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日常のこととかオリジナル小説のこととか。
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プロフィール
HN:
ashita
Webサイト:
性別:
女性
職業:
地主(土地貸してます)
趣味:
漫画やアニメを見るのが好きです。最推しはフーディーニ ♡
自己紹介:
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ブログ、もう書かないと思ってました。

けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。

小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。

純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。

元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。

ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。

小説、ぼちぼちマイペースに書いてゆきます。

よろしくお願い致します。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

お知らせ。

イラストは現在「ナノハナ家の日常」に載せております。サイドバーにリンクあります。

また、「カラクリよろずや」にてフリーイラスト素材について考えるブログはじめました✩.*˚
不定期に更新していく予定です。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

模倣・無断転載などは、ご遠慮ください。

ブログの小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。

小説・純愛偏差値に関しましては、武家名・貴族名(程度による) / 及び、武官の階級 / 扇子・羽子板・花札・百人一首・紙飛行機などのアイテム使用方法の模倣の一切を禁じております。

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X @kigenzen1874

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〈資格履歴〉

2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
→漢方コーディネーター 合格
→薬膳調整師 合格

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〈資格証明バナー〉

鉛筆デッサンマスター®認定試験資格取得証明
絵画インストラクター資格資格認定証
宝石鑑定アドバイザー資格認定試験資格取得証明
鉱石セラピスト資格資格保持証明
茶道アドバイザー資格認定試験資格取得証明
お点前インストラクター資格資格認定証
着物マイスター®資格認定試験資格取得証明
着付け方インストラクター資格資格認定証
サイキックアドバイザー®資格資格証明
サイキックヒーラー資格資格保持証明
アンガーカウンセラー®資格資格保持証明
アンガーコントロール士資格資格認定証
漢方コーディネーター®資格認定試験資格保持証明
薬膳調整師®資格認定試験資格保持証明
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お疲れ様。
フーディーニ(♡´▽`♡)

本当本当、毎回思うのが一等席でショー見たかった!かな⸜(◍´˘`◍)⸝

いつまでも慈しんでおりますm(*_ _)m

エーリッヒ・ヴァイス♡
心安らかに(。ᵕᴗᵕ。)

2024.10.31
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純愛偏差値 未来編 一人称版 138話

《ナミネ》

ミナクさんはセナ王女と正式交際をした。それも、二人とも記憶を思い出してのことだった。最初は驚いたものの、人生というものに答えなどない。いくら、前世でああだったからと言って、現世も同じかと言えば異なる場合もある。私は、あまり経験のないことだから、その辺は詳しくはないが。
少なくとも二人は、ナナミお姉様とシャム軍医の存在を受け止めた上での交際だと言えるだろう。けれど、カラルリさんと今回も付き合うことを思うと、ミナクさんで良かったと思う。
また、同じ展開になったり、その他のことで、どちらかが傷付くこともあるかもしれないけど、私はもうカラルリさんを応援することは出来ない。ミナクさんは、遊びの女とは全て縁を切ったし、今はどう見てもセナ王女に釘付けだし、このまま幸せになってほしい。
だって、ナヤセス殿だって運命の人が二人いるのだから、どちらかと一緒になるのは本人の気持ちやタイミング、双方の時間軸が一致してこそ成り立つもとだと思う。私は運命の人はヨルクさんだけだけど。少なくとも現世に関してはミナクさんとセナ王女には二人いる可能性があるということなのだろう。恐らく、ナヤセス殿も。
「ナミネ、早く着替えて! あと20分しかないよ!」
2020年の時は出来なかった茶道体験。まさか、5月の終わりに行うことになるなんて思ってもみなかった。
「あ、はい!」
今年は紅葉柄の着物にしよう。青い紅葉柄の着物。商店街のお得意さんの冬桜呉服店で仕入れたものだ。二つあったから、ラルクとお揃いで買った。帯は青い紅葉柄。今の私なら半巾帯でもいいのだけど、やはり半幅帯にした。パール帯は一応は購入したが、茶道体験では使えない。髪は、長いままアレンジして紅葉のかんざしを付けた。
「へえ、アンタ似合うじゃん」
落ち武者さん、いつ着付けてもらうのだろう。
「ちょっと、落ち武者さんナミネの着替え見ないで!」
と言っても、もう着物を着ている。
今日はラハルさんが来るから楽しみだ。だから、気合いが入ったのかもしれない。ただ、私が受け持つ第四教室は一般人が気軽にお茶会感覚で来るから他の教室に比べて満員になる。だから、ラハルさんには事情を話し、ナナミお姉様の第三教室に行ってもらうことにした。ナナミお姉様もリリカさんも大喜びだ。皇太子様とカラン王子も第三教室に行ってもらえることになった。そして、カラン王子はこちらのグループに入ったのである。
「私、教室行きますので皆さんはごゆっくり来てください」
私は第四教室へと急いだ。
そういえば、裏番人の噂が出ているとか。キクスケさんの裏番人……。何だかいやな気がする。それだけでなく、過去の一部は裏番人によって操られていたものもあるとか。事実はまだ分からないが、前より危険が迫っていることは確かだ。私も早くヨルクさんに思い出してほしいけど、もう夢ごとを言っている場合ではない。

第四教室には、既にたくさんの体験者が来ていた。
色々あったから、久々な気がする。2024年の世界でも多分毎年していただろうけど。それはビデオを見たら分かることか。
遠い昔は高校生になった時に第三教室を任され、第四教室はナノハナ家の講師が受け持っていた。その時も、何故か私の教室には溢れんばかりの人がいた。
「セルファさんは第一教室でしょう!」
あ、カナエさんだったら本格的に極めた方がいいだろう。年に一度なわけだし。それにしても、カナエさんは赤い着物が良く似合う。そして、髪はいつも下ろしている。
「僕、第四教室だけど?」
落ち武者さんって、ひと月で本当にカナエさんと別れてくれるのだろうか。
「セルファさん、動画なら僕が撮りますので第一教室に行ってください」
あ、以前も撮影してもらっていたことあったっけ。
体験者が集まって来た。私は落ち武者さんを廊下に出し、襖を閉めた。
「皆さん、本日は茶道体験にお越しくださりありがとうございます。第一教室は上級者向け、第二教室は初級者向け、第三教室は中級者向け、この第四教室は初心者向けとなっております。講義中の移動は可能ですので、お好きな教室の体験をしてください。
では、最初に簡単な説明を行います」
って、聞いている人あまりいない。この後出てくるナノハナ食堂のお菓子目当てだろうか。私は続けた。
「茶道と聞くと、少し小難しく考える人もいるかもしれません。けれど、仲の良い友達同士が開くお茶会にてお菓子と共にお茶をいただき、お友達と楽しい時間を過ごすのも、また茶道の1つです。
基本、お菓子はお盆に載っています。お菓子が自分のところへ来たら一言「お先に」と左の隣の人に言いましょう。お菓子は、だいたい2つほど手で取ります。汚れてしまった手は懐紙で拭いてください。お菓子は、手で食べても黒文字で食べてもどちらでも大丈夫です。出来れば、お菓子はお茶をちょうだいする前に食べたほうがいいですね。
『お手前頂戴いたします』これは、お茶をちょうだいする時に亭主に言ってください。
茶道は、今や様々な流派があります。
ここは第4教室なので、基本的な説明を軽くさせてもらいました。
それでは、実際に茶菓子を食べてみましょう」
初心者向けなだけに詳しいことは言えない。簡単な教科書が配布されるのは中級者向けからだ。初心者向けは簡単なパンフレット。けれど、第四教室以外は、多かれ少なかれ茶道に興味を持っていて、第一教室に来る人は既に茶道教室を開いている人もいる。
私は一人一人の前に茶菓子を置いて行った。
ミドリお姉様はと言うと、完全に武家の道からは離れ、ひたすらピアノを練習している。
「なあ、ズームって、こういうとこ興味あったのか?」
ロォラさん! 来てたんだ! ということは、ロォハさんも生きている可能性は高い。そして、ロォラさんは恐らくズームさんが、この茶道体験に参加するから来たのだろう。
「どうぞ」
私は、ロォラさんの前に茶菓子を置いた。
「ロォラ、なんでいるんだよ! 宿は取ってるのか?」
やっぱり、この二人いい感じ。
「後一時間したら帰る」
帰るって、ここまで遠かっただろうに。
「宿取るから泊まっていけ!」
ズームさんて、元イジメっ子とはいえ、ロォラさんには態度が違う。私と交際していた時は、どこまでも真面目だったのに。
「あ、部屋空いていますので良かったら泊まっていってください」
ロォラさんには色々聞かないといけないことがある。
「ズームも泊まるのか?」
あ、やっぱり気になるか。なんだか微笑ましい。
「ああ、泊まる。夜は危ないからお前も泊まっていけ!」
ツンデレズームさんもなかなか良い。
「ナミネ、セレナール先輩来てる。カラルリさんも。第四居間で白黒つけようと思う」
あ、ラルクいたんだ。
「うん、そうだね。解決はしないだろうけど、逃げれば逃げるほど不利って思う人の気持ち悪化するだけだもんね」
本来、上下など存在しない。全くではないが、冷静になれば、惨めだと思わなくて済みやすい。
私は体験者に着付け体験のチラシを配った。
「来月は着付け体験も行います。これも、第一教室から第四教室までありますので、興味のある方はご参加ください」
今年はイベントが多くなりそうだ。茶道教室の講師出来たのは嬉しいけれど、ナノハお姉様の計算だろう。ナノハお姉様は知らないフリをしている。
「ズーム、着付け体験も来るのか?」
なんかもう好きって言っているみたいに聞こえる。
「ロォラには関係ないだろ!」
ズームさんて元は本当にツンデレなんだ。
「そういえば、ミネルナさんとアニキ交際するかもしれないんだ」
未来は変わっていると思っていた。けれど、変わらないものも存在している。
「あの、そのお話、後で詳しく聞かせてもらえませんか?」
やっぱり運命はあると思う。こんなにバラバラになったのに、また他人同士が再び出会い、深い中になるだなんて。
「あ、ああ」
あと半時間で16時だ。帰っていく体験者もいる。お喋りを続けている体験者もいるが。直に帰るだろう。第一教室は19時まで話し込んでいたりもするけれど。それだけ、茶道の道を極めたい思いが伝わって来る。茶道の道を歩まなくても体験に来てくれる人がいるだけで講師のやりがいがある。
「ナミネ、この後話し合いがあるなら、カナエさんと夕ご飯の準備して来るから」
少し早いけど、キクリ食堂の下準備はナノハナ食堂より早い。
「あ、ヨルクさん! ツーショット撮りませんか?」
やっぱり想い出は残したい。
「うん、そうしよう」
私とヨルクさんは中庭に向かった。

ここで何度ヨルクさんと写真を撮っただろう。
「アンタら抜けがけ? てか、まだ体験終わってないだろ」
どうして落ち武者さんがここに……。
「あ、ヨルクさんとの想い出を撮りたいんです」
カナエさんはどうしたのだろう。
「じゃ、撮ってやる」
意外に素直だ。私は落ち武者さんにフェアホを渡した。
私はヨルクさんの手を握った。ヨルクさんも握り返してくれた。
「はい、よーせいむら」
古代のカラクリ家での……。どうして落ち武者さんが知っているのだろう。私は落ち武者さんからフェアホを受け取った。なかなか良い感じに撮れている。
「ナミネ、それ私のところにも送って」
ヨルクさん……。互いに好きなのに、2024年に繋がる2020年の記憶がないだけで、恋人になれないことは辛い。ずっと辛い。けれど、あの時よりもっと危ない状況だし、恋愛のことを考え過ぎている場合でもない。分かっているのに、早くヨルクさんに記憶を思い出してもらいたくて胸がキュッと締め付けられる。
「はい」
でも、やっぱりヨルクさんとの縁談をまとめたい。今の状況だと不安で仕方ない。どこか、落ち武者さんとカナエさんが羨ましかったのは、仮でも交際していることにあるのだと思う。形より中身と人は軽々しく言うが、武家はどちらかというと形も肝心である。特に縁談なんかはそうだろう。
私はヨルクさんに写真を送った。
「待ち受けにするね」
ヨルクさんは、今の状態でいいのだろうか。
「ヨルクさん! ヨルクさんは、将来的に私のお婿さんになってくれるのでしょうか?」
多分、聞くタイミングを間違えた。
「はい、その話は今はなしね? 姉さんがあんなことになったのに、アンタらだけ幸せになるの不公平」
はあ、落ち武者さんに遮られてしまった。私も夕飯の下ごしらえしようかな。
「ナミネ、私はナミネの気持ちがラルクではなく私に向いているのなら、今すぐではないけど、ナミネと交際するつもりだよ。2020年のこと云々ではなくて、ナミネの気持ちの確証がほしいんだ」
か、確証!? これだけ気持ちを伝えていても少しも伝わっていない。いざ、逆の立場になればこんなにも苦しく、こんな感情をヨルクさんは何世紀も抱いていたのか。あんなお願いしなければよかった。今からでも天使村最後の番人に取り消したい。ヨルクさんを二度と好きにならないようになんて間違いすぎていた。どれだけ苦しくても好きを失うべきではなかった。
「ヨルクさんの気持ちは分かりました。もういいです。これ以上の引き伸ばしは、その気がないとも取れますゆえ、縁談は他でまとめます」
どうして待てないのだろう。どうして素直になれないのだろう。どうしてこんなにも一方的になってしまうのだろう。
「ナミネ、引き伸ばしているわけではない! 気持ちが追い付かないんだ! ついこないだまでラルクラルク言っていたナミネが私に気があるというのが、どうしても分からない。でも、他の縁談は待ってほしい!」
こんなにも互いの『好き』がすれ違うのは苦しい。ミナクさんとセナ王女が羨ましい。仮交際している落ち武者さんとカナエさんも羨ましい。
今の私、惨めだ。
「もういいです!! ヨルクさんの縁談はお受けしません! 私、ラハルさんと交際します!!」
私は泣きながら自分の部屋へ走った。

