日常のこととかオリジナル小説のこととか。
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ashita
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地主(土地貸してます)
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漫画やアニメを見るのが好きです。最推しはフーディーニ ♡
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ブログ、もう書かないと思ってました。
けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。
小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。
純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。
ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。
小説、ぼちぼちマイペースに書いてゆきます。
よろしくお願い致します。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
お知らせ。
イラストは現在「ナノハナ家の日常」に載せております。サイドバーにリンクあります。
また、「カラクリよろずや」にて無料のフリーイラスト素材配布もはじめました✩.*˚
フリーイラスト素材も増やしていく予定です(*'ᴗ'*)
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
模倣・無断転載などは、ご遠慮ください。
ブログの小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
小説・純愛偏差値に関しましては、武家名・貴族名(程度による) / 及び、武官の階級 / 扇子・羽子板・花札・百人一首・紙飛行機などのアイテム使用方法の模倣の一切を禁じております。
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X @kigenzen1874
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けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。
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現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。
純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
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〈資格履歴〉
2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
→漢方コーディネーター 合格
→薬膳調整師 合格
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〈資格証明バナー〉

2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
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→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
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〈資格証明バナー〉

純愛偏差値 未来編 一人称版 75話
《ナミネ》
「ワシは遠い遠い大昔、天使村よりずっと昔に儀式で人魚の肉を食べさせられた。それ以降、身体は不老不死となり、何世紀もの時代を見てきた。もう自分の歳さえ忘れてしもた。人というのは己の考えのみが全てだと思い込み、自分と違う意見を潰すためにすぐに戦をする。ワシも最初は何も持っとらんかった。普通に結婚して妻子はいたけど、些細なことでお偉いさんに殺されてしもた。あの時は悔しくてたまらんかった。結局この世は金と権力を持っている者が暗黙に下々の人を支配する。ワシは最初の妻子を殺された悔しさで、ある人に弟子入りして武術を極めた。師匠のお陰でワシは次の妻子は守り抜くことが出来た。だが、そこで問題になったのは周りからの妬みじゃ。すぐにワシの暗殺計画が行われたが、その頃のワシは刺客を送り込まれても負けん強さになってた。けど、不老不死の人生は思った以上に長く、その後、何度も皇帝陛下に妻子を殺された。いくらワシが何もしとらんでも、周りがひとたび妬めば、ワシの幸せは意図も簡単に壊された。ワシは強さや出世だけでは何もならんと嘆いた。
2人はまだ若い。けど、妬まれても憎んだらあかん。やられてやり返す。それが戦の原因や」
おじいさんは数え切れないほどの人生をノンストップで生きてきたんだ。何も持っていなければ、守るべきものを守れなかったとただ、悔しい思いをする。けれど、強さや地位だけでは周りの妬みで幸せを潰されてしまう。私とヨルクさんも妬まれていたのだろうか。やられてやり返せば戦に繋がるか。人と人の調和というものはとても難しい。
「そうでしたか。確かに誰でも最初から上手くはいきませんね。私ももう何度も転生して、いくつもの前世がありますが、未だに未熟です。おじいさんは早くから弟子を取っていたんですか?」
「仕事をやめて道場を開いた。多くの弟子を鍛えてきた。けど、今度は道場破りや。道場は守れても多くの弟子を失った時、ワシは道場をやめた。その後、職を転々としたけど、完全な幸せを得ることは出来んかった。ワシの話はここまでじゃ。2人はまだ鍛えなあかんことがいっぱいある。けど、もう帰る時や」
えっ、まだここにいたい。おじいさんと一緒にいたいよ。
「い、いやです!私、おじいさんとここで住みます!」
「師範、ここはいったい何なんですか?この町には師範しか住んでいないのですか?」
そういえば、人なんて見かけない。どうしてここがあるのだろう。
「ここは天然記念物じゃ。今は神様が所有しとる。レストランもな。何軒か人は住んどる」
そうだったのか。全く気づかなかった。ここ、ダンゴロさんの所有地なんだ。
「まだ、ここにいさせてください!」
「ワシは1人じゃが、ナミネには家族がいる。来たい時にいつでもここに来ればいい」
離れたくない。ここにいたい。でも、ヨルクさんも心配してるし……。そろそろ、現実世界に戻らないといけない時が来たのか。
「はい……私、いっぱいここに来ます!だから、おじいさんもずっとここにいてください!」
この夜、私はおじいさんと一緒にお風呂に入って一緒の布団で寝た。現実なんか見たくない。ずっとここにいたい。死ぬまで修行して平凡に暮らしたい。けれど、朝は一瞬でやって来た。
手ぶらで来た私たちは荷造りするものもなく私はおじいさんに別れを告げた。
「師範、長い間、指導して頂きありがとうございました。これからも指導よろしくお願いします」
「おじいさん、ありがとうございました。また絶対にここに来ます!」
私はおじいさんとの別れが悲しくてポロポロ涙を零した。
「何があっても堂々としとればええ。結局は悪いことしたモンに返ってくるんやから」
「はい、私負けません!」
私はおじいさんに抱き着いた。
「気を付けて帰りや」
おじいさんは私とラルクに何かを渡した。
「おじいさんも元気で過ごしてください!」
私は名残惜しくもおじいさんから離れ、ラルクと来た時の折り鶴に乗ってナノハナ家に向かって行った。
ナノハナ家に行くと、何故かメンバーみんなが来ていた。まるで私とラルクが今日帰ることを知っていたように。玄関のカレンダーを見ると、まだ2月8日だった。あの古民家並ぶ町では半年も過ごしたのに、こっちでは時間、殆ど進んでなかったんだ。やっぱり、あの町がダンゴロさんの所有地だから時間の流れが違うのだろうか。
第4居間に入ると、ゴージャスな料理が並べてあった。
「ナミネ、おかえり」
「ヨルクさん!」
私はヨルクさんに抱き着いた。
「あんたら今までどこに行ってたんだよ。こっちはどこ探してもいないし心配したんだぞ!」
「すみません……」
私は席に座り、鯛を手で掴んだ。
「ねえ、ミナク、考え直して!悪いところは全て直すから!」
「すみません、セナ王女。私はミネスを好きになりました。もう関係も持っていますし、ミネスだけを大切にしながら生きていこうと思っています」
この2人、まだ決着ついてなかったのか。ミネスさんとのことはなかったことになっているのに、ミナクさんの記憶は消されてないわけか。
「ナミネ、話を聞いてもらえるかな?」
やっぱり、ナルホお兄様話しかけてきた。私はナルホお兄様を無視した。
「ナミネ、僕はカナエと交際することになったよ。でも、ナミネが反対するなら交際は取り止めにする」
人は息を吐くかのように嘘を着く。この嘘は何のための嘘だろう。少なくとも私にはくだらないものに見えた。
「お子ちゃまミネスの次は男尽くしカナエか。あんたの嘘はもう通用しないんだよ。録音してナノハに渡すまでだけどね?」
「セルファがそうしたいならそうしてもらって構わない。今の僕はナミネを傷付けることは一切言わないよ」
いくら私を傷つけたのが次元の違うナルホお兄様だったとしても、私はまだ疑っている。落ち武者さんはナルホお兄様にフェアリーングをかけた。
「平和ボケなナルホ、あんた、強気なナミネを傷付けないて言ったけど、強気なナミネが男尽くしカナエとの交際反対したらどうするわけ?お子ちゃまミネスとは交際しなくていいわけ?」
「ナミネが反対してもカナエとは別れないよ。ナミネが死にたいなら死んでもいいと思う。無理に生きなくてもいいと思うんだ。ミネスのことは放っておけないし、愛していた。でも、現世で交際は出来ない。ナミネのこと一度も愛したことがないよ。僕の恋愛さえ上手く行けばナミネのことはどうでもいいし、ナミネも無理に生きることないと思うよ」
これがナルホお兄様の核心。けれど、私はどうしてこれほどまでにナルホお兄様から恨まれているのだろう。私、過去に何かしたのだろうか。落ち武者さんはフェアリーングを解いた。
「あんた最低だな。今すぐナノハに知らせてくる」
その瞬間、ナルホお兄様は落ち武者さんからボイスレコーダーを奪い取った。
「セルファはそうやって人が思ってもないことを言わせて人間関係を壊してきたんだね。セルファは今、幸せかな?人を貶めることでしか憂さ晴らし出来ないなんて僕は可哀想だと思うけどな」
その時、ラルクがナルホお兄様からボイスレコーダーを奪い取った。けれど、突然5人の妖精村中級武官が現れた。
「ナルホに頼まれてナミネを可愛がりに来た」
「あ、ナミネはあの子です」
私は思わずミネスさんを指さした。すると5人の妖精村中級武官はミネスさんに襲いかかった。ミネスさんは、あっという間に服を脱がされた。
「やめて!助けて!私じゃない!」
「前金は払ったから中止にしてくれるかな!」
ナルホお兄様がストップをかけると妖精村中級武官はミネスさんから離れ逃げようとした。ここで逃がしてたまるか!私は立ち上がり、5人の妖精村中級武官の口の中に大量の睡眠薬を投げ込んだ。5人の妖精村中級武官は一瞬にしてその場に倒れ込んだ。ラルクは妖精村中級武官5人をまとめて拘束した。
私たち瞬発力が上がっている。おじいさんの訓練効果だろうか。
「全財産注ぎ込んだのに、よくも台無しにしてくれたね、ナミネ!」
全財産注ぎ込むほどに私のことを恨んでいたのか。ナルホお兄様の気持ちを知ったら、もうナルホお兄様のことを兄とは思えなくなっていた。ナクリお姉様がかつてミドリお姉様をハメたように、人の裏の感情は誰にも分からない。私はもうナルホお兄様とは関わらない。好きに生きればいいと思う。
「ラルク!ボイスレコーダーを今すぐナノハに届けろ!」
「ここにいるよ。ナルホの庭園が壊されていたから来てみたら案の定」
庭園が壊されている?いったい誰が壊したのだろう。
「庭園壊されたのはいつ頃だ!」
「5分前、ナナミがトイレに行った時はあったらしいんだけど、トイレから出て来たら壊されていたらしいよ」
「強気なナミネはずっとここにいたから、犯人は別の者だな」
私の無実は証明された。ナノハお姉様はラルクからボイスレコーダーを受け取った。もうナルホお兄様は人間じゃない。バケモノだ。
「カナエ、考え直してくれ。こんなバケモノと交際していたらカナエが不幸になってしまう」
今のナルホお兄様だったら、もうアルフォンス王子のほうがマシに見えてくる。
「カナエはナルホとは別れません。ナルホ、植物はコノハ家で育てているものがあります。またカナエと一緒に庭園を復旧しましょう」
「ありがとうカナエ。ここまでみんなから悪者にされて心もズタズタで、僕にはもうカナエしかいないよ」
もう私の知っているナルホお兄様はどこにもいない。目の前にいるのは憎しみだらけのナルホお兄様。
「それじゃあ、私はお母様に知らせてくるね」
ナノハお姉様はラルクが捕まえた妖精村中級武官を抱え、第4居間を出た。落ち武者さんは今度はミネスさんにフェアリーングをかけた。
「お子ちゃまミネス、今どう思ってんだよ」
「ナルホのことが好きで好きでたまらない。なのに、一瞬でカナエに奪われ、カナエが憎くて仕方ない。カナエには痛い目にあってもらう」
人の心は汚れている。その汚れを何かで隠しているにしか過ぎない。生きれば生きるほど人は恨み合うのである。
落ち武者さんは今度はズームさんにフェアリーングをかけた。
「ズーム、これでもまだお子ちゃまミネスの味方すんのかよ!」
「僕は今でもナミネさんのことが好きです!でも、ナミネさんにはヨルクさんがいます。だから大丈夫とミネスを救うことに専念しました。けれど、ミネスは長年に渡ってナミネさんの幸せを奪ってきました。僕はいつかその報いは受けることになるだろうと思っていましたが、それが今になったようです。ナミネさんが傷付いた時、反省しました。もう僕はミネスを助けません」
ズームさん……。私、何も知らずズームさんのことも恨んでしまってた。私は咄嗟に鯛を加えたままズームさんに抱き着いた。
「ズームさん、ごめんなさい。私、何も知りませんでした。現世では一緒にはなれませんが、ズームさんのことはお守りします」
「あんた、鯛落ちてんだろうが」
落ち武者さんは鯛を拾った。
「何だかいい気味。人の男奪ったらミネスみたいに不幸になるのね」
ミネスさんは声を殺して泣いていた。けれど私は少しも同情が出来なかった。寧ろ、奪った幸せを返して欲しいとも思っていた。
初代天使村でヨルクさんが毒殺されていなければ、妖精村時代もヨルクさんと恋人でいれた。妖精村からが紀元後だから、妖精村時代だけでも私は21世紀も幸せを奪われたことになる。それに紀元前を加えると、私の幸せはかなりの年月奪われたことになる。そう思うと私は許せなかった。
「ラルク、もうすぐバレンタインだね」
「その日、クラフの誕生日だから私の別荘で誕生会開くの」
委員長ってバレンタインが誕生日だったのか。
「そうなんですね。ラルク、私たちも行こうよ!」
「そうだな。チョコ食べれるかもしれないしな」
「あの垂れ流しのチョコあると嬉しいな」
「変な言い方すんなよ。チョコレートフォンデュだろ」
チョコ、何作ろうかな。ヨルクさんと、ラルク、落ち武者さん、ナヤセス殿、ミツメさん、ラハルさん、ズームさん、カラン王子、委員長、おじいさん……。ヨルクさんには特別なもの作りたいな。
「ナミネ、バレンタインは何作って欲しい?」
「え、えっと、チーズケーキ」
「うん、分かった。作るね」
ヨルクさんもクラスメイトからいっぱいチョコもらうのだろうか。
「落ち武者さん、ラルクが伝説最上級武官に合格したんです!」
「じゃ、お祝いしないとな。今から風呂で語り合おうぜ」
「はい」
「ねえ、落ち武者さん、どうしてナミネとお風呂に入ろうとするの?ナミネは私と入るから!」
その夜、私は落ち武者さんたちとお風呂で雑談し、久しぶりにヨルクさんと一緒に寝た。
後から聞くところによると、あのゴージャスな料理は私の帰りを待つヨルクさんが毎日カナエさんと作っていたそうだ。
2月14日。
バレンタインの日がやって来た。私は昨日作った星空トリュフとヨルクさんに渡す星型ケーキを押し入れに隠している。学校から帰ってきて、ユメさんの別荘のパーティーで渡すつもりだ。おじいさんには手紙と共に紙飛行機でチョコを飛ばした。喜んでくれるといいな。
学校に行くなりラルクは女の子からたくさんチョコをもらっていた。ラルクはこれまでずっとイジメられっ子のフリをして、わざと赤点を取っていたのだ。クレナイ家の跡取りにならないために。けれど、将来のことを考え、現実と向き合い、学校でも本領を発揮するようになったのである。そのせいで、私は学年1位から学年2位に下がってしまった。
それにしても、ラルクがこんなにモテていただなんて。イジメられていた時は誰も助けようとしなかったのに。
横を見ると紙袋が下げてある。中身を見るとチョコだった。私もチョコもらえるんだ。お腹空いた時に食べよう。
私はヨルクさんが気になり2年5組に向かった。
案の定、ヨルクさんの周りには多くの女の子が集まっていて手提げ袋2個も持っていた。私はヨルクさんのクラスに入った。
「ヨルクさんはモテますな」
「ナミネ!」
ナルホお兄様も少しもらっているし、落ち武者さんも手提げ袋1つはある。
「ヨルクさんはどの女子(おなご)が好みなのですかな?」
「ナミネだけだよ」
その時、ナルホお兄様は私の手を掴んだ。
「ナミネ、ちゃんと話をしてくれないかな?」
「あの、どちら様でしょうか?」
私はナルホお兄様に掴まれた手を振りほどくと落ち武者さんのところへ行った。
「本命はいるのですかな?」
「あんたはチョコくれないわけ?」
「チョコならもうこんなにたくさんあるではありませんか」
「はい、落ち武者さん。本命チョコよ」
わあ、エルナさんって、やっぱり落ち武者さんのこと今もずっと好きなんだ。何だか、この2人、もどかしいな。
「エルナ、あんたお菓子作れんのかよ」
「作ったわよ」
その時、私の同級生が来た。
「ナ、ナミネ、本命チョコ」
「わあ、ありがとう。私チョコ大好きなの。有難く受け取っておくね」
「ナミネの紙袋いっぱいだったから、もう1つつりさげておいた」
「そうだったんだね。ルサフク君は気が利くね」
「ナミネ、今フリーなら……」
その時、ヨルクさんが前を遮った。
「ナミネのお友達かな?私はナミネの彼氏だよ」
「そ、そうですか」
ルサフク君は泣きながら走って行った。
「ヨルクさん、あんまりじゃないですか!ルサフク君待って!」
私はルサフク君を追いかけた。
私やラルクは2袋のチョコが入った紙袋を持ちながらナノハナ家に戻り、私はドレスに着替え、ドレス用のバッグとチョコの入った紙袋を持つとヨルクさんやラルク、落ち武者さんと共にユメさんの別荘に向かった。
ユメさんの別荘のパーティー会場は委員長の誕生日会が名目なのに貴族の人が沢山来ていた。
私は早速、ヨルクさんと、ラルク、落ち武者さん、ナヤセス殿、ミツメさん、ラハルさん、ズームさん、カラン王子、委員長にチョコを渡した。
「私の手作りチョコなんです」
「何だ、くれるなら学校でとっとと渡せよ」
「ナミネ、これ味大丈夫なのかよ」
「ナミネさん、ありがとうございます」
「ナミネ、くれるの?凄く嬉しい!ありがとう!」
チョコを渡したみんなは箱を開けた。そこには星空がモチーフにした世界が広がっていたのである。お菓子作りとか前なら全然していなかったけど、1つのアートと思うことで楽しく作ることが出来た。これもおじいさんの修行効果かもしれない。
「あんた、意外に想像力豊かだな」
落ち武者さんはトリュフを1つ食べた。
「あんた、料理でも勉強してたのか?」
「ナミネ、センスあるね」
「ナミネにしては何かクオリティ上がってるな」
「前なら料理とか全然してなかったんですけど、お菓子作りも1つのアートだと思うと気持ちが入ったんです」
みんな喜んでくれてる。
「てか、なんで顔だけヨルクのだけ違うのさ」
「彼氏だからです」
「ナミネ、凄く綺麗に出来てる。帰ったら食べるね」
ヨルクさんは写真に撮った。そういえば、随分とカップル日記見てなかったな。私はカップル日記を開けた。
『ナミネ、いつ帰ってくるかな』
『ナミネ、ちゃんと食べているだろうか』
『ナミネが早く帰ってきますように』
『早くナミネに会いたい』
(以下略)
ヨルクさん、私が帰ってきた時のために、毎日手の込んだ料理作ってくれてたんだ。
『コノハ家でナルホの植物育てているのです』
カナエさん、アルフォンス王子のところからは退会してナルホお兄様と新しく登録したんだ。
『ユメと雪だるま作った』
委員長は相変わらずだな。
『カンザシとオシャレなカフェに来てる』
ミネスさん、カンザシさんと登録したんだ。カンザシさんは閲覧用だろうか。何か、見られていると思うと気が重たいな。
『ラルクにバレンタインチョコ作った』
セレナールさん、相変わらず料理下手。
コメント欄を見ると少し荒れている。
『セナ:ミネスの泥棒猫!』
『アルフォンス:カナエ、戻ってきて欲しい』
『セナ:お漏らしミネス(画像)』
『カラルリ:セナさん、もう一度チャンスが欲しい』
(以下略)
セナ王女、ミネスさんに悪口書きまくりだ。
その時、セレナールさんが走ってズームさんにぶつかり、ズームさんはセレナールさんの下敷きになった。
「いやっ!気持ち悪い!離れて!」
何その言い方。
「あの、セレナールさん、そういう言い方失礼だと思います」
「ナミネっていつも上から目線だけど、あなたが同じ立場ならどうなのよ!」
セレナールさんは起き上がると私をズームさんの上に押し倒した。またズームさんと濃厚な口付けをしてしまった。私は起き上がり、ズームさんを起こした。
「あのね、ズームさん。ズームさんにとっては、たいしたことないのかもしれない。でも、私にとっては、たった1つのはじめての体験だったの」
「青空交換日記ですか」
「正解です!」
「ナミネ、今の演技良かったよ。そのドラマ、リメイクされるみたいだけど、ナミネが主役ならヒットしそう」
リメイクされるんだ。色んな村で放送はされていたけれど、昔のドラマが現代風になるのは少し寂しいものがあるけれど、それもまた現代の暮らしの1つなのだろう。
「ズーム!本命チョコだ!」
「ロォラ!その格好は何だ!一軍女子でパパ活してるわりに、ドレス1つも持ってないのか!」
「こういうところがあるって知らなかったし、ブランドのバッグが欲しくて……。それに私は二軍女子だ」
ロォラさんで二軍女子なのか。だったら、一軍女子はどんな女の子なのだろう。ロォラさんって、柄物のトレーナーにジーンズが多いけど、それでも容姿端麗だから着飾らなくても映えている。
「あの、ドレスだったらユメさんに借りたらどうですか?」
「汚したら悪いし、いい」
「あんた、せっかくバレンタインでズームに本命チョコ渡したんだから、ズームにドレス姿見せてやれ!アヤネはメイクしろ!ユメ、ドレス借りるぞ!」
落ち武者さん、めちゃくちゃ強引。でも、私もロォラさんはドレス着たほうがいいと思う。せっかくズームさんいるんだし。
「ええ、構わないわ。2階のクローゼットにあるわ」
「はい、分かりました」
私とラルク、落ち武者さん、アヤネさん、ズームさんはロォラさんを連れて2階へ向かった。
……
あとがき。
古代編の純愛はどこへいった。
どうして現代編ではセナとカラルリ、カナエとアルフォンス別れちゃうの。あの時の互いが互いを求め合っていた時間はあの時だけのものなの?
