日常のこととかオリジナル小説のこととか。
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ashita
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地主(土地貸してます)
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漫画やアニメを見るのが好きです。最推しはフーディーニ ♡
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ブログ、もう書かないと思ってました。
けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。
小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。
純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。
ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。
小説、ぼちぼちマイペースに書いてゆきます。
よろしくお願い致します。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
お知らせ。
イラストは現在「ナノハナ家の日常」に載せております。サイドバーにリンクあります。
また、「カラクリよろずや」にて無料のフリーイラスト素材配布もはじめました✩.*˚
フリーイラスト素材も増やしていく予定です(*'ᴗ'*)
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
模倣・無断転載などは、ご遠慮ください。
ブログの小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
小説・純愛偏差値に関しましては、武家名・貴族名(程度による) / 及び、武官の階級 / 扇子・羽子板・花札・百人一首・紙飛行機などのアイテム使用方法の模倣の一切を禁じております。
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X @kigenzen1874
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ブログ、もう書かないと思ってました。
けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。
小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。
純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
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〈資格履歴〉
2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
→漢方コーディネーター 合格
→薬膳調整師 合格
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〈資格証明バナー〉

2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
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→鉱石セラピスト 合格
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→お点前インストラクター 合格
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2025年05月19日
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2025年07月01日
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〈資格証明バナー〉

純愛偏差値 未来編 一人称版 110話
《ヨルク》
朝が来た。
今日、私は氷河期町の崖を登る。昨日は、そのことでナミネと揉めてしまった。けれど、私だけ何もせず見ているだけは、心のどこかでいやになっていた。
出来るか出来ないかではない。私も、カラルリさんやアルフォンス王子のように挑戦してみたい。
「ねえ、ラルク。ここの朝食美味しいよね」
確かに、停電真っ只中なのに、こんなにたくさんの凝った料理を作れるのは珍しい。
「そうだな。紅葉町では食べられない味だろうな」
あの後、結局祭りを楽しむことは出来なかった。その前にナミネが私を突き飛ばし走って行ったのである。市場では色々買ったけれど、ナミネに何も聞かず勝手に色々買ってしまったからナミネは必要としないかもしれない。落ち武者さんは、氷河期町で食べる用にすればと言っていたけれど、もうそれでいいだろう。
みんな真剣な表情だ。昨日、登りきったのは、ナミネとセナ王女、ラルクだけだから。
「あ、そういえば、アヤネさんのお姉様、春風町にいましたよ」
何となく、アヤネさんの表情が強ばった気がする。
「そ、そうですか」
「せっかくいるのですし、お会いになったほうがいいのでは?」
「いえ、その必要はありません」
あまり仲良くないのだろうか。
アヤナさんのほうは、アヤネさんと違って気作な人だったな。
