忍者ブログ
日常のこととかオリジナル小説のこととか。
カレンダー
01 2026/02 03
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
プロフィール
HN:
ashita
Webサイト:
性別:
女性
職業:
地主(土地貸してます)
趣味:
漫画やアニメを見るのが好きです。最推しはフーディーニ ♡
自己紹介:
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

ブログ、もう書かないと思ってました。

けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。

小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。

純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。

元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。

ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。

小説、ぼちぼちマイペースに書いてゆきます。

よろしくお願い致します。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

お知らせ。

イラストは現在「ナノハナ家の日常」に載せております。サイドバーにリンクあります。

また、「カラクリよろずや」にて無料のフリーイラスト素材配布もはじめました✩.*˚

フリーイラスト素材も増やしていく予定です(*'ᴗ'*)

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

模倣・無断転載などは、ご遠慮ください。

ブログの小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。

小説・純愛偏差値に関しましては、武家名・貴族名(程度による) / 及び、武官の階級 / 扇子・羽子板・花札・百人一首・紙飛行機などのアイテム使用方法の模倣の一切を禁じております。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

X @kigenzen1874

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
ブログ内検索
QRコード
フリーエリア
〈資格履歴〉

2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
→漢方コーディネーター 合格
→薬膳調整師 合格

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
〈資格証明バナー〉

鉛筆デッサンマスター®認定試験資格取得証明
絵画インストラクター資格資格認定証
宝石鑑定アドバイザー資格認定試験資格取得証明
鉱石セラピスト資格資格保持証明
茶道アドバイザー資格認定試験資格取得証明
お点前インストラクター資格資格認定証
着物マイスター®資格認定試験資格取得証明
着付け方インストラクター資格資格認定証
サイキックアドバイザー®資格資格証明
サイキックヒーラー資格資格保持証明
アンガーカウンセラー®資格資格保持証明
アンガーコントロール士資格資格認定証
漢方コーディネーター®資格認定試験資格保持証明
薬膳調整師®資格認定試験資格保持証明
[42] [43] [44] [45] [46] [47] [48] [49] [50] [51] [52
純愛偏差値の重要キャラである、ナミネとヨルクを描いてみた。
まだ、妖精村学園の制服は決まってません。
一応、ブレザーではあるんだけどね。

今は気力がないので、ペン入れ、色塗り出来ないので鉛筆で。



ナノハナ家 4女 ナミネ。
(ミドリ戻って来てからは5女)
ずっと、ラルクのことが好きだったが、ヨルクに告白され交際するようになる。
ある時に、廃墟になった写真館にて、妖精村 初代番人であるヨナラタスに妖精村の前の天使村ではヨルクのことが好きだったが、初代天使村でヨルクとの結婚後にヨルクが突然死して、その後の来世はヨルクのことで病み、入退院を繰り返し、若くして衰弱死を繰り返すことが多く、最後の天使村の番人に『二度とヨルクを好きにならないよう』お願いをしたことを聞かされる。
そして、ナミネはヨルクを好きだった頃を思い出し、ラルクのことを吹っ切り、ヨルクを大切にするようになる。



クレナイ家 次男 ヨルク。
ナミネより1つ歳上でラルクの兄。
何世紀にも渡り、転生するたびにナミネを好きになるものの、ナミネはラルクのことが好きで、ナミネの叶わない恋にナミネを励ますものの、最後の紅葉橋にてナミネとは会わなくなる。
けれど、現世では一生ナミネを待つと決め、小学生の頃からナミネに縁談書を送り、中学2年生の時にナミネに告白し、交際する。
交際当初はぎこちなかったが、ナミネが完全にヨルクを好きになった時に、2人は恋人らしくなり、ヨルクは二度とナミネを手放さないと心に違う。
ヨルクは何でも許す性格で、ナミネにとって唯一甘えられる存在。
PR
純愛偏差値 未来編 一人称版 59話

《ナミネ》

「ズームさん、ミネルナさん、お母様が差し入れ持ってきてくれましたよ」
ヨルクさんは5段のお弁当箱を机に置いた。何だか運動会のお弁当みたい。お腹空いたし少し味見しようかな。私は、1段目のお弁当を開いた。わあ、ゴージャス。
「美味しい!ラルクも食べてみなよ!」
「ナミネ、手で掴まないで!これみんなの分なんだから」
ヨルクさんは私からお弁当箱を遠ざけた。
「美味しいのです。ミミリ先生の料理がわかる食べられるとはカナエは感動です」
カナエさんも食べてるじゃん。
「ミミリ先生って?」
「料理研究家なのです。カナエはミミリ先生の本を全て持っています」
え、ズームさんのお母様って料理研究家だったの?
「ふむふむ、ズームさんのお家はお母様の稼ぎで成り立っているのですな。お父様はニートですか?」
「おい、ナミネ、変な聞き方すんなよ」
「本当だ、美味しい!」
何だ、人には食べるなって言っておきながら、ヨルクさんも食べてるじゃん。
「国会議員よ。父さんは」
こ、国会議員!?だから、あんなにも高価な家に住んでいるのか。もはや私たち一般市民とか住む世界が違う。
「す、凄いですね。何だか住む世界が違うというか、何と言うか……」
はあ、私もお金持ちのお嬢様になりたい。
「こんなとこまで来て母親ヅラなんかしちゃって。いやなおばさんだわ」
「母親ヅラではなく母親です」
「ズームは可愛がられてきたからいいじゃない!私なんてすることなすこと反対されてきたわ!」
「それは姉さんが派手な生き方してるからでしょう」
でも、こんなところまで手料理持ってきてくれるなんて優しい人だと思うけどな。
この日は、ズームさんのお母様が手料理を持ってきたことで、ご飯とお吸い物で食べることになった。カナエさんとヨルクさんがご飯とお吸い物を持って来るなり、私はズームさんのお母様の手料理を食べようとした。
「ナミネ、手で掴まないでって言ってるでしょ。お皿に入れるから待ってて」
ヨルクさんは、お皿に料理を入れて私に渡した。私は料理を一気に食べた。
「美味しいです。もっとください」
「ナミネ、これみんなの分だから。お吸い物とご飯食べて」
今日はメンバーが集まってるわけでもなしに、こんなにたくさん量があるのに、どうしてケチケチするのだろう。
「私いらないから、バイク飛ばしてコンビニに食料買ってくる」
「ミネルナさん、外は雪ですし危ないので、少しでもお母様の手料理食べてください」
バイクかあ。見た目に寄らずワイルドな人なんだ。真面目なズームさんとは何だか真逆。
「ラルク!私たちも高校生になったらバイクの免許取ろうよ!」
「そうだな、今の時代移動するものないと困るしな。いつまでも運転手に頼ってらんないから、バイクと車の免許は取っとくか」
妖精村では、15歳でバイクと車の免許を取ることが出来る。昔は馬で移動していたけど、現代は車がないと、こんな田舎では移動に困る。しかし、安易に免許取った高校生がよく事故を起こし、皇帝陛下は車の免許が取れる年齢を18歳に引き上げることを考えている。
「ナミネ、バイクとか危ないからやめて。丸腰じゃない」
ヨルクさんて現代に適してなさそう。車の免許とか仮免試験で落ちそう。しかも、丸腰って何?馬だってそうだったじゃない。
「顔だけヨルク、あんた強気なナミネの親かよ。好きにさせてやれよ」
「あ、ミネルナさん、ご飯ならナノハナ食堂の料理人が作っているので使用人に頼めば運んできてもらえますが、どうします?」
流石に、凍結してスリップしたらいけないしね。仮にもお金持ちのお嬢様だし。
「じゃあ、そうするわ」
私は使用人を呼んで、ナノハナ食堂の1人分の料理を持ってくるよう言った。
「ズームさんは免許はお持ちですかな?」
「車の免許なら」
声ちっさ!でも、早くも取ってるんだ。でも、運転するのかな。
「ズームさんて外車運転するんですか?」
「はい、昔も運転してましたので」
「カッコイイですね」
外車かあ。やっぱりお金持ちは違うんだな。あれ、でも、遠い昔、私誰かの外車に乗せてもらったことある気がする。誰だろう。てか、アヤネさんとズームさんの距離近っ!もしかして、アヤネさん、ズームさんのこと好きなのかな。
「ラルク、バイクの免許取って高速で飛ばそうよ!」
「深夜ならな」
「はあ……いいなあ……」
ミネルナさんはため息をついた。
「今時、レーシングライダーで食べていけるわけないでしょう」
ミネルナさんはレーシングライダー目指しているのか。けれど、常に危険が伴う仕事だと思う。夢は大切だけど、死んでしまっては元も子もない。
「頭のいいズームは常にみんなから可愛がられてきたじゃない!でも、勉強が出来ない私には誰も優しくしてくれなかった。けれど、小学生の時からバイクに目覚めてからは私にはバイクしかなかった。なのに、いざ夢を見つけたら親は猛反対。本当最悪だわ」
あの広い敷地ならバイク飛ばせるか。バイクはオーダーしてたのかな。小学生用とか普通ないもんな。その時、ズームさんが、無言で私に写真を渡した。
え、伝説武官の制服で私バイクに乗ってたの?違う、これ別の制服だ。
「あんた、意外に似合ってるな」
ズームさんはある映像を再生した。
永遠は白黒だが、そこまで時代は古くは感じなかった。
18歳くらいの私は、レーシングライダーの選手として活躍していた。
『ナミネ君、今回も期待しているよ!』
『任せてください!監督!』
私はスタートと共に周りの選手に差をつけ、コースを猛スピードで駆け巡った。
現代では制服は男女共に頑丈なものとなっている。しかし、この時代は女性は、ほぼ伝説武官によく似たスカートの制服で、ヘルメットを被るだけだっ。
私は何度も優勝した。
けれど、20を過ぎた頃、伝説武官の大きな任務が入り、私はレーシングライダーを引退した。
チーム仲間や監督は何度も私を引き止めたが、私は伝説武官の仕事を選んだ。
その後、私がレーシングライダーをやめた後、2番手の選手が活躍したものの、試合中にカーブでライバル選手のバイクとぶつかり即死した。
私は仲間を弔うと共に、もう一度、伝説武官とレーシングライダーを掛け持ちし、スタートからライバルに差をつけ、猛スピードでコースを駆け抜け、優勝し続けた。
映像はそこで途切れていた。

