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日常のこととかオリジナル小説のこととか。
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ashita
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性別:
女性
職業:
地主(土地貸してます)
趣味:
漫画やアニメを見るのが好きです。最推しはフーディーニ ♡
自己紹介:
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ブログ、もう書かないと思ってました。

けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。

小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。

純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。

元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。

ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。

小説、ぼちぼちマイペースに書いてゆきます。

よろしくお願い致します。

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お知らせ。

イラストは現在「ナノハナ家の日常」に載せております。サイドバーにリンクあります。

また、「カラクリよろずや」にて無料のフリーイラスト素材配布もはじめました✩.*˚

フリーイラスト素材も増やしていく予定です(*'ᴗ'*)

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模倣・無断転載などは、ご遠慮ください。

ブログの小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。

小説・純愛偏差値に関しましては、武家名・貴族名(程度による) / 及び、武官の階級 / 扇子・羽子板・花札・百人一首・紙飛行機などのアイテム使用方法の模倣の一切を禁じております。

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X @kigenzen1874

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〈資格履歴〉

2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
→漢方コーディネーター 合格
→薬膳調整師 合格

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〈資格証明バナー〉

鉛筆デッサンマスター®認定試験資格取得証明
絵画インストラクター資格資格認定証
宝石鑑定アドバイザー資格認定試験資格取得証明
鉱石セラピスト資格資格保持証明
茶道アドバイザー資格認定試験資格取得証明
お点前インストラクター資格資格認定証
着物マイスター®資格認定試験資格取得証明
着付け方インストラクター資格資格認定証
サイキックアドバイザー®資格資格証明
サイキックヒーラー資格資格保持証明
アンガーカウンセラー®資格資格保持証明
アンガーコントロール士資格資格認定証
漢方コーディネーター®資格認定試験資格保持証明
薬膳調整師®資格認定試験資格保持証明
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心からチームワーク 1話

《琉未》

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登場人物

桐島梨花(18)
物語の主人公。可愛らしく、クラスの男子に人気。

月城ハル(18)
梨花と同じクラス。女の子からかなりの人気。月城総合病院の御曹司。

東条琉未(18)
梨花の友達。ハルに想いを寄せている。

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1.まさかの光景


私は高校三年生。
卒業したら、もう制服は着られないけど、
私は進学する予定だから青春はまだまだこれからなのだ。

だけど、卒業する前にしなければいけないことがる。
それは、月城ハルへの告白。
私は、一年の時から月城君に想いをよせていた。
何度も告白しようと思ったけど、タイミングがつかめずで、今に至ってしまったわけだ。

だけど、今年以内に絶対告白してみせる!
そう胸に抱いていた。

月城君とは何度か話したことはあるが、残念ながら携帯のアドレスといったような個人情報は入手していない。
これも、何度も聞き出そうと思ったのだが、いつもいつも月城君の周りには女の子達でかこまれて、私の入るスキなんてこれっぽっちもなかったのだ。

私は教室に入り、机にカバンをおろした。

「おはよう、琉未ちゃん」
「おはよー、梨花。珍しく早いじゃん」
「えへへ、ちょっとね」

いつも、チャイムとほぼ同時に教室に入る梨花だが、何故か今日は20分も早く教室に入ってる。
まぁ、今はそんなことどうでもいいのだけど。
今はとにかく月城君にどうやって近づくかだ。
私はそんなことを、授業中ずっと考えていて、ノート、教科書は開いたままだけど、前で先生が話していることなんて一切耳に入らなかった。
それどころか、私はラブレターを書いていた。
本当は直接伝えることを前提としていたが、あまりグズグズしていると伝えるものも伝えられない。
そんな事思っていたら、私は無意識に机から便せんを取り出し、ラブレターを書いていたのである。
先生に見つからないように、ノートの白紙のページに便せんを重ね、その丁度上のあたりに筆箱を置いた。
日本史は先生が前に立って話しているだけで、
当たることはないからその心配はないけれど。
私は便せんに目を向けた。
ああ~、でもなんて書こうかな……。

頭の中で何度も試行錯誤を繰り返したが、文才のない私には良い文章は思いつかなかった。
相手に気持ちを伝えるときは、良い言葉より心、心だと思う。ということは頭では思うものの、私だって乙女心というものがある。
やっぱり、好きな人には少しでもよく思われたい。
しかし、どんなに考えても言葉が見つからない。
あ~、ダメだ。こうなったらもうこれしかない!
私は、必死の思いで便せんに手を滑らせた。

放課後のチャイムがなり、私は急いで下駄箱へ向かった。
月城君は部活があるからそんなに急がなくてもいいのだけど。私は一刻も早く月城君に気持ちを伝えたかったのだ。

偶然にも昇降口には人はほとんどいなかった。
恐らく他のクラスはまだHRが終わっていないのだろう。ラッキーと思いながら私は月城君の出席番号をさがした。
その時、私はあろう事か信じられないような光景を目にしてしまった。

梨花と月城君が手をつないで昇降口を出たのだ。
「どういうことなの……」
私は無意識にその場に崩れ落ちた。

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あとがき。

う~ん、なんともまぁ、ありがちな展開。
しかし、3年間も想い続けたのに、身近な友達が好きな人と付き合ってたなんて……。
青春まっただ中の琉未からしたら最悪の状況でしょうね~。

少々書き直し(殆どない)ありますが、これもひとつの作品なので、改めて書くことにしました。

心からチームワーク は、時間と時間を繋ぐ恋の物語の、梨花、ハル、琉未が繰り広げる世界です。

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この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
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純愛偏差値 未来編 一人称版 111話

