日常のこととかオリジナル小説のこととか。
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ashita
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女性
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地主(土地貸してます)
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漫画やアニメを見るのが好きです。最推しはフーディーニ ♡
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ブログ、もう書かないと思ってました。
けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。
小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。
純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。
ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。
小説、ぼちぼちマイペースに書いてゆきます。
よろしくお願い致します。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
お知らせ。
イラストは現在「ナノハナ家の日常」に載せております。サイドバーにリンクあります。
また、「カラクリよろずや」にて無料のフリーイラスト素材配布もはじめました✩.*˚
フリーイラスト素材も増やしていく予定です(*'ᴗ'*)
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
模倣・無断転載などは、ご遠慮ください。
ブログの小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
小説・純愛偏差値に関しましては、武家名・貴族名(程度による) / 及び、武官の階級 / 扇子・羽子板・花札・百人一首・紙飛行機などのアイテム使用方法の模倣の一切を禁じております。
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X @kigenzen1874
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けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。
小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。
純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
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ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。
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〈資格履歴〉
2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
→漢方コーディネーター 合格
→薬膳調整師 合格
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〈資格証明バナー〉

2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
→漢方コーディネーター 合格
→薬膳調整師 合格
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〈資格証明バナー〉

純愛偏差値 未来編 一人称版 131話
《カラルリ》
商店街に新しく出来たカフェで、ユメさんは機嫌を損ねてしまった。けれど、数日後の話し合いで、アルフォンス王子が週に三回、ユメさんに勉強を教える形で状況は収まった。私としても、妹のカナエを目の敵にされたままでは心境があまり良くないゆえ、これで良かったと思っている。
時が経つのも早いもので、もう五月だ。つまり、セナさんと知り合って、ひと月以上過ぎたことになる。
セナさんが妖精村学園に転校してきたその日から私はセナさんに一目惚れをした。それがだんだんと恋愛感情に変わってきた気がする。いつもセナさんのこと考えているし、セナさんに話しかける男子にヤキモチも妬く。少なくとも私はセナさんのことが好きなのだろう。けれど、セナさんはどうだろう。私としては仲良くしているつもりだけど、セナさんは仮にも王女だし私とは釣り合わない。それでもセナさんのことばかり見てしまう。
美人で強くて意見はハッキリ言うタイプで、セナさんの一つ一つが私の胸をときめかせる。
「お兄様、お手紙です」
またか。小学生の時からカナエには何度も言っているが、それでもカナエはこうやって持って来る。
「悪いが、私はカナエを通したものは全て受け取らない」
というか、セナさんの前で受け取れるわけないし、前なんて、そのまま教室のゴミ箱に捨てていた。私は恋を知らなかった。手紙を書いてくれる人は少なくとも私の何かに惹かれているのだろうけど、私にはそういう乙女心は全く分からなかったのである。そう、セナさんと出会うまで。
「カラルリ固すぎ。適当に返事書けば?」
エミルはエミリの兄でカラクリ家の長男である。そして、私とは小さい頃からの幼なじみ。
「いや、流石にめんどくさい」
好きでもない女に返事など気が引ける。
「でも何も捨てることないと思うわ。アルフォンスなんて手紙の相手全員に次からいらないって返事書いたら手紙少なくなったし」
アルフォンス王子も徹底してるなあ。まあ、今はユメさんと交際してるし他の女と個人的にやり取りというのも出来ないよな。
「僕は全員に返事書いてるけど。カラルリはどうして一通も読まないのかな?」
セリルはクラスの副委員長でセレナールの兄。小さい頃から、よくキクリ家に来ていて、武家でないもののセリルとも幼なじみなのだ。
「あのさセリル。それ自分の時間持てるわけ?」
アルフォンス王子って、時折どこか冷めたような雰囲気。いや、元からクールなタイプだったか。
「長文じゃないし、せっかくもらった手紙を読まないなんて相手に失礼だから。それに宿題した後に返事は書いてるし、家事もしてるし、特に支障はきたしてないよ」
セリルは頭脳明晰で要領が良い。私やエミルとは違って誰にでも優しくて学年だと一番のイケメンだと思う。
「そんなことよりカナエ、また胸大きくなったんじゃないのか」
カナエは身長の割りに胸が大きい。
「お兄様、セクハラはやめるのです!」
姉たちとは違ってカナエとは今でも一緒にお風呂に入っている。
「二人、本当に仲良いね」
いや、エミルとエミリだってそうだろう。
チャイムがなり、カナエはクラスに戻って行き、みんな席に着いた。
そういえば、ここのところ転生ローンとかいう請求書が届いている。現代は、このような悪質な嫌がらせをしているのかと思うと苛立つ。1億9千万円なんて誰が借りるものか。冗談でも許せないくらい、しつこく催促の通知が来る。それも郵便だけでなくメールも来るのである。
転生ローンだなんて馬鹿馬鹿しい。死んだらそこで終わりだろう。転生してまで買うものなんて、この世にあるのだろうか。
休日、セナさんの別荘で集まった。
セナさんの別荘には何回か来たことはあるが、やはり何回来ても王室の別荘は規模が違うなあと感じさせられてしまう。
お昼までは温水プールで遊ぶことになった。
「カナエ、ここだと良いけど他所でビキニなんか着るなよ」
カナエは高校生に上がってから、やたらとオシャレに気を使っている。カナエも女の子なのだろうか。あの小さくて、いつも私の後を追いかけていたカナエが……。
「2メートルはあるから浮き輪使って」
振り返るとワンピースの水着を着たセナさんがいた。ガッカリしてしまったのは下心からだろうか。このメンバーだけならビキニを着てくれても良いのに。いや、セナさんに告白するのは今月だ気を引き締めないと。
「ありがとう」
私は浮き輪を受け取るとカナエに渡した。
「お兄様、カナエは泳げます! それにセレナールもユメさんもビキニではありませんか!」
けれど、セナさんはビキニではない。セレナールのビキニ姿は学年の男が喜ぶだろうけど、ユメさんは痩せすぎて映えない気がする。
「カラルリ、泳ぎ方教えて」
いきなりセレナールが腕を組んできた。めちゃくちゃ困る。セナさん、誤解しないと良いけど。
「そんなことより、まずはカラルリがプール入ってみたら? 実際の深さ知っておいた方が良いと思うのよね。ライフジャケットなら20メートル置きにあるから、万が一の時は使って」
セナさんはセレナールを振り解き、私の手をつかんでプールにダイブした。これって期待しても良いのだろうか。さっきのがヤキモチだったなら、私とセナさんは両想い……?