「あんた、掛け持ちでよく周りと差つけれたな。武官より向いてんじゃないのか?」
全然覚えていない。私、バイクに乗ってたの?私の意思だったの?
「姉さん、レーシングライダーをやるなら、映像くらいのスピードで的確に走らなければなりません。けれど、それは死と隣り合わせです」
そうだよね。こればかりは流石に親御さんが反対するのも無理ない気がする。妖精村のバイクは600キロまでメーターがある。けれど、高校生カップルの2人乗りがスピードを出しすぎて事故に遭うケースが後を絶たない。
「そんなの関係ない!好きなことして何が悪いのよ!私は諦めないわ!」
気強っ!でも、ミネルナさんの人生はミネルナさんのものだもんな。
「ナミネ、バイクの免許は取らないで……」
え、いきなり何?さっきのは昔の映像じゃない。しかも、私全然覚えてないし。
「ナミネさんは、僕の外車も運転しましたが、法定速度を遥かに超えた危険な運転でした。現世では必ず法定速度は守ってください」
何故、ヨルクさんを不安にさせる。あー、またヨルクさん泣いちゃった。どうしてこんなに泣き虫なの。私は袖でヨルクさんの涙を拭いた。
「ヨルクさん、映像は私も覚えてない昔のことです。現代では必ず安全運転します。だから泣かないでください」
「ナミネが事故で死んだら私生きていけない。ナミネ、ナノハナ家 運転手の車でずっと移動して。私を1人にしないで」
何故そうなる。バイクの免許を取ってもミネルナさんみたいに仕事に繋げようとしてるわけでもないのにな。
私はヨルクさんを抱き締めた。
「ヨルクさん、現世では危ない仕事には就きませんし、私は死にません。ずっとヨルクさんの傍にいます」
ヨルクさんは私の腕の中で大泣きした。そして、しばらく泣いていた。私は、ヨルクさんをひたすらなだめた。

ヨルクさんが泣き止んだ後、ヨルクさんはカナエさんにミミリ先生のホームページを見せてもらうからと、私にズームさんとミネルナさんが使っている客間の布団に電気毛布を敷き、敷パットを冬物に替え、毛布を敷くように言われた。
ズームさんの客間に入ると、ズームさんがいた。
「あ、電気毛布とか敷きますね」
私は敷パットを取ると、電気毛布をヨレヨレ(何度直してもヨレヨレになる)に敷いて冬用の敷パットを敷き、ぐちゃぐちゃに毛布を敷くと(何度伸ばしてもぐちゃぐちゃになる)、掛け布団をかけた。
よし、出来た。
「あ、ではゆっくりお過ごしください」
私は立ち上がり第4居間に戻ろうとしたら、躓いてズームさんに覆いかぶさってしまった。ふう、布団の上で良かった。って、濃厚な口付けしてしまってる!どうしよう。私は慌てて、起き上がった。
「ご、ごめんなさい」
あ、ズームさん、メガネ取れてる。私がズームさんのメガネを取るとズームさんも起き上がった。
あれ、メガネ外すと印象が違う。てか、イケメンだったんだ。あ、思い出した!あの石鹸の香り。ズームさんは、いつも仕事帰りに時計騎士の制服姿で桜木町のカンザシさんのコンサートに来ていた!そして、あの広くて高価なマンションに住んでいたんだ!メガネのせいか、全然気付かなかった。
私はズームさんにメガネを渡すと慌てて客間を出ようとした。けれど、ズームさんは私を壁に寄せて、片方の手を壁に当てた。
え、何?怒ったの?
「あ、あの……」
どうしよう、気まずいよ。
「カンザシに無理矢理引き離されてから、あなたがどうしているのか気になってました。けれど、こうやって元気に過ごしていたんですね」
「は、はい。まあ、それなりに。あ、私も思い出しました!桜木町のコンサートで私たち知り合ったんですね!ズームさんのマンションはとても広いですね。誰かと住んでいたんですか?」
え、またこの間……。
「彼女と住んでいました。結婚も考えていましたが、カンザシに取られました。けれど、少しして、あなたに出会ったんです」
そうだったのか。そういえば、立ち聞きしていた時も無理矢理云々て聞こえてたな。
「そうだったんですね。でも、またこうやって知り合えて良かったです。何だか懐かしいというか、今はあのコンサートの場所、空き地だけど、想い出を共有出来る人がいると、温かいです」
ズームさんは私を抱き締めた。
「あなたと別れた時、とても苦しみました。あの後、あなたがどこでどのように暮らしているのかとても気になりました」
ズームさん……心配してくれていたんだ。私もあの後、どうなったか全然覚えてないけど、少なくともズームさんとの交際期間は幸せなものだったと思い出せて良かった。
「ズームさん、あの後のことは覚えていませんが、少なくともズームさんと交際していた時間はとても幸せでした。いつも、家事をしてくれてありがとうございました」
ズームさんの手料理、美味しかったなあ。
それにしても、ズームさんとこうやってても全然いやじゃないのに、カンザシさんにされると、やっぱり違和感感じるし、ヨルクさんに悪い気がして気まずくなる。
「ナミネさん、もう遠い昔のことは、あの時だけのものですが、現世では仲間として、あなたを支えます」
やっぱり、ズームさんて優しい人なんだ。
「わ、私もズームさんのこと支えます!」
「おーい、ズーム、そろそろピアノ弾け……て、あんたら何してんの?てか、あんたらそういう関係なわけ?」
「い、いえ、全然違います」
こんなタイミングで落ち武者さんが入ってくるだなんて。余計に気まずくなってしまった。
「あんたさ、毛布ぐちゃぐちゃだろうがよ。どれだけ不器用なんだよ」
落ち武者さんは、ズームさんとミネルナさんの毛布や電気毛布を整えた。
「みんな何してるの?」
どうしてこのタイミングでヨルクさんが来るのだろう。カナエさんと一緒にミミリ先生のホームページ見てたのではないのだろうか。てか、さっきのズームさんとのやり取り見られてないよね?
「今からズームのピアノ聴く」
「そっか。ナミネ、お風呂の時間には戻って来てね」
良かった。さっきの聞かれてなくて。
「はい」

私はズームさんとアヤネさん、ラルク、落ち武者さんを連れて3階のピアノの部屋に入った。この部屋に入るのはかなり久しぶりかもしれない。ピアノはミドリお姉様意外使っていなかったから。けれど、小さい頃はクレナイ家のみんなとミドリお姉様の演奏を聞いていた。
「ズームさん、奈落のユーカイルを弾いていただけませんか?」
ミドリお姉様も弾いていた曲。ミドリお姉様はピアニストを目指していた。もし、今も生きていたらピアニストになれていたのだろうか。
「分かりました」
ズームさんは、奈落のユーカイルを引きはじめた。
あー、こんな曲だった。
ズームさんのピアノは優しい。そして、とても綺麗な音色を奏でる。ミドリお姉様みたいに小さい頃から弾いていたのだろうか。賞だっていっぱいもらってきていたのだろうか。
「ラルク、本格的だよね」
「そうだな。小さい頃からずっと弾いてきたって感じだな」
やっぱりそうだよね。ああいった家柄の人はみんな小さい頃に習うのだろうか。
「ズームさん、素敵です。大会も参加してたんですか?」
「はい、小さい頃はよく参加してました」
「社交界でもよく弾いてますよね」
そうだったんだ。2人は昔からの知り合いなのか。
「よく見てますね。社交界は顔出し程度しかしていませんので、誰とも話してませんよ」
顔出し……か。やっぱりズームさんて人と話すの苦手なのかな。
「あ、せっかくなので、落ち武者さんも弾いてみませんか?」
「じゃ弾く」
夢想蓮華。これも慣れている人しか弾けない。あれっ、落ち武者さんてどこでピアノ覚えたのだろう?落ち武者さんも小さい頃から弾いていたようなスムーズな感じ。ピアノ、いいな。でも、私はピアノには時間を裂けなかった。
落ち武者さんが弾き終わるとズームさんはアヤネさんの指導に入った。
「ラルク、私、ヨルクさんとお風呂入るから、そろそろ戻るよ」
「じゃあ、僕も戻る」
「じゃ、僕も」
私と、ラルク、落ち武者さんは3階のピアノの部屋を出た。

部屋ではいつも落ち武者さんもいるから、ヨルクさんと2人きりになれるのはお風呂だけかもしれない。ヨルクさんはいつも私の身体を洗ってくれる。遠い遠い昔もこんなふうに仲睦まじかったのだろうか。
「ナミネ、クリスマスプレゼント、何がいい?」
もうそんな時期か。中学生に上がってから随分目まぐるしい日々を送って来た気がする。
「え、えっと……」
「ナミネ、もうすぐ付き合って5ヶ月経つから、17日に温泉旅行行こう」
「じゃ、温泉旅行行く」
「ちょっと、落ち武者さん、どうしてここにいるの!」
ヨルクさんは咄嗟に私の身体にタオルを巻いた。
「僕もお風呂入りたかっただけだけど?」
「ねえ、お風呂なら2番目お風呂もあるし、私、ナミネと2人でいたいんだけど。どうして邪魔するの?」
そういえば、落ち武者さんが家に帰らなくなってからどれだけ経つのだろう。家がそんなにいやなのかな?
「あんたらさ、危機感ないわけ?姉さんは妊娠しやすい身体だし、エミリだって、あれだけアランといたらいつ妊娠するかも分からない。それに、タルリヤとも関係持ってるしね。万が一の時は妊娠過程の早い姉さんが出産してからエミリの記憶思い出させるつもりだ」
やっぱり過去が変わったのではなく、現代が変わりつつあるのか。ただでさえ、現世でのエミリさんは綺麗な身体を貫いてきた。それなのに、アランさんに穢されていたと知ればどうなってしまうのだろう。
「分かりました。私も気をつけます。それにしても現代が変わってしまったことで、天使の湖行きは後になり、計画ズレちゃいましたね」
本当は森の湖の翌月には行くはずだったのに、ラルクがセレナールさんに復讐しているうちに何もかも変わってしまった。
「分かった。分かったから。せめて、ナミネとの2人の時間を邪魔しないで欲しい」
「あんた、自分さえ良ければそれでいいのかよ!姉さんは一度無理矢理流産させられてる。今度妊娠したら絶対そんな事態招かせない。もし、強気なナミネがあんたの子妊娠してて、中絶薬とかトケイ草盛られてたらどうすんだよ?」
落ち武者さん、1人で不安なんだ。あの時も、後3ヶ月でセレナールさんは出産していただろうに。
「分かった。セレナールさんの件が落ち着くまでは私も落ち武者さんに協力する」
「あの、もしエミリさんが記憶戻ったらどうなるのでしょう?」
「皇太子は姉さんもエミリも捨てるだろうな。何より、皇太子だけのために穢れのない身体でいたエミリは記憶が戻った瞬間、酷くショックを受け、姉さんを一生許さない。エミリはまた誰かと交際出来ても姉さんさんはまたラルクに縋るしかなくなる」
誰が悪いのかではない。いかに平和的に解決するかが問題になってくると思う。でも、力のあるエミリさんなら、ずっとセレナールさんを恨み続け、危害を加えかねない。現代が変わってしまったとはいえ、イジワルと同じだ。何も失ったセレナールさんは、必ずまたラルクに頼る。現代が変わったというより、現代が遠回りしている。
「あの、万が一、アランさんの子、タルリヤさんの子、エミリさんは異父過妊娠していたらどうなるのでしょうか?タルリヤさんの子供だけ引き取ってアランさんの子供は孤児院行きでしょうか?」
「エミリならそうしかねない。皇太子を失ってしまえば、タルリヤに頼るしかなくなるからな。エミリもああ見えて恋愛体質だからな。けれど、姉さんのことは下手したら殺すかもしれない」
そうだろうな。エミリさんは、タルリヤさんに心変わりしていた。少なくとも遠い昔は。でも、皇太子様を失ったとなれば大問題だ。元々セレナールさんが交際していたとて、最後に皇太子様が選んだのはエミリさんだったのだから。
「セレナールさんが妊娠している可能性はどのくらいありますか?」
「99%」
やっぱりまた細工をしていたのか。だとしたら、エミリさんが記憶を取り戻すまでに、セレナールさんが無事出産しなければならない。けれど、いくらセレナールさんの妊娠過程が早いとはいえ、エミリさんも妊娠してしまえば気づいてしまう。避けられるのだろうか。

