忍者ブログ
日常のこととかオリジナル小説のこととか。
カレンダー
01 2026/02 03
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
プロフィール
HN:
ashita
Webサイト:
性別:
女性
職業:
地主(土地貸してます)
趣味:
漫画やアニメを見るのが好きです。最推しはフーディーニ ♡
自己紹介:
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

ブログ、もう書かないと思ってました。

けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。

小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。

純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。

元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。

ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。

小説、ぼちぼちマイペースに書いてゆきます。

よろしくお願い致します。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

お知らせ。

イラストは現在「ナノハナ家の日常」に載せております。サイドバーにリンクあります。

また、「カラクリよろずや」にて無料のフリーイラスト素材配布もはじめました✩.*˚

フリーイラスト素材も増やしていく予定です(*'ᴗ'*)

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

模倣・無断転載などは、ご遠慮ください。

ブログの小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。

小説・純愛偏差値に関しましては、武家名・貴族名(程度による) / 及び、武官の階級 / 扇子・羽子板・花札・百人一首・紙飛行機などのアイテム使用方法の模倣の一切を禁じております。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

X @kigenzen1874

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
ブログ内検索
QRコード
フリーエリア
〈資格履歴〉

2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
→漢方コーディネーター 合格
→薬膳調整師 合格

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
〈資格証明バナー〉

鉛筆デッサンマスター®認定試験資格取得証明
絵画インストラクター資格資格認定証
宝石鑑定アドバイザー資格認定試験資格取得証明
鉱石セラピスト資格資格保持証明
茶道アドバイザー資格認定試験資格取得証明
お点前インストラクター資格資格認定証
着物マイスター®資格認定試験資格取得証明
着付け方インストラクター資格資格認定証
サイキックアドバイザー®資格資格証明
サイキックヒーラー資格資格保持証明
アンガーカウンセラー®資格資格保持証明
アンガーコントロール士資格資格認定証
漢方コーディネーター®資格認定試験資格保持証明
薬膳調整師®資格認定試験資格保持証明
[44] [45] [46] [47] [48] [49] [50] [51] [52] [53] [54
純愛偏差値 未来編 一人称版 51話

《ズーム》

僕とカンザシは幼なじみだ。
けれど、普通の幼なじみではない。カンザシは、小さい頃から両親に虐待を受けて育って来た。そのせいか、小学3年生の頃にはひねくれていた。
タバコも吸っていたし、女遊びも後を絶えなかった。

小学6年生の頃に家を出て、虹色街の築50年のワンルームのアパートに引っ越し、駆け出しミュージシャンをはじめた。
その頃も、女のアパートに上がり込んでは関係を持ち、DVをし、女から別れを告げられていた。カンザシは誰と交際しても上手くいかない。
カンザシの駆け出しミュージシャンはプロデビューとは程遠かった。カンザシに、どうしても芸能界に入りたいと言われ、僕はカンザシを芸能界デビューさせた。

芸能界デビューした後もカンザシは、周りの人にすぐに暴力をふるい、たびたび問題を起こした。そんなカンザシから11月に入ってから突然、助けて欲しいと連絡が入り、メンバーが友人をイジワルして大騒ぎになったと聞かされた僕は、そのメンバーを芸能界から追放し、カンザシは追放されないよう手続きを取った。

そんな時、カンザシの携帯からテレビ電話がかかってきた。
相手はナミネと名乗った。
僕はカンザシが、お金持ちのお嬢様を騙したと思った。けれど、カンザシの様子を見ていると逆にナミネって女に入れ込んでいるようだった。僕は、ナミネって女をどうにかしろとカンザシに訴えた。

けれど、その日のうちに、ナミネは図々しくも僕の家に来た。
ナミネはテレビ電話で見た時より、ずっと可愛らしかった。そんなナミネにいきなり口付けをされ押し倒された時は不覚にも胸が高鳴った。けれど、僕は冷静を装った。

かと思いきや、ナミネが僕のアルバムに挟んである伝説武官の写真が自分だと言い、そこではじめて気づいたのである。
あのナミネさんだったことに。

遠い前世、僕は桜木町で行われるカンザシのコンサートでナミネさんと知り合った。歳は22前後だろうか。ナミネさんは、あまりに美しく、僕はひと目で恋に落ちた。
彼氏はいるのだろうと思っていたが、カンザシとの3人の飲み会でいないと言っていて、僕はナミネさんをレストランに呼び出し、告白をした。ナミネさんはハンバーグのソースを口元に付けながら僕と交際すると言った。

ナミネさんは、すぐに僕のマンションに引っ越してきた。
『とても広いマンションですね。時計騎士ってお給料良いんですね』
ナミネさんは僕のマンションを嬉しそうに駆け回った。

僕は、ナミネさんと出会う前、カンザシに彼女を寝盗られたばかりで落ち込んでいた。理由は僕といても楽しくないだった。
けれど、その直後にナミネさんと出会い、僕の人生は大きく変わった。

ナミネさんは、仕事から帰るなりリビングに仕事着を脱ぎ捨てたまま、ルームウェアでソファーに寝転がり、お菓子をポロポロ零しながらテレビを見ていた。
僕は帰るなり、ナミネさんの脱ぎ捨てた仕事着を洗濯機に入れて、夕ご飯を作った。ナミネさんは僕の作ったビーフシチューをポタポタ零しながら食べていた。

ナミネさんとお風呂に入る時は、他愛ない会話をしていた。意外にもナミネさんは小説を読む人で、いつも小説の話題で盛り上がっていた。

ある日、ナミネさんは僕に凄い額の家賃を渡した。
僕の給料よりいい仕事なのだろうか。
『ナミネさん、家賃は僕が支払います』
『えっ、でも私も働いてますし』
『結婚したら家を買いましょう』
『はい』
その夜、僕とナミネさんは愛し合った。

僕の幸せはいつまでも続くと思っていた。
けれど、僕の元カノと別れたカンザシは、ナミネさんと交際する僕を妬み、何度も自殺未遂をし、僕とナミネさんは半ば無理矢理別れさせられた。

僕は1人になったマンションで何度も涙を流した。
僕と別れてからナミネさんはカンザシのコンサートには一度も訪れなかった。

二度とナミネさんとは出会えない。

そう思っていた中、現世でもナミネさんと出会うことが出来た。
僕は二度目にナミネさんに押し倒された時に唇が重なった時、またナミネさんを好きになってしまった。

カンザシも現世でもナミネさんのこと本気そうだし、あろうことかナミネさんはカンザシに瓜二つの人と交際していた。
けれど、遠い昔の想い出が溢れ出た僕は引き返せなかった。
そして、僕はナミネさんへの想いは一生伏せたまま生きることを決意した。

……

あとがき。

ズームの過去編。

やっぱり、ナミネやヨルク視点じゃないと文字数めちゃくちゃ変わりますね。

それにしても、ナミネもカンザシやラハル、ズームと恋愛してたんですね。

さて、次回はまた本編に戻ります。
PR
純愛偏差値 未来編 一人称版 50話

《ナミネ》

朝、目を覚ますと私はカラン王子が使った客間での布団の中にいた。そっか、昨日セレナールさんがカンザシさんとヨルクさんを間違えカンザシさんに殴られ、マモルさんに渡したんだった。
私、セレナールさんはラルクのこと好きだと思ってたから一歩間違えたらヨルクさんが犯されていたと思うと苛立って……。

私は起き上がった。
「ナミネさん、お目覚めですか?」
「あ、はい、何かすみません」
って、布団の距離遠っ!
「布団は僕が片付けますので、ナミネさんはヨルクさんのところへ行ってあげてください」
そ、そんな王子に片付けをさせるなどと……。
「い、いえ、自分で片付けます!」
私は慌てて布団を押し入れに入れた。
「あの、セレナールさんはヨルクさんのことが好きなんでしょうか?」
私はそこまで親しいわけでないカラン王子に聞いた。
「ヨルクさんは、女の子の憧れの的です。セレナールさんはラルクさんを好きながらもヨルクさんを憧れていたのではないでしょうか」
そっか。確かに顔だけで言うなら女の子のからの人気いっぱいあるかもしれない。この時の私は、どうしてヨルクさんが好かれやすいのか気付いていなかった。
「やっぱりマモルさんは芸能界追放でしょうか」
「そうなると思います。あの、僕が言うのも変ですが、カンザシさんとは距離を置いたほうがいいと思います」
「そ、そうですよね。では、第4居間に行くとしますかな」
私はパジャマのまま第4居間に向かった。

第4居間では、みんな深刻な顔をしていた。

あの後、落ち武者さんは、ナルホお兄様に、セリルさんを呼び出す前に自分がカタを付けると言って、落ち武者さんはそれを信用し、全てをナルホお兄様に託すことにしたみたい。
けれど、これにはマモルさんだけでなく、カンザシさんの芸能界追放も含まれている。

リリカさんの聞き取りによると、カンザシさんは夜中にセレナールさんの客間に行くと、セレナールさんから誘ってきたものの、いざ、ことに及ぶとセレナールさんは最中の中、ヨルクさんの名前を呼び、カンザシさんはヨルクさんの代わりにされたと深く傷つき、セレナールさんの全身を殴った後、マモルさんに引き渡したらしい。マモルさんは、最初は戸惑ったものの、裸で横たわるセレナールさんを見て、ことに及んでしまったらしい。
2人とも反省はしているものの、あまりに残酷だと判断したリリカさんは、ニンジャ妖精の事務所に映像を送ると共にマスコミにも同じ映像を送った。

セレナールさんは、月城総合病院にて洗浄をした後、カナエさんが閉鎖病棟にいるウルクさんを呼び、マモルさんがセレナールさんをイジワルしたことをなかったことにしてもらったものの、セレナールさんの記憶は残り、マモルさんとカンザシさんから慰謝料を請求すると共に、2人を絶対に許さず、芸能界追放へと動きはじめたらしい。

結論として、リリカさんのリークで、マモルさんはニンジャ妖精の脱退、芸能界から追放されることが決まったが、カンザシさんは罪がないと見なされ、マスコミも動かなかったのである。
ナルホお兄様も、カンザシさんを芸能界から追放しようと動いたところ、事務所もマスコミも揉み消してカンザシさんの無事は守られた。更にはカンザシさんが逆にイジワルされたとマスコミは記事を書いた。
納得いかないと落ち武者さんがセリルさんに話したところ、実の妹をイジワルされたセリルさんも黙ってはいられず、カンザシさんの芸能界追放に動いたものの、今度は皇帝陛下から『カンザシを不問にする。セレナールはカンザシを陵辱したとし、皇室の初級武官による2時間の拷問を受けなければならない』との文が送られてきたのだ。

まさか、セリルさんが出し抜かれるなんて……。
カンザシさんのバックには、いったい誰が着いているの?
私は一度第4居間を出て自分の部屋に入り着替え髪を整えて、また第4居間に戻った。