《ナミネ》

『こちら、ブランケット家のズルエヌ。第5王子が脳死。今すぐ手術の必要あり。春風町の応援を要求します。20分45秒7524……が限界です。それを超えれば助かる見込みはありません』
アルフォンス王子が崖から転落し、命を彷徨う危機となった。
『こちら、春風病院。残念ながら、春染めの貴族を侮辱した者の応援には行けません。ご武運をお祈り申し上げます』
え、何それ。あの仲居って貴族だったの?でも、王族が命の危機に晒されているのに、たかがあんなこと1つで重症患者を見捨てるなんて許せない。
『崖登り係は、もう下りてきてくれるかな?オペはテントで行う。執刀医はシャム軍医。助手はナヤセス。ズームやミネス、エルナも手伝ってくれるかな?』
春風病院がありながら、テントでオペだなんて、全てあの仲居のせいだ。本当に人の命をなんだと思っているの。
『分かった。でも、言いにくいけど、成功率は20%を切ってる』
そんな……。もし、アルフォンス王子が助からなかったら……。
『そうだね。でも、それをやるのが医者の仕事なんじゃない?』
下では間もなくオペが行われる。けれど、受け入れ拒否の中、仲間内でオペだなんて納得いかない。私は皇室に紙飛行機を飛ばした。10分後、返事が来た。私は紙飛行機を開いた。
『春風病院と春染めを廃業とし、アーリアナは赤花咲に処する』
私は皇帝陛下からの文を写真に取ったあと、春染めの経営者とあの仲居、アーリアナさんに紙飛行機を飛ばした。
春風病院は紙飛行機を飛ばせる人がいないのか返事は来ないままだ。けれど、春染めもアーリアナさんからは返事が来た。
『アーリアナのせいで王子の命の危険に晒してしまい申し訳ありません。アーリアナはクビにし、直ぐに春風病院に掛け合います』
『どうか、赤花咲だけは許してください。春風病院の受け入れ拒否を取り消します』
人というのは、己の危機が迫れば他者に助けを求める生き物だ。ズルエヌさんが無線を寄越した時に受け入れてくれていれば、私とて苛立ちはしなかった。でも、もう遅い。私は返事の文を書いた。
『残念ですが、王子の命を捨てたあなた方には、それ相応の罰を受けてもらいます。春染めと春風病院は廃業。アーリアナさんは赤花咲。そして、春風町をなくします』
紙飛行機にして春染めに飛ばした。
この時、アヤナさんが現状を町中の人に言いふらし、混乱した町の人が、春染めと春風病院に石を投げたり、建物そのものを壊そうとクーデターが起きていることなど私は1ミリも知らなかった。
春染めから返事の紙飛行機が飛んで来たが、私は開かなかった。
『おい、ナミネ!早く下りてこい!』
『今下りるよ、ラルク!』
まさか、王室を敵に回すだなんて思ってもいなかった。いくらいやなことがあっても、人の命を捨てるような真似をするだなんて信じられない。
いい町なのに、1人の仲居が全てを台無しにした。
私はパラシュートを開いてヨルクさんを拾うと結界をかけて下におりた。
『アンタ、流石に横着し過ぎだろ』
他のメンバーは、まだ下りている途中なんだ。
「私、納得いきません!たかがあんなことの1つで人の命を見捨てるだなんて!」
本当に腹が立つ。
私はヨルクさんを連れてテントの中に入った。テントの中はズルエヌさんが書いただろうメモがたくさん貼られていて、アルフォンス王子はクッションの上でオペを受けている。でも、大量の血が流れるたびに、エルナさんやミネスさんは拭き取っている。
「じゃあ、君たちも消毒して、この服着て手伝ってくれるかな?」
白衣。シャム軍医のだろうか。私はアルコールスプレーで手を消毒し、雪山登山服の上に白衣を着た。
「はい。何をすればいいですか?」
「執刀医のシャム軍医に順序を正確に読み上げてくれるかな?」
ズルエヌさんは、私に訳の分からないメモを渡した。
「私がやります」
ヨルクさん……。
「ナミネは新しい布をミネスとエルナに渡して」
「分かりました」
カラルリさんは休んでいる。私はアルフォンス王子が出血するたびに、新しい布をミネスさんとエルナさんに渡した。
転倒した時に出来た脳の血の塊を数個取り除くだけで、こんなに難易度の高いオペを行わなくてはならないんだ。
その時、3人の部外者が入って来た。
「アーリアナを赤花咲にしてもらって構いません!どうか春染めを潰さないでください!」
「赤花咲だけは許して!本当に命の危機だと分からなかった!」
「春風病院の院長です。春風病院への受け入れを許可します」
この人ら何なの。そりゃ、1人の仲居の失態で、全ての仲居が職を失うのはかわいそうだけど、自業自得じゃない。春風病院も今頃来てももう遅い。オペはとっくにはじまっている。
私は3人をテントから追い出し、花札で拘束した。
「もう遅いです!春風町は潰れます!そこにいる馬鹿な仲居のせいで!そして、あなた方は王室を敵に回しました。そのうち、王室からの処分もくだされるでしょう」
3人の縋る声を無視し、私は再びテントに入った。
深く切除しているから、どんどん血が溢れる。このままではアルフォンス王子の命が……。
「私の血液を使ってください!」
アルフォンス王子とは正直仲良くはない。でも、目の前で命の灯火が消えそうな人を放っておけない。
「ナミネの決意は立派だけど、僕たちは僕たちのやり方でアルフォンス王子を助けようとしてるんだよ」
焦る私とはうらはらにズルエヌさんは冷静だ。
「そうですよね」
勝算があるのだろうか。
「この人らがアルフォンス王子を見殺しにしようとした人ね。何て汚い心の持ち主なの」
みんな下りてきたんだ。
「アルフォンスに何かあったら、王室で罰を受けてもらうわ!」
「己の心の弱さでアルフォンス王子様を見殺しにした皆さんが許せません!」
みんな怒っている。当然のことだ。緊急オペが必要な患者を無闇に見殺しにするのは、もはや人のすることではない。
「みんな、今はこの人らのことより、アルフォンス王子の無事のほうが肝心だよね。それに、元々はセルファが無理に洗濯させたんだよね」
やっぱり、ナルホお兄様は甘い。私は、春風病院が受け入れ拒否の時点で頭に血が登った。
「人を見殺しにするほどのことじゃないだろ!アンタ、皇室の罰受けろ」
「お願いします。助けてください!」
あの仲居さえいなければ、今頃は春風病院でオペを受けられていただろうに。人というのは、ひとたび不利な状況に陥れば、相手の心を殺そうとする。そして、今回は心のみに留まらず、命そのものを奪おうとしている。決してあってはならないことだ。
赤花咲は、正当な罰だと思う。
「あの、オペはあとどのくらいかかりますか?」
何となく長引きそうな気がする。
「そうだねえ。何とも言えないかな。ただ、ずっとここにはいられないから、オペが終わると春風町以外の病院に移す必要があるね」
確かに、ここにずっとはいられない。今すぐにでも安全な場所に行きたいくらいだ。
「じゃ、春風町の隣の灰色町の宿取る。甘えセナは、洞窟の途中まで、馬呼んどけ!」
灰色町。聞いたこともない。
「分かったわ。あと、シャム軍医が氷河期町から出ることの許可も皇帝陛下にもらう」
ナヤセス殿はまだ高校生だ。シャム軍医と、それほど年齢は変わらないとはいえ、経験が違う。シャム軍医には出来れば着いてきて欲しい。
崖登りも長く感じるけど、オペはそれ以上に長く感じてしまう。私は待ってもらうより、待つことのほうが辛い。マイナス50度の中、テントの中は温かいのが唯一の救いだ。
けれど、シャム軍医が汗を流しはじめた。その時、セナ王女がシャム軍医の隣に座ってシャム軍医の額の汗を布で拭き取った。
「シャム軍医、焦らないで。灰色町の病院の受け入れも確保出来たし、シャム軍医の同行も認められたわ」
セナ王女とシャム軍医の関係って、思ったより深いかも。かつて、カラルリさんがヤキモチ妬いていたっけ。
「ありがとうございます、セナ元帥」
何だか待っていられない。今日は、せっかく原石多く採取出来たのに、こんな事態になるだなんて。1つ700万円以上で買い取ってくれるなら、今日採取した分で足りるはず。あとは、アルフォンス王子の命だ。
「ナミネ、水分補給しようか」
ヨルクさんは、私にマグボトルを渡した。
「ありがとうございます、ヨルクさん」
春風町には、お茶の川がある。いい町なのになくなってしまうのは悲しいところ。町だけでも残せるよう皇室に掛け合うべきだろうか。悪いのは、春染めと春風病院なわけだし。その2つさえ排除すれば、春風町はこれまで通りやっていける。

