日常のこととかオリジナル小説のこととか。
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ashita
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地主(土地貸してます)
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漫画やアニメを見るのが好きです。最推しはフーディーニ ♡
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ブログ、もう書かないと思ってました。
けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。
小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。
純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。
ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。
小説、ぼちぼちマイペースに書いてゆきます。
よろしくお願い致します。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
お知らせ。
イラストは現在「ナノハナ家の日常」に載せております。サイドバーにリンクあります。
また、「カラクリよろずや」にて無料のフリーイラスト素材配布もはじめました✩.*˚
フリーイラスト素材も増やしていく予定です(*'ᴗ'*)
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
模倣・無断転載などは、ご遠慮ください。
ブログの小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
小説・純愛偏差値に関しましては、武家名・貴族名(程度による) / 及び、武官の階級 / 扇子・羽子板・花札・百人一首・紙飛行機などのアイテム使用方法の模倣の一切を禁じております。
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X @kigenzen1874
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現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。
純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
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ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。
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〈資格履歴〉
2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
→漢方コーディネーター 合格
→薬膳調整師 合格
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〈資格証明バナー〉

2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
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〈資格証明バナー〉

純愛偏差値 未来編 一人称版 127話
《ナミネ》
いよいよ博物館へ行く日が来た。
ヨルクさんが作ったものでない朝ご飯が部屋に運ばれて来た。
今のメンバーだって一緒にいると幸せだけど、それはヨルクさんがいてこそのものだったと思う。
「朝飯、早く食べろよ」
早くって、まだ7時半じゃない。待ち合わせは10時じゃなかった? 早く着いて待つのも何だか気が引ける。私は朝ご飯を食べはじめた。え、これヨルクさんの味だ! でもどうして?
「これ、ヨルクさんの味ですよね? 届けてくれたのでしょうか?」
ヨルクさんは2020年を知らない。だとしたら、どうしてヨルクさんが作ったご飯がここにあるのだろう。
「たまたまだろ。顔だけヨルクは、アンタのことも何もかも覚えてない」
この時、落ち武者さんもラルクもズームさんも気付いていたが声に出さなかったことを私は知らなかった。
けれど、ヨルクさんの味を忘れるはずがない。
「でも……でも……!」
ヨルクさんと話したい。ちゃんと2020年のこと理解してもらいたい。
「ナミネ、今はセレナール先輩のことに集中してほしい。こんなのありふれた味だろ」
ラルクは2019年の時は、セレナールさんに冷たくしていた。今回も似たようなことにならなければいいけれど。
ラルクに協力すると決めた以上は私のことは二の次。辛いけど、早くヨルクさんと元の関係に戻りたいけど、2020年のラルクを思うと、2024年では幸せになってほしい。
「うん、分かったよ、ラルク」
セレナールさんのことだけでなく、セナ王女たちにも私たちは徐々に接触しなければならない。けれど、無理矢理現世も変えられない。あくまで自然的にことを進めなければ。
「アンタ、ラルクのことなら何でも協力するんだな」
どういう意味だろう。私は、落ち武者さんが困っていても助ける。差別はしたりしない。
「私、ラルクだけでなく、みんなのこと助けます!」
その時、私のフェアリーフォンが鳴った。出方が分からない。でも、画面にはラハルって出ている。もしかして、ラハルさんも覚えているのだろうか。
「セルファ」
あー、落ち武者さんに出られてしまった。
「あの、スピーカーにしてください」
私にかけたなら、私に用があるのだろう。
「りょーかい」
全く操作が分からない。
『ナミネ、聞こえてる?』
ラハルさんの声。ついこないだまで当たり前に聞いていたのに、かなり久々に聞いた気がする。
「はい、聞こえてます! あの、覚えてるのでしょうか?」
覚えていてほしい。
『厳密には完全じゃない。でも、身に覚えのない記憶は途切れ途切れに頭を流れ、ある時から毎日のようにナノハナ家で過ごしていた夢を見るんだ。ヨルクとはどうなった?』
う……、最後がそれか。けれど、ラハルさんは思い出すかもしれない。
「ラハル、アンタはいずれ思い出すだろうな。それ一昨日までのことだ」
記憶のない人が聞けば信じられない話だろう。
『一昨日!? そんなまさか!!』
そりゃ、びっくりするよね。
「で? こっち来れるわけ?」
どうして落ち武者さんばかり話すのだろう。
『今は仕事がかなり忙しくて、そっちに行けるのはいつか分からない。でも、セルファの言ってること本当なら僕も協力する! 二度と同じ過ちを繰り返してほしくない!』
2024年では、グルグル妖精っていつデビューしたのだろう。人気あるだろうな。ナナミお姉様が案の定また激ハマリだ。
「そのことだけど、アンタと強気なナミネが出演した『飛べない翼』『忘れられた翼』『43%の恋の涙』は2024年では古い形で残ってる!最近からの今だけど、繋がってるかもね?」
えっ、あの映画この世界にもあるの!?古い形ってことは、こっちの世界では半世紀前とかだろうか。
『そっか。今はまとまった時間は取れないけど、必ず夢で見た時みたいにナミネの日常の中の人物に戻るから! ごめん、今日はこれで』
電話は切れた。
「ナミネナミネって、ラハルもアンタしか見てないな」
今はそんなこと言っている場合ではないと思う。
「ねえ、今誰と電話してたの? ラハルの声聞こえたんだけど」
ナナミお姉様! いつからいたのだろう。
「あ、えっとクラスメイトです。あのナナミお姉様は……」
私が言いかけたのを落ち武者さんが遮った。
「ラハルは半年前にデビューした新人アイドルだろ! 通話なんて出来るわけないと思うけどね?」
割りと最近デビューしたのか。
「デビュー前からずっと見てたわよ! グッズも全部あるし!」
またあの部屋に逆戻りか。そうか、2024年でもグルグル妖精の駆け出し時代はあったのか。そんな中、私と接した時は売れっ子アイドル。何となくタイミングが悪いように感じる。
「今日、私たち出かけるので戻ってもらえませんか?」
誰かが加われば時間なんてあっという間に過ぎてしまう。
「ラハルからだったら覚えておきなさいよ!」
はあ、ミナクさんと交際するまでにどれだけかかるのだろう。それに、必ずしもミナクさんとナナミお姉様が一緒になるとは限らない。セナ王女かもしれないし、別の誰かかもしれない。
「はあ。何だか今が分からないし追いついていけないよ」
ミネルナさんには悪いけど、私はヨルクさんとの関係を壊されたくはなかった。
「姉さんは、まだカンザシに気があったんですよ。けれど、ロォハさんを裏切りたくないために抵抗しカンザシに殴られた……。姉さんが穢されたと言うより、姉さんの気持ちが問題だったのではないでしょうか」
やはり、思うことは皆似ている。幼なじみの時から両想いだったなら、祭りで口説かれた時、少しは揺れたかもしれない。
「あ、そうですよね。簡単には忘れられませんよね」
けれど、カンザシさんは今も私の実の兄なのだろうか?
「あの、カンザシさんは2024年の世界でも私の実の兄なのでしょうか?」
やっぱり気になってしまう。
「だと思うけど? コンビニで電子証明書出せるから博物館行く前にコンビニ寄って確認するか! なら、とっとと着替えろ!」
電子証明書!? 何それ。戸籍謄本って役場で出してもらうものなんじゃないの?
「あの、電子証明書って……」
ダメだ。全くついていけない。
「とっとと着替えろ!」
う……。私はしぶしぶ服を脱いだ。
「確認させます。ナミネさんは焦らなくて大丈夫ですよ」
やっぱりズームさんは優しい。
「アンタ、そんなダサイ下着着てんのかよ」
未来のようで、過去に戻っているのか。確かに、私はヨルクさんを完全に好きになるまではオシャレに疎かった。すっかり忘れていた。
「セルファさん。ヨルクさんに知られたら大目玉ですよ」
ズームさんは後ろ向いてる。
「僕と強気なナミネは恋人だったけど?」
それいつの時代だよ。私は夢で見ただけで、記憶には残っていない。
「ナミネ、地味な服着ろよ」
そっか、目立っちゃいけないのか。ロングヘアに、ダサイ下着、地味な服。ラルクを好きだった頃まんまじゃない。
「あ、そうだよね」
押し入れを開けると、見事にヨルクさんを好きだった頃のオシャレとは無関係の服ばかり並んでいる。私、こんなにオシャレに興味なかったんだ。
私はベージュのスムースワンピースを手に取り着た。春夏秋冬着れる服はとても便利だ。オシャレをしはじめた頃も、もう昔のことのように思えてくる。私はラルクとセレナールさんが交際するまで、髪は切れないし地味な服でいなくてはならない。でも、またみんなと仲良くするためには最初に戻る必要がある。
何事も順序というものが存在している。
「着たよ、ラルク」
全てなかったこと最初に戻っているけれど、私たちはまだやらなければいけないことがたくさんある。ここで諦めるわけにはいかない。
「アンタ、地味すぎ」
それだけセレナールさんはオシャレ系女子ということなのだろうか。落ち武者さんは、相変わらずお坊ちゃま系の服装。似合っていると言えば似合っているけれど。
「うーん、時間が変わったことによってか、2019年の時の服しかないんですよね」
私は髪型を三つ編みにした。
「ふーん、悪くないとは思うけどね?」
落ち武者さんってよく分からない。というか、様々こと引きずりすぎていて本当の気持ちが伝わってこない。
コンビニに入るとパラパラ雨が降りはじめた。
私は機械の前に立ち、落ち武者さんの言う通りに電子証明書を印刷した。パスワードが分からなかったけど、落ち武者さんのハッキングで、どうにか手続きが出来た。パスワードはラルクの誕生日になっていた。そうか、2024年の私もラルクのこと好きだったんだ。
私はゆっくり戸籍謄本を眺めた。
カンザシさんは2024年でも実の兄だった。
「ふーん、変わってないね?」
本心では赤の他人であってほしかった。実の兄とはいえ、母親は違うし、また貧乏な家庭で育ったのなら2019年の時の二の舞じゃないか。
「そういうものですかね」
運命は簡単には変えられない。変えようとすれば、それなりの努力が必要だ。そして、多くの人間は運命を変えられないまま人生を終える。
「じゃ、博物館行く」
もう9時前!? 今から行けば少しだけ待つ程度だろうか。
「ナミネさん、この傘使って下さい」
ズームさんは折りたたみ傘を私に渡した。
「ありがとうございます」
一緒に入ろうと言おうとして落ち武者さんが遮った。
「じゃ、僕も入る。ラルクとズームはこれ使え」
何なのだろう。落ち武者さんも折りたたみ傘持っているならラルクを入れればいいのに。
私たちはバス停で7分ほど待ったバスに乗った。
「ねえ、ラルク。コンビニに店員さんいなかったよね」
私の気のせいだろうか。会計の場所に機械が置かれていたような。
「ああ、2019年に新たな病が流行って人権削減して、今はどこも会計は機械だ。その病はまだ収束せず、潰れる店もある。けど、心配すんな。皇帝陛下は、機械を撤去して会計は店員さんが行い、バスの本数も電車の本数も元に戻すって言ってるし、僕もそうなると思う」
新たな病!? そういえば、バスに乗ってる人殆どマスク付けてる。コロディーのような病だろうか。
「皆さん、マスクどうぞ」
ズームさんって容量いいな。今もブランケット家の人間だろうか。今後もカンザシさんをサポートするのだろうか。
「ありがとうございます」
私たちはマスクを付けた。何だかこのマスク着け心地が違う。
「またskyグループの?」
そっか。根本的なことは変わっていないんだ。
「いえ、rainグループのものです。99.9%感染しないことが立証されています」
rainグループ!? 社名が違うだけだろうか。
「経営者は?」
やっぱり変わっていることもあるのだろうか。私は無意識に戸籍謄本をギュッと握り締めた。
「おばあ様です。skyグループは最先端技術のモノに視点を当てていますが、rainグループはどちらかというとあらゆる世代の男女が望むデザインに視点が当てられています。いわゆる趣味で作られた会社です」
おばあ様も会社を経営していたのか。やっぱり、ズームさんは同じ世界の人間とは思えない。マスクもよく見ると傘のマークになっている。
「skyグループとは相反する社名のrainグループってことね。アンタ本当にどこまでも恵まれてるな」
言われてみれば、skyとrain。似ているようで違う。そして、そもそも目的そのものが違うんだ。何だか羨ましい。けれど、私はやっぱり強さを求めてしまっている。
「ナミネ、新たな病は日本村から何らかの形で入れ込まれた陰謀説もある。病名はコラナで妖精村では治療薬が開発されてるんだ。けれど、もし日本村が何らかの形で入れたものならと治療薬の存在は伏せ、皇帝陛下も慎重になっている」
コラナ!? 日本村が入れ込んだ!? ダメだ。話についていけない。妖精村は太陽系ではないし日本村って何光年も離れている。どうやって入れ込むのだろう。何のために?
「マスクってずっと付けていなきゃいけないの?」
治療薬があるとはいえ、感染症って怖い。
「マスクは向こうのグループに気付かれないために付けてるだけだけど? それでも治療薬はあっても、ほぼコロディーと似てるから、感染したら似たような症状に苦しむことになるけどね?」
コロディー……。結局歴史は繰り返されるのか。
「マスクが気になるようでしたら、skyグループでは透明マスクの販売もしてますので学校などではそれを使われてはいかがでしょう?」
2019年も最先端だったけど、本当に絶やさないものなんだな。それも経営者の能力だろうか。
「じゃ、透明マスクと感染しないマスク使う。いざって時は透明マスクから切り替えろ!」
逆にややこしい。けれど、教室では透明の方が助かる。マスクはどことなくぎこちない。
「では、戻ったらお渡しします」
やはり、とても高いものなのだろうか。庶民では買えないもの、それがskyグループの商品だから。けれど、感染するわけにもいかない。
バスを降りると私たちは、博物館に入り受付でチケットをもらうなり死角になる場所に立った。
9時半。30分でセナ王女たちは来る。私の中で緊張感が走った。
「あ、ラルク」
聞くのは怖い。でも、知るべきことは最初に知っておきたい。
「ミドリお姉様って、その……」
ダメだ……。あの時のリアルが蘇る。
「天然ラァナと同じだけど?」
え、どうして落ち武者さんが知っているのだろう。けれど、ラァナさんと同じって、それってミドリお姉様は……。
「ミドリさんは、最後の1人から黒鈴酷華を受ける前にナノハさんが助け、月城総合病院で治療を受けました。第2は修復出来ましたが第1は修復出来ず、ミドリさんはカウンセリングを受けながら引きこもり、大学生の今やっと学校に通うようになり、ピアニストを目指しています。けれど、ナクリさんが引きこもるようになりました」
ミドリお姉様は一命を取り留めたが、大きなトラウマが残り、ずっとカウンセリング受けていたんだ。ほぼ2020年の続きに思える。
「そうですか。どんな形であれ生きてくれたことは幸いです」
そう、本人はどれだけ辛くても生きていてほしい。もう二度とあんな思いはしたくない。
「ほら、主役らが来たぞ」
人と話していると不思議に30分という時間は早く感じる。あれ、セナ王女たちマスクしていない。
「あの、マスクしてませんよね?」
感染怖くないのだろうか。
「王室なら透明マスクもあると思うけど?」
ああ、そうか。そうだよね。私たち、とんでもないVIPと仲良くしてたんだ。
「行くぞ、ナミネ!」
尾行って何だか気が引けるけど、元に戻すためには私たちが動かなくてはならない。
「うん!」
私たちは、それなりの距離を取りながらセナ王女たちを尾行した。
「この石、可愛いのです」
みんなオシャレしていて羨ましい。
「カナエ、お土産コーナーにレプリカあるから買うよ」
え、アルフォンス王子ってユメさんと交際しているのでは!? やっぱり記憶が抜けているだけで根底のどこかでは、みんな遠い前世をそして2020年を思い出そうとしているのだろうか。
「アルフォンス! ユメさんを構ってあげなさいよ!」
うーん、私がラルクに協力する前はこうだったのだろうか。
「あ、セナさん、いいの。アルフォンス様の自由は奪えないから」
本心なのかな。別れる恋人を見ているのも返って胸が痛む。
「あのダイヤ、セナさんに絶対似合うよ!」
あれがダイヤなの? ただの石みたい。
「Zランクね。いかにも古代って感じがするわ」
ダイヤにランクなんてあるのか。それにしても、さっきからセナ王女とカラルリさんの手、何度も触れそうになっている。これって……
「完全に元に戻ってるね?」
やっぱりそうか。ミネルナさんとカンザシさんが最後にまともに話していた時間には意味があったのだろうか。あんなに殴られてまで話すことなんてあったのだろうか。
「ですね。もう運命まで最初からですね」
はあ、何だか気が遠くなる。
「あくまで、甘えセナの人生だからね? シャムとくっつけようなんて思うだけ無駄だからね?」
いや、分かってはいるけれど、2020年を知っている私からしてみれば残念で仕方ない。それも含めて『人生』と呼ぶのだろうか。だとしたら、残酷だ。
「それは分かっています。ただ、残念だなて」
分かってるよ。頭の中では分かっている。気持ちが先走ってしまうのだ。2019年・2020年の展開を知っているから。
「ナミネさん、どれだけ遠回りしても本当のその人が望む結果になるのなら僕はいいと思うんです」
うーん、ズームさんは多分そういう人生を送ってきたのだろう。そして、誰かの人生を私がどうにかすることも出来ない。
あ、セナ王女たち2階へ上がってゆく。あの時のように。私たちも、見つからないように2階へ向かった。
「案の定だね?」
武官!? 早過ぎないだろうか。いや、これくらいに出てきたような記憶もある。初級武官なら、武術してるなら余裕。でも、ユメさんやセレナールさんは……。
私たちは、ソファーの裏側に隠れた。ラルク、真剣に見ている。
「アルフォンス王子はカナエ先輩を助け、セナ王女はカラルリ先輩を助けている。ユメ先輩とセレナール先輩が……」
こうだったんだよ、ラルク。ずっとこうだったんだよ。セレナールさんは何度も訴えたけど、他の人はみんな助けるつもりでいたと後付けをする。弱い人から助ける平等はいつも却下。
「ラルク、みんな自分と自分の大切な人が助かればそれでいいんだよ。弱い人はいつも後回し。その例として、セレナールさん、遠い前世では一度廃墟になってる博物館で間に合わなかったでしょ?」
言っても分からないかもしれないけど、結局は同じ展開になってしまう。ここに来る予定のセリルさんが来ていない時点で、ある程度の運命は既に決まっているように思えてくる。
「残酷だな。セレナール先輩がかわいそうで仕方ない」
そうだけど、何だかまだ確定されていてされていないことがある気がする。教科書に載っている、妖精村初代の皇太子が処刑したのはセレナールさんだ。そして、セリルさんも。それなのに、セレナールさんは皇太子様と相思相愛になるのは、何か引っかかる。どれだけ遠い前世とはいえ。あの時計屋も行ってみる必要がありそうだ。
セレナールさんは初級武官に押し倒されたところでカラルリさんが助け、ユメさんは服に手をかけられたところでアルフォンス王子が助けた。
「納得いかないわ! カラルリならセナさんが助けなくても余裕じゃない! どうして私を後回しにするのよ!」
セレナールさんは泣きはじめた。そして、横でラルクはセナ王女に扇子を向けている。
「ラルク、アンタさ、リリカに依頼してんならそれでいいだろ」
そうは言えども、大切な人を真っ先に助けたい。人間の核心かもしれない。酷い時は、誰かを見捨てないといけないこともあるかもしれないし、あの時のカラルリさんは体育館でセレナールさんを見捨てた。
「分かっています。ただ、セレナール先輩を蔑ろにする周りのことが気に触りました」
はあ、本当に2024年のラルクはセレナールさんのことが好きなのだろうか。2019年の時とは大違いだ。
ふと、後ろを振り向くとヨルクさんとマドンナさんが仲良さげに2階へ上がってきた。私は無意識にヨルクさんの元へ走った。
「おい! 強気なナミネ、早まるな!!」
分かってるよ! でも、ヨルクさんは私の婚約者なの! マドンナさんには渡せない! 私は、落ち武者さんの手を振り払い、ヨルクさんの元へ駆け寄った。そして、ヨルクさんに抱き着いた。
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あとがき。
歴史も現世も運命も、そう簡単には変えられないように感じます。
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この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
現在、小説に関する模倣(程度による)の一切を禁じております。
詳しくはこちらを参照→ 禁止事項
無断転載もご遠慮ください。
《ナミネ》
いよいよ博物館へ行く日が来た。
ヨルクさんが作ったものでない朝ご飯が部屋に運ばれて来た。
今のメンバーだって一緒にいると幸せだけど、それはヨルクさんがいてこそのものだったと思う。
「朝飯、早く食べろよ」
早くって、まだ7時半じゃない。待ち合わせは10時じゃなかった? 早く着いて待つのも何だか気が引ける。私は朝ご飯を食べはじめた。え、これヨルクさんの味だ! でもどうして?
