日常のこととかオリジナル小説のこととか。
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ashita
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女性
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地主(土地貸してます)
趣味:
漫画やアニメを見るのが好きです。最推しはフーディーニ ♡
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ブログ、もう書かないと思ってました。
けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。
小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。
純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。
ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。
小説、ぼちぼちマイペースに書いてゆきます。
よろしくお願い致します。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
お知らせ。
イラストは現在「ナノハナ家の日常」に載せております。サイドバーにリンクあります。
また、「カラクリよろずや」にてフリーイラスト素材について考えるブログはじめました✩.*˚
不定期に更新していく予定です。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
模倣・無断転載などは、ご遠慮ください。
ブログの小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
小説・純愛偏差値に関しましては、武家名・貴族名(程度による) / 及び、武官の階級 / 扇子・羽子板・花札・百人一首・紙飛行機などのアイテム使用方法の模倣の一切を禁じております。
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X @kigenzen1874
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けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。
小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。
純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。
ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。
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〈資格履歴〉
2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
→漢方コーディネーター 合格
→薬膳調整師 合格
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〈資格証明バナー〉

2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2012年10月25日
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2025年03月07日
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→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
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→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
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2025年05月19日
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〈資格証明バナー〉

未来望遠鏡 7話
「私、未来が見えるの」
山野さんは確かにそう言った。冗談を言っているようには思えなかった。多分山野さんは真剣だ。
「未来…?」
僕は聞いた。
「そう、未来」
今の真剣な山野さんに僕はどう反応していいのか分からなかった。
「どうして、それを僕に?」
僕は残りのコーヒーを一気に飲んだ。コーヒーは少し冷めていて温くて美味しくなかった。
「話すと長くなるわ」
山野さんはこれから僕に何かを話すのだろう。それも、かなり時間のかかる話を。
僕はその話を聞く意思を示すかのように、コーヒーをもう一杯注文した。
「わかった。聞くよ、山野さんさんの話」
山野さんの真剣さが移ったのか僕まで真剣になってきた。
「あれは大学生の時だった。私はある先輩と恋仲になってた。けれど、そんな時に圭吾はある提案をしたの。先輩も圭吾もサッカー部だった。圭吾はサッカーで先輩のチームと勝負して勝ったら私と付き合ってほしいとそう言ってきたの。私はすんなりOKしたわ。今思えばこの選択が間違っていた。でも、あの時は先輩が負けるはずないと確信していたの。そう、先輩が負けるはずなかった」
山野さんの話に田辺が出てきて僕は焦りを隠すかのようにコーヒーをひと口飲んだ。そして、山野さんは続けた。
「けれど、勝負は圭吾のチームが勝って先輩のチームが負けたの。私はこれは現実じゃないって何度も言い聞かせた。何より好きでもない圭吾と付き合うのは考えられなかった。でも、後には引けなかったの。私は嫌々圭吾と付き合ったわ。そして、先輩への思いは断ち切れないままだった。私と圭吾が付き合っているのを見かね先輩は自殺した」
「えっ!」
僕は思わず声を出してしまった。
「圭吾は細工していたの。試合当日に先輩の靴に細工していたのよ。その事を先輩は何一つ言わなかったわ」
山野さんが今でも辛い思いをしているのは痛いほど伝わってきた。そして、山野さんの目は涙ぐんでいた。
「細工? 田辺が? どうして?」
僕はただ聞くことしかできなかった。田辺のこと、山野さんのこと、山野さんが慕っていた先輩のこと何にも知らないから、慰めの言葉より現状を把握する事を選んでしまった。
「これよ」
山野さんは鞄の中から双眼鏡を取り出し僕に見せた。
「これって、双眼鏡?」
僕はますます分からなくなった。
「信じられないかもしれないけど、この双眼鏡を通して過去を見ることが出来るの」
僕は声が出なかった。その代わりに目をまん丸に開いて驚きを表明していた。
「この双眼鏡で、圭吾が先輩の靴に細工している姿が見えたわ。最初は幻覚でも見てるのかと思った。けれど、この双眼鏡を通して見えた事は全て過去に起きた出来事だと分かったの。だからね、辛かった。もし、過去じゃなく未来が見えたら全てが変わっていたのかもしれないと思うと今でも辛いの」
未来と過去。どちらが見えたら有利かなんて考えた事さえなかった。けれど、山野さんは過去ではなく未来を知りたかった。そうすることで先輩を救いたかったのだろう。
僕は望遠鏡を通して未来を見ることが出来る。
もし、僕が双眼鏡で山野さんが望遠鏡を持っていたなら全てが丸く収まっていたのだろうか。
考えると、もうキリがなかった。
「ごめんね。菊助君私に手紙渡そうとしてたでしょ? 手紙に書いていた内容もこの双眼鏡で分かっちゃった。告白受けてないのに勝手に気持ちを知っちゃってごめんね」
山野さんからは切なさしか伝わってこなかった。僕自身もただただ切なかった。
そして、頭は回らない。田辺と山野さんは愛し合っていると信じていたのが実はそうではなくて、山野さんは田辺を憎んでいる事を知って僕はどうしたらいいのか分からなかった。
「僕の事は大丈夫だから。そんな事より山野さんが心配だよ」
これは本心だった。
同時に山野さんを疑っていた自分自身を恥じていた。田辺にシクラメンを渡していたのは本当に田辺を許せなかったのだと思う。普通入院患者には植木鉢ごと花は渡さない。それは、寝付くと言われているからだ。これは、根付くという語源から来ているらしい。現代では、土によって感染してしまうことを防ぐために入院患者には土に触れさせないようにしているのだが、少なくとも山野さんにとっては田辺に寝付いてほしかったのだと思う。
多分この時から僕は僕自身が分からなくなっていた。
「私、未来が見えるの」
山野さんは確かにそう言った。冗談を言っているようには思えなかった。多分山野さんは真剣だ。
「未来…?」
僕は聞いた。
「そう、未来」
今の真剣な山野さんに僕はどう反応していいのか分からなかった。
「どうして、それを僕に?」
僕は残りのコーヒーを一気に飲んだ。コーヒーは少し冷めていて温くて美味しくなかった。
「話すと長くなるわ」
山野さんはこれから僕に何かを話すのだろう。それも、かなり時間のかかる話を。
僕はその話を聞く意思を示すかのように、コーヒーをもう一杯注文した。
「わかった。聞くよ、山野さんさんの話」
山野さんの真剣さが移ったのか僕まで真剣になってきた。
「あれは大学生の時だった。私はある先輩と恋仲になってた。けれど、そんな時に圭吾はある提案をしたの。先輩も圭吾もサッカー部だった。圭吾はサッカーで先輩のチームと勝負して勝ったら私と付き合ってほしいとそう言ってきたの。私はすんなりOKしたわ。今思えばこの選択が間違っていた。でも、あの時は先輩が負けるはずないと確信していたの。そう、先輩が負けるはずなかった」
山野さんの話に田辺が出てきて僕は焦りを隠すかのようにコーヒーをひと口飲んだ。そして、山野さんは続けた。
「けれど、勝負は圭吾のチームが勝って先輩のチームが負けたの。私はこれは現実じゃないって何度も言い聞かせた。何より好きでもない圭吾と付き合うのは考えられなかった。でも、後には引けなかったの。私は嫌々圭吾と付き合ったわ。そして、先輩への思いは断ち切れないままだった。私と圭吾が付き合っているのを見かね先輩は自殺した」
「えっ!」
僕は思わず声を出してしまった。
「圭吾は細工していたの。試合当日に先輩の靴に細工していたのよ。その事を先輩は何一つ言わなかったわ」
山野さんが今でも辛い思いをしているのは痛いほど伝わってきた。そして、山野さんの目は涙ぐんでいた。
「細工? 田辺が? どうして?」
僕はただ聞くことしかできなかった。田辺のこと、山野さんのこと、山野さんが慕っていた先輩のこと何にも知らないから、慰めの言葉より現状を把握する事を選んでしまった。
「これよ」
山野さんは鞄の中から双眼鏡を取り出し僕に見せた。
「これって、双眼鏡?」
僕はますます分からなくなった。
「信じられないかもしれないけど、この双眼鏡を通して過去を見ることが出来るの」
僕は声が出なかった。その代わりに目をまん丸に開いて驚きを表明していた。
「この双眼鏡で、圭吾が先輩の靴に細工している姿が見えたわ。最初は幻覚でも見てるのかと思った。けれど、この双眼鏡を通して見えた事は全て過去に起きた出来事だと分かったの。だからね、辛かった。もし、過去じゃなく未来が見えたら全てが変わっていたのかもしれないと思うと今でも辛いの」
未来と過去。どちらが見えたら有利かなんて考えた事さえなかった。けれど、山野さんは過去ではなく未来を知りたかった。そうすることで先輩を救いたかったのだろう。
僕は望遠鏡を通して未来を見ることが出来る。
もし、僕が双眼鏡で山野さんが望遠鏡を持っていたなら全てが丸く収まっていたのだろうか。
考えると、もうキリがなかった。
「ごめんね。菊助君私に手紙渡そうとしてたでしょ? 手紙に書いていた内容もこの双眼鏡で分かっちゃった。告白受けてないのに勝手に気持ちを知っちゃってごめんね」
山野さんからは切なさしか伝わってこなかった。僕自身もただただ切なかった。
そして、頭は回らない。田辺と山野さんは愛し合っていると信じていたのが実はそうではなくて、山野さんは田辺を憎んでいる事を知って僕はどうしたらいいのか分からなかった。
「僕の事は大丈夫だから。そんな事より山野さんが心配だよ」
これは本心だった。
同時に山野さんを疑っていた自分自身を恥じていた。田辺にシクラメンを渡していたのは本当に田辺を許せなかったのだと思う。普通入院患者には植木鉢ごと花は渡さない。それは、寝付くと言われているからだ。これは、根付くという語源から来ているらしい。現代では、土によって感染してしまうことを防ぐために入院患者には土に触れさせないようにしているのだが、少なくとも山野さんにとっては田辺に寝付いてほしかったのだと思う。
多分この時から僕は僕自身が分からなくなっていた。
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未来望遠鏡 6話
「イエスかノーで答えて」
山野さんは言った。
「うん、わかった」
僕は何かの心理テストでもはじめるのかと気軽な気持ちでいた。
「私に対して疑問を抱いている」
あまりに唐突な質問に僕は一瞬何を言われたのかわからなかった。自分の中で言われた言葉を繋ぎ合わせてみたけれどやはりわからなかった。と言うより僕は混乱していた。
「イエスかノーで答えて」
山野さんは念を押すように言った。
確かに今の山野さんには疑問を抱いている。それは未来望遠鏡のせいでもあって、それを山野さんにそっくりそのまま言えるかといったらそうでもない。出来ることならば僕だって知りたい。田辺にシクラメンを持って行った訳を。
「何のこと言ってるのかわからないよ」
今抱いている本当の気持ちなど山野さんに言えるはずがなかった。信じてもらえるかどうかではなく、人として山野さんという人間を疑っている自分に少し腹が立っていたのかもしれない。
「イエスかノー」
山野さんの顔は真剣だった。僕は訳の分からない汗をかいていてそれを誤魔化すためにコーヒーをひと口飲んだ。
「僕が山野さんを疑う? そんなのあるわけないじゃないか。ノーだよ」
僕は顔が引きつっていた。きっとそうに違いない。
「菊助君は嘘が下手ね」
僕は俯いたまま山野さんの顔を見ることが出来なかった。山野さんは嘘をついた僕に対し怒っているのだろうか。それとも怒ってはいないだろうか。
「嘘なんかついてないよ! 山野さんこそ急にどうしたの?」
僕は俯いたままだった。空っぽになったコーヒーカップを見ていた。
「菊助君て私の事好きでしょ?」
僕はびっくりして顔を上げた。そこにはいつもと変わらない山野さんがいた。
「えっ? な、何急に!?」
僕はもう訳が分からなくなっていた。
「未来が見えたらどうする? 前に言った事あるよね?」
そういえば、この喫茶店でそんな事を言っていたような気がする。けれど、あの時はそんな事あるわけないと山野さんが冗談でも言っているのかと思っていた。けれど、今は違う。僕は未来望遠鏡を通して近未来を知る事が出来ると分かった。そんな今だから前みたいに笑い話には出来ない。
「もし、未来が見えたなら僕は救うべき人を救いたい」
山野さんは冗談と捉えただろうか。けれど、僕は本気だった。
「やっぱり、菊助君は変わらないわね。……私、未来が見えるの」
「イエスかノーで答えて」
山野さんは言った。
「うん、わかった」
僕は何かの心理テストでもはじめるのかと気軽な気持ちでいた。
「私に対して疑問を抱いている」
あまりに唐突な質問に僕は一瞬何を言われたのかわからなかった。自分の中で言われた言葉を繋ぎ合わせてみたけれどやはりわからなかった。と言うより僕は混乱していた。
「イエスかノーで答えて」
山野さんは念を押すように言った。
確かに今の山野さんには疑問を抱いている。それは未来望遠鏡のせいでもあって、それを山野さんにそっくりそのまま言えるかといったらそうでもない。出来ることならば僕だって知りたい。田辺にシクラメンを持って行った訳を。
「何のこと言ってるのかわからないよ」
今抱いている本当の気持ちなど山野さんに言えるはずがなかった。信じてもらえるかどうかではなく、人として山野さんという人間を疑っている自分に少し腹が立っていたのかもしれない。
「イエスかノー」
山野さんの顔は真剣だった。僕は訳の分からない汗をかいていてそれを誤魔化すためにコーヒーをひと口飲んだ。
「僕が山野さんを疑う? そんなのあるわけないじゃないか。ノーだよ」
僕は顔が引きつっていた。きっとそうに違いない。
「菊助君は嘘が下手ね」
僕は俯いたまま山野さんの顔を見ることが出来なかった。山野さんは嘘をついた僕に対し怒っているのだろうか。それとも怒ってはいないだろうか。
「嘘なんかついてないよ! 山野さんこそ急にどうしたの?」
僕は俯いたままだった。空っぽになったコーヒーカップを見ていた。
「菊助君て私の事好きでしょ?」
僕はびっくりして顔を上げた。そこにはいつもと変わらない山野さんがいた。
「えっ? な、何急に!?」
僕はもう訳が分からなくなっていた。
「未来が見えたらどうする? 前に言った事あるよね?」
そういえば、この喫茶店でそんな事を言っていたような気がする。けれど、あの時はそんな事あるわけないと山野さんが冗談でも言っているのかと思っていた。けれど、今は違う。僕は未来望遠鏡を通して近未来を知る事が出来ると分かった。そんな今だから前みたいに笑い話には出来ない。
「もし、未来が見えたなら僕は救うべき人を救いたい」
山野さんは冗談と捉えただろうか。けれど、僕は本気だった。
「やっぱり、菊助君は変わらないわね。……私、未来が見えるの」
純愛偏差値 未来編 一人称版 65話
《ナミネ》
カンザシさんから共演して欲しいと言われたドラマのパンフレットを見て、ふと思い出した。
その昔、舞台女優の演技中に名場面があり、観客席はファンの客で埋まっていた。しかし、それを違法と見なした当時の皇帝陛下は妖精村警察に舞台会場に張り付かせた。警察が見張る中、舞台女優はいつものように演じたが、あるシーンが近付くと観客席から、いくつもの叫び声がコダマした。舞台女優を純粋に応援する男性は逮捕されて欲しくなかったのだ。けれど、舞台女優は逮捕されると分かっていても演じてしまったのだ。その舞台女優は現行犯逮捕となった。
私は、何故それ式のことでその舞台女優の人生が奪われなければならなかったのか苛立たしく思った。現代だって、ドラマや映画でリアルな名場面を演じていたり、第3を喪失し撮影中に命を落としている女優だってそれなりにいる。無論、第3を喪失させた関係者は警察に捕まっているが。
私はこの制度自体がおかしいと感じている。女優にだってプロ意識がある。その作品で、そうしたいと感じたのなら、そうさせてあげるべきだと思う。何故法律は個人の自由を奪うのか、この時の私は理解が出来なかった。
大晦日になるとズームさんとミネルナさんが帰ってきた。ナノハナ家では正月をいつものメンバーで過ごすため、メンバーは既に集まっていた。ズームさんはみんなにお土産を渡すと私を客間に連れて行き、当時のミドリお姉様のことを調べた結果、ある真実が明らかになったと私にある映像を見せた。
映像は、ミドリお姉様が突然死した日のものだった。
ミドリお姉様が放課後、変える準備をしていた時、ナクリお姉様が理科室でガラの悪い同級生5人にお金を渡していた。
『少しだけミドリにイタズラしてくれないかしら』
『けど、姉なんだろ。流石に出来ないわ』
ナクリお姉様はカッターナイフをガラの悪い同級生1人に突き付けた。
『少しイタズラしてって言ってるの』
『わ、分かった。回して第1だけ喪失させればいいんだな』
話がつくと、ナクリお姉様は理科室を出た。
ミドリお姉様は、友達との下校中、5人のガラの悪い同級生5人と遭遇した。ミドリお姉様の友達はミドリお姉様に『助けを呼びに行くから時間を稼いで欲しい』と言って4人揃って逃げて行った。
そこへナクリお姉様が現れた。
『助けて、ナクリ』
『コンビニ行ってからまた来る』
ナクリお姉様は一旦その場を離れた。けれど、ものの数分だった。ミドリお姉様はガラの悪い同級生5人にイヤガラセされた。ナクリお姉様は少しイタズラして欲しいと言っていたのに、ガラの悪い同級生は興奮し、第2を破り、最後の人が第3を破った。
そうとも知らないナクリお姉様は現場に戻った時、ミドリお姉様は無惨な姿で亡くなっていた。怖くなったナクリお姉様はその場から逃げた。
そして、何事もなかったかのようにナノハナ家で普通に過ごしていた。その夜、ナノハナ家ではミドリお姉様のお通夜が行われた。
映像はそこで途切れていた。
本当の犯人はナクリお姉様だったなんて……。私は涙が止まらなかった。そして、涙が止まらないまま、私は第1居間に走った。
第1居間にはナノハお姉様もいたが、私はナクリお姉様にズームさんからもらった映像を見せた。
「私、絶対ナクリお姉様を許しません!今は普通に暮らせていても、時がそれを許さないでしょう!必ず報いの受ける時が来ます!」
私は泣きながらナクリお姉様に訴えた。
「待って!死ぬだなんて思ってなかった!私だってピアニスト目指してた!でも、ミドリのほうが才能があって私には才能がなかった。それが悔しくて、少しミドリに痛い目にあってもらおうと思っただけ!死ぬなんて本当に思ってなかった!許して!」
たかがピアニストという夢が叶わないからってミドリお姉様を亡き者にしただなんて本当に許せない!