「おい、強気なナミネ。移動だ」
落ち武者さんの声。私、寝てた?知らないうちに身体が横になっている。私はゆっくり身体を起こした。
「あの、アルフォンス王子は……」
「オペは成功だ。けど、意識はいつ戻るか分からない。最悪、延命治療になるかもね?」
延命治療!?そんなの植物状態と同じじゃない!でも、ここで命を落とさなかっただけでも、まだありがたいのかもしれない。
「今から、平凡アルフォンスを灰色町の病院に移す!」
「分かりました!」
みんなが準備出来たあと、テントはたたまれ、私たちは、春風町の3人を放置し、洞窟へ走った。
洞窟では、吹雪に晒されながら王室の馬がいた。私たちは馬に乗り、灰色町目指して駆け出した。
やっぱり、親衛隊の使う馬はスピードが出る。通常はギャロップしても、5分しか走れないらしいけれど、妖精村は皇室、王室、貴族が存在するから、特別な馬が存在しているのである。
春風町は一瞬で通り越した。あの仲居が問題起こさなければ、春風町にずっといられたのに。物事というのは、思い通りにはならないものだ。春風町がなくなるならと、落ち武者さんが馬の荷車に春風町で借りた自転車を積み込んでいるのである。
馬と自転車で繋げば、氷河期町には行ける。アルフォンス王子の受け入れ拒否で、私たちは手段を選べる状況にはないのだ。
え……。これが灰色町?その名の通り、建物から背景から全て灰色だ。こんな町が存在しているなんて。少し不気味だし、春風町のほうが和むのに。でも、今はそうも言ってられない。
私たちは、灰色病院まで馬を走らせた。
どこが民家で、どこが宿で、どこがカフェで……そういうのが全く分からない。
「みんな、ここだ」
ここ?まるで廃墟じゃない。私は駐車場に馬を止めた。ナヤセス殿はアルフォンス王子を背負っている。
「痛っ!」
そうだった。今は停電だから自動ドアが開かないんだった。私がコケた瞬間、受付の人が自動ドアを開けてくれた。
「無線で話したセルファ」
「セルファさんですね。中へどうぞ」
ここは、看護師や受付事務員の仕事着も灰色なのか。
私たちは、受付事務員に着いて行った。
月城総合病院に比べたら小さな町病院。けれど、王族ということもあり、アルフォンス王子は個室に案内された。
医師が駆け付け、レントゲンを撮ったあと、アルフォンス王子はベッドに寝かされ、点滴と酸素マスクが装備された。そして、シャム軍医は、アルフォンス王子から取り除いた血の塊を医師に見せた。
「資料も確認させてもらいましたが、氷河期町で事故を起こされたのですね。となると、転落した時に真っ先にぶつけたのは脳で、マイナス50洞窟という寒さが、出血元を瞬時に固めてしまったと思われます。レントゲンでは、血の塊は全て取り除かれ、手術自体は成功していますが、問題は患者のストレスですね。患者が目覚めないのは、ストレスが原因でしょう。長く目覚めない場合は、自分で呼吸する力がなくなり、機械で酸素を送り込むことになります。その場合、延命治療か否かをご家族で相談する必要がありますね」
手術は成功したのに……。この若さで延命治療だなんて、そんなの生きながらにして死んでるのと同じだよ。医師は、何かあれば呼び鈴を鳴らすようにと言い、部屋から出て行った。
「ここ広いから、しばらくここで寝泊まりする」
付き添いの人は、病院に残ることが出来る。と言っても、普通は、付き添い用の部屋で泊まるものだけれど、何も言われないならいっか。
「アルフォンス王子様、カナエが間違ってました。二度とアルフォンス王子様の手を離しません」
カナエさんは、突然アルフォンス王子の手を握った。変わり果てたアルフォンス王子には、二度となびかないと思っていたけれど、カナエさんなりに忘れられなかったのだろうか。私の知らないところで悩んでいたのだろうか。
「アヤネ、あなたがテントでトイレしていればこんなことにはならなかった。もし、アルフォンス王子の身に何かあればロリハー家は滅亡よ!あなたのお姉様も既に春風町の住人に詳細を聞いているでしょうね」
リリカさんはどこまでも厳しい。けれど、事実か事実じゃないかと言えば事実に近いかもしれない。
「どうだろうね。アヤネがトイレに行ってても、アルフォンス王子は転落していたと思うよ。春風病院から応援が来たとしても、時間はギリギリだっただろうね」
そうかもしれない。でも、1人の仲居に春風町全てを動かされ、こちらに不利な状況を与えられたことは、やっぱり納得いかない。こんなの、王室を敵に回したも同然じゃないか。
「どうして、いつも私なんですか!そもそも、仲居さんを侮辱したのはセルファさんでしょう」
紀元前村から拗れてしまったアヤネさんとの関係。今思えばアヤネさんは、貴族だからサバイバルに不慣れだったのかもしれない。心のどこかでは分かっていた。けれど、優しく教える余裕がなかったのもまた事実で、人間関係の築き方の困難さを痛感させられる。
「洗濯するって言ったのは仲居の意思だろうがよ!そんなに僕のせいにしたければ、アンタこれからは1人で何でもしな!」
結局、落ち武者さんも言い逃れ。人は、悪いことをした時ほどに、それを認めたくない生き物である。私もその一人なのだろうけど、心が狭くなって、その心にさえ入れなくなる状況なんて、好む人などいないだろう。
「アヤネ、アルフォンス王子様を返してください!」
カナエさん、少し前から様子がおかしい気がする。二度もパラシュートで下りていたし、本領発揮出来なくなっているのだろうか。
「アヤネもアヤネだけどさ。アルフォンスは登り続けたと私は思う」
人がいればいるほど、それだけの意見が溢れ、場は混乱する。
「セナさん。こんな時で申し訳ないんだけど、転生ローンを返し終えたら私と別れてほしい」
人というのは、どのような時も自分のことしか考えられない作りになっているのかもしれない。セナ王女の双子のアルフォンス王子の緊急事態に別れを切り出すカラルリさんが鬼に思えてきた。カラルリさんのために、みんなが力を合わせて原石採取してるのに。
「待って、カラルリ!二度とカラルリを苦しめない!カラルリが傍にいるだけで、それだけでいいと本当に気付かされたわ!もう一度チャンスをちょうだい!」
ミナクさんの心変わりで散々苦しんでからのカラルリさんとの復縁なだけに、この二人が別れてしまえば、二人には何も残らなくなる気がする。
「セナさん。もう付き合えないよ。気持ちがないんだ」
そりゃそうかもしれないけど、今言うことだろうか。
「そんな……カラルリのために、こうしてみんなが原石採取してるのに、ワガママ過ぎるわ!原石は渡さない。転生ローンは自分で返して!」
ほら早すぎた。別れを切り出すなら、転生ローンをゼロにしてからにすれば良かったのに。カラルリさんは何を血迷っているのだろう。
「それはないよね、セナさん。話が別問題だよ。転生ローンは返してもらう。セナさんからもらえなくても他の人からもらうから。ね?リリカ」
そこで、何故リリカさんに振る。
「え、ええ。元々カラルリさんの転生ローンを返すための原石ですので私が持っていても仕方ありませんし」
確かに、よく分からないブランドの原石だけを持っていても使い道なんてない。
「狡いわ!原石を私に渡さない者は氷河期町で一生を暮らしてもらうことになるわよ!」
そう来たか。いくら、武家の中ではカラルリさんが最年長でも、王族には勝てない。
「あの、せっかく採取出来たので二つだけ記念に持っていても良いでしょうか?」
この状況で何故ヨルクさんは話を変える。
「ええ、二つなら構わないわ。落ちてきたのを拾っても、それはあなたのものだから」
もう何の話か分からなくなってきた。
「ナミネ、頼む!私の転生ローンをゼロにしてほしい!」
いやな予感はしていたが、結局は私は使いっ走りなのか。
「アンタら、落ち着け!別れるも別れないも、後から話せばいいだろ!同じ学校通ってんだし」
そうだろうか。一方が別れたいのなら、希望は少ない気がするし、少なくとも、私がセナ王女の立場ならいやだ。めちゃくちゃいやだ。
その時、病院から無線が流れて来た。
『春風町にある、春染めの仲居の失態により、王室の第五王子が命の危機に晒され、春風町の抹消が決定しましたが、皇后陛下のはからいで、春染めと春風病院は、これまで通り運営することが許可され、仲居の追放のみの処分となりました。よって、春風町の抹消はなくなり、存続となりました。かつて皇帝陛下皇后陛下夫妻が訪れた歴史ある春風町がこれまで通り存在するのは村の人にとっても嬉しい話ですね』
皇帝陛下と皇后陛下って、春風町に行ったことあるんだ。もう、春風町に行くこともないだろうし、春染めがどうなろうと、春風病院がどうなろうと私には関係ない。けれど、かつてヨルクさんと春風神社に行ったことがあること、あのつがいになっている赤紫の桜と青紫の桜、やっぱり気にしてしまう。春染めの一人の仲居には迷惑かけられたけど、春風神社には何かある気がする。
「私、少しお手洗い行ってきます」
何だか、頭が痛い。
「ナミネ、私も着いて行く」
え、別にヨルクさんの付き添いなんていらないのに。
とりあえず私は部屋を出た。少し歩いたところに看護師さんがいる。
「あ、すみません。お手洗いはどこにありますか?」
通りかかった看護師さんに聞いたものの、みんな灰色の服着てると、建物と同化して見にくい。
「あ、それでしたら、病室にございますが、二階のでしたら、あの突き当たりを右に曲がったところにあります」
病室にあったのか。でも、部屋出て来ちゃったし、二階で済ませよう。
「ありがとうございます」
私はヨルクさんとトイレまで歩いた。
えっと、女子トイレは……。
「ナミネ、こっちだよ」
ヨルクさんは左を指さした。
「あ、ありがとうございます」
本当に左かは分からないけれど、私はとりあえず左に入った。お腹も痛いけど、生理は来ていない。疲労だろうか。明日は休めるよう落ち武者さんに話してみよう。長いサバイバルなのだから、その分の休みも必須だ。
トイレを出ようとしたら、セナ王女とシャム軍医がいる。何やら深刻そうだ。私は、しばらく様子を見ることにした。
「シャム軍医、ありがとう。あなたのおかげでアルフォンスは一命を取り留めたわ」
「いえ、医師しか僕にはありませんから。セナ元帥のお力になれたのなら何よりです。もし、僕が普通の男なら……普通の男なら、チャンスはあったのでしょうか?」
チャ、チャンス!?遠い昔のセナ王女は、シャム軍医には恋愛感情など抱いていなくて、ただカラルリさんのみだった。でも……。
「シャム軍医……。私、氷河期町で暮らしたって構わないわ。普通か普通でないかなんて関係ない。アルフォンスを救ってくれただけで感謝してもしきれないわ」
セナ王女はシャム軍医の手を握った。
「セナ元帥。今夜、付き添い用の部屋で二人になれませんか?」
「ええ、勿論構わないわ」
人は、ひとたび恋愛をすると女も男も豹変する。私はセナ王女がシャム軍医の頬に口付けするのをぼんやり眺めていた。