「これ、ヨルクさんの味ですよね? 届けてくれたのでしょうか?」
ヨルクさんは2020年を知らない。だとしたら、どうしてヨルクさんが作ったご飯がここにあるのだろう。
「たまたまだろ。顔だけヨルクは、アンタのことも何もかも覚えてない」
この時、落ち武者さんもラルクもズームさんも気付いていたが声に出さなかったことを私は知らなかった。
けれど、ヨルクさんの味を忘れるはずがない。
「でも……でも……!」
ヨルクさんと話したい。ちゃんと2020年のこと理解してもらいたい。
「ナミネ、今はセレナール先輩のことに集中してほしい。こんなのありふれた味だろ」
ラルクは2019年の時は、セレナールさんに冷たくしていた。今回も似たようなことにならなければいいけれど。
ラルクに協力すると決めた以上は私のことは二の次。辛いけど、早くヨルクさんと元の関係に戻りたいけど、2020年のラルクを思うと、2024年では幸せになってほしい。
「うん、分かったよ、ラルク」
セレナールさんのことだけでなく、セナ王女たちにも私たちは徐々に接触しなければならない。けれど、無理矢理現世も変えられない。あくまで自然的にことを進めなければ。
「アンタ、ラルクのことなら何でも協力するんだな」
どういう意味だろう。私は、落ち武者さんが困っていても助ける。差別はしたりしない。
「私、ラルクだけでなく、みんなのこと助けます!」
その時、私のフェアリーフォンが鳴った。出方が分からない。でも、画面にはラハルって出ている。もしかして、ラハルさんも覚えているのだろうか。
「セルファ」
あー、落ち武者さんに出られてしまった。
「あの、スピーカーにしてください」
私にかけたなら、私に用があるのだろう。
「りょーかい」
全く操作が分からない。
『ナミネ、聞こえてる?』
ラハルさんの声。ついこないだまで当たり前に聞いていたのに、かなり久々に聞いた気がする。
「はい、聞こえてます! あの、覚えてるのでしょうか?」
覚えていてほしい。
『厳密には完全じゃない。でも、身に覚えのない記憶は途切れ途切れに頭を流れ、ある時から毎日のようにナノハナ家で過ごしていた夢を見るんだ。ヨルクとはどうなった?』
う……、最後がそれか。けれど、ラハルさんは思い出すかもしれない。
「ラハル、アンタはいずれ思い出すだろうな。それ一昨日までのことだ」
記憶のない人が聞けば信じられない話だろう。
『一昨日!? そんなまさか!!』
そりゃ、びっくりするよね。
「で? こっち来れるわけ?」
どうして落ち武者さんばかり話すのだろう。
『今は仕事がかなり忙しくて、そっちに行けるのはいつか分からない。でも、セルファの言ってること本当なら僕も協力する! 二度と同じ過ちを繰り返してほしくない!』
2024年では、グルグル妖精っていつデビューしたのだろう。人気あるだろうな。ナナミお姉様が案の定また激ハマリだ。
「そのことだけど、アンタと強気なナミネが出演した『飛べない翼』『忘れられた翼』『43%の恋の涙』は2024年では古い形で残ってる!最近からの今だけど、繋がってるかもね?」
えっ、あの映画この世界にもあるの!?古い形ってことは、こっちの世界では半世紀前とかだろうか。
『そっか。今はまとまった時間は取れないけど、必ず夢で見た時みたいにナミネの日常の中の人物に戻るから! ごめん、今日はこれで』
電話は切れた。
「ナミネナミネって、ラハルもアンタしか見てないな」
今はそんなこと言っている場合ではないと思う。
「ねえ、今誰と電話してたの? ラハルの声聞こえたんだけど」
ナナミお姉様! いつからいたのだろう。
「あ、えっとクラスメイトです。あのナナミお姉様は……」
私が言いかけたのを落ち武者さんが遮った。
「ラハルは半年前にデビューした新人アイドルだろ! 通話なんて出来るわけないと思うけどね?」
割りと最近デビューしたのか。
「デビュー前からずっと見てたわよ! グッズも全部あるし!」
またあの部屋に逆戻りか。そうか、2024年でもグルグル妖精の駆け出し時代はあったのか。そんな中、私と接した時は売れっ子アイドル。何となくタイミングが悪いように感じる。
「今日、私たち出かけるので戻ってもらえませんか?」
誰かが加われば時間なんてあっという間に過ぎてしまう。
「ラハルからだったら覚えておきなさいよ!」
はあ、ミナクさんと交際するまでにどれだけかかるのだろう。それに、必ずしもミナクさんとナナミお姉様が一緒になるとは限らない。セナ王女かもしれないし、別の誰かかもしれない。
「はあ。何だか今が分からないし追いついていけないよ」
ミネルナさんには悪いけど、私はヨルクさんとの関係を壊されたくはなかった。
「姉さんは、まだカンザシに気があったんですよ。けれど、ロォハさんを裏切りたくないために抵抗しカンザシに殴られた……。姉さんが穢されたと言うより、姉さんの気持ちが問題だったのではないでしょうか」
やはり、思うことは皆似ている。幼なじみの時から両想いだったなら、祭りで口説かれた時、少しは揺れたかもしれない。
「あ、そうですよね。簡単には忘れられませんよね」
けれど、カンザシさんは今も私の実の兄なのだろうか?
「あの、カンザシさんは2024年の世界でも私の実の兄なのでしょうか?」
やっぱり気になってしまう。
「だと思うけど? コンビニで電子証明書出せるから博物館行く前にコンビニ寄って確認するか! なら、とっとと着替えろ!」
電子証明書!? 何それ。戸籍謄本って役場で出してもらうものなんじゃないの?
「あの、電子証明書って……」
ダメだ。全くついていけない。
「とっとと着替えろ!」
う……。私はしぶしぶ服を脱いだ。
「確認させます。ナミネさんは焦らなくて大丈夫ですよ」
やっぱりズームさんは優しい。
「アンタ、そんなダサイ下着着てんのかよ」
未来のようで、過去に戻っているのか。確かに、私はヨルクさんを完全に好きになるまではオシャレに疎かった。すっかり忘れていた。
「セルファさん。ヨルクさんに知られたら大目玉ですよ」
ズームさんは後ろ向いてる。
「僕と強気なナミネは恋人だったけど?」
それいつの時代だよ。私は夢で見ただけで、記憶には残っていない。
「ナミネ、地味な服着ろよ」
そっか、目立っちゃいけないのか。ロングヘアに、ダサイ下着、地味な服。ラルクを好きだった頃まんまじゃない。
「あ、そうだよね」
押し入れを開けると、見事にヨルクさんを好きだった頃のオシャレとは無関係の服ばかり並んでいる。私、こんなにオシャレに興味なかったんだ。
私はベージュのスムースワンピースを手に取り着た。春夏秋冬着れる服はとても便利だ。オシャレをしはじめた頃も、もう昔のことのように思えてくる。私はラルクとセレナールさんが交際するまで、髪は切れないし地味な服でいなくてはならない。でも、またみんなと仲良くするためには最初に戻る必要がある。
何事も順序というものが存在している。
「着たよ、ラルク」
全てなかったこと最初に戻っているけれど、私たちはまだやらなければいけないことがたくさんある。ここで諦めるわけにはいかない。
「アンタ、地味すぎ」
それだけセレナールさんはオシャレ系女子ということなのだろうか。落ち武者さんは、相変わらずお坊ちゃま系の服装。似合っていると言えば似合っているけれど。
「うーん、時間が変わったことによってか、2019年の時の服しかないんですよね」
私は髪型を三つ編みにした。
「ふーん、悪くないとは思うけどね?」
落ち武者さんってよく分からない。というか、様々こと引きずりすぎていて本当の気持ちが伝わってこない。
コンビニに入るとパラパラ雨が降りはじめた。
私は機械の前に立ち、落ち武者さんの言う通りに電子証明書を印刷した。パスワードが分からなかったけど、落ち武者さんのハッキングで、どうにか手続きが出来た。パスワードはラルクの誕生日になっていた。そうか、2024年の私もラルクのこと好きだったんだ。
私はゆっくり戸籍謄本を眺めた。
カンザシさんは2024年でも実の兄だった。
「ふーん、変わってないね?」
本心では赤の他人であってほしかった。実の兄とはいえ、母親は違うし、また貧乏な家庭で育ったのなら2019年の時の二の舞じゃないか。
「そういうものですかね」
運命は簡単には変えられない。変えようとすれば、それなりの努力が必要だ。そして、多くの人間は運命を変えられないまま人生を終える。
「じゃ、博物館行く」
もう9時前!? 今から行けば少しだけ待つ程度だろうか。
「ナミネさん、この傘使って下さい」
ズームさんは折りたたみ傘を私に渡した。
「ありがとうございます」
一緒に入ろうと言おうとして落ち武者さんが遮った。
「じゃ、僕も入る。ラルクとズームはこれ使え」
何なのだろう。落ち武者さんも折りたたみ傘持っているならラルクを入れればいいのに。
私たちはバス停で7分ほど待ったバスに乗った。
「ねえ、ラルク。コンビニに店員さんいなかったよね」
私の気のせいだろうか。会計の場所に機械が置かれていたような。
「ああ、2019年に新たな病が流行って人権削減して、今はどこも会計は機械だ。その病はまだ収束せず、潰れる店もある。けど、心配すんな。皇帝陛下は、機械を撤去して会計は店員さんが行い、バスの本数も電車の本数も元に戻すって言ってるし、僕もそうなると思う」
新たな病!? そういえば、バスに乗ってる人殆どマスク付けてる。コロディーのような病だろうか。
「皆さん、マスクどうぞ」
ズームさんって容量いいな。今もブランケット家の人間だろうか。今後もカンザシさんをサポートするのだろうか。
「ありがとうございます」
私たちはマスクを付けた。何だかこのマスク着け心地が違う。
「またskyグループの?」
そっか。根本的なことは変わっていないんだ。
「いえ、rainグループのものです。99.9%感染しないことが立証されています」
rainグループ!? 社名が違うだけだろうか。
「経営者は?」
やっぱり変わっていることもあるのだろうか。私は無意識に戸籍謄本をギュッと握り締めた。
「おばあ様です。skyグループは最先端技術のモノに視点を当てていますが、rainグループはどちらかというとあらゆる世代の男女が望むデザインに視点が当てられています。いわゆる趣味で作られた会社です」
おばあ様も会社を経営していたのか。やっぱり、ズームさんは同じ世界の人間とは思えない。マスクもよく見ると傘のマークになっている。
「skyグループとは相反する社名のrainグループってことね。アンタ本当にどこまでも恵まれてるな」
言われてみれば、skyとrain。似ているようで違う。そして、そもそも目的そのものが違うんだ。何だか羨ましい。けれど、私はやっぱり強さを求めてしまっている。
「ナミネ、新たな病は日本村から何らかの形で入れ込まれた陰謀説もある。病名はコラナで妖精村では治療薬が開発されてるんだ。けれど、もし日本村が何らかの形で入れたものならと治療薬の存在は伏せ、皇帝陛下も慎重になっている」
コラナ!? 日本村が入れ込んだ!? ダメだ。話についていけない。妖精村は太陽系ではないし日本村って何光年も離れている。どうやって入れ込むのだろう。何のために?