「その汚れた雪山登山服で行くのかしら?いっそ、お姉様に助け呼びましょうか?」
どうして、リリカお姉様はここまでアヤネさんに突っかかるのだろう。
「やめてください!姉とは随分会ってませんし、実家とも疎遠です!」
やっぱり、あまり仲がいいわけではなさそうだ。
「でも、そのままでは臭うし、変えもないなら、こっちが迷惑するわ」
そう言うとセナ王女は、使用人を呼ぶかのように仲居さんを呼んだ。王女だからと言って、仲井さんも、下べのような扱いをされるのはいやだろう。
「はい、お呼びでしょうか」
ここの仲居さんの着物は艶やかだな。いつも、クレナイ家の使用人の着物しか見てなかったから、つい比べてしまった。
「仲間が服汚したんだけど、洗ってくれないかしら?」
「そういうのは、こちらでは受け付けておりません。タライをお貸ししますので、そちらでお洗ください」
やっぱりそうなるよな。仲居は使用人の仕事などしない。宿も本来、客が泊まる場所だし。
「なあ、アンタ。氷河期町のシャムに惚れてんだろ」
落ち武者さん、また知らない人に喧嘩売ってる。
「氷河期町には行ったことはないですが」
この仲居さんもシレッとしてるなあ。
「ふぅん。じゃあ、この写真も手紙もアンタのじゃないんだ。じゃ、持ち主探すため春風町中回る」
何故いつもいつもそうやって無理矢理人を動かそうとするのだろう。
「やめてください!返してください!」
「だったら、洗え!こっちは、バイトで忙しいんだ!暇なアンタと違ってな!」
もうっ、落ち武者さんのせいで、仲居さん泣いちゃったじゃない。
「落ち武者さん、そういうのよくないよ。仲居さんは使用人じゃないんだから」
「こうでもしなきゃ誰も洗わないだろ!人見下しアヤネの臭いにとっととケリ付けたいんだよ!」
ため息が出てしまう。汚してしまったなら仕方ないし、アヤネさんもアヤネさんでトイレ用のテントに入ってくれれば……。とにかく、こちらの問題を他所に押し付けるのは好かぬ。
「分かりました……」
仲居さんは、泣きながら放置していたアヤネさんの雪山登山服を手に持ち部屋を出て行った。なんだか、気分が悪い。
せっかく泊まった宿なのに、これではメンバー全員が悪印象になってしまった。
「じゃ、今日は人見下しアヤネはお留守番ってことで」
雪山登山服がないのなら行くに行けない。あのような寒いところ、防寒具なしでは命を落としに行くようなものだ。
「私も行きます!」
そうは言っても服はどうするのだろう。
「アヤネ、あなた無茶振り過ぎるわ。さっきだって、仲居に嫌われるような真似して本当気分が悪い」
「カナエも同類だと思われるのは心外です」
朝からまた揉めごと。いつものこととはいえ、見知らぬ仲居さんを巻き込んでしまったのは私もいい気にはなれない。
「へえ、本当にいたんだ」
アヤナさん。来るとは思ってなかった。
「本当だあ。久しぶりだね〜アヤネ」
「お姉様……」
またアヤネさんの顔色が悪くなってる。
「アヤナ?相変わらずね。今も社交界行ってるの?」
そうか。牡丹町は王室のあるところだ。顔見知りでも何ら不思議ではない。
「セナ王女、お久しぶりです。ええ、頻繁に参加しています。牡丹町は停電になっても、政府が優遇してくださるので、いつもと変わりない暮らしをしております」
貴族は今でも特別扱いなのか。氷河期町の住人は、日々暮らしに困っているというのに。裕福な人ほど優遇されるのは、理不尽にも感じる。
「そうよね。私も王室にいた頃は何不自由ない暮らしだったわ。でも、私はスポーツが好きだから、こうやって冒険してるの」
セナ王女の力量はスポーツという言葉では収まらないだろう。
「そうでしたね。セナ王女はフェンシング大会でも常に一位でした」
貴族の間でも、そういうイベントがあるのか。
「話の途中悪いんだけど、アヤネのお姉様。アヤネが雪山登山服汚して無理矢理ここの仲居に洗わせたんです。それだけでなく、別荘があるのに武家の家に泊まっては何もせずで迷惑しています」
やはり、リリカお姉様は主張するか。アヤネさんが引っ越してきた時は、リリカお姉様もカナエさんも仲良くしていただろうに。
「あはは、やっぱりどこでも役立たずね、アヤネは」
笑うところだろうか。
「アヤネは不器用だからね〜」
「あの、私、今日も氷河期町に行きたいです!」
今それを言うところだろうか。
「馬鹿ね、そんな格好で行けるわけないじゃない。アヤネはここにいなさい」
アヤナさんって、どんな人なのだろう。
「でも、アヤネって紅葉町でやっていけてるわけ?」
この3人はアヤナさんと特別親しい間柄だろうか。
「去年は、カナエと同じクラスでした。今年もですが、クラスにはあまり馴染んでいません。友達もカナエたちのグループのメンバーだけだと思います」
そういう人もたくさんいると思う。現に私もそうだし。友達などいなくても人は生きていける。
「あー、アヤネらしいねえ」
何だか、この人天然だな。アヤナさんと仲がいいのは不自然とまではいかないが、他のグループにいたほうが合っている気もする。
「結局、紅葉町でも自分からお友達作れないのね、アヤネは」
「お姉様には関係ないでしょう!また、お金借りに来たんですか?」
お金?アヤナさんは、いつもアヤネさんにお金を借りているのだろうか。
「あー、それなら、アヤネの宝石売ったから足りてる」
「宝石ってどれですか?」
なんというか、人のものを勝手に売るなんて、ちょっと強引だな。
「あの動物の宝石よ」
その瞬間、アヤネさんはアヤナさんを引っぱたいた。
「どうして!あれは私がとても大切にしていたものだって、お姉様も知っているでしょう!」
「アンタ、やめな。宝石ならまた買えばいいだろ。じゃ、他のメンバーはそろそろ行くぞ!」
このまま、アヤネさんを置いていっていいのだろうか。