「ちょっと、カラルリ! 待ってよ!!」
セレナールの声が聞こえるけど泳いでは来れないだろう。
「手離すわよ。浮いてみて」
そっか。手を繋いだままダイブしたんだっけ。けれど、こういう時こそ逃したくない。本当は泳げるけれど私はセナさんの両肩に手を置いた。
「ちょっと久々だから怖いかな」
セナさんはジッとしている。
「そう。でも、元々泳げるなら大丈夫よ」
私は、もっとセナさんに近付きたくてセナさんを抱き締めた。早すぎただろうか。けれど、我慢出来なかった。
「そうだね。でもやっぱりまだ慣れないや」
セナさんの身体柔らかい。その時、いきなりカナエに扇子で肩を叩かれた。
「お兄様! こんなところでイチャつくのはやめてください!」
ったく。あわよくば口付け出来たかもしれない良いところだったのに。私はセナさんから引き離され、一人で浮いた。けれど、ワンピースタイプのものとはいえ、セナさんの水着姿を眺めているのも幸せだ。身長はカナエくらいだけれど、めちゃくちゃ美人で一つ一つの仕草が色っぽい。四月の頭に学校でセナさんのスカートがめくれた時のことを思い出す。あの時に見た純白の下着は今でも頭から離れない。
「カナエ、泳げる? サポートしようか?」
またアルフォンス王子、カナエのこと構おうとしている。
「カナエは大丈夫です。ユメさんは泳げませんので、ユメさんのお傍にいてあげてください」
またユメさん泣きそうになっている。咄嗟に私は叫んだ。
「みんな、こっち来なよ!」
けれど、ユメさんはその場に崩れ落ちた。プールに入らないまま、夜のBBQも楽しめないなんて、あんまりだ。どうして、こうも上手くいかないのだろう。
「セナさん、私ユメさんのところ行ってくる」
メンバーが誰か一人でも欠けてはダメだ。このメンバーで青春を送ると決めたのだから。
「私も行くわ」
私は泳ぎはじめるセナさんの手を取って一緒に泳いだ。セナさんも私の手を握り返してくれた。まるで恋人みたいだ。こんな時間がずっと続けば良いのに。
プールから上がると、私は使用人にタオルをもらい、ユメさんにかけた。
「ごめん、ユメさん。カナエとアルフォンス王子は兄妹のような関係で、ユメさんが思っているようなものじゃないから」
そうであってほしいと願うものの、アルフォンス王子は明らかカナエに気がある。カナエもまた、アルフォンス王子に気を使っている。
「ユメさん、アルフォンスには言い聞かせるから大目に見てくれないかしら」
けれど、ユメさんはずっと泣いている。
「二人は良いじゃない!幸せなあなたたちを見てると余計に惨めになるわ!」
セナさんと私、仲良しに見えるのだろうか。その時、チャイムが鳴った。
「私行ってくるわ」
私は思わずセナさんの腕をつかんだ。
「セナさん、今プールにいるし、その姿で行くのは不味いよ」
いくらワンピース水着とはいえ、やっぱり見られたくない。濡れた髪も、より色っぽくなっている。好きだなあ、セナさんのこと。
「あ、そうよね。客も来たことだしリビング行きましょうか」
そのほうがいい。けれど、その客とやらは光の速さでここへ来た。
「お客様でございます」
セイ……と、ミナク。どうしてミナクが……! この時、一瞬嫌な予感がした。けれど、それは一瞬で頭の中から消え、何事もなかったかのように思えた。
「セイ! どうしてあなたがここにいるのよ!」
本当にどうしているんだ。けれど、それより私はミナクがこの別荘にいることのほうが不自然に思えた。
「あの、弟さんですよね? この人が一人だと兄も姉も入れてくれないからと私に着いてきて欲しいと……」
ミナクは金髪にピアス。ワザと肌の出した服装。相変わらずだな。
「ミナク! お久しぶりです! 元気ですか?」
カナエは昔からクレナイ家三兄弟を弟のように可愛がっている。
「え、知り合いなの? それより弟を届けてもらってごめんなさい。そうだ! あなたも参加しない? 今日はお家パーティーしてるの」
セナさんも、どうしてこんなヤツ誘うんだ。
「セナさん、やめといたほうがいいよ。コイツ、女遊び凄くって学年中の女の子泣かされてるんだ」
セナさんとは知り合ってほしくなかった。こんな遊び人、ロクでもない。どうせ、セナさんまで口説くに決まっている。
「用事は済みましたので私はこれで失礼します」
そうだ、帰ればいい。見知らぬ女と遊べばいい。ここは私とセナさんの愛の巣だ。
「ミナク、せっかくセナさんも誘っていますし、少しだけでも遊んでいきませんか?」
カナエもカナエだな。私はセナさんとの時間を引き裂かれるのは絶対に嫌だ。
「カナエも知ってるだろ? ミナクがどれだけ女泣かせてきたか。こんなヤツと関わったら、こっちまで巻き込まれる」
どうしてセイを連れて来たのがよりによってミナクなんだ。お武家の中では二番目に嫌いなヤツだ。
「えっと、ミナクだっけ? カナエとはどんな関係?」
アルフォンス王子もどうして引き止める。
「カナエとミナクは幼なじみで、ミナクはカナエにとって弟のような存在です!」
はあ、ミナクと会えて嬉しいからってミナクに聞いたことをカナエが答えてどうする。
「カナエ、アルフォンス王子はミナクに聞いてるんだ。カナエには聞いてない」
なんだか苛立ってくる。その時、セナさんが私の手を握ってくれた。一瞬にして変わる世界観。セナさん、好きだよ。
「カナエさんの言う通り、幼なじみでカナエさんは私にとって姉のような存在です」
姉って。お前の姉はリリカだろうが。それもカナエのクラスメイト。
「そっか。ただ、私もセナもはじめて会うし、カラルリは君を良く思ってないみたいだから、ここで勝負してもらえるかな?」
どうしてそうなる。けれど、勝負に勝てばミナクを追い払うことが出来る。とっとと追い払うに越したことはない。
「あの、このまま帰る選択肢はないでしょうか?」
帰る? 逃げるつもりなのか?