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
《ナミネ》
「ワシは遠い遠い大昔、天使村よりずっと昔に儀式で人魚の肉を食べさせられた。それ以降、身体は不老不死となり、何世紀もの時代を見てきた。もう自分の歳さえ忘れてしもた。人というのは己の考えのみが全てだと思い込み、自分と違う意見を潰すためにすぐに戦をする。ワシも最初は何も持っとらんかった。普通に結婚して妻子はいたけど、些細なことでお偉いさんに殺されてしもた。あの時は悔しくてたまらんかった。結局この世は金と権力を持っている者が暗黙に下々の人を支配する。ワシは最初の妻子を殺された悔しさで、ある人に弟子入りして武術を極めた。師匠のお陰でワシは次の妻子は守り抜くことが出来た。だが、そこで問題になったのは周りからの妬みじゃ。すぐにワシの暗殺計画が行われたが、その頃のワシは刺客を送り込まれても負けん強さになってた。けど、不老不死の人生は思った以上に長く、その後、何度も皇帝陛下に妻子を殺された。いくらワシが何もしとらんでも、周りがひとたび妬めば、ワシの幸せは意図も簡単に壊された。ワシは強さや出世だけでは何もならんと嘆いた。
2人はまだ若い。けど、妬まれても憎んだらあかん。やられてやり返す。それが戦の原因や」
おじいさんは数え切れないほどの人生をノンストップで生きてきたんだ。何も持っていなければ、守るべきものを守れなかったとただ、悔しい思いをする。けれど、強さや地位だけでは周りの妬みで幸せを潰されてしまう。私とヨルクさんも妬まれていたのだろうか。やられてやり返せば戦に繋がるか。人と人の調和というものはとても難しい。
「そうでしたか。確かに誰でも最初から上手くはいきませんね。私ももう何度も転生して、いくつもの前世がありますが、未だに未熟です。おじいさんは早くから弟子を取っていたんですか?」
「仕事をやめて道場を開いた。多くの弟子を鍛えてきた。けど、今度は道場破りや。道場は守れても多くの弟子を失った時、ワシは道場をやめた。その後、職を転々としたけど、完全な幸せを得ることは出来んかった。ワシの話はここまでじゃ。2人はまだ鍛えなあかんことがいっぱいある。けど、もう帰る時や」
えっ、まだここにいたい。おじいさんと一緒にいたいよ。
「い、いやです!私、おじいさんとここで住みます!」
「師範、ここはいったい何なんですか?この町には師範しか住んでいないのですか?」
そういえば、人なんて見かけない。どうしてここがあるのだろう。
「ここは天然記念物じゃ。今は神様が所有しとる。レストランもな。何軒か人は住んどる」
そうだったのか。全く気づかなかった。ここ、ダンゴロさんの所有地なんだ。
「まだ、ここにいさせてください!」
「ワシは1人じゃが、ナミネには家族がいる。来たい時にいつでもここに来ればいい」
離れたくない。ここにいたい。でも、ヨルクさんも心配してるし……。そろそろ、現実世界に戻らないといけない時が来たのか。
「はい……私、いっぱいここに来ます!だから、おじいさんもずっとここにいてください!」
この夜、私はおじいさんと一緒にお風呂に入って一緒の布団で寝た。現実なんか見たくない。ずっとここにいたい。死ぬまで修行して平凡に暮らしたい。けれど、朝は一瞬でやって来た。
手ぶらで来た私たちは荷造りするものもなく私はおじいさんに別れを告げた。
「師範、長い間、指導して頂きありがとうございました。これからも指導よろしくお願いします」
「おじいさん、ありがとうございました。また絶対にここに来ます!」
私はおじいさんとの別れが悲しくてポロポロ涙を零した。
「何があっても堂々としとればええ。結局は悪いことしたモンに返ってくるんやから」
「はい、私負けません!」
私はおじいさんに抱き着いた。
「気を付けて帰りや」
おじいさんは私とラルクに何かを渡した。
「おじいさんも元気で過ごしてください!」
私は名残惜しくもおじいさんから離れ、ラルクと来た時の折り鶴に乗ってナノハナ家に向かって行った。
ナノハナ家に行くと、何故かメンバーみんなが来ていた。まるで私とラルクが今日帰ることを知っていたように。玄関のカレンダーを見ると、まだ2月8日だった。あの古民家並ぶ町では半年も過ごしたのに、こっちでは時間、殆ど進んでなかったんだ。やっぱり、あの町がダンゴロさんの所有地だから時間の流れが違うのだろうか。
第4居間に入ると、ゴージャスな料理が並べてあった。
「ナミネ、おかえり」
「ヨルクさん!」
私はヨルクさんに抱き着いた。
「あんたら今までどこに行ってたんだよ。こっちはどこ探してもいないし心配したんだぞ!」
「すみません……」
私は席に座り、鯛を手で掴んだ。
「ねえ、ミナク、考え直して!悪いところは全て直すから!」
「すみません、セナ王女。私はミネスを好きになりました。もう関係も持っていますし、ミネスだけを大切にしながら生きていこうと思っています」
この2人、まだ決着ついてなかったのか。ミネスさんとのことはなかったことになっているのに、ミナクさんの記憶は消されてないわけか。
「ナミネ、話を聞いてもらえるかな?」
やっぱり、ナルホお兄様話しかけてきた。私はナルホお兄様を無視した。
「ナミネ、僕はカナエと交際することになったよ。でも、ナミネが反対するなら交際は取り止めにする」
人は息を吐くかのように嘘を着く。この嘘は何のための嘘だろう。少なくとも私にはくだらないものに見えた。
「お子ちゃまミネスの次は男尽くしカナエか。あんたの嘘はもう通用しないんだよ。録音してナノハに渡すまでだけどね?」
「セルファがそうしたいならそうしてもらって構わない。今の僕はナミネを傷付けることは一切言わないよ」
いくら私を傷つけたのが次元の違うナルホお兄様だったとしても、私はまだ疑っている。落ち武者さんはナルホお兄様にフェアリーングをかけた。
「平和ボケなナルホ、あんた、強気なナミネを傷付けないて言ったけど、強気なナミネが男尽くしカナエとの交際反対したらどうするわけ?お子ちゃまミネスとは交際しなくていいわけ?」
「ナミネが反対してもカナエとは別れないよ。ナミネが死にたいなら死んでもいいと思う。無理に生きなくてもいいと思うんだ。ミネスのことは放っておけないし、愛していた。でも、現世で交際は出来ない。ナミネのこと一度も愛したことがないよ。僕の恋愛さえ上手く行けばナミネのことはどうでもいいし、ナミネも無理に生きることないと思うよ」
これがナルホお兄様の核心。けれど、私はどうしてこれほどまでにナルホお兄様から恨まれているのだろう。私、過去に何かしたのだろうか。落ち武者さんはフェアリーングを解いた。
「あんた最低だな。今すぐナノハに知らせてくる」
その瞬間、ナルホお兄様は落ち武者さんからボイスレコーダーを奪い取った。
「セルファはそうやって人が思ってもないことを言わせて人間関係を壊してきたんだね。セルファは今、幸せかな?人を貶めることでしか憂さ晴らし出来ないなんて僕は可哀想だと思うけどな」
その時、ラルクがナルホお兄様からボイスレコーダーを奪い取った。けれど、突然5人の妖精村中級武官が現れた。
「ナルホに頼まれてナミネを可愛がりに来た」
「あ、ナミネはあの子です」
私は思わずミネスさんを指さした。すると5人の妖精村中級武官はミネスさんに襲いかかった。ミネスさんは、あっという間に服を脱がされた。
「やめて!助けて!私じゃない!」
「前金は払ったから中止にしてくれるかな!」
ナルホお兄様がストップをかけると妖精村中級武官はミネスさんから離れ逃げようとした。ここで逃がしてたまるか!私は立ち上がり、5人の妖精村中級武官の口の中に大量の睡眠薬を投げ込んだ。5人の妖精村中級武官は一瞬にしてその場に倒れ込んだ。ラルクは妖精村中級武官5人をまとめて拘束した。
私たち瞬発力が上がっている。おじいさんの訓練効果だろうか。
「全財産注ぎ込んだのに、よくも台無しにしてくれたね、ナミネ!」
全財産注ぎ込むほどに私のことを恨んでいたのか。ナルホお兄様の気持ちを知ったら、もうナルホお兄様のことを兄とは思えなくなっていた。ナクリお姉様がかつてミドリお姉様をハメたように、人の裏の感情は誰にも分からない。私はもうナルホお兄様とは関わらない。好きに生きればいいと思う。
「ラルク!ボイスレコーダーを今すぐナノハに届けろ!」
「ここにいるよ。ナルホの庭園が壊されていたから来てみたら案の定」
庭園が壊されている?いったい誰が壊したのだろう。
「庭園壊されたのはいつ頃だ!」
「5分前、ナナミがトイレに行った時はあったらしいんだけど、トイレから出て来たら壊されていたらしいよ」
「強気なナミネはずっとここにいたから、犯人は別の者だな」
私の無実は証明された。ナノハお姉様はラルクからボイスレコーダーを受け取った。もうナルホお兄様は人間じゃない。バケモノだ。
「カナエ、考え直してくれ。こんなバケモノと交際していたらカナエが不幸になってしまう」
今のナルホお兄様だったら、もうアルフォンス王子のほうがマシに見えてくる。
「カナエはナルホとは別れません。ナルホ、植物はコノハ家で育てているものがあります。またカナエと一緒に庭園を復旧しましょう」
「ありがとうカナエ。ここまでみんなから悪者にされて心もズタズタで、僕にはもうカナエしかいないよ」
もう私の知っているナルホお兄様はどこにもいない。目の前にいるのは憎しみだらけのナルホお兄様。
「それじゃあ、私はお母様に知らせてくるね」
ナノハお姉様はラルクが捕まえた妖精村中級武官を抱え、第4居間を出た。落ち武者さんは今度はミネスさんにフェアリーングをかけた。
「お子ちゃまミネス、今どう思ってんだよ」
「ナルホのことが好きで好きでたまらない。なのに、一瞬でカナエに奪われ、カナエが憎くて仕方ない。カナエには痛い目にあってもらう」
人の心は汚れている。その汚れを何かで隠しているにしか過ぎない。生きれば生きるほど人は恨み合うのである。
落ち武者さんは今度はズームさんにフェアリーングをかけた。
「ズーム、これでもまだお子ちゃまミネスの味方すんのかよ!」
「僕は今でもナミネさんのことが好きです!でも、ナミネさんにはヨルクさんがいます。だから大丈夫とミネスを救うことに専念しました。けれど、ミネスは長年に渡ってナミネさんの幸せを奪ってきました。僕はいつかその報いは受けることになるだろうと思っていましたが、それが今になったようです。ナミネさんが傷付いた時、反省しました。もう僕はミネスを助けません」
ズームさん……。私、何も知らずズームさんのことも恨んでしまってた。私は咄嗟に鯛を加えたままズームさんに抱き着いた。
「ズームさん、ごめんなさい。私、何も知りませんでした。現世では一緒にはなれませんが、ズームさんのことはお守りします」
「あんた、鯛落ちてんだろうが」
落ち武者さんは鯛を拾った。
「何だかいい気味。人の男奪ったらミネスみたいに不幸になるのね」
ミネスさんは声を殺して泣いていた。けれど私は少しも同情が出来なかった。寧ろ、奪った幸せを返して欲しいとも思っていた。
初代天使村でヨルクさんが毒殺されていなければ、妖精村時代もヨルクさんと恋人でいれた。妖精村からが紀元後だから、妖精村時代だけでも私は21世紀も幸せを奪われたことになる。それに紀元前を加えると、私の幸せはかなりの年月奪われたことになる。そう思うと私は許せなかった。
「ラルク、もうすぐバレンタインだね」
「その日、クラフの誕生日だから私の別荘で誕生会開くの」
委員長ってバレンタインが誕生日だったのか。
「そうなんですね。ラルク、私たちも行こうよ!」
「そうだな。チョコ食べれるかもしれないしな」
「あの垂れ流しのチョコあると嬉しいな」
「変な言い方すんなよ。チョコレートフォンデュだろ」
チョコ、何作ろうかな。ヨルクさんと、ラルク、落ち武者さん、ナヤセス殿、ミツメさん、ラハルさん、ズームさん、カラン王子、委員長、おじいさん……。ヨルクさんには特別なもの作りたいな。
「ナミネ、バレンタインは何作って欲しい?」
「え、えっと、チーズケーキ」
「うん、分かった。作るね」
ヨルクさんもクラスメイトからいっぱいチョコもらうのだろうか。
「落ち武者さん、ラルクが伝説最上級武官に合格したんです!」
「じゃ、お祝いしないとな。今から風呂で語り合おうぜ」
「はい」
「ねえ、落ち武者さん、どうしてナミネとお風呂に入ろうとするの?ナミネは私と入るから!」
その夜、私は落ち武者さんたちとお風呂で雑談し、久しぶりにヨルクさんと一緒に寝た。
後から聞くところによると、あのゴージャスな料理は私の帰りを待つヨルクさんが毎日カナエさんと作っていたそうだ。
2月14日。
バレンタインの日がやって来た。私は昨日作った星空トリュフとヨルクさんに渡す星型ケーキを押し入れに隠している。学校から帰ってきて、ユメさんの別荘のパーティーで渡すつもりだ。おじいさんには手紙と共に紙飛行機でチョコを飛ばした。喜んでくれるといいな。
学校に行くなりラルクは女の子からたくさんチョコをもらっていた。ラルクはこれまでずっとイジメられっ子のフリをして、わざと赤点を取っていたのだ。クレナイ家の跡取りにならないために。けれど、将来のことを考え、現実と向き合い、学校でも本領を発揮するようになったのである。そのせいで、私は学年1位から学年2位に下がってしまった。
それにしても、ラルクがこんなにモテていただなんて。イジメられていた時は誰も助けようとしなかったのに。
横を見ると紙袋が下げてある。中身を見るとチョコだった。私もチョコもらえるんだ。お腹空いた時に食べよう。
私はヨルクさんが気になり2年5組に向かった。
案の定、ヨルクさんの周りには多くの女の子が集まっていて手提げ袋2個も持っていた。私はヨルクさんのクラスに入った。
「ヨルクさんはモテますな」
「ナミネ!」
ナルホお兄様も少しもらっているし、落ち武者さんも手提げ袋1つはある。
「ヨルクさんはどの女子(おなご)が好みなのですかな?」
「ナミネだけだよ」
その時、ナルホお兄様は私の手を掴んだ。
「ナミネ、ちゃんと話をしてくれないかな?」
「あの、どちら様でしょうか?」
私はナルホお兄様に掴まれた手を振りほどくと落ち武者さんのところへ行った。
「本命はいるのですかな?」
「あんたはチョコくれないわけ?」
「チョコならもうこんなにたくさんあるではありませんか」
「はい、落ち武者さん。本命チョコよ」
わあ、エルナさんって、やっぱり落ち武者さんのこと今もずっと好きなんだ。何だか、この2人、もどかしいな。
「エルナ、あんたお菓子作れんのかよ」
「作ったわよ」
その時、私の同級生が来た。
「ナ、ナミネ、本命チョコ」
「わあ、ありがとう。私チョコ大好きなの。有難く受け取っておくね」
「ナミネの紙袋いっぱいだったから、もう1つつりさげておいた」
「そうだったんだね。ルサフク君は気が利くね」
「ナミネ、今フリーなら……」
その時、ヨルクさんが前を遮った。
「ナミネのお友達かな?私はナミネの彼氏だよ」
「そ、そうですか」
ルサフク君は泣きながら走って行った。
「ヨルクさん、あんまりじゃないですか!ルサフク君待って!」
私はルサフク君を追いかけた。
私やラルクは2袋のチョコが入った紙袋を持ちながらナノハナ家に戻り、私はドレスに着替え、ドレス用のバッグとチョコの入った紙袋を持つとヨルクさんやラルク、落ち武者さんと共にユメさんの別荘に向かった。
ユメさんの別荘のパーティー会場は委員長の誕生日会が名目なのに貴族の人が沢山来ていた。
私は早速、ヨルクさんと、ラルク、落ち武者さん、ナヤセス殿、ミツメさん、ラハルさん、ズームさん、カラン王子、委員長にチョコを渡した。
「私の手作りチョコなんです」
「何だ、くれるなら学校でとっとと渡せよ」
「ナミネ、これ味大丈夫なのかよ」
「ナミネさん、ありがとうございます」
「ナミネ、くれるの?凄く嬉しい!ありがとう!」
チョコを渡したみんなは箱を開けた。そこには星空がモチーフにした世界が広がっていたのである。お菓子作りとか前なら全然していなかったけど、1つのアートと思うことで楽しく作ることが出来た。これもおじいさんの修行効果かもしれない。
「あんた、意外に想像力豊かだな」
落ち武者さんはトリュフを1つ食べた。
「あんた、料理でも勉強してたのか?」
「ナミネ、センスあるね」
「ナミネにしては何かクオリティ上がってるな」
「前なら料理とか全然してなかったんですけど、お菓子作りも1つのアートだと思うと気持ちが入ったんです」
みんな喜んでくれてる。
「てか、なんで顔だけヨルクのだけ違うのさ」
「彼氏だからです」
「ナミネ、凄く綺麗に出来てる。帰ったら食べるね」
ヨルクさんは写真に撮った。そういえば、随分とカップル日記見てなかったな。私はカップル日記を開けた。
『ナミネ、いつ帰ってくるかな』
『ナミネ、ちゃんと食べているだろうか』
『ナミネが早く帰ってきますように』
『早くナミネに会いたい』
(以下略)
ヨルクさん、私が帰ってきた時のために、毎日手の込んだ料理作ってくれてたんだ。
『コノハ家でナルホの植物育てているのです』
カナエさん、アルフォンス王子のところからは退会してナルホお兄様と新しく登録したんだ。
『ユメと雪だるま作った』
委員長は相変わらずだな。
『カンザシとオシャレなカフェに来てる』
ミネスさん、カンザシさんと登録したんだ。カンザシさんは閲覧用だろうか。何か、見られていると思うと気が重たいな。
『ラルクにバレンタインチョコ作った』
セレナールさん、相変わらず料理下手。
コメント欄を見ると少し荒れている。
『セナ:ミネスの泥棒猫!』
『アルフォンス:カナエ、戻ってきて欲しい』
『セナ:お漏らしミネス(画像)』
『カラルリ:セナさん、もう一度チャンスが欲しい』
(以下略)
セナ王女、ミネスさんに悪口書きまくりだ。
その時、セレナールさんが走ってズームさんにぶつかり、ズームさんはセレナールさんの下敷きになった。
「いやっ!気持ち悪い!離れて!」
何その言い方。
「あの、セレナールさん、そういう言い方失礼だと思います」
「ナミネっていつも上から目線だけど、あなたが同じ立場ならどうなのよ!」
セレナールさんは起き上がると私をズームさんの上に押し倒した。またズームさんと濃厚な口付けをしてしまった。私は起き上がり、ズームさんを起こした。
「あのね、ズームさん。ズームさんにとっては、たいしたことないのかもしれない。でも、私にとっては、たった1つのはじめての体験だったの」
「青空交換日記ですか」
「正解です!」
「ナミネ、今の演技良かったよ。そのドラマ、リメイクされるみたいだけど、ナミネが主役ならヒットしそう」
リメイクされるんだ。色んな村で放送はされていたけれど、昔のドラマが現代風になるのは少し寂しいものがあるけれど、それもまた現代の暮らしの1つなのだろう。
「ズーム!本命チョコだ!」
「ロォラ!その格好は何だ!一軍女子でパパ活してるわりに、ドレス1つも持ってないのか!」
「こういうところがあるって知らなかったし、ブランドのバッグが欲しくて……。それに私は二軍女子だ」
ロォラさんで二軍女子なのか。だったら、一軍女子はどんな女の子なのだろう。ロォラさんって、柄物のトレーナーにジーンズが多いけど、それでも容姿端麗だから着飾らなくても映えている。
「あの、ドレスだったらユメさんに借りたらどうですか?」
「汚したら悪いし、いい」
「あんた、せっかくバレンタインでズームに本命チョコ渡したんだから、ズームにドレス姿見せてやれ!アヤネはメイクしろ!ユメ、ドレス借りるぞ!」
落ち武者さん、めちゃくちゃ強引。でも、私もロォラさんはドレス着たほうがいいと思う。せっかくズームさんいるんだし。
「ええ、構わないわ。2階のクローゼットにあるわ」
「はい、分かりました」
私とラルク、落ち武者さん、アヤネさん、ズームさんはロォラさんを連れて2階へ向かった。
……
あとがき。
古代編の純愛はどこへいった。
どうして現代編ではセナとカラルリ、カナエとアルフォンス別れちゃうの。あの時の互いが互いを求め合っていた時間はあの時だけのものなの?
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
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純愛偏差値 未来編 一人称版 74話
《ナミネ》
ナルホお兄様とズームさんに見捨てられた私はラルクを連れてナノハナ家から逃げ出した。何もしていないのに2人に裏切られるとは思わなくてかなり傷付いた。もうナノハナ家には戻りたくない。
「ナミネ、神様ブロック出来る番人呼び出せ!」
そんなことが出来る番人なんているのだろうか。けれど、聞いてみるしかない。私はヨナラタスさんにメールをした。
『あの、神様ブロック出来る番人ていますか?』
『妖精村3番目の番人のテナロスか番人ではないがミドリかだ』
ミドリお姉様が?どうしてミドリお姉様にそのような力があるのだろう。天界で何か入手したのだろうか。
私はとりあえず、ミドリお姉様にメールをした。
『ミドリお姉様、お助け下さい。添付映像のように、私、ナルホお兄様に自分の恋愛が成就するなら死んでもいいと言われたんです。オマケにズームさんからも見捨てられました。神様呼び出しカードを持っているヨルクさんはナルホお兄様が拉致しています。神様ブロックをしていただけませんか?』
『うん、分かった。ヨルクが神様呼び出しカードでダンゴロさん呼び出しても願い叶えなければいいんだね。ナミネ、私はナミネの味方だよ。だから、もっと楽しく生きて。ナルホや他者のことで傷つく必要なんてないから』
天界ではミドリお姉様にかなり自論を押し付けてしまった。そんな私の頼みなんて叶えてくれるのだろうか。
『すみません、ミドリお姉様。お願いします』
私は念の為、3番目の番人のテナロスさんを呼び出した。気が付けば、私とラルクが乗っていた折り鶴は森の湖南駅付近の古民家が並ぶ町に到着していた。
「あ、はじめまして。ナミネと申します。あの、ミドリお姉様に神様ブロックをお願いしたのですが、不安なんです」
「はじめまして。テナロスです。ミドリさんは神様ブロックを必ず行いますよ。少しの間ですが、ここで気分転換して行ってください。用事のある時はいつでも呼んでくださいませ」
「あ、はい。今後ともよろしくお願いします」
暗くなった夜の町に灯りがつくとテナロスさんはいなくなっていた。屋根がワラの古民家も色が付いていて、今も人が住んでいるようだった。というか、通りすがる人が出て来たから人が住んでいるのだ。
私とラルクは空いている古民家に入った。
「わあ、2階もあるし、電気も水も使えるよ!」
私は早速、暖炉に火をつけた。けれど、ここは圏外だし、私たちは一時的にタイムスリップしている。でも、今の私にとって現代の人と関わらなくていいのは気が楽かもしれない。
「ナミネ、最後にナルホさんの携帯にアクセスして、ナルホさんのクラスメイトのココリさんに『ずっと君だけを見てた。君はいつも真面目で一生懸命で、そんな君の姿に惹かれたんだ。僕と交際してくれないかな?』とメールしたんだ。ココリさんは喜んで『とても嬉しい!私ナルホと交際する』と返信してきた。けど『嘘だよ、試してみただけ。君のような不細工とは付き合えないな。いい男見つけてね』て返信しといた。履歴は全て削除済みだ」
ココリさんて、ヨルクさんのこと狙ってた人だよね。あまり男ウケしなさそうな感じの人だったような。ナルホお兄様に弄ばれて堪えるだろうなあ。
「わー、傑作だね!これでココリさんに何かあったらナルホお兄様の全責任だね!」
もう誰がどんな不幸に巻き込まれても私は知らない。恋愛が大切だから死んでもいいよとか、私が苦しんでも妹が大切だから私に苦しめとか、そんな自分のことしか考えられない人は一度痛い目見ないと分からないと思う。
みんな守りたい人のみを大切にして私を辱めるのなら、私も同じことで返す。容赦はしない。
私はパソコンで
『君たちのような不細工は僕は1人も相手に出来ない。
好きになるなら僕以外の人にしてくれるかな?
パパ活のスケジュールばかりいれて気持ち悪いし、僕の半径50m以内に入れば、その人の親御さん職業失うよ?