「ナクリお姉様は人間ではありません!バケモノです!これはいつか公になってナクリお姉様の結婚生活が破綻するでしょう!」
悔しくて悔しくて人の命を奪ったナクリお姉様が穢らわしくて、私はナクリお姉様の脇腹を数回蹴った。
「ナクリお姉様、最低ね。これ、世間に公になったら、あなた、タダじゃ済まないよ」
「ナノハ、私は死なせるつもりはなかった!」
今この場でナクリお姉様を殺してしまいたい!けれど、こんなことをして許されるはずがない。仲の良い姉妹だと思っていたのに。そんなのは表面上で、ナクリお姉様はミドリお姉様への劣等感を抱え続けた挙句、ミドリお姉様を殺めてしまった。表と裏は違う。どんなに仲良しに見えても裏では人は何を考えているか分からない。私はミドリお姉様を亡き者にしたナクリお姉様を恨みながら扇子でナクリお姉様を強く吹き飛ばし、泣きながら第1居間を出た。
第4居間に戻ると、みんな既に支度をしていた。
今日は大晦日だというのに女神の湖に行く日なのだ。
「ナミネ、どうしたの?」
「何でもありません」
この日は、ズームさんがカンザシさんも行く必要があると判断し、ナヤセス殿、ナルホお兄様も行くことになった。
ヨルクさんは私に新しいコートを着せた。
「ありがとうございます、ヨルクさん」
ヨルクさんは、私はオレンジ系が似合っているからと、淡いオレンジのワンピースコートを買ってくれたのだ。
女神の湖に行く途中の電車の中では、カナエさんとアルフォンス王子が仲違いしたままだった。カナエさんは、昔のアルフォンス王子が見知らぬ女性とホテルに行ったことが堪えたらしい。
ミナクさんはアヤネさんを軽蔑しているし、セナ王女はカラルリさんを軽蔑していた。
女神の湖に着くとズームさんが時間を遅らせた。
気温はわりと温かく私はコートを脱ぎ捨てた。それにしても女神の湖なだけに、湖には数名の女神が水浴びをしている。女神はどの人も古代のような簡易的な布を身体に巻いていた。けれど、1人だけ貴族のようなドレスを着ている。
「ナミネさん、あの緑の髪の女神があなたとカンザシの実の姉ですよ」
私とカンザシさんの実のお姉様……?私とカンザシさんは緑の髪の女神に近付いた。
「あの、ナミネですが、私とカンザシさんのお姉様なのでしょうか?」
私は信じられないながらも話しかけた。
「久しぶりね。そうよ。私がナミネとカンザシの実の姉のナミザ。何世紀もあなたたちの実の姉だった。でもそれは、ここにいる間だけ。転生すれば他人になるわ」
「そうですか。ナミザお姉様は、どうして女神になったのですか?」
「女神になったのは妖精村に入ってからだけど、辛かったのよ。綺麗な容姿に生まれてこなかったことが。何度もあなたを羨みそして妬んだわ」
今の容姿と人間時代の容姿は違うのか。はじめて会うけれど、私とカンザシさんだけの姉なのか。
「どうして私とカンザシさんだけのお姉様なのですか?」
「遠い遠い大昔、あなたとカンザシは兄妹だった。あなたとカンザシはナノハナ家の父親が実の父親だけど、私はロメルカーター伯爵家の両親の娘だったわ」
父親違いの姉妹だったのか。その時、年配の男性が女神の湖に入って、女神たちを触りはじめた。この人誰だろう。
「おい、エロじじい!あんた誰だよ!」
「僕は妖精村の神様のダンゴロだけど?」
神様?この人が?
「神様って何なんだよ!ここにいる女神はあんたが支配してんのかよ!」
「神様だからその名の通り何でも出来るよ。妖精村を破壊することもね。ここにいる女神はみんな人間時代は貧しい娼婦だった。そんな暮らしを抜け出したい者をここに連れて来た。もちろん僕と交際前提でね。ここに来たばかりの女神はみんな純白だったよ。けれど、ミナコだけが未だに許してくれないんだよね」
ミナコさん……。もしかして、あのドレスを着た人だろうか。ダンゴロさんは湖から出て来た。そして、ヨルクさんにカードを渡した。
「ここに来た記念にあげる」
「あの、これは……」
「神様呼び出しカードだよ。僕を呼び出せば君の願いを聞く。けれど、聞ける願いは力量によるから聞けないのもあるけどね」
神様呼び出しカード!?私やラルクのほうが力量は上なのに、どうしてヨルクさんだけもらえるの?
ていうか、ここに来てからミナクさんもアルフォンス王子もカラルリさんも女神のことやたら見てる?何だかまた揉めそうでやだな。
ダンゴロさんはまた湖に入って1人の女神の布を外して抱き着いた。女神も人間界で貧しい暮らしをするより、ここで豊かな暮らしをしていたいのだろうか。
「エロじじい!なんでヨルクだけが、あんた呼び出せるカードもらえるんだよ!」
「まあそれはともかくとして、ナミネ。君が望むならミドリを人間界に連れて行っていいよ。人間界に行けば、本来の年齢に戻るけどね。既にナノハは恋人のズルエヌを人間界に連れて行ったよ」
えええええ!スルエヌさんってもしかしてズームさんのお兄様!?そんなことより、ミドリお姉様がもう一度人間界で生きることが出来るの?それなら何としてでもミドリお姉様を説得しなければ!
「あの、ミドリお姉様は今どこにいますか?」
「あの通路を通れば天界。転生してない死者が暮らしてる。そのどこかにいるよ」
「分かりました。ありがとうございます!」
私は天界に続く通路へと走った。
通路を抜けると賑わった街がそこには存在した。家は古民家風だけど、レストランやカフェ、市場、美容院などお店もしっかりある。ここが天界なのか。ミドリお姉様はどこにいるのだろう。
「ナミネ、ミドリお姉様は2ブロックの2-3にいるって」
「ナルホお兄様!」
私はナルホお兄様と2ブロックの2-3へ走った。
古民家に近付こうとしたら、ミドリお姉様が家から出て来て洗濯物を干していた。
「ミドリお姉様!」
「ナミネ、ナルホ。久しぶりだね。元気にしてた?」
あの頃から少しも変わらない優しい雰囲気。
「ミドリお姉様をあんな目にあわせたのはナクリお姉様だったんです!神様のダンゴロさんが、もう一度ミドリお姉様が人間界で暮らせるチャンスを与えてくれています!今すぐ人間界に行きましょう!」
私は何となくミドリお姉様が行かない気がして焦っていた。
「そっか。ナクリもピアニスト目指していたけど、いつも機嫌が悪そうだったな。でも、私はナクリを恨んでないよ。人間界かあ。懐かしいけど、今の暮らしとっても幸せだから戻りたくないな」
やっぱりミドリお姉様はここにい続けるつもりなのか。どうやって説得したらいいのだろう。
「ミドリお姉様が逃げたい気持ちは分かるけどさ。ピアニスト目指してたんだよね?今人間界に戻るチャンスを捨ててしまえば後悔すると思うよ」
「そうかもしれないねえ。でも、私は今がいいんだよ」
ミドリお姉様は十分に傷付いた。ナノハナ家には戻りたくないだろう。でも、今連れて帰らないとミドリお姉様はピアニストになれなくなってしまう!
「そんなのただのエゴです!傷つきたくないからずっと平和なところにいたいだけでしょう!でも、それで何か得られますか?いずれここにいる人は皆転生していきます!そんな中、今の暮らしにずっと逃げていたら、いずれ後悔するのはミドリお姉様です!人間界で幸せになろうと思えないのですか?あなたは現実に打ち勝つ心を捨てたのですか?」
私はここに留まって逃げ続けるミドリお姉様にもミドリお姉様を連れ戻せない自分にも苛立っていた。
「そうだね。でも、私は私だから。誰かと比べて生きたりせずマイペースにやっていきたいの」
「それが逃げだと言ってるんです!現実と向き合わないで何と向き合うんですか!ほら、ちゃんと現実見てください!これがあなたの最後の姿です!」
私はミドリお姉様に亡くなった時の写真を見せた。するとミドリお姉様は泣き崩れた。
「やめて!今でも怖いの!どうしてこんないやがらせするの!私だって夢を叶えたかった!でも、死んだ身でどうしろって言うの!」
「お言葉ですがミドリお姉様が死んでナノハナ家がどれだけ不幸になったか。私はあれから酷い悪夢を見るようになったし、あなたの死んだ姿見た時は冷静さを失いました。あなたがここにいるということは生きている人間にあなたの死を全て抱えさせるということです!こっちこそ、そんないやがらせするのやめてください!ほら、ちゃんと現実見てください!」
私はミドリお姉様の最後の写真をミドリお姉様に握らせた。死んだ人間の人生はそこで終わるけれど、残された者は、死んだ人の悲しみを背負って生きていかないといけない。まるで今のミドリお姉様は自殺者みたいだ。自殺したその家族も現実を受け入れられず立ち直れないほどの苦しみを抱きながら生きていかなければならない。言ってしまえば自殺というのは、家族にその後の人生も不幸も丸投げし擦り付ける行為だ。私はそんな無責任な人を許せない。どんなに辛くても苦しくても生きないと他者を深く傷付ける。時には家族の人生そのものを奪い取る。後追い自殺だってある。そんなの間違っている。
「お願い、そっとしといて!もう戻りたくないの!今でもあの時のこと苦しみ続けてる!ここにいたいの!」
本人が1番辛い。そんなの分かってる。でも、逃げて次に苦しむのはその家族だ。けれど、自分の人生は自分が責任を持って生きるべきだと思う。苦しみを家族に丸投げしてもその人は幸せにはなれない。私は自殺もミドリお姉様の生き方も100%悪いとは言わない。ただ、この世に生きたからには1%だけでも自分の人生に責任を持って欲しいのだ。無論、自殺者もミドリお姉様も十分に苦しんだ上での判断。それを他者がどうこう言っても仕方ない。それでも私はミドリお姉様が亡くなって自分を破壊し死んだように生きた。私とて十分に苦しんだのだ。
「ねえ、ミドリお姉様は本当にここにいることが1番いいのかな?絶対後悔しないと言い切れる?今人間界に戻ればもう一度ピアニストを目指せる。でも、ここにい続ければ、人間界で日々訓練している人にどんどん差をつけられてしまうよね。無理に戻ろうとは言わない。でも、このままで本当にいいのかな?ナクリお姉様をそのままにしていいのかな?夢を放棄してそれでいいのかな?絶対に後悔しないなら僕は何も言わないよ」
後悔するに決まってる。今、また夢を置い続ければ成功するかもしれない。でも、何もしないで、ずっとここにいれば、いつか何もしなかった自分を責めることになりうる。
「分からない。どうしたらいい?私、置いていかれたくない。もう一度ピアニストを目指したい……。ピアノが弾きたい……。でも、あの日のことが頭にこびりついてどうしたらいいか分からないの!」
「頭にこびりついているってことは、少なくとも許せてないってことだよね。ミドリお姉様は許したフリをし続けて自分を誤魔化してたんじゃないかな?許せないなら許せないと本人に堂々と言うべきだと僕は思うよ。ピアニストになりたいなら目指すべきなんじゃない?この先は自分で考えてくれるかな」
私もナクリお姉様含め、ミドリお姉様を殺めた人は許せない。けれど、ミドリお姉様本人が逃げたままだと、ナノハナ家は不幸の塊だ。不幸を家族に丸投げするのではなく、ちゃんと自分の人生自分で向き合って欲しい。
「分かった。もう一度だけピアニストを目指してみるよ」
ミドリお姉様……。
「そっか。じゃあ、友達に別れを告げて一緒に人間界に戻ろうか。ナミネ、僕はミドリお姉様を連れて行くからナミネは旧友から昔話でも聞くといいよ」
昔話か。確かに、忘れていた過去を聞くことが出来るかもしれない。
「分かりました。時間以内には戻ります」
ナルホお兄様はミドリお姉様を連れて行った。
私が天界をが歩いていると遥か昔の旧友だろう人が現れた。
「ナミネ?」
誰だろう、全く思い出せない。
「えっと、どちら様でしょうか?」
「学生時代のアルタよ。今もヨルクと付き合っているの?」
「ヨルクさんを知っているのですか?生きていたのはいつですか?ヨルクさんが私に渡したものとか覚えてますか?」
「天使村初期よ。ヨルクがナミネに何を渡していたかは分からないけど、2人が仲違いした日、ヨルクは紅葉橋でナミネを待っていると言ってナミネを何時間も待ち続けてた。でもナミネは現れなかった。その日は途中から雨が降って、それでもヨルクは18時から3時までナミネを待ち続けたわ」
そんな……。私はヨルクさんを紅葉橋に1人にしてしまっていたのか。
「その後どうなりましたか?」
「次の人、風邪で欠席したヨルクの家にナミネが行って仲直りしたわ」
私は涙が零れていた。
「どうして仲違いしたんですか?」
「ヨルクが学年のマドンナと仲良くしていたからよ。それに嫉妬したナミネはヨルクと別れると言い出してナミネの言葉を真に受けたヨルクは紅葉橋で待っているって花束を持ってナミネを待ち続けたのよ」
ヨルクさん、私が来ると思ってずっと待っていたんだ。それなのに、私行かなかっただなんて……。
「そうですか……あの、他に私を知っている人はここにいますか?」
「そうね、天使村初期の終わり頃の学友が2ブロック先にいるわ」
「ありがとうございます」
私は走り出した。
そして、かつての学友に声をかけた。
「あの、私を知ってますか?」
「かなり久しぶりね。ここで会えるとは思わなかった」
「私とヨルクさんの昔話が聞きたいです」
「そうね、ナミネとヨルクは誰が見ても羨むカップルだったわ。でも、2人が婚約した日、2人は仲違いしてナミネはヨルクと別れると言い出したの。ナミネは婚約したのにヨルクが相談で他の女性と会っていたことに嫉妬したのよね。ヨルクは時間を指定して紅葉橋で待っているとナミネに伝え花束を持ってナミネを待ち続けたけどナミネはなかなか現れなかったの。ヨルクが帰ろうとした時、ナミネが紅葉橋に来てヨルクに抱き着いて2人は無事に仲直りしたわ」
そして、その後も私は自分を知る人の元に次々に聞き込みに言ったのだ。みんな、ヨルクさんと私が仲違いした時は、必ずヨルクが時間指定して紅葉橋で待っていると言って花束を持って待っていたけど、嫉妬してすぐにヨルクさんを許せなかった私はヨルクさんを紅葉橋で何時間も待たせた後、紅葉橋に行きヨルクさんと仲直りしていたと言っていたのである。また、ヨルクさんとの結婚後は私はヨルクさんに近づく女性がいればすぐに嫉妬してヨルクに離婚届と共に別れ話を切り出して、その度にヨルクさんはナミネに話し合いを求め、数日後仲直りすると毎回ヨルクさんは菜の花とカスミソウの花束をナミネに渡していたと言っていたのだ。
そして、妖精村時代は天使村時代とは違って私は長い髪を2つに分け三つ編みにしていて、ヨルクとのデートをいつも楽しみにしていたけど、最後のデートの後、ヨルクさんは私に時間指定して紅葉橋で菜の花とカスミソウの花束と婚約指輪を持って私を待ち続けていたと言っていた。けれど、私は紅葉橋には行かず、ヨルクさんは何日も泣いたそうだ。
また、別のエピソードとしては、結婚後、レストランで学友と会っていたヨルクさんを私が見た時、学友がヨルクさんの手を握っていて私は問い詰めたがヨルクさんはそんな関係ではないと何度も否定したものの、私は酷くショックを受け他の男性と関係を持ってしまい、ヨルクさんは許したものの私はヨルクさんを責め続け心を病み入退院を繰り返していたらしい。私の入院中はヨルクさんは毎回私に会いに行き、菜の花とカスミソウの花束を病室に飾っていたそうだ。
そして、私がどれだけヨルクさんの浮気を疑いヨルクを責め続けてもヨルクさんは私を愛し1度も浮気しなかったと学友は私に話してくれた。
それから、ヨルクさんが現世での副委員長である当時の学友から一方的に口付けされていた時は私は泣きながらヨルクさんに別れると言い離婚届を突き付け2週間、社交界で出会った男のマンションに泊まり関係を持っていてヨルクさんが迎えに来て私は帰ったらしい。
学友によると私が落ち着いている時は、ヨルクさんの休日にはヨルクさんとのデートを楽しみ私は常にヨルクさんにくっついて嬉しそうに過ごしていたとも言っていた。ヨルクさんは家事と仕事を両立させながら私を養っていたらしい。私に子供が出来た時、私は酷いうつ病にかかりヨルクさんが家で出来る仕事を見つけ、私の看病をしながら仕事と家事、育児をしていたとか。
誰に聞いてもヨルクさんは生涯私だけを愛し私の入院中も私がヨルクさんに手をあげた時も私が浮気をした時もヨルクさんは私を責めずひたすら私だけを愛し続けていたと言っていたのである。
私は泣きながら天界を走った。
私は自分勝手にヨルクさんを傷付け続けていた。待たせ続けていた。泣かせ続けていた。いっぱい酷いことをしたのに、ヨルクさんと交際する資格なんかないのに、現代で私はヨルクさんを再び愛してしまった。こんな私だけどヨルクさんを手放したくない。
もう二度とヨルクさんを待たせない!