考えている間にアヤネさんは、部屋中のものを投げ、暴れはじめた。リリカお姉様がアヤネさんを掴もうとした時、アヤナさんがアヤネさんを引っぱたいて、アヤネさんは床に飛ばされた。
今、ビュンって音した気がする。
「やめなさい。ここは宿よ。言いたいことがあるなら言葉で言いなさい!」
アヤナさんの気迫にリリカお姉様も驚いている。この2人はいったいどんな姉妹なのだろう。
「タイミング悪いし、あまり言いたくないんだけど、雪山登山服あるよ。色んな宿に泊まっていった人が亡くなって運ばれて来て、今なら宿にあると思う。でも、宿の人も迷惑だろうから、そのうち処分はするだろうけど」
そうか、そういうルートがあったか。気味が悪いけど、どうしても行きたいなら死者のを使うしかない。
「使います!」
アヤネさんはゆっくり起き上がったが、またアヤナさんがアヤネさんを引っぱたいた。
あれこれ揉めているうちに40分経ってしまった。落ち武者さんが部屋を出はじめ、アヤネさんは慌てて仲居さんに、宿に保管している氷河期町へ行って生きて戻って来なかった人の雪山登山服を借りて、みんなで自転車に乗った。そもそも、訳ありとはいえ、たくさん雪山登山服があるなら、仲居さんに無理矢理アヤネさんの洗わせることなかったのでは。
アヤネさんだけ、skyグループの貴族カー乗っている。
借りて来た自転車は、やっぱり、あるとないとでは全然違うと思う。洞窟を進むスピードが昨日とは全然違う。
歩きでは40分はかかったと思うけれど、自転車だと15分で氷河期町に着いた。
今日は、私も頑張る。
ズームさんとミネスさんは、早速テントを張った。
「じゃ、登る」
いよいよ、原石採取に向けての試練だ。
「ヨルクさん、無理しないでください」
心配そうに見つめるナミネの頭を私は撫でた。
「大丈夫だからね」
そして、みんなが見守る中、私たちは崖の下に立った。
やっぱり、1番早いのはセナ王女。ナミネとラルクも昨日でコツを掴んだのかスイスイと登って行っている。私も頑張らなくては!とは思えど、足の踏み場が分からない。
その時、カラルリさんとアルフォンス王子が登りはじめた。一日でコツを掴むなんて……。何だか心が狭まってきた。ナミネのためにも強くなりたいのに、ラルクやミナクお兄様のように私は武士向けではない。
立ち往生しているだけでも猛烈に寒いし、判断力が鈍ってしまう。私は何度も何度も挑戦した。
『みんな、途中から昨日と踏み場が違っているわ!気を付けて!』
セナ王女からの無線。踏み場が変わっている?それじゃあ、まるで蓮華町の果樹園の崖ではないか。
『そうだねー!故意に誰かが変えたんじゃなくて、吹雪によって削られてるんだよ。今日は500m先からは60.5075……cm置きだね』
吹雪が削る。そのようなことが現実にありうるのか。そもそも、500m登っても、まだ先があるのか?とにかく私も登らなければ。
あれ、下で立ち往生している人が何人かいる。この人たちもチラシを見て、ここへ来たのだろうか。
『ヨルク、50.6342……cm右にズレようか』
右にズレる?よく分からないけれど、とりあえずズルエヌさんの指示に従った。
「分かりました」
あれ、踏み場がある。けれど、セナ王女からの命綱はしばらく届かない。自力で登るしかない。
えっと、ここに来たのが11時で、現時刻は13時!?
『ヨルクさん、誰かが落ちても助けないでください!』
ナミネからの無線。
『ヨルクは大丈夫よ。ナミネはナミネのことに集中して!』
リリカお姉様はナミネの負傷を避けたいだろう。
『そうよ!アルフォンスなんて小さい頃、何度も怪我してるし、案外何とかなるものよ』
セナ王女は慰めているのだろうか。けれど、少し登れた。少しなのに下は全く見えない。もうサバイバルなんてレベルではない。
『カラルリ、パラシュートで下りようか。それじゃあ、僕はトイレ行くね』
下りる?何か問題でもあるのだろうか。けれど、カラルリさんは下りて来ない。
「あの、カラルリさん下りて来ません!」
『カラルリ!下りて!!』
セナ王女は叫んだ。これでは、みんながカラルリさんに気を取られてしまう。
「ズームさん、カラルリさんは今どの辺か分かりますか?」
ズルエヌさんがいないならズームさんに聞くしかない。
『僕から見たら約200mですが、兄さんは違う答えだと思います』
『320mじゃない?』
ズームさんとミネスさんの意見だけでも異なっている。どちらにしても、そんな高いところから落ちたら命の保証がなくなる。ただでさえ、下は氷の塊なのに。
「そうですか……」
『もう間に合いませんのでクッション置きます!』
え、カラルリさんが落ちてしまう!?何故、ズルエヌさんの指示に従わなかったのだ。
『お兄ちゃん!知らない人がどんどんクッションの上に乗って、このままだとカラルリとぶつかっちゃうよ!』
クッションがなければ氷に体当たり。けれど、そのまま落ちても人とぶつかり、どちらかが命を落とすかもしれない。究極の事態だ。
『お兄様!カナエが今行きます!』
どこにいるかも分からない人を助けるなんて無理だ。
『カラルリさん、今ワイヤー飛ばしますよー!絶対に掴んでください!』
『でも、お兄ちゃん、それ一度きりだよ』
一度きり。だとしたら、他に踏み場を外した人がいれば助からない可能性もある。でも今はカラルリさんの命が優先だ。
『ミネス!今はカラルリさんを救わなければならない!』
クッションを見ず知らずの人が乗らなければ、そのまま下りてこれるのに。何故、他所のアイテムを使ってまで登ろうとする。それも登れてないし。
私は今どの辺だろう。それさえも分からない。
『カラルリさんは無事救出しましたよ』
良かった。無事で良かった。
『ネコ団子妖精を充電しないと!』
何だそれは。それもskyグループの製品なのか?
