日常のこととかオリジナル小説のこととか。
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ashita
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地主(土地貸してます)
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漫画やアニメを見るのが好きです。最推しはフーディーニ ♡
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ブログ、もう書かないと思ってました。
けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。
小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。
純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。
ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。
小説、ぼちぼちマイペースに書いてゆきます。
よろしくお願い致します。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
お知らせ。
イラストは現在「ナノハナ家の日常」に載せております。サイドバーにリンクあります。
また、「カラクリよろずや」にてフリーイラスト素材について考えるブログはじめました✩.*˚
不定期に更新していく予定です。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
模倣・無断転載などは、ご遠慮ください。
ブログの小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
小説・純愛偏差値に関しましては、武家名・貴族名(程度による) / 及び、武官の階級 / 扇子・羽子板・花札・百人一首・紙飛行機などのアイテム使用方法の模倣の一切を禁じております。
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X @kigenzen1874
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現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。
純愛偏差値は今年100話を迎えました。
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が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
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〈資格履歴〉
2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
→漢方コーディネーター 合格
→薬膳調整師 合格
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〈資格証明バナー〉

2008年09月09日
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2012年10月25日
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2025年03月07日
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2025年04月17日
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2025年05月19日
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2025年07月01日
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〈資格証明バナー〉

純愛偏差値 未来編 一人称版 73話
《ラルク》
恋は盲目と言うが、実際そうなのかもしれない。ナミネが泣きそうになりながら、ナルホさんから死んでもいいと言われたって言った時は正直驚いた。恋愛には少しも興味なさそうなナルホさんが、心奪われたミネスさんを失いたくないあまりに、前を見失ってしまうだなんて、信じられなかった。
でも、僕もセレナール先輩に本気だった頃はナミネのことを傷付けてしまっていた。セレナール先輩の本性を知ってからは、すっかり目が覚めてしまったけれど。今となっては物凄く後悔している。僕は、セレナール先輩には確かに一目惚れしたけれど、本当に好きだったのは、ずっと僕に寄り添ってくれていたナミネだと気付かされた。でも、その頃にはもう遅かった。
せっかく僕を好きでいてくれたナミネはヨルクお兄様と交際してしまった。
そんな僕は今、二度目の桜木町のカフェにいる。
二度目。そう、僕らは一度ここに来て、キクスケさんに今朝の7時に時間を巻き戻してもらったのだ。
「最初は恩人であるセナ王女を心から愛してた。けれど、だんだん交際当初のようには見れなくなって、はじめてミネスを見た時、恋に落ちた。このような感情を抱いたのははじめてだ。ミネスのことが好きで好きでたまらない」
もういっそのことミネスさんと交際すればいいと思う。セナ王女のことは本気かと思っていたのに、結局、時間が経てば飽きてしまったのか。
「でも、それってセナさんはどうなるの?セナさんはミナクとの別れを認めないと思うわ」
いくら認めなくても人の心は縛れない。
「ていうか、甘えセナと別れて、お子ちゃまミネスと交際出来なかったらどうするんだよ」
「それが怖くてセナ王女とは別れるに別れられない。でも、女として見れなくて交際も辛い。早くミネスの温もりに包まれたい」
どれだけ馬鹿なんだ。1人になりたくないから好きでもない女と無理に交際しても続かないし、関係は今よりもっと悪くなる。
「あの、ミネスさんと交際出来る可能性が100%でなければ私はセナ王女とは別れないほうがいいと思うんです」
時間稼ぎか。けれど、どれだけ考えても抜け道などない気がするが。
「いや、それは流石に私のメンタルが持たない」
だったら、どうしろと言うんだよ。その時、落ち武者さんがある映像を見せた。
映像はリアルタイムだろうものだった。
ナルホさんとミネスさんが庭園を歩いている。
『ナルホ……私ナルホと交際したい!』
『分かった』
ナルホさんはすんなりミネスさんの告白を受け入れた。
『でも、ナミネはどうするの?』
『そうだね、今のナミネは君のこと嫌っているし、僕との交際は絶対認めないと思う。本当に死ぬかもしれない。でも、僕は、苦しいのにナミネは無理に生きなくてもいいと思うんだ。死にたいなら死んだらいいと思うんだ。それがナミネの幸せだと思ってる。今は君を支えることに全力を尽くすよ。ナミネのことは気にしなくていいよ』
恋は盲目と言うが、ナルホさんが恋愛でこんなにも残酷になれるなんて、少し痛々しく感じる。ナミネは真剣な表情をして見ている。
『ナルホ、ありがとう!嬉しい!私、ナルホと幸せになる!』
ミネスさんはナルホさんに抱き着いた。
落ち武者さんは一旦ここで映像を止めた。
「ミナク、お子ちゃまミネスはもう平和ボケなナルホの女だ!甘えセナと別れてもお子ちゃまミネスとは交際出来ないからね?」
「そんな……ナルホの野郎、いつの間に口説きやがったんだ。これじゃあ、セナ王女と別れられないじゃないか」
どうしてこんなにも見苦しいのだろう。どれだけ足掻いてもミネスさんとは一緒にはなれないのに。
「じゃ、今からナノハ依存ズルエヌに送るメール文書打つ」
落ち武者さんはズルエヌさんにメールを打ちはじめた。このメールがトドメになるわけか。今日は普通の話し合いのつもりが、人生をかけた話し合いになってしまった。
「じゃ、これ送る」
『ナノハ依存ズルエヌ。今すぐナノハと別れてミドリと付き合え!言わせてもらうけど、あんたの妹、これだけのことしたんだけど?どう償うつもり?まさかこのまま見て見ぬふりして僕の大切な人の人生奪う気じゃないよね?そんなことすると、あんたの大切な妹の映像と画像全て世の中にばら撒くよ?世間の目に晒されるか少年院に入れるか今すぐ答え出せ!』
いきなり知らない人からこれを送られてきたらかなりキツイだろうな。けれど、ミネスさんのしたことは犯罪だし、正直償って欲しいというのが本音。
少しすると返信が来たようだ。
「返信来た」
『妹が多大なご迷惑をおかけして申し訳ありません。ナノハには今別れるメールを送りました。妹は少年院に入れます。近々そちらに謝罪に行きます』
かなり真面目な人だな。まあ、ミネスさんがこのまま少年院で償ってくれるならナミネも安心して毎日を過ごせると思う。
落ち武者さんは続きを再生した。
映像には、地下室の拷問部屋にてナノハさんとレイカさん、ミネスさん、ナルホさん、その他武官がいた。
『ナルホ、今ズルエヌからメール来た。その女との交際は認めないよ』
ナノハさんはそれなりに怒っている様子だった。
『ナノハお姉様、僕は自分の人生は自分で決めます。ミネスとは別れません』
ナノハさんはナルホさんを引っぱたいた。
『レイカさん、お願い出来るかしら』
『ナノハ、本当にいいの?後戻り出来ないわよ?」
「構いません。ナルホがこんな女に騙されナミネを傷付けるなら現実を見せて目を覚まさせます』
『分かったわ』
レイカさんはミネスさんの拘束を解いて、ミネスさんの服を脱がした。
『やってちょうだい』
『ミネス!ナノハお姉様、やめてください!僕はただミネスと交際したいだけです!ナミネはこの世が苦しい子だから死にたいなら死ねばいいと思っただけです!ミネスをここで傷付けたらナノハお姉様に復讐します』
『やれるもんならやってみなさい、ナルホ』
ミネスさんは、悲鳴と共に5人の武官にイヤガラセされた。
『第3破られたのに私生きてる。死にたいのに死ねない!ナルホ、君を一生恨む!』
『ミネス!僕は何もしてない!ミネスのことは一生かけて僕が支える!』
ミネスさんはミドリさんの時同様、無惨な状態なのに、何もなかったかのように動いている。
『ナルホ、よくも私をハメてくれたね!お兄ちゃんに言って、ナルホの今後の幸せ全部奪ってやる!』
『ミネス、僕は本当にミネスを幸せにしたくて交際した!』
ナルホさんは突然の事態についていけないのか、大粒の涙を流した。
あれ、ナルホさんの背中にヘクタナが貼られてある。
落ち武者さんは停止ボタンを押した。
「ラルク、ヘクタナだよ!」
「そうだな。誰かが貼ったのか、自然と貼り付いたのか」
ヘクタナ。貼られた者は、貼った者を主君とし、何がなんでも従い続ける。
「ミネスが、そっとしておいて欲しいと何度も訴えるナミネさんを傷付けてしまったことは本当に申し訳なく思っています。けれど、あんな愚かな子でも僕の妹なんです」
そうだよな。ズームさんからして見れば1番見たくないし、このままにはしないだろう。その時、ヨルクお兄様とダンゴロさんが来た。
「ヨルクさん!」
「ダンゴロさん、正月からナミネさんとミネスが仲違いした部分だけ省いてください」
ズームさんは泣きながら訴えた。
「別にいいけど。それじゃあ、2人が仲違いした場面は別のもので埋めておく。ただ、忠告するなら、今後2人が仲違いしたら、また元に逆戻りだよ。辛いだろうけど、ナミネはミネスに攻撃されても我慢するしかないね」
そんな、またナミネが犠牲になるなんて。どうしてこの世はこれほどまでに理不尽なのだろう。
「分かりました。ズームさんのためにも、私が我慢します!その変わり、ヨルクさんには誰もが手出し出来ないようヨルクさんの身の安全は確保してもらえないでしょうか?」
ナミネはいつも自分のことより、他人を心配する。
「分かった。じゃあ、ヨルクの身の安全の確保はしとく。今言うけど、ヘクタナはカンザシがミネスに貼ろうとして間違えてナルホに貼ったんだよ。それから初代天使村でヨルクを毒殺した中にはミネスもいるよ。だから、ナミネのイライラは簡単には治まらないだろうね」
まさか、ミネスさんがヨルクお兄様の毒殺に協力したのか?もう何がなんだか分からなくなってきた。
「エロじじい、どういうことだ!後、強気なナミネの精神状態の安定も確保しろ!ズームの背中のアザと効力はなくしたままにしろ!」
「カンザシとセレナールがヨルク毒殺計画を立てた時、お金のないカンザシはミネスに計画を打ち明け共犯者にした上で毒草買わせ、何かあれば全てミネスに罪を擦り付けるつもりだった。けれど、ミネスは他の村に逃げた。君の力量ならナミネの精神状態安定の確保は40%だね。ズームの背中のアザと効力が消えてるのはラルクがセレナールと別れないまでね。別れたら元に戻るからね」
ミネスさんは毒草を買っただけ。それでも計画は知っている。いざとなればカンザシさんの味方につくということか。それに40%は低すぎる。ないよりマシだが。何となくミネスさんは元に戻ったに対して、これからはナミネのみ我慢というのは不公平だ。
「じゃあ、頼みは聞いたから戻るね」
ダンゴロさんは女神の湖に戻って行った。
「なあ、ズーム!お子ちゃまミネスは元に戻って今後も強気なナミネイジメるのに対して強気なナミネはそれ我慢して調和保つのは不公平だろ!あんた、自分の妹さえよければ他はどうでもいいのかよ!今すぐセリル呼ぶぞ!」
落ち武者さんもここは出るとこ出るか。
「ミネスのことは本当に申し訳なく思っています。ただ、僕はナミネさんを犠牲にはしません。ミネスがナミネさんを攻撃したら必ず庇います」
「だったら、なんで今まで傍観してた!セリル呼ぶぞ!」
「映像のような事態になるとは思っていませんでした。反省しています。今後はナミネさんを全力で守ります」
僕と落ち武者さんとズームさんでナミネを守ればナミネは壊れずに済むかもしれない。
とりあえず、正月、紅葉神社でヨルクお兄様がイタズラ犯に間違えられたことは偶然通りかかったカナコさんが証拠がないなら連れて行かせないとヨルクお兄様を庇い、ミィミさんは泣きながら諦めて去って行った。
ライオンのオリの鍵のことは、そのまま僕たちがヨルクお兄様を助けた。
グルグル妖精さんのマンションでミネスさんがナミネを叩いたことは、ナミネが泣きながら僕の手を握り、僕と朝までカラオケにいた。
ミネスさんが今日ナミネを襲わせる計画は、そのまま朝早く出て回避して来た。
今のナルホさんとミネスさんの関係は友達と言ったところだろうか。ミネスさんはカンザシさんにベタ惚れで、ズームさんの背中のアザが消えたことも知らずニンジャ妖精さんのマンションの家賃払っている。
過去は微妙に変えられている。問題はこの先だ。
今になって僕はセレナール先輩との恋愛を重視したあまり、伝説武官に辿り着けなかったことを後悔した。
僕が強くなってナミネを守らなければ。
僕は念の為、変えられる前の現実の映像をナヤセスさんとナルホさんにメールした。
『セルファからも同じ内容のメールが来たけど、僕はナミネにあんなこと言ったりはしないよ。確かな確証を掴めるまで待ってもらえるかな?』
『分かりました』
けれど、ナルホさんとミネスさんは誰が見ても惹かれ合っていた。2人が交際するもの時間の問題だろう。
「じゃ、話し合いの続きする」
その時、ヨルクお兄様が泣き崩れた。
「ナミネ……どうして……自分のお願いしないで、私の安全の確保なんて言ったの……もうナミネに犠牲になって欲しくない」
「ヨルクさん、私はヨルクさんに無事でいて欲しいんです」
こういうやり取りは気に食わない。僕がナミネの彼氏だったらナミネは自分のことだけ考えていられたのに。
「顔だけヨルク、今日はミナクと甘えセナのことについて話に来た。だから、泣いてないで、あんたもメニュー注文して話し合いに加われ!」
「ラルク、お腹すいたよ」
そういえば、ここに来てから何も注文していなかった。
「注文しろよ。ほら、ここにトマト妖精のパンケーキあるぞ」
「じゃあ、それにする」
ナミネが注文すると共に、みんなも同じものを注文した。
「言っておくけど、綺麗に別れないと一目惚れカラルリみたいなことになるぞ!」
カラルリ先輩……。あれはもう悲劇としか言いようがない。
「助けて欲しい」
「ミナクさんはセナ王女を女として見れなくなったことが原因で別れたいのですか?それともミネスさんに心変わりしたからですか?」
「分からない。けれど、ミネスに出会ってから毎日毎日ミネスのことが頭から離れない。ミネスの美人さ、ミネスの胸元、ミネスの太もも、全てが美しくて触れたいけれど、触れられないもどかしさが辛い」
遅い一目惚れというわけか。セナ王女のことは恩人というポジションだろうか。散々女遊びしてきたのに、今更初恋で戸惑うだなんてミナクお兄様らしくない。
「でも、ミネスさんとは交際は無理だと思います。いくら時間戻したりしても、これまでの経験で過去は何も変わらないことが証明されています。いずれはミネスさんとナルホお兄様は好き合うでしょう。その上でセナ王女のことはどうしますか?妊娠させてないなら今が別れ時だと思うのですが」
ナミネの言う通り、時間は巻き戻って、過去の一部が書き換えられたが、また同じことは起きるはず。
「セナ王女とはどうやって別れたらいいのか分からない。それにやっぱりミネスと交際出来ないと私はダメになってしまう」
何がダメになってしまうだ。自分の恋愛も自分で処理出来ず次に進めるわけがない。
「じゃ、今夜はお子ちゃまミネスと混浴させてやるよ」
「本当か?」
「ああ、みんないるけどな。そこでお子ちゃまミネス口説け!じゃ、ナノハナ家に戻る」
落ち武者さんは多分、セナ王女の前でミナクお兄様がミネスさんにアプローチしているのを見せつけてカタをつけるつもりだ。
僕たちはユメさんと委員長と解散したらタクシーを拾ってナノハナ家に戻って行った。
ナノハナ家に戻るなりナミネはナルホさんの部屋に行った。
「ナルホお兄様、私はもうナルホお兄様のことを兄とも何とも思っていません。私の兄はナヤセス殿だけです。一言それを言いに来ました」
ナミネは時間を巻き戻す前にナルホさんに死んでもいいと言われたことを確実に根に持っている。
「ナミネ、僕はその時のことを覚えていないし、ミネスに恋愛感情もない。ナミネのことは小さい頃から可愛がってきたし、僕が大切なのはナミネだよ。万が一ミネスと交際することになってナミネが反対したら別れるし、僕は大好きなナミネに嫌われるのは辛いな」
ナルホさんの本音ってどうなっているのだろう。一見これも本心に聞こえるけど、落ち武者さんがフェアリーングでナルホさんの本心を引き出したらどんな答えになるのだろう。
「あんた、もう既に強気なナミネの信用失ってんだよ!」
落ち武者さんはナルホさんにフェアリーングをかけた。
「平和ボケなナルホ、あんたお子ちゃまミネスのことどう思ってんだ?お子ちゃまミネスと強気なナミネ、どっちが大事なんだよ?強気なナミネがあんたとお子ちゃまミネスの交際反対して死ぬって言ったらどうするんだよ?」
「ミネスのことは放っておけない。どれだけミネスが悪いことしても僕はミネスを放っておけないし必ずミネスを助ける。ナミネよりミネスが大事。ミネスと交際することになってナミネが反対して死ぬと言ったら、ナミネは死んでもいいと思うんだ。無理に生きてなくていいと思う。ナミネが死ぬことで楽になれるなら僕も嬉しいよ。死ぬかどうかはナミネの判断だし、僕はミネスとの幸せを選ぶ」
落ち武者さんはフェアリーングを解いた。人は誰しも裏表があると言うが、ここまでの違いが出てくるのものなのだろうか。これではまるで詐欺レベルではないか。
「これがあんたの核心だ。本心ではなく核心なんだよ!せいぜい、ナノハにバレないようにしろよ!バレたらお子ちゃまミネスは死んで、後悔するのあんただから」
「そっか。セルファはこうやって人が眠っている感情らしきものを引き出して人と人とを仲違いさせてるんだね。今となってはナミネとの関係を拗れさせたミネスを憎くさえ感じるよ。大切なのはナミネなのに、ナミネの信用失って、一歩間違えればナノハお姉様に人生奪われて。正直やり切れないよ」
いったい、本心と核心てなんなんだ。核心が変えられない感情なら、ナルホさんはミネスさん意外とは恋愛をしないと言うことになる。天使村の前だってある。そんな昔からナルホさんはミネスさんのみを愛してきたのか?とてもじゃないけど信じられない。
「ナルホお兄様、私は一生ナルホお兄様を恨みます。今のお言葉ナノハお姉様に録音を聞かせます!ミネスさんがそれだけ大事ならミネスさんと心中してくれませんか?」
ナミネの目の色が紫色になっている。
「ナミネ、ナノハお姉様に話すのはやめてくれるかな?今回の件、確証はどこにもないよね?もし、あのような結末になれば、ズームさんにどうお詫びするのかな?僕は何も覚えていないし、ミネスに恋愛感情はないし、大切なのはナミネ。これがどうしても信じられないならナノハお姉様に言うといいよ。あんな形でミネスが死んだらナミネはズームさんの信用を失い、後悔して苦しむのはナミネだよ。その覚悟があるなら好きにするといいよ」
「ナルホお兄様、後悔するのはあなたです。行くよ、ラルク」
ナミネは僕の手を引っ張って窓を開けると折り鶴に乗ってナノハナ家を出た。その後のことはどうなったか、分からない。けれど、念の為、今回のことを僕はズームさんにメールをした。
『セルファさんから同じ報告が来たところです。ナミネさんのことを守ると言って守れなかったからミネスがナルホさんと交際したらミネスはレイカさんの拷問で無惨な形で死ぬだろうと言われました。ただ、僕はナルホさんがナミネさんを見捨てるとは思えないんです。でも、ナミネさんは誰が何を言わなくてもナルホさんがミネスを好きな限り、いずれミネスはまた同じ形で死んでしまうと言っていました。僕自身行き詰まっています。決して自分とミネスさえよければいいわけではありません。それでも結局はミネスが助かればナミネさんが傷付いてしまう。でも、僕はミネスのあんな無惨な姿は見たくありません。ラルクさん、僕はアザを背負います。だからセレナールさんとは別れてください』
ナルホさんもズームさんもミネスさんをナミネを見捨ててミネスさんを守りたいのならナミネが孤立してしまう。結局は恋人又は家族がよければ他人のことはどうでもいい。それが人なのだ。
ナミネはナルホさんのパンツに名前、住所、証明写真を貼って町にばらまいている。
「ナミネ、キクスケさんに、ミネスさん、ナルホさん、ズームさんの3人を死ねない身体にしてもらえ!」
「うん、分かった」
ナミネはキクスケさんにメールし、3人を死ねない身体にしてもらった。もう手段は選べない。この3人が死にたいくらい負いつまった時に生きてもらうしかない。ナミネのためにも。
『そうですか。ナルホさんはナミネを死なせてミネスさんと一緒になると言っている。ズームさんはナミネが傷付いてでもミネスさん優先すると言っている。ナミネのことなんだと思っているんですか!セレナール先輩とは別れません!お2人がナミネを大切にしないと、僕はナミネと2人で転生します。その後のことはあなた方で楽しく生きてください』
『待ってください!ナミネさんに会わせてもらえませんか?転生だけはどうかやめてください』
ぼくはこのやり取りをナルホさんと落ち武者さんに転送した。
『ラルク、そのことなんだけど、平和ボケなナルホはいきなり強気なナミネに嫌われてかなり滅入っている。セリル呼んでフェアリーングかけてもらったら、ナミネが死ぬくらいならミネスとは交際しないって言うんだ。もうわけが分からない』
いったいどういうことなんだ。まるで誰かが裏で糸を引いているような展開じゃないか。お武家連盟会議にかけてナミネを傷付けた人たちに罪を負わせたい。けれど、今それをするとナミネが恨まれ余計にナミネが傷付いてしまう。
『ズームさん、ひとつお聞きします。もし、あなたがナミネの彼氏ならどうしていましたか?』
『もし、僕がナミネさんと交際していたならミネスよりナミネさんを選んだと思います。けれど、今はそうではないので、やはりミネスの命を無駄にすることは出来ません。すみません。ただ、ナミネさんに会わせてもらえませんか?』
ナルホさん、ズームさん共に彼女を選ぶということか。けれど、ナミネはナミネでちゃんと生きている。ナミネを見捨てることは僕が許さない。
『ラルク、キクスケから聞いたんだが、いくらお子ちゃまミネスを死なせたくなくても、強気なナミネが傷付けばどの道お子ちゃまミネスは死ぬらしい。ズームも平和ボケなナルホも十分反省してる。戻ってこい』
誰が裏で糸を引いているのか分からないが、もうミネスさんは既に死ねない身体になっている。だとしたら、ナミネを会わせる必要はない。けれど、神様呼び出しカードを持っているヨルクお兄様がナノハナ家にいる。不利な種は詰んでおかないと。
「ナミネ、神様ブロック出来る番人呼び出せ!」
……
あとがき。
久々のラルク視点です。
ここまで来てラルクが本当に愛している人が分かりましたね。
2人のすれ違いが切ないです。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
《ラルク》
恋は盲目と言うが、実際そうなのかもしれない。ナミネが泣きそうになりながら、ナルホさんから死んでもいいと言われたって言った時は正直驚いた。恋愛には少しも興味なさそうなナルホさんが、心奪われたミネスさんを失いたくないあまりに、前を見失ってしまうだなんて、信じられなかった。
でも、僕もセレナール先輩に本気だった頃はナミネのことを傷付けてしまっていた。セレナール先輩の本性を知ってからは、すっかり目が覚めてしまったけれど。今となっては物凄く後悔している。僕は、セレナール先輩には確かに一目惚れしたけれど、本当に好きだったのは、ずっと僕に寄り添ってくれていたナミネだと気付かされた。でも、その頃にはもう遅かった。
せっかく僕を好きでいてくれたナミネはヨルクお兄様と交際してしまった。
そんな僕は今、二度目の桜木町のカフェにいる。
二度目。そう、僕らは一度ここに来て、キクスケさんに今朝の7時に時間を巻き戻してもらったのだ。
「最初は恩人であるセナ王女を心から愛してた。けれど、だんだん交際当初のようには見れなくなって、はじめてミネスを見た時、恋に落ちた。このような感情を抱いたのははじめてだ。ミネスのことが好きで好きでたまらない」
もういっそのことミネスさんと交際すればいいと思う。セナ王女のことは本気かと思っていたのに、結局、時間が経てば飽きてしまったのか。
「でも、それってセナさんはどうなるの?セナさんはミナクとの別れを認めないと思うわ」
いくら認めなくても人の心は縛れない。
「ていうか、甘えセナと別れて、お子ちゃまミネスと交際出来なかったらどうするんだよ」
「それが怖くてセナ王女とは別れるに別れられない。でも、女として見れなくて交際も辛い。早くミネスの温もりに包まれたい」
どれだけ馬鹿なんだ。1人になりたくないから好きでもない女と無理に交際しても続かないし、関係は今よりもっと悪くなる。
「あの、ミネスさんと交際出来る可能性が100%でなければ私はセナ王女とは別れないほうがいいと思うんです」
時間稼ぎか。けれど、どれだけ考えても抜け道などない気がするが。
「いや、それは流石に私のメンタルが持たない」
だったら、どうしろと言うんだよ。その時、落ち武者さんがある映像を見せた。
映像はリアルタイムだろうものだった。
ナルホさんとミネスさんが庭園を歩いている。
『ナルホ……私ナルホと交際したい!』
『分かった』
ナルホさんはすんなりミネスさんの告白を受け入れた。
『でも、ナミネはどうするの?』
『そうだね、今のナミネは君のこと嫌っているし、僕との交際は絶対認めないと思う。本当に死ぬかもしれない。でも、僕は、苦しいのにナミネは無理に生きなくてもいいと思うんだ。死にたいなら死んだらいいと思うんだ。それがナミネの幸せだと思ってる。今は君を支えることに全力を尽くすよ。ナミネのことは気にしなくていいよ』
恋は盲目と言うが、ナルホさんが恋愛でこんなにも残酷になれるなんて、少し痛々しく感じる。ナミネは真剣な表情をして見ている。
『ナルホ、ありがとう!嬉しい!私、ナルホと幸せになる!』
ミネスさんはナルホさんに抱き着いた。
落ち武者さんは一旦ここで映像を止めた。
「ミナク、お子ちゃまミネスはもう平和ボケなナルホの女だ!甘えセナと別れてもお子ちゃまミネスとは交際出来ないからね?」
「そんな……ナルホの野郎、いつの間に口説きやがったんだ。これじゃあ、セナ王女と別れられないじゃないか」
どうしてこんなにも見苦しいのだろう。どれだけ足掻いてもミネスさんとは一緒にはなれないのに。