「ミナク、日頃の成果をカナエに見せてください」
ミナクミナクって、同じ武家なだけで赤の他人じゃないか。
「……分かりました」
こんなチャランポランなヤツが私に勝てるものか。
「水着渡すから着いて来て、ミナク」
どうしてセナさんが……! そんなの使用人に頼めば良いじゃないか! 私が口を開こうとした瞬間、二人はプールを出た。
心配だ。私も行ったほうがいいだろうか。もし、ミナクが無理矢理セナさんに何かしたら……。
そんな心配もよそに20分後、二人は戻って来た。けれど、どことなくセナさんの顔が火照っている気がする。ミナクが何かしたのだろうか。聞くに聞けないのがもどかしい。
「ルールはカラルリとミナクがプールの端まで泳いで再びスタート地点に速く戻って来たほうの勝ち。泳ぎの型式は問わない。向こうにはカナエと私が、ここはセナとセレナールが見てるから」
いや、ここでカナエと向こうに行ったら、またユメさんが機嫌を損ねてしまう。けれど、今はそんなこと考えている余裕はない。ミナクに勝って、ここからミナクを追い出すほうが先だ!
ここのプールは確か端まで200メートル。勝負は400メートル。絶対に勝つ!
「二人とも位置について!」
アルフォンス王子の掛け声と共に私たちはスタート地点に立った。
「スタート!」
私とミナクはプールへ飛び込んだ。この勝負勝ったも同然だ。
とタカをくくっていたが、ミナクに抜かされている。私は焦りはじめた。私が知るミナクは弱かった。武家の恥なくらいに。そのミナクが今、私から徐々に遠ざかってゆく。
「カラルリ! 頑張って!」
セナさん……。そうだ、まだはじまったばかりじゃないか。けれど、ダメだ。追いつくどころが、どんどん引き離されている。それでも泳ぐしかない。セナさんにかっこ悪いところ見せて、めちゃくちゃ恥ずかしいけど、一度入ったなら出ないと。私はとにかく泳ぎ続けた。どのくらい経っただろう。まだ200メートル地点にも辿り着けていない。えっ、今ミナクとすれ違った!? ダメだ……。不正でもしたのか?
「2分48秒。勝者ミナク! カラルリ、戻って来て!」
セレナールの声と共に試合も私の人生も終わった。私は、折り返し地点には行かず、しぶしぶスタート地点へ戻りはじめた。かっこ悪い。セナさん、絶望しただろうか。400メートルは4分はかかる。それをミナクは2分台でクリアした。
私がプールから上がるとカナエがミナクを抱き締めていた。
「訓練は怠っていなかったのですね、ミナク」
ミナクミナクって本当に……。
「はい、カナエさんとの約束ですから」
姉とか弟とか、姉はリリカで弟はヨルクとラルクだろうが。他人の妹を姉呼ばわりするなんて本当に気に入らない。けれど、負けた以上口答えも出来ない。
「とりあえず、ミナクはここにいていいけど、カナエとは本当に幼なじみ?」
アルフォンス王子……。やっぱりユメさんじゃなくカナエに気があるのか。そしてカナエも……。
「はい、ずっと実の姉のように慕ってきました。もし、異性としてタイプがいるとするなら、セナ王女ですね」
やっぱりセナさんを狙っているのか! セナさんを渡すものか!
「だって、セナ」
アルフォンス王子はセナさんを見た。セナさんの頬を赤らめている。まさかミナクに意識してるのか!?
「私は恋愛とか考えられないわ。ゆっくりするために転校したわけだし」
それって、私が告白しても交際はしないということだろうか。
「ユメさん、ちょっと話そうか」
アルフォンス王子はユメさんを連れ、プールを出た。
「セレナールのビキニ姿セクシー」
そういえば、セイいたんだった。
「いや! いつから撮ってたの? 返して!」
セイの野郎、無音カメラでセレナールを撮影していたのか。セイの手がセレナールの太ももに触れようとしたのをミナクが止めた。
「無理矢理は良くないんじゃないんですか?」
ミナクのヤツ、カッコつけやがって。ミナクが来てから散々だ。カッコ悪いところばかり、セナさんに見られている。
「おい、フェアホ返せ!」
ミナクは、どこまでこのグループに割り込んでくるつもりだ。
「データ消しておきました、セレナールさん」
まさか、セレナールのことまで口説こうとしているのか?