「マスクってずっと付けていなきゃいけないの?」
治療薬があるとはいえ、感染症って怖い。
「マスクは向こうのグループに気付かれないために付けてるだけだけど? それでも治療薬はあっても、ほぼコロディーと似てるから、感染したら似たような症状に苦しむことになるけどね?」
コロディー……。結局歴史は繰り返されるのか。
「マスクが気になるようでしたら、skyグループでは透明マスクの販売もしてますので学校などではそれを使われてはいかがでしょう?」
2019年も最先端だったけど、本当に絶やさないものなんだな。それも経営者の能力だろうか。
「じゃ、透明マスクと感染しないマスク使う。いざって時は透明マスクから切り替えろ!」
逆にややこしい。けれど、教室では透明の方が助かる。マスクはどことなくぎこちない。
「では、戻ったらお渡しします」
やはり、とても高いものなのだろうか。庶民では買えないもの、それがskyグループの商品だから。けれど、感染するわけにもいかない。
バスを降りると私たちは、博物館に入り受付でチケットをもらうなり死角になる場所に立った。
9時半。30分でセナ王女たちは来る。私の中で緊張感が走った。
「あ、ラルク」
聞くのは怖い。でも、知るべきことは最初に知っておきたい。
「ミドリお姉様って、その……」
ダメだ……。あの時のリアルが蘇る。
「天然ラァナと同じだけど?」
え、どうして落ち武者さんが知っているのだろう。けれど、ラァナさんと同じって、それってミドリお姉様は……。
「ミドリさんは、最後の1人から黒鈴酷華を受ける前にナノハさんが助け、月城総合病院で治療を受けました。第2は修復出来ましたが第1は修復出来ず、ミドリさんはカウンセリングを受けながら引きこもり、大学生の今やっと学校に通うようになり、ピアニストを目指しています。けれど、ナクリさんが引きこもるようになりました」
ミドリお姉様は一命を取り留めたが、大きなトラウマが残り、ずっとカウンセリング受けていたんだ。ほぼ2020年の続きに思える。
「そうですか。どんな形であれ生きてくれたことは幸いです」
そう、本人はどれだけ辛くても生きていてほしい。もう二度とあんな思いはしたくない。
「ほら、主役らが来たぞ」
人と話していると不思議に30分という時間は早く感じる。あれ、セナ王女たちマスクしていない。
「あの、マスクしてませんよね?」
感染怖くないのだろうか。
「王室なら透明マスクもあると思うけど?」
ああ、そうか。そうだよね。私たち、とんでもないVIPと仲良くしてたんだ。
「行くぞ、ナミネ!」
尾行って何だか気が引けるけど、元に戻すためには私たちが動かなくてはならない。
「うん!」
私たちは、それなりの距離を取りながらセナ王女たちを尾行した。
「この石、可愛いのです」
みんなオシャレしていて羨ましい。
「カナエ、お土産コーナーにレプリカあるから買うよ」
え、アルフォンス王子ってユメさんと交際しているのでは!? やっぱり記憶が抜けているだけで根底のどこかでは、みんな遠い前世をそして2020年を思い出そうとしているのだろうか。
「アルフォンス! ユメさんを構ってあげなさいよ!」
うーん、私がラルクに協力する前はこうだったのだろうか。
「あ、セナさん、いいの。アルフォンス様の自由は奪えないから」
本心なのかな。別れる恋人を見ているのも返って胸が痛む。
「あのダイヤ、セナさんに絶対似合うよ!」
あれがダイヤなの? ただの石みたい。
「Zランクね。いかにも古代って感じがするわ」
ダイヤにランクなんてあるのか。それにしても、さっきからセナ王女とカラルリさんの手、何度も触れそうになっている。これって……
「完全に元に戻ってるね?」
やっぱりそうか。ミネルナさんとカンザシさんが最後にまともに話していた時間には意味があったのだろうか。あんなに殴られてまで話すことなんてあったのだろうか。
「ですね。もう運命まで最初からですね」
はあ、何だか気が遠くなる。
「あくまで、甘えセナの人生だからね? シャムとくっつけようなんて思うだけ無駄だからね?」
いや、分かってはいるけれど、2020年を知っている私からしてみれば残念で仕方ない。それも含めて『人生』と呼ぶのだろうか。だとしたら、残酷だ。
「それは分かっています。ただ、残念だなて」
分かってるよ。頭の中では分かっている。気持ちが先走ってしまうのだ。2019年・2020年の展開を知っているから。
「ナミネさん、どれだけ遠回りしても本当のその人が望む結果になるのなら僕はいいと思うんです」
うーん、ズームさんは多分そういう人生を送ってきたのだろう。そして、誰かの人生を私がどうにかすることも出来ない。
あ、セナ王女たち2階へ上がってゆく。あの時のように。私たちも、見つからないように2階へ向かった。
「案の定だね?」
武官!? 早過ぎないだろうか。いや、これくらいに出てきたような記憶もある。初級武官なら、武術してるなら余裕。でも、ユメさんやセレナールさんは……。
私たちは、ソファーの裏側に隠れた。ラルク、真剣に見ている。
「アルフォンス王子はカナエ先輩を助け、セナ王女はカラルリ先輩を助けている。ユメ先輩とセレナール先輩が……」
こうだったんだよ、ラルク。ずっとこうだったんだよ。セレナールさんは何度も訴えたけど、他の人はみんな助けるつもりでいたと後付けをする。弱い人から助ける平等はいつも却下。
「ラルク、みんな自分と自分の大切な人が助かればそれでいいんだよ。弱い人はいつも後回し。その例として、セレナールさん、遠い前世では一度廃墟になってる博物館で間に合わなかったでしょ?」
言っても分からないかもしれないけど、結局は同じ展開になってしまう。ここに来る予定のセリルさんが来ていない時点で、ある程度の運命は既に決まっているように思えてくる。
「残酷だな。セレナール先輩がかわいそうで仕方ない」
そうだけど、何だかまだ確定されていてされていないことがある気がする。教科書に載っている、妖精村初代の皇太子が処刑したのはセレナールさんだ。そして、セリルさんも。それなのに、セレナールさんは皇太子様と相思相愛になるのは、何か引っかかる。どれだけ遠い前世とはいえ。あの時計屋も行ってみる必要がありそうだ。
セレナールさんは初級武官に押し倒されたところでカラルリさんが助け、ユメさんは服に手をかけられたところでアルフォンス王子が助けた。
「納得いかないわ! カラルリならセナさんが助けなくても余裕じゃない! どうして私を後回しにするのよ!」
セレナールさんは泣きはじめた。そして、横でラルクはセナ王女に扇子を向けている。
「ラルク、アンタさ、リリカに依頼してんならそれでいいだろ」
そうは言えども、大切な人を真っ先に助けたい。人間の核心かもしれない。酷い時は、誰かを見捨てないといけないこともあるかもしれないし、あの時のカラルリさんは体育館でセレナールさんを見捨てた。
「分かっています。ただ、セレナール先輩を蔑ろにする周りのことが気に触りました」
はあ、本当に2024年のラルクはセレナールさんのことが好きなのだろうか。2019年の時とは大違いだ。
ふと、後ろを振り向くとヨルクさんとマドンナさんが仲良さげに2階へ上がってきた。私は無意識にヨルクさんの元へ走った。
「おい! 強気なナミネ、早まるな!!」
分かってるよ! でも、ヨルクさんは私の婚約者なの! マドンナさんには渡せない! 私は、落ち武者さんの手を振り払い、ヨルクさんの元へ駆け寄った。そして、ヨルクさんに抱き着いた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
あとがき。
歴史も現世も運命も、そう簡単には変えられないように感じます。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
現在、小説に関する模倣(程度による)の一切を禁じております。
詳しくはこちらを参照→ 禁止事項
無断転載もご遠慮ください。
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純愛偏差値 未来編 一人称版 126話
《セナ》
妖精村学園の高等部に転校して、思いの外、友達は作れず、寧ろ避けられる日々だった。それでも私には双子のアルフォンスがいるし、それでいいと思っていた。 でも、ある日、私が体育の授業の後、1人で片付けていたら同じクラスのカラルリが手伝ってくれて、そこから友達になり、妹のカナエも紹介してもらって、今の人間関係が出来上がったのである。
ただ、アルフォンスはクラスメイトのユメさんと交際しているけれど、気持ちがないのに断らなかったことは失礼に感じてユメさんが時折可哀想に感じている。
私は……私は、ここのところカラルリのことが気になっている。というか、非現実的ではあるが前世というものが存在していてカラルリとは前世でも関わりがあったように感じるのである。けれど、前世なんて馬鹿げている。
でも、カラルリの優しさが私の胸を温める。
「今度、別荘でバーベキューするから来ない?」
何となく、ユメさんとアルフォンスには親睦を深めてほしい。
「セナさん、絶対行く!」
また胸が弾んだ。
「カラルリが行くなら私も行くわ!」
どうしてだろう。私、セレナールとは自然的な友達にはなれない気がする。そして、このモヤモヤ感が何なのか分からずにいた。
「楽しみだわ」
よし! ユメさんも乗ってきた。
もし、ユメさんがアルフォンスに告白しなければ、このグループにいなかったかもしれない。これも何かの縁だと思う。
私とカラルリが友達になったのも多分、特別なご縁な気がする。
「あ、セリルも誘いたいかも」
セリルはクラスメイトで副委員長をしている。更には成績が学年トップなのだ。銀髪でおっとりしていて、カラルリとは幼なじみで女の子にも人気がある。けれど、実はカラルリの姉にあたるカナコさんと恋人のような関係なのである。互いに好き合っていることは誰が見ても明確なのに、あれで交際していないなんて最初は耳を疑ってしまった。
「兄さんなら私が誘っておくわ」
カラルリより先にセレナールに答えられてしまった。またモヤモヤしている。
「え、ええ、お願い」
兄妹でこんなにも似ていないなんて。美男美女には変わりないけれど、セレナールが子供っぽく感じてしまって癪に障る。それに、妖精村1番の美少女と噂が流れているのも何だか応援出来ない自分がいる。それなのに、私はその理由が全く分からない。
「カナエ、勉強はどう?」
またカナエに話しかけている。どうしてもっとユメさんのこと構ってあげないのだろう。
「毎日、予習復習をしていますので勉強はついていけています」
カナエはキクリ家の4女でキクリ食堂の中級料理人の指導をしている。料理がビックリするくらい上手で王室の料理人になってほしいくらいのレベルだと感じた。セレナールと同い歳なのに控えめな性格に家事も勉強も運動も出来て、自分の意見はしっかり持っている。その辺はカラルリにそっくり。
「はいはい、カナエは成績優秀だから。アルフォンスはユメさんに勉強教えてあげなさいよ」
ユメさんは身長が高く細めな体型でショートヘアの可愛らしい女の子。けれど、勉強や運動は苦手みたい。後は、ミルケット伯爵令嬢。貴族なのだ。
「教えるには教えるけど、バーベキューするんでしょ?」
教える時間くらいあるでしょうに。カナエには勉強のこと聞いておいてユメさんの勉強のことは気にしないなんて、まるで恋人じゃないみたい。と言っても、友達のような関係からの約束で交際を受けたから、その辺はどうにもならないのかもしれないけれど。
数日後の学校帰りの別荘。
私は浮かれていた。明日は、みんなで博物館へ行くのだ。
「セナ、あまりカラルリのこと考えちゃダメだよ。セナには簡単に水花を捨ててほしくない」
どうしてカラルリのことを言うのだろう。それに私は誰かと交際しても簡単には白梅を咲かせるつもりはない。
「私、カラルリとはただの友達だし、今は恋人作るとか全然考えてないわ」
高校2年生。彼氏持ちは結構多い。けれど、私は彼氏なんていなくても別にいい。
「本当に? カラルリに1ミリも気持ちないって言い切れる?」
1ミリもって、友達なんだからそれなりの思いはあるでしょうに。
「何よ! あなたこそユメさんとまるで他人じゃない」
このままではユメさんが可哀想すぎる。
「ユメさんはそれでいいって言ってるから。それより、私は何となく嫌な感じがする。今のグループも必然的に作られたような……」
何それ。必然でも運命でも偶然でも楽しければそれでいいじゃない。
「アルフォンス、考えすぎよ」
アルフォンスは、昔から慎重な性格で小さい頃は少し臆病だったりもした。それにしても、まるで私とカラルリが親密になっちゃいけないような言い方が気になる。
使用人が作った夕ご飯を食べて、お風呂に入った後、私はクローゼットの部屋で明日来ていく服を探していた。
必然……か。この世は、アルフォンスが言うほど何かに縛られているものなのだろうか。自由に生きてきた私にはそうは思えない。私は王妃の娘ではないけれど、私なりに幸せに生きて来た。これからも私はずっと変わらないと思う。
前の学校は貴族ばかりで少し退屈だった。私が王族だから気を遣われると、その人間関係は上辺だけのものだし、私にも一般人のような何でも言い合える人間関係が欲しかった。簡単に言えば、境遇を変えるために転校したわけである。転校した当初は、私が王女というだけで周りは私を避け、中には妬んでイジメまがいのことをしてくるクラスメイトもいた。転校しても人間関係を作れないのだと落ち込んでいたけれど、カラルリのおかげで、私は今とても楽しい学生生活を送っていると思う。
妖精村学園は幼稚園からエスカレーター式だし、勉強が出来なくても大学までは通えるようになっている。将来の夢とか今の私にはないけれど、決まるまでは大学院までいるつもり。
「セナ、もう寝な」
まだ服決まってないのに。でも、せっかくのお出かけだから睡眠は取っておきたい。
「分かったわ!」
部屋に戻りベッドに入ると不思議と直ぐに眠りについた。そして私は夢を見た。
とても古い時代。みんな着物を着ている。そして、軍事基地から戻った私はカラクリ家でお世話になることになった。そこで知り合ったカラルリと私は直ぐに仲良くなった。
ある祭りにて、私はカラルリから告白をされた。
『セナさん、私はセナさんがカラクリ家に来て間もなくしてセナさんを見るとドキドキするようになった。セナさんがひいおじい様に師範以上の感情を持っているのは分かる。でも、私ははじめて女を見てなびいた。毎日セナさんを見ては胸が高鳴ってドキドキが止まらなくてこの感情が恋なのだと気づいた。私はセナさんが好きだ。セナさんの嫌がることはしないし、セナさんのペースに合わせる。返事は直ぐでなくて構わない。ただ、セナさんを好きになった以上、自分の気持ちをハッキリ伝えたかった。私に気持ちがないならハッキリ断ってくれて構わない』
カラルリはかなり緊張した様子だった。けれど、私は嬉しくてたまらなかった。
『まあ、素敵な花束。これ私のために用意してくれたの?』
私はカラルリの持っている薔薇の花束に目を向けた。
『あ、ああ』
カラルリは少し俯いた。
『頂くわ』
私はカラルリから薔薇の花束を受け取った。薔薇が50本あったことは多分その時の私は知らなかった。
『私もカラルリのことが好き。もちろん異性として。私もあなたを見た時からドキドキしていたの。私は小さい頃、確かに師範に想いを寄せていたわ。軍人時代は師範との思い出を思い返すことで乗り切れられたのだと思う。けれど、それはもう私の中では昔の縁(えにし)になっている。私はあなたと師範を重ねてあなたを好きになったんじゃない。あなたを見た時からドキドキが止まらなくて、あなたに触れられるたび心がなびいて、あなたに優しくされるたびどんどん好きになっていった。今ではあなたなしでは生きていけない』
きっと、本当の初恋なのだろう。私はカラルリを手放したくはなかった。どうしてもカラルリと正式に恋人になりたかったのだ。
『セナさん、私はセナさんほど強くない。セナさんを見た時、私はまだまだ修行不足だと気付かされた。でも、セナさんさえ良ければ私と結婚を前提に交際してほしい』
夢はそこで途切れていた。私は目を覚まし身体を起こした。あまりにもリアルな夢で混乱と共に、本当にあった出来事なのではとも感じてしまった。
けれど、夢は夢。最近、少しカラルリのことを考えていたから、少し行き過ぎた夢を見ただけ。私は必死にそう言い聞かせた。
1階では既にアルフォンスが朝食を食べはじめていた。私はアルフォンスに夢のことを話した。
「正直、セナには言いたくなかったけど、前世は存在していると研究者の間では、ほぼ確実な結論付けとなっていて、夢で思い出すことが多いらしい。聞いている限り、告白された神社は今も存在しているし、人間関係だって、ほぼ私たちの関わりある人物ばかり。前世の可能性は高いかもしれない」
前世……。本当に存在するのだろうか。いくらリアルな夢とはいえ、何の証拠もなしでは結論付が出来ない。
「うーん、それって私とカラルリは両想いだったってことよね。それもかなり愛し合っていた。でも、私はカラルリのことは友達だと思っている」
そりゃ、交際するならカラルリみたいな人がいいと思うことはあるけれど。現時点では夢と現実の差は空きすぎている。
「その夢が本当に前世だったとしたら、完全に愛し合っていたし、それ以上の関係だと思う。でもね、セナ。前世と現世(いま)は全く別物。もし、この先、カラルリを好きになることがあっても慎重になってほしい」
慎重……。どういう意味だろう。カラルリなら慎重にならなくても私を大切にしてくれると思う。あの夢みたいに。夢ではカラルリに全てを捧げた。水花もあんなに簡単に……。
「うーん、混乱して何だか冷静になれないわ」
異性として好きとかそうでないとかではなくて。私も将来的には夢のようなことをするのだろうか。夢では白梅までは咲かされてないけれど、でも、現代だと白梅咲になってしまう。それも雲リラなしで。とてもじゃないけど考えられない。いくら好きでも手を繋ぐ以上のことは直ぐには許せないと思う。それにカラルリのことを異性として見ているかなんて分からない。少しは見ていたとしても今の関係から変わりたくない。
「セナ、私はカラルリは友達止まりの方がいい気がする。兄妹であれ、あまり深入りしたようなこと言いたくないけど、セナには後悔してほしくない」