分かってると思うけど、僕がイケメンで君たちはブス。誰にも相手にされないブス。
赤点ばかりとってないで少しは勉強したほうがいいと思うし、将来大丈夫なのかな。とにかく汚物は僕の半径50m以内に入るな!』
と打って印刷して、それをテナロスさんに頼んでロォラさん以外のクラスメイトの一軍、二軍女子の机に置いてもらった。これで、ズームさんのイジメはまた再開するだろう。
私はただ、そっとしておいて欲しかっただけ。でも、それをしてくれず、私を辱めた。だったら、もっと苦しめばいいと思う。私はこれ以上は辱められたくない。だから、もう痛みは擦り付けるしかない。みんなが自己防衛で私を辱めるのなら私も自己防衛をする。
「ナミネ、バックにミドリさんがいることは誰にも話すな。それから、ここではナミネは休んでていいけど、僕はここで伝説武官の試験を受ける。強くなって、もう誰にもナミネを傷付けさせない」
そっか、ラルクなりに色々考えてるんだな。こういう時は、ヨルクさんよりラルクのほうが頼りになる。
私は知らず知らずにヨルクさんへの恋しさをどこかで無理して抱かないようにしていた。
「ラルク、応援してる!ラルクならきっと受かるよ!私、もうラルクしかいないよ。みんな私をイジメるから、私の居場所ないの」
私はラルクにもたれかかった。
「ナミネ、これからは僕がナミネを守る。だからナミネは何も心配せず暮らして欲しい」
「ありがとう、ラルク。ずっと愛してるよ」
「僕もナミネを愛してる」
私は遠い昔から妖精村武官に受かったことが一度もない。現代は妖精村武官も初級から最上級まであるけれど、手が付けられない。強さを求められる伝説武官と違って、妖精村武官は判断力が問われる。私に欠けているのは判断力なのだ。
私から他者に危害は一切加えない。けれど、天使村時代にしてもカンザシさんたちによって、私とヨルクさんの結婚生活は無惨な形で壊された。いくら自分が危害を加えなくても周りはどうしてか私に危害を加える。そんな辱めを受けるほどに、いつしか私の心は限界に達していたと思う。現世では何化されるたび苛立ちが止まらなくなる。私からは何もしてないのにどうしてここまで辱めるのって。気が付いたらコントロールが効かなくなっている。
私にも判断力があれば何か変えられていたのだろうか。判断力ってどうやって身に付けるのだろう。それでも、このまま辱めを受けたままでは帰れない。
その時、テナロスさんが現れた。
「報告です。いまさっき、ココリさんが学校の屋上から飛び降りました。幸い、数箇所の骨折で済み、今は月城総合病院で点滴を受けています。ナルホさんとセルファさん、ヨルクさんは慌ててココリさんに会いに行き、ナルホさんは必死に謝りましたがココリさんはナルホさんを許さず、ナルホさんのご両親を呼び慰謝料請求をしました。負いつまりに負いつまったナルホさんは月城総合病院の屋上から飛び降りましたが、死ねない身体になっているため、身体から血は流れたものの、本体にはなんの支障もなく普通に生きています。ただ、発見した看護師さんによりナルホさんはココリさんと同じ病室にいます。ナルホさんは何度もナミネさんに会いたい、誤解を解きたいと言っていました。ズームさんは放課後のクラスで机の上にある紙を見たクラスメイトにより、ズームさんが過去にイジメられていた画像を大量に送られ、再びズームさんはイジメの対象となりました。ズームさんもナミネさんに謝りたいと言っています。ズームさんもナルホさんももうミネスさんの顔は二度と見たくないそうです。2人ともミネスさんとは縁を切りました。ナルホさんがココリさんを自殺未遂させたとして、お武家連盟会議が開かれました。セルファさんのナミネさんに対するイジメの証拠により、ナルホさんの庭園は処分され、ナルホさんは植物研究員にはなれないようナノハナ家のお母様が手続きしました。また、ナルホさんとズームさんにはミネスさんが危機に陥っても助けない。一生ナミネさんを償うという誓約書にサインをしました」
正直、ココリさんのことは傑作だと思う。でも、ナルホお兄様が私を侮辱していなければこうはなっていなかったし、同情は出来ない。
それに、私は謝りたいだとか会いたいなどの上辺だけの感情に私は騙されたりしない。恨まれるなら恨まれればいい。イジメられるならイジメられればいい。それが私の日常となんの関係があるのだろう。
「ナミネ、ナルホさんとズームさんは反省なんかしていない!ナミネの元気な姿を見れば、またミネスさんを可愛がりナミネのことを馬鹿にする。2人とは口を聞くな!」
「分かってるよ、ラルク。私もそこまで馬鹿じゃないよ」
2人のことは二度と許さない。それどころか、2人の現世での幸せを全て奪い取ってやる。
「遠い昔、ナルホさんにも愛した人はいました。けれど、つまらない男と裏切られ、ナルホさんは恋愛恐怖症になったんです。でも、何度か恋愛した中にミネスさんがいて、ミネスさんとは大恋愛の末、唯一恋愛結婚した人でした。今の2人にはその時の記憶はありませんが。今でも大恋愛した過去が2人を結びつけているのでしょう。しかしながら、大恋愛の上に結婚した2人は上手くいかず仮面夫婦として一生を過ごしたのです。結婚するなりナルホさんが植物に夢中になり、ミネスさんはそんなナルホさんに愛想が尽き、ナルホさんの知らないところで浮気を繰り返していました」
私は思わず笑ってしまった。私にはミネスさんのほうが大事だから死ねと言ったナルホお兄様が結婚後は愛も慈悲も何もない生活を送っていただなんて。無様にもほどがある。けれど、その事実を聞いた私は安心してしまっていた。人を辱めて幸せになれるはずなんかない。
「そうでしか。いくら好き合っても心が離れ離れになることもあるんですね」
「結婚とはそういうものなのかもしれませんね。では、また何かあればお呼びくださいませ」
テナロスさんは番人部屋に戻って行った。
結婚とは何なのだろう。私とヨルクさんは結婚後も愛し合っていたけれど、誰にでも優しいナルホお兄様とミネスさんの結婚後が大したことないと知って、何だか呆気なくなってしまった。
「ナミネ、こっちの手駒は誰にも見せるな!寧ろ、弱いフリを何も持ってないフリを見せ続けろ!」
「うん、分かってるよ、ラルク。こちらの札見せたら相手の思う壷だもんね」
そう、こちらの手駒など決して見せたりはしない。私の背後にミドリお姉様がいることも。テナロスさんがいることも。
私はすかさずヨナラタスさんを呼び出した。
「あの、4人に伝言伝えてもらえませんか?ズームさんにはこう伝えてください。『まさかかつてあれほどに愛し合い、現世でも支え合うと約束したズームさんに裏切られるとは思ってもいませんでした。人を辱めた気持ちはどうですか?今幸せですか?』。ナルホお兄様にはこう伝えてください。『私はナルホお兄様を決して許しません。ナルホお兄様のことが憎くて憎くてたまりません。けれど、好きなら仕方ありません。ミネスさんとお幸せに』。ココリさんにはこう伝えてください。『ナルホお兄様はココリさんを弄んだ後、大金持ちのミネスさんと交際しました』。ヨルクさんにはこうお伝えください。
『ヨルクさん、ナルホお兄様とズームさんにイジメられて辛いよ!このままじゃ辱め受けたままでは帰れないよ!私死ぬかもしれない!ヨルクさんが2人を懲らしめて!私を2人のイジメから助けて!!助けてヨルクさん、助けてヨルクさん!!!』」
「分かった。今伝えに行く」
ヨナラタスさんは去って行った。
ここは圏外だから、誰からの連絡も受け取れないし、ナノハナ家がどうなっているかも分からない。
「あのね、ラルク。私、妖精村武官試験受けるよ」
「そっか。でも、あまり無理すんな」
恨みたくないのに恨んでしまう。すぐに許したいのに許せない。これも、歴史がそうさせたのだろうか。天使村時代、衰弱して楽しいはずのヨルクさんとの結婚期間がほぼ台無しになってしまったこと。こんなのあんまりだと思う。どうして私ばかりが苦しまなければならないのか分からない。
でも、ズームさんのことはやりすぎた気がする。
私はテナロスさんを呼び出した。
「あの、ズームさんのイジメを取り消してもらえないでしょうか?」
「分かりました。こちらもお話があります。あの後、セルファさんがヨナラタスさんの録音をナノハさんに聞かせたところ、ナノハさんは、みんなの前でミナクさんにミネスさんをイジワルさせました。ナルホさんは泣きながらミネスさんに好きだと告白し、一生償うと言いましたが、初を好きでもないミナクさんに奪われたミネスさんはナルホさんに一生恨むと言い、ナルホさんは部屋でキクスケさんを呼び出しナミネさんを襲わせるよう依頼しましたが、キクスケさんは規則に反すると断りました。そのことをセルファさんはナノハさんに報告し、ミネスさんはまたミナクさんからイジワルをされました。その時にミナクさんはハッキリセナ王女に別れを告げ、セナ王女はミネスさんを目の敵にしたのです。また、ミネスさん、ナルホさん、カンザシさんは何世紀にも渡り、本当に愛する人と愛し合えないことから愛情欠落ヒステリー症候群に陥ってます。ズームさんはナミネさんを何世紀にも渡って苦しめたことを反省し、ミネスさんのことは長い年月の報いだと諦め、すぐにナミネさんとの和解を求めています」
愛情欠落ヒステリー症候群?私だって、ヨルクさんと引き離された期間は相当なものだったのに、甘えないで欲しい。ミネスさんがイジワルされたとか、そんなの私には関係ない。勝手にしてって思う。
ズームさんのことは何だか私が突っ走りすぎた気がする。一応謝っておこう。
ミネスさんが来てから現世が変わりつつある気がする。
「そうですか」
私は言葉が見つからなかった。もう現世では仲の良い兄妹ではいられないんだ。テナロスさんが去った後、私はズームさんとヨルクさんに手紙を書いた。
『ズームさんへ
私たちの間には色々誤解があったのかもしれません。戻り次第話し合いたいですが、ナルホお兄様がいつ私を襲わせるかと思うと戻るに戻れません
ナミネ』
『ヨルクさんへ
彼氏なのにどうして何もしてくれないのですか!私は何もしてないのにナルホお兄様から襲わせる依頼をされて怖くてたまりません!1週間以内に、あの優しかった頃のナルホお兄様に戻してくれなければヨルクさんとは破断します!ナノハナ家にも戻りません!見て見ぬふりするヨルクさんなんか大嫌いです!もし、1週間以内にナルホお兄様を説得出来なければ、破断だけでなくヨルクさんを50代女性にイジワルさせます!
ナミネ』
私はこの二通をヨナラタスさんに頼んで2人に渡してもらうようお願いをした。
翌日、ラルクの作った朝食を食べた。
「何だか、新婚夫婦みたいだね、ラルク」
「それはちょっと違うだろ。ナミネ、今日は無理すんな」
「分かってるよ、ラルク」
朝食を食べ終わると私とラルクはテナロスさんの番人部屋に行った。
テナロスさんの番人部屋にある扉を開けると私は、妖精村初級武官体験の申し込みをして、早速体験をした。が、全く適わなかった。悔しくて私は何度も体験をした。気が付けば150回も体験をしたがダメだった。
私は試験会場を出てテナロスさんによって古民家に戻してもらった。
「ナミネ、伝説最上級武官受かった!」
おめでとう、ラルク。私は声に出せないままポロポロ涙を流した。
「ナミネ、どうしたんだ?」
「ラルク、私ダメなの!妖精村初級武官の体験150回も受けたけど全く歯が立たなかった。私には判断力ないのかな。これだと帰ってもナルホお兄様に打ちのめされるだけだよ。悔しいよ、ラルク。私悔しい」
ラルクは私を抱き締めた。
「ナミネ、焦ることはない。僕らにはまだ時間がある。来年も再来年も試験受ければいい。ナミネ、この町の上のほうの古民家に住む武芸にかなり長けた達人と呼ばれるおじいさんがいるんだ。弟子入りしないか?」
そうか。一人の力だから及ばないんだ。誰かに習うことが出来れば何かが変わるかもしれない。
「する!弟子入りするよ!」
私とラルクは早速、達人のおじいさんの元へ向かった。
達人のおじいさんの家は近くにあった。表札にはサラハとある。ここの人サラハっていうんだ。
「ごめんくださいー!」
中からおじいさんが出て来た。
「あの、僕たち、あなたに弟子入りしに来ました」
「もう随分と弟子を取っとらんな。この町も時期に現世に戻る。そうなれば、水道も電気も通らなくなって、この寒い時期を耐えなければならぬ。それでも、訓練を受けたいか?ワシは手を抜かんぞ?」
そっか。テナロスさんが一時的にタイムスリップさせてくれていて、町が賑わってたんだ。
「はい!私、おじいさんの訓練受けます!どれだけ厳しい訓練でも耐え切って見せます!」
「中に入れ」
私とラルクはおじいさんの家の中に入った。見事に電気もガスも水もない。おじいさんはずっとこんな環境で暮らしていたのだろうか。
「伝説最上級武官か。懐かしいのう。ラルクはいざと言う時の判断力は優れているが、妖精村武官は大人でも通っている者は少ない。ナミネは、判断力と冷静さに欠けとる!どんなに不利でも持つべきものを持っていれば常に堂々としていられる。相手のことも恨まずにいられる。でも、誰かに陥れられたと相手を憎む者は弱いんだ。心がな。どけだけ武術に長けていても、肝心の心が弱くては結局恨みが芽生えるだけじゃ。ここで訓練する間は妖精村武官のことも恨みのことも全て忘れて訓練のみに集中しなされ!番人の報告は受けてもいいが番人に伝言を頼んだり手紙を託したり、折り鶴や馬、紙飛行機の使用は禁止じゃ!では、今から隣町のスーパーに紙に書いたものを買ってくるのじゃ!」
「は、はい!」
「分かりました!ナミネ、行くぞ!」
私とラルクは隣町のスーパーまで走りはじめた。
おじいさんの訓練は厳しいものだった。
焚き火をつけることも許されず、朝は4時起き。そこから川へ水を汲んで、家の掃除をして、食事を作る。明るいうちに川に洗濯に行き、家に戻るとスーパーに買い出しに行った。洗濯物が乾いたら取り込んで、夕ご飯を作ってお風呂を沸かす。
合間に、武術訓練が入る。1日に殆ど休みはない。唯一の休みは日曜日の午後からの半日。何だかまるで僧侶の訓練のようだ。これで判断力が身に付くのだろうか。私は毎日ヘトヘトになりながらもおじいさんの訓練を続けた。
そして、気が付けば半年が過ぎていた。
そんなある日、テナロスさんが現れた。
「申し上げにくいのですが、ナミネさんを傷付けたナルホさんは別の次元のナルホさんで、1月の前半に何らかの形で入れ替わってしまったようです。セルファさんが気付くなり、ナルホさんは元の次元に戻り、本当のナルホさんが戻ってきました。ナルホさんはミネスさんがミナクさんにイジワルされたことをなかったことにしました。ナルホさんはナミネさんにとても会いたがっています。ヨルクさんもナミネさんのことをとても心配しています」
私は突然の報告にとても戸惑った。私が憎んだナルホお兄様は別人だったなんて。これでは私が馬鹿みたいだ。
「そうですか。しかし、またナルホお兄様とミネスさんは交際するんですよね?」
「現世ではそうならないと思います。もうナルホさんには既にミネスさん以外の想い人もいます。本人は自覚していませんが」
お、想い人?また変な人だったら私が被害被るだけじゃない。
「あの、想い人って……」
「戻って来たナルホさんは庭園が壊されていたことに胸を痛めました。そんな時、お武家連盟会議で、カナエさんが、ナミネさんを傷付けたのは次元の違うナルホさんだから今のナルホさんには庭園を続ける資格はあると発言し、過半数の同意を得、カナエさんはナルホさんの庭園をナルホさんと一緒に復旧しはじめています。2人は少しずつ惹かれ合っているでしょう。また、争いはないと判断したミドリさんは神様ブロックを解きました」
カナエさんか。ミネスさんはどうなるのだろう。でも、もう私の憎んだナルホお兄様じゃないのなら、また仲睦まじい兄妹に戻れるだろうか。
「そうですか。すぐに信じることは難しいですが、戻った時に確認します」
おじいさんの家で暮らしているうちに、おじいさんは家族のような存在になっていた。3人で笑いあっているうちに、ずっとここにいたいと思うようにもなっていた。
……
あとがき。
74話まで来ましたが、まだまだ秘密はたくさんあります。
走り書きでは、ミネスとナルホが交際する感じだったのに、何故か、改めて書くと別の展開になってしまった。
でも、カナエをずっと1人にしておくわけにはいかないから、これはこれで仕方ないのかも。
セナとミナクは何だか悲劇……。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
《ナミネ》
ナルホお兄様とズームさんに見捨てられた私はラルクを連れてナノハナ家から逃げ出した。何もしていないのに2人に裏切られるとは思わなくてかなり傷付いた。もうナノハナ家には戻りたくない。
「ナミネ、神様ブロック出来る番人呼び出せ!」
そんなことが出来る番人なんているのだろうか。けれど、聞いてみるしかない。私はヨナラタスさんにメールをした。
『あの、神様ブロック出来る番人ていますか?』
『妖精村3番目の番人のテナロスか番人ではないがミドリかだ』
ミドリお姉様が?どうしてミドリお姉様にそのような力があるのだろう。天界で何か入手したのだろうか。
私はとりあえず、ミドリお姉様にメールをした。
『ミドリお姉様、お助け下さい。添付映像のように、私、ナルホお兄様に自分の恋愛が成就するなら死んでもいいと言われたんです。オマケにズームさんからも見捨てられました。神様呼び出しカードを持っているヨルクさんはナルホお兄様が拉致しています。神様ブロックをしていただけませんか?』
『うん、分かった。ヨルクが神様呼び出しカードでダンゴロさん呼び出しても願い叶えなければいいんだね。ナミネ、私はナミネの味方だよ。だから、もっと楽しく生きて。ナルホや他者のことで傷つく必要なんてないから』
天界ではミドリお姉様にかなり自論を押し付けてしまった。そんな私の頼みなんて叶えてくれるのだろうか。
『すみません、ミドリお姉様。お願いします』
私は念の為、3番目の番人のテナロスさんを呼び出した。気が付けば、私とラルクが乗っていた折り鶴は森の湖南駅付近の古民家が並ぶ町に到着していた。
「あ、はじめまして。ナミネと申します。あの、ミドリお姉様に神様ブロックをお願いしたのですが、不安なんです」
「はじめまして。テナロスです。ミドリさんは神様ブロックを必ず行いますよ。少しの間ですが、ここで気分転換して行ってください。用事のある時はいつでも呼んでくださいませ」
「あ、はい。今後ともよろしくお願いします」
暗くなった夜の町に灯りがつくとテナロスさんはいなくなっていた。屋根がワラの古民家も色が付いていて、今も人が住んでいるようだった。というか、通りすがる人が出て来たから人が住んでいるのだ。
私とラルクは空いている古民家に入った。
「わあ、2階もあるし、電気も水も使えるよ!」
私は早速、暖炉に火をつけた。けれど、ここは圏外だし、私たちは一時的にタイムスリップしている。でも、今の私にとって現代の人と関わらなくていいのは気が楽かもしれない。
「ナミネ、最後にナルホさんの携帯にアクセスして、ナルホさんのクラスメイトのココリさんに『ずっと君だけを見てた。君はいつも真面目で一生懸命で、そんな君の姿に惹かれたんだ。僕と交際してくれないかな?』とメールしたんだ。ココリさんは喜んで『とても嬉しい!私ナルホと交際する』と返信してきた。けど『嘘だよ、試してみただけ。君のような不細工とは付き合えないな。いい男見つけてね』て返信しといた。履歴は全て削除済みだ」
ココリさんて、ヨルクさんのこと狙ってた人だよね。あまり男ウケしなさそうな感じの人だったような。ナルホお兄様に弄ばれて堪えるだろうなあ。
「わー、傑作だね!これでココリさんに何かあったらナルホお兄様の全責任だね!」
もう誰がどんな不幸に巻き込まれても私は知らない。恋愛が大切だから死んでもいいよとか、私が苦しんでも妹が大切だから私に苦しめとか、そんな自分のことしか考えられない人は一度痛い目見ないと分からないと思う。
みんな守りたい人のみを大切にして私を辱めるのなら、私も同じことで返す。容赦はしない。
私はパソコンで
『君たちのような不細工は僕は1人も相手に出来ない。
好きになるなら僕以外の人にしてくれるかな?
パパ活のスケジュールばかりいれて気持ち悪いし、僕の半径50m以内に入れば、その人の親御さん職業失うよ?
分かってると思うけど、僕がイケメンで君たちはブス。誰にも相手にされないブス。
赤点ばかりとってないで少しは勉強したほうがいいと思うし、将来大丈夫なのかな。とにかく汚物は僕の半径50m以内に入るな!』
と打って印刷して、それをテナロスさんに頼んでロォラさん以外のクラスメイトの一軍、二軍女子の机に置いてもらった。これで、ズームさんのイジメはまた再開するだろう。
私はただ、そっとしておいて欲しかっただけ。でも、それをしてくれず、私を辱めた。だったら、もっと苦しめばいいと思う。私はこれ以上は辱められたくない。だから、もう痛みは擦り付けるしかない。みんなが自己防衛で私を辱めるのなら私も自己防衛をする。
「ナミネ、バックにミドリさんがいることは誰にも話すな。それから、ここではナミネは休んでていいけど、僕はここで伝説武官の試験を受ける。強くなって、もう誰にもナミネを傷付けさせない」
そっか、ラルクなりに色々考えてるんだな。こういう時は、ヨルクさんよりラルクのほうが頼りになる。
私は知らず知らずにヨルクさんへの恋しさをどこかで無理して抱かないようにしていた。
「ラルク、応援してる!ラルクならきっと受かるよ!私、もうラルクしかいないよ。みんな私をイジメるから、私の居場所ないの」
私はラルクにもたれかかった。
「ナミネ、これからは僕がナミネを守る。だからナミネは何も心配せず暮らして欲しい」
「ありがとう、ラルク。ずっと愛してるよ」
「僕もナミネを愛してる」
私は遠い昔から妖精村武官に受かったことが一度もない。現代は妖精村武官も初級から最上級まであるけれど、手が付けられない。強さを求められる伝説武官と違って、妖精村武官は判断力が問われる。私に欠けているのは判断力なのだ。
私から他者に危害は一切加えない。けれど、天使村時代にしてもカンザシさんたちによって、私とヨルクさんの結婚生活は無惨な形で壊された。いくら自分が危害を加えなくても周りはどうしてか私に危害を加える。そんな辱めを受けるほどに、いつしか私の心は限界に達していたと思う。現世では何化されるたび苛立ちが止まらなくなる。私からは何もしてないのにどうしてここまで辱めるのって。気が付いたらコントロールが効かなくなっている。
私にも判断力があれば何か変えられていたのだろうか。判断力ってどうやって身に付けるのだろう。それでも、このまま辱めを受けたままでは帰れない。
その時、テナロスさんが現れた。
「報告です。いまさっき、ココリさんが学校の屋上から飛び降りました。幸い、数箇所の骨折で済み、今は月城総合病院で点滴を受けています。ナルホさんとセルファさん、ヨルクさんは慌ててココリさんに会いに行き、ナルホさんは必死に謝りましたがココリさんはナルホさんを許さず、ナルホさんのご両親を呼び慰謝料請求をしました。負いつまりに負いつまったナルホさんは月城総合病院の屋上から飛び降りましたが、死ねない身体になっているため、身体から血は流れたものの、本体にはなんの支障もなく普通に生きています。ただ、発見した看護師さんによりナルホさんはココリさんと同じ病室にいます。ナルホさんは何度もナミネさんに会いたい、誤解を解きたいと言っていました。ズームさんは放課後のクラスで机の上にある紙を見たクラスメイトにより、ズームさんが過去にイジメられていた画像を大量に送られ、再びズームさんはイジメの対象となりました。ズームさんもナミネさんに謝りたいと言っています。ズームさんもナルホさんももうミネスさんの顔は二度と見たくないそうです。2人ともミネスさんとは縁を切りました。ナルホさんがココリさんを自殺未遂させたとして、お武家連盟会議が開かれました。セルファさんのナミネさんに対するイジメの証拠により、ナルホさんの庭園は処分され、ナルホさんは植物研究員にはなれないようナノハナ家のお母様が手続きしました。また、ナルホさんとズームさんにはミネスさんが危機に陥っても助けない。一生ナミネさんを償うという誓約書にサインをしました」
正直、ココリさんのことは傑作だと思う。でも、ナルホお兄様が私を侮辱していなければこうはなっていなかったし、同情は出来ない。
それに、私は謝りたいだとか会いたいなどの上辺だけの感情に私は騙されたりしない。恨まれるなら恨まれればいい。イジメられるならイジメられればいい。それが私の日常となんの関係があるのだろう。
「ナミネ、ナルホさんとズームさんは反省なんかしていない!ナミネの元気な姿を見れば、またミネスさんを可愛がりナミネのことを馬鹿にする。2人とは口を聞くな!」
「分かってるよ、ラルク。私もそこまで馬鹿じゃないよ」
2人のことは二度と許さない。それどころか、2人の現世での幸せを全て奪い取ってやる。
「遠い昔、ナルホさんにも愛した人はいました。けれど、つまらない男と裏切られ、ナルホさんは恋愛恐怖症になったんです。でも、何度か恋愛した中にミネスさんがいて、ミネスさんとは大恋愛の末、唯一恋愛結婚した人でした。今の2人にはその時の記憶はありませんが。今でも大恋愛した過去が2人を結びつけているのでしょう。しかしながら、大恋愛の上に結婚した2人は上手くいかず仮面夫婦として一生を過ごしたのです。結婚するなりナルホさんが植物に夢中になり、ミネスさんはそんなナルホさんに愛想が尽き、ナルホさんの知らないところで浮気を繰り返していました」
私は思わず笑ってしまった。私にはミネスさんのほうが大事だから死ねと言ったナルホお兄様が結婚後は愛も慈悲も何もない生活を送っていただなんて。無様にもほどがある。けれど、その事実を聞いた私は安心してしまっていた。人を辱めて幸せになれるはずなんかない。
「そうでしか。いくら好き合っても心が離れ離れになることもあるんですね」
「結婚とはそういうものなのかもしれませんね。では、また何かあればお呼びくださいませ」
テナロスさんは番人部屋に戻って行った。
結婚とは何なのだろう。私とヨルクさんは結婚後も愛し合っていたけれど、誰にでも優しいナルホお兄様とミネスさんの結婚後が大したことないと知って、何だか呆気なくなってしまった。
「ナミネ、こっちの手駒は誰にも見せるな!寧ろ、弱いフリを何も持ってないフリを見せ続けろ!」
「うん、分かってるよ、ラルク。こちらの札見せたら相手の思う壷だもんね」
そう、こちらの手駒など決して見せたりはしない。私の背後にミドリお姉様がいることも。テナロスさんがいることも。
私はすかさずヨナラタスさんを呼び出した。
「あの、4人に伝言伝えてもらえませんか?ズームさんにはこう伝えてください。『まさかかつてあれほどに愛し合い、現世でも支え合うと約束したズームさんに裏切られるとは思ってもいませんでした。人を辱めた気持ちはどうですか?今幸せですか?』。ナルホお兄様にはこう伝えてください。『私はナルホお兄様を決して許しません。ナルホお兄様のことが憎くて憎くてたまりません。けれど、好きなら仕方ありません。ミネスさんとお幸せに』。ココリさんにはこう伝えてください。『ナルホお兄様はココリさんを弄んだ後、大金持ちのミネスさんと交際しました』。ヨルクさんにはこうお伝えください。
『ヨルクさん、ナルホお兄様とズームさんにイジメられて辛いよ!このままじゃ辱め受けたままでは帰れないよ!私死ぬかもしれない!ヨルクさんが2人を懲らしめて!私を2人のイジメから助けて!!助けてヨルクさん、助けてヨルクさん!!!』」
「分かった。今伝えに行く」
ヨナラタスさんは去って行った。
ここは圏外だから、誰からの連絡も受け取れないし、ナノハナ家がどうなっているかも分からない。
「あのね、ラルク。私、妖精村武官試験受けるよ」
「そっか。でも、あまり無理すんな」
恨みたくないのに恨んでしまう。すぐに許したいのに許せない。これも、歴史がそうさせたのだろうか。天使村時代、衰弱して楽しいはずのヨルクさんとの結婚期間がほぼ台無しになってしまったこと。こんなのあんまりだと思う。どうして私ばかりが苦しまなければならないのか分からない。
でも、ズームさんのことはやりすぎた気がする。
私はテナロスさんを呼び出した。
「あの、ズームさんのイジメを取り消してもらえないでしょうか?」
「分かりました。こちらもお話があります。あの後、セルファさんがヨナラタスさんの録音をナノハさんに聞かせたところ、ナノハさんは、みんなの前でミナクさんにミネスさんをイジワルさせました。ナルホさんは泣きながらミネスさんに好きだと告白し、一生償うと言いましたが、初を好きでもないミナクさんに奪われたミネスさんはナルホさんに一生恨むと言い、ナルホさんは部屋でキクスケさんを呼び出しナミネさんを襲わせるよう依頼しましたが、キクスケさんは規則に反すると断りました。そのことをセルファさんはナノハさんに報告し、ミネスさんはまたミナクさんからイジワルをされました。その時にミナクさんはハッキリセナ王女に別れを告げ、セナ王女はミネスさんを目の敵にしたのです。また、ミネスさん、ナルホさん、カンザシさんは何世紀にも渡り、本当に愛する人と愛し合えないことから愛情欠落ヒステリー症候群に陥ってます。ズームさんはナミネさんを何世紀にも渡って苦しめたことを反省し、ミネスさんのことは長い年月の報いだと諦め、すぐにナミネさんとの和解を求めています」
愛情欠落ヒステリー症候群?私だって、ヨルクさんと引き離された期間は相当なものだったのに、甘えないで欲しい。ミネスさんがイジワルされたとか、そんなの私には関係ない。勝手にしてって思う。
ズームさんのことは何だか私が突っ走りすぎた気がする。一応謝っておこう。
ミネスさんが来てから現世が変わりつつある気がする。
「そうですか」
私は言葉が見つからなかった。もう現世では仲の良い兄妹ではいられないんだ。テナロスさんが去った後、私はズームさんとヨルクさんに手紙を書いた。
『ズームさんへ
私たちの間には色々誤解があったのかもしれません。戻り次第話し合いたいですが、ナルホお兄様がいつ私を襲わせるかと思うと戻るに戻れません
ナミネ』
『ヨルクさんへ
彼氏なのにどうして何もしてくれないのですか!私は何もしてないのにナルホお兄様から襲わせる依頼をされて怖くてたまりません!1週間以内に、あの優しかった頃のナルホお兄様に戻してくれなければヨルクさんとは破断します!ナノハナ家にも戻りません!見て見ぬふりするヨルクさんなんか大嫌いです!もし、1週間以内にナルホお兄様を説得出来なければ、破断だけでなくヨルクさんを50代女性にイジワルさせます!
