさんに駆け寄った。
「ナルホさん、帰ってきてたの?これからはこっちで住むの?」
「一昨日、妖精村に着いた。紀元前村で転校手続きして来たから明日から、また妖精村学園に通うよ」
そっか。ナルホさん、これからはずっとここにいるんだ。その時、ナミネがナルホさんに抱き着いた。
「ナルホお兄様!」
離れていてもナミネはやっぱりナルホさんのこと大好きなんだな。
「ヨルクさん、すみません。今日はナルホお兄様とお風呂に入ってナルホお兄様の部屋で寝ます。ヨルクさんたちは私の部屋使ってください」
「うん、分かった。積もる話もあるだろうし、ゆっくりしてね」
……何故、ニンジャ妖精さんがいるのだろう。カンザシさんがナミネに会いに来たのかな。
「突然なんだけど、ナミネとカンザシさんは僕の部屋に来てくれるかな?」
「はい……」
えっ、何の話だろう?私は突然不安になった。
「ナルホさん、私もナミネに着いてていい?」
「分かった。じゃあ、ヨルクだけね」
私は不安なまま階段を上がった。
ナルホさんの部屋は全然変わっていなかった。ほんのり植物の香りがしている。
って、どうして落ち武者さんもいるの!?
「本題に入るね」
そう言うと、ナルホさんは1枚の書類を机に置いた。落ち武者さんは、すかさず書類を手に取った。
「紀元前村にいた時、ナヤセスさん、ナヤレスさん以外に、お父様の子がいるか調べていたんだ。すると、カンザシさんのお母様がヒットした。僕は、休みを取ってカンザシさんの実の母親に会いに行ったんだ。すると、確かに17年前頃、お父様と交際していたって言ってた。その交際期間にお父様の子供が出来たんだけど、お父様はナノハナ家に戻り、カンザシさんとお母様とはあまり会わなくなってしまったんだよね。お父様はカンザシさんのお母様に養育費は払っていたものの、マタニティブルーになったカンザシさんのお母様はパチンコに使ってしまったんだ。お父様からの養育費を。カンザシさんが生まれてからは、カンザシさんはお母様から虐待を受け、僕のお母様が一般家庭にカンザシさんを預けたんだ。だから、カンザシさんの今の戸籍はカンザシさんの育ての親のところに入っているよ。お父様は、今も養育費をカンザシさんの実家に払い続けてる。でも、どうしてか、カンザシさんには1円も入ってないんだよね」
私は頭の中が真っ白になった。カンザシさんとナミネが実の兄妹だなんて……。カンザシさんは、明らかナミネに恋愛感情があるかのような素振り見せてたし、とてもじゃないけど、普通の兄妹だなんて受け入れられない。
ナミネはカンザシさんとも、一緒にお風呂に入ったり、一緒の布団で寝たりするのかな。そんなのまるで、赤の他人の男女がしているみたいじゃないか。
落ち武者さんは、書類を机に置いた。ナミネは書類を手に取った。私も内容を見た。
DNA鑑定。カンザシさんとナミネのお父様が親子である確率。99.999999996%……。カンザシさんとナミネは間違いなく兄妹だ。私は残酷な夢を見ているようだった。
「ふむふむ、私とカンザシさんは血縁者のようですな。カンザシお兄様、これからは兄妹として仲良くしましょうね」
あれ?カンザシさん、少し泣いてる?
「はい、突然のことで驚きましたが、これからはナミネさんのこと、妹として大切にします。普通の兄妹のように長い時間一緒に過ごせなかったのは、とても残念ですが。これからは、ナミネさんとは深い関係になりたいと思います」
深い関係って何?まさか、ナミネと恋愛関係になろうとしてるの?
「カンザシお兄様、私、カンザシお兄様のこと、大切にします。たくさん思い出作りましょうね」
ナミネ……どうしてカンザシさんのこと抱き締めるの。私は見ていられなくて泣きながらナルホさんの部屋を出てナミネの部屋に入った。
その時、ナミネが私を抱き締めた。
ってか、ナルホさんと落ち武者さんもいる?
「ヨルクさん、どうして泣くんですか!」
「だって、この前の今日なだけに、いきなり兄妹だなんて……。受け入れられなくて。私の中ではまだナミネとカンザシさんは赤の他人で……。ナミネ、カンザシさんのこと気に入ってるし、私から離れていかないか不安で不安で仕方なくて。ナミネがカンザシさんとも一緒にお風呂に入るなら……私……」
ナミネは袖で私の涙を拭いた。こんなかっこ悪い姿見せたくなかった。また、ナミネを疑ってる自分が情けない。
「カンザシさんのことは兄として親睦を深めたいだけです。私はヨルクさんだけです!私のこと信じられませんか?」
「顔だけヨルク、あんたちょっと落ち着け。どう足掻いても強気なナミネとカンザシは兄妹なんだから、お風呂云々の制限は流石に束縛だろ!」
そんなこと分かってる。でも、気持ちが着いていかない。
「まず、君たち2人の名前はなんて言うのかな?」
「セルファだけど?」
「エルナよ」
「何年生?」
「僕もエルナも中学2年生だ」
「そっか、僕も中学2年生。こっちに戻って友達全然いないから、仲良くしようね」
何故か、落ち武者さんとエルナとナルホさんは2年というだけで、突然距離が縮まった。
「で、話しにくいんだけど、カナエはカンザシさんとぶつかった時に、お互いの苛立ちの感情が入れ替わったみたいなんだ。だから、今戻すね」
そう言うと、ナルホさんは呼び出しカードを手に持った。え、呼び出しカード?どうしてナルホさんが持ってるの?
「お呼びでしょうか」
「カナエとカンザシさんの苛立ちの感情、元に戻してくれるかな」
「かしこまりました。5分後、2人の感情は元に戻ります。では、これにて失礼」
一瞬のやり取りだった。
「ナミネ、ナミネとカンザシさんが兄妹だっていうのは、学校のみんなにも、芸能界でも話しちゃダメだよ」
「流石はナルホお兄様、私が芸能活動していることをもうご存知なのですね!」
「こっちのホテルでテレビ付けたらナミネがコマーシャルに出ててビックリしたよ。で、ラルクはどうしたのかな?」
そうだ、ラルクのこと。ナルホさんにちゃんと話さないと。私がナミネと交際していることも。
「ラルクは森の湖で姉さんと時を超えた交際楽しんでるけど?」
「そっか。セルファの昔のお姉様とラルクが時を超えた交際をしてるんだね。ナミネはそれでいいの?」
やっぱりそうなっちゃうか。
「正直、ラルクから現世のセレナールさんではなく、森の湖にいるセレナールさんのこと好きだから森の湖に通うって聞いた時はビックリしましたが、私、ラルクを応援することにしたんです」
「分かった。カナエも元に戻ったことだし、ラルクの話はゆっくりしていこう」
ゆっくりか。既に2人は交際しているのに間に合うのだろうか。けれど、ナルホさんはいまさっき帰ってきたばかりで、こっちのこれまでの事情を全く知らない。
「今日はナルホさん帰ってきたし、天ぷら作るね」
「別にいいよ。ナノハナ食堂のご飯食べるから」
「いつもナミネのお弁当も作ってるし、せめて、私からの気持ちだと思って受け取って。これからはずっとこっちにいるんだし」
「ナミネのお弁当って?」
しまった。先に言うの忘れてた。その時、ナミネが私の作ったお弁当の写真一覧をナルホさんに見せた。
「へえ、ヨルクって昔から料理好きだったけど、まだ続けてたんだ」
「ナルホさん、私ナミネと真剣交際してる」
え、この間は何?やっぱり私じゃなく、ラルクを婿にって考えていたのだろうか。私は少し気を落とした。
「え、ナミネがヨルクと!?ラルクじゃなくて?」
「平和ボケなあんたさ、ラルクは姉さんと時を超えた交際してるって言ったの聞こえてなかったのかよ!」
「ナルホお兄様、確かにヨルクさんは昔から女にだらしないし、すぐに女に変な感情抱くし、いやらしいサイトも見てるし、森の湖では水浴びしてる妖精口説くし、とにかく女にはだらしないですが、私、将来的にはヨルクさんと結婚するんです。ヨルクさんのこと好きなんです!」
ナミネ……。どうして普通に紹介してくれないのか分からないけど、私は嬉しくてまた泣いた。
「そっか、ナミネ、幸せになったんだね。良かった。ずっと心配してた。ナヤセスさんもメールでチラッと言ってたけど、ナミネ、愛されてるんだね」
とりあえず、認めてくれてる……?
「しかし、ラルクが歴史を変えてしまったことで、ナヤセス殿とロナさんが恋の危機ですぞ!」
確か、ナヤセスさんとロナさんて無自覚で惹かれ合ってたんだっけ。はたらから見たら恋に見えるけど、本人は否定してたな。
「そういえば、ミナクさん元気?」
「うん、やっと女遊び抜け出してまともな道歩きはじめたよ。今は第6王女のセナ王女と交際してるよ」
ナミネは以前のミナクお兄様の写真と今のミナクお兄様の写真をナルホさんに見せた。
「え、何だかもう僕がいない間に色んなこと起きてて着いていけないよ。でも、ラルクのこと心配だし、今から第4居間で話し合おうと思う」
「そうするしかないな。ラルクもそうだけど、一目惚れカラルリも危ないし、平和ボケなあんた、励ましてやれよ」
私たちは第4居間に向かった。ラルクは無事でいられるのだろうか。どうして現世のセレナールさんじゃダメなのだろう。
第4居間に行くと、誰が呼んだのかグループのみんなが来ていた。そして、ナナミさんとリリカさんがいると思ったら、ラハルさんまで来てる!?
「え、ナルホ?全然変わってない」
「ナルホ、お前小さい頃のまんまだな」
リリカお姉様、ミナクお兄様……。
「ええっと、ここにいるみんながナミネの友達かな?」
「はい。元々はラルクを通してのメンバーです」
「あ、ナルホさん、キッチン借りるね」
「じゃ、僕も行く」
え、どうして落ち武者さんが着いてくるの?でも、この人数だし、いたほうが料理もはかどるか。
私と落ち武者さんはキッチンへ向かった。
えっと、小麦粉、小麦粉。
「あんた、このまま、強気になれないナミネとカンザシを一緒にお風呂に入ることも許さず、一緒に寝ることも許さないのかよ」
「さっきは、ビックリしただけで、今はナミネの好きにさせようと思ってるから!」
もういきなり何なの。落ち武者さんはすぐ人のプライベートに踏み込んでくる。
「だったら言う。カンザシとレオルは完全に強気なナミネに惚れてる。恐らくラハルもな。カンザシとラハルは遠い前世、強気なナミネと交際してた。そして、2人は前世の記憶を覚えてるだろう。この映像見ろ!」
「うーん、それとなくカンザシさんとレオルさんがナミネに気があるのは気付いてたけど……交際してたのがナミネなら、ナミネも映像見るべきだと思う」
私はメールでナミネを呼び出した。ナミネはすぐにキッチンに来た。
「はいはい、何ですかな?」
「強気なナミネ、あんた、遠い昔、カンザシともラハルとも交際してた。この映像見ろ!」
落ち武者さんは携帯を固定させて映像を再生した。私は料理をしながら、映像を見た。
映像は、言うほど昔のものではない気がする。
ラハルさんのほうは高級マンションか。
相変わらず、ナミネはリビングに仕事着を脱ぎっぱなしにすると、ソファーに寝転び、お菓子をポロポロ零しながらテレビを見ている。
人というものは何世紀経っても変わらないものなのだろうか。
カンザシさんのほうは、ワンルームのかなりくたびれたアパート。2人で住むには狭そうだ。
それにしても、カンザシさんも家事全般をしていたのか。
ナミネはラハルさんともカンザシさんとも関係を持っていた。
少しは胸が痛んだが、もう折れたくなかった。今のナミネの彼氏は私だから。
映像を見終わったナミネは私を後ろから抱き締めた。
「ヨルクさん、記憶にはありませんが、カンザシさんとラハルさんと会うたびに懐かしい気持ちになっていた理由が分かりました。でも、これはこの時だけのものです。ラハルさんとは良き仕事仲間ですし、カンザシさんのことは兄として接していくつもりです。私が好きなのはヨルクさんだけです!揺るがないでください!」
ナミネは私だけを想ってくれている。だったら、私もイケメン男子に惑わされない!
「ナミネ、さっきは取り乱してごめんね。過去にナミネがカンザシさんとラハルさんと交際してたのは分かったから。虹色街で会ってた時も、それとなく気付いていたし。現世では、ナミネとカンザシさんは兄妹だから、ナミネがカンザシさんと一緒にお風呂に入っても一緒に寝ても口は挟まないからね」
ナミネが実の妹だと知ってもカンザシさんはナミネを想い続けるだろう。それでも、私はナミネを誰にも渡さない。
「ヨルクさん……大好き……」
ナミネは子供に戻ったみたいに私から離れなかった。
「で?顔だけヨルクは女子高生の変なサイト見てるけど、強気なナミネはどこまで許せるわけ?甘えセナは一目惚れカラルリの携帯真っ二つに割ってたけど?」
どうして今そんなこと聞くの!せっかく私とナミネの関係が順調なところなのに。
「ナミネ、ナミネがいやなら見ないからね」
「私はネットまでなら構いません。けれど、同級生など、身近な人の水着写真や下着写真の保存はいやです」
「ナミネ、それは絶対にしないから!同級生からのメールも最近見なくなったし、身近すぎる人は返って気持ち悪いというか、ナミネがいるのに、私と交際するためにハニートラップなんて有り得ないから!」
「分かりました。ヨルクさんを信じます」
私とナミネは再度抱きしめ合った。
ナミネ、私は絶対にナミネを手放さないからね。私はナミネの菜の花の香りに包まれていた。
この時の私は、時間の進みが遅いことに全く気付いていなかった。
……
あとがき。
ついに、ナノハナ家 長男であるナルホが紀元前村から戻ってきました。
《ヨルク》
もしも、記憶が抜けた1週間のことを、私がちゃんと割り切れていれば。あの時、ナミネを疑いナミネを突き放さなければ。
カナミさんはクラスのど真ん中で辱めを受けることはなかったし、アルフォンス王子のものも切断されることはなかった。
全て私のせい。私のせいなのだ。
私はナミネを突き放して取り返しのつかないことをしてしまった。
カナミさんは1週間経たないと元に戻らない。
あれからもナミネはカナミさんを攻撃した。カナミさんは酷い状態になり、閉鎖病棟で暴れまわっているらしい。
こんなことなら、ナミネの話をちゃんと聞くんだった。
もう、周りの人を巻き込ませない。
二度とナミネを突き放さない。
そう決めた頃、ナミネから、ラルクが本当に好きなのは森の湖にいるセレナールさんで、ラルクは時を超えた恋愛をしようとしていると聞かされた。
もし、ラルクと森の湖にいるセレナールさんの恋愛が成就してしまえば、また歴史が変わってしまう。そうなれば、もう一度、私とナミネは交際していた事実を忘れてしまう。ラルクは、どうして自分のことしか考えられないのだ。
あれ、でも、引っかかることがある。
森の湖を抜けて誰もいない古い民家が並ぶところにあるレストランで……。
『は、はい、お代官様』
『あんた全然変わんねえな』
記憶を失って、みんな初対面のはずだったのに、落ち武者さんは、ナミネに『変わらない』と言った。まるで、ナミネのことを知っているかのように。
私は落ち武者さんを疑った。
「ねえ、落ち武者さん、あの時、古い民家が並ぶとこにあるレストランでナミネに『変わらない』って言ったよね?落ち武者さん、まさか記憶失ってなかったの?」
「全て覚えてたよー!でも、あの時、あんたらに事実話しても信じてくれてたわけ?まさか、あんたらが拗れたこと僕に責任転嫁するつもりじゃないよね?」
やっぱり覚えていたのか。別に私は責任転嫁するつもりではない。でも、覚えてるなら覚えてるで黙っていることもないと思う。けれど、確かに、あの時、落ち武者さんが事実話してもナミネは悩んだだろうし。もう何が正しいのか分からない。
「落ち武者さん、だったら、せめて、覚えていることをみんなに話すべきだったんじゃないですか?私とヨルクさんの仲が拗れるの見て楽しかったですか?」
やっぱりナミネは怒るよな。
「あんたらさ、何かあれば僕に全て丸投げかよ!自力で思い出そうともしないで!だから、別れろと言ったんだよ!その程度の関係ならな!」
その程度の関係……。何も知らないくせに。遠い遠い昔の私の暗殺さえなければ、ナミネと私は普通の恋人でいられた。
「落ち武者さん、ムカつきます。今から森の湖に行って、そこで生涯を過ごしてもらいます」
ナミネは呼び出しカードでキクスケさんを呼んだ。
「分かった。あの時、あんたらに忠告しなかった分、今回は全力を尽くす!だから、ここで仲間割れはやめろ!」
「分かりました。二度と私を陥れないでください」
ナミネは落ち武者さんを1発殴るとキクスケさんを番人部屋に戻した。え……エルナが殴られてる?落ち武者さんを庇ったのか?