私は石に躓いて転んで泣き続けた。
……
あとがき。
昔の舞台も色々ありますね。
大昔のナミネ……。
《ナミネ》
カンザシさんから共演して欲しいと言われたドラマのパンフレットを見て、ふと思い出した。
その昔、舞台女優の演技中に名場面があり、観客席はファンの客で埋まっていた。しかし、それを違法と見なした当時の皇帝陛下は妖精村警察に舞台会場に張り付かせた。警察が見張る中、舞台女優はいつものように演じたが、あるシーンが近付くと観客席から、いくつもの叫び声がコダマした。舞台女優を純粋に応援する男性は逮捕されて欲しくなかったのだ。けれど、舞台女優は逮捕されると分かっていても演じてしまったのだ。その舞台女優は現行犯逮捕となった。
私は、何故それ式のことでその舞台女優の人生が奪われなければならなかったのか苛立たしく思った。現代だって、ドラマや映画でリアルな名場面を演じていたり、第3を喪失し撮影中に命を落としている女優だってそれなりにいる。無論、第3を喪失させた関係者は警察に捕まっているが。
私はこの制度自体がおかしいと感じている。女優にだってプロ意識がある。その作品で、そうしたいと感じたのなら、そうさせてあげるべきだと思う。何故法律は個人の自由を奪うのか、この時の私は理解が出来なかった。
大晦日になるとズームさんとミネルナさんが帰ってきた。ナノハナ家では正月をいつものメンバーで過ごすため、メンバーは既に集まっていた。ズームさんはみんなにお土産を渡すと私を客間に連れて行き、当時のミドリお姉様のことを調べた結果、ある真実が明らかになったと私にある映像を見せた。
映像は、ミドリお姉様が突然死した日のものだった。
ミドリお姉様が放課後、変える準備をしていた時、ナクリお姉様が理科室でガラの悪い同級生5人にお金を渡していた。
『少しだけミドリにイタズラしてくれないかしら』
『けど、姉なんだろ。流石に出来ないわ』
ナクリお姉様はカッターナイフをガラの悪い同級生1人に突き付けた。
『少しイタズラしてって言ってるの』
『わ、分かった。回して第1だけ喪失させればいいんだな』
話がつくと、ナクリお姉様は理科室を出た。
ミドリお姉様は、友達との下校中、5人のガラの悪い同級生5人と遭遇した。ミドリお姉様の友達はミドリお姉様に『助けを呼びに行くから時間を稼いで欲しい』と言って4人揃って逃げて行った。
そこへナクリお姉様が現れた。
『助けて、ナクリ』
『コンビニ行ってからまた来る』
ナクリお姉様は一旦その場を離れた。けれど、ものの数分だった。ミドリお姉様はガラの悪い同級生5人にイヤガラセされた。ナクリお姉様は少しイタズラして欲しいと言っていたのに、ガラの悪い同級生は興奮し、第2を破り、最後の人が第3を破った。
そうとも知らないナクリお姉様は現場に戻った時、ミドリお姉様は無惨な姿で亡くなっていた。怖くなったナクリお姉様はその場から逃げた。
そして、何事もなかったかのようにナノハナ家で普通に過ごしていた。その夜、ナノハナ家ではミドリお姉様のお通夜が行われた。
映像はそこで途切れていた。
本当の犯人はナクリお姉様だったなんて……。私は涙が止まらなかった。そして、涙が止まらないまま、私は第1居間に走った。
第1居間にはナノハお姉様もいたが、私はナクリお姉様にズームさんからもらった映像を見せた。
「私、絶対ナクリお姉様を許しません!今は普通に暮らせていても、時がそれを許さないでしょう!必ず報いの受ける時が来ます!」
私は泣きながらナクリお姉様に訴えた。
「待って!死ぬだなんて思ってなかった!私だってピアニスト目指してた!でも、ミドリのほうが才能があって私には才能がなかった。それが悔しくて、少しミドリに痛い目にあってもらおうと思っただけ!死ぬなんて本当に思ってなかった!許して!」
たかがピアニストという夢が叶わないからってミドリお姉様を亡き者にしただなんて本当に許せない!
「ナクリお姉様は人間ではありません!バケモノです!これはいつか公になってナクリお姉様の結婚生活が破綻するでしょう!」
悔しくて悔しくて人の命を奪ったナクリお姉様が穢らわしくて、私はナクリお姉様の脇腹を数回蹴った。
「ナクリお姉様、最低ね。これ、世間に公になったら、あなた、タダじゃ済まないよ」
「ナノハ、私は死なせるつもりはなかった!」
今この場でナクリお姉様を殺してしまいたい!けれど、こんなことをして許されるはずがない。仲の良い姉妹だと思っていたのに。そんなのは表面上で、ナクリお姉様はミドリお姉様への劣等感を抱え続けた挙句、ミドリお姉様を殺めてしまった。表と裏は違う。どんなに仲良しに見えても裏では人は何を考えているか分からない。私はミドリお姉様を亡き者にしたナクリお姉様を恨みながら扇子でナクリお姉様を強く吹き飛ばし、泣きながら第1居間を出た。
第4居間に戻ると、みんな既に支度をしていた。
今日は大晦日だというのに女神の湖に行く日なのだ。
「ナミネ、どうしたの?」
「何でもありません」
この日は、ズームさんがカンザシさんも行く必要があると判断し、ナヤセス殿、ナルホお兄様も行くことになった。
ヨルクさんは私に新しいコートを着せた。
「ありがとうございます、ヨルクさん」
ヨルクさんは、私はオレンジ系が似合っているからと、淡いオレンジのワンピースコートを買ってくれたのだ。
女神の湖に行く途中の電車の中では、カナエさんとアルフォンス王子が仲違いしたままだった。カナエさんは、昔のアルフォンス王子が見知らぬ女性とホテルに行ったことが堪えたらしい。
ミナクさんはアヤネさんを軽蔑しているし、セナ王女はカラルリさんを軽蔑していた。
女神の湖に着くとズームさんが時間を遅らせた。
気温はわりと温かく私はコートを脱ぎ捨てた。それにしても女神の湖なだけに、湖には数名の女神が水浴びをしている。女神はどの人も古代のような簡易的な布を身体に巻いていた。けれど、1人だけ貴族のようなドレスを着ている。
「ナミネさん、あの緑の髪の女神があなたとカンザシの実の姉ですよ」
私とカンザシさんの実のお姉様……?私とカンザシさんは緑の髪の女神に近付いた。
「あの、ナミネですが、私とカンザシさんのお姉様なのでしょうか?」
私は信じられないながらも話しかけた。
「久しぶりね。そうよ。私がナミネとカンザシの実の姉のナミザ。何世紀もあなたたちの実の姉だった。でもそれは、ここにいる間だけ。転生すれば他人になるわ」
「そうですか。ナミザお姉様は、どうして女神になったのですか?」
「女神になったのは妖精村に入ってからだけど、辛かったのよ。綺麗な容姿に生まれてこなかったことが。何度もあなたを羨みそして妬んだわ」
今の容姿と人間時代の容姿は違うのか。はじめて会うけれど、私とカンザシさんだけの姉なのか。
「どうして私とカンザシさんだけのお姉様なのですか?」
「遠い遠い大昔、あなたとカンザシは兄妹だった。あなたとカンザシはナノハナ家の父親が実の父親だけど、私はロメルカーター伯爵家の両親の娘だったわ」
父親違いの姉妹だったのか。その時、年配の男性が女神の湖に入って、女神たちを触りはじめた。この人誰だろう。
「おい、エロじじい!あんた誰だよ!」
「僕は妖精村の神様のダンゴロだけど?」
神様?この人が?
「神様って何なんだよ!ここにいる女神はあんたが支配してんのかよ!」
「神様だからその名の通り何でも出来るよ。妖精村を破壊することもね。ここにいる女神はみんな人間時代は貧しい娼婦だった。そんな暮らしを抜け出したい者をここに連れて来た。もちろん僕と交際前提でね。ここに来たばかりの女神はみんな純白だったよ。けれど、ミナコだけが未だに許してくれないんだよね」
ミナコさん……。もしかして、あのドレスを着た人だろうか。ダンゴロさんは湖から出て来た。そして、ヨルクさんにカードを渡した。
「ここに来た記念にあげる」
「あの、これは……」
「神様呼び出しカードだよ。僕を呼び出せば君の願いを聞く。けれど、聞ける願いは力量によるから聞けないのもあるけどね」
神様呼び出しカード!?私やラルクのほうが力量は上なのに、どうしてヨルクさんだけもらえるの?
ていうか、ここに来てからミナクさんもアルフォンス王子もカラルリさんも女神のことやたら見てる?何だかまた揉めそうでやだな。
ダンゴロさんはまた湖に入って1人の女神の布を外して抱き着いた。女神も人間界で貧しい暮らしをするより、ここで豊かな暮らしをしていたいのだろうか。
「エロじじい!なんでヨルクだけが、あんた呼び出せるカードもらえるんだよ!」
「まあそれはともかくとして、ナミネ。君が望むならミドリを人間界に連れて行っていいよ。人間界に行けば、本来の年齢に戻るけどね。既にナノハは恋人のズルエヌを人間界に連れて行ったよ」
えええええ!スルエヌさんってもしかしてズームさんのお兄様!?そんなことより、ミドリお姉様がもう一度人間界で生きることが出来るの?それなら何としてでもミドリお姉様を説得しなければ!
「あの、ミドリお姉様は今どこにいますか?」
「あの通路を通れば天界。転生してない死者が暮らしてる。そのどこかにいるよ」
「分かりました。ありがとうございます!」
私は天界に続く通路へと走った。
通路を抜けると賑わった街がそこには存在した。家は古民家風だけど、レストランやカフェ、市場、美容院などお店もしっかりある。ここが天界なのか。ミドリお姉様はどこにいるのだろう。
「ナミネ、ミドリお姉様は2ブロックの2-3にいるって」
「ナルホお兄様!」
私はナルホお兄様と2ブロックの2-3へ走った。
古民家に近付こうとしたら、ミドリお姉様が家から出て来て洗濯物を干していた。
「ミドリお姉様!」
「ナミネ、ナルホ。久しぶりだね。元気にしてた?」
あの頃から少しも変わらない優しい雰囲気。
「ミドリお姉様をあんな目にあわせたのはナクリお姉様だったんです!神様のダンゴロさんが、もう一度ミドリお姉様が人間界で暮らせるチャンスを与えてくれています!今すぐ人間界に行きましょう!」
私は何となくミドリお姉様が行かない気がして焦っていた。
「そっか。ナクリもピアニスト目指していたけど、いつも機嫌が悪そうだったな。でも、私はナクリを恨んでないよ。人間界かあ。懐かしいけど、今の暮らしとっても幸せだから戻りたくないな」
やっぱりミドリお姉様はここにい続けるつもりなのか。どうやって説得したらいいのだろう。
「ミドリお姉様が逃げたい気持ちは分かるけどさ。ピアニスト目指してたんだよね?今人間界に戻るチャンスを捨ててしまえば後悔すると思うよ」
「そうかもしれないねえ。でも、私は今がいいんだよ」
ミドリお姉様は十分に傷付いた。ナノハナ家には戻りたくないだろう。でも、今連れて帰らないとミドリお姉様はピアニストになれなくなってしまう!
「そんなのただのエゴです!傷つきたくないからずっと平和なところにいたいだけでしょう!でも、それで何か得られますか?いずれここにいる人は皆転生していきます!そんな中、今の暮らしにずっと逃げていたら、いずれ後悔するのはミドリお姉様です!人間界で幸せになろうと思えないのですか?あなたは現実に打ち勝つ心を捨てたのですか?」
私はここに留まって逃げ続けるミドリお姉様にもミドリお姉様を連れ戻せない自分にも苛立っていた。
「そうだね。でも、私は私だから。誰かと比べて生きたりせずマイペースにやっていきたいの」
「それが逃げだと言ってるんです!現実と向き合わないで何と向き合うんですか!ほら、ちゃんと現実見てください!これがあなたの最後の姿です!」
私はミドリお姉様に亡くなった時の写真を見せた。するとミドリお姉様は泣き崩れた。
「やめて!今でも怖いの!どうしてこんないやがらせするの!私だって夢を叶えたかった!でも、死んだ身でどうしろって言うの!」
「お言葉ですがミドリお姉様が死んでナノハナ家がどれだけ不幸になったか。私はあれから酷い悪夢を見るようになったし、あなたの死んだ姿見た時は冷静さを失いました。あなたがここにいるということは生きている人間にあなたの死を全て抱えさせるということです!こっちこそ、そんないやがらせするのやめてください!ほら、ちゃんと現実見てください!」
私はミドリお姉様の最後の写真をミドリお姉様に握らせた。死んだ人間の人生はそこで終わるけれど、残された者は、死んだ人の悲しみを背負って生きていかないといけない。まるで今のミドリお姉様は自殺者みたいだ。自殺したその家族も現実を受け入れられず立ち直れないほどの苦しみを抱きながら生きていかなければならない。言ってしまえば自殺というのは、家族にその後の人生も不幸も丸投げし擦り付ける行為だ。私はそんな無責任な人を許せない。どんなに辛くても苦しくても生きないと他者を深く傷付ける。時には家族の人生そのものを奪い取る。後追い自殺だってある。そんなの間違っている。
「お願い、そっとしといて!もう戻りたくないの!今でもあの時のこと苦しみ続けてる!ここにいたいの!」
本人が1番辛い。そんなの分かってる。でも、逃げて次に苦しむのはその家族だ。けれど、自分の人生は自分が責任を持って生きるべきだと思う。苦しみを家族に丸投げしてもその人は幸せにはなれない。私は自殺もミドリお姉様の生き方も100%悪いとは言わない。ただ、この世に生きたからには1%だけでも自分の人生に責任を持って欲しいのだ。無論、自殺者もミドリお姉様も十分に苦しんだ上での判断。それを他者がどうこう言っても仕方ない。それでも私はミドリお姉様が亡くなって自分を破壊し死んだように生きた。私とて十分に苦しんだのだ。
「ねえ、ミドリお姉様は本当にここにいることが1番いいのかな?絶対後悔しないと言い切れる?今人間界に戻ればもう一度ピアニストを目指せる。でも、ここにい続ければ、人間界で日々訓練している人にどんどん差をつけられてしまうよね。無理に戻ろうとは言わない。でも、このままで本当にいいのかな?ナクリお姉様をそのままにしていいのかな?夢を放棄してそれでいいのかな?絶対に後悔しないなら僕は何も言わないよ」
後悔するに決まってる。今、また夢を置い続ければ成功するかもしれない。でも、何もしないで、ずっとここにいれば、いつか何もしなかった自分を責めることになりうる。
「分からない。どうしたらいい?私、置いていかれたくない。もう一度ピアニストを目指したい……。ピアノが弾きたい……。でも、あの日のことが頭にこびりついてどうしたらいいか分からないの!」
「頭にこびりついているってことは、少なくとも許せてないってことだよね。ミドリお姉様は許したフリをし続けて自分を誤魔化してたんじゃないかな?許せないなら許せないと本人に堂々と言うべきだと僕は思うよ。ピアニストになりたいなら目指すべきなんじゃない?この先は自分で考えてくれるかな」
私もナクリお姉様含め、ミドリお姉様を殺めた人は許せない。けれど、ミドリお姉様本人が逃げたままだと、ナノハナ家は不幸の塊だ。不幸を家族に丸投げするのではなく、ちゃんと自分の人生自分で向き合って欲しい。
「分かった。もう一度だけピアニストを目指してみるよ」
ミドリお姉様……。
「そっか。じゃあ、友達に別れを告げて一緒に人間界に戻ろうか。ナミネ、僕はミドリお姉様を連れて行くからナミネは旧友から昔話でも聞くといいよ」
昔話か。確かに、忘れていた過去を聞くことが出来るかもしれない。
「分かりました。時間以内には戻ります」
ナルホお兄様はミドリお姉様を連れて行った。
私が天界をが歩いていると遥か昔の旧友だろう人が現れた。
「ナミネ?」
誰だろう、全く思い出せない。
「えっと、どちら様でしょうか?」
「学生時代のアルタよ。今もヨルクと付き合っているの?」
「ヨルクさんを知っているのですか?生きていたのはいつですか?ヨルクさんが私に渡したものとか覚えてますか?」
「天使村初期よ。ヨルクがナミネに何を渡していたかは分からないけど、2人が仲違いした日、ヨルクは紅葉橋でナミネを待っていると言ってナミネを何時間も待ち続けてた。でもナミネは現れなかった。その日は途中から雨が降って、それでもヨルクは18時から3時までナミネを待ち続けたわ」
そんな……。私はヨルクさんを紅葉橋に1人にしてしまっていたのか。
「その後どうなりましたか?」
「次の人、風邪で欠席したヨルクの家にナミネが行って仲直りしたわ」
私は涙が零れていた。
「どうして仲違いしたんですか?」
「ヨルクが学年のマドンナと仲良くしていたからよ。それに嫉妬したナミネはヨルクと別れると言い出してナミネの言葉を真に受けたヨルクは紅葉橋で待っているって花束を持ってナミネを待ち続けたのよ」
ヨルクさん、私が来ると思ってずっと待っていたんだ。それなのに、私行かなかっただなんて……。
「そうですか……あの、他に私を知っている人はここにいますか?」
「そうね、天使村初期の終わり頃の学友が2ブロック先にいるわ」
「ありがとうございます」
私は走り出した。
そして、かつての学友に声をかけた。
「あの、私を知ってますか?」
「かなり久しぶりね。ここで会えるとは思わなかった」
「私とヨルクさんの昔話が聞きたいです」
「そうね、ナミネとヨルクは誰が見ても羨むカップルだったわ。でも、2人が婚約した日、2人は仲違いしてナミネはヨルクと別れると言い出したの。ナミネは婚約したのにヨルクが相談で他の女性と会っていたことに嫉妬したのよね。ヨルクは時間を指定して紅葉橋で待っているとナミネに伝え花束を持ってナミネを待ち続けたけどナミネはなかなか現れなかったの。ヨルクが帰ろうとした時、ナミネが紅葉橋に来てヨルクに抱き着いて2人は無事に仲直りしたわ」
そして、その後も私は自分を知る人の元に次々に聞き込みに言ったのだ。みんな、ヨルクさんと私が仲違いした時は、必ずヨルクが時間指定して紅葉橋で待っていると言って花束を持って待っていたけど、嫉妬してすぐにヨルクさんを許せなかった私はヨルクさんを紅葉橋で何時間も待たせた後、紅葉橋に行きヨルクさんと仲直りしていたと言っていたのである。また、ヨルクさんとの結婚後は私はヨルクさんに近づく女性がいればすぐに嫉妬してヨルクに離婚届と共に別れ話を切り出して、その度にヨルクさんはナミネに話し合いを求め、数日後仲直りすると毎回ヨルクさんは菜の花とカスミソウの花束をナミネに渡していたと言っていたのだ。
そして、妖精村時代は天使村時代とは違って私は長い髪を2つに分け三つ編みにしていて、ヨルクとのデートをいつも楽しみにしていたけど、最後のデートの後、ヨルクさんは私に時間指定して紅葉橋で菜の花とカスミソウの花束と婚約指輪を持って私を待ち続けていたと言っていた。けれど、私は紅葉橋には行かず、ヨルクさんは何日も泣いたそうだ。
また、別のエピソードとしては、結婚後、レストランで学友と会っていたヨルクさんを私が見た時、学友がヨルクさんの手を握っていて私は問い詰めたがヨルクさんはそんな関係ではないと何度も否定したものの、私は酷くショックを受け他の男性と関係を持ってしまい、ヨルクさんは許したものの私はヨルクさんを責め続け心を病み入退院を繰り返していたらしい。私の入院中はヨルクさんは毎回私に会いに行き、菜の花とカスミソウの花束を病室に飾っていたそうだ。
そして、私がどれだけヨルクさんの浮気を疑いヨルクを責め続けてもヨルクさんは私を愛し1度も浮気しなかったと学友は私に話してくれた。
それから、ヨルクさんが現世での副委員長である当時の学友から一方的に口付けされていた時は私は泣きながらヨルクさんに別れると言い離婚届を突き付け2週間、社交界で出会った男のマンションに泊まり関係を持っていてヨルクさんが迎えに来て私は帰ったらしい。
学友によると私が落ち着いている時は、ヨルクさんの休日にはヨルクさんとのデートを楽しみ私は常にヨルクさんにくっついて嬉しそうに過ごしていたとも言っていた。ヨルクさんは家事と仕事を両立させながら私を養っていたらしい。私に子供が出来た時、私は酷いうつ病にかかりヨルクさんが家で出来る仕事を見つけ、私の看病をしながら仕事と家事、育児をしていたとか。
誰に聞いてもヨルクさんは生涯私だけを愛し私の入院中も私がヨルクさんに手をあげた時も私が浮気をした時もヨルクさんは私を責めずひたすら私だけを愛し続けていたと言っていたのである。
私は泣きながら天界を走った。
私は自分勝手にヨルクさんを傷付け続けていた。待たせ続けていた。泣かせ続けていた。いっぱい酷いことをしたのに、ヨルクさんと交際する資格なんかないのに、現代で私はヨルクさんを再び愛してしまった。こんな私だけどヨルクさんを手放したくない。
もう二度とヨルクさんを待たせない!