ナミネ』
私はこの二通をヨナラタスさんに頼んで2人に渡してもらうようお願いをした。
翌日、ラルクの作った朝食を食べた。
「何だか、新婚夫婦みたいだね、ラルク」
「それはちょっと違うだろ。ナミネ、今日は無理すんな」
「分かってるよ、ラルク」
朝食を食べ終わると私とラルクはテナロスさんの番人部屋に行った。
テナロスさんの番人部屋にある扉を開けると私は、妖精村初級武官体験の申し込みをして、早速体験をした。が、全く適わなかった。悔しくて私は何度も体験をした。気が付けば150回も体験をしたがダメだった。
私は試験会場を出てテナロスさんによって古民家に戻してもらった。
「ナミネ、伝説最上級武官受かった!」
おめでとう、ラルク。私は声に出せないままポロポロ涙を流した。
「ナミネ、どうしたんだ?」
「ラルク、私ダメなの!妖精村初級武官の体験150回も受けたけど全く歯が立たなかった。私には判断力ないのかな。これだと帰ってもナルホお兄様に打ちのめされるだけだよ。悔しいよ、ラルク。私悔しい」
ラルクは私を抱き締めた。
「ナミネ、焦ることはない。僕らにはまだ時間がある。来年も再来年も試験受ければいい。ナミネ、この町の上のほうの古民家に住む武芸にかなり長けた達人と呼ばれるおじいさんがいるんだ。弟子入りしないか?」
そうか。一人の力だから及ばないんだ。誰かに習うことが出来れば何かが変わるかもしれない。
「する!弟子入りするよ!」
私とラルクは早速、達人のおじいさんの元へ向かった。
達人のおじいさんの家は近くにあった。表札にはサラハとある。ここの人サラハっていうんだ。
「ごめんくださいー!」
中からおじいさんが出て来た。
「あの、僕たち、あなたに弟子入りしに来ました」
「もう随分と弟子を取っとらんな。この町も時期に現世に戻る。そうなれば、水道も電気も通らなくなって、この寒い時期を耐えなければならぬ。それでも、訓練を受けたいか?ワシは手を抜かんぞ?」
そっか。テナロスさんが一時的にタイムスリップさせてくれていて、町が賑わってたんだ。
「はい!私、おじいさんの訓練受けます!どれだけ厳しい訓練でも耐え切って見せます!」
「中に入れ」
私とラルクはおじいさんの家の中に入った。見事に電気もガスも水もない。おじいさんはずっとこんな環境で暮らしていたのだろうか。
「伝説最上級武官か。懐かしいのう。ラルクはいざと言う時の判断力は優れているが、妖精村武官は大人でも通っている者は少ない。ナミネは、判断力と冷静さに欠けとる!どんなに不利でも持つべきものを持っていれば常に堂々としていられる。相手のことも恨まずにいられる。でも、誰かに陥れられたと相手を憎む者は弱いんだ。心がな。どけだけ武術に長けていても、肝心の心が弱くては結局恨みが芽生えるだけじゃ。ここで訓練する間は妖精村武官のことも恨みのことも全て忘れて訓練のみに集中しなされ!番人の報告は受けてもいいが番人に伝言を頼んだり手紙を託したり、折り鶴や馬、紙飛行機の使用は禁止じゃ!では、今から隣町のスーパーに紙に書いたものを買ってくるのじゃ!」
「は、はい!」
「分かりました!ナミネ、行くぞ!」
私とラルクは隣町のスーパーまで走りはじめた。
おじいさんの訓練は厳しいものだった。
焚き火をつけることも許されず、朝は4時起き。そこから川へ水を汲んで、家の掃除をして、食事を作る。明るいうちに川に洗濯に行き、家に戻るとスーパーに買い出しに行った。洗濯物が乾いたら取り込んで、夕ご飯を作ってお風呂を沸かす。
合間に、武術訓練が入る。1日に殆ど休みはない。唯一の休みは日曜日の午後からの半日。何だかまるで僧侶の訓練のようだ。これで判断力が身に付くのだろうか。私は毎日ヘトヘトになりながらもおじいさんの訓練を続けた。
そして、気が付けば半年が過ぎていた。
そんなある日、テナロスさんが現れた。
「申し上げにくいのですが、ナミネさんを傷付けたナルホさんは別の次元のナルホさんで、1月の前半に何らかの形で入れ替わってしまったようです。セルファさんが気付くなり、ナルホさんは元の次元に戻り、本当のナルホさんが戻ってきました。ナルホさんはミネスさんがミナクさんにイジワルされたことをなかったことにしました。ナルホさんはナミネさんにとても会いたがっています。ヨルクさんもナミネさんのことをとても心配しています」
私は突然の報告にとても戸惑った。私が憎んだナルホお兄様は別人だったなんて。これでは私が馬鹿みたいだ。
「そうですか。しかし、またナルホお兄様とミネスさんは交際するんですよね?」
「現世ではそうならないと思います。もうナルホさんには既にミネスさん以外の想い人もいます。本人は自覚していませんが」
お、想い人?また変な人だったら私が被害被るだけじゃない。
「あの、想い人って……」
「戻って来たナルホさんは庭園が壊されていたことに胸を痛めました。そんな時、お武家連盟会議で、カナエさんが、ナミネさんを傷付けたのは次元の違うナルホさんだから今のナルホさんには庭園を続ける資格はあると発言し、過半数の同意を得、カナエさんはナルホさんの庭園をナルホさんと一緒に復旧しはじめています。2人は少しずつ惹かれ合っているでしょう。また、争いはないと判断したミドリさんは神様ブロックを解きました」
カナエさんか。ミネスさんはどうなるのだろう。でも、もう私の憎んだナルホお兄様じゃないのなら、また仲睦まじい兄妹に戻れるだろうか。
「そうですか。すぐに信じることは難しいですが、戻った時に確認します」
おじいさんの家で暮らしているうちに、おじいさんは家族のような存在になっていた。3人で笑いあっているうちに、ずっとここにいたいと思うようにもなっていた。
……
あとがき。
74話まで来ましたが、まだまだ秘密はたくさんあります。
走り書きでは、ミネスとナルホが交際する感じだったのに、何故か、改めて書くと別の展開になってしまった。
でも、カナエをずっと1人にしておくわけにはいかないから、これはこれで仕方ないのかも。
セナとミナクは何だか悲劇……。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
純愛偏差値 未来編 一人称版 73話
《ラルク》
恋は盲目と言うが、実際そうなのかもしれない。ナミネが泣きそうになりながら、ナルホさんから死んでもいいと言われたって言った時は正直驚いた。恋愛には少しも興味なさそうなナルホさんが、心奪われたミネスさんを失いたくないあまりに、前を見失ってしまうだなんて、信じられなかった。
でも、僕もセレナール先輩に本気だった頃はナミネのことを傷付けてしまっていた。セレナール先輩の本性を知ってからは、すっかり目が覚めてしまったけれど。今となっては物凄く後悔している。僕は、セレナール先輩には確かに一目惚れしたけれど、本当に好きだったのは、ずっと僕に寄り添ってくれていたナミネだと気付かされた。でも、その頃にはもう遅かった。
せっかく僕を好きでいてくれたナミネはヨルクお兄様と交際してしまった。
そんな僕は今、二度目の桜木町のカフェにいる。
二度目。そう、僕らは一度ここに来て、キクスケさんに今朝の7時に時間を巻き戻してもらったのだ。
「最初は恩人であるセナ王女を心から愛してた。けれど、だんだん交際当初のようには見れなくなって、はじめてミネスを見た時、恋に落ちた。このような感情を抱いたのははじめてだ。ミネスのことが好きで好きでたまらない」
もういっそのことミネスさんと交際すればいいと思う。セナ王女のことは本気かと思っていたのに、結局、時間が経てば飽きてしまったのか。
「でも、それってセナさんはどうなるの?セナさんはミナクとの別れを認めないと思うわ」
いくら認めなくても人の心は縛れない。
「ていうか、甘えセナと別れて、お子ちゃまミネスと交際出来なかったらどうするんだよ」
「それが怖くてセナ王女とは別れるに別れられない。でも、女として見れなくて交際も辛い。早くミネスの温もりに包まれたい」
どれだけ馬鹿なんだ。1人になりたくないから好きでもない女と無理に交際しても続かないし、関係は今よりもっと悪くなる。
「あの、ミネスさんと交際出来る可能性が100%でなければ私はセナ王女とは別れないほうがいいと思うんです」
時間稼ぎか。けれど、どれだけ考えても抜け道などない気がするが。
「いや、それは流石に私のメンタルが持たない」
だったら、どうしろと言うんだよ。その時、落ち武者さんがある映像を見せた。
映像はリアルタイムだろうものだった。
ナルホさんとミネスさんが庭園を歩いている。
『ナルホ……私ナルホと交際したい!』
『分かった』
ナルホさんはすんなりミネスさんの告白を受け入れた。
『でも、ナミネはどうするの?』
『そうだね、今のナミネは君のこと嫌っているし、僕との交際は絶対認めないと思う。本当に死ぬかもしれない。でも、僕は、苦しいのにナミネは無理に生きなくてもいいと思うんだ。死にたいなら死んだらいいと思うんだ。それがナミネの幸せだと思ってる。今は君を支えることに全力を尽くすよ。ナミネのことは気にしなくていいよ』
恋は盲目と言うが、ナルホさんが恋愛でこんなにも残酷になれるなんて、少し痛々しく感じる。ナミネは真剣な表情をして見ている。
『ナルホ、ありがとう!嬉しい!私、ナルホと幸せになる!』
ミネスさんはナルホさんに抱き着いた。
落ち武者さんは一旦ここで映像を止めた。
「ミナク、お子ちゃまミネスはもう平和ボケなナルホの女だ!甘えセナと別れてもお子ちゃまミネスとは交際出来ないからね?」
「そんな……ナルホの野郎、いつの間に口説きやがったんだ。これじゃあ、セナ王女と別れられないじゃないか」
どうしてこんなにも見苦しいのだろう。どれだけ足掻いてもミネスさんとは一緒にはなれないのに。
「じゃ、今からナノハ依存ズルエヌに送るメール文書打つ」
落ち武者さんはズルエヌさんにメールを打ちはじめた。このメールがトドメになるわけか。今日は普通の話し合いのつもりが、人生をかけた話し合いになってしまった。
「じゃ、これ送る」
『ナノハ依存ズルエヌ。今すぐナノハと別れてミドリと付き合え!言わせてもらうけど、あんたの妹、これだけのことしたんだけど?どう償うつもり?まさかこのまま見て見ぬふりして僕の大切な人の人生奪う気じゃないよね?そんなことすると、あんたの大切な妹の映像と画像全て世の中にばら撒くよ?世間の目に晒されるか少年院に入れるか今すぐ答え出せ!』
いきなり知らない人からこれを送られてきたらかなりキツイだろうな。けれど、ミネスさんのしたことは犯罪だし、正直償って欲しいというのが本音。
少しすると返信が来たようだ。
「返信来た」
『妹が多大なご迷惑をおかけして申し訳ありません。ナノハには今別れるメールを送りました。妹は少年院に入れます。近々そちらに謝罪に行きます』
かなり真面目な人だな。まあ、ミネスさんがこのまま少年院で償ってくれるならナミネも安心して毎日を過ごせると思う。
落ち武者さんは続きを再生した。
映像には、地下室の拷問部屋にてナノハさんとレイカさん、ミネスさん、ナルホさん、その他武官がいた。
『ナルホ、今ズルエヌからメール来た。その女との交際は認めないよ』
ナノハさんはそれなりに怒っている様子だった。
『ナノハお姉様、僕は自分の人生は自分で決めます。ミネスとは別れません』
ナノハさんはナルホさんを引っぱたいた。
『レイカさん、お願い出来るかしら』
『ナノハ、本当にいいの?後戻り出来ないわよ?」
「構いません。ナルホがこんな女に騙されナミネを傷付けるなら現実を見せて目を覚まさせます』
『分かったわ』
レイカさんはミネスさんの拘束を解いて、ミネスさんの服を脱がした。
『やってちょうだい』
『ミネス!ナノハお姉様、やめてください!僕はただミネスと交際したいだけです!ナミネはこの世が苦しい子だから死にたいなら死ねばいいと思っただけです!ミネスをここで傷付けたらナノハお姉様に復讐します』
『やれるもんならやってみなさい、ナルホ』
ミネスさんは、悲鳴と共に5人の武官にイヤガラセされた。
『第3破られたのに私生きてる。死にたいのに死ねない!ナルホ、君を一生恨む!』
『ミネス!僕は何もしてない!ミネスのことは一生かけて僕が支える!』
ミネスさんはミドリさんの時同様、無惨な状態なのに、何もなかったかのように動いている。
『ナルホ、よくも私をハメてくれたね!お兄ちゃんに言って、ナルホの今後の幸せ全部奪ってやる!』
『ミネス、僕は本当にミネスを幸せにしたくて交際した!』
ナルホさんは突然の事態についていけないのか、大粒の涙を流した。
あれ、ナルホさんの背中にヘクタナが貼られてある。
落ち武者さんは停止ボタンを押した。
「ラルク、ヘクタナだよ!」
「そうだな。誰かが貼ったのか、自然と貼り付いたのか」
ヘクタナ。貼られた者は、貼った者を主君とし、何がなんでも従い続ける。
「ミネスが、そっとしておいて欲しいと何度も訴えるナミネさんを傷付けてしまったことは本当に申し訳なく思っています。けれど、あんな愚かな子でも僕の妹なんです」
そうだよな。ズームさんからして見れば1番見たくないし、このままにはしないだろう。その時、ヨルクお兄様とダンゴロさんが来た。
「ヨルクさん!」
「ダンゴロさん、正月からナミネさんとミネスが仲違いした部分だけ省いてください」
ズームさんは泣きながら訴えた。
「別にいいけど。それじゃあ、2人が仲違いした場面は別のもので埋めておく。ただ、忠告するなら、今後2人が仲違いしたら、また元に逆戻りだよ。辛いだろうけど、ナミネはミネスに攻撃されても我慢するしかないね」
そんな、またナミネが犠牲になるなんて。どうしてこの世はこれほどまでに理不尽なのだろう。
「分かりました。ズームさんのためにも、私が我慢します!その変わり、ヨルクさんには誰もが手出し出来ないようヨルクさんの身の安全は確保してもらえないでしょうか?」
ナミネはいつも自分のことより、他人を心配する。
「分かった。じゃあ、ヨルクの身の安全の確保はしとく。今言うけど、ヘクタナはカンザシがミネスに貼ろうとして間違えてナルホに貼ったんだよ。それから初代天使村でヨルクを毒殺した中にはミネスもいるよ。だから、ナミネのイライラは簡単には治まらないだろうね」
まさか、ミネスさんがヨルクお兄様の毒殺に協力したのか?もう何がなんだか分からなくなってきた。
「エロじじい、どういうことだ!後、強気なナミネの精神状態の安定も確保しろ!ズームの背中のアザと効力はなくしたままにしろ!」
「カンザシとセレナールがヨルク毒殺計画を立てた時、お金のないカンザシはミネスに計画を打ち明け共犯者にした上で毒草買わせ、何かあれば全てミネスに罪を擦り付けるつもりだった。けれど、ミネスは他の村に逃げた。君の力量ならナミネの精神状態安定の確保は40%だね。ズームの背中のアザと効力が消えてるのはラルクがセレナールと別れないまでね。別れたら元に戻るからね」
ミネスさんは毒草を買っただけ。それでも計画は知っている。いざとなればカンザシさんの味方につくということか。それに40%は低すぎる。ないよりマシだが。何となくミネスさんは元に戻ったに対して、これからはナミネのみ我慢というのは不公平だ。
「じゃあ、頼みは聞いたから戻るね」
ダンゴロさんは女神の湖に戻って行った。
「なあ、ズーム!お子ちゃまミネスは元に戻って今後も強気なナミネイジメるのに対して強気なナミネはそれ我慢して調和保つのは不公平だろ!あんた、自分の妹さえよければ他はどうでもいいのかよ!今すぐセリル呼ぶぞ!」
落ち武者さんもここは出るとこ出るか。
「ミネスのことは本当に申し訳なく思っています。ただ、僕はナミネさんを犠牲にはしません。ミネスがナミネさんを攻撃したら必ず庇います」
「だったら、なんで今まで傍観してた!セリル呼ぶぞ!」
「映像のような事態になるとは思っていませんでした。反省しています。今後はナミネさんを全力で守ります」
僕と落ち武者さんとズームさんでナミネを守ればナミネは壊れずに済むかもしれない。
とりあえず、正月、紅葉神社でヨルクお兄様がイタズラ犯に間違えられたことは偶然通りかかったカナコさんが証拠がないなら連れて行かせないとヨルクお兄様を庇い、ミィミさんは泣きながら諦めて去って行った。
ライオンのオリの鍵のことは、そのまま僕たちがヨルクお兄様を助けた。
グルグル妖精さんのマンションでミネスさんがナミネを叩いたことは、ナミネが泣きながら僕の手を握り、僕と朝までカラオケにいた。
ミネスさんが今日ナミネを襲わせる計画は、そのまま朝早く出て回避して来た。
今のナルホさんとミネスさんの関係は友達と言ったところだろうか。ミネスさんはカンザシさんにベタ惚れで、ズームさんの背中のアザが消えたことも知らずニンジャ妖精さんのマンションの家賃払っている。
過去は微妙に変えられている。問題はこの先だ。
今になって僕はセレナール先輩との恋愛を重視したあまり、伝説武官に辿り着けなかったことを後悔した。
僕が強くなってナミネを守らなければ。
僕は念の為、変えられる前の現実の映像をナヤセスさんとナルホさんにメールした。
『セルファからも同じ内容のメールが来たけど、僕はナミネにあんなこと言ったりはしないよ。確かな確証を掴めるまで待ってもらえるかな?』
『分かりました』
けれど、ナルホさんとミネスさんは誰が見ても惹かれ合っていた。2人が交際するもの時間の問題だろう。
「じゃ、話し合いの続きする」
その時、ヨルクお兄様が泣き崩れた。
「ナミネ……どうして……自分のお願いしないで、私の安全の確保なんて言ったの……もうナミネに犠牲になって欲しくない」
「ヨルクさん、私はヨルクさんに無事でいて欲しいんです」
こういうやり取りは気に食わない。僕がナミネの彼氏だったらナミネは自分のことだけ考えていられたのに。
「顔だけヨルク、今日はミナクと甘えセナのことについて話に来た。だから、泣いてないで、あんたもメニュー注文して話し合いに加われ!」
「ラルク、お腹すいたよ」
そういえば、ここに来てから何も注文していなかった。
「注文しろよ。ほら、ここにトマト妖精のパンケーキあるぞ」
「じゃあ、それにする」
ナミネが注文すると共に、みんなも同じものを注文した。
「言っておくけど、綺麗に別れないと一目惚れカラルリみたいなことになるぞ!」
カラルリ先輩……。あれはもう悲劇としか言いようがない。
「助けて欲しい」
「ミナクさんはセナ王女を女として見れなくなったことが原因で別れたいのですか?それともミネスさんに心変わりしたからですか?」
「分からない。けれど、ミネスに出会ってから毎日毎日ミネスのことが頭から離れない。ミネスの美人さ、ミネスの胸元、ミネスの太もも、全てが美しくて触れたいけれど、触れられないもどかしさが辛い」
遅い一目惚れというわけか。セナ王女のことは恩人というポジションだろうか。散々女遊びしてきたのに、今更初恋で戸惑うだなんてミナクお兄様らしくない。
「でも、ミネスさんとは交際は無理だと思います。いくら時間戻したりしても、これまでの経験で過去は何も変わらないことが証明されています。いずれはミネスさんとナルホお兄様は好き合うでしょう。その上でセナ王女のことはどうしますか?妊娠させてないなら今が別れ時だと思うのですが」
ナミネの言う通り、時間は巻き戻って、過去の一部が書き換えられたが、また同じことは起きるはず。
「セナ王女とはどうやって別れたらいいのか分からない。それにやっぱりミネスと交際出来ないと私はダメになってしまう」
何がダメになってしまうだ。自分の恋愛も自分で処理出来ず次に進めるわけがない。
「じゃ、今夜はお子ちゃまミネスと混浴させてやるよ」
「本当か?」
「ああ、みんないるけどな。そこでお子ちゃまミネス口説け!じゃ、ナノハナ家に戻る」
落ち武者さんは多分、セナ王女の前でミナクお兄様がミネスさんにアプローチしているのを見せつけてカタをつけるつもりだ。
僕たちはユメさんと委員長と解散したらタクシーを拾ってナノハナ家に戻って行った。
ナノハナ家に戻るなりナミネはナルホさんの部屋に行った。
「ナルホお兄様、私はもうナルホお兄様のことを兄とも何とも思っていません。私の兄はナヤセス殿だけです。一言それを言いに来ました」
ナミネは時間を巻き戻す前にナルホさんに死んでもいいと言われたことを確実に根に持っている。
「ナミネ、僕はその時のことを覚えていないし、ミネスに恋愛感情もない。ナミネのことは小さい頃から可愛がってきたし、僕が大切なのはナミネだよ。万が一ミネスと交際することになってナミネが反対したら別れるし、僕は大好きなナミネに嫌われるのは辛いな」
ナルホさんの本音ってどうなっているのだろう。一見これも本心に聞こえるけど、落ち武者さんがフェアリーングでナルホさんの本心を引き出したらどんな答えになるのだろう。
「あんた、もう既に強気なナミネの信用失ってんだよ!」
落ち武者さんはナルホさんにフェアリーングをかけた。
「平和ボケなナルホ、あんたお子ちゃまミネスのことどう思ってんだ?お子ちゃまミネスと強気なナミネ、どっちが大事なんだよ?強気なナミネがあんたとお子ちゃまミネスの交際反対して死ぬって言ったらどうするんだよ?」
「ミネスのことは放っておけない。どれだけミネスが悪いことしても僕はミネスを放っておけないし必ずミネスを助ける。ナミネよりミネスが大事。ミネスと交際することになってナミネが反対して死ぬと言ったら、ナミネは死んでもいいと思うんだ。無理に生きてなくていいと思う。ナミネが死ぬことで楽になれるなら僕も嬉しいよ。死ぬかどうかはナミネの判断だし、僕はミネスとの幸せを選ぶ」
落ち武者さんはフェアリーングを解いた。人は誰しも裏表があると言うが、ここまでの違いが出てくるのものなのだろうか。これではまるで詐欺レベルではないか。
「これがあんたの核心だ。本心ではなく核心なんだよ!せいぜい、ナノハにバレないようにしろよ!バレたらお子ちゃまミネスは死んで、後悔するのあんただから」
「そっか。セルファはこうやって人が眠っている感情らしきものを引き出して人と人とを仲違いさせてるんだね。今となってはナミネとの関係を拗れさせたミネスを憎くさえ感じるよ。大切なのはナミネなのに、ナミネの信用失って、一歩間違えればナノハお姉様に人生奪われて。正直やり切れないよ」
いったい、本心と核心てなんなんだ。核心が変えられない感情なら、ナルホさんはミネスさん意外とは恋愛をしないと言うことになる。天使村の前だってある。そんな昔からナルホさんはミネスさんのみを愛してきたのか?とてもじゃないけど信じられない。
「ナルホお兄様、私は一生ナルホお兄様を恨みます。今のお言葉ナノハお姉様に録音を聞かせます!ミネスさんがそれだけ大事ならミネスさんと心中してくれませんか?」
ナミネの目の色が紫色になっている。
「ナミネ、ナノハお姉様に話すのはやめてくれるかな?今回の件、確証はどこにもないよね?もし、あのような結末になれば、ズームさんにどうお詫びするのかな?僕は何も覚えていないし、ミネスに恋愛感情はないし、大切なのはナミネ。これがどうしても信じられないならナノハお姉様に言うといいよ。あんな形でミネスが死んだらナミネはズームさんの信用を失い、後悔して苦しむのはナミネだよ。その覚悟があるなら好きにするといいよ」
「ナルホお兄様、後悔するのはあなたです。行くよ、ラルク」
ナミネは僕の手を引っ張って窓を開けると折り鶴に乗ってナノハナ家を出た。その後のことはどうなったか、分からない。けれど、念の為、今回のことを僕はズームさんにメールをした。
『セルファさんから同じ報告が来たところです。ナミネさんのことを守ると言って守れなかったからミネスがナルホさんと交際したらミネスはレイカさんの拷問で無惨な形で死ぬだろうと言われました。ただ、僕はナルホさんがナミネさんを見捨てるとは思えないんです。でも、ナミネさんは誰が何を言わなくてもナルホさんがミネスを好きな限り、いずれミネスはまた同じ形で死んでしまうと言っていました。僕自身行き詰まっています。決して自分とミネスさえよければいいわけではありません。それでも結局はミネスが助かればナミネさんが傷付いてしまう。でも、僕はミネスのあんな無惨な姿は見たくありません。ラルクさん、僕はアザを背負います。だからセレナールさんとは別れてください』
ナルホさんもズームさんもミネスさんをナミネを見捨ててミネスさんを守りたいのならナミネが孤立してしまう。結局は恋人又は家族がよければ他人のことはどうでもいい。それが人なのだ。
ナミネはナルホさんのパンツに名前、住所、証明写真を貼って町にばらまいている。
「ナミネ、キクスケさんに、ミネスさん、ナルホさん、ズームさんの3人を死ねない身体にしてもらえ!」
「うん、分かった」
ナミネはキクスケさんにメールし、3人を死ねない身体にしてもらった。もう手段は選べない。この3人が死にたいくらい負いつまった時に生きてもらうしかない。ナミネのためにも。
『そうですか。ナルホさんはナミネを死なせてミネスさんと一緒になると言っている。ズームさんはナミネが傷付いてでもミネスさん優先すると言っている。ナミネのことなんだと思っているんですか!セレナール先輩とは別れません!お2人がナミネを大切にしないと、僕はナミネと2人で転生します。その後のことはあなた方で楽しく生きてください』
『待ってください!ナミネさんに会わせてもらえませんか?転生だけはどうかやめてください』
ぼくはこのやり取りをナルホさんと落ち武者さんに転送した。
『ラルク、そのことなんだけど、平和ボケなナルホはいきなり強気なナミネに嫌われてかなり滅入っている。セリル呼んでフェアリーングかけてもらったら、ナミネが死ぬくらいならミネスとは交際しないって言うんだ。もうわけが分からない』
いったいどういうことなんだ。まるで誰かが裏で糸を引いているような展開じゃないか。お武家連盟会議にかけてナミネを傷付けた人たちに罪を負わせたい。けれど、今それをするとナミネが恨まれ余計にナミネが傷付いてしまう。
『ズームさん、ひとつお聞きします。もし、あなたがナミネの彼氏ならどうしていましたか?』
『もし、僕がナミネさんと交際していたならミネスよりナミネさんを選んだと思います。けれど、今はそうではないので、やはりミネスの命を無駄にすることは出来ません。すみません。ただ、ナミネさんに会わせてもらえませんか?』
ナルホさん、ズームさん共に彼女を選ぶということか。けれど、ナミネはナミネでちゃんと生きている。ナミネを見捨てることは僕が許さない。
『ラルク、キクスケから聞いたんだが、いくらお子ちゃまミネスを死なせたくなくても、強気なナミネが傷付けばどの道お子ちゃまミネスは死ぬらしい。ズームも平和ボケなナルホも十分反省してる。戻ってこい』