カラルリと交際すれば後悔するのだろうか。私にはそう聞こえた。
「うーん……」
言葉が見当たらない。別に現時点でカラルリとの交際は考えてないしカラルリもそうだと思う。
「昔は今みたいに色々なかったけど、今は寧ろありすぎるよね。もし、好きな人と交際したとして、その人がキュート女優にハマっていたらどうする?」
え……。夢の中の私は妖精村何とか雑誌を見ていて……カラルリは興味なくて、カラルリがその雑誌見てたとしても平然としていたと思う。でも、改めて聞かれると彼氏がキュート女優にハマるのは嫌かもしれない。彼女がいるのにキュート女優だなんて裏切りにも感じてしまう。
「私は嫌だわ。そもそも彼女がいるのにキュート女優にハマる男なんているのかしら? フラワー女優でさえありえない……」
どうしてあんな男を誘惑するような女優がいるのかしら。理解出来ないし、そういう雑誌見ている男だったら即別れると思う。けれど、似たようなのが物凄い昔にもあった気がする。夢の中のような時代に。この曖昧な記憶は何なのだろう。
「セナは恋愛は早いと思う。前世を思い出したら、その記憶に振り回されそうだし。だからこそ、気になる人が出来ても友達以上にはなって欲しくないと思ってる」
恋愛なんてしたことないから分からないけど、少なくとも今は彼氏を必要とはしていない。でも未来は分からない。それにやっぱり前世なんて信じられない。アルフォンスは覚えているのだろうか。その証拠もあるのだろうか。
「アルフォンスは前世の記憶があるの? あったとして証拠まで持ってるの?」
私は何を見ても信じられないかもしれない。
「あるけど、かなり曖昧。ただ、3日ほど前にフェアホを見たら、この写真があったんだ」
私はアルフォンスのフェアホを覗き込んだ。
とても古い写真。夢で見たカラクリ家だ! こんなことあるのだろうか。写真は本物なのだろうか。私たちの先祖たち? それとも……いや、やっぱり前世とか今の私には信じられない。
「先祖かしら。古い写真って残るものなのね」
写真に映っている私にそっくりな人が私であるはずがない。
「私は前世だと思っている。かなり遠い前世。保存状態は言いけれど、こういった建物は3世紀頃に多かったらしいから、3世紀から5世紀の間だと思う」
3世紀って。それが本当なら残ってるはずないじゃない。王室ならともかく。そもそもどうしてアルフォンスのフェアホの中に入っているのかさえ分からない。けれど、夢のことといえ写真のことといえ、その物事に触れるほどに気になってしまう。そのうち私も疑念を持つかもしれない。どこかのタイミングで王室の図書館に行こうかしら。
「セナ、あと30分で出るから」
もうそんな時間! 私は慌てて髪をポニーテールに結んだ。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
あとがき。
写真は古代編のラストの集合写真でしょうか。
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この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
現在、小説に関する模倣(程度による)の一切を禁じております。
詳しくはこちらを参照→ 禁止事項
無断転載もご遠慮ください。
《セナ》
妖精村学園の高等部に転校して、思いの外、友達は作れず、寧ろ避けられる日々だった。それでも私には双子のアルフォンスがいるし、それでいいと思っていた。 でも、ある日、私が体育の授業の後、1人で片付けていたら同じクラスのカラルリが手伝ってくれて、そこから友達になり、妹のカナエも紹介してもらって、今の人間関係が出来上がったのである。
ただ、アルフォンスはクラスメイトのユメさんと交際しているけれど、気持ちがないのに断らなかったことは失礼に感じてユメさんが時折可哀想に感じている。
私は……私は、ここのところカラルリのことが気になっている。というか、非現実的ではあるが前世というものが存在していてカラルリとは前世でも関わりがあったように感じるのである。けれど、前世なんて馬鹿げている。
でも、カラルリの優しさが私の胸を温める。
「今度、別荘でバーベキューするから来ない?」
何となく、ユメさんとアルフォンスには親睦を深めてほしい。
「セナさん、絶対行く!」
また胸が弾んだ。
「カラルリが行くなら私も行くわ!」
どうしてだろう。私、セレナールとは自然的な友達にはなれない気がする。そして、このモヤモヤ感が何なのか分からずにいた。
「楽しみだわ」
よし! ユメさんも乗ってきた。
もし、ユメさんがアルフォンスに告白しなければ、このグループにいなかったかもしれない。これも何かの縁だと思う。
私とカラルリが友達になったのも多分、特別なご縁な気がする。
「あ、セリルも誘いたいかも」
セリルはクラスメイトで副委員長をしている。更には成績が学年トップなのだ。銀髪でおっとりしていて、カラルリとは幼なじみで女の子にも人気がある。けれど、実はカラルリの姉にあたるカナコさんと恋人のような関係なのである。互いに好き合っていることは誰が見ても明確なのに、あれで交際していないなんて最初は耳を疑ってしまった。
「兄さんなら私が誘っておくわ」
カラルリより先にセレナールに答えられてしまった。またモヤモヤしている。
「え、ええ、お願い」
兄妹でこんなにも似ていないなんて。美男美女には変わりないけれど、セレナールが子供っぽく感じてしまって癪に障る。それに、妖精村1番の美少女と噂が流れているのも何だか応援出来ない自分がいる。それなのに、私はその理由が全く分からない。
「カナエ、勉強はどう?」
またカナエに話しかけている。どうしてもっとユメさんのこと構ってあげないのだろう。
「毎日、予習復習をしていますので勉強はついていけています」
カナエはキクリ家の4女でキクリ食堂の中級料理人の指導をしている。料理がビックリするくらい上手で王室の料理人になってほしいくらいのレベルだと感じた。セレナールと同い歳なのに控えめな性格に家事も勉強も運動も出来て、自分の意見はしっかり持っている。その辺はカラルリにそっくり。
「はいはい、カナエは成績優秀だから。アルフォンスはユメさんに勉強教えてあげなさいよ」
ユメさんは身長が高く細めな体型でショートヘアの可愛らしい女の子。けれど、勉強や運動は苦手みたい。後は、ミルケット伯爵令嬢。貴族なのだ。
「教えるには教えるけど、バーベキューするんでしょ?」
教える時間くらいあるでしょうに。カナエには勉強のこと聞いておいてユメさんの勉強のことは気にしないなんて、まるで恋人じゃないみたい。と言っても、友達のような関係からの約束で交際を受けたから、その辺はどうにもならないのかもしれないけれど。
数日後の学校帰りの別荘。
私は浮かれていた。明日は、みんなで博物館へ行くのだ。
「セナ、あまりカラルリのこと考えちゃダメだよ。セナには簡単に水花を捨ててほしくない」
どうしてカラルリのことを言うのだろう。それに私は誰かと交際しても簡単には白梅を咲かせるつもりはない。
「私、カラルリとはただの友達だし、今は恋人作るとか全然考えてないわ」
高校2年生。彼氏持ちは結構多い。けれど、私は彼氏なんていなくても別にいい。
「本当に? カラルリに1ミリも気持ちないって言い切れる?」
1ミリもって、友達なんだからそれなりの思いはあるでしょうに。
「何よ! あなたこそユメさんとまるで他人じゃない」
このままではユメさんが可哀想すぎる。
「ユメさんはそれでいいって言ってるから。それより、私は何となく嫌な感じがする。今のグループも必然的に作られたような……」
何それ。必然でも運命でも偶然でも楽しければそれでいいじゃない。
「アルフォンス、考えすぎよ」
アルフォンスは、昔から慎重な性格で小さい頃は少し臆病だったりもした。それにしても、まるで私とカラルリが親密になっちゃいけないような言い方が気になる。
使用人が作った夕ご飯を食べて、お風呂に入った後、私はクローゼットの部屋で明日来ていく服を探していた。
必然……か。この世は、アルフォンスが言うほど何かに縛られているものなのだろうか。自由に生きてきた私にはそうは思えない。私は王妃の娘ではないけれど、私なりに幸せに生きて来た。これからも私はずっと変わらないと思う。
前の学校は貴族ばかりで少し退屈だった。私が王族だから気を遣われると、その人間関係は上辺だけのものだし、私にも一般人のような何でも言い合える人間関係が欲しかった。簡単に言えば、境遇を変えるために転校したわけである。転校した当初は、私が王女というだけで周りは私を避け、中には妬んでイジメまがいのことをしてくるクラスメイトもいた。転校しても人間関係を作れないのだと落ち込んでいたけれど、カラルリのおかげで、私は今とても楽しい学生生活を送っていると思う。
妖精村学園は幼稚園からエスカレーター式だし、勉強が出来なくても大学までは通えるようになっている。将来の夢とか今の私にはないけれど、決まるまでは大学院までいるつもり。
「セナ、もう寝な」
まだ服決まってないのに。でも、せっかくのお出かけだから睡眠は取っておきたい。
「分かったわ!」
部屋に戻りベッドに入ると不思議と直ぐに眠りについた。そして私は夢を見た。
とても古い時代。みんな着物を着ている。そして、軍事基地から戻った私はカラクリ家でお世話になることになった。そこで知り合ったカラルリと私は直ぐに仲良くなった。
ある祭りにて、私はカラルリから告白をされた。
『セナさん、私はセナさんがカラクリ家に来て間もなくしてセナさんを見るとドキドキするようになった。セナさんがひいおじい様に師範以上の感情を持っているのは分かる。でも、私ははじめて女を見てなびいた。毎日セナさんを見ては胸が高鳴ってドキドキが止まらなくてこの感情が恋なのだと気づいた。私はセナさんが好きだ。セナさんの嫌がることはしないし、セナさんのペースに合わせる。返事は直ぐでなくて構わない。ただ、セナさんを好きになった以上、自分の気持ちをハッキリ伝えたかった。私に気持ちがないならハッキリ断ってくれて構わない』
カラルリはかなり緊張した様子だった。けれど、私は嬉しくてたまらなかった。
『まあ、素敵な花束。これ私のために用意してくれたの?』
私はカラルリの持っている薔薇の花束に目を向けた。
『あ、ああ』
カラルリは少し俯いた。
『頂くわ』
私はカラルリから薔薇の花束を受け取った。薔薇が50本あったことは多分その時の私は知らなかった。
『私もカラルリのことが好き。もちろん異性として。私もあなたを見た時からドキドキしていたの。私は小さい頃、確かに師範に想いを寄せていたわ。軍人時代は師範との思い出を思い返すことで乗り切れられたのだと思う。けれど、それはもう私の中では昔の縁(えにし)になっている。私はあなたと師範を重ねてあなたを好きになったんじゃない。あなたを見た時からドキドキが止まらなくて、あなたに触れられるたび心がなびいて、あなたに優しくされるたびどんどん好きになっていった。今ではあなたなしでは生きていけない』
きっと、本当の初恋なのだろう。私はカラルリを手放したくはなかった。どうしてもカラルリと正式に恋人になりたかったのだ。
『セナさん、私はセナさんほど強くない。セナさんを見た時、私はまだまだ修行不足だと気付かされた。でも、セナさんさえ良ければ私と結婚を前提に交際してほしい』
夢はそこで途切れていた。私は目を覚まし身体を起こした。あまりにもリアルな夢で混乱と共に、本当にあった出来事なのではとも感じてしまった。
けれど、夢は夢。最近、少しカラルリのことを考えていたから、少し行き過ぎた夢を見ただけ。私は必死にそう言い聞かせた。
1階では既にアルフォンスが朝食を食べはじめていた。私はアルフォンスに夢のことを話した。
「正直、セナには言いたくなかったけど、前世は存在していると研究者の間では、ほぼ確実な結論付けとなっていて、夢で思い出すことが多いらしい。聞いている限り、告白された神社は今も存在しているし、人間関係だって、ほぼ私たちの関わりある人物ばかり。前世の可能性は高いかもしれない」
前世……。本当に存在するのだろうか。いくらリアルな夢とはいえ、何の証拠もなしでは結論付が出来ない。
「うーん、それって私とカラルリは両想いだったってことよね。それもかなり愛し合っていた。でも、私はカラルリのことは友達だと思っている」
そりゃ、交際するならカラルリみたいな人がいいと思うことはあるけれど。現時点では夢と現実の差は空きすぎている。
「その夢が本当に前世だったとしたら、完全に愛し合っていたし、それ以上の関係だと思う。でもね、セナ。前世と現世(いま)は全く別物。もし、この先、カラルリを好きになることがあっても慎重になってほしい」
慎重……。どういう意味だろう。カラルリなら慎重にならなくても私を大切にしてくれると思う。あの夢みたいに。夢ではカラルリに全てを捧げた。水花もあんなに簡単に……。
「うーん、混乱して何だか冷静になれないわ」
異性として好きとかそうでないとかではなくて。私も将来的には夢のようなことをするのだろうか。夢では白梅までは咲かされてないけれど、でも、現代だと白梅咲になってしまう。それも雲リラなしで。とてもじゃないけど考えられない。いくら好きでも手を繋ぐ以上のことは直ぐには許せないと思う。それにカラルリのことを異性として見ているかなんて分からない。少しは見ていたとしても今の関係から変わりたくない。
「セナ、私はカラルリは友達止まりの方がいい気がする。兄妹であれ、あまり深入りしたようなこと言いたくないけど、セナには後悔してほしくない」
カラルリと交際すれば後悔するのだろうか。私にはそう聞こえた。
「うーん……」
言葉が見当たらない。別に現時点でカラルリとの交際は考えてないしカラルリもそうだと思う。
「昔は今みたいに色々なかったけど、今は寧ろありすぎるよね。もし、好きな人と交際したとして、その人がキュート女優にハマっていたらどうする?」
え……。夢の中の私は妖精村何とか雑誌を見ていて……カラルリは興味なくて、カラルリがその雑誌見てたとしても平然としていたと思う。でも、改めて聞かれると彼氏がキュート女優にハマるのは嫌かもしれない。彼女がいるのにキュート女優だなんて裏切りにも感じてしまう。
「私は嫌だわ。そもそも彼女がいるのにキュート女優にハマる男なんているのかしら? フラワー女優でさえありえない……」
どうしてあんな男を誘惑するような女優がいるのかしら。理解出来ないし、そういう雑誌見ている男だったら即別れると思う。けれど、似たようなのが物凄い昔にもあった気がする。夢の中のような時代に。この曖昧な記憶は何なのだろう。
「セナは恋愛は早いと思う。前世を思い出したら、その記憶に振り回されそうだし。だからこそ、気になる人が出来ても友達以上にはなって欲しくないと思ってる」
恋愛なんてしたことないから分からないけど、少なくとも今は彼氏を必要とはしていない。でも未来は分からない。それにやっぱり前世なんて信じられない。アルフォンスは覚えているのだろうか。その証拠もあるのだろうか。
「アルフォンスは前世の記憶があるの? あったとして証拠まで持ってるの?」
私は何を見ても信じられないかもしれない。
「あるけど、かなり曖昧。ただ、3日ほど前にフェアホを見たら、この写真があったんだ」
私はアルフォンスのフェアホを覗き込んだ。
とても古い写真。夢で見たカラクリ家だ! こんなことあるのだろうか。写真は本物なのだろうか。私たちの先祖たち? それとも……いや、やっぱり前世とか今の私には信じられない。
「先祖かしら。古い写真って残るものなのね」
写真に映っている私にそっくりな人が私であるはずがない。
「私は前世だと思っている。かなり遠い前世。保存状態は言いけれど、こういった建物は3世紀頃に多かったらしいから、3世紀から5世紀の間だと思う」
3世紀って。それが本当なら残ってるはずないじゃない。王室ならともかく。そもそもどうしてアルフォンスのフェアホの中に入っているのかさえ分からない。けれど、夢のことといえ写真のことといえ、その物事に触れるほどに気になってしまう。そのうち私も疑念を持つかもしれない。どこかのタイミングで王室の図書館に行こうかしら。
「セナ、あと30分で出るから」
もうそんな時間! 私は慌てて髪をポニーテールに結んだ。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
あとがき。
写真は古代編のラストの集合写真でしょうか。
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この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
現在、小説に関する模倣(程度による)の一切を禁じております。
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無断転載もご遠慮ください。
純愛偏差値 未来編 一人称版 125話
《ラルク》
時は2024年4月。やっと僕は中学生に進学したのだ。しかし、ナミネから昨日が2020年の6月だと、その他色々聞かされ最初は頭がついていかなかった。けれど、聞いているうちに何となく理解は出来た気はする。ただ、昨日と今日が前世と今世なのかは誰にも分からない。
それにしても、ナミネがヨルクお兄様と交際というのは驚いた。ナミネは恋愛はしないと思っていた。
僕は、その昨日とやらを覚えていないけど、いずれ思い出すかもしれない。セレナール先輩と交際していた。それを聞けただけでも自信が持てた気がする。
昼間、セレナール先輩を見て、どれだけ話したかったことか。
僕は、遠い昔(前世)にセレナール先輩と交際し、そしてセレナール先輩を亡くしている。
あれは、僕がいつかの高校生の頃だった。
新米教師のセレナール先輩ことセレナール先生を見た瞬間、僕はセレナール先生に一目惚れをした。確か、ショウゴ先生も高校1年生の頃、新米教師であるハルミ先生に一目惚れをし、交際に発展していたはず。前にハル院長が話してくれた。
僕には瓜二つの顔を持つ人物はいないから、ショウゴ先生のような悩みは持たないだろうけど。