「ありがとう」
ミナクにメンタルを荒らされ、その後のプールでの出来事は殆ど覚えていなかった。
気が付けば、カナエが作った料理が並んでいた。そして、ミナクの手当てをしている。アルフォンス王子とユメさんは、まだ戻っていない。
「ミナク、また喧嘩でもしたのか。とんでもない野郎だな」
こんな女遊びをしているヤツなんか、これっきりにしてほしい。このグループには不釣り合いだ。
「リリカは気が強いですから」
例えリリカだとしてもミナクに問題があるだろう。
「え、リリカって……」
そうか、武家以外はミナクがどんなヤツなのかを知らない。クレナイ家もミナクがいなければ、まともな人間ばかりなのだけど。ミナクだけがイカれている。
「ミナクはリリカの弟なのです」
セレナールもどうしてこんなヤツに興味持つのか。セレナールは妹同然だからミナクには渡せない。セナさんはもっと渡せない。
「えっ、そうだったの? 全然似てないから気付かなかったわ。私、リリカと同じクラスなの」
はあ、ミナクが来てからつまらない。
「姉がお世話になっています」
ミナクも、ここではすっかりいい子ぶって、気に入らない。
「リリカとは似てないかもしれませんが弟とミナクは似ているのです」
どうして似てる似てないの話題になっているんだ。クレナイ家が似てなさすぎだろう。
「いや、ヨルクとは全然似てないだろ」
ミナクもラルクも容姿は整っている。けれど、ヨルクは整っているなんてもんじゃない。セレナールのような誰もが振り返るほどの美男だ。
「弟いるの? いくつ?」
ああ、私の居場所がない。苛立ってくる。
「一番下が中一で二番目が中二です」
そういえば、セレナールって弟いたっけ。見たこともないけれど。
「本当!? 私の弟も中学二年生なの」
セレナールはミナクにフェアホを見せた。
「セレナールさんに似て容姿端麗ですね」
けれど、ヨルクには敵わない。と思う。ヨルクは容姿に恵まれすぎて私の一番気に入らない人物だ。
「ミナクも武家なの?」
どうしてセナさんまで話題に入るんだ。私はセナさんの手を握ろうとしたけど、セナさんは机に手を置いた。
「はい、クレナイ家の長男です」
ミナクが来てから本当につまらない。セイもどうして、ここへ来たんだ。せっかくセナさんとの時間を楽しめると思っていたのに。
「クレナイ家って、どこにあるの?」
ダメだ。このままではセナさんとミナクが仲良くなってしまう。
「セナさん、部屋行っていい?」
ミナクがここにいるならセナさんと二人きりになればいい。
「ごめんなさい。私はここでお話してたいから、部屋に行きたいなら一人で行ってくれるかしら」
そんな……。どうしてみんなミナクに興味持つんだ。セナさんのことは気がかりだけど、今はここにいたくない。私はセナさんの部屋に向かった。
何だかんだでミナクは夜のBBQも参加して、あろうことかこの別荘に泊まって行った。おかげで、私はBBQも楽しめなかったし、夜はセナさんの部屋で休むことも出来ず朝を迎えた。
ふと私は、フェアリー日記を開けた。フェアリーZ広場などのSNSは全体公開になってしまうから、私たちはグループが出来て直ぐにグループのメンバーだけが見れる日記のようなフェアリー日記を登録していたのである。そして、みんながユメさんを見ていた。ユメさんのフェアリー日記にはこう書かれていた。
『水花卒業しました』
えっ、ユメさんとアルフォンス王子が!? そこまで親睦深まっていたようには見えなかったけど。この時は誰もが知らなかった。カナエとの関わりを許す代わりにユメさんがアルフォンス王子に交換条件を提示したことを。
「ユ、ユメさん、おめでとう」
セレナールは半ば苦笑していた。
アルフォンス王子は気まずそうにしている。カナエは知らぬフリをしている。大丈夫なのだろうか。
それにしても人というのは分からないものである。いくら交際しているとはいえ、最初に交わした『友達のような関係』を破ってまでカナエの存在を気にしすぎていたのだろうか。このような状況にひとたび陥れば、自分の存在が消えてしまうような恐怖に陥るのだ。そう、今の私のように。
ある日の学校帰り。セリルとカラクリ家で集まった。こんな風に男同士で語り合うのも久々だし、セナさんのこともボヤけられて今の私にとっては良いかもしれない。
「へえ、ミナクも変わんないねえ」
もし、エミルだったら勝てただろうか。頭を過ぎるほどにモヤモヤしてくる。あの時はセナさんにカッコ悪いとこ見せてしまって今でも気まずい。
「まあな。あんなチャラいヤツにセナさんと仲良くされて、こっちはめちゃくちゃ迷惑だ」
もし、ミナクがいなければ、あの日、セナさんの部屋で過ごせただろうか。私から見てもセナさんとは徐々に友達以上になっていた気がする。
「でも、カラルリとセナ王女、良い感じじゃん。告白するんだろ?」
エミルは淡々としてるから、この人と感じたら告白するだろう。けれど、私は先延ばしにしてしまっている。
「うん、今月するつもり!」
もう出来るだけ早く告白して恋人になりたい。それだけミナクの存在が目障りだ。あれだけ女遊びしておいて、セナさんにも言い寄って本当に何様だ。
その時、テレビからニュースが流れた。
『2020年から流行りだした転生ローンを利用する人は4年前の何倍にも増えました。しかし、その反面、返し切れなくて緑風華をする人も出はじめました。転生ローンは契約で誰でも組めますが返し切れず人生に歪みが生じてしまうことが現在問題に問われています』
転生ローン!? これって、本当にあったのか!? 嘘だろ!?
「な、なあ。私、転生ローンの催促来てるんだけど……これってマジなのか?」
私が言うと、二人は顔を見合わせた。
「淡い緑の封筒で、いつ何を買ったか書いてあった? 返済は後どのくらいかな?」
真剣そうにセリルは私を見つめた。
「確かに淡い緑だったと思う。えっと……」
私は念の為撮っておいた写真を見るため、フェアホを取り出した。そして、エミルは私のフェアホを覗き込んだ。
「え、1億9千万円て! それも、元々2億三千万円のもので、4千万円は返してる。どうやって返したんだ!?」
転生……? てことは前世があるのか!? とてもじゃないけど信じられない。
「なあ、前世なんてあるのか?」
嘘だろ! 2億三千万円のものなんて買った記憶も前世も全く覚えていない! どうしたらいいんだ!
「うん、あるみたいだよ。私は古代の記憶を思い出すことがある」
エミルは前世を信じているのか。
「カラルリ、よく聞いて。転生ローンは確実に存在していて、転生しても払い終わるまで催促が来るローンなんだ。だからニュースの緑風華だなんて何の意味もない。町役場で、その転生ローンの催促が事実か確認出来るから今から行こう」
セリルの言葉で私たちは制服のまま紅葉町役場へ向かった。
「確かに、催促通り2億三千万円のフェアリーフォンの指輪を購入し、四千万円を返されて残り1億9000万円ですね。三回転生して返済出来ない人が家を取り上げられている事例もありますので、お早い返済をオススメします」
そんな……1億9000万円だなんて……。
返す当てがない……。
私はその場に崩れた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
あとがき。
忘れた頃にとは言いますが。
転生ローンとか現実にあったら怖いです。
それに、せっかく記憶を失ったセナともう一度元の関係になれそうな時にミナクが現れるなんて、これって三角関係のはじまりでしょうか。
なかなか上手く行きませんねえ。
転生ローン、返せるのか!?