私は文を書いて紙飛行機にし、窓を開けて皇室に飛ばした。
20分後、皇室から返事が来た。私は紙飛行機の中を開いた。
『カンザシを芸能界から追放する』
やっぱり、お母様に言うって書いただけで皇帝陛下は意思を覆した。
「落ち武者さん、皇帝陛下からこれ届きましたよ!」
私は皇帝陛下の刻印が押された文を机に置いた。カンザシさんを見ると顔が青ざめていた。
「ナミネ、相手はセリルさんでさえ敵わないんだ。この文はまた変わるよ」
そうなのかなあ。でも、セリルさんでも敵わない相手なんているんだ。見てみたい。
私は呼び出しカードでキクスケさんを呼んだ。
「お呼びでしょうか」
「あの、時間おかしいですよね?それから、カンザシさんのバックにいる人って誰なんですか?」
「時間は遠い昔、時計騎士だった人が遅らせています。ズームさんと言ってその人がカンザシさんを助けています。時間は私も元に戻そうとしていますが復旧はまだまだかかるでしょう」
時計騎士……。なんだろう。聞いたことがない。それにズームさんて誰?
「ズームさんは今でも時計騎士ですか?どうしてカンザシさんを助けてるんですか?イジワルした人助けるとか犯罪じゃないですか?」
「ズームさんとカンザシさんは幼なじみで小さい頃からいつも一緒にいました」
幼なじみ……か。私とラルクのようなものだろうか。
「なあ、そのズームって何者なんだよ!」
「お答え出来ません」
「ニンジャ妖精さんのマンション代払っているのもズームさんですか?」
「お答え出来ません」
うーん、番人ロックでもかかっているのかな。私は、一度キクスケさんを番人部屋に戻した。そして、カンザシさんから携帯を奪い取った。
えっと、ズーム、ズーム……。あった。
私はズームさんにテレビ電話をかけた。
出た。
「はじめまして。ナミネです!」
『何の用ですか?』
「ズームさんは顔を出さないのですね」
『当たり前でしょう。見ず知らずの人に個人情報は出しません』
「そうですか。イジワルを擁護って卑怯じゃないですか?」
『何のことか分かりません』
声だけだじゃ人柄分かんないな。
「カンザシさんは皇帝陛下により芸能界追放になりましたよ」
『そうですか。それが何か?』
「おい、またカンザシが不問になったぞ」
やっぱりナルホお兄様の言った通りの展開。この人手強い。私はカンザシさんと並んだ。
「私とカンザシさんは仲良しなんです。ズームさんとカンザシさんはどれだけ仲良いのでしょう」
『あなたもカンザシに弄ばれているんですか』
「はい、そうです!」
『おい、カンザシ!この女何とかしろ!』
あーあ、嫌われちゃった。
「ズーム、ナミネさんは特別なんだ。一度会って欲しい」
『は?お前、この女に弱みでも握られてるのか?』
「ズームさん!電話では何なので今日、自宅訪問しますね!」
『カンザシ!いい加減にしろ!お前、本当にイジワルしたのか?』
「してない!相手が他の人と間違えた挙句全てを僕に擦り付けたんだ」
カンザシさんとズームさんの関係ってなんだろう。やっぱりカンザシさんを支えるにはそれだけの力あるってことだよね。
『お前、本当にマヌケだな!その件はこっちで何とかする。だから、その変な女何とかしろ!万が一僕の家に来たらカンザシとは縁を切る!』
うわー、怖い人。こんな人にカンザシさんはしがみついているの?
「ナミネ、電話してないで、朝食食べて」
「顔だけヨルク、邪魔すんな!」
『カンザシ、今の男か?』
「うん……。相手にはまんまとハメられた」
『分かった。さっきの男の名前と住所言え!』
「はい?ヨルクさんをどうなさるおつもりですか?まさか、無実の人間に泥を塗るわけではないですよね?」
私はカンザシさんに扇子を突き付けた。
『カンザシ!その変な扇子何だ!』
落ち武者さんとリリカさんもカンザシさんに扇子を突き付けた。
『ズーム、助けて』
「もう、ナミネ、誰と電話してるの?」
ヨルクさんはあっさり私から携帯を取り上げた。
「あの、どなたでしょうか?」
『先に名乗るのが筋じゃないですか?』
「クレナイ家 次男 ヨルクです。ナミネとはどのような関係でしょうか?」
『そのナミネって女がいきなり僕に電話かけてきたんですけど、やめてもらえませんか?迷惑です』
はあ、ややこしくなっちゃったよ。ヨルクさんが顔見せたら相手の思う壷じゃん。
「そう言われましても私には何がなんだか分かりませんし。ナミネに言っても聞かないと思います」
『女1人言うこと聞かせられないんですか。1つ教えましょう。そのカンザシを馬鹿にした女、あなたのこと交際したい1歩手前に思ってますよ』
えっ、セレナールさんが!?
「でも、セレナールさんはラルクと交際してるんです!」
『そのラルクさんは時を超えた恋愛に夢中になっているようですね』
どうして見ず知らずの人がそんなこと知っているの?カンザシさんが話したのだろうか。
「へえ、あんた、そこまで調べてんのか。強気なナミネ、もう一度、皇室に文送れ!」
「分かりました」
その後、カンザシさんは皇帝陛下により芸能界追放となったが、ズームさんがまた元に戻し、私はまた皇室に文を送ってカンザシさんを芸能界追放にしたが、ズームさんがまた元に戻し、しばらくこのやり取りは続いた。
「忍耐力ならこっちのほうが有利だ。あんた、連続で何日起きてられる?こっちは10日は起きてられる」
落ち武者さんとリリカさんはカンザシさんに扇子を突き付けたまま、ヨルクさんが持ってる携帯に映りこんだ。
『そうですか。では10日起きていたらどうですか?僕はこれ以上、あなた方と話すつもりはありません。カンザシ、この人ら何とかしないと援助打ち切るぞ!』
そう言うとズームさんは電話を切った。
なんて一方的な人なのだろう。
「本気でムカついた。強気なナミネ、アイツの家行くぞ!」
「分かりました!」
落ち武者さんの苛立ちから、私と落ち武者さん、ヨルクさん、エルナさん、カンザシさん、ナルホお兄様がナノハナ家 ヘリコプターでズームさんの実家に向かうことになった。

ズームさんの実家の上空に着いた。
てか、家デカくない?
「デッケー家だな」
「ねえ、どこの誰だか分からない人の家来てどうするの?」
「あんた、聞いてなかったのかよ!ここのボンボンがカンザシのバックで姉さんのイジワルを揉み消したんだよ」
「え……帰ったほうがいいと思う。そういうのってヤクザ絡みじゃない?」
この家のどこがヤクザなのだろう。そもそも、ヤクザにビビってる時点で武士アウトでしょ。ヘリコプターがズームさんの家の敷地内に着陸すると、私たちはヘリコプターを降りてズームさんの家のチャイムを鳴らした。

運良くズームさんの友達だと伝えるとお手伝いさんが、ズームさんの部屋に案内してくれた。
「ズームさん〜!来ましたよ〜!」
「本当に人の迷惑を考えないんですね」
てか、部屋広っ!ズームさんて視力悪いのかな?でも、遠い昔は時計騎士だったんだよね。
「君がズームさんだね。僕はナノハナ家 長男 ナルホだよ」
「そうですか」
「あんた、なんで姉さんのイジワル擁護した」
「知りません」
私はズームさんに近づきズームさんの頬に口付けをすると、そのままズームさんを押し倒した。
「ズームさん、教えて教えて」
「ハニートラップですか。そんな姑息な真似僕に通用するとでも?」
はあ、私ってそんなに魅力ないのかな。落ち込んだ私はズームさんから離れ、ズームさんの本棚から古いアルバムを手に取った。ズームさんは何度も私からアルバムを取り戻そうとしたけど、私は避け続けた。
「あー、これカンザシさんの小さい頃の写真?可愛い」
あれ、何か挟まってる。私はアルバムに挟まっているものを取り出した。
嘘、遠い昔の私の伝説武官の時の写真?写真には私しか写ってない。てか、どうしてここにあるの?
「落ち武者さん、これ見てください!」
「あんた、強気なナミネとどんな関係だったんだ!なんで、強気なナミネの写真持ってるんだ!」
「知りません」
「あんためんどくさいな」
落ち武者さんはズームさんにフェアリーングをかけた。
「強気なナミネとどういう関係だったんだ?」
「遠い昔、交際してました」
えええええ!私、見ず知らずの人とも交際してたの?ヨルクさんの前だし、めちゃくちゃ気まずい。これじゃあ私が男たらしみたいじゃん。
「どっちから告った?なんで交際してた?」
「カンザシに彼女を寝盗られた後、その人が突然現れ、あまりの美しさに思い切って告白しました」
カンザシさんもラハルさんもサムライ妖精さんも私のこと綺麗とか言ってたな。てか、さっきこの人、ハニートラップに引っかからないとか言ってなかった?
「あんた、相当な面食いだな。で、なんでカンザシ擁護する」
「僕の意思ではありません。僕とカンザシの背中には生まれつき、勾玉のアザがあります。カンザシに危機が迫れば最悪僕の命は亡くなります。しかし、その逆はありません」
つまり、ズームさんはいやいやカンザシさんのワガママに付き合ってるってこと?
「はあ、あんた、不運な運命に縛られてるってわけか」
落ち武者さんはフェアリーングを解いた。
「おい、カンザシ!なんてことしてくれたんだ!」
「ズーム、許して欲しい」
「ズームさんが悪い人でないことは分かったから、とりあえずナノハナ家に来てくれるかな?」
1分ほどの間があった。まさかの無視?
「分かりました……」
て、来るの?
カンザシさんが芸能界に残ることは、みんなに話さないとだし、何よりラルクを探さないと!
私たちはズームさんの家であるブランケット家を出てヘリコプターに乗った。

ここのところ色んなことがありすぎて、11月に入っていたことさえ忘れていた。もう11月も半ばにさしかかろうとしている。
「ねえ、ナミネ、ズームさんと交際していたの?」
え、どうして今聞くの?
「い、いえ、私何も知りません!」
全然覚えてないよ。ラハルさんのこともだしさ。
「もう、あの時のみの縁(えにし)だと思っています。現世のナミネさんには何の魅力も感じませんし、今は他に好きな人がいますので」
って、私一方的にフラれてるし。それにしてもあんな大きな家。親何してるんだろう。
「あ、ズームさんのご両親て何をされてるのですか?」
「知りません」
はあ、会話もしたくないのか。この人友達いるのかな。
「ナミネが過去に誰と付き合ってても、今は私の彼女だからね」
ヨルクさんは私の手を握った。どうして、今話すの?ヨルクさんだって私以外の嫁と結婚しまくってたじゃない。私はムスッとしてしまっていた。

ナノハナ家に着き、第4居間に入るとセレナールさんとカナエさんが戻っていた。そして、テレビからはニュースが流れていた。
『ニンジャ妖精のリーダーのマモルさんが一般人の女子高生をイジワルし芸能人をやめることになりました。今後は、カンザシさんがリーダーとなり、新しいメンバーを募集するそうです』
そっかあ。やっぱりマモルさんだけが追放になっちゃうのか。
その時、お腹が痛くなって慌ててトイレに行こうとしたらズームさんとぶつかり、そのままズームさんを押し倒してしまった。てか、今唇触れたよね。それより、完全に漏れちゃった。
「す、すみません」
私は起き上がった。
どうしよう。ズームさんのズボンについてる。
「あ、替えの服持って来ます」
「結構です」
「ナミネ、ズームさんのズボンは元に戻しておくから、これ持ってトイレ行って着替えておいで」
「は、はい」
私は気まずいながらも走ってトイレに駆け込んで、ショーツに履き替え、ナプキンを付けると2階に上がって服を着替えた。汚れたのはカゴの横に置いとこう。
うーん、やっぱり汚しちゃったし、後日買ったほうがいいよね。

部屋から出るとカンザシさんがいた。
えっ、なんでいるの?
「ナミネさん、幻滅しましたか?」
いや、誰だって普通するでしょう。とも言えず……。
「そんなことないですよ。でも、マモルさんは残念でしたね」
言葉が見つからない。
「おい、何やってんだ!これからラルク探すぞ!早く来い!」
「はい、今行きます!」
私は逃げるように階段を降りて行った。