「じゃ、今からナノハ依存ズルエヌに送るメール文書打つ」
落ち武者さんはズルエヌさんにメールを打ちはじめた。このメールがトドメになるわけか。今日は普通の話し合いのつもりが、人生をかけた話し合いになってしまった。
「じゃ、これ送る」
『ナノハ依存ズルエヌ。今すぐナノハと別れてミドリと付き合え!言わせてもらうけど、あんたの妹、これだけのことしたんだけど?どう償うつもり?まさかこのまま見て見ぬふりして僕の大切な人の人生奪う気じゃないよね?そんなことすると、あんたの大切な妹の映像と画像全て世の中にばら撒くよ?世間の目に晒されるか少年院に入れるか今すぐ答え出せ!』
いきなり知らない人からこれを送られてきたらかなりキツイだろうな。けれど、ミネスさんのしたことは犯罪だし、正直償って欲しいというのが本音。
少しすると返信が来たようだ。
「返信来た」
『妹が多大なご迷惑をおかけして申し訳ありません。ナノハには今別れるメールを送りました。妹は少年院に入れます。近々そちらに謝罪に行きます』
かなり真面目な人だな。まあ、ミネスさんがこのまま少年院で償ってくれるならナミネも安心して毎日を過ごせると思う。
落ち武者さんは続きを再生した。
映像には、地下室の拷問部屋にてナノハさんとレイカさん、ミネスさん、ナルホさん、その他武官がいた。
『ナルホ、今ズルエヌからメール来た。その女との交際は認めないよ』
ナノハさんはそれなりに怒っている様子だった。
『ナノハお姉様、僕は自分の人生は自分で決めます。ミネスとは別れません』
ナノハさんはナルホさんを引っぱたいた。
『レイカさん、お願い出来るかしら』
『ナノハ、本当にいいの?後戻り出来ないわよ?」
「構いません。ナルホがこんな女に騙されナミネを傷付けるなら現実を見せて目を覚まさせます』
『分かったわ』
レイカさんはミネスさんの拘束を解いて、ミネスさんの服を脱がした。
『やってちょうだい』
『ミネス!ナノハお姉様、やめてください!僕はただミネスと交際したいだけです!ナミネはこの世が苦しい子だから死にたいなら死ねばいいと思っただけです!ミネスをここで傷付けたらナノハお姉様に復讐します』
『やれるもんならやってみなさい、ナルホ』
ミネスさんは、悲鳴と共に5人の武官にイヤガラセされた。
『第3破られたのに私生きてる。死にたいのに死ねない!ナルホ、君を一生恨む!』
『ミネス!僕は何もしてない!ミネスのことは一生かけて僕が支える!』
ミネスさんはミドリさんの時同様、無惨な状態なのに、何もなかったかのように動いている。
『ナルホ、よくも私をハメてくれたね!お兄ちゃんに言って、ナルホの今後の幸せ全部奪ってやる!』
『ミネス、僕は本当にミネスを幸せにしたくて交際した!』
ナルホさんは突然の事態についていけないのか、大粒の涙を流した。
あれ、ナルホさんの背中にヘクタナが貼られてある。
落ち武者さんは停止ボタンを押した。
「ラルク、ヘクタナだよ!」
「そうだな。誰かが貼ったのか、自然と貼り付いたのか」
ヘクタナ。貼られた者は、貼った者を主君とし、何がなんでも従い続ける。
「ミネスが、そっとしておいて欲しいと何度も訴えるナミネさんを傷付けてしまったことは本当に申し訳なく思っています。けれど、あんな愚かな子でも僕の妹なんです」
そうだよな。ズームさんからして見れば1番見たくないし、このままにはしないだろう。その時、ヨルクお兄様とダンゴロさんが来た。
「ヨルクさん!」
「ダンゴロさん、正月からナミネさんとミネスが仲違いした部分だけ省いてください」
ズームさんは泣きながら訴えた。
「別にいいけど。それじゃあ、2人が仲違いした場面は別のもので埋めておく。ただ、忠告するなら、今後2人が仲違いしたら、また元に逆戻りだよ。辛いだろうけど、ナミネはミネスに攻撃されても我慢するしかないね」
そんな、またナミネが犠牲になるなんて。どうしてこの世はこれほどまでに理不尽なのだろう。
「分かりました。ズームさんのためにも、私が我慢します!その変わり、ヨルクさんには誰もが手出し出来ないようヨルクさんの身の安全は確保してもらえないでしょうか?」
ナミネはいつも自分のことより、他人を心配する。
「分かった。じゃあ、ヨルクの身の安全の確保はしとく。今言うけど、ヘクタナはカンザシがミネスに貼ろうとして間違えてナルホに貼ったんだよ。それから初代天使村でヨルクを毒殺した中にはミネスもいるよ。だから、ナミネのイライラは簡単には治まらないだろうね」
まさか、ミネスさんがヨルクお兄様の毒殺に協力したのか?もう何がなんだか分からなくなってきた。
「エロじじい、どういうことだ!後、強気なナミネの精神状態の安定も確保しろ!ズームの背中のアザと効力はなくしたままにしろ!」
「カンザシとセレナールがヨルク毒殺計画を立てた時、お金のないカンザシはミネスに計画を打ち明け共犯者にした上で毒草買わせ、何かあれば全てミネスに罪を擦り付けるつもりだった。けれど、ミネスは他の村に逃げた。君の力量ならナミネの精神状態安定の確保は40%だね。ズームの背中のアザと効力が消えてるのはラルクがセレナールと別れないまでね。別れたら元に戻るからね」
ミネスさんは毒草を買っただけ。それでも計画は知っている。いざとなればカンザシさんの味方につくということか。それに40%は低すぎる。ないよりマシだが。何となくミネスさんは元に戻ったに対して、これからはナミネのみ我慢というのは不公平だ。
「じゃあ、頼みは聞いたから戻るね」
ダンゴロさんは女神の湖に戻って行った。
「なあ、ズーム!お子ちゃまミネスは元に戻って今後も強気なナミネイジメるのに対して強気なナミネはそれ我慢して調和保つのは不公平だろ!あんた、自分の妹さえよければ他はどうでもいいのかよ!今すぐセリル呼ぶぞ!」
落ち武者さんもここは出るとこ出るか。
「ミネスのことは本当に申し訳なく思っています。ただ、僕はナミネさんを犠牲にはしません。ミネスがナミネさんを攻撃したら必ず庇います」
「だったら、なんで今まで傍観してた!セリル呼ぶぞ!」
「映像のような事態になるとは思っていませんでした。反省しています。今後はナミネさんを全力で守ります」
僕と落ち武者さんとズームさんでナミネを守ればナミネは壊れずに済むかもしれない。
とりあえず、正月、紅葉神社でヨルクお兄様がイタズラ犯に間違えられたことは偶然通りかかったカナコさんが証拠がないなら連れて行かせないとヨルクお兄様を庇い、ミィミさんは泣きながら諦めて去って行った。
ライオンのオリの鍵のことは、そのまま僕たちがヨルクお兄様を助けた。
グルグル妖精さんのマンションでミネスさんがナミネを叩いたことは、ナミネが泣きながら僕の手を握り、僕と朝までカラオケにいた。
ミネスさんが今日ナミネを襲わせる計画は、そのまま朝早く出て回避して来た。
今のナルホさんとミネスさんの関係は友達と言ったところだろうか。ミネスさんはカンザシさんにベタ惚れで、ズームさんの背中のアザが消えたことも知らずニンジャ妖精さんのマンションの家賃払っている。
過去は微妙に変えられている。問題はこの先だ。
今になって僕はセレナール先輩との恋愛を重視したあまり、伝説武官に辿り着けなかったことを後悔した。
僕が強くなってナミネを守らなければ。
僕は念の為、変えられる前の現実の映像をナヤセスさんとナルホさんにメールした。
『セルファからも同じ内容のメールが来たけど、僕はナミネにあんなこと言ったりはしないよ。確かな確証を掴めるまで待ってもらえるかな?』
『分かりました』
けれど、ナルホさんとミネスさんは誰が見ても惹かれ合っていた。2人が交際するもの時間の問題だろう。
「じゃ、話し合いの続きする」
その時、ヨルクお兄様が泣き崩れた。
「ナミネ……どうして……自分のお願いしないで、私の安全の確保なんて言ったの……もうナミネに犠牲になって欲しくない」
「ヨルクさん、私はヨルクさんに無事でいて欲しいんです」
こういうやり取りは気に食わない。僕がナミネの彼氏だったらナミネは自分のことだけ考えていられたのに。
「顔だけヨルク、今日はミナクと甘えセナのことについて話に来た。だから、泣いてないで、あんたもメニュー注文して話し合いに加われ!」
「ラルク、お腹すいたよ」
そういえば、ここに来てから何も注文していなかった。
「注文しろよ。ほら、ここにトマト妖精のパンケーキあるぞ」
「じゃあ、それにする」
ナミネが注文すると共に、みんなも同じものを注文した。
「言っておくけど、綺麗に別れないと一目惚れカラルリみたいなことになるぞ!」
カラルリ先輩……。あれはもう悲劇としか言いようがない。
「助けて欲しい」
「ミナクさんはセナ王女を女として見れなくなったことが原因で別れたいのですか?それともミネスさんに心変わりしたからですか?」
「分からない。けれど、ミネスに出会ってから毎日毎日ミネスのことが頭から離れない。ミネスの美人さ、ミネスの胸元、ミネスの太もも、全てが美しくて触れたいけれど、触れられないもどかしさが辛い」
遅い一目惚れというわけか。セナ王女のことは恩人というポジションだろうか。散々女遊びしてきたのに、今更初恋で戸惑うだなんてミナクお兄様らしくない。
「でも、ミネスさんとは交際は無理だと思います。いくら時間戻したりしても、これまでの経験で過去は何も変わらないことが証明されています。いずれはミネスさんとナルホお兄様は好き合うでしょう。その上でセナ王女のことはどうしますか?妊娠させてないなら今が別れ時だと思うのですが」
ナミネの言う通り、時間は巻き戻って、過去の一部が書き換えられたが、また同じことは起きるはず。
「セナ王女とはどうやって別れたらいいのか分からない。それにやっぱりミネスと交際出来ないと私はダメになってしまう」
何がダメになってしまうだ。自分の恋愛も自分で処理出来ず次に進めるわけがない。
「じゃ、今夜はお子ちゃまミネスと混浴させてやるよ」
「本当か?」
「ああ、みんないるけどな。そこでお子ちゃまミネス口説け!じゃ、ナノハナ家に戻る」
落ち武者さんは多分、セナ王女の前でミナクお兄様がミネスさんにアプローチしているのを見せつけてカタをつけるつもりだ。
僕たちはユメさんと委員長と解散したらタクシーを拾ってナノハナ家に戻って行った。
ナノハナ家に戻るなりナミネはナルホさんの部屋に行った。
「ナルホお兄様、私はもうナルホお兄様のことを兄とも何とも思っていません。私の兄はナヤセス殿だけです。一言それを言いに来ました」
ナミネは時間を巻き戻す前にナルホさんに死んでもいいと言われたことを確実に根に持っている。
「ナミネ、僕はその時のことを覚えていないし、ミネスに恋愛感情もない。ナミネのことは小さい頃から可愛がってきたし、僕が大切なのはナミネだよ。万が一ミネスと交際することになってナミネが反対したら別れるし、僕は大好きなナミネに嫌われるのは辛いな」
ナルホさんの本音ってどうなっているのだろう。一見これも本心に聞こえるけど、落ち武者さんがフェアリーングでナルホさんの本心を引き出したらどんな答えになるのだろう。
「あんた、もう既に強気なナミネの信用失ってんだよ!」
落ち武者さんはナルホさんにフェアリーングをかけた。
「平和ボケなナルホ、あんたお子ちゃまミネスのことどう思ってんだ?お子ちゃまミネスと強気なナミネ、どっちが大事なんだよ?強気なナミネがあんたとお子ちゃまミネスの交際反対して死ぬって言ったらどうするんだよ?」
「ミネスのことは放っておけない。どれだけミネスが悪いことしても僕はミネスを放っておけないし必ずミネスを助ける。ナミネよりミネスが大事。ミネスと交際することになってナミネが反対して死ぬと言ったら、ナミネは死んでもいいと思うんだ。無理に生きてなくていいと思う。ナミネが死ぬことで楽になれるなら僕も嬉しいよ。死ぬかどうかはナミネの判断だし、僕はミネスとの幸せを選ぶ」
落ち武者さんはフェアリーングを解いた。人は誰しも裏表があると言うが、ここまでの違いが出てくるのものなのだろうか。これではまるで詐欺レベルではないか。
「これがあんたの核心だ。本心ではなく核心なんだよ!せいぜい、ナノハにバレないようにしろよ!バレたらお子ちゃまミネスは死んで、後悔するのあんただから」
「そっか。セルファはこうやって人が眠っている感情らしきものを引き出して人と人とを仲違いさせてるんだね。今となってはナミネとの関係を拗れさせたミネスを憎くさえ感じるよ。大切なのはナミネなのに、ナミネの信用失って、一歩間違えればナノハお姉様に人生奪われて。正直やり切れないよ」
いったい、本心と核心てなんなんだ。核心が変えられない感情なら、ナルホさんはミネスさん意外とは恋愛をしないと言うことになる。天使村の前だってある。そんな昔からナルホさんはミネスさんのみを愛してきたのか?とてもじゃないけど信じられない。
「ナルホお兄様、私は一生ナルホお兄様を恨みます。今のお言葉ナノハお姉様に録音を聞かせます!ミネスさんがそれだけ大事ならミネスさんと心中してくれませんか?」
ナミネの目の色が紫色になっている。
「ナミネ、ナノハお姉様に話すのはやめてくれるかな?今回の件、確証はどこにもないよね?もし、あのような結末になれば、ズームさんにどうお詫びするのかな?僕は何も覚えていないし、ミネスに恋愛感情はないし、大切なのはナミネ。これがどうしても信じられないならナノハお姉様に言うといいよ。あんな形でミネスが死んだらナミネはズームさんの信用を失い、後悔して苦しむのはナミネだよ。その覚悟があるなら好きにするといいよ」
「ナルホお兄様、後悔するのはあなたです。行くよ、ラルク」
ナミネは僕の手を引っ張って窓を開けると折り鶴に乗ってナノハナ家を出た。その後のことはどうなったか、分からない。けれど、念の為、今回のことを僕はズームさんにメールをした。
『セルファさんから同じ報告が来たところです。ナミネさんのことを守ると言って守れなかったからミネスがナルホさんと交際したらミネスはレイカさんの拷問で無惨な形で死ぬだろうと言われました。ただ、僕はナルホさんがナミネさんを見捨てるとは思えないんです。でも、ナミネさんは誰が何を言わなくてもナルホさんがミネスを好きな限り、いずれミネスはまた同じ形で死んでしまうと言っていました。僕自身行き詰まっています。決して自分とミネスさえよければいいわけではありません。それでも結局はミネスが助かればナミネさんが傷付いてしまう。でも、僕はミネスのあんな無惨な姿は見たくありません。ラルクさん、僕はアザを背負います。だからセレナールさんとは別れてください』
ナルホさんもズームさんもミネスさんをナミネを見捨ててミネスさんを守りたいのならナミネが孤立してしまう。結局は恋人又は家族がよければ他人のことはどうでもいい。それが人なのだ。
ナミネはナルホさんのパンツに名前、住所、証明写真を貼って町にばらまいている。
「ナミネ、キクスケさんに、ミネスさん、ナルホさん、ズームさんの3人を死ねない身体にしてもらえ!」
「うん、分かった」
ナミネはキクスケさんにメールし、3人を死ねない身体にしてもらった。もう手段は選べない。この3人が死にたいくらい負いつまった時に生きてもらうしかない。ナミネのためにも。
『そうですか。ナルホさんはナミネを死なせてミネスさんと一緒になると言っている。ズームさんはナミネが傷付いてでもミネスさん優先すると言っている。ナミネのことなんだと思っているんですか!セレナール先輩とは別れません!お2人がナミネを大切にしないと、僕はナミネと2人で転生します。その後のことはあなた方で楽しく生きてください』
『待ってください!ナミネさんに会わせてもらえませんか?転生だけはどうかやめてください』
ぼくはこのやり取りをナルホさんと落ち武者さんに転送した。
『ラルク、そのことなんだけど、平和ボケなナルホはいきなり強気なナミネに嫌われてかなり滅入っている。セリル呼んでフェアリーングかけてもらったら、ナミネが死ぬくらいならミネスとは交際しないって言うんだ。もうわけが分からない』
いったいどういうことなんだ。まるで誰かが裏で糸を引いているような展開じゃないか。お武家連盟会議にかけてナミネを傷付けた人たちに罪を負わせたい。けれど、今それをするとナミネが恨まれ余計にナミネが傷付いてしまう。
『ズームさん、ひとつお聞きします。もし、あなたがナミネの彼氏ならどうしていましたか?』
『もし、僕がナミネさんと交際していたならミネスよりナミネさんを選んだと思います。けれど、今はそうではないので、やはりミネスの命を無駄にすることは出来ません。すみません。ただ、ナミネさんに会わせてもらえませんか?』
ナルホさん、ズームさん共に彼女を選ぶということか。けれど、ナミネはナミネでちゃんと生きている。ナミネを見捨てることは僕が許さない。
『ラルク、キクスケから聞いたんだが、いくらお子ちゃまミネスを死なせたくなくても、強気なナミネが傷付けばどの道お子ちゃまミネスは死ぬらしい。ズームも平和ボケなナルホも十分反省してる。戻ってこい』
誰が裏で糸を引いているのか分からないが、もうミネスさんは既に死ねない身体になっている。だとしたら、ナミネを会わせる必要はない。けれど、神様呼び出しカードを持っているヨルクお兄様がナノハナ家にいる。不利な種は詰んでおかないと。
「ナミネ、神様ブロック出来る番人呼び出せ!」
……
あとがき。
久々のラルク視点です。
ここまで来てラルクが本当に愛している人が分かりましたね。
2人のすれ違いが切ないです。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
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純愛偏差値 未来編 一人称版 72話
《ナミネ》
私から誰かに攻撃することはない。けれど、周りは違う。妬みや嫉妬は時に人を狂わせてしまうのだ。どれだけ自分から何もしなくても人というのは無理矢理誰かが作り上げた土俵にあげられ闘わされるものなのである。
私はただヨルクさんとのことはそっとしておいて欲しいだけ。ヨルクさんとの幸せを誰にも奪われたくないのだ。
でも、ミネスさんにいきなりとんでもない攻撃をされた時は、生きているだけで反撃しなければいけないことに気付かされた。
私はヨルクさんとの幸せを奪われないためにミネスさんに対抗するしかないと思った。
言ってしまえば、ミネスさんは、ワガママで都合が悪くなれば騒ぎ立て、性格ブスの親の七光り野郎である。私の一番嫌いなタイプだ。
そんなミネスさんのことも、ミネスさんの謝罪により落ち着いたかと思っていた。
そんな矢先だった。
突然5人の高校生くらいの男が第4居間に入ってきた。
「あの、どちら様でしょうか?」
「ナミネってどの女だ!」
「私です!」
その瞬間、男子高生は私を押し倒そうとした。私は男子高生を扇子で吹き飛ばし、花札で拘束した。そして、男子高生に羽子板を少し当てた。
「た、助けてくれ!ミネスって金持ちの女に頼まれたんだ!ナミネをめちゃくちゃにして欲しいって」
「違う!私は断った!でも、この人らがミスコングランプリ取った女だからやるって聞かなくて!お願い、許して!」
いつ依頼したのだろう。何故、そっとしておいてくれないのだろう。
「依頼受けたのはいつですか?」
「昨日だ!」
私の心は凍り付いた。ミネスさんはあれだけ私に許して欲しいとせがんだのに、その裏側で私を襲わせるという計画を立てていたのか。
「私はちゃんと取り消した!信じて!」
「ミネス、前にも言ったけど、ナミネのことは小さい頃からずっと可愛がってきて、大切な存在だって。そんなナミネを襲わせて君の心は晴れたかな?君はセナ王女に同じことされた時、あれほどにセナ王女を悪者にしたのに、ナミネは傷付いてもいいのかな?悪いけど、もう僕は君とは関わらないし、君が困っていても一切助けない。好きに生きるといいよ」
ナルホお兄様は立ち上がった。
「待って、ナルホ!本当に取り消した!ナルホを失いたくない!一度だけチャンスが欲しい!」
ここまで惨めな女を見たことがあるだろうか。せっかくお金持ちに生まれたのに、自分から大切なものを失っていくだなんて。私はただ、そっとして欲しいだけ。でも、その思いはミネスさんにとって悪意だと私は知った。
私は扇子を動かし、ミネスさんに謎の液体を持たせると、ミネスさんを私を襲わせた5人のところまで歩かせ、5人の顔に謎の液体をかけさせた。
「おい、救急車呼べ!」
ヨルクさんは救急車を呼んだ。私を襲わせた5人はすぐに月城総合病院に運ばれて行った。
その時、ズームさんはミネスさんを引っぱたいた。
「ミネス!なんで、ナミネさんを襲わせた!」
「だから、取り消したって!でも、相手が言うこと聞かなかったの!」
「ミネス、どうしてナミネを襲わせたのかな?」
「ナミネが羨ましかったから。私にないもの全部持ってたから。1つくらい不幸になってもナミネなら問題ないと思った。でも、考え直してすぐに取り消した!お願い、ナルホ、見捨てないで!」
1つくらい不幸になっても私なら問題ない?何それ。これだけ付きまとわれて、私はもうミネスさんに反撃する気持ちが萎えつつあった。出来るだけミネスさんと関わらないようにすることにした。
テレビを付けると、早速ニュースが流れた。
『速報です。先程、紅葉町にある月城総合病院に5人の男の子が救急搬送されました。5人のうち1人はすぐにオペが終わり、状態も元通りになったそうです。話を伺うと、ブランケット家の次女にナノハナ家の5女をイヤガラセするよう依頼され、実行しようとしたところ、返り討ちにあい、失敗したことをブランケット家の次女が怒り、5人の顔に謎の液体をかけたとのことです。また4人の顔は既にかなり溶けていて医師も全力を尽くしたものの、顔は元には戻ることはありませんでした。謎の液体をかけられた5人の男の子のご家族はブランケット家に慰謝料を請求すると共にブランケット家の次女を訴える方針だそうです。また、謎の液体をかけられた男の子の中にはflowerグループの御曹司もいました』
flowerグループ。GMグループやUTグループ、plantグループに並ぶ大手企業だ。もうミネスさんとは関わりたくない。私は少しずつミネスさんから離れた。
「お願い、誰か助けて!」
「お子ちゃまミネス、あんた少年院に入れ!ここまで強気なナミネ貶めて助けても何もないだろ!」
「ミネス、少年院で償おうか」
落ち武者さんもナヤセス殿もミネスさんに慈悲は与えなかった。
「ナルホ、許して」
「ミネス、僕はもう君とは関わらない。ナミネのほうが大事だから。今後の人生は君が好きな道選んで歩いてくといいよ」
「ナルホが私を捨てるなら私死ぬ!」
何てワガママな女なの。私は呼び出しカードでキクスケさんを呼んだ。
「お呼びでしょうか」
「あの、ミネスさんが自殺未遂しても絶対に死なないようにしてもらえませんか?」
「かしこまりました。2分後、ミネスさんは死なない身体となります。では、これにて失礼」
死んで逃げることは私は許さない。ミネスさんには生きて償ってもらう。何世紀も生き続けてひとりぼっちになってしまえばいい。
けれど、今日は話し合いの日。ヨルクさんを残して行って何かあったら心配だ。私はキクスケさんにメールをした。
『ミネスさん含め、誰もがヨルクさんに危害を一切加えないようにしてもらえないでしょうか?』
『かしこまりました。2分後、ヨルクさんは誰からの危害も加えられなくなります』
これで、ひとまず安心か。けれど、この時の私は小さな疑問を抱えていた。
「ナミネ、今日は桜木町のカフェに行くんだよね。私はキクリ家から戻ってくるカナエさんに料理教わるから、温かくしていってね。それと、もうすぐ生理だよね。このポーチ渡しておくね」
「ありがとうございます、ヨルクさん」
この違和感はなんだろう。私は分からないままでいた。その時、ナルホお兄様が無言で第4居間を出た。
「ナルホ、待って!」
私はナルホお兄様を追いかけるミネスさんを追い越し、階段の上で階段を登ってきたミネスさんを突き落とした。
「痛い!!」
けれど、キクスケさんの力により、ミネスさんは無敵な身体になっていた。私は3度ほど階段を登るミネスさんを階段から突き落とした。
「いた……。ナミネ、本当にごめん!ナミネのことで色々気付かされた!今は謝ることしか出来ないけど、必ず償う!」
ミネスさんはナルホお兄様の部屋に入っていった。入れ替わりにカンザシさんが玄関から入って来た。
「あの、ミネスは?」
「ミネスさんなら、好きな人が出来たので、カンザシさんはお払い箱だそうです。これからは新しい彼を助けるそうです!」
「ミネスはどこですか?」
「2階です」
カンザシさんは2階を駆け登った。私はまたミネスさんの時のようにカンザシさんを追い越した。
「あ、ミネスさんからお払い箱になったカンザシさんを階段から突き落とすよう言われてるんです」
私は階段を登って来たカンザシさんを思いっきり突き落とした。
「おい、そろそろ行くぞ!」
「分かりました!」
私はカンザシさんが骨折しているとも知らず、ラルクと落ち武者さん、ズームさんとナノハナ家を出てタクシーで桜木町のカフェへと向かった。
桜木町のカフェでは、ミナクさんとユメさん、委員長が来ていた。
「じゃ、適当にメニュー選んで話し合いだな」
私はメニューを見ながら考えごとをしていた。正月、神社でヨルクさんがイジワル犯に間違えられた時、ヨルクさんは否定さえせず、自分の無罪を落ち武者さんに証明してもらった。グルグル妖精さんのマンションでミネスさんから責められた時も、今日の私を襲わせた件も傍観者だった。今の私疲れている。ただでさえ恋愛向けではないから、2人で対処することを1人で一気に対処するとヨルクさんのことを疑ってしまっている自分がいた。
私、苛立っている。
「ラルク、一緒にトーストサンド食べよ」
「じゃあ、そうするか」
それにカンザシさんのこと突き落としてしまったのも今になって罪悪感が私を押し寄せた。
私は苛立ちのあまりヨルクさんにメールをした。
『あの、正月の紅葉神社でヨルクさんがイジワル犯に間違われた時、自分では何もせず落ち武者さんに対処させましたよね?グルグル妖精さんのマンションで私がミネスさんに責められている時も何もしてくれず、今日私が襲われた時もただ傍観してましたよね?更にはさっきキクスケさんにヨルクさんには手出し出来ないようお願いしました。でも、これって本来ヨルクさんが自分ですることなんじゃないんですか?交際で困ったことがあれば2人で解決するもんなんじゃないんですか?私、彼氏に、自分の問題、2人の問題全て丸投げされてかなり疲れています。ミネスさんのことも少しでも助けてくれていたらここまで負い詰まらなかったのに。今、全てを破壊したいです。2人で対処することを1人で対処しなければいけないのは割に会いません。そもそも丸投げとか誓約書違反なので自己防衛のためヨルクさんとは破談にします』
苛立ちから別れたくないのに別れを切り出してしまった。もうすぐ交際して半年なのに。どうして私はいつもこうなのだろう。
『ナミネ、ごめん!正月の時はいきなり犯人にされて頭が真っ白になってた!グルグル妖精さんのマンションでは彼氏として何をしてあげられるか考えたけど思いつかなかった!今日ナミネが襲われた時は突然のことで思考がついていけなかった!本当に不快な思いをさせてしまってごめん!次からは必ずナミネのサポートをする!ミネスさんのことでナミネが機嫌悪くしてたら必ず助ける!だから別れるだなんて言わないで!ここで捨てられたら私には何もなくなってしまう!ナミネ、許して!』
私はヨルクさんに返信をしなかった。
私の恋愛はどうして上手くいかないのだろう。ヨルクさんはどうして困っている時に助けてくれないのだろう。彼女が襲われて傍観するのが彼氏なのだろうか。
とても疲れた。2人分を背負うのは割に合わない。
ヨルクさんからは何通も謝罪のメールが来たけれど私は返信をせず、そのうちにメールも開かなくなっていた。
この時の私はナルホお兄様がミネスさんとカンザシさんを月城総合病院に連れて行く時、一緒に行って、ヨルクさんがミネスさんに私を襲わせたことに対して抗議をしてナルホお兄様に相談してクレナイ家 顧問弁護士の誓約書にサインさせていたことを全く知らなかったのである。また、ナルホお兄様も私が相当負いつまっていることを知り、ナノハナ家 顧問弁護士にかなり厳しい誓約書にサインをさせ、二度と私の機嫌を損ねないよう厳しく言ったらしい。
その時、ナルホお兄様からメールが来た。
『ヨルクは、月城総合病院まで着いてきてナミネを襲わせたことミネスに抗議したし、誓約書も書かせた。だからヨルクのこと許してあげてくれないかな?それから僕はミネスと交際することになったよ』
何それ。ナルホお兄様のメールは間違いなく私に対し、火に油を注いだ。私はナルホお兄様とミネスさん両方にメールをした。
『ナルホお兄様との交際は認めません。交際するなら今すぐ死にます!』
『分かった!ナルホとの交際は取りやめにする!』
『ナミネ、ミネスとは交際しないから早まらないで欲しい』
こんな嘘に騙されるものですか!