部屋に入るとラハルさんがいた。
「ラハルさん!?」
会うの、とても久しぶりに感じる。記憶はないものの、夢で見ているなら、2020年を知っているわけだし、そこまで遠い存在というわけではない気がする。
「ナミネ、やっと会えた」
ラハルさんは私を抱き締めた。この感覚、懐かしい。ラハルさんは本当に変わらない。
「今日、お休み取れたのですか?」
ラハルさんは私を抱き締めたままだ。
「忌引き休暇使った」
なんか、そういう展開のドラマを見た気がする。誰を殺めたのだろう。
「そうなのですね。この後、話し合いがあるのですが、ラハルさんは、ここで休んでいてください」
ラハルさんは無関係だし、巻き込みたくない。
「僕も参加する。だいたいの事情はフェアリー日記で知ったし、あちら側こちら側より、みんなの声を聞きたい」
やっぱりラハルさんは、どこまでも真面目だ。優等生っていいな。芸能界でも清純派だし。
「分かりました。あ、ニンジャ妖精ももうすぐデビューだとか」
ああ、久しぶりに会ったのに、どうでもいいことを聞いてしまった。
「うん、ミツメはソロだけどね。記憶は全員覚えてないよ。マモルがセレナール見たら、また同じことにならないか不安なんだよね。あ、ナミネ。コマーシャル出てくれない?」
コマーシャル。前の世界ではラハルさんとよくコラボしていた。何も知らないあの頃、グルグル妖精さんのマンションでプチパーティーしたり楽しかった。今となっては遠く感じてしまう。実際、半年は過ぎているし。
「はい、出ます! どのようなコマーシャルですか?」
あれ、途切れた。私がよく知っているコマーシャルではないのだろうか。
「41%の華の涙のヒロインを演じてほしい。43%の恋の涙の姉妹作なんだ。ナミネ次第だけど、僕は43%の恋の涙、共演したナミネに演じてほしい」
姉妹作出たんだ。やっぱり、実話で似たような内容だろうか。
「あの内容って……」
姉妹作なら、また同じ演技をすることにはなるだろう。
「43%の恋の涙は脚本が甘いと、本当の事件にもっと近付けた内容かな。黒鈴酷華された女の子が、その犯人と恋仲になるんだ」
それって、遠い遠い前世、ベテラン俳優が演じていた実話を元に描かれた映画。が、リメイクされたのか。ラハルさんなら、必ず配慮してくれる。こんな時期だけど、やりたいことを諦めるのも違う気がする。
「やります! ヒロインやります! えっと、43%の時のような格好でいいんですよね?」
キュート女優のようなことは出来ない。
「うん、『さよなら、ごめん、でも……』と変わりないよ。あれは、フリだよね。スポーツブラに下はミニスカートまではなってもらわないといけないけど、どうかな?」
スポーツブラなら、下着と言うよりインナー的なものだし、いわゆる、ブラウスを脱がされる時のシーンだろう。
「はい、私はかまいません! ラハルさんと共演したいです!」
さっきの涙はすっかり枯れていた。女優になるわけではない。けれど、ラハルさんとの縁だから。
「良かった。あくまで主役にスポットを当てた映画だから、黒鈴酷華した他の役者も、その前に逃げた子もエキストラだよ」
そうなのか。事件そのものは、『さよなら、ごめん、でも……』ではじめて知ったけれど、ヒロインは何度もパニックになりながらも許せなくて許せなくて恨みながらも犯人の一人への恋心までは隠せなかった。ラハルさんとなら演じ切れる!
「私、絶対に期待に応えます!」
色々ある日常の中、1つの希望が見えた気がした。
「じゃあ、来月の頭に予告のコマーシャルに出て。髪は切らなくていいから。寧ろ、そほのうが雰囲気出ると思う」
そうか、ヒロインは美容院にも行けないくらい病んで、休学し、ホスピタルに入るんだっけ。
「ナミネ! 立ち聞きしてたわけじゃないけど、本当にラハルさんと交際するの? その映画で水花卒業するの?」
いきなりヨルクさんが扉を開けて入って来た。扉の前に居ただなんて全然気付かなかった。
「あ、はい」
めちゃくちゃ気まずい。
「交際しないよ。ナミネにはヨルクしかいないから。残念だけどね。映画もフリだから。正直、交際のことは焦らなくていいと思うけど。僕はこの15年が本物だと思い込んでいたし、寧ろ、正確に覚えている人の方が少ないと思うよ」
残念……。ラハルさんて今でも私のことを……? いい人。カンザシさんとは大違い。こんな風に真剣に想ってくれる人がいるのに、ヨルクさんを手放したくない気持ちが確定していて申し訳ないけれど、やっぱりヨルクさんとの縁談はちゃんとまとめたい。
「そうですよね。このようなことになり、まさかの未来まで変わって混乱もしました。だから、確かなものにしがみつこうとしていたのかもしれません」
ラハルさんがいるせいか、素直になってしまう。交際相手がラハルさんなら、常に素直にいられたと思う。というか、喧嘩とかした記憶ないし、上手くいっていたはず。
「ナミネと交際する! 2020年とか2024年とか分からないけど、それでも縁談書、何度も届けていたのは事実だし」
2024年でも縁談書ずっと届けてくれてたんだ。けれど、曖昧な状況下で言われてもパッとしない。
「すみません。今のヨルクさんとお付き合いすることは出来ません。その確証とやらを明らかにするまで待ちます」
辛いけど……! 辛いけど……! ミナクさんやセナ王女のような自然的な流れでない限り、後から何らかの混乱が生じると思う。恐らく行き違いも。
「違う! 幼稚園の時、ナミネ、泣きながら『ラルクのことが好きだから』私とは婚約破棄するって言って、あれから部屋に閉じこもってずっと泣いてた。一度婚約した仲で凄く浮かれてたから割り切れなくって辛くって苦しくって……。今はそうじゃないけど、あれからはずっと一人で片想いだった。でも、ナミネが今現在私を好きなら交際したい!」
そっか。私の身勝手は、ヨルクさんをただただ悲しませていたのか。幼稚園の頃とはいえ、何気なく……ではないか。泣きながら言った婚約破棄はヨルクさんにとてつもない苦しみを与えていた。そんなこと知らなかった。『分かった』て言われたから、それで終わりだと思っていた。でも、私も違った。何度もヨルクさんの部屋に行っては不在の部屋で眠って、気が付けばヨルクさんが布団に入れてくれていたこと。もうあの時点で私はヨルクさんのことを意識していたんだ。確かにラルクのことは、どうしようもなく好きでたまらなかった。例え、番人云々でなくても『好き』という気持ちはあったと思う。でも、いくらラルクが特別な人でも、私が結婚したいのはヨルクさんだ。ラルクのセレナールさん好きだって、とっくに応援しているし。最後の紅葉橋だってそう。私は、ヨルクさんへの『好き』に気付けないままヨルクさんを手放してしまった。
「お気持ちは分かりました。ヨルクさんをそこまで苦しませていたとは知りもしませんでした。私が愚かでした。けれど、交際は不自然な形ではなく、自然的にそのような関係になりたいと私は思っています。そろそろ話し合いの時間です」
私は立ち上がった。
「ちょっと素直じゃないね」
え、そうなのだろうか。私、ドラマのような恋愛形式に夢でも見ているのだろうか。お互いに気持ちが同じなら今すぐ交際するのが逆に自然なのだろうか。分からない。ただ、ヨルクさんを縛り付けずに手放したくない気持ちだけは確かに実感している。
「そっか。分かった」
やっぱり上手くいかない。さっき、交際すると言えば良かったのだろうか。どうしてこんなにもすれ違ってしまうのだろう。

第四居間では、重たい空気が流れている。
「ハッキリ言うわ! 今後、セレナールとカラルリの別荘の出入りは禁止したから! グループから抜けないなら私とミナクがグループ抜ける!」
もう、この二人は最初から馬が合わないのだろう。原点がいくら、カラルリさんの取り合いでもだ。
「何よそれ! イジメだわ! それにユメさんまで私を裏切っていただなんて。皇帝陛下にかけ合うから!」
落ち武者さんが話したか。
「狡いわね。セレナールってセリルとその弟後ろ盾にして、人の気持ちを考えられない愚か者よ!」
けれど、ユメさんがしたことは許されることではない。皇帝陛下から罰を言い渡されてもおかしくはない。ラハルさんは黙って聞いている。ここには記憶のない者もいるから迂闊な発言は出来ない。
セレナールさんが湯呑みを持った瞬間、落ち武者さんがユメさんにお茶をかけた。話し合いだと言うのに、どうして熱いお茶なんか……。誰が持ってきたのだろう。
「熱い!!」
ユメさんはその場に蹲った。アルフォンス王子は主治医を呼んだ。
「あの、話し合いなので暴力はやめてもらえませんか?」
この話し合いには仲裁がいない。セレナールさんが悪者にならないためだろうけど、ここで暴れてほしくはない。
「時間ずれユメのしたことも十分暴力だけど? 時間ずれユメのした暴力は許されるわけ? それ誰が決めた? 僕は甘えセナのことも捌くつもりだけど?」
ダメだ。落ち武者さん、めちゃくちゃ怒ってる。
「落ち武者さん、どちらもセレナールさんにとっては酷だけど、少なくともセナ王女は体育館でセレナールさんに見捨てられたことを気にしてて……その……」
恋人は庇い合うものなのか。ヨルクさんはどうだったっけ。なんだかもう、前の世界が遠く感じる。あの時は、私も許されないことを数々してしまった。自分の中の何かがそうさせた。まるで、膨らみ切った風船がパンッて弾けるように。
「ラルク! 待ちなさいよ!」
このタイミングでラルクとリリカさんが入って来た。ラルクは、ちゃっかりセレナールさんの隣に座った。
「え、この子ミナクの弟? そっくりね! てか、リリカも来てたの?」
リリカさんの着物姿めちゃくちゃ久しぶりだ。武家なだけに、やっぱり似合うなあ。リリカさんはラハルさんを見たが何も言わない。
「ええ、茶道に興味あるの」
そうか、リリカさんもプライベートと学校は分けているんだっけ。私はそこまでではないし、そもそも周りに言われただけで自覚はないけれど、リリカさんはお嬢様を演じている。
そして、カラルリさんの前で頭を下げた。
「カラルリさん、すみません。ミナクがご迷惑をおかけして」
兄弟はこういうものなのだろうか。何だかパッとしない。
「え、何かあったの?」
そうか、記憶がないと色々ややこしくなってしまう。
「いや、リリカは何も悪くない。ただ、私はミナクにセナさん寝盗られて、それでもセナさんを想っているのに、セナさん騙されたままで。私の前でセナさんにこういうことしてたんだ」
カラルリさんはリリカさんにフェアホを見せた。なんかカラルリさんって昔からセコイところあるような。真面目で勉強も出来るのに、どこか残念な人だ。
「そんな……ミナクが……」
リリカさんは驚いたフリをした。
「違う。ミナクとセナさんは正式交際してるの! 私はセナさんとカラルリに見捨てられてユメさんからは武官を使って襲わされたの! 私、グループにイジメられているの!」
正式交際……か。こんな時なのに自分のことを考えてしまう。
「そうだったの。セレナール、仲間が出来たって喜んでたわよね。ここだと私は部外者だからセレナールの話は学校でじっくり聞くわ。少なくとも私はセレナールのこと友達だと思ってる」
リリカさんは群れを嫌う。基本は単独行動。こんなふうに誰かに合わせながら自分を見失わないって大変なことなんだろうな。
「ありがとう、リリカ……。私もうリリカしかいない」
セレナールさんはリリカさんに泣き付いた。
「ちょっと!! やっぱりラハルいるじゃない!! ナミネ、どうして言ってくれないのよ!」
はあ、次から次へと。私はナナミお姉様の花札を扇子で吹き飛ばした。
「ナナミお姉様、今真剣な話をしているので、ここから出てもらえませんか?」
ナナミお姉様は私を睨み付けたかと思ったら、ミナクさんを蹴り飛ばした。
「アンタ! 王女弄んだって学年中の噂になってるわよ! 本当最低ね! アンタみたいな男大嫌い!」
懐かしい人は懐かしい光景だろう。ナナミお姉様の嫌いは好きの裏返し。ずっとミナクさんのこと見てたのを見てきたから。ここに集まっていた時からずっと。
「ナナミ、今は出ましょう。状況説明するわ」
武家は基本、歳上の言うことは聞かなくてはならない。会社とは違う上下関係があるのである。
「分かりました……」
やっとナナミお姉様が出てくれる。ラハルさんとは後で話せばいい。
「ナナミ、聞いてくれ! ミナクは私からセナさん奪っただけじゃなく、私の目の前でセナさんに黒鈴酷華したんだ! セナさん中古品になっちゃった」
はあ、やっと話し合いに戻れると思ったのに。どうして敢えて引き止めるのだろう。これでは、リリカさんも何も言えなくなる。
「そ、そんな……!」
ナナミお姉様、ガチで驚いている。ほぼ嘘にここまで反応されると調子が狂ってしまう。話し合いは延期にするしかないか。
「あー、ラハルここにいたんだあ。連絡ありがとう。コラボ、顔は伏せててもいいかな? 出来ればネットだけの配信にしてほしいかな」
そこまで話進んでいたのか。
「ミドリお姉様だけ狡いです!」
ここはどうにかミドリお姉様に摘み出してもらうしか……。
「うん、構わないよ。この後、一緒に練習していい?」
ラハルさん、ミドリお姉様のこと高く評価してるんだ。私も負けてられないな。
「うん、構わないよ。うーん、ナナミを連れ出した方がいい? みんなのお話聞いた方がいい?」
いや、どうして敢えて加わろうとするのだろう。
「ミドリ、今真剣な話してて、ナナミを連れ出してくれるかな。ナナミとは後で話すから」
その瞬間、案の定ナナミお姉様の顔色が変わった。ラハルさん、今夜は泊まりだな。いつまでいれるのだろう。忌引休暇だから、そう何日もいれないか。
「分かった。リリカはどうする? ラハルは今日ここに泊まるから、話す時間は必ず作るよ。この話し合い1時間経っても終わらないなら私が終わらせるから」
なるほど。ミドリお姉様も前の世界を知っているわけか。1時間という目安があるなら持ち堪えるまで。
「私もナナミと出ます。ラハル、後で。セレナール、学校でね」
ミドリお姉様は、ナナミお姉様とリリカさんを連れ出した。私は思わずため息を着いた。
「え、さっきの緑の髪の二人が、この子のお姉さん? 上の人とは似てるわね」
え、はじめて言われた。私だけ似ていなくて、私はお母様似で……。どうしてミドリお姉様と似てるって感じたのだろう。
「あ、一応姉ですので。ラルクがセレナールさんのファンで、公式ファンクラブ作って欲しいそうです」
私は話を逸らした。
「本当? じゃあ、作っちゃおうかな。可愛いわね、ラルク」
今のセレナールさんにとって、ラルクは落ち武者さんのような存在だろうか。けれど、もうカラルリさんへの気持ちは薄れている気がする。悪い人ではないのだけど、容量が悪いというか、運がないというか、これはこれで可哀想な人だ。カンザシさんほどでないならマシだとは思うが。
「あ、えと、クレナイ家三男のラルクです。セレナール先輩の噂は中等部まで広がってまして、僕は小学生の時から憧れてるんです!」
もう早速告白みたいなことをしている。ヨルクさんも奥手じゃなければなあ。でも、私は奥手なヨルクさんが好きなんだ。私から再度交際を申し込もう。
「ラルク、お前面食いだな」
いや、それミナクさんが言うか? セナ王女だって美人だろうに。
「ミナクお兄様には言われたくありませんが」
どっちもどっちだ。ヨルクさんの、よく分からないタイプを思うと。遠い前世の、他の女との縁談の基準が未だに分からないのは私だけだろうか。
「あ、もしかしてリリカの弟? よく見たら似てる!」
に、似てるかな。金髪と黒髪という時点で似てない気がするけれど。
「え、全然似てませんよ。私はセレナールさんが姉だったら良かったと、はじめて会った時から思っていました」
うーん、リリカさんのほうがビシッとしてるし、やっぱりリリカさんがクレナイ家を仕切るから、クレナイ家は成り立っていると思う。
「ねえ、さっきからセレナールばかりチヤホヤされてるけど、私、その弟に熱湯かけられたんだけど!」
今は辛いかもしれない。けれど、ユメさんにはクラフがいる。クラフに出会えたらユメさんは不幸から解放され、幸せになれる。教えてあげたいのに、それは禁忌だから出来ないのがもどかしい。
「だから言ってるだろ? アンタから暴力奮ったんだろうがよ!」
暴力には暴力。それは、ある程度はどの家庭にもあるかもしれないが、ユメさんは幸せになれるのに。クラフ、どこにいるの……。
「あの、このタイミングですが、カラン王子の食事会ってありますか?」
話し合いなのにヨルクさんのことを気にしてしまう。
「ええ、あるわ。カランの奢りでね。場所は紅葉レストランの五つ星ホテルよ」
あの時と同じだ。告白のタイミング……。
「なあ、ズーム。私はいつ話せばいいんだ?」
そうだった。私がロォラさんに話してほしいって言って、ゴタゴタになって今に至っている。
「今は黙ってろ!」
その時、カナエさんとヨルクさんが夕飯を運んで来た。
「ヨルク、ポイント稼ぎかよ。ダセーな」
カラルリさん、今にもブチ切れそうだ。もう話し合いの終わりをミドリお姉様に頼むしかないだろうか。
「カラルリさん。あなたが嫌いなのは私でしょう。わざわざ弟に八つ当たりしないでもらえます?」
表面上では何も分からない。ある程度表に出していても気付かないのが人間だ。カラルリさんが最も嫌っているのはヨルクさん。自分が一番ハンサムだと思っていたのが、クレナイ家とナノハナ家が武家として稼働しはじめ、お武家連盟に加わってから、カラルリさんはヨルクさんを目の敵にしている。
「え、この子がセルファの同級生? みんな似てるわね」
ヨルクさんだけは似ていない。ヨルクさんはお母様似だから。私と同じお母様似だから。千里眼で何か見えているのだろうか。やはり、セリルさんの妹。あなどれない。
「あ、落ち武者さんのお姉様」
セレナールさんも着物が似合う。というか、もはや芸能人レベルだ。
「ヨルクは似てませんよ。気も弱いですし」
あれ、セナ王女ちょっとヤキモチ妬いてる?
「やっぱりセレナールって狡い。ユメさん、こんなの気にすることないわ。ユメさんのことはアルフォンスが悪いんだし、セレナールってあたかも主役気取りで私嫌いだわ」
その瞬間、落ち武者さんはフェアリーパッドを机に置いた。あの商店街のカフェの映像だ。けれど、セナ王女は少しも動じない。
「アンタ、思ったより肝座ってるな」
そこがセレナールさんとの性格や相性の分かれ目だろう。ミナクさんはクスリと笑った。
「セナ王女のこと、また1つ知れて嬉しいです」
二人は見つめ合った。
「引かれるかと思った」
本当に本当に恋人なんだ。
「引きません。この時のセナ王女、具合悪そうですし」
そんなふうには見えないけど。どこが具合悪いのだろう。
「エッチ」
えええ。もはや、惚気だ。
私はラルクにもたれかかった。
「ねえ、ラルク。私のお婿さん優柔不断なんだよね」
このシチュエーションは地味に昨日のように感じる。こういう時間感覚は不思議だ。それが妖精村の特徴なのだろうけど。
「けど、ナミネはヨルクお兄様がいいんだろ?」
ヨルクさん以外は考えられない。
「うん。頼りないけど。あ、ロォラさんの着物姿似合ってるよね」
あれ、着た時は私服だった。この着付け方、ナノハお姉様か。着付けてもらってるの全然気づかなかった。
「まあ、似合うわな。カナエさんと違って淡い赤ってところが本人の魅力引き出してるし、兵児帯とのコラボでお姫様みたいだな」
本当、お姫様みたい。ズームさんは逃しちゃいけない気がする。
「なあ、ズーム。この子らも友達なのか?」
なんとなく、私とラルクのような関係に見えたりもするけれど、同じようで全く違う。
「ロォラの着付け、カナエよりレベル高い。私もお姫様みたいな着付けが良かったな」
セレナールさんは何着てもお姫様だろうに。カナエさんへの当てつけだろうか。
「セレナール先輩は今のほうが僕はいいと思います」
そうかもしれない。ナノハお姉様は武家の作法はほぼ完璧だけど、あまり完璧で本格すぎるのは銀髪のセレナールさんには返って派手になりそうな気もする。
「だね〜。水色ってチョイスがセレナールさんの良さ引き出してるよね〜」
淡い水色はセレナールさん自身の美しさを引き出すには持ってこいの色合いだ。
「あの、カラルリさんのことですが……」
その瞬間、ユメさんが投げた湯呑みがロォラさんに当たった。セレナールさんに当てようとして誤って当たったというところだろうか。着物はビショ濡れだ。
「ロォラ!!」
ズームさんは素早く数式を書き、ロォラさんに氷の舞を譲渡した。
「なあ、ズーム。私恨まれてるのか?」
熱くなかったのだろうか。もう今日は話し合いは無理だ。
「バチが当たったんだ! それより大丈夫なのか? 主治医呼ぶぞ?」
ズームさんも好きなんだ。自覚なさそうだけど。まるで41%の華の涙みたい。
「大丈夫。元カレに根性焼きされてたから」
こんなにも容姿に恵まれているのに男運悪すぎる。それも本命はズームさんなのに。
「ごめん! わざとじゃない! 火傷した?」
誤魔化そうとしても無駄だ。
「あ、ああ。何ともない」
その時、ナノハナ家主治医がロォラさんを診た。主治医は塗り薬を置いて行った。
「あの、ユメさん、やめてもらえませんか? 怒られるの私なんです!」
気が付けば私はユメさんに扇子を突き付けていた。
「ズーム、この着物いくらするんだ?」
ズームさんはロォラさんの首に薬を塗った。
「1億はする。弁償は僕がするから。これは一点物だから特注の必要あるけど、ロォラが零したわけじゃないから心配するな」
1億を簡単に出せるブランケット家。
「うーん、アニキにローン組んでもらう」
あ、そうか。私が伝説武官の資格証あるってことは……ロォハさんも医師免許を所有しているってことだ。けれど、明らかユメさんが悪い。それにセレナールさん襲わせたことも、いかなる場合も許されたことではない。
「私が出すわ」
とセナ王女が言うと同時にカラルリさんはズームさんに泣き付いた。
「どこの誰だか分からないけど助けてほしい! 礼は必ずする!」
その瞬間、ラルク、ミナクさん、落ち武者さんはカラルリさんに扇子を突き付けた。
「なあ、一目惚れカラルリ。それは虫が良過ぎないか? 僕は反対だけど?」
カラルリさんはセレナールさんにそこまで酷いことはしていないが、あの体育館でのことはマイナスポイントになってしまったか。
「カラルリ先輩、それは狡くないですか? セレナール先輩よりセナ王女を優先し、セレナール先輩の人生狂っていたらどうしてくれるんですか!」
ラルクは怒ると怖いというか、歯止めが聞かなくなる。今は抑えているほうだけど、ブチ切れたらどうなることやら。
「カラルリさん、ご自分で組んだ転生ローンでしょう。ご自身で返済してください」
みんなで出し合うことは、今は無理か。でも、元々はセナ王女が組ませたし、ナルホお兄様もカラルリさんの意思だとカラルリさんが緑風華するまで負いつまっていたこと気付いていなかったし。なんか、いやな予感がする。
「ねえ、みんなやめて! どちらかしか助けられないって言われたんでしょ? 私だって冷静な判断出来ないし、カラルリさんだけが悪いわけじゃないよね?」
どうして間の悪いことするのだろう。
「おい、ヨルク! 喧嘩売ってんのか!!」
カラルリさんはヨルクさんに湯呑みを投げたが、咄嗟にミナクさんが結界をかけた。
「カラルリさん、表出てもらえます?」
ミナクさんはカラルリさんに扇子を突き付けた。その時、セレナールさんがカラルリさんを引っぱたいた。
「カラルリ、あなたどうかしてるわ! 今のカラルリはミナクに勝てると思わないし、カラルリが私を見捨てたからこうなってるんじゃない!」
セレナールさんのヒロイン気取りは役者レベルだ。本番では大根になるのに、こういう時のセレナールさんはドラマのヒロインそのものだ。
「あの、僕は近々大金を動かさなければならないんです。どうしてもお困りでしたら兄に相談しますが」
ズームさん……人がよすぎる。大金てことは、カンザシさんデビューか。芸能界の裏金も相当なんだろうな。それでも、カンザシさんをデビューさせなければズームさんがいなくなってしまうもしれない。
「やっぱりいい。私はズームにどうにかしてもらおうとは思わない。バイトする」
本心は真面目なロォラさん。やっぱりズームさんとロォラさんはお似合いだ。
「聞きました? カラルリさん。ロォラさんは自分は悪くないのにズームさんに頼ろうとせず自力でどうにかしようとしています。それに対し、カラルリさんは他力本願、他力本願、他力本願、他力……」
その瞬間、カラルリさんはミナクさんを殴ろうとしたが、ミナクさんは扇子を開いた。カラルリさんて、こんなに弱かったっけ。
「恵まれズーム、アンタさ、自分のことだけでも精一杯なんだから、こんなクズのこと考えんな! アンタ必要な人材だ。消えられたら困るんだよ!」
このナノハナ家で暴れまくり。私は百人一首を投げようとした。
「あの、皆さん……!」
その瞬間、ラハルさんが立ち上がった。
「部外者だから口を挟むつもりなかったけど。まず、ロォラは弁償しなくていい。持ち主に事情話せば分かってくれる。転生ローンの返済はカラルリ一人でとまでは言わないけど、本当に誰かを頼りたいなら、今みたいに暴れないでくれる? みんなももうちょっと冷静になってほしい」
ラハルさんは本当に本当に、あの時のままだ。遠い……いや、そこまで遠くない前世で交際していた時の優しくて真面目でリーダーシップのラハルさんのまま。
その時、扉が開いた。
「ちょっと時間切れかな」