現代が変わってしまったことで、ヨルクさんとの5ヶ月記念の温泉行きはなくなり、天使の湖もいつ行けるか分からない。クリスマスパーティーだって開けるかも分からない。
何より、セナ王女たちの誕生日会は間近だ。他人事とはいえ、飛び火問題を抱えた私は再び頭の中に悩みの種が生まれていた。

……

あとがき。

純愛偏差値は古代編から書き始めて、古代編が終わった後、今の未来編(現代だけど古代からしてみれば未来)を書き始めた。
最初はノンストップで書いていたのだけど、今年に入ってから、体調を崩すようになって、いつ更新出来なくなるか不安です。

私自身、純愛偏差値ほどの長編を書いたことないし、書き切れる自信もないけれど。少なくとも、まだまだ続くこのストーリー。簡単に休止にしたくない。

でも、昨日はかなりしんどくて、小説も殆ど書けなかった。
いつ書けなくなってもおかしくない状態。
例え休止しても、長い目で見ていつかは完成したい。

どうか体調保って欲しい。
純愛偏差値 未来編 一人称版 58話

《ヨルク》

「ナミネさんに僕の何が分かるんですか!何の苦労もなしに、裕福な家庭でぬくぬくと過ごして。ムカつきます!ヨルクさんと別れて僕に一生償ってください!」
練習生がいなくなったクレナイ家の道場でカンザシさんは泣きながらナミネに訴えた。カンザシさんは預けられた一般家庭で幸せに暮らせていなかったのだろうか。
「カンザシさん、そこまで私を妬み嫌うのなら、会いになんか来ないでください。私はヨルクさんとは別れません!カンザシさんが私から離れてください!」
こんな時でもナミネは強気な姿勢を取った。けれど、私は実の兄に責められてナミネが傷付いていないか心配だった。
「ナミネさんて卑怯ですね!幸せな部分しか経験してなくて……。僕はナミネさんの兄です!実の兄なんです!けれど、あなたのお父さんが僕の母さん騙したために僕は妾の子として他所に預けられ、そこで虐待受けてどれだけ苦しかったか。いいとこ取りの人生したナミネさんが憎いです!そして、そんなナミネさんを女として好きなんです!」
やっぱりカンザシさんはナミネに恋愛感情抱いていたのか。血が繋がっているのに。例え両想いでも一緒にはなれない関係なのに。
「リーダー、また嘘ですか!いい加減にしてください」
ミツメさんが疑う中、ラハルさんはとても驚いた表情をしている。
「ズーム、本当なの?カンザシは実家の家族が本当の家族じゃなかったの?」
「本当です。カンザシの実の母親は芸者でナミネさんのお父さんと交際していたんです。けれど、カンザシは生まれてすぐ虐待を受け、ナノハナ家の母親が一般家庭に預けて、戸籍はそこに入っているんです」
「そんな!はじめて聞いたわ!じゃあ、あのカンザシに似た人は誰なの?双子なの?」
何故そうなる。私はそこまでカンザシさんに似ているのだろうか。自分ではやっぱり分からない。カンザシさんが黒髪だったら間違われたりするのだろうか。
「他人の空似ですよ。ヨルクさんは列記としたクレナイ家の跡取りです」
「ナミネさんのお父さんって不倫なんかして情けないですね。僕の母さん弄んで捨てて。他にも隠し子いるんじゃないですか?」
親が不倫していると、その子供もまた成長した時に似たようなことをする傾向にある。人は、そうならないようにと足掻くほど、気が付けばそうなってしまっているものだ。
「情けないのはカンザシ、お前だ。ナミネのもう1人のお兄さんは家庭どころか孤児院に入れられてゼロから今の地位を築き上げた。将来的には月城総合病院の医師として働くことも決まってる。カンザシと違って自力で乗り越えたんだよ!」
経験していなければ、その人の気持ちなど分からないものだ。私とてカンザシさんと同じ立場ならどうなっていたか分からないし。ナミネとだって一緒になれず苦しんだかもしれない。けれど、ラハルさんは厳しい。
「カンザシさん、私カンザシさんのこと兄だとは思えません!私の兄はナルホお兄様とナヤセス殿だけです!ここまで嫌われて気分も害しました。カンザシさんは虹色街にお戻りください。もうカンザシさんとお話することはありません。今後はナノハナ家にもクレナイ家にも来ないでください。カンザシさんは今戸籍に入っているところが本当のご実家でそこのご両親が実の親です!」
ナミネもミドリさんのことでは随分と苦労してきたのに、カンザシさんはそれを知らない。だから、カンザシさんに責められて怒っているんだ。
「ナミネさん、待ってください!僕はナミネさんのことが好きなんです!一緒にはなれませんが、せめてナミネさんの傍にいたいんです!」
カンザシさんは何度もナミネの傍にいたいと言ったが、ナミネは私の部屋に戻って行った。
ナルホさんはカンザシさんに話をするとニンジャ妖精さんごとカンザシさんをアパートに連れて行った。

部屋に行くとナミネはテレビを見ていた。
「ナミネ、そろそろ寝よっか」
「はい」
振り向くと布団に落ち武者さんがいた。
「ねえ、落ち武者さん、どうしてここで寝るの?別の部屋で寝て!」
「あんたさ、傷付いた強気なナミネと2人きりで何すんのさ」
「落ち武者さんに関係ないでしょ!出てってよ!」
「やだね!」
落ち武者さんは一向に、私の部屋から出ていこうとせず、私もそのうちに諦めた。私はナミネと同じ布団に入った。
ナミネとカンザシさんのことも心配だが、やはり、エミリさんと皇太子様が記憶を思い出した時のことが心配だ。

その後、ナミネとカンザシさんは仲直りし、ニンジャ妖精さんは相変わらずよくクレナイ家に来るようになった。
ミツメさんは裁判に勝ち、当時高校生だったミツメさんをハメた3人は懲役2年、ミツメさんと当時のミツメさんの試合相手の両方に300万円を慰謝料として払うことになり、信用を失っていたミツメさんの実家の道場は再び信用を取り戻した。ミツメさんはナミネに感謝し、ナミネとミツメさんは突然仲が良くなった。
ナヤセスさんはナミネを案じ、カンザシさんにナミネと関わらないよう手切れ金を渡したがカンザシさんは受け取らなかった。