『お2人とも嘘吐きましたね。今から罰を受けてもらいます』
私はナルホお兄様の携帯にアクセスし、ナルホお兄様のクラスメイトに、悪戯的なメールを一斉送信をした。
次に私はナルホお兄様の携帯からそのままミネスさんのクラスメイトに一斉送信をした。
これだけでは収まらず、私はナルホお兄様の携帯からズルエヌさんにミネスさんが不利になるようなメールをした。
その時、ズルエヌさんからメールが来た。
『妹がご迷惑をおかけして本当に申し訳ありません。ナノハには今別れのメールをしました。妹のしたことは僕のしたこととして今から自首します』
私はナルホお兄様とミネスさんにすかさず、ズルエヌさんのメールを転送する共に意見をした。
『ナルホお兄様とミネスさんが別れたと嘘ついたからズルエヌさんには犠牲になってもらいます。別れたかどうか、帰ったら落ち武者さんにフェアリーングかけて確かめてもらいます!これで別れてなかったら私本当に死にます!』
『ナミネ、ごめん。僕とミネスは別れるつもりはない。ナミネがここまで負いつまっているのは誰にも止められないと思う。ナミネ、辛かったら死んでもいいんだよ。無理に生きることないんだよ』
私はナルホお兄様に見捨てられた。誰かに味方になって欲しくて、ナヤセス殿にナルホお兄様のメールを転送した。
私はトドメにキクスケさんにメールをした。
『あの、適当な男子学生用意して、ナルホお兄様が部屋の扉開けた瞬間、ミネスさんと男子学生を浮気に見せかけてもらえませんか?』
『かしこまりました』
この時点で私は、リアルでどうなっているのか全く分からなかった。(自覚してないけど)初恋のミネスさんの浮気現場を目撃してナルホお兄様が大粒の涙零して泣いていたことも、ナノハお姉様が私を追い詰めたとしてナルホお兄様を殴り続けていたことを、ミネスさんがレイカさんから拷問を受けていたことを。ナルホお兄様がミネスさんを放っておけず私に死んでもいいと言ったことを後になって後悔していたことを。
私は何も知らずにいた。
「あの、ズームさん、ちょっといいですか?」
私はズームさんを連れて離れた席に座った。そして、これまでの経緯をズームさんに全て話した。
「そうでしたか。あなたがそこまで苦しんでいるとは知らずミネスがあなたを追い詰め自分だけ幸せになろうとしていること本当に申し訳なく感じます」
「い、いえ、ズームさんを責めているんじゃなくて、ミネスさんと交際したいばかりに私に死んで欲しいと言ったナルホお兄様のこと信じられなくなったというか、ミネスさんから私とヨルクさんの幸せ壊そうとしたのに、ミネスさんは私に償いもなくナルホお兄様と幸せになるかと思うと許せないというか」
私はまさか、ナルホお兄様にあのような形で裏切られるとは思っていなかった。惚れた女のために実の妹が邪魔になり、私の自殺幇助をするだなんて、人のすることとは思えなかったのだ。
「あんたら何してんのさ。今話し合いの最中だろうが」
「落ち武者さん、ナルホお兄様がミネスさんと交際しました。ナルホお兄様はミネスさんを諦められないばかりに私に死んでもいいと言ってきたんで、私、ラルクと死にます!行くよ、ラルク!」
私はラルクの手を掴んでお店の外に出ようとした。
「待てよ!番人呼び出せ!」
私は渋々キクスケさんを呼び出した。
「お呼びでしょうか」
「僕とラルク、強気なナミネ、ズーム、顔だけヨルクの記憶を残したまま、今日の7時に時間巻き戻せ!」
そんなことしたって結果変わらないのに。二度も傷つきたくないよ。
「かしこまりました。2分後、今日の7時に戻っております。それでは、これにて失礼」
「いいか、強気なナミネ、平和ボケなナルホとお子ちゃまミネスの交際に関しては一切口出しするな!2人のことは放っておけ!あんたを追い詰めて交際したんだから2度目も苦しむのは向こうだ!ナノハ依存ズルエヌには平和ボケなナルホとお子ちゃまミネスが交際した時点で僕がメールする」
私に何のメリットがあるのだろう。私はまた襲われてミネスさん恨んで、そんなミネスさんと交際するナルホお兄様を恨んで自分に耐えきれなくなるだけなのに。
「私に何のメリットがあるんですか!」
「今でも平和ボケなナルホは周りから袋叩きにされてる!あんたがどうこうしなくても自分のことしか考えられないヤツは破滅すんだよ!一度だけ僕を信じろ!」
落ち武者さんがここまで必死に言うなら信じるしかない。今時間巻き戻したら私が苦しんでいることを知っている人がいて私のほうが有利かもしれない。これからはその時に周りに助けを求めよう。
「分かりました」
そして、視界はだんだんボヤけてきた。
気付いたらナノハナ家の布団の中にいた。時計を見ると朝の7時だった。本当に時間が巻き戻っている。
「今からカフェ行くぞ!」
は、早すぎる。でも、いやなもの目にしたくなければ早くここ出ることに超したことはない。私は慌てて着替えた。
「ナミネ、役に立てなくてナミネが負いつまってるの気づけずにナミネに負担かけてごめん。これからはちゃんと話して欲しい。ナミネがいないと生きてる意味がなくなる。ナミネのことはちゃんとサポートする。だから見捨てないで欲しい」
ヨルクさん、また泣いてる。昨日、あまりの苛立たしさに別れ切り出してしまったもんな。あ、時間が巻き戻ったってことはもう一度、キクスケさんにお願いし直さないと。
私はキクスケさんにメールをした。
『ミネスさん含め、誰もがヨルクさんに危害を一切加えないようにしてもらえないでしょうか?』
『かしこまりました。2分後、ヨルクさんは誰からの危害も加えられなくなります』
「ヨルクさん、今キクスケさんにヨルクさんに誰もが手を出さないようお願いしました。時間がないのでもう行きます!」
急がないと、ミネスさんが雇ったチンピラに捕まって気分を害してしまう。
「ナミネ、本当にごめん。ポーチ持って行って。私も一緒に行かなくていい?」
「大丈夫です!ヨルクさんはナノハナ家で過ごしていてください!」
「分かった。ナミネ、気を付けてね」
「はい」
私と落ち武者さんとラルクは逃げるようにナノハナ家を出てタクシーに乗って桜木町のカフェに向かった。
桜木町のカフェに着くと私たちは端っこの席に座った。妖精村は基本24時間営業だから、少し客もいる。数分後、ミナクさん、ユメさん、委員長、エルナさんが来た。あれ、時間戻る前はいなかったはずなのに。まあ、細かいことを気にしていても仕方ない。今回はきっちり、この場での話し合いに参加しないと。
とりあえず、時間巻き戻る前のことはナヤセス殿に報告しておこう。私はナヤセス殿にメールをした。
「で?ミナクは甘えセナとどうなってんの?」
本題に入った。
「ふ、普通だけど」
「カップル日記には、あれだけFメモリイFメモリイ書いといて、最近Fメモリイ投稿ないじゃねえかよ!あんたらどうなってんのさ」
確かに、交際当初はめちゃくちゃラブラブだったのに、今は違うというかミナクさんのほうが冷めてきているようにも見える。
あ、一応時間巻き戻ったんだし、念の為にミネスさんが死なない身体にしてもらえるようもう一度お願いしよう。私はキクスケさんにメールをした。
『あの、ミネスさんがどれだけ死のうとしても死ねないようにしてもらえないでしょうか?』
『かしこまりました。2分後、ミネスさんは死ねない身体となります』
何世紀も生き続けるのかな。それで苦しんでもらえるならこちらも少しは救われるかもしれない。
「少しお休み期間みたいな」
ミナクさん、なかなか話さないからじれったい。
「あんたのために集まったのに、あんたが話さないなら意味ないだろ!食べたら解散するか!」
「最初は恩人であるセナ王女を心から愛してた。けれど、だんだん交際当初のようには見れなくなって、はじめてミネスを見た時、恋に落ちた。このような感情を抱いたのははじめてだ。ミネスのことが好きで好きでたまらない」
カラルリさんの時と同じだ。結局、時間経てば心変わりするのか。隣の芝生は青いと言うが、どのカップルも似たようなものな気がする。けれど、一度心変わりしたものは元には戻らない。セナ王女には可哀想だけれど、縁がなかったのだと思う。
……
あとがき。
どれだけ仲の良い兄妹でも、どちらかに恋人が出来れば、関係も変わるのかもしれません。ナミネは変わらなかったけれど。
走り書きと同じ内容にしたかったのだけれど、出来なかったのが残念。書き直しも考えたけれど、色々難しいです。
ミナクとセナの絡みがかなり少ないのが残念なところ。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
《ナミネ》
私から誰かに攻撃することはない。けれど、周りは違う。妬みや嫉妬は時に人を狂わせてしまうのだ。どれだけ自分から何もしなくても人というのは無理矢理誰かが作り上げた土俵にあげられ闘わされるものなのである。
私はただヨルクさんとのことはそっとしておいて欲しいだけ。ヨルクさんとの幸せを誰にも奪われたくないのだ。
でも、ミネスさんにいきなりとんでもない攻撃をされた時は、生きているだけで反撃しなければいけないことに気付かされた。
私はヨルクさんとの幸せを奪われないためにミネスさんに対抗するしかないと思った。
言ってしまえば、ミネスさんは、ワガママで都合が悪くなれば騒ぎ立て、性格ブスの親の七光り野郎である。私の一番嫌いなタイプだ。
そんなミネスさんのことも、ミネスさんの謝罪により落ち着いたかと思っていた。
そんな矢先だった。
突然5人の高校生くらいの男が第4居間に入ってきた。
「あの、どちら様でしょうか?」
「ナミネってどの女だ!」
「私です!」
その瞬間、男子高生は私を押し倒そうとした。私は男子高生を扇子で吹き飛ばし、花札で拘束した。そして、男子高生に羽子板を少し当てた。
「た、助けてくれ!ミネスって金持ちの女に頼まれたんだ!ナミネをめちゃくちゃにして欲しいって」
「違う!私は断った!でも、この人らがミスコングランプリ取った女だからやるって聞かなくて!お願い、許して!」
いつ依頼したのだろう。何故、そっとしておいてくれないのだろう。
「依頼受けたのはいつですか?」
「昨日だ!」
私の心は凍り付いた。ミネスさんはあれだけ私に許して欲しいとせがんだのに、その裏側で私を襲わせるという計画を立てていたのか。
「私はちゃんと取り消した!信じて!」
「ミネス、前にも言ったけど、ナミネのことは小さい頃からずっと可愛がってきて、大切な存在だって。そんなナミネを襲わせて君の心は晴れたかな?君はセナ王女に同じことされた時、あれほどにセナ王女を悪者にしたのに、ナミネは傷付いてもいいのかな?悪いけど、もう僕は君とは関わらないし、君が困っていても一切助けない。好きに生きるといいよ」
ナルホお兄様は立ち上がった。
「待って、ナルホ!本当に取り消した!ナルホを失いたくない!一度だけチャンスが欲しい!」
ここまで惨めな女を見たことがあるだろうか。せっかくお金持ちに生まれたのに、自分から大切なものを失っていくだなんて。私はただ、そっとして欲しいだけ。でも、その思いはミネスさんにとって悪意だと私は知った。
私は扇子を動かし、ミネスさんに謎の液体を持たせると、ミネスさんを私を襲わせた5人のところまで歩かせ、5人の顔に謎の液体をかけさせた。
「おい、救急車呼べ!」
ヨルクさんは救急車を呼んだ。私を襲わせた5人はすぐに月城総合病院に運ばれて行った。
その時、ズームさんはミネスさんを引っぱたいた。
「ミネス!なんで、ナミネさんを襲わせた!」
「だから、取り消したって!でも、相手が言うこと聞かなかったの!」
「ミネス、どうしてナミネを襲わせたのかな?」
「ナミネが羨ましかったから。私にないもの全部持ってたから。1つくらい不幸になってもナミネなら問題ないと思った。でも、考え直してすぐに取り消した!お願い、ナルホ、見捨てないで!」
1つくらい不幸になっても私なら問題ない?何それ。これだけ付きまとわれて、私はもうミネスさんに反撃する気持ちが萎えつつあった。出来るだけミネスさんと関わらないようにすることにした。
テレビを付けると、早速ニュースが流れた。
『速報です。先程、紅葉町にある月城総合病院に5人の男の子が救急搬送されました。5人のうち1人はすぐにオペが終わり、状態も元通りになったそうです。話を伺うと、ブランケット家の次女にナノハナ家の5女をイヤガラセするよう依頼され、実行しようとしたところ、返り討ちにあい、失敗したことをブランケット家の次女が怒り、5人の顔に謎の液体をかけたとのことです。また4人の顔は既にかなり溶けていて医師も全力を尽くしたものの、顔は元には戻ることはありませんでした。謎の液体をかけられた5人の男の子のご家族はブランケット家に慰謝料を請求すると共にブランケット家の次女を訴える方針だそうです。また、謎の液体をかけられた男の子の中にはflowerグループの御曹司もいました』
flowerグループ。GMグループやUTグループ、plantグループに並ぶ大手企業だ。もうミネスさんとは関わりたくない。私は少しずつミネスさんから離れた。
「お願い、誰か助けて!」
「お子ちゃまミネス、あんた少年院に入れ!ここまで強気なナミネ貶めて助けても何もないだろ!」
「ミネス、少年院で償おうか」
落ち武者さんもナヤセス殿もミネスさんに慈悲は与えなかった。
「ナルホ、許して」
「ミネス、僕はもう君とは関わらない。ナミネのほうが大事だから。今後の人生は君が好きな道選んで歩いてくといいよ」
「ナルホが私を捨てるなら私死ぬ!」
何てワガママな女なの。私は呼び出しカードでキクスケさんを呼んだ。
「お呼びでしょうか」
「あの、ミネスさんが自殺未遂しても絶対に死なないようにしてもらえませんか?」
「かしこまりました。2分後、ミネスさんは死なない身体となります。では、これにて失礼」
死んで逃げることは私は許さない。ミネスさんには生きて償ってもらう。何世紀も生き続けてひとりぼっちになってしまえばいい。
けれど、今日は話し合いの日。ヨルクさんを残して行って何かあったら心配だ。私はキクスケさんにメールをした。
『ミネスさん含め、誰もがヨルクさんに危害を一切加えないようにしてもらえないでしょうか?』
『かしこまりました。2分後、ヨルクさんは誰からの危害も加えられなくなります』
これで、ひとまず安心か。けれど、この時の私は小さな疑問を抱えていた。
「ナミネ、今日は桜木町のカフェに行くんだよね。私はキクリ家から戻ってくるカナエさんに料理教わるから、温かくしていってね。それと、もうすぐ生理だよね。このポーチ渡しておくね」
「ありがとうございます、ヨルクさん」
この違和感はなんだろう。私は分からないままでいた。その時、ナルホお兄様が無言で第4居間を出た。
「ナルホ、待って!」
私はナルホお兄様を追いかけるミネスさんを追い越し、階段の上で階段を登ってきたミネスさんを突き落とした。
「痛い!!」
けれど、キクスケさんの力により、ミネスさんは無敵な身体になっていた。私は3度ほど階段を登るミネスさんを階段から突き落とした。
「いた……。ナミネ、本当にごめん!ナミネのことで色々気付かされた!今は謝ることしか出来ないけど、必ず償う!」
ミネスさんはナルホお兄様の部屋に入っていった。入れ替わりにカンザシさんが玄関から入って来た。
「あの、ミネスは?」
「ミネスさんなら、好きな人が出来たので、カンザシさんはお払い箱だそうです。これからは新しい彼を助けるそうです!」
「ミネスはどこですか?」
「2階です」
カンザシさんは2階を駆け登った。私はまたミネスさんの時のようにカンザシさんを追い越した。
「あ、ミネスさんからお払い箱になったカンザシさんを階段から突き落とすよう言われてるんです」
私は階段を登って来たカンザシさんを思いっきり突き落とした。
「おい、そろそろ行くぞ!」
「分かりました!」
私はカンザシさんが骨折しているとも知らず、ラルクと落ち武者さん、ズームさんとナノハナ家を出てタクシーで桜木町のカフェへと向かった。
桜木町のカフェでは、ミナクさんとユメさん、委員長が来ていた。
「じゃ、適当にメニュー選んで話し合いだな」
私はメニューを見ながら考えごとをしていた。正月、神社でヨルクさんがイジワル犯に間違えられた時、ヨルクさんは否定さえせず、自分の無罪を落ち武者さんに証明してもらった。グルグル妖精さんのマンションでミネスさんから責められた時も、今日の私を襲わせた件も傍観者だった。今の私疲れている。ただでさえ恋愛向けではないから、2人で対処することを1人で一気に対処するとヨルクさんのことを疑ってしまっている自分がいた。
私、苛立っている。
「ラルク、一緒にトーストサンド食べよ」
「じゃあ、そうするか」
それにカンザシさんのこと突き落としてしまったのも今になって罪悪感が私を押し寄せた。
私は苛立ちのあまりヨルクさんにメールをした。
『あの、正月の紅葉神社でヨルクさんがイジワル犯に間違われた時、自分では何もせず落ち武者さんに対処させましたよね?グルグル妖精さんのマンションで私がミネスさんに責められている時も何もしてくれず、今日私が襲われた時もただ傍観してましたよね?更にはさっきキクスケさんにヨルクさんには手出し出来ないようお願いしました。でも、これって本来ヨルクさんが自分ですることなんじゃないんですか?交際で困ったことがあれば2人で解決するもんなんじゃないんですか?私、彼氏に、自分の問題、2人の問題全て丸投げされてかなり疲れています。ミネスさんのことも少しでも助けてくれていたらここまで負い詰まらなかったのに。今、全てを破壊したいです。2人で対処することを1人で対処しなければいけないのは割に会いません。そもそも丸投げとか誓約書違反なので自己防衛のためヨルクさんとは破談にします』
苛立ちから別れたくないのに別れを切り出してしまった。もうすぐ交際して半年なのに。どうして私はいつもこうなのだろう。
『ナミネ、ごめん!正月の時はいきなり犯人にされて頭が真っ白になってた!グルグル妖精さんのマンションでは彼氏として何をしてあげられるか考えたけど思いつかなかった!今日ナミネが襲われた時は突然のことで思考がついていけなかった!本当に不快な思いをさせてしまってごめん!次からは必ずナミネのサポートをする!ミネスさんのことでナミネが機嫌悪くしてたら必ず助ける!だから別れるだなんて言わないで!ここで捨てられたら私には何もなくなってしまう!ナミネ、許して!』
私はヨルクさんに返信をしなかった。
私の恋愛はどうして上手くいかないのだろう。ヨルクさんはどうして困っている時に助けてくれないのだろう。彼女が襲われて傍観するのが彼氏なのだろうか。
とても疲れた。2人分を背負うのは割に合わない。
ヨルクさんからは何通も謝罪のメールが来たけれど私は返信をせず、そのうちにメールも開かなくなっていた。
この時の私はナルホお兄様がミネスさんとカンザシさんを月城総合病院に連れて行く時、一緒に行って、ヨルクさんがミネスさんに私を襲わせたことに対して抗議をしてナルホお兄様に相談してクレナイ家 顧問弁護士の誓約書にサインさせていたことを全く知らなかったのである。また、ナルホお兄様も私が相当負いつまっていることを知り、ナノハナ家 顧問弁護士にかなり厳しい誓約書にサインをさせ、二度と私の機嫌を損ねないよう厳しく言ったらしい。
その時、ナルホお兄様からメールが来た。
『ヨルクは、月城総合病院まで着いてきてナミネを襲わせたことミネスに抗議したし、誓約書も書かせた。だからヨルクのこと許してあげてくれないかな?それから僕はミネスと交際することになったよ』
何それ。ナルホお兄様のメールは間違いなく私に対し、火に油を注いだ。私はナルホお兄様とミネスさん両方にメールをした。
『ナルホお兄様との交際は認めません。交際するなら今すぐ死にます!』
『分かった!ナルホとの交際は取りやめにする!』
『ナミネ、ミネスとは交際しないから早まらないで欲しい』
こんな嘘に騙されるものですか!