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あとがき。

もう古代編ではありません。
みんな変わってしまったんです。

時を経て、シャム軍医のセナへの想いが伝わり良かったですね。

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この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
純愛偏差値 未来編 一人称版 110話

《ヨルク》

朝が来た。
今日、私は氷河期町の崖を登る。昨日は、そのことでナミネと揉めてしまった。けれど、私だけ何もせず見ているだけは、心のどこかでいやになっていた。
出来るか出来ないかではない。私も、カラルリさんやアルフォンス王子のように挑戦してみたい。
「ねえ、ラルク。ここの朝食美味しいよね」
確かに、停電真っ只中なのに、こんなにたくさんの凝った料理を作れるのは珍しい。
「そうだな。紅葉町では食べられない味だろうな」
あの後、結局祭りを楽しむことは出来なかった。その前にナミネが私を突き飛ばし走って行ったのである。市場では色々買ったけれど、ナミネに何も聞かず勝手に色々買ってしまったからナミネは必要としないかもしれない。落ち武者さんは、氷河期町で食べる用にすればと言っていたけれど、もうそれでいいだろう。
みんな真剣な表情だ。昨日、登りきったのは、ナミネとセナ王女、ラルクだけだから。
「あ、そういえば、アヤネさんのお姉様、春風町にいましたよ」
何となく、アヤネさんの表情が強ばった気がする。
「そ、そうですか」
「せっかくいるのですし、お会いになったほうがいいのでは?」
「いえ、その必要はありません」
あまり仲良くないのだろうか。
アヤナさんのほうは、アヤネさんと違って気作な人だったな。
「その汚れた雪山登山服で行くのかしら?いっそ、お姉様に助け呼びましょうか?」
どうして、リリカお姉様はここまでアヤネさんに突っかかるのだろう。
「やめてください!姉とは随分会ってませんし、実家とも疎遠です!」
やっぱり、あまり仲がいいわけではなさそうだ。
「でも、そのままでは臭うし、変えもないなら、こっちが迷惑するわ」
そう言うとセナ王女は、使用人を呼ぶかのように仲居さんを呼んだ。王女だからと言って、仲井さんも、下べのような扱いをされるのはいやだろう。
「はい、お呼びでしょうか」
ここの仲居さんの着物は艶やかだな。いつも、クレナイ家の使用人の着物しか見てなかったから、つい比べてしまった。
「仲間が服汚したんだけど、洗ってくれないかしら?」
「そういうのは、こちらでは受け付けておりません。タライをお貸ししますので、そちらでお洗ください」
やっぱりそうなるよな。仲居は使用人の仕事などしない。宿も本来、客が泊まる場所だし。
「なあ、アンタ。氷河期町のシャムに惚れてんだろ」
落ち武者さん、また知らない人に喧嘩売ってる。
「氷河期町には行ったことはないですが」
この仲居さんもシレッとしてるなあ。
「ふぅん。じゃあ、この写真も手紙もアンタのじゃないんだ。じゃ、持ち主探すため春風町中回る」
何故いつもいつもそうやって無理矢理人を動かそうとするのだろう。
「やめてください!返してください!」
「だったら、洗え!こっちは、バイトで忙しいんだ!暇なアンタと違ってな!」
もうっ、落ち武者さんのせいで、仲居さん泣いちゃったじゃない。
「落ち武者さん、そういうのよくないよ。仲居さんは使用人じゃないんだから」
「こうでもしなきゃ誰も洗わないだろ!人見下しアヤネの臭いにとっととケリ付けたいんだよ!」
ため息が出てしまう。汚してしまったなら仕方ないし、アヤネさんもアヤネさんでトイレ用のテントに入ってくれれば……。とにかく、こちらの問題を他所に押し付けるのは好かぬ。
「分かりました……」
仲居さんは、泣きながら放置していたアヤネさんの雪山登山服を手に持ち部屋を出て行った。なんだか、気分が悪い。
せっかく泊まった宿なのに、これではメンバー全員が悪印象になってしまった。
「じゃ、今日は人見下しアヤネはお留守番ってことで」
雪山登山服がないのなら行くに行けない。あのような寒いところ、防寒具なしでは命を落としに行くようなものだ。
「私も行きます!」
そうは言っても服はどうするのだろう。
「アヤネ、あなた無茶振り過ぎるわ。さっきだって、仲居に嫌われるような真似して本当気分が悪い」
「カナエも同類だと思われるのは心外です」
朝からまた揉めごと。いつものこととはいえ、見知らぬ仲居さんを巻き込んでしまったのは私もいい気にはなれない。
「へえ、本当にいたんだ」
アヤナさん。来るとは思ってなかった。
「本当だあ。久しぶりだね〜アヤネ」
「お姉様……」
またアヤネさんの顔色が悪くなってる。
「アヤナ?相変わらずね。今も社交界行ってるの?」
そうか。牡丹町は王室のあるところだ。顔見知りでも何ら不思議ではない。
「セナ王女、お久しぶりです。ええ、頻繁に参加しています。牡丹町は停電になっても、政府が優遇してくださるので、いつもと変わりない暮らしをしております」
貴族は今でも特別扱いなのか。氷河期町の住人は、日々暮らしに困っているというのに。裕福な人ほど優遇されるのは、理不尽にも感じる。
「そうよね。私も王室にいた頃は何不自由ない暮らしだったわ。でも、私はスポーツが好きだから、こうやって冒険してるの」
セナ王女の力量はスポーツという言葉では収まらないだろう。
「そうでしたね。セナ王女はフェンシング大会でも常に一位でした」
貴族の間でも、そういうイベントがあるのか。
「話の途中悪いんだけど、アヤネのお姉様。アヤネが雪山登山服汚して無理矢理ここの仲居に洗わせたんです。それだけでなく、別荘があるのに武家の家に泊まっては何もせずで迷惑しています」
やはり、リリカお姉様は主張するか。アヤネさんが引っ越してきた時は、リリカお姉様もカナエさんも仲良くしていただろうに。
「あはは、やっぱりどこでも役立たずね、アヤネは」
笑うところだろうか。
「アヤネは不器用だからね〜」
「あの、私、今日も氷河期町に行きたいです!」
今それを言うところだろうか。
「馬鹿ね、そんな格好で行けるわけないじゃない。アヤネはここにいなさい」
アヤナさんって、どんな人なのだろう。
「でも、アヤネって紅葉町でやっていけてるわけ?」
この3人はアヤナさんと特別親しい間柄だろうか。
「去年は、カナエと同じクラスでした。今年もですが、クラスにはあまり馴染んでいません。友達もカナエたちのグループのメンバーだけだと思います」
そういう人もたくさんいると思う。現に私もそうだし。友達などいなくても人は生きていける。
「あー、アヤネらしいねえ」
何だか、この人天然だな。アヤナさんと仲がいいのは不自然とまではいかないが、他のグループにいたほうが合っている気もする。
「結局、紅葉町でも自分からお友達作れないのね、アヤネは」
「お姉様には関係ないでしょう!また、お金借りに来たんですか?」
お金?アヤナさんは、いつもアヤネさんにお金を借りているのだろうか。
「あー、それなら、アヤネの宝石売ったから足りてる」
「宝石ってどれですか?」
なんというか、人のものを勝手に売るなんて、ちょっと強引だな。
「あの動物の宝石よ」
その瞬間、アヤネさんはアヤナさんを引っぱたいた。
「どうして!あれは私がとても大切にしていたものだって、お姉様も知っているでしょう!」
「アンタ、やめな。宝石ならまた買えばいいだろ。じゃ、他のメンバーはそろそろ行くぞ!」
このまま、アヤネさんを置いていっていいのだろうか。
考えている間にアヤネさんは、部屋中のものを投げ、暴れはじめた。リリカお姉様がアヤネさんを掴もうとした時、アヤナさんがアヤネさんを引っぱたいて、アヤネさんは床に飛ばされた。
今、ビュンって音した気がする。
「やめなさい。ここは宿よ。言いたいことがあるなら言葉で言いなさい!」
アヤナさんの気迫にリリカお姉様も驚いている。この2人はいったいどんな姉妹なのだろう。
「タイミング悪いし、あまり言いたくないんだけど、雪山登山服あるよ。色んな宿に泊まっていった人が亡くなって運ばれて来て、今なら宿にあると思う。でも、宿の人も迷惑だろうから、そのうち処分はするだろうけど」
そうか、そういうルートがあったか。気味が悪いけど、どうしても行きたいなら死者のを使うしかない。
「使います!」
アヤネさんはゆっくり起き上がったが、またアヤナさんがアヤネさんを引っぱたいた。