「あんた、エルナを殴るな!」
落ち武者さんは、1分前に時間を戻し、必然的にキクスケさんが現れた。ナミネは素早く、番人?だろう人を5人呼び出した。
「キクスケ、今すぐラルクと森の湖にいる姉さんを交際させろ!」
「残念ながらそれは出来ません。歴史を変えるなどと規則に反したことは出来ません」
番人が6人。いったいどうなるのだろう。落ち武者さんも、エルナが好きなら好きで一言言ってくれればいいのに。
「では、私が呼び出した番人さん。落ち武者さんを徹底的に私に従わせ、落ち武者さんを森の湖に連れて行き、そこから出さないでください!」
「待て!分かった!あんたにはもう逆らわない!けれど、エルナを殴ることだけはやめろ!」
「はい?何かあれば全て私に責任転嫁ですか?落ち武者さんが言ったセリフですよ!人には自分で記憶思い出せと言ったわりに、エルナさん1人守れず責任転嫁ですか!落ち武者さんは自己中です!ワガママです!あなたの親は貧乏の脳なしです!いい加減にしてください!」
こうなった時のナミネは手が付けられない。ナミネに何かあれば、ナノハナ家が動く。そうなれば、いくら抗議しても悪者にされてしまう。
「分かった。僕の負けだ。あんたのこと好きだった。だから、空白の1週間黙ってた」
って、いきなり告白?そもそも本当なのか?
「セルファの言ってることは本当よ!セルファはナミネのことが好きで、たびたび私に相談してたわ!」
「白々しい嘘も甚だしいですね。落ち武者さんはエルナさんが殴られて、また私を陥れようとしていたではありませんか。私、ミドリお姉様のことで辛いんです!幸せだった日常が突然壊れてしまったんです!私だってみんなみたいに普通に生きたかったです!でもどうすればいいか分からないんです!」
ナミネは泣きはじめた。私はナミネを抱き締めた。過去のニュース記事でも見たけれど、ミドリさんの死に方は尋常ではない。
「悪かった。今からはあんたに尽くす。だから、戻らない過去より、今の仲間を見ろ」
ナミネはしばらく泣いていたが、番人たちが戻った頃、ナミネは落ち着きはじめた。正直ほっとした。伝説最上級武官の資格を取ったナミネは遥かに強くなった。何かあれば、力で人を縛りかねない。
数日後、私たちはまたナミネの部屋に集まり、話し合った。
「とりあえず、カップル日記から見るぞ」
私たちはカップル日記を見た。
えっ、遠い昔のセレナールさんとラルクがカップル日記をはじめてる?私はラルクと遠い昔のセレナールさんのカップル日記を開いた。
『セレナール先生と交際しました。
時を超えての恋愛ですが、やっぱり好きな人と交際したいので、自分の意思を貫きました。
今後は僕が森の湖に通います』
いったいこんな最短でどうやって殆ど知らない森の湖にいるセレナールさんを口説いたのだろう。
『未来から来たラルクと交際しました。
携帯とやらをもらいました。
時を超えての恋愛。
はじめての経験だけどラルクを大切にします』
いったい何が起きているのだ。私にはさっぱり分からなかった。
私はコメント欄を見た。
『セレナール:ラルク、考え直して!そんな恋愛成り立たないわ!それに歴史を変えたことになるのよ!皇太子様と交際できなければ、現世に支障が及ぶわ!』
『セナ:何だかよく分からないけど、私は祝福するわ』
『カナエ:カナエも祝福します』
『ユメ:いったいどうなってるの?幸せならそれでいいかもしれないけど』
つまり、現世のセレナールさんのみが不利になったというわけか。こんな恋愛、続くわけがないのに。ラルクも馬鹿だな。
一度退会したアルフォンス王子は、また再開して、カナエさんと仲直りし、カナエさんはアルフォンス王子の別荘に住んでいるわけか。
ユメさんとクラフも順調。
セナ王女とミナクお兄様も上手くいっているようだ。
「このままだと、ラルクは間違いなく姉さんとは上手くいかず、どん底に落ちるね」
けれど、こんなのラルクの自己責任じゃない。
「もう別れさせたほうがいいのでしょうか」
「もう遅いね。歴史は変わってしまったからね?」
そういえば、時を超えた恋愛と言えば、ナミネがラハルさんと映画撮影してたよな。ラストどうなったんだろう。
「ナミネがラハルさんと撮影した花夢物語は最後どうなるの?」
「ラハルさんは何度ピアノを弾いても過去には戻れず2人は別れます」
ハッピーエンドではないのか。歴史は変えられないということなのだろうか?
「そっか、悲しい話なんだね」
「それでも、とても愛し合ってました。その愛が長く続かなかったというだけの話です。ラルクも、少しでも幸せになれたのなら、私はそれでいいと思います。それと、ヨルクさんの制服とパンツ返します」
「う、うん」
彼女から追い剥ぎにあった私は複雑な気持ちだった。あの後は、落ち武者さんがブレザーで隠してくれたんだっけ。
「あ、しばらく泊まり込みなら洗濯物はここに入れて」
「じゃ、そうする」
その時、玄関のチャイムが鳴った。落ち武者さんは猛スピードで玄関に行った。しまった。私も向かわなくては。
私は急いで階段を下りた。
「で、あんた誰?」
「この家の者だけど。君は誰かな?ナミネの新しい友達かな?」
「へえ、強気なナミネに兄がいたのかよ。全然似てないな」
ナルホさん!?いつ戻って来たのだろう。とにかく私はナルホさんに駆け寄った。
「ナルホさん、帰ってきてたの?これからはこっちで住むの?」
「一昨日、妖精村に着いた。紀元前村で転校手続きして来たから明日から、また妖精村学園に通うよ」
そっか。ナルホさん、これからはずっとここにいるんだ。その時、ナミネがナルホさんに抱き着いた。
「ナルホお兄様!」
離れていてもナミネはやっぱりナルホさんのこと大好きなんだな。
「ヨルクさん、すみません。今日はナルホお兄様とお風呂に入ってナルホお兄様の部屋で寝ます。ヨルクさんたちは私の部屋使ってください」
「うん、分かった。積もる話もあるだろうし、ゆっくりしてね」
……何故、ニンジャ妖精さんがいるのだろう。カンザシさんがナミネに会いに来たのかな。
「突然なんだけど、ナミネとカンザシさんは僕の部屋に来てくれるかな?」
「はい……」
えっ、何の話だろう?私は突然不安になった。
「ナルホさん、私もナミネに着いてていい?」
「分かった。じゃあ、ヨルクだけね」
私は不安なまま階段を上がった。
ナルホさんの部屋は全然変わっていなかった。ほんのり植物の香りがしている。
って、どうして落ち武者さんもいるの!?
「本題に入るね」
そう言うと、ナルホさんは1枚の書類を机に置いた。落ち武者さんは、すかさず書類を手に取った。
「紀元前村にいた時、ナヤセスさん、ナヤレスさん以外に、お父様の子がいるか調べていたんだ。すると、カンザシさんのお母様がヒットした。僕は、休みを取ってカンザシさんの実の母親に会いに行ったんだ。すると、確かに17年前頃、お父様と交際していたって言ってた。その交際期間にお父様の子供が出来たんだけど、お父様はナノハナ家に戻り、カンザシさんとお母様とはあまり会わなくなってしまったんだよね。お父様はカンザシさんのお母様に養育費は払っていたものの、マタニティブルーになったカンザシさんのお母様はパチンコに使ってしまったんだ。お父様からの養育費を。カンザシさんが生まれてからは、カンザシさんはお母様から虐待を受け、僕のお母様が一般家庭にカンザシさんを預けたんだ。だから、カンザシさんの今の戸籍はカンザシさんの育ての親のところに入っているよ。お父様は、今も養育費をカンザシさんの実家に払い続けてる。でも、どうしてか、カンザシさんには1円も入ってないんだよね」
私は頭の中が真っ白になった。カンザシさんとナミネが実の兄妹だなんて……。カンザシさんは、明らかナミネに恋愛感情があるかのような素振り見せてたし、とてもじゃないけど、普通の兄妹だなんて受け入れられない。
ナミネはカンザシさんとも、一緒にお風呂に入ったり、一緒の布団で寝たりするのかな。そんなのまるで、赤の他人の男女がしているみたいじゃないか。
落ち武者さんは、書類を机に置いた。ナミネは書類を手に取った。私も内容を見た。
DNA鑑定。カンザシさんとナミネのお父様が親子である確率。99.999999996%……。カンザシさんとナミネは間違いなく兄妹だ。私は残酷な夢を見ているようだった。
「ふむふむ、私とカンザシさんは血縁者のようですな。カンザシお兄様、これからは兄妹として仲良くしましょうね」
あれ?カンザシさん、少し泣いてる?
「はい、突然のことで驚きましたが、これからはナミネさんのこと、妹として大切にします。普通の兄妹のように長い時間一緒に過ごせなかったのは、とても残念ですが。これからは、ナミネさんとは深い関係になりたいと思います」
深い関係って何?まさか、ナミネと恋愛関係になろうとしてるの?
「カンザシお兄様、私、カンザシお兄様のこと、大切にします。たくさん思い出作りましょうね」
ナミネ……どうしてカンザシさんのこと抱き締めるの。私は見ていられなくて泣きながらナルホさんの部屋を出てナミネの部屋に入った。
その時、ナミネが私を抱き締めた。
ってか、ナルホさんと落ち武者さんもいる?
「ヨルクさん、どうして泣くんですか!」
「だって、この前の今日なだけに、いきなり兄妹だなんて……。受け入れられなくて。私の中ではまだナミネとカンザシさんは赤の他人で……。ナミネ、カンザシさんのこと気に入ってるし、私から離れていかないか不安で不安で仕方なくて。ナミネがカンザシさんとも一緒にお風呂に入るなら……私……」
ナミネは袖で私の涙を拭いた。こんなかっこ悪い姿見せたくなかった。また、ナミネを疑ってる自分が情けない。
「カンザシさんのことは兄として親睦を深めたいだけです。私はヨルクさんだけです!私のこと信じられませんか?」
「顔だけヨルク、あんたちょっと落ち着け。どう足掻いても強気なナミネとカンザシは兄妹なんだから、お風呂云々の制限は流石に束縛だろ!」
そんなこと分かってる。でも、気持ちが着いていかない。
「まず、君たち2人の名前はなんて言うのかな?」
「セルファだけど?」
「エルナよ」
「何年生?」
「僕もエルナも中学2年生だ」
「そっか、僕も中学2年生。こっちに戻って友達全然いないから、仲良くしようね」
何故か、落ち武者さんとエルナとナルホさんは2年というだけで、突然距離が縮まった。
「で、話しにくいんだけど、カナエはカンザシさんとぶつかった時に、お互いの苛立ちの感情が入れ替わったみたいなんだ。だから、今戻すね」
そう言うと、ナルホさんは呼び出しカードを手に持った。え、呼び出しカード?どうしてナルホさんが持ってるの?
「お呼びでしょうか」
「カナエとカンザシさんの苛立ちの感情、元に戻してくれるかな」
「かしこまりました。5分後、2人の感情は元に戻ります。では、これにて失礼」
一瞬のやり取りだった。
「ナミネ、ナミネとカンザシさんが兄妹だっていうのは、学校のみんなにも、芸能界でも話しちゃダメだよ」
「流石はナルホお兄様、私が芸能活動していることをもうご存知なのですね!」
「こっちのホテルでテレビ付けたらナミネがコマーシャルに出ててビックリしたよ。で、ラルクはどうしたのかな?」
そうだ、ラルクのこと。ナルホさんにちゃんと話さないと。私がナミネと交際していることも。
「ラルクは森の湖で姉さんと時を超えた交際楽しんでるけど?」
「そっか。セルファの昔のお姉様とラルクが時を超えた交際をしてるんだね。ナミネはそれでいいの?」
やっぱりそうなっちゃうか。
「正直、ラルクから現世のセレナールさんではなく、森の湖にいるセレナールさんのこと好きだから森の湖に通うって聞いた時はビックリしましたが、私、ラルクを応援することにしたんです」
「分かった。カナエも元に戻ったことだし、ラルクの話はゆっくりしていこう」
ゆっくりか。既に2人は交際しているのに間に合うのだろうか。けれど、ナルホさんはいまさっき帰ってきたばかりで、こっちのこれまでの事情を全く知らない。
「今日はナルホさん帰ってきたし、天ぷら作るね」
「別にいいよ。ナノハナ食堂のご飯食べるから」
「いつもナミネのお弁当も作ってるし、せめて、私からの気持ちだと思って受け取って。これからはずっとこっちにいるんだし」
「ナミネのお弁当って?」
しまった。先に言うの忘れてた。その時、ナミネが私の作ったお弁当の写真一覧をナルホさんに見せた。
「へえ、ヨルクって昔から料理好きだったけど、まだ続けてたんだ」
「ナルホさん、私ナミネと真剣交際してる」
え、この間は何?やっぱり私じゃなく、ラルクを婿にって考えていたのだろうか。私は少し気を落とした。
「え、ナミネがヨルクと!?ラルクじゃなくて?」
「平和ボケなあんたさ、ラルクは姉さんと時を超えた交際してるって言ったの聞こえてなかったのかよ!」
「ナルホお兄様、確かにヨルクさんは昔から女にだらしないし、すぐに女に変な感情抱くし、いやらしいサイトも見てるし、森の湖では水浴びしてる妖精口説くし、とにかく女にはだらしないですが、私、将来的にはヨルクさんと結婚するんです。ヨルクさんのこと好きなんです!」
ナミネ……。どうして普通に紹介してくれないのか分からないけど、私は嬉しくてまた泣いた。
「そっか、ナミネ、幸せになったんだね。良かった。ずっと心配してた。ナヤセスさんもメールでチラッと言ってたけど、ナミネ、愛されてるんだね」
とりあえず、認めてくれてる……?