僕は、クレナイ家の跡取りを避けるため、わざと、弱いフリ、勉強が出来ないフリをして来た。だから、成績学年トップは常にナミネだった。
話は戻るが、セレナール先生に一目惚れをした時、絶対に交際したいと思った。無理だと知りながらも。それでも僕は毎日のように解ける問題を知らないフリしてセレナール先生に聞きに行った。そのうちに、セレナール先生は自身の過去を話してくれるようになったのである。
皇太子様と婚約までして、あることで拗れ、カラルリ先輩に気持ちが傾き、気づいた時には皇太子様はエミリさんと両想いになっていたこと。セナ王女と仲が良くなかったこと。セイさんに異常なまでの性的感情を持たれていたこと。何もかも上手くいかず周りを妬み始めたこと。カナエ先輩を陥れようとしてセレナール先生が逆に被害に遭ったこと。
数え切れないくらいの壮絶な人生を教えてくれた。
僕と交際してからは、古いアパートで同棲をして幸せな暮らしをしていた。本当に言葉に出来ないくらい幸せだった。
けれど、幸せというのは儚いもので、あるデートの日、セレナール先生は僕を庇って命を落とした。ナミネによると、ハルミ先生もショウゴ先生を庇って一度命を失っているらしい。
あの頃の僕は弱かった。だから、二度とセレナール先輩を失うまいと最強を目指した。小さい頃に、伝説最上級武官の体験もクリアしている。ナミネの話では、昨日までの僕らは本当の伝説最上級武官資格を所持していたらしいが。
早く、早く、セレナール先輩と関わりたい。1日たりとも忘れたことのない存在。
「ねえ、ラルク。向こうの予定があまりに多すぎて、こっちが辿れるか分かんないよね。伝説武官試験もまた受け直さないといけないし」
伝説武官は何とかなるだろう。しかし、セレナール先輩の動向は常に知っておきたい。好きで好きでたまらない。また、あの時みたいに愛し合いたい。
「向こうは向こうで適当にやってるだろ。こっちはこっちで動く。まずは、ラハルに会いに行く」
なるほど、落ち武者さんはラハルさんをこちら側につけるつもりか。
「いや、でも虹色街に行けばカンザシさんに会うかもしれないじゃないですか」
確かに会うだろうな、ほぼ確実に。けれど、遅かれ早かれ会うことにはなるだろう。それは避けられない運命だと思う。
「ニンジャ妖精の出張の時に行けば良いだろ」
流石、落ち武者さん。セリルさんに似て頭の回転が早い。
「ああ、そうか。でも、博物館はどうするんですか?」
博物館。今は改装されてレストランが建っていて、別の場所に移転されている。2020年は廃墟だったらしいが。
けれど、セレナール先輩が襲われた因縁のある場所だ。
それにセレナール先輩は、ニンジャ妖精のマモルさんに……。
「博物館が先」
だな。今のメンバーだけでも、やってはいける。
「分かりました。あー、ヨルクさんとカナエさんいないから、またナノハナ食堂だ」
僕は覚えていないけど、僕が想像するより遥かに賑わっていたのだろう。けれど、運命は簡単には変えられない。ならば、また同じ状況になる可能性は高い。
それに今回は、ナミネがヨルクお兄様を好きだったことを覚えているから、ナミネは病まずに済むだろう。
「ナミネさん、僕が作りましょうか?」
ズームさんアタック来た。今はヨルクお兄様とは、ほぼ他人状態だからズームさんにも可能性が……ちょっと厳しいか。今のナミネはヨルクお兄様しか見ていない。
「あ、いえ、大丈夫です。ズームさんは帰らなくて大丈夫なのですか?」
ズームさんは、今後どうするのだろう。
「昨日の今日なので、やっぱりナノハナ家が定着しています」
ダメだ。僕には着いていけない次元だ。この中で、僕だけが昨日とやらを知らない。
「あ、そうですよね。私たち、ずっと一緒にいましたもんね。タイムスリップみたいになっちゃいましたが、ミネルナさんが元に戻って良かったです」
元に戻ったのだろうか。セレナール先輩だって一度マモルさんから黒鈴酷華を受けている。時を変えたとしても、100%なくなるなんてことはない。ミネルナさんは、完全な純白とは言えないと僕は思う。それに、ナミネの話を聞いているとミネルナさんは、ロォハさんに後ろめたかったようにも感じる。それだけでなく、妖精村の象徴はセレナール先輩なはずなのに、いきなりミネルナさんどうこうになって、イマイチ話がよく分からない。
「じゃ、風呂行く」
もうそんな時間だっけ? 時計を見るとまだ17時。夕ご飯前だ。その時、フェアホが鳴った。落ち武者さんのフェアホも。
『ナミネはもう小学生ではない。歳頃の女子(おなご)だ。混浴など以ての外。ナミネとは今までより距離を置いてほしい』
ヨルクお兄様は本当に頭がナミネのことばかりだな。堂々と告白してしまえば良いのに。今の状態が続くとナミネもヨルクお兄様から他の男に行きかねない。
「顔だけヨルクも素直じゃないねー? そんなに強気なナミネに惚れてるならナノハナ家来れば良いのに」
本当にそうだ。けれど、ヨルクお兄様は今も縁談書を持って来ているはずなのに、その辺はどうなっているのだろう。ヨルクお兄様との縁談はナミネにとっても悪くない話だと思うが。
「ヨルクお兄様はプライドが高いですから。お風呂なら今まで通りで良いと思います。その2020年とやらので。僕たちまだ中学生ですし」
おっと、ズームさんは高校生だった。
「では、僕もご一緒させてもらいます」
そのみんなの言う昨日というのは、同じ空間にいることが当たり前だったんだな。紀元前村では、テントで皆が過ごしていたそうだし。今の僕では想像がつかない。それでも、いずれみんなの昨日が僕も当たり前になるのだろうか。
「アンタさ、水着は着ろよ」
ナミネはやっぱりナミネだ。学校でいくら女の子らしくしていてもプライベートはズボラ。そこは僕の知っているナミネと全く変わっていない。
「何か、昨日のがないんですよね。私、タオルでいいです」
ナミネはまだ中学生だし、問題ないか。ヨルクお兄様が知ったら大目玉だけど。そして、ナミネはお風呂へ走って行った。
「顔だけヨルクは良いよなあ。僕だって一度くらい強気なナミネと付き合いたかった」
えっと、落ち武者さんはナミネのことが好きなのか。ああ、頭がこんがらがってくる。
「交際してましたよ。僕の知ってるのは、そう遠くない前世の一度きりですが」
え、ナミネが落ち武者さんと!? ズームさんとラハルさんのことは聞いたけれど、やっぱりナミネもエリートばかり選ぶの全然変わらないな。って、カンザシさんの時は逆に貢いでいたか。
「は? 僕とあの強気なナミネが付き合ってたのか? もっと早く言えよ! てか、どうなったんだよ!」
僕もそこは気になるけど、嫌な気がする。その番の勾玉のアザ、2024年現在はズームさんの背中にバッチリついている。つまり、昨日と今日は全く別の世界と仮定しても過言でないほどだ。
「セルファさんから交際を申し込みナミネさんはどうしてか聞くとセルファさんは『綺麗だから』と答えた後、ナミネさんはセルファさんと交際しました。関係は上手くいっていた方だと思います。けれど、カンザシがお二人を気に入らず妬み、僕を脅して、結果お二人は氷河期の時代に飛ばされました」
ラハルさんやズームさんとの交際も、そうやってカンザシさんが壊したわけか。けれど、セレナール先輩が天使村時代にヨルクお兄様暗殺計画に加わっていたことは未だに信じがたい。しかし、それでナミネは衰弱してヨルクお兄様を好きにならないようにお願いしたわけか。でも、21世紀分離れていたとはいえ、結局またヨルクお兄様のことチャッカリ好きになってるじゃないか。
「はあ、あの男本当にどうしようもねえな。で? 僕と強気なナミネは空咲したわけ?」
とてもじゃないけど、セリルさんの弟だとは思えない発言。実際どうなのだろう。
「恐らくしているのではないでしょうか。あなたの性格からして」
ズームさんはそう答えるか。
「何だよそれ。って、おい、アンタ、タオル取れてんだろ」
ナミネはお風呂で泳ぐことが多い。落ち武者さんはナミネにタオルを巻いた。そして、またフェアホが鳴った。
『ねえ、ナミネとは距離置いてって言ってるでしょ! ナミネは女の子なんだよ? それにラルクにとっても良くないと思う』
はあ、だったらどうしてナノハナ家に来ない。返すの面倒だけど返すしかないか。
『でしたら、ヨルクお兄様がナミネとお風呂入れば良いでしょう。僕たちはそういう仲なんです』
しまった。ナミネたちに聞いた通りの解釈で返信してしまった。
『そういう仲って何? ナミネ、白咲さえまだなんだよ? ラルク、他に好きな人いるんじゃないの? ナミネのこと弄ばないで!』
昨日の今日で、昨日まではヨルクお兄様の彼女だったわけだから白咲も何もないだろう。それに、僕に好きな人がいるというのは適当な発言だろうか。
「ラルク、アンタ無視しとけ。エンドレスになるぞ」
だな。今日が水曜日だから、後2日で博物館行きだし、こっちにも色々予定は入って来るだろうから、ヨルクお兄様のつまらないことに付き合ってはいられない。
「私、ヨルクさんと早く元に戻りたいです」
ナミネ、いつそんなにヨルクお兄様のこと好きになったんだ。
「何で、顔だけヨルクなのさ? アンタのこと忘れてる人間より僕にしとけよ! 一度交際した仲なんだし」
ナミネってどうしてかモテるんだよなあ。それも、高校生に上がってからは特に。
「そっか、あの夢、正夢だったんだ」
正夢? ナミネは既に落ち武者さんとの過去を知っていたのか?
「アンタさ、その夢見た時点で教えろよ!」
落ち武者さんは、幼なじみのエルナさんとはどうなんだろう。ナミネ一筋なのだろうか。
「ただの夢だと思ってました」
ナミネらしいな。
「どんな夢なのさ?」
落ち武者さんもよく分からない人だな。
「落ち武者さんが成長した私に告白して私のこと綺麗だと言いました。私は迷わず交際を選びました。落ち武者さんは、どうしてズームさんと別れたのかと聞いて私が無理矢理別れさせられたと答えたら、落ち武者さんはカンザシさんのコンサート行きを言い出したんです。そして、私たちはカンザシさんに負け、どこか寒いところに飛ばされて死にました」
切ないな。ヨルクお兄様への想いを忘れていた時代のナミネはナミネなりに苦労してきたのか。
「ふーん、そのまんまだね?」
本当にセリルさんの弟なのだろうか。けれど、セレナール先輩もセリルさんの妹だし、兄弟ってそういうものなのかもしれない。僕も兄や姉には全く似てないし。ナノハナ家も似たようなもんだ。
『ねえ、ラルク聞いてるの?』
しつこいな。とっとと告白して元の関係とやらに戻れば良いだろう。僕はヨルクお兄様からのレインをミュートにした。
「ねえ、ラルク。委員長がヤクミ君ってことは『神山くらふ』は元の委員長はいるのかな。このままだと、またゼロからの繰り返しだよ。セナ王女だって、せっかくシャム軍医と交際したばかりなのに」
えっと、カナエ先輩は疑心暗鬼にアルフォンス王子とヨリを戻したけど、セナ王女はカラルリ先輩に見切りをつけシャム軍医と交際したんだっけ。
「まあ、僕はその昨日とやらを知らないから何とも言えないけど、『神山くらふ』もシャム軍医もいると思う。でも、現段階ではセナ王女とカラルリ先輩は仲良さそうに見えるけどな」
まるで両想いかのような。あれは確実に惹かれ合っている。けれど、2019年のようにセナ王女が妊娠してルリコさんが中絶薬を盛って流産したのなら、そうならないようにする必要があるかもしれない。セレナール先輩に盛られたトケイ草も。
みんな知らないはずなのに、2019年と2020年にナミネとラハルさんが演じた飛べない翼と忘れられた翼は、古い作品として存在しているとか。いったい、この世界はどうなってるんだ。
「出逢うべき人とは出逢うものだと僕は思います。今は、この世界ではまだ会っていませんが、いずれまた昨日のようになれると信じたいです」
そうだよな。知らない人同士がそこまで絆が深まっていたのなら、またそうなるべきだ。今度は誰も傷つかないように。
お風呂上がり、ナノハナ食堂のご飯を食べた後は、第4居間でテレビを見て、ナミネの部屋で寝ることになった。
「やっぱり、何だか慣れないな。当たり前が当たり前じゃないって」
すぐには慣れないだろう。たった1日で変わった環境に対応出来るまでに時間がかかるのが人間というものだ。
「例え僕みたいに昨日を何も覚えていない僕や、あちら側のメンバーも、どこかでぎこちなさ感じてるんじゃないか?」
それにしても、ナミネの言うように、せっかくシャム軍医と一緒になれたのに、またカラルリ先輩に逆戻りとは運命も残酷だな。
「そうかもしれないけど。浴衣着て祭り行ってたのに。月城総合病院でキクスケさんにいきなり2024年に飛ばされて、また中学1年生に戻ってて、ついていけないよ」
しばらくは、ナミネは悩み続けるだろう。ヨルクお兄様との関係もそうだけど、周りの関係の変化にショックを受けている可能性もある。
「僕もついていけないけど?」
落ち武者さんは絶対に対応している。落ち武者さんの場合は、こういうケースを何度も経験してきた気がする。
「うーん……。ねえ、ラルクはセレナールさんのこと好きなの?」
今更どうしてそんなこと聞くのだろう。
「好きに決まってるじゃないか。好きすぎてどうにかなりそうなくらいだ」
早くセレナール先輩の心を得たい。セレナール先輩から愛されたい。こんなにどうしようもないくらい人を好きになったのはセレナール先輩がはじめてだ。
「アンタも気を付けろよ? 姉さんと別れた頃には他の女に惚れてたんだからね?」
えっ、僕がセレナール先輩以外の人を好きに? とてもじゃないけど信じられない。僕はセレナール先輩から離れるつもりはないし、気持ちが消えるはずもない。本当に2019年の僕はセレナール先輩を冷たくあしらっていたのだろうか。
「そんなはずありません。僕はセレナール先輩を手放したりはしません」
1日も早く交際したい。あちら側のグループに入りたい。
「ラルクさ、早い段階でセレナールさんのこと冷めてたんだよね。森の湖行く時なんかセレナールさんのこと助けようともしてなかったし、挙句には森の湖のセレナールさん好きになっちゃうし」
もう全然ついていけない。例え、それが事実だったとして、少なくとも2024年の僕はそうならない自信がある。最初は一目惚れだったけど、セレナール先生と関わるうちに守りたいと思うようになった。その想いは現世でも変わらない。
「ナミネ、考えすぎだ。僕はセレナール先輩を愛し切る」
今だって他の男に取られないか不安でたまらない。
「ラルクって、すぐ周り見えなくなるよね。今はそうでも時は人を変えると思うし、別れ際の恋人って残酷だよ」
セナ王女とカラルリ先輩のことを言っているのだろうか? あれは、カラルリ先輩が良くない気がする。聞いた話だけだから実際分からないけど。
一通り話した後、僕らは眠りに着いた。
そして、使用人のところにヨルクお兄様が紛れ込んでいることに僕たちは全く気付いていなかったのである。
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あとがき。
恋は盲目……。
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この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
現在、小説に関する模倣(程度による)の一切を禁じております。
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無断転載もご遠慮ください。
《ラルク》
時は2024年4月。やっと僕は中学生に進学したのだ。しかし、ナミネから昨日が2020年の6月だと、その他色々聞かされ最初は頭がついていかなかった。けれど、聞いているうちに何となく理解は出来た気はする。ただ、昨日と今日が前世と今世なのかは誰にも分からない。
それにしても、ナミネがヨルクお兄様と交際というのは驚いた。ナミネは恋愛はしないと思っていた。
僕は、その昨日とやらを覚えていないけど、いずれ思い出すかもしれない。セレナール先輩と交際していた。それを聞けただけでも自信が持てた気がする。
昼間、セレナール先輩を見て、どれだけ話したかったことか。
僕は、遠い昔(前世)にセレナール先輩と交際し、そしてセレナール先輩を亡くしている。
あれは、僕がいつかの高校生の頃だった。
新米教師のセレナール先輩ことセレナール先生を見た瞬間、僕はセレナール先生に一目惚れをした。確か、ショウゴ先生も高校1年生の頃、新米教師であるハルミ先生に一目惚れをし、交際に発展していたはず。前にハル院長が話してくれた。
僕には瓜二つの顔を持つ人物はいないから、ショウゴ先生のような悩みは持たないだろうけど。
僕は、クレナイ家の跡取りを避けるため、わざと、弱いフリ、勉強が出来ないフリをして来た。だから、成績学年トップは常にナミネだった。
話は戻るが、セレナール先生に一目惚れをした時、絶対に交際したいと思った。無理だと知りながらも。それでも僕は毎日のように解ける問題を知らないフリしてセレナール先生に聞きに行った。そのうちに、セレナール先生は自身の過去を話してくれるようになったのである。
皇太子様と婚約までして、あることで拗れ、カラルリ先輩に気持ちが傾き、気づいた時には皇太子様はエミリさんと両想いになっていたこと。セナ王女と仲が良くなかったこと。セイさんに異常なまでの性的感情を持たれていたこと。何もかも上手くいかず周りを妬み始めたこと。カナエ先輩を陥れようとしてセレナール先生が逆に被害に遭ったこと。
数え切れないくらいの壮絶な人生を教えてくれた。
僕と交際してからは、古いアパートで同棲をして幸せな暮らしをしていた。本当に言葉に出来ないくらい幸せだった。
けれど、幸せというのは儚いもので、あるデートの日、セレナール先生は僕を庇って命を落とした。ナミネによると、ハルミ先生もショウゴ先生を庇って一度命を失っているらしい。
あの頃の僕は弱かった。だから、二度とセレナール先輩を失うまいと最強を目指した。小さい頃に、伝説最上級武官の体験もクリアしている。ナミネの話では、昨日までの僕らは本当の伝説最上級武官資格を所持していたらしいが。
早く、早く、セレナール先輩と関わりたい。1日たりとも忘れたことのない存在。
「ねえ、ラルク。向こうの予定があまりに多すぎて、こっちが辿れるか分かんないよね。伝説武官試験もまた受け直さないといけないし」