あれこれ揉めているうちに40分経ってしまった。落ち武者さんが部屋を出はじめ、アヤネさんは慌てて仲居さんに、宿に保管している氷河期町へ行って生きて戻って来なかった人の雪山登山服を借りて、みんなで自転車に乗った。そもそも、訳ありとはいえ、たくさん雪山登山服があるなら、仲居さんに無理矢理アヤネさんの洗わせることなかったのでは。
アヤネさんだけ、skyグループの貴族カー乗っている。
借りて来た自転車は、やっぱり、あるとないとでは全然違うと思う。洞窟を進むスピードが昨日とは全然違う。
歩きでは40分はかかったと思うけれど、自転車だと15分で氷河期町に着いた。
今日は、私も頑張る。
ズームさんとミネスさんは、早速テントを張った。
「じゃ、登る」
いよいよ、原石採取に向けての試練だ。
「ヨルクさん、無理しないでください」
心配そうに見つめるナミネの頭を私は撫でた。
「大丈夫だからね」
そして、みんなが見守る中、私たちは崖の下に立った。
やっぱり、1番早いのはセナ王女。ナミネとラルクも昨日でコツを掴んだのかスイスイと登って行っている。私も頑張らなくては!とは思えど、足の踏み場が分からない。
その時、カラルリさんとアルフォンス王子が登りはじめた。一日でコツを掴むなんて……。何だか心が狭まってきた。ナミネのためにも強くなりたいのに、ラルクやミナクお兄様のように私は武士向けではない。
立ち往生しているだけでも猛烈に寒いし、判断力が鈍ってしまう。私は何度も何度も挑戦した。
『みんな、途中から昨日と踏み場が違っているわ!気を付けて!』
セナ王女からの無線。踏み場が変わっている?それじゃあ、まるで蓮華町の果樹園の崖ではないか。
『そうだねー!故意に誰かが変えたんじゃなくて、吹雪によって削られてるんだよ。今日は500m先からは60.5075……cm置きだね』
吹雪が削る。そのようなことが現実にありうるのか。そもそも、500m登っても、まだ先があるのか?とにかく私も登らなければ。
あれ、下で立ち往生している人が何人かいる。この人たちもチラシを見て、ここへ来たのだろうか。
『ヨルク、50.6342……cm右にズレようか』
右にズレる?よく分からないけれど、とりあえずズルエヌさんの指示に従った。
「分かりました」
あれ、踏み場がある。けれど、セナ王女からの命綱はしばらく届かない。自力で登るしかない。
えっと、ここに来たのが11時で、現時刻は13時!?
『ヨルクさん、誰かが落ちても助けないでください!』
ナミネからの無線。
『ヨルクは大丈夫よ。ナミネはナミネのことに集中して!』
リリカお姉様はナミネの負傷を避けたいだろう。
『そうよ!アルフォンスなんて小さい頃、何度も怪我してるし、案外何とかなるものよ』
セナ王女は慰めているのだろうか。けれど、少し登れた。少しなのに下は全く見えない。もうサバイバルなんてレベルではない。
『カラルリ、パラシュートで下りようか。それじゃあ、僕はトイレ行くね』
下りる?何か問題でもあるのだろうか。けれど、カラルリさんは下りて来ない。
「あの、カラルリさん下りて来ません!」
『カラルリ!下りて!!』
セナ王女は叫んだ。これでは、みんながカラルリさんに気を取られてしまう。
「ズームさん、カラルリさんは今どの辺か分かりますか?」
ズルエヌさんがいないならズームさんに聞くしかない。
『僕から見たら約200mですが、兄さんは違う答えだと思います』
『320mじゃない?』
ズームさんとミネスさんの意見だけでも異なっている。どちらにしても、そんな高いところから落ちたら命の保証がなくなる。ただでさえ、下は氷の塊なのに。
「そうですか……」
『もう間に合いませんのでクッション置きます!』
え、カラルリさんが落ちてしまう!?何故、ズルエヌさんの指示に従わなかったのだ。
『お兄ちゃん!知らない人がどんどんクッションの上に乗って、このままだとカラルリとぶつかっちゃうよ!』
クッションがなければ氷に体当たり。けれど、そのまま落ちても人とぶつかり、どちらかが命を落とすかもしれない。究極の事態だ。
『お兄様!カナエが今行きます!』
どこにいるかも分からない人を助けるなんて無理だ。
『カラルリさん、今ワイヤー飛ばしますよー!絶対に掴んでください!』
『でも、お兄ちゃん、それ一度きりだよ』
一度きり。だとしたら、他に踏み場を外した人がいれば助からない可能性もある。でも今はカラルリさんの命が優先だ。
『ミネス!今はカラルリさんを救わなければならない!』
クッションを見ず知らずの人が乗らなければ、そのまま下りてこれるのに。何故、他所のアイテムを使ってまで登ろうとする。それも登れてないし。
私は今どの辺だろう。それさえも分からない。
『カラルリさんは無事救出しましたよ』
良かった。無事で良かった。
『ネコ団子妖精を充電しないと!』
何だそれは。それもskyグループの製品なのか?
つまり、ネコ団子妖精とやらがワイヤーを持って行って、それでカラルリさんは助かったということなのだろうか。
『分かってる!クッションがダメになった以上、ネコ団子妖精に頼るしかなかった!』
助かったのは良かったが、ネコ団子妖精が救ったのなら、二度目はない。
『一目惚れカラルリ!アンタ休んでろ!』
『分かった……』
その時、セナ王女の命綱が飛んできた。
『セナ、頂上到着しました!』
え……。命綱が大きく揺れている。下にいるだろう人がセナ王女の投げた命綱掴んでる?命綱とは言え、落ち武者さんが突然言い出したことだから、金具もベルトもなく、ただ、下ろされたロープを掴むだけなのに。そのロープを離してしまえば終わりだ。
『セナ王女!命綱、下にいる人が掴んでます!』
『本当、うっとうしいわね!命綱切るわよ!』
聞こえているだろうか。
『命綱を切るそうですよ。人のもの勝手に使うのよくないですよね』
『命綱切るなんて殺す気かよ!』
図々しい人だな。こっちは、極力万全の装備で来たのに。
『君たちがここに来て約1時間半。そろそろ心臓止まるよ?』
『こちらナヤセス。14人の患者に応急処置をした後、春風町に運びます!』
ナヤセスさんが、ここから席を外してしまう。
『ミネス!シャム軍医呼んでこい!』
『分かったよ』
下ではかなりバタバタしている。ナヤセスさんの代わりにシャム軍医が来てくれれば何かあっても応急処置はしてくれるだろう。この町には病院はないのだろうか。
『ナミネ、頂上到着』
『ラルク、頂上到着』
やっぱり、2人には適わない。情けないけど私は向いていない。お飾りの武士だ。けれど、今雑念は死と隣り合わせだ。集中しないと。下は下で医師免許のあるナヤセスさんが診ている。シャム軍医も来る。
『skyグループのスコップ、使いやすいわ!原石2つ取れちゃった』
私も辿り着きたい。
『シャム、到着。患者の容態はレベル3。今春風町に連れて行けば間に合うよ。でも、僕はこの町からは出られないから、荷車でナヤセスが運んでくれるかな?』
『ここに、エアー・F・ブランキーがあるので、ローカハリ武官が運んでくれませんか?』
エ、エアー……?skyグループは本当に様々な最先端のアイテムを開発しているんだな。
『分かりました』
てか、シャム軍医って医師免許あるのだろうか?
「あの、シャム軍医って医師免許はあるのでしょうか?」
『ヨルク!いい加減、集中しろ!』
ミナクお兄様に指摘されてしまった。
『僕は遠い昔に軍医をしていて、転生後も軍医をした場合、軍医の資格が与えられるんだよ。12歳の時、この町で小さな戦があって、その時に負傷者の治療したから、医師免許はちゃんとあるよ』
そうなのか。みんな、手に職あるんだなあ。私ももう一度、手話の勉強をしなくては。
『シャム軍医は、今も医師なのですな。月城総合病院で働いていたら活躍するでしょうに。勿体ない』
シャム軍医は、ハンサムだし医師免許もあるし、紅葉町にいたら幸せに暮らせるだろう。
『ナナミ、頂上到着』
『リリカ、頂上到着』
『ナルホ、頂上到着』
今日は昨日と違って、3人も多く到着している。途中から踏み場が分からないのに。
私だけ……私だけが……。ダメだ。今弱気になっては、いつ足を踏み外すか分からない。
『セルファ、頂上到着』
落ち武者さんも……。
『カナエ、下ります』
カナエさんが?昨日もパラシュートで下りていた。どうしたのだろう。カナエさんらしくないというか、上手く言葉に出来ないけど、カナエさんなら、頂上まで行けると思っていた。
『ラルク、小さいけど原石あるね』
『深いとこにあるみたいだな』
ナミネとラルクの会話を聞いていると胸が痛む。
『アルフォンス、下りてー!』
ミネスさんの無線。なんか、そこそこ登ったのに、下りるもの、それはそれで悔しいものがあるかもしれない。さっきのカラルリさんがそんな感じだったように。
けれど、アルフォンス王子も下りてくる気配がない。
「あの、アルフォンス王子、下りてきません」
『そりゃ、ヨルクのほうが上にいるからねー!でも、その先、ズルエヌの言ってたように登りにくいよ?』
アルフォンス王子より上にいる?私が?それを聞いただけで、自分はそこまで出来ない人じゃないって思えたかもしれない。アルフォンス王子より出来るとかじゃなくて、自分自身に自分なりの力量があるんだって確信できるから。
「アルフォンス王子は今どの辺にいますか?」
『300mだと思います。クッションは置いていますが、出来ればパラシュートで下りてきて欲しいです』
その高さだとパラシュートで下りないとクッションに落ちられなかったら命を落とすかもしれない。
『違うね。257.6845……m。写真見る限り、カラルリは157.4524……m』
ズルエヌさん戻って来たんだ。
『どちらにしても、そこからクッションに落ちてもクッションも石のようなものだから怪我をしてしまう。アルフォンス王子、どうか降りてほしい!』
シャム軍医は、経験者だ。色んな患者を見ている。クッションが石なら、アルフォンス王子の意思で下りないと。
『ミナク、頂上到着』
これで、私とアルフォンス王子だけだ。それもアルフォンス王子は下りないといけない状況。
『アルフォンス王子、命綱投げます!』
それを掴んだとしても宙に浮いていたら体力が持たない。
『ナミネ、10.5846……mズレてるよ』
命綱といっても、こんな猛吹雪では何も見えない。
『アルフォンス王子!下りてください!』
ナミネは叫ぶものの、アルフォンス王子からの応答は何もない。
『ズーム!今すぐクッションを右58.6724cm移動して!』
『兄さん、間に合いません!』
何が起きたのだろう。まさか、アルフォンス王子の身に!?
少しの間、沈黙の時間が続いた。
『こちら、ブランケット家のズルエヌ。第5王子が脳死。今すぐ手術の必要あり。春風町の応援を要求します。20分45秒7524……が限界です。それを超えれば助かる見込みはありません』