「しかし、ラルクが歴史を変えてしまったことで、ナヤセス殿とロナさんが恋の危機ですぞ!」
確か、ナヤセスさんとロナさんて無自覚で惹かれ合ってたんだっけ。はたらから見たら恋に見えるけど、本人は否定してたな。
「そういえば、ミナクさん元気?」
「うん、やっと女遊び抜け出してまともな道歩きはじめたよ。今は第6王女のセナ王女と交際してるよ」
ナミネは以前のミナクお兄様の写真と今のミナクお兄様の写真をナルホさんに見せた。
「え、何だかもう僕がいない間に色んなこと起きてて着いていけないよ。でも、ラルクのこと心配だし、今から第4居間で話し合おうと思う」
「そうするしかないな。ラルクもそうだけど、一目惚れカラルリも危ないし、平和ボケなあんた、励ましてやれよ」
私たちは第4居間に向かった。ラルクは無事でいられるのだろうか。どうして現世のセレナールさんじゃダメなのだろう。
第4居間に行くと、誰が呼んだのかグループのみんなが来ていた。そして、ナナミさんとリリカさんがいると思ったら、ラハルさんまで来てる!?
「え、ナルホ?全然変わってない」
「ナルホ、お前小さい頃のまんまだな」
リリカお姉様、ミナクお兄様……。
「ええっと、ここにいるみんながナミネの友達かな?」
「はい。元々はラルクを通してのメンバーです」
「あ、ナルホさん、キッチン借りるね」
「じゃ、僕も行く」
え、どうして落ち武者さんが着いてくるの?でも、この人数だし、いたほうが料理もはかどるか。
私と落ち武者さんはキッチンへ向かった。
えっと、小麦粉、小麦粉。
「あんた、このまま、強気になれないナミネとカンザシを一緒にお風呂に入ることも許さず、一緒に寝ることも許さないのかよ」
「さっきは、ビックリしただけで、今はナミネの好きにさせようと思ってるから!」
もういきなり何なの。落ち武者さんはすぐ人のプライベートに踏み込んでくる。
「だったら言う。カンザシとレオルは完全に強気なナミネに惚れてる。恐らくラハルもな。カンザシとラハルは遠い前世、強気なナミネと交際してた。そして、2人は前世の記憶を覚えてるだろう。この映像見ろ!」
「うーん、それとなくカンザシさんとレオルさんがナミネに気があるのは気付いてたけど……交際してたのがナミネなら、ナミネも映像見るべきだと思う」
私はメールでナミネを呼び出した。ナミネはすぐにキッチンに来た。
「はいはい、何ですかな?」
「強気なナミネ、あんた、遠い昔、カンザシともラハルとも交際してた。この映像見ろ!」
落ち武者さんは携帯を固定させて映像を再生した。私は料理をしながら、映像を見た。
映像は、言うほど昔のものではない気がする。
ラハルさんのほうは高級マンションか。
相変わらず、ナミネはリビングに仕事着を脱ぎっぱなしにすると、ソファーに寝転び、お菓子をポロポロ零しながらテレビを見ている。
人というものは何世紀経っても変わらないものなのだろうか。
カンザシさんのほうは、ワンルームのかなりくたびれたアパート。2人で住むには狭そうだ。
それにしても、カンザシさんも家事全般をしていたのか。
ナミネはラハルさんともカンザシさんとも関係を持っていた。
少しは胸が痛んだが、もう折れたくなかった。今のナミネの彼氏は私だから。
映像を見終わったナミネは私を後ろから抱き締めた。
「ヨルクさん、記憶にはありませんが、カンザシさんとラハルさんと会うたびに懐かしい気持ちになっていた理由が分かりました。でも、これはこの時だけのものです。ラハルさんとは良き仕事仲間ですし、カンザシさんのことは兄として接していくつもりです。私が好きなのはヨルクさんだけです!揺るがないでください!」
ナミネは私だけを想ってくれている。だったら、私もイケメン男子に惑わされない!
「ナミネ、さっきは取り乱してごめんね。過去にナミネがカンザシさんとラハルさんと交際してたのは分かったから。虹色街で会ってた時も、それとなく気付いていたし。現世では、ナミネとカンザシさんは兄妹だから、ナミネがカンザシさんと一緒にお風呂に入っても一緒に寝ても口は挟まないからね」
ナミネが実の妹だと知ってもカンザシさんはナミネを想い続けるだろう。それでも、私はナミネを誰にも渡さない。
「ヨルクさん……大好き……」
ナミネは子供に戻ったみたいに私から離れなかった。
「で?顔だけヨルクは女子高生の変なサイト見てるけど、強気なナミネはどこまで許せるわけ?甘えセナは一目惚れカラルリの携帯真っ二つに割ってたけど?」
どうして今そんなこと聞くの!せっかく私とナミネの関係が順調なところなのに。
「ナミネ、ナミネがいやなら見ないからね」
「私はネットまでなら構いません。けれど、同級生など、身近な人の水着写真や下着写真の保存はいやです」
「ナミネ、それは絶対にしないから!同級生からのメールも最近見なくなったし、身近すぎる人は返って気持ち悪いというか、ナミネがいるのに、私と交際するためにハニートラップなんて有り得ないから!」
「分かりました。ヨルクさんを信じます」
私とナミネは再度抱きしめ合った。
ナミネ、私は絶対にナミネを手放さないからね。私はナミネの菜の花の香りに包まれていた。
この時の私は、時間の進みが遅いことに全く気付いていなかった。
……
あとがき。
ついに、ナノハナ家 長男であるナルホが紀元前村から戻ってきました。
純愛偏差値 未来編 一人称版 46話
《ナミネ》
ヨルクさんが、ビルの屋上から飛び降りて数日が経った。
あの時の私の精神状態は酷く取り乱され、カナエさんにヨルクさんとの中を引き裂かれたと思い、カナミさんのクラスでカナミさんの制服をちぎり、カナミさんがボロボロになるまで殴り続け、カナエさんの前でアルフォンス王子のものを切断した。
けれど、ヨルクさんとの中を引き裂かれた私は少しも悪いことをしたとは思っていなかった。寧ろ、ヨルクさんとの幸せな日々を返して欲しい、そんな思いで私は壊れた。
カナミさんのことは、キクスケさんに頼んでなかったことにしてもらったが、カナミさんはショックのあまり、閉鎖病棟送りとなった。
その後、ナノハお姉様が、カナミさんに何度も謝罪をし、持ち前の精神分析能力でボロボロになったカナミさんの80%を回復させた。カナミさんは元の状態に戻ることが出来た。カナミさんとナノハお姉様は同級生で昔からそこそこ仲が良い。カナミさんはナノハお姉様に私のことは恨まないと言っていたらしい。
けれど、私はカナミさんに謝らなかった。
逆にカナミさんから『ごめんなさい。私の監督不足だったわ。カナエには二度とあんな真似はさせない』と謝られた。
セリルさんが説得したのかカナコさんも『ごめんなさい、会議では、あなたの責任にしようとしたけれど、同じ立場だったら、私もカナエを恨んだわ。カナエには言い聞かせるから時間を頂戴』と謝られた。
そうだね、カナコさんがもし他者のしたことでセリルさんと離れ離れになったら、タダでは済ませないよね。
私は悪くない。
だから、ヨルクさんとも別れない。
けれど、カナミさんとアルフォンス王子を傷付けても私の心は何も晴れなかった。私がヨルクさんに助けを求めるメールをした時、ヨルクさんと、落ち武者さん、エルナさんが駆け付けた。私は何故か、桜木町の空き地にいた。
ヨルクさんが何度も謝る中、落ち武者さんは無理矢理私とヨルクさんを別れさせようとした。
『悪いのは私ですか!』
私は無意識に落ち武者さんを殴り付けた。落ち武者さんは死にかけ、救急車で運ばれた。
落ち武者さんが気が付き次第、私は自分のしたことを悔い、落ち武者さんに謝った。
『二度とあんたらを無理矢理別れさせることはしない。今後はあんたを支える』
落ち武者さんは、放心状態の中、私に助けを求めるかのように言った。
ヨルクさんは、キクリ家と王室に毎日謝罪に行った。
元々は、私との話し合いを放棄して私を追い込んだ自分の責任だと、ひたすら謝り続けた。けれど、キクリ家も王室もヨルクさんを相手にしないどころか、ヨルクさんを殴る蹴るなどして憂さ晴らしをした。私は、キクスケさんに依頼し、ヨルクさんを殴った全ての人に罰を与え二度とヨルクさんに危害を加えないよう皇帝陛下に書類を作成してもらった。
ヨルクさんが殴られて、苛立った私はヨルクさんを殴った男の性器を切断しようとしたところ、落ち武者さんとエルナさんに止められ、思いとどまった。ヨルクさんは、ただただ泣いていた。
関係のない人を巻き込んだ挙句、力でみんなを支配しているのは分かっている。でも、私は悪くない。みんなの兄弟は健全じゃない。でも、私は違う。不本意なやり方でミドリお姉様を奪われた。
カナエさんのような幸せな人が、私を陥れて、カナミさんやアルフォンス王子を傷付けて何が悪いの?傷付けられたくなければ、歴史なんて変えなければ良かったじゃない。
私はヨルクさんとは別れない。寧ろ、ヨルクさんとの幸せをみんなに見せつけてやる。無理矢理引き裂こうものなら、私が容赦しない。
私はカナエさんのしたことに対して、完全に苛立っていた。
けれど、気になることが1つある。
カナミさんの件は、お母様が皇帝陛下に頼んで私を不問にしたけれど、でも、アルフォンス王子の件が不問になったのは何故だろう。誰が私を助けてくれたのだろう。
お昼休み。
私はいつものように広場に向かった。やっぱりみんな来ていた。
「今日は皆さんにお伝えしたいことがあります。私は誰からも攻撃を受けなければ私からは皆さんに何もしません。けれど、今までの状況からしてどうでしょう。何かあった時、自分の身を自分で守れなかったことを私に責任転嫁。助けたい人のために私を囮にする。挙句には歴史を変えて私とヨルクさんの仲を引き裂く。私からは一度たりとも皆さんに攻撃していないのに、皆さんは違いますね。では、宦官になったアルフォンス王子のものを見てください」
私はタッパーのフタを開けた。
アルフォンス王子の切り取られたものを見たみんなは顔を青ざめた。ヨルクさん、セレナールさん、ミナクさん、カナエさん、アルフォンス王子、カラン王子、ユメさん、委員長は吐いた。
「では次に、皆さんに送った画像を開けてください」
また、さっき吐いた人が再び吐いた。
「私はこのようにミドリお姉様を無惨な形で亡くしています。皆さんに送ったのはミドリお姉様の最後の姿です。私は泣きました。叫びました。病室中の窓ガラスを割りました。今でも傷は癒えていません。そんな私にカナエさんは、私の唯一の支えであるヨルクさんとの仲を引き裂きました!だからアルフォンス王子にはミドリお姉様と同じ状態になってもらいました。アルフォンス王子、宦官になった気分はどうですか?カナエさんと別れるなら元に戻しても構いませんよ」
「本当にすまなかった。二度とカナエにナミネとヨルクの仲を引き裂く真似はさせない。どうか、私を元に戻して欲しい」
流石のアルフォンス王子も懲りたか。一応、キクスケさんにお願いして元には戻すつもりだけど、今すぐは出来ない。私とヨルクさんの仲を引き裂いて私を陥れて、すぐには許せない。
「カナエは悪くありません!ナミネとヨルクは勝手に仲違いしたのでしょう!カナエは、あの時、誤って扇子を開いてしまいました!」
「何が誤ってよ!私をセイにイジワルさせたことは絶対に許さないし兄さんからカナコさんに話してもらうわ!」
「セレナール!卑怯な真似はやめるのです!カナエは何もしていません!」
この期に及んで白々しい。彼氏が宦官になったというのに、まだ足掻くのか。
「念を押しますが、私とヨルクさんの仲を裂く者は、女も男も切断の罰を受けてもらいます!二度と私とヨルクさんの仲を引き裂かないでください!」
「ナミネ、お姉さんはどうして……」
そっか、委員長は知らないんだっけ。
「姉は帰り道にガラの悪い同級生と出くわして、姉の友達は助けを呼びに行くから時間を稼いでと嘘を言って姉を差し出したの。姉はイヤガラセされた。第3が破られた後、突然死したの。顔は殴られ腫れて、お腹まで引き裂かれて中のもの出てるよね。当時、姉の縫合をしたのが月城総合病院の先代だったんだよ。私ね、受け入れられなくて毎日病院の屋上で心臓刺して飛び降りたの。そのたびに、先代は私を治療したんだよね。先代は……」
言いかけて私は涙を流していた。
ミドリお姉様の最後の姿を見た私は喚き散らして病院中に迷惑をかけた。それでも受け入れられなくて、私は壊れた。そして、ミドリお姉様をあんな目にあわせた全員の復讐を決意した。
ヨルクさんとの幸せを手に入れても邪魔をされる。森の湖でカナエさんがしたことに対しては我慢の限界だった。
「そうだったんだ。全然知らなかった。僕に出来ることがあったら言って。役に立てるか分からないけど」
「ありがとう、委員長」
その時、ミナクさんが私を抱き締めた。
「これがミドリさんの最後の姿だったんだな……ナミネ、これからは私が兄としてナミネを支える」
「ミナクさん……」
私は、ただ泣いていた。
「ナミネ、本当にごめん。二度とナミネを突き放したりしない」
私はあの時、ヨルクさんとの交際はちゃんと考えていた。けれど、突然のことで、すぐにヨルクさんと向き合えなかった。そしたら、ヨルクさんが私を拒みはじめたのだ。いざ、拒まれるといい気はしなかった。でも、その後、ヨルクさんが自殺を図ったと聞いて、私は、カナエさんに陥れられたと思った。