伝説武官は何とかなるだろう。しかし、セレナール先輩の動向は常に知っておきたい。好きで好きでたまらない。また、あの時みたいに愛し合いたい。
「向こうは向こうで適当にやってるだろ。こっちはこっちで動く。まずは、ラハルに会いに行く」
なるほど、落ち武者さんはラハルさんをこちら側につけるつもりか。
「いや、でも虹色街に行けばカンザシさんに会うかもしれないじゃないですか」
確かに会うだろうな、ほぼ確実に。けれど、遅かれ早かれ会うことにはなるだろう。それは避けられない運命だと思う。
「ニンジャ妖精の出張の時に行けば良いだろ」
流石、落ち武者さん。セリルさんに似て頭の回転が早い。
「ああ、そうか。でも、博物館はどうするんですか?」
博物館。今は改装されてレストランが建っていて、別の場所に移転されている。2020年は廃墟だったらしいが。
けれど、セレナール先輩が襲われた因縁のある場所だ。
それにセレナール先輩は、ニンジャ妖精のマモルさんに……。
「博物館が先」
だな。今のメンバーだけでも、やってはいける。
「分かりました。あー、ヨルクさんとカナエさんいないから、またナノハナ食堂だ」
僕は覚えていないけど、僕が想像するより遥かに賑わっていたのだろう。けれど、運命は簡単には変えられない。ならば、また同じ状況になる可能性は高い。
それに今回は、ナミネがヨルクお兄様を好きだったことを覚えているから、ナミネは病まずに済むだろう。
「ナミネさん、僕が作りましょうか?」
ズームさんアタック来た。今はヨルクお兄様とは、ほぼ他人状態だからズームさんにも可能性が……ちょっと厳しいか。今のナミネはヨルクお兄様しか見ていない。
「あ、いえ、大丈夫です。ズームさんは帰らなくて大丈夫なのですか?」
ズームさんは、今後どうするのだろう。
「昨日の今日なので、やっぱりナノハナ家が定着しています」
ダメだ。僕には着いていけない次元だ。この中で、僕だけが昨日とやらを知らない。
「あ、そうですよね。私たち、ずっと一緒にいましたもんね。タイムスリップみたいになっちゃいましたが、ミネルナさんが元に戻って良かったです」
元に戻ったのだろうか。セレナール先輩だって一度マモルさんから黒鈴酷華を受けている。時を変えたとしても、100%なくなるなんてことはない。ミネルナさんは、完全な純白とは言えないと僕は思う。それに、ナミネの話を聞いているとミネルナさんは、ロォハさんに後ろめたかったようにも感じる。それだけでなく、妖精村の象徴はセレナール先輩なはずなのに、いきなりミネルナさんどうこうになって、イマイチ話がよく分からない。
「じゃ、風呂行く」
もうそんな時間だっけ? 時計を見るとまだ17時。夕ご飯前だ。その時、フェアホが鳴った。落ち武者さんのフェアホも。
『ナミネはもう小学生ではない。歳頃の女子(おなご)だ。混浴など以ての外。ナミネとは今までより距離を置いてほしい』
ヨルクお兄様は本当に頭がナミネのことばかりだな。堂々と告白してしまえば良いのに。今の状態が続くとナミネもヨルクお兄様から他の男に行きかねない。
「顔だけヨルクも素直じゃないねー? そんなに強気なナミネに惚れてるならナノハナ家来れば良いのに」
本当にそうだ。けれど、ヨルクお兄様は今も縁談書を持って来ているはずなのに、その辺はどうなっているのだろう。ヨルクお兄様との縁談はナミネにとっても悪くない話だと思うが。
「ヨルクお兄様はプライドが高いですから。お風呂なら今まで通りで良いと思います。その2020年とやらので。僕たちまだ中学生ですし」
おっと、ズームさんは高校生だった。
「では、僕もご一緒させてもらいます」
そのみんなの言う昨日というのは、同じ空間にいることが当たり前だったんだな。紀元前村では、テントで皆が過ごしていたそうだし。今の僕では想像がつかない。それでも、いずれみんなの昨日が僕も当たり前になるのだろうか。
「アンタさ、水着は着ろよ」
ナミネはやっぱりナミネだ。学校でいくら女の子らしくしていてもプライベートはズボラ。そこは僕の知っているナミネと全く変わっていない。
「何か、昨日のがないんですよね。私、タオルでいいです」
ナミネはまだ中学生だし、問題ないか。ヨルクお兄様が知ったら大目玉だけど。そして、ナミネはお風呂へ走って行った。
「顔だけヨルクは良いよなあ。僕だって一度くらい強気なナミネと付き合いたかった」
えっと、落ち武者さんはナミネのことが好きなのか。ああ、頭がこんがらがってくる。
「交際してましたよ。僕の知ってるのは、そう遠くない前世の一度きりですが」
え、ナミネが落ち武者さんと!? ズームさんとラハルさんのことは聞いたけれど、やっぱりナミネもエリートばかり選ぶの全然変わらないな。って、カンザシさんの時は逆に貢いでいたか。
「は? 僕とあの強気なナミネが付き合ってたのか? もっと早く言えよ! てか、どうなったんだよ!」
僕もそこは気になるけど、嫌な気がする。その番の勾玉のアザ、2024年現在はズームさんの背中にバッチリついている。つまり、昨日と今日は全く別の世界と仮定しても過言でないほどだ。
「セルファさんから交際を申し込みナミネさんはどうしてか聞くとセルファさんは『綺麗だから』と答えた後、ナミネさんはセルファさんと交際しました。関係は上手くいっていた方だと思います。けれど、カンザシがお二人を気に入らず妬み、僕を脅して、結果お二人は氷河期の時代に飛ばされました」
ラハルさんやズームさんとの交際も、そうやってカンザシさんが壊したわけか。けれど、セレナール先輩が天使村時代にヨルクお兄様暗殺計画に加わっていたことは未だに信じがたい。しかし、それでナミネは衰弱してヨルクお兄様を好きにならないようにお願いしたわけか。でも、21世紀分離れていたとはいえ、結局またヨルクお兄様のことチャッカリ好きになってるじゃないか。
「はあ、あの男本当にどうしようもねえな。で? 僕と強気なナミネは空咲したわけ?」
とてもじゃないけど、セリルさんの弟だとは思えない発言。実際どうなのだろう。
「恐らくしているのではないでしょうか。あなたの性格からして」
ズームさんはそう答えるか。
「何だよそれ。って、おい、アンタ、タオル取れてんだろ」
ナミネはお風呂で泳ぐことが多い。落ち武者さんはナミネにタオルを巻いた。そして、またフェアホが鳴った。
『ねえ、ナミネとは距離置いてって言ってるでしょ! ナミネは女の子なんだよ? それにラルクにとっても良くないと思う』
はあ、だったらどうしてナノハナ家に来ない。返すの面倒だけど返すしかないか。
『でしたら、ヨルクお兄様がナミネとお風呂入れば良いでしょう。僕たちはそういう仲なんです』
しまった。ナミネたちに聞いた通りの解釈で返信してしまった。
『そういう仲って何? ナミネ、白咲さえまだなんだよ? ラルク、他に好きな人いるんじゃないの? ナミネのこと弄ばないで!』
昨日の今日で、昨日まではヨルクお兄様の彼女だったわけだから白咲も何もないだろう。それに、僕に好きな人がいるというのは適当な発言だろうか。
「ラルク、アンタ無視しとけ。エンドレスになるぞ」
だな。今日が水曜日だから、後2日で博物館行きだし、こっちにも色々予定は入って来るだろうから、ヨルクお兄様のつまらないことに付き合ってはいられない。
「私、ヨルクさんと早く元に戻りたいです」
ナミネ、いつそんなにヨルクお兄様のこと好きになったんだ。
「何で、顔だけヨルクなのさ? アンタのこと忘れてる人間より僕にしとけよ! 一度交際した仲なんだし」
ナミネってどうしてかモテるんだよなあ。それも、高校生に上がってからは特に。
「そっか、あの夢、正夢だったんだ」
正夢? ナミネは既に落ち武者さんとの過去を知っていたのか?
「アンタさ、その夢見た時点で教えろよ!」
落ち武者さんは、幼なじみのエルナさんとはどうなんだろう。ナミネ一筋なのだろうか。
「ただの夢だと思ってました」
ナミネらしいな。
「どんな夢なのさ?」
落ち武者さんもよく分からない人だな。
「落ち武者さんが成長した私に告白して私のこと綺麗だと言いました。私は迷わず交際を選びました。落ち武者さんは、どうしてズームさんと別れたのかと聞いて私が無理矢理別れさせられたと答えたら、落ち武者さんはカンザシさんのコンサート行きを言い出したんです。そして、私たちはカンザシさんに負け、どこか寒いところに飛ばされて死にました」
切ないな。ヨルクお兄様への想いを忘れていた時代のナミネはナミネなりに苦労してきたのか。
「ふーん、そのまんまだね?」
本当にセリルさんの弟なのだろうか。けれど、セレナール先輩もセリルさんの妹だし、兄弟ってそういうものなのかもしれない。僕も兄や姉には全く似てないし。ナノハナ家も似たようなもんだ。
『ねえ、ラルク聞いてるの?』
しつこいな。とっとと告白して元の関係とやらに戻れば良いだろう。僕はヨルクお兄様からのレインをミュートにした。
「ねえ、ラルク。委員長がヤクミ君ってことは『神山くらふ』は元の委員長はいるのかな。このままだと、またゼロからの繰り返しだよ。セナ王女だって、せっかくシャム軍医と交際したばかりなのに」
えっと、カナエ先輩は疑心暗鬼にアルフォンス王子とヨリを戻したけど、セナ王女はカラルリ先輩に見切りをつけシャム軍医と交際したんだっけ。
「まあ、僕はその昨日とやらを知らないから何とも言えないけど、『神山くらふ』もシャム軍医もいると思う。でも、現段階ではセナ王女とカラルリ先輩は仲良さそうに見えるけどな」
まるで両想いかのような。あれは確実に惹かれ合っている。けれど、2019年のようにセナ王女が妊娠してルリコさんが中絶薬を盛って流産したのなら、そうならないようにする必要があるかもしれない。セレナール先輩に盛られたトケイ草も。
みんな知らないはずなのに、2019年と2020年にナミネとラハルさんが演じた飛べない翼と忘れられた翼は、古い作品として存在しているとか。いったい、この世界はどうなってるんだ。
「出逢うべき人とは出逢うものだと僕は思います。今は、この世界ではまだ会っていませんが、いずれまた昨日のようになれると信じたいです」
そうだよな。知らない人同士がそこまで絆が深まっていたのなら、またそうなるべきだ。今度は誰も傷つかないように。
お風呂上がり、ナノハナ食堂のご飯を食べた後は、第4居間でテレビを見て、ナミネの部屋で寝ることになった。
「やっぱり、何だか慣れないな。当たり前が当たり前じゃないって」
すぐには慣れないだろう。たった1日で変わった環境に対応出来るまでに時間がかかるのが人間というものだ。
「例え僕みたいに昨日を何も覚えていない僕や、あちら側のメンバーも、どこかでぎこちなさ感じてるんじゃないか?」
それにしても、ナミネの言うように、せっかくシャム軍医と一緒になれたのに、またカラルリ先輩に逆戻りとは運命も残酷だな。
「そうかもしれないけど。浴衣着て祭り行ってたのに。月城総合病院でキクスケさんにいきなり2024年に飛ばされて、また中学1年生に戻ってて、ついていけないよ」
しばらくは、ナミネは悩み続けるだろう。ヨルクお兄様との関係もそうだけど、周りの関係の変化にショックを受けている可能性もある。
「僕もついていけないけど?」
落ち武者さんは絶対に対応している。落ち武者さんの場合は、こういうケースを何度も経験してきた気がする。
「うーん……。ねえ、ラルクはセレナールさんのこと好きなの?」
今更どうしてそんなこと聞くのだろう。
「好きに決まってるじゃないか。好きすぎてどうにかなりそうなくらいだ」
早くセレナール先輩の心を得たい。セレナール先輩から愛されたい。こんなにどうしようもないくらい人を好きになったのはセレナール先輩がはじめてだ。
「アンタも気を付けろよ? 姉さんと別れた頃には他の女に惚れてたんだからね?」
えっ、僕がセレナール先輩以外の人を好きに? とてもじゃないけど信じられない。僕はセレナール先輩から離れるつもりはないし、気持ちが消えるはずもない。本当に2019年の僕はセレナール先輩を冷たくあしらっていたのだろうか。
「そんなはずありません。僕はセレナール先輩を手放したりはしません」
1日も早く交際したい。あちら側のグループに入りたい。
「ラルクさ、早い段階でセレナールさんのこと冷めてたんだよね。森の湖行く時なんかセレナールさんのこと助けようともしてなかったし、挙句には森の湖のセレナールさん好きになっちゃうし」
もう全然ついていけない。例え、それが事実だったとして、少なくとも2024年の僕はそうならない自信がある。最初は一目惚れだったけど、セレナール先生と関わるうちに守りたいと思うようになった。その想いは現世でも変わらない。
「ナミネ、考えすぎだ。僕はセレナール先輩を愛し切る」
今だって他の男に取られないか不安でたまらない。
「ラルクって、すぐ周り見えなくなるよね。今はそうでも時は人を変えると思うし、別れ際の恋人って残酷だよ」
セナ王女とカラルリ先輩のことを言っているのだろうか? あれは、カラルリ先輩が良くない気がする。聞いた話だけだから実際分からないけど。
一通り話した後、僕らは眠りに着いた。
そして、使用人のところにヨルクお兄様が紛れ込んでいることに僕たちは全く気付いていなかったのである。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
あとがき。
恋は盲目……。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
現在、小説に関する模倣(程度による)の一切を禁じております。
詳しくはこちらを参照→ 禁止事項
無断転載もご遠慮ください。
純愛偏差値 未来編 一人称版 124話
《ナミネ》
いつもみんなでお昼ご飯を食べる広場。
そっか、制服、中等部は赤に変わったんだっけ。私の髪、腰まである。そして二つ括り。
今は2019年の4月だろうか。みんな私のこと覚えているのだろうか。私はカバンから携帯を取り出そうとしたが見当たらない。その変わり、見たことのない物が入っていた。パソコンでもテレビでもなくって大きさは携帯くらいだけど、これが何なのか私には分からない。
向こうを見ると、セナ王女、アルフォンス王子、カラルリさん、カナエさん、セレナールさん、ユメさんがいる。初期メンバーだ。加わりたいけど、この時期に私はいない。
やっぱり2019年の4月頃だ。
あ、ラルク!
「ラルク! とんでもないことになったよね」
ラルクなら覚えているはず。
「とんでもないこと? ナミネ、制服似合ってるな」
え……。ラルクが覚えていない?
私は一人ぼっちになった気持ちになっていた。
「やっぱりここにいた。覚えてるのは強気なナミネだけ?
一応言っとくけど、今2019年じゃないから」
どういうこと? もっと過去に戻ったということだろうか。
「あ、もう少し過去ですか?」
どこまで遡ったのだろう。そもそも、そこまで遡る必要あったのだろうか。
「ナミネ、何言ってんだよ。今は2024年だろ」
え……えええええ! 2024年!? 戻るどころか進んでいるじゃない!
「つまり、昨日の継続と言うより、微妙に時代違ってんだよね。だから、前回と同じ展開になるとは限らないからね?
それと、今の携帯はこれ。フェアリーフォンて言うんだ。操作は携帯と変わらないから」
こ、これが携帯!? フェアリーフォンて何? こんなの画面しかないじゃない。とりあえず中身見てみたけど、写真も個人日記もフェアリー日記も消えている。また、ゼロからか。
「そうですか……」
何だか気持ちがついていかない。ヨルクさんがいないってことは、私とヨルクさんが婚約していたこともなかったことになってしまったんだ。私は切なさをギュッと堪えた。
「データは適当なタイミングで復元しとくから」
と言われてもデータだけ戻っても人の心が戻らないのでは、まるで、この世界には私と落ち武者さんしかいないみたいだ。
「分かりました……。あのね、ラルク……」
ラルクには分かって欲しくて、私は2019年からの一連の流れをラルクに話した。信じてもらえるだろうか。
「なるほどね。そういうことだったのか。だとしたら、今は向こう側には近付かない方がいいな」
良かった。ラルクは分かってくれた。けれど、昨日の次の日が4年後だなんて誰が予測出来ただろう。というか、どうして落ち武者さんここにいるの?
「あの、落ち武者さん、どうしてここにいるんですか? それに私、頭が混乱して、とても不安なんです。セナ王女がまたカラルリさんと交際すれば、私たち何のために氷河期村に言ったか分からないですし、今の時点では、みんな白梅の状態ですし。
やっぱり、ミドリお姉様とズルエヌさんは死んでいるのでしょうか?」
もう頭がグチャグチャだ。
昨日までいたメンバーが今では他人。ナルホお兄様もナヤセス殿もいないし、心が空っぽになったみたいだ。
「アンタが心配だから戻ってきた。
出会うべき人にはまた出会える。ミドリと得体の知れないズルエヌは生きてる。心配すんな。僕らここからはじめるんだ。後、顔だけヨルクのことは慎重にいけよ。いきなり婚約者でしたとか言ったら向こうも警戒するからね?」
ミドリお姉様とズルエヌさん生きてるんだ! てことは、さっき落ち武者さんが言ったように、昨日と今とでは時代が全く違うんだ。
「分かりました。ヨルクさんには何も言いません」
言いたいけど言えない。元の関係を思い出してもらいたいけど今は無理だ。
「ナミネ、今回も計画通りいくぞ」
そうだった。2019年の私はラルクのことが好きでラルクとセレナールさんが上手くいくように協力してたんだ。
「分かったよ、ラルク」
昨日の今日だから、流石にもうラルクに恋愛感情はない。私が好きなのはヨルクさんだ。けれど、髪はしばらく切れない。状況を合わせないと。
「とりあえず、僕らはしばらく向こうのメンバーの近くにいるからな」
安牌策というわけか。近くに入れば話し声も聞こえるし状況を知ることも出来る。
「カラルリ、今日キクリ家行っていい?」
早速聞こえて来た。この頃のセレナールさんはカラルリさんのこと好きだったね。もう昔のことのように思えてくる。
「良いけど、セナさんも来なよ!」
今回は両想いになるのだろうか。
「ごめんなさい、私はやめておくわ」
セナ王女にその気はなしと。って決め付けて良いのだろうか。カラルリさんのほうは、完全にセナ王女に惚れている。
「今度の休みは博物館ね!」
そういえば、委員長が『神山くらふ』でないのなら、ユメさんとアルフォンス王子は交際中!?