誰が裏で糸を引いているのか分からないが、もうミネスさんは既に死ねない身体になっている。だとしたら、ナミネを会わせる必要はない。けれど、神様呼び出しカードを持っているヨルクお兄様がナノハナ家にいる。不利な種は詰んでおかないと。
「ナミネ、神様ブロック出来る番人呼び出せ!」
……
あとがき。
久々のラルク視点です。
ここまで来てラルクが本当に愛している人が分かりましたね。
2人のすれ違いが切ないです。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
《ラルク》
恋は盲目と言うが、実際そうなのかもしれない。ナミネが泣きそうになりながら、ナルホさんから死んでもいいと言われたって言った時は正直驚いた。恋愛には少しも興味なさそうなナルホさんが、心奪われたミネスさんを失いたくないあまりに、前を見失ってしまうだなんて、信じられなかった。
でも、僕もセレナール先輩に本気だった頃はナミネのことを傷付けてしまっていた。セレナール先輩の本性を知ってからは、すっかり目が覚めてしまったけれど。今となっては物凄く後悔している。僕は、セレナール先輩には確かに一目惚れしたけれど、本当に好きだったのは、ずっと僕に寄り添ってくれていたナミネだと気付かされた。でも、その頃にはもう遅かった。
せっかく僕を好きでいてくれたナミネはヨルクお兄様と交際してしまった。
そんな僕は今、二度目の桜木町のカフェにいる。
二度目。そう、僕らは一度ここに来て、キクスケさんに今朝の7時に時間を巻き戻してもらったのだ。
「最初は恩人であるセナ王女を心から愛してた。けれど、だんだん交際当初のようには見れなくなって、はじめてミネスを見た時、恋に落ちた。このような感情を抱いたのははじめてだ。ミネスのことが好きで好きでたまらない」
もういっそのことミネスさんと交際すればいいと思う。セナ王女のことは本気かと思っていたのに、結局、時間が経てば飽きてしまったのか。
「でも、それってセナさんはどうなるの?セナさんはミナクとの別れを認めないと思うわ」
いくら認めなくても人の心は縛れない。
「ていうか、甘えセナと別れて、お子ちゃまミネスと交際出来なかったらどうするんだよ」
「それが怖くてセナ王女とは別れるに別れられない。でも、女として見れなくて交際も辛い。早くミネスの温もりに包まれたい」
どれだけ馬鹿なんだ。1人になりたくないから好きでもない女と無理に交際しても続かないし、関係は今よりもっと悪くなる。
「あの、ミネスさんと交際出来る可能性が100%でなければ私はセナ王女とは別れないほうがいいと思うんです」
時間稼ぎか。けれど、どれだけ考えても抜け道などない気がするが。
「いや、それは流石に私のメンタルが持たない」
だったら、どうしろと言うんだよ。その時、落ち武者さんがある映像を見せた。
映像はリアルタイムだろうものだった。
ナルホさんとミネスさんが庭園を歩いている。
『ナルホ……私ナルホと交際したい!』
『分かった』
ナルホさんはすんなりミネスさんの告白を受け入れた。
『でも、ナミネはどうするの?』
『そうだね、今のナミネは君のこと嫌っているし、僕との交際は絶対認めないと思う。本当に死ぬかもしれない。でも、僕は、苦しいのにナミネは無理に生きなくてもいいと思うんだ。死にたいなら死んだらいいと思うんだ。それがナミネの幸せだと思ってる。今は君を支えることに全力を尽くすよ。ナミネのことは気にしなくていいよ』
恋は盲目と言うが、ナルホさんが恋愛でこんなにも残酷になれるなんて、少し痛々しく感じる。ナミネは真剣な表情をして見ている。
『ナルホ、ありがとう!嬉しい!私、ナルホと幸せになる!』
ミネスさんはナルホさんに抱き着いた。
落ち武者さんは一旦ここで映像を止めた。
「ミナク、お子ちゃまミネスはもう平和ボケなナルホの女だ!甘えセナと別れてもお子ちゃまミネスとは交際出来ないからね?」
「そんな……ナルホの野郎、いつの間に口説きやがったんだ。これじゃあ、セナ王女と別れられないじゃないか」
どうしてこんなにも見苦しいのだろう。どれだけ足掻いてもミネスさんとは一緒にはなれないのに。
「じゃ、今からナノハ依存ズルエヌに送るメール文書打つ」
落ち武者さんはズルエヌさんにメールを打ちはじめた。このメールがトドメになるわけか。今日は普通の話し合いのつもりが、人生をかけた話し合いになってしまった。
「じゃ、これ送る」
『ナノハ依存ズルエヌ。今すぐナノハと別れてミドリと付き合え!言わせてもらうけど、あんたの妹、これだけのことしたんだけど?どう償うつもり?まさかこのまま見て見ぬふりして僕の大切な人の人生奪う気じゃないよね?そんなことすると、あんたの大切な妹の映像と画像全て世の中にばら撒くよ?世間の目に晒されるか少年院に入れるか今すぐ答え出せ!』
いきなり知らない人からこれを送られてきたらかなりキツイだろうな。けれど、ミネスさんのしたことは犯罪だし、正直償って欲しいというのが本音。
少しすると返信が来たようだ。
「返信来た」
『妹が多大なご迷惑をおかけして申し訳ありません。ナノハには今別れるメールを送りました。妹は少年院に入れます。近々そちらに謝罪に行きます』
かなり真面目な人だな。まあ、ミネスさんがこのまま少年院で償ってくれるならナミネも安心して毎日を過ごせると思う。
落ち武者さんは続きを再生した。
映像には、地下室の拷問部屋にてナノハさんとレイカさん、ミネスさん、ナルホさん、その他武官がいた。
『ナルホ、今ズルエヌからメール来た。その女との交際は認めないよ』
ナノハさんはそれなりに怒っている様子だった。
『ナノハお姉様、僕は自分の人生は自分で決めます。ミネスとは別れません』
ナノハさんはナルホさんを引っぱたいた。
『レイカさん、お願い出来るかしら』
『ナノハ、本当にいいの?後戻り出来ないわよ?」
「構いません。ナルホがこんな女に騙されナミネを傷付けるなら現実を見せて目を覚まさせます』
『分かったわ』
レイカさんはミネスさんの拘束を解いて、ミネスさんの服を脱がした。
『やってちょうだい』
『ミネス!ナノハお姉様、やめてください!僕はただミネスと交際したいだけです!ナミネはこの世が苦しい子だから死にたいなら死ねばいいと思っただけです!ミネスをここで傷付けたらナノハお姉様に復讐します』
『やれるもんならやってみなさい、ナルホ』
ミネスさんは、悲鳴と共に5人の武官にイヤガラセされた。
『第3破られたのに私生きてる。死にたいのに死ねない!ナルホ、君を一生恨む!』
『ミネス!僕は何もしてない!ミネスのことは一生かけて僕が支える!』
ミネスさんはミドリさんの時同様、無惨な状態なのに、何もなかったかのように動いている。
『ナルホ、よくも私をハメてくれたね!お兄ちゃんに言って、ナルホの今後の幸せ全部奪ってやる!』
『ミネス、僕は本当にミネスを幸せにしたくて交際した!』
ナルホさんは突然の事態についていけないのか、大粒の涙を流した。
あれ、ナルホさんの背中にヘクタナが貼られてある。
落ち武者さんは停止ボタンを押した。
「ラルク、ヘクタナだよ!」
「そうだな。誰かが貼ったのか、自然と貼り付いたのか」
ヘクタナ。貼られた者は、貼った者を主君とし、何がなんでも従い続ける。
「ミネスが、そっとしておいて欲しいと何度も訴えるナミネさんを傷付けてしまったことは本当に申し訳なく思っています。けれど、あんな愚かな子でも僕の妹なんです」
そうだよな。ズームさんからして見れば1番見たくないし、このままにはしないだろう。その時、ヨルクお兄様とダンゴロさんが来た。
「ヨルクさん!」
「ダンゴロさん、正月からナミネさんとミネスが仲違いした部分だけ省いてください」
ズームさんは泣きながら訴えた。
「別にいいけど。それじゃあ、2人が仲違いした場面は別のもので埋めておく。ただ、忠告するなら、今後2人が仲違いしたら、また元に逆戻りだよ。辛いだろうけど、ナミネはミネスに攻撃されても我慢するしかないね」
そんな、またナミネが犠牲になるなんて。どうしてこの世はこれほどまでに理不尽なのだろう。
「分かりました。ズームさんのためにも、私が我慢します!その変わり、ヨルクさんには誰もが手出し出来ないようヨルクさんの身の安全は確保してもらえないでしょうか?」
ナミネはいつも自分のことより、他人を心配する。
「分かった。じゃあ、ヨルクの身の安全の確保はしとく。今言うけど、ヘクタナはカンザシがミネスに貼ろうとして間違えてナルホに貼ったんだよ。それから初代天使村でヨルクを毒殺した中にはミネスもいるよ。だから、ナミネのイライラは簡単には治まらないだろうね」
まさか、ミネスさんがヨルクお兄様の毒殺に協力したのか?もう何がなんだか分からなくなってきた。
「エロじじい、どういうことだ!後、強気なナミネの精神状態の安定も確保しろ!ズームの背中のアザと効力はなくしたままにしろ!」
「カンザシとセレナールがヨルク毒殺計画を立てた時、お金のないカンザシはミネスに計画を打ち明け共犯者にした上で毒草買わせ、何かあれば全てミネスに罪を擦り付けるつもりだった。けれど、ミネスは他の村に逃げた。君の力量ならナミネの精神状態安定の確保は40%だね。ズームの背中のアザと効力が消えてるのはラルクがセレナールと別れないまでね。別れたら元に戻るからね」
ミネスさんは毒草を買っただけ。それでも計画は知っている。いざとなればカンザシさんの味方につくということか。それに40%は低すぎる。ないよりマシだが。何となくミネスさんは元に戻ったに対して、これからはナミネのみ我慢というのは不公平だ。
「じゃあ、頼みは聞いたから戻るね」
ダンゴロさんは女神の湖に戻って行った。
「なあ、ズーム!お子ちゃまミネスは元に戻って今後も強気なナミネイジメるのに対して強気なナミネはそれ我慢して調和保つのは不公平だろ!あんた、自分の妹さえよければ他はどうでもいいのかよ!今すぐセリル呼ぶぞ!」
落ち武者さんもここは出るとこ出るか。
「ミネスのことは本当に申し訳なく思っています。ただ、僕はナミネさんを犠牲にはしません。ミネスがナミネさんを攻撃したら必ず庇います」
「だったら、なんで今まで傍観してた!セリル呼ぶぞ!」
「映像のような事態になるとは思っていませんでした。反省しています。今後はナミネさんを全力で守ります」
僕と落ち武者さんとズームさんでナミネを守ればナミネは壊れずに済むかもしれない。
とりあえず、正月、紅葉神社でヨルクお兄様がイタズラ犯に間違えられたことは偶然通りかかったカナコさんが証拠がないなら連れて行かせないとヨルクお兄様を庇い、ミィミさんは泣きながら諦めて去って行った。
ライオンのオリの鍵のことは、そのまま僕たちがヨルクお兄様を助けた。
グルグル妖精さんのマンションでミネスさんがナミネを叩いたことは、ナミネが泣きながら僕の手を握り、僕と朝までカラオケにいた。
ミネスさんが今日ナミネを襲わせる計画は、そのまま朝早く出て回避して来た。
今のナルホさんとミネスさんの関係は友達と言ったところだろうか。ミネスさんはカンザシさんにベタ惚れで、ズームさんの背中のアザが消えたことも知らずニンジャ妖精さんのマンションの家賃払っている。
過去は微妙に変えられている。問題はこの先だ。
今になって僕はセレナール先輩との恋愛を重視したあまり、伝説武官に辿り着けなかったことを後悔した。
僕が強くなってナミネを守らなければ。
僕は念の為、変えられる前の現実の映像をナヤセスさんとナルホさんにメールした。
『セルファからも同じ内容のメールが来たけど、僕はナミネにあんなこと言ったりはしないよ。確かな確証を掴めるまで待ってもらえるかな?』
『分かりました』
けれど、ナルホさんとミネスさんは誰が見ても惹かれ合っていた。2人が交際するもの時間の問題だろう。
「じゃ、話し合いの続きする」
その時、ヨルクお兄様が泣き崩れた。
「ナミネ……どうして……自分のお願いしないで、私の安全の確保なんて言ったの……もうナミネに犠牲になって欲しくない」
「ヨルクさん、私はヨルクさんに無事でいて欲しいんです」
こういうやり取りは気に食わない。僕がナミネの彼氏だったらナミネは自分のことだけ考えていられたのに。
「顔だけヨルク、今日はミナクと甘えセナのことについて話に来た。だから、泣いてないで、あんたもメニュー注文して話し合いに加われ!」
「ラルク、お腹すいたよ」
そういえば、ここに来てから何も注文していなかった。
「注文しろよ。ほら、ここにトマト妖精のパンケーキあるぞ」
「じゃあ、それにする」
ナミネが注文すると共に、みんなも同じものを注文した。
「言っておくけど、綺麗に別れないと一目惚れカラルリみたいなことになるぞ!」
カラルリ先輩……。あれはもう悲劇としか言いようがない。
「助けて欲しい」
「ミナクさんはセナ王女を女として見れなくなったことが原因で別れたいのですか?それともミネスさんに心変わりしたからですか?」
「分からない。けれど、ミネスに出会ってから毎日毎日ミネスのことが頭から離れない。ミネスの美人さ、ミネスの胸元、ミネスの太もも、全てが美しくて触れたいけれど、触れられないもどかしさが辛い」
遅い一目惚れというわけか。セナ王女のことは恩人というポジションだろうか。散々女遊びしてきたのに、今更初恋で戸惑うだなんてミナクお兄様らしくない。
「でも、ミネスさんとは交際は無理だと思います。いくら時間戻したりしても、これまでの経験で過去は何も変わらないことが証明されています。いずれはミネスさんとナルホお兄様は好き合うでしょう。その上でセナ王女のことはどうしますか?妊娠させてないなら今が別れ時だと思うのですが」
ナミネの言う通り、時間は巻き戻って、過去の一部が書き換えられたが、また同じことは起きるはず。
「セナ王女とはどうやって別れたらいいのか分からない。それにやっぱりミネスと交際出来ないと私はダメになってしまう」
何がダメになってしまうだ。自分の恋愛も自分で処理出来ず次に進めるわけがない。
「じゃ、今夜はお子ちゃまミネスと混浴させてやるよ」
「本当か?」
「ああ、みんないるけどな。そこでお子ちゃまミネス口説け!じゃ、ナノハナ家に戻る」
落ち武者さんは多分、セナ王女の前でミナクお兄様がミネスさんにアプローチしているのを見せつけてカタをつけるつもりだ。
僕たちはユメさんと委員長と解散したらタクシーを拾ってナノハナ家に戻って行った。
ナノハナ家に戻るなりナミネはナルホさんの部屋に行った。
「ナルホお兄様、私はもうナルホお兄様のことを兄とも何とも思っていません。私の兄はナヤセス殿だけです。一言それを言いに来ました」
ナミネは時間を巻き戻す前にナルホさんに死んでもいいと言われたことを確実に根に持っている。
「ナミネ、僕はその時のことを覚えていないし、ミネスに恋愛感情もない。ナミネのことは小さい頃から可愛がってきたし、僕が大切なのはナミネだよ。万が一ミネスと交際することになってナミネが反対したら別れるし、僕は大好きなナミネに嫌われるのは辛いな」
ナルホさんの本音ってどうなっているのだろう。一見これも本心に聞こえるけど、落ち武者さんがフェアリーングでナルホさんの本心を引き出したらどんな答えになるのだろう。
「あんた、もう既に強気なナミネの信用失ってんだよ!」
落ち武者さんはナルホさんにフェアリーングをかけた。
「平和ボケなナルホ、あんたお子ちゃまミネスのことどう思ってんだ?お子ちゃまミネスと強気なナミネ、どっちが大事なんだよ?強気なナミネがあんたとお子ちゃまミネスの交際反対して死ぬって言ったらどうするんだよ?」
「ミネスのことは放っておけない。どれだけミネスが悪いことしても僕はミネスを放っておけないし必ずミネスを助ける。ナミネよりミネスが大事。ミネスと交際することになってナミネが反対して死ぬと言ったら、ナミネは死んでもいいと思うんだ。無理に生きてなくていいと思う。ナミネが死ぬことで楽になれるなら僕も嬉しいよ。死ぬかどうかはナミネの判断だし、僕はミネスとの幸せを選ぶ」
落ち武者さんはフェアリーングを解いた。人は誰しも裏表があると言うが、ここまでの違いが出てくるのものなのだろうか。これではまるで詐欺レベルではないか。
「これがあんたの核心だ。本心ではなく核心なんだよ!せいぜい、ナノハにバレないようにしろよ!バレたらお子ちゃまミネスは死んで、後悔するのあんただから」
「そっか。セルファはこうやって人が眠っている感情らしきものを引き出して人と人とを仲違いさせてるんだね。今となってはナミネとの関係を拗れさせたミネスを憎くさえ感じるよ。大切なのはナミネなのに、ナミネの信用失って、一歩間違えればナノハお姉様に人生奪われて。正直やり切れないよ」
いったい、本心と核心てなんなんだ。核心が変えられない感情なら、ナルホさんはミネスさん意外とは恋愛をしないと言うことになる。天使村の前だってある。そんな昔からナルホさんはミネスさんのみを愛してきたのか?とてもじゃないけど信じられない。
「ナルホお兄様、私は一生ナルホお兄様を恨みます。今のお言葉ナノハお姉様に録音を聞かせます!ミネスさんがそれだけ大事ならミネスさんと心中してくれませんか?」
ナミネの目の色が紫色になっている。
「ナミネ、ナノハお姉様に話すのはやめてくれるかな?今回の件、確証はどこにもないよね?もし、あのような結末になれば、ズームさんにどうお詫びするのかな?僕は何も覚えていないし、ミネスに恋愛感情はないし、大切なのはナミネ。これがどうしても信じられないならナノハお姉様に言うといいよ。あんな形でミネスが死んだらナミネはズームさんの信用を失い、後悔して苦しむのはナミネだよ。その覚悟があるなら好きにするといいよ」
「ナルホお兄様、後悔するのはあなたです。行くよ、ラルク」
ナミネは僕の手を引っ張って窓を開けると折り鶴に乗ってナノハナ家を出た。その後のことはどうなったか、分からない。けれど、念の為、今回のことを僕はズームさんにメールをした。
『セルファさんから同じ報告が来たところです。ナミネさんのことを守ると言って守れなかったからミネスがナルホさんと交際したらミネスはレイカさんの拷問で無惨な形で死ぬだろうと言われました。ただ、僕はナルホさんがナミネさんを見捨てるとは思えないんです。でも、ナミネさんは誰が何を言わなくてもナルホさんがミネスを好きな限り、いずれミネスはまた同じ形で死んでしまうと言っていました。僕自身行き詰まっています。決して自分とミネスさえよければいいわけではありません。それでも結局はミネスが助かればナミネさんが傷付いてしまう。でも、僕はミネスのあんな無惨な姿は見たくありません。ラルクさん、僕はアザを背負います。だからセレナールさんとは別れてください』
ナルホさんもズームさんもミネスさんをナミネを見捨ててミネスさんを守りたいのならナミネが孤立してしまう。結局は恋人又は家族がよければ他人のことはどうでもいい。それが人なのだ。
ナミネはナルホさんのパンツに名前、住所、証明写真を貼って町にばらまいている。
「ナミネ、キクスケさんに、ミネスさん、ナルホさん、ズームさんの3人を死ねない身体にしてもらえ!」
「うん、分かった」
ナミネはキクスケさんにメールし、3人を死ねない身体にしてもらった。もう手段は選べない。この3人が死にたいくらい負いつまった時に生きてもらうしかない。ナミネのためにも。
『そうですか。ナルホさんはナミネを死なせてミネスさんと一緒になると言っている。ズームさんはナミネが傷付いてでもミネスさん優先すると言っている。ナミネのことなんだと思っているんですか!セレナール先輩とは別れません!お2人がナミネを大切にしないと、僕はナミネと2人で転生します。その後のことはあなた方で楽しく生きてください』
『待ってください!ナミネさんに会わせてもらえませんか?転生だけはどうかやめてください』
ぼくはこのやり取りをナルホさんと落ち武者さんに転送した。
『ラルク、そのことなんだけど、平和ボケなナルホはいきなり強気なナミネに嫌われてかなり滅入っている。セリル呼んでフェアリーングかけてもらったら、ナミネが死ぬくらいならミネスとは交際しないって言うんだ。もうわけが分からない』
いったいどういうことなんだ。まるで誰かが裏で糸を引いているような展開じゃないか。お武家連盟会議にかけてナミネを傷付けた人たちに罪を負わせたい。けれど、今それをするとナミネが恨まれ余計にナミネが傷付いてしまう。
『ズームさん、ひとつお聞きします。もし、あなたがナミネの彼氏ならどうしていましたか?』
『もし、僕がナミネさんと交際していたならミネスよりナミネさんを選んだと思います。けれど、今はそうではないので、やはりミネスの命を無駄にすることは出来ません。すみません。ただ、ナミネさんに会わせてもらえませんか?』
ナルホさん、ズームさん共に彼女を選ぶということか。けれど、ナミネはナミネでちゃんと生きている。ナミネを見捨てることは僕が許さない。
『ラルク、キクスケから聞いたんだが、いくらお子ちゃまミネスを死なせたくなくても、強気なナミネが傷付けばどの道お子ちゃまミネスは死ぬらしい。ズームも平和ボケなナルホも十分反省してる。戻ってこい』
誰が裏で糸を引いているのか分からないが、もうミネスさんは既に死ねない身体になっている。だとしたら、ナミネを会わせる必要はない。けれど、神様呼び出しカードを持っているヨルクお兄様がナノハナ家にいる。不利な種は詰んでおかないと。
「ナミネ、神様ブロック出来る番人呼び出せ!」
……
あとがき。
久々のラルク視点です。
ここまで来てラルクが本当に愛している人が分かりましたね。
2人のすれ違いが切ないです。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
純愛偏差値 未来編 一人称版 72話
《ナミネ》
私から誰かに攻撃することはない。けれど、周りは違う。妬みや嫉妬は時に人を狂わせてしまうのだ。どれだけ自分から何もしなくても人というのは無理矢理誰かが作り上げた土俵にあげられ闘わされるものなのである。
私はただヨルクさんとのことはそっとしておいて欲しいだけ。ヨルクさんとの幸せを誰にも奪われたくないのだ。
でも、ミネスさんにいきなりとんでもない攻撃をされた時は、生きているだけで反撃しなければいけないことに気付かされた。
私はヨルクさんとの幸せを奪われないためにミネスさんに対抗するしかないと思った。
言ってしまえば、ミネスさんは、ワガママで都合が悪くなれば騒ぎ立て、性格ブスの親の七光り野郎である。私の一番嫌いなタイプだ。
そんなミネスさんのことも、ミネスさんの謝罪により落ち着いたかと思っていた。
そんな矢先だった。
突然5人の高校生くらいの男が第4居間に入ってきた。
「あの、どちら様でしょうか?」
「ナミネってどの女だ!」
「私です!」
その瞬間、男子高生は私を押し倒そうとした。私は男子高生を扇子で吹き飛ばし、花札で拘束した。そして、男子高生に羽子板を少し当てた。
「た、助けてくれ!ミネスって金持ちの女に頼まれたんだ!ナミネをめちゃくちゃにして欲しいって」
「違う!私は断った!でも、この人らがミスコングランプリ取った女だからやるって聞かなくて!お願い、許して!」
いつ依頼したのだろう。何故、そっとしておいてくれないのだろう。
「依頼受けたのはいつですか?」
「昨日だ!」
私の心は凍り付いた。ミネスさんはあれだけ私に許して欲しいとせがんだのに、その裏側で私を襲わせるという計画を立てていたのか。
「私はちゃんと取り消した!信じて!」
「ミネス、前にも言ったけど、ナミネのことは小さい頃からずっと可愛がってきて、大切な存在だって。そんなナミネを襲わせて君の心は晴れたかな?君はセナ王女に同じことされた時、あれほどにセナ王女を悪者にしたのに、ナミネは傷付いてもいいのかな?悪いけど、もう僕は君とは関わらないし、君が困っていても一切助けない。好きに生きるといいよ」
ナルホお兄様は立ち上がった。
「待って、ナルホ!本当に取り消した!ナルホを失いたくない!一度だけチャンスが欲しい!」
ここまで惨めな女を見たことがあるだろうか。せっかくお金持ちに生まれたのに、自分から大切なものを失っていくだなんて。私はただ、そっとして欲しいだけ。でも、その思いはミネスさんにとって悪意だと私は知った。
私は扇子を動かし、ミネスさんに謎の液体を持たせると、ミネスさんを私を襲わせた5人のところまで歩かせ、5人の顔に謎の液体をかけさせた。
「おい、救急車呼べ!」
ヨルクさんは救急車を呼んだ。私を襲わせた5人はすぐに月城総合病院に運ばれて行った。
その時、ズームさんはミネスさんを引っぱたいた。
「ミネス!なんで、ナミネさんを襲わせた!」
「だから、取り消したって!でも、相手が言うこと聞かなかったの!」
「ミネス、どうしてナミネを襲わせたのかな?」
「ナミネが羨ましかったから。私にないもの全部持ってたから。1つくらい不幸になってもナミネなら問題ないと思った。でも、考え直してすぐに取り消した!お願い、ナルホ、見捨てないで!」
1つくらい不幸になっても私なら問題ない?何それ。これだけ付きまとわれて、私はもうミネスさんに反撃する気持ちが萎えつつあった。出来るだけミネスさんと関わらないようにすることにした。
テレビを付けると、早速ニュースが流れた。
『速報です。先程、紅葉町にある月城総合病院に5人の男の子が救急搬送されました。5人のうち1人はすぐにオペが終わり、状態も元通りになったそうです。話を伺うと、ブランケット家の次女にナノハナ家の5女をイヤガラセするよう依頼され、実行しようとしたところ、返り討ちにあい、失敗したことをブランケット家の次女が怒り、5人の顔に謎の液体をかけたとのことです。また4人の顔は既にかなり溶けていて医師も全力を尽くしたものの、顔は元には戻ることはありませんでした。謎の液体をかけられた5人の男の子のご家族はブランケット家に慰謝料を請求すると共にブランケット家の次女を訴える方針だそうです。また、謎の液体をかけられた男の子の中にはflowerグループの御曹司もいました』
flowerグループ。GMグループやUTグループ、plantグループに並ぶ大手企業だ。もうミネスさんとは関わりたくない。私は少しずつミネスさんから離れた。
「お願い、誰か助けて!」
「お子ちゃまミネス、あんた少年院に入れ!ここまで強気なナミネ貶めて助けても何もないだろ!」
「ミネス、少年院で償おうか」
落ち武者さんもナヤセス殿もミネスさんに慈悲は与えなかった。