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あとがき。

今度はナミネとヨルクがもどかしくなってる?

茶道体験実施出来たのは良かったし、ミドリのラハルのコラボ、ナミネとラハルの共演も希望が見えてきた気がする。

その反面、転生ローンや後回しにされる苦しみを訴えるメンバーがいることに悲しさ感じたり。

今となってはカラルリのみ悪いとは言い切れないような。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。

また、程度によりますが模倣はご遠慮願います。
詳しくは《カテゴリ》→《説明事項》→《模倣のご遠慮願います》をご覧ください。

小説の無断転載もご遠慮くださいませ〜♪
純愛偏差値 未来編 一人称版 137話

《ミナク》

この世はなんて残酷なのだろう。ずっと思い出せないだろうことが、ヒョンなことで思い出したりもする。アヤネさんによって、真面目だった私が女遊びするようになったことは分かったし、今となってはそんなことはどうでもいい。
私が……私が、セナ王女に酷いことをしていたんだ。セナ王女をフッたのは他でもない私だった。それも、今考えればタイプでもないミネスに何故か惹かれ、セナ王女を酷く傷付けてしまった。決してセナ王女を……いや、あの時は恩人としか見ていなかった。恋と思おうと何度も自分の気持ちを確かめたが、結論は、いつも同じだった。私にとってセナ王女は恩人でしかなかった。でも、今は違う。セナ王女を一人の女性として好きだ。それなのに、恐らくセナ王女も思い出したのだろう。今の2024年は2020年の続きであるだなんて、そんなことを思い出してしまうだなんて。もう告白は白紙に戻されただろうか。だったら、遣唐使として流されてしまいたい。
「あの、セナ王女……その、送って行きます」
私は、その場に崩れ落ちたセナ王女の肩を支えた。
「いい。一人で帰る」
完全に嫌われてしまった。それでも、このまま他人に戻りたくない。
「すみませんでした。セナ王女をあんな形で傷つけてしまって……さっきのことは忘れてください。ただ、私としてはこんな形で他人に戻りたくはありません! 友達ていいので、今のグループにいたいです」
過去の自分を今ハッキリ恨んだ。腹が立つし、どうしてこんなにかけがえない人を意図も簡単にフッてしまったのか。
「違う……違うの! ミナクには知られたくなかった! 水花喪失がカラルリなことも、安易に妊娠して中絶薬盛られたことも!」
あれほどに強いと思っていたセナ王女が私の目の前で涙をこぼしている。私は思わずセナ王女を抱き締めた。
「セナ王女、よく聞いてください。確かに、あの時は恩人として想ってました。セナ王女を傷付けてしまったことも消えることはありません。けれど、カラルリさんとのことでしたら、私は全力でカラルリさんからセナ王女を守ります! セナ王女の嫌がることはしませんし、少なくとも今は恩人としてと言うよりかは、はじめて会った時から一人の女性として好きなんです。もし、考え直してもらえるなら、シャム軍医が現れるまでだけでも交際してもらえませんか? お試し期間だけでも構いません! セナ王女は私のことどう思ってるんですか? 恨んでますか?」
こんな場所だけど、ちゃんと話し合いたい。このまま返したくない。
「私汚れてるのよ? カラルリに穢された。それでもいいの? 私もあの時は、成り行きの恋愛だった。今みたいにミナクに命かけれたかと言えば分からない。でも、今は……。穢されていなかったら、ミナクと……」
セナ王女は穢れてなんかいない。それに、2024年に飛ばされた時点で水花に戻っているはずだ。
「セナ王女、ここでは何ですし、やっぱり帰りましょう。話はまた今度にします」
春風が冷たい。セナ王女は、昨日毒矢に刺されたばかりだし、悪化させてもいけない。
「いや! 帰りたくない! 付き合う……ミナクと付き合う! でも、汚れた自分が気持ち悪い」
セナ王女がここまで恋愛絡みで悩むだなんて。それでも、最初はカラルリさんと上手くいっていたから交際していたんだろうな。一応時間は繋がっているから悔しい。
「セナ王女は汚れてなんかいません! それに最初はカラルリさんのこと本当に好きだったんでしょう? どういう経緯で仲違いしたかは分かりませんが、本当に好きだった時の出来事なら穢れているとは思いませんし、あの日のクレナイ家のセナ王女は本当に男を知らないように見えました。私も簡単な気持ちで告白したわけではないですし、セナ王女の悩みごと、今後は受け止めるつもりです」
もう簡単には手放さない。
「フェアリーフォン強請っても? 転生ローン組ませても?」
そうか、すっかり忘れていた。転生ローンで私たちは氷河期町で原石採っていたんだった。
「買えないものは買えないので私はキッパリ断ります。転生ローンも組みません。今欲しいんですか?フェアリーフォン」
やっぱり、王族だからそこそこなものを持つのは当たり前か。シャム軍医は月城総合病院で働くことが決まっていた。シャム軍医なら……。いや、私がセナ王女を幸せにする!
「ううん、欲しくない。欲しかったわけでもない。復讐したかった。今はミナクとお揃いのネックレスがほしい!」
復讐……。アヤネさんとカラルリさんの時、私もそうだった。許せなかった。よくも私の人生を奪ってくれたなと苛立ちは不良と化し、女遊びすることで憂さ晴らししていたつもりだった。あの時の私に似た感情をセナ王女も抱えていたのだろうか。
「高いものは買えません。安物でいいのなら買います。あの浴衣も取り寄せし直しました」
セナ王女には、やっぱりあの浴衣が似合っている。着物までは今は買えないけれど。最初のプレゼントを受け取って欲しい。
「いくらのでもいい! 指輪のネックレスがほしい! 浴衣は自分で買う! これまで通り私が払う!」
いや、流石にそれは私がカッコ悪すぎる。
「お取り込み中申し訳ないのですが、セナ王女とミナクさんは思い出しましたが、ユメさん、カラルリさん、セレナールさんは思い出せていないようです。また、カラルリさんの元には既に転生ローンの催促が来ています。私たち覚えているメンバーは、思い出せていないメンバーといつ合流出来るかタイミングを見ていました。そして、カナエさんに二重スパイをしてもらっています。お二人も、こちらのメンバーに加わりますか?」
え、二重スパイ!? 全く気付かなかった。カナエさん、こっちの世界から腕を上げた気がする。私も気を抜くわけにはいかない。
「加わる。要は、カナエさんがやってることの分担すればいいんだろ? てか、転生ローンどうするんだよ」
私はもうカラルリさんを助けるつもりはない。
「私も加わるわ! もう、カラルリともセレナールとも関わりたくない! 転生ローンなんか知らない! 私あんなことまでされて絶対助けない!」
そうなるよな。
「分かりました。では、こちらのメンバーのフェアリー日記も登録してください。こちらのほうは、あくまで真剣な情報交換ですので、ノロケは向こう側に書いてください。転生ローンは、もう何世紀もかけてご本人に返してもらうしかありませんな。こちらも今は大忙しですし」
そうか、ナミネは覚えていたのか。カナエさんも。多分、落ち武者さんも。私はとりあえず、フェアリー日記を登録した。
すっごい情報の数々だな。てか、カナエさんと落ち武者さん、そういう関係だったのか!? 仮交際とは書いているけれど。本命はアルフォンス王子ではなかったのか。
「それにしても、あなた変わらないわね。今でもクラスの男子から言い寄られてるんでしょ?」
そういえば、ナミネは小さい頃からモテていた。高校生からは美人になる。そのせいか、かなりのVIPと付き合っていたような。というか、ラハルさんとの結婚式に出席していた記憶も薄らある。
「うーん、そうかもしれませんが、もう間もなくラルクと仮交際しますし、今回のラルクはセレナールさんに本気なんです」
そういえばラルクって……私より強かったんだった。なんか、記憶が戻ってセナ王女をより知れたのは嬉しいけれど、虚しいこともそれなりにある。