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
また、程度によりますが模倣はご遠慮願います。
詳しくは《カテゴリ》→《説明事項》→《模倣のご遠慮願います》をご覧ください。
小説の無断転載もご遠慮くださいませ〜♪
《カラルリ》
商店街に新しく出来たカフェで、ユメさんは機嫌を損ねてしまった。けれど、数日後の話し合いで、アルフォンス王子が週に三回、ユメさんに勉強を教える形で状況は収まった。私としても、妹のカナエを目の敵にされたままでは心境があまり良くないゆえ、これで良かったと思っている。
時が経つのも早いもので、もう五月だ。つまり、セナさんと知り合って、ひと月以上過ぎたことになる。
セナさんが妖精村学園に転校してきたその日から私はセナさんに一目惚れをした。それがだんだんと恋愛感情に変わってきた気がする。いつもセナさんのこと考えているし、セナさんに話しかける男子にヤキモチも妬く。少なくとも私はセナさんのことが好きなのだろう。けれど、セナさんはどうだろう。私としては仲良くしているつもりだけど、セナさんは仮にも王女だし私とは釣り合わない。それでもセナさんのことばかり見てしまう。
美人で強くて意見はハッキリ言うタイプで、セナさんの一つ一つが私の胸をときめかせる。
「お兄様、お手紙です」
またか。小学生の時からカナエには何度も言っているが、それでもカナエはこうやって持って来る。
「悪いが、私はカナエを通したものは全て受け取らない」
というか、セナさんの前で受け取れるわけないし、前なんて、そのまま教室のゴミ箱に捨てていた。私は恋を知らなかった。手紙を書いてくれる人は少なくとも私の何かに惹かれているのだろうけど、私にはそういう乙女心は全く分からなかったのである。そう、セナさんと出会うまで。
「カラルリ固すぎ。適当に返事書けば?」
エミルはエミリの兄でカラクリ家の長男である。そして、私とは小さい頃からの幼なじみ。
「いや、流石にめんどくさい」
好きでもない女に返事など気が引ける。
「でも何も捨てることないと思うわ。アルフォンスなんて手紙の相手全員に次からいらないって返事書いたら手紙少なくなったし」
アルフォンス王子も徹底してるなあ。まあ、今はユメさんと交際してるし他の女と個人的にやり取りというのも出来ないよな。
「僕は全員に返事書いてるけど。カラルリはどうして一通も読まないのかな?」
セリルはクラスの副委員長でセレナールの兄。小さい頃から、よくキクリ家に来ていて、武家でないもののセリルとも幼なじみなのだ。
「あのさセリル。それ自分の時間持てるわけ?」
アルフォンス王子って、時折どこか冷めたような雰囲気。いや、元からクールなタイプだったか。
「長文じゃないし、せっかくもらった手紙を読まないなんて相手に失礼だから。それに宿題した後に返事は書いてるし、家事もしてるし、特に支障はきたしてないよ」
セリルは頭脳明晰で要領が良い。私やエミルとは違って誰にでも優しくて学年だと一番のイケメンだと思う。
「そんなことよりカナエ、また胸大きくなったんじゃないのか」
カナエは身長の割りに胸が大きい。
「お兄様、セクハラはやめるのです!」
姉たちとは違ってカナエとは今でも一緒にお風呂に入っている。
「二人、本当に仲良いね」
いや、エミルとエミリだってそうだろう。
チャイムがなり、カナエはクラスに戻って行き、みんな席に着いた。
そういえば、ここのところ転生ローンとかいう請求書が届いている。現代は、このような悪質な嫌がらせをしているのかと思うと苛立つ。1億9千万円なんて誰が借りるものか。冗談でも許せないくらい、しつこく催促の通知が来る。それも郵便だけでなくメールも来るのである。
転生ローンだなんて馬鹿馬鹿しい。死んだらそこで終わりだろう。転生してまで買うものなんて、この世にあるのだろうか。
休日、セナさんの別荘で集まった。
セナさんの別荘には何回か来たことはあるが、やはり何回来ても王室の別荘は規模が違うなあと感じさせられてしまう。
お昼までは温水プールで遊ぶことになった。
「カナエ、ここだと良いけど他所でビキニなんか着るなよ」
カナエは高校生に上がってから、やたらとオシャレに気を使っている。カナエも女の子なのだろうか。あの小さくて、いつも私の後を追いかけていたカナエが……。
「2メートルはあるから浮き輪使って」
振り返るとワンピースの水着を着たセナさんがいた。ガッカリしてしまったのは下心からだろうか。このメンバーだけならビキニを着てくれても良いのに。いや、セナさんに告白するのは今月だ気を引き締めないと。
「ありがとう」
私は浮き輪を受け取るとカナエに渡した。
「お兄様、カナエは泳げます! それにセレナールもユメさんもビキニではありませんか!」
けれど、セナさんはビキニではない。セレナールのビキニ姿は学年の男が喜ぶだろうけど、ユメさんは痩せすぎて映えない気がする。
「カラルリ、泳ぎ方教えて」
いきなりセレナールが腕を組んできた。めちゃくちゃ困る。セナさん、誤解しないと良いけど。
「そんなことより、まずはカラルリがプール入ってみたら? 実際の深さ知っておいた方が良いと思うのよね。ライフジャケットなら20メートル置きにあるから、万が一の時は使って」
セナさんはセレナールを振り解き、私の手をつかんでプールにダイブした。これって期待しても良いのだろうか。さっきのがヤキモチだったなら、私とセナさんは両想い……?