「カナエさん、一度だけ聞きます。どうして森の湖で歴史を変えてしまったのですか?」
カラン王子……。聞いたって答えてくれないよ。
「カナエは本当にわざとではありません。みんなでカナエを責めないでください!ナミネからはアルフォンス王子を酷い目にあわされ、こっちは完全な被害者です!」
私がカナエさんの脇腹を蹴ろうとした時、落ち武者さんが、代わりに蹴った。私はセレナールさんにセイさんとのラブ映像を送った。その瞬間、セレナールさんはカナエさんを押し倒し殴り付けた。
「やめるのです!みんなでカナエをイジメないでください!」
みんなは見て見ぬフリをした。
「カナエさんが、わざと歴史を変えたせいでヨルクさんはビルから飛び降りました。皆さんもカナエさんに歴史を変えられて幸せでしたか?セレナールさん?アルフォンス王子?」
「幸せどころか、大っ嫌いなセイにイジワルされて今にもカナエを殺してやりたいわ!」
「正直、大切なものを奪われる事態になってカナエとは少し距離を置きたい」
アルフォンス王子は相当滅入っているわけか。本来ならここで2人には別れて欲しくはないが、もう私は介入しない。2人の未来など私が知ったことではない。
「そうですか。カナエさんと別れたいなら好きにしてください。セレナールさんもラルクに何とかしてもらってください。私はヨルクさんとは別れません!ヨルクさんとは愛し合っています。後、これはアルフォンス王子のものなので、お返しします」
私はアルフォンス王子に、切断したものを返却した。その瞬間、アルフォンス王子はカナエさんを殴り付けた。
「よくも歴史を変えて、みんなを不幸にしてくれたな!こんな卑怯な女だとは思わなかった」
「まあ、後のことは皆さん次第です。別れるなり何なり好きにしてください。私は知りません」
それだけ言うと私は立ち上がり、クラスに向かった。後ろからヨルクさんと落ち武者さん、エルナさんが着いてきた。
「ナミネ、本当に……」
私はヨルクさんを突き飛ばした。
「あの日、私は仲直りしたと思い込んでいました。けれど、ヨルクさんは私の話も聞かず私を突き飛ばしました。同じことされた気持ちはいかがですか?あなたを陥れたのはカナエさんでしょう!二度と私に当たらないでください!次、同じことしたら誰のが切断されるでしょうかね。カラルリさんですかね?セイさんですかね?」
ヨルクさんは起き上がるなり私に土下座した。
「本当にごめん。全て私があの時ナミネを突き放したせいでみんなが拗れてしまった。二度と同じ誤ちは繰り返さない。だから許して欲しい」
「ナミネ、セルファに危害を加えないで欲しいの。セルファはあなたに再会出来てとても喜んでるわ」
エルナさんは、まだ落ち武者さんのことが好きなのか。
「けれど、落ち武者さんはミドリお姉様を失った私を更にどん底に突き落とそうとしました。それがいいことなんですか?だったら、私もお二方に恋人が出来た時に自由に関係を引き裂いても構いませんよね」
「強気なナミネ、僕が間違ってた。二度とあんたら引き離さない」
そもそも、どうして落ち武者さんが勝手に私とヨルクさんを引き離そうとしたのか。私には理解出来なかった。過度に他人のことに首を突っ込む落ち武者さんが。
「ナミネ、本当にごめん。全て私のせいだ。二度とナミネに酷いことはしない」
「ヨルクさんは身勝手ですね。私が話し合いを持ちかけた時は全く聞かず、カナミさんとアルフォンス王子を犠牲にしたのはヨルクさんです!次に同じことをすれば破談にし、みんなの前では恋人を装ってもらいます!正直、今めちゃくちゃ気分を害しています。あの時、話し合いに応じれば良かったものの」
ヨルクさんの謝罪を聞かず、私はヨルクさんのズボンとパンツを脱がせ、そのまま猛ダッシュで、その場から立ち去った。
その足で私はカナミさんのクラスへ行った。
カナミさんのクラスに着くなり、私はキクスケさんを呼び出した。そして、カナミさんのクラスに入った。
私はカナミさんのクラスに入るなり、またカナミさんの制服を引き裂いた。カナエさんのことで猛烈に苛立っていた私はキクスケさんが連れて来た中年おじさんにカナミさんを犯させた。
クラスのみんなはアラレもないカナミさんの姿を見て嘲笑った。
「カナミさん、カナエさんは全く反省していません!カナエさんを反省させないとあなたには一生苦しんでもらいます!今回は1週間後、今カナミさんが体験されたことはなかったこととし、カナミさんの記憶の中からも消えます。しかし、私が1週間カナエさんに苦しめられたように、1週間は苦しんで恐怖に怯えてください」
カナミさんは泣いたまま、何も言わなかった。
「返事は?」
「わ……かった……」
「では、1週間お楽しみください。キクリ家の次女が無様ですね。でも、こういうのって連帯責任ですし、家族が責任取るのは当たり前ですよね」
カナミさんはボロボロになったまま起き上がった。クラスの視線に耐え切れなくなったカナミさんは走ってクラスを出て行った。
中等部に戻るなり、私はヨルクさんにメールをした。
『ヨルクさんのせいで、またカナミさんが犠牲になりましたよ。私の機嫌が直らない限り、次々に人に苦しんでもらいます』
『ナミネ、私が悪かった。許して欲しい』
その時、落ち武者さんからもメールが来た。
『あんたの機嫌を損ねることはしない。顔だけヨルクは今、保健室にいる。会いに来てやれ』
私は歴史を変えたカナエさんが許せない。私の話し合いに応じなかったヨルクさんが許せない。けれど、膨らみ続ける風船をどうにも出来ず更に空気を入れてしまう自分が1番許せなかった。なのに、ミドリお姉様との別れは私を大きく変えてしまった。もう引き返せない。私はミドリお姉様を置き去りにした4人よりも残酷な人間になってしまった。
放課後、私は教壇の下でラルクといた。
「ラルク、この1週間で何もかも変わっちゃったね。セナ王女がカラルリさんとまた寝ちゃうなんて笑えるよね」
「まあ、記憶が抜けていたらああなっても不思議ではないだろ。ナミネ、僕はセレナール先輩のこと好きでもなんでもない。僕が好きなのは森の湖にいるセレナール先生なんだ」
そっか。困っている時に少しもセレナールさんに寄り添ってなかったとは思っていたけど、やっぱり、現世のセレナールさんには何の感情もないんだ。
「そうなんだね。時を超えての恋愛にはなるけど、森の湖にはまた行けるし、乗り継ぎややこしいけど民家側の森の湖南駅で下りたら森の湖まですぐだしさ」
今更ながら森の湖南駅で下りれば、セレナールさんもユメさんも体調を崩さずに済んだと思う。調べが足りていなかった。
「そうだな。これからは、森の湖に定期的に行く。相手は時代の違う人だけど、必ず恋仲になる」
「でも、皇太子様と交際したら森の湖にいなくなっちゃうよ」
「それまでに恋人になる」
えっ、それって歴史変わってしまわない?私、またヨルクさんと交際してたこと忘れてしまうの?
「ラルク、それって、歴史変えてしまうことにならない?」
「そうかもしれない。でも、好きな人と幸せになりたい。僕だって幸せになりたい。みんなの幸せ見てるだけじゃもう辛すぎる」
「そっか。そうだよね。ラルク、幸せになりなよ。私はラルクを応援する」
「ナミネ……」
私とラルクは抱き締め合った。
この時の私は、先のことなんて少しも考えていなかった。ラルクが昔のセレナールさんと交際した後のことなんて視野になかった。ただ、私はラルクに幸せになって欲しい。その気持ちしか今はなかった。
私と話した後、ラルクは早速、森の湖に行ってしまった。
私はキクスケさんにメールをした。
『あの、もし、森の湖にいるセレナールさんとラルクが交際したらどうなりますか?歴史変わりますか?』
『その場合もやはり歴史は変わります。現世でセレナールさんと関わった全ての人の記憶が変わってしまいます』
そっか。ラルクと森の湖にいるセレナールさんが交際しても、またみんなの人生変わっちゃうんだ。でも、もうヨルクさんとのことは忘れたくないよ。
『例え歴史が変わっても、私とヨルクさんの記憶は今のまま、交際をしたままでいられるようにしてもらえませんか?』
『かしこまりました。ですが、万が一、遠い昔のセレナールさんとラルクさんが交際したとしても上手くはいかないでしょう。時を超えての恋愛が成立した事例はかなり少ないです』
それでも、ラルクが幸せになれるならば……。もう色々仕方ない気がする。
『そうですか。あの、やっぱり、今のメンバー全員の記憶を変えないでもらえないでしょうか?』
『カップル日記を開くようナミネさんから皆さんに伝えてください。ラルクさんは遠い昔のセレナールさんと交際出来れば、遠い昔のセレナールさんに携帯を渡してカップル日記をさせるでしょう。ラルクさんが森の湖に行くたびに遠い昔のセレナールさんの投稿は反映されるでしょう』
そうか。あの時、この方法を知っていれば、ラルクが遠い昔のセレナールさんに携帯渡していれば、みんなは記憶失わずに済んだのか。もう、色々難しいな。
『分かりました』
キクスケさんとのメールを終えた私は保健室にヨルクさんを迎えに行き、話があることを伝え、ナノハナ家に連れて行った。
ナノハナ家に着くなり、私たちは私の部屋に行った。部屋に入ると……。
そっか、忘れてた。あれからクレナイ家ばかり行ってたから、このままだったんだ。
「あんた、これ何なのさ」
「今片付けます」
空白の1週間の最後に私はヨルクさんとの交際を決意し、部屋に飾り付けをしたのだ。まるで、誰かの誕生日パーティーだ。
「待って!ナミネ、私との交際考えてくれてたの?」
今更言われてもなあ……。
「はい、記憶の抜けた1週間のうちにヨルクさんとの交際を決めて、飾り付けしました」
「そうだったんだ……私何も知らなくて……」
ヨルクさんはまた泣き崩れた。
「とりあえず、記念に写真だけ撮っとけ」
私とヨルクさんは飾り付けの真ん中に行き、落ち武者さんに写真を撮ってもらった。後でカップル日記に投稿しよう。
私たちは飾り付けを片付けた。
使用人が茶菓子を運んで来る中、私は本題に入った。
「ラルクは現世のセレナールさんではなく、森の湖にいるセレナールさんが好きなんです。ラルクは今後、森の湖に通うつもりです。交際が成立すれば、またみんなの記憶は失われてしまいます。けれど、交際が成立すれば逆にラルクはセレナールさんに携帯を持たせるかもなので、カップル日記を開くことでみんなの記憶は消えないそうです」
「難しい話しね。私は例え交際が成立したとしても上手くいかないと思うわ」
そうなんだよね。分かってはいるけれど、あんな必死なラルク見たら止めるに止められなかったし。
「とりあえず、カップル日記のみんなのとこにコメントしといた。けど、ラルクの前に誰かが歴史変えたらカップル日記の効力なくなるな」
それは私も薄々気付いてはいた。落ち武者さんによると、あの後、月城総合病院で手術を受け、大切なものが元に戻った後、カナエさんに別れを告げたらしい。
カナミさんは、私の怒りに触れた後、高等部の保健室で酷いヒステリーを起こし、カナコさんとセリルさんが月城総合病院に連れて行って、今は閉鎖病棟にいるとか。
一度目のカナミさんのことがあってから、キクリ家は、カナエさんを馬小屋に閉じ込めたらしい。今回の件ではキクリ家は歴史を変えたカナエさんに全責任があると見なし、引き続き住まいは馬小屋となり、カナエさんはキクリ家どころか、全てのお武家から四面楚歌になってしまった。
「そうですね、森の湖南駅からだと私たちが歩いた険しい森道なんて行かなくていいですし。タクシー使えば定期的に行けなくもないですよね」
「今、リリカお姉様に詳細話して、お武家連盟会議開かれるみたい。カナエさんの森の湖行きは阻止されると思う」
うーん、カナエさんって、案外手強いし、そんなに上手くいくかな。もし、私がヨルクさんとの記憶を失ったら、もうその時は全てを諦めよう。ラルクの幸せのためだから。でも、記憶が抜けた時、自分が伝説最上級武官の資格取ってたことも忘れてしまったんだよな。
一応、個人日記には一部始終を書いておこう。
「交際が成立したらラルクはそのまま森の湖に残るのかしらね」
「流石にそれはないだろ。24時間一緒にいられるわけでもないし。姉さんは森の湖に来なくなるかもしれない。リスクかかったことラルクがやるとは思えないけどね?」
多分、ラルクは『残る』ではなく『通う』だろう。
落ち武者さんのコメントにより、カップル日記は荒れた。セレナールさんのところからラルクが退会していたため、ヨルクさんと喧嘩した時に作った私とラルクのカップル日記に、みんなからの不安と苦情のコメントがたくさん投稿されていた。
『森の湖のセレナールを亡き者にするしかありません』
やっぱりカナエさんはセレナールさんのみを恨んでいる。ラルクが私とのカップル日記を退会しないのは、閲覧のためだと思う。セレナールさんのとこ退会しても、私のとこ退会しなければ、みんなの動向知ることが出来るから。
ラルク、あの後、森の湖でセレナールさんと会えたかな?