私は石に躓いて転んで泣き続けた。
……
あとがき。
昔の舞台も色々ありますね。
大昔のナミネ……。
純愛偏差値 未来編 一人称版 64話
《ヨルク》
昔のアヤネさんはミナクお兄様から別れを告げられた後、何度もミナクお兄様に許しをこうたが、ミナクお兄様はアヤネさんを無視した。
そして、アヤネさんの浮気が原因で、ミナクお兄様は髪を金髪に染め、黒いピアスをして、女遊びをするようになった。もう純粋だった頃のミナクお兄様はどこにもいなくなっていた。
彼女を作っては気に入らないことがあれば暴力をふるい、すぐに彼女を捨て、新しい彼女を作るの繰り返しだった。
一方、アヤネさんはミナクお兄様と別れてからもカラルリさんと会っていた。カラルリさんはアヤネさんがバイトを終わるまでレストランで待ってアヤネさんのアパートに行っていたのである。
『あの、私との結婚は考えていただけているのでしょうか?』
『もちろんだよ、アヤネ』
カラルリさんはアヤネさんに口付けをした。
ミナクお兄様が女遊びに明け暮れる中、アヤネさんはカラルリさんとの関係を続けていた。
『アヤネ、すまないが仕事が忙しくなってきて、しばらく会えそうにない』
『そうですか。私は気長に待っています』
アヤネさんはカラルリさんがセナ王女と婚約しているだなんて全く知らなかったのだ。
そして、間もなくカラルリさんとセナ王女の結婚式は行われた。
『新郎カラルリさん あなたはここにいるセナ王女を
病める時も 健やかなる時も
富める時も 貧しき時も
妻として愛し 敬い 慈しむ事を誓いますか?』
『私にとってセナさんはこの世に2つとない尊い存在で、どんなセナさんも愛し慈しみ生涯セナさんのみを愛することを誓います』
『新婦セナ王女 あなたはここにいるカラルリさんを
病める時も 健やかなる時も
富める時も 貧しき時も
夫として愛し 敬い 慈しむ事を誓いますか?』
『カラルリとは運命の絆で結ばれています。カラルリはどんな時も私を愛し支えてくれた。そんなカラルリを一生大切にすることを誓います』
2人は指輪交換をした。
ミナクお兄様とセナ王女が結婚式を挙げたことは妖精村新聞にも掲載された。
セナ王女とカラルリさんの婚姻を知ったアヤネさんは、二度とカラルリさんと会うことはないと思っていた。
しかし、カラルリさんは結婚して半年後、再びアヤネさんのアパートに来た。
『カラルリさん、結婚したんですね。すみませんが、もうここには来ないでください。不倫だなんて見つかれば私は支払う慰謝料もありません』
『アヤネ、大学のみんなはアヤネが孤児院育ちなことを知っているの?』
『いえ、知りません』
『私を拒んだら言いふらしちゃおうかな』
『やめてください、困ります!』
『万が一、慰謝料を請求されても私がアヤネの分も支払う。アヤネがいなきゃダメなんだ』
カラルリさんはアヤネさんを抱き締め、そのまま布団の中に連れ込んだ。
一方、キクリ家では。
『セナさん、今日もお疲れ様。ビーフシチュー作ったから』
『ありがとう、カラルリ』
セナ王女はカラルリさんに抱き着いた。
カラルリさんはアヤネさんとの不倫は続け、セナ王女にはいい夫を演じ続けた。
けれど、アヤネさんに彼氏が出来た時、アヤネさんは密かにアパートを移し、その後、カラルリさんと会うことはなかったのである。
映像はそこで途切れていた。
ミナクお兄様が女遊びをするようになったのは、アヤネさんの浮気が原因だったのか。全く知らなかった。アヤネさんも大人しそうに見えて、人って分からないものだな。
「そういうことか。セナ王女を騙して私の人生をめちゃくちゃにしたのはアヤネさんとカラルリさんだったのか。ハッキリ言って気分が悪い」
ミナクお兄様、めちゃくちゃ怒ってる。
「カラルリを信じていたのに。浮気されていたなんて全く知らなかった。こんなの許せない!」
セナ王女も、はじめて知る真実に混乱した。
「ごめんなさい、ミナクさん。ずっと謝ろうと思っていたのですが、何世紀も経ってしまいました。本当に申し訳なく思っています」
「申し訳なく?何が申し訳なくなんですか?申し訳なく思ってないからズームさんに恋してるんですよね!でも、この映像見てください!私はズームさんと交際していました!」
そうか。ナミネが何の力もない時にミナクお兄様に嫁いだ時のものだったのか。ナミネはアヤネさんにズームさんとの交際映像を送った。
「そ、そうですか。私とズームさんはただの友達ですので」
「そうですか。友達ならどんなアヤネさんでも受け入れてくれますよね?」
ナミネはアヤネさんに何かを大量に飲ませた。
数分後、アヤネさんが立ち上がろうとしたら、アヤネさんはトイレまで間に合わず下してしまった。ナミネはその様子をすかさず撮影していた。
「では、ズームさんに送りますかな」
「やめてください!慰謝料ならいくらでもお支払い致します!」
「金で解決する問題ですか!お母様に言いつけて皇帝陛下に掛け合ってもらいます!」
「どうか許してください」
アヤネさんはお腹を下しながら、ナミネに土下座した。こんな時、彼氏として私はどうすればいいのだろう。
「今、ズームさんにアヤネさんのキュートな映像を送りました!」
アヤネさんは嗚咽をあげながら泣いた。しかし、ナミネの怒りはここで収まらなかった。ナミネはアヤネさんの服を脱がし、汚れたパンツをアルフォンス王子の頭に被せた。
「アヤネ!お前何やってるのか分かってるのか!お父様に言いつけて罰してやる!」
「どうか、許してください」
アヤネさんは、ただただ謝った。アルフォンス王子は王室に紙飛行機を飛ばした後、お風呂へ行った。
「アヤネがお兄様を誘惑してセナさんを陥れるような人だとは思いませんでした!カナエは見損ないました」
「アヤネが……アヤネがミナクを裏切っていなければ私はミナクからDVなんて受けなかった!絶対に許せない!」
カナエさんもユメさんもアヤネさんを批難している。ナミネは、ナミネはどこに行ったのだろう。探すと机の下で眠っていた。私はナミネを机の下から出すとナミネを抱きかかえた。
その時、テレビからニュースが流れた。
『これまでは兄妹又は姉弟の婚姻は認めていませんでしたが、来年の2月から認められるようになりました。これでもう血縁者の禁断の恋はなくなりますね。兄妹、姉弟が今後、堂々と婚姻して幸せになってくれることを妖精村は願っています』
その瞬間、私の中で物凄い不安の種がグルグル回った。けれど、今はナミネを布団に寝かせなければ。私はナミネを抱きかかえ、2階へ上がった。
ナミネの部屋に入ると、私は布団にナミネを寝かせた。
ナミネ、疲れてたんだね。アヤネさん通してのミナクお兄様からのDV辛かったね。助けてあげられなくてごめんね。
ふと机を見るとラッピングしてあるプレゼントがあった。私はメッセージカードを開いた。
『ヨルクさんへ
メリークリスマス!
上手く編めてないけど、クリスマスプレゼントです。
ナミネ』
ナミネ……。
私は早速、プレゼント袋を開けた。すると、黒い手編みのマフラーが入っていた。とこほどころ穴が空いているが、ナミネが私のために編んでくれたかと思うと凄く凄く嬉しくて私は泣いた。
カップル日記に載せよう。
カップル日記を開くとナミネの投稿があった。
『トイレの中まで入って来たストーカーヨルクさん』
とても複雑な気持ちだが、それよりもナミネが私に手編みのマフラーを用意してくれたことが嬉しくて私もカップル日記に投稿をした。
『ナミネが手編みのマフラーをクリスマスプレゼントに用意してくれた。
物凄く嬉しいし、大切に使う。
ありがとう、ナミネ』
ナミネ、お疲れ様。
ゆっくり休んでね。
翌日になると、アヤネさんの件は保留になりみんな家に帰って行った。けれど、カナエさんの機嫌はまだ直らないのかカナエさんはキクリ家に戻って行った。そして、みんなの矛先はまたセレナールさんへと向いていったのである。
また、タルリヤさんは役場に生活保護の申請をしに行ったらしい。
「顔だけヨルク、飯」
えっ、落ち武者さん帰ってなかったの?
「ねえ、どうしていつも家に帰らないの?ナミネとの時間、邪魔されたくないんだけど!」
どうしていつも付きまとってくるのだろう。正直迷惑だ。
「あんたらは幼なじみ同士で家行き来してるのに僕だけ仲間外れなわけ?」
「そうじゃないけど、いくら何でもここまで付きまとわれるのはいや」
勝手にナミネの部屋で寝られるのもいやだし、いい加減普通の暮らしがしたい。
「おはようございます」
ナミネが起きてきた。朝ご飯作らないと。
「ナミネ、今朝ご飯作ってくるからね」
「はい」
私は部屋を出て階段を下りてキッチンに向かった。
キッチンにはカナエさんがいた。
「カナエさん、キクリ家に戻ってたんじゃなかったんですか?」
「キクリ食堂での仕事を終えたので、こっちに来ました」
「そうだったんですね」
アルフォンス王子のところには行かないのだろうか。私は3人分のお粥を作りはじめた。
「カナエはもうアルフォンス王子様を信じることが出来ません」
昔のアルフォンス王子の行動でカナエさんも不安になったのだろうか。
「でも、カナエさんはアルフォンス王子のことが好きなんですよね?」
「カナエが好きなのは遥か昔、カナエに優しくしてくれたアルフォンス王子です。今はすっかり変わってしまいました」
確か、遠い昔はみんなが助け合ってアルフォンス王子もセナ王女も純粋だったとナミネが言っていたな。
「すぐに答えを出す必要はないと思います。しばらく距離を置いてみてはどうでしょう」
「そうするしかありませんね」
「では、私は朝食を持って行きます」
天使の湖でのことはカナエさんはかなりショックを受けているようだ。私は作ったお粥を持って2階に上がった。
ナミネの部屋に入るとニンジャ妖精さんがいた。
「ナミネさん、結婚してください」
そうか。兄妹でも結婚出来るようになるんだっけ。
「カンザシさん、勝手に入って来ないでください。兄妹では結婚出来ませんし、私はヨルクさんと結婚します」
ナミネはまだ法律が改正されることを知らないんだ。
「兄妹で結婚出来るよう法律が改正されるんです。絶対ナミネさんを幸せにします」
カンザシさんは無理矢理ナミネを私から奪おうとするつもりなのか。けれど、そうはさせない。
「カンザシ、あんた紙切れ1枚で強気なナミネを縛るつもりか。幸せにする?ふざけんな!天使村で強気なナミネから顔だけヨルク奪ったのあんただ!あんたが毒殺したんだ!」
「そんな昔のこと知りません!今は今です!僕はナミネさんと結婚したいんです!」
その瞬間、ナミネがカンザシさんを引っぱたいた。
「いつも一方的で自分のことしか考えられないんですね!ヨルクさんを毒殺し、私とヨルクさんを雇った不良に無理矢理別れさせ、私、カンザシさんが憎くて仕方ありません!」
「どうして分かってくれないんですか!ナミネさんってワガママですね!自分さえ良ければそれでいいんですか!」
なんて強引な人なんだ。こんな人には絶対ナミネを渡せない。
「やめてくれないか!頼むからナミネに近付かないで欲しい!」
ナヤセスさん、来ていたのか。
「お願いです。ナミネさんを僕にください!」
「話にならないな!」
ナヤセスさんは無理矢理カンザシさんを部屋から出した。私は咄嗟にカンザシさんがナミネと婚姻しないようメールでキクスケさんにお願いをした。
「ナミネ、朝食だよ」
私はお粥を机に置いた。
「ありがとうございます、ヨルクさん」
ナミネは嬉しそうにお粥を食べた。ナミネの笑顔を見る瞬間はとても幸せを感じる。
「ナミネ、クリスマスプレゼントだよ」
私は昨日の夜押し入れの中で見付けた天使村の市場の星型のサファイアの石を渡した。
「わあ、これあの後現代まで眠っていたんですね!ヨルクさん、大切にします」
ナミネは箱に星型のサファイアの石を入れた。大切なものを入れておく箱だろうか。はじめて見る。
「ナミネ、今日はカフェに行こうか」
昨日は天使村のレストランで散々だったからナミネにはゆっくり美味しいものを食べて欲しい。
「はい、ではラルクとユメさん、委員長、カラン王子も誘います」
出来ればナミネと2人で行きたかったのだけど、落ち武者さんがいるからどの道無理か。でも、当たり障りないメンバーならまあいっか。あ、カナエさんも来ているから一応誘っておこう。
桜木町の新しく出来たカフェに来たけれど、何故かカンザシさんもいる。話によると、ナルホさんが突き放しすぎるのも良くないとナヤセスさんを説得したらしく、この日はナミネを心配したナヤセスさんも着いてきた。
「ナミネ、どれにする?」
ここのカフェ、まるで……。
「何だか、昨日行ったレストランの料理みたいですね」
本当、昨日のレストランの料理みたいにキャラクターが浮かび上がっている。それでも、クオリティは昨日のレストランのほうが高かったような気もする。
「何だか、セナさんいないと気が楽だわ」
確かに、セナ王女がいると変に仕切られて場の空気が重たくなる。
「あ、カンザシさん、今朝は突き放してしまってすみません。ちょっと結婚とか言われて混乱したんです」
「僕こそごめんなさい。ナミネさんと一緒になりたい気持ちに急かされていました」
けれど、これって結局はナミネとの交際と結婚を望んでいるわけだよな。兄妹での結婚が出来るようになったのはとても不安である。
「カンザシさんのことは極力支えます。妹として。でも、結婚は出来ません。それと、兄妹での結婚が法律で認められた以上は、あくまで普通の兄妹としてしか接することは出来ません。ヨルクさんを不安にさせたくないんです」
ナミネは私との交際を選んでくれている。今のところカンザシさんとの婚姻は考えていない。安心してもいいのだろうか。けれど、この付きまとう不安はなんだろう。
「分かりました。ナミネさんのことはあくまで妹として接します」
「はい!あ、カンザシさんもミツメさんもドラマ出演決まったんですね」
ミツメさんは確かオーディション受かったんだっけ。
「はい、オーディションを受けたら偶然受かりました」
ナミネの前だから嘘をつくしかないのだろうか。ズームさんからは、ナミネに付きまとわないようドラマ撮影のスケジュール入れたと聞いているけれど。
「そうなんですね!頑張ってください」
「ナミネ、飛べない翼の続編映画、またラハルさんと出るの?」
「続編というか、姉妹策です。忘れられた翼で、歴史を変えられた2人の女性が妊娠して一方の記憶が戻った瞬間にパニックになり、譲渡で死産にしてしまう、セレナールさんとエミリさんがモデルになった内容です。セレナールさんは私、皇太子様はラハルさん、エミリさんはクノイチ妖精さんのヒトツメさん、アランさんはシュリさん、タルリヤさんはロクメさんが演じることになりました。飛べない翼は書籍化もしていますし、その流れで忘れられた翼も世に広めようということになったそうです」
姉妹策か。似たような内容ではあるが、飛べない翼がヒットしたからなあ。けれど、忘れられた翼は配役も多く大がかりになりそう。
「そっか。飛べない翼、書籍化されて良かったね。忘れられた翼もヒットするといいね」
ヒョンなところからナミネが突然芸能活動をしはじめた気がする。それに、今思い出したが、ナミネは2019年中学生部門のミスコングランプリに輝いたんだった。だんだんナミネが遠くなるようで時折寂しくも感じる。
「これ、強気なナミネのミスコングランプリの時の写真だ。欲しいヤツは持ってけ」
真っ先にカンザシさんが手に取った。ミツメさんもカラン王子もラルクもナヤセスさんも。私も手に取った。ほんのり化粧してマントを羽織ってトロフィー持ってるナミネ可愛すぎる。確か、この時、ナミネが優勝会見行ったんだっけ。色々ありすぎてリアルタイムでは見れなかったから、落ち武者さんから録画もらおう。
「私、クジラのクリームシチューにします」
「うん、一緒に食べようね」
「ユメ、この前食べられなかったタコのカレーライスにしよう」
「そうね」
カナエさんやカラン王子も海系のメニューにしている。よく見ると、壁に昨日行ったレストランのような写真がある。説明書きを見ると、天使村時代にあったレストランを妖精村半ば頃再現され、それを現代でも再現したのか。何だか歴史って尊い。
「あのね、ラルク。昨日、レストランでヨルクさんトイレの中まで入ってきたの」
何故、今それを言う。セナ王女たちがいなくて良かった。
「もう変質者だな」
「間違って入ったの!それに後ろ向いてたでしょ!」
どうして私を覗きみたいな言い方するの!