『お2人とも嘘吐きましたね。今から罰を受けてもらいます』
私はナルホお兄様の携帯にアクセスし、ナルホお兄様のクラスメイトに、悪戯的なメールを一斉送信をした。
次に私はナルホお兄様の携帯からそのままミネスさんのクラスメイトに一斉送信をした。
これだけでは収まらず、私はナルホお兄様の携帯からズルエヌさんにミネスさんが不利になるようなメールをした。
その時、ズルエヌさんからメールが来た。
『妹がご迷惑をおかけして本当に申し訳ありません。ナノハには今別れのメールをしました。妹のしたことは僕のしたこととして今から自首します』
私はナルホお兄様とミネスさんにすかさず、ズルエヌさんのメールを転送する共に意見をした。
『ナルホお兄様とミネスさんが別れたと嘘ついたからズルエヌさんには犠牲になってもらいます。別れたかどうか、帰ったら落ち武者さんにフェアリーングかけて確かめてもらいます!これで別れてなかったら私本当に死にます!』
『ナミネ、ごめん。僕とミネスは別れるつもりはない。ナミネがここまで負いつまっているのは誰にも止められないと思う。ナミネ、辛かったら死んでもいいんだよ。無理に生きることないんだよ』
私はナルホお兄様に見捨てられた。誰かに味方になって欲しくて、ナヤセス殿にナルホお兄様のメールを転送した。
私はトドメにキクスケさんにメールをした。
『あの、適当な男子学生用意して、ナルホお兄様が部屋の扉開けた瞬間、ミネスさんと男子学生を浮気に見せかけてもらえませんか?』
『かしこまりました』
この時点で私は、リアルでどうなっているのか全く分からなかった。(自覚してないけど)初恋のミネスさんの浮気現場を目撃してナルホお兄様が大粒の涙零して泣いていたことも、ナノハお姉様が私を追い詰めたとしてナルホお兄様を殴り続けていたことを、ミネスさんがレイカさんから拷問を受けていたことを。ナルホお兄様がミネスさんを放っておけず私に死んでもいいと言ったことを後になって後悔していたことを。
私は何も知らずにいた。
「あの、ズームさん、ちょっといいですか?」
私はズームさんを連れて離れた席に座った。そして、これまでの経緯をズームさんに全て話した。
「そうでしたか。あなたがそこまで苦しんでいるとは知らずミネスがあなたを追い詰め自分だけ幸せになろうとしていること本当に申し訳なく感じます」
「い、いえ、ズームさんを責めているんじゃなくて、ミネスさんと交際したいばかりに私に死んで欲しいと言ったナルホお兄様のこと信じられなくなったというか、ミネスさんから私とヨルクさんの幸せ壊そうとしたのに、ミネスさんは私に償いもなくナルホお兄様と幸せになるかと思うと許せないというか」
私はまさか、ナルホお兄様にあのような形で裏切られるとは思っていなかった。惚れた女のために実の妹が邪魔になり、私の自殺幇助をするだなんて、人のすることとは思えなかったのだ。
「あんたら何してんのさ。今話し合いの最中だろうが」
「落ち武者さん、ナルホお兄様がミネスさんと交際しました。ナルホお兄様はミネスさんを諦められないばかりに私に死んでもいいと言ってきたんで、私、ラルクと死にます!行くよ、ラルク!」
私はラルクの手を掴んでお店の外に出ようとした。
「待てよ!番人呼び出せ!」
私は渋々キクスケさんを呼び出した。
「お呼びでしょうか」
「僕とラルク、強気なナミネ、ズーム、顔だけヨルクの記憶を残したまま、今日の7時に時間巻き戻せ!」
そんなことしたって結果変わらないのに。二度も傷つきたくないよ。
「かしこまりました。2分後、今日の7時に戻っております。それでは、これにて失礼」
「いいか、強気なナミネ、平和ボケなナルホとお子ちゃまミネスの交際に関しては一切口出しするな!2人のことは放っておけ!あんたを追い詰めて交際したんだから2度目も苦しむのは向こうだ!ナノハ依存ズルエヌには平和ボケなナルホとお子ちゃまミネスが交際した時点で僕がメールする」
私に何のメリットがあるのだろう。私はまた襲われてミネスさん恨んで、そんなミネスさんと交際するナルホお兄様を恨んで自分に耐えきれなくなるだけなのに。
「私に何のメリットがあるんですか!」
「今でも平和ボケなナルホは周りから袋叩きにされてる!あんたがどうこうしなくても自分のことしか考えられないヤツは破滅すんだよ!一度だけ僕を信じろ!」
落ち武者さんがここまで必死に言うなら信じるしかない。今時間巻き戻したら私が苦しんでいることを知っている人がいて私のほうが有利かもしれない。これからはその時に周りに助けを求めよう。
「分かりました」
そして、視界はだんだんボヤけてきた。
気付いたらナノハナ家の布団の中にいた。時計を見ると朝の7時だった。本当に時間が巻き戻っている。
「今からカフェ行くぞ!」
は、早すぎる。でも、いやなもの目にしたくなければ早くここ出ることに超したことはない。私は慌てて着替えた。
「ナミネ、役に立てなくてナミネが負いつまってるの気づけずにナミネに負担かけてごめん。これからはちゃんと話して欲しい。ナミネがいないと生きてる意味がなくなる。ナミネのことはちゃんとサポートする。だから見捨てないで欲しい」
ヨルクさん、また泣いてる。昨日、あまりの苛立たしさに別れ切り出してしまったもんな。あ、時間が巻き戻ったってことはもう一度、キクスケさんにお願いし直さないと。
私はキクスケさんにメールをした。
『ミネスさん含め、誰もがヨルクさんに危害を一切加えないようにしてもらえないでしょうか?』
『かしこまりました。2分後、ヨルクさんは誰からの危害も加えられなくなります』
「ヨルクさん、今キクスケさんにヨルクさんに誰もが手を出さないようお願いしました。時間がないのでもう行きます!」
急がないと、ミネスさんが雇ったチンピラに捕まって気分を害してしまう。
「ナミネ、本当にごめん。ポーチ持って行って。私も一緒に行かなくていい?」
「大丈夫です!ヨルクさんはナノハナ家で過ごしていてください!」
「分かった。ナミネ、気を付けてね」
「はい」
私と落ち武者さんとラルクは逃げるようにナノハナ家を出てタクシーに乗って桜木町のカフェに向かった。
桜木町のカフェに着くと私たちは端っこの席に座った。妖精村は基本24時間営業だから、少し客もいる。数分後、ミナクさん、ユメさん、委員長、エルナさんが来た。あれ、時間戻る前はいなかったはずなのに。まあ、細かいことを気にしていても仕方ない。今回はきっちり、この場での話し合いに参加しないと。
とりあえず、時間巻き戻る前のことはナヤセス殿に報告しておこう。私はナヤセス殿にメールをした。
「で?ミナクは甘えセナとどうなってんの?」
本題に入った。
「ふ、普通だけど」
「カップル日記には、あれだけFメモリイFメモリイ書いといて、最近Fメモリイ投稿ないじゃねえかよ!あんたらどうなってんのさ」
確かに、交際当初はめちゃくちゃラブラブだったのに、今は違うというかミナクさんのほうが冷めてきているようにも見える。
あ、一応時間巻き戻ったんだし、念の為にミネスさんが死なない身体にしてもらえるようもう一度お願いしよう。私はキクスケさんにメールをした。
『あの、ミネスさんがどれだけ死のうとしても死ねないようにしてもらえないでしょうか?』
『かしこまりました。2分後、ミネスさんは死ねない身体となります』
何世紀も生き続けるのかな。それで苦しんでもらえるならこちらも少しは救われるかもしれない。
「少しお休み期間みたいな」
ミナクさん、なかなか話さないからじれったい。
「あんたのために集まったのに、あんたが話さないなら意味ないだろ!食べたら解散するか!」
「最初は恩人であるセナ王女を心から愛してた。けれど、だんだん交際当初のようには見れなくなって、はじめてミネスを見た時、恋に落ちた。このような感情を抱いたのははじめてだ。ミネスのことが好きで好きでたまらない」
カラルリさんの時と同じだ。結局、時間経てば心変わりするのか。隣の芝生は青いと言うが、どのカップルも似たようなものな気がする。けれど、一度心変わりしたものは元には戻らない。セナ王女には可哀想だけれど、縁がなかったのだと思う。
……
あとがき。
どれだけ仲の良い兄妹でも、どちらかに恋人が出来れば、関係も変わるのかもしれません。ナミネは変わらなかったけれど。
走り書きと同じ内容にしたかったのだけれど、出来なかったのが残念。書き直しも考えたけれど、色々難しいです。
ミナクとセナの絡みがかなり少ないのが残念なところ。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
純愛偏差値 未来編 一人称版 71話
《ミネス》
私はブランケット家の次女 ミネス。
父親は国会議員で母親は料理研究家をしている。小さい頃から私は知力に優れていて、勉強はとても得意だった。
末っ子ゆえ、周りからは可愛がられてきて、自分は恵まれていると思っていた。けれど、そんな思いは姉によって壊されてしまったのである。
お姉ちゃんは決して頭脳明晰ではなく、勉強も苦手で常に赤点。けれど、容姿端麗で、私がずっと片想いしているカンザシを奪った。カンザシとは幼なじみで、よくブランケット家に遊びに来ていた。そして、私のことを実の妹のように可愛がってくれていたのだ。でも、カンザシはお姉ちゃんに一目惚れをした。お姉ちゃんもまた表には出さないもののカンザシに恋愛感情を抱いていたと思う。お互いに初恋だったわけなのだ。
私はどうにかカンザシに振り向いて欲しくて、金銭面でカンザシを援助した。でも、カンザシが私を女として見てくれることはなかった。
田舎があまり好きではない私は、小さい頃に都会の虹色街の別荘で暮らしていた。成績も常に学年トップで委員長をたびたびしていた。クラスでは私は一軍女子で、困っている子には常に優しくしてきた。それも今思えば、満たせない心を自分で慰めていたのだと思う。
そんなある日、学校ではダサイとイジメを受けているお兄ちゃんが、学校外のあるグループと仲良くしていると聞いて、私はナノハナ家に行ってみた。
けれど、大したメンバーはいなくてガッカリした。更には、あれ程に女遊びしていたカンザシにナミネという本命が出来ていて私は物凄くショックを受けた。
ナミネはナノハナ家の5女で、2019年のミスコングランプリ。確かに容姿端麗ではあるけれど、まさかカンザシが私より若い中学1年生のナミネに本気になるとは思わず、私はナミネに会った瞬間から心を痛めた。
ナミネにはカンザシそっくりのヨルクという彼氏がいて、ラルクという幼なじみの親友もいて、芸能活動もしていて、私と同じ末っ子で、幼い頃から紅葉町のみんなから可愛がられていたそうだ。
私はナミネがヨルクから優しくされ、幸せそうにするたびに羨ましくて、次第に妬みの感情が生まれてしまっていた。
けれど、知らない間に第6王女のセナから嫉妬され、私は桜木町の料亭でセナが命令した武官から襲われた。そんな私のピンチを救ってくれたのはナミネの兄のナルホだった。ナルホに対しては自然と心が解放されていた。初対面で、ナルホに興味を持った私はナルホに付きまとった。
でも、ナミネがカンザシにラハルにはじめてを映画の中で捧げたと嘘をついて、傷付いたカンザシは環状線でレイプをし、カンザシを追い詰めたナミネが憎くなり、カンザシがイジワルしたのはナミネのせいとナミネを引っぱたいてしまった。
すると、ナミネから酷い暴力で返って来て、皇帝陛下にかけあうとも言われ、私はひたすらナミネに謝り続けた。けれど、ナミネは私を許さなかった。
その理由は正月の私の行動にあった。
正月にカンザシが1年前にイジワルした女の子が紅葉神社に来ている時、ヨルクを犯人だと叫び、私は知らぬフリをした。そこまでならよかったのだけど、料亭でヨルクはクレナイ家の顧問弁護士をカンザシの家に向かわせたと言い、私は咄嗟にブランケット家の顧問弁護士を向かわせると言ってしまった。けれど、この発言が問題視され、ナミネから犯人隠避と言われ、皇帝陛下に私の処分をくださせた。私は馬鹿の言い分は覆ると皇室に連絡をしたが、皇帝陛下の決断は変わらなく、イジワルされたくない私は、ただただナミネに謝り続けた。
ナミネからは
『○二度とカンザシさんを庇わない
○ヨルクさんに罪を着せたら赤花咲を行う
○ヨルクさんの安全を常に守る
○私とヨルクさんの関係を引き裂かない
○カンザシさんが私に1000年の恋の話題をしたら赤花咲を行う』
という厳しい書面を見せられ、サインしようとしたらナルホが書類を破ってくれた。その後もナミネからの攻撃はナルホが庇ってくれて、私は無自覚にナルホに惹かれはじめていた。
私は、ナミネのヨルクとのことはそっとしておいて欲しいという思いを全く理解してあげられる余裕がなかった。ただ、カンザシに認めて欲しくて、カンザシから褒められたくて、少しでもカンザシに好きになって欲しくて、周りの声が私には聞こえていなかった。グルグル妖精のマンションではカンザシを庇っていることを持ち出され、不利な立場に立たされ、私はひたすらナミネに謝り続けるしかなかった。皇帝陛下は常にブランケット家を優先してくれていたのに、ナミネの母親が皇帝陛下の想い人で皇帝陛下はナミネの意見を優先することを知り、私は素直に負けを認めた。でも、ナミネは許してくれず、ナミネは私を目の敵にし、何がなんでも許そうとせず、あろうことかアルフォンスを犠牲にし私のせいにした。
その後のことは覚えていない。ただ、セルファの兄がみんなの記憶を映画撮影の時まで戻してくれて、私はアルフォンスから責められることはなかった。
ただ、カンザシを庇う。
そこには犯罪名がついていて、ナミネの幸せを奪うことを知った私は改めてナミネに謝った。けれど、ナミネは私を侮辱するばかりで、どれだけ謝っても許してはもらえず、ナミネの取り巻きからも責められ、私はどうしていいのか分からなくなっていた。そんな時、セルファは私にフェアリーングをかけ、私の醜い部分を引き出した。
『お子ちゃまミネス、あんた強気なナミネに言葉で勝てると思ってただろ?強気なナミネはあんたより下だと思ってんだろ?』
『正直、ナミネは頭悪そうだし、私の上には立てないと思ってる。ナミネがどうこう足掻いても最後に勝つのは私だと思ってる。悪いけど馬鹿との話し合いで時間の無駄になって迷惑』
『へえ、それがあんたの本心か。散々強気なナミネに謝ってたのは全て嘘だったってわけ?次にカンザシが問題起こしたら顔だけヨルクに罪でも着せるつもり?』
『そうだね。本気で謝罪はしてない。馬鹿相手にそんなことしない。もちろんカンザシが助かるならヨルクに身代わりになってもらうし、私は私とカンザシだけ無事ならそれでいい!ナミネとヨルクの幸せなんか知らない!』
『あんた、随分悪だな。具体的に聞くけどカンザシがイジワルしたら、その罪、顔だけヨルクに着せるってことか?今後、強気なナミネに何するつもりだ?』
『そうだね。カンザシがイジワルしたらその罪はヨルクに被せる。カンザシのこと取ったナミネには適当に人雇ってイヤガラセさせるつもり。こんな馬鹿に出しゃばられたら溜まったもんじゃないもん』
自分でも醜いと思う。これをセルファは録音していて、伝書鳩に皇室に送らせ、私は皇帝陛下から赤花咲の処分がくだされた。
慌てて私がみんなに縋った時、お兄ちゃんの姿が薄れていた。
お兄ちゃんとカンザシの背中には勾玉のアザがある。カンザシは黒い勾玉でお兄ちゃんは白い勾玉。この2つの勾玉はつがいになっていて、カンザシに危険が迫るとお兄ちゃんにも危害が及ぶ。けれど、その逆はなしなのだ。
お兄ちゃんが消えそうになり、セルファはヨルクにダンゴロを呼び出すよう言い、ヨルクはダンゴロを呼び出し、お兄ちゃんの勾玉のアザと効力を消すようお願いした。ダンゴロはラルクとセレナールの復縁を条件に叶えてくれた。
お兄ちゃんは助かった。
これまでの私はカンザシへの恋愛感情に縛られすぎて周りが見えなくなっていたのだと思う。自分より強い人はいないと思い込み、お兄ちゃんの仲間をみんな馬鹿にしていた。
だから、カンザシには支援しないと言った。
ナミネからは、その後も許しはもらえず、利尿剤を飲まされ、お漏らしと罵られ、泣いただけでも脅され、最終的には妖精クリーンをかけられた。
たった、カンザシを庇っただけで。
私は悔しくてたまらなかった。
そして私はナミネの『ヨルクとのことはそっとしておいて欲しい』の言葉をずっと見落としていた。
ナノハナ家に戻るなりナルホは汚れた私をお風呂に案内してくれた。1人だと怖いと言ったらナルホも一緒に入ってくれた。
ナルホといる時は物凄く心が安らぐ。
「ナルホ……」
「僕は君が全て悪いとは思ってないよ。ただ、ミドリお姉様が無惨な形で亡くなってからナミネは病気になってしまったんだ。でも、君のことはいずれ理解すると思う」
ミドリ。私のことを見た目も性格も不細工な親の七光り野郎と言った時に見せてきた写真の人か。あれが、レイプされた人の死に様とは私もあの時はじめて知った。
ナミネとは反りが合わない。けれど、知り合って間もないのに、ナルホには軽蔑されたくない。
「ナルホ……私を1人にしないで……」
この時の私はカンザシが頼りなく、それでもカンザシが好きで、ナルホへの気持ちに全く気づけずにいた。
ボーッとしていたら、躓いて、私は勢いよくナルホの上に乗ってしまった。
「痛い!」
お湯を見たら血が混じっている。カンザシだけのために残していたはずだった。だけど……。
「とりあえず下りてくれるかな」
「あ、うん」
私はナルホから下りた。
ナルホの部屋では主治医の手当てを受けた。私は疲れて布団に寝転んだ。その時、第2母屋に行くよう声がかかった。
私とナルホは第2母屋へ向かった。
第2母屋の第1居間では、お母さんがいた。
「お母さん!」
その瞬間、私は引っぱたかれた。
え、一度も引っぱたかれたことなんてなかったのに……。
聞くところによると、私が完全に不利になる録音と映像をお母さんは見せられたらしく、まさかの動物園での映像までセルファは所有していた。あの防犯カメラの映像は消したはずなのに。どうして持っているのだろう。
「お子ちゃまミネス、あんた自分のしてること分かってんのか!」
「ごめん!もうカンザシとは関わらない!」
「いいえ、許しません!自分がセナ王女にイジワルされそうになった時は、騒ぎ立てたくせに、それなのにミネスさんはヨルクさんを穢そうとするのですか!皇帝陛下にかけあいます!」
どうしよう。これでまた私の信用が失われていく。
「本当に申し訳ありません。どうか、皇帝陛下に言うことだけは許してください」
お母さんはナミネに土下座した。いつも優しくて思いやりのあるお母さん……。上手(うわて)だからって何をしても許されるのだろうか。お母さんのこんな姿見たくない。
「なあ、あんた自分の娘なら何しても許されると思ってんのかよ!あんたが二度と料理出来ないよう腕の骨へし折ってやる!あんたの娘がしたことはそういうことなんだよ!」
セルファはお母さんの腕を掴んだ。
「きゃあああああああ!!!」
「お母さん!!」
セルファはお母さんの腕を離した。
「次は腕折る」
その瞬間、お母さんはまた私を引っぱたいた。
「あなたのせいで料理出来なくなるところだったじゃない!一生恨んでやる!」
え……怒ったことなんかなかったお母さんが別人になっている。
「ミネスさん、私とヨルクさんのことはそっとしといてください!!お願いだからそっとしといてください!!」
カンザシを庇っただけだった。それが、酷い暴行を受け、脅迫され、親まで呼ばれるとは思っていなかった。私は一発ナミネを叩いただけなのに、ナミネは親の前では被害者気取り。でも、ここで、私がナミネを攻撃したら、お母さんがどうなるか分からない。私は泣きながら堪えた。
「本当に申し訳ありません。どうか一度だけ許してください。ミネスが犯罪を犯していただなんて全く知りませんでした」
その時、誰かが来た。
「それで?あなたの馬鹿娘が私の息子の人生壊そうと計画してたのかしら?」
「本当に申し訳ありません。娘にはちゃんと言い聞かせます」
お母さん、謝ってばかり。
「ハッキリ言います!ミネスさん、ナミネから何かしましたか?全てあなたがナミネをイジメた結果ですよね?反省してもっと苦しんでください!」
ナミネからは……何もしてない……。私はラルクの正論に押し潰された。
「ナミネ、ミネスは十分に反省してる。だから許して欲しい」
「まるで彼氏気取りですね。もし何かあったらナルホお兄様が責任取ってくれるんですか?」
「うん、僕が責任取るよ」
ナルホ……。
「分かりました。一度だけ信じます」
やっと……終わった……。
「一件落着ってことで、ミハネ、今夜は飲むわよ!」
「飲もう飲もう!」
「私、おつまみ作ります」
「よろしくー!」
何時間にも渡るナミネの呪縛から解放された。
再びナルホの部屋に戻ると、ナノハナ食堂のご飯が机に置かれていた。朝からナミネに色々言われて何も食べていなかった私はご飯を食べた。ナルホに近付くと植物の香りがする。
そういえば、ナルホと交際するならナミネの許しも必要なんだ。どうしてこんなこと考えているのだろう。
その時、扉にノックが鳴った。
「カナエ」
「ナルホ、庭園を見せてください」
「うん、いいよ」
ナルホ、植物育ててるんだ。
「私もナルホの庭園見たい!」
「うん、いいよ。寒いから上着着て」
「分かった」
私は食べかけの食事を置いて、ナルホに着いて行った。
ナルホの庭園はとても広い。見たこともない植物も沢山育てている。この空間はまるで幻想的な世界のようだ。
「ナルホ、植物も増えましたね」
「うん、紀元前村にいた時に色々学んだから、帰る時に色々買ってきたんだ」
「カナエもキクリ家で薬草育てています」
「カナエは全て自分で採取してるんだよね」
何この2人、距離が近い。カナエってナルホのこと好きなのだろうか。
「そういえばカナエってアルフォンスからピル飲まされてるんだっけ?本当に愛してるならピルなんか飲ますかなあ?妊娠されたら困る女なんだよ、カナエって」
「そのように人を攻撃して憂さ晴らしすることでしか自分を保てないのですね。カナエはミネスを可哀想に感じます」
本当に愛しているならピルなんか飲ませたりしない。カナエはアルフォンスにとって遊びなのに、この余裕はどこから出てくるのだろう。
この時の私は、カナエがアルフォンスに見切りをつけようとしていることを全く知らなかった。
「じゃあ、アルフォンスにどうしてカナエにピル飲ませるのか聞いちゃおうかな」
「それでミネスの気が済むならどうぞご自由にしてください」
この女ムカつく。いかにも自分がマウント取ってますって感じで、人を見下している。私はカナエを後ろから突き飛ばすとカナエを踏み付けた。その瞬間、カナエは扇子で私を吹き飛ばした。
「愛されてないくせに!」
「愛がそれほどまでに重要でしょうか?カナエは1人なら別にそれはそれで構いません」
この人、セナやセレナールと違って要領がいい。セナはカラルリに依存しすぎて中絶薬盛られ裏切られ、セレナールは無防備に妊娠をカップル日記に書いてアルフォンスにトケイ草を盛られた。
学校では、クラスのみんなに頼られていっぱい褒められて毎日が楽しいのに、ここでは人間関係の作り方が分からない。それに力の強い人ばかりがいる。いつも一軍女子で人の上に立っている私がここでは惨めな人になってしまう。
「ねえ、ラルク。セレナールさんとは続きそう?」
って、ナミネいたのか。
「ズームさんの命かかってるから別れるわけにはいかないしな」
お兄ちゃんて、ここの人らには大切にされているんだ。
「そうだね。でも、リリカさんは納得してくれてるの?」
「納得はしてない。僕が結婚する時には妾として遠くで暮らして欲しいって言ってたらしい」
「難しいね。でも、結婚てまだまだ先だし、それまでにラルクが本当に好きになれる人見つけたらいいよ」
ナミネとラルクは庭園の端っこに体育座りしていた。距離はかなり近いというか、くっついている。
「もう恋愛はしない」
「そっか。ラルクの未来だもんね。どんなラルクでも応援してるよ」
「ナミネ、ミネスとは付き合いしないほうがいいです。さっきいきなりカナエに侮辱してきました」
「えー、ミネスさん最低!」
その瞬間、私の首に何かが巻き付いた。息が出来ない。その時、ナルホが助けてくれた。
「ナミネ、やめようか。ミネスは十分に反省してる。どうしてこんなことするのかな?」
私はナルホの後ろに隠れた。
「ミネスさんがカナエさんのこと侮辱したそうです」
「ミネス、本当かな?」
「侮辱じゃなくて意見しただけ!」
「ラルク、人のことなんてほっときゃいいのにね」
1人より2人の言葉のほうが効力は強い。特に人間関係を上手く作れない人にとっては。ナミネはラルクといると1人の時より断然に別人だ。
「まあ、人のこと干渉するほど暇人なんだろ」
ここでまた言葉したら私が悪者にされてしまう。どうして学校では一軍女子の私が、ここではいちいち人間関係に怯えなければならないのだろう。
「ごめん!悪気はなかった!カナエ、許して欲しい!」
「カナエは別に気にしていません。ナルホ、この植物ください」
「うん、いいよ。ここにあるの、適当に持って行って」
「ありがとうございます」
その瞬間、私はカナエを引っぱたいていた。そして、私はそのままカナエを植物の中に突っ込ませ、植物を台無しにしてしまった。
「カナエさん、大丈夫ですか?」
ナミネはカナエを植物の中から引っ張り出した。次の瞬間、ナミネは私にお手玉を投げた。お手玉は複数になり、猛スピードで私の周りを回転した。私がお手玉の外に出ようとするとお手玉は私を弾いた。私の身体は物凄い痛みが走った。
「ミネスは人にいやがらせしか出来ないのですね。今幸せですか?」
「お願い、助けて!」
「ミネス、どうしてカナエを叩いたのかな?」
どうしよう。あの時、カナエとナルホが親しげにしていたから思わず苛立ってしまった。
「わざとじゃない!許して欲しい!」
「ラルク、どう見てもわざとだったよね。この映像がそれを物語っているよね」
ここの人たち何?お兄ちゃんはどうしてここの人たちと付き合いしているの?