「じゃ、僕らも休みは博物館ってことで。姉さんのことは助けるなよ、ラルク」
助けてしまえば歴史か未来かが変わってしまう。うーん、ややこしい。
「はい、分かっています。あくまで状況確認のために行きます」
状況確認ね。ずっとセレナールさんのこと見てたいだけじゃん。私の時は少しも振り向いてくれなかったのに。気持ちさえ知ってもらえなかったのに。
その時、ヨルクさんがクラスメイトのココリさんと歩いて来た。マドンナさんじゃなかったことに、ほっとしている私って確信犯。私は耐えきれなくなりヨルクさんに駆け寄った。
「ヨルクさん、あの今日クレナイ家行ってもいいですか? また昔みたいに一緒にお風呂入りませんか?」
しまった……。私のこと覚えているかも分からないのに先走ってしまった。
「アンタ、さっき言ったこともう忘れてんのかよ」
やっぱりヨルクさんも昨日のこと覚えてないのかな。
「悪いが、混浴をするような関係ではないし、ナミネと一緒に過ごすつもりもない」
その瞬間、涙がポロポロ溢れてしまった。ヨルクさんも、私との想い出全て忘れてしまってるんだ。あれだけ愛し合った日々を、慈しみ合った日々を……。
「ふぅん、じゃあ僕がナノハナ家泊まって強気なナミネと混浴するけど?」
落ち武者さんは私が泣いているのを隠すように私を抱き締めた。やっぱり落ち武者さんの身体は冷たい。現世になるのだろうか。今回も小さい頃の風邪、間に合わなかったんだ。ってあれ? 昨日の今日が今だから、私たちは本当の意味では幼少期をきちんと過ごしていない。そもそも、突然飛ばされたのだから分かるはずもない。
「ねえ、落ち武者さんがどうしてナノハナ家泊まるの? 混浴って何? ナミネと付き合ってるの?」
この反応は、ヨルクさんこの世界でも私のこと好きでいてくれていると期待していいのだろうか。
「ノーコメント」
落ち武者さんらしい返し。
「ナミネは中等部に上がったばかりだ。泊まりはやめてほしい」
ヨルクさん……。今すぐ抱き締めたい。けれど、こっちのヨルクさんは昨日のヨルクさんではないかもしれない。
「アンタが強気なナミネの誘い断ったんだろうがよ! だったら、こっちは何してもアンタに関係ないと思うけど?」
落ち武者さんは相変わらずだ。現に、前はみんなでお風呂に入っていた。それも今となっては昔か。
「そういう関係ではないと言っただけだ。ナミネのことは妹のような存在だ。だから、どこの誰か分からない男に渡すわけにはいかない」
誰も落ち武者さんと交際するなんて言ってないのに。
「あの、私やっぱりラルクと落ち武者さんとナノハナ家で過ごします。それに今度の休みも三人で博物館に行きます」
楽しめるか分からないけど、ミネルナさんがあのような事態になった以上、私はこの世界でゼロから生きていかなければならない。
「ヨルク、知り合い? 早く食べないと休み時間終わるよ」
今はココリさんと仲良くしているのだろうか。
「ごめん、ココリ先に食べてて。
ラルクも小学生の頃とは違うんだからナミネと恋人みたいなことしないで」
何だか束縛彼氏に見えてくる。なのに、恋人でないことが胸を痛ませる。
「顔だけヨルクのことは放っておいて食べようぜ」
落ち武者さんは草むらに座ってお弁当を広げた。
その後もヨルクさんは私たちに色々と言葉を並べていた。ヨルクさん特有の屁理屈を。
2019年は、ラルクのこと好きだったからラルクを手伝うことは、かなり胸が傷んでいた。それでもラルクのためにと私なりに頑張った。けれど、ラルクとセレナールさんの距離が近くなるたび、私の心は壊れていった。
けれど、今は違う形で悩んでいる。ヨルクさんは、いつ私のことを思い出してくれるのだろう。
放課後、理科室の前を通るとセレナールさんの声が聞こえてきて私は立ち止まった。そして、理科室の扉を少し開けて中の様子を伺った。
セレナールさんとエミリさんが床に体育座りをしている。
「カラルリ……セナさんに揺れてる……」
揺れているというより完全に心を持っていかれているような。
「それでも私はカラルリが好きだし気持ちは伝えるつもり」
そういえば、エミリさんも最初はカラルリさんに片想いしていたっけ。皇太子様と交際していたイメージが強すぎてすっかり忘れていた。
「エミリは白黒ハッキリしてるわね。私はこんなに近くにいるのに通じ合えなくて辛い気持ちが先立ってどうしたらいいのか分からなくなってるわ」
セレナールさんは、周りに左右されがちだ。誰だってそうだけど、私はエミリさんみたいに割り切れないことほど、折り合い付けるべきだと思う。
「気持ち伝えないままだと止まったままだから。気持ちを置き去りにして前に進めないし、カラルリへのこの気持ちは偽れないから」
今思うとエミリさんはカラクリ家の長女としてしっかりしている。遠い昔は、二股かけて手遅れになってしまったけど。最後の最後には皇太子様と幸せになった。
「アンタさ、何で盗み聞きしてんのさ」
わっ、落ち武者さん! ラルクも!
「あ、いや……」
何となく気になってしまった。けれど、ラルクは扉にしがみついて中の様子をガッツリ見ている。
そんなにもセレナールさんのこと好きなんだ。
「そうよね。セナさんの存在は気になるけど、私もカラルリが好き。好きでどうしようもない。どうしてセナさんなのだろう。私とカラルリは幼稚園に入る前から、ずっと一緒にいたのに」
その気持ちは何となく分かる。私もラルクとは赤ちゃんの時からナノハナ家の部屋で寝かされていた。0歳の時からずっとラルク一筋だったのに、ラルクは前世で愛し合っていたセレナールさんのことを24時間考えていた。セレナールさんは、あの時の私のような気持ちなのかもしれない。
「セナ王女を気にしちゃダメ! カラルリを振り向かせるくらいの思いでいないと本当に取られるわよ!」
エミリさんは本当に気が強い。人の心を自分のものに出来るならどれだけ楽か。
「じゃ、ナノハナ家行く」
落ち武者さんが言うものの、ラルクは最後まで聞く勢いだ。
「ラルク、行くよ!」
声をかけても気付かない。そんなに好きなら今すぐ告白してしまえばいいのに。
「どうしたらいいのかしら。セナさんが転校してくるなら、もっと早くに告白していれば良かった」
人生というものは、気付いた頃には遅いということが多い。それに、ある程度の運命は決まっていて、それを変えるには相当の気力も体力も消耗するものだ。
「おい、ラルク行くぞ」
落ち武者さんはラルクのカバンを引っ張った。
「あ、はい」
やっと気付いたか。誰も何も言わなければ最後まで聞いていただろう。恋は盲目と言うが、本当に周りが見えなくなるものなのだな。
ナノハナ家に着いたら、どっと疲れた。
私が部屋に行こうとしたら、使用人に客が来ていると言われ、第4居間に向かった。
「あー、疲れた」
私はカバンを下ろし畳に寝転がった。
「アンタ、客来たって言ってんだろ?」
あ、そうだった。昨日の次の日がこれで頭も回らないし気持ちもついていけなくて、ただただ疲れている。
「ナミネさん、昨日ぶりですね」
え、ズームさん!? 昨日を覚えているの!?
私は、予測もしていなかった展開にただただ驚いていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
あとがき。
前回でリセットされてしまい、最初に戻ってしまったので、わりと書きやすかったです。
でもまさか2020年から2024年に飛ぶだなんて!
しかもガラケーからスマホに!?
ここからどう繋がってゆくのでしょう。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
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《ナミネ》
いつもみんなでお昼ご飯を食べる広場。
そっか、制服、中等部は赤に変わったんだっけ。私の髪、腰まである。そして二つ括り。
今は2019年の4月だろうか。みんな私のこと覚えているのだろうか。私はカバンから携帯を取り出そうとしたが見当たらない。その変わり、見たことのない物が入っていた。パソコンでもテレビでもなくって大きさは携帯くらいだけど、これが何なのか私には分からない。
向こうを見ると、セナ王女、アルフォンス王子、カラルリさん、カナエさん、セレナールさん、ユメさんがいる。初期メンバーだ。加わりたいけど、この時期に私はいない。
やっぱり2019年の4月頃だ。
あ、ラルク!
「ラルク! とんでもないことになったよね」
ラルクなら覚えているはず。
「とんでもないこと? ナミネ、制服似合ってるな」
え……。ラルクが覚えていない?
私は一人ぼっちになった気持ちになっていた。
「やっぱりここにいた。覚えてるのは強気なナミネだけ?
一応言っとくけど、今2019年じゃないから」
どういうこと? もっと過去に戻ったということだろうか。
「あ、もう少し過去ですか?」
どこまで遡ったのだろう。そもそも、そこまで遡る必要あったのだろうか。
「ナミネ、何言ってんだよ。今は2024年だろ」
え……えええええ! 2024年!? 戻るどころか進んでいるじゃない!
「つまり、昨日の継続と言うより、微妙に時代違ってんだよね。だから、前回と同じ展開になるとは限らないからね?
それと、今の携帯はこれ。フェアリーフォンて言うんだ。操作は携帯と変わらないから」
こ、これが携帯!? フェアリーフォンて何? こんなの画面しかないじゃない。とりあえず中身見てみたけど、写真も個人日記もフェアリー日記も消えている。また、ゼロからか。
「そうですか……」
何だか気持ちがついていかない。ヨルクさんがいないってことは、私とヨルクさんが婚約していたこともなかったことになってしまったんだ。私は切なさをギュッと堪えた。
「データは適当なタイミングで復元しとくから」
と言われてもデータだけ戻っても人の心が戻らないのでは、まるで、この世界には私と落ち武者さんしかいないみたいだ。
「分かりました……。あのね、ラルク……」
ラルクには分かって欲しくて、私は2019年からの一連の流れをラルクに話した。信じてもらえるだろうか。
「なるほどね。そういうことだったのか。だとしたら、今は向こう側には近付かない方がいいな」
良かった。ラルクは分かってくれた。けれど、昨日の次の日が4年後だなんて誰が予測出来ただろう。というか、どうして落ち武者さんここにいるの?
「あの、落ち武者さん、どうしてここにいるんですか? それに私、頭が混乱して、とても不安なんです。セナ王女がまたカラルリさんと交際すれば、私たち何のために氷河期村に言ったか分からないですし、今の時点では、みんな白梅の状態ですし。
やっぱり、ミドリお姉様とズルエヌさんは死んでいるのでしょうか?」
もう頭がグチャグチャだ。
昨日までいたメンバーが今では他人。ナルホお兄様もナヤセス殿もいないし、心が空っぽになったみたいだ。
「アンタが心配だから戻ってきた。
出会うべき人にはまた出会える。ミドリと得体の知れないズルエヌは生きてる。心配すんな。僕らここからはじめるんだ。後、顔だけヨルクのことは慎重にいけよ。いきなり婚約者でしたとか言ったら向こうも警戒するからね?」
ミドリお姉様とズルエヌさん生きてるんだ! てことは、さっき落ち武者さんが言ったように、昨日と今とでは時代が全く違うんだ。
「分かりました。ヨルクさんには何も言いません」
言いたいけど言えない。元の関係を思い出してもらいたいけど今は無理だ。
「ナミネ、今回も計画通りいくぞ」
そうだった。2019年の私はラルクのことが好きでラルクとセレナールさんが上手くいくように協力してたんだ。
「分かったよ、ラルク」
昨日の今日だから、流石にもうラルクに恋愛感情はない。私が好きなのはヨルクさんだ。けれど、髪はしばらく切れない。状況を合わせないと。
「とりあえず、僕らはしばらく向こうのメンバーの近くにいるからな」
安牌策というわけか。近くに入れば話し声も聞こえるし状況を知ることも出来る。
「カラルリ、今日キクリ家行っていい?」
早速聞こえて来た。この頃のセレナールさんはカラルリさんのこと好きだったね。もう昔のことのように思えてくる。
「良いけど、セナさんも来なよ!」
今回は両想いになるのだろうか。
「ごめんなさい、私はやめておくわ」
セナ王女にその気はなしと。って決め付けて良いのだろうか。カラルリさんのほうは、完全にセナ王女に惚れている。
「今度の休みは博物館ね!」
そういえば、委員長が『神山くらふ』でないのなら、ユメさんとアルフォンス王子は交際中!?
「じゃ、僕らも休みは博物館ってことで。姉さんのことは助けるなよ、ラルク」
助けてしまえば歴史か未来かが変わってしまう。うーん、ややこしい。
「はい、分かっています。あくまで状況確認のために行きます」
状況確認ね。ずっとセレナールさんのこと見てたいだけじゃん。私の時は少しも振り向いてくれなかったのに。気持ちさえ知ってもらえなかったのに。
その時、ヨルクさんがクラスメイトのココリさんと歩いて来た。マドンナさんじゃなかったことに、ほっとしている私って確信犯。私は耐えきれなくなりヨルクさんに駆け寄った。
「ヨルクさん、あの今日クレナイ家行ってもいいですか? また昔みたいに一緒にお風呂入りませんか?」
しまった……。私のこと覚えているかも分からないのに先走ってしまった。
「アンタ、さっき言ったこともう忘れてんのかよ」
やっぱりヨルクさんも昨日のこと覚えてないのかな。
「悪いが、混浴をするような関係ではないし、ナミネと一緒に過ごすつもりもない」
その瞬間、涙がポロポロ溢れてしまった。ヨルクさんも、私との想い出全て忘れてしまってるんだ。あれだけ愛し合った日々を、慈しみ合った日々を……。
「ふぅん、じゃあ僕がナノハナ家泊まって強気なナミネと混浴するけど?」
落ち武者さんは私が泣いているのを隠すように私を抱き締めた。やっぱり落ち武者さんの身体は冷たい。現世になるのだろうか。今回も小さい頃の風邪、間に合わなかったんだ。ってあれ? 昨日の今日が今だから、私たちは本当の意味では幼少期をきちんと過ごしていない。そもそも、突然飛ばされたのだから分かるはずもない。
「ねえ、落ち武者さんがどうしてナノハナ家泊まるの? 混浴って何? ナミネと付き合ってるの?」
この反応は、ヨルクさんこの世界でも私のこと好きでいてくれていると期待していいのだろうか。
「ノーコメント」
落ち武者さんらしい返し。
「ナミネは中等部に上がったばかりだ。泊まりはやめてほしい」
ヨルクさん……。今すぐ抱き締めたい。けれど、こっちのヨルクさんは昨日のヨルクさんではないかもしれない。
「アンタが強気なナミネの誘い断ったんだろうがよ! だったら、こっちは何してもアンタに関係ないと思うけど?」
落ち武者さんは相変わらずだ。現に、前はみんなでお風呂に入っていた。それも今となっては昔か。
「そういう関係ではないと言っただけだ。ナミネのことは妹のような存在だ。だから、どこの誰か分からない男に渡すわけにはいかない」
誰も落ち武者さんと交際するなんて言ってないのに。
「あの、私やっぱりラルクと落ち武者さんとナノハナ家で過ごします。それに今度の休みも三人で博物館に行きます」
楽しめるか分からないけど、ミネルナさんがあのような事態になった以上、私はこの世界でゼロから生きていかなければならない。
「ヨルク、知り合い? 早く食べないと休み時間終わるよ」
今はココリさんと仲良くしているのだろうか。
「ごめん、ココリ先に食べてて。
ラルクも小学生の頃とは違うんだからナミネと恋人みたいなことしないで」
何だか束縛彼氏に見えてくる。なのに、恋人でないことが胸を痛ませる。
「顔だけヨルクのことは放っておいて食べようぜ」
落ち武者さんは草むらに座ってお弁当を広げた。
その後もヨルクさんは私たちに色々と言葉を並べていた。ヨルクさん特有の屁理屈を。
2019年は、ラルクのこと好きだったからラルクを手伝うことは、かなり胸が傷んでいた。それでもラルクのためにと私なりに頑張った。けれど、ラルクとセレナールさんの距離が近くなるたび、私の心は壊れていった。
けれど、今は違う形で悩んでいる。ヨルクさんは、いつ私のことを思い出してくれるのだろう。
放課後、理科室の前を通るとセレナールさんの声が聞こえてきて私は立ち止まった。そして、理科室の扉を少し開けて中の様子を伺った。
セレナールさんとエミリさんが床に体育座りをしている。
「カラルリ……セナさんに揺れてる……」
揺れているというより完全に心を持っていかれているような。
「それでも私はカラルリが好きだし気持ちは伝えるつもり」
そういえば、エミリさんも最初はカラルリさんに片想いしていたっけ。皇太子様と交際していたイメージが強すぎてすっかり忘れていた。
「エミリは白黒ハッキリしてるわね。私はこんなに近くにいるのに通じ合えなくて辛い気持ちが先立ってどうしたらいいのか分からなくなってるわ」
セレナールさんは、周りに左右されがちだ。誰だってそうだけど、私はエミリさんみたいに割り切れないことほど、折り合い付けるべきだと思う。
「気持ち伝えないままだと止まったままだから。気持ちを置き去りにして前に進めないし、カラルリへのこの気持ちは偽れないから」
今思うとエミリさんはカラクリ家の長女としてしっかりしている。遠い昔は、二股かけて手遅れになってしまったけど。最後の最後には皇太子様と幸せになった。
「アンタさ、何で盗み聞きしてんのさ」
わっ、落ち武者さん! ラルクも!