結局、公園で話し込んでナミネがナノハナ家に戻った後、私とセナ王女は別荘に着いた。って、皇太子様がいる!!
「レナード! 本当に転校するのね!」
セナ王女は皇太子様を抱き締めた。本当に皇太子様とは恋愛関係はなかったのだろうか。
「ああ、今日見学してきたが、良さそうな感じだったし、目標も見付かりそうだから、別荘から通うことにした。カランと同じクラスだし、楽しめそうだ」
カラン王子も高一だったな。
「本当!? またレナードと過ごせるなんて夢みたい」
セナ王女、本当に嬉しそう。よほど仲がいいんだな。
「同じクラスにセレナールという美少女がいるそうなんだが、恋人はいるのか? 出来れば交際したい」
れ、歴史が……未来が変わっている!! 前はエミリさんにベタ惚れだったのに、今度はセレナールさん!? というか、皇太子様なら側室持てるのでは……。どちらにしても、状況は険しい気がする。
「うーん、一応私たちのグループにいるんだけど、あの子ワガママよ?」
ワガママというより、運が悪いというか、みんな武術に長けているから孤立してしまっているような気がする。
「一応、だいたいのことは調べた。僕が支えたいと思う」
なんだか複雑な気持ちだ。ラルクは一応弟だし、私なりに可愛がってきたから、ラルクが悲しむのも辛いし、相手は皇太子様ならセレナールさんも振り向くかもしれないし。
その時、フェアホが鳴った。
「セナ王女、客室借りてもいいですか?」
カナエさんからだ。
「あ、私の部屋使って。私も直ぐ行くわ」
良いのだろうか。けれど、早くカナエさんに連絡しないと。
「すみません、お借りします」
私はセナ王女の部屋に走った。その時、カラン王子とぶつかってしまった。しまった、紅茶持っていたのか。
「すみません! 今主治医を……!」
火傷しただろうか。
「もう冷めているので大丈夫です」
カラン王子はニコリと笑った。カラン王子は昔から優しい。どれだけ理不尽でも相手を恨まない。あれ、カラン王子は覚えているのだろうか?
「あの、カラン王子って前の世界……」
いや、覚えていなかったら変な質問になってしまう。
「前世の一部は覚えています。カナエさんと交際していたこととか。けれど、2020年のことは夢のみで現実で思い出せたことはありません」
つまり、一応内容は知っているということか。ってことは、私がセナ王女を傷付けたことも。人の記憶は時として酷だ。知っていれば許せないことも出てくるし、知らなければ後から知ることにもなりうる。人は何世紀経っても変わらない生き物だから。
「そうでしたか……」
カナエさんとか。
「では僕は部屋に戻りますので、ごゆっくり」
あ、そうだった。私がカラン王子の服濡らしてしまったんだった。
「あ、はい」
私もセナ王女の部屋に急がないと。

セナ王女の部屋は相変わらずシンプルだ。って、私との写真が飾ってある。セナ王女、私のこと……。って、カナエさんからのレイン開かないと。私は慌ててレインを開いた。
『ミナクも思い出したようですね。しかしながら、セナさんは、またシャム軍医と交際する可能性もあるでしょう。ミナクには傷付いてほしくありません。
それと、セナさんが思い出さないことを想定して転生ローンはセナさんに払ってもらうつもりでした。こんなにも早く思い出すのは想定外でした。
皇太子様はセレナールに気があるのですね。情報ありがとうございます。ミナク、アヤネの時みたいに傷つかないでください』
そういう戦法だったのか。完全にすれ違っていた。けれど、転生ローンは、セナ王女の記憶が戻れば、また揉めると思う。でも、カナエさんは昔からカナコさんたちより、カラルリさんととにかく仲良くしていたから、カナエさんの気持ちも分かる。それに、カナエさんは、やっぱり実の姉のようで、好きだ。
『すみません。私がセナ王女に告白してしまったから。でも、カナエさんこそ大丈夫なんですか?落ち武者さんのこと好きなんですか?』
カナエさんが私を心配するように私もカナエさんが心配だ。落ち武者さんは優秀だけれど、あの気の強いエルナって子もいたし、また出会う気がする。
『思い出す時期だったのでしょう。あくまで交渉です。セルファさんは、あの時カナエが博物館で結界をかけたからセレナールの人生は壊れたと責めるばかりで終始が付かなかったんです。でも、カナエはセイとアルフォンス王子様に散々弄ばれ、もう二度と恋などしません』
え、セイさん……? いや、めちゃくちゃ意外なんですけど!!とてもじゃないけど釣り合わない。セイさんに捧げていたと思うだけで私も辛くなる。アルフォンス王子ならともかく。セイさんは例外すぎる。
『カナエさんなら、きっといい人見つかりますよ』
そう、カナエさんなら……。容姿端麗、料理も出来て、勉強も出来て、運動も出来る。縁談書もたくさん届いているらしいし、これまでは運が悪かっただけだと思う。
「待たせたわね。今日は泊まってくんでしょ?」
た、確かに泊まっていきたいが、今日交際したばかりで泊まりは悪い気がする。それに、母は厳しいし……。ラルクにまで手を挙げていたからな。
「あ、それは流石に……」
めちゃくちゃ泊まりたいけど、それだとチャラい印象になってしまう。
「レナードも泊まっていくしいいじゃない!」
皇太子様と一般人とでは全然違う。皇太子様の他に誰か泊まるならともかく。そもそも、セナ王女にとって皇太子様は身内同然だし、やっぱり1時間したら帰ろう。
「やはり今日は……」
言いかけた瞬間、チャイムが鳴った。誰だろう。
「ここにいましょ」
セナ王女は、私の腕を組み、そのままソファーへ歩いた。そして、テレビを付けたのである。やっぱり王女なだけにテレビも上等そうだ。クレナイ家の安物とは違う。
「アルフォンス様! 今日泊まりたいです!」
ユメさんだったのか。雨が降って来た。セレナールさんの件の黒幕はユメさんだったし、色々心配だから、私も泊まっていこうかな。
「あの、セレナールさんの件……」
て、言えるわけもないか。事実かどうかも……って、委員長が調べたのなら事実だ。
「私はセレナールは知らない方がいいと思う。それにアルフォンスにも責任あるのだし、アルフォンスがどうにかするべきだと思うわ」
確かにそうだけれど、揉めそうな気がする。と言っても私は部外者だし、皇太子様が仲裁に入ってくれないだろうか。
部屋に入ったのか話し声は聞こえなくなった。
「そ、そうですよね」
男女の関係において解決など存在しないに等しい。少なくとも私はそう思うし、カラルリさんにアヤネさんを寝盗られたと思い出した今は尚更、一度揉めたらニコニコで解決などありえないと……そう感じる。
「結界かける?」
それ、アルフォンス王子にバレそうな気がする。
「いえ、テレビ見てましょう」
恋愛ものか。あれ、グルグル妖精のラハルさんが出ている! リリカお姉様は知っているのだろうか。
「あの、録画してもらえませんか?」
セナ王女は何もしない。何か気に触っただろうか。
「録画なら最初から自動でされているけれど、好きな女優でもいるの?」
女優とか正直分からない。
「いえ、姉がグルグル妖精のラハルさんの大ファンなんです」
もう部屋中ラハルさんグッズだらけだ。それも、推しというより、確実に本命としか思えない。
「グルグル妖精? 聞いたことないわ。あ、そうだったわね。ミナクは今好きなアイドルグループいるの?」
そういえば、何とかエンジェルの一人を弄んだことがある。ここで言うべきだろうか。
「その……フェアリー地平線は今でも聴いていますが、知らないアイドルグループの一人を弄びました……」
言いたくないけど、後から知られて幻滅されるのもいやだ。
「アイドルを弄ぶだなんて、見つかったらどうするのよ」
あの時は、廃墟に呼び出して終われば別々に帰った。
「もう二度と同じ過ちは繰り返しません! セナ王女のみ好きでいます!」
あれ、ドラマ見ている。やっぱり幻滅されただろうか。
「このシーン再現してみて!」
い、いきなり!? てか、さっきまでの話はいったいどこに。というか、流石に演技とはいえ、王女にこういうことするのは気が引ける。
「あの、今日交際したばかりですし、もっとセナ王女のこと大切にしたいんです」
2020年は成り行きだったかもしれない。けれど、もうセナ王女を傷つけたくはない。
「あら、最後までするつもりだったのかしら?」
セナ王女、元気出たのだろうか。その瞬間セナ王女は私を抱き締め後ろ向きに倒れた。起き上がろうとするものの、セナ王女の力に勝てなくて、私は欲に負けた。
ドラマのようなことまではしてないが、セナ王女に触れた。カラルリさんに白梅捧げたとは思えないくらい美しく、気が付けば、またクレナイ家でのことをしてしまっている。セナ王女の華声、こんなに美しかったんだ。私はセナ王女に口付けをしながら、ワンピースに手を入れた。何度も止めようと思うものの、セナ王女があまりにも色っぽくて止められない。下着に手をかけた瞬間、私は蹴り飛ばされた。
「おい、ミナク! 何してんだ! セナさんのことも弄ぶつもりなのか!」
カラルリさん来ていたのか。やっぱり結界かけておけばよかった。
「やめて! 私とミナク交際してるの! カラルリには関係ないでしょ!」
ワンピース脱がさなくて良かった。もし、カラルリさんが来なければ私はどうしていたのだろう。
「セナ、今ユメとアルフォンスが真剣に話しているから静かにしてくれはいか?」
皇太子様……。
「皇太子様、ミナクが無理矢理セナさん襲ってたんだ!」
はあ、カラルリさんて昔からこうだ。正義のヒーロー気取り。
その時、セナ王女が結界をかけた。
「そのことなんだが、僕も最初はセナはカラルリといい感じだと思っていた。けれど、少ししたらミナクミナク言うようになってな。女性ならいくらでも紹介するからセナのことは諦めてくれないか?」
皇太子様はまともで良かった。セナ王女、皇太子様に話してくれていたんだ。めちゃくちゃ嬉しい。
「セナさんは私と交際予定だった! ミナクに騙されているんだ!」
結局カラルリさんは自分一人では何も出来ない。氷河期町での原石採取がいい例だ。紀元前村もそうだったかな。
「そのことも調べた。確かに交際なしの女性関連はあるものの、今は全てと縁を切っているし、どの道セナは離れないと思う」
そう、セナ王女をはじめて見た時、遊びの女なんてどうでも良くなった。身分差は随分悩んだけれど、いずれは告白していたと思う。
その時、アルフォンス王子とユメさんが来た。話し合いは終わったのだろうか。けれど、ユメさんは泣いている。私は無意識なのか、ハンカチを差し出した。
『お母様! 紅葉柄のハンカチかっこいいです!』
母親とよくデパートに連れて行ってもらっていたっけ。ラルクはいつも迷子になっていた。
「とりあえず、ユメさんは今後もグループからは外れないことになったし、セレナールのことも認めた。セレナールのことは、今後のことも考え、ユメさんだとは言わないことにしたよ」
本人に言うのは命取りだろう。セリルさんは優しいが、落ち武者さんは手厳しい。
「うーん、ユメさんはカナエじゃなくてセレナールを狙ったのよね?」
そういえば、狙うならば衝動的ならカナエさんになっていてもおかしくはない。どうしてセレナールさんだったのだろう。
「カナエのことは確かにいやだし狡いと思う。でも、私とセレナールはいつも後回しだったのに、セレナールにはセリルという後ろ盾もいるし、あの美貌が妬ましかった」
女という生き物はむつかしい。セレナールさんは確かに誰が見ても美少女だ。けれど、セナ王女だって美人だし、こればかりは各々の好みだとも思う。ヨルクとか女見る目ないというか、好みがヤバすぎる。前世で何度も結婚式に出席したが、とてもじゃないけど受け入れないレベルでドン引きした。
「そう……。アルフォンスが悪いのだし、ユメさんには立ち直って欲しい、というか、あなたは立ち直るわ。けれど、今だから言うけれど、私、もうここにはセレナールとカラルリには来て欲しくないの。さっきのも見られたくなかった」
思い出すと恥ずかしい。最後は、一瞬だけ隙間から触れてしまったし。クレナイ家でも同じことはしたけれど、あの時は後ろ向かせていたし極力目を逸らすようにしていた。けれど、はじめて夢中になった女にソファーであんなことして少し気まずい。仮にも王女だし、もう少し距離を置いた方がいいのではとも思った。
「そのことなんだけど、どこまで? ミナクはセナの白梅卒業させるつもりだった? セナは?」
王女の白梅だなんてとんでもない。そこまでは、せめて就職が決まってからでないと、また傷付けてしまう。というか、今回のアルフォンス王子は妙にまともで、前のアルフォンス王子が逆に不自然に感じてしまう。
「いえ! 白梅まではするつもりはありませんでした! ただ、ドラマのモノマネのつもりが、セナ王女の仕草に夢中になってしまい止めるタイミング失ったのは事実です。でも、白梅は絶対奪いません!」
今回は本気の本気だ。セナ王女のこと絶対に大切にすると決めている。
「私から誘ったんだし、カラルリさえ来なければ白梅卒業してたわ」
どうしてアルフォンス王子と皇太子様の前で言うのだろう。めちゃくちゃ気まずい。
「いいなあ。私、白梅どころか白咲もまだ……」
え……? えええ! フェアリー日記のことは偽りだったのか! しかし、ここまで水花だらけだと、余計にセナ王女とは一定の距離を保たなければと思う。やはり、今日は帰るべきか。
「えー! てっきり……。アルフォンス、あなたもあなたね」
でも、ユメさんにはクラフという本気で思ってくれる男がいる。だから、結果的には良かったと思う。
「今の時代だから高校生では当たり前だろうし、クラスの3割は水花じゃないから、私からセナにやめろとは言えないけど、慎重にはなってほしい」
そうだよな。王女なだけに、マスコミの餌食になっても困る。交際さえもバレないように最善の注意を払わなければならない。
「セナはもう高校二年生なんだし、白梅はテクニシャンに捧げた方が逆に忘れられなくていいと思うけど」
皇太子様って意外にもフンワリ系だ。セナ王女によると水花らしいが、気になったフラワー女優や役者を皇室に呼び寄せて白空鈴で画家に描かせているところを眺めているとか。やっぱり、皇室となるともはや次元が違う。役者どころかフラワー女優でさえ白空鈴は一部契約違反なのに皇室は許される。
「あ、あの、フラワー女優の白空鈴間近で見れるんですか?」
しまった。つい、羨ましさから聞いてしまった。
「あら、興味あるのかしら? 王室でも呼び寄せられるわよ? 呼び寄せましょうか?」
セナ王女を怒らせてしまった。
「い、いえ、すみません」
一般人には無縁なのだし、身の丈に合わないことをしても虚しいだけだ。それにセナ王女の色気が常に頭を過ぎる。
「とりあえず、カラルリは来てもらえる? 今は身内しかいないけど、他のメンバーいて騒がれたら迷惑だし」
本当に、いきなり殴るとか子供時代のまんまだ。人のことは言えないが、カラルリさんはセナ王女に執着している。あれだけ酷いことして捨てたくせに。
「私は騒いでない! セナさんの彼氏は私だ!」
もう病院行くレベルだな。セイさんとは別の形でストーカーしそう。
「カラルリ、いくら諦めなくてもセナはミナクに白梅を許す。もうやめないか?」
いや、流石にそこまではガッツクつもりはない。皇太子様は水花にしては派手だ。それもそうか。フラワー女優を呼び寄せられるんだものな。
「私も辛い。でも、カラルリがここでセナさんに迫ったらグループ崩壊しかねないわ」
ユメさんは本当に反省している。カナエさんに害が及ばなくてよかった。