「もう確信犯だな。ここにある植物もダメになってしまったし、老害だな。とりあえず、落ち武者さんとズームさん呼べ!」
「分かった!」
ナミネはセルファとお兄ちゃんを呼び、2人はすぐに来た。そして、ナミネはお兄ちゃんに映像を見せた。
「ミネス!なんてことしてくれたんだ!」
「お兄ちゃん、わざとじゃない!信じて!」
この時の私はカンザシのことを好きながら、恋というものを何も分かっていなかった。それは未来に気付かされることになる。セルファは私にフェアリーングをかけた。
「お子ちゃまミネス、あんたなんで男尽くしカナエ叩いた」
「ナルホとカナエが親しそうにしてたから思わず叩いてしまった。悪気はなかった!」
「あんたカンザシと平和ボケなナルホどっちが好きなんだよ!」
「私はカンザシが好き!」
どうしよう。自分でも訳の分からないことを言ってしまっている。セルファは私のスカートをめくった。
「あんた、下着血がついてるけどどうしたんだよ、これ」
「お風呂に入ってる時、誤ってナルホの入った」
「へえ、あんた平和ボケなナルホに処女捧げたのかよ」
「うん。捧げた!ナルホに捧げた!」
フェアリーングを解こうとしても、足掻くほどに絡まってしまう。一度かけられたら解けないんだ。
「平和ボケなナルホ、あんた事故とはいえ、お子ちゃまミネスの処女奪ってどうすんだよ?」
「ミネスが僕に責任を求めるなら責任は取るつもりだよ」
気が付いたら、ナミネのお手玉もなくなっていて、セルファのフェアリーングも解かれていた。私はその場に泣き崩れた。ナルホは私を抱きかかえ部屋に連れて行き、私を慰めた後、私を布団に寝かせた。
この先、カンザシよりナルホを好きになることがあるだろうか。そうなって欲しい。けれど、私はカンザシのことを諦めきれない。
新たな春の訪れに私はあえて、それを凍らせてしまっていた。
……
あとがき。
ミネス視点でした。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
《ミネス》
私はブランケット家の次女 ミネス。
父親は国会議員で母親は料理研究家をしている。小さい頃から私は知力に優れていて、勉強はとても得意だった。
末っ子ゆえ、周りからは可愛がられてきて、自分は恵まれていると思っていた。けれど、そんな思いは姉によって壊されてしまったのである。
お姉ちゃんは決して頭脳明晰ではなく、勉強も苦手で常に赤点。けれど、容姿端麗で、私がずっと片想いしているカンザシを奪った。カンザシとは幼なじみで、よくブランケット家に遊びに来ていた。そして、私のことを実の妹のように可愛がってくれていたのだ。でも、カンザシはお姉ちゃんに一目惚れをした。お姉ちゃんもまた表には出さないもののカンザシに恋愛感情を抱いていたと思う。お互いに初恋だったわけなのだ。
私はどうにかカンザシに振り向いて欲しくて、金銭面でカンザシを援助した。でも、カンザシが私を女として見てくれることはなかった。
田舎があまり好きではない私は、小さい頃に都会の虹色街の別荘で暮らしていた。成績も常に学年トップで委員長をたびたびしていた。クラスでは私は一軍女子で、困っている子には常に優しくしてきた。それも今思えば、満たせない心を自分で慰めていたのだと思う。
そんなある日、学校ではダサイとイジメを受けているお兄ちゃんが、学校外のあるグループと仲良くしていると聞いて、私はナノハナ家に行ってみた。
けれど、大したメンバーはいなくてガッカリした。更には、あれ程に女遊びしていたカンザシにナミネという本命が出来ていて私は物凄くショックを受けた。
ナミネはナノハナ家の5女で、2019年のミスコングランプリ。確かに容姿端麗ではあるけれど、まさかカンザシが私より若い中学1年生のナミネに本気になるとは思わず、私はナミネに会った瞬間から心を痛めた。
ナミネにはカンザシそっくりのヨルクという彼氏がいて、ラルクという幼なじみの親友もいて、芸能活動もしていて、私と同じ末っ子で、幼い頃から紅葉町のみんなから可愛がられていたそうだ。
私はナミネがヨルクから優しくされ、幸せそうにするたびに羨ましくて、次第に妬みの感情が生まれてしまっていた。
けれど、知らない間に第6王女のセナから嫉妬され、私は桜木町の料亭でセナが命令した武官から襲われた。そんな私のピンチを救ってくれたのはナミネの兄のナルホだった。ナルホに対しては自然と心が解放されていた。初対面で、ナルホに興味を持った私はナルホに付きまとった。
でも、ナミネがカンザシにラハルにはじめてを映画の中で捧げたと嘘をついて、傷付いたカンザシは環状線でレイプをし、カンザシを追い詰めたナミネが憎くなり、カンザシがイジワルしたのはナミネのせいとナミネを引っぱたいてしまった。
すると、ナミネから酷い暴力で返って来て、皇帝陛下にかけあうとも言われ、私はひたすらナミネに謝り続けた。けれど、ナミネは私を許さなかった。
その理由は正月の私の行動にあった。
正月にカンザシが1年前にイジワルした女の子が紅葉神社に来ている時、ヨルクを犯人だと叫び、私は知らぬフリをした。そこまでならよかったのだけど、料亭でヨルクはクレナイ家の顧問弁護士をカンザシの家に向かわせたと言い、私は咄嗟にブランケット家の顧問弁護士を向かわせると言ってしまった。けれど、この発言が問題視され、ナミネから犯人隠避と言われ、皇帝陛下に私の処分をくださせた。私は馬鹿の言い分は覆ると皇室に連絡をしたが、皇帝陛下の決断は変わらなく、イジワルされたくない私は、ただただナミネに謝り続けた。
ナミネからは
『○二度とカンザシさんを庇わない
○ヨルクさんに罪を着せたら赤花咲を行う
○ヨルクさんの安全を常に守る
○私とヨルクさんの関係を引き裂かない
○カンザシさんが私に1000年の恋の話題をしたら赤花咲を行う』
という厳しい書面を見せられ、サインしようとしたらナルホが書類を破ってくれた。その後もナミネからの攻撃はナルホが庇ってくれて、私は無自覚にナルホに惹かれはじめていた。
私は、ナミネのヨルクとのことはそっとしておいて欲しいという思いを全く理解してあげられる余裕がなかった。ただ、カンザシに認めて欲しくて、カンザシから褒められたくて、少しでもカンザシに好きになって欲しくて、周りの声が私には聞こえていなかった。グルグル妖精のマンションではカンザシを庇っていることを持ち出され、不利な立場に立たされ、私はひたすらナミネに謝り続けるしかなかった。皇帝陛下は常にブランケット家を優先してくれていたのに、ナミネの母親が皇帝陛下の想い人で皇帝陛下はナミネの意見を優先することを知り、私は素直に負けを認めた。でも、ナミネは許してくれず、ナミネは私を目の敵にし、何がなんでも許そうとせず、あろうことかアルフォンスを犠牲にし私のせいにした。
その後のことは覚えていない。ただ、セルファの兄がみんなの記憶を映画撮影の時まで戻してくれて、私はアルフォンスから責められることはなかった。
ただ、カンザシを庇う。
そこには犯罪名がついていて、ナミネの幸せを奪うことを知った私は改めてナミネに謝った。けれど、ナミネは私を侮辱するばかりで、どれだけ謝っても許してはもらえず、ナミネの取り巻きからも責められ、私はどうしていいのか分からなくなっていた。そんな時、セルファは私にフェアリーングをかけ、私の醜い部分を引き出した。
『お子ちゃまミネス、あんた強気なナミネに言葉で勝てると思ってただろ?強気なナミネはあんたより下だと思ってんだろ?』
『正直、ナミネは頭悪そうだし、私の上には立てないと思ってる。ナミネがどうこう足掻いても最後に勝つのは私だと思ってる。悪いけど馬鹿との話し合いで時間の無駄になって迷惑』
『へえ、それがあんたの本心か。散々強気なナミネに謝ってたのは全て嘘だったってわけ?次にカンザシが問題起こしたら顔だけヨルクに罪でも着せるつもり?』
『そうだね。本気で謝罪はしてない。馬鹿相手にそんなことしない。もちろんカンザシが助かるならヨルクに身代わりになってもらうし、私は私とカンザシだけ無事ならそれでいい!ナミネとヨルクの幸せなんか知らない!』
『あんた、随分悪だな。具体的に聞くけどカンザシがイジワルしたら、その罪、顔だけヨルクに着せるってことか?今後、強気なナミネに何するつもりだ?』
『そうだね。カンザシがイジワルしたらその罪はヨルクに被せる。カンザシのこと取ったナミネには適当に人雇ってイヤガラセさせるつもり。こんな馬鹿に出しゃばられたら溜まったもんじゃないもん』
自分でも醜いと思う。これをセルファは録音していて、伝書鳩に皇室に送らせ、私は皇帝陛下から赤花咲の処分がくだされた。
慌てて私がみんなに縋った時、お兄ちゃんの姿が薄れていた。
お兄ちゃんとカンザシの背中には勾玉のアザがある。カンザシは黒い勾玉でお兄ちゃんは白い勾玉。この2つの勾玉はつがいになっていて、カンザシに危険が迫るとお兄ちゃんにも危害が及ぶ。けれど、その逆はなしなのだ。
お兄ちゃんが消えそうになり、セルファはヨルクにダンゴロを呼び出すよう言い、ヨルクはダンゴロを呼び出し、お兄ちゃんの勾玉のアザと効力を消すようお願いした。ダンゴロはラルクとセレナールの復縁を条件に叶えてくれた。
お兄ちゃんは助かった。
これまでの私はカンザシへの恋愛感情に縛られすぎて周りが見えなくなっていたのだと思う。自分より強い人はいないと思い込み、お兄ちゃんの仲間をみんな馬鹿にしていた。
だから、カンザシには支援しないと言った。
ナミネからは、その後も許しはもらえず、利尿剤を飲まされ、お漏らしと罵られ、泣いただけでも脅され、最終的には妖精クリーンをかけられた。
たった、カンザシを庇っただけで。
私は悔しくてたまらなかった。
そして私はナミネの『ヨルクとのことはそっとしておいて欲しい』の言葉をずっと見落としていた。
ナノハナ家に戻るなりナルホは汚れた私をお風呂に案内してくれた。1人だと怖いと言ったらナルホも一緒に入ってくれた。
ナルホといる時は物凄く心が安らぐ。
「ナルホ……」
「僕は君が全て悪いとは思ってないよ。ただ、ミドリお姉様が無惨な形で亡くなってからナミネは病気になってしまったんだ。でも、君のことはいずれ理解すると思う」
ミドリ。私のことを見た目も性格も不細工な親の七光り野郎と言った時に見せてきた写真の人か。あれが、レイプされた人の死に様とは私もあの時はじめて知った。
ナミネとは反りが合わない。けれど、知り合って間もないのに、ナルホには軽蔑されたくない。
「ナルホ……私を1人にしないで……」
この時の私はカンザシが頼りなく、それでもカンザシが好きで、ナルホへの気持ちに全く気づけずにいた。
ボーッとしていたら、躓いて、私は勢いよくナルホの上に乗ってしまった。
「痛い!」
お湯を見たら血が混じっている。カンザシだけのために残していたはずだった。だけど……。
「とりあえず下りてくれるかな」
「あ、うん」
私はナルホから下りた。
ナルホの部屋では主治医の手当てを受けた。私は疲れて布団に寝転んだ。その時、第2母屋に行くよう声がかかった。
私とナルホは第2母屋へ向かった。
第2母屋の第1居間では、お母さんがいた。
「お母さん!」
その瞬間、私は引っぱたかれた。
え、一度も引っぱたかれたことなんてなかったのに……。
聞くところによると、私が完全に不利になる録音と映像をお母さんは見せられたらしく、まさかの動物園での映像までセルファは所有していた。あの防犯カメラの映像は消したはずなのに。どうして持っているのだろう。
「お子ちゃまミネス、あんた自分のしてること分かってんのか!」
「ごめん!もうカンザシとは関わらない!」
「いいえ、許しません!自分がセナ王女にイジワルされそうになった時は、騒ぎ立てたくせに、それなのにミネスさんはヨルクさんを穢そうとするのですか!皇帝陛下にかけあいます!」
どうしよう。これでまた私の信用が失われていく。
「本当に申し訳ありません。どうか、皇帝陛下に言うことだけは許してください」
お母さんはナミネに土下座した。いつも優しくて思いやりのあるお母さん……。上手(うわて)だからって何をしても許されるのだろうか。お母さんのこんな姿見たくない。
「なあ、あんた自分の娘なら何しても許されると思ってんのかよ!あんたが二度と料理出来ないよう腕の骨へし折ってやる!あんたの娘がしたことはそういうことなんだよ!」
セルファはお母さんの腕を掴んだ。
「きゃあああああああ!!!」
「お母さん!!」
セルファはお母さんの腕を離した。
「次は腕折る」
その瞬間、お母さんはまた私を引っぱたいた。
「あなたのせいで料理出来なくなるところだったじゃない!一生恨んでやる!」
え……怒ったことなんかなかったお母さんが別人になっている。
「ミネスさん、私とヨルクさんのことはそっとしといてください!!お願いだからそっとしといてください!!」
カンザシを庇っただけだった。それが、酷い暴行を受け、脅迫され、親まで呼ばれるとは思っていなかった。私は一発ナミネを叩いただけなのに、ナミネは親の前では被害者気取り。でも、ここで、私がナミネを攻撃したら、お母さんがどうなるか分からない。私は泣きながら堪えた。
「本当に申し訳ありません。どうか一度だけ許してください。ミネスが犯罪を犯していただなんて全く知りませんでした」
その時、誰かが来た。
「それで?あなたの馬鹿娘が私の息子の人生壊そうと計画してたのかしら?」
「本当に申し訳ありません。娘にはちゃんと言い聞かせます」
お母さん、謝ってばかり。
「ハッキリ言います!ミネスさん、ナミネから何かしましたか?全てあなたがナミネをイジメた結果ですよね?反省してもっと苦しんでください!」
ナミネからは……何もしてない……。私はラルクの正論に押し潰された。
「ナミネ、ミネスは十分に反省してる。だから許して欲しい」
「まるで彼氏気取りですね。もし何かあったらナルホお兄様が責任取ってくれるんですか?」
「うん、僕が責任取るよ」
ナルホ……。
「分かりました。一度だけ信じます」
やっと……終わった……。
「一件落着ってことで、ミハネ、今夜は飲むわよ!」
「飲もう飲もう!」
「私、おつまみ作ります」
「よろしくー!」
何時間にも渡るナミネの呪縛から解放された。
再びナルホの部屋に戻ると、ナノハナ食堂のご飯が机に置かれていた。朝からナミネに色々言われて何も食べていなかった私はご飯を食べた。ナルホに近付くと植物の香りがする。
そういえば、ナルホと交際するならナミネの許しも必要なんだ。どうしてこんなこと考えているのだろう。
その時、扉にノックが鳴った。
「カナエ」
「ナルホ、庭園を見せてください」
「うん、いいよ」
ナルホ、植物育ててるんだ。
「私もナルホの庭園見たい!」
「うん、いいよ。寒いから上着着て」
「分かった」
私は食べかけの食事を置いて、ナルホに着いて行った。
ナルホの庭園はとても広い。見たこともない植物も沢山育てている。この空間はまるで幻想的な世界のようだ。
「ナルホ、植物も増えましたね」
「うん、紀元前村にいた時に色々学んだから、帰る時に色々買ってきたんだ」
「カナエもキクリ家で薬草育てています」
「カナエは全て自分で採取してるんだよね」
何この2人、距離が近い。カナエってナルホのこと好きなのだろうか。
「そういえばカナエってアルフォンスからピル飲まされてるんだっけ?本当に愛してるならピルなんか飲ますかなあ?妊娠されたら困る女なんだよ、カナエって」
「そのように人を攻撃して憂さ晴らしすることでしか自分を保てないのですね。カナエはミネスを可哀想に感じます」
本当に愛しているならピルなんか飲ませたりしない。カナエはアルフォンスにとって遊びなのに、この余裕はどこから出てくるのだろう。
この時の私は、カナエがアルフォンスに見切りをつけようとしていることを全く知らなかった。
「じゃあ、アルフォンスにどうしてカナエにピル飲ませるのか聞いちゃおうかな」
「それでミネスの気が済むならどうぞご自由にしてください」
この女ムカつく。いかにも自分がマウント取ってますって感じで、人を見下している。私はカナエを後ろから突き飛ばすとカナエを踏み付けた。その瞬間、カナエは扇子で私を吹き飛ばした。
「愛されてないくせに!」
「愛がそれほどまでに重要でしょうか?カナエは1人なら別にそれはそれで構いません」
この人、セナやセレナールと違って要領がいい。セナはカラルリに依存しすぎて中絶薬盛られ裏切られ、セレナールは無防備に妊娠をカップル日記に書いてアルフォンスにトケイ草を盛られた。
学校では、クラスのみんなに頼られていっぱい褒められて毎日が楽しいのに、ここでは人間関係の作り方が分からない。それに力の強い人ばかりがいる。いつも一軍女子で人の上に立っている私がここでは惨めな人になってしまう。
「ねえ、ラルク。セレナールさんとは続きそう?」
って、ナミネいたのか。
「ズームさんの命かかってるから別れるわけにはいかないしな」
お兄ちゃんて、ここの人らには大切にされているんだ。
「そうだね。でも、リリカさんは納得してくれてるの?」
「納得はしてない。僕が結婚する時には妾として遠くで暮らして欲しいって言ってたらしい」
「難しいね。でも、結婚てまだまだ先だし、それまでにラルクが本当に好きになれる人見つけたらいいよ」
ナミネとラルクは庭園の端っこに体育座りしていた。距離はかなり近いというか、くっついている。
「もう恋愛はしない」
「そっか。ラルクの未来だもんね。どんなラルクでも応援してるよ」
「ナミネ、ミネスとは付き合いしないほうがいいです。さっきいきなりカナエに侮辱してきました」
「えー、ミネスさん最低!」
その瞬間、私の首に何かが巻き付いた。息が出来ない。その時、ナルホが助けてくれた。
「ナミネ、やめようか。ミネスは十分に反省してる。どうしてこんなことするのかな?」
私はナルホの後ろに隠れた。
「ミネスさんがカナエさんのこと侮辱したそうです」
「ミネス、本当かな?」
「侮辱じゃなくて意見しただけ!」
「ラルク、人のことなんてほっときゃいいのにね」
1人より2人の言葉のほうが効力は強い。特に人間関係を上手く作れない人にとっては。ナミネはラルクといると1人の時より断然に別人だ。
「まあ、人のこと干渉するほど暇人なんだろ」
ここでまた言葉したら私が悪者にされてしまう。どうして学校では一軍女子の私が、ここではいちいち人間関係に怯えなければならないのだろう。
「ごめん!悪気はなかった!カナエ、許して欲しい!」
「カナエは別に気にしていません。ナルホ、この植物ください」
「うん、いいよ。ここにあるの、適当に持って行って」
「ありがとうございます」
その瞬間、私はカナエを引っぱたいていた。そして、私はそのままカナエを植物の中に突っ込ませ、植物を台無しにしてしまった。
「カナエさん、大丈夫ですか?」
ナミネはカナエを植物の中から引っ張り出した。次の瞬間、ナミネは私にお手玉を投げた。お手玉は複数になり、猛スピードで私の周りを回転した。私がお手玉の外に出ようとするとお手玉は私を弾いた。私の身体は物凄い痛みが走った。
「ミネスは人にいやがらせしか出来ないのですね。今幸せですか?」
「お願い、助けて!」
「ミネス、どうしてカナエを叩いたのかな?」
どうしよう。あの時、カナエとナルホが親しげにしていたから思わず苛立ってしまった。
「わざとじゃない!許して欲しい!」
「ラルク、どう見てもわざとだったよね。この映像がそれを物語っているよね」
ここの人たち何?お兄ちゃんはどうしてここの人たちと付き合いしているの?
「もう確信犯だな。ここにある植物もダメになってしまったし、老害だな。とりあえず、落ち武者さんとズームさん呼べ!」
「分かった!」
ナミネはセルファとお兄ちゃんを呼び、2人はすぐに来た。そして、ナミネはお兄ちゃんに映像を見せた。
「ミネス!なんてことしてくれたんだ!」
「お兄ちゃん、わざとじゃない!信じて!」
この時の私はカンザシのことを好きながら、恋というものを何も分かっていなかった。それは未来に気付かされることになる。セルファは私にフェアリーングをかけた。
「お子ちゃまミネス、あんたなんで男尽くしカナエ叩いた」
「ナルホとカナエが親しそうにしてたから思わず叩いてしまった。悪気はなかった!」
「あんたカンザシと平和ボケなナルホどっちが好きなんだよ!」
「私はカンザシが好き!」
どうしよう。自分でも訳の分からないことを言ってしまっている。セルファは私のスカートをめくった。
「あんた、下着血がついてるけどどうしたんだよ、これ」
「お風呂に入ってる時、誤ってナルホの入った」
「へえ、あんた平和ボケなナルホに処女捧げたのかよ」
「うん。捧げた!ナルホに捧げた!」
フェアリーングを解こうとしても、足掻くほどに絡まってしまう。一度かけられたら解けないんだ。
「平和ボケなナルホ、あんた事故とはいえ、お子ちゃまミネスの処女奪ってどうすんだよ?」
「ミネスが僕に責任を求めるなら責任は取るつもりだよ」
気が付いたら、ナミネのお手玉もなくなっていて、セルファのフェアリーングも解かれていた。私はその場に泣き崩れた。ナルホは私を抱きかかえ部屋に連れて行き、私を慰めた後、私を布団に寝かせた。
この先、カンザシよりナルホを好きになることがあるだろうか。そうなって欲しい。けれど、私はカンザシのことを諦めきれない。
新たな春の訪れに私はあえて、それを凍らせてしまっていた。
……
あとがき。
ミネス視点でした。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
純愛偏差値 未来編 一人称版 70話
《ヨルク》
朝の8時頃、ナミネは病院のベッドの上で目を覚ました。けれど、昨日の夜、何があったのか私は何も覚えていなかった。
「あの、何があったのでしょうか」
ナミネはベッドから起き上がった。
「セリルが全部片付けたから、あんたは何も心配しないで、いつも通りに過ごしてろ!」
セリルさんが出るほどの事態があったのだろうか。だとしたら、知らないままは、それはそれで問題な気がする。
「落ち武者さん教えてください!」
「お子ちゃまミネスがカンザシがイジワルしたのはあんたのせいだとあんた叩いたんだよ。するとあんたはお子ちゃまミネスに殴り返した。皇帝陛下にかけあうと言ってな。お子ちゃまミネスは何度もあんたに謝ったけど、許さず、お子ちゃまミネスのせいにして平凡アルフォンスの切断したんだよ。その後、事態はおおごとになって、セリルが数式で映画撮影終えたところまで、みんなの記憶消したんだ。無論、あんたが悪いとは言わない。お子ちゃまミネスにも問題あったからな」
そんなことがあったのか。ナミネは純粋で人一倍優しくて困っている人を放っておけない。そのせいで、いつも自分が犠牲になって苦しんでいた。人を助けるほどに犠牲になった心は定期的に爆発し、今回のような事態を招いてしまう。
「そうでしたか……全て私が招いたことだったのですね」
ナミネ、それは違う!そう言おうとした時、ミネスさんとナルホさんが入ってきた。
「詳細はナヤセスから聞いた。二度とカンザシのことでナミネを攻撃しない。だから一度だけチャンスが欲しい」
ミネスさんは、昨日何回もこうやってナミネに訴えかけていたのだろうか。
「分かりました。ミネスさんとはせっかく知り合った仲ですし、私も極力ミネスさんの気持ちを汲み取る努力をします。ですが、カンザシさんのイジワルが私のせいなら動物園でカンザシさんがメスライオンにヨルクさんを襲わせたのはミネスさんのせいですよね?」
やはりナミネは簡単には許さない。それも無理もないかもしれない。ずっと私とナミネの関係を壊そうとしてきて、正月いきなり現れたかと思うとカンザシさんのイジワルを私に擦り付けようとしていただけに、ナミネは相当怒っていると思う。
「うん、そうだね。カンザシが2人に危害加えたら私が責任を取る。今後は二度と2人の関係をカンザシに引き裂かせない。約束する」
「信じられると思います?正月に犯人隠避しておいて、あのままヨルクさんが逮捕されていたらどう責任取ってくれたんですか!ミネスさんてお嬢様育ちだからワガママですよね!自分とカンザシさんさえ良ければ私とヨルクさんは不幸になってもいい。それなのにセナ王女からちょっと攻撃されただけで大声で泣いて、自分が不利な時だけ被害者気取り!そういう人間1番ムカつくんです!1週間以内に私の機嫌を取れないなら皇帝陛下にかけあいます!いいですか!皇帝陛下はお母様を世界で1番愛しています!だから私の意見が通ります!」
ダメだ。ミドリさんが戻ってきた安心感からなのか、今度は私との関係を極度に気にしはじめている。ミネスさんは、こちらの状況を殆ど知らない。けれど、ここでナミネに意見したらまたナミネがヒステリーを起こしてしまう。
「そうだね、私は狡い女だよ。カンザシに利用されているの分かっていて、それでもカンザシが好きでどうしようもなくて、周りの人間のこと見えてなかった。どうしたら機嫌直してくれる?ナミネが私に怒ってはじめて私は身勝手だと気付かされた。そんな生き方はもうしない。ちゃんと周りのことも考える」
「セナ王女とミナクさんの関係壊して、ヨルクさんをイジワル犯に仕立てあげようとして、カンザシさんが何かしたら私に怒鳴って殴って、今更許されるとでも思ってるんですか?」
「ナミネ、やめようか。ミネスは……」
「ナルホお兄様は黙っていてください!」
ナルホさんはナミネの怒鳴り声に黙り込んだ。ミネスさんはナミネに責められ続け、悪戦苦闘している。
「今からでもナミネの許しを請いたい」
「ミネス、妹は苦労してきたんだ。そんなナミネをイジメて僕もミネスが許せないし、ミネスのことは僕が訴える」
「なあ、お子ちゃまミネスあんた強気なナミネに嫉妬してんだろ!嫉妬で殴るとか最低だな!今度は僕が平凡アルフォンスの切断してやろうか?」
ナヤセスさんと落ち武者さんがナミネの味方をした。少し可哀想に思えてきた。けれど、今私が出来ることなんてあるのだろうか。
「ナヤセスが私を訴えたいならそうしてもらって構わない。それでも、私はナミネが許してくれるまで何度も許しを乞う。確かにカンザシの本命になれたナミネのことは羨ましい。でも、少し平手打ちしただけでアルフォンスが切断されるとは思ってなかった。そのセリルって人にもちゃんと説明するし、ナミネが望むことは何でもする」
これだけ謝っているのにナミネは少しも譲歩しない。いったい何をそんなに苛立っているのだろう。その時、ラルクが2つの扇子を重ね合わせパチンと鳴らせた。
「ナミネ、許してやれ。ナヤセスさんがIQ200ちょいとして、ミネスさんはとんでもないIQの持ち主だ。これまでナミネに許しを乞うフリをしながら頭の悪いナミネのこと心では笑ってたんだよ」
「違う!私は本当にナミネに謝罪してた!」
「そっか、私馬鹿だもんね。これまで私が怒ってるの見てミネスさん、私のこと馬鹿にしてたんだ。少しも気付かなかったよ」
ラルクのいらぬ言葉でナミネは泣きはじめた。私はナミネを抱き締めた。
「ナミネ、泣かないで」
「ヨルクさん、ここまで見下されて悔しいです」
ナミネは私の腕の中でワンワンと泣いた。
人は無意識に自分の人間関係にカースト制度を作り上げている。富と名誉がある人は上に行く。それよりも上回るのは頭脳明晰な人だ。ナミネは頭脳ではミネスさんに勝つことは出来ない。さっきまでの話し合いもミネスさんが有利だったからミネスさんは堂々としていられたのだろう。