つまり、ネコ団子妖精とやらがワイヤーを持って行って、それでカラルリさんは助かったということなのだろうか。
『分かってる!クッションがダメになった以上、ネコ団子妖精に頼るしかなかった!』
助かったのは良かったが、ネコ団子妖精が救ったのなら、二度目はない。
『一目惚れカラルリ!アンタ休んでろ!』
『分かった……』
その時、セナ王女の命綱が飛んできた。
『セナ、頂上到着しました!』
え……。命綱が大きく揺れている。下にいるだろう人がセナ王女の投げた命綱掴んでる?命綱とは言え、落ち武者さんが突然言い出したことだから、金具もベルトもなく、ただ、下ろされたロープを掴むだけなのに。そのロープを離してしまえば終わりだ。
『セナ王女!命綱、下にいる人が掴んでます!』
『本当、うっとうしいわね!命綱切るわよ!』
聞こえているだろうか。
『命綱を切るそうですよ。人のもの勝手に使うのよくないですよね』
『命綱切るなんて殺す気かよ!』
図々しい人だな。こっちは、極力万全の装備で来たのに。
『君たちがここに来て約1時間半。そろそろ心臓止まるよ?』
『こちらナヤセス。14人の患者に応急処置をした後、春風町に運びます!』
ナヤセスさんが、ここから席を外してしまう。
『ミネス!シャム軍医呼んでこい!』
『分かったよ』
下ではかなりバタバタしている。ナヤセスさんの代わりにシャム軍医が来てくれれば何かあっても応急処置はしてくれるだろう。この町には病院はないのだろうか。
『ナミネ、頂上到着』
『ラルク、頂上到着』
やっぱり、2人には適わない。情けないけど私は向いていない。お飾りの武士だ。けれど、今雑念は死と隣り合わせだ。集中しないと。下は下で医師免許のあるナヤセスさんが診ている。シャム軍医も来る。
『skyグループのスコップ、使いやすいわ!原石2つ取れちゃった』
私も辿り着きたい。
『シャム、到着。患者の容態はレベル3。今春風町に連れて行けば間に合うよ。でも、僕はこの町からは出られないから、荷車でナヤセスが運んでくれるかな?』
『ここに、エアー・F・ブランキーがあるので、ローカハリ武官が運んでくれませんか?』
エ、エアー……?skyグループは本当に様々な最先端のアイテムを開発しているんだな。
『分かりました』
てか、シャム軍医って医師免許あるのだろうか?
「あの、シャム軍医って医師免許はあるのでしょうか?」
『ヨルク!いい加減、集中しろ!』
ミナクお兄様に指摘されてしまった。
『僕は遠い昔に軍医をしていて、転生後も軍医をした場合、軍医の資格が与えられるんだよ。12歳の時、この町で小さな戦があって、その時に負傷者の治療したから、医師免許はちゃんとあるよ』
そうなのか。みんな、手に職あるんだなあ。私ももう一度、手話の勉強をしなくては。
『シャム軍医は、今も医師なのですな。月城総合病院で働いていたら活躍するでしょうに。勿体ない』
シャム軍医は、ハンサムだし医師免許もあるし、紅葉町にいたら幸せに暮らせるだろう。
『ナナミ、頂上到着』
『リリカ、頂上到着』
『ナルホ、頂上到着』
今日は昨日と違って、3人も多く到着している。途中から踏み場が分からないのに。
私だけ……私だけが……。ダメだ。今弱気になっては、いつ足を踏み外すか分からない。
『セルファ、頂上到着』
落ち武者さんも……。
『カナエ、下ります』
カナエさんが?昨日もパラシュートで下りていた。どうしたのだろう。カナエさんらしくないというか、上手く言葉に出来ないけど、カナエさんなら、頂上まで行けると思っていた。
『ラルク、小さいけど原石あるね』
『深いとこにあるみたいだな』
ナミネとラルクの会話を聞いていると胸が痛む。
『アルフォンス、下りてー!』
ミネスさんの無線。なんか、そこそこ登ったのに、下りるもの、それはそれで悔しいものがあるかもしれない。さっきのカラルリさんがそんな感じだったように。
けれど、アルフォンス王子も下りてくる気配がない。
「あの、アルフォンス王子、下りてきません」
『そりゃ、ヨルクのほうが上にいるからねー!でも、その先、ズルエヌの言ってたように登りにくいよ?』
アルフォンス王子より上にいる?私が?それを聞いただけで、自分はそこまで出来ない人じゃないって思えたかもしれない。アルフォンス王子より出来るとかじゃなくて、自分自身に自分なりの力量があるんだって確信できるから。
「アルフォンス王子は今どの辺にいますか?」
『300mだと思います。クッションは置いていますが、出来ればパラシュートで下りてきて欲しいです』
その高さだとパラシュートで下りないとクッションに落ちられなかったら命を落とすかもしれない。
『違うね。257.6845……m。写真見る限り、カラルリは157.4524……m』
ズルエヌさん戻って来たんだ。
『どちらにしても、そこからクッションに落ちてもクッションも石のようなものだから怪我をしてしまう。アルフォンス王子、どうか降りてほしい!』
シャム軍医は、経験者だ。色んな患者を見ている。クッションが石なら、アルフォンス王子の意思で下りないと。
『ミナク、頂上到着』
これで、私とアルフォンス王子だけだ。それもアルフォンス王子は下りないといけない状況。
『アルフォンス王子、命綱投げます!』
それを掴んだとしても宙に浮いていたら体力が持たない。
『ナミネ、10.5846……mズレてるよ』
命綱といっても、こんな猛吹雪では何も見えない。
『アルフォンス王子!下りてください!』
ナミネは叫ぶものの、アルフォンス王子からの応答は何もない。
『ズーム!今すぐクッションを右58.6724cm移動して!』
『兄さん、間に合いません!』
何が起きたのだろう。まさか、アルフォンス王子の身に!?