……
あとがき。
何だか言葉に出来ません。
自分で書いていて自分で分からないです。
走り書きの時は、ラルクとセレナールはまだこの時点では拗れていませんでしたし、まさか、ラルクが森の湖通いをすることになってしまうだなんて。
ラルクの片想いは成就するのでしょうか。
《ナミネ》
ヨルクさんが、ビルの屋上から飛び降りて数日が経った。
あの時の私の精神状態は酷く取り乱され、カナエさんにヨルクさんとの中を引き裂かれたと思い、カナミさんのクラスでカナミさんの制服をちぎり、カナミさんがボロボロになるまで殴り続け、カナエさんの前でアルフォンス王子のものを切断した。
けれど、ヨルクさんとの中を引き裂かれた私は少しも悪いことをしたとは思っていなかった。寧ろ、ヨルクさんとの幸せな日々を返して欲しい、そんな思いで私は壊れた。
カナミさんのことは、キクスケさんに頼んでなかったことにしてもらったが、カナミさんはショックのあまり、閉鎖病棟送りとなった。
その後、ナノハお姉様が、カナミさんに何度も謝罪をし、持ち前の精神分析能力でボロボロになったカナミさんの80%を回復させた。カナミさんは元の状態に戻ることが出来た。カナミさんとナノハお姉様は同級生で昔からそこそこ仲が良い。カナミさんはナノハお姉様に私のことは恨まないと言っていたらしい。
けれど、私はカナミさんに謝らなかった。
逆にカナミさんから『ごめんなさい。私の監督不足だったわ。カナエには二度とあんな真似はさせない』と謝られた。
セリルさんが説得したのかカナコさんも『ごめんなさい、会議では、あなたの責任にしようとしたけれど、同じ立場だったら、私もカナエを恨んだわ。カナエには言い聞かせるから時間を頂戴』と謝られた。
そうだね、カナコさんがもし他者のしたことでセリルさんと離れ離れになったら、タダでは済ませないよね。
私は悪くない。
だから、ヨルクさんとも別れない。
けれど、カナミさんとアルフォンス王子を傷付けても私の心は何も晴れなかった。私がヨルクさんに助けを求めるメールをした時、ヨルクさんと、落ち武者さん、エルナさんが駆け付けた。私は何故か、桜木町の空き地にいた。
ヨルクさんが何度も謝る中、落ち武者さんは無理矢理私とヨルクさんを別れさせようとした。
『悪いのは私ですか!』
私は無意識に落ち武者さんを殴り付けた。落ち武者さんは死にかけ、救急車で運ばれた。
落ち武者さんが気が付き次第、私は自分のしたことを悔い、落ち武者さんに謝った。
『二度とあんたらを無理矢理別れさせることはしない。今後はあんたを支える』
落ち武者さんは、放心状態の中、私に助けを求めるかのように言った。
ヨルクさんは、キクリ家と王室に毎日謝罪に行った。
元々は、私との話し合いを放棄して私を追い込んだ自分の責任だと、ひたすら謝り続けた。けれど、キクリ家も王室もヨルクさんを相手にしないどころか、ヨルクさんを殴る蹴るなどして憂さ晴らしをした。私は、キクスケさんに依頼し、ヨルクさんを殴った全ての人に罰を与え二度とヨルクさんに危害を加えないよう皇帝陛下に書類を作成してもらった。
ヨルクさんが殴られて、苛立った私はヨルクさんを殴った男の性器を切断しようとしたところ、落ち武者さんとエルナさんに止められ、思いとどまった。ヨルクさんは、ただただ泣いていた。
関係のない人を巻き込んだ挙句、力でみんなを支配しているのは分かっている。でも、私は悪くない。みんなの兄弟は健全じゃない。でも、私は違う。不本意なやり方でミドリお姉様を奪われた。
カナエさんのような幸せな人が、私を陥れて、カナミさんやアルフォンス王子を傷付けて何が悪いの?傷付けられたくなければ、歴史なんて変えなければ良かったじゃない。
私はヨルクさんとは別れない。寧ろ、ヨルクさんとの幸せをみんなに見せつけてやる。無理矢理引き裂こうものなら、私が容赦しない。
私はカナエさんのしたことに対して、完全に苛立っていた。
けれど、気になることが1つある。
カナミさんの件は、お母様が皇帝陛下に頼んで私を不問にしたけれど、でも、アルフォンス王子の件が不問になったのは何故だろう。誰が私を助けてくれたのだろう。
お昼休み。
私はいつものように広場に向かった。やっぱりみんな来ていた。
「今日は皆さんにお伝えしたいことがあります。私は誰からも攻撃を受けなければ私からは皆さんに何もしません。けれど、今までの状況からしてどうでしょう。何かあった時、自分の身を自分で守れなかったことを私に責任転嫁。助けたい人のために私を囮にする。挙句には歴史を変えて私とヨルクさんの仲を引き裂く。私からは一度たりとも皆さんに攻撃していないのに、皆さんは違いますね。では、宦官になったアルフォンス王子のものを見てください」
私はタッパーのフタを開けた。
アルフォンス王子の切り取られたものを見たみんなは顔を青ざめた。ヨルクさん、セレナールさん、ミナクさん、カナエさん、アルフォンス王子、カラン王子、ユメさん、委員長は吐いた。
「では次に、皆さんに送った画像を開けてください」
また、さっき吐いた人が再び吐いた。
「私はこのようにミドリお姉様を無惨な形で亡くしています。皆さんに送ったのはミドリお姉様の最後の姿です。私は泣きました。叫びました。病室中の窓ガラスを割りました。今でも傷は癒えていません。そんな私にカナエさんは、私の唯一の支えであるヨルクさんとの仲を引き裂きました!だからアルフォンス王子にはミドリお姉様と同じ状態になってもらいました。アルフォンス王子、宦官になった気分はどうですか?カナエさんと別れるなら元に戻しても構いませんよ」
「本当にすまなかった。二度とカナエにナミネとヨルクの仲を引き裂く真似はさせない。どうか、私を元に戻して欲しい」
流石のアルフォンス王子も懲りたか。一応、キクスケさんにお願いして元には戻すつもりだけど、今すぐは出来ない。私とヨルクさんの仲を引き裂いて私を陥れて、すぐには許せない。
「カナエは悪くありません!ナミネとヨルクは勝手に仲違いしたのでしょう!カナエは、あの時、誤って扇子を開いてしまいました!」
「何が誤ってよ!私をセイにイジワルさせたことは絶対に許さないし兄さんからカナコさんに話してもらうわ!」
「セレナール!卑怯な真似はやめるのです!カナエは何もしていません!」
この期に及んで白々しい。彼氏が宦官になったというのに、まだ足掻くのか。
「念を押しますが、私とヨルクさんの仲を裂く者は、女も男も切断の罰を受けてもらいます!二度と私とヨルクさんの仲を引き裂かないでください!」
「ナミネ、お姉さんはどうして……」
そっか、委員長は知らないんだっけ。
「姉は帰り道にガラの悪い同級生と出くわして、姉の友達は助けを呼びに行くから時間を稼いでと嘘を言って姉を差し出したの。姉はイヤガラセされた。第3が破られた後、突然死したの。顔は殴られ腫れて、お腹まで引き裂かれて中のもの出てるよね。当時、姉の縫合をしたのが月城総合病院の先代だったんだよ。私ね、受け入れられなくて毎日病院の屋上で心臓刺して飛び降りたの。そのたびに、先代は私を治療したんだよね。先代は……」
言いかけて私は涙を流していた。
ミドリお姉様の最後の姿を見た私は喚き散らして病院中に迷惑をかけた。それでも受け入れられなくて、私は壊れた。そして、ミドリお姉様をあんな目にあわせた全員の復讐を決意した。
ヨルクさんとの幸せを手に入れても邪魔をされる。森の湖でカナエさんがしたことに対しては我慢の限界だった。
「そうだったんだ。全然知らなかった。僕に出来ることがあったら言って。役に立てるか分からないけど」
「ありがとう、委員長」
その時、ミナクさんが私を抱き締めた。
「これがミドリさんの最後の姿だったんだな……ナミネ、これからは私が兄としてナミネを支える」
「ミナクさん……」
私は、ただ泣いていた。
「ナミネ、本当にごめん。二度とナミネを突き放したりしない」
私はあの時、ヨルクさんとの交際はちゃんと考えていた。けれど、突然のことで、すぐにヨルクさんと向き合えなかった。そしたら、ヨルクさんが私を拒みはじめたのだ。いざ、拒まれるといい気はしなかった。でも、その後、ヨルクさんが自殺を図ったと聞いて、私は、カナエさんに陥れられたと思った。
「カナエさん、一度だけ聞きます。どうして森の湖で歴史を変えてしまったのですか?」
カラン王子……。聞いたって答えてくれないよ。
「カナエは本当にわざとではありません。みんなでカナエを責めないでください!ナミネからはアルフォンス王子を酷い目にあわされ、こっちは完全な被害者です!」
私がカナエさんの脇腹を蹴ろうとした時、落ち武者さんが、代わりに蹴った。私はセレナールさんにセイさんとのラブ映像を送った。その瞬間、セレナールさんはカナエさんを押し倒し殴り付けた。
「やめるのです!みんなでカナエをイジメないでください!」
みんなは見て見ぬフリをした。
「カナエさんが、わざと歴史を変えたせいでヨルクさんはビルから飛び降りました。皆さんもカナエさんに歴史を変えられて幸せでしたか?セレナールさん?アルフォンス王子?」
「幸せどころか、大っ嫌いなセイにイジワルされて今にもカナエを殺してやりたいわ!」
「正直、大切なものを奪われる事態になってカナエとは少し距離を置きたい」
アルフォンス王子は相当滅入っているわけか。本来ならここで2人には別れて欲しくはないが、もう私は介入しない。2人の未来など私が知ったことではない。
「そうですか。カナエさんと別れたいなら好きにしてください。セレナールさんもラルクに何とかしてもらってください。私はヨルクさんとは別れません!ヨルクさんとは愛し合っています。後、これはアルフォンス王子のものなので、お返しします」
私はアルフォンス王子に、切断したものを返却した。その瞬間、アルフォンス王子はカナエさんを殴り付けた。
「よくも歴史を変えて、みんなを不幸にしてくれたな!こんな卑怯な女だとは思わなかった」
「まあ、後のことは皆さん次第です。別れるなり何なり好きにしてください。私は知りません」
それだけ言うと私は立ち上がり、クラスに向かった。後ろからヨルクさんと落ち武者さん、エルナさんが着いてきた。
「ナミネ、本当に……」
私はヨルクさんを突き飛ばした。
「あの日、私は仲直りしたと思い込んでいました。けれど、ヨルクさんは私の話も聞かず私を突き飛ばしました。同じことされた気持ちはいかがですか?あなたを陥れたのはカナエさんでしょう!二度と私に当たらないでください!次、同じことしたら誰のが切断されるでしょうかね。カラルリさんですかね?セイさんですかね?」
ヨルクさんは起き上がるなり私に土下座した。
「本当にごめん。全て私があの時ナミネを突き放したせいでみんなが拗れてしまった。二度と同じ誤ちは繰り返さない。だから許して欲しい」
「ナミネ、セルファに危害を加えないで欲しいの。セルファはあなたに再会出来てとても喜んでるわ」
エルナさんは、まだ落ち武者さんのことが好きなのか。
「けれど、落ち武者さんはミドリお姉様を失った私を更にどん底に突き落とそうとしました。それがいいことなんですか?だったら、私もお二方に恋人が出来た時に自由に関係を引き裂いても構いませんよね」
「強気なナミネ、僕が間違ってた。二度とあんたら引き離さない」
そもそも、どうして落ち武者さんが勝手に私とヨルクさんを引き離そうとしたのか。私には理解出来なかった。過度に他人のことに首を突っ込む落ち武者さんが。
「ナミネ、本当にごめん。全て私のせいだ。二度とナミネに酷いことはしない」
「ヨルクさんは身勝手ですね。私が話し合いを持ちかけた時は全く聞かず、カナミさんとアルフォンス王子を犠牲にしたのはヨルクさんです!次に同じことをすれば破談にし、みんなの前では恋人を装ってもらいます!正直、今めちゃくちゃ気分を害しています。あの時、話し合いに応じれば良かったものの」
ヨルクさんの謝罪を聞かず、私はヨルクさんのズボンとパンツを脱がせ、そのまま猛ダッシュで、その場から立ち去った。
その足で私はカナミさんのクラスへ行った。
カナミさんのクラスに着くなり、私はキクスケさんを呼び出した。そして、カナミさんのクラスに入った。
私はカナミさんのクラスに入るなり、またカナミさんの制服を引き裂いた。カナエさんのことで猛烈に苛立っていた私はキクスケさんが連れて来た中年おじさんにカナミさんを犯させた。
クラスのみんなはアラレもないカナミさんの姿を見て嘲笑った。
「カナミさん、カナエさんは全く反省していません!カナエさんを反省させないとあなたには一生苦しんでもらいます!今回は1週間後、今カナミさんが体験されたことはなかったこととし、カナミさんの記憶の中からも消えます。しかし、私が1週間カナエさんに苦しめられたように、1週間は苦しんで恐怖に怯えてください」
カナミさんは泣いたまま、何も言わなかった。
「返事は?」
「わ……かった……」
「では、1週間お楽しみください。キクリ家の次女が無様ですね。でも、こういうのって連帯責任ですし、家族が責任取るのは当たり前ですよね」
カナミさんはボロボロになったまま起き上がった。クラスの視線に耐え切れなくなったカナミさんは走ってクラスを出て行った。
中等部に戻るなり、私はヨルクさんにメールをした。
『ヨルクさんのせいで、またカナミさんが犠牲になりましたよ。私の機嫌が直らない限り、次々に人に苦しんでもらいます』
『ナミネ、私が悪かった。許して欲しい』
その時、落ち武者さんからもメールが来た。
『あんたの機嫌を損ねることはしない。顔だけヨルクは今、保健室にいる。会いに来てやれ』
私は歴史を変えたカナエさんが許せない。私の話し合いに応じなかったヨルクさんが許せない。けれど、膨らみ続ける風船をどうにも出来ず更に空気を入れてしまう自分が1番許せなかった。なのに、ミドリお姉様との別れは私を大きく変えてしまった。もう引き返せない。私はミドリお姉様を置き去りにした4人よりも残酷な人間になってしまった。
放課後、私は教壇の下でラルクといた。
「ラルク、この1週間で何もかも変わっちゃったね。セナ王女がカラルリさんとまた寝ちゃうなんて笑えるよね」
「まあ、記憶が抜けていたらああなっても不思議ではないだろ。ナミネ、僕はセレナール先輩のこと好きでもなんでもない。僕が好きなのは森の湖にいるセレナール先生なんだ」
そっか。困っている時に少しもセレナールさんに寄り添ってなかったとは思っていたけど、やっぱり、現世のセレナールさんには何の感情もないんだ。
「そうなんだね。時を超えての恋愛にはなるけど、森の湖にはまた行けるし、乗り継ぎややこしいけど民家側の森の湖南駅で下りたら森の湖まですぐだしさ」
今更ながら森の湖南駅で下りれば、セレナールさんもユメさんも体調を崩さずに済んだと思う。調べが足りていなかった。
「そうだな。これからは、森の湖に定期的に行く。相手は時代の違う人だけど、必ず恋仲になる」
「でも、皇太子様と交際したら森の湖にいなくなっちゃうよ」
「それまでに恋人になる」
えっ、それって歴史変わってしまわない?私、またヨルクさんと交際してたこと忘れてしまうの?