「ナルホ、許して」
「ミネス、僕はもう君とは関わらない。ナミネのほうが大事だから。今後の人生は君が好きな道選んで歩いてくといいよ」
「ナルホが私を捨てるなら私死ぬ!」
何てワガママな女なの。私は呼び出しカードでキクスケさんを呼んだ。
「お呼びでしょうか」
「あの、ミネスさんが自殺未遂しても絶対に死なないようにしてもらえませんか?」
「かしこまりました。2分後、ミネスさんは死なない身体となります。では、これにて失礼」
死んで逃げることは私は許さない。ミネスさんには生きて償ってもらう。何世紀も生き続けてひとりぼっちになってしまえばいい。
けれど、今日は話し合いの日。ヨルクさんを残して行って何かあったら心配だ。私はキクスケさんにメールをした。
『ミネスさん含め、誰もがヨルクさんに危害を一切加えないようにしてもらえないでしょうか?』
『かしこまりました。2分後、ヨルクさんは誰からの危害も加えられなくなります』
これで、ひとまず安心か。けれど、この時の私は小さな疑問を抱えていた。
「ナミネ、今日は桜木町のカフェに行くんだよね。私はキクリ家から戻ってくるカナエさんに料理教わるから、温かくしていってね。それと、もうすぐ生理だよね。このポーチ渡しておくね」
「ありがとうございます、ヨルクさん」
この違和感はなんだろう。私は分からないままでいた。その時、ナルホお兄様が無言で第4居間を出た。
「ナルホ、待って!」
私はナルホお兄様を追いかけるミネスさんを追い越し、階段の上で階段を登ってきたミネスさんを突き落とした。
「痛い!!」
けれど、キクスケさんの力により、ミネスさんは無敵な身体になっていた。私は3度ほど階段を登るミネスさんを階段から突き落とした。
「いた……。ナミネ、本当にごめん!ナミネのことで色々気付かされた!今は謝ることしか出来ないけど、必ず償う!」
ミネスさんはナルホお兄様の部屋に入っていった。入れ替わりにカンザシさんが玄関から入って来た。
「あの、ミネスは?」
「ミネスさんなら、好きな人が出来たので、カンザシさんはお払い箱だそうです。これからは新しい彼を助けるそうです!」
「ミネスはどこですか?」
「2階です」
カンザシさんは2階を駆け登った。私はまたミネスさんの時のようにカンザシさんを追い越した。
「あ、ミネスさんからお払い箱になったカンザシさんを階段から突き落とすよう言われてるんです」
私は階段を登って来たカンザシさんを思いっきり突き落とした。
「おい、そろそろ行くぞ!」
「分かりました!」
私はカンザシさんが骨折しているとも知らず、ラルクと落ち武者さん、ズームさんとナノハナ家を出てタクシーで桜木町のカフェへと向かった。
桜木町のカフェでは、ミナクさんとユメさん、委員長が来ていた。
「じゃ、適当にメニュー選んで話し合いだな」
私はメニューを見ながら考えごとをしていた。正月、神社でヨルクさんがイジワル犯に間違えられた時、ヨルクさんは否定さえせず、自分の無罪を落ち武者さんに証明してもらった。グルグル妖精さんのマンションでミネスさんから責められた時も、今日の私を襲わせた件も傍観者だった。今の私疲れている。ただでさえ恋愛向けではないから、2人で対処することを1人で一気に対処するとヨルクさんのことを疑ってしまっている自分がいた。
私、苛立っている。
「ラルク、一緒にトーストサンド食べよ」
「じゃあ、そうするか」
それにカンザシさんのこと突き落としてしまったのも今になって罪悪感が私を押し寄せた。
私は苛立ちのあまりヨルクさんにメールをした。
『あの、正月の紅葉神社でヨルクさんがイジワル犯に間違われた時、自分では何もせず落ち武者さんに対処させましたよね?グルグル妖精さんのマンションで私がミネスさんに責められている時も何もしてくれず、今日私が襲われた時もただ傍観してましたよね?更にはさっきキクスケさんにヨルクさんには手出し出来ないようお願いしました。でも、これって本来ヨルクさんが自分ですることなんじゃないんですか?交際で困ったことがあれば2人で解決するもんなんじゃないんですか?私、彼氏に、自分の問題、2人の問題全て丸投げされてかなり疲れています。ミネスさんのことも少しでも助けてくれていたらここまで負い詰まらなかったのに。今、全てを破壊したいです。2人で対処することを1人で対処しなければいけないのは割に会いません。そもそも丸投げとか誓約書違反なので自己防衛のためヨルクさんとは破談にします』
苛立ちから別れたくないのに別れを切り出してしまった。もうすぐ交際して半年なのに。どうして私はいつもこうなのだろう。
『ナミネ、ごめん!正月の時はいきなり犯人にされて頭が真っ白になってた!グルグル妖精さんのマンションでは彼氏として何をしてあげられるか考えたけど思いつかなかった!今日ナミネが襲われた時は突然のことで思考がついていけなかった!本当に不快な思いをさせてしまってごめん!次からは必ずナミネのサポートをする!ミネスさんのことでナミネが機嫌悪くしてたら必ず助ける!だから別れるだなんて言わないで!ここで捨てられたら私には何もなくなってしまう!ナミネ、許して!』
私はヨルクさんに返信をしなかった。
私の恋愛はどうして上手くいかないのだろう。ヨルクさんはどうして困っている時に助けてくれないのだろう。彼女が襲われて傍観するのが彼氏なのだろうか。
とても疲れた。2人分を背負うのは割に合わない。
ヨルクさんからは何通も謝罪のメールが来たけれど私は返信をせず、そのうちにメールも開かなくなっていた。
この時の私はナルホお兄様がミネスさんとカンザシさんを月城総合病院に連れて行く時、一緒に行って、ヨルクさんがミネスさんに私を襲わせたことに対して抗議をしてナルホお兄様に相談してクレナイ家 顧問弁護士の誓約書にサインさせていたことを全く知らなかったのである。また、ナルホお兄様も私が相当負いつまっていることを知り、ナノハナ家 顧問弁護士にかなり厳しい誓約書にサインをさせ、二度と私の機嫌を損ねないよう厳しく言ったらしい。
その時、ナルホお兄様からメールが来た。
『ヨルクは、月城総合病院まで着いてきてナミネを襲わせたことミネスに抗議したし、誓約書も書かせた。だからヨルクのこと許してあげてくれないかな?それから僕はミネスと交際することになったよ』
何それ。ナルホお兄様のメールは間違いなく私に対し、火に油を注いだ。私はナルホお兄様とミネスさん両方にメールをした。
『ナルホお兄様との交際は認めません。交際するなら今すぐ死にます!』
『分かった!ナルホとの交際は取りやめにする!』
『ナミネ、ミネスとは交際しないから早まらないで欲しい』
こんな嘘に騙されるものですか!
『お2人とも嘘吐きましたね。今から罰を受けてもらいます』
私はナルホお兄様の携帯にアクセスし、ナルホお兄様のクラスメイトに、悪戯的なメールを一斉送信をした。
次に私はナルホお兄様の携帯からそのままミネスさんのクラスメイトに一斉送信をした。
これだけでは収まらず、私はナルホお兄様の携帯からズルエヌさんにミネスさんが不利になるようなメールをした。
その時、ズルエヌさんからメールが来た。
『妹がご迷惑をおかけして本当に申し訳ありません。ナノハには今別れのメールをしました。妹のしたことは僕のしたこととして今から自首します』
私はナルホお兄様とミネスさんにすかさず、ズルエヌさんのメールを転送する共に意見をした。
『ナルホお兄様とミネスさんが別れたと嘘ついたからズルエヌさんには犠牲になってもらいます。別れたかどうか、帰ったら落ち武者さんにフェアリーングかけて確かめてもらいます!これで別れてなかったら私本当に死にます!』
『ナミネ、ごめん。僕とミネスは別れるつもりはない。ナミネがここまで負いつまっているのは誰にも止められないと思う。ナミネ、辛かったら死んでもいいんだよ。無理に生きることないんだよ』
私はナルホお兄様に見捨てられた。誰かに味方になって欲しくて、ナヤセス殿にナルホお兄様のメールを転送した。
私はトドメにキクスケさんにメールをした。
『あの、適当な男子学生用意して、ナルホお兄様が部屋の扉開けた瞬間、ミネスさんと男子学生を浮気に見せかけてもらえませんか?』
『かしこまりました』
この時点で私は、リアルでどうなっているのか全く分からなかった。(自覚してないけど)初恋のミネスさんの浮気現場を目撃してナルホお兄様が大粒の涙零して泣いていたことも、ナノハお姉様が私を追い詰めたとしてナルホお兄様を殴り続けていたことを、ミネスさんがレイカさんから拷問を受けていたことを。ナルホお兄様がミネスさんを放っておけず私に死んでもいいと言ったことを後になって後悔していたことを。
私は何も知らずにいた。
「あの、ズームさん、ちょっといいですか?」
私はズームさんを連れて離れた席に座った。そして、これまでの経緯をズームさんに全て話した。
「そうでしたか。あなたがそこまで苦しんでいるとは知らずミネスがあなたを追い詰め自分だけ幸せになろうとしていること本当に申し訳なく感じます」
「い、いえ、ズームさんを責めているんじゃなくて、ミネスさんと交際したいばかりに私に死んで欲しいと言ったナルホお兄様のこと信じられなくなったというか、ミネスさんから私とヨルクさんの幸せ壊そうとしたのに、ミネスさんは私に償いもなくナルホお兄様と幸せになるかと思うと許せないというか」
私はまさか、ナルホお兄様にあのような形で裏切られるとは思っていなかった。惚れた女のために実の妹が邪魔になり、私の自殺幇助をするだなんて、人のすることとは思えなかったのだ。
「あんたら何してんのさ。今話し合いの最中だろうが」
「落ち武者さん、ナルホお兄様がミネスさんと交際しました。ナルホお兄様はミネスさんを諦められないばかりに私に死んでもいいと言ってきたんで、私、ラルクと死にます!行くよ、ラルク!」
私はラルクの手を掴んでお店の外に出ようとした。
「待てよ!番人呼び出せ!」
私は渋々キクスケさんを呼び出した。
「お呼びでしょうか」
「僕とラルク、強気なナミネ、ズーム、顔だけヨルクの記憶を残したまま、今日の7時に時間巻き戻せ!」
そんなことしたって結果変わらないのに。二度も傷つきたくないよ。
「かしこまりました。2分後、今日の7時に戻っております。それでは、これにて失礼」
「いいか、強気なナミネ、平和ボケなナルホとお子ちゃまミネスの交際に関しては一切口出しするな!2人のことは放っておけ!あんたを追い詰めて交際したんだから2度目も苦しむのは向こうだ!ナノハ依存ズルエヌには平和ボケなナルホとお子ちゃまミネスが交際した時点で僕がメールする」
私に何のメリットがあるのだろう。私はまた襲われてミネスさん恨んで、そんなミネスさんと交際するナルホお兄様を恨んで自分に耐えきれなくなるだけなのに。
「私に何のメリットがあるんですか!」
「今でも平和ボケなナルホは周りから袋叩きにされてる!あんたがどうこうしなくても自分のことしか考えられないヤツは破滅すんだよ!一度だけ僕を信じろ!」
落ち武者さんがここまで必死に言うなら信じるしかない。今時間巻き戻したら私が苦しんでいることを知っている人がいて私のほうが有利かもしれない。これからはその時に周りに助けを求めよう。
「分かりました」
そして、視界はだんだんボヤけてきた。
気付いたらナノハナ家の布団の中にいた。時計を見ると朝の7時だった。本当に時間が巻き戻っている。
「今からカフェ行くぞ!」
は、早すぎる。でも、いやなもの目にしたくなければ早くここ出ることに超したことはない。私は慌てて着替えた。
「ナミネ、役に立てなくてナミネが負いつまってるの気づけずにナミネに負担かけてごめん。これからはちゃんと話して欲しい。ナミネがいないと生きてる意味がなくなる。ナミネのことはちゃんとサポートする。だから見捨てないで欲しい」
ヨルクさん、また泣いてる。昨日、あまりの苛立たしさに別れ切り出してしまったもんな。あ、時間が巻き戻ったってことはもう一度、キクスケさんにお願いし直さないと。
私はキクスケさんにメールをした。
『ミネスさん含め、誰もがヨルクさんに危害を一切加えないようにしてもらえないでしょうか?』
『かしこまりました。2分後、ヨルクさんは誰からの危害も加えられなくなります』
「ヨルクさん、今キクスケさんにヨルクさんに誰もが手を出さないようお願いしました。時間がないのでもう行きます!」
急がないと、ミネスさんが雇ったチンピラに捕まって気分を害してしまう。
「ナミネ、本当にごめん。ポーチ持って行って。私も一緒に行かなくていい?」
「大丈夫です!ヨルクさんはナノハナ家で過ごしていてください!」
「分かった。ナミネ、気を付けてね」
「はい」
私と落ち武者さんとラルクは逃げるようにナノハナ家を出てタクシーに乗って桜木町のカフェに向かった。
桜木町のカフェに着くと私たちは端っこの席に座った。妖精村は基本24時間営業だから、少し客もいる。数分後、ミナクさん、ユメさん、委員長、エルナさんが来た。あれ、時間戻る前はいなかったはずなのに。まあ、細かいことを気にしていても仕方ない。今回はきっちり、この場での話し合いに参加しないと。
とりあえず、時間巻き戻る前のことはナヤセス殿に報告しておこう。私はナヤセス殿にメールをした。
「で?ミナクは甘えセナとどうなってんの?」
本題に入った。
「ふ、普通だけど」
「カップル日記には、あれだけFメモリイFメモリイ書いといて、最近Fメモリイ投稿ないじゃねえかよ!あんたらどうなってんのさ」
確かに、交際当初はめちゃくちゃラブラブだったのに、今は違うというかミナクさんのほうが冷めてきているようにも見える。
あ、一応時間巻き戻ったんだし、念の為にミネスさんが死なない身体にしてもらえるようもう一度お願いしよう。私はキクスケさんにメールをした。
『あの、ミネスさんがどれだけ死のうとしても死ねないようにしてもらえないでしょうか?』
『かしこまりました。2分後、ミネスさんは死ねない身体となります』
何世紀も生き続けるのかな。それで苦しんでもらえるならこちらも少しは救われるかもしれない。
「少しお休み期間みたいな」
ミナクさん、なかなか話さないからじれったい。
「あんたのために集まったのに、あんたが話さないなら意味ないだろ!食べたら解散するか!」
「最初は恩人であるセナ王女を心から愛してた。けれど、だんだん交際当初のようには見れなくなって、はじめてミネスを見た時、恋に落ちた。このような感情を抱いたのははじめてだ。ミネスのことが好きで好きでたまらない」
カラルリさんの時と同じだ。結局、時間経てば心変わりするのか。隣の芝生は青いと言うが、どのカップルも似たようなものな気がする。けれど、一度心変わりしたものは元には戻らない。セナ王女には可哀想だけれど、縁がなかったのだと思う。
……
あとがき。
どれだけ仲の良い兄妹でも、どちらかに恋人が出来れば、関係も変わるのかもしれません。ナミネは変わらなかったけれど。
走り書きと同じ内容にしたかったのだけれど、出来なかったのが残念。書き直しも考えたけれど、色々難しいです。
ミナクとセナの絡みがかなり少ないのが残念なところ。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
《ナミネ》
私から誰かに攻撃することはない。けれど、周りは違う。妬みや嫉妬は時に人を狂わせてしまうのだ。どれだけ自分から何もしなくても人というのは無理矢理誰かが作り上げた土俵にあげられ闘わされるものなのである。
私はただヨルクさんとのことはそっとしておいて欲しいだけ。ヨルクさんとの幸せを誰にも奪われたくないのだ。
でも、ミネスさんにいきなりとんでもない攻撃をされた時は、生きているだけで反撃しなければいけないことに気付かされた。
私はヨルクさんとの幸せを奪われないためにミネスさんに対抗するしかないと思った。
言ってしまえば、ミネスさんは、ワガママで都合が悪くなれば騒ぎ立て、性格ブスの親の七光り野郎である。私の一番嫌いなタイプだ。
そんなミネスさんのことも、ミネスさんの謝罪により落ち着いたかと思っていた。
そんな矢先だった。
突然5人の高校生くらいの男が第4居間に入ってきた。
「あの、どちら様でしょうか?」
「ナミネってどの女だ!」
「私です!」
その瞬間、男子高生は私を押し倒そうとした。私は男子高生を扇子で吹き飛ばし、花札で拘束した。そして、男子高生に羽子板を少し当てた。
「た、助けてくれ!ミネスって金持ちの女に頼まれたんだ!ナミネをめちゃくちゃにして欲しいって」
「違う!私は断った!でも、この人らがミスコングランプリ取った女だからやるって聞かなくて!お願い、許して!」
いつ依頼したのだろう。何故、そっとしておいてくれないのだろう。
「依頼受けたのはいつですか?」
「昨日だ!」
私の心は凍り付いた。ミネスさんはあれだけ私に許して欲しいとせがんだのに、その裏側で私を襲わせるという計画を立てていたのか。
「私はちゃんと取り消した!信じて!」
「ミネス、前にも言ったけど、ナミネのことは小さい頃からずっと可愛がってきて、大切な存在だって。そんなナミネを襲わせて君の心は晴れたかな?君はセナ王女に同じことされた時、あれほどにセナ王女を悪者にしたのに、ナミネは傷付いてもいいのかな?悪いけど、もう僕は君とは関わらないし、君が困っていても一切助けない。好きに生きるといいよ」
ナルホお兄様は立ち上がった。
「待って、ナルホ!本当に取り消した!ナルホを失いたくない!一度だけチャンスが欲しい!」
ここまで惨めな女を見たことがあるだろうか。せっかくお金持ちに生まれたのに、自分から大切なものを失っていくだなんて。私はただ、そっとして欲しいだけ。でも、その思いはミネスさんにとって悪意だと私は知った。
私は扇子を動かし、ミネスさんに謎の液体を持たせると、ミネスさんを私を襲わせた5人のところまで歩かせ、5人の顔に謎の液体をかけさせた。
「おい、救急車呼べ!」
ヨルクさんは救急車を呼んだ。私を襲わせた5人はすぐに月城総合病院に運ばれて行った。
その時、ズームさんはミネスさんを引っぱたいた。
「ミネス!なんで、ナミネさんを襲わせた!」
「だから、取り消したって!でも、相手が言うこと聞かなかったの!」
「ミネス、どうしてナミネを襲わせたのかな?」
「ナミネが羨ましかったから。私にないもの全部持ってたから。1つくらい不幸になってもナミネなら問題ないと思った。でも、考え直してすぐに取り消した!お願い、ナルホ、見捨てないで!」
1つくらい不幸になっても私なら問題ない?何それ。これだけ付きまとわれて、私はもうミネスさんに反撃する気持ちが萎えつつあった。出来るだけミネスさんと関わらないようにすることにした。
テレビを付けると、早速ニュースが流れた。
『速報です。先程、紅葉町にある月城総合病院に5人の男の子が救急搬送されました。5人のうち1人はすぐにオペが終わり、状態も元通りになったそうです。話を伺うと、ブランケット家の次女にナノハナ家の5女をイヤガラセするよう依頼され、実行しようとしたところ、返り討ちにあい、失敗したことをブランケット家の次女が怒り、5人の顔に謎の液体をかけたとのことです。また4人の顔は既にかなり溶けていて医師も全力を尽くしたものの、顔は元には戻ることはありませんでした。謎の液体をかけられた5人の男の子のご家族はブランケット家に慰謝料を請求すると共にブランケット家の次女を訴える方針だそうです。また、謎の液体をかけられた男の子の中にはflowerグループの御曹司もいました』
flowerグループ。GMグループやUTグループ、plantグループに並ぶ大手企業だ。もうミネスさんとは関わりたくない。私は少しずつミネスさんから離れた。
「お願い、誰か助けて!」
「お子ちゃまミネス、あんた少年院に入れ!ここまで強気なナミネ貶めて助けても何もないだろ!」
「ミネス、少年院で償おうか」
落ち武者さんもナヤセス殿もミネスさんに慈悲は与えなかった。
「ナルホ、許して」
「ミネス、僕はもう君とは関わらない。ナミネのほうが大事だから。今後の人生は君が好きな道選んで歩いてくといいよ」
「ナルホが私を捨てるなら私死ぬ!」
何てワガママな女なの。私は呼び出しカードでキクスケさんを呼んだ。
「お呼びでしょうか」
「あの、ミネスさんが自殺未遂しても絶対に死なないようにしてもらえませんか?」
「かしこまりました。2分後、ミネスさんは死なない身体となります。では、これにて失礼」
死んで逃げることは私は許さない。ミネスさんには生きて償ってもらう。何世紀も生き続けてひとりぼっちになってしまえばいい。
けれど、今日は話し合いの日。ヨルクさんを残して行って何かあったら心配だ。私はキクスケさんにメールをした。
『ミネスさん含め、誰もがヨルクさんに危害を一切加えないようにしてもらえないでしょうか?』
『かしこまりました。2分後、ヨルクさんは誰からの危害も加えられなくなります』
これで、ひとまず安心か。けれど、この時の私は小さな疑問を抱えていた。
「ナミネ、今日は桜木町のカフェに行くんだよね。私はキクリ家から戻ってくるカナエさんに料理教わるから、温かくしていってね。それと、もうすぐ生理だよね。このポーチ渡しておくね」
「ありがとうございます、ヨルクさん」
この違和感はなんだろう。私は分からないままでいた。その時、ナルホお兄様が無言で第4居間を出た。
「ナルホ、待って!」
私はナルホお兄様を追いかけるミネスさんを追い越し、階段の上で階段を登ってきたミネスさんを突き落とした。
「痛い!!」
けれど、キクスケさんの力により、ミネスさんは無敵な身体になっていた。私は3度ほど階段を登るミネスさんを階段から突き落とした。
「いた……。ナミネ、本当にごめん!ナミネのことで色々気付かされた!今は謝ることしか出来ないけど、必ず償う!」
ミネスさんはナルホお兄様の部屋に入っていった。入れ替わりにカンザシさんが玄関から入って来た。
「あの、ミネスは?」
「ミネスさんなら、好きな人が出来たので、カンザシさんはお払い箱だそうです。これからは新しい彼を助けるそうです!」
「ミネスはどこですか?」
「2階です」
カンザシさんは2階を駆け登った。私はまたミネスさんの時のようにカンザシさんを追い越した。
「あ、ミネスさんからお払い箱になったカンザシさんを階段から突き落とすよう言われてるんです」
私は階段を登って来たカンザシさんを思いっきり突き落とした。
「おい、そろそろ行くぞ!」
「分かりました!」
私はカンザシさんが骨折しているとも知らず、ラルクと落ち武者さん、ズームさんとナノハナ家を出てタクシーで桜木町のカフェへと向かった。
桜木町のカフェでは、ミナクさんとユメさん、委員長が来ていた。
「じゃ、適当にメニュー選んで話し合いだな」
私はメニューを見ながら考えごとをしていた。正月、神社でヨルクさんがイジワル犯に間違えられた時、ヨルクさんは否定さえせず、自分の無罪を落ち武者さんに証明してもらった。グルグル妖精さんのマンションでミネスさんから責められた時も、今日の私を襲わせた件も傍観者だった。今の私疲れている。ただでさえ恋愛向けではないから、2人で対処することを1人で一気に対処するとヨルクさんのことを疑ってしまっている自分がいた。
私、苛立っている。
「ラルク、一緒にトーストサンド食べよ」
「じゃあ、そうするか」
それにカンザシさんのこと突き落としてしまったのも今になって罪悪感が私を押し寄せた。
私は苛立ちのあまりヨルクさんにメールをした。
『あの、正月の紅葉神社でヨルクさんがイジワル犯に間違われた時、自分では何もせず落ち武者さんに対処させましたよね?グルグル妖精さんのマンションで私がミネスさんに責められている時も何もしてくれず、今日私が襲われた時もただ傍観してましたよね?更にはさっきキクスケさんにヨルクさんには手出し出来ないようお願いしました。でも、これって本来ヨルクさんが自分ですることなんじゃないんですか?交際で困ったことがあれば2人で解決するもんなんじゃないんですか?私、彼氏に、自分の問題、2人の問題全て丸投げされてかなり疲れています。ミネスさんのことも少しでも助けてくれていたらここまで負い詰まらなかったのに。今、全てを破壊したいです。2人で対処することを1人で対処しなければいけないのは割に会いません。そもそも丸投げとか誓約書違反なので自己防衛のためヨルクさんとは破談にします』
苛立ちから別れたくないのに別れを切り出してしまった。もうすぐ交際して半年なのに。どうして私はいつもこうなのだろう。
『ナミネ、ごめん!正月の時はいきなり犯人にされて頭が真っ白になってた!グルグル妖精さんのマンションでは彼氏として何をしてあげられるか考えたけど思いつかなかった!今日ナミネが襲われた時は突然のことで思考がついていけなかった!本当に不快な思いをさせてしまってごめん!次からは必ずナミネのサポートをする!ミネスさんのことでナミネが機嫌悪くしてたら必ず助ける!だから別れるだなんて言わないで!ここで捨てられたら私には何もなくなってしまう!ナミネ、許して!』
私はヨルクさんに返信をしなかった。
私の恋愛はどうして上手くいかないのだろう。ヨルクさんはどうして困っている時に助けてくれないのだろう。彼女が襲われて傍観するのが彼氏なのだろうか。
とても疲れた。2人分を背負うのは割に合わない。
ヨルクさんからは何通も謝罪のメールが来たけれど私は返信をせず、そのうちにメールも開かなくなっていた。
この時の私はナルホお兄様がミネスさんとカンザシさんを月城総合病院に連れて行く時、一緒に行って、ヨルクさんがミネスさんに私を襲わせたことに対して抗議をしてナルホお兄様に相談してクレナイ家 顧問弁護士の誓約書にサインさせていたことを全く知らなかったのである。また、ナルホお兄様も私が相当負いつまっていることを知り、ナノハナ家 顧問弁護士にかなり厳しい誓約書にサインをさせ、二度と私の機嫌を損ねないよう厳しく言ったらしい。
その時、ナルホお兄様からメールが来た。
『ヨルクは、月城総合病院まで着いてきてナミネを襲わせたことミネスに抗議したし、誓約書も書かせた。だからヨルクのこと許してあげてくれないかな?それから僕はミネスと交際することになったよ』
何それ。ナルホお兄様のメールは間違いなく私に対し、火に油を注いだ。私はナルホお兄様とミネスさん両方にメールをした。
『ナルホお兄様との交際は認めません。交際するなら今すぐ死にます!』
『分かった!ナルホとの交際は取りやめにする!』
『ナミネ、ミネスとは交際しないから早まらないで欲しい』
こんな嘘に騙されるものですか!