少しの間、沈黙の時間が続いた。
『こちら、ブランケット家のズルエヌ。第5王子が脳死。今すぐ手術の必要あり。春風町の応援を要求します。20分45秒7524……が限界です。それを超えれば助かる見込みはありません』
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あとがき。
紀元前村の時と同じですね。
アルフォンスの遠い昔の力量はどうしたのでしょう。
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この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
《ヨルク》
朝が来た。
今日、私は氷河期町の崖を登る。昨日は、そのことでナミネと揉めてしまった。けれど、私だけ何もせず見ているだけは、心のどこかでいやになっていた。
出来るか出来ないかではない。私も、カラルリさんやアルフォンス王子のように挑戦してみたい。
「ねえ、ラルク。ここの朝食美味しいよね」
確かに、停電真っ只中なのに、こんなにたくさんの凝った料理を作れるのは珍しい。
「そうだな。紅葉町では食べられない味だろうな」
あの後、結局祭りを楽しむことは出来なかった。その前にナミネが私を突き飛ばし走って行ったのである。市場では色々買ったけれど、ナミネに何も聞かず勝手に色々買ってしまったからナミネは必要としないかもしれない。落ち武者さんは、氷河期町で食べる用にすればと言っていたけれど、もうそれでいいだろう。
みんな真剣な表情だ。昨日、登りきったのは、ナミネとセナ王女、ラルクだけだから。
「あ、そういえば、アヤネさんのお姉様、春風町にいましたよ」
何となく、アヤネさんの表情が強ばった気がする。
「そ、そうですか」
「せっかくいるのですし、お会いになったほうがいいのでは?」
「いえ、その必要はありません」
あまり仲良くないのだろうか。
アヤナさんのほうは、アヤネさんと違って気作な人だったな。
「その汚れた雪山登山服で行くのかしら?いっそ、お姉様に助け呼びましょうか?」
どうして、リリカお姉様はここまでアヤネさんに突っかかるのだろう。
「やめてください!姉とは随分会ってませんし、実家とも疎遠です!」
やっぱり、あまり仲がいいわけではなさそうだ。
「でも、そのままでは臭うし、変えもないなら、こっちが迷惑するわ」
そう言うとセナ王女は、使用人を呼ぶかのように仲居さんを呼んだ。王女だからと言って、仲井さんも、下べのような扱いをされるのはいやだろう。
「はい、お呼びでしょうか」
ここの仲居さんの着物は艶やかだな。いつも、クレナイ家の使用人の着物しか見てなかったから、つい比べてしまった。
「仲間が服汚したんだけど、洗ってくれないかしら?」
「そういうのは、こちらでは受け付けておりません。タライをお貸ししますので、そちらでお洗ください」
やっぱりそうなるよな。仲居は使用人の仕事などしない。宿も本来、客が泊まる場所だし。
「なあ、アンタ。氷河期町のシャムに惚れてんだろ」
落ち武者さん、また知らない人に喧嘩売ってる。
「氷河期町には行ったことはないですが」
この仲居さんもシレッとしてるなあ。
「ふぅん。じゃあ、この写真も手紙もアンタのじゃないんだ。じゃ、持ち主探すため春風町中回る」
何故いつもいつもそうやって無理矢理人を動かそうとするのだろう。
「やめてください!返してください!」
「だったら、洗え!こっちは、バイトで忙しいんだ!暇なアンタと違ってな!」
もうっ、落ち武者さんのせいで、仲居さん泣いちゃったじゃない。
「落ち武者さん、そういうのよくないよ。仲居さんは使用人じゃないんだから」
「こうでもしなきゃ誰も洗わないだろ!人見下しアヤネの臭いにとっととケリ付けたいんだよ!」
ため息が出てしまう。汚してしまったなら仕方ないし、アヤネさんもアヤネさんでトイレ用のテントに入ってくれれば……。とにかく、こちらの問題を他所に押し付けるのは好かぬ。
「分かりました……」
仲居さんは、泣きながら放置していたアヤネさんの雪山登山服を手に持ち部屋を出て行った。なんだか、気分が悪い。
せっかく泊まった宿なのに、これではメンバー全員が悪印象になってしまった。
「じゃ、今日は人見下しアヤネはお留守番ってことで」
雪山登山服がないのなら行くに行けない。あのような寒いところ、防寒具なしでは命を落としに行くようなものだ。
「私も行きます!」
そうは言っても服はどうするのだろう。
「アヤネ、あなた無茶振り過ぎるわ。さっきだって、仲居に嫌われるような真似して本当気分が悪い」
「カナエも同類だと思われるのは心外です」
朝からまた揉めごと。いつものこととはいえ、見知らぬ仲居さんを巻き込んでしまったのは私もいい気にはなれない。
「へえ、本当にいたんだ」
アヤナさん。来るとは思ってなかった。
「本当だあ。久しぶりだね〜アヤネ」
「お姉様……」
またアヤネさんの顔色が悪くなってる。
「アヤナ?相変わらずね。今も社交界行ってるの?」
そうか。牡丹町は王室のあるところだ。顔見知りでも何ら不思議ではない。
「セナ王女、お久しぶりです。ええ、頻繁に参加しています。牡丹町は停電になっても、政府が優遇してくださるので、いつもと変わりない暮らしをしております」
貴族は今でも特別扱いなのか。氷河期町の住人は、日々暮らしに困っているというのに。裕福な人ほど優遇されるのは、理不尽にも感じる。
「そうよね。私も王室にいた頃は何不自由ない暮らしだったわ。でも、私はスポーツが好きだから、こうやって冒険してるの」