あの後、皇帝陛下からの紙飛行機により、カラルリさんは大人しくセナ王女の部屋を出た。そして、私はセナ王女と混浴している。タオル巻いて白い温泉で隠れているとはいえ、さっきのこともあったし、気まずい。
「あの、今日はやっぱり帰ります」
あれ、聞こえなかったのだろうか。
「これよ、レナードがフラワー女優呼び寄せた時のデッサン」
って、動画撮っていたのか! このフラワー女優って去年デビューしてフラワー女優新人賞ランキング一位だったような。皇太子様も、そこそこな女が好みなんだな。確かに、私もこのフラワー女優は綺麗だと思っていたし、前の私だったら、食い付いている。けれど、タオル一枚のセナ王女を目の前に興味はあまり出ない。
「皇太子様も美人好きなんですね。このフラワー女優は直ぐ売れっ子にあるでしょう。しかし、この動画が公になれば芸能界追放になりますが」
とはいえ、皇室に呼ばれたら流石の芸能人も断れないか。
「あら、興味ないの? 私の付き添いありなら好きな芸能人呼んであげるわよ」
ちょっと前なら確実に食い付いていただろうに。今は興味が持てない。
「うーん、前の私なら確かに食いついていました。でも、今は興味持てないというか、そこまでそそらないんですよね」
こうしている間にも、向こう側は必死だろう。けれど、歴史が……いや、未来が変わっている。こればかりは食い止められない。もう、どんなことが起きてもおかしくない気がする。
「最初はみんなそう言うのよね。カラルリだって呼び寄せではないけれど、くだらない動画に夢中になっていたし。そもそも呼び寄せなしでミナクは余所見せずに済むのかしら?」
いや、全く見ないわけではないけれど、呼び寄せは流石にしようと思っても出来ないし、そもそもいくらかかっているのだろう。
「前は本当にすみません。今回は絶対にセナ王女を傷付けません。ちなみに呼び寄せっていくらかかるんですか? みんな水花ですか?」
そもそも知ってしまってからあれだけど、これ国家機密だよな。
「そうね。やっぱり簡単に白梅は捧げない。簡単に許したら男って飽きっぽいもの。この子は5億ね。でも、人によっては5000万の子もいるわ。皇室に呼び寄せられた時はそうでも、イケメン武官に捧げてるわよ? この子もね」
芸能界の裏側って怖い。どれだけ純粋そうな美人も裏では別の顔を持ち、表のみで一般人に夢を与えているわけか。
「セナ王女を大切にしたいので就職が決まるまでは迂闊なことはしません」
その時、セナ王女に髪を触れられた。
「うん、やっぱり黒髪のほうが似合ってる!」
こんな笑顔で見つめられたら心が張り裂けそうになる。
「って、セナ王女何してるんですか!」
こういうのは避けたい。セナ王女にしといてあれだけど。
「ミナクって直ぐ余所見するから。手伝ってあげるわ」
セナ王女、前のことから十分に学習したのか、恋愛概念が変わっている。けれど、セナ王女にこんなことされたら、やっぱり流されてしまった。
「あの、お風呂の中ですが良かったんですか?」
掃除とか使用人がしているのだろうか。
「ここ温泉が流れているのよ。色はたまに変わるわ。掃除と言っても、そこまで手間はかからないと思う。それにしても元気ね。私は安っぽくないから廃墟ではしないし、遊園地の観覧車でもよ」
いや、そこまでは求めていないし、セナ王女にそんな扱いが出来るわけもない。けれど、セナ王女と密着して逆上せてきた。
「いえ、本当にあの時は遊びでした。セナ王女とはちゃんとデートしますし、ちゃんと幸せにします」
もう二度と不幸にはさせない。
「廃墟の子、あの後武官に襲われて第二喪失したわ」
え……、そんなまさか……。
「そんな……」
私は幻滅されるようなことしか出来ないのだろうか。せめて、大通りまで送っていけばよかった。
「あなたのせいじゃないわ。一般人が雇ったのよ。この子が出てから別れる恋人多かったらしくて。一応ニュースにはなったけど、事務所がガセネタだと偽って世間はそれを信じて騒ぎは終わったわ。あなたも気を付けることね」
廃墟なんかに連れて行かなければ良かった。ちゃんとホテルに言っていれば……。
「私のせいです。やっぱり私、セナ王女に……」
相応しくはない。
「あら、あれだけ熱烈な告白しといて簡単に手放すの? カラルリに白梅捧げてもいいのかしら?」
セナ王女は私から離れた。咄嗟に私はセナ王女の腕をつかんだ。
「すみません。これまでのことは反省してセナ王女を最後まで幸せにします。カラルリさんとそういうことはしないでください」
涙が出てしまった。汗と混じっているだろうか。
「もうっ、ミナクって本当に元は真面目だったのね。私はミナクを幸せにするって行った時から、ずっと離れないつもりよ。それは交際した今でも変わらない。それに、裏番人の噂も出ているし、尚更あなたを孤立させられないわ」
裏番人。聞いたことはあるが、一度目目にしたことはない。それに、かなり前に封印されたとも聴いている。実際どうか分からないが、カナエさんなら詳しいこと知ってそうだ。
「そのことはナノハナ家で話し合って、今は茶道体験のこと考えませんか? ユメさんも誘いましょう」
もうセナ王女が犠牲になるのは見たくない。少しでも楽しいことを多く体験してほしい。
「あ、そのことなのだけど、カランとレナードも行くことになったわ」
え、いつの間に誘ったのだろう。ナミネの教室だろうか。
「そうですか。着物でしたら、お好きな武家のを選んで貰えたらと。私服でも構いませんし。ちなみにどの教室ですか?」
私は毎年ナナミの教室だった。
「うーん、ナミネかしら。レナードもカランも初心者だし、ナミネだわね」
ナミネか……。
「ナナミはどうですか? セナ王女、今家庭部ですよね? 茶道部に入るならナノハさんが部長ですし」
ナミネの教室は初心者向けだからいつも人気だ。茶道を知らない一般人がティータイム感覚で参加するからな。クレナイ家だとラルクが上級者向けとか明らか不自然だから開けないし。キクリ家が開いてくれたら……。
「へえ、ナナミのこと気になるんだ。ちなみに、身近な人なら誰がタイプなの?」
いや、ナナミにはめちゃくちゃ嫌われている。寧ろ、委員長といる時の方が平和だ。
「えっと、カナコさんとレイカさんですかね。昔はナクリさんのことが好きでした」
って、まんま言ってしまった。けれど、カナコさんレベルの美人もなかなかいない。幼なじみだし、互いの家行き来していただけに、あの三人には懐いていたな。
「あなた本当に面食いなのね。でも、結婚となると理想なんて壊れるわよ? あんな美女と結婚出来るなんて夢のまた夢だし、ヨルクのお嫁さんならいっぱいいるんじゃないかしら」
もうそれは破断レベルだ。あれだけ男ウケしない女は夫婦としての関係は成り立たないし、結婚しないほうがマシだと思う。
「いや、美女と結婚とまでは考えてませんが、ヨルクの元嫁レベルなら結婚はしません。それに、やっぱりセナ王女のほうが美人ですし……」
確かにナクリさんに恋愛感情のようなものは抱いていたかもしれない。カナコさんもレイカさんも美人すぎて、みんなでお風呂入る時とか緊張してた。でも、今はセナ王女以上はいないと思っている。
「そんな一昔前の口説き文句では落ちないわよ? 私、ソファーで寝るからミナクはベッド使っていいわよ」
お風呂ではあれだけ迫って来て、今は突き放され、いつの間にか立場が逆転している。敢えて、距離を置かれるようなことを言われると寂しくなってしまう。それでも、一緒に寝るのはまだ早い気もするし。お風呂では恋人みたいなことしてしまったけど。というか、はじめて女に白咲された。
ふとフェアリー日記を見ると案の定だった。
『ミナクの白咲ゲット!』
カラルリさんが見たら、また私を目の敵にするだろう。
「私がソファー使いますのでセナ王女は……」
あれ、どうしたのだろう。
「やっぱりミナクと一緒に寝る」
抱き締められながら言われると、また胸の鼓動が高鳴った。けれど、断らなきゃ。
「いえ、今日はやめておきましょう」
早く大人になりたい。はじめてそう確信した。
私たちは別々に寝たはずだった。

が、朝目覚めるとセナ王女と同じベッドの中にいた。私がソファーで寝るのをアッサリ認めたと思いきや、私が眠った後に私をベッドまで運ぶなんて。
ベッドから抜け出してクレナイ家へ戻ろうとしたらセナ王女に手をつかまれた。
「無言で行かないで」

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

あとがき。

なんか、123話までの純愛偏差値と別の小説になっている気が……。

しかし、裏番人か。

転生ローンに、三角関係に、その他色々。

どんどん複雑になってゆきます。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。

また、程度によりますが模倣はご遠慮願います。
詳しくは《カテゴリ》→《説明事項》→《模倣のご遠慮願います》をご覧ください。

小説の無断転載もご遠慮くださいませ〜♪
純愛偏差値 未来編 一人称版 136話

《セナ》

話し合いの後、私とミナクは商店街のカフェに行った。何となくだけれど、ここのところミナクも私に気があるような気持ちになることがある。これは自惚れなのだろうか。
けれど、ミナクとは最初の頃より距離が縮まってきた気がする。少しいい感じのところで、ミナクはそれを遮るようにカフェを出て、私を呉服店に案内した。
そして、ミナクの知り合いの呉服店の娘が私の着付けをした後、ミナクに帯を結んでもらった。髪も結ってもらおうとした時、外から悲鳴が聞こえ、私とミナクは外へ出た。
すると、セレナールが武官に押し倒されていた。
人はいっぱいいる。けれど、みんな見ているだけで助けようとする人は一人もいない。けれど、ミナクは扇子を取り出したが、呆気なく武官に振り払われた。武家の扇子は伝統だから、主の元には戻るものの、体育館の時とは違う。私はセレナールに近付いた。
「私、助けないわ。私を差し出した人を助けるほど私優しくないの」
セレナールは脅えている。
「お願い! 助けて! もうセナさんを裏切らない!」
人は窮地に立たされれば本性が出る。裏切らない。その場しのぎの嘘で助かろうともする。結局のところ、みんな自分が1番可愛いのである。
しかし、武官は5人のようで20人いる。誰の差し金かは分からないが、ミナクが対等に戦える相手ではない。案の定ミナクは苦戦している。セレナールを助けない私をミナクは軽蔑しているだろうか。それでも、助けたくないのである。
その時、小さな矢がミナク目掛けて飛んで来た。私は咄嗟に短剣で矢を折った。恐らく矢には毒が塗られている。そして、この武器はskyグループで売られているミニアーチェリーだった。
矢は次々に飛んで来て私はミナクに結界をかけた。
「セナ王女、結果解いてください! セナ王女に助けは求めません! 私はもうラァナさんみたいな被害者を見たくないんです!」
ラァナ。聞いたことがない。何だかんだでミナクって遊びじゃない親しい女友達がいる。
「また結界。セナさんて、本当に自分さえ良ければどうでもいいのね」
やっぱり戦闘向けじゃない人間は何も分かっていない。助かることしか考えていない以上、チームワークなんて取れるはずがない。
「セナ王女、お願いです! セレナールさんを救出させてください!」
まるで私がイタズラにミナクを閉じ込めているみたいだ。私は結界を解くと同時にミナクの背中にピタリとくっついた。私の背中に何本もの矢が刺さる。セレナールを助けないとミナクに危害が及ぶ。
「きゃー!!」
セレナールが服を短剣で引き裂かれた。
「セレナールさん、一瞬だけ隙を作ります。その間に、目の前の呉服店に入ってもらえませんか?」
こんな時なのに、ミナクの視点がセレナールに向いていることに腹が立つ。私はワガママなのだろうか。
「ちょっと、あなたどっちも救えてないじゃない! 救急車呼ぶからミナクはセナ王女に着いていって! 私はこの子助けるから!」
キヌカさん……。
「あ、大丈夫。私、毒効かないから」
そう、私はカナエと同じで毒が一切効かないのだ。私の姉は私をよく思っていない。いつも私をイジメていた。毒を盛られているうちに耐性がついたのである。
ミナクが私を見た。
「セナ……王女……」
やっと私を見てくれた。
「大丈夫。何ともないわ」
ここで、倒れたフリとかしたら、もっと私を気にかけてくれるだろうか。
「あれヤバイだろ。銀髪の女助けようとして矢に刺されて血まみれだぜ」
ミナクは私を後ろ向かせた。けれど、動画を撮り始めてる人もいる。早く、ここから立ち去らないと。
「行きましょ」
私はミナクの手を握って走ろうとした。
「本当に無茶するね。とりあえず、車乗って」
ハル院長。転校したての頃、妖精村学園でハルミ先生とショウゴ先生と話していた。聞くところによるとハル院長とショウゴ先生は同級生でハルミ先生の元教え子だとか。
「分かったわ」
私はここから去るため、ミナクとハル院長の秘書の車に乗った。ミナクは黙っている。私はミナクの手を握った。
車だと商店街から月城総合病院は近く思えた。