再び第4居間に戻ると、セレナールさんがカンザシさんのことを何度も納得いかないと騒いでいた。
「セレナール、あなた調子に乗りすぎたと思うわ。ラルクがいるのにヨルクと関係持とうとしてたなんて浮気よね」
うわー、女同士の争いって怖いなー。
「私もユメさんの言う通りだと思う。カナエのこと見下してたし、バチが当たったんじゃない?」
セナ王女も攻撃モード。
「何よその言い方!ユメさんにも同じ体験させてやるわ!」
「とりあえず、みんな今はラルクのことに集中してくれるかな」
ラルク、どこにいるの。無事なの。
「見つけました。森の湖南駅から30分歩いた古い民家にいます」
えええ、もう見つけたの?
「あんた、早いな。カンザシのパトロンにしておくには勿体ねえな」
あ、痛み止め飲むの忘れた。でも、ここから出てまたカンザシさんいたらいやだしな。
「ヨルクさん、痛み止め持ってませんか?」
「部屋にあるよ」
うーん、部屋に行くに行けないんだよな。
その時、無言でズームさんが痛み止めを渡して来た。
「あ、すみません」
私はミネラルウォーターで痛み止めを飲んだ。
「じゃあ、今からナノハナ家運転手の車でラルクのところに行くよ」
「平和ボケなナルホ、メンバーどうすんだよ」
「僕と、ナミネ、ヨルク、セルファ、ズームさんで行こうと思う」
「分かった」
はあ、カンザシさんいなくて良かった。
「私も行くわ!」
「セレナール、悪いけど、浮気するあなたにラルクは渡せない。ラルクとはキッチリ別れてもらうわ!」
やっぱりそうなるか。ラルクはクレナイ家の跡取りだもんな。
「リリカ、許して……今度こそラルクを大切にする」
「もう今だからハッキリ言うけど、カンザシ、お前、イジワルとか最低だな。事件起こしておいて責任も取らず芸能界に居座るなんて、どんな神経してんだよ」
うわー、あっちもこっちも修羅場だ。
「カンザシさんの件はラルクを連れ戻してから話すから、まずはラルクを連れ戻しに行くよ」
私たちはナノハナ家 運転手の車に乗って、あの古民家が並んだ町へと向かった。

何故カンザシさんがいるのか分からない。このタイミングで関わるのはめちゃくちゃ気まずい。私はナルホお兄様の手を握った。
少し歩くと黄色い屋根の民家が見えてきた。
この家だけ他の家と違って人が住めそうな感じなのは何故だろう。
「ここです」
え、ここでラルクが住んでたの?

私たちは中に入った。
そこにはラルクと森の湖にいるはずのセレナールさんがいた。
「ラルク!」
「ナミネ……」
え、ラルク泣いてる?
「ラルク、どうしたの?」
「セレナール先生に利用された」
利用?いったいどういうこと?
「利用って何?」
「時を超えての恋愛は厳しいし、いつまでも森の湖にいられないから、皇太子様と一緒になりたいって。それとヨルクお兄様をもう一度連れてきて欲しいと」
「何それ!ラルク、利用されたんだよ!セレナールさんはヨルクさんと皇太子様の二股かけるつもりだよ!」
酷い、あんまりだよ。結局、森の湖のセレナールさんも恋多き人だったのか。ラルク、可哀想。
「違うの!ラルクを利用してない!ラルクへの好きと皇太子様への好きとヨルクへの好きが全て異なってるの。ラルクのことは弟みたいな存在で、皇太子様とは同じ時代に生きる人として一緒になりたくて、ヨルクとは時空を超えて愛し合いたいの」
もう詐欺師レベルじゃん。こんなのに、ラルクはいつまでも時間取られていたの?
「つまり、セレナールはラルクではなく、結論として皇太子様と一緒になりたいんだね?」
「ううん、ヨルクが好き。一度会った時、ナミネのこと凄く大切にしていてナミネが羨ましかった。私もナミネみたいに愛されたい」
「あの、現代のセレナールさんも同じこと言ってるんですけど、そんなに私が好きなら、いっそあなたと同じ時代の私に会ってください。クレナイ家に私はいます」
ヨルクさんはセレナールさんに地図を渡した。セレナールさんの恋って何なの?ラルクを利用してイケメンと付き合いたいの?ヨルクさんは渡さない。森の湖と同じ時代のヨルクさんも私の彼氏になってもらうから。
「セレナール先生、どうして、僕を騙したんですか?」
「騙してないわ。最初は好きだった。でも、恋でないことに気づいたのよ。皇太子様と一緒になれば将来は安泰だし、ヨルクと一緒になれば最高の恋が経験出来る。ごめんね、ラルク」
「ラルクを騙してタダで済むと思わないでください!」
私はセレナールさんを引っぱたいた。
「ナミネ、やめようか。歴史は変えられないんだよ」
ナルホお兄様は昔の夕刊を私に見せた。
『セレナールと皇太子が交際する』
そっか。結局、何も変わらないんだ。これまでのラルクの時間は何だったんだろう。時を超えての恋なんて成り立たない。
セレナールさんはラルクを騙すだけ騙して、元の軸に戻ったんだ。何て卑怯な人。
「ラルク、セレナールさんとお別れの時間だよ。セレナールさんは皇太子様と付き合うんだよ。ラルクと別れてね」
「僕はここにいます」
「ラルク、帰ろう。セレナールさんとはもう一緒になれないんだよ」
ズームさんはため息をついた。
「あなた方はくだらないことに時間を使うのですか?これを見てください」
ズームさんは小型ノートパソコンの映像を再生した。
映像はカラーだった。
森の湖のセレナールさんは時計屋で皇太子様と出会った。
それから、セレナールさんはラルクのいない時に毎日のように皇太子様と時計屋で落ち合った。また、セレナールさんは皇太子様に猛アタックしていた。
その一方で、セレナールさんはラルクにヨルクさんがどこにいるのか会う度に聞いている。
『どうしてヨルクお兄様と会いたいんですか?』
『ただ、会いたいだけよ』
けれど、別の日にはオシャレをして皇太子様に会っている。
『皇太子様、私、皇太子様といる時間がとても幸せです』
そして、時は来た。
『セレナール交際して欲しい』
『嬉しい!ええ、是非!』
皇太子様は薔薇の花束をセレナールさんに渡した。
その夜セレナールさんは家の部屋にいた。
『ヨルク……好き……会いたい……』
映像はそこで途切れていた。

そんな……そんな……そんな……!許せない!
「ラルクの心を返してください!」
私はセレナールさんに扇子を突き付けた。

……

あとがき。

祝・50話!
純愛偏差値 未来編 一人称版 49話

《ヨルク》

私はナミネがお風呂から上がった後、落ち武者さんに言われ、ナミネとカンザシさんの様子を見ていた。すると、突然カンザシさんがナミネを抱き締めて、ラハルさんが中に入って行った。
あの時、カンザシさんはナミネに何を言おうとしていたのだろう。それにしても、やっぱりカンザシさんとナミネが密着するのはナルホさんやナヤセスさんとは違う感じがしまくる。もう兄妹を超えて男と女にしか見えない。
ナヤレスさんとでさえ、兄妹に見えたのに、どうしてもカンザシさんだけはナミネの兄とは思えない自分がいた。

私は洗濯物を干した後、再び第4居間に戻った。
すると、ナナミさんが、ミナクお兄様を押し倒していた。え、てか、何があったの?
「ナナミ、わざとぶつかったわけじゃない」
「どう考えてもわざとじゃない!」
「ナナミ、下着見えてる。いい加減、離してくれないか」
「わざと見てるんでしょ!この変態!同級生と貴族含めて約80人の女弄んだあなたに選択肢などないわ!」
うわー、これが俗に言う公開処刑か。みんなも見てるしどうにかしないと。
「ナナミお姉様、ミナクさんを離してあげてください」
その瞬間ナナミさんはナミネを扇子で吹き飛ばした。けれど、ナミネは空中でバランスを取った後、扇子を縦に持ち、畳に着地した。ナミネは何度吹き飛ばされても、いつも器用に着地する。
今日のナミネのパジャマは猫耳フードに短パンのニーハイ……。可愛すぎる。
いけない。今はミナクお兄様のピンチだった。
「おい、シュリ!助けてやれ!」
いつも思うのだが、どうしてカンザシさんはリーダーでもないのに命令するのだろう。って、また一部笑ってる?
「ねえ、どうして笑うの?私じゃないよね?」
「あの、お2人とも大丈夫ですか?」
「助けてください」
ミナクお兄様のヘルプにシュリさんは、ミナクお兄様を引っ張ったがビクともしなかった。ダメだ。リリカお姉様も笑ってて助ける概念忘れてる。
「ねえ、ナナミ、私も見てたけど、ミナクはわざとじゃないと思うわ」
「セナ王女、私は昔からミナクを知ってるんです!あれは明らかわざとです!」
ナナミさんて優しいけど、ナミネとは別の形で気が強い。
「もうダメですな。こういう時のナナミお姉様には何を言っても通用しません。人生諦めが肝心ですな」
その時、落ち武者さんがカップル日記に、ある数式を投稿した。
え、何この数式。というか化学式なのだろうか?
「落ち武者さん、これ本当なのですか?」
「どう見てもそうだろ」
てか、ナミネは数式の意味分かったの?
「ねえ、この数式何?」
セナ王女も不思議がってる。
そういえば、気付かなかったけど、ユメさんとクラフは帰ったのか。それにしても、この数式はいったい……。
「カナエも薄々は気づいていましたが、こればかりは……」
「他人が口出しすることでもないしね」
え、カナエさんとアルフォンス王子も分かるの?
「ねえ、ナミネ、どういうこと?」
「い、いや、それは言えません」
どうして言えないのだろう。ニンジャ妖精さんとラハルさんは落ち武者さんに数式を見せてもらっている。けれど、みんな分からなさそ……いや、待てよ。何となくロクメさんは気づいてる感じしたけど、突っ込んだらいけないパターンなのか?
「ナナミが私を嫌っているのは分かった。でも、だったら、私と関わらなければいいだろ!」
「目に入るから迷惑だし、さっきだってわざとぶつかって来たし!」
「わざとではないと言っているだろ!いい加減離せ!」
どうしたらいいのだろう。ナナミさん、普段はこんな人じゃないのに。3年生の間で何かあったのだろうか。
その時、突然ナミネが歌い出した。

「舞い上がる アドバルーン
この町に はじめての
デパートが できた あの時は
みんな嬉しそうに していたね

10年 20年 少しずつセピアに
変わらないもの なんてない
けれど 本当は みんな思ってる
微笑み合った日 遠のかないで

懐かしい その言葉が 返って胸痛む
もう二度と 訪れない あの時だけの
時間だったから

この町も かつては森だった
なにもない平穏に 僕ら いつも
当たり前のように 和まされていた
こころの中の風景は 色褪せて

今は見かけない アドバルーン
この町も 変わってく
デパートの 屋上の乗り物で
僕ら いつも はしゃいでた

懐かしい その言葉が 返って胸痛む
もう二度と 訪れない あの時だけの
時間だったから

この町も かつては森だった
なにもない平穏に 僕ら いつも
当たり前のように 和まされていた
こころの中の風景は 色褪せて

時流れ 森も町になったんだ
それはそれで 賑わっていて
多分 楽しいけれど 忘れないで
大切なのは いつも 君の中」

ナミネの歌声可愛い。
「あれっ、これってミナクの好きな曲よね?」
そういえば、フェアリー地平線さんの中でも1番聴いていたような……。
ナミネはまた歌った。

「古い夢 今頃になって 叶えたいと願う
あの頃は 青春の 誘惑に負けていた
遠い昔 桜木町で開いてた 小さなコンサート
気が付けば 遊楽に のみこまれていた

自分のしたいこと チャレンジすれば
いつの日か 花咲くと 思い込んでいた

僕が描いた夢は 遠い都の向こう
最終列車も 乗れないまま
帰れないよ このまま帰れない
名もない 夢追い人

あなたの 愛得られず 泣きながら歌った
あの頃は 欲しいもの 得られると思い込んでた
遠い昔 桜木町で開いてた 小さなコンサート
あなたはいつも バイト帰りに 来ていたね

自分のしたいこと チャレンジしても
時経てども 芽を出すことは なかった

僕が描いた夢は 遠い都の向こう
最終列車も 乗れないまま
帰れないよ このまま帰れない
名もない 夢追い人

今の桜木町 空き地になってる
あの場所で かつては賑わって
楽しすぎて 嬉しすぎて
僕の 思い出の空間(せかい)