「ナミネ、本当に違う!私、強気なナミネを見下してなんかいない!」
「お子ちゃまミネス、あんた人馬鹿にすんのもいい加減にしろよ!」
落ち武者さんはミネスさんにフェアリーングをかけた。
「お子ちゃまミネス、あんた強気なナミネに言葉で勝てると思ってただろ?強気なナミネはあんたより下だと思ってんだろ?」
「正直、ナミネは頭悪そうだし、私の上には立てないと思ってる。ナミネがどうこう足掻いても最後に勝つのは私だと思ってる。悪いけど馬鹿との話し合いで時間の無駄になって迷惑」
これがミネスさんの本心なのか。あれだけナミネに謝っておいて、全て演技で、心の中ではナミネのこと馬鹿にしていたのか。何て恐ろしい人だ。
「へえ、それがあんたの本心か。散々強気なナミネに謝ってたのは全て嘘だったってわけ?次にカンザシが問題起こしたら顔だけヨルクに罪でも着せるつもり?」
「そうだね。本気で謝罪はしてない。馬鹿相手にそんなことしない。もちろんカンザシが助かるならヨルクに身代わりになってもらうし、私は私とカンザシだけ無事ならそれでいい!ナミネとヨルクの幸せなんか知らない!」
「あんた、随分悪だな。具体的に聞くけどカンザシがイジワルしたら、その罪、顔だけヨルクに着せるってことか?今後、強気なナミネに何するつもりだ?」
「そうだね。カンザシがイジワルしたらその罪はヨルクに被せる。カンザシのこと取ったナミネには適当に人雇ってイヤガラセさせるつもり。こんな馬鹿に出しゃばられたら溜まったもんじゃないもん」
落ち武者さんはフェアリーングを解いた。その瞬間、みんながミネスさんを軽蔑したような目で見た。
「待って!今のは本心じゃない!」
「もう遅いんだよ、さっきのあんたの証言全部録音済みだ!バーカ!」
落ち武者さんはチップを伝書鳩に加えさせると窓から伝書鳩を飛ばした。やはり、宛先は皇室だろうか。
「ミネス、僕はナミネのことは小さい頃から可愛がってきた。僕が1番下だと思っていたからナミネが生まれた時は嬉しくて仕方なかったよ。ナミネは人一倍真っ直ぐで多くのこと1人で抱え込むからいつも心配してた。そんなナミネのことを侮辱した君とはもう関わらないよ」
「ごめん、ナルホ!でも、本当にさっきのは本心じゃなかった!ナルホにだけは誤解されたくない!ナミネには悪いことをしたと思ってる!信じて!」
ナルホさんはミネスさんを無視した。
さっきの落ち武者さんのかけたフェアリーングはミネスさんの本心なのだろうか。それともミネスさんが不利になるように別の部分の感情を引き出したのだろうか。どちらにしても、みんなの前であれだけのことを言ってしまえば家紋にも傷が付く。
その時、テレビからニュースが流れた。
『速報です。たった今、皇室に伝書鳩が送られてきました。録音を再生すると、ブランケット家の次女が自分の彼氏がイジワルしたら、その罪をクレナイ家の次男に着せると言っていたり、ナノハナ家の5女をイヤガラセさせる計画も立てている模様です。これに対して皇帝陛下は、ブランケット家次女の赤花咲処分を確定しました』
やはり落ち武者さんは皇室に伝書鳩を送ったのか。皇帝陛下のくだした決断は絶対だ。ミネスさんは守りたいものを守ろうとして、逆に全てを失った。
「待って!誰か助けて!」
ミネスさんが叫ぶものの誰もミネスさんに手を差し伸べようとはしなかった。例え、フェアリーングをかけられなくてもミネスさんの本心が悪い方向で定まっていたのであれば、いずれ同じ結果になっていただろう。ナミネはトドメにミネスさんに何かを飲ませた。
「ねえ、ラルク、紀元前村行くの楽しみだね」
「そうだな。でも、タルリヤさんの町だけ遠い昔と変わっていないなんて奇妙だな」
「あー、ミネスさんお漏らししてる!」
ナミネはミネスさんの写真を撮った。もうミネスさんに慈悲を与える者はこの中には誰もいない。
「いい歳して恥ずかしいな」
その時、ズームさんがミネスさんを引っぱたいた。
「お兄ちゃ……」
「ミネス!お前、ナミネさんを襲わせる気なのか!」
あれ、ズームさんの身体が透けている。
「お兄ちゃん、身体が……!カンザシに何言われたの!お兄ちゃん、しっかりして!誰か、お兄ちゃんを助けて!」
「顔だけヨルク、今すぐエロじじい呼び出せ!」
私は慌てて呼び出しカードを取り出しダンゴロさんを呼び出した。
「何?今、女神と遊んでたんだけど」
「ダンゴロさん、ズームさんの背中の勾玉のアザ、効力ごと消してもらえませんか?」
アザを残したまま回復させるより、根本的なものを取り払ってしまったほうがいいだろう。ズームさんとカンザシさんを引き離すことが出来たらカンザシさんの後ろ盾はなくなる。
「別にいいけど、君まだ未熟だから、ラルクとセレナールの復縁が条件ね」
みんなはラルクを見た。
「ズームさんが助かるならセレナール先輩と復縁します!」
「じゃ、消すよ」
落ち武者さんはズームさんのトレーナーをめくって確かめた。アザは消えている。
「頼みごとは聞いたから僕は戻るね」
ダンゴロさんは女神の湖に戻って行った。
「ズーム、あんたこれでもうカンザシには縛られない!これからはあんたの人生生きろ!」
その時、アルフォンス王子が目覚めたのか他のメンバーも入って来た。
「カンザシ、私、カンザシに利用されてると分かりながらもカンザシのこと好き。でも、家族のほうがもっと大事なの。今後はカンザシに片想いはするけど、カンザシの支援は一切しない。私、ここにいるメンバーと仲良くなる」
その瞬間、ナルホさんはコートをミネスさんに着せた。
「急にどうしたんだよ、ミネス。僕はミネスの助けがないとダメなんだ」
「カンザシ!僕ももう支援しない!今のマンション代も自分で払え!僕はこれからは自分の道を行く!もうお前に縛られない!」
あの勾玉のアザを消したことによってカンザシさんは巨大な後ろ盾を失った。同情は出来ないけど、これでよかったと思う。
「ズーム、何言ってんだよ。あんた高い家賃払えるわけないだろ!ズームが払え!後、ナミネさんとの婚姻、今すぐ手続きしろ!」
みんなは敢えてズームさんの背中の勾玉のアザが消えたことを言わない。
「リーダー、支払える安いアパートに引っ越しましょう。紅葉町のアパートは解約しましょう。でないと暮らしていけないです」
「馬鹿なこと言うな、ミツメ!あのマンションの契約を解除するつもりはない!ズーム、払わないとどうなるか分かるよな」
「勝手にしろ、カンザシ!」
アザ1つでここまで人間関係が大きく揺れるなんて。それだけ、カンザシさんはズームさんやミネスさんに感謝してこなかったのだろう。
「お漏らしミネスさん〜今後のカンザシさんの行動で、あなたの人生も決まりますよ〜!今、ブランケット家のご両親がナノハナ家に謝罪しに来ているそうです」
ナミネはミネスさんに画像を見せ付けていた。
「分かった。カンザシにナミネを傷付けさせない。信じて欲しい」
「私のこと馬鹿とか人雇って輪姦させるとか言ったお漏らしミネスさんには、一軍から降格してもらいましょうかね」
「待って!あれは本当に私の本心じゃない!信じてくれなくても構わない!私はナミネと友達になりたいと思ってる!だから、これからの行動で判断して欲しい!絶対に裏切らないから!」
一度表に出てしまった言葉を引っ込めることは出来ない。ナミネのことを罵ったミネスさんは本当に、今後ナミネの機嫌を損ねないか心配だ。
「あの、ミネスさん、私は彼女を侮辱されて気分を害してます。いくら後からあなたの本心じゃないと言われても落ち武者さんのフェアリーングは完璧ですし、ナミネのこと傷付けないで欲しいんです」
私も言葉に出さずにはいられなかった。
「今は信じてもらえないかもしれない。でも、私はナミネを襲わせようなんて思ったことない。カンザシの支援も今後はしないし、カンザシの犯罪も擦り付けるつもりはない。私は、お兄ちゃんが今いるグループの中に入りたい」
「お子ちゃまミネス、強気なナミネの機嫌損ねたら、あんたの父親の余命3年にするからね?」
「ミネス、今後ナミネをイジメることだけはやめてほしい」
「ミネス、僕も君の行動はどうかと思う。ナミネを貶めているようにしか見えない」
落ち武者さんに、ナヤセスさん、ラハルさんがミネスさんを警戒している。
「絶対にナミネの機嫌を損ねない」
ミネスさんは、後々からみんなに色々言われて涙が零れていた。
「泣き落としですか!皇帝陛下にかけあいますよ!」
「ごめん!もう泣かない!」
「おい、お子ちゃまミネス、あんた強気なナミネの機嫌損ねないって約束しただろ!」
落ち武者さんはミネスさんを突き飛ばした。
「ごめん!許して欲しい!」
「ミネス、みんながこれだけナミネを庇う理由分かるかな?君が犯人隠避をしたからだよ。許してと言われても泣かれても君のした行為は変わらないんだ。君のみを責めたくはないけれど、ヨルクをイジワル犯にしようとしたり、ヨルクを犯そうとしたり、そういうことをした以上は、ここにいる人の信頼を得るには相当な努力が必要だと思うんだよね。言ってしまえば君はセナ王女が君にしたことと同じことをしたんだよ」
ミネスさんは泣きながらナルホさんに抱き着いた。
「本当に悪いことをしたと思ってる!君の妹の幸せ壊そうとしたこと反省してる。二度と同じ過ちは繰り返さない!みんなの信頼を得る努力はちゃんとする!」
その時、ナミネがカンザシさんを殴り付けた。
「あ、すみません〜!ミネスさんに殴るよう頼まれました〜!ミネスさん〜泣いたらクラスの一軍から降格してもらいますよ〜!」
「そうですか」
「分かった!泣かない!」
ミネスさんは必死に涙を堪えていた。カンザシさんを庇うことがいかに人の心を壊すかミネスさんは分かっていなかったのだろう。ナミネは今度はカンザシさんの急所を蹴りつけた。
「すみません〜!ミネスさんに頼まれました〜!ミネスさん〜!ここでカンザシさんが私に攻撃したらミネスさんのせいですよ!それが犯人隠避をすることの責任というものなんです。あなたが馬鹿だから身をもって教えてあげてます!」
カンザシさんは無言でその場に蹲った。
「分かった、カンザシを庇ったことに対する責任は取る!カンザシ、ナミネを攻撃したり、ナミネの幸せ壊したら芸能界やめてもらう。カンザシを庇うことがみんなからここまでイジメられるとは思ってなかった」
「イジメたのはあなたでしょう!」
ナミネはミネスさんを押し倒し殴り続けた。
「ごめん!言葉間違えた!私が犯罪者庇ったからこうなった!殴らないで!痛い!」
「お子ちゃまミネス、あんた終わりだ!」
「待って!みんなが怒るのは私の責任!本当にごめん!」
ナミネは、ミネスさんに妖精クリーンをかけた。
「きゃあああああああああああ!!!!」
ナルホさんはコールボタンを押し、駆け付けた医師が処置をして、幸いミネスさんに大きな傷は残らなかった。ナミネを怒らせれば手の付けようがない。ミネスさんには悪いけど耐えきれなくなったらグループを抜けてもらうしかないと思う。
ナルホさんは無言でミネスさんにコートを着せた。
「ミネスさん、私に口答えしないでください!言ったでしょう!私からは何もしないと!私はただ、ヨルクさんとのことはそっとしといて欲しいんです!でも、ミネスさんはカンザシさんのイジワルをヨルクさんに擦り付けようとしました!だから、今後カンザシさんが何かすれば、今回みたいにあなたには十分な罰を受けてもらいます」
「ごめんなさい……もう犯罪者は庇わない……だから妖精クリーンをかけないで」
最後にナミネはミネスさんの横腹を思いっきり蹴った。ミネスさんはボロボロになっていた。
「耐えきれないならどうぞご自由にグループを抜けてください!とにかくヨルクさんとのことはそったしといてください!!」
「グループは抜けない……ナミネ……ごめんなさい」
「じゃ、そろそろナノハナ家戻る」
カンザシさんも着いてこようとしたが、落ち武者さんが拘束してカンザシさんを動けなくした。ラハルさんはナミネが心配だからとみんなとナノハナ家に向かうことになった。
あれこれ騒いでいる間に15時を過ぎていた。
ヘリコプターの中ではカンザシさんから、ミネスさん、ナミネ、ズームさんに大量のメールが来ていた。しかし、3人とも返すことはなかった。
ナノハナ家に着くと、みんなはクタクタな状態で第4居間に入った。服が汚れたミネスさんはナルホさんにお風呂に案内された。
ナミネの機嫌は少しは直っただろうか。
「ねえ、ラルク。カンザシさん、マンションの家賃どうするんだろうね」
「あのマンション、ひと月200万円くらいじゃなかったか?ニンジャ妖精さんて1人ひと月10万円も稼いでないんだろ。だったら払いきれないわな」
ナヤセスさんも似たようなマンションに住んでいたっけ。
「私ね、やっぱりミネスさんのこと許せない。カンザシさんのイジワルをヨルクさんのせいにしようとしたり、ヨルクさんをイジワルさせようとしたり。仲間とは思えないし、私防犯カメラの映像で見ちゃったんだよね。ライオンのオリの鍵、ミネスさんがカンザシさんに渡すのを」
私は大きな勘違いをしていた。カンザシさんが独断で鍵を開けたのではなく、ミネスさんがカンザシさんに開けるよう指示したのか。恐ろしい女だ。
「強気なナミネ、その映像今すぐ見せろ!」
「でも、ロックがかかっていて見れないんです」
「いいから貸せ!」
ナミネは落ち武者さんに携帯を渡した。落ち武者さんはすぐにロックを解除した。
映像はライオンがいるオリにミネスさんがカンザシさんを連れて行くところからはじまっていた。
『ミネス、どうしてもナミネさんが欲しい』
『カンザシ、メスライオンにヨルク犯させればいいよ。そうしたらナミネとヨルクの仲は完全に壊れる。運命なんてないんだよ。ナミネが欲しいならヨルクと引き離せばいいんだよ』
ミネスさんはライオンのオリの鍵をカンザシさんに渡した。カンザシさんはライオンのオリの鍵を開けた。
『これ、痺れ薬だから、ナミネに飲ませて、後はカンザシの好きにすればいいよ。カンザシには常に私がついてる』
ミネスさんはカンザシさんを抱き締めた。
『ありがとう、ミネス』
『カンザシ、幸せになって』
映像はそこで途切れていた。
「ブランケット家の両親まだここにいるなら、第2母屋に行って今すぐこの映像見せに行くぞ!」
落ち武者さんとナミネ、ラルクは第2母屋に走った。私も着いて行った。
私は世間知らずだったと思う。こちらから何もしなくても目を付けられてしまえばストーカーのように攻撃を受けてしまうこともありうる。
この世の人間の多くは穢れた心しか持っていない。これまでの甘い考えならナミネとの幸せが壊されてしまう。
この時から私は穢れた人の人生の土俵に無意識に上がるようになっていった。
……
あとがき。
ナミネがミネスに反撃する回でした。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
《ヨルク》
朝の8時頃、ナミネは病院のベッドの上で目を覚ました。けれど、昨日の夜、何があったのか私は何も覚えていなかった。
「あの、何があったのでしょうか」
ナミネはベッドから起き上がった。
「セリルが全部片付けたから、あんたは何も心配しないで、いつも通りに過ごしてろ!」
セリルさんが出るほどの事態があったのだろうか。だとしたら、知らないままは、それはそれで問題な気がする。
「落ち武者さん教えてください!」
「お子ちゃまミネスがカンザシがイジワルしたのはあんたのせいだとあんた叩いたんだよ。するとあんたはお子ちゃまミネスに殴り返した。皇帝陛下にかけあうと言ってな。お子ちゃまミネスは何度もあんたに謝ったけど、許さず、お子ちゃまミネスのせいにして平凡アルフォンスの切断したんだよ。その後、事態はおおごとになって、セリルが数式で映画撮影終えたところまで、みんなの記憶消したんだ。無論、あんたが悪いとは言わない。お子ちゃまミネスにも問題あったからな」
そんなことがあったのか。ナミネは純粋で人一倍優しくて困っている人を放っておけない。そのせいで、いつも自分が犠牲になって苦しんでいた。人を助けるほどに犠牲になった心は定期的に爆発し、今回のような事態を招いてしまう。
「そうでしたか……全て私が招いたことだったのですね」
ナミネ、それは違う!そう言おうとした時、ミネスさんとナルホさんが入ってきた。
「詳細はナヤセスから聞いた。二度とカンザシのことでナミネを攻撃しない。だから一度だけチャンスが欲しい」
ミネスさんは、昨日何回もこうやってナミネに訴えかけていたのだろうか。
「分かりました。ミネスさんとはせっかく知り合った仲ですし、私も極力ミネスさんの気持ちを汲み取る努力をします。ですが、カンザシさんのイジワルが私のせいなら動物園でカンザシさんがメスライオンにヨルクさんを襲わせたのはミネスさんのせいですよね?」
やはりナミネは簡単には許さない。それも無理もないかもしれない。ずっと私とナミネの関係を壊そうとしてきて、正月いきなり現れたかと思うとカンザシさんのイジワルを私に擦り付けようとしていただけに、ナミネは相当怒っていると思う。
「うん、そうだね。カンザシが2人に危害加えたら私が責任を取る。今後は二度と2人の関係をカンザシに引き裂かせない。約束する」
「信じられると思います?正月に犯人隠避しておいて、あのままヨルクさんが逮捕されていたらどう責任取ってくれたんですか!ミネスさんてお嬢様育ちだからワガママですよね!自分とカンザシさんさえ良ければ私とヨルクさんは不幸になってもいい。それなのにセナ王女からちょっと攻撃されただけで大声で泣いて、自分が不利な時だけ被害者気取り!そういう人間1番ムカつくんです!1週間以内に私の機嫌を取れないなら皇帝陛下にかけあいます!いいですか!皇帝陛下はお母様を世界で1番愛しています!だから私の意見が通ります!」
ダメだ。ミドリさんが戻ってきた安心感からなのか、今度は私との関係を極度に気にしはじめている。ミネスさんは、こちらの状況を殆ど知らない。けれど、ここでナミネに意見したらまたナミネがヒステリーを起こしてしまう。
「そうだね、私は狡い女だよ。カンザシに利用されているの分かっていて、それでもカンザシが好きでどうしようもなくて、周りの人間のこと見えてなかった。どうしたら機嫌直してくれる?ナミネが私に怒ってはじめて私は身勝手だと気付かされた。そんな生き方はもうしない。ちゃんと周りのことも考える」
「セナ王女とミナクさんの関係壊して、ヨルクさんをイジワル犯に仕立てあげようとして、カンザシさんが何かしたら私に怒鳴って殴って、今更許されるとでも思ってるんですか?」
「ナミネ、やめようか。ミネスは……」
「ナルホお兄様は黙っていてください!」
ナルホさんはナミネの怒鳴り声に黙り込んだ。ミネスさんはナミネに責められ続け、悪戦苦闘している。
「今からでもナミネの許しを請いたい」
「ミネス、妹は苦労してきたんだ。そんなナミネをイジメて僕もミネスが許せないし、ミネスのことは僕が訴える」
「なあ、お子ちゃまミネスあんた強気なナミネに嫉妬してんだろ!嫉妬で殴るとか最低だな!今度は僕が平凡アルフォンスの切断してやろうか?」
ナヤセスさんと落ち武者さんがナミネの味方をした。少し可哀想に思えてきた。けれど、今私が出来ることなんてあるのだろうか。
「ナヤセスが私を訴えたいならそうしてもらって構わない。それでも、私はナミネが許してくれるまで何度も許しを乞う。確かにカンザシの本命になれたナミネのことは羨ましい。でも、少し平手打ちしただけでアルフォンスが切断されるとは思ってなかった。そのセリルって人にもちゃんと説明するし、ナミネが望むことは何でもする」
これだけ謝っているのにナミネは少しも譲歩しない。いったい何をそんなに苛立っているのだろう。その時、ラルクが2つの扇子を重ね合わせパチンと鳴らせた。
「ナミネ、許してやれ。ナヤセスさんがIQ200ちょいとして、ミネスさんはとんでもないIQの持ち主だ。これまでナミネに許しを乞うフリをしながら頭の悪いナミネのこと心では笑ってたんだよ」
「違う!私は本当にナミネに謝罪してた!」
「そっか、私馬鹿だもんね。これまで私が怒ってるの見てミネスさん、私のこと馬鹿にしてたんだ。少しも気付かなかったよ」
ラルクのいらぬ言葉でナミネは泣きはじめた。私はナミネを抱き締めた。
「ナミネ、泣かないで」
「ヨルクさん、ここまで見下されて悔しいです」
ナミネは私の腕の中でワンワンと泣いた。
人は無意識に自分の人間関係にカースト制度を作り上げている。富と名誉がある人は上に行く。それよりも上回るのは頭脳明晰な人だ。ナミネは頭脳ではミネスさんに勝つことは出来ない。さっきまでの話し合いもミネスさんが有利だったからミネスさんは堂々としていられたのだろう。
「ナミネ、本当に違う!私、強気なナミネを見下してなんかいない!」
「お子ちゃまミネス、あんた人馬鹿にすんのもいい加減にしろよ!」
落ち武者さんはミネスさんにフェアリーングをかけた。
「お子ちゃまミネス、あんた強気なナミネに言葉で勝てると思ってただろ?強気なナミネはあんたより下だと思ってんだろ?」
「正直、ナミネは頭悪そうだし、私の上には立てないと思ってる。ナミネがどうこう足掻いても最後に勝つのは私だと思ってる。悪いけど馬鹿との話し合いで時間の無駄になって迷惑」
これがミネスさんの本心なのか。あれだけナミネに謝っておいて、全て演技で、心の中ではナミネのこと馬鹿にしていたのか。何て恐ろしい人だ。
「へえ、それがあんたの本心か。散々強気なナミネに謝ってたのは全て嘘だったってわけ?次にカンザシが問題起こしたら顔だけヨルクに罪でも着せるつもり?」
「そうだね。本気で謝罪はしてない。馬鹿相手にそんなことしない。もちろんカンザシが助かるならヨルクに身代わりになってもらうし、私は私とカンザシだけ無事ならそれでいい!ナミネとヨルクの幸せなんか知らない!」
「あんた、随分悪だな。具体的に聞くけどカンザシがイジワルしたら、その罪、顔だけヨルクに着せるってことか?今後、強気なナミネに何するつもりだ?」
「そうだね。カンザシがイジワルしたらその罪はヨルクに被せる。カンザシのこと取ったナミネには適当に人雇ってイヤガラセさせるつもり。こんな馬鹿に出しゃばられたら溜まったもんじゃないもん」
落ち武者さんはフェアリーングを解いた。その瞬間、みんながミネスさんを軽蔑したような目で見た。
「待って!今のは本心じゃない!」
「もう遅いんだよ、さっきのあんたの証言全部録音済みだ!バーカ!」
落ち武者さんはチップを伝書鳩に加えさせると窓から伝書鳩を飛ばした。やはり、宛先は皇室だろうか。
「ミネス、僕はナミネのことは小さい頃から可愛がってきた。僕が1番下だと思っていたからナミネが生まれた時は嬉しくて仕方なかったよ。ナミネは人一倍真っ直ぐで多くのこと1人で抱え込むからいつも心配してた。そんなナミネのことを侮辱した君とはもう関わらないよ」
「ごめん、ナルホ!でも、本当にさっきのは本心じゃなかった!ナルホにだけは誤解されたくない!ナミネには悪いことをしたと思ってる!信じて!」
ナルホさんはミネスさんを無視した。
さっきの落ち武者さんのかけたフェアリーングはミネスさんの本心なのだろうか。それともミネスさんが不利になるように別の部分の感情を引き出したのだろうか。どちらにしても、みんなの前であれだけのことを言ってしまえば家紋にも傷が付く。
その時、テレビからニュースが流れた。
『速報です。たった今、皇室に伝書鳩が送られてきました。録音を再生すると、ブランケット家の次女が自分の彼氏がイジワルしたら、その罪をクレナイ家の次男に着せると言っていたり、ナノハナ家の5女をイヤガラセさせる計画も立てている模様です。これに対して皇帝陛下は、ブランケット家次女の赤花咲処分を確定しました』
やはり落ち武者さんは皇室に伝書鳩を送ったのか。皇帝陛下のくだした決断は絶対だ。ミネスさんは守りたいものを守ろうとして、逆に全てを失った。
「待って!誰か助けて!」
ミネスさんが叫ぶものの誰もミネスさんに手を差し伸べようとはしなかった。例え、フェアリーングをかけられなくてもミネスさんの本心が悪い方向で定まっていたのであれば、いずれ同じ結果になっていただろう。ナミネはトドメにミネスさんに何かを飲ませた。
「ねえ、ラルク、紀元前村行くの楽しみだね」
「そうだな。でも、タルリヤさんの町だけ遠い昔と変わっていないなんて奇妙だな」
「あー、ミネスさんお漏らししてる!」
ナミネはミネスさんの写真を撮った。もうミネスさんに慈悲を与える者はこの中には誰もいない。
「いい歳して恥ずかしいな」
その時、ズームさんがミネスさんを引っぱたいた。
「お兄ちゃ……」
「ミネス!お前、ナミネさんを襲わせる気なのか!」
あれ、ズームさんの身体が透けている。
「お兄ちゃん、身体が……!カンザシに何言われたの!お兄ちゃん、しっかりして!誰か、お兄ちゃんを助けて!」
「顔だけヨルク、今すぐエロじじい呼び出せ!」
私は慌てて呼び出しカードを取り出しダンゴロさんを呼び出した。
「何?今、女神と遊んでたんだけど」
「ダンゴロさん、ズームさんの背中の勾玉のアザ、効力ごと消してもらえませんか?」
アザを残したまま回復させるより、根本的なものを取り払ってしまったほうがいいだろう。ズームさんとカンザシさんを引き離すことが出来たらカンザシさんの後ろ盾はなくなる。
「別にいいけど、君まだ未熟だから、ラルクとセレナールの復縁が条件ね」
みんなはラルクを見た。
「ズームさんが助かるならセレナール先輩と復縁します!」
「じゃ、消すよ」
落ち武者さんはズームさんのトレーナーをめくって確かめた。アザは消えている。
「頼みごとは聞いたから僕は戻るね」
ダンゴロさんは女神の湖に戻って行った。
「ズーム、あんたこれでもうカンザシには縛られない!これからはあんたの人生生きろ!」
その時、アルフォンス王子が目覚めたのか他のメンバーも入って来た。
「カンザシ、私、カンザシに利用されてると分かりながらもカンザシのこと好き。でも、家族のほうがもっと大事なの。今後はカンザシに片想いはするけど、カンザシの支援は一切しない。私、ここにいるメンバーと仲良くなる」
その瞬間、ナルホさんはコートをミネスさんに着せた。
「急にどうしたんだよ、ミネス。僕はミネスの助けがないとダメなんだ」
「カンザシ!僕ももう支援しない!今のマンション代も自分で払え!僕はこれからは自分の道を行く!もうお前に縛られない!」
あの勾玉のアザを消したことによってカンザシさんは巨大な後ろ盾を失った。同情は出来ないけど、これでよかったと思う。
「ズーム、何言ってんだよ。あんた高い家賃払えるわけないだろ!ズームが払え!後、ナミネさんとの婚姻、今すぐ手続きしろ!」
みんなは敢えてズームさんの背中の勾玉のアザが消えたことを言わない。
「リーダー、支払える安いアパートに引っ越しましょう。紅葉町のアパートは解約しましょう。でないと暮らしていけないです」
「馬鹿なこと言うな、ミツメ!あのマンションの契約を解除するつもりはない!ズーム、払わないとどうなるか分かるよな」
「勝手にしろ、カンザシ!」
アザ1つでここまで人間関係が大きく揺れるなんて。それだけ、カンザシさんはズームさんやミネスさんに感謝してこなかったのだろう。
「お漏らしミネスさん〜今後のカンザシさんの行動で、あなたの人生も決まりますよ〜!今、ブランケット家のご両親がナノハナ家に謝罪しに来ているそうです」