セナ王女の力量はスポーツという言葉では収まらないだろう。
「そうでしたね。セナ王女はフェンシング大会でも常に一位でした」
貴族の間でも、そういうイベントがあるのか。
「話の途中悪いんだけど、アヤネのお姉様。アヤネが雪山登山服汚して無理矢理ここの仲居に洗わせたんです。それだけでなく、別荘があるのに武家の家に泊まっては何もせずで迷惑しています」
やはり、リリカお姉様は主張するか。アヤネさんが引っ越してきた時は、リリカお姉様もカナエさんも仲良くしていただろうに。
「あはは、やっぱりどこでも役立たずね、アヤネは」
笑うところだろうか。
「アヤネは不器用だからね〜」
「あの、私、今日も氷河期町に行きたいです!」
今それを言うところだろうか。
「馬鹿ね、そんな格好で行けるわけないじゃない。アヤネはここにいなさい」
アヤナさんって、どんな人なのだろう。
「でも、アヤネって紅葉町でやっていけてるわけ?」
この3人はアヤナさんと特別親しい間柄だろうか。
「去年は、カナエと同じクラスでした。今年もですが、クラスにはあまり馴染んでいません。友達もカナエたちのグループのメンバーだけだと思います」
そういう人もたくさんいると思う。現に私もそうだし。友達などいなくても人は生きていける。
「あー、アヤネらしいねえ」
何だか、この人天然だな。アヤナさんと仲がいいのは不自然とまではいかないが、他のグループにいたほうが合っている気もする。
「結局、紅葉町でも自分からお友達作れないのね、アヤネは」
「お姉様には関係ないでしょう!また、お金借りに来たんですか?」
お金?アヤナさんは、いつもアヤネさんにお金を借りているのだろうか。
「あー、それなら、アヤネの宝石売ったから足りてる」
「宝石ってどれですか?」
なんというか、人のものを勝手に売るなんて、ちょっと強引だな。
「あの動物の宝石よ」
その瞬間、アヤネさんはアヤナさんを引っぱたいた。
「どうして!あれは私がとても大切にしていたものだって、お姉様も知っているでしょう!」
「アンタ、やめな。宝石ならまた買えばいいだろ。じゃ、他のメンバーはそろそろ行くぞ!」
このまま、アヤネさんを置いていっていいのだろうか。
考えている間にアヤネさんは、部屋中のものを投げ、暴れはじめた。リリカお姉様がアヤネさんを掴もうとした時、アヤナさんがアヤネさんを引っぱたいて、アヤネさんは床に飛ばされた。
今、ビュンって音した気がする。
「やめなさい。ここは宿よ。言いたいことがあるなら言葉で言いなさい!」
アヤナさんの気迫にリリカお姉様も驚いている。この2人はいったいどんな姉妹なのだろう。
「タイミング悪いし、あまり言いたくないんだけど、雪山登山服あるよ。色んな宿に泊まっていった人が亡くなって運ばれて来て、今なら宿にあると思う。でも、宿の人も迷惑だろうから、そのうち処分はするだろうけど」
そうか、そういうルートがあったか。気味が悪いけど、どうしても行きたいなら死者のを使うしかない。
「使います!」
アヤネさんはゆっくり起き上がったが、またアヤナさんがアヤネさんを引っぱたいた。
あれこれ揉めているうちに40分経ってしまった。落ち武者さんが部屋を出はじめ、アヤネさんは慌てて仲居さんに、宿に保管している氷河期町へ行って生きて戻って来なかった人の雪山登山服を借りて、みんなで自転車に乗った。そもそも、訳ありとはいえ、たくさん雪山登山服があるなら、仲居さんに無理矢理アヤネさんの洗わせることなかったのでは。
アヤネさんだけ、skyグループの貴族カー乗っている。
借りて来た自転車は、やっぱり、あるとないとでは全然違うと思う。洞窟を進むスピードが昨日とは全然違う。
歩きでは40分はかかったと思うけれど、自転車だと15分で氷河期町に着いた。
今日は、私も頑張る。
ズームさんとミネスさんは、早速テントを張った。
「じゃ、登る」
いよいよ、原石採取に向けての試練だ。
「ヨルクさん、無理しないでください」
心配そうに見つめるナミネの頭を私は撫でた。
「大丈夫だからね」
そして、みんなが見守る中、私たちは崖の下に立った。
やっぱり、1番早いのはセナ王女。ナミネとラルクも昨日でコツを掴んだのかスイスイと登って行っている。私も頑張らなくては!とは思えど、足の踏み場が分からない。
その時、カラルリさんとアルフォンス王子が登りはじめた。一日でコツを掴むなんて……。何だか心が狭まってきた。ナミネのためにも強くなりたいのに、ラルクやミナクお兄様のように私は武士向けではない。
立ち往生しているだけでも猛烈に寒いし、判断力が鈍ってしまう。私は何度も何度も挑戦した。
『みんな、途中から昨日と踏み場が違っているわ!気を付けて!』
セナ王女からの無線。踏み場が変わっている?それじゃあ、まるで蓮華町の果樹園の崖ではないか。
『そうだねー!故意に誰かが変えたんじゃなくて、吹雪によって削られてるんだよ。今日は500m先からは60.5075……cm置きだね』
吹雪が削る。そのようなことが現実にありうるのか。そもそも、500m登っても、まだ先があるのか?とにかく私も登らなければ。
あれ、下で立ち往生している人が何人かいる。この人たちもチラシを見て、ここへ来たのだろうか。
『ヨルク、50.6342……cm右にズレようか』
右にズレる?よく分からないけれど、とりあえずズルエヌさんの指示に従った。
「分かりました」
あれ、踏み場がある。けれど、セナ王女からの命綱はしばらく届かない。自力で登るしかない。
えっと、ここに来たのが11時で、現時刻は13時!?