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あとがき。

紀元前村の時と同じですね。
アルフォンスの遠い昔の力量はどうしたのでしょう。

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この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
純愛偏差値 未来編 一人称版 109話

《ナミネ》

夢を見ていた。けれど、どんな夢だったかは覚えていない。
私、眠っていたのか。横ではラルクがまだ眠っている。こんなふうに、一緒に寝るのはいつぶりだろう。
私は布団から出た。
「今、何時ですか?」
「ナミネ、起きたの?19時半過ぎだよ。もうすぐ、料理来るからね」
1時間ほど寝ていたのか。けれど、外はまだ明るい。
「はい」
一日でドッと疲れた。けれど、転生ローン分は稼がないと。
「自転車、借りてきた」
誰が借りて来たのだろう。
「ありがとうございます。どなたが借りて来たのでしょうか?」
まさか、アヤネさんなんてことないよね。
「人見下しアヤネと、エルナとナヤセス」
アヤネさん行ってきたんだ!何か意外だ。
「そ、そうですか」
その時、夕飯が運ばれて来た。
雑穀米に吸い物、たまご巻き、刺し身。いかにも、田舎料理という感じだ。お昼食べていなかった私は、夕飯を食べはじめた。
「ナミネ、もう少しゆっくり食べて」
ヨルクさんは、体力消耗していないだろうけど、私はめちゃくちゃ消耗した。
「ヨル……お……空いて……みゃ……」
「ナミネ、何言ってるか分かんない。そんなに焦って食べると喉詰まらせるよ」
そうは言えども、崖登り係の殆どは、急いで食べている。よっぽど、お腹空いていたのだろう。
ラルクが起きてきた。
「ラルク、夕飯来てるよ!」
「ああ、食べる」
ラルク、顔色良くなってる。明日も、みんなで登れるかな。
「ナミネ、中トロ好きでしょ。あげる」
ヨルクさんは、私のお皿に中トロを乗せた。
「ありがとうございます、ヨルクさん」
私は、夕飯を全てたいらげた。
「アンタ、食べるの早すぎだろ」
「お腹空いてました」
一日がかりの労働は、こうもお腹が空くものなのか。
「甘えセナ。アンタ、頂上着いたら、崖登り係全員に命綱投げろ!」
そうか。それなら、効率良くなるかもしれない。頂上には、太い木いっぱいあったし。
「分かったわ」
これで、アルフォンス王子とカラルリさんも自信を付けられたらベストだ。あれ……何だか臭う……。そっか、アヤネさん服汚してたんだった。思い出すと今になって吐き気がしてきた。
「アヤネ、汚した服は自分で洗ってください!みんなの迷惑です」
そもそも、汚したのに、どうしてそのままにしておくのだろう。
「仲居さん呼べばー?」
ここは宿で、あくまで泊まるところだ。仲居さんは女中ではない。
「いや、しかし、ここ宿ですし、そういうのはセルフサービスだと思います」
流石に、使用人の真似ごとはさせられないだろう。
「アヤネ、タライで洗ってください!」
カナエさんが、しつこく主張するのは珍しい。
「でも、私そんなこと出来ません」
は?何それ。汚したの他でもないアヤネさんではないか。自分のは自分で洗うのが当然だろ。
「じゃ、何も出来なかった一目惚れカラルリが洗えば?」
「分かった」
カラルリさん、すっかり自信なくしちゃってる。
「お兄様を利用するのはやめてください!」
流石に、兄弟が使われるのはいやだよね。私だってナヤセス殿に命令されたらいやだ。
「あの、カラルリさん。明日はセナ王女が命綱投げてくれますし、もう少し自信持ちませんか?」
せっかく、みんな協力しているのだし、カラルリさんには、もっと堂々としていて欲しい。
「言いたいことは分かる。けれど、私は無力なんだ」
無力って。挑戦していただけマシだと思うけど。
「あ、でも、ヨルクさんなんて何もしてませんし」
登れなくてもカラルリさんはマイナス50度の中にいた。
「ねえ、それどういう意味?私はナミネが心配で着いてきたの!あのまま紅葉町に残ったら自分が自分でなくなると思ったから!」
言葉が悪かったか。物の例えのつもりが、ヨルクさんは直ぐにカッカする。
「あ、そういう意味ではなくてですね。カラルリさんは、ちゃんとチャレンジをしたということを言いたかったわけで……」
言葉って難しい。何気ないものでも人を傷付けてしまう。
「それって、私は何もしてない、ぬくぬくしたテントにいてたってことでしょ?馬鹿にしないで!」
ヨルクさんは立ち上がり、部屋を出ようとした。
「待ってください!私、ヨルクさんのこと馬鹿にしていません!行かないでください!」
ヨルクさんの袖を掴んだものの、ヨルクさんは振り払い部屋を出て行った。
「ヨルクさん!!」
私は慌てて追いかけた。