『お2人とも嘘吐きましたね。今から罰を受けてもらいます』
私はナルホお兄様の携帯にアクセスし、ナルホお兄様のクラスメイトに、悪戯的なメールを一斉送信をした。
次に私はナルホお兄様の携帯からそのままミネスさんのクラスメイトに一斉送信をした。
これだけでは収まらず、私はナルホお兄様の携帯からズルエヌさんにミネスさんが不利になるようなメールをした。
その時、ズルエヌさんからメールが来た。
『妹がご迷惑をおかけして本当に申し訳ありません。ナノハには今別れのメールをしました。妹のしたことは僕のしたこととして今から自首します』
私はナルホお兄様とミネスさんにすかさず、ズルエヌさんのメールを転送する共に意見をした。
『ナルホお兄様とミネスさんが別れたと嘘ついたからズルエヌさんには犠牲になってもらいます。別れたかどうか、帰ったら落ち武者さんにフェアリーングかけて確かめてもらいます!これで別れてなかったら私本当に死にます!』
『ナミネ、ごめん。僕とミネスは別れるつもりはない。ナミネがここまで負いつまっているのは誰にも止められないと思う。ナミネ、辛かったら死んでもいいんだよ。無理に生きることないんだよ』
私はナルホお兄様に見捨てられた。誰かに味方になって欲しくて、ナヤセス殿にナルホお兄様のメールを転送した。
私はトドメにキクスケさんにメールをした。
『あの、適当な男子学生用意して、ナルホお兄様が部屋の扉開けた瞬間、ミネスさんと男子学生を浮気に見せかけてもらえませんか?』
『かしこまりました』
この時点で私は、リアルでどうなっているのか全く分からなかった。(自覚してないけど)初恋のミネスさんの浮気現場を目撃してナルホお兄様が大粒の涙零して泣いていたことも、ナノハお姉様が私を追い詰めたとしてナルホお兄様を殴り続けていたことを、ミネスさんがレイカさんから拷問を受けていたことを。ナルホお兄様がミネスさんを放っておけず私に死んでもいいと言ったことを後になって後悔していたことを。
私は何も知らずにいた。
「あの、ズームさん、ちょっといいですか?」
私はズームさんを連れて離れた席に座った。そして、これまでの経緯をズームさんに全て話した。
「そうでしたか。あなたがそこまで苦しんでいるとは知らずミネスがあなたを追い詰め自分だけ幸せになろうとしていること本当に申し訳なく感じます」
「い、いえ、ズームさんを責めているんじゃなくて、ミネスさんと交際したいばかりに私に死んで欲しいと言ったナルホお兄様のこと信じられなくなったというか、ミネスさんから私とヨルクさんの幸せ壊そうとしたのに、ミネスさんは私に償いもなくナルホお兄様と幸せになるかと思うと許せないというか」
私はまさか、ナルホお兄様にあのような形で裏切られるとは思っていなかった。惚れた女のために実の妹が邪魔になり、私の自殺幇助をするだなんて、人のすることとは思えなかったのだ。
「あんたら何してんのさ。今話し合いの最中だろうが」
「落ち武者さん、ナルホお兄様がミネスさんと交際しました。ナルホお兄様はミネスさんを諦められないばかりに私に死んでもいいと言ってきたんで、私、ラルクと死にます!行くよ、ラルク!」
私はラルクの手を掴んでお店の外に出ようとした。
「待てよ!番人呼び出せ!」
私は渋々キクスケさんを呼び出した。
「お呼びでしょうか」
「僕とラルク、強気なナミネ、ズーム、顔だけヨルクの記憶を残したまま、今日の7時に時間巻き戻せ!」
そんなことしたって結果変わらないのに。二度も傷つきたくないよ。
「かしこまりました。2分後、今日の7時に戻っております。それでは、これにて失礼」
「いいか、強気なナミネ、平和ボケなナルホとお子ちゃまミネスの交際に関しては一切口出しするな!2人のことは放っておけ!あんたを追い詰めて交際したんだから2度目も苦しむのは向こうだ!ナノハ依存ズルエヌには平和ボケなナルホとお子ちゃまミネスが交際した時点で僕がメールする」
私に何のメリットがあるのだろう。私はまた襲われてミネスさん恨んで、そんなミネスさんと交際するナルホお兄様を恨んで自分に耐えきれなくなるだけなのに。
「私に何のメリットがあるんですか!」
「今でも平和ボケなナルホは周りから袋叩きにされてる!あんたがどうこうしなくても自分のことしか考えられないヤツは破滅すんだよ!一度だけ僕を信じろ!」
落ち武者さんがここまで必死に言うなら信じるしかない。今時間巻き戻したら私が苦しんでいることを知っている人がいて私のほうが有利かもしれない。これからはその時に周りに助けを求めよう。
「分かりました」
そして、視界はだんだんボヤけてきた。
気付いたらナノハナ家の布団の中にいた。時計を見ると朝の7時だった。本当に時間が巻き戻っている。
「今からカフェ行くぞ!」
は、早すぎる。でも、いやなもの目にしたくなければ早くここ出ることに超したことはない。私は慌てて着替えた。
「ナミネ、役に立てなくてナミネが負いつまってるの気づけずにナミネに負担かけてごめん。これからはちゃんと話して欲しい。ナミネがいないと生きてる意味がなくなる。ナミネのことはちゃんとサポートする。だから見捨てないで欲しい」
ヨルクさん、また泣いてる。昨日、あまりの苛立たしさに別れ切り出してしまったもんな。あ、時間が巻き戻ったってことはもう一度、キクスケさんにお願いし直さないと。
私はキクスケさんにメールをした。
『ミネスさん含め、誰もがヨルクさんに危害を一切加えないようにしてもらえないでしょうか?』
『かしこまりました。2分後、ヨルクさんは誰からの危害も加えられなくなります』
「ヨルクさん、今キクスケさんにヨルクさんに誰もが手を出さないようお願いしました。時間がないのでもう行きます!」
急がないと、ミネスさんが雇ったチンピラに捕まって気分を害してしまう。
「ナミネ、本当にごめん。ポーチ持って行って。私も一緒に行かなくていい?」
「大丈夫です!ヨルクさんはナノハナ家で過ごしていてください!」
「分かった。ナミネ、気を付けてね」
「はい」
私と落ち武者さんとラルクは逃げるようにナノハナ家を出てタクシーに乗って桜木町のカフェに向かった。
桜木町のカフェに着くと私たちは端っこの席に座った。妖精村は基本24時間営業だから、少し客もいる。数分後、ミナクさん、ユメさん、委員長、エルナさんが来た。あれ、時間戻る前はいなかったはずなのに。まあ、細かいことを気にしていても仕方ない。今回はきっちり、この場での話し合いに参加しないと。
とりあえず、時間巻き戻る前のことはナヤセス殿に報告しておこう。私はナヤセス殿にメールをした。
「で?ミナクは甘えセナとどうなってんの?」
本題に入った。
「ふ、普通だけど」
「カップル日記には、あれだけFメモリイFメモリイ書いといて、最近Fメモリイ投稿ないじゃねえかよ!あんたらどうなってんのさ」
確かに、交際当初はめちゃくちゃラブラブだったのに、今は違うというかミナクさんのほうが冷めてきているようにも見える。
あ、一応時間巻き戻ったんだし、念の為にミネスさんが死なない身体にしてもらえるようもう一度お願いしよう。私はキクスケさんにメールをした。
『あの、ミネスさんがどれだけ死のうとしても死ねないようにしてもらえないでしょうか?』
『かしこまりました。2分後、ミネスさんは死ねない身体となります』
何世紀も生き続けるのかな。それで苦しんでもらえるならこちらも少しは救われるかもしれない。
「少しお休み期間みたいな」
ミナクさん、なかなか話さないからじれったい。
「あんたのために集まったのに、あんたが話さないなら意味ないだろ!食べたら解散するか!」
「最初は恩人であるセナ王女を心から愛してた。けれど、だんだん交際当初のようには見れなくなって、はじめてミネスを見た時、恋に落ちた。このような感情を抱いたのははじめてだ。ミネスのことが好きで好きでたまらない」
カラルリさんの時と同じだ。結局、時間経てば心変わりするのか。隣の芝生は青いと言うが、どのカップルも似たようなものな気がする。けれど、一度心変わりしたものは元には戻らない。セナ王女には可哀想だけれど、縁がなかったのだと思う。
……
あとがき。
どれだけ仲の良い兄妹でも、どちらかに恋人が出来れば、関係も変わるのかもしれません。ナミネは変わらなかったけれど。
走り書きと同じ内容にしたかったのだけれど、出来なかったのが残念。書き直しも考えたけれど、色々難しいです。
ミナクとセナの絡みがかなり少ないのが残念なところ。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
純愛偏差値 未来編 一人称版 71話
《ミネス》
私はブランケット家の次女 ミネス。
父親は国会議員で母親は料理研究家をしている。小さい頃から私は知力に優れていて、勉強はとても得意だった。
末っ子ゆえ、周りからは可愛がられてきて、自分は恵まれていると思っていた。けれど、そんな思いは姉によって壊されてしまったのである。
お姉ちゃんは決して頭脳明晰ではなく、勉強も苦手で常に赤点。けれど、容姿端麗で、私がずっと片想いしているカンザシを奪った。カンザシとは幼なじみで、よくブランケット家に遊びに来ていた。そして、私のことを実の妹のように可愛がってくれていたのだ。でも、カンザシはお姉ちゃんに一目惚れをした。お姉ちゃんもまた表には出さないもののカンザシに恋愛感情を抱いていたと思う。お互いに初恋だったわけなのだ。
私はどうにかカンザシに振り向いて欲しくて、金銭面でカンザシを援助した。でも、カンザシが私を女として見てくれることはなかった。
田舎があまり好きではない私は、小さい頃に都会の虹色街の別荘で暮らしていた。成績も常に学年トップで委員長をたびたびしていた。クラスでは私は一軍女子で、困っている子には常に優しくしてきた。それも今思えば、満たせない心を自分で慰めていたのだと思う。
そんなある日、学校ではダサイとイジメを受けているお兄ちゃんが、学校外のあるグループと仲良くしていると聞いて、私はナノハナ家に行ってみた。
けれど、大したメンバーはいなくてガッカリした。更には、あれ程に女遊びしていたカンザシにナミネという本命が出来ていて私は物凄くショックを受けた。
ナミネはナノハナ家の5女で、2019年のミスコングランプリ。確かに容姿端麗ではあるけれど、まさかカンザシが私より若い中学1年生のナミネに本気になるとは思わず、私はナミネに会った瞬間から心を痛めた。
ナミネにはカンザシそっくりのヨルクという彼氏がいて、ラルクという幼なじみの親友もいて、芸能活動もしていて、私と同じ末っ子で、幼い頃から紅葉町のみんなから可愛がられていたそうだ。
私はナミネがヨルクから優しくされ、幸せそうにするたびに羨ましくて、次第に妬みの感情が生まれてしまっていた。
けれど、知らない間に第6王女のセナから嫉妬され、私は桜木町の料亭でセナが命令した武官から襲われた。そんな私のピンチを救ってくれたのはナミネの兄のナルホだった。ナルホに対しては自然と心が解放されていた。初対面で、ナルホに興味を持った私はナルホに付きまとった。
でも、ナミネがカンザシにラハルにはじめてを映画の中で捧げたと嘘をついて、傷付いたカンザシは環状線でレイプをし、カンザシを追い詰めたナミネが憎くなり、カンザシがイジワルしたのはナミネのせいとナミネを引っぱたいてしまった。
すると、ナミネから酷い暴力で返って来て、皇帝陛下にかけあうとも言われ、私はひたすらナミネに謝り続けた。けれど、ナミネは私を許さなかった。
その理由は正月の私の行動にあった。
正月にカンザシが1年前にイジワルした女の子が紅葉神社に来ている時、ヨルクを犯人だと叫び、私は知らぬフリをした。そこまでならよかったのだけど、料亭でヨルクはクレナイ家の顧問弁護士をカンザシの家に向かわせたと言い、私は咄嗟にブランケット家の顧問弁護士を向かわせると言ってしまった。けれど、この発言が問題視され、ナミネから犯人隠避と言われ、皇帝陛下に私の処分をくださせた。私は馬鹿の言い分は覆ると皇室に連絡をしたが、皇帝陛下の決断は変わらなく、イジワルされたくない私は、ただただナミネに謝り続けた。
ナミネからは
『○二度とカンザシさんを庇わない
○ヨルクさんに罪を着せたら赤花咲を行う
○ヨルクさんの安全を常に守る
○私とヨルクさんの関係を引き裂かない
○カンザシさんが私に1000年の恋の話題をしたら赤花咲を行う』
という厳しい書面を見せられ、サインしようとしたらナルホが書類を破ってくれた。その後もナミネからの攻撃はナルホが庇ってくれて、私は無自覚にナルホに惹かれはじめていた。
私は、ナミネのヨルクとのことはそっとしておいて欲しいという思いを全く理解してあげられる余裕がなかった。ただ、カンザシに認めて欲しくて、カンザシから褒められたくて、少しでもカンザシに好きになって欲しくて、周りの声が私には聞こえていなかった。グルグル妖精のマンションではカンザシを庇っていることを持ち出され、不利な立場に立たされ、私はひたすらナミネに謝り続けるしかなかった。皇帝陛下は常にブランケット家を優先してくれていたのに、ナミネの母親が皇帝陛下の想い人で皇帝陛下はナミネの意見を優先することを知り、私は素直に負けを認めた。でも、ナミネは許してくれず、ナミネは私を目の敵にし、何がなんでも許そうとせず、あろうことかアルフォンスを犠牲にし私のせいにした。
その後のことは覚えていない。ただ、セルファの兄がみんなの記憶を映画撮影の時まで戻してくれて、私はアルフォンスから責められることはなかった。
ただ、カンザシを庇う。
そこには犯罪名がついていて、ナミネの幸せを奪うことを知った私は改めてナミネに謝った。けれど、ナミネは私を侮辱するばかりで、どれだけ謝っても許してはもらえず、ナミネの取り巻きからも責められ、私はどうしていいのか分からなくなっていた。そんな時、セルファは私にフェアリーングをかけ、私の醜い部分を引き出した。
『お子ちゃまミネス、あんた強気なナミネに言葉で勝てると思ってただろ?強気なナミネはあんたより下だと思ってんだろ?』
『正直、ナミネは頭悪そうだし、私の上には立てないと思ってる。ナミネがどうこう足掻いても最後に勝つのは私だと思ってる。悪いけど馬鹿との話し合いで時間の無駄になって迷惑』
『へえ、それがあんたの本心か。散々強気なナミネに謝ってたのは全て嘘だったってわけ?次にカンザシが問題起こしたら顔だけヨルクに罪でも着せるつもり?』
『そうだね。本気で謝罪はしてない。馬鹿相手にそんなことしない。もちろんカンザシが助かるならヨルクに身代わりになってもらうし、私は私とカンザシだけ無事ならそれでいい!ナミネとヨルクの幸せなんか知らない!』
『あんた、随分悪だな。具体的に聞くけどカンザシがイジワルしたら、その罪、顔だけヨルクに着せるってことか?今後、強気なナミネに何するつもりだ?』
『そうだね。カンザシがイジワルしたらその罪はヨルクに被せる。カンザシのこと取ったナミネには適当に人雇ってイヤガラセさせるつもり。こんな馬鹿に出しゃばられたら溜まったもんじゃないもん』
自分でも醜いと思う。これをセルファは録音していて、伝書鳩に皇室に送らせ、私は皇帝陛下から赤花咲の処分がくだされた。
慌てて私がみんなに縋った時、お兄ちゃんの姿が薄れていた。
お兄ちゃんとカンザシの背中には勾玉のアザがある。カンザシは黒い勾玉でお兄ちゃんは白い勾玉。この2つの勾玉はつがいになっていて、カンザシに危険が迫るとお兄ちゃんにも危害が及ぶ。けれど、その逆はなしなのだ。
お兄ちゃんが消えそうになり、セルファはヨルクにダンゴロを呼び出すよう言い、ヨルクはダンゴロを呼び出し、お兄ちゃんの勾玉のアザと効力を消すようお願いした。ダンゴロはラルクとセレナールの復縁を条件に叶えてくれた。
お兄ちゃんは助かった。
これまでの私はカンザシへの恋愛感情に縛られすぎて周りが見えなくなっていたのだと思う。自分より強い人はいないと思い込み、お兄ちゃんの仲間をみんな馬鹿にしていた。
だから、カンザシには支援しないと言った。
ナミネからは、その後も許しはもらえず、利尿剤を飲まされ、お漏らしと罵られ、泣いただけでも脅され、最終的には妖精クリーンをかけられた。
たった、カンザシを庇っただけで。
私は悔しくてたまらなかった。
そして私はナミネの『ヨルクとのことはそっとしておいて欲しい』の言葉をずっと見落としていた。
ナノハナ家に戻るなりナルホは汚れた私をお風呂に案内してくれた。1人だと怖いと言ったらナルホも一緒に入ってくれた。
ナルホといる時は物凄く心が安らぐ。
「ナルホ……」
「僕は君が全て悪いとは思ってないよ。ただ、ミドリお姉様が無惨な形で亡くなってからナミネは病気になってしまったんだ。でも、君のことはいずれ理解すると思う」
ミドリ。私のことを見た目も性格も不細工な親の七光り野郎と言った時に見せてきた写真の人か。あれが、レイプされた人の死に様とは私もあの時はじめて知った。
ナミネとは反りが合わない。けれど、知り合って間もないのに、ナルホには軽蔑されたくない。
「ナルホ……私を1人にしないで……」
この時の私はカンザシが頼りなく、それでもカンザシが好きで、ナルホへの気持ちに全く気づけずにいた。
ボーッとしていたら、躓いて、私は勢いよくナルホの上に乗ってしまった。
「痛い!」
お湯を見たら血が混じっている。カンザシだけのために残していたはずだった。だけど……。
「とりあえず下りてくれるかな」
「あ、うん」
私はナルホから下りた。
ナルホの部屋では主治医の手当てを受けた。私は疲れて布団に寝転んだ。その時、第2母屋に行くよう声がかかった。
私とナルホは第2母屋へ向かった。
第2母屋の第1居間では、お母さんがいた。
「お母さん!」
その瞬間、私は引っぱたかれた。
え、一度も引っぱたかれたことなんてなかったのに……。
聞くところによると、私が完全に不利になる録音と映像をお母さんは見せられたらしく、まさかの動物園での映像までセルファは所有していた。あの防犯カメラの映像は消したはずなのに。どうして持っているのだろう。
「お子ちゃまミネス、あんた自分のしてること分かってんのか!」
「ごめん!もうカンザシとは関わらない!」
「いいえ、許しません!自分がセナ王女にイジワルされそうになった時は、騒ぎ立てたくせに、それなのにミネスさんはヨルクさんを穢そうとするのですか!皇帝陛下にかけあいます!」
どうしよう。これでまた私の信用が失われていく。
「本当に申し訳ありません。どうか、皇帝陛下に言うことだけは許してください」
お母さんはナミネに土下座した。いつも優しくて思いやりのあるお母さん……。上手(うわて)だからって何をしても許されるのだろうか。お母さんのこんな姿見たくない。
「なあ、あんた自分の娘なら何しても許されると思ってんのかよ!あんたが二度と料理出来ないよう腕の骨へし折ってやる!あんたの娘がしたことはそういうことなんだよ!」
セルファはお母さんの腕を掴んだ。
「きゃあああああああ!!!」
「お母さん!!」
セルファはお母さんの腕を離した。
「次は腕折る」
その瞬間、お母さんはまた私を引っぱたいた。
「あなたのせいで料理出来なくなるところだったじゃない!一生恨んでやる!」
え……怒ったことなんかなかったお母さんが別人になっている。
「ミネスさん、私とヨルクさんのことはそっとしといてください!!お願いだからそっとしといてください!!」
カンザシを庇っただけだった。それが、酷い暴行を受け、脅迫され、親まで呼ばれるとは思っていなかった。私は一発ナミネを叩いただけなのに、ナミネは親の前では被害者気取り。でも、ここで、私がナミネを攻撃したら、お母さんがどうなるか分からない。私は泣きながら堪えた。
「本当に申し訳ありません。どうか一度だけ許してください。ミネスが犯罪を犯していただなんて全く知りませんでした」
その時、誰かが来た。
「それで?あなたの馬鹿娘が私の息子の人生壊そうと計画してたのかしら?」
「本当に申し訳ありません。娘にはちゃんと言い聞かせます」
お母さん、謝ってばかり。
「ハッキリ言います!ミネスさん、ナミネから何かしましたか?全てあなたがナミネをイジメた結果ですよね?反省してもっと苦しんでください!」
ナミネからは……何もしてない……。私はラルクの正論に押し潰された。
「ナミネ、ミネスは十分に反省してる。だから許して欲しい」
「まるで彼氏気取りですね。もし何かあったらナルホお兄様が責任取ってくれるんですか?」
「うん、僕が責任取るよ」
ナルホ……。
「分かりました。一度だけ信じます」
やっと……終わった……。
「一件落着ってことで、ミハネ、今夜は飲むわよ!」
「飲もう飲もう!」
「私、おつまみ作ります」
「よろしくー!」
何時間にも渡るナミネの呪縛から解放された。
再びナルホの部屋に戻ると、ナノハナ食堂のご飯が机に置かれていた。朝からナミネに色々言われて何も食べていなかった私はご飯を食べた。ナルホに近付くと植物の香りがする。
そういえば、ナルホと交際するならナミネの許しも必要なんだ。どうしてこんなこと考えているのだろう。
その時、扉にノックが鳴った。
「カナエ」
「ナルホ、庭園を見せてください」
「うん、いいよ」
ナルホ、植物育ててるんだ。
「私もナルホの庭園見たい!」
「うん、いいよ。寒いから上着着て」
「分かった」
私は食べかけの食事を置いて、ナルホに着いて行った。
ナルホの庭園はとても広い。見たこともない植物も沢山育てている。この空間はまるで幻想的な世界のようだ。
「ナルホ、植物も増えましたね」
「うん、紀元前村にいた時に色々学んだから、帰る時に色々買ってきたんだ」
「カナエもキクリ家で薬草育てています」
「カナエは全て自分で採取してるんだよね」
何この2人、距離が近い。カナエってナルホのこと好きなのだろうか。
「そういえばカナエってアルフォンスからピル飲まされてるんだっけ?本当に愛してるならピルなんか飲ますかなあ?妊娠されたら困る女なんだよ、カナエって」
「そのように人を攻撃して憂さ晴らしすることでしか自分を保てないのですね。カナエはミネスを可哀想に感じます」
本当に愛しているならピルなんか飲ませたりしない。カナエはアルフォンスにとって遊びなのに、この余裕はどこから出てくるのだろう。
この時の私は、カナエがアルフォンスに見切りをつけようとしていることを全く知らなかった。
「じゃあ、アルフォンスにどうしてカナエにピル飲ませるのか聞いちゃおうかな」
「それでミネスの気が済むならどうぞご自由にしてください」
この女ムカつく。いかにも自分がマウント取ってますって感じで、人を見下している。私はカナエを後ろから突き飛ばすとカナエを踏み付けた。その瞬間、カナエは扇子で私を吹き飛ばした。
「愛されてないくせに!」
「愛がそれほどまでに重要でしょうか?カナエは1人なら別にそれはそれで構いません」
この人、セナやセレナールと違って要領がいい。セナはカラルリに依存しすぎて中絶薬盛られ裏切られ、セレナールは無防備に妊娠をカップル日記に書いてアルフォンスにトケイ草を盛られた。
学校では、クラスのみんなに頼られていっぱい褒められて毎日が楽しいのに、ここでは人間関係の作り方が分からない。それに力の強い人ばかりがいる。いつも一軍女子で人の上に立っている私がここでは惨めな人になってしまう。
「ねえ、ラルク。セレナールさんとは続きそう?」
って、ナミネいたのか。
「ズームさんの命かかってるから別れるわけにはいかないしな」
お兄ちゃんて、ここの人らには大切にされているんだ。
「そうだね。でも、リリカさんは納得してくれてるの?」
「納得はしてない。僕が結婚する時には妾として遠くで暮らして欲しいって言ってたらしい」
「難しいね。でも、結婚てまだまだ先だし、それまでにラルクが本当に好きになれる人見つけたらいいよ」
ナミネとラルクは庭園の端っこに体育座りしていた。距離はかなり近いというか、くっついている。
「もう恋愛はしない」
「そっか。ラルクの未来だもんね。どんなラルクでも応援してるよ」
「ナミネ、ミネスとは付き合いしないほうがいいです。さっきいきなりカナエに侮辱してきました」
「えー、ミネスさん最低!」
その瞬間、私の首に何かが巻き付いた。息が出来ない。その時、ナルホが助けてくれた。
「ナミネ、やめようか。ミネスは十分に反省してる。どうしてこんなことするのかな?」
私はナルホの後ろに隠れた。
「ミネスさんがカナエさんのこと侮辱したそうです」
「ミネス、本当かな?」
「侮辱じゃなくて意見しただけ!」
「ラルク、人のことなんてほっときゃいいのにね」
1人より2人の言葉のほうが効力は強い。特に人間関係を上手く作れない人にとっては。ナミネはラルクといると1人の時より断然に別人だ。
「まあ、人のこと干渉するほど暇人なんだろ」
ここでまた言葉したら私が悪者にされてしまう。どうして学校では一軍女子の私が、ここではいちいち人間関係に怯えなければならないのだろう。
「ごめん!悪気はなかった!カナエ、許して欲しい!」
「カナエは別に気にしていません。ナルホ、この植物ください」
「うん、いいよ。ここにあるの、適当に持って行って」
「ありがとうございます」
その瞬間、私はカナエを引っぱたいていた。そして、私はそのままカナエを植物の中に突っ込ませ、植物を台無しにしてしまった。
「カナエさん、大丈夫ですか?」
ナミネはカナエを植物の中から引っ張り出した。次の瞬間、ナミネは私にお手玉を投げた。お手玉は複数になり、猛スピードで私の周りを回転した。私がお手玉の外に出ようとするとお手玉は私を弾いた。私の身体は物凄い痛みが走った。
「ミネスは人にいやがらせしか出来ないのですね。今幸せですか?」
「お願い、助けて!」
「ミネス、どうしてカナエを叩いたのかな?」
どうしよう。あの時、カナエとナルホが親しげにしていたから思わず苛立ってしまった。
「わざとじゃない!許して欲しい!」
「ラルク、どう見てもわざとだったよね。この映像がそれを物語っているよね」
ここの人たち何?お兄ちゃんはどうしてここの人たちと付き合いしているの?