『ヨルクさん、誰かが落ちても助けないでください!』
ナミネからの無線。
『ヨルクは大丈夫よ。ナミネはナミネのことに集中して!』
リリカお姉様はナミネの負傷を避けたいだろう。
『そうよ!アルフォンスなんて小さい頃、何度も怪我してるし、案外何とかなるものよ』
セナ王女は慰めているのだろうか。けれど、少し登れた。少しなのに下は全く見えない。もうサバイバルなんてレベルではない。
『カラルリ、パラシュートで下りようか。それじゃあ、僕はトイレ行くね』
下りる?何か問題でもあるのだろうか。けれど、カラルリさんは下りて来ない。
「あの、カラルリさん下りて来ません!」
『カラルリ!下りて!!』
セナ王女は叫んだ。これでは、みんながカラルリさんに気を取られてしまう。
「ズームさん、カラルリさんは今どの辺か分かりますか?」
ズルエヌさんがいないならズームさんに聞くしかない。
『僕から見たら約200mですが、兄さんは違う答えだと思います』
『320mじゃない?』
ズームさんとミネスさんの意見だけでも異なっている。どちらにしても、そんな高いところから落ちたら命の保証がなくなる。ただでさえ、下は氷の塊なのに。
「そうですか……」
『もう間に合いませんのでクッション置きます!』
え、カラルリさんが落ちてしまう!?何故、ズルエヌさんの指示に従わなかったのだ。
『お兄ちゃん!知らない人がどんどんクッションの上に乗って、このままだとカラルリとぶつかっちゃうよ!』
クッションがなければ氷に体当たり。けれど、そのまま落ちても人とぶつかり、どちらかが命を落とすかもしれない。究極の事態だ。
『お兄様!カナエが今行きます!』
どこにいるかも分からない人を助けるなんて無理だ。
『カラルリさん、今ワイヤー飛ばしますよー!絶対に掴んでください!』
『でも、お兄ちゃん、それ一度きりだよ』
一度きり。だとしたら、他に踏み場を外した人がいれば助からない可能性もある。でも今はカラルリさんの命が優先だ。
『ミネス!今はカラルリさんを救わなければならない!』
クッションを見ず知らずの人が乗らなければ、そのまま下りてこれるのに。何故、他所のアイテムを使ってまで登ろうとする。それも登れてないし。
私は今どの辺だろう。それさえも分からない。
『カラルリさんは無事救出しましたよ』
良かった。無事で良かった。
『ネコ団子妖精を充電しないと!』
何だそれは。それもskyグループの製品なのか?