え、まさかの王室の馬使う?そこは自転車じゃないの?私も王室の馬に乗った。あれ、どうして追い付けないのだろう。
「おーい!ここ馬は時速5キロだよ!」
見知らぬ声が耳に入った。
時速5キロって。そんなスピードだとヨルクさんに追い付けない。
そういえば、ヨルクさんの乗った馬、仮面被いていた。隊長が使う馬だ。つまり、セナ王女が乗って来た馬というわけだ。
「ヨルクさん、止まってください!」
その時、春風町の交番の人が道を封鎖した。
「では、2人とも下りてもらいましょうか」
私とヨルクさんは、王室の馬を連れて春風町の交番に向かった。

この町は、やはりどこも古風だ。
「どうして法定速度を守らなかったんですか?」
法定速度。町によって違うだなんて知らなかった。
「あの、私は紅葉町から来たんですけど、そういうの全く知りませんでした」
これで、帰りは歩いて帰らないといけないわけか。どの辺まで来たかも分からない。けれど、何気にこの辺は賑わっている気がする。
「では、ここに住所と名前を書いてください」
身請け引受人とかいらないのだろうか。とりあえず私は、書類に住所と名前を書いた。
「あの、これだけで帰れるのですか?」
「はい。どこかの企業が募集している原石採取で、あなたたちみたいな人、今多いんですよ。次は法定速度は必ず守ってください」
やっぱり、他にもあのバイトで来てる人いるんだ。
「あ、はい、分かりました。あの、この町って宿はどのくらいありますか?」
私たちが泊まっている宿以外に、バイトの人が泊まっているのだろう。
「3km置きにはあるので、潰れていないのも含めたら35個はありますね」
そんなに!?この町は温泉の町なのだろうか。
「多いですね」
「その分、氷河期町での死者の埋葬の応援依頼も引き受けないといけませんがね」
あのバイトは殆どの人が失敗に終わっている。シャム軍医に言われなければ、400m先に住人の家があるとか全然分からなかったし。分からないから、みんな春風町の宿に泊まっているのだろう。
「そうですか……悲しいですね」
素人が手を出すバイトではない。けれど、人というのは欲深い生き物で、今より裕福にと一発逆転を狙う人もそれなりにいる。一発逆転なんて出来たら努力なんてする必要ないのに。人というのは努力知らずだ。
「では、住人の迷惑にならないよう帰ってくださいね」
ヨルクさんを連れて帰らないと。
「はい。ご迷惑をおかけしました」
私はヨルクさんの手を引っ張り、交番を出た。
すると、市場で祭りが行われていた。
「ヨルクさん、祭りですよ!少し見ていきませんか?」
「いい」
私の一言でヨルクさんの人間性を否定することになるとは思ってもいなかった。私の落ち度だ。
「ヨルクさん、すみませんでした。私は、ヨルクさんに強さなんて求めてません。いつも美味しい料理を作ってくれて……」
「それ、いつものテンプレだよね。心の底では私のこと見下してたんでしょ」
ダメだ。今のヨルクさんには何を言っても届かない。祭り、見に行きたいけど、ヨルクさんのことを思うと、このまま帰るしかない。
「アンタら、何してんのさ。交番から無線入って来たんだぞ」
落ち武者さんとラルク。
「すみません。ヨルクさんが王室の馬飛ばして町走ってたら、交番の人に引き止められました」
あれ、スケボー?ここスケボーも借りられるんだ。
「ナミネ、祭りだな。見てくか」
「そうしたいんだけど、ヨルクさんの様子が変だから、このまま連れて帰らないといけないんだよね」
せっかく浴衣も着てるし、祭りに行くには条件が揃っているのに。
「顔だけヨルクは、僕が宿に連れてくから、アンタらは祭り行ってこい」
でも、ヨルクさんが心配だ。
「あ、でも、ヨルクさんが……」
「ナミネ、こんな機会滅多にないし、ヨルクお兄様は落ち武者さんに任せようぜ!」
ラルクは心配じゃないのだろうか。でも、確かにせっかくの機会だし、ヨルクさんのことは落ち武者さんに任せようかな。
「そうだね。浴衣も着てるし、祭り行くよ」
私は、ラルクと手を繋いだ。が、ヨルクさんがそれを振り払った。
「こういうことしないで!私も祭り行く!それから、明日は私も登るから!」
え、今なんて行ったの?ヨルクさんも登る?そんなの無理だよ。私がそうさせてしまったのだろうか。そもそも、ヨルクさんは何をそんなに焦っているのだろう。
「ヨルクさんは登らないでください!ズルエヌさんのアドバイスで明日は崖登り係は登り切れると思います!」
ヨルクさんには、危ないことしてほしくない。安全な場所で私を見守っていてほしい。
「また私を馬鹿にするの?」
ヨルクさんを怒らせてしまった手前、何だかもうめんどうになってきた。
「アンタ、何をそんなに苛立ってんのさ。強気なナミネは、家庭感あるアンタが好きなんだよ!無理してるアンタなんか好きじゃないと思うけどね?」
本当にそう。私は家庭的なヨルクさんが好きだ。きっと、大昔もそうだったのだろう。
「ナミネ、行くよ。ほしいの選んで」
私はヨルクさんに手を引っ張られ、市場の中に入って行った。