治療は案外直ぐ終わった。ここは比較的新しい病院だけど、腕が良いと評判で毎日患者が絶えない。
「セナ王女、私は4時にクレナイ家に戻ります。もう、セナ王女のグループからは抜けるしセナ王女と二人きりで会うつもりもありません」
やっぱり一人で責任感を抱いていたか。
「ミナク、元々は私が直ぐセレナールを救わず見捨てたからこうなったわけで、ミナクが責任感じることなんてないわ。それに、ミナクを幸せにするって言った以上、ここでミナクを手放すつもりもない!」
ミナクと一緒にいたい。こんな風に感じさせるなら、とっととセレナールを助けてミナクとデート再開していれば良かった。
「セナ王女の助けがないと解決出来なかった時点で失格です。私といる限り、またセナ王女は負傷してしまいます。結界解いた後、ずっと毒矢受けてたんですよね、私を庇って」
まだ中学生なのに、こんなに考え込んで。まるで女遊びなんかしてなかったみたいに思える。
「毒を盛られていたのは三歳の時からだね。何度も主治医を呼んで五歳の時に耐性がついて、毒は効かなくなっている。そのせいか、一度体内に入ったら成長し続け死に至る毒も少しも見当たらなかった。だからといって、流石に無茶し過ぎだと思うよ。50本も毒矢なんか受けたら普通の人なら即死してる。それに、セナ王女が知らない毒もこの世にはたくさんある。自分なら大丈夫だからで済ませないでほしい」
王室のカルテ取り寄せていたのか。ということは、どういう経緯かも書いてあるはず。ハル院長には知られてしまった。けど、医者だから、いずれは知られていたかもしれない。
「毒って……。誰に盛られたんですか!?」
やっぱりミナクは反応した。
「あら、私とは関わらないんじゃなかったの?」
私は顔を逸らした。
「答えてください!」
ミナクはやっぱりまだまだ子供。
「姉だけど? 私のこと気に入らないみたいで引っ越ししてくるまでは、ずっと毒入り料理食べてたの」
最初は二人の姉から攻撃を受けていたけれど、一人は直ぐにやめた。けれど、一人の姉からは武官使ってまで、ずっと嫌がらせを受けて来た。妹だって、何もしないだけで多分私をよく思っていない。
「そんな……どうして国王陛下に言わなかったんですか!」
ミナクはどうなのよ、と言いたい。ミナクだって、ずっと我慢していたくせに。
「言っても無駄よ。姉のほうが嫡子なんだし」
私とアルフォンスだけが母さんの子。王妃は我が子には優しいが、表に出さないだけで、私とアルフォンスをよくは思っていない。所詮私は形だけの王女。
「とにかく、二人ともこれからは無茶はしないでくれる? これ、俺の連絡先だから、何かあったら連絡して。今日は遅いから、俺の家に泊まってくと良いよ。武官に見張らせるから」
武官を増やしたとはニュースでも放送されていたけれど、実際のところ階級はどうなのだろう。
「武官て、どういう武官?」
階級が低いなら雇っていてもお金の無駄である場合が殆どだ。
「特殊から妖精初級までだよ。俺が院長になってからは増やしたし」
コノハ家でも伝説初級までだ。
「ハル院長って思った以上にお坊ちゃまなのね」
最高で私と同等の力量というわけか。けれど、妖精村武官がいれば月城総合病院は、これからも安泰だろう。
「とにかく点滴終わったら裏口から家入って休んで」
病院に泊まらずハル院長の家ってことは、何かが動きはじめているのだろうか。
「ええ、分かったわ」
いつの時代も物騒ね。
「セナ王女、すみません……。私のせいで……」
だから、ミナクのせいじゃないのに。私がセレナールを許せないがために見捨てたことがいけなかった。
「ミナクのせいじゃないから。もう自分を責めないで。ミナクの方法は間違ってはいなかったわ。向こうの方がスピードに長けていただけよ」
ミナクの温もり。とても温かい。このまま眠ってしまいそうだ。
「スピード……。どうやったら強くなれますか?」
さっきは、私から離れるみたいなこと言っていたのに。けれど、まだデート出来るなら、私はもう何も望まない。
「あなたはあなたのペースでいいの。いきなり、これまでの生活スタイル変えたら逆にストレス溜まるわよ?」
私がそうだった。早くゆとりを持ちたくて猛訓練して倒れたことがある。何事もマイペースは大事だ。
「そうですね……。でも、もうこれ以上セナ王女に傷ついてほしくないんです」
傷付く……か。傷付いてきた記憶はあまりないが、古代の記憶だけでは位置付けがしがたい。きっと私もセレナールみたいに傷付いたことあるのかもしれない。
「おい、ミナク! よくもセナさんをこんな目に遭わせてくれたな!」
カラルリがミナクを殴ると同時に、セレナールは私を引っぱたいた。
「セナさん、最低! 消えてよ!」
はあ。このようだとキヌカさんが、あの場を収めたのだろうけど、またセレナールに恨まれる要素が増えてしまった。
「病院で暴れるのやめてくれるかな?」
ハル院長の指摘でカラルリとセレナールは大人しくなった。その時、あるチラシが落ちた。私はチラシを拾った。
『銀髪美人女子高生を助けようとして第六王女毒矢に刺される』
人は相手より有利でありたいと願う生き物だ。こういったものも、誰かのストレス発散で、それが広がっているに過ぎない。けれど、こういったのが原因で芸能人の緑風華などが増えつつある現代。
「姉が月城総合病院に行けと言うからデザートも食べず来てみたら、全く君は次々に問題を起こすヤツだな」
メノリは用事だろうか。確か、親が大手企業の重役で、似たような親を持つ同士の集まりが頻繁にあるとか。
「委員長……。私はどうすれば良かったんだろう」
ミナクはメナリの前で崩れ落ちた。
「セナ王女とて勝算のないことはせんだろう。セレナールを救おうとしたならそれでいいのではないのかね? 他の者は野次馬だったのだろう? だったら、一人で飛び込んでいった君は寧ろヒーローではないか」
確かにメナリの言う通りだと思う。けれど、ミナクは多分納得しない。
「けれど……」
やっぱりセレナールを見捨てなければ良かった。
「逆に聞くが、100勝0負なんて人いるのかね? ハル院長とて救えない患者を何人も見てきただろうに。それでも、この病院があるから、我々はかなり助かっている。君も武家なら武士を続けたらどうだ?」
そうよね。ミナクがどう思うかは分からないけど、少なくとも中途半端が一番何も身につかない。けれど、ペースが遅くても続けていれば身に付くものである。
「そうだな。めちゃくちゃ焦るけど、勉強だって委員長には絶対適わないし、今を崩しちゃいけないんだよな」
割り切れてはいない。けれど、この子は呑み込みが早い方だ。きっと、将来も大丈夫。
「私には適わないだろうな。けれど、学年三位は充分努力しているほうだと思うぞ?」
えっ!
「ミナクって頭良かったの!?」
思わず声に出てしまった。
「セナ王女、まさか私が勉強出来ないとでも思っていたんですか?」
思っていた。伊達にチャラいんじゃなかったのか。勉強が出来ないのは私のほうだ。結局ミナクのほうが綜合としてはバランスがいい。
「え、ええ、ちょっとね」
けれど、やっぱり以外。テストとか0点かと思っていた。
「メノリはその後どう?」
委員長がどうかしたのだろうか。
「随分良くなったよ、君の父親のおかげでな」
そんなに前から通っていたの? 持病かしら。
「委員長、持病あったの?」
けれど、聞いたこともないし、委員長は常に落ち着いていて、勉強も出来て、運動だって出来る。やはり、持病があるようには見えない。
「話せば長くなるが、私が幼稚園の頃、私と姉は強盗目的の誘拐にあったのだよ。私と姉はフェアリーホルムで眠らされ、気がつけば暗い部屋で椅子に縛り付けられていた。私は即ロープを緩め椅子の後ろに書いた数式で姉に力を譲渡したが、姉は酷く怯え泣きながら立ち上がり、その瞬間、姉は水槽に顔を付けられてね。私は咄嗟に駆け寄り水槽を壊した。その時に、父がお金を持って来なければ私か姉どちらかを殺すと言われた。姉はひたすら助けてほしいと泣け叫び、仕舞いには私を殺してほしいとも言った。それだけ恐怖に包まれていたわけだな。そして、私と姉は浴室に連れて行かれ、熱いお湯に顔を付けられた。ジタバタする姉に私は何度も譲渡した。三時間後、父が身代金を持って来たが、姉は泡を吹いて倒れていて、この月城総合病院に運ばれた。気絶だと知った時は安堵したが、その後の姉は変わり果てたびたびヒステリーを起こすようになってね、ここに通うようになったのだよ。最初は薬とカウンセリングで治療していたが、兆しは見えなかった。姉は学校も休み引きこもるようになっていた。けれど、二年後好転してな、今では薬も減りカウンセリングも月イチとなった。まあ、表に出てないだけで、トラウマはあるだろうが、好転した時に勉強と運動をしはじめ、リーダシップとなり、今の姉が在るのだよ」
知らなかった。私は私以上に苦しんだ人はいないと思っていた。けれど、違う。みんな表には出してないだけで、何かしら抱えているものなのだ。そして、委員長とメナリが経験した恐怖はかなり重たい。
「委員長、そんなこと全然言ってなかったじゃないか」
私も今はじめて聞いた。委員長が薬を飲んでいるところさえ見たことがない。
「出会った頃の君は手が付けられないほど荒れていただろう。これまでクラスもずっと同じだったし、どれだけ手を焼いたことか」
メナリだって酷く傷付いただろう。それなのに委員長を続けていただなんて、本当に芯の強い子だ。
「あ、そうだっけ。でも、委員長は病気にならなかったのか?」
病気になっていても、というか入院していてもおかしくないレベルだ。委員長もメナリも。
「まあ、私はメンタルが強いからな。病にはならなかったが、姉の症状を見るのは胸が傷んだな」
そうよね。私もアルフォンスやカランがトラウマを抱えるような事態に陥れば、相手に何をするか分からない。
メナリの話を聞いて、よりセレナールが甘えと思ってしまうのは私だけだろうか。
「セナ、大丈夫?」
アルフォンス。とカラン。
「大丈夫よ」
私はアルフォンスとカランの手を握った。
「あの、どちら様ですか?」
ミナクはカランを知らないんだっけ。
「第二彼氏」
私はわざとカランの腕を組んだ。
「あ、カラン王子……」
やっぱり紋章って目立つものなのだろうか。王室の人間も皇室の人間も紋章を付ける決まりがある。
「セナお姉様の彼氏ですか?」
彼氏! カランがそう思うなら、他の人もそうだろうか。
「はい、セナ王女とは真剣に交際をしています」
ミナクったら。本当にそうだったら、どれだけ嬉しいか。
「違う! セナさんと交際しているのは私だ!」
人というのは分からない。本当に最初はめちゃくちゃいい人だと思ったのに。今は友達以下になっている。
「やっぱりセナさん狡い」
せっかくカランと会えたのに、これでは感動の再会が台無しだ。
「あの、セナお姉様が何かご迷惑を……?」
カランも真面目な性格だから人に騙されがちだったりもする。
「もう暗いから、みんな俺の家行こうか」
時計を見ると22時半。この頃、やたら時間が早く感じる。

ハル院長の実家は、とても広かった。ハル院長て貴族並みにお金持ちだ。桜野とか言う知らないところにいた時もそうだったのだろうか。ハル院長は、妖精村の人間ではない。ハルミ先生が事故で亡くなり、当時、骨董屋のバイトをしていたキクスケさんによって、ここへ飛ばされたとか。けれど、ダブルで高校と大学に通えて研究も出来て結果はプラスだったと言っていた。
「ミナク、君も諦めないことが大事だと思うぞ?」
まだ話続いていたのね。
「委員長には、また背中押された。私はもう泣き言は言わない。セナ王女に相応しい男になる」
本気かしら。何人妾作るのだろう。これでクレナイ家は安泰ね。
「まあ、そこまで固くならんでもいいと思うが、君の場合、文武両道なのだし、今のままでいいんじゃないのか?」
いくら、運動が出来ても勉強が出来ないのは考えものかもしれない。将来のこともあるし、コルナお姉様みたいに王室に引きこもりより、私はちゃんと働きたい。
「セナお姉様、キクリ家のカラルリさんとは交際してないんですか? もう好きじゃないんですか?」
どうしてミナクがいるのに聞くのだろう。古代のことなら確かに好きだった。でも、少なくとも今は友達でさえも勘弁して欲しいくらい距離を置きたい。
「好きじゃない。あの時、カナエが結界かけたせいで、私がセレナールから恨まれてるし。ハッキリ言って、セレナールとカラルリには別荘に来てほしくないし、拒むつもりよ」
そう、もう来てほしくない。元々、あの二人が兄妹のような仲なら、二人で仲良くすればいい。
「そういえば、セレナールを襲うよう依頼したのはユメだったぞ」
え、ユメさんが!? 少し前にアルフォンスと別れたことは知っていたけれど、どうしてセレナールを!? それにあれは、ミルケット伯爵家の武官ではなかった。
「でも、ユメさんがセレナールを恨んでいただなんて考えられないわ!」
何かがおかしい。けれど、セレナールは持ち前の容姿のせいもあってか、女からはかなり恨まれやすい。だから、あの時、カナエを逆恨みしたことが今でも分からずにいる。セレナールなら、いくらでも男なんかいるでしょうに。
「人は分からない生き物なのだよ。グループから抜けた方が新しい出会いはあるだろうに、ユメもセレナールも抜けようとしない。前世が関わっているのだろうけど、人は無意識に不幸を選んでいると私は思うがな」
不幸を選ぶ? ちょっと非現実的に思える。けれど、委員長同様、メナリも将来は歴史研究家を目指しているんだっけ。歴史に興味持つ人やたら多いわね。セリルも考古学者目指しているし。
「え、ユメさんとアルフォンス王子別れたんですか?」
そういえば、アルフォンスから聞いただけで、みんな知らないのだった。
「ええ、アルフォンスから何度も好きになれないと最終的には別れを切り出すって聞いてたわ。合わなかったのよ。一方的な好きではこうなってもおかしくないと思う」
一方的……。そういえば、私もそうだ。ミナクと付き合ってもいなければ、中途半端なことしといて、中途半端な関係でいる。それでも、今すぐには私も結論が出せない。
「恋愛は分からんが、一緒にいて楽しくないなら時間の無駄だと思うがな」
委員長もメナリも恋愛は興味無いのだろうか。少し羨ましい。私もここへ来る前はそうだったし。

気が付けば眠っていた。起きると誰もいない。慌てて部屋を出ようとしたら紙飛行機が窓をつついている。私は窓を開けた。そして、紙飛行機を手に取り、窓を閉めた。
紙飛行機を開くとミナクからだった。
『紅葉公園で待ってます』
何か話でもあるのだろうか。私はパジャマのまま部屋を出ようとした。が、使用人に見知らぬ服に着せ替えられた。ここ使用人もいるの? ハル院長お金持ちすぎるわ。
私は朝食もとらず紅葉公園へ駆け出した。
月城総合病院は、紅葉町の中間地点にあるから、移動がしやすい。走ればどこも10分以内で行けてしまう気がする。
紅葉公園ではベンチに座ったミナクがいた。もう昼過ぎなせいか、チラホラ子連れ主婦もいる。
「ミナク!」
あれ、髪が黒くなっている。ピアスも外している。
「セナ王女、ずっと好きでした。そして、ずっと身分にとらわれ気持ちを伝えられずにいました。正式に交際してください。セナ王女に相応しい男になります! お試し期間だけでもいいので交際してください!」
断れるはずがない。私がずっと願っていたことだから。
「ええ、喜んで。でも、他の女の子はどうしたの?」
多分切っている。内官の報告は正確だから。
「完全に切りました。セナ王女しか見ません!」
嬉しすぎる。私はピンクのガーベラの花束を受け取りながらミナクに抱き着いた。
「ふむふむ、お二人は今交際されたのですな」
ナミネ!?
全て思い出した……。
「そう……だったのね……私……」
私はその場に崩れ落ちた。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

あとがき。

近頃の純愛偏差値はサイドストーリー?というほど、初期と比べ色んなキャラの視点入りすぎて、書くのも大変。

今のセナなら、現世は変えられそうだけど。
シャム現れたら分からないし。

別れるにしても、2020年の時のようなものではなく、綺麗に別れて欲しいと望んでしまう。

前世や、現世の続きの過去があったとして、人は違う道を歩むのか、また同じ道を歩むのか。
どうなんでしょうね。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。