ナミネはミネスさんに画像を見せ付けていた。
「分かった。カンザシにナミネを傷付けさせない。信じて欲しい」
「私のこと馬鹿とか人雇って輪姦させるとか言ったお漏らしミネスさんには、一軍から降格してもらいましょうかね」
「待って!あれは本当に私の本心じゃない!信じてくれなくても構わない!私はナミネと友達になりたいと思ってる!だから、これからの行動で判断して欲しい!絶対に裏切らないから!」
一度表に出てしまった言葉を引っ込めることは出来ない。ナミネのことを罵ったミネスさんは本当に、今後ナミネの機嫌を損ねないか心配だ。
「あの、ミネスさん、私は彼女を侮辱されて気分を害してます。いくら後からあなたの本心じゃないと言われても落ち武者さんのフェアリーングは完璧ですし、ナミネのこと傷付けないで欲しいんです」
私も言葉に出さずにはいられなかった。
「今は信じてもらえないかもしれない。でも、私はナミネを襲わせようなんて思ったことない。カンザシの支援も今後はしないし、カンザシの犯罪も擦り付けるつもりはない。私は、お兄ちゃんが今いるグループの中に入りたい」
「お子ちゃまミネス、強気なナミネの機嫌損ねたら、あんたの父親の余命3年にするからね?」
「ミネス、今後ナミネをイジメることだけはやめてほしい」
「ミネス、僕も君の行動はどうかと思う。ナミネを貶めているようにしか見えない」
落ち武者さんに、ナヤセスさん、ラハルさんがミネスさんを警戒している。
「絶対にナミネの機嫌を損ねない」
ミネスさんは、後々からみんなに色々言われて涙が零れていた。
「泣き落としですか!皇帝陛下にかけあいますよ!」
「ごめん!もう泣かない!」
「おい、お子ちゃまミネス、あんた強気なナミネの機嫌損ねないって約束しただろ!」
落ち武者さんはミネスさんを突き飛ばした。
「ごめん!許して欲しい!」
「ミネス、みんながこれだけナミネを庇う理由分かるかな?君が犯人隠避をしたからだよ。許してと言われても泣かれても君のした行為は変わらないんだ。君のみを責めたくはないけれど、ヨルクをイジワル犯にしようとしたり、ヨルクを犯そうとしたり、そういうことをした以上は、ここにいる人の信頼を得るには相当な努力が必要だと思うんだよね。言ってしまえば君はセナ王女が君にしたことと同じことをしたんだよ」
ミネスさんは泣きながらナルホさんに抱き着いた。
「本当に悪いことをしたと思ってる!君の妹の幸せ壊そうとしたこと反省してる。二度と同じ過ちは繰り返さない!みんなの信頼を得る努力はちゃんとする!」
その時、ナミネがカンザシさんを殴り付けた。
「あ、すみません〜!ミネスさんに殴るよう頼まれました〜!ミネスさん〜泣いたらクラスの一軍から降格してもらいますよ〜!」
「そうですか」
「分かった!泣かない!」
ミネスさんは必死に涙を堪えていた。カンザシさんを庇うことがいかに人の心を壊すかミネスさんは分かっていなかったのだろう。ナミネは今度はカンザシさんの急所を蹴りつけた。
「すみません〜!ミネスさんに頼まれました〜!ミネスさん〜!ここでカンザシさんが私に攻撃したらミネスさんのせいですよ!それが犯人隠避をすることの責任というものなんです。あなたが馬鹿だから身をもって教えてあげてます!」
カンザシさんは無言でその場に蹲った。
「分かった、カンザシを庇ったことに対する責任は取る!カンザシ、ナミネを攻撃したり、ナミネの幸せ壊したら芸能界やめてもらう。カンザシを庇うことがみんなからここまでイジメられるとは思ってなかった」
「イジメたのはあなたでしょう!」
ナミネはミネスさんを押し倒し殴り続けた。
「ごめん!言葉間違えた!私が犯罪者庇ったからこうなった!殴らないで!痛い!」
「お子ちゃまミネス、あんた終わりだ!」
「待って!みんなが怒るのは私の責任!本当にごめん!」
ナミネは、ミネスさんに妖精クリーンをかけた。
「きゃあああああああああああ!!!!」
ナルホさんはコールボタンを押し、駆け付けた医師が処置をして、幸いミネスさんに大きな傷は残らなかった。ナミネを怒らせれば手の付けようがない。ミネスさんには悪いけど耐えきれなくなったらグループを抜けてもらうしかないと思う。
ナルホさんは無言でミネスさんにコートを着せた。
「ミネスさん、私に口答えしないでください!言ったでしょう!私からは何もしないと!私はただ、ヨルクさんとのことはそっとしといて欲しいんです!でも、ミネスさんはカンザシさんのイジワルをヨルクさんに擦り付けようとしました!だから、今後カンザシさんが何かすれば、今回みたいにあなたには十分な罰を受けてもらいます」
「ごめんなさい……もう犯罪者は庇わない……だから妖精クリーンをかけないで」
最後にナミネはミネスさんの横腹を思いっきり蹴った。ミネスさんはボロボロになっていた。
「耐えきれないならどうぞご自由にグループを抜けてください!とにかくヨルクさんとのことはそったしといてください!!」
「グループは抜けない……ナミネ……ごめんなさい」
「じゃ、そろそろナノハナ家戻る」
カンザシさんも着いてこようとしたが、落ち武者さんが拘束してカンザシさんを動けなくした。ラハルさんはナミネが心配だからとみんなとナノハナ家に向かうことになった。
あれこれ騒いでいる間に15時を過ぎていた。
ヘリコプターの中ではカンザシさんから、ミネスさん、ナミネ、ズームさんに大量のメールが来ていた。しかし、3人とも返すことはなかった。
ナノハナ家に着くと、みんなはクタクタな状態で第4居間に入った。服が汚れたミネスさんはナルホさんにお風呂に案内された。
ナミネの機嫌は少しは直っただろうか。
「ねえ、ラルク。カンザシさん、マンションの家賃どうするんだろうね」
「あのマンション、ひと月200万円くらいじゃなかったか?ニンジャ妖精さんて1人ひと月10万円も稼いでないんだろ。だったら払いきれないわな」
ナヤセスさんも似たようなマンションに住んでいたっけ。
「私ね、やっぱりミネスさんのこと許せない。カンザシさんのイジワルをヨルクさんのせいにしようとしたり、ヨルクさんをイジワルさせようとしたり。仲間とは思えないし、私防犯カメラの映像で見ちゃったんだよね。ライオンのオリの鍵、ミネスさんがカンザシさんに渡すのを」
私は大きな勘違いをしていた。カンザシさんが独断で鍵を開けたのではなく、ミネスさんがカンザシさんに開けるよう指示したのか。恐ろしい女だ。
「強気なナミネ、その映像今すぐ見せろ!」
「でも、ロックがかかっていて見れないんです」
「いいから貸せ!」
ナミネは落ち武者さんに携帯を渡した。落ち武者さんはすぐにロックを解除した。
映像はライオンがいるオリにミネスさんがカンザシさんを連れて行くところからはじまっていた。
『ミネス、どうしてもナミネさんが欲しい』
『カンザシ、メスライオンにヨルク犯させればいいよ。そうしたらナミネとヨルクの仲は完全に壊れる。運命なんてないんだよ。ナミネが欲しいならヨルクと引き離せばいいんだよ』
ミネスさんはライオンのオリの鍵をカンザシさんに渡した。カンザシさんはライオンのオリの鍵を開けた。
『これ、痺れ薬だから、ナミネに飲ませて、後はカンザシの好きにすればいいよ。カンザシには常に私がついてる』
ミネスさんはカンザシさんを抱き締めた。
『ありがとう、ミネス』
『カンザシ、幸せになって』
映像はそこで途切れていた。
「ブランケット家の両親まだここにいるなら、第2母屋に行って今すぐこの映像見せに行くぞ!」
落ち武者さんとナミネ、ラルクは第2母屋に走った。私も着いて行った。
私は世間知らずだったと思う。こちらから何もしなくても目を付けられてしまえばストーカーのように攻撃を受けてしまうこともありうる。
この世の人間の多くは穢れた心しか持っていない。これまでの甘い考えならナミネとの幸せが壊されてしまう。
この時から私は穢れた人の人生の土俵に無意識に上がるようになっていった。
……
あとがき。
ナミネがミネスに反撃する回でした。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
純愛偏差値 未来編 一人称版 69話
《ナミネ》
セナ王女と別れたショックでテンネさんに注ぎ込み借金をしたカラルリさんのために、私たちは動物園の飼育員のバイトをすることになった。
私とラルクが羊さんのエサやりをした後、うさぎやモルモット、テグーなどの小動物が脱走したと聞いて、私とラルクは地図を見ながら小動物が入っていただろう場所まで辿り着いた。
すると、ヨルクさんがメスライオンの下で下着を下ろした状態でいた。目撃した瞬間、私は吹き出しそうになった。けれど、後からヨルクさんと気まずくなりたくなくて、私は必死に笑いを堪えた。
聞くところによると、ヨルクさんは小動物にエサをあげている時に、小動物に寄ってこられ、付きまとわれたそうだ。落ち武者さんによると全員メスだったらしい。
ヨルクさんは人間だけでなく、動物にまで好かれる。正直、動物園のバイトはヨルクさんには向いていないと思った。
けれど、1番引っかかったのは、ライオンのオリの鍵をカンザシさんが開けたかもしれないということである。カンザシさんはメスライオンにヨルクさんを犯させようとしていたのだろうか。もうカンザシさんのすることなすことが信じられなくなる。
ちなみに、動物園のバイトをしているうちに、セナ王女とミナクさんは仲直りしたようだ。ミネスさんも、セナ王女の謝罪で今回だけならと許したらしい。
そんな私たちはパンダの赤ちゃんにミルクをあげに来た。
「わあ、可愛い!」
私がパンダの赤ちゃんを抱っこしようとした時、大半のパンダの赤ちゃんはヨルクさんのほうへ向かって行った。結局メスの本能はみな同じか。
「ナミネ、パンダの赤ちゃん可愛いね」
ヨルクさんはメスのパンダの赤ちゃんに囲まれながらミルクをあげていた。
「ヨルクさんって、浮気性なんじゃないんですか?」
「ほら、ナミネも抱っこしてごらん」
私はヨルクさんから1匹のパンダの赤ちゃんを受け取ったが、すぐにヨルクさんの元へ戻って行った。全然可愛くない。
私はオスのパンダの赤ちゃんにミルクをあげた。
「終わったね、ラルク。他のところ行こうよ」
「そうだな。メスは誰かさんがやってくれるだろう」
「待って!1人にしないで!」
男なのに女々しいセリフに私は少し引いてしまった。
「でも、そのパンダの赤ちゃんたち、ヨルクさんのところにしかいないじゃないですか!」
「パンダの赤ちゃんですか」
ズームさん!その瞬間ヨルクさんにくっついていたパンダの赤ちゃんの4分の1がズームさんのほうへ向かって行った。動物は人間より正直だ。
「なあ、ズーム、あんたどう思う?」
「まだ確証は持てませんが、恐らくカンザシでしょう。近くに防犯カメラがあったと思うので、後で確認したら分かると思います」
本当にカンザシさんだったら、この先カンザシさんとどう接していけばいいのだろう。ヨルクさん、パンツまで下ろされていたし。
「なあ、ズーム、あのカンザシってヤツとは仲良いのか?」
今度はオスのパンダの赤ちゃんはロォラさんにくっついた。ここにいるパンダの赤ちゃん全然可愛くない。
「ロォラには関係ないだろ!」
「私聞いてしまったんだ。カンザシがあるドラマをナミネと共演させて欲しいってミネスにお願いしてたのを」
また1000年の恋だろうか。カンザシさんも諦め悪いな。
「どんなドラマだ!」
「痴漢に悩む中学生が痴漢した男と大恋愛するドラマだ」
今度は痴漢ものか。カンザシさんとだけは絶対共演したくない。
「強気なナミネ、そのドラマ、ラハルと共演しろ!」
「え、でも……」
私はヨルクさんを見た。
「私もそうしたほうがいいと思う。ラハルさんなら気を配ってくれると思うし、カンザシさんに現実を見せつけてナミネのこと諦めさせたい」
ヨルクさんがいいって言うならラハルさんと共演してみようかな。私は早速ラハルさんにメールをした。
この日、私と落ち武者さんラルク、ズームさん、ヨルクさん、ロォラさんが、ライオンのいるところの防犯カメラを確認させてもらったところ、鍵を開けたのはやはりカンザシさんだった。
このことは一応ミネスさんにも伝えたが、ミネスさんはカンザシさんは庇わないけど、カンザシさんを好きでいることは変わらないと、曖昧な発言をしていた。
動物園のバイトが終わった後、スーパーのレジ打ち、チラシ配り、コンビニの品出しと色々したが、カラルリさんの借金の額には届かなかった。そして、みんなはクタクタのままキクリ家で泊まったのである。
3日に虹色街のスタジオで、飛べない翼の姉妹作である忘れられた翼の撮影を終えた。そして、その2日後、カンザシさんが私との共演を望んでいた作品の撮影の日となった。タイトルは『43%の恋の涙』。今日が私の勝負の日だ。
スタジオに入ると私はすぐに半袖のセーラー服を着せられ、髪を2つ括りにしてもらった。ラハルさんはブレザーだった。ラハルさんってブレザーのほうが似合う気がする。
「ナミネ、可愛い。頑張ってね」
「ヨルクさんは今日もダサイですね!メスライオンとの交尾はどうでしたか?」
「私の意思ではないし交尾などしていない。何故私を侮辱する」
ヨルクさんって、自分の身も自分で守れないからこっちが不安になってくる。あの時、助ける人いなかったらどうなっていたのだろう。
「ナミネさん、一昨日映画撮影したばかりなのにまた映画撮影するんですか?」
ドラマと思っていたけど映画だったのか。
「はい、気が向いたもので」
私は少しずつカンザシさんから遠ざかりラハルさんのところへ行った。
「ナミネ、似合ってる」
「ラハルさんもブレザーのほうが似合ってますね」
「そっか。リアルもブレザーだよ」
「私の学校もです!」
そろそろ撮影がはじまる。私とラハルさんは配置に着いた。
「映画 43%の恋の涙 撮影スタート!」
撮影がはじまった。今のカンザシさんどんな顔してるだろう。
中学2年生の私は、いつも隣町の学校まで電車で通学していた。けれど、ひと月前から私は痴漢の被害に遭うようになった。
この日も満員電車の中で中間地点からお尻を触られた。叫んで助けを求めないと。なのに、こういう時に限って声が出ない。私は服の上から胸を触られ、制服の中に手を入れられた。
「やめてください」
声が小さくて聞こえなかっただろうか。
「やめてください!叫びますよ!」
私はもう一度、声を大きくして言った。けれど、周りは見知らぬフリで、痴漢は更にエスカレートした。
私は、下着の上から胸を触っている腕を掴んだ。
「この人痴漢です!」
私が言った瞬間腕は振りほどかれ、振り向いても誰もいなかった。
また逃げられてしまった。
痴漢されるドラマとかよく見るけれど、実際に自分が遭うと、怖くてどうしたらいいのか分からなくて自分1人では何も出来なかった。
そんなある日、私が図書館で本に手を伸ばしていると、誰かがその本を取ってくれた。
「この本かな?」
「はい、そうです!」
「歴史興味あるの?」
「とても興味があります!色んな資料調べてるんです!」
これが私とラハルさんの出会いだった。
そして気がつけば私とラハルさんは図書館で頻繁に会うようになっていた。
一緒に勉強したり、他愛のない話をしたり、互いの趣味の話をしたり。ラハルさんといる時間は私にとって楽しい時間となっていたのだ。
「ナミネ、交際して欲しい」
「はい、喜んで」
ラハルさんはアパートに一人暮らしで、私はよく泊まりに言った。その時に痴漢の被害に遭っていることを話した。
「そっか、辛かったね。車両の真ん中だと犯人も逃げやすいし、これからは端っこにいたらどうかな?」
「はい、そうしてみます」
「今、ココア入れるね」
ラハルさんは、困った時はいつも相談に乗ってくれて、勉強も教えてくれて、とても温かい人だった。この人となら上手くやっていける。私はそう信じて疑わなかった。
「はい、ココア」
「ありがとうございます」
ココアを飲んだら、私はソファーでラハルさんに抱き締められながらテレビを見た。
私とラハルさんは交際してひと月になる。
この日、私ははじめてをラハルさんに捧げた。
また、朝の満員電車。
私はラハルさんに言われたように電車の端っこに立った。窓はなくて、これなら犯人を壁に寄せて捕まえられると私は思った。
そして、この日もまた中間地点で私は痴漢に遭った。
けれど、この日はいつもと違っていきなり制服の中に手を入れられ、下着越しに胸を触られ、下は下着の中に手を入れられた。
「やめてください!!」
私は痴漢をしている人の両手を掴んだ。
「この人痴漢です!!」
しかし、またもや掴んだ手は振りほどかれ、別の車両に逃げられてしまった。何だか痴漢がだんだんエスカレートしている気がする。けれどこの時の私は、大きくは気にしていなかった。
その夜、私はラハルさんのアパートでまたラハルさんに相談をした。
「そっか。辛かったね。今度はトイレにずっといたらどうかな?」
なるほど。それなら、痴漢も出来ない。
「はい、そうしてみます!」
この日も私はラハルさんに抱かれた。
最近は会うたび抱かれている気がする。
朝の満員電車。
私はラハルさんに言われたようにトイレにこもった。トイレはボタン式のもので中は広かった。これで大丈夫と思った瞬間、いきなりトイレの扉が開いて扉が閉まるなり私は壁に押し寄せられ、制服の中に手を入れられた後、スカートに手を入れられ下着を下ろされた。私はいやな予感がした。壁に押し寄せられ、完全に後ろは見えなかったが、少し振り向き斜め目線で見ると痴漢の人も私のスカートの中で下着を下ろしていた。
そして、私はスカートの中で当てられた。
「や、やめてください!!だ、誰か助けて!!」
叫んでもトイレの中だから誰も気づくことはなかった。
私はそのまま後ろからことに及ばれた。腰を振られるたび私は酷い痛みに襲われた。
「痛い!お願いです!やめてください!」
ことが終われば、犯人は下着とズボンを着てトイレから出た。
(ちなみに、この時ラハルさんは最初から最後まで私のスカートの中で下着を下ろしていたため、私とのレイプシーンも含め視聴者からは一切見えていない)
犯人がトイレを出た後、私はその場に崩れた。地面には血が付いていて生々しかった。
私、イジワルされたんだ。痴漢だけに終わらずイジワルされたんだ。私は大粒の涙を零し、最後の駅でラハルさんに迎えに来てもらった。
「ナミネ!」
「ラハルさん……私……」
「何も言わなくていいよ」
ラハルさんはタクシーを拾ってアパートまで連れて行ってくれた。そして、私が泣き止むまで抱き締めてくれて、私が眠るとベッドまで運んでくれた。
その後、私は学校を休み、ラハルさんは私を励ますため、色んなところに連れて行ってくれた。
カフェや、水族館、美術館、博物館、キャラクターランド。ラハルさんといっぱいデートしているうちに私は少しずつ回復していった。ラハルさんは無理に学校に行かなくていいと言ってくれたけれど、私はまた登校することにした。
朝の満員電車。
怖いけど、私は勇気を出してつり皮を掴んだ。
中間地点から私はまた痴漢に遭った。私は恐る恐る後ろを振り向いた。
犯人はラハルさんだった。
「カット!OK!」
2時間に渡る撮影が終わった。
モニターでイジワルシーンを見てみたら、本当にイジワルされているみたいだった。けれど、ラハルさんは痴漢シーンもイジワルシーンも私の身体には触れなかったのだ。そんなラハルさんの優しさがあったからこそ、安心して最後までやり切れたのだと思う。
私とラハルさんは映画に対してのコメントを残した。このコメントはDVD化された時に最後に入るらしい。まずはラハルさんがマイクを手に持った。
「43%の恋の涙は3年前に出版されたノンフィクション小説が原作となっています。そう、これは実際に起きた事件が元になっているのです。もう20年ほど前でしょうか。電車の中でトイレに連れ込まれる女性を約35人もの人が見て見ぬふりをしました。助けないこと自体は罪には問われませんが、それは本当に正しいことなのでしょうか?僕は決してあってはならないことだと思っています。また、原作者は見て見ぬふりをした人の恋人がイジワル犯だったとしても愛せるのかということを当時見て見ぬふりをした人に小説を通して問いかけているそうです。僕もこの映画を通して視聴者の皆さんに今一度『見て見ぬふりの残酷さ』を考えて欲しいと思いました」
続いて私がマイクを手に持った。
「ラハルさんとは、飛べない翼 や その姉妹作である 忘れられた翼 で共演させてもらっています。今回は 43%の恋の涙 という新たな作品で共演をしました。この作品を演じるに当たってラハルさんとは事前に演じるシーンをどう見せるか何時間もかけて話し合いました。中にはリアルなシーンもありましたが、ラハルさんがリードしてくれたので安心して最後まで演じることが出来ました。今回ヒロイン役を演じた43%の恋の涙ですが、ヒロインは多くの同乗者に見て見ぬふりをされています。しかしながら、その見て見ぬふりをした人にも家族はいます。言うまでもなく犯人にも家族はいます。この奥行きの深さを視聴者の皆様には考えて欲しいと思うのです。何が正しくて何が悪いではない。一人一人が何をすべきかという課題の答えを、この作品を見た皆様一人一人が見つけられることを心から祈っております」
私とラハルさんは一礼をしてコメント撮影は終わった。
「はあ、疲れたあ」
私はラルクにもたれかかった。
「ナミネ、今回も共演してくれてありがとう」
ラハルさんがお茶を私に渡した。私は咄嗟にラルクから離れた。
「あ、こちらこそ毎回リードしていただきありがとうございます」
その時、カンザシさんが青ざめた顔で寄ってきた。
「ナミネさん、どうしてラハルと43%の恋の涙演じたんですか!イジワルシーンは本当にしたんですか?」
そっか、スカートに隠れていて何も見えないんだった。カンザシさんには残酷だけど、ここは嘘をつこう。
「はい、実際にあった事件ゆえ、ラハルさんと十分に話し合い、リアルさを出すために私、ラハルさんに処女を捧げました。ドラマであれ私はラハルさんに女にしてもらいました。後悔はしていません。これで、本当の女優魂が分かった気がします」
「そんな……そんな……あんまりです!」
カンザシさんは泣きながら走って行った。
「待って!カンザシ!」
「ミネス、もう暗くなるから外に出るのは危険だよ」
「ナルホ……」
これでいい。カンザシさんは私とヨルクさんの関係を壊そうとしている。そのような者の気持ちなど一寸も汲み取ることはない。
「ナミネも言うねえ。けど、カンザシにとってはいい薬だったかもね。今夜はニンジャ妖精もいないし、ゆっくりしていって」
「はい!」
私たちはラハルさんと共にグルグル妖精さんのマンションへ向かった。
グルグル妖精さんのマンションはいつ来ても広い。
今日まお手伝いさんいる。喉乾いたなあ。
「すみません〜!冷たいお茶お願いします〜!」
「かしこまりました」
テレビを付けるとニュースが流れてきた。
『現在、虹色環状線のトイレの中で立て続けに女子高生がイジワルされています。被害者は全員処女でした。犯人の特定はまだ出来ていません』
これって、まさかカンザシさんだろうか。ヨルクさんが罪を着せられてしまったらどうしよう。
「カンザシの野郎、またやらかしてくれたな。僕とラルクは環状線でカンザシ捕まえて病院連れてくから、みんなはここで待ってろ!」
「僕も行くよ。カンザシさんにはもうナミネと関わらないよう白黒付ける」
ラルクと落ち武者さん、ナヤセス殿は環状線へ向かって行った。早く見つけ出して病院に連れて行って欲しい。
その時、出前のピザが届いた。私はひと切れのピザを食べようとした。
「ナミネ、手で掴まないで!取り皿に入れるから!」
「はい」
何だかカンザシさんのことで、せっかく撮影やり切ったのに微妙な気持ちだ。ヨルクさんは三切れのピザを取り皿に入れて私に渡した。お腹がすいていた私は一気に食べた。
「お腹すいてます。もっと食べたいです」
「今日はたこ焼き器でホットケーキ作るからピザはほどほどにしたほうがいいよ。それから、カンザシのことは気にしなくていいから。自業自得としか言いようがない」
ラハルさん慰めてくれてるんだ。
「あ、はい……」
その時、チャイムが鳴ってラハルさんがドアを開けるとミツメさんだった。
「あ、ミツメさん」
「リーダーは……」
「今、落ち武者さんとラルク、ナヤセス殿が環状線に探しに行きました。病院に連れて行くそうです」
「そうですか。ご迷惑おかけしてすみません」
ミツメさん悪くないのに。イジワルをするだなんて信じられない。
「ナミネ、遅くなったけど、お疲れ様」
ヨルクさんは私に菜の花とかすみ草の花束を渡した。私の大好きな花束。
「ありがとうございます、ヨルクさん」
私が花束を受け取った瞬間、ミネスさんが花束をグチャグチャにし、私を引っぱたいた。
「カンザシが辛い時に何自分だけ幸せでいるの!カンザシの気持ち少しでも考えたことある?ナミネのせいでカンザシは苦しんでるんじゃない!」
ヨルクさんが買ってくれた花束が……。気づいたら私はミネスさんを押し倒し殴り付けていた。ミネスさんは悲鳴をあげた。ナルホお兄様はすぐに私を止めた。
「ミネスさん、カンザシさんに何かあれば私のせいなんですか?私からは何も攻撃はしないと言ったでしょう!それなのにミネスさんが花束壊したり私を攻撃したからこうなったんです!今から皇帝陛下にかけあって赤花咲の罰受けてもらいます!」
「ごめん!咄嗟に手が出た!許して!二度とナミネを攻撃しない!カンザシのことは心の中に留めておく!もう一度チャンスが欲しい!」
自分から殴っておいて自己防衛したら被害者気取り。人間というのは自分のことしか考えられない汚い生き物だ。私はただ、ヨルクさんとの関係をそっとしておいて欲しいだけなのに。
「ねえ、ミネス、カンザシのイジワルをどうしてナミネのせいにしたの?正当な理由言って」
「ナミネに嫉妬するあまりナミネのせいにしてしまった。本当に悪かったと思ってる!二度とナミネのせいにしない!」
「信じられません!今後はミネスさんが私を攻撃するたびにアルフォンス王子を犠牲にします!今回からのカウントです!」
その瞬間アルフォンス王子はミネスさんを殴り付けた。
「お前、いい加減にしろよ!カンザシのイジワルはナミネのせいかよ!」
「ごめん、許して!二度とナミネを攻撃しない!今回のことは慰謝料も払う!」
金で全て解決か。お金持ちにはそれなりの薬が必要だ。その時、落ち武者さんたちがカンザシさんを連れて戻ってきた。私はカンザシさんを殴り付けた。
「やめて!カンザシは関係ない!」
「これも攻撃と見なします。ではアルフォンス王子、儀式しましょうか」
「待って!どうしたらいい?ナミネのこと全て聞く!」
ミネスさんもようやく自分の汚さに気づいてきたのだろうか。それでも簡単には許せない。
私はナヤセス殿に抱き着いた。
「ナヤセス殿、カンザシさんがイジワルしたの私のせいだってミネスさんに強く殴られたんです!」
「ナミネ、大丈夫?ミネス、妹をイジメるのはやめてくれないかな?」
「本当にごめん!一度だけチャンスが欲しい!」
めちゃくちゃ苛立つし、ミネスさんを許せない。人は自分が危機に陥ってはじめて自分のみ助かろうとする。そんな汚い人間を私は小さい頃からたくさん見てきた。そして、その人らの汚さに触れるほどに自分も穢されるような気がしていた。だから、許せない。許せない。許せない!