「でもね、あの後ヨルクさん……」
咄嗟に私はナミネの口を塞いだ。
「んーんー!」
「ナミネ、変なこと言わないで」
私はナミネの口から手を離した。
「あ、カナエさん、アルフォンス王子はどうしたんですか?」
何故、呼ばなかった人のことを聞く。
「カナエはもうアルフォンス王子様のこと信じられません!」
「何かあったんですか?」
「昔のアルフォンス王子様は綺麗な天使を口説いていました」
でもあれは、綺麗と言うより派手なような。
「でも、あの時代には恋愛感情がなかったそうです。子孫を残すことが使命みたいな」
本当にそうだろうか。私は天使村時代もずっとナミネのこと愛していたし、何より、カンザシさんがナミネをピンポイントで狙っていたのが何よりの証拠だ。あの時代に恋愛感情はあったと私は位置付けてしまう。
「好き合って交際したのに綺麗な人がいれば、その人と子孫を残したがるだなんて獣みたいでカナエはいやです!」
カナエさんってこんなに嫉妬深かったっけ。エミリさんも、あの後カラルリさんを許したのに。
「ラルクはどう思う?」
何故ラルクに聞く。
「まあ、ミナクお兄様がいかがわしいサイト見てるようなもんなんじゃないのか?」
「じゃあ、浮気じゃないね!カナエさん大丈夫ですよ。あの時代って原始時代みたいなもんですし」
原始時代って。それは少し違うだろう。現代だって彼女いても結局学年のマドンナ的存在に憧れている光景よく見かけるし。
「カナエは何度も許そうとしました。けれど、どうしても許せないのです!」
「うーん、難しいですね。でも、カラルリさんがテンネさんにコメントするようなものではないでしょうか」
それはそれで何かと問題ではないだろうか。
「あんな水着姿で歌手気取りなんてカナエには理解出来ません!それにチューリップ妖精さんて、写真会は水着の上からならお触りOKですよね。そんなの浮気なのです。ナミネはどうなのですか?」
「私は、2人でいる時に携帯ばかり見ていたらいやですが、ヨルクさんは私に隠れていかがわしいサイト見ていますので」
何故誤解を招く言い方をする。まるで私がフェアリーチューバーに入れ込んでいるみたいではないか。
「ナミネ、やめて!私、フェアリーチューバーなんて見てないし推しもいないから!」
「ラルク、ヨルクさん、メアラスさんの画像いっぱい保存してるのに推しいないんだって」
メアラスさんはプロの女優じゃない。それに私はドラマが面白いから見ているだけだ。
「どうしてそんな言い方するの!私、メアラスさんのドラマ好きだから見てるだけなの!」
「どんな画像だよ」
ナミネはラルクに携帯を見せた。
「人気女優みたいだしチューリップ妖精さんに比べたらジャンル違うんじゃないか?」
「同じだよ。だって、天使の湖で例えるなら両方推しじゃん」
ナミネは私がメアラスさんのドラマ見るのがいやなのだろうか。
「言い出したらキリがないわよ。現代は現代。天使の湖は水浴び中の天使にアルフォンス王子が声かけたからカナエは悩んでいるのよ」
あ、エルナいたんだ。落ち武者さんが誘ったのか。
「うーん、何だか分からなくなりました」
「あの後、アルフォンス王子は声かけた人とホテルに入っていきました。カナエは理解出来ません!」
そうだったのか。いくら昔のアルフォンス王子とはいえ、目の前でそんな場面見たら彼女としては複雑な気持ちになるか。
「あの、ナミネさん、このドラマのヒロイン演じていただけませんか?主役は僕なので」
カンザシさんはナミネにチラシを渡した。えっ、これって、本当に女優目指している人が出るようなドラマ……。
「すみません、こういうのは出来ません」
かなり昔から女優はドラマの中でリアルに本番をする人が多く、中には女優魂を見せるためにドラマで処女を喪失する人もいる。更には最後まで女優であったことを伝えるためにドラマの中で第3を喪失し、亡くなる女優もいた。現代もドラマで若くして亡くなる女優がいる。
カンザシさんはドラマを口実にナミネを抱くつもりだ。油断出来ない。
「こういうのやめてくれないか?ナミネはヨルクと交際してるんだ。ドラマとはいえ、ナミネが穢れる姿は見たくない」
ナヤセスさんかなり怒っている。正直私も苛立たしい。カンザシさんはどんな手を使ってでもナミネを自分のものにしようとしている。私はカンザシさんを信じられなくなった。
……
あとがき。
カンザシを放っておけないナミネ。
けれど、カンザシはナミネをヨルクから奪い取ろうとしている。
カナエもアルフォンスと仲違いしてしまったし。
現代編は色々忙しい。
《ヨルク》
昔のアヤネさんはミナクお兄様から別れを告げられた後、何度もミナクお兄様に許しをこうたが、ミナクお兄様はアヤネさんを無視した。
そして、アヤネさんの浮気が原因で、ミナクお兄様は髪を金髪に染め、黒いピアスをして、女遊びをするようになった。もう純粋だった頃のミナクお兄様はどこにもいなくなっていた。
彼女を作っては気に入らないことがあれば暴力をふるい、すぐに彼女を捨て、新しい彼女を作るの繰り返しだった。
一方、アヤネさんはミナクお兄様と別れてからもカラルリさんと会っていた。カラルリさんはアヤネさんがバイトを終わるまでレストランで待ってアヤネさんのアパートに行っていたのである。
『あの、私との結婚は考えていただけているのでしょうか?』
『もちろんだよ、アヤネ』
カラルリさんはアヤネさんに口付けをした。
ミナクお兄様が女遊びに明け暮れる中、アヤネさんはカラルリさんとの関係を続けていた。
『アヤネ、すまないが仕事が忙しくなってきて、しばらく会えそうにない』
『そうですか。私は気長に待っています』
アヤネさんはカラルリさんがセナ王女と婚約しているだなんて全く知らなかったのだ。
そして、間もなくカラルリさんとセナ王女の結婚式は行われた。
『新郎カラルリさん あなたはここにいるセナ王女を
病める時も 健やかなる時も
富める時も 貧しき時も
妻として愛し 敬い 慈しむ事を誓いますか?』
『私にとってセナさんはこの世に2つとない尊い存在で、どんなセナさんも愛し慈しみ生涯セナさんのみを愛することを誓います』
『新婦セナ王女 あなたはここにいるカラルリさんを
病める時も 健やかなる時も
富める時も 貧しき時も
夫として愛し 敬い 慈しむ事を誓いますか?』
『カラルリとは運命の絆で結ばれています。カラルリはどんな時も私を愛し支えてくれた。そんなカラルリを一生大切にすることを誓います』
2人は指輪交換をした。
ミナクお兄様とセナ王女が結婚式を挙げたことは妖精村新聞にも掲載された。
セナ王女とカラルリさんの婚姻を知ったアヤネさんは、二度とカラルリさんと会うことはないと思っていた。
しかし、カラルリさんは結婚して半年後、再びアヤネさんのアパートに来た。
『カラルリさん、結婚したんですね。すみませんが、もうここには来ないでください。不倫だなんて見つかれば私は支払う慰謝料もありません』
『アヤネ、大学のみんなはアヤネが孤児院育ちなことを知っているの?』
『いえ、知りません』
『私を拒んだら言いふらしちゃおうかな』
『やめてください、困ります!』
『万が一、慰謝料を請求されても私がアヤネの分も支払う。アヤネがいなきゃダメなんだ』
カラルリさんはアヤネさんを抱き締め、そのまま布団の中に連れ込んだ。
一方、キクリ家では。
『セナさん、今日もお疲れ様。ビーフシチュー作ったから』
『ありがとう、カラルリ』
セナ王女はカラルリさんに抱き着いた。
カラルリさんはアヤネさんとの不倫は続け、セナ王女にはいい夫を演じ続けた。
けれど、アヤネさんに彼氏が出来た時、アヤネさんは密かにアパートを移し、その後、カラルリさんと会うことはなかったのである。
映像はそこで途切れていた。
ミナクお兄様が女遊びをするようになったのは、アヤネさんの浮気が原因だったのか。全く知らなかった。アヤネさんも大人しそうに見えて、人って分からないものだな。
「そういうことか。セナ王女を騙して私の人生をめちゃくちゃにしたのはアヤネさんとカラルリさんだったのか。ハッキリ言って気分が悪い」
ミナクお兄様、めちゃくちゃ怒ってる。
「カラルリを信じていたのに。浮気されていたなんて全く知らなかった。こんなの許せない!」
セナ王女も、はじめて知る真実に混乱した。
「ごめんなさい、ミナクさん。ずっと謝ろうと思っていたのですが、何世紀も経ってしまいました。本当に申し訳なく思っています」
「申し訳なく?何が申し訳なくなんですか?申し訳なく思ってないからズームさんに恋してるんですよね!でも、この映像見てください!私はズームさんと交際していました!」
そうか。ナミネが何の力もない時にミナクお兄様に嫁いだ時のものだったのか。ナミネはアヤネさんにズームさんとの交際映像を送った。
「そ、そうですか。私とズームさんはただの友達ですので」
「そうですか。友達ならどんなアヤネさんでも受け入れてくれますよね?」
ナミネはアヤネさんに何かを大量に飲ませた。
数分後、アヤネさんが立ち上がろうとしたら、アヤネさんはトイレまで間に合わず下してしまった。ナミネはその様子をすかさず撮影していた。
「では、ズームさんに送りますかな」
「やめてください!慰謝料ならいくらでもお支払い致します!」
「金で解決する問題ですか!お母様に言いつけて皇帝陛下に掛け合ってもらいます!」
「どうか許してください」
アヤネさんはお腹を下しながら、ナミネに土下座した。こんな時、彼氏として私はどうすればいいのだろう。
「今、ズームさんにアヤネさんのキュートな映像を送りました!」
アヤネさんは嗚咽をあげながら泣いた。しかし、ナミネの怒りはここで収まらなかった。ナミネはアヤネさんの服を脱がし、汚れたパンツをアルフォンス王子の頭に被せた。
「アヤネ!お前何やってるのか分かってるのか!お父様に言いつけて罰してやる!」
「どうか、許してください」
アヤネさんは、ただただ謝った。アルフォンス王子は王室に紙飛行機を飛ばした後、お風呂へ行った。
「アヤネがお兄様を誘惑してセナさんを陥れるような人だとは思いませんでした!カナエは見損ないました」
「アヤネが……アヤネがミナクを裏切っていなければ私はミナクからDVなんて受けなかった!絶対に許せない!」
カナエさんもユメさんもアヤネさんを批難している。ナミネは、ナミネはどこに行ったのだろう。探すと机の下で眠っていた。私はナミネを机の下から出すとナミネを抱きかかえた。
その時、テレビからニュースが流れた。
『これまでは兄妹又は姉弟の婚姻は認めていませんでしたが、来年の2月から認められるようになりました。これでもう血縁者の禁断の恋はなくなりますね。兄妹、姉弟が今後、堂々と婚姻して幸せになってくれることを妖精村は願っています』
その瞬間、私の中で物凄い不安の種がグルグル回った。けれど、今はナミネを布団に寝かせなければ。私はナミネを抱きかかえ、2階へ上がった。
ナミネの部屋に入ると、私は布団にナミネを寝かせた。
ナミネ、疲れてたんだね。アヤネさん通してのミナクお兄様からのDV辛かったね。助けてあげられなくてごめんね。
ふと机を見るとラッピングしてあるプレゼントがあった。私はメッセージカードを開いた。
『ヨルクさんへ
メリークリスマス!
上手く編めてないけど、クリスマスプレゼントです。
ナミネ』
ナミネ……。
私は早速、プレゼント袋を開けた。すると、黒い手編みのマフラーが入っていた。とこほどころ穴が空いているが、ナミネが私のために編んでくれたかと思うと凄く凄く嬉しくて私は泣いた。
カップル日記に載せよう。
カップル日記を開くとナミネの投稿があった。
『トイレの中まで入って来たストーカーヨルクさん』
とても複雑な気持ちだが、それよりもナミネが私に手編みのマフラーを用意してくれたことが嬉しくて私もカップル日記に投稿をした。
『ナミネが手編みのマフラーをクリスマスプレゼントに用意してくれた。
物凄く嬉しいし、大切に使う。
ありがとう、ナミネ』
ナミネ、お疲れ様。
ゆっくり休んでね。
翌日になると、アヤネさんの件は保留になりみんな家に帰って行った。けれど、カナエさんの機嫌はまだ直らないのかカナエさんはキクリ家に戻って行った。そして、みんなの矛先はまたセレナールさんへと向いていったのである。
また、タルリヤさんは役場に生活保護の申請をしに行ったらしい。
「顔だけヨルク、飯」
えっ、落ち武者さん帰ってなかったの?