「ラルク、それって、歴史変えてしまうことにならない?」
「そうかもしれない。でも、好きな人と幸せになりたい。僕だって幸せになりたい。みんなの幸せ見てるだけじゃもう辛すぎる」
「そっか。そうだよね。ラルク、幸せになりなよ。私はラルクを応援する」
「ナミネ……」
私とラルクは抱き締め合った。
この時の私は、先のことなんて少しも考えていなかった。ラルクが昔のセレナールさんと交際した後のことなんて視野になかった。ただ、私はラルクに幸せになって欲しい。その気持ちしか今はなかった。
私と話した後、ラルクは早速、森の湖に行ってしまった。
私はキクスケさんにメールをした。
『あの、もし、森の湖にいるセレナールさんとラルクが交際したらどうなりますか?歴史変わりますか?』
『その場合もやはり歴史は変わります。現世でセレナールさんと関わった全ての人の記憶が変わってしまいます』
そっか。ラルクと森の湖にいるセレナールさんが交際しても、またみんなの人生変わっちゃうんだ。でも、もうヨルクさんとのことは忘れたくないよ。
『例え歴史が変わっても、私とヨルクさんの記憶は今のまま、交際をしたままでいられるようにしてもらえませんか?』
『かしこまりました。ですが、万が一、遠い昔のセレナールさんとラルクさんが交際したとしても上手くはいかないでしょう。時を超えての恋愛が成立した事例はかなり少ないです』
それでも、ラルクが幸せになれるならば……。もう色々仕方ない気がする。
『そうですか。あの、やっぱり、今のメンバー全員の記憶を変えないでもらえないでしょうか?』
『カップル日記を開くようナミネさんから皆さんに伝えてください。ラルクさんは遠い昔のセレナールさんと交際出来れば、遠い昔のセレナールさんに携帯を渡してカップル日記をさせるでしょう。ラルクさんが森の湖に行くたびに遠い昔のセレナールさんの投稿は反映されるでしょう』
そうか。あの時、この方法を知っていれば、ラルクが遠い昔のセレナールさんに携帯渡していれば、みんなは記憶失わずに済んだのか。もう、色々難しいな。
『分かりました』
キクスケさんとのメールを終えた私は保健室にヨルクさんを迎えに行き、話があることを伝え、ナノハナ家に連れて行った。
ナノハナ家に着くなり、私たちは私の部屋に行った。部屋に入ると……。
そっか、忘れてた。あれからクレナイ家ばかり行ってたから、このままだったんだ。
「あんた、これ何なのさ」
「今片付けます」
空白の1週間の最後に私はヨルクさんとの交際を決意し、部屋に飾り付けをしたのだ。まるで、誰かの誕生日パーティーだ。
「待って!ナミネ、私との交際考えてくれてたの?」
今更言われてもなあ……。
「はい、記憶の抜けた1週間のうちにヨルクさんとの交際を決めて、飾り付けしました」
「そうだったんだ……私何も知らなくて……」
ヨルクさんはまた泣き崩れた。
「とりあえず、記念に写真だけ撮っとけ」
私とヨルクさんは飾り付けの真ん中に行き、落ち武者さんに写真を撮ってもらった。後でカップル日記に投稿しよう。
私たちは飾り付けを片付けた。
使用人が茶菓子を運んで来る中、私は本題に入った。
「ラルクは現世のセレナールさんではなく、森の湖にいるセレナールさんが好きなんです。ラルクは今後、森の湖に通うつもりです。交際が成立すれば、またみんなの記憶は失われてしまいます。けれど、交際が成立すれば逆にラルクはセレナールさんに携帯を持たせるかもなので、カップル日記を開くことでみんなの記憶は消えないそうです」
「難しい話しね。私は例え交際が成立したとしても上手くいかないと思うわ」
そうなんだよね。分かってはいるけれど、あんな必死なラルク見たら止めるに止められなかったし。
「とりあえず、カップル日記のみんなのとこにコメントしといた。けど、ラルクの前に誰かが歴史変えたらカップル日記の効力なくなるな」
それは私も薄々気付いてはいた。落ち武者さんによると、あの後、月城総合病院で手術を受け、大切なものが元に戻った後、カナエさんに別れを告げたらしい。
カナミさんは、私の怒りに触れた後、高等部の保健室で酷いヒステリーを起こし、カナコさんとセリルさんが月城総合病院に連れて行って、今は閉鎖病棟にいるとか。
一度目のカナミさんのことがあってから、キクリ家は、カナエさんを馬小屋に閉じ込めたらしい。今回の件ではキクリ家は歴史を変えたカナエさんに全責任があると見なし、引き続き住まいは馬小屋となり、カナエさんはキクリ家どころか、全てのお武家から四面楚歌になってしまった。
「そうですね、森の湖南駅からだと私たちが歩いた険しい森道なんて行かなくていいですし。タクシー使えば定期的に行けなくもないですよね」
「今、リリカお姉様に詳細話して、お武家連盟会議開かれるみたい。カナエさんの森の湖行きは阻止されると思う」
うーん、カナエさんって、案外手強いし、そんなに上手くいくかな。もし、私がヨルクさんとの記憶を失ったら、もうその時は全てを諦めよう。ラルクの幸せのためだから。でも、記憶が抜けた時、自分が伝説最上級武官の資格取ってたことも忘れてしまったんだよな。
一応、個人日記には一部始終を書いておこう。
「交際が成立したらラルクはそのまま森の湖に残るのかしらね」
「流石にそれはないだろ。24時間一緒にいられるわけでもないし。姉さんは森の湖に来なくなるかもしれない。リスクかかったことラルクがやるとは思えないけどね?」
多分、ラルクは『残る』ではなく『通う』だろう。
落ち武者さんのコメントにより、カップル日記は荒れた。セレナールさんのところからラルクが退会していたため、ヨルクさんと喧嘩した時に作った私とラルクのカップル日記に、みんなからの不安と苦情のコメントがたくさん投稿されていた。
『森の湖のセレナールを亡き者にするしかありません』
やっぱりカナエさんはセレナールさんのみを恨んでいる。ラルクが私とのカップル日記を退会しないのは、閲覧のためだと思う。セレナールさんのとこ退会しても、私のとこ退会しなければ、みんなの動向知ることが出来るから。
ラルク、あの後、森の湖でセレナールさんと会えたかな?
……
あとがき。
何だか言葉に出来ません。
自分で書いていて自分で分からないです。
走り書きの時は、ラルクとセレナールはまだこの時点では拗れていませんでしたし、まさか、ラルクが森の湖通いをすることになってしまうだなんて。
ラルクの片想いは成就するのでしょうか。
純愛偏差値 未来編 一人称版 45話
《ヨルク》
少し前まで、ナミネの温もりを確かに感じていたはずなのに、今は違う。ナミネが遠く感じる。
そして、私は何故、古くて誰も住んでいない民家が並ぶ町にいるのかさえ分からずにいた。
みんなはレストランを出た後、遠い前世、カナエさんとセイさんが住んでいた家に向かった。
レストランからそう遠くはなかった。
けれど、民家は確かに残っているものの、完全な廃墟となっていた。いったい、いつ頃に住んでいたのだろう。
しかし、手入れもされていないのに、周りには雑草1つなく、ただ、廃墟のみがポツンと立っていたのだ。
この廃墟が何の手がかりになるのだろうと思っていたら、カナエさんが、その時の番人であったウルクさんを呼び出して、一時的に当時の様子を再現してもらえることになった。
5分ほどすると、当時、カナエさんとセイさんが住んでいた家が再現された。廃墟からは想像もつかないくらい可愛らしい家だった。表面は丸くて二階建てで、屋根は丸い赤で、まるでイチゴが乗っかっているようだった。
遠い昔なのに、こんなオシャレな家だったとは。
私たちは、当時のカナエさんとセイさんの家の中に入った。
リビングには昔のカナエさんとセイさんがいた。
「セイ、今夜は何が食べたいですか?」
カナエさんは着物にエプロンをしていた。まるで大正ロマンだ。
「カナエ、セレナールと結婚することになった」
「どういうことですか?セイ」
「セレナールに正式に僕と結婚したいと言われた」
カナエさんは涙を流した。
「カナエを捨てるのですか?」
「ごめん」
「ちゃんと話し合いたいのでセレナールをここに呼びます」
カナエさんは窓を開けて紙飛行機を飛ばした。
数分後、セレナールさんが来た。
カナエさんはセレナールさんに紅茶を入れた。しかし、セレナールさんは紅茶を少しも飲まなかった。
「セレナール、セイと結婚するというのは本当ですか?どうしてカナエを裏切ったのですか?」
「私だって、好きな人と一緒になりたかった!でも、あの日、森の湖でセイに後ろから無理矢理されたの。ふた月後、妊娠が発覚したわ」
セレナールさんは泣き、カナエさんの表情は強ばった。
「セイ、どうしてですか!どうしてセレナールを無理矢理キズモノにしたのですか!」
「セレナールは、妖精村1番の美少女妖精だ!男なら誰もがセレナールとの交際を望んでる!あの時、無理矢理するつもりじゃなかった。後ろから抱き締めていただけなんだ!」
セイさんは、妖精村1番の美少女妖精のセレナールさんとの結婚が決まって表情がかなり豊かだった。
「セイのことは死んでも許せないし、結婚はしても心は許さないわ!」
セレナールさんは泣きながら訴えた。けれど、お腹の子は、妊娠2ヶ月というより、もっと成長しているように見える。
「セレナール、考え直してください!イジワルで生まれた子の殆どが幸せにはなれません。中絶を考えてください!」
「私、人より2倍のスピードで子供が成長するらしいから、もう中絶出来ないのよ!」
カナエさんは、セイさんとセレナールさんを引っぱたいた。
「2人とも最低なのです!カナエは絶対に許しません!」
「カナエは、このままここに住んでもらって構わない。僕とセレナールは新居に住むから」
横を見ると、もう荷造りしてあるだろう荷物が置かれていた。
「カナエは実家に戻ります!どうぞ2人で幸せになってください!」
そう言うとカナエさんは何も持たずに家を出た。
ここで時空は現代へと巻き戻り、さっきまで私たちがいたリビングはなくなり、カナエさんとセイさんの家は廃墟になっていた。
「セレナールはセイとの結婚生活は幸せだったのですよね?けれど、カナエは、2人に裏切られたことを忘れられないまま生涯を送りました」
カナエさんはセレナールさんを睨みつけた。
「けど、あの時は私だって無理矢理だったし、エミリが皇太子様と婚約した時は心から泣いたわ。セイは尽くしてくれたけど、好きにはなれなかった」
「そうですか。では、現世では幸せになれるといいですね。カナエはアルフォンス王子様と今幸せなので」
「そ、そう」
何だか歯切れが悪い。
用事が済んだのか、カナエさんはバス停でバスを待った。私たちも、ここにいる理由がないゆえ、バスで帰ることにした。
生涯、違和感しかない。
何故、あんな古い民家が並ぶところにいたのかも分からないし、人気は全くないのに、ポツンと一軒レストランがあって……。いったい何なのだろう。
最寄りのバス停まで着いた。
「セレナール先輩、家まで送ります」
「あら、ありがとう」
ラルクはデレデレしながらセレナールさんの家に向かった。
「ナミネ、送ってく」
「い、いえ、私は大丈夫です」
「ナミネと話したい。ダメかな?」
「わ、分かりました。それなら、私がクレナイ家に行きます」
良かった。完全に避けられているわけではなさそうだ。けれど、今のぎこちない関係が私の心を壊そうとしていた。
クレナイ家の私の部屋に入ると、ナミネの衣類が畳んであった。どうしてだろう。どうして、ナミネの衣類がここにあるのだろう。
「私の服……」
「あ、ごめん。これ返しておくね。帰る時持って帰って」
ナミネは私の部屋を見渡した。
「あれ、私たち同じ指輪してません?」
「確かに……」
今まで全く気づかなかった。何か手がかりはないだろうか。
そうだ、カップル日記!
「ナミネ、カップル日記を見てみよう」
「はい」
カップル日記を見ると、デパートでみんなと一緒にペアリングを買ったらしく、私とナミネの投稿もあったのだ。
それだけでない。
一番最初に遡ると、交際したと確かに書いてある。けれど、ナミネはラルクのことが……。
「ナミネ、無理に私と交際しなくていいから!何がどうなっているのか分からないけど、ナミネの生きたいように生きて!」
「え、でも……」
ナミネはしばらく考え込んでいた。
カップル日記の通り、ナミネと本当に交際していたのなら嬉しい。けれど、このカップル日記が偽りだったとしたら……。
この日は、ナミネも私も汗をかいていたゆえ、別々にお風呂に入り、ナミネは私の部屋に泊まった。
それから3日後の夜、私はナミネを抱いた。
翌日、私は作った朝食をテーブルに置き、ナミネに伝えることにした。
「ナミネのことは私が責任を取る」
10秒ほど間があった。
「すみません、ヨルクさん……。昨日のことは忘れてください。ヨルクさんと交際は出来ません」
「え……じゃあ、昨日のことは何だったの?」
「その……勢いと言いますか……えっと……」
そっか。私はただの慰め役だったのか。馬鹿みたいに思えてきた。
「ナミネにとっては、軽い気持ちだったんだね。ラルクを忘れるために私のこと利用したんだね」
私は涙が零れていた。
「ち、違います!ラルクを忘れるためとかそういうんじゃないです!昨日は私もとても幸せでした。けれど、ヨルクさんと交際は出来ないんです」
「そっか、もういいよ。私たち、他人になろう」
「本当にすみません」
そう言うとナミネは服も待たず走って部屋を出てナノハナ家に戻って行った。私は1人取り残された部屋の中で何時間も泣き続けた。
その後、私は登校はしたものの、ナミネとの関係が壊れてしまったショックで生きた心地がしなかった。町ですれ違ってもナミネは私を避けるし、余計に辛さが重たくのしかかっていた。
そんな朝、目が覚めると、ナミネが横で眠っていた。
「ナミネ……?」
その瞬間、空白の1週間の記憶を思い出した。
あの日、森の湖でセレナールさんの歴史を変えてしまったから、現世でセレナールさんと出会ってからの記憶が全て消えてしまっていたのだ。
1週間なのに、地獄のような日々だった。
けれど、私とナミネはちゃんと交際していた。私は安心からか涙を流した。
「ヨルクさん……」
起きるなりナミネは私に抱き着いた。
「酷いこと言ってごめんなさい。私、ずっとヨルクさんの傍にいます」
ナミネの記憶も戻ってる。
「ナミネ……良かった……。1週間なのに、凄く長く感じて、ナミネと気まずくなって、孤独だった。でも、森の湖で歴史が変わって一時的に記憶がなくなってたんだって、ナミネとちゃんと交際してるんだって分かったら安心した」
私はナミネの前で大泣きした。
本当に私の日常から私の人生からナミネがいなくなるかと思った。とても怖かった。
私はナミネを抱き締めた。
「おい、顔だけヨルク、飯作れ」
えっ、落ち武者さん!?
私は咄嗟に起き上がった。
「ねえ、落ち武者さん、どうしているの?どうして自分の家に帰らないの?」
「釣れないこと言うなよ。あんたら、無事記憶戻って良かったな」
「もう本当何なの!私はナミネと2人でいたいの!」
私は苛立ちながら朝食を作りに行った。
ナミネと離れて1週間経ったから、今日はサンドイッチにしようかな。ナミネ、喜んでくれるかな。
私はうさぎのサンドイッチを3人分作って、再び2階に上がった。
「ナミネ、朝食出来たよ……って、何してるの?」
私はサンドイッチを机に置いて、ナミネとツーショットを撮った。本当、朝っぱらから何なのだろう。
「カップル日記見てみろよ。凄いことになってるぜ」
カップル日記……?
……。
そういえば、レストランで、記憶を失ったセナ王女とカラルリさんが交際したんだっけ!?
私は慌ててカップル日記を開いた。
『カラルリとは遠い前世も恋人だった。
またこうやって恋人になれたのはとても嬉しい』
『カラルリと初Fメモリイ♡』
これは浮気に入るのか入らないのか。
そもそも、自分を流産させた男と、また交際して同じこと繰り返すなんて……。記憶がなかったから仕方ないかもだけど。
『セナさんとは運命の絆で結ばれている。
この気持ちは一生変わらない。
セナさんを一生大切にする』
カラルリさん……。何だかもう言葉に出来ない……。
「投稿消される前に証拠撮っておこうぜ」
落ち武者さんはナミネの携帯画面を撮った。
「記憶を失ったせいで、セナ王女たち、三角関係になりましたな」
「一言で言うとアホだな」
そもそも、カナエさんが、あんなことしなければ……。
「ねえ、あれって、カナエさんが歴史変えたんだよね?どうしてカナエさんはあんなことしたのかな」
そうだ、カナエさんが余計なことしたせいで、私の人生潰れるところだったんだ。絶対みんなで話し合わないといけないと思う。
「男尽くしカナエは、もうずっと昔から姉さんのこと嫌ってたんだよ。友達なフリして、いつも見下す姉さんのこと恨んでたんだよ」
「でも、みんなの記憶は元に戻りましたし、歴史変えたの意味あったんでしょうか」
「男尽くしカナエのカップル日記見てみろ」
私なナミネはカナエさんとアルフォンス王子のカップル日記にアクセスした。
『この1週間とても幸せでした。
キクリ家でアルフォンス王子様と馬に乗ったり、図書館デートしたり、オシャレなカフェに行きました。
遊園地の観覧車の中でカナエはアルフォンス王子様からプロポーズされました。
アルフォンス王子様と幸せな家庭を築くのです』
凄い高そうな婚約指輪を投稿している。
「歴史を変えたことで、みんなの記憶を消して、平凡アルフォンスの頭の中を、遠い前世の男尽くしカナエへの強い想いだけにして、自分だけ幸せになる魂胆なんだよ」
けれど、みんなの記憶が戻れば、意味がないのではないだろうか。私にはカナエさんの魂胆が分からなかった。
「カナエさんは、2番目の番人だった時は特別な人でしたし、みんなの記憶が抜けている間何か力を使ったかもしれませんね。王室の別荘も元に戻っていますし、王室も復旧しました。アルフォンス王子からのプロポーズも得られましたし、1番得しましたよね」
「ああ見えてずる賢い女だったんだな。まさか、セイの野郎が姉さんに気持ち向いてから姉さんのこと恨んでたとは思いもしなかったね。姉さんも地味に損してるしさ」
セレナールさんも損……?私はセレナールさんのカップル日記を見てみた。
えっ、セイさんと……カップル日記!?