「ナミネ、ミネスは十分反省している。これ以上、ミネスを責めるのはやめてくれないかな?ミドリお姉様も戻ってきたのに何をそんなに苛立っているのかな?」
ナルホお兄様まで味方につけて何て汚い人なの。今に痛い目見させてやる。私は私自身のコントロールが出来なくなりつつありかけていた。
「ミネスさん、カンザシさんのイジワル、私のせいにしましたが、カンザシさんは動物園でわざと鍵を開けて、メスライオンにヨルクさんを犯させようとしました。だとしたら、これってミネスさんのせいですよね?」
「うん、私のせい。カンザシがする全ては私のせい。だから、どうか許して欲しい。二度とナミネを攻撃しない!」
「だったらどうして私を殴ったんですか!」
許せない許せない許せない!誰か助けて……
「アルフォンス王子、やはりミネスさんには反省ということが何か分からないようです。本当に残念です……」
私は武家オリジナルワイヤーでアルフォンス王子の儀式を行った。
「うわぁああああああああああああ!!!!!!」
アルフォンス王子の悲鳴と共に私は気絶した。
……
あとがき。
念の為、小説に登場した『43%の恋の涙』は個人的な事情で思いついたものです。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
《ナミネ》
セナ王女と別れたショックでテンネさんに注ぎ込み借金をしたカラルリさんのために、私たちは動物園の飼育員のバイトをすることになった。
私とラルクが羊さんのエサやりをした後、うさぎやモルモット、テグーなどの小動物が脱走したと聞いて、私とラルクは地図を見ながら小動物が入っていただろう場所まで辿り着いた。
すると、ヨルクさんがメスライオンの下で下着を下ろした状態でいた。目撃した瞬間、私は吹き出しそうになった。けれど、後からヨルクさんと気まずくなりたくなくて、私は必死に笑いを堪えた。
聞くところによると、ヨルクさんは小動物にエサをあげている時に、小動物に寄ってこられ、付きまとわれたそうだ。落ち武者さんによると全員メスだったらしい。
ヨルクさんは人間だけでなく、動物にまで好かれる。正直、動物園のバイトはヨルクさんには向いていないと思った。
けれど、1番引っかかったのは、ライオンのオリの鍵をカンザシさんが開けたかもしれないということである。カンザシさんはメスライオンにヨルクさんを犯させようとしていたのだろうか。もうカンザシさんのすることなすことが信じられなくなる。
ちなみに、動物園のバイトをしているうちに、セナ王女とミナクさんは仲直りしたようだ。ミネスさんも、セナ王女の謝罪で今回だけならと許したらしい。
そんな私たちはパンダの赤ちゃんにミルクをあげに来た。
「わあ、可愛い!」
私がパンダの赤ちゃんを抱っこしようとした時、大半のパンダの赤ちゃんはヨルクさんのほうへ向かって行った。結局メスの本能はみな同じか。
「ナミネ、パンダの赤ちゃん可愛いね」
ヨルクさんはメスのパンダの赤ちゃんに囲まれながらミルクをあげていた。
「ヨルクさんって、浮気性なんじゃないんですか?」
「ほら、ナミネも抱っこしてごらん」
私はヨルクさんから1匹のパンダの赤ちゃんを受け取ったが、すぐにヨルクさんの元へ戻って行った。全然可愛くない。
私はオスのパンダの赤ちゃんにミルクをあげた。
「終わったね、ラルク。他のところ行こうよ」
「そうだな。メスは誰かさんがやってくれるだろう」
「待って!1人にしないで!」
男なのに女々しいセリフに私は少し引いてしまった。
「でも、そのパンダの赤ちゃんたち、ヨルクさんのところにしかいないじゃないですか!」
「パンダの赤ちゃんですか」
ズームさん!その瞬間ヨルクさんにくっついていたパンダの赤ちゃんの4分の1がズームさんのほうへ向かって行った。動物は人間より正直だ。
「なあ、ズーム、あんたどう思う?」
「まだ確証は持てませんが、恐らくカンザシでしょう。近くに防犯カメラがあったと思うので、後で確認したら分かると思います」
本当にカンザシさんだったら、この先カンザシさんとどう接していけばいいのだろう。ヨルクさん、パンツまで下ろされていたし。
「なあ、ズーム、あのカンザシってヤツとは仲良いのか?」
今度はオスのパンダの赤ちゃんはロォラさんにくっついた。ここにいるパンダの赤ちゃん全然可愛くない。
「ロォラには関係ないだろ!」
「私聞いてしまったんだ。カンザシがあるドラマをナミネと共演させて欲しいってミネスにお願いしてたのを」
また1000年の恋だろうか。カンザシさんも諦め悪いな。
「どんなドラマだ!」
「痴漢に悩む中学生が痴漢した男と大恋愛するドラマだ」
今度は痴漢ものか。カンザシさんとだけは絶対共演したくない。
「強気なナミネ、そのドラマ、ラハルと共演しろ!」
「え、でも……」
私はヨルクさんを見た。
「私もそうしたほうがいいと思う。ラハルさんなら気を配ってくれると思うし、カンザシさんに現実を見せつけてナミネのこと諦めさせたい」
ヨルクさんがいいって言うならラハルさんと共演してみようかな。私は早速ラハルさんにメールをした。
この日、私と落ち武者さんラルク、ズームさん、ヨルクさん、ロォラさんが、ライオンのいるところの防犯カメラを確認させてもらったところ、鍵を開けたのはやはりカンザシさんだった。
このことは一応ミネスさんにも伝えたが、ミネスさんはカンザシさんは庇わないけど、カンザシさんを好きでいることは変わらないと、曖昧な発言をしていた。
動物園のバイトが終わった後、スーパーのレジ打ち、チラシ配り、コンビニの品出しと色々したが、カラルリさんの借金の額には届かなかった。そして、みんなはクタクタのままキクリ家で泊まったのである。
3日に虹色街のスタジオで、飛べない翼の姉妹作である忘れられた翼の撮影を終えた。そして、その2日後、カンザシさんが私との共演を望んでいた作品の撮影の日となった。タイトルは『43%の恋の涙』。今日が私の勝負の日だ。
スタジオに入ると私はすぐに半袖のセーラー服を着せられ、髪を2つ括りにしてもらった。ラハルさんはブレザーだった。ラハルさんってブレザーのほうが似合う気がする。
「ナミネ、可愛い。頑張ってね」
「ヨルクさんは今日もダサイですね!メスライオンとの交尾はどうでしたか?」
「私の意思ではないし交尾などしていない。何故私を侮辱する」
ヨルクさんって、自分の身も自分で守れないからこっちが不安になってくる。あの時、助ける人いなかったらどうなっていたのだろう。
「ナミネさん、一昨日映画撮影したばかりなのにまた映画撮影するんですか?」
ドラマと思っていたけど映画だったのか。
「はい、気が向いたもので」
私は少しずつカンザシさんから遠ざかりラハルさんのところへ行った。
「ナミネ、似合ってる」
「ラハルさんもブレザーのほうが似合ってますね」
「そっか。リアルもブレザーだよ」
「私の学校もです!」
そろそろ撮影がはじまる。私とラハルさんは配置に着いた。
「映画 43%の恋の涙 撮影スタート!」
撮影がはじまった。今のカンザシさんどんな顔してるだろう。
中学2年生の私は、いつも隣町の学校まで電車で通学していた。けれど、ひと月前から私は痴漢の被害に遭うようになった。
この日も満員電車の中で中間地点からお尻を触られた。叫んで助けを求めないと。なのに、こういう時に限って声が出ない。私は服の上から胸を触られ、制服の中に手を入れられた。
「やめてください」
声が小さくて聞こえなかっただろうか。
「やめてください!叫びますよ!」
私はもう一度、声を大きくして言った。けれど、周りは見知らぬフリで、痴漢は更にエスカレートした。
私は、下着の上から胸を触っている腕を掴んだ。
「この人痴漢です!」
私が言った瞬間腕は振りほどかれ、振り向いても誰もいなかった。
また逃げられてしまった。
痴漢されるドラマとかよく見るけれど、実際に自分が遭うと、怖くてどうしたらいいのか分からなくて自分1人では何も出来なかった。
そんなある日、私が図書館で本に手を伸ばしていると、誰かがその本を取ってくれた。
「この本かな?」
「はい、そうです!」
「歴史興味あるの?」
「とても興味があります!色んな資料調べてるんです!」
これが私とラハルさんの出会いだった。
そして気がつけば私とラハルさんは図書館で頻繁に会うようになっていた。
一緒に勉強したり、他愛のない話をしたり、互いの趣味の話をしたり。ラハルさんといる時間は私にとって楽しい時間となっていたのだ。
「ナミネ、交際して欲しい」
「はい、喜んで」
ラハルさんはアパートに一人暮らしで、私はよく泊まりに言った。その時に痴漢の被害に遭っていることを話した。
「そっか、辛かったね。車両の真ん中だと犯人も逃げやすいし、これからは端っこにいたらどうかな?」
「はい、そうしてみます」
「今、ココア入れるね」
ラハルさんは、困った時はいつも相談に乗ってくれて、勉強も教えてくれて、とても温かい人だった。この人となら上手くやっていける。私はそう信じて疑わなかった。
「はい、ココア」
「ありがとうございます」
ココアを飲んだら、私はソファーでラハルさんに抱き締められながらテレビを見た。
私とラハルさんは交際してひと月になる。
この日、私ははじめてをラハルさんに捧げた。
また、朝の満員電車。
私はラハルさんに言われたように電車の端っこに立った。窓はなくて、これなら犯人を壁に寄せて捕まえられると私は思った。
そして、この日もまた中間地点で私は痴漢に遭った。
けれど、この日はいつもと違っていきなり制服の中に手を入れられ、下着越しに胸を触られ、下は下着の中に手を入れられた。
「やめてください!!」
私は痴漢をしている人の両手を掴んだ。
「この人痴漢です!!」
しかし、またもや掴んだ手は振りほどかれ、別の車両に逃げられてしまった。何だか痴漢がだんだんエスカレートしている気がする。けれどこの時の私は、大きくは気にしていなかった。
その夜、私はラハルさんのアパートでまたラハルさんに相談をした。
「そっか。辛かったね。今度はトイレにずっといたらどうかな?」
なるほど。それなら、痴漢も出来ない。
「はい、そうしてみます!」
この日も私はラハルさんに抱かれた。
最近は会うたび抱かれている気がする。
朝の満員電車。
私はラハルさんに言われたようにトイレにこもった。トイレはボタン式のもので中は広かった。これで大丈夫と思った瞬間、いきなりトイレの扉が開いて扉が閉まるなり私は壁に押し寄せられ、制服の中に手を入れられた後、スカートに手を入れられ下着を下ろされた。私はいやな予感がした。壁に押し寄せられ、完全に後ろは見えなかったが、少し振り向き斜め目線で見ると痴漢の人も私のスカートの中で下着を下ろしていた。
そして、私はスカートの中で当てられた。
「や、やめてください!!だ、誰か助けて!!」
叫んでもトイレの中だから誰も気づくことはなかった。
私はそのまま後ろからことに及ばれた。腰を振られるたび私は酷い痛みに襲われた。
「痛い!お願いです!やめてください!」
ことが終われば、犯人は下着とズボンを着てトイレから出た。
(ちなみに、この時ラハルさんは最初から最後まで私のスカートの中で下着を下ろしていたため、私とのレイプシーンも含め視聴者からは一切見えていない)
犯人がトイレを出た後、私はその場に崩れた。地面には血が付いていて生々しかった。
私、イジワルされたんだ。痴漢だけに終わらずイジワルされたんだ。私は大粒の涙を零し、最後の駅でラハルさんに迎えに来てもらった。
「ナミネ!」
「ラハルさん……私……」
「何も言わなくていいよ」
ラハルさんはタクシーを拾ってアパートまで連れて行ってくれた。そして、私が泣き止むまで抱き締めてくれて、私が眠るとベッドまで運んでくれた。
その後、私は学校を休み、ラハルさんは私を励ますため、色んなところに連れて行ってくれた。
カフェや、水族館、美術館、博物館、キャラクターランド。ラハルさんといっぱいデートしているうちに私は少しずつ回復していった。ラハルさんは無理に学校に行かなくていいと言ってくれたけれど、私はまた登校することにした。
朝の満員電車。
怖いけど、私は勇気を出してつり皮を掴んだ。
中間地点から私はまた痴漢に遭った。私は恐る恐る後ろを振り向いた。
犯人はラハルさんだった。
「カット!OK!」
2時間に渡る撮影が終わった。
モニターでイジワルシーンを見てみたら、本当にイジワルされているみたいだった。けれど、ラハルさんは痴漢シーンもイジワルシーンも私の身体には触れなかったのだ。そんなラハルさんの優しさがあったからこそ、安心して最後までやり切れたのだと思う。
私とラハルさんは映画に対してのコメントを残した。このコメントはDVD化された時に最後に入るらしい。まずはラハルさんがマイクを手に持った。
「43%の恋の涙は3年前に出版されたノンフィクション小説が原作となっています。そう、これは実際に起きた事件が元になっているのです。もう20年ほど前でしょうか。電車の中でトイレに連れ込まれる女性を約35人もの人が見て見ぬふりをしました。助けないこと自体は罪には問われませんが、それは本当に正しいことなのでしょうか?僕は決してあってはならないことだと思っています。また、原作者は見て見ぬふりをした人の恋人がイジワル犯だったとしても愛せるのかということを当時見て見ぬふりをした人に小説を通して問いかけているそうです。僕もこの映画を通して視聴者の皆さんに今一度『見て見ぬふりの残酷さ』を考えて欲しいと思いました」
続いて私がマイクを手に持った。
「ラハルさんとは、飛べない翼 や その姉妹作である 忘れられた翼 で共演させてもらっています。今回は 43%の恋の涙 という新たな作品で共演をしました。この作品を演じるに当たってラハルさんとは事前に演じるシーンをどう見せるか何時間もかけて話し合いました。中にはリアルなシーンもありましたが、ラハルさんがリードしてくれたので安心して最後まで演じることが出来ました。今回ヒロイン役を演じた43%の恋の涙ですが、ヒロインは多くの同乗者に見て見ぬふりをされています。しかしながら、その見て見ぬふりをした人にも家族はいます。言うまでもなく犯人にも家族はいます。この奥行きの深さを視聴者の皆様には考えて欲しいと思うのです。何が正しくて何が悪いではない。一人一人が何をすべきかという課題の答えを、この作品を見た皆様一人一人が見つけられることを心から祈っております」
私とラハルさんは一礼をしてコメント撮影は終わった。
「はあ、疲れたあ」
私はラルクにもたれかかった。
「ナミネ、今回も共演してくれてありがとう」
ラハルさんがお茶を私に渡した。私は咄嗟にラルクから離れた。
「あ、こちらこそ毎回リードしていただきありがとうございます」
その時、カンザシさんが青ざめた顔で寄ってきた。
「ナミネさん、どうしてラハルと43%の恋の涙演じたんですか!イジワルシーンは本当にしたんですか?」
そっか、スカートに隠れていて何も見えないんだった。カンザシさんには残酷だけど、ここは嘘をつこう。
「はい、実際にあった事件ゆえ、ラハルさんと十分に話し合い、リアルさを出すために私、ラハルさんに処女を捧げました。ドラマであれ私はラハルさんに女にしてもらいました。後悔はしていません。これで、本当の女優魂が分かった気がします」
「そんな……そんな……あんまりです!」
カンザシさんは泣きながら走って行った。
「待って!カンザシ!」
「ミネス、もう暗くなるから外に出るのは危険だよ」
「ナルホ……」
これでいい。カンザシさんは私とヨルクさんの関係を壊そうとしている。そのような者の気持ちなど一寸も汲み取ることはない。
「ナミネも言うねえ。けど、カンザシにとってはいい薬だったかもね。今夜はニンジャ妖精もいないし、ゆっくりしていって」
「はい!」
私たちはラハルさんと共にグルグル妖精さんのマンションへ向かった。
グルグル妖精さんのマンションはいつ来ても広い。
今日まお手伝いさんいる。喉乾いたなあ。
「すみません〜!冷たいお茶お願いします〜!」
「かしこまりました」
テレビを付けるとニュースが流れてきた。
『現在、虹色環状線のトイレの中で立て続けに女子高生がイジワルされています。被害者は全員処女でした。犯人の特定はまだ出来ていません』
これって、まさかカンザシさんだろうか。ヨルクさんが罪を着せられてしまったらどうしよう。
「カンザシの野郎、またやらかしてくれたな。僕とラルクは環状線でカンザシ捕まえて病院連れてくから、みんなはここで待ってろ!」
「僕も行くよ。カンザシさんにはもうナミネと関わらないよう白黒付ける」
ラルクと落ち武者さん、ナヤセス殿は環状線へ向かって行った。早く見つけ出して病院に連れて行って欲しい。
その時、出前のピザが届いた。私はひと切れのピザを食べようとした。
「ナミネ、手で掴まないで!取り皿に入れるから!」
「はい」
何だかカンザシさんのことで、せっかく撮影やり切ったのに微妙な気持ちだ。ヨルクさんは三切れのピザを取り皿に入れて私に渡した。お腹がすいていた私は一気に食べた。
「お腹すいてます。もっと食べたいです」
「今日はたこ焼き器でホットケーキ作るからピザはほどほどにしたほうがいいよ。それから、カンザシのことは気にしなくていいから。自業自得としか言いようがない」
ラハルさん慰めてくれてるんだ。
「あ、はい……」
その時、チャイムが鳴ってラハルさんがドアを開けるとミツメさんだった。
「あ、ミツメさん」
「リーダーは……」
「今、落ち武者さんとラルク、ナヤセス殿が環状線に探しに行きました。病院に連れて行くそうです」
「そうですか。ご迷惑おかけしてすみません」
ミツメさん悪くないのに。イジワルをするだなんて信じられない。
「ナミネ、遅くなったけど、お疲れ様」
ヨルクさんは私に菜の花とかすみ草の花束を渡した。私の大好きな花束。
「ありがとうございます、ヨルクさん」
私が花束を受け取った瞬間、ミネスさんが花束をグチャグチャにし、私を引っぱたいた。
「カンザシが辛い時に何自分だけ幸せでいるの!カンザシの気持ち少しでも考えたことある?ナミネのせいでカンザシは苦しんでるんじゃない!」
ヨルクさんが買ってくれた花束が……。気づいたら私はミネスさんを押し倒し殴り付けていた。ミネスさんは悲鳴をあげた。ナルホお兄様はすぐに私を止めた。
「ミネスさん、カンザシさんに何かあれば私のせいなんですか?私からは何も攻撃はしないと言ったでしょう!それなのにミネスさんが花束壊したり私を攻撃したからこうなったんです!今から皇帝陛下にかけあって赤花咲の罰受けてもらいます!」
「ごめん!咄嗟に手が出た!許して!二度とナミネを攻撃しない!カンザシのことは心の中に留めておく!もう一度チャンスが欲しい!」
自分から殴っておいて自己防衛したら被害者気取り。人間というのは自分のことしか考えられない汚い生き物だ。私はただ、ヨルクさんとの関係をそっとしておいて欲しいだけなのに。
「ねえ、ミネス、カンザシのイジワルをどうしてナミネのせいにしたの?正当な理由言って」
「ナミネに嫉妬するあまりナミネのせいにしてしまった。本当に悪かったと思ってる!二度とナミネのせいにしない!」
「信じられません!今後はミネスさんが私を攻撃するたびにアルフォンス王子を犠牲にします!今回からのカウントです!」
その瞬間アルフォンス王子はミネスさんを殴り付けた。
「お前、いい加減にしろよ!カンザシのイジワルはナミネのせいかよ!」
「ごめん、許して!二度とナミネを攻撃しない!今回のことは慰謝料も払う!」
金で全て解決か。お金持ちにはそれなりの薬が必要だ。その時、落ち武者さんたちがカンザシさんを連れて戻ってきた。私はカンザシさんを殴り付けた。
「やめて!カンザシは関係ない!」
「これも攻撃と見なします。ではアルフォンス王子、儀式しましょうか」
「待って!どうしたらいい?ナミネのこと全て聞く!」
ミネスさんもようやく自分の汚さに気づいてきたのだろうか。それでも簡単には許せない。
私はナヤセス殿に抱き着いた。
「ナヤセス殿、カンザシさんがイジワルしたの私のせいだってミネスさんに強く殴られたんです!」
「ナミネ、大丈夫?ミネス、妹をイジメるのはやめてくれないかな?」
「本当にごめん!一度だけチャンスが欲しい!」
めちゃくちゃ苛立つし、ミネスさんを許せない。人は自分が危機に陥ってはじめて自分のみ助かろうとする。そんな汚い人間を私は小さい頃からたくさん見てきた。そして、その人らの汚さに触れるほどに自分も穢されるような気がしていた。だから、許せない。許せない。許せない!
「ナミネ、ミネスは十分反省している。これ以上、ミネスを責めるのはやめてくれないかな?ミドリお姉様も戻ってきたのに何をそんなに苛立っているのかな?」
ナルホお兄様まで味方につけて何て汚い人なの。今に痛い目見させてやる。私は私自身のコントロールが出来なくなりつつありかけていた。
「ミネスさん、カンザシさんのイジワル、私のせいにしましたが、カンザシさんは動物園でわざと鍵を開けて、メスライオンにヨルクさんを犯させようとしました。だとしたら、これってミネスさんのせいですよね?」
「うん、私のせい。カンザシがする全ては私のせい。だから、どうか許して欲しい。二度とナミネを攻撃しない!」
「だったらどうして私を殴ったんですか!」
許せない許せない許せない!誰か助けて……
「アルフォンス王子、やはりミネスさんには反省ということが何か分からないようです。本当に残念です……」
私は武家オリジナルワイヤーでアルフォンス王子の儀式を行った。
「うわぁああああああああああああ!!!!!!」
アルフォンス王子の悲鳴と共に私は気絶した。
……
あとがき。
念の為、小説に登場した『43%の恋の涙』は個人的な事情で思いついたものです。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。