「もう確信犯だな。ここにある植物もダメになってしまったし、老害だな。とりあえず、落ち武者さんとズームさん呼べ!」
「分かった!」
ナミネはセルファとお兄ちゃんを呼び、2人はすぐに来た。そして、ナミネはお兄ちゃんに映像を見せた。
「ミネス!なんてことしてくれたんだ!」
「お兄ちゃん、わざとじゃない!信じて!」
この時の私はカンザシのことを好きながら、恋というものを何も分かっていなかった。それは未来に気付かされることになる。セルファは私にフェアリーングをかけた。
「お子ちゃまミネス、あんたなんで男尽くしカナエ叩いた」
「ナルホとカナエが親しそうにしてたから思わず叩いてしまった。悪気はなかった!」
「あんたカンザシと平和ボケなナルホどっちが好きなんだよ!」
「私はカンザシが好き!」
どうしよう。自分でも訳の分からないことを言ってしまっている。セルファは私のスカートをめくった。
「あんた、下着血がついてるけどどうしたんだよ、これ」
「お風呂に入ってる時、誤ってナルホの入った」
「へえ、あんた平和ボケなナルホに処女捧げたのかよ」
「うん。捧げた!ナルホに捧げた!」
フェアリーングを解こうとしても、足掻くほどに絡まってしまう。一度かけられたら解けないんだ。
「平和ボケなナルホ、あんた事故とはいえ、お子ちゃまミネスの処女奪ってどうすんだよ?」
「ミネスが僕に責任を求めるなら責任は取るつもりだよ」
気が付いたら、ナミネのお手玉もなくなっていて、セルファのフェアリーングも解かれていた。私はその場に泣き崩れた。ナルホは私を抱きかかえ部屋に連れて行き、私を慰めた後、私を布団に寝かせた。
この先、カンザシよりナルホを好きになることがあるだろうか。そうなって欲しい。けれど、私はカンザシのことを諦めきれない。
新たな春の訪れに私はあえて、それを凍らせてしまっていた。
……
あとがき。
ミネス視点でした。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
《ミネス》
私はブランケット家の次女 ミネス。
父親は国会議員で母親は料理研究家をしている。小さい頃から私は知力に優れていて、勉強はとても得意だった。
末っ子ゆえ、周りからは可愛がられてきて、自分は恵まれていると思っていた。けれど、そんな思いは姉によって壊されてしまったのである。
お姉ちゃんは決して頭脳明晰ではなく、勉強も苦手で常に赤点。けれど、容姿端麗で、私がずっと片想いしているカンザシを奪った。カンザシとは幼なじみで、よくブランケット家に遊びに来ていた。そして、私のことを実の妹のように可愛がってくれていたのだ。でも、カンザシはお姉ちゃんに一目惚れをした。お姉ちゃんもまた表には出さないもののカンザシに恋愛感情を抱いていたと思う。お互いに初恋だったわけなのだ。
私はどうにかカンザシに振り向いて欲しくて、金銭面でカンザシを援助した。でも、カンザシが私を女として見てくれることはなかった。
田舎があまり好きではない私は、小さい頃に都会の虹色街の別荘で暮らしていた。成績も常に学年トップで委員長をたびたびしていた。クラスでは私は一軍女子で、困っている子には常に優しくしてきた。それも今思えば、満たせない心を自分で慰めていたのだと思う。
そんなある日、学校ではダサイとイジメを受けているお兄ちゃんが、学校外のあるグループと仲良くしていると聞いて、私はナノハナ家に行ってみた。
けれど、大したメンバーはいなくてガッカリした。更には、あれ程に女遊びしていたカンザシにナミネという本命が出来ていて私は物凄くショックを受けた。
ナミネはナノハナ家の5女で、2019年のミスコングランプリ。確かに容姿端麗ではあるけれど、まさかカンザシが私より若い中学1年生のナミネに本気になるとは思わず、私はナミネに会った瞬間から心を痛めた。
ナミネにはカンザシそっくりのヨルクという彼氏がいて、ラルクという幼なじみの親友もいて、芸能活動もしていて、私と同じ末っ子で、幼い頃から紅葉町のみんなから可愛がられていたそうだ。
私はナミネがヨルクから優しくされ、幸せそうにするたびに羨ましくて、次第に妬みの感情が生まれてしまっていた。
けれど、知らない間に第6王女のセナから嫉妬され、私は桜木町の料亭でセナが命令した武官から襲われた。そんな私のピンチを救ってくれたのはナミネの兄のナルホだった。ナルホに対しては自然と心が解放されていた。初対面で、ナルホに興味を持った私はナルホに付きまとった。
でも、ナミネがカンザシにラハルにはじめてを映画の中で捧げたと嘘をついて、傷付いたカンザシは環状線でレイプをし、カンザシを追い詰めたナミネが憎くなり、カンザシがイジワルしたのはナミネのせいとナミネを引っぱたいてしまった。
すると、ナミネから酷い暴力で返って来て、皇帝陛下にかけあうとも言われ、私はひたすらナミネに謝り続けた。けれど、ナミネは私を許さなかった。
その理由は正月の私の行動にあった。
正月にカンザシが1年前にイジワルした女の子が紅葉神社に来ている時、ヨルクを犯人だと叫び、私は知らぬフリをした。そこまでならよかったのだけど、料亭でヨルクはクレナイ家の顧問弁護士をカンザシの家に向かわせたと言い、私は咄嗟にブランケット家の顧問弁護士を向かわせると言ってしまった。けれど、この発言が問題視され、ナミネから犯人隠避と言われ、皇帝陛下に私の処分をくださせた。私は馬鹿の言い分は覆ると皇室に連絡をしたが、皇帝陛下の決断は変わらなく、イジワルされたくない私は、ただただナミネに謝り続けた。
ナミネからは
『○二度とカンザシさんを庇わない
○ヨルクさんに罪を着せたら赤花咲を行う
○ヨルクさんの安全を常に守る
○私とヨルクさんの関係を引き裂かない
○カンザシさんが私に1000年の恋の話題をしたら赤花咲を行う』
という厳しい書面を見せられ、サインしようとしたらナルホが書類を破ってくれた。その後もナミネからの攻撃はナルホが庇ってくれて、私は無自覚にナルホに惹かれはじめていた。
私は、ナミネのヨルクとのことはそっとしておいて欲しいという思いを全く理解してあげられる余裕がなかった。ただ、カンザシに認めて欲しくて、カンザシから褒められたくて、少しでもカンザシに好きになって欲しくて、周りの声が私には聞こえていなかった。グルグル妖精のマンションではカンザシを庇っていることを持ち出され、不利な立場に立たされ、私はひたすらナミネに謝り続けるしかなかった。皇帝陛下は常にブランケット家を優先してくれていたのに、ナミネの母親が皇帝陛下の想い人で皇帝陛下はナミネの意見を優先することを知り、私は素直に負けを認めた。でも、ナミネは許してくれず、ナミネは私を目の敵にし、何がなんでも許そうとせず、あろうことかアルフォンスを犠牲にし私のせいにした。
その後のことは覚えていない。ただ、セルファの兄がみんなの記憶を映画撮影の時まで戻してくれて、私はアルフォンスから責められることはなかった。
ただ、カンザシを庇う。
そこには犯罪名がついていて、ナミネの幸せを奪うことを知った私は改めてナミネに謝った。けれど、ナミネは私を侮辱するばかりで、どれだけ謝っても許してはもらえず、ナミネの取り巻きからも責められ、私はどうしていいのか分からなくなっていた。そんな時、セルファは私にフェアリーングをかけ、私の醜い部分を引き出した。
『お子ちゃまミネス、あんた強気なナミネに言葉で勝てると思ってただろ?強気なナミネはあんたより下だと思ってんだろ?』
『正直、ナミネは頭悪そうだし、私の上には立てないと思ってる。ナミネがどうこう足掻いても最後に勝つのは私だと思ってる。悪いけど馬鹿との話し合いで時間の無駄になって迷惑』
『へえ、それがあんたの本心か。散々強気なナミネに謝ってたのは全て嘘だったってわけ?次にカンザシが問題起こしたら顔だけヨルクに罪でも着せるつもり?』
『そうだね。本気で謝罪はしてない。馬鹿相手にそんなことしない。もちろんカンザシが助かるならヨルクに身代わりになってもらうし、私は私とカンザシだけ無事ならそれでいい!ナミネとヨルクの幸せなんか知らない!』
『あんた、随分悪だな。具体的に聞くけどカンザシがイジワルしたら、その罪、顔だけヨルクに着せるってことか?今後、強気なナミネに何するつもりだ?』
『そうだね。カンザシがイジワルしたらその罪はヨルクに被せる。カンザシのこと取ったナミネには適当に人雇ってイヤガラセさせるつもり。こんな馬鹿に出しゃばられたら溜まったもんじゃないもん』
自分でも醜いと思う。これをセルファは録音していて、伝書鳩に皇室に送らせ、私は皇帝陛下から赤花咲の処分がくだされた。
慌てて私がみんなに縋った時、お兄ちゃんの姿が薄れていた。
お兄ちゃんとカンザシの背中には勾玉のアザがある。カンザシは黒い勾玉でお兄ちゃんは白い勾玉。この2つの勾玉はつがいになっていて、カンザシに危険が迫るとお兄ちゃんにも危害が及ぶ。けれど、その逆はなしなのだ。
お兄ちゃんが消えそうになり、セルファはヨルクにダンゴロを呼び出すよう言い、ヨルクはダンゴロを呼び出し、お兄ちゃんの勾玉のアザと効力を消すようお願いした。ダンゴロはラルクとセレナールの復縁を条件に叶えてくれた。
お兄ちゃんは助かった。
これまでの私はカンザシへの恋愛感情に縛られすぎて周りが見えなくなっていたのだと思う。自分より強い人はいないと思い込み、お兄ちゃんの仲間をみんな馬鹿にしていた。
だから、カンザシには支援しないと言った。
ナミネからは、その後も許しはもらえず、利尿剤を飲まされ、お漏らしと罵られ、泣いただけでも脅され、最終的には妖精クリーンをかけられた。
たった、カンザシを庇っただけで。
私は悔しくてたまらなかった。
そして私はナミネの『ヨルクとのことはそっとしておいて欲しい』の言葉をずっと見落としていた。
ナノハナ家に戻るなりナルホは汚れた私をお風呂に案内してくれた。1人だと怖いと言ったらナルホも一緒に入ってくれた。
ナルホといる時は物凄く心が安らぐ。
「ナルホ……」
「僕は君が全て悪いとは思ってないよ。ただ、ミドリお姉様が無惨な形で亡くなってからナミネは病気になってしまったんだ。でも、君のことはいずれ理解すると思う」
ミドリ。私のことを見た目も性格も不細工な親の七光り野郎と言った時に見せてきた写真の人か。あれが、レイプされた人の死に様とは私もあの時はじめて知った。
ナミネとは反りが合わない。けれど、知り合って間もないのに、ナルホには軽蔑されたくない。
「ナルホ……私を1人にしないで……」
この時の私はカンザシが頼りなく、それでもカンザシが好きで、ナルホへの気持ちに全く気づけずにいた。
ボーッとしていたら、躓いて、私は勢いよくナルホの上に乗ってしまった。
「痛い!」
お湯を見たら血が混じっている。カンザシだけのために残していたはずだった。だけど……。
「とりあえず下りてくれるかな」
「あ、うん」
私はナルホから下りた。
ナルホの部屋では主治医の手当てを受けた。私は疲れて布団に寝転んだ。その時、第2母屋に行くよう声がかかった。
私とナルホは第2母屋へ向かった。
第2母屋の第1居間では、お母さんがいた。
「お母さん!」
その瞬間、私は引っぱたかれた。
え、一度も引っぱたかれたことなんてなかったのに……。
聞くところによると、私が完全に不利になる録音と映像をお母さんは見せられたらしく、まさかの動物園での映像までセルファは所有していた。あの防犯カメラの映像は消したはずなのに。どうして持っているのだろう。
「お子ちゃまミネス、あんた自分のしてること分かってんのか!」
「ごめん!もうカンザシとは関わらない!」
「いいえ、許しません!自分がセナ王女にイジワルされそうになった時は、騒ぎ立てたくせに、それなのにミネスさんはヨルクさんを穢そうとするのですか!皇帝陛下にかけあいます!」
どうしよう。これでまた私の信用が失われていく。
「本当に申し訳ありません。どうか、皇帝陛下に言うことだけは許してください」
お母さんはナミネに土下座した。いつも優しくて思いやりのあるお母さん……。上手(うわて)だからって何をしても許されるのだろうか。お母さんのこんな姿見たくない。
「なあ、あんた自分の娘なら何しても許されると思ってんのかよ!あんたが二度と料理出来ないよう腕の骨へし折ってやる!あんたの娘がしたことはそういうことなんだよ!」
セルファはお母さんの腕を掴んだ。
「きゃあああああああ!!!」
「お母さん!!」
セルファはお母さんの腕を離した。
「次は腕折る」
その瞬間、お母さんはまた私を引っぱたいた。
「あなたのせいで料理出来なくなるところだったじゃない!一生恨んでやる!」
え……怒ったことなんかなかったお母さんが別人になっている。
「ミネスさん、私とヨルクさんのことはそっとしといてください!!お願いだからそっとしといてください!!」
カンザシを庇っただけだった。それが、酷い暴行を受け、脅迫され、親まで呼ばれるとは思っていなかった。私は一発ナミネを叩いただけなのに、ナミネは親の前では被害者気取り。でも、ここで、私がナミネを攻撃したら、お母さんがどうなるか分からない。私は泣きながら堪えた。
「本当に申し訳ありません。どうか一度だけ許してください。ミネスが犯罪を犯していただなんて全く知りませんでした」
その時、誰かが来た。
「それで?あなたの馬鹿娘が私の息子の人生壊そうと計画してたのかしら?」
「本当に申し訳ありません。娘にはちゃんと言い聞かせます」
お母さん、謝ってばかり。
「ハッキリ言います!ミネスさん、ナミネから何かしましたか?全てあなたがナミネをイジメた結果ですよね?反省してもっと苦しんでください!」
ナミネからは……何もしてない……。私はラルクの正論に押し潰された。
「ナミネ、ミネスは十分に反省してる。だから許して欲しい」
「まるで彼氏気取りですね。もし何かあったらナルホお兄様が責任取ってくれるんですか?」
「うん、僕が責任取るよ」
ナルホ……。
「分かりました。一度だけ信じます」
やっと……終わった……。
「一件落着ってことで、ミハネ、今夜は飲むわよ!」
「飲もう飲もう!」
「私、おつまみ作ります」
「よろしくー!」
何時間にも渡るナミネの呪縛から解放された。
再びナルホの部屋に戻ると、ナノハナ食堂のご飯が机に置かれていた。朝からナミネに色々言われて何も食べていなかった私はご飯を食べた。ナルホに近付くと植物の香りがする。
そういえば、ナルホと交際するならナミネの許しも必要なんだ。どうしてこんなこと考えているのだろう。
その時、扉にノックが鳴った。
「カナエ」
「ナルホ、庭園を見せてください」
「うん、いいよ」
ナルホ、植物育ててるんだ。
「私もナルホの庭園見たい!」
「うん、いいよ。寒いから上着着て」
「分かった」
私は食べかけの食事を置いて、ナルホに着いて行った。
ナルホの庭園はとても広い。見たこともない植物も沢山育てている。この空間はまるで幻想的な世界のようだ。
「ナルホ、植物も増えましたね」
「うん、紀元前村にいた時に色々学んだから、帰る時に色々買ってきたんだ」
「カナエもキクリ家で薬草育てています」
「カナエは全て自分で採取してるんだよね」
何この2人、距離が近い。カナエってナルホのこと好きなのだろうか。
「そういえばカナエってアルフォンスからピル飲まされてるんだっけ?本当に愛してるならピルなんか飲ますかなあ?妊娠されたら困る女なんだよ、カナエって」
「そのように人を攻撃して憂さ晴らしすることでしか自分を保てないのですね。カナエはミネスを可哀想に感じます」
本当に愛しているならピルなんか飲ませたりしない。カナエはアルフォンスにとって遊びなのに、この余裕はどこから出てくるのだろう。
この時の私は、カナエがアルフォンスに見切りをつけようとしていることを全く知らなかった。
「じゃあ、アルフォンスにどうしてカナエにピル飲ませるのか聞いちゃおうかな」
「それでミネスの気が済むならどうぞご自由にしてください」
この女ムカつく。いかにも自分がマウント取ってますって感じで、人を見下している。私はカナエを後ろから突き飛ばすとカナエを踏み付けた。その瞬間、カナエは扇子で私を吹き飛ばした。
「愛されてないくせに!」
「愛がそれほどまでに重要でしょうか?カナエは1人なら別にそれはそれで構いません」
この人、セナやセレナールと違って要領がいい。セナはカラルリに依存しすぎて中絶薬盛られ裏切られ、セレナールは無防備に妊娠をカップル日記に書いてアルフォンスにトケイ草を盛られた。
学校では、クラスのみんなに頼られていっぱい褒められて毎日が楽しいのに、ここでは人間関係の作り方が分からない。それに力の強い人ばかりがいる。いつも一軍女子で人の上に立っている私がここでは惨めな人になってしまう。
「ねえ、ラルク。セレナールさんとは続きそう?」
って、ナミネいたのか。
「ズームさんの命かかってるから別れるわけにはいかないしな」
お兄ちゃんて、ここの人らには大切にされているんだ。
「そうだね。でも、リリカさんは納得してくれてるの?」
「納得はしてない。僕が結婚する時には妾として遠くで暮らして欲しいって言ってたらしい」
「難しいね。でも、結婚てまだまだ先だし、それまでにラルクが本当に好きになれる人見つけたらいいよ」
ナミネとラルクは庭園の端っこに体育座りしていた。距離はかなり近いというか、くっついている。
「もう恋愛はしない」
「そっか。ラルクの未来だもんね。どんなラルクでも応援してるよ」
「ナミネ、ミネスとは付き合いしないほうがいいです。さっきいきなりカナエに侮辱してきました」
「えー、ミネスさん最低!」
その瞬間、私の首に何かが巻き付いた。息が出来ない。その時、ナルホが助けてくれた。
「ナミネ、やめようか。ミネスは十分に反省してる。どうしてこんなことするのかな?」
私はナルホの後ろに隠れた。
「ミネスさんがカナエさんのこと侮辱したそうです」
「ミネス、本当かな?」
「侮辱じゃなくて意見しただけ!」
「ラルク、人のことなんてほっときゃいいのにね」
1人より2人の言葉のほうが効力は強い。特に人間関係を上手く作れない人にとっては。ナミネはラルクといると1人の時より断然に別人だ。
「まあ、人のこと干渉するほど暇人なんだろ」
ここでまた言葉したら私が悪者にされてしまう。どうして学校では一軍女子の私が、ここではいちいち人間関係に怯えなければならないのだろう。
「ごめん!悪気はなかった!カナエ、許して欲しい!」
「カナエは別に気にしていません。ナルホ、この植物ください」
「うん、いいよ。ここにあるの、適当に持って行って」
「ありがとうございます」
その瞬間、私はカナエを引っぱたいていた。そして、私はそのままカナエを植物の中に突っ込ませ、植物を台無しにしてしまった。
「カナエさん、大丈夫ですか?」
ナミネはカナエを植物の中から引っ張り出した。次の瞬間、ナミネは私にお手玉を投げた。お手玉は複数になり、猛スピードで私の周りを回転した。私がお手玉の外に出ようとするとお手玉は私を弾いた。私の身体は物凄い痛みが走った。
「ミネスは人にいやがらせしか出来ないのですね。今幸せですか?」
「お願い、助けて!」
「ミネス、どうしてカナエを叩いたのかな?」
どうしよう。あの時、カナエとナルホが親しげにしていたから思わず苛立ってしまった。
「わざとじゃない!許して欲しい!」
「ラルク、どう見てもわざとだったよね。この映像がそれを物語っているよね」
ここの人たち何?お兄ちゃんはどうしてここの人たちと付き合いしているの?
「もう確信犯だな。ここにある植物もダメになってしまったし、老害だな。とりあえず、落ち武者さんとズームさん呼べ!」
「分かった!」
ナミネはセルファとお兄ちゃんを呼び、2人はすぐに来た。そして、ナミネはお兄ちゃんに映像を見せた。
「ミネス!なんてことしてくれたんだ!」
「お兄ちゃん、わざとじゃない!信じて!」
この時の私はカンザシのことを好きながら、恋というものを何も分かっていなかった。それは未来に気付かされることになる。セルファは私にフェアリーングをかけた。
「お子ちゃまミネス、あんたなんで男尽くしカナエ叩いた」
「ナルホとカナエが親しそうにしてたから思わず叩いてしまった。悪気はなかった!」
「あんたカンザシと平和ボケなナルホどっちが好きなんだよ!」
「私はカンザシが好き!」
どうしよう。自分でも訳の分からないことを言ってしまっている。セルファは私のスカートをめくった。
「あんた、下着血がついてるけどどうしたんだよ、これ」
「お風呂に入ってる時、誤ってナルホの入った」
「へえ、あんた平和ボケなナルホに処女捧げたのかよ」
「うん。捧げた!ナルホに捧げた!」
フェアリーングを解こうとしても、足掻くほどに絡まってしまう。一度かけられたら解けないんだ。
「平和ボケなナルホ、あんた事故とはいえ、お子ちゃまミネスの処女奪ってどうすんだよ?」
「ミネスが僕に責任を求めるなら責任は取るつもりだよ」
気が付いたら、ナミネのお手玉もなくなっていて、セルファのフェアリーングも解かれていた。私はその場に泣き崩れた。ナルホは私を抱きかかえ部屋に連れて行き、私を慰めた後、私を布団に寝かせた。
この先、カンザシよりナルホを好きになることがあるだろうか。そうなって欲しい。けれど、私はカンザシのことを諦めきれない。
新たな春の訪れに私はあえて、それを凍らせてしまっていた。
……
あとがき。
ミネス視点でした。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。