僕が描いた夢は 遠い都の向こう
最終列車も 乗れないまま
帰れないよ このまま帰れない
はぐれた 夢追い人」

ナミネ、可愛すぎる。

「ナミネ、可愛い」
「これもミナクの好きな曲よね?」
そういえば、ベストアルバムに入ってたっけ。

「放課後になって 降りはじめた雨
色とりどりの傘が 並んでる
ひと目でわかる 君の傘模様
ただ見つめているだけで よかった

商店街ですれ違い こころが痛む
作り笑顔 気付かれていたかな
古い文房具を 手に取る君に
幼い頃を重ね合わせ また花涙溢れる

(途中)」

「これもミナクの好きな曲だわ」
その時、ナナミさんがポロポロ涙を零した。
「そうよ……そうよ……ずっとあんたのこと見てた。ずっとあんたが好きだった」
えええ!ナナミさんってミナクお兄様のこと好きだったのか!?
ナナミさんはミナクお兄様から離れ走って第4居間を出て行った。ミナクお兄様は慌てて追いかけた。私も流れて2人を追った。

ミナクお兄様は廊下でナナミさんの手を掴んだ。
「ナナミ、ごめん……」
「何よそれ……もういいわよ。ミナクって昔から鈍いんだから」
「ナナミ、どうしたらいい」
「どうもこうも、本命出来たんならどうしようもないでしょ」
ナナミさんはミナクお兄様の手を振り払った。
「だったら茶道部入ってよ」
「ナナミ、入部届け出す!」
「本当、どうして本命なんか作ってんのよ」
「ごめん……」
ナナミさんは、2階へ上がって行った。
はあ、ミナクお兄様も、どうしてセナ王女なのだろう。
私たちは再び第4居間に戻った。

第4居間ではみんなは静まり返り、テレビの声だけが聞こえていた。ナナミさんは大丈夫だろうか。
「シュリ、あの暗号解けてたか?僕は解けてたけどな」
え、そうなの?
「カンザシ、嘘に嘘並べると、そのうち誰からも信用されなくなるぞ」
「暗号解けなかったからって僻むなラハル」
何かもうここまで来ると周りにまわって友達なような……。あれ?シュリさん、またタバコの後が……。
「あの、シュリさん、そのタバコの跡、どうしたんですか?」
以前、うやむやなまま帰ってしまったから、今回はちゃんと聞いた。シュリさんは黙ったままだった。
「顔だけヨルク、シュリの上着脱がせろ!」
「えっ、でも……」
「あんたやらないなら僕がやる!」
落ち武者さんは、シュリさんの上着を脱がせた。
えっ、何これ。身体中にタバコの跡……。どうして。いったい誰がこんなことを。
「シュリ、あんた誰にやられた」
「じ、自分でやりました」
「タバコのメーカー教えろ」
「えっと……」
やっぱりイジメなのだろうか。それにしても、これは酷すぎる。かなり辛かっただろう。
「ラハル、あんた誰だと思う?」
「さあね、僕には分からないな」
「言え」
落ち武者さんはラハルさんに扇子を突き付けた。
「落ち武者さん、やめて!ラハルさんは関係ないよね!」
「もうやめましょう。こういうのはイジメられた本人が前向きにならないと解決には向かいません」
ナミネにしては珍しい。いつも、ラルクにどうにかしようと相談してるのに。そうか、ラルクがいないからか?
「いーや、僕は犯人突き止めるけど?」
「落ち武者さんがそう言うなら私も付き合います」
切り替え早っ。
「シュリさん、本当誰なんですか?」
ナミネが聞いてもやっぱり答えない。
「僕の安全を保証してくれるなら答えてもいい」
あ、安全の保証って何?
「ええ、もちろん保証するわ」
てか、どうしてリリカお姉様が答えるの?
「ラハル、あんたの身の安全は保証する」
「カンザシだよ」
え、カンザシさんが?どうして仲間を……。みんなは突然騒ぎはじめた。
「皆さん黙ってください!まずはカンザシさんの話を聞きましょう!」
ナミネ、どうしてカンザシさんを庇うの。やっぱりカンザシさんに気があるのだろうか。実の兄に。
「いや、ラハル、あんたから話せ。その次にカンザシだ」
「言うつもりなかったけど、シュリのことがみんなに知られたから話さざるを得なくなったけど。カンザシは、これまで付き合ってた彼女にDVしてたんだよ。何人か病院送りになったし。デビュー後は何かあればニンジャ妖精のメンバーを殴り、グルグル妖精やサムライ妖精のことも殴ってるんだよ。怒った時のカンザシは誰も手が付けられない。だから、みんなカンザシのこと嫌ってるよ」
まるでナミネじゃないか。兄も兄なら妹も妹と言うことなのだろうか。しかし、カンザシさんは男だから、殴られた彼女はカンザシさんとの別れを選んだだろう。私もナミネとはかなり力量の差があるから、例えるならカンザシさんの元カノだろうな。
「じゃ、次カンザシ」
「デビューしてすぐ、タツマキ妖精さんとテレビで共演しましたが、僕が誤った発言をして、その後、タツマキ妖精さんからイジメを受け、メンバーに助けを求めましたが、誰も助けてくれず……」
「その矛先がメンバーに向いたってわけだな」
うーん、何だか歯切れが悪いというか、だったら、どうして他のグループも殴る必要あるのだろう。
「みんなはどう思う?」
え、ここでみんなに聞くの?
「私個人としては出来れば仲間は見捨てて欲しくない。私なら見捨てない」
ミナクお兄様、何て白々しいのだろう。これ、聞く意味あるのか?
「私も仲間を見捨てるのは良くないと思うわ。明らかイジメじゃない。私も同じことされてきたから、見捨てられるのはいやだわ!」
セレナールさんもそうきたか。
「そうね、仲間なら助けるべきだと思うわ」
セナ王女も……。
「カナエも仲間を見捨ててはいけないと思います!」
「私も仲間を見捨てるなんて考えられないな」
……。
何故だ。何故、ニンジャ妖精さんが悪い方向に意見が進む。明らかおかしい。けれど、弱い立場の私が反対意見をすれば、袋のネズミだ。その時、ナミネがカンザシさんを抱き締めた。
「カンザシさん、辛かったんですね。でも、1人で耐えなくていいんです。タツマキ妖精さんはラルクがケリ付けましたし、もう攻撃はしないでしょう。カンザシさんがイジメられたら私が助けます!」
「ナミネさん……」
カンザシさんはナミネの腕の中で泣いた。
何なんだ、このやり取りは。これじゃあまるで、メンバーが悪いと言ってるようなものではないか。
しかし、人というのは、ひとたび同じ闇に触れてしまえば、その闇を共感し、育てようとする生き物だ。理由は孤立したくないからだ。だから、理解されない人ほど、同じ境遇の人に出会えば余計に絆を深めようとする。
「じゃ、仲間見捨てたメンバーが悪いってことで……で締めくくりたいが、強気なナミネ、あんたレオルに今のことメールして意見求めろ!」
「分かりました」
はあ、やっとカンザシさんから離れてくれた。
ナミネは携帯を持つとレオルさんにメールをした。
「返信来ました」
ナミネは携帯を机に置いた。
『はい、確かにカンザシには暴力癖があります。僕も殴られ、3度も病院送りにされました。カンザシは何度オーディション受けても通らず、ラハルや僕のことを妬んでいるんです。彼女持ちの人から何度も女の子取ってますし。正直みんなカンザシのことは嫌いだと思います』
やっぱり経験者は嫌うよね。それでも、芸能人だから、隠してたのか。
「なるほどね、ラハルと同じ意見ってわけか。カンザシ、あんた病院行け!どっかの強気なナミネの兄みたいになる前にな!」
「落ち武者さん、明日は私はラルクを探しに行きます」
「じゃ、エルナ、あんたが連れて行け」
「分かったわ」
「僕も行く」
私もナミネが心配だからカンザシさんの付き添いは出来ない。今のところ、エルナとラハルさんだけか。他の人にも着いていってもらいたいのだけど。
「ねえ、カンザシ、私の大切なラハルを傷付けたらどうなるか分かるかしら?」
「ぜ、絶対にラハルには手を出しません!」
「リリカお姉様、やめてください!まずは病院で病名聞いて治療しないといけないでしょう!」
ラハルさんのみ守られても他の人が殴られたら意味がないではないか。
「カナエとアルフォンス王子もカンザシさんの付き添い行ってくれるかな?僕もラルク探すから」
「分かりました。カナエもカンザシさんの付き添いをします」
「分かった、私はカナエに着いて行く」
ナルホさんはやっぱりラルクを探すのか。ナミネも元気なさそうだし、ラルクは今どうしているのだろう。
「ナミネは今夜はナルホさんと一緒に寝るんだよね?」
「はい」
その時、ナミネの携帯が鳴った。
「またメール来ました」
ナミネは携帯を机に置いた。
『この際だから、ニンジャ妖精の所得事情教えます。カンザシが月9万円ほどで、他のメンバーは3万円ほどです』
今度はサンゾウさんからか。恨みというのは怖いな。しかし、あのような高級マンションに住んでいるのに、今の月収では足りなくないか?支払いはどうやっているのだろう。月200万円のマンションらしいが。
え、シュリさんが殴られてる!?
「はい、ストップ!あんた、シュリ殴っても現状変わらないだろうが!」
落ち武者さんは止めに入った。
それにしても、女癖の悪さ、金遣いの荒らさ、まるで、以前のミナクお兄様だな。
ナミネは、返信をしているのだろうか?
カンザシさんが落ち着いた後、みんなはそれぞれの部屋に入って行った。

深夜何時だ?落ち武者さんとエルナさんが……。もう、これでは眠れないではないか。私はナミネの部屋を出て階段を降りた。
あれ、2つ目の客間から物音がする。私は客間の前に立つと、少し扉を開けて中の様子を伺った。
そんな、まさか……。
私は有り得ない光景を目にした。念の為に撮影しておこう。それにしても、セレナールさんの声……響く。カンザシさん、ナミネのこと好きな素振りしてセレナールさん狙いだったの?
「ヨルク……」
え、どうして私の名前呼ぶの?
「ヨルク、好き!」
……。
私は好きじゃない。もうこうなったら落ち武者さん呼ぼう。
私は階段を駆け上がり、再びナミネの部屋に入った。

「落ち武者さん!!」
「何だよ!今取り組み中なんだけど?」
「セレナールさんとカンザシさんが大変なの!」
私は撮影した動画を落ち武者さんに見せた。
「あの野郎、姉さんに手を出しやがったか」
落ち武者さんはナミネの部屋を出た。私とエルナも落ち武者さんを追いかけた。