ある日の、お昼休み。
私はナミネのお弁当を持って広場に行った。
すると、知らない女子高生が1人、男子高生が1人、エミリさんとアランさんもいた。
ナミネは知らない男子高生に話しかけている。知り合いだろうか?
「タルリヤさん、星空レストランの絵の件ありがとうございました!」
「会うのははじめてだよね、ナミネさん。不思議な巡り合わせだよね。遠い昔にあの絵画展の廃墟を見つけて、現代で復元してたら、本当の画家に会えるなんて」
この人がナミネの言っていたタルリヤさんか。
「本当ですね。私も自分の過去の作品が復元されているとは思っていなくてビックリしました!これからは、星空レストランで、私の作品も置いてもらえるかと思うと、とても嬉しいです」
後から聞くところによると、もう既に数個、置いてもらっているらしい。
それにしても、タルリヤさんはともかくとして、やっぱりアランさんとエミリさんは不釣り合いだ。この偽物の交際、いつまで続くのだろう。
「良かったね、ナミネ。今日のお弁当だよ」
私はナミネの隣に座った。
「ありがとうございます、ヨルクさん」
髪をセミロングにしてからのナミネは、学校ではポニーテールにしている。可愛すぎる。
「あ、黄色い髪の人もはじめましてですよね?私はナノハナ家の4女 ナミネです!」
「えっと、ロリハー家のアヤネと申します」
アヤネさんか。貴族なのだろうか。
「アヤネはカナエと同じクラスに転校して来ました」
そうだったのか。カナエさんと仲良くなったのかな。
ナミネは私のお弁当を開け写真を撮った。あの後もカップル日記を時間のある時に私たちは書いている。
「あの、私も今日、ナノハナ家に泊まってもいいでしょうか?」
「はい、構いません」
あの後、ナルホさんが庭園のお世話をするため、ミナクお兄様とセナ王女以外はナノハナ家に移動となった。
気が付けばすっかり12月も中旬に差し掛かっている。もうすぐ、セナ王女とアルフォンス王子、カラン王子の誕生日会が王室の別荘で行われる。ここのところ色々ありすぎて、予定が凄く目まぐるしい。セナ王女、アルフォンス王子とカラン王子の誕生日は一日違いだから、セナ王女、アルフォンス王子の誕生日にまとめてカラン王子の誕生日会もすることになったらしい。
ラルクは相変わらず伝説武官にはまだ到達していないらしい。
「じゃ、今度みんなで星空レストラン行く」
こんなに忙しい毎日なのに、まだ予定詰め込むの?でも、私もナミネの作品見たいしな。
「ねえ、エミリ、今幸せ?」
何だろう、この先が分かったような質問は。
「ええ、とっても幸せよ。アランとは遠い昔も交際していたし、今でもこうやって巡り会えて嬉しいわ」
「だったら、後悔のしない恋愛をしてちょうだい」
何だか嫌味に聞こえてくる。後で知ったら絶対タダでは済まないことなのに。
「後悔なんてしないわ!アランのこと愛しているもの」
この時の私はナミネ同様、エミリさんが既にタルリヤさんと浮気をしていて、エミリさんはアランさんとタルリヤさんの子を異父過妊娠していることに全く気付いていなかったのである。
「本当、エミリとアランてお似合い。カナエとセイが交際していた時もお似合いだったわね」
セレナールさんは危機感というものを知らないのだろうか。
「カナエはセイと交際なんかしていません!セレナールこそ、後で痛い目見ても知らないのです!」
「でも、エミリさんってアランさんとは純粋な関係貫いていたんじゃないんですか?」
ナミネは記憶を思い出させようとしているのだろうか。
「そうだったんだけど、アランが求めて来ちゃって……」
「ねえ、エミリ、もし妊娠したら後悔しないの?」
ユメさんまで気にしている。
「うーん、その時はアランと話し合うわ」
話し合うって、もう既に遅いんじゃないのか?もし、ナミネがラルク、或いはカンザシさんの子供を妊娠していたりしたら絶対に耐えられない。
その時、キクスケさんからメールが来た。
『エミリさんは妊娠に気付いた時点で、失った記憶を全て思い出します』
え、妊娠に気付いたらって?まさか、アランさんの子供を既に妊娠しているのか?
『あの、どういうことでしょうか?』
『これ以上はお答え出来ません』
気になる。万が一アランさんの子供を妊娠していたら大問題だ。私は悩んだ挙句、落ち武者さんとナルホさんに転送をした。
『顔だけヨルク、今は何もするな』
『今の段階で動くのは早すぎると思うんだよね』
うーん、でも、せめて妊娠検査薬とかで確認させたほうがいいと思うのだけど。
「あのね、ラルク。ヨルクさんね、ミネルナさんの下着干す時、すっごくいやらしい目で見てるんだよ」
「もう変質者だな」
「ねえ、どうしてそういうこと言うの?私、買い出しにも行ってるし、家事忙しいんだけど。落ち武者さんとエルナの選択物も干しているし、いちいち誰の下着とか確認してないんだけど。何故私のみを攻撃し傷付け貶める」
「付きまとう罪は奈落の底」
「煉獄女官見習いは見てないって言ってるでしょ!」
本当何なの。自分らは家事ひとつしないくせに。何故私を悪者にする。
「煉獄女官見習い、ずっと見てると面白いですよ。続編も出ましたし」
「あ、そうなんですか?」
「ええ、私、アニメ大好きで色んなアニメ見てるんですけど、煉獄女官見習いの続編は絶対見た方がいいと思います!」
アヤネさんてアニメ好きなのか。何だか意外。
「では、また見てみます。アヤネさんも深夜アニメ見たりするんですか?」
「はい、今期のは殆ど見ています。薬草摘みの休日、転生医師、エリートを目指す教室とか面白いです」
「私も見てます!最初は電子漫画で見てたんですけど、アニメ化された時はビックリしました!」
何だかアヤネさんとは話が合う。なかなかアニメ見てる人周りにいないから余計に話も弾む。それにしても貴族もアニメとか見るんだなあ。
「本当ですね。これも時代でしょうか。一昔前の、人生をかけた少女やアンルェカケルンラーク、信じゆく永遠とかも好きです」
「私も見てます!人生をかけた少女とか人生ですよね。アンルェカケルンラークとか推しキャラいます?」
「リミットルさんですかね」
アンルェカケルンラークと言えば、やっぱりリミットルさんだよね。
「私もです!楽器全般弾けて大人しそうでしっかり発言するところとか好きです。主題歌も気に入っていて、クリコさんとグラフィットさんのアルバムも全て持ってるんですよね」
「同じです!私のその2組のアニソン歌手の大ファンでコンサートも行ってます!」
コンサートかあ。やっぱり貴族は規模が違うなあ。
このグループでは色々あったけれど、話が合う人がいると何だか楽しい。
「ねえ、ラルク。リミットルさんて、オスリューさんに喧嘩ばっか売って子供っぽいよね」
「そうだな。20代前半ってまだ社会を知るには幼いからな。僕はジュアムリスさんかなあ」
「みんなをまとめてるもんね!私はルイティさん!リミットルさんのように、すぐ感情で動かず冷静派だし」
ナミネって、古い漫画しか見てなかったんじゃないのか?どうして知っているのだろう。それにしても、私とアヤネさんの推しキャラを悪く言うなんて、憎たらしい。
「ねえ、ナミネって、どうしていつもそうやって色んなこと悪くいうの?ナミネって性格悪いよね」
「あんたさ、気付かないのかよ。強気なナミネは妬いてんだよ。特にミネルナにな!」
ミネルナさんに?どうしてそう思うのだろう。金髪の女性って、あまりタイプじゃないんだけどな。
「ナミネ、私ミネルナさんのことズームさんのお姉様としか見てないよ。ナミネのほうがずっと可愛いし」
「なるほど。顔より身体を見ているわけですな。ところで悪徳商法のパンのシールは集まりましたかな?」
「ねえ、そういう言い方良くないって言ったよね?1つのビジネスだって分からないの?みんな可愛いグッズ欲しくてシール集めてるんだよ」
もう、どうしてこんな子になったの!ナミネの分も交換したけど、この感じだと使わなそうだ。
「私も同意見ね。ああいった子会社はグッズを表に出して、同じ商品ばかり買わせるコンセプトで、貧乏くさいし、まるで宗教団体だわ」
セナ王女……何故煽る。王女からしてみれば、庶民の暮らしなど分からないのだろうか。
「セナ、それを言ったらシール集める人の楽しみなくなるわよ」
「でも、私も気に入ったのがあったらまとめ買いして、交換してます」
やっぱりアヤネさんとは気が合いそうだ。
「ですよね!やっぱり、交換の瞬間とかワクワクしますよね」
その時、落ち武者さんからメールが来た。
『強気なナミネが髪伸ばしてたのは姉さんの真似してたんだよ!あんた、そんなことも知らなかったのかよ!メギツネのこともあるし、ミネルナのことで拗れるなよ!』
ナミネはセレナールさんを意識して髪を伸ばしていたのか。でも、バッサリ切ったということは今はセレナールさんのことは吹っ切れているのかな。
ナミネは綺麗系の人がいやなのだろうか。可愛い系のカナエさんのことは何も言わないし。けれど、私に見向きもしなかったナミネがヤキモチ妬くほど私のことを好きになってくれるほど時が満ちてきたのはとても嬉しい。
私はカップル日記を開いた。

『ミナクの愛情こもった手作り弁当♡』
これ殆ど冷凍食品じゃないか。よく誤魔化せたな。

『ヨルクさんの手編みのマフラー』
ナミネ……ついに私のマフラーを使ってくれる時が来るなんて……。

『カナエが手編みのマフラーをくれた。
カナエはこういったのが得意だ。
永遠の愛をここに刻む』
カナエさんって、料理だけでなくて裁縫も出来て、本当完璧だよなあ。正直アルフォンス王子には勿体ない気がする。

『エミリと1日Fメモリイᥫᩣ』
何かもう言葉に出来ない。

『皇太子様に手料理ꯁꯧ』
これ食べられるのだろうか?

「あの、皆さんは彼氏がグラドル雑誌、或いはキュート雑誌見てたらどうします?」
何故いきなりこういう質問をする。
「高校生のクラフは部屋のクローゼットに山積みだったわよ」
「ユメ!」
何か意外だな。でも、ユメさんて寛大なんだ。
「私はグラドルまでなら……」
やっぱりキュート雑誌は女の子からしたらあれだろうか。
「カナエは雑誌程度は気にしません!」
カナエさんて、いつもどっしり構えてるなあ。
「私は両方いやだわ」
セレナールさんて束縛型だっけ?
「私は気にしないかしら」
何となく、遠い昔、セレナールさんが皇太子様から捨てられ、エミリさんを選んだ気持ちが分かる気がする。
「ハッキリ言うわ!グラドルもキュートも、こんなの浮気じゃない!彼女がいれば必要ないわ!」
セナ王女って束縛強すぎる。ミナクお兄様どうやって隠しているのだろう。カラルリさんの時みたいに携帯割られないかな。
「では、キュートチャット、或いは身近な人のキュート画像を保存していたらどうしますか?」
何故この質問を続ける。何のメリットがあるというのだ。
「カナエは特に気にしません」
「私も気にしないかも」
カナエさんとユメさんて案外理解あるほうなんだ。
「今の時代なんだから仕方ないんじゃないかしら。そんなものにいちいち目くじら立ててたら交際なんて長続きしないわ」
やっぱり落ち武者さんにはエルナしかいない気がする。
「キュートチャットなんて完全な浮気じゃない!身近な人のそういう保存なんて裏切りだわ!そんなことする男なんて宦官にしてやるわ!」
もう処刑だな。セナ王女とは絶対に交際したくない。ナミネでさえ、ネットまでは許してくれてるのに。
「では、今から男性陣の携帯をチェックします!」
え、なんでいきなり?ナミネは、扇子を動かし、男性陣の携帯を没収した。
「まずはミナクさんの携帯をチェック!ふむふむ、いかがわしいものは何も入っていませんな」
って、どうやって隠してるの?ずっとセナ王女といるのに、ここまでバレてないなんて、いったいどんな策を使っているのだろう。
「次はアランさんの携帯をチェック!ふむふむ、いかがわしい動画閲覧履歴がたくさんありますな」
「か、返してくれっ!」
「はい、ストップ!」
落ち武者さんは、扇子でみんなの携帯を戻した。
「まだ2人しか見てませんぞ」
「あんたさ、キリないだろうがよ!もし、顔だけヨルクがミネルナのそういうの保存してたらどうすんのさ」
「破談にします」
「ナミネ、私はそんなことしないから!破談だけは絶対やめて!ちゃんと話し合って!」
ナミネは私を見つめた。そして、袖で私の涙を拭いた。私涙出ていたのか。
「ヨルクさんは泣き虫ですな。もう交際してまもなく5ヶ月ですぞ。そろそろ気付いてください」
5ヶ月……。そんなに経つのか。交際当初の片想いに比べたら、ナミネとは随分恋人らしくなれた気がする。
「気付くって何を?」
「ねえ、ラルク。どう思う?」
何故ラルクに聞く。
「まあ、鈍いわな」
ナミネとの交際が5ヶ月も続くだなんてまるで夢のようだ。大学を卒業して必ずナミネを幸せにする!

夕方のナノハナ家。
ズームさんとミネルナさんも帰っていた。
「あ、あの、ズームさん!ピアノを教えていただけないでしょうか?」
「構いませんよ」
2人は知り合いなのだろうか?
「あの、セナ王女の誕生日会に着ていくドレス選んでもらえないでしょうか?」
ん?そこまで親しい間柄なのか?
「僕は女の子に服を選んだことがないので、ファッションセンスのある人に選んでもらってください」
「ズームさん、私にもピアノ教えて教えて〜!」
「いやです」
何故断る。ズームさんはナミネのことが苦手なのだろうか。それとも、遠い昔のことを気にして億劫になっているのだろうか。
「ナノハナ家は共働きですが、ズームさんのお母様は専業主婦ですか?」
「知りません」
ワケありなのだろうか。それにしてもアヤネさんの時と態度が違う気がするのは気のせいだろうか。
「あ、カナエさん、アルフォンス王子は……」
「アルフォンス王子様は誕生日会の打ち合わせで忙しいのでカナエは邪魔にならないようにここに来ました。今から夕ご飯の準備をします」
そっか。やっぱり、王女、王子なだけに、盛大なパーティーになるのだろうか。
「そうなんですね。私も手伝います」
その時、玄関のチャイムが鳴った。何故か落ち武者さんが玄関に向かった。私も慌てて玄関に向かった。