「ちょっと、カラルリ! 待ってよ!!」
セレナールの声が聞こえるけど泳いでは来れないだろう。
「手離すわよ。浮いてみて」
そっか。手を繋いだままダイブしたんだっけ。けれど、こういう時こそ逃したくない。本当は泳げるけれど私はセナさんの両肩に手を置いた。
「ちょっと久々だから怖いかな」
セナさんはジッとしている。
「そう。でも、元々泳げるなら大丈夫よ」
私は、もっとセナさんに近付きたくてセナさんを抱き締めた。早すぎただろうか。けれど、我慢出来なかった。
「そうだね。でもやっぱりまだ慣れないや」
セナさんの身体柔らかい。その時、いきなりカナエに扇子で肩を叩かれた。
「お兄様! こんなところでイチャつくのはやめてください!」
ったく。あわよくば口付け出来たかもしれない良いところだったのに。私はセナさんから引き離され、一人で浮いた。けれど、ワンピースタイプのものとはいえ、セナさんの水着姿を眺めているのも幸せだ。身長はカナエくらいだけれど、めちゃくちゃ美人で一つ一つの仕草が色っぽい。四月の頭に学校でセナさんのスカートがめくれた時のことを思い出す。あの時に見た純白の下着は今でも頭から離れない。
「カナエ、泳げる? サポートしようか?」
またアルフォンス王子、カナエのこと構おうとしている。
「カナエは大丈夫です。ユメさんは泳げませんので、ユメさんのお傍にいてあげてください」
またユメさん泣きそうになっている。咄嗟に私は叫んだ。
「みんな、こっち来なよ!」
けれど、ユメさんはその場に崩れ落ちた。プールに入らないまま、夜のBBQも楽しめないなんて、あんまりだ。どうして、こうも上手くいかないのだろう。
「セナさん、私ユメさんのところ行ってくる」
メンバーが誰か一人でも欠けてはダメだ。このメンバーで青春を送ると決めたのだから。
「私も行くわ」
私は泳ぎはじめるセナさんの手を取って一緒に泳いだ。セナさんも私の手を握り返してくれた。まるで恋人みたいだ。こんな時間がずっと続けば良いのに。
プールから上がると、私は使用人にタオルをもらい、ユメさんにかけた。
「ごめん、ユメさん。カナエとアルフォンス王子は兄妹のような関係で、ユメさんが思っているようなものじゃないから」
そうであってほしいと願うものの、アルフォンス王子は明らかカナエに気がある。カナエもまた、アルフォンス王子に気を使っている。
「ユメさん、アルフォンスには言い聞かせるから大目に見てくれないかしら」
けれど、ユメさんはずっと泣いている。
「二人は良いじゃない!幸せなあなたたちを見てると余計に惨めになるわ!」
セナさんと私、仲良しに見えるのだろうか。その時、チャイムが鳴った。
「私行ってくるわ」
私は思わずセナさんの腕をつかんだ。
「セナさん、今プールにいるし、その姿で行くのは不味いよ」
いくらワンピース水着とはいえ、やっぱり見られたくない。濡れた髪も、より色っぽくなっている。好きだなあ、セナさんのこと。
「あ、そうよね。客も来たことだしリビング行きましょうか」
そのほうがいい。けれど、その客とやらは光の速さでここへ来た。
「お客様でございます」
セイ……と、ミナク。どうしてミナクが……! この時、一瞬嫌な予感がした。けれど、それは一瞬で頭の中から消え、何事もなかったかのように思えた。
「セイ! どうしてあなたがここにいるのよ!」
本当にどうしているんだ。けれど、それより私はミナクがこの別荘にいることのほうが不自然に思えた。
「あの、弟さんですよね? この人が一人だと兄も姉も入れてくれないからと私に着いてきて欲しいと……」
ミナクは金髪にピアス。ワザと肌の出した服装。相変わらずだな。
「ミナク! お久しぶりです! 元気ですか?」
カナエは昔からクレナイ家三兄弟を弟のように可愛がっている。
「え、知り合いなの? それより弟を届けてもらってごめんなさい。そうだ! あなたも参加しない? 今日はお家パーティーしてるの」
セナさんも、どうしてこんなヤツ誘うんだ。
「セナさん、やめといたほうがいいよ。コイツ、女遊び凄くって学年中の女の子泣かされてるんだ」
セナさんとは知り合ってほしくなかった。こんな遊び人、ロクでもない。どうせ、セナさんまで口説くに決まっている。
「用事は済みましたので私はこれで失礼します」
そうだ、帰ればいい。見知らぬ女と遊べばいい。ここは私とセナさんの愛の巣だ。
「ミナク、せっかくセナさんも誘っていますし、少しだけでも遊んでいきませんか?」
カナエもカナエだな。私はセナさんとの時間を引き裂かれるのは絶対に嫌だ。
「カナエも知ってるだろ? ミナクがどれだけ女泣かせてきたか。こんなヤツと関わったら、こっちまで巻き込まれる」
どうしてセイを連れて来たのがよりによってミナクなんだ。お武家の中では二番目に嫌いなヤツだ。
「えっと、ミナクだっけ? カナエとはどんな関係?」
アルフォンス王子もどうして引き止める。
「カナエとミナクは幼なじみで、ミナクはカナエにとって弟のような存在です!」
はあ、ミナクと会えて嬉しいからってミナクに聞いたことをカナエが答えてどうする。
「カナエ、アルフォンス王子はミナクに聞いてるんだ。カナエには聞いてない」
なんだか苛立ってくる。その時、セナさんが私の手を握ってくれた。一瞬にして変わる世界観。セナさん、好きだよ。
「カナエさんの言う通り、幼なじみでカナエさんは私にとって姉のような存在です」
姉って。お前の姉はリリカだろうが。それもカナエのクラスメイト。
「そっか。ただ、私もセナもはじめて会うし、カラルリは君を良く思ってないみたいだから、ここで勝負してもらえるかな?」
どうしてそうなる。けれど、勝負に勝てばミナクを追い払うことが出来る。とっとと追い払うに越したことはない。
「あの、このまま帰る選択肢はないでしょうか?」
帰る? 逃げるつもりなのか?