もう一度、あの部屋に入ると……セレナールさんの身体中にアザがあり、マモルさんがセレナールの上に乗っていた。
落ち武者さんはマモルさんを突き飛ばし、カンザシさんを殴り付けた。
「あんたら、姉さん襲ったのか!」
「セルファ!カンザシとマモルにイジワルされたわ!」
「2人とも絶対許さない」
エルナはセレナールさんに服を着せた。
「ち、違うんです!セレナールさんとは合意でした!」
確かに私が見た時はいやがってる雰囲気ではなかったけど。
「姉さんはイジワルだと言ってるだろ!」
「セレナールさんから誘ってきたと思ったらヨルクさんの名前呼ぶから思わず手が出てしまいました。それで、マモルに渡しました」
「あんた、自分のやったこと分かってんのかよ!今すぐマスコミにリークしてやる!エルナ、姉さんにアフターピル飲ませろ」
「分かったわ」
エルナはセレナールさんにアフターピルを飲ませた。けれど、何かおかしい。
「あの、セレナールさん、どうして私の名前呼んだんですか?」
この間はなんだ。
「ヨルクだと思ったの!だから、許したのにカンザシだったし、殴られて、マモルに回されたわ!」
「どうしてですか!セレナールさんはラルクのこと好きなんじゃないんですか?」
「好きよ!でも、ナミネが羨ましいの!ラルクは効率いい交際しかしてくれない。私もヨルクに愛されたかったの」
気持ち悪い。同情するけど気持ち悪い。私はセレナールさんのこと、そんなふうに見れない。咄嗟に私は携帯を取り出し、キクスケさんにセレナールさんが私を犯さないようお願いをした。ナミネのためにも穢れるわけにはいかない。
けれど、今はセレナールさんが穢されている。
落ち武者さんは、カンザシさんとマモルさんをひたすら殴り続けた。
「セルファ!やめて!このままじゃ死んでしまうわ!」
「エルナ、今すぐリークしろ!」
「分かったわ」
エルナはマスコミに電話をした。
けれど、どうしてだ?どうして、カンザシさんもマモルさんも何も言わない。芸能生命が絶たれようとしているのに。
……。
「ダメだ!2人のどっちかにバックが着いてる!」
落ち武者さんは2人を拘束した。
「吐け!」
「ヨルクさん……?」
ナミネが起きてきた。……てか、みんないる?
「ナミネ、寝てようか」
私はナミネを抱っこした。すると、ナミネは手足をバタバタさせた。
「ちゃんと説明してください!」
「姉さんがこの2人に犯されたんだ。カンザシのことは顔だけヨルクだと思ったらしい」
その瞬間、ナミネの目の色が紫色になった。
「ヨルクさんを抱こうとしてたんですか?どうしてですか!セレナールさんはラルクのことが好きでしょう!ヨルクさんじゃなくてラルクのことが好きでしょう!」
「セルファ、兄さん呼んで……」
セレナールさん、相当ショック受けてる。でも、私もショックを受けていた。
「分かった、今すぐセリル呼ぶ」
「なるほど、君たちがセリルさんの妹弟なんだね。とりあえず、セルファは僕の部屋に来てくれるかな?セレナールさんはカナエが月城総合病院に連れて行ってくれるかな?カラン王子はナミネを客間に連れて行って寝かしつけてくれるかな?リリカさんはマモルさんとカンザシさんから話聞いてくれる?」
落ち武者さんはかなり怒って2人を殴り付けようとしたがナルホさんが部屋に連れて行った。そして、みんなはナルホさんの指示通りに動いた。
それにしても、ナルホさんが初対面のカラン王子にナミネを預けるなんて珍しい。逆にこういう時は、私よりカラン王子のほうがいいのかもしれない。
「部屋に戻るわよ、ヨルク」
「うん」
「ヨルクさん、ナミネさんのことは朝になったら第4居間に連れて行きます」
「あ、お願いします」
私はセレナールさんに疑念を抱きながら、カンザシさんとマモルさんを軽蔑しながら、落ち武者さんを心配しながら、エルナとナミネの部屋に戻って行った。

この世は誰もが幸せになれないのだろうか。
私は先程の光景を見て絶望していた。

……

あとがき。

走り書き書いても、なかなかその通りにはいかないものですね。
小説の時間軸で2ヶ月も早まってしまいました。

ラルクの行方は分からないまま……。

セレナールはカンザシによってマモルに引き渡されてしまうし、純愛偏差値はとにかく悲しいのです。

マモルとカンザシの芸能生命はどうなるのでしょうね。
純愛偏差値 未来編 一人称版 48話

《ナミネ》

ナルホお兄様が紀元前村からナノハナ家に帰ってきた。
けれど、ナルホお兄様は帰るなり、私とカンザシさんに、兄妹であることを告げたのである。カンザシさんとは出会って間もないし、正直信じられなかった。けれど、DNA鑑定では確実にお父様の子だし、私とカンザシさんは兄妹確定となった。
このことはまだ、落ち武者さん、ヨルクさん、エルナさんしか知らない。まして、芸能界で知られてしまったら大騒ぎだ。

それに、よりによってヨルクさんも一緒に聞いていたから、ヨルクさん、大泣きしちゃって私は胸が痛んだ。ヨルクさんとカンザシさんは瓜二つ。でも、性格は全然違う。私とカンザシさんは赤の他人同然かもしれない。だから、ヨルクさんが不安がるのも無理はないのかも。カンザシさんのことはあくまで兄以上の存在としては見ることは出来ない。それに、カンザシさんってなんだかんだで女いっぱいいそう。
私はカンザシさんが実の兄だと知った時はとても嬉しかった。けれど、カンザシさんはそうではない気がする。
カンザシさんのことでヨルクさんを不安にしたくない。私はカンザシさんへの接し方にとても迷いを覚えた。

落ち武者さんからは、遠い前世に私がカンザシさんとラハルさんと交際していた映像を見せられた。ヨルクさんも見た。ヨルクさんが大泣きしたらどうしようと思ったけれど、ヨルクさんは私の遠い前世のことを受け入れてくれた。更には、私とカンザシさんが一緒ににお風呂に入っても良いと言ってくれた。
無理してるのだろうか。でも、それだけ私のこと思ってくれているのなら、私もヨルクさんを悲しませることはしたくない。

あの後、ヨルクさんは油が飛び散ると危ないから先に第4居間にいるよう言った。ヨルクさんは私のこと子供扱い。私もう中学生なのに。けれど、そんなヨルクさんの優しさが私は好きで好きでたまらなかった。

第4居間では意外に賑わっていた。
「えっと、つまり、セルファのお姉様はセレナールで、ラハルさんは、セナ王女とセレナールの妊娠体験をナミネから聞いて、映画化したんだね」
飛べない翼。個人的には多くの妖精村の人に知ってもらいたい。
「うん、絶対にあってはならないことだから、脚本家に話したらすぐに作品にしてくれたんだ。それと、今回のラルクの問題に役立つかどうか分からないけど、花夢物語のパンフレット渡しておくよ」
ラハルさんはナルホお兄様に花夢物語のパンフレットを渡した。
「ナミネだけラハルと共演狡い!」
やっぱりナナミお姉様はそうくるか。
「ナナミはオーディション残念だったね。演技がちょっと固いね。リリカはコマーシャルのオーディション合格おめでとう」
リリカさん、受かったんだ。てか、2人ともいつ受けたの!?
「でも、ラハルと共演出来ないなんて意味ないわ」
「リリカ、最初から思い通りにはならないよ。まずは知名度知ってもらうことからはじめたほうがいいと思う」
ラハルさんてコツコツタイプだよね。ヨルクさんとは違った形で。優等生というか、リーダーシップというか。

そういえば、カナエさんとカンザシさんの苛立ちの感情がすれ違ったことが解除されてから、アルフォンス王子とカナエさん、何か前より仲良くなってる。
ということは、今のカンザシさんは相当な苛立ちを抱えているのだろうか。
その時、セレナールさんが立ち上がった。
「納得いかないわ!みんな幸せなのに、どうして私がラルクに捨てられなきゃいけないのよ!全てカナエのせいよ!兄さんに言いつけてやる!」
「セレナール、落ち着くのです!あれはカナエの意思ではありませんでした。カナエはカナエで自分とは全く違う感情に苦しめられていたのです」
まさか、カナエさんとカンザシさんの苛立ちの感情が入れ替わっていたことによって、セレナールさんとの仲は険悪モード、森の湖では歴史を変えてしまうことになってしまうだなんて。
「とりあえず今日はニンジャ妖精さんは適当に客間使ってくれるかな、ラハルさんも」
「ありがとうございます」
「何言ってるの?ラハルは私の部屋に泊まるに決まってるじゃない!」
今日はみんな帰らなさそう。
「ナミネさん、近々、こちらでもアパート借りようと思ってます」
「えっ、どうしてですか?」
「ナミネさんといつでも会いたいからです」
えええええ!知り合って間もないし、兄妹だと知ったのも今日なのに、どうして。それとも事実を知ったからこそ、カンザシさんは私と過ごせなかった時間を今から作ろうとしているのだろうか。
「そ、そうですか。この辺の物件安いので、アパートはいくらでもあると思います」
「奇遇だな、カンザシ。僕も、この辺にアパート借りようと思ってるんだ」
えええええ!ラハルさんまで!?いったい何のために?
その時、ヨルクさんと落ち武者さんが料理を運んで来た。わあ、天ぷらが可愛い形になってる。うどんに付けて食べるのかな。
私は写真を撮った。
「エルナ、料理作った」
「あら、彼氏気取りかしら?落ち武者さん」
やっぱり、この2人どう見ても好き合ってるじゃん。どうして復縁しないのだろう。
「ヨルクもセルファも料理上手なんだね。ナミネは毎日ヨルクの料理食べてるのかな?」
「はい、ヨルクさんとはナノハナ家とクレナイ家を行き来してまして、いつもご飯作ってもらってます」
「そっかあ、まるで新婚さんみたいだね」
え、そ、そんな。私も早く大人になってヨルクさんと結婚したいけどさ。
「ミナク、適当に天ぷら、お皿に入れてくれるかしら」
「かしこまりました、セナ王女」
ミナクさんはセナ王女の天ぷらをお皿に入れはじめた。セナ王女って、ミナクさんには甘えっぱなし。人のこと言えないけど、ユメさんと付き合ってた時はミナクさん別人だったよね。
「ナミネ、ナミネの好きな天ぷら入れたから一緒に食べようね」
「はい」
私はラルクに何度もメールしているけど、ラルクからは全く返ってこなかった。ラルク、家にも帰らないでどうしてるの?
その時、カンザシさんが天ぷらを落とした。
「シュリ、食え」
え、どうして。カンザシさん、何か怒ってるの?
「あ、落ちたものは私が処分しますので、新しいの食べてください」
ヨルクさんはカンザシさんが落とした天ぷらをティッシュで取るなりキッチンに持って行った。
「自分の落としたものを人に食べさせようとするなんて最低だな」
ヨルクさんが戻って来た時、リリカさんとミナクさん、セナ王女が笑った。
「ねえ、どうして笑うの!私じゃないよね!」
「あ、ラハルさんは花夢物語どう思います?」
私は無理矢理話題を変えた。
「あれは、原作者の失恋を描いた物語なんだよね。原作者は永遠の愛を求めるものの、そんなものは存在しないとラストはハッピーエンドにならなかったんだ。でも、取材の時は、決して歴史を変えてはいけないとも言ってたよ」
そっか。あの映画は元々はラノベだったのか。何だか話聞いてると、今のラルクみたいだな。
「ナミネさん、お風呂上がり2人になれませんか?」
「え、でも……」
私はヨルクさんを見た。
「ナミネ、私に気を遣わないで、好きな時間過ごして」
ヨルクさん……。
「そ、それじゃあ、1時間ほどなら……」
「楽しみにしてます!」
何だか気まずい。カンザシさんは実の兄だけど、ナルホお兄様やナヤセス殿とは違う。やっぱりまだ赤の他人だ。
「ナミネ、もうすぐ生理だよね。このポーチにいつもの入ってるから」
えええ、どうしてこんな大勢の前で言うの?恥ずかしすぎる。でも、生理が来る気配なんてない。気になっていたけど、少し前から時間がおかしい。完全に遅れてる。落ち武者さんは気づいてるだろうけど、ヨルクさんは気付いてなさそう。
「あ、ありがとうございます……」
私は俯きながらポーチを受け取った。
「ナミネ、お腹痛い?」
どうしてまだ聞くの?
「いえ、多分遅れてるだけだと思います」
「えっ、でもナミネって初でしょ?」
このタイミングで聞いてくるセナ王女……。
「あら知らないの?天の川村で研究してるのよ。好き合うカップルが1日12時間以上いることで妊娠する可能性の見込みがあるって」
そういえば、ニュースでも見たことある。けれど、妊娠しても9.9割の女性は化学流産してるとか。
「そうだったの。医術も発展したものね」
「ナミネ、妊娠してたら絶対責任取るから!学校やめて働いて、ナミネとお腹の子の面倒見るから!」
ヨルクさんも真に受けないでよ。
「本当に遅れてるだけですから!」
そう、時間の速度が明らか遅れてる。
けれど、生理は遅れるのに、カナミさんの件は既になかったことになりカナミさんの記憶から消えている。妖精村は不可思議だ。
え、セナ王女泣いてる?
「カラルリもヨルクのように彼女に尽くしまくる人だったら……中絶薬を盛られた悲しみは今も消えない……」
セナ王女……。確かにヨルクさんは責任を放棄はしない。けれど、カラルリさんがどうしてセナ王女を流産させたのかも分からない。
「セナ王女、カラルリさんはおかしくなってしまったんです。私なら必ずセナ王女の責任を取ります。どうか、私との未来をお考えください」
「ミナク……。私にはもうミナクしかいないわ」
セナ王女はミナクさんにもたれかかった。
「ニンジャ妖精さんやラハルさんは、もし自分の彼女が妊娠したらどうしますか?」
「うーん、今は責任取れないかなあ。もう少し軌道に乗ってから結婚は考えたいから今は諦めてもらうと思う」
マモルさんもやっぱり責任は取れないんだ。デビュー仕立てはお給料あまり良くないのかな。でも、だったら、あんな高価なマンションには住めないよね。
「僕も今は無理です……」
シュリさんもかあ。
「僕は責任は取りますが、すぐには結婚は出来ないので、養育費を払いながら大人になったら転職して養います」
ロクメさんは何か他とは違う発言。大学までは行くから、すぐには一緒になれないのかな。
「僕も中絶促すと思います」
フタバさん……怖い……。
「僕は責任取ります。今よりも安いアパートにはなりますが、芸能界のお給料で支えたいです」
カンザシさん、ちょっと意外かも。何となくミナクさんと同じ空気してるから、責任は取らないかと思ってた。
「僕も責任は取るし、別のアパートに引っ越して学校はやめて芸能界の給料で養ってく」
ラハルさんはカンザシさんと少し意見重なってる……?
「ラハルの給料で養えるのかよ」
「そういうカンザシこそ月給いくらなんだ」
やっぱりこの2人仲悪いのかな?
「僕は月に160万円は稼いでいる」
えっ、カンザシさんてそんなに稼いでいるんだ。
「カンザシさん、デビュー仕立てなのに凄いですね」
「今から貯金しておきたいので」
貯金かあ……。まだまだ先の話かも。
「ナミネ、話してばかりいないで食べて」
ヨルクさんは私に天ぷらを食べさせた。
「あ、ニンジャ妖精さんとラハルさんは、このパンツどう思いますか?」
私は洗濯カゴから取り出したヨルクさんのパンツを見せた。
「ナミネ、やめて!どうしてこういうことするの!何故私のみを攻撃し傷付け貶める」
「付きまとう罪は奈落の底」
「ふざけないで!煉獄女官見習いは見てないって言ってるでしょ!」
ヨルクさんって、すぐに怒る。
「正直、そういうのは小学生で卒業してると思う。ダサイって言うか……」
マモルさんにダサイって言われてる。
あれ、他は意見なし?何だか呆気ないな。
「ナルホお兄様とナヤセス殿も同じものを履いています」
「どうして、今パンツの話してるのかな?」
「ナルホ、お前オシャレに疎いの全然変わってないな」
ミナクさんはファッション雑誌よく見てるもんな。
「もう、返して!下着なんて何履いてもいいでしょ!ナミネ、こういうの良くないよ」
「でも、ヨルクさんはいつも私の下着見てますよね?」
「変な言い方しないで!洗濯物干さないといけないから仕方ないでしょ!」
「はいはい、すみませんでしたー!」
私はヨルクさんから離れ、落ち武者さんの隣に座った。それにしても、高校生での妊娠はやっぱり責任取れない人が多いのか。
食べ終わった私はナルホお兄様とお風呂に向かおうとした。
「ナミネ、湯冷めしないでね」
「はい」
ヨルクさんは私にカーディガンをかけた。