また、程度によりますが模倣はご遠慮願います。
詳しくは《カテゴリ》→《説明事項》→《模倣のご遠慮願います》をご覧ください。

小説の無断転載もご遠慮くださいませ〜♪
純愛偏差値 未来編 一人称版 135話

《ミナク》

数日前、セナ王女とセレナールさんが体育館で椅子に縛り付けられた。助けに行ったカラルリさんは、迷わずセナ王女の元へ駆け出し、セレナールさんは黒鈴酷華されてもおかしくない状況になっていた。
後から見た体育館の防犯カメラの映像を見る限り、カラルリさんは何の武器も使わず丸腰でセナ王女のみを助けようとしていて正直呆れた。
結論として、体育館の事件は仕組まれたもので、黒幕はセイさんだった。
月城総合病院に搬送されたセレナールさんは今日退院する。そして、もう間もなく、当事者と後から駆け付けた者同士の話し合いがはじまるのである。
ハルミ先生とショウゴ先生、委員長が仲介として入るから、いつもみたいには揉めないだろうとは思うけれど、やはり不安だ。アルフォンス王子だってセイさんの兄弟なのに、セレナールさんはセナ王女のみを目の敵にしている。私はカラルリさんから相当苛立たれているし、カナエさんもそのことで、かなり心を痛めている。カナエさんには、申し訳なく思っている。けれど、どうしても私はセナ王女を手離したくない。
別荘のチャイムが鳴り、使用人がグループのメンバーと仲介人をリビングに連れて来た。
カナエさん、見るからにかなり疲れている。
「カナエさん、大丈夫ですか?」
私は思わずカナエさんに駆け寄った。
「カナエは大丈夫です。今日は話し合いなので、セナさんの傍には行かないでミナクはカナエの隣にいてください」
カナエさん、今にも倒れそうなのに。
「分かりました」
みんな、物凄く険しい顔をしている。
「話し合いはじめるけど、最初に言っておくわ。状況が状況なだけに、誰も取り乱さないで冷静に話してほしいの」
かなり無理があるないようだけど、ハルミ先生の言うことなら……
「ふむ、言い方が甘いように思うがね? 一度取り乱した者は10分間別の場所に移動してもらう。三度取り乱した者は退場。第三者の私が言うのもなんだが、取り乱せば取り乱すほど解決からは遠ざかるだろうな」
まるで、クラスにいるような錯覚に陥ってしまう。けれど、これくらいハッキリ言わないとルールなしでは、必ず取り乱す者はいるだろう。
「じゃあ、意見のある人は順番に言ってくれる?」
進行、ハルミ先生で大丈夫だろうか。
「私、セナさんにもみんなにも見捨てられて人生奪われかけた。納得いかないです。それも、セナさんは自分だけに結界かけて自分だけ身を守ってた。だったら、カラルリは私を先に助けるべきだったと思う。大学生に結界は解けないから」
け、結界!?
「あの、結界かけてたんですか!?」
映像からは全く気付かなかった。誰が気付いてセレナールさんに話したのだろう。
「はあ、君は最初の話を聞いていたのかね? 幸い君は事件の当事者からは外れるから話し合いをやめて帰ってもいいんだぞ?」
そうだった。思わず取り乱してしまった自分が情けない。
「悪い。気をつける」
極力黙っていよう。それにしても、セナ王女は自分に結界をかけていたのか。やっぱり、あれだけ強いと抜かりがない。私は自分の身を自分で守ることは決して悪いことではないと思うが。そもそも、結界に気付いたの本当に誰なのだろう。
この時の私はカナエさんが、ヨルクたちのグループにも加わっていて、こちらの情報を向こうに伝え、話し合いもリアルタイムで確認されていたことを全く知らなかったのである。
「私は、丸腰でセレナールが目を覚まして大学生の問いかけに答えるのは相手の思うツボだと思うし、本来自分の身は自分で守るものだと思うわ」
確かに正論ではある。けれど、セレナールさんは無抵抗だ。そもそも、カラルリさんが武器を使ってくれていれば……。ダメだ。今私がは発言すれば拗れてしまう。
「カラルリに聞くけど、あの時セナのところへ走って行ったけど、セレナールのことはどうするつもりだったの?」
カラルリさんのことだから、あの状況下で両方助ける気でいたのだろう。昔からカラルリさんは効率が悪い。そして、ここぞというときに役に立たない。まだ弟たちのほうがマシなくらいだ。
「セナさんを助けた後、セレナールも助けるつもりだった」
武官だったら確実に間に合っていないし、体育館でさえ間に合っていなかったのに。武士には向いていないな、カラルリさんは。
「どうしてセナが先だったの?」
これ本当のこと答えるのだろうか。
「嘘を言えば、私が無理矢理本心を引き出すぞ?」
そうだった。委員長は本心を引き出せる。セリルさんとは違った方法で。私も引き出された時は、クラスメイトからドン引きされたっけ。
「セナさんを取り戻したかった。よりによって、ミナクなんかに白梅まで許すとは思わず、知った時は悔しかったし、今でも受け入れられない。それでも、セナさんとはミナクさえいなければ付き合うはずだった。もう一度、セナさんと互いの部屋行き来してた日々を取り戻したかったんだ。でも、だからと言ってセレナールを見捨てたわけではない」
どんな理屈だ。思いっ切りセレナールさんを見捨てているではないか。これもセイさんの策略だろう。仲間を拗れさせることも目的のうちの一つだったんだ。
「ミナクはどう思う? ミナクもセナのほう先だったよね?」
どうして私に聞くのだろう。
「何故黙っているのかね? 気を付けて答えればいいだろう」
いや、怒らせる答えしかないではないか。けれど、聞かれた以上は答えるしかない。
「エミルさんは、扇子で吹き飛ばすのが先と言っていましたが、これは、一人一人違うと思うんです。少なくとも私は、いざと言う時こそ慣れた方法を使いたいです。セナ王女からではなく、私なりに同時に解放したつもりです」
その時、カラルリさんにコーヒーをかけられた。私は咄嗟に氷の舞でコーヒーの温度を下げた。
「ミナク! 喧嘩売ってるのか!」
はあ、やっぱりどんな答えでもカラルリさんは怒るではないか。
「カラルリ、君は退場したいのかね?」
あれ、濡れてない。カナエさんが庇ってくれたのか。カナエさんも濡れていないということは結界をかけたのか。やっぱりカナエさんには敵わない。
「カラルリ。俺も何もかも壊したい時があったから、落ち着けとは言わない。でも、今カラルリが暴れたら、体育館のことは過去ではなく恨みに変わっていく。解決のために話し合ってるんじゃない。一人一人の真実を他人同士が少しでも確認し合うために集まったと俺は思ってる」
ショウゴ先生は、一度ハルミ先生を失っているんだっけ。そして、不思議な店の店主によって奇跡的にハルミ先生を元に戻せたとか、以前チラッとカナエさんから聞いた。それにしてもショウゴ先生は好青年だから、学生時代は私みたいにグレていたとか信じられないくらいだ。
「……すみません」
カラルリさんは座った。
「カナエさん、すみません、大丈夫ですか?」
カナエさん、話し合い終わるまで休まないつもりなのだろうか。私はカナエさんに譲渡した。
「カナエは大丈夫です。譲渡は不要です。ミナクが疲れるだけです」
ラルクにしてもナミネにしても強がるところがある。カナエさんも昔から弱音は吐かない。
「確かにそうだね。慣れた方法のほうが効率がいいよね。慣れていない方法は効率が下がる」
そう、アルフォンス王子の言うように慣れていないことを本番で行えば確実に効率は下がるし、場合によっては命取りになる。
「セレナール、めちゃくちゃセクシーだね。下着姿で押さえつけられるところなんか、そそるよ」
そういえば、元々はセイさんの依頼だからセイさんも着ているけど、もう異常過ぎて言葉に出来ない。
私はセイさんからフェアホを奪おうとしたが避けられた。えっ、セイさんって運動得意だっけ?
「君、とろいね」
とてもじゃないけど運動神経いい方には見えないのに。
「ふむ、その者も頭脳戦か」
そういうことか。IQは全体が高くなくても一、二項目ずば抜けてる人は確かにいる。セイさんは、少なくとも一項目はずば抜けているのだろう。
「どうしてセナさん奪ってくれないのよ! セイに録画されてたなんて気持ち悪くて仕方ないわ!」
私もどうにか削除したいけれど、セナ王女も一度はセレナールさんに見捨てるような発言をされて苛立っていると思う。
「その必要あるのかしら? 私を先に差し出したのはセレナールよね? だから、私は今後一切セレナールを助けるつもりはないわ」
セナ王女、怒ると怖い。
「まあ、映像は私が消しておく。話を続けてくれ」
そうか。頭脳戦には頭脳戦。委員長ならセイさんのフェアホをハッキング出来る。
その時、セレナールさんが笑った。
「みんなこれ見て。セナさん、カラルリとこんなことしてたのね。ミナクと交際してるなら二股よね?」
セレナールさんは20枚ほどの写真を机に並べた。写真は全てカラーだ。そして、セナ王女とカラルリさんがデートしてるところ、口付けしているところ、肌を重ねているところのものだった。
「セレナール、こういう卑怯なことやめてくれないかな?」
確かに卑怯かもしれないけど、正直堪えた。カラルリさんの腕の中で乱れていたかと思うと悔しくてたまらない。私には桃花一つ見せたことないのに。それとも、この写真、合成なのか?
「委員長、これって合成?」
合成出会って欲しい。セナ王女は白梅は捨ててないはずだ。それに、この写真どこか違和感がある。
「いや、カラーにはなっているが実物だな。入手経路は分からないが、少なくとも、この時代はカラルリと恋仲だったんだろうな」
この時代って。前世なんてあるのか? とてもじゃないけど信じられない。
「でも、前世なんてあるわけないだろ? 研究者の前世説も正直胡散臭いし」
だとしたら、この写真はやっぱり……。悔しい。けれど、セナ王女を憎めない。
「全く君は。女遊びばかりしているから世間知らずになったのではないのかね? 研究者云々の前に、役場で登録出来るだろう。資格所有者の殆どはそうしているがね?」
そう……だったのか。セナ王女を疑ってしまった自分が恥ずかしいし情けない。それに、よく見たら紅葉病院の近くの喫茶店は今はパン屋になっている。今はなき喫茶店が写っているなんてことはありえない。いつか歴史の本で見た喫茶店は10世紀になくなっていると書いてあった。
「メナリが言うように前世は確かに存在してるよ。この写真見て、セナも今、この時のこと思い出したと思う。この時の集合写真がこれ」
アルフォンス王子は古い写真を机に置いて、セレナールさんが置いた写真を回収した。かなり古いカラクリ家。みんな、大人になっていて、先祖と言うより本人だ。大人になったセナ王女って学生時代より綺麗になるんだな。色っぽい。やっぱり妬いてしまう。時代は10世紀より前だろうけど、こんな美女とカラルリさんが恋仲だったなんて。
「あの、この時のセナ王女の大きい写真ありますか?」
持っていたい。少なくとも今はセナ王女はカラルリさんに気はないし。辛くてもセナ王女をもっと知りたい。
「あるけど、話し合い終わってからね」
あ、そうか。話し合いの最中だった。その時、フェアホが光った。机の下で見てみると、委員長からだった。
『全く君は空気の読めんヤツだな。あの写真は両者共、3世紀のものだ。セナ王女の写真、特別カラーにしといたぞ。後は、話し合いが終わるまで気を逸らさないでくれ』
委員長は3世紀のセナ王女の写真をカラーで3枚送ってくれた。私は即保存した。今は話し合いに集中して後から見よう。
『ありがと、委員長』
突然言われたから疑心暗鬼だが、本当に前世があるとして、3世紀とはいえ、カラルリさんに全て許してたなら、セナ王女の白梅がほしくなってしまった。
「セナさん、カラルリが好きなのよ。今、ミナクと交際してても、いずれカラルリの元へ戻ると思う。ずっとそうだったから。セナさん、転生するたびにカラルリと交際してたもの」
セレナールさんも前世の記憶があるのだろうか。
「セレナール、やめてほしい。私もこの時のことは何度も夢に見るが、今は今しか生きられない。あんな写真見せられても虚しくなる。私は過去ではなく、現世でセナさんと恋仲になる。
後、ミナクはよるのクラスのキュート女優のステリンとフラワー女優のタレリナのファンクラブに入ってて二人の白梅咲かせてる。雑誌ならともかく、身近な人と直接なんて私からしてみれば浮気だ」
どこで情報を入手したのかは分からないが、私はファンクラブには入っていない。ただ、ヨルクが美女に囲まれているかと思うと少し気になって、二人には近付いた。白梅は咲かせてないけど、近いことはしたし、二人は白梅卒業したと思い込んでいる。にも関わらず、フェアリーZ広場では二人とも水花を装っている。タレリナは演技力に欠けるから即飽きた。けれど、ステリンの演技力は高く、キュート女優にも関わらず水花を守っていることに関心を持ち、ギリギリのところでキュート男優に何一つ許さない男心のくすぐりに、しばらくステリンの動画は見ていた。ただ、セナ王女と知り合ってからはセナ王女に心奪われ、全ての動画を見ることは少なくなった。セナ王女の一つ一つが可憐で、何もかも奪ってしまいたいのに、壊すことは出来ない。
「ハッキリ言うわ! 確かに古代はカラルリと交際してた。キクリ家で研修生の訓練もして、終われば毎日のようにデートしてた。でも今は違う。私、カラルリと交際する気は一切ないし、ミナクが中等部の女の白梅咲かせてても、私はミナクにどうこう言うつもりはない。私はもうミナクに白梅捧げてるし、ミナクと別れるつもりは一切ないわ!」
セナ王女……。セナ王女は、今の私を受け入れてくれているのに、私は3世紀のことでセナ王女を疑ってしまった。そんな自分を酷く恥じた。
「とりあえず、話し合いに戻ってくれんかね? 昔話ならいつでも出来るだろう」
もう16時前。話し合いは13時半からはじまっている。なのに、進むどころか意見のぶつけ合いしかしていない。
「私もセナさんが狡いと思う。私とセレナールのこと、いつも後回しだったわよね? 強いから高嶺の見物。そういうのも一つのイジメだと思うわ」
はじめてユメさんが意見をした。これは、解釈がむつかしい。それに、後回しというワードがやたら引っかかる。
「カナエも、セナさんは独りよがりに感じます。二人で捕まったのなら、チームワークを取るのが筋かと。それを自分のみ結界かけたり、眠ったフリをされては、自分のみ助かりたいとしか思えません。チームワーク取ろうとしなかったことに関してはカナエはセナさんが悪いと思います」
チームワーク……。確かに、二人で捕らえられたなら、力を合わせるべきなのかもしれない。けれど、それは心の知れた仲以外厳しい気もする。ただ、カナエさんは昔から独りよがりを嫌うタイプだ。
「言いたい放題ね。セレナールとユメさんが遊びに明け暮れている間、私はひたすら訓練をしてた。後回しと言うのなら、貴族の井戸端会議なんかしてないで道場に通うべきなんじゃないの? チームワークって言うけど、そういうのは同じ力量だから出来るものなんじゃないかしら。セレナールとユメさんは、私と同じくらいの努力して来たの? 努力もしないで、力がないは甘えだと思うわ」
話し合いをしていて、色んな人の立場や事情、思いがあることがそれとなく分かった気がする。どれも間違いではないのだろう。けれど、セナ王女の言い分が一番しっくり来た。私も同じだったから。ひたすら強くなろうとしていた。いつかは、カナコさんやレイカさんみたいになりたくて、私もこう見えてひたむきに努力して来たつもりだ。
「じゃあ、今日の話し合いはここまでにしましょうか。もし、セレナールがグループが抜けるなら話し合いは終わりだけど、抜けないなら互いのこと、もっと知る必要があると思うの」
ショウゴ先生がハルミ先生を好きになった理由が何となく分かった気がする。ハルミ先生は時間をかけるタイプだ。そして、このグループも、親睦を深めるにはもっと時間が必要なのかもしれない。
そして、セレナールさんがグループからは抜けない意思を明確にし、話し合いは次回も行われることとなった。