つまり、ネコ団子妖精とやらがワイヤーを持って行って、それでカラルリさんは助かったということなのだろうか。
『分かってる!クッションがダメになった以上、ネコ団子妖精に頼るしかなかった!』
助かったのは良かったが、ネコ団子妖精が救ったのなら、二度目はない。
『一目惚れカラルリ!アンタ休んでろ!』
『分かった……』
その時、セナ王女の命綱が飛んできた。
『セナ、頂上到着しました!』
え……。命綱が大きく揺れている。下にいるだろう人がセナ王女の投げた命綱掴んでる?命綱とは言え、落ち武者さんが突然言い出したことだから、金具もベルトもなく、ただ、下ろされたロープを掴むだけなのに。そのロープを離してしまえば終わりだ。
『セナ王女!命綱、下にいる人が掴んでます!』
『本当、うっとうしいわね!命綱切るわよ!』
聞こえているだろうか。
『命綱を切るそうですよ。人のもの勝手に使うのよくないですよね』
『命綱切るなんて殺す気かよ!』
図々しい人だな。こっちは、極力万全の装備で来たのに。
『君たちがここに来て約1時間半。そろそろ心臓止まるよ?』
『こちらナヤセス。14人の患者に応急処置をした後、春風町に運びます!』
ナヤセスさんが、ここから席を外してしまう。
『ミネス!シャム軍医呼んでこい!』
『分かったよ』
下ではかなりバタバタしている。ナヤセスさんの代わりにシャム軍医が来てくれれば何かあっても応急処置はしてくれるだろう。この町には病院はないのだろうか。
『ナミネ、頂上到着』
『ラルク、頂上到着』
やっぱり、2人には適わない。情けないけど私は向いていない。お飾りの武士だ。けれど、今雑念は死と隣り合わせだ。集中しないと。下は下で医師免許のあるナヤセスさんが診ている。シャム軍医も来る。
『skyグループのスコップ、使いやすいわ!原石2つ取れちゃった』
私も辿り着きたい。
『シャム、到着。患者の容態はレベル3。今春風町に連れて行けば間に合うよ。でも、僕はこの町からは出られないから、荷車でナヤセスが運んでくれるかな?』
『ここに、エアー・F・ブランキーがあるので、ローカハリ武官が運んでくれませんか?』
エ、エアー……?skyグループは本当に様々な最先端のアイテムを開発しているんだな。
『分かりました』
てか、シャム軍医って医師免許あるのだろうか?
「あの、シャム軍医って医師免許はあるのでしょうか?」
『ヨルク!いい加減、集中しろ!』
ミナクお兄様に指摘されてしまった。
『僕は遠い昔に軍医をしていて、転生後も軍医をした場合、軍医の資格が与えられるんだよ。12歳の時、この町で小さな戦があって、その時に負傷者の治療したから、医師免許はちゃんとあるよ』
そうなのか。みんな、手に職あるんだなあ。私ももう一度、手話の勉強をしなくては。
『シャム軍医は、今も医師なのですな。月城総合病院で働いていたら活躍するでしょうに。勿体ない』
シャム軍医は、ハンサムだし医師免許もあるし、紅葉町にいたら幸せに暮らせるだろう。
『ナナミ、頂上到着』
『リリカ、頂上到着』
『ナルホ、頂上到着』
今日は昨日と違って、3人も多く到着している。途中から踏み場が分からないのに。
私だけ……私だけが……。ダメだ。今弱気になっては、いつ足を踏み外すか分からない。
『セルファ、頂上到着』
落ち武者さんも……。
『カナエ、下ります』
カナエさんが?昨日もパラシュートで下りていた。どうしたのだろう。カナエさんらしくないというか、上手く言葉に出来ないけど、カナエさんなら、頂上まで行けると思っていた。
『ラルク、小さいけど原石あるね』
『深いとこにあるみたいだな』
ナミネとラルクの会話を聞いていると胸が痛む。
『アルフォンス、下りてー!』
ミネスさんの無線。なんか、そこそこ登ったのに、下りるもの、それはそれで悔しいものがあるかもしれない。さっきのカラルリさんがそんな感じだったように。
けれど、アルフォンス王子も下りてくる気配がない。
「あの、アルフォンス王子、下りてきません」
『そりゃ、ヨルクのほうが上にいるからねー!でも、その先、ズルエヌの言ってたように登りにくいよ?』
アルフォンス王子より上にいる?私が?それを聞いただけで、自分はそこまで出来ない人じゃないって思えたかもしれない。アルフォンス王子より出来るとかじゃなくて、自分自身に自分なりの力量があるんだって確信できるから。
「アルフォンス王子は今どの辺にいますか?」
『300mだと思います。クッションは置いていますが、出来ればパラシュートで下りてきて欲しいです』
その高さだとパラシュートで下りないとクッションに落ちられなかったら命を落とすかもしれない。
『違うね。257.6845……m。写真見る限り、カラルリは157.4524……m』
ズルエヌさん戻って来たんだ。
『どちらにしても、そこからクッションに落ちてもクッションも石のようなものだから怪我をしてしまう。アルフォンス王子、どうか降りてほしい!』
シャム軍医は、経験者だ。色んな患者を見ている。クッションが石なら、アルフォンス王子の意思で下りないと。
『ミナク、頂上到着』
これで、私とアルフォンス王子だけだ。それもアルフォンス王子は下りないといけない状況。
『アルフォンス王子、命綱投げます!』
それを掴んだとしても宙に浮いていたら体力が持たない。
『ナミネ、10.5846……mズレてるよ』
命綱といっても、こんな猛吹雪では何も見えない。
『アルフォンス王子!下りてください!』
ナミネは叫ぶものの、アルフォンス王子からの応答は何もない。
『ズーム!今すぐクッションを右58.6724cm移動して!』
『兄さん、間に合いません!』
何が起きたのだろう。まさか、アルフォンス王子の身に!?
少しの間、沈黙の時間が続いた。
『こちら、ブランケット家のズルエヌ。第5王子が脳死。今すぐ手術の必要あり。春風町の応援を要求します。20分45秒7524……が限界です。それを超えれば助かる見込みはありません』
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あとがき。
紀元前村の時と同じですね。
アルフォンスの遠い昔の力量はどうしたのでしょう。
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この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
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