「あんた誰?何の用?」
あー、また失礼な態度取ってる。随分と綺麗な人だな。いったい誰だろう。
「ブランケット家のミミリと申します。息子と娘がこちらでお世話になっていると聞いて、差し入れを持ってきました」
え、ズームさんとミネルナさんのお母様?
「じゃ、上がれ」
もうっ、どうして落ち武者さんは見知らぬ人に失礼な態度しか取れないの。
「いえ、娘が嫌がりますので、2人には会わずに帰ります。これだけ渡してください」
親子仲良くないのだろうか。
「えっ、でも、せっかく来られたのに……。少しでも上がっていきませんか?」
「あなたもここの方ですの?」
「あ、いえ、私はクレナイ家 次男 ヨルクと申します。ナノハナ家とは家族ぐるみの付き合いなんです」
「そうですか。では、これ皆さんで召し上がってください」
せっかくここまで来たのに会わないでこのまま帰るなんて少し寂しく感じるけど、他所の家のことに口を挟むのも良くないし、ここは何も言わないで受け取っておこう。
「分かりました。では、確かにお受け取りします」
「では、これで失礼します」
「お気を付けて」
私と落ち武者さんはズームさんのお母様が帰って行くのを見届けると、再び第4居間に戻って行った。

……

あとがき。

起きたら物凄く頭痛くて、その状態で書いてたらよく分からない回になってしまった。

ついこないだ書き始めたばかりなのに、気が付けば、ナミネとヨルクが交際5ヶ月間近か。
小説軸の時間の流れが早く感じる。
走り書きではかなり遅かったのに。

エミリの記憶について書くの、もう少し遅らせなきゃいけないからモヤモヤしてます。
純愛偏差値 未来編 一人称版 57話

《ナミネ》

私とラルクは久しぶりにクレナイ家のお風呂に入っている。ヨルクさんと交際してからは、ヨルクさんとばかりお風呂に入っていたから、ラルクとこんなふうに過ごすのはヨルクさんと交際前振りになる。ヨルクさんと交際する前はラルクとよく一緒にお風呂に入っていたのだけど、だんだんヨルクさんと過ごす時間のほうが多くなって、ラルクと2人で過ごしていた時間が薄れていた。
「ラルク、一緒にお風呂入るの久しぶりだね」
「ナミネ、ごめん」
ラルク、反省しているのかな。
「まだ、セレナールさんのこと恨んでる?」
「全く恨んでないわけじゃないけど、伝説武官に辿り着けなかったことは僕自身のせいなんだ。僕が恋愛に明け暮れているうちに、ナミネと差がついて焦るようになっていた」
セレナールさんとの恋も実らず、伝説武官にも辿り着けないラルクは八方塞がりになっていたのかもしれない。でも、私はもうラルクに復讐なんかして欲しくない。
「ラルク、もうあんな女放っておきなよ。どの道、エミリさんと皇太子様の記憶が戻るまでの儚い夢なんだからさ」
エミリさんと皇太子様の記憶が戻ればただでは済まされない。2人はずっと純粋な関係を築いていただけに、エミリさんが不本意に喪失したものは大きい。
変わったのは過去ではなく、未来だったんだ。
「分かってる。それでも、あの時は馬鹿にされた挙句、皇太子様に乗り換えたセレナール先輩を恨んでしまった。でも、もうこれからは彼女なんかいらない。ナミネや落ち武者さんに追い付いて、前みたいに訓練に集中する」
ラルク、今度こそ正気に戻ったんだよね。信じていいんだよね?
「焦らなくていいよ。ラルクなら、必ず受かるんだしさ」
「でも、僕はセレナール先輩に訴えられるかもしれない」
「大丈夫だよ。セレナールさん助かったんだし」
お武家連盟会議では、ラルクの暴力行為が問題視されているけど、私は人を騙して辱める行為も1つの暴力であると思う。ラルクを追い詰めたセレナールさんなんか、とっとと記憶戻した皇太子様にフラれて、自分で作り上げた残酷な現実を直視すればいい。
「僕は元に戻れるかな」
「ラルクは進むんだよ!私が支えるよ。ラルクのことずっと支えるよ。でも、焦らないで。いつまでにこうしなきゃとかないんだからさ」
ラルクはやたら惚れっぽいところがある。クレナイ家の男はみんなそうだ。ヨルクさんだってミネルナさんに気があるような素振りしてたし。(全くしてません)
「ありがとう、ナミネ」
期待してるよ、ラルク。今度こそ、邪魔する人に惑わされないで。
お風呂から上がると私はヨルクさんの部屋に向かった。

あれ、電気ついてない?ヨルクさん、いないのだろうか。私は電気をつけた。すると、机には私の分の夕飯が置いてあって、ヨルクさんは布団の上で泣いていた。私はヨルクさんに駆け寄った。
「ヨルクさん、どうして泣いているのですか!?」
また、私が何かしたのだろうか。
「ナミネはズームさんのこと好きなの?」
え、いきなり何?
「い、いえ、交際のこととか正直全く覚えてないです!」
やっぱり、私がまた泣かせたのか。どうしたらいいのだろう。ヨルクさんはちょっとしたことですぐに泣く。
「ナミネは私のどこが好きなの?」
私はヨルクさんを抱き締めた。
「優しくて私を本気で愛してくれて、いつも心配してくれて、美味しい料理作ってくれるヨルクさんが好きです!そもそも、ヨルクさんは誰と比べているのですか?私はどんな男が現れてもヨルクさんだけを見てるんです。ヨルクさんとは別れません!」
はあ、ヨルクさんは優しいけど、優しすぎてメンタルが脆い。こんなふうに泣かれると私が悪いみたいじゃない。
「うん、ごめんね。ナミネのこと信じる。今、ご飯温め直すね」
「あ、はい」
何か主婦みたい。熱、上がって来てる。私は布団に寝転んだ。その時、部屋がノックされた。私は扉を開けた。
え、カンザシさん……。何の用だろう。
「ナミネさん、少し2人で話せませんか?」
ヨルクさんは、夕飯温め直しに言ってるし気まずいな。
「すみません。熱が上がってきたので、今日はご飯食べたら寝ます」
「どうしてですか!ラルクさんとは一緒にお風呂に入ったのに、どうして僕とは少しも時間取ってくれないんですか!」
やっぱりカンザシさんは自分のことしか考えていない。私は別荘でラルクを引き止めるだけで、かなりの体力使ったのに。どうして気遣ってくれないのだろう。
「本当に具合が悪いんです」
その瞬間、カンザシさんは私に殴りかかった。私は避けた。そして、天井にしがみついた。
「ナミネさん、下りてきてください」
その時、またノックされた。
「どうぞ」
あ、ズームさん!
「ズームさん!助けて!」
「おい、カンザシ、ここで何してたんだ!」
あれ、何か持ってる?
「ナミネさんが僕との時間作ってくれないから言い聞かせてる!」
「いい加減にしろ!カンザシ!」
ズームさんはカンザシさんを部屋から追い出した。入れ替わりにヨルクさんが戻って来た。私は天井から下りた。
「ナミネさん、冬用のルームウェアです。良かったら使ってください。それと、熱さまシートとドリスポです」
「わあ、暖かそう!ありがとうございます!」
ズームさんて、本当は優しい人なんだ。カンザシさんとは大違い。
「では、これで失礼します」
ズームさんはヨルクさんの部屋を出て、カンザシさんをどこかに連れて行った。
「ナミネ、ご飯ここに置いとくね」
「あ、ヨルクさん、ズームさんのことは、その……」
めちゃくちゃ気まずい。
「うん、何となく分かる。ズームさんから色々もらえて良かったね。着せてあげる」
ヨルクさんは私にズームさんからもらったルームウェアを着せた。
「カンザシさんに具合悪いって言ったら殴りかかってきたんです」
「え、ナミネ、大丈夫?」
私は夕飯を食べはじめた。
「はい」
「ナミネ、カンザシさんとは2人で会わないほうがいいんじゃない?」
「私もそうしたいんですけど……何か付きまとわれているというか……別に嫌いとかではないんですけど、私の体調を全然考えてくれないんです」
ダメだ。眠くなってきた。私は急いでご飯を食べた。ヨルクさんは私のおでこに手を当てた。
「ナミネ、また熱上がってる」
ヨルクさんは、さっきズームさんがくれた熱さまシートを私のおでこに貼った。
「あ、すみません」
「ナミネ、もう寝て」
「はい」
私は布団に入るなり眠りについた。
この時の私は何も知らなかった。アランさんがセレナールさんに気があることを。タルリヤさんが紀元前村から妖精村学園に転校していたことを。エミリさんが密かにタルリヤさんと関係を持っていたことを。エミリさんがアランさんとタルリヤさんの子供を異父過妊娠していることを。セレナールさんが皇太子様の子を妊娠していることを。アヤネさんという貴族が妖精村学園に転校していたことを。

数日後、私はふとした瞬間に、みんなで行った星空レストランに飾られていた絵を描いたのは昔の自分であることを思い出した。いつかの私は小さな絵画展もしていた。
そのことを落ち武者さんに話したら、絵画展全体の写真や、私のサインが入った絵の写真、私が絵を描いている様子の写真をくれた。
後日、私は星空レストランのサイトにアクセスするとタルリヤさんのプロフィール欄にメールアドレスが載せてあり、私はタルリヤさんに写真と共にメールをした。すると、タルリヤさんは星空レストランの店長に詳細を話してくれて、星空レストランには、私がタルリヤさんに送った写真のコピーと元の作者は昔の私である説明書きを載せてくれたそうだ。また、タルリヤさんが所有している1点の昔の私が描いた絵画もお店に飾ってくれたらしい。
それ以降、私とタルリヤさんはメールでやり取りをするようになった。

カンザシさん以外のニンジャ妖精のみんなとラハルさんは、虹色街に戻り、仕事を再開するようになっていた。時にはカンザシさん抜きのテレビ出演もしていたそうだ。けれど、カンザシさんがずっと紅葉町に残り続けるから、ラハルさんとミツメさんは仕事の合間に紅葉町に様子を見に来てくれた。

ズームさんとミネルナさんは、エミリさんと皇太子様の記憶が戻らないことを心配し、クレナイ家と実家を行ったり来たりしている。カラルリさんは、たまにクレナイ家に来てはミネルナさんを口説いていた。
また、ミネルナさんは、あの後、セレナールさんを救った恩人として皇太子様から多くのお礼の品物をもらったらしい。