『何だか急に懐かしくなっちゃってセイとカフェデートした』
『セレナールと交際することになった。
セレナールとは遠い前世で結婚もしてるし、現世でも幸せになれると思う。セレナール、僕が幸せにするよ』
『早いし気持ち定まってないけどセイと初Fメモリイꯁꯧ』
『セレナールのはじめてゲット!天にも登る思い』
〈セレナールさんが退会しました〉
ん?どういうことだろう。
それにしても、流石に同情してしまう。カナエさんとセイさんが縁がなかったという話なだけだっただろうに。
「ほら、男尽くしカナエと平凡アルフォンスのカップル日記のコメント見てみろよ。かなり荒れてるぜ」
私とナミネは2人のコメント欄を見た。
『セナ:どうしてくれるのよ!カナエのせいで、私、カラルリと浮気してしまったじゃない!私の1週間返してよ!』
『セレナール:カナエ、あんまりだわ!セイに初を捧げてしまうだなんて!絶対にカナエを許さないわ!』
『セナ:カナエ、こんなことして自分だけ幸せになれるはずがないわ』
『セレナール:この馬鹿カナエ!ブスだから、やることも卑怯なのね』
『セレナール:不細工カナエ』
『セレナール:ピル飲みカナエ』
『セレナール:カナエの幸せタイム(写真)』
はあ、見ているだけで疲れる。自業自得な面もあると思うのは私だけだろうか。
私はさっき撮ったナミネのツーショットと共にカップル日記を書いた。
『記憶を失った空白の1週間。
とても長く感じた。
ナミネと交際する前に時間が巻き戻っていて何度も泣いた。
現実でなくて良かった。
本当に良かった。
どこにも行かないで、ナミネ』
もう、あのような思いはしたくない。グループ付き合いも考えものだな。
『森の湖から1週間が過ぎました。
記憶が抜けている間、私はヨルクさんを失いかけました。
本当に失っていたら私の現世はロクなものになっていなかったでしょう。
こうやって朝食を一緒に取れるのは奇跡なことを改めて思い知りました』
私がサンドイッチを食べているところが投稿されていた。
ナミネ……。ナミネも辛かったんだね。
あの1週間を思うと何度でも涙が出てくる。
「あの、セレナールさんやセナ王女が妊娠したことはなかったことになったのでしょうか?」
「そんなことないけど?ただ、元々あった記憶に、あの1週間が上書きされただけ。当人らは2つの記憶に縛られることになるだろうね?」
セレナールさんとセナ王女は二度も初を失ったのか。空白の1週間に関してはセレナールさんのは殆どイジワルじゃないか。カナエさん、どうしてなんだ。復讐をしたつもりなのか?
森の湖に行った意味などあったのだろうか。
「そういえば、ナミネ、また映画撮影したの?」
あの後、ナミネとは会わないようにしていたが、みんなはナミネがまた映画に出ると噂していたけれど、私はナミネを失ったショックで全てをシャットしてしまっていたのである。
「はい、ラハルさんから突然誘われて、興味深い内容だったので、共演しました。花夢物語といって、主役がバイオリンを弾く度に過去に戻りヒロインと会って恋に落ちるんです」
私が伏せっている間、ナミネは楽しく過ごしていたのだろうか。そう思うと、私の胸は痛んだ。ナミネにとって私は、軽い存在なのだろうか。
「そっか。DVD観るね」
私はまた涙が零れていた。
「ヨルクさん、泣かないでください。あの時は、交際のことすぐに考えられなかったんです。ヨルクさんを愛おしい理由が分からなくて時間が欲しかったんです」
だったら、そう言ってくれれば良いのに……。私とは交際出来ないだなんて言われると、ずっとそうなのかと、私は死にそうな気持ちだった。
「どうして言ってくれなかったの……。私、ナミネとは二度と交際出来ないと思って、ずっと苦しかった」
「すみません。ヨルクさんとの交際はちゃんと考えてました。でも、あの時は頭が真っ白になって逃げてしまったんです」
「何それ……酷いね。私は毎日泣いたのに、ナミネはラハルさんと楽しく映画撮影してたんだね。最低だね。しばらく1人になりたい」
私は、ダメだと分かりながらも自分の感情をナミネにぶつけてしまった。
「あんた、せっかく記憶戻って、こうやって強気なナミネと交際出来てんのに、何で拗れさせるんだよ!強気なナミネ失うぞ!」
「ヨルクさん、傍にいさせてください」
ナミネは私に抱き着いてきたが私はナミネを突き飛ばした。
「やめて!あの時も、ラルクの代用品だったんでしょ!私の気持ち利用して何が楽しいの?」
「私、ヨルクさんを利用してなんかいません!ヨルクさんのこと好きだから傍にいたんです!」
「だったら、どうして交際出来ないって言ったの?」
「抜けた記憶の中、はじめてで、恥ずかしかくて思ってもないこと言ってしまったんです!でも、その後、ヨルクさんと気まずくなり、ヨルクさんと前みたいに接することが出来なくなってしまったんです」
ダメだ。気持ちが全く整理出来ない。記憶が抜けていたとは言え、恥ずかしいだけで、交際出来ないなどと言われ、私の心はズタズタになっていた。
私は悔しくて苦しくてその場に泣き崩れた。
「もういい。たかが恥ずかしいで、交際出来ないと私を陥れたことは、どうしても許せない。ナミネにハメられてやり切れない……ナミネに利用されて苦しい……ナミネにラルクの代わりにされて不愉快……。ナミネなんか大嫌い!」
「おい、やめろ!本当に強気なナミネが他の男と交際しても良いのか?」
私の心は酷く乱れていた。
「ヨルクさん、落ち着いてください。私はヨルクさんだけです!」
「ねえ、ナミネ、本当に私だけなら私を利用していないのなら、セイさんとセレナールさんを交際させてよ」
「分かりました。ヨルクさんがそれで気が収まるならそうします」
ナミネは、呼び出しカードを取り出した。
「顔だけヨルク、あんた落ち着くまで、強気なナミネとは会うな。1人で苦しんでろ」
落ち武者さんは、ナミネをナノハナ家に連れて行った。ナミネから辱められたと思った私は、近くのビルの屋上から飛び降りた。
この私の行動がナミネの病気を酷く悪化させた。
月城総合病院で目を覚ますと、落ち武者さんがいた。
「あんた、ここまで負いつまってたなら何で言わなかった!強気なナミネは、あんたの信用と愛情を失ったと思い込んで、いきなりカナミのクラス行くなり、カナミの制服脱がせて、カナミをひたすら殴り病院送りにした。カナミはショックのあまり、パニック障害になった。平凡アルフォンスは男尽くしカナエの前で儀式起こした。カナミの件は男尽くしカナエが原因作ったから、ナノハナ家に慰謝料を請求出来ず、平凡アルフォンスの件は、皇帝陛下が不問にした」
そんな。私が不安定になっている、その向こう側でナミネはもっと不安定になっていただなんて。私は取り返しのつかないことをナミネにさせてしまった責任を今になって痛感した。今すぐナミネと会って話がしたい。ナミネ、本当にごめんね。
「ナミネは、ナミネはどこにいるの?」
「さあな。ここまで追い込ませたんだから、悪いけど、あんたら別れさせる」
「待って!もう二度とナミネを責めない!」
「あんた、何度もそう言って強気なナミネに責任転嫁してんだろ!今、お武家連盟会議が開かれてて、カナコはカナミは関係ないと主張したけど、ナノハナ家の母親が男尽くしカナエがしたことはキクリ家がしたことも同然と、男尽くしカナエに慰謝料1億請求した。カナコが訴えると主張したらナノハナ家の母親は皇帝陛下からの強気なナミネを不問にする書類提出してカナコはセリルに泣き付き、カナミは、強気なナミネからこっちの人生壊しておいて幸せになろうものなら、妖精村中に映像ばら撒くと脅した。カナミはヒステリー起こし、ここの閉鎖病棟に入れられた。全部あんたのせいだ。あんたが、強気なナミネに責任転嫁したから、関係ないヤツらに飛び火したんだよ!」
落ち武者さんは、私とナミネを別れさせるつもりだ。どうしたら、ナミネと別れられずに済む。ちゃんと、ナミネと話し合えば良かった。どうしてそれが出来なかったのだろう。
私は後悔してもし切れず大泣きをした。
その時、ナミネからメールが来た。
『ヨルクさんの愛情得られないなら、ヨルクさんに何も信じてもらえないなら生きてる意味など何もないよ。ヨルクさん、さようなら』
『待ってナミネ!私が悪かった!ナミネのしたことは私が全て責任取るし、ナミネのこと愛してる!ナミネが私のこと好きじゃないと思ってショック受けてた!ナミネ、どこにいるの?』
「落ち武者さん、ナミネが……」
私は携帯画面を落ち武者さんに見せた。
「あんたが強気なナミネと別れるなら協力する」
え……、全て私が悪いの?みんなそう思ってるの?私はまた涙を零した。
「ナミネとは絶対別れない!落ち武者さんてひねくれてるよね!何かあれば全て私が悪いの?ムカつく!痛い目あえばいいのに!」
その時、ナミネからまたメールが来た。
『ヨルクさん助けて……助けて……助けて……』
……
あとがき。
関係のない人まで巻き込まれてしまいました。
《ヨルク》
少し前まで、ナミネの温もりを確かに感じていたはずなのに、今は違う。ナミネが遠く感じる。
そして、私は何故、古くて誰も住んでいない民家が並ぶ町にいるのかさえ分からずにいた。
みんなはレストランを出た後、遠い前世、カナエさんとセイさんが住んでいた家に向かった。
レストランからそう遠くはなかった。
けれど、民家は確かに残っているものの、完全な廃墟となっていた。いったい、いつ頃に住んでいたのだろう。
しかし、手入れもされていないのに、周りには雑草1つなく、ただ、廃墟のみがポツンと立っていたのだ。
この廃墟が何の手がかりになるのだろうと思っていたら、カナエさんが、その時の番人であったウルクさんを呼び出して、一時的に当時の様子を再現してもらえることになった。
5分ほどすると、当時、カナエさんとセイさんが住んでいた家が再現された。廃墟からは想像もつかないくらい可愛らしい家だった。表面は丸くて二階建てで、屋根は丸い赤で、まるでイチゴが乗っかっているようだった。
遠い昔なのに、こんなオシャレな家だったとは。
私たちは、当時のカナエさんとセイさんの家の中に入った。
リビングには昔のカナエさんとセイさんがいた。
「セイ、今夜は何が食べたいですか?」
カナエさんは着物にエプロンをしていた。まるで大正ロマンだ。
「カナエ、セレナールと結婚することになった」
「どういうことですか?セイ」
「セレナールに正式に僕と結婚したいと言われた」
カナエさんは涙を流した。
「カナエを捨てるのですか?」
「ごめん」
「ちゃんと話し合いたいのでセレナールをここに呼びます」
カナエさんは窓を開けて紙飛行機を飛ばした。
数分後、セレナールさんが来た。
カナエさんはセレナールさんに紅茶を入れた。しかし、セレナールさんは紅茶を少しも飲まなかった。
「セレナール、セイと結婚するというのは本当ですか?どうしてカナエを裏切ったのですか?」
「私だって、好きな人と一緒になりたかった!でも、あの日、森の湖でセイに後ろから無理矢理されたの。ふた月後、妊娠が発覚したわ」
セレナールさんは泣き、カナエさんの表情は強ばった。
「セイ、どうしてですか!どうしてセレナールを無理矢理キズモノにしたのですか!」
「セレナールは、妖精村1番の美少女妖精だ!男なら誰もがセレナールとの交際を望んでる!あの時、無理矢理するつもりじゃなかった。後ろから抱き締めていただけなんだ!」
セイさんは、妖精村1番の美少女妖精のセレナールさんとの結婚が決まって表情がかなり豊かだった。
「セイのことは死んでも許せないし、結婚はしても心は許さないわ!」
セレナールさんは泣きながら訴えた。けれど、お腹の子は、妊娠2ヶ月というより、もっと成長しているように見える。
「セレナール、考え直してください!イジワルで生まれた子の殆どが幸せにはなれません。中絶を考えてください!」
「私、人より2倍のスピードで子供が成長するらしいから、もう中絶出来ないのよ!」
カナエさんは、セイさんとセレナールさんを引っぱたいた。
「2人とも最低なのです!カナエは絶対に許しません!」
「カナエは、このままここに住んでもらって構わない。僕とセレナールは新居に住むから」
横を見ると、もう荷造りしてあるだろう荷物が置かれていた。
「カナエは実家に戻ります!どうぞ2人で幸せになってください!」
そう言うとカナエさんは何も持たずに家を出た。
ここで時空は現代へと巻き戻り、さっきまで私たちがいたリビングはなくなり、カナエさんとセイさんの家は廃墟になっていた。
「セレナールはセイとの結婚生活は幸せだったのですよね?けれど、カナエは、2人に裏切られたことを忘れられないまま生涯を送りました」
カナエさんはセレナールさんを睨みつけた。
「けど、あの時は私だって無理矢理だったし、エミリが皇太子様と婚約した時は心から泣いたわ。セイは尽くしてくれたけど、好きにはなれなかった」
「そうですか。では、現世では幸せになれるといいですね。カナエはアルフォンス王子様と今幸せなので」
「そ、そう」
何だか歯切れが悪い。
用事が済んだのか、カナエさんはバス停でバスを待った。私たちも、ここにいる理由がないゆえ、バスで帰ることにした。
生涯、違和感しかない。
何故、あんな古い民家が並ぶところにいたのかも分からないし、人気は全くないのに、ポツンと一軒レストランがあって……。いったい何なのだろう。
最寄りのバス停まで着いた。
「セレナール先輩、家まで送ります」
「あら、ありがとう」
ラルクはデレデレしながらセレナールさんの家に向かった。
「ナミネ、送ってく」
「い、いえ、私は大丈夫です」
「ナミネと話したい。ダメかな?」
「わ、分かりました。それなら、私がクレナイ家に行きます」
良かった。完全に避けられているわけではなさそうだ。けれど、今のぎこちない関係が私の心を壊そうとしていた。
クレナイ家の私の部屋に入ると、ナミネの衣類が畳んであった。どうしてだろう。どうして、ナミネの衣類がここにあるのだろう。
「私の服……」
「あ、ごめん。これ返しておくね。帰る時持って帰って」
ナミネは私の部屋を見渡した。
「あれ、私たち同じ指輪してません?」
「確かに……」
今まで全く気づかなかった。何か手がかりはないだろうか。
そうだ、カップル日記!