「ミナク、日頃の成果をカナエに見せてください」
ミナクミナクって、同じ武家なだけで赤の他人じゃないか。
「……分かりました」
こんなチャランポランなヤツが私に勝てるものか。
「水着渡すから着いて来て、ミナク」
どうしてセナさんが……! そんなの使用人に頼めば良いじゃないか! 私が口を開こうとした瞬間、二人はプールを出た。
心配だ。私も行ったほうがいいだろうか。もし、ミナクが無理矢理セナさんに何かしたら……。
そんな心配もよそに20分後、二人は戻って来た。けれど、どことなくセナさんの顔が火照っている気がする。ミナクが何かしたのだろうか。聞くに聞けないのがもどかしい。
「ルールはカラルリとミナクがプールの端まで泳いで再びスタート地点に速く戻って来たほうの勝ち。泳ぎの型式は問わない。向こうにはカナエと私が、ここはセナとセレナールが見てるから」
いや、ここでカナエと向こうに行ったら、またユメさんが機嫌を損ねてしまう。けれど、今はそんなこと考えている余裕はない。ミナクに勝って、ここからミナクを追い出すほうが先だ!
ここのプールは確か端まで200メートル。勝負は400メートル。絶対に勝つ!
「二人とも位置について!」
アルフォンス王子の掛け声と共に私たちはスタート地点に立った。
「スタート!」
私とミナクはプールへ飛び込んだ。この勝負勝ったも同然だ。
とタカをくくっていたが、ミナクに抜かされている。私は焦りはじめた。私が知るミナクは弱かった。武家の恥なくらいに。そのミナクが今、私から徐々に遠ざかってゆく。
「カラルリ! 頑張って!」
セナさん……。そうだ、まだはじまったばかりじゃないか。けれど、ダメだ。追いつくどころが、どんどん引き離されている。それでも泳ぐしかない。セナさんにかっこ悪いところ見せて、めちゃくちゃ恥ずかしいけど、一度入ったなら出ないと。私はとにかく泳ぎ続けた。どのくらい経っただろう。まだ200メートル地点にも辿り着けていない。えっ、今ミナクとすれ違った!? ダメだ……。不正でもしたのか?
「2分48秒。勝者ミナク! カラルリ、戻って来て!」
セレナールの声と共に試合も私の人生も終わった。私は、折り返し地点には行かず、しぶしぶスタート地点へ戻りはじめた。かっこ悪い。セナさん、絶望しただろうか。400メートルは4分はかかる。それをミナクは2分台でクリアした。
私がプールから上がるとカナエがミナクを抱き締めていた。
「訓練は怠っていなかったのですね、ミナク」
ミナクミナクって本当に……。
「はい、カナエさんとの約束ですから」
姉とか弟とか、姉はリリカで弟はヨルクとラルクだろうが。他人の妹を姉呼ばわりするなんて本当に気に入らない。けれど、負けた以上口答えも出来ない。
「とりあえず、ミナクはここにいていいけど、カナエとは本当に幼なじみ?」
アルフォンス王子……。やっぱりユメさんじゃなくカナエに気があるのか。そしてカナエも……。
「はい、ずっと実の姉のように慕ってきました。もし、異性としてタイプがいるとするなら、セナ王女ですね」
やっぱりセナさんを狙っているのか! セナさんを渡すものか!
「だって、セナ」
アルフォンス王子はセナさんを見た。セナさんの頬を赤らめている。まさかミナクに意識してるのか!?
「私は恋愛とか考えられないわ。ゆっくりするために転校したわけだし」
それって、私が告白しても交際はしないということだろうか。
「ユメさん、ちょっと話そうか」
アルフォンス王子はユメさんを連れ、プールを出た。
「セレナールのビキニ姿セクシー」
そういえば、セイいたんだった。
「いや! いつから撮ってたの? 返して!」
セイの野郎、無音カメラでセレナールを撮影していたのか。セイの手がセレナールの太ももに触れようとしたのをミナクが止めた。
「無理矢理は良くないんじゃないんですか?」
ミナクのヤツ、カッコつけやがって。ミナクが来てから散々だ。カッコ悪いところばかり、セナさんに見られている。
「おい、フェアホ返せ!」
ミナクは、どこまでこのグループに割り込んでくるつもりだ。
「データ消しておきました、セレナールさん」
まさか、セレナールのことまで口説こうとしているのか?