ナルホお兄様とかなり久しぶりのお風呂。
「意外だね」
「え?」
「ラルクラルク言ってたナミネがヨルクと交際してるなんて」
あ、ナルホお兄様は途中から紀元前村に行ったから、その後のことは何も知らないんだっけ。でも、実際のところ、私自身少し前まではラルクのこと好きだったんだよな。
「あ、私もずっとラルクのこと好きでした。でも、ある時に知ったんです。天使村時代はずっとヨルクさんのこと好きだったと。でも、初代天使村でヨルクさんとの結婚後、3年でヨルクさんは突然死してしまい、私はショックでその3ヶ月後に自殺したらしいです。そのせいで、ヨルクさんとの結婚後、私は衰弱死していたとか。私は、最後の天使村の時の番人に二度とヨルクさんを好きにならないようお願いして妖精村時代はラルクのこと好きになってしまってたみたいです。でも、今はヨルクさんのことしか想ってません」
本当、最後の天使村であんなお願いするんじゃなかった。ヨルクさんと2人で乗り越えていくべきだったんだと後から思い知らされた。
「そっか。ヨルクは優しいし、どんなナミネでも受け止めてくれるから、ナミネも幸せになれると思う」
ヨルクさんは優しい。その優しさに私はいつも甘えてしまう。
「あ、やっぱりそうですかね」
「でも、喧嘩した時、いつまでもナミネが拗ねたままだと、ヨルクもいつまでもは待たないからね。それから、万が一ナミネが妊娠したらヨルクは大学に行けなくなってしまう。今の時代、中学中退では就職なんてないからね。ヨルクは大学を卒業するべきだと思うよ」
いつまでも待たないか。まるで、これまでの最後の紅葉橋のよう。ヨルクさんは、他の人と結婚して幸せだったのかな。
妊娠か。リスクを視野に入れてなかったわけではないけど、やっぱりヨルクさんと愛し合いたい。
「そうですね。でも、私はヨルクさんを中学中退にはしません。私が休学してヨルクさんにはそのまま学校に通ってもらいます。でも、毎回ヨルクさんから求めてきて……それはもう毎日のように……」
この時の私は、ヨルクさんと落ち武者さん、エルナさんが立ち聞きしていることを全く知らなかったのである。
「分かった。じゃあ、せめて行為後は僕の庭園で作った薬草のお茶飲んでくれる?ピルとかトケイ草とは違って、体内には何の影響もないから」
ナルホお兄様はカナエさんと似ていて植物に興味がある。カナエさんはどちらかというと薬草だが。ナルホお兄様は紀元前村で植物の研究をしていたらしい。将来は植物研究員を目指すとか。
「分かりました。あ、カラルリさんはどうして中絶薬なんか盛ったのでしょうか。まるで、私の知ってるカラルリさんとは別人です」
「人は何世紀も経てば変わるものだよ。いつかヨルクもナミネ以外の人好きになるかもね」
え……少しずつ変わってるってこと?ヨルクさんと付き合えなくなる……?
「そんなの絶対いやです!私、来世も来来世もその後もヨルクさんと結婚します!」
「カラルリさんは少し飽きっぽいからね。今の時代、携帯通して色んなこと出来るから。でも、セナ王女の妊娠のことは軽く見てたんじゃないかな。今は諦めて大人になってからまた作ればいいと」
そうなんだよね。でも、だからって責任取らないなら取らないでセナ王女に産ませる選択肢を与えるのが筋だろうに。
「ですが、産むか産まないかはセナ王女が決めることですよね」
「交際を続ける以上、セナ王女はカラルリさんに責任を取るよう何度も迫ったと思うよ。でも、セナ王女は何もしなくても化学流産だったのに対して、セレナールのほうは完全な殺人だよね」
セナ王女は、まだ胎嚢とまではいっていなかった。けれど、確かに妊娠の兆候はあった。セレナールさんの場合は中期だったから、手続きも色々大変だったと思う。
「私はアルフォンス王子が何を考えているのか分からないです」
「葛藤してるんだろうね。本当にカナエにピルを飲ませてるのならカナエはキープ状態。カナエより良い人と恋仲になった時のためにカナエには妊娠させてないのだと思う。でも、セレナールの妊娠で魔が差したんだろうね」
アルフォンス王子の中では何も定まっていないけど、いざ、セレナールさんの幸せを見たら妬みの感情を抱いたというわけか。
「あの、ラルクはどうなるのでしょう」
タイミング悪い時にナルホお兄様が帰ってきたあまり、私はナルホお兄様と兄妹らしい会話は全然出来ていなかった。
「時を超えての恋愛は成り立たないと思うよ。やっぱり、何千年も離れた人より、同じ時代に生きる人と幸せになりたいって人は思うものなんだよね」
「ということは、歴史通りセレナールさんは皇太子様と一緒になってラルクとは別れるということですか?」
「多分ね」
ラルク……可哀想……。支えてあげたい。せっかく、森の湖にいるセレナールさんと交際したのに、幸せになれないなんて。ラルク、この先どうするの。
「ラルクは幸せになれないんですか?」
「正直、僕はラルクはナミネと交際すると思ってた。でも、ナミネはヨルクを選んだ。今のラルクは現世のセレナールのことは愛していない。だとしたら、ラルクはゼロから好きな人に出会う必要があるよね」
難しいな。でも、セレナールさんのことが一目惚れなら、綺麗な人紹介したら、その人と幸せになってくれるかな。
「ナミネ、そろそろ出るよ」
「はい」
私とナルホお兄様がお風呂から出るとカンザシさんが待っていた。そうだった。1時間だけ時間取るって言ったの私だった。2人きりだなんて何だか気まずいな。私はカンザシさんを2階の客間に案内した。

カンザシさんと2人きりの空間。何を話していいか分からない。というか、どうしてカンザシさんは私と2人になりたいのだろう。とりあえず無難に弾き語りしてもらおうかな。
「あ、とりあえず弾き語りしてもらえませんか?」
「はい、どの曲にしますか?」
えっとどうしようかな。
「あ、では、フェアリー地平線さんのマスカットお願いします」
「好きなんですか?」
「私は聴かないんですけど、ミナクさんが好きなんです」
「そうなんですか。でも、何だかそんな感じもしますね」
カンザシさんは、マスカットを弾き語りしはじめた。
この時の私も、ヨルクさんと落ち武者さん、エルナさんが立ち聞きしていることを全く知らなかった。

「どうして君は 美しさ求めるの
黄昏の浜辺で まわる 君は
こんなにも 美しいのに

君の心 今すぐ 理解してあげれないけど
少しは 頼ってほしいと 願うもの

いつからか 部屋には1つも鏡が存在しない
誕生日に コンパクトミラー渡したら
いらないと 泣きながら その場で壊された
気持ちと気持ちが 折り合わない いつかの夏

季節巡り少しは 理解してたと思ってた
それでも 頼ってくれない 切ないよ

いつからか 部屋には1つも鏡が存在しない
誕生日に プリザーブドフラワー渡したら
ありがとうと 作り笑顔で 受け取った
気持ちと気持ちが すれ違う いつかの夏

いつからか 部屋には1つも鏡が存在しない
誕生日に 満天の星空の下で思いを伝えた
ごめんなさい 君は言う 心を開けないと
気持ちと気持ちを 寄り添わせたい いつかの夏」

カンザシさんさんの弾き語りは好き。
それに、落ち武者さんに見せてもらってた映像では、カンザシさん、駆け出しミュージシャンだったな。
時を経て、今はプロになったんだね。
「カンザシさんは、お歌が上手ですな。えっと、次は……」
「ナミネさん」
えっ、急に何?やっぱり2人きりなんて気まずいよ。
「え、な、何ですか?」
って、私抱き締められてる!?
カンザシさんの汗ばんだタバコのにおい……。お、思い出した!
カンザシさんって、汗かくとヒロシノさん並の体臭で、同棲してた頃、私何度も気絶しそうになってたんだ!それに、あの時のカンザシさん、ヒモだった!今は私の兄だなんて、どんな巡り合わせなのだろう。
「おい、カンザシ!2人きりになればこんなことするなんて最低だな」
え?ラハルさん?てか、ヨルクさんや、落ち武者さん、エルナさんもいる!
「じゃ、僕らも弾き語り聞かせてもらう」
みんな入って来た。