「ナミネ、カップル日記を見てみよう」
「はい」
カップル日記を見ると、デパートでみんなと一緒にペアリングを買ったらしく、私とナミネの投稿もあったのだ。
それだけでない。
一番最初に遡ると、交際したと確かに書いてある。けれど、ナミネはラルクのことが……。
「ナミネ、無理に私と交際しなくていいから!何がどうなっているのか分からないけど、ナミネの生きたいように生きて!」
「え、でも……」
ナミネはしばらく考え込んでいた。
カップル日記の通り、ナミネと本当に交際していたのなら嬉しい。けれど、このカップル日記が偽りだったとしたら……。
この日は、ナミネも私も汗をかいていたゆえ、別々にお風呂に入り、ナミネは私の部屋に泊まった。
それから3日後の夜、私はナミネを抱いた。
翌日、私は作った朝食をテーブルに置き、ナミネに伝えることにした。
「ナミネのことは私が責任を取る」
10秒ほど間があった。
「すみません、ヨルクさん……。昨日のことは忘れてください。ヨルクさんと交際は出来ません」
「え……じゃあ、昨日のことは何だったの?」
「その……勢いと言いますか……えっと……」
そっか。私はただの慰め役だったのか。馬鹿みたいに思えてきた。
「ナミネにとっては、軽い気持ちだったんだね。ラルクを忘れるために私のこと利用したんだね」
私は涙が零れていた。
「ち、違います!ラルクを忘れるためとかそういうんじゃないです!昨日は私もとても幸せでした。けれど、ヨルクさんと交際は出来ないんです」
「そっか、もういいよ。私たち、他人になろう」
「本当にすみません」
そう言うとナミネは服も待たず走って部屋を出てナノハナ家に戻って行った。私は1人取り残された部屋の中で何時間も泣き続けた。
その後、私は登校はしたものの、ナミネとの関係が壊れてしまったショックで生きた心地がしなかった。町ですれ違ってもナミネは私を避けるし、余計に辛さが重たくのしかかっていた。
そんな朝、目が覚めると、ナミネが横で眠っていた。
「ナミネ……?」
その瞬間、空白の1週間の記憶を思い出した。
あの日、森の湖でセレナールさんの歴史を変えてしまったから、現世でセレナールさんと出会ってからの記憶が全て消えてしまっていたのだ。
1週間なのに、地獄のような日々だった。
けれど、私とナミネはちゃんと交際していた。私は安心からか涙を流した。
「ヨルクさん……」
起きるなりナミネは私に抱き着いた。
「酷いこと言ってごめんなさい。私、ずっとヨルクさんの傍にいます」
ナミネの記憶も戻ってる。
「ナミネ……良かった……。1週間なのに、凄く長く感じて、ナミネと気まずくなって、孤独だった。でも、森の湖で歴史が変わって一時的に記憶がなくなってたんだって、ナミネとちゃんと交際してるんだって分かったら安心した」
私はナミネの前で大泣きした。
本当に私の日常から私の人生からナミネがいなくなるかと思った。とても怖かった。
私はナミネを抱き締めた。
「おい、顔だけヨルク、飯作れ」
えっ、落ち武者さん!?
私は咄嗟に起き上がった。
「ねえ、落ち武者さん、どうしているの?どうして自分の家に帰らないの?」
「釣れないこと言うなよ。あんたら、無事記憶戻って良かったな」
「もう本当何なの!私はナミネと2人でいたいの!」
私は苛立ちながら朝食を作りに行った。
ナミネと離れて1週間経ったから、今日はサンドイッチにしようかな。ナミネ、喜んでくれるかな。
私はうさぎのサンドイッチを3人分作って、再び2階に上がった。
「ナミネ、朝食出来たよ……って、何してるの?」
私はサンドイッチを机に置いて、ナミネとツーショットを撮った。本当、朝っぱらから何なのだろう。
「カップル日記見てみろよ。凄いことになってるぜ」
カップル日記……?
……。
そういえば、レストランで、記憶を失ったセナ王女とカラルリさんが交際したんだっけ!?
私は慌ててカップル日記を開いた。
『カラルリとは遠い前世も恋人だった。
またこうやって恋人になれたのはとても嬉しい』
『カラルリと初Fメモリイ♡』
これは浮気に入るのか入らないのか。
そもそも、自分を流産させた男と、また交際して同じこと繰り返すなんて……。記憶がなかったから仕方ないかもだけど。
『セナさんとは運命の絆で結ばれている。
この気持ちは一生変わらない。
セナさんを一生大切にする』
カラルリさん……。何だかもう言葉に出来ない……。
「投稿消される前に証拠撮っておこうぜ」
落ち武者さんはナミネの携帯画面を撮った。
「記憶を失ったせいで、セナ王女たち、三角関係になりましたな」
「一言で言うとアホだな」
そもそも、カナエさんが、あんなことしなければ……。
「ねえ、あれって、カナエさんが歴史変えたんだよね?どうしてカナエさんはあんなことしたのかな」
そうだ、カナエさんが余計なことしたせいで、私の人生潰れるところだったんだ。絶対みんなで話し合わないといけないと思う。
「男尽くしカナエは、もうずっと昔から姉さんのこと嫌ってたんだよ。友達なフリして、いつも見下す姉さんのこと恨んでたんだよ」
「でも、みんなの記憶は元に戻りましたし、歴史変えたの意味あったんでしょうか」
「男尽くしカナエのカップル日記見てみろ」
私なナミネはカナエさんとアルフォンス王子のカップル日記にアクセスした。
『この1週間とても幸せでした。
キクリ家でアルフォンス王子様と馬に乗ったり、図書館デートしたり、オシャレなカフェに行きました。
遊園地の観覧車の中でカナエはアルフォンス王子様からプロポーズされました。
アルフォンス王子様と幸せな家庭を築くのです』
凄い高そうな婚約指輪を投稿している。
「歴史を変えたことで、みんなの記憶を消して、平凡アルフォンスの頭の中を、遠い前世の男尽くしカナエへの強い想いだけにして、自分だけ幸せになる魂胆なんだよ」
けれど、みんなの記憶が戻れば、意味がないのではないだろうか。私にはカナエさんの魂胆が分からなかった。
「カナエさんは、2番目の番人だった時は特別な人でしたし、みんなの記憶が抜けている間何か力を使ったかもしれませんね。王室の別荘も元に戻っていますし、王室も復旧しました。アルフォンス王子からのプロポーズも得られましたし、1番得しましたよね」
「ああ見えてずる賢い女だったんだな。まさか、セイの野郎が姉さんに気持ち向いてから姉さんのこと恨んでたとは思いもしなかったね。姉さんも地味に損してるしさ」
セレナールさんも損……?私はセレナールさんのカップル日記を見てみた。
えっ、セイさんと……カップル日記!?
『何だか急に懐かしくなっちゃってセイとカフェデートした』
『セレナールと交際することになった。
セレナールとは遠い前世で結婚もしてるし、現世でも幸せになれると思う。セレナール、僕が幸せにするよ』
『早いし気持ち定まってないけどセイと初Fメモリイꯁꯧ』
『セレナールのはじめてゲット!天にも登る思い』
〈セレナールさんが退会しました〉
ん?どういうことだろう。
それにしても、流石に同情してしまう。カナエさんとセイさんが縁がなかったという話なだけだっただろうに。
「ほら、男尽くしカナエと平凡アルフォンスのカップル日記のコメント見てみろよ。かなり荒れてるぜ」
私とナミネは2人のコメント欄を見た。
『セナ:どうしてくれるのよ!カナエのせいで、私、カラルリと浮気してしまったじゃない!私の1週間返してよ!』
『セレナール:カナエ、あんまりだわ!セイに初を捧げてしまうだなんて!絶対にカナエを許さないわ!』
『セナ:カナエ、こんなことして自分だけ幸せになれるはずがないわ』
『セレナール:この馬鹿カナエ!ブスだから、やることも卑怯なのね』
『セレナール:不細工カナエ』
『セレナール:ピル飲みカナエ』
『セレナール:カナエの幸せタイム(写真)』
はあ、見ているだけで疲れる。自業自得な面もあると思うのは私だけだろうか。
私はさっき撮ったナミネのツーショットと共にカップル日記を書いた。
『記憶を失った空白の1週間。
とても長く感じた。
ナミネと交際する前に時間が巻き戻っていて何度も泣いた。
現実でなくて良かった。
本当に良かった。
どこにも行かないで、ナミネ』
もう、あのような思いはしたくない。グループ付き合いも考えものだな。
『森の湖から1週間が過ぎました。
記憶が抜けている間、私はヨルクさんを失いかけました。
本当に失っていたら私の現世はロクなものになっていなかったでしょう。
こうやって朝食を一緒に取れるのは奇跡なことを改めて思い知りました』
私がサンドイッチを食べているところが投稿されていた。
ナミネ……。ナミネも辛かったんだね。
あの1週間を思うと何度でも涙が出てくる。
「あの、セレナールさんやセナ王女が妊娠したことはなかったことになったのでしょうか?」
「そんなことないけど?ただ、元々あった記憶に、あの1週間が上書きされただけ。当人らは2つの記憶に縛られることになるだろうね?」
セレナールさんとセナ王女は二度も初を失ったのか。空白の1週間に関してはセレナールさんのは殆どイジワルじゃないか。カナエさん、どうしてなんだ。復讐をしたつもりなのか?
森の湖に行った意味などあったのだろうか。
「そういえば、ナミネ、また映画撮影したの?」
あの後、ナミネとは会わないようにしていたが、みんなはナミネがまた映画に出ると噂していたけれど、私はナミネを失ったショックで全てをシャットしてしまっていたのである。
「はい、ラハルさんから突然誘われて、興味深い内容だったので、共演しました。花夢物語といって、主役がバイオリンを弾く度に過去に戻りヒロインと会って恋に落ちるんです」
私が伏せっている間、ナミネは楽しく過ごしていたのだろうか。そう思うと、私の胸は痛んだ。ナミネにとって私は、軽い存在なのだろうか。
「そっか。DVD観るね」
私はまた涙が零れていた。
「ヨルクさん、泣かないでください。あの時は、交際のことすぐに考えられなかったんです。ヨルクさんを愛おしい理由が分からなくて時間が欲しかったんです」
だったら、そう言ってくれれば良いのに……。私とは交際出来ないだなんて言われると、ずっとそうなのかと、私は死にそうな気持ちだった。
「どうして言ってくれなかったの……。私、ナミネとは二度と交際出来ないと思って、ずっと苦しかった」
「すみません。ヨルクさんとの交際はちゃんと考えてました。でも、あの時は頭が真っ白になって逃げてしまったんです」
「何それ……酷いね。私は毎日泣いたのに、ナミネはラハルさんと楽しく映画撮影してたんだね。最低だね。しばらく1人になりたい」
私は、ダメだと分かりながらも自分の感情をナミネにぶつけてしまった。
「あんた、せっかく記憶戻って、こうやって強気なナミネと交際出来てんのに、何で拗れさせるんだよ!強気なナミネ失うぞ!」
「ヨルクさん、傍にいさせてください」
ナミネは私に抱き着いてきたが私はナミネを突き飛ばした。
「やめて!あの時も、ラルクの代用品だったんでしょ!私の気持ち利用して何が楽しいの?」
「私、ヨルクさんを利用してなんかいません!ヨルクさんのこと好きだから傍にいたんです!」
「だったら、どうして交際出来ないって言ったの?」
「抜けた記憶の中、はじめてで、恥ずかしかくて思ってもないこと言ってしまったんです!でも、その後、ヨルクさんと気まずくなり、ヨルクさんと前みたいに接することが出来なくなってしまったんです」
ダメだ。気持ちが全く整理出来ない。記憶が抜けていたとは言え、恥ずかしいだけで、交際出来ないなどと言われ、私の心はズタズタになっていた。
私は悔しくて苦しくてその場に泣き崩れた。
「もういい。たかが恥ずかしいで、交際出来ないと私を陥れたことは、どうしても許せない。ナミネにハメられてやり切れない……ナミネに利用されて苦しい……ナミネにラルクの代わりにされて不愉快……。ナミネなんか大嫌い!」
「おい、やめろ!本当に強気なナミネが他の男と交際しても良いのか?」
私の心は酷く乱れていた。
「ヨルクさん、落ち着いてください。私はヨルクさんだけです!」
「ねえ、ナミネ、本当に私だけなら私を利用していないのなら、セイさんとセレナールさんを交際させてよ」
「分かりました。ヨルクさんがそれで気が収まるならそうします」
ナミネは、呼び出しカードを取り出した。
「顔だけヨルク、あんた落ち着くまで、強気なナミネとは会うな。1人で苦しんでろ」
落ち武者さんは、ナミネをナノハナ家に連れて行った。ナミネから辱められたと思った私は、近くのビルの屋上から飛び降りた。
この私の行動がナミネの病気を酷く悪化させた。
月城総合病院で目を覚ますと、落ち武者さんがいた。
「あんた、ここまで負いつまってたなら何で言わなかった!強気なナミネは、あんたの信用と愛情を失ったと思い込んで、いきなりカナミのクラス行くなり、カナミの制服脱がせて、カナミをひたすら殴り病院送りにした。カナミはショックのあまり、パニック障害になった。平凡アルフォンスは男尽くしカナエの前で儀式起こした。カナミの件は男尽くしカナエが原因作ったから、ナノハナ家に慰謝料を請求出来ず、平凡アルフォンスの件は、皇帝陛下が不問にした」
そんな。私が不安定になっている、その向こう側でナミネはもっと不安定になっていただなんて。私は取り返しのつかないことをナミネにさせてしまった責任を今になって痛感した。今すぐナミネと会って話がしたい。ナミネ、本当にごめんね。
「ナミネは、ナミネはどこにいるの?」
「さあな。ここまで追い込ませたんだから、悪いけど、あんたら別れさせる」
「待って!もう二度とナミネを責めない!」
「あんた、何度もそう言って強気なナミネに責任転嫁してんだろ!今、お武家連盟会議が開かれてて、カナコはカナミは関係ないと主張したけど、ナノハナ家の母親が男尽くしカナエがしたことはキクリ家がしたことも同然と、男尽くしカナエに慰謝料1億請求した。カナコが訴えると主張したらナノハナ家の母親は皇帝陛下からの強気なナミネを不問にする書類提出してカナコはセリルに泣き付き、カナミは、強気なナミネからこっちの人生壊しておいて幸せになろうものなら、妖精村中に映像ばら撒くと脅した。カナミはヒステリー起こし、ここの閉鎖病棟に入れられた。全部あんたのせいだ。あんたが、強気なナミネに責任転嫁したから、関係ないヤツらに飛び火したんだよ!」
落ち武者さんは、私とナミネを別れさせるつもりだ。どうしたら、ナミネと別れられずに済む。ちゃんと、ナミネと話し合えば良かった。どうしてそれが出来なかったのだろう。
私は後悔してもし切れず大泣きをした。
その時、ナミネからメールが来た。
『ヨルクさんの愛情得られないなら、ヨルクさんに何も信じてもらえないなら生きてる意味など何もないよ。ヨルクさん、さようなら』
『待ってナミネ!私が悪かった!ナミネのしたことは私が全て責任取るし、ナミネのこと愛してる!ナミネが私のこと好きじゃないと思ってショック受けてた!ナミネ、どこにいるの?』
「落ち武者さん、ナミネが……」
私は携帯画面を落ち武者さんに見せた。
「あんたが強気なナミネと別れるなら協力する」
え……、全て私が悪いの?みんなそう思ってるの?私はまた涙を零した。
「ナミネとは絶対別れない!落ち武者さんてひねくれてるよね!何かあれば全て私が悪いの?ムカつく!痛い目あえばいいのに!」
その時、ナミネからまたメールが来た。
『ヨルクさん助けて……助けて……助けて……』
……
あとがき。
関係のない人まで巻き込まれてしまいました。