「ねえ、どうしていつも家に帰らないの?ナミネとの時間、邪魔されたくないんだけど!」
どうしていつも付きまとってくるのだろう。正直迷惑だ。
「あんたらは幼なじみ同士で家行き来してるのに僕だけ仲間外れなわけ?」
「そうじゃないけど、いくら何でもここまで付きまとわれるのはいや」
勝手にナミネの部屋で寝られるのもいやだし、いい加減普通の暮らしがしたい。
「おはようございます」
ナミネが起きてきた。朝ご飯作らないと。
「ナミネ、今朝ご飯作ってくるからね」
「はい」
私は部屋を出て階段を下りてキッチンに向かった。
キッチンにはカナエさんがいた。
「カナエさん、キクリ家に戻ってたんじゃなかったんですか?」
「キクリ食堂での仕事を終えたので、こっちに来ました」
「そうだったんですね」
アルフォンス王子のところには行かないのだろうか。私は3人分のお粥を作りはじめた。
「カナエはもうアルフォンス王子様を信じることが出来ません」
昔のアルフォンス王子の行動でカナエさんも不安になったのだろうか。
「でも、カナエさんはアルフォンス王子のことが好きなんですよね?」
「カナエが好きなのは遥か昔、カナエに優しくしてくれたアルフォンス王子です。今はすっかり変わってしまいました」
確か、遠い昔はみんなが助け合ってアルフォンス王子もセナ王女も純粋だったとナミネが言っていたな。
「すぐに答えを出す必要はないと思います。しばらく距離を置いてみてはどうでしょう」
「そうするしかありませんね」
「では、私は朝食を持って行きます」
天使の湖でのことはカナエさんはかなりショックを受けているようだ。私は作ったお粥を持って2階に上がった。
ナミネの部屋に入るとニンジャ妖精さんがいた。
「ナミネさん、結婚してください」
そうか。兄妹でも結婚出来るようになるんだっけ。
「カンザシさん、勝手に入って来ないでください。兄妹では結婚出来ませんし、私はヨルクさんと結婚します」
ナミネはまだ法律が改正されることを知らないんだ。
「兄妹で結婚出来るよう法律が改正されるんです。絶対ナミネさんを幸せにします」
カンザシさんは無理矢理ナミネを私から奪おうとするつもりなのか。けれど、そうはさせない。
「カンザシ、あんた紙切れ1枚で強気なナミネを縛るつもりか。幸せにする?ふざけんな!天使村で強気なナミネから顔だけヨルク奪ったのあんただ!あんたが毒殺したんだ!」
「そんな昔のこと知りません!今は今です!僕はナミネさんと結婚したいんです!」
その瞬間、ナミネがカンザシさんを引っぱたいた。
「いつも一方的で自分のことしか考えられないんですね!ヨルクさんを毒殺し、私とヨルクさんを雇った不良に無理矢理別れさせ、私、カンザシさんが憎くて仕方ありません!」
「どうして分かってくれないんですか!ナミネさんってワガママですね!自分さえ良ければそれでいいんですか!」
なんて強引な人なんだ。こんな人には絶対ナミネを渡せない。
「やめてくれないか!頼むからナミネに近付かないで欲しい!」
ナヤセスさん、来ていたのか。
「お願いです。ナミネさんを僕にください!」
「話にならないな!」
ナヤセスさんは無理矢理カンザシさんを部屋から出した。私は咄嗟にカンザシさんがナミネと婚姻しないようメールでキクスケさんにお願いをした。
「ナミネ、朝食だよ」
私はお粥を机に置いた。
「ありがとうございます、ヨルクさん」
ナミネは嬉しそうにお粥を食べた。ナミネの笑顔を見る瞬間はとても幸せを感じる。
「ナミネ、クリスマスプレゼントだよ」
私は昨日の夜押し入れの中で見付けた天使村の市場の星型のサファイアの石を渡した。
「わあ、これあの後現代まで眠っていたんですね!ヨルクさん、大切にします」
ナミネは箱に星型のサファイアの石を入れた。大切なものを入れておく箱だろうか。はじめて見る。
「ナミネ、今日はカフェに行こうか」
昨日は天使村のレストランで散々だったからナミネにはゆっくり美味しいものを食べて欲しい。
「はい、ではラルクとユメさん、委員長、カラン王子も誘います」
出来ればナミネと2人で行きたかったのだけど、落ち武者さんがいるからどの道無理か。でも、当たり障りないメンバーならまあいっか。あ、カナエさんも来ているから一応誘っておこう。
桜木町の新しく出来たカフェに来たけれど、何故かカンザシさんもいる。話によると、ナルホさんが突き放しすぎるのも良くないとナヤセスさんを説得したらしく、この日はナミネを心配したナヤセスさんも着いてきた。
「ナミネ、どれにする?」
ここのカフェ、まるで……。
「何だか、昨日行ったレストランの料理みたいですね」
本当、昨日のレストランの料理みたいにキャラクターが浮かび上がっている。それでも、クオリティは昨日のレストランのほうが高かったような気もする。
「何だか、セナさんいないと気が楽だわ」
確かに、セナ王女がいると変に仕切られて場の空気が重たくなる。
「あ、カンザシさん、今朝は突き放してしまってすみません。ちょっと結婚とか言われて混乱したんです」
「僕こそごめんなさい。ナミネさんと一緒になりたい気持ちに急かされていました」
けれど、これって結局はナミネとの交際と結婚を望んでいるわけだよな。兄妹での結婚が出来るようになったのはとても不安である。
「カンザシさんのことは極力支えます。妹として。でも、結婚は出来ません。それと、兄妹での結婚が法律で認められた以上は、あくまで普通の兄妹としてしか接することは出来ません。ヨルクさんを不安にさせたくないんです」
ナミネは私との交際を選んでくれている。今のところカンザシさんとの婚姻は考えていない。安心してもいいのだろうか。けれど、この付きまとう不安はなんだろう。
「分かりました。ナミネさんのことはあくまで妹として接します」
「はい!あ、カンザシさんもミツメさんもドラマ出演決まったんですね」
ミツメさんは確かオーディション受かったんだっけ。
「はい、オーディションを受けたら偶然受かりました」
ナミネの前だから嘘をつくしかないのだろうか。ズームさんからは、ナミネに付きまとわないようドラマ撮影のスケジュール入れたと聞いているけれど。
「そうなんですね!頑張ってください」
「ナミネ、飛べない翼の続編映画、またラハルさんと出るの?」
「続編というか、姉妹策です。忘れられた翼で、歴史を変えられた2人の女性が妊娠して一方の記憶が戻った瞬間にパニックになり、譲渡で死産にしてしまう、セレナールさんとエミリさんがモデルになった内容です。セレナールさんは私、皇太子様はラハルさん、エミリさんはクノイチ妖精さんのヒトツメさん、アランさんはシュリさん、タルリヤさんはロクメさんが演じることになりました。飛べない翼は書籍化もしていますし、その流れで忘れられた翼も世に広めようということになったそうです」
姉妹策か。似たような内容ではあるが、飛べない翼がヒットしたからなあ。けれど、忘れられた翼は配役も多く大がかりになりそう。
「そっか。飛べない翼、書籍化されて良かったね。忘れられた翼もヒットするといいね」
ヒョンなところからナミネが突然芸能活動をしはじめた気がする。それに、今思い出したが、ナミネは2019年中学生部門のミスコングランプリに輝いたんだった。だんだんナミネが遠くなるようで時折寂しくも感じる。
「これ、強気なナミネのミスコングランプリの時の写真だ。欲しいヤツは持ってけ」
真っ先にカンザシさんが手に取った。ミツメさんもカラン王子もラルクもナヤセスさんも。私も手に取った。ほんのり化粧してマントを羽織ってトロフィー持ってるナミネ可愛すぎる。確か、この時、ナミネが優勝会見行ったんだっけ。色々ありすぎてリアルタイムでは見れなかったから、落ち武者さんから録画もらおう。
「私、クジラのクリームシチューにします」
「うん、一緒に食べようね」
「ユメ、この前食べられなかったタコのカレーライスにしよう」
「そうね」
カナエさんやカラン王子も海系のメニューにしている。よく見ると、壁に昨日行ったレストランのような写真がある。説明書きを見ると、天使村時代にあったレストランを妖精村半ば頃再現され、それを現代でも再現したのか。何だか歴史って尊い。
「あのね、ラルク。昨日、レストランでヨルクさんトイレの中まで入ってきたの」
何故、今それを言う。セナ王女たちがいなくて良かった。
「もう変質者だな」
「間違って入ったの!それに後ろ向いてたでしょ!」
どうして私を覗きみたいな言い方するの!
「でもね、あの後ヨルクさん……」
咄嗟に私はナミネの口を塞いだ。
「んーんー!」
「ナミネ、変なこと言わないで」
私はナミネの口から手を離した。
「あ、カナエさん、アルフォンス王子はどうしたんですか?」
何故、呼ばなかった人のことを聞く。
「カナエはもうアルフォンス王子様のこと信じられません!」
「何かあったんですか?」
「昔のアルフォンス王子様は綺麗な天使を口説いていました」
でもあれは、綺麗と言うより派手なような。
「でも、あの時代には恋愛感情がなかったそうです。子孫を残すことが使命みたいな」
本当にそうだろうか。私は天使村時代もずっとナミネのこと愛していたし、何より、カンザシさんがナミネをピンポイントで狙っていたのが何よりの証拠だ。あの時代に恋愛感情はあったと私は位置付けてしまう。
「好き合って交際したのに綺麗な人がいれば、その人と子孫を残したがるだなんて獣みたいでカナエはいやです!」
カナエさんってこんなに嫉妬深かったっけ。エミリさんも、あの後カラルリさんを許したのに。
「ラルクはどう思う?」
何故ラルクに聞く。
「まあ、ミナクお兄様がいかがわしいサイト見てるようなもんなんじゃないのか?」
「じゃあ、浮気じゃないね!カナエさん大丈夫ですよ。あの時代って原始時代みたいなもんですし」
原始時代って。それは少し違うだろう。現代だって彼女いても結局学年のマドンナ的存在に憧れている光景よく見かけるし。
「カナエは何度も許そうとしました。けれど、どうしても許せないのです!」
「うーん、難しいですね。でも、カラルリさんがテンネさんにコメントするようなものではないでしょうか」
それはそれで何かと問題ではないだろうか。
「あんな水着姿で歌手気取りなんてカナエには理解出来ません!それにチューリップ妖精さんて、写真会は水着の上からならお触りOKですよね。そんなの浮気なのです。ナミネはどうなのですか?」
「私は、2人でいる時に携帯ばかり見ていたらいやですが、ヨルクさんは私に隠れていかがわしいサイト見ていますので」
何故誤解を招く言い方をする。まるで私がフェアリーチューバーに入れ込んでいるみたいではないか。
「ナミネ、やめて!私、フェアリーチューバーなんて見てないし推しもいないから!」
「ラルク、ヨルクさん、メアラスさんの画像いっぱい保存してるのに推しいないんだって」
メアラスさんはプロの女優じゃない。それに私はドラマが面白いから見ているだけだ。
「どうしてそんな言い方するの!私、メアラスさんのドラマ好きだから見てるだけなの!」
「どんな画像だよ」
ナミネはラルクに携帯を見せた。
「人気女優みたいだしチューリップ妖精さんに比べたらジャンル違うんじゃないか?」
「同じだよ。だって、天使の湖で例えるなら両方推しじゃん」
ナミネは私がメアラスさんのドラマ見るのがいやなのだろうか。
「言い出したらキリがないわよ。現代は現代。天使の湖は水浴び中の天使にアルフォンス王子が声かけたからカナエは悩んでいるのよ」
あ、エルナいたんだ。落ち武者さんが誘ったのか。
「うーん、何だか分からなくなりました」
「あの後、アルフォンス王子は声かけた人とホテルに入っていきました。カナエは理解出来ません!」
そうだったのか。いくら昔のアルフォンス王子とはいえ、目の前でそんな場面見たら彼女としては複雑な気持ちになるか。
「あの、ナミネさん、このドラマのヒロイン演じていただけませんか?主役は僕なので」
カンザシさんはナミネにチラシを渡した。えっ、これって、本当に女優目指している人が出るようなドラマ……。
「すみません、こういうのは出来ません」
かなり昔から女優はドラマの中でリアルに本番をする人が多く、中には女優魂を見せるためにドラマで処女を喪失する人もいる。更には最後まで女優であったことを伝えるためにドラマの中で第3を喪失し、亡くなる女優もいた。現代もドラマで若くして亡くなる女優がいる。
カンザシさんはドラマを口実にナミネを抱くつもりだ。油断出来ない。
「こういうのやめてくれないか?ナミネはヨルクと交際してるんだ。ドラマとはいえ、ナミネが穢れる姿は見たくない」
ナヤセスさんかなり怒っている。正直私も苛立たしい。カンザシさんはどんな手を使ってでもナミネを自分のものにしようとしている。私はカンザシさんを信じられなくなった。
……
あとがき。
カンザシを放っておけないナミネ。
けれど、カンザシはナミネをヨルクから奪い取ろうとしている。
カナエもアルフォンスと仲違いしてしまったし。
現代編は色々忙しい。
純愛偏差値 未来編 一人称版 63話
《ナミネ》
「はあー、スッキリしたあ。広いトイレですなあ」
えっ、どうしてヨルクさんがいるの!?一応後ろ向いてるけど。ヨルクさんは過保護だけれど、ここまで来ると、何だかもうストーカー。私は手を洗うと逃げるようにトイレを出ようとしたが、ヨルクさんに手を掴まれた。な、何?
「ナミネ、私といる時、楽しくない?」
どうして今そんなことを聞くの?私たち付き合ってもう5ヶ月過ぎたんだよ。
「た、楽しいです!ヨルクさんと趣味の話したり、一緒にいることそのものが楽しいです!どうしてそんなこと聞くんですか?」
「そっか、分かった」
何、この暗い雰囲気。
「わ、私、トイレ出ます」
「待って!」
え、何なの?
ヨルクさんは後ろから私を抱き締めた。そういえば、私、天使の湖に下着脱ぎ捨てたままだったんだ。ヨルクさんの紅葉の香りが強くなる。私はヨルクさんのことで頭がいっぱいになった。
私から離れるとヨルクさんは、私の手を握ったまま無言でトイレを出た。
テーブルに戻ったけれど、気まずい。
「強気なナミネ、あんた髪乱れてる。顔だけヨルク、腰パンになってる。ここレストランだ!弁えろ!」
落ち武者さんに指摘された私は咄嗟に髪を括り直した。ヨルクさんのせいなのに、どうして私まで怒られなきゃいけないの。私は恥ずかしくて俯いた。
「ナミネ、クジラのビーフシチュー可愛いね。分けてあげる」
ヨルクさんは何もなかったかのように料理の写真を撮った。ビーフシチューの上にクジラが浮かび上がっている。私も珍しくて写真に撮った。けれど、トイレの時は、あんなに縋るような態度だったのに、どうして今は普通でいられるのだろう。
「ラルク、食べあいっこしましょうよ」
「セレナール先輩、ストーカーはやめてください」
ラルクはセレナールさんのことを完全に拒否していた。
「セレナールさんて諦め悪いよね」
「ナミネ、今のイジメ兄さんに言いつけてやる!」
セレナールさんは私を目の敵にした。
「ラルク、獣がほざいてるね」
「欲情したメスゴリラだな」
私は思わず笑ってしまった。その瞬間、セレナールさんは水をテーブル全体にかけた。私と、ラルク、落ち武者さんはお皿を持って避けたが、他のメンバーの料理は水浸しになった。
「あーあ、メスゴリラさんやっちゃったね」
アルフォンス王子はカナエさんのこともあってか、セレナールさんを殴り付けた。
「何人の料理に水かけてんの?人の迷惑考えないのかよ!」
アルフォンス王子はセレナールさんを殴り続けた。
「ご、ごめんなさい。許して……」
落ち武者さんは扇子でアルフォンス王子を吹き飛ばした。セレナールさんは大声で泣きはじめた。
「セレナール、何がそんなに気に入らないのよ」
エミリさんはセレナールさんを追いつめる。
「これじゃあ食べられないわ。セレナールって気に入らないことがあればすぐにみんなに迷惑かけるのね」
セナ王女もせっかくの料理を台無しにされてかなり怒っている様子。
「あの、私とラルクと落ち武者さんの料理は無事なので、みんなで分けますか?」
「では、そうします」
「ユメ、そうしよっか」
「そうね」
「はい、僕もそれでいいです」
アヤネさんとユメさん、委員長、カラン王子は分けることに賛成したけど、他のメンバーは機嫌を損ね、注文し直した。オマケにセナ王女はセレナールさんに水をかけた。
セレナールさんはひたすら大泣きしていた。
私とヨルクさんの料理はアヤネさんに分け、落ち武者さんの料理はユメさんと委員長に分け、ラルクの料理はカラン王子に分けた。
はあ、せっかくシェフが一生懸命作ったのに、セレナールさんのせいで一口も食べない料理がいくつもあるよ。この店には申し訳ない気持ちだ。
しかし、セナ王女たちが料理を注文し直したところ、お店側はこちらの落ち度と見なし、注文拒否をした。セナ王女は王女である証を見せたもののお店側の意思は変わらなかった。
「セナ王女、ここはラルクから分けてもらいましょう。少しでも食べておかないと帰りが辛くなります」
「分かったわ」
ミナクさんの説得でセナ王女とミナクさんはラルクから分けてもらった。
「カナエは濡れた料理で構いません」
「私もカラルリと分けるわ」
カナエさんとエミリさん、カラルリさんも仕方なしに水浸しの料理を食べることになったが、アルフォンス王子だけが、納得せずセレナールさんを責め続けた。
「セレナール!水浸しになった料理は全部お前が食べろ!」
「分かったわ」
セレナールさんが水をかけたのは変わらないし、正直同情は出来なかった。けれど、何か引っかかる。セレナールさんが変わってしまったのは、紀元前村から戻ってきてからだ。
皇室にいる時までは誰よりも純粋な人だった。エミリさんも、カナエさんも。
タルリヤさんが元凶だとしか思えない。
落ち武者さんが支払いを終えた後、みんなは不機嫌そうにレストランを出た。
「じゃ、帰る」
みんなは、天使の湖へと向かいはじめた。
市場を通ると可愛らしいアクセサリーがいっぱいある。買いたいけど買えないのが残念。それにしても、古代でもこのように現代でも通用するような商品が手がけられているんだな。古代のハイテクさが伝わってくる。
天使の湖に通じる通路を通ろうとした時、伝説初級武官が現れた。えっ、60人はいる。
「セレナールをここから出すわけにはいかない」
セレナールさんが目的か。
落ち武者さん以外は咄嗟にセレナールさんから離れた。私もヨルクさんを庇いながらセレナールさんから離れた。
「みんな置き去りにしないで!助けて!」
正直置いて行きたい。でも、置いて行くとまた現代が変わってしまいかねない。
私は百人一首を全て投げた。しかし、百人一首が伝説初級武官の回りを回る前に伝説初級武官は百人一首を剣で切り、百人一首は全て地面に落ちた。
嘘でしょ。この時代の伝説初級武官強い。
「伝説武官は古代ほど任務が多かったから現代より強いんだ」
そんな……。いったいどうしたらいいの。
「強気なナミネはエルナと顔だけヨルクを天使の湖まで連れて行け!」
「はい!」
私はヨルクさんとエルナさん、ユメさん、委員長を連れて天使の湖の通路を通った。
天使の湖までは追ってこられない。ヨルクさんを安全な場所に連れてきたのだから戻らなければ。
「ヨルクさん、待っていてください」
「えっ、ナミネ行くの?どうして?ナミネ、ここにいて!」
ヨルクさんは私の手を掴んだ。
「ヨルクさん、全員でここを出なければなりません。私は必ず戻ります!」
私はヨルクさんに掴まれた手を振りほどいた。
「ナミネ、行かないで!!」
泣き出すヨルクさんをよそに私は天使村の町へ戻って行った。
「ラルク、どう?」
「ダメだ。何度百人一首投げてもすぐに落とされてしまう。これだと1人も拘束出来ない。それだけでなく、この時代の時計騎士によって時間進められて、後30分しかない!」
私たちはギリギリのところまで来ている。運が悪ければ、ここに取り残されてしまうかもしれない。私は伝説最上級武官の資格持っているのに伝説初級武官に適わないなんて。それほど現代に比べたら古代は武官を動かす頻度が高く毎日の任務で強くなっているのだろうか。
「みんな、拘束は考えるな!コイツらが怯んだうちにみんなで逃げるぞ!」
「はい、全力を尽くします!」
と行っても、この状況でどうすればいいのか分からない。その時、セナ王女が短剣1つで次々で伝説初級武官を気絶させて行った。後に続かないと!私とラルクとミナクさんは羽子板で伝説初級武官を叩いて気絶させていった。エミリさんは麻痺薬を塗った矢で、伝説初級武官を動けなくさせた。これで全員か。
「みんな、あと8分しかない!天使の湖まで走れ!」
私たちは天使の湖へ繋がる通路を抜けた。
天使の湖ではヨルクさんが泣きながら私の脱ぎ捨てた服を持っていた。あれ、カナエさんまでいたの?とにかく今は、あの途切れた橋まで行かないと!