カナエさんが歴史変えてヨルクさんと拗れた時に私が行った桜木町の空き地は、遠い昔、カンザシさんがコンサート開いてた場所だったんだ。

私は遠い昔の一コマを眺めていた。

……

あとがき。

何だか一気に詰め込んじゃった。
もう少しゆっくりがいいのかな。

他の人視点でも書きたいのに、なかなか出来ずにいる。

でも、書きたい。
たまには間に挟みたいです。
純愛偏差値 未来編 一人称版 47話

《ヨルク》

もしも、記憶が抜けた1週間のことを、私がちゃんと割り切れていれば。あの時、ナミネを疑いナミネを突き放さなければ。
カナミさんはクラスのど真ん中で辱めを受けることはなかったし、アルフォンス王子のものも切断されることはなかった。

全て私のせい。私のせいなのだ。
私はナミネを突き放して取り返しのつかないことをしてしまった。

カナミさんは1週間経たないと元に戻らない。
あれからもナミネはカナミさんを攻撃した。カナミさんは酷い状態になり、閉鎖病棟で暴れまわっているらしい。
こんなことなら、ナミネの話をちゃんと聞くんだった。

もう、周りの人を巻き込ませない。
二度とナミネを突き放さない。
そう決めた頃、ナミネから、ラルクが本当に好きなのは森の湖にいるセレナールさんで、ラルクは時を超えた恋愛をしようとしていると聞かされた。
もし、ラルクと森の湖にいるセレナールさんの恋愛が成就してしまえば、また歴史が変わってしまう。そうなれば、もう一度、私とナミネは交際していた事実を忘れてしまう。ラルクは、どうして自分のことしか考えられないのだ。

あれ、でも、引っかかることがある。
森の湖を抜けて誰もいない古い民家が並ぶところにあるレストランで……。
『は、はい、お代官様』
『あんた全然変わんねえな』
記憶を失って、みんな初対面のはずだったのに、落ち武者さんは、ナミネに『変わらない』と言った。まるで、ナミネのことを知っているかのように。
私は落ち武者さんを疑った。
「ねえ、落ち武者さん、あの時、古い民家が並ぶとこにあるレストランでナミネに『変わらない』って言ったよね?落ち武者さん、まさか記憶失ってなかったの?」
「全て覚えてたよー!でも、あの時、あんたらに事実話しても信じてくれてたわけ?まさか、あんたらが拗れたこと僕に責任転嫁するつもりじゃないよね?」
やっぱり覚えていたのか。別に私は責任転嫁するつもりではない。でも、覚えてるなら覚えてるで黙っていることもないと思う。けれど、確かに、あの時、落ち武者さんが事実話してもナミネは悩んだだろうし。もう何が正しいのか分からない。
「落ち武者さん、だったら、せめて、覚えていることをみんなに話すべきだったんじゃないですか?私とヨルクさんの仲が拗れるの見て楽しかったですか?」
やっぱりナミネは怒るよな。
「あんたらさ、何かあれば僕に全て丸投げかよ!自力で思い出そうともしないで!だから、別れろと言ったんだよ!その程度の関係ならな!」
その程度の関係……。何も知らないくせに。遠い遠い昔の私の暗殺さえなければ、ナミネと私は普通の恋人でいられた。
「落ち武者さん、ムカつきます。今から森の湖に行って、そこで生涯を過ごしてもらいます」
ナミネは呼び出しカードでキクスケさんを呼んだ。
「分かった。あの時、あんたらに忠告しなかった分、今回は全力を尽くす!だから、ここで仲間割れはやめろ!」
「分かりました。二度と私を陥れないでください」
ナミネは落ち武者さんを1発殴るとキクスケさんを番人部屋に戻した。え……エルナが殴られてる?落ち武者さんを庇ったのか?
「あんた、エルナを殴るな!」
落ち武者さんは、1分前に時間を戻し、必然的にキクスケさんが現れた。ナミネは素早く、番人?だろう人を5人呼び出した。
「キクスケ、今すぐラルクと森の湖にいる姉さんを交際させろ!」
「残念ながらそれは出来ません。歴史を変えるなどと規則に反したことは出来ません」
番人が6人。いったいどうなるのだろう。落ち武者さんも、エルナが好きなら好きで一言言ってくれればいいのに。
「では、私が呼び出した番人さん。落ち武者さんを徹底的に私に従わせ、落ち武者さんを森の湖に連れて行き、そこから出さないでください!」
「待て!分かった!あんたにはもう逆らわない!けれど、エルナを殴ることだけはやめろ!」
「はい?何かあれば全て私に責任転嫁ですか?落ち武者さんが言ったセリフですよ!人には自分で記憶思い出せと言ったわりに、エルナさん1人守れず責任転嫁ですか!落ち武者さんは自己中です!ワガママです!あなたの親は貧乏の脳なしです!いい加減にしてください!」
こうなった時のナミネは手が付けられない。ナミネに何かあれば、ナノハナ家が動く。そうなれば、いくら抗議しても悪者にされてしまう。
「分かった。僕の負けだ。あんたのこと好きだった。だから、空白の1週間黙ってた」
って、いきなり告白?そもそも本当なのか?
「セルファの言ってることは本当よ!セルファはナミネのことが好きで、たびたび私に相談してたわ!」
「白々しい嘘も甚だしいですね。落ち武者さんはエルナさんが殴られて、また私を陥れようとしていたではありませんか。私、ミドリお姉様のことで辛いんです!幸せだった日常が突然壊れてしまったんです!私だってみんなみたいに普通に生きたかったです!でもどうすればいいか分からないんです!」
ナミネは泣きはじめた。私はナミネを抱き締めた。過去のニュース記事でも見たけれど、ミドリさんの死に方は尋常ではない。
「悪かった。今からはあんたに尽くす。だから、戻らない過去より、今の仲間を見ろ」
ナミネはしばらく泣いていたが、番人たちが戻った頃、ナミネは落ち着きはじめた。正直ほっとした。伝説最上級武官の資格を取ったナミネは遥かに強くなった。何かあれば、力で人を縛りかねない。

数日後、私たちはまたナミネの部屋に集まり、話し合った。
「とりあえず、カップル日記から見るぞ」
私たちはカップル日記を見た。
えっ、遠い昔のセレナールさんとラルクがカップル日記をはじめてる?私はラルクと遠い昔のセレナールさんのカップル日記を開いた。

『セレナール先生と交際しました。
時を超えての恋愛ですが、やっぱり好きな人と交際したいので、自分の意思を貫きました。
今後は僕が森の湖に通います』
いったいこんな最短でどうやって殆ど知らない森の湖にいるセレナールさんを口説いたのだろう。

『未来から来たラルクと交際しました。
携帯とやらをもらいました。
時を超えての恋愛。
はじめての経験だけどラルクを大切にします』
いったい何が起きているのだ。私にはさっぱり分からなかった。

私はコメント欄を見た。

『セレナール:ラルク、考え直して!そんな恋愛成り立たないわ!それに歴史を変えたことになるのよ!皇太子様と交際できなければ、現世に支障が及ぶわ!』
『セナ:何だかよく分からないけど、私は祝福するわ』
『カナエ:カナエも祝福します』
『ユメ:いったいどうなってるの?幸せならそれでいいかもしれないけど』
つまり、現世のセレナールさんのみが不利になったというわけか。こんな恋愛、続くわけがないのに。ラルクも馬鹿だな。

一度退会したアルフォンス王子は、また再開して、カナエさんと仲直りし、カナエさんはアルフォンス王子の別荘に住んでいるわけか。
ユメさんとクラフも順調。
セナ王女とミナクお兄様も上手くいっているようだ。
「このままだと、ラルクは間違いなく姉さんとは上手くいかず、どん底に落ちるね」
けれど、こんなのラルクの自己責任じゃない。
「もう別れさせたほうがいいのでしょうか」
「もう遅いね。歴史は変わってしまったからね?」
そういえば、時を超えた恋愛と言えば、ナミネがラハルさんと映画撮影してたよな。ラストどうなったんだろう。
「ナミネがラハルさんと撮影した花夢物語は最後どうなるの?」
「ラハルさんは何度ピアノを弾いても過去には戻れず2人は別れます」
ハッピーエンドではないのか。歴史は変えられないということなのだろうか?
「そっか、悲しい話なんだね」
「それでも、とても愛し合ってました。その愛が長く続かなかったというだけの話です。ラルクも、少しでも幸せになれたのなら、私はそれでいいと思います。それと、ヨルクさんの制服とパンツ返します」
「う、うん」
彼女から追い剥ぎにあった私は複雑な気持ちだった。あの後は、落ち武者さんがブレザーで隠してくれたんだっけ。
「あ、しばらく泊まり込みなら洗濯物はここに入れて」
「じゃ、そうする」
その時、玄関のチャイムが鳴った。落ち武者さんは猛スピードで玄関に行った。しまった。私も向かわなくては。
私は急いで階段を下りた。

「で、あんた誰?」
「この家の者だけど。君は誰かな?ナミネの新しい友達かな?」
「へえ、強気なナミネに兄がいたのかよ。全然似てないな」
ナルホさん!?いつ戻って来たのだろう。とにかく私はナルホさんに駆け寄った。
「ナルホさん、帰ってきてたの?これからはこっちで住むの?」
「一昨日、妖精村に着いた。紀元前村で転校手続きして来たから明日から、また妖精村学園に通うよ」
そっか。ナルホさん、これからはずっとここにいるんだ。その時、ナミネがナルホさんに抱き着いた。
「ナルホお兄様!」
離れていてもナミネはやっぱりナルホさんのこと大好きなんだな。
「ヨルクさん、すみません。今日はナルホお兄様とお風呂に入ってナルホお兄様の部屋で寝ます。ヨルクさんたちは私の部屋使ってください」
「うん、分かった。積もる話もあるだろうし、ゆっくりしてね」
……何故、ニンジャ妖精さんがいるのだろう。カンザシさんがナミネに会いに来たのかな。
「突然なんだけど、ナミネとカンザシさんは僕の部屋に来てくれるかな?」
「はい……」
えっ、何の話だろう?私は突然不安になった。
「ナルホさん、私もナミネに着いてていい?」
「分かった。じゃあ、ヨルクだけね」
私は不安なまま階段を上がった。