セナ王女はクレナイ家で過ごすごとが多くなっていて、カナエさんは王室の別荘でアルフォンス王子のお世話をしている。

ナルホお兄様は私を心配し、しばらくクレナイ家で過ごすことになり、ナヤセス殿もたまにクレナイ家で泊まるようになったのである。

私は第4居間に入った。
そっか、今日はニンジャ妖精さんがいるのか。
「あ、ズームさんもミネルナさんも、洗濯物あったら、遠慮なく、廊下のカゴに入れてください」
「僕は結構です」
「じゃあ、お願いするわ」
また、ヨルクさんミネルナさんが綺麗だからって、いい子ちゃんぶってる。
「ミネルナさんの生下着見ることが目的の変態ですな」
「ナミネ、どうしてそんなこと言うの?私、そんなつもりないし、カゴの中の衣類なんて見てないから!」
「干す時にはガッツリ変な想像するわけですな」
「変な想像してるのナミネのほうでしょ!」
ミネルナさんの下着か……。ミネルナさんて彼氏いるのかな。
この時の私は知らなかった。ミネルナさんがカンザシさんに想いを寄せていることを。
ミナクさんとセナ王女は使用人に洗濯してもらっているのか。まあ、ここミナクさんの家だもんな。
「ミツメさんは、コマーシャル出演やドラマ撮影もされているそうですな」
「はい、オーディション受けたら受かったので全力尽くそうと思います。ソロでも活動しています」
「ふむふむ、努力をされてますな」
ミツメさんならソロでもやっていけるだろう。こんな短期間で、ラハルさん同等の実力を身に付けるとは。その時、ヨルクさんが私の首にマフラーをかけた。
「ナミネ、寒いからこれ使って」
「ふむふむヨルクさんの手編みのマフラーですか。ヨルクさんは器用ですな」
「小学生の頃からナミネに毎年編んでたけど、やっと渡せた」
そうだったんだ。ダメだ。好きすぎる。
「ありがとうございます、ヨルクさん。大切にします」
私はヨルクさんにもたれかかった。
「ナミネ、もうすぐ生理でしょ。いつものポーチ渡しておくね」
やっぱりヨルクさんてズレてる。みんなの前でこういうの恥ずかしい。
「あ、ありがとうございます」
私はポーチを受け取ると徐々にヨルクさんから離れ、ラルクの隣に座った。
「ねえ、ラルク、ズームさん伊達メガネしてるよ」
「わざわざ言うなよ。今の時代だから、ブルーライトの特注とかだろ」
そっか、ズームさんて普段かなりパソコン使ってそうだもんな。
私はズームさんの膝に頭を乗せ寝転んだ。
「ズームさん、どうして伊達メガネなの?教えて教えて」
「知りません」
その瞬間、カンザシさんは私を殴ろうとした。私は避けて立ち上がった。
「リーダー!いい加減にしてください!」
「ミツメ、お前反則したんだってな」
反則?何のことだろう。
「リーダー、今度は脅しですか!僕は反則なんてしていません!」
「これ見ろよ」
カンザシさんは写真をばらまいた。ミツメさんて空手初段だったんだ。これって大会の時の写真かな?禁止技の写真がリークされたということか。
「まだまだお若いのに青春を奪われるのは酷ですな。良かったら私が詳細を調べましょう」
「もう終わったことなのでいいです。今は音楽に集中します」
私はミツメさんに扇子を突き付けた。
「いけませんな。そうやって、濡れ衣着せられたまましっぽ巻いて逃げるなんて。そんなことでは芸能界でもまた同じことの繰り返しですぞ」
「僕にどうしろっていうんですか!」
「完全な負け犬ですな。芸能界でも変な噂されますぞ」
ミツメさんは何も言わなかった。私はミツメさんが怒るまで負け犬と煽り続けた。ミツメさんは私に殴りかかった。私は扇子をしまい、ミツメさんの攻撃を避け続けた。
「おや?一発も当たってませんぞ?」
それに加えカンザシさんも私に攻撃してきた。
「今こそ、ナミネさんがいかに僕に酷い態度を取っているか思い知らせます!」
私は2人の攻撃をひたすら避け続けた。20分もすればカンザシさんは息を切らしはじめた。
「カンザシさんはログアウトですかな?」
私は天井まで飛び上がり着地した瞬間にミツメさんに前蹴り寸止めを行った。
「ここまでですな。まあまあ基礎は良いでしょう」
ミツメさんは、その場に泣き崩れた。やっぱり過去に何かあったのか。
「僕だって続けたかったです!でも、ハメられたんです。試合開始の前に僕の床の所にだけ何か塗られていました。試合開始と共に別の場所に移動しましたが、足が滑り、相手にぶつかり気がつけば相手を押し倒したまま相手の喉が押し潰されていたんです。僕はその場で失格になり、二度と試合に出られなくなったんです」
若くて強い。先輩の妬みだろうか。
「今、続けたいと仰りましたね。では、私に助けを求めますか?」
「お願いします……」
私は無線を手に取った。
「これよりナノハナ家 第1出動の要請を行います。ナノハナ家初級武官は今すぐ数年前のミツメさんの虹色街での空手大会で細工された証拠を見つけ出してください!顧問弁護士は細工した人を訴え慰謝料請求の書類を持ってきてください」
ミツメさんは何年前か言わなかったけど、ナノハナ家の武官は優秀だし、当時の監視カメラの証拠でも見つけてくれるだろう。

2時間後、ナノハナ家 初級武官と顧問弁護士が来た。
私は初級武官から渡された資料を見た。
3年前か。表向きには、ミツメさんが開始同時に相手を押し倒し禁止技を使い失格とあるが、防犯カメラの映像では、高校生らしき人物3人が前の日にミツメさんの立ち位置のみに油を塗っていた。理由は、ミツメさんが妬ましくて見るたびに悔しくてどうしようもなかったと書かれてある。しかし、ミツメさんの件で、ミツメさんの実家である道場は信用を失い、生徒は次々にやめていき、ミツメさんのお父様は清掃員の仕事をしはじめた。ふむふむ、ミツメさんのご実家は道場だったのか。
当時、ミツメさんの試合相手だった人は、ミツメさんがハメられたことを知り、当時床に油を塗った高校生3人をナノハナ家 顧問弁護士を通して訴えることにしたらしい。
ミツメさんもナノハナ家 顧問弁護士を通して訴えることとなった。

先の話になるが、裁判は案外早く行われ、当時の証拠の映像が決め手となり、ミツメさんと当時の試合相手は勝訴し、油を塗ってミツメさんを陥れた当時高校生だった3人は懲役2年、ミツメさんと試合相手の双方に300万円を慰謝料として支払うことになった。裁判のことはニュースにもなり、ミツメさんの実家の道場は再び信用を取り戻し、ミツメさんのお父様はまた道場を運営することになったらしい。

私はヨルクさんが持ってきたお茶を飲んだ。
「ナミネさん、ありがとうございます。裁判に負けても、悔いはありません」
裁判で戦う決意。それがミツメさんに勇気をもたらしたのだろうか。
「まだ、負けると決まったわけではないですぞ。では、ミツメさん、私からのお題です。当時の状況を再現して試合をしてみましょう。もちろん私が油が塗られたほうに立ちます」
「え、でも……」
私は無理矢理ミツメさんをクレナイ家 道場に連れて行った。ふむふむ、皆さんも見学と言うわけですな。私はミツメさんに油の塗られた所を確認させた。
「確かに油が塗られてますね」
「はい……」
私は油の塗られた所に立った。
「全力でかかって来なされ!」
「じゃ、はじめ」
落ち武者さんの合図と共にミツメさんは私に向かって来た。確かに、1歩でも動けばかなり滑る。私はその場から動かなかった。
ミツメさんが私に手刀を使った瞬間、私は天井まで飛び上がり、ミツメさんの後ろに立ち、ミツメさんが前を向いた瞬間、私はミツメさんに正拳アゴ打ち寸止めをした。
「じゃ、そこまで」
私はヨルクさんからタオルを受け取り足を拭くと、クレナイ家 武官見習いに挨拶をした。
「皆さん、遅くまで訓練お疲れ様です!」
武官見習いには中学生くらいの男の子もいた。
武官見習いのみんなは、さっきのミツメさんとの試し試合を見てか私に拍手を送った。
「あれがヨルク坊っちゃまの婚約者か?」
「強すぎだろ」
「クレナイ家は安泰だな」
ミツメさんは呆然としていた。
「ナミネ、ここ道場だよね?」
「ここは集会所ですぞ、ラハルさん。では、第4居間に戻りますかな」
私は道場を出ようとした。
「どうして……」
道場の師範の息子ゆえ、自分が1番強いと思い込んでいたのだろうか。
「ミツメさん、あなたはお強い。大会では常に優勝候補だったでしょう。しかし、天は二物を与えませんぞ!ご実家は道場。けれど、ミツメさんは芸能界の道を歩まれました。これからは音楽の道を歩みなされ!」
「は、はい!」
ミツメさん、いい顔してる。
「流石ね。でも、ヨルクの縁談だけが決まっても、ラルクとミナクがこれじゃあねえ……」
「リリカお姉様、まだ時間は十分にあるでしょう」
リリカさんは、ラルクとミナクさんのお嫁さん探しに悩んでいる。ずっと悩んでるのだ。セナ王女もセレナールさんもリリカさんは反対している。セナ王女は強いんだけどなあ。
「どうして……僕だって頑張っているのに、ミツメは恵まれた環境で何不自由なく暮らして、やりたい放題生きてきたのに……不公平だ……」
お母様は一般家庭にカンザシさんを預けたはずなのに、カンザシさんはそこで虐待を受けた。それに比べ、家が道場で3歳の頃から音楽教室に通わせてもらえて、家では空手の訓練も受けられる。ミツメさんは確かに恵まれているのだろう。
「カンザシさんには音楽があるではありませんか」
「ヨルクのお父さんは建築士でナミネのお父さんはサラリーマンなんだよね?」
「はい。しかしながら、現代は社員切り、派遣切りによって多くの人が就職困難に陥ってます。お父様も先日会社をクビになり、床屋に転職しました」
ラハルさんは、どうしてナノハナ家とクレナイ家をそんなに気にするのだろう。
「なんで、僕のお父様が建築士なんだよ!」
「あのね、ラルク。ラルクのお父様は仕事掛け持ちしてラルクにご飯食べさせてるの。ラルクに大学まで行かせるためだよ」
「強気なナミネ、あんたなんで嘘つくのさ。クレナイ家もナノハナ家も武家だ、ラハル!」
あーあ、意外な人物が言っちゃったよ。実際問題、現代の武家なんて仕事もそんなになくて、次々に潰れていってるのに。そりゃ、昔は武士ともあれば、暮らしには困らなかった。けれど、このデジタル世界の現代に剣なんていらない。
「そっか。それでみんな強いんだ」
その瞬間、カンザシさんはラハルさんにピストルを突き付けた。道場の武官見習いは騒ぎはじめた。
「ナミネ、逃げて!」
「まあ、そう焦りなさんな」
私は扇子を動かし、カンザシさんからピストルを離させ、ラルクはカンザシさんを扇子で吹き飛ばし、落ち武者さんは花札でカンザシさんを拘束した。
「あんた、ここ武家だって言ってんだろ!」
「惨めですね、リーダー。ピストル持っても少しも敵わないなんて」
武官見習いが道場を出た後、落ち武者さんは電気を切った。
「待ってください!置いていかないでください」
カンザシさんは過呼吸を起こした。
「あんた、自分のしたこと分かってんのかよ!」
「カンザシさん、音楽で成功してください!」
「ナミネさんに僕の何が分かるんですか!何の苦労もなしに、裕福な家庭でぬくぬくと過ごして。ムカつきます!ヨルクさんと別れて僕に一生償ってください!」
私がカンザシさんに対して苦手意識を持っていたのは、カンザシさんがずっと前から私のことを恨んでいるからだと私は位置付けした。実際どうか分からないが、カンザシさんは庶子として私の兄である事実をこれまでの苦労を私に償わせようとしている。
カンザシさんの言葉に私は分からなくなった。

私が間違っていたのだろうか。

……

あとがき。

前回は脱字をしてしまい、その箇所だけ訂正しました。というか、最近、脱字が増えてる気がする。

今回の話は難しいですね。

虐待を受けて育った人は虐待を受けていなかった人より、生きることに関してはかなり不利です。大人になるほどに、過去の記憶が膨らんで、イルージョンと呼ばれる症状が出てしまうからです。
普通に考えても、暴力振るわれるよりそうでないほうが、笑顔でいられますよね?