「ありがとう」
ミナクにメンタルを荒らされ、その後のプールでの出来事は殆ど覚えていなかった。
気が付けば、カナエが作った料理が並んでいた。そして、ミナクの手当てをしている。アルフォンス王子とユメさんは、まだ戻っていない。
「ミナク、また喧嘩でもしたのか。とんでもない野郎だな」
こんな女遊びをしているヤツなんか、これっきりにしてほしい。このグループには不釣り合いだ。
「リリカは気が強いですから」
例えリリカだとしてもミナクに問題があるだろう。
「え、リリカって……」
そうか、武家以外はミナクがどんなヤツなのかを知らない。クレナイ家もミナクがいなければ、まともな人間ばかりなのだけど。ミナクだけがイカれている。
「ミナクはリリカの弟なのです」
セレナールもどうしてこんなヤツに興味持つのか。セレナールは妹同然だからミナクには渡せない。セナさんはもっと渡せない。
「えっ、そうだったの? 全然似てないから気付かなかったわ。私、リリカと同じクラスなの」
はあ、ミナクが来てからつまらない。
「姉がお世話になっています」
ミナクも、ここではすっかりいい子ぶって、気に入らない。
「リリカとは似てないかもしれませんが弟とミナクは似ているのです」
どうして似てる似てないの話題になっているんだ。クレナイ家が似てなさすぎだろう。
「いや、ヨルクとは全然似てないだろ」
ミナクもラルクも容姿は整っている。けれど、ヨルクは整っているなんてもんじゃない。セレナールのような誰もが振り返るほどの美男だ。
「弟いるの? いくつ?」
ああ、私の居場所がない。苛立ってくる。
「一番下が中一で二番目が中二です」
そういえば、セレナールって弟いたっけ。見たこともないけれど。
「本当!? 私の弟も中学二年生なの」
セレナールはミナクにフェアホを見せた。
「セレナールさんに似て容姿端麗ですね」
けれど、ヨルクには敵わない。と思う。ヨルクは容姿に恵まれすぎて私の一番気に入らない人物だ。
「ミナクも武家なの?」
どうしてセナさんまで話題に入るんだ。私はセナさんの手を握ろうとしたけど、セナさんは机に手を置いた。
「はい、クレナイ家の長男です」
ミナクが来てから本当につまらない。セイもどうして、ここへ来たんだ。せっかくセナさんとの時間を楽しめると思っていたのに。
「クレナイ家って、どこにあるの?」
ダメだ。このままではセナさんとミナクが仲良くなってしまう。
「セナさん、部屋行っていい?」
ミナクがここにいるならセナさんと二人きりになればいい。
「ごめんなさい。私はここでお話してたいから、部屋に行きたいなら一人で行ってくれるかしら」
そんな……。どうしてみんなミナクに興味持つんだ。セナさんのことは気がかりだけど、今はここにいたくない。私はセナさんの部屋に向かった。
何だかんだでミナクは夜のBBQも参加して、あろうことかこの別荘に泊まって行った。おかげで、私はBBQも楽しめなかったし、夜はセナさんの部屋で休むことも出来ず朝を迎えた。
ふと私は、フェアリー日記を開けた。フェアリーZ広場などのSNSは全体公開になってしまうから、私たちはグループが出来て直ぐにグループのメンバーだけが見れる日記のようなフェアリー日記を登録していたのである。そして、みんながユメさんを見ていた。ユメさんのフェアリー日記にはこう書かれていた。
『水花卒業しました』
えっ、ユメさんとアルフォンス王子が!? そこまで親睦深まっていたようには見えなかったけど。この時は誰もが知らなかった。カナエとの関わりを許す代わりにユメさんがアルフォンス王子に交換条件を提示したことを。
「ユ、ユメさん、おめでとう」
セレナールは半ば苦笑していた。
アルフォンス王子は気まずそうにしている。カナエは知らぬフリをしている。大丈夫なのだろうか。
それにしても人というのは分からないものである。いくら交際しているとはいえ、最初に交わした『友達のような関係』を破ってまでカナエの存在を気にしすぎていたのだろうか。このような状況にひとたび陥れば、自分の存在が消えてしまうような恐怖に陥るのだ。そう、今の私のように。
ある日の学校帰り。セリルとカラクリ家で集まった。こんな風に男同士で語り合うのも久々だし、セナさんのこともボヤけられて今の私にとっては良いかもしれない。
「へえ、ミナクも変わんないねえ」
もし、エミルだったら勝てただろうか。頭を過ぎるほどにモヤモヤしてくる。あの時はセナさんにカッコ悪いとこ見せてしまって今でも気まずい。
「まあな。あんなチャラいヤツにセナさんと仲良くされて、こっちはめちゃくちゃ迷惑だ」
もし、ミナクがいなければ、あの日、セナさんの部屋で過ごせただろうか。私から見てもセナさんとは徐々に友達以上になっていた気がする。
「でも、カラルリとセナ王女、良い感じじゃん。告白するんだろ?」
エミルは淡々としてるから、この人と感じたら告白するだろう。けれど、私は先延ばしにしてしまっている。
「うん、今月するつもり!」
もう出来るだけ早く告白して恋人になりたい。それだけミナクの存在が目障りだ。あれだけ女遊びしておいて、セナさんにも言い寄って本当に何様だ。
その時、テレビからニュースが流れた。
『2020年から流行りだした転生ローンを利用する人は4年前の何倍にも増えました。しかし、その反面、返し切れなくて緑風華をする人も出はじめました。転生ローンは契約で誰でも組めますが返し切れず人生に歪みが生じてしまうことが現在問題に問われています』
転生ローン!? これって、本当にあったのか!? 嘘だろ!?
「な、なあ。私、転生ローンの催促来てるんだけど……これってマジなのか?」
私が言うと、二人は顔を見合わせた。
「淡い緑の封筒で、いつ何を買ったか書いてあった? 返済は後どのくらいかな?」
真剣そうにセリルは私を見つめた。
「確かに淡い緑だったと思う。えっと……」
私は念の為撮っておいた写真を見るため、フェアホを取り出した。そして、エミルは私のフェアホを覗き込んだ。
「え、1億9千万円て! それも、元々2億三千万円のもので、4千万円は返してる。どうやって返したんだ!?」
転生……? てことは前世があるのか!? とてもじゃないけど信じられない。
「なあ、前世なんてあるのか?」
嘘だろ! 2億三千万円のものなんて買った記憶も前世も全く覚えていない! どうしたらいいんだ!
「うん、あるみたいだよ。私は古代の記憶を思い出すことがある」
エミルは前世を信じているのか。
「カラルリ、よく聞いて。転生ローンは確実に存在していて、転生しても払い終わるまで催促が来るローンなんだ。だからニュースの緑風華だなんて何の意味もない。町役場で、その転生ローンの催促が事実か確認出来るから今から行こう」
セリルの言葉で私たちは制服のまま紅葉町役場へ向かった。
「確かに、催促通り2億三千万円のフェアリーフォンの指輪を購入し、四千万円を返されて残り1億9000万円ですね。三回転生して返済出来ない人が家を取り上げられている事例もありますので、お早い返済をオススメします」
そんな……1億9000万円だなんて……。
返す当てがない……。
私はその場に崩れた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
あとがき。
忘れた頃にとは言いますが。
転生ローンとか現実にあったら怖いです。
それに、せっかく記憶を失ったセナともう一度元の関係になれそうな時にミナクが現れるなんて、これって三角関係のはじまりでしょうか。
なかなか上手く行きませんねえ。
転生ローン、返せるのか!?
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この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
また、程度によりますが模倣はご遠慮願います。
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小説の無断転載もご遠慮くださいませ〜♪
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