ナルホさんの部屋は全然変わっていなかった。ほんのり植物の香りがしている。
って、どうして落ち武者さんもいるの!?
「本題に入るね」
そう言うと、ナルホさんは1枚の書類を机に置いた。落ち武者さんは、すかさず書類を手に取った。
「紀元前村にいた時、ナヤセスさん、ナヤレスさん以外に、お父様の子がいるか調べていたんだ。すると、カンザシさんのお母様がヒットした。僕は、休みを取ってカンザシさんの実の母親に会いに行ったんだ。すると、確かに17年前頃、お父様と交際していたって言ってた。その交際期間にお父様の子供が出来たんだけど、お父様はナノハナ家に戻り、カンザシさんとお母様とはあまり会わなくなってしまったんだよね。お父様はカンザシさんのお母様に養育費は払っていたものの、マタニティブルーになったカンザシさんのお母様はパチンコに使ってしまったんだ。お父様からの養育費を。カンザシさんが生まれてからは、カンザシさんはお母様から虐待を受け、僕のお母様が一般家庭にカンザシさんを預けたんだ。だから、カンザシさんの今の戸籍はカンザシさんの育ての親のところに入っているよ。お父様は、今も養育費をカンザシさんの実家に払い続けてる。でも、どうしてか、カンザシさんには1円も入ってないんだよね」
私は頭の中が真っ白になった。カンザシさんとナミネが実の兄妹だなんて……。カンザシさんは、明らかナミネに恋愛感情があるかのような素振り見せてたし、とてもじゃないけど、普通の兄妹だなんて受け入れられない。
ナミネはカンザシさんとも、一緒にお風呂に入ったり、一緒の布団で寝たりするのかな。そんなのまるで、赤の他人の男女がしているみたいじゃないか。
落ち武者さんは、書類を机に置いた。ナミネは書類を手に取った。私も内容を見た。
DNA鑑定。カンザシさんとナミネのお父様が親子である確率。99.999999996%……。カンザシさんとナミネは間違いなく兄妹だ。私は残酷な夢を見ているようだった。
「ふむふむ、私とカンザシさんは血縁者のようですな。カンザシお兄様、これからは兄妹として仲良くしましょうね」
あれ?カンザシさん、少し泣いてる?
「はい、突然のことで驚きましたが、これからはナミネさんのこと、妹として大切にします。普通の兄妹のように長い時間一緒に過ごせなかったのは、とても残念ですが。これからは、ナミネさんとは深い関係になりたいと思います」
深い関係って何?まさか、ナミネと恋愛関係になろうとしてるの?
「カンザシお兄様、私、カンザシお兄様のこと、大切にします。たくさん思い出作りましょうね」
ナミネ……どうしてカンザシさんのこと抱き締めるの。私は見ていられなくて泣きながらナルホさんの部屋を出てナミネの部屋に入った。

その時、ナミネが私を抱き締めた。
ってか、ナルホさんと落ち武者さんもいる?
「ヨルクさん、どうして泣くんですか!」
「だって、この前の今日なだけに、いきなり兄妹だなんて……。受け入れられなくて。私の中ではまだナミネとカンザシさんは赤の他人で……。ナミネ、カンザシさんのこと気に入ってるし、私から離れていかないか不安で不安で仕方なくて。ナミネがカンザシさんとも一緒にお風呂に入るなら……私……」
ナミネは袖で私の涙を拭いた。こんなかっこ悪い姿見せたくなかった。また、ナミネを疑ってる自分が情けない。
「カンザシさんのことは兄として親睦を深めたいだけです。私はヨルクさんだけです!私のこと信じられませんか?」
「顔だけヨルク、あんたちょっと落ち着け。どう足掻いても強気なナミネとカンザシは兄妹なんだから、お風呂云々の制限は流石に束縛だろ!」
そんなこと分かってる。でも、気持ちが着いていかない。
「まず、君たち2人の名前はなんて言うのかな?」
「セルファだけど?」
「エルナよ」
「何年生?」
「僕もエルナも中学2年生だ」
「そっか、僕も中学2年生。こっちに戻って友達全然いないから、仲良くしようね」
何故か、落ち武者さんとエルナとナルホさんは2年というだけで、突然距離が縮まった。
「で、話しにくいんだけど、カナエはカンザシさんとぶつかった時に、お互いの苛立ちの感情が入れ替わったみたいなんだ。だから、今戻すね」
そう言うと、ナルホさんは呼び出しカードを手に持った。え、呼び出しカード?どうしてナルホさんが持ってるの?
「お呼びでしょうか」
「カナエとカンザシさんの苛立ちの感情、元に戻してくれるかな」
「かしこまりました。5分後、2人の感情は元に戻ります。では、これにて失礼」
一瞬のやり取りだった。
「ナミネ、ナミネとカンザシさんが兄妹だっていうのは、学校のみんなにも、芸能界でも話しちゃダメだよ」
「流石はナルホお兄様、私が芸能活動していることをもうご存知なのですね!」
「こっちのホテルでテレビ付けたらナミネがコマーシャルに出ててビックリしたよ。で、ラルクはどうしたのかな?」
そうだ、ラルクのこと。ナルホさんにちゃんと話さないと。私がナミネと交際していることも。
「ラルクは森の湖で姉さんと時を超えた交際楽しんでるけど?」
「そっか。セルファの昔のお姉様とラルクが時を超えた交際をしてるんだね。ナミネはそれでいいの?」
やっぱりそうなっちゃうか。
「正直、ラルクから現世のセレナールさんではなく、森の湖にいるセレナールさんのこと好きだから森の湖に通うって聞いた時はビックリしましたが、私、ラルクを応援することにしたんです」
「分かった。カナエも元に戻ったことだし、ラルクの話はゆっくりしていこう」
ゆっくりか。既に2人は交際しているのに間に合うのだろうか。けれど、ナルホさんはいまさっき帰ってきたばかりで、こっちのこれまでの事情を全く知らない。
「今日はナルホさん帰ってきたし、天ぷら作るね」
「別にいいよ。ナノハナ食堂のご飯食べるから」
「いつもナミネのお弁当も作ってるし、せめて、私からの気持ちだと思って受け取って。これからはずっとこっちにいるんだし」
「ナミネのお弁当って?」
しまった。先に言うの忘れてた。その時、ナミネが私の作ったお弁当の写真一覧をナルホさんに見せた。
「へえ、ヨルクって昔から料理好きだったけど、まだ続けてたんだ」
「ナルホさん、私ナミネと真剣交際してる」
え、この間は何?やっぱり私じゃなく、ラルクを婿にって考えていたのだろうか。私は少し気を落とした。
「え、ナミネがヨルクと!?ラルクじゃなくて?」
「平和ボケなあんたさ、ラルクは姉さんと時を超えた交際してるって言ったの聞こえてなかったのかよ!」
「ナルホお兄様、確かにヨルクさんは昔から女にだらしないし、すぐに女に変な感情抱くし、いやらしいサイトも見てるし、森の湖では水浴びしてる妖精口説くし、とにかく女にはだらしないですが、私、将来的にはヨルクさんと結婚するんです。ヨルクさんのこと好きなんです!」
ナミネ……。どうして普通に紹介してくれないのか分からないけど、私は嬉しくてまた泣いた。
「そっか、ナミネ、幸せになったんだね。良かった。ずっと心配してた。ナヤセスさんもメールでチラッと言ってたけど、ナミネ、愛されてるんだね」
とりあえず、認めてくれてる……?
「しかし、ラルクが歴史を変えてしまったことで、ナヤセス殿とロナさんが恋の危機ですぞ!」
確か、ナヤセスさんとロナさんて無自覚で惹かれ合ってたんだっけ。はたらから見たら恋に見えるけど、本人は否定してたな。
「そういえば、ミナクさん元気?」
「うん、やっと女遊び抜け出してまともな道歩きはじめたよ。今は第6王女のセナ王女と交際してるよ」
ナミネは以前のミナクお兄様の写真と今のミナクお兄様の写真をナルホさんに見せた。
「え、何だかもう僕がいない間に色んなこと起きてて着いていけないよ。でも、ラルクのこと心配だし、今から第4居間で話し合おうと思う」
「そうするしかないな。ラルクもそうだけど、一目惚れカラルリも危ないし、平和ボケなあんた、励ましてやれよ」
私たちは第4居間に向かった。ラルクは無事でいられるのだろうか。どうして現世のセレナールさんじゃダメなのだろう。

第4居間に行くと、誰が呼んだのかグループのみんなが来ていた。そして、ナナミさんとリリカさんがいると思ったら、ラハルさんまで来てる!?
「え、ナルホ?全然変わってない」
「ナルホ、お前小さい頃のまんまだな」
リリカお姉様、ミナクお兄様……。
「ええっと、ここにいるみんながナミネの友達かな?」
「はい。元々はラルクを通してのメンバーです」
「あ、ナルホさん、キッチン借りるね」
「じゃ、僕も行く」
え、どうして落ち武者さんが着いてくるの?でも、この人数だし、いたほうが料理もはかどるか。
私と落ち武者さんはキッチンへ向かった。

えっと、小麦粉、小麦粉。
「あんた、このまま、強気になれないナミネとカンザシを一緒にお風呂に入ることも許さず、一緒に寝ることも許さないのかよ」
「さっきは、ビックリしただけで、今はナミネの好きにさせようと思ってるから!」
もういきなり何なの。落ち武者さんはすぐ人のプライベートに踏み込んでくる。
「だったら言う。カンザシとレオルは完全に強気なナミネに惚れてる。恐らくラハルもな。カンザシとラハルは遠い前世、強気なナミネと交際してた。そして、2人は前世の記憶を覚えてるだろう。この映像見ろ!」
「うーん、それとなくカンザシさんとレオルさんがナミネに気があるのは気付いてたけど……交際してたのがナミネなら、ナミネも映像見るべきだと思う」
私はメールでナミネを呼び出した。ナミネはすぐにキッチンに来た。
「はいはい、何ですかな?」
「強気なナミネ、あんた、遠い昔、カンザシともラハルとも交際してた。この映像見ろ!」
落ち武者さんは携帯を固定させて映像を再生した。私は料理をしながら、映像を見た。
映像は、言うほど昔のものではない気がする。
ラハルさんのほうは高級マンションか。
相変わらず、ナミネはリビングに仕事着を脱ぎっぱなしにすると、ソファーに寝転び、お菓子をポロポロ零しながらテレビを見ている。
人というものは何世紀経っても変わらないものなのだろうか。
カンザシさんのほうは、ワンルームのかなりくたびれたアパート。2人で住むには狭そうだ。
それにしても、カンザシさんも家事全般をしていたのか。
ナミネはラハルさんともカンザシさんとも関係を持っていた。
少しは胸が痛んだが、もう折れたくなかった。今のナミネの彼氏は私だから。
映像を見終わったナミネは私を後ろから抱き締めた。
「ヨルクさん、記憶にはありませんが、カンザシさんとラハルさんと会うたびに懐かしい気持ちになっていた理由が分かりました。でも、これはこの時だけのものです。ラハルさんとは良き仕事仲間ですし、カンザシさんのことは兄として接していくつもりです。私が好きなのはヨルクさんだけです!揺るがないでください!」
ナミネは私だけを想ってくれている。だったら、私もイケメン男子に惑わされない!
「ナミネ、さっきは取り乱してごめんね。過去にナミネがカンザシさんとラハルさんと交際してたのは分かったから。虹色街で会ってた時も、それとなく気付いていたし。現世では、ナミネとカンザシさんは兄妹だから、ナミネがカンザシさんと一緒にお風呂に入っても一緒に寝ても口は挟まないからね」
ナミネが実の妹だと知ってもカンザシさんはナミネを想い続けるだろう。それでも、私はナミネを誰にも渡さない。
「ヨルクさん……大好き……」
ナミネは子供に戻ったみたいに私から離れなかった。
「で?顔だけヨルクは女子高生の変なサイト見てるけど、強気なナミネはどこまで許せるわけ?甘えセナは一目惚れカラルリの携帯真っ二つに割ってたけど?」
どうして今そんなこと聞くの!せっかく私とナミネの関係が順調なところなのに。
「ナミネ、ナミネがいやなら見ないからね」
「私はネットまでなら構いません。けれど、同級生など、身近な人の水着写真や下着写真の保存はいやです」
「ナミネ、それは絶対にしないから!同級生からのメールも最近見なくなったし、身近すぎる人は返って気持ち悪いというか、ナミネがいるのに、私と交際するためにハニートラップなんて有り得ないから!」
「分かりました。ヨルクさんを信じます」
私とナミネは再度抱きしめ合った。
ナミネ、私は絶対にナミネを手放さないからね。私はナミネの菜の花の香りに包まれていた。

この時の私は、時間の進みが遅いことに全く気付いていなかった。

……

あとがき。

ついに、ナノハナ家 長男であるナルホが紀元前村から戻ってきました。
Copyright (C) 2009 雨の音を聴きながら, All right Resieved.
*Powered by ニンジャブログ *Designed by 小雷飛
忍者ブログ / [PR]