市場の中は、屋台で賑わっていた。
「あ、さっきのお姉さんたち」
祭り来てたんだ。
「あら、露天風呂の」
今日は特別な日なのだろうか。
「あの、今日は何のお祭りですか?」
お姉さんたちはクスクス笑った。
「この町の市場はね、週に一度、祭りが開かれるのよ」
週に一度!?紅葉町ではありえない。でも、いいな。そんな頻度で祭りを楽しめるなんて。春風町は、紅葉町から遠いから、あまり来れないと思うし、ほしいのは買っておこうかな。
「イベントな町ですね。紅葉町はそういうのではないから羨ましいです」
市場も、とても広い。紅葉町の普通な商店街とは大違いだ。
「遠くから来たのなら尚更楽しんでいって」
「はい!」
ふと横を見るとアヤネさんがいた。
「アヤネさん?」
私は思わず声をかけた。
「おしい!アヤナよ」
あ、違ってた。
「すみません、間違えました」
高価な宝石とか身に付けているけど、観光で来たのだろうか。
「でも、妹の名前はアヤネだけどね」
え、それじゃあ、もしかして、アヤネさんが言ってたお姉様なのだろうか。
「あ、その人は紅葉町の別荘に住んでますか?」
「ええ、そうよ」
「だね〜!人見知り激しいのに1人で引っ越したのビックリした〜!」
それじゃあ、やっぱりアヤネさんのお姉様……。
「そのアヤネってコイツかよ?」
落ち武者さんは、アヤナさんに携帯の画像を見せた。
「そうそう、この子」
「へえ、アンタら全然似てないな」
確かに、髪の色と長さや背格好は似ているけど、顔は似ていない。アヤナさんは、どちらかというと奇抜というか、着飾らないアヤネさんに比べて派手だ。
「あの、アヤネさんなら、私たちと一緒に来てます。春染めと言う宿に泊まっています」
会っていくだろうか。
「ふぅん、あの子友達いるんだ」
向こうでは、友達付き合いしていなかったのだろうか?
「はい、アヤネさんは私の幼なじみと同い年でして、学校ではみんなでお弁当食べてるんです。今は私の家にいます」
そう……アヤネさんとは、それなりに付き合いしてきた。私は多分、今になってアヤネさんに素っ気なくしていたことが引っかかっている。
「意外ね。引っ越し先でも人間関係なんて築いてないと思っていたわ」
そっか。アヤネさん、人付き合い苦手なんだ。もう少し優しくするべきかな。
「アヤナー!行くよー!」
あ、話し込んでたかな。
「それじゃあ、この辺で」
「あ、はい。良かったら、春染めに来てください」
行ってしまった。
ユメさんやアヤネさん、セナ王女、アルフォンス王子、カラン王子って、よく考えると都会から田舎に引っ越し出来たんだな。別荘暮らしだから、家族のこと何も知らなかったけど、アヤナさんに会って、アヤネさんにもちゃんと血の繋がりのある家族がいるんだなあと実感させられたと思う。
「ナミネ、どれがいいの。早く決めて」
怒ってるヨルクさんと一緒にいるのは、やりにくいものがある。
「え、えっと……」
ダメだ。急かされると余計に決められなくなる。
あれ、赤紫の桜?ストラップがあるってことは、どこかに咲いているのだろうか。私が、つがいになっているストラップを手に持ってると、ヨルクさんは何も言わずに、それを買った。その後もヨルクさんは、私の好きそうなものを次々に買って行った。
これじゃあ、楽しめないよ。こんな気持ちで祭りだなんて、気分があまり良くない。
「すみません、気分悪いので宿に戻ります」
私は、馬を置いてきた空き地へ行こうとした。すると、ヨルクさんに腕を掴まれた。
「待って!」
「ヨルクさん、ずっと怒ってるじゃないですか!こんなの楽しくありません!勝手に祭り楽しんでください!」
私は、ヨルクさんを突き飛ばした。

走り続けた先にあったのは、大きな神社。人もたくさんいる。けれど、何かがおかしい。私が見ているのは、全体的に色褪せた世界で、それなのに桜だけは、あの市場で見たストラップのような鮮明な赤紫だった。
私は、神社の中に入っていった。すると、ヨルクさんがいた。思わず、声をかけようとしたら、古い私がヨルクさんの隣にいた。

いつの時代の私か分からない。けれど、ヨルクさんと手を繋ぎながら微笑んでいる。
『ナミネ、春風神社は春風様が現れた時だけ社務所があいてるんだよ』
そう言うと、ヨルクさんは昔の私にお守りを渡した。
『お守りですか?』
よく見るとつがいになっている。
『そうだよ。春風守り。赤紫の桜と青紫の桜のお守りを恋人同士で持つと幸せになれるんだって』
青紫の桜もあるのか。
『そうですか。ヨルクさんと、つがいのお守り持ちます』
昔の私、とても嬉しそう。
本当は、現在も私ヨルクさんと一緒にいて幸せなんだ。昔と違って、時代も変わったし、昔みたいに何もなく互いが互いを見つめ合う時代ではないけれど。それでも、ヨルクさんと一緒にいたいと思ったから交際を続けているのだと思う。
『うん、一緒に持とうね』
社務所が開いてるなら、お守りが買えるかもしれない。
私は社務所に走った。案の定、巫女さんもセピアだ。でも、昔の私とヨルクさんが話している、つがいのお守りはちゃんとある。
「あの、このつがいの春風守りください!」
『2つで200円になります』
私は、200円を支払い、巫女さんから、春風守りを受け取った。
昔の私とヨルクさんがいるってことは、私はかつて、この春風神社に来たことあるのだろうか。
「あの、この神社って、いつも賑わっているのですか?」
『普段は殆ど客はいません。春風様が訪れた時だけですよ』
春風様ってはじめて聞く。ここの神社の神様だろうか。
「春風様ってなんですか?」
『春風神社を守る神様のことですよ』
神社には神がいると言われているが、そんなの言葉のあやだと思っていた。
「そうですか。会ったことのある人はいるのですか?」
『それは聞いたことはありません。ですが、昔からの言い伝えなのです。春風様が訪れた日には客も集まり、繁盛すると』
言い伝えか。七不思議のようなものだろうか。
そうだ、他のお守りも……。
あれ、人が薄らいでゆく。

気が付くと私は、春染めの宿の布団の中にいた。
良かった。ちゃんとお守り持ってる。私は、ゆっくり起き上がった。
「アンタ、何してたのさ。田んぼのど真ん中で倒れてたぞ」
田んぼ?私は確かに春風神社にいた。
「ナミネ、それどうしたの?」
ヨルクさんは私が握っている春風守りを見つめた。
「春風神社で買いました!昔の私とヨルクさんがいました!」
ヨルクさんは、私と春風神社に行ったことを覚えているだろうか。
「うん、遠い遠い昔にナミネと行ったよ。同じお守り、クレナイ家の私の部屋にある」
やっぱり、私たち春風神社に行ったことあるんだ。
「話の途中だけど、明日、顔だけヨルクも登ることになった。甘えセナの命綱あるし、絶対死なせたりはしない」
ヨルクさん登る決意固めたのか。セナ王女の命綱があれば、何かあっても一命は取り留められるだろうか。それでも心配だ。
「ヨルクさん、このお守り持っててください」
私はヨルクさんに青紫の桜の春風守りを渡した。
「ありがとう、ナミネ。大切にするね。さっきはごめんね。気持ちが焦ってた」
私はヨルクさんを抱き締めた。
「私はヨルクさんに強さは求めてません!一緒に春風神社に行った時のような関係でいたいんです!」
ただ、平凡な幸せを胸に抱いていたい。
「うん、私もそうだよ」
だったら、どうして崖登りなんか……。本当は、してほしくないけど、カラルリさんや、アルフォンス王子みたいに下で立ち往生してくれていたら少しは安心出来るかもしれない。こんなこと思うのヨルクさんには申し訳ないけど、ヨルクさんには怪我してほしくない。
「そうですか……」
私は俯いた。
「ナミネ、大丈夫だよ。クッションもあるみたいだし、命綱があれば命落とすことないから」
本当にそうだといいのだけど。
「はい」
本音では不安でいっぱいな私がいた。
「じゃ、寝る」
ヨルクさんが宿出てから、あれこれしていて、もう23時を回っている。
この日、私はヨルクさんの紅葉の香りに包まれながらグッスリ眠った。

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あとがき。

ゆっくりなペースになってますが、このまま続けます。

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この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
イラストに関するお知らせです。

全て、このブログに載せる予定だったのですが、容量の加減もあり、ここは小説メインに綴ることにしました。

よって、イラストは『ナノハナ家の日常』(サイドバーにリンクあります)に移転致します。

下描きは載せず、色塗りしたもののみ載せているので更新はゆっくりかな。

よろしくお願い致します。
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