話し合いの後、私はセナ王女と二人きりで商店街のレトロなカフェにいる。セナ王女と知り合う前、適当な女と適当に過ごしていた場所だ。
「幻滅した?」
え、幻滅って、そんなことあるはずがない。確かに嫉妬はしたけれど、今にもセナ王女を奪いたくて仕方ない。
「してません。でも、嫉妬はしました。セナ王女は大人になると絶世の美女になるんですね。そんな人と恋仲だなんて誰でも妬きます」
私は委員長から送ってもらった画像を眺めた。
「今は、古代の写真でさえカラーに出来るのね。でも何だか恥ずかしいわ」
一つ目は、キクリ家の研修生訓練用の着物姿。二つ目は、紅葉神社での浴衣姿。三つ目は、ノースリーブの真っ白なワンピース姿だった。めちゃくちゃセクシー。
「釘付けになります。あ、私の方こそ幻滅しましたか?」
私の方は現代だ。
「ううん。私と出会う前よね? でも、どこまで本当なのかは気になる」
どこまでが本当か。信じてもらえるだろうか。
「最初は興味本位でした。ステリンの動画は頻繁に見てました。ファンクラブは入ってません。白梅も咲かせてません。けど、近いことをしてしまっているので、二人は白梅卒業したと思ってます。あの後、何度か空咲求められましたが、二人の本命は弟だったんです。その相談を受けてからは連絡取らなくなりました」
そう、結局ヨルクしか見てなかったんだ、あの二人は。あの後、私はどれだけ劣等感に苛まれたことか。
「そう。どんな子? 白咲はしたの?」
顔写真は持ってない。私は二人のアカウントをセナ王女のレインに送信した。
「白咲はしてました。あの感じだと、初咲はタレリナだけで、ステリンは小学生に初咲は済ませていると思います」
二人とも男を知らないのか、直ぐに白咲をした。けれど、ステリンは定期的にしているだろう。
「あなた面食いね。動画もいかにもあなた好みだし。今もこっそり動画見てたりして」
面食い……かもしれない。
「正直、ステリンは演技力があるというだけで顔はタイプではありません。動画はたまに開くことはありますが、前みたいには見れなくなりました。私が見たいのはセナ王女のビキニ姿です」
しまった。誤解されたくない思いが変な方向に言葉してしまった。引かれただろうか。
「持ってないの。ビキニって下着みたいだから、向こうでの貴族との集まりでは、いつもワンピースの水着着てた。でも、ミナクになら……。この後、見に行きましょ?」
持って……なかったのか。めちゃくちゃ見たい。けれど、見てしまったらそれだけでは済まないかもしれない。
「あ、いえ。来月、紅葉神社で紫陽花祭りあるんですけど、行きませんか?」
何となくグループでも行きそうな気がする。
「行く! でも、浴衣持ってないわ。今から特注で間に合うかしら?」
特注か。
「どこのショップですか?」
セナ王女は私にサイトのURLを送った。
「物が悪いですね。私も今からオーダーは間に合いませんので、商店街の店行きましょう」
浴衣や着物はピンキリある。高級なものから一般人が着るような安物まで溢れをんばかりに存在している。あの古代のキクリ家の教官着が最上級だ。武家は基本最上級しか着ない。
人それぞれ好みはあるだろうけど、まがい物的なものの作りはかなり酷い。セナ王女は、やっぱり最上級なものが似合うだろう。
「ミナク、私とばかり会ってて良いのかしら? 他の女待たせてるんじゃないの?」
いきなりの逆質問。意地悪っぽく聞くセナ王女可愛い。
「適当な女はどうでもいいです。恋人でも好きな人でもないですし」
私が好きなのはセナ王女だ。
「白咲虚しくなってるんじゃないの? 手伝ってあげましょうか?」
セナ王女に言われると断りたくない。けれど、実際のところは虚しくはなく、寧ろセナ王女といると心が満たされる。
「虚しくはありません。こうやってセナ王女と会ってますし。デートらしいデートもはじめてですし」
デートなんてしたことなかった。ただ、用が済めばそれで終わりだった。ずっとそうだと思っていた。けれど、セナ王女とは用とかどうでもいい。ただ傍にいるだけで満たされる。私はセナ王女を通して本当のデートを知った。それがどれほどに幸せなものかも。
「ビキニ買う時に下着も買うわ」
え、たくさん持ってるんじゃないのだろうか。それとも定期的に変えているのだろうか。
「あの、ついこないだまでスカート短かったですが、カラルリさんに……なんでもありません」
今日のセナ王女の格好が以前に比べ柄も入っていてスカート丈も長いから、つい私と出会う前のことを気にしてしまった。
「見られたわ、カラルリに。でも、その時はいい人って思ってたから気にも止めなかった。今だったら絶対いや」
そっか。だから、急にスカート丈が長くなったのか。
「今のファッション似合ってます。ただ、セナ王女だったら短いスカートファッションも似合うと思うので……なんでもありません」
二人きりの時に着て欲しいは都合良すぎる。
「ミナクと二人の時ならいいわよ」
やっぱり付き合いたい。いつかは気持ちを伝えていいのだろうか。
「やっぱりいいです。正直、キープはやめるつもりありませんし、あまり恋人みたいなことするのも気が引けるので」
素直になれない。本命に限ってどうして。
「あ、別にミナクのプライベートはそのままでいいし、とやかく言うつもりないわ。グループでも会いたいし二人でも会いたいの。今の関係が心地いいっていうか、ただミナクといたいの」
それって、私の本命にはなりたくないということだろうか。
「今の関係がいいって、まるで妾でもいいような言い方ですね。私はカラルリさんの代わりですか?」
当たってしまった。が、一度言葉に出したことは元には戻せない。後の祭りだ。
「妾でもいい。ミナクと一緒にいられるなら。こんな風に二人で会えるなら私の知らない外野なんてどうでもいい」
私は思わずセナ王女に口付けをしてしまった。慌ててセナ王女から離れると、セナ王女は頬を赤らめていた。ダメだ。セナ王女がほしい。私のほうがセナ王女から離れられなくなっている。
「セナ王女は本当に男を知らないんですね」
力量は、もはやカナコさん、レイカさんレベルかそれ以上なのに、恋愛のことは全く無知。やっぱり、世間知らずのお姫様だ。いや、それは違うか。世間知らずと言うのは、良いところのお嬢様でもなければ勉強が出来ない人、ニュースを見ない人でもない。貧乏な人でもなければ、不幸な境遇の人でもない。本当の世間知らずは、自分を持っていない人間のことを言う。的な持論を昔、ヨルクがラルクに言っていた。今となっては、そんな感じもしてくる。世間知らずは私のほうだ。
「知らないわよ。ミナクしか。向こうにいた時は恋愛するだなんて、とてもじゃないけど考えられなかったし、そもそも貴族なんて上辺の付き合いだわ。少なくとも私にとってはね」
セナ王女は世間知らずなんかじゃない。ちゃんと人との付き合いは距離を置いて来た。何となく、今疎外感を覚えているのは気のせいだろうか。私はセナ王女の肩を抱き寄せた。
「だとしたら、はじめての恋愛は私でいいんですか?」
セナ王女は困ったような顔をした。少し迫りすぎただろうか。
「ミナク、場所変える?」
セナ王女の言葉でハッとした。無自覚でセナ王女のスカートを太ももまでめくりあげていた。セナ王女は私の手を掴んでいる。私は咄嗟にセナ王女から離れた。一瞬だけ、私のみ昔の状況に巻き戻されていた。目的まで待てず、デザート食べてる女を急かせてた。
「すみません、浴衣見に行きましょう」
セナ王女は苦笑した。そして、レインボーカードでセナ王女が会計を済ませた後、カフェを出た。レインボーカードか。私とは一生無縁だ。
「あ、浴衣屋って、こんなに近くにあったのね」
セナ王女に腕を組まれたばかりなのに、セナ王女は呉服屋を見るなり駆け寄った。少し残念な気持ちで私はセナ王女を追った。にしても、人がやたら多い。そうか、紫陽花祭りがあるからか。オマケにチラシも配っている。……。ヨルクが法被を着てチラシ配りをしている。
「セナ王女、他に行きませんか?」
セナ王女はピンクの浴衣を手に持っていた。けれど、作りは荒い。それに、殆どが屋台での販売だ。
「でも、この浴衣がいいわ」
確かに、上物ならセナ王女に似合うだろう。
「セナ王女、作りが荒いです。こういう安物は直ぐにくたびれます。馴染みの呉服屋があるので、そこへ行きましょう」
ヨルクにこんなところ見られるわけにはいかない。
「うーん、分かったわ」
私はセナ王女の手を握り、小走りに屋台から離れた。
「ここです。ここで仕入れているんです、どの武家も。ここは上物しか売っていません」
やっぱり、高い店となると一般客はいない。その代わりお金持ちそうな客はいるけれど。
「そうなの。ミナクが選んで」
セナ王女なら、やっぱり淡いピンクの優しい柄が似合う。
「好きな花とかありますか?」
あの淡い桜柄が似合うとは思うのだけど。
「特にないわ。でも、着物も素敵ね」
そういえば、ナノハナ家では毎年、茶道体験が開かれている。ナクリさんの教室ならヨルクやナミネに会わなくて済むかもしれない。
「着物も買いますか? 近いうちにナノハナ家で茶道体験が行われるので、浴衣と一緒に買っておいたほうがいいと思うんです」
と言ったものの、ヨルクとラルクからチャージしてもらったクリスタルカード残高は浴衣の分だけだ。
「そうするわ。どれが良いかしら? けれど、ここってリボンの帯もなければワンピースの浴衣もないのね」
作り帯のことか。作り帯は一般人が浴衣とセット買いしていることが多い。現代ではワンピースタイプの浴衣も販売されていて、元の作法が薄らぎつつある。昔は、みんな着物を着ていたのに。あれっ、今一瞬過った映像は何だったのだろう。ナノハナ家で花火をしていた。けれど、着物からして少し時代は古い。まさか、前世なのか? いや、私は前世など信じていない。
「作り帯のことですね。誰か着ていたんですか? 帯を結ぶのは今や殆ど武家ばかりで、一般人がセット売りのものをよく買ってますね。ワンピースタイプの浴衣も本物の浴衣に比べたら動きやすいので人気が出ているんです。でも、セナ王女はちゃんとしたものを着た方がいいと思います。帯もこういうアレンジありますし」
私は半幅帯と兵児帯とのコラボアレンジの画像を見せた。
「可愛い! 試着室で着せて!」
いや、流石に試着室にまで入るわけにはいかない。
「店員さんに着せてもらってください」
ここは何人か優秀な人材を雇っている。私はセナ王女に淡いピンクの桜柄の浴衣とチェック柄の黄色い帯び、白い兵児帯、帯結び、肌着、その他一式を渡した。
「ご試着ですか?」
え、今日はキヌカさんいるのか。
「ええ、浴衣はじめてなの」
私は後ろを向いた。
「あ、王女様でしたか。今、着付け致します」
キヌカさんは、この冬桜呉服店・当主の娘で小さい頃から店を手伝っている。ナノハナ家のナノハさんと同い歳でそれなりに仲が良い。
「彼氏に着付けてもらうから大丈夫よ」
彼氏って……。
「ふぅん、あなたまさかセナ王女までたぶらかしたの? 本当、とんでもない子ね。だからカラルリがいやがるのよ」
いや、カラルリさんは別の理由で嫌っている気がするが。
「その、セナ王女とはごく最近仲良くなって交際はしてないけど、いつかする感じっていうか」
しまった。久々に会ったから思わず空回りしてしまった。
「そういうのを遊びって言うの! 王女を弄ぶなんて、どれだけ重い罪か分かっているの?」
分かっている。けれど、身分違いでも私はセナ王女と一緒にいたい。
「あなたも武士なの?」
そうか、セナ王女は分かってしまうんだ。上物を扱っている呉服屋はだいたい昔は武家だった。というか、分家だった。けれど、時代と共に呉服店を営むようになったのである。お武家連盟には加わってはいないものの、第一出動などの応援に加わることがあり、そこそこの力量は持ち合わせている。
「はい、昔はここも武家だったそうですが、時代と共に呉服店を営むようになりました。けれど、呉服店と武家は親戚のようなもので、武家に最上級の品物をお作りしている職柄、私共も小さい頃に武士の特訓も行っております」
キヌカさんはナノハさんほどではないが強い。特に舞はかなりの腕前だ。
「そう。ここに越してきたけど知らないことばかりだわ。ミナクは思ったより人脈あるのね。帯はミナクに結んでもらっていいかしら?」
人脈というか、身内というか。どうなのだろう。
「はい、帯留めは、こちらのようなものもございますが、どうなさいますか?」
えっ、ここはずっと組紐タイプのものしか売られていなかったのに、つまみ細工などのアレンジがある。
「いつから仕入れてんだ?」
パールとか一般人の間では人気だけど、武家は合わない気がする。
「あなた、何も知らないのね。半年前のお武家連盟会議で、リリカがオシャレ締めも取り入れたいって言ったことで、黙っていただけで、みんな同じこと思っていたみたいで即決されて、仕入れ始めたのよ」
そうだったのか。リリカお姉様はやたらオシャレばかりしている。彼氏1人いないのに。
「ミナク、どれがいいかしら?」
なんだか、本当に恋人みたいだ。
「ワンポイントならパールを入れると映えると思います」
王族ならそのほうが多分合う。ここにあるのは全て、最上級の職人が手がけている。そういう馴染み同士が助け合っている店だから、ずっとここで買っている。
「じゃあ、そうするわ。あと、着物も買う予定なの」
着物までは一括出来ない。けれど、セナ王女にばかり払ってもらっているから、ちゃんとお返しもしたいし、セナ王女に良いとこ見せたい。ローンで買おう。
「まあ、そうでしたか。ありがとうございます」
私は弟二人に、もう少しチャージしてもらえないかレインした。
「セナ王女、弟からクリスタルカード、チャージしてもらったので浴衣は今日買います。着物はローンで買います」
するとセナ王女はクスリと微笑んだ。
「気にしないで。私が欲しくて買うんだから。でも、買ってくれるならこのパールだけ買って欲しい。ミナクからの最初の贈り物として」
でも、それだけでは私の気が済まない。
「ですが……」
その時、キヌカさんに扇子で肩を叩かれた。
「あなた、ヨルクとラルクからお金むしり取ってるの? そんなだと将来ロクでもない人間になるわよ!」
もう既にそうだ。
「ミナクが独り身だったら私が引き取るわ」
嬉しいけど、ヒモみたいで恥ずかしい。やっぱり、今後はセナ王女のためにも真面目に生きるべきかもしれい。一応大学まで行って就職はするが、前までは、正直適当な女と結婚して高校教師になって女子高生と遊びまくろうって思ってた。けれど、セナ王女と今の関係になった以上、ちゃんとケジメは付けたい。
「あなた本当に情けないわね」
改めて、私はずっと情けない生き方をして来たのか。過去の自分を今更ながらに恨んでしまう。
キヌカさんはセナ王女を連れて試着室に入った。鼓動が高くなるのを感じる。女の浴衣姿なんて、いやってほど見てきたのに、やっぱり何もかも違うんだ。とっくに自覚していたけど、何度も何度も自分に嘘をついていた。私はセナ王女に完全に惚れている。好きでたまらなくて、きっと他の男と話しているだけで妬いてしまう。セナ王女の本命になりたい。もう身分のことなんか考える余裕がなくなりそうだ。
「ミナク! 帯お願い!」
キヌカさんは試着室から出て来て、セナ王女はカーテンを開けた。めちゃくちゃ似合ってる。さっきより胸の高鳴りが増している。
「お手並み拝見ね」
キヌカさんは私の肩をポンと叩いた。私は試着室に入ってカーテンを閉めた。やっぱり、着付けがあるから、ここの試着室は広くて助かる。でも、こんなに密室ははじめてで鼓動がいつまでも速いままだ。
「あ、髪もまだ結ってないんですね」
セナ王女なら、色んなヘアアレンジが可能だ。
「髪もしてくれるの?」
セナ王女はポニーテールのゴムを外した。ストレートで腰を超えたロングヘア。めちゃくちゃ色っぽい。
「髪下ろしてたほうが似合ってますね」
ポニーテールはどちらかというとカッコイイ系に見える。けれど、髪を下ろすと女の子らしいというか、振り返らない男なんかいないだろうというくらい美人だ。
「え、はじめて言われたわ」
はじめて……か。セナ王女はチヤホヤされて来たかと思っていた。私は名残惜しくもセナ王女の髪を一旦お団子にした。
「まず、帯結びますね」
私はセナ王女を後ろ向かせた。あ、そうか。ラルクの着付けは何度化していたけど、女の着付けはいつも適当だった。妖精返しさえすれば女は喜んでいた。妖精村は妖精結びが主流だが、若者の間ではエンジェル結びが流行っている。ゆえに、祭りの時期は店で着付けをしてもらう女子やカップルが多い。
「どの結びが良いですか?」
私はフェアホ画面を見せた。着物系アプリはだいたい入れている。流行りは直ぐに増えるから。もし、セナ王女と交際出来るなら流行りは常に知っておきたい。
「うーん、ミナクが選んで」
セナ王女っていつもこうなのだろうか。そういえは、クローゼットにある服もシンプルなものばかりだったような。
「じゃあ、この結びしますね」
やっぱりエンジェル結びが似合うと思う。私は黄色い帯を二回巻いた後、帯で羽の形を2つ作り、半幅帯の結びを終えた。そして、上から兵児帯で3つの花を作って半幅帯と絡めた。
「わあ、素敵!」
セナ王女に喜んでもらえると、めちゃくちゃ嬉しい。自分を認められたというより、楽しさが増す。
「とてもよくお似合いです」
セナ王女はドレスだけでなく和服も似合う。私は抱き締めたいのを我慢し、セナ王女の髪を再び下ろした。その時、外で叫び声がした。私とセナ王女は咄嗟に試着室から出て、店からも出た。
すると、セレナールさんが武官に押し倒されていた。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

あとがき。

思った以上に長くなってしまったー!
そして、最近の純愛偏差値、武家的じゃない。

でも、ナミネ・ヨルク視点のみじゃなく、色んなキャラの視点のほうが、そのキャラの純を明らかに出来るような。

にしても、1話8000文字には収めたいのだけどな。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。

また、程度によりますが模倣はご遠慮願います。
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