しかし、人というのは残酷な生き物で、虐待され90%の重たいものを抱えている人がイジメの的にされやすいのです。虐待された人は上手く人間関係を作れないんです。そこに付け入るのが虐待を経験したことがない一般市民で、気に入らないことがあれば、憂さ晴らしをするわけですね。
負いつまっている人を更に窮地に追い込むことを『落ち武者を槍で突き刺す』と言います。

『不利な状況から成功した』と言う人もいますが、その人はその人ですよね。自分の価値観を押し付ける人は私は好きではありません。

カンザシのように八方塞がりな人も世の中には存在します。
そんな人をイジメるような行為はしないで欲しいと思った回でした。
純愛偏差値 未来編 一人称版 56話

《ヨルク》

今日は落ち武者さんの誕生日だ。
淡い膝下丈のオレンジ色のかすみ草の刺繍のドレスを着たナミネ可愛すぎる。パーティー会場は、王室の別荘なだけに貴族がたくさん来ていた。
けれど、落ち込むラルクを見て、ナミネが悲しまないか私は心配だった。

あれ、ナミネがいなくなっている。落ち武者さんも。
私はナミネを探した。すると、ナミネはパーティー会場の入口にいた。私はナミネの元に駆け寄った。
え、リリカお姉様と、セナ王女とアルフォンス王子もいる?ここで何をしているのだろう。
「ナミネ、何してるの?」
「顔だけヨルク!姉さんがラルクに針刺された!」
そんなまさか!ラルクは割り切ったのではなかったのか?
「え……」
どうしたらいいのだろう。私はリリカお姉様に腕を掴まれた。
「ヨルク、もうここまで来たらセレナールを許せないわ!」
「リリカお姉様、これは流石に違うでしょう!」
あれ、目を背けた?
「落ち武者さん、今救急車呼ぶね!」
「無駄だ!」
え、何?セナ王女とアルフォンス王子……。王室のF938……。まさか、リリカお姉様は脅されたのか!?
「セナ王女、アルフォンス王子、リリカお姉様を脅したんですか?」
それともリリカお姉様の意思で組んだのだろうか。どちらにしても、復讐を続けるなんて間違っている。
「あら、リリカが提案したことよ」
でも、リリカお姉様の顔色が悪い。リリカお姉様は2人に話を持ちかけたが、それを利用されてリリカお姉様の不利な結論になってしまったということだろうか。
「姉さんは確かに酷いことした。でも、あれでも、小さい頃は僕の誕生をセリルと一緒に喜んでくれたんだ」
落ち武者さん……。セレナールさんの教師時代は水子だった落ち武者さんが、現世ではこうやって生きている。
あれ、さっきから、ナミネが一言も話してない。どうしてだろう。
「ズームさん!」
え、ズームさん?
「ズーム!姉さんは!」
「毒ですね。速効性のあるものではなく、ゆっくり、刺した部分を腐敗するものです。卵巣に刺されていました。ラルクさんはセレナールさんを現世では妊娠させないおつもりでしょう。毒は24時間で完全に卵巣が機能しなくなります。12時間も経てば取り除かなくてはなりませんが、今この瞬間も毒は進んでいます」
12時間。そんな長時間こんなところで足止めなんて出来ないだろう。だったら、どうして、ナミネたちは足止めされているのだ?
「あの、12時間もこんなところで時間稼ぎなんて出来ませんよね?」
「1時間で妊娠しても奇形児しか生まれなくなり、3時間で妊娠しても悪魔が生まれてしまい、6時間で妊娠しても流産し、9時間で妊娠しても死産、12時間で卵巣の半分に毒が回り取り除く必要があるのです。毒は時針草です。ナミネさんが気付かないと思い、24時間後にセレナールさんの卵巣の腐敗を待つつもりが、予定外となったんです」
つまり、ナミネが気付かなければ、みんなにとって好都合というわけだったのか。
「リリカはどれだけ関わってる?」
「リリカさんは、ラルクさんがセレナールさんに針を刺したのを見るなり、セナ王女と目が合ってしまい、絶対助けるなと言われました。そのことがなければ、セレナールさんの容態を確かめたでしょう」
良かった。リリカお姉様が見て見ぬふりしようとしたわけではなくて。けれど、このまま足止めされては、毒が進行してしまう。
ズームさんは皇室のF938をセナ王女とアルフォンス王子に見せた。いったいどこで手に入れたのだろう。
「人を殺すのはよくありませんね。セレナールさんはもうすぐ病院に運ばれます」
ナミネはズームさんの助けを待っていたのか。
「卑怯じゃない!私、セレナールのせいで二度までもカラルリと交際させられて苦痛だわ!私を流産させたカラルリと!」
「私もセレナールのような悪魔が傍にいたら夜も眠れない。ここでセレナールの人生を奪わないと」
セレナールさんをトケイ草で流産させといて今更被害者ヅラしても遅いだろうに。
「ズーム!何してるの!」
え、誰?随分と綺麗な人だな。友達だろうか。
「姉さん!毒盛られました!あの銀髪の女性をここに連れて来てください」
ね、姉さん!?あまり似てないような……。
「分かったわ!」
「させないわ!」
その瞬間、ズームさんのお姉様は口笛を吹いた。すると、10匹くらいの小さい犬が現れた。随分小さいな。まだ生まれたばかりの犬だろうか。
しかし、その犬はセナ王女とアルフォンス王子に噛み付いた。
「痛い!」
「くっ!」
2人の手はあっという間に血まみれになった。え、この犬何?小型犬はリリカお姉様にも噛み付こうとした。私は咄嗟に庇った。
「ヨルクさん!」
けれどナミネが私を庇った。
「ナミネ!危ないから向こう行って!」
すると、小型犬はナミネに懐き、大人しくナミネに抱っこされた。
「噛んじゃダメだよ」
小型犬を抱っこするナミネ可愛すぎる。けれど、この小型犬っていったい……。
「この犬何なんだよ!」
「番犬です」
こんな小さな犬が番犬なのか。はじめて見る種類だ。その時、ズームお姉様がセレナールさんと皇太子様を連れて来た。
「セナさん、何があったの?……あの、私はキクリ家 長男 カラルリと申す。そなたの名前を教えて欲しい」
え、何この展開。てか、この展開いらないよね。
「ブランケット家 長女 ミネルナ。この銀髪の子、毒を体内に入れられたわ」
ブランケット家。聞いたことないな。
「セレナールが!?」
セナ王女に中絶薬を盛ったカラルリさんが心配した素振り見せると、何だか嘘らしく感じてしまう。
「セナ、どういうことだ!」
「私じゃないわよ!ラルクがやったのよ!」
F938使ってセレナールさんの容態悪化させようとした時点で、もう共犯者だよね。
「ねえ、助けて!」
「ズーム、救急車はどうなってるの?」
「交通事故が発生して大渋滞に呑み込まれてます」
そんな……。だったら、セレナールさんの容態はどんどん悪化するではないか。私は思わず無線を手に取った。
「これより、クレナイ家 第4出動の要請を行います。クレナイ家のヘリコプター操縦者は今すぐ王室の別荘に来てください!」
『申し訳ございません。強い雷雨のためヘリコプターを出すことが出来ません』
そんな……。だったら、どうやってセレナールさんを病院まで連れて行けばいいのだ。
「強気なナミネ、あんた、あの折り鶴で姉さん病院に連れてけ!」
「分かりました」
ナミネはセレナールさんを大きな折り鶴に乗せた。その時、ラルクが来た。
「ラルク!もうやめて!これだとセレナールさんの未来がなくなっちゃう!ラルクのためにもならないよ!」
ナミネはラルクに結界をかけた。けれど、ラルクはすぐに結界を解いた。
「ナミネ、僕を見くびるな!」
ラルクはセレナールさんに結界をかけた。
「ラルク!セレナールさん傷付けてもラルクは前に進めないよ!」
ナミネは折り鶴から降り、扇子を開いた。ラルクとナミネの扇子の風が大きくぶつかり合う。その時、床に光が現れた。ズームさんの錬金術だ!(違います。ズームは数式で結界を解いたのです)
「解!姉さん!あの折り鶴に乗ってセレナールさんを月城総合病院へ連れて行ってください!」
「分かったわ!」
ミネルナさんは、大きな折り鶴に乗り、セレナールさんを支え飛び立った。ラルクは追いかけようとしたが、ナミネが阻止した。
「ラルク、行かせないよ!」
「顔だけヨルク、僕らも行くぞ!」
え、行くって?落ち武者さんが走るとズームさんや皇太子様、リリカお姉様も走り出した。私は慌てて後を追った。

別荘の外に出ると馬がいた。ナノハナ家の馬だ。ナミネは、ラルクとの戦闘中に落ち武者さんに紙飛行機飛ばしたのか。
「顔だけヨルク、乗れ!」
え?落ち武者さんは私の腕を引っ張って馬に乗せた。そして猛スピードで町を走った。私は必死で落ち武者さんにしがみついた。
リリカお姉様と皇太子様は別々に乗っている。何故私だけ落ち武者さんと乗らなければならない。
町は大渋滞していて、物凄い雷雨だった。私たちはひたすら馬で町を駆け抜けた。

月城総合病院に着くと、セレナールさんは既に治療が終わった後で病室で点滴を受けていた。
「姉さん!セレナールさんは!」
「大丈夫よ!針治療で完全に毒を抜いてもらったわ!」
ハル院長は、ミネルナさんの的確な説明でセレナールさんの体内に入った毒を完全に取り除き、セレナールさんの治療を成功することが出来たらしい。でも、後10分遅かったら、ズームさんが言っていたようにセレナールさんは妊娠しても奇形児しか産むことが出来なかったようだ。
時針草は、古代の研究者が皇帝陛下の命令で囚人やそれに類似する者に罰を与えるために開発したらしい。当時の人らは時針草が与えられれば治療は施されず、3ヶ月放置された後にギロチンにかけられた。つまり、死刑執行の合図で与えられていたのだろう。しかし、現代での入手は不可能らしい。ラルクはどうやって手に入れたのだろう。まさか、タイムスリップした時に手に入れたのか?
それにしても、今日は落ち武者さんもセレナールさんも誕生日会だというのに、ラルクのせいで、このようなことになり、何だか可哀想だ。
「セレナール、無事で良かった」
「皇太子様……」
その時、私と落ち武者さんの携帯が鳴った。私と落ち武者さんは携帯を開けた。ナミネからのメールだった。
『ラルクは委員長の通報で、紅葉町の警察署にいます。身元引受け人が必要なので、リリカさんに来てもらうよう言ってください』
ナミネ、無事で良かった。
「リリカお姉様、ラルクが紅葉町の警察署にいるそうで、身元引受け人が必要だそうです」
「分かったわ、今行く」
「私も行くわ!このままじゃ黙ってられない!」
ラルクのしたことは決して許されることではない。セレナールさんは完全に怒ってる。
「セレナール、外は豪雨だ。伝言だけ伝えてもらおう」
セレナールさんはしばらく考えていた。
「分かったわ。手紙を書くわ」
セレナールさんは手紙を書き終わるとリリカお姉様に渡した。
「散々私をイジメておいて、結局犯罪行為したのラルクじゃない!」
セレナールさんはリリカお姉様を引っぱたいた。
「ごめんなさい。弟に変わって謝るわ」
それだけ言うとリリカお姉様は病室を出て紅葉町の警察署に向かって行った。
「あんたも強気なナミネ、迎えに行ってやれ。僕は姉さんに付き添ってる」
「今日は落ち武者さんの誕生日でしょ!私もここにいる」
ナミネのことは心配だけれど、こんな状態の落ち武者さんを放っておけない。
私は何気なくカップル日記を開いた。