「ヨルクさん、もう時間がありません!あの途切れた橋まで走りましょう!」
みんなは通って来た途切れた橋に向かって全力疾走した。
しかし、天使の湖を出て橋の近くまで来たところでセレナールさんが倒れた。
「きゃっ!みんな置いていかないで!」
「本当に面倒な女だな」
みんなが走る中、ラルクは吐き捨てた。セレナールさんのことは落ち武者さんが背負った。
残り12秒のところで、みんなは途切れた橋を渡り切った。
「寒っ!」
そうか、今真冬だったんだ。
「ナミネ、パンツ履いて」
「はい」
私がパンツを履いている間にヨルクさんは私に冬用のワンピースとコートを着せた。みんなも服を着ている。って、セレナールさんだけ着てない?
「姉さん、あんた服どうしたんだよ」
「忘れてきたわ」
その時、この寒さとレストランでみんなの水浸しになった料理を1人で食べたせいかセレナールさんはお腹をくだした。
「臭いな。この女迷惑ばかりかけて、今後はメンバーから抜けて欲しい」
カナエさんと仲直り出来ていないアルフォンス王子はセレナールさんを攻撃した。
「とにかく、寒いから早く電車に乗るぞ!」
私たちは天使の湖駅で切符を買い、駅員さんに判子を押してもらうと電車に乗った。
電車の中は温かい。
そうだ。気になることは今答えを知っておこう。私はスピーカーホンにしてタルリヤさんに電話をかけた。
『はい』
「あ、タルリヤさん、聞きたいことがあるんですけど……」
『何かな?』
「遠い昔、タルリヤさんはタイムマシンで皇室に来ましたよね?けれど、タルリヤさんが皇室に来るまでは、セレナールさんもエミリさんもカナエさんも恋愛は順調だったんです。私色々考えたんですけど、タルリヤさんが皇室に来て、みんなを紀元前村に連れて行ってから、セレナールさんたちの恋愛はおかしくなったように思うんです。知っていることがあれば話していただけないでしょうか?」
はぐらかされてしまうだろうか。それでも、今白黒つけないといけない気がする。
『君の言った通りだよ。貧しくてその日その日暮らしの僕の目の前に、ある日突然、未来の人が来た。バイトをすればお金をくれると言われ、僕はすぐに未来へ行った。現代からするとだいたい3500年後だと思う。未来の妖精村に連れて行かれた僕は、人口を減らすよう未来の人に命じられ、僕はタイムマシンで元の時代に戻り、妖精村のカップルを引き裂く任務に着いた。途中で逃げ出したくなったけど、皇帝陛下の命令だと言われ逆らえなかった。セレナールと皇太子様、エミリとアラン、カナエとセイも僕が関係を壊した。でも、生きていくためだったんだ』
あの頃の紀元前村の暮らしはかなり酷いものだった。何日も前のご飯を食べなくてはいけなかったし、さっきの天使村の人みたいに恋愛感情は一切知らず、成り行きで男女は関係を持ち、子孫を残した。
「そうだったんですか。タルリヤさんにも事情がおありだったのですね。今でも人口を減らす任務に就いているんですか?あ、今のターリャさんの写真送って来てもらえますか?」
『うん、今の紀元前村の実家も、あの時と何も変わってない。紀元前村は普通の村へとなって行き、一部の間では色んな研究もされている。けれど、僕が住む町はあの頃のまんまなんだ。だから、妖精村に引っ越した。姉さんはもうセレナールには似てないよ』
まさか、2019年なのに、タルリヤさんが暮らしている町だけ、あの原始的な生活を送っているだなんて!
その時、キクスケさんが現れた。
「お話聞かせてもらいました。タルリヤさんが遠い昔にしたことは規則に反しますので、あの日、皇室にタルリヤさんが来なかったよう書き換え致します。現代のカップル崩壊計画もこちらで阻止させてもらいます。
それと、初代天使村のヨルクさん毒殺事件ですが、調べたところ詳細が分かりました。カンザシさんとセレナールさんの共謀によるものでした。2人はナミネさんとヨルクさんの料理に少しずつ毒を混ぜ、2人が病気になったところでセレナールさんはヨルクさんの看病を、カンザシさんはナミネさんの看病をして、セレナールさんはヨルクさんとカンザシさんはナミネさんと結婚する計画でした。けれど、カンザシさんはヨルクさんの存在を妬み、独断で暗殺しました。カンザシさんはセレナールさんとラルクさんの留守中に家に忍び込み、頭痛に効く薬草を全て附子に変えてしまったのです。何も知らないラルクさんは頭痛を訴えるヨルクさんに煎じた薬をヨルクさんに飲ませ、その夜中、ヨルクさんは突然の心停止で亡くなりました。
それと、先程行かれた天使の湖でのことは、カンザシさんは前の晩にヨルクさんに特殊な惚れ薬と大量の性欲剤を飲ませセレナールさんに恋愛感情を抱き、ナミネさんと別れさせようとしました。けれど、2人が仲直りしたため、カンザシさんは不良を雇い、ある日、ヨルクさんとナミネさんに包丁を突き付け無理矢理別れさせました。
それでは私はタルリヤさんの過去の件を処理して来ますので、これにて失礼」
キクスケさんは去って行った。
横を見ると、ヨルクさんが泣いている。私はヨルクさんの手を握った。タルリヤさんのことはタルリヤさんも生活がかかっていたけれど、カンザシさんがしたことは許せない。私、カンザシさんのこと恨んでしまうかもしれない。実の兄なのに。
「セレナール先輩の人殺し」
「セレナールって最低ね!やっていいことと悪いことがあるでしょう!」
「セレナールが今後このグループに入って来てもみんなで無視する!」
「セレナールは悪魔なのです!」
「セレナールと一緒にいたくない!怖い!」
ラルクとセナ王女、アルフォンス王子、カナエさん、エミリさんはセレナールさんを批難した。
『もしもし、ナミネ?姉さんの画像届いた?』
あ、そうだった。タルリヤさんとの電話中だったんだ。私は慌ててメールを開いた。本当だ。髪は銀髪でショートヘアだけど、全然セレナールさんに似ていない。村の象徴であるセレナールさんは1人だけでなければならないということなのだろうか。それにしても現代のターリャさんは、お世辞にも綺麗とは言い難い。何だか可哀想。
「あ、はい、届きました。セレナールさんとは全然似てませんね。それと、さっきキクスケさんが来て、タルリヤさんはもう今の任務に就くことは出来ません」
『そんな……だったら僕はどうやって食べていけばいいんだ!』
「タルリヤさん、落ち着いてください!生活保護を申請すれば生活出来ます!方法は今送ります」
私は生活保護の手続きをタルリヤさんにメールで送った。
『考えてはみる。とりあえず一旦切るね』
タルリヤさんとの電話は切れた。
すると今度は再びキクスケさんが現れた。
「遠い昔、タルリヤさんが皇室に来たことはなかったことに修正しました。現代は紀元前村に置いてあるタルリヤさんのタイムマシンを回収して、タルリヤさんをカップル崩壊計画の任務から下ろしました。未来の番人にも話をつけ、皇帝陛下は子供を作らないよう呼びかける方針に変えました。以上が報告です」
これでタルリヤさんはもうタイムマシンでの移動が出来なくなる。タルリヤさんにとっては酷だろうけど、仕方のないことだと思う。
「あの、皇室にいたセレナールさんは純粋だったのに、途中からはどうして性格が変わってしまったのでしょうか?」
「妖精は『純』を表す生き物です。恨みや妬み、怒りなどの感情は殆ど持ち合わせていません。しかし、人間は表と裏があります。生きていくために汚い手を使ってでも我が身を大切にし、時に人より優れていると優越感に浸ったり、誰かを支配したりする生き物です。人間になってからのセレナールさんやエミリさんは妖精だった頃の感性を失われたと思われます」
そうなのか。妖精と人間ってそんなにも違うんだ。けれど、今の時代、妖精なんて見たことがない。時代と共に『純』は失われつつあるのかもしれない。
「そうですか」
私は何て答えていいか分からなかった。そして、キクスケさんは去って行った。
けれど、ちょっと待てよ。タルリヤさんは皇室に来なかったよう上書きされたんだよね。だから勿論私の記憶も変えられている。
タルリヤさんは、確かに皇室には来なかった。けれど、あの後、紀元前村から感染病が出たと妖精村に連絡が入り、応援を要求された。皇太子様自ら出向くことでセレナールさんとエミリさんたちも着いていき、紀元前村でセレナールさんたちはタルリヤさんと知り合うことになる。エミリさんはタルリヤさんと浮気をし、紀元前村から戻って来たカラクリ家での歴史は何一つ変わっていない。
番人が動いても歴史は変えられないんだ。
とりあえず私はナルホお兄様とナヤセス殿にキクスケさんから聞かされたことをメールした。
紅葉町駅に着くと、みんなはとりあえずナノハナ家に向かうことになった。
ナノハナ家に着くなり、セレナールさんはお風呂に入り、セレナールさんの汚れた水着は使用人が洗った。
第4居間ではみんながクタクタだった。
「じゃ、今からこれ見てもらう」
え、休めないの?見るって何を?
落ち武者さんは、映像をテレビで再生した。
映像は妖精村半ば頃だろうか。遠い昔の高校生くらいのミナクさんが映っていた。
ミナクさんは、同級生だろうアヤネさんと交際をしているようだった。ミナクさんは、いつも勉強をアヤネさんに教えていた。アヤネさんのアパートは築50年ほどの古い1Kのアパートだったが、それでも、ミナクさんもアヤネさんも幸せそうだった。
2人は外を歩く時は必ず手を繋いでいた。
アヤネさんはレストランのウエイトレスのバイトをしていて、アヤネさんがバイトで遅くなる日は、ミナクさんが合鍵でアヤネさんのアパートで料理を作りアヤネさんの帰りを待っていた。
学校でのお弁当も毎日アヤネさんの分もミナクさんが作っていて、アヤネさんはミナクさんの手料理を喜んで食べていた。
その関係はずっと続くかのように思われた。
けれど、ある日からアヤネさんは風邪で学校を休むようになり、心配になったミナクさんはドリスポや熱冷まし、その他ゼリーなどの差し入れを持って、合鍵でアヤネさんのアパートに入った。
するとアヤネさんは婚約後だろうカラルリさんと布団の中でことの最中だった。ミナクさんはその場に崩れ落ちた。
『嘘だろ……。アヤネさん、なんで?』
咄嗟にアヤネさんとカラルリさんは服を着た。
『ミナク、違うの。少し相談に乗ってもらっていただけよ』
アヤネさんが言うものの、ミナクさんはショックのあまり気を失いそうになっていた。
『アヤネさん、いつから?』
『ミナク、落ち着いて』
『いつからだったの?』
『本当に誤解だから!』
アヤネさんはどうにか誤魔化そうとしていた。
『アヤネさん、その人誰?何故私を裏切ったの?』
『ミナク、お願い信じて!何もしてない!』
『答えてアヤネさん。いつから私を裏切っていたの?理由は?』
アヤネさんは黙り込んだ。
『そっか、もういい』
『待って!2ヶ月前から!いっときの気の迷いだった!どうか許して』
アヤネさんはミナクさんにすがりついた。
『酷いねアヤネさん。もうここには来ないし学校でも話さない』
ミナクさんは合鍵を置いてアパートを出た。
……
あとがき。
レンタル屋さんに行くと、映画 タイムマシンの横に映画 タイムラインがあるんですけど、2つは相反する内容なんです。
私はタイムライン派でしたが、今となってはタイムマシンの深みが分かるようになってきたと思います。
何より、私の書く小説は絶対に歴史は変えられないようになっていますから。歴史を変える小説からはじまってからの今の小説。
私も年月が経って物事の考え方が変わったのかもしれません。
ちなみに、私はアドラー心理学よりフロイト学を信じているので、物語も過去を遡って答えを探すように進めています。
ミナクとアヤネの映像の続きは次回です。
《ナミネ》
「はあー、スッキリしたあ。広いトイレですなあ」
えっ、どうしてヨルクさんがいるの!?一応後ろ向いてるけど。ヨルクさんは過保護だけれど、ここまで来ると、何だかもうストーカー。私は手を洗うと逃げるようにトイレを出ようとしたが、ヨルクさんに手を掴まれた。な、何?
「ナミネ、私といる時、楽しくない?」
どうして今そんなことを聞くの?私たち付き合ってもう5ヶ月過ぎたんだよ。
「た、楽しいです!ヨルクさんと趣味の話したり、一緒にいることそのものが楽しいです!どうしてそんなこと聞くんですか?」
「そっか、分かった」
何、この暗い雰囲気。
「わ、私、トイレ出ます」
「待って!」
え、何なの?