『馬に乗るヨルクさん』
ナミネ、タイムスリップした時の写真アップしてくれてたんだ。

『ミナクとFメモリイ♡』
セナ王女は相変わらずだな。

『エミリとFメモリイFメモリイᥫᩣ』
これ、エミリさんの記憶戻ったらセレナールさん、とんでもないことになるんじゃないかな。

『アラン大好き』
何だか同情してしまう。

ナルホさんは、パーティー会場に少し顔を出した後、ナヤセスさんのマンションに行ったらしい。
セナ王女とアルフォンス王子はカラン王子が王妃に相談したことにより、王妃が通報して紅葉町の警察署に連行された後、セイさんの母親が迎えに来て、今日はセイさんの家で泊まるようだ。
セレナールさんは点滴が終わるとミネルナさんにお礼を言い、皇太子様と共に皇室の別荘へと向かって行った。
雨も止んだし、交通面も元に戻っている。
「あ、ズームさんとミネルナさんはクレナイ家に泊まっていきますか?」
え、この間は何だろう。何だか気まずい。
「では、そうさせてもらいます」
「え、ええ、私も」
その時、リリカお姉様からメールが来た。
『紅葉町の警察署に行ったらナミネがずっとラルクに着いてたらしいんだけど、ナミネが顔から全身傷だらけで近くの病院で注射打ってもらったわ!あの子、ずっと痛みを我慢してたのよ!今、クレナイ家で寝てるわ!ニンジャ妖精とラハルも来てる!あんたも早く帰って来なさい!』
そんな、ナミネが……。どうして何も言ってくれなかったのだろう。
「落ち武者さん、ナミネが……!」
「今すぐクレナイ家に行くぞ!」
私たちは月城総合病院を出てタクシーを拾いクレナイ家に向かった。

クレナイ家に着くと、ナミネはラルクの部屋でラルクの隣の布団で寝ていた。そして、何故かニンジャ妖精さんとラハルさんがいる。カナエさんが看病してくれていたのだろうか。
「すみません、カナエさん」
カナエさんはキクリ家に戻らないのかな。
「カナエは夕ご飯を作ってきますので、ヨルクはナミネの側にいてあげてください」
「は、はい」
「ナミネはラルクに結界をかけた後、ラルクから仲直りしたいから結界の中に入って欲しいって言われ、通し(おとし)で入ったら結界を縮められ全身殴られたみたい。ナミネはラルクの気が済むまで殴ってと言ったそうよ」
酷すぎる。ナミネの可愛い顔に大きなアザ。全身もアザだらけなのだろうか。ナミネは守る価値のない人を守って犠牲になったのに。セレナールさんは本当に卑怯な人だ。
「ラルクはどうしてセレナールさんに、あんなことしたんですか?」
「伝説武官に届かなかったのを馬鹿にされたことと、皇太子様と交際して自分だけ幸せになることが気に入らなかったのよ」
そんな理由でおおごとにしたのか。でも、これで誰がセレナールさんを嫌っているのかハッキリはした。けど、いつも自信満々のラルクがここまで追い詰められるなんて。
「ヨルクさん……行かないで……」
ナミネ、寝言でうなされてる。
「ナミネ、私はここにいるよ。どこにも行かない」
私はナミネの手を握った。
「ヨルクさん!行かないで!」
「ナミネ、私はずっとナミネのそばにいる」
私はナミネの汗をハンカチで拭いた。
「どうして……どうして……僕じゃなくてヨルクさんなんですか!ナミネさん!!」
「おい、起こすな!寝かせてやれ!」
リリカお姉様は、ため息をついた。
「ラハルはここにいていいけど、どうしてニンジャ妖精がここにいるの?自分のアパートに帰りなさいよ!クレナイ家は溜まり場じゃないわ!」
何だ、その差別発言は……。
「ナミネさんがこんな状況で帰れません!」
「リーダー、帰りましょう!僕はよそ様に迷惑かけたくありません!」
あれ、ナミネな枕元に何かある。落ち武者さんに渡すはずだった誕生日プレゼントか。って、落ち武者さん勝手に開けてるし!
手袋……。もうそんな季節か。10月からあまりに色んなことがありすぎて季節さえも忘れていた。
「あの、でも、エミリさんが記憶戻ったらどうなるんですか?」
「お武家連盟会議でも話しているみたいだけど、エミリの記憶が戻ったらエミルがセレナールを訴えるらしいわ。ラルクがそれまで待てていれば良かったのだけど」
ラルクはすぐに復讐をしなければいけないほど苛立っていたのか。でも、ナミネを傷付けたことは許せない。
「過去が変わったんじゃない。未来が変わったんだ」
未来……か。だったら、いっそのこと、今すぐにキクスケさんにお願いしてエミリさんの記憶を取り戻させたい。
「エミリも可哀想だな。好きな男取られて、好きでもない男に、あんな目にあわされてさ」
え……。エミリさんは皇太子様と何もなかったのか?
「ねえ、落ち武者さん、なんでそんなことまで知ってるの?」
「セリルとカナコの話聞いてたからだけど?」
それじゃあ、エミリさんは……。
「じゃあ、エミリさんの記憶戻ったらどうなるの?」
「姉さんはカラクリ家から慰謝料請求されるだろうね?皇太子とも別れるかもね?」
「だったら、今回助かっても、この先はどの道苦しむ未来だよね?」
それを分かってて落ち武者さんは今回ナミネのみを犠牲にしたの?
「あのな、誰が誰を好きになろうが、姉さんの勝手だろ!森の湖の姉さんイヤガラセされた時、カナコかなり怒ってたけど?でも、皇帝陛下が不問にした。向こうの時代も今の時代もね。でも、カナコが訴えたいのは姉さんじゃなく、ラルクだ!セリルがいる以上、カナコは姉さんの味方につく。いくらカラクリ家が姉さん訴えても、それはカラクリ家と姉さんの問題。姉さんがラルク訴えれば少年院行きかもね?」
結局は手を出したほうの負けということか。ラルクは恋愛に呑まれ犯罪を犯したということなのか。悔しいけど言い返せない。セレナールさんは騙すことしかしていない。それに対してラルクはイヤガラセさせたり、毒を刺したりした。セレナールさんはエミリさんからしか恨まれないわけか。
「そうか……」
「けど、今回カナコが訴えたとしても皇帝陛下はラルクを不問にする。ラルクのバックには誰かいるんだろうね?姉さんはいくらカナコが味方についても、エミリと皇太子の記憶が戻れば、皇太子から捨てられ、結局ラルクに縋るだろうから、一番不利なのは姉さんなんだよ。顔だけしか取り柄ないからな」
それって、1周回るだけではないか。それに皇太子様から見捨てられたらセレナールさんはまた青春を失い、恋愛不安になるだろう。ラルクに縋られたりなんかされたら正直迷惑だ。
「これだから、セレナールとラルクの交際は反対だったのよ。こんなふうに面倒ごとに巻き込まれるから。ミナクもミナクよ。セナ王女なんてクレナイ家には相応しくないのに」
セナ王女は強い。けれど、自己主張が強すぎるのが棘だ。やはり、武家同士の交際が1番いいのだろうか。
「皆さん、夕ご飯が出来ましたよ。第4居間に来てください」
「あ、私が案内します」
「私が案内するわ。ニンジャ妖精も来なさい!」
リリカお姉様はズームさんたちを第4居間に案内した。……。カンザシさんとミツメさんはいかないのか?
「ヨルクさん!!」
「ナミネ!!」
「ヨルクさん……怖い夢を見ました」
「ナミネ、身体は大丈夫なの?」
「大丈夫です」
でも、まだ熱はあるみたいだ。汗も凄い。
「じゃ、風呂に入れてくる」
「ねえ、落ち武者さん、どうしてナミネに構うの?落ち武者さんにはエルナがいるよね?」
「あのね、ヨルクさん、ラルクに話があるの。だから、今日はラルクとお風呂に入るね」
話って?どうしてラルクと一緒にお風呂に入るの?
「ナミネさん!僕と一緒にお風呂に入ってください!」
何故ことをややこしくさせる。
「ごめんなさい。どうしてもラルクと話したいんです。行くよ、ラルク」
ラルクは起き上がった。ずっと起きていて、私たちの話を聞いていたのか。
「ねえ、ナミネ、本当にラルクとお風呂に入るの?」
「はい」
正直、複雑な気持ちである。けれど、今引き止めてまたナミネの機嫌を損ねてしまったら、それこそ取り返しがつかなくなる。
「分かった。湯冷めしないでね」
「ヨルクさん、大好き!」
ナミネは私に抱き着いた。
ナミネがラルクとお風呂に向かった後、私たちは第4居間に向かった。

第4居間の扉を開けた瞬間、私はズームさんとぶつかった。
「すみません」
あ、メガネ落ちてる。私はズームさんのメガネを拾った。
「あ、メガネ落ちましたよ」
……。誰?
「ありがとうございます」
ちょっと待って!めちゃくちゃイケメン!!昔のナミネはズームさんの容姿で、ズームさんとの交際を決めたのだろうか。てか、グルグル妖精さんのマンションで見た昔のナミネの映像で、彼氏は時計騎士って言ってたの、まさかズームさん!?
ズームさんはメガネをかけるとトイレに向かって行った。

周りで色んな出来事が起きる中、私は1人昔のナミネの恋愛について気にしていた。そして、現世でもナミネのことで物凄く不安になっていたのである。

……

あとがき。

走り書きには全くないラルクの執念が凄い。
でも、信じていた愛が偽物だったと何世紀も経ってから知らされたら心折れるかも?

セレナールは助かったけど、レナードとエミリの記憶が戻ったらどうなるのだろう。妖精村の象徴なセレナールはどうして普通に幸せになれないのか。

エミリとレナードには早く記憶戻って欲しいです。
Copyright (C) 2009 雨の音を聴きながら, All right Resieved.
*Powered by ニンジャブログ *Designed by 小雷飛
忍者ブログ / [PR]