ヨルクさんは後ろから私を抱き締めた。そういえば、私、天使の湖に下着脱ぎ捨てたままだったんだ。ヨルクさんの紅葉の香りが強くなる。私はヨルクさんのことで頭がいっぱいになった。
私から離れるとヨルクさんは、私の手を握ったまま無言でトイレを出た。
テーブルに戻ったけれど、気まずい。
「強気なナミネ、あんた髪乱れてる。顔だけヨルク、腰パンになってる。ここレストランだ!弁えろ!」
落ち武者さんに指摘された私は咄嗟に髪を括り直した。ヨルクさんのせいなのに、どうして私まで怒られなきゃいけないの。私は恥ずかしくて俯いた。
「ナミネ、クジラのビーフシチュー可愛いね。分けてあげる」
ヨルクさんは何もなかったかのように料理の写真を撮った。ビーフシチューの上にクジラが浮かび上がっている。私も珍しくて写真に撮った。けれど、トイレの時は、あんなに縋るような態度だったのに、どうして今は普通でいられるのだろう。
「ラルク、食べあいっこしましょうよ」
「セレナール先輩、ストーカーはやめてください」
ラルクはセレナールさんのことを完全に拒否していた。
「セレナールさんて諦め悪いよね」
「ナミネ、今のイジメ兄さんに言いつけてやる!」
セレナールさんは私を目の敵にした。
「ラルク、獣がほざいてるね」
「欲情したメスゴリラだな」
私は思わず笑ってしまった。その瞬間、セレナールさんは水をテーブル全体にかけた。私と、ラルク、落ち武者さんはお皿を持って避けたが、他のメンバーの料理は水浸しになった。
「あーあ、メスゴリラさんやっちゃったね」
アルフォンス王子はカナエさんのこともあってか、セレナールさんを殴り付けた。
「何人の料理に水かけてんの?人の迷惑考えないのかよ!」
アルフォンス王子はセレナールさんを殴り続けた。
「ご、ごめんなさい。許して……」
落ち武者さんは扇子でアルフォンス王子を吹き飛ばした。セレナールさんは大声で泣きはじめた。
「セレナール、何がそんなに気に入らないのよ」
エミリさんはセレナールさんを追いつめる。
「これじゃあ食べられないわ。セレナールって気に入らないことがあればすぐにみんなに迷惑かけるのね」
セナ王女もせっかくの料理を台無しにされてかなり怒っている様子。
「あの、私とラルクと落ち武者さんの料理は無事なので、みんなで分けますか?」
「では、そうします」
「ユメ、そうしよっか」
「そうね」
「はい、僕もそれでいいです」
アヤネさんとユメさん、委員長、カラン王子は分けることに賛成したけど、他のメンバーは機嫌を損ね、注文し直した。オマケにセナ王女はセレナールさんに水をかけた。
セレナールさんはひたすら大泣きしていた。
私とヨルクさんの料理はアヤネさんに分け、落ち武者さんの料理はユメさんと委員長に分け、ラルクの料理はカラン王子に分けた。
はあ、せっかくシェフが一生懸命作ったのに、セレナールさんのせいで一口も食べない料理がいくつもあるよ。この店には申し訳ない気持ちだ。
しかし、セナ王女たちが料理を注文し直したところ、お店側はこちらの落ち度と見なし、注文拒否をした。セナ王女は王女である証を見せたもののお店側の意思は変わらなかった。
「セナ王女、ここはラルクから分けてもらいましょう。少しでも食べておかないと帰りが辛くなります」
「分かったわ」
ミナクさんの説得でセナ王女とミナクさんはラルクから分けてもらった。
「カナエは濡れた料理で構いません」
「私もカラルリと分けるわ」
カナエさんとエミリさん、カラルリさんも仕方なしに水浸しの料理を食べることになったが、アルフォンス王子だけが、納得せずセレナールさんを責め続けた。
「セレナール!水浸しになった料理は全部お前が食べろ!」
「分かったわ」
セレナールさんが水をかけたのは変わらないし、正直同情は出来なかった。けれど、何か引っかかる。セレナールさんが変わってしまったのは、紀元前村から戻ってきてからだ。
皇室にいる時までは誰よりも純粋な人だった。エミリさんも、カナエさんも。
タルリヤさんが元凶だとしか思えない。
落ち武者さんが支払いを終えた後、みんなは不機嫌そうにレストランを出た。
「じゃ、帰る」
みんなは、天使の湖へと向かいはじめた。
市場を通ると可愛らしいアクセサリーがいっぱいある。買いたいけど買えないのが残念。それにしても、古代でもこのように現代でも通用するような商品が手がけられているんだな。古代のハイテクさが伝わってくる。
天使の湖に通じる通路を通ろうとした時、伝説初級武官が現れた。えっ、60人はいる。
「セレナールをここから出すわけにはいかない」
セレナールさんが目的か。
落ち武者さん以外は咄嗟にセレナールさんから離れた。私もヨルクさんを庇いながらセレナールさんから離れた。
「みんな置き去りにしないで!助けて!」
正直置いて行きたい。でも、置いて行くとまた現代が変わってしまいかねない。
私は百人一首を全て投げた。しかし、百人一首が伝説初級武官の回りを回る前に伝説初級武官は百人一首を剣で切り、百人一首は全て地面に落ちた。
嘘でしょ。この時代の伝説初級武官強い。
「伝説武官は古代ほど任務が多かったから現代より強いんだ」
そんな……。いったいどうしたらいいの。
「強気なナミネはエルナと顔だけヨルクを天使の湖まで連れて行け!」
「はい!」
私はヨルクさんとエルナさん、ユメさん、委員長を連れて天使の湖の通路を通った。
天使の湖までは追ってこられない。ヨルクさんを安全な場所に連れてきたのだから戻らなければ。
「ヨルクさん、待っていてください」
「えっ、ナミネ行くの?どうして?ナミネ、ここにいて!」
ヨルクさんは私の手を掴んだ。
「ヨルクさん、全員でここを出なければなりません。私は必ず戻ります!」
私はヨルクさんに掴まれた手を振りほどいた。
「ナミネ、行かないで!!」
泣き出すヨルクさんをよそに私は天使村の町へ戻って行った。
「ラルク、どう?」
「ダメだ。何度百人一首投げてもすぐに落とされてしまう。これだと1人も拘束出来ない。それだけでなく、この時代の時計騎士によって時間進められて、後30分しかない!」
私たちはギリギリのところまで来ている。運が悪ければ、ここに取り残されてしまうかもしれない。私は伝説最上級武官の資格持っているのに伝説初級武官に適わないなんて。それほど現代に比べたら古代は武官を動かす頻度が高く毎日の任務で強くなっているのだろうか。
「みんな、拘束は考えるな!コイツらが怯んだうちにみんなで逃げるぞ!」
「はい、全力を尽くします!」
と行っても、この状況でどうすればいいのか分からない。その時、セナ王女が短剣1つで次々で伝説初級武官を気絶させて行った。後に続かないと!私とラルクとミナクさんは羽子板で伝説初級武官を叩いて気絶させていった。エミリさんは麻痺薬を塗った矢で、伝説初級武官を動けなくさせた。これで全員か。
「みんな、あと8分しかない!天使の湖まで走れ!」
私たちは天使の湖へ繋がる通路を抜けた。
天使の湖ではヨルクさんが泣きながら私の脱ぎ捨てた服を持っていた。あれ、カナエさんまでいたの?とにかく今は、あの途切れた橋まで行かないと!
「ヨルクさん、もう時間がありません!あの途切れた橋まで走りましょう!」
みんなは通って来た途切れた橋に向かって全力疾走した。
しかし、天使の湖を出て橋の近くまで来たところでセレナールさんが倒れた。
「きゃっ!みんな置いていかないで!」
「本当に面倒な女だな」
みんなが走る中、ラルクは吐き捨てた。セレナールさんのことは落ち武者さんが背負った。
残り12秒のところで、みんなは途切れた橋を渡り切った。
「寒っ!」
そうか、今真冬だったんだ。
「ナミネ、パンツ履いて」
「はい」
私がパンツを履いている間にヨルクさんは私に冬用のワンピースとコートを着せた。みんなも服を着ている。って、セレナールさんだけ着てない?
「姉さん、あんた服どうしたんだよ」
「忘れてきたわ」
その時、この寒さとレストランでみんなの水浸しになった料理を1人で食べたせいかセレナールさんはお腹をくだした。
「臭いな。この女迷惑ばかりかけて、今後はメンバーから抜けて欲しい」
カナエさんと仲直り出来ていないアルフォンス王子はセレナールさんを攻撃した。
「とにかく、寒いから早く電車に乗るぞ!」
私たちは天使の湖駅で切符を買い、駅員さんに判子を押してもらうと電車に乗った。
電車の中は温かい。
そうだ。気になることは今答えを知っておこう。私はスピーカーホンにしてタルリヤさんに電話をかけた。
『はい』
「あ、タルリヤさん、聞きたいことがあるんですけど……」
『何かな?』
「遠い昔、タルリヤさんはタイムマシンで皇室に来ましたよね?けれど、タルリヤさんが皇室に来るまでは、セレナールさんもエミリさんもカナエさんも恋愛は順調だったんです。私色々考えたんですけど、タルリヤさんが皇室に来て、みんなを紀元前村に連れて行ってから、セレナールさんたちの恋愛はおかしくなったように思うんです。知っていることがあれば話していただけないでしょうか?」
はぐらかされてしまうだろうか。それでも、今白黒つけないといけない気がする。
『君の言った通りだよ。貧しくてその日その日暮らしの僕の目の前に、ある日突然、未来の人が来た。バイトをすればお金をくれると言われ、僕はすぐに未来へ行った。現代からするとだいたい3500年後だと思う。未来の妖精村に連れて行かれた僕は、人口を減らすよう未来の人に命じられ、僕はタイムマシンで元の時代に戻り、妖精村のカップルを引き裂く任務に着いた。途中で逃げ出したくなったけど、皇帝陛下の命令だと言われ逆らえなかった。セレナールと皇太子様、エミリとアラン、カナエとセイも僕が関係を壊した。でも、生きていくためだったんだ』
あの頃の紀元前村の暮らしはかなり酷いものだった。何日も前のご飯を食べなくてはいけなかったし、さっきの天使村の人みたいに恋愛感情は一切知らず、成り行きで男女は関係を持ち、子孫を残した。
「そうだったんですか。タルリヤさんにも事情がおありだったのですね。今でも人口を減らす任務に就いているんですか?あ、今のターリャさんの写真送って来てもらえますか?」
『うん、今の紀元前村の実家も、あの時と何も変わってない。紀元前村は普通の村へとなって行き、一部の間では色んな研究もされている。けれど、僕が住む町はあの頃のまんまなんだ。だから、妖精村に引っ越した。姉さんはもうセレナールには似てないよ』
まさか、2019年なのに、タルリヤさんが暮らしている町だけ、あの原始的な生活を送っているだなんて!
その時、キクスケさんが現れた。
「お話聞かせてもらいました。タルリヤさんが遠い昔にしたことは規則に反しますので、あの日、皇室にタルリヤさんが来なかったよう書き換え致します。現代のカップル崩壊計画もこちらで阻止させてもらいます。
それと、初代天使村のヨルクさん毒殺事件ですが、調べたところ詳細が分かりました。カンザシさんとセレナールさんの共謀によるものでした。2人はナミネさんとヨルクさんの料理に少しずつ毒を混ぜ、2人が病気になったところでセレナールさんはヨルクさんの看病を、カンザシさんはナミネさんの看病をして、セレナールさんはヨルクさんとカンザシさんはナミネさんと結婚する計画でした。けれど、カンザシさんはヨルクさんの存在を妬み、独断で暗殺しました。カンザシさんはセレナールさんとラルクさんの留守中に家に忍び込み、頭痛に効く薬草を全て附子に変えてしまったのです。何も知らないラルクさんは頭痛を訴えるヨルクさんに煎じた薬をヨルクさんに飲ませ、その夜中、ヨルクさんは突然の心停止で亡くなりました。
それと、先程行かれた天使の湖でのことは、カンザシさんは前の晩にヨルクさんに特殊な惚れ薬と大量の性欲剤を飲ませセレナールさんに恋愛感情を抱き、ナミネさんと別れさせようとしました。けれど、2人が仲直りしたため、カンザシさんは不良を雇い、ある日、ヨルクさんとナミネさんに包丁を突き付け無理矢理別れさせました。
それでは私はタルリヤさんの過去の件を処理して来ますので、これにて失礼」
キクスケさんは去って行った。
横を見ると、ヨルクさんが泣いている。私はヨルクさんの手を握った。タルリヤさんのことはタルリヤさんも生活がかかっていたけれど、カンザシさんがしたことは許せない。私、カンザシさんのこと恨んでしまうかもしれない。実の兄なのに。
「セレナール先輩の人殺し」
「セレナールって最低ね!やっていいことと悪いことがあるでしょう!」
「セレナールが今後このグループに入って来てもみんなで無視する!」
「セレナールは悪魔なのです!」
「セレナールと一緒にいたくない!怖い!」
ラルクとセナ王女、アルフォンス王子、カナエさん、エミリさんはセレナールさんを批難した。
『もしもし、ナミネ?姉さんの画像届いた?』
あ、そうだった。タルリヤさんとの電話中だったんだ。私は慌ててメールを開いた。本当だ。髪は銀髪でショートヘアだけど、全然セレナールさんに似ていない。村の象徴であるセレナールさんは1人だけでなければならないということなのだろうか。それにしても現代のターリャさんは、お世辞にも綺麗とは言い難い。何だか可哀想。
「あ、はい、届きました。セレナールさんとは全然似てませんね。それと、さっきキクスケさんが来て、タルリヤさんはもう今の任務に就くことは出来ません」
『そんな……だったら僕はどうやって食べていけばいいんだ!』
「タルリヤさん、落ち着いてください!生活保護を申請すれば生活出来ます!方法は今送ります」
私は生活保護の手続きをタルリヤさんにメールで送った。
『考えてはみる。とりあえず一旦切るね』
タルリヤさんとの電話は切れた。
すると今度は再びキクスケさんが現れた。
「遠い昔、タルリヤさんが皇室に来たことはなかったことに修正しました。現代は紀元前村に置いてあるタルリヤさんのタイムマシンを回収して、タルリヤさんをカップル崩壊計画の任務から下ろしました。未来の番人にも話をつけ、皇帝陛下は子供を作らないよう呼びかける方針に変えました。以上が報告です」
これでタルリヤさんはもうタイムマシンでの移動が出来なくなる。タルリヤさんにとっては酷だろうけど、仕方のないことだと思う。
「あの、皇室にいたセレナールさんは純粋だったのに、途中からはどうして性格が変わってしまったのでしょうか?」
「妖精は『純』を表す生き物です。恨みや妬み、怒りなどの感情は殆ど持ち合わせていません。しかし、人間は表と裏があります。生きていくために汚い手を使ってでも我が身を大切にし、時に人より優れていると優越感に浸ったり、誰かを支配したりする生き物です。人間になってからのセレナールさんやエミリさんは妖精だった頃の感性を失われたと思われます」
そうなのか。妖精と人間ってそんなにも違うんだ。けれど、今の時代、妖精なんて見たことがない。時代と共に『純』は失われつつあるのかもしれない。
「そうですか」
私は何て答えていいか分からなかった。そして、キクスケさんは去って行った。
けれど、ちょっと待てよ。タルリヤさんは皇室に来なかったよう上書きされたんだよね。だから勿論私の記憶も変えられている。
タルリヤさんは、確かに皇室には来なかった。けれど、あの後、紀元前村から感染病が出たと妖精村に連絡が入り、応援を要求された。皇太子様自ら出向くことでセレナールさんとエミリさんたちも着いていき、紀元前村でセレナールさんたちはタルリヤさんと知り合うことになる。エミリさんはタルリヤさんと浮気をし、紀元前村から戻って来たカラクリ家での歴史は何一つ変わっていない。
番人が動いても歴史は変えられないんだ。
とりあえず私はナルホお兄様とナヤセス殿にキクスケさんから聞かされたことをメールした。
紅葉町駅に着くと、みんなはとりあえずナノハナ家に向かうことになった。
ナノハナ家に着くなり、セレナールさんはお風呂に入り、セレナールさんの汚れた水着は使用人が洗った。
第4居間ではみんながクタクタだった。
「じゃ、今からこれ見てもらう」
え、休めないの?見るって何を?
落ち武者さんは、映像をテレビで再生した。
映像は妖精村半ば頃だろうか。遠い昔の高校生くらいのミナクさんが映っていた。
ミナクさんは、同級生だろうアヤネさんと交際をしているようだった。ミナクさんは、いつも勉強をアヤネさんに教えていた。アヤネさんのアパートは築50年ほどの古い1Kのアパートだったが、それでも、ミナクさんもアヤネさんも幸せそうだった。
2人は外を歩く時は必ず手を繋いでいた。
アヤネさんはレストランのウエイトレスのバイトをしていて、アヤネさんがバイトで遅くなる日は、ミナクさんが合鍵でアヤネさんのアパートで料理を作りアヤネさんの帰りを待っていた。
学校でのお弁当も毎日アヤネさんの分もミナクさんが作っていて、アヤネさんはミナクさんの手料理を喜んで食べていた。
その関係はずっと続くかのように思われた。
けれど、ある日からアヤネさんは風邪で学校を休むようになり、心配になったミナクさんはドリスポや熱冷まし、その他ゼリーなどの差し入れを持って、合鍵でアヤネさんのアパートに入った。
するとアヤネさんは婚約後だろうカラルリさんと布団の中でことの最中だった。ミナクさんはその場に崩れ落ちた。
『嘘だろ……。アヤネさん、なんで?』
咄嗟にアヤネさんとカラルリさんは服を着た。
『ミナク、違うの。少し相談に乗ってもらっていただけよ』
アヤネさんが言うものの、ミナクさんはショックのあまり気を失いそうになっていた。
『アヤネさん、いつから?』
『ミナク、落ち着いて』
『いつからだったの?』
『本当に誤解だから!』
アヤネさんはどうにか誤魔化そうとしていた。
『アヤネさん、その人誰?何故私を裏切ったの?』
『ミナク、お願い信じて!何もしてない!』
『答えてアヤネさん。いつから私を裏切っていたの?理由は?』
アヤネさんは黙り込んだ。
『そっか、もういい』
『待って!2ヶ月前から!いっときの気の迷いだった!どうか許して』
アヤネさんはミナクさんにすがりついた。
『酷いねアヤネさん。もうここには来ないし学校でも話さない』
ミナクさんは合鍵を置いてアパートを出た。
……
あとがき。
レンタル屋さんに行くと、映画 タイムマシンの横に映画 タイムラインがあるんですけど、2つは相反する内容なんです。
私はタイムライン派でしたが、今となってはタイムマシンの深みが分かるようになってきたと思います。
何より、私の書く小説は絶対に歴史は変えられないようになっていますから。歴史を変える小説からはじまってからの今の小説。
私も年月が経って物事の考え方が変わったのかもしれません。
ちなみに、私はアドラー心理学よりフロイト学を信じているので、物語も過去を遡って答えを探すように進めています。
ミナクとアヤネの映像の続きは次回です。