「あ、いや……」
何となく気になってしまった。けれど、ラルクは扉にしがみついて中の様子をガッツリ見ている。
そんなにもセレナールさんのこと好きなんだ。
「そうよね。セナさんの存在は気になるけど、私もカラルリが好き。好きでどうしようもない。どうしてセナさんなのだろう。私とカラルリは幼稚園に入る前から、ずっと一緒にいたのに」
その気持ちは何となく分かる。私もラルクとは赤ちゃんの時からナノハナ家の部屋で寝かされていた。0歳の時からずっとラルク一筋だったのに、ラルクは前世で愛し合っていたセレナールさんのことを24時間考えていた。セレナールさんは、あの時の私のような気持ちなのかもしれない。
「セナ王女を気にしちゃダメ! カラルリを振り向かせるくらいの思いでいないと本当に取られるわよ!」
エミリさんは本当に気が強い。人の心を自分のものに出来るならどれだけ楽か。
「じゃ、ナノハナ家行く」
落ち武者さんが言うものの、ラルクは最後まで聞く勢いだ。
「ラルク、行くよ!」
声をかけても気付かない。そんなに好きなら今すぐ告白してしまえばいいのに。
「どうしたらいいのかしら。セナさんが転校してくるなら、もっと早くに告白していれば良かった」
人生というものは、気付いた頃には遅いということが多い。それに、ある程度の運命は決まっていて、それを変えるには相当の気力も体力も消耗するものだ。
「おい、ラルク行くぞ」
落ち武者さんはラルクのカバンを引っ張った。
「あ、はい」
やっと気付いたか。誰も何も言わなければ最後まで聞いていただろう。恋は盲目と言うが、本当に周りが見えなくなるものなのだな。
ナノハナ家に着いたら、どっと疲れた。
私が部屋に行こうとしたら、使用人に客が来ていると言われ、第4居間に向かった。
「あー、疲れた」
私はカバンを下ろし畳に寝転がった。
「アンタ、客来たって言ってんだろ?」
あ、そうだった。昨日の次の日がこれで頭も回らないし気持ちもついていけなくて、ただただ疲れている。
「ナミネさん、昨日ぶりですね」
え、ズームさん!? 昨日を覚えているの!?
私は、予測もしていなかった展開にただただ驚いていた。
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あとがき。
前回でリセットされてしまい、最初に戻ってしまったので、わりと書きやすかったです。
でもまさか2020年から2024年に飛ぶだなんて!
しかもガラケーからスマホに!?
ここからどう繋がってゆくのでしょう。
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この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
現在、小説に関する模倣(程度による)の一切を禁じております。
詳しくはこちらを参照→ 禁止事項
無断転載もご遠慮ください。
純愛偏差値 未来編 一人称版 123話
《ナミネ》
私たちは紅葉神社の紫陽花祭りに来た。正直、ミネスさんから叩かれたことでカッとなってミネスさんに怪我をさせてしまったことに対して気持ちが不安定になっている。それでも、こんなふうにみんなで来ることなんて子供時代以来だから来たかった。
私がラルクに近付こうとした時、ミネスさんが近付いてきた。
「ナミネ、ごめん。私が悪かった」
いつまでも無視し続けるわけにもいかない。怪我させたの私だし。
「私も怪我させてしまい、すみませんでした」
これで胸のつっかえはなくなるのだろうか。
「もう大丈夫」
ミネスさんはカンザシさんの元へ走って行った。
あれ、ナノハお姉様も来てる。ズルエヌさんが来てるからだろうか。少し珍しい気がする。腕を組んでる二人を見るのはどことなくぎこちない。ナノハお姉様は恋愛はしない人だと思っていたから。
「ナミネ、褌一枚は無理だけど下に履いてる。機嫌直してほしい」
えっ、どうして泣いてるの?とはいえ、こちらも無視し続けるわけにもいない。そもそも泣くほどのことなのだろうか。
「あ、もういいです。ヨルクさん泣かないでください」
私はヨルクさんの使用済みパンツを袖から出しヨルクさんの涙を拭いた。
「ナミネのことは私が守る。誰にもナミネを傷付けさせない」
どうして突然そんなこと言うのだろう。今の私は強いし、ずっと強かった。一人の時もそれなりにやって来た。殆どカンザシさんに壊された遠い過去だったけど。それでも私なりに必死に生きてきたのだ。
「本当にもう気にしてません。せっかくの祭りですし紫陽花まんじゅうでも買いましょう」
私がヨルクさんの手を握った時、ラルクがこちらへ向かって来た。
「ナミネ、紫陽花まんじゅう完売前だったから買っておいた」
やっぱり人気あるよね。ラルクは気が利く。そう、いつもいつの時代もそうだった。
「ありがとうラルク」
私はラルクから受け取るなり半分に割って片方をヨルクさんに渡した。あれ……遠い昔、同じことしてた。でも、妖精村でも天使村でもない。もっと古い。いつの記憶だろう。思い出せない。けれど、大切なことを忘れている気がする。
「ヨルクさん美味しいですか?」
ここの屋台はどの食べ物も美味しい。祭りじゃなくても、たまに何かの屋台が出ていたりする。私はヨルクさんのパンツを再び袖に戻した。
「うん……」
褌のことだけで、こんなに泣くだろうか。目も赤いし何かあったのだろうか。
「あ、ヨルクさん、お守り買ってきます」
その時、ヨルクさんは私の手を掴んだ。
「私が買う」
ヨルクさん……。私はヨルクさんと手を繋いで社務所に行った。
お祭りだけど、みんな屋台の方に行って社務所はそこまで混んでいない。
あれ……あれは……。
「ヨルクさん、紅葉花です!あの時私たちがお揃いで持っていた紅葉花の番のお祭りです!」
どうして今売っているのだろう。ずっと、何世紀もなかったのに。あの時だけのものだったのに。
「このお守り番でください」
ヨルクさんはお守りを二つ手に取った。
「かしこまりました。二千五百円になります」
た、高い。昔は五百円ほどだったはずなのに。
「はい、ナミネ」
私のは黄色。ヨルクさんのはオレンジ色。
「ありがとうございます、ヨルクさん」
私は黄色のお守りを手に取った。そして、袖に入れてヨルクさんのパンツに挟んだ。
「ナミネ、好きなの買うからいっぱい食べて。夜食も買うね」
どうして急に人が変わったように優しくするのだろう。いつものヨルクさんじゃないと何だか逆に奇妙だ。
「おい、向こうでナクリたちが揉めてるぞ!」
ナクリお姉様が着てるの?もう退院したのだろうか。私はヨルクさんを置いて走り出した。
人をかき分けて進んだら、フェアリー焼きの屋台の傍でナクリお姉様とカナコさん、セリルさんがいた。
「カナコ、ここで脱いで」
ナクリお姉様……。憎いけど完全に憎みきれない。
「ナクリ、悪かったと思ってる。一生かけて償うわ」
ナクリお姉様はカナコさんに殴りかかろうとしたがカナコさんはさらりと避けた。
ミドリお姉様はナクリお姉様を憎んでいる。ナクリお姉様はミドリお姉様と同じ目にあってカナコさんを恨んだ。他者には入り込めない堂々巡り。
ナクリお姉様が決めるしかない。道を切り開いていくしかない。でも、妹として心配なのも事実なわけで。私はどうしたらいいのだろう。どうにかしたいのに言葉が出てこない。
「許さない。カナコ、いつかどん底に落ちるわよ」
ナクリお姉様には、もう何の力もない。
かわいそうとは思えない。でも、こんな人生あんまりだ。自業自得なのに、ただ夢を叶えたかっただけなのに、恨みにとらわれすぎたナクリお姉様。
「もう既に落ちてるし何度も落ちてる。それでも歩いていくのが人生よ」
カナコさんは強い。セリルさんと上手くいかなくてもカナコさんはどうとでもなる。でもナクリお姉様は違う。
人は平等ではない。
カンザシさんのように生まれた時点で運命が決まっている人もいれば、ナクリお姉様のように欲を出しすぎてダメになってしまう人生もある。
皆が皆、強いわけではない。世渡り上手なわけではない。
自分の道を切り開けない人間も確かに存在する。
「いつも綺麗事だものね。でも世の中綺麗事かしら」
中には綺麗事で上にあがってゆける人間もいる。綺麗事でなくても、その才能があれば綺麗事で乗り切れる人だっている。
「あの、私は一度決めたことを覆して、またそれを変更する。そのやり方が気に入らないです。カナコさんが生贄になったとしても、これまで通りの暮らししてゆけますか?」
思わず口にしてしまった。ナノハナ家もキクリ家も跡取りはどうとでもなる。カナコさんが緑風華してもだ。
「私だったら生きてゆけないわね。でも、そういう状況を作り出した人間にも問題あるんじゃないかしら」
さっき償うって言ってなかった?私の聞き違い?いくら強いからって人を見下す態度は気に入らない。私はこっそりテナロスさんにカナコさんの不利なものを受け取った。
「じゃあ、これ皆さんにも見てもらいましょうか?」
私はテナロスさんから受け取った古い写真をカナコさんに見せた。てか、カナコさんって本当に浮気してたんだ。なんかイメージつかないというか、カナコさんって、もっとビシッとした人間かと思っていた。
「返しなさい」
食い付いた。これは流石にカナコさんの名誉に関わる。プライドの高いカナコさんにとってかなり不利になるだろう。
「私、カナコさんのような上から目線の人嫌いなんですよね。ここで私に何かすれば無線でみんなに伝わりますよ」
祭りの紅葉神社は混むからズルエヌさんが無線イヤホンを持つようみんなに言い聞かせていた。
「あら、私に勝てるとでも?」
カナコさんは扇子を取り出した。速い。奪われてしまう。
「助けてください!」
ダメだ。カナコさんには敵わない。またテナロスさんに頼むしかない。その時、一瞬歪んだ。全てが歪んだ。
「カナコ、強さだけが全てじゃない。写真全部バックアップ取った」
落ち武者さん!時間を巻き戻したのか。
「セルファ!やめなさい!」
セリルさんは怒り口調で言った。
「やめて……お願い……」
カナコさんは急に弱気になった。時間を操るって一歩間違えたら怖い。
「カナコ、バチが当たったのよ。いい気味だわ」
ナクリお姉様は顔色悪いながらに強がった。
「正直カナコがナクリにしたこと理解出来ない。私やミドリのこと軽く考えてたんだなあて」
ラァナさん……。ラァナさんの事件も酷いものだった。ラァナさんは生きたけどトラウマは今でも残っている。
「カナコもカナコなりの思いがあってのことよ。ここでカナコを孤立させても何も解決しないと思う」
レイカさんも戻ってきた。確かにそうかもしれないけど、今のカナコさんは、どこか遠く感じる。昔のカナコさんなら、もっと正義感強かったのに。
「私、ここにいるの辛い……。ミドリと回る。カナコたちは好きにして」
ラァナさんはカナコさんが完全なる敵かのようにあしらった。
「待ってラァナ。もし何かあったら……」
レイカさんはラァナさんの手首を掴んだ。
「レイカだってカナコの味方じゃない。こんなの被害者はやり切れないよ」
そう、やり切れない。ラァナさんもミドリお姉様も一生残り続けるのだ。
「あの、カナコさんて……!」
言いかけてズルエヌさんが遮った。
「ナミネはここから離れようか」
どうして?姉が二人もここにいるのに私は関係ないみたいに言われると何だかモヤモヤする。
「あ、でも、ナクリお姉様顔色悪いですし」
今にも倒れそうだ。
「ズーム、ナミネをここから連れてって」
え、どうして……。話し合いはまだ終わっていない。ナクリお姉様は退院したばかりなのに。
って、こんな湖あったっけ?
「あの、ここは……」
桜が水面に揺れている。
「遠い昔、ナミネさんと来た場所です」
一時的に時間を巻き戻しているのだろうか。
「桜が緩てます。まるで滲んだ油絵みたいです」
そう、湖に揺れている桜が……桜が……。
「あの時もナミネさんは同じこと言ってました」
私とズームさん、ここに来たことあるんだ。
「すみません、全く覚えてません」
ズームさんとは桜木町のカンザシさんのコンサートで出会ったはずだが、紅葉町にも二人で来ていたのだろうか。
「そうですよね。相当昔ですから……」
ズームさんは俯いた。
「アンタら何やってんだよ」
え、落ち武者さん!?どうやって、この別の時空に入ってきたの!?
「あ、ズルエヌさんが私は関わらない方が良いと……」
どの道、私が介入しても春風神社でのことはどうにもならなかった。もう、あとの祭りなのだ。けれど、私はずっとモヤモヤしている。
「今から言うことよく聞け!隠してもいずれは知ることだろうから」
私に関わることなのだろうか。落ち武者さんの顔が悲しげになっている。
「あ、はい」
私は落ち武者さんを見た。
「時代はいつかは分からない。けど、ミドリの事件、本当はアンタが背負うはずだった。ずっとアンタが事件に巻き込まれてたんだ。そして、顔だけヨルクとの縁談はアンタが破談にしてアンタ赤線町で暮らした」
え、どういうこと!?ミドリお姉様の女子高生黒鈴酷華事件はナクリお姉様がミドリお姉様を陥れ……。ダメだ、話についていけない。
「あの……」
頭が真っ白だ。
「いつの村か分からない時代に、カンザシはナミネさんに何度もアタックし続けるもののナミネさんはヨルクさんと別れず、カンザシは仲間を連れナミネさんに黒鈴酷華をして無理矢理ヨルクさんとの関係を壊しました」
そんな……!そんな……。分からない。何がどうなっているのか全く分からない。私は何人いようと無抵抗にはならない。
「何者かがアンタの力量奪ったんだ。アンタは歳頃になるたびカンザシに人生を壊され、見かねたナノハはアンタからミドリにすり替えた。アンタが背負うこと全てミドリが背負うようになったんだ」
そう……だったんだ。何億年、何兆年前だったとしても許せない。私の幸せを壊したカンザシさんが。
もしかして、ヨルクさんが泣いていたのはこのことだったのだろうか。ヨルクさんは私に同情して……!
「そうですか。私は血筋とはいえ、カンザシさんを絶対に許しません!でも、一応聞いておきます。その時もカンザシさんの暮らしは辛いものだったのですか?」
例えそうだったとしても私は許さない。何がなんでも。
「はい、賤民の家庭に生まれましたが両親早くに亡くなり、似たような子供たちが集まるホームレス街と呼ばれるところで過ごしていました」
ホームレス街……そんなところあったんだ。けれど、どれだけ生まれが悪くても暮らしが辛くても人の人生を壊す権利など誰にもない。
私は溢れる涙をヨルクさんのパンツで拭った。
「アンタ、大事なの落ちてるぞ。ここに落としたら一生取りに戻れないからな!」
落ち武者さんは、ヨルクさんが番で買ってくれた紅葉花のお守りを拾った。
「あ、すみません」
危ない。悲惨すぎる話で悲しみと憎しみが混じり合い自分を見失いかけていた。
その時、ズームさんが私の手を握った。
「ナミネさん。僕はあなたに出会えて良かったと思っています。どれだけカンザシに関係を壊されても本当の愛を知ることが出来たのはナミネさんだけです。どうか無理だけはしないでください。幸せになってください」
ズームさん……。
今はカンザシさんを恨んでいる場合ではないのかもしれない。昔の永久(とこしえ)を、こんなふうに温めることになるとは思っていなかった。ズームさんのこと、今でも愛している。あの時と形は違えど確かに愛しているのだ。
けれど、やっぱり割り切れない。私は色んな仲間に支えられて、イケメンの彼氏もいて幸せなのに。幸せなのに、どこか虚ろになる。前に向くことも大事だけれど、過去に遡り根っこの部分を知る必要がある気がする。そして折り合いを付けたい。
「はい、皆さんと幸せになります。カンザシさんのことは許せないですが、ズームさんとの想い出忘れてません。私にとってもズームさんは大切な人です。それは、ずっと変わりません」
あれ、水面に映る桜が消えてゆく……。私、現代に戻るんだ。
「ナミネ、ここにいたの!? 問題起きた!! 今、ミネルナさんが救急車で月城総合病院に運ばれて行ったよ!」
え、いったい何があったの!? この僅かなひと時に。
「あの、いったい何があったのでしょうか?」
この世は問題ばかりだ。
「お姉ちゃんならカンザシに白梅咲かされたよー! もう彼氏とはやっていけないって嘆いてると思うよー!」
実の姉が黒鈴酷華されても何の心配もしないのか。それどころか、まるで嘲笑っているかのような……。とにかく月城総合病院に行かないと!
「月城総合病院に行きます!」
私はナノハナ家の運転手に連絡をした。
「じゃ、僕も行く」
落ち武者さんは、行くと。みんな行くだろうか。
「ごめんなさい。私はクラフと家に帰るわ」
そっか、ユメさんはサユリさんから手回しされたことがある。この世界ではないけれど、辛いものだったと思う。
「分かりました。委員長、ユメさんをよろしくね」
ナノハナ家運転手とブランケット家運転手の車が同時に来たようだ。
「うん、ナミネ追い詰めないでね」
今の私には痛い言葉だ。
私たちはユメさんと委員長と別れた後、月城総合病院へ向かった。
月城総合病院へ着くとズルエヌさんが受付でミネルナさんの居場所を聞いた。
ミネルナさんは、三階の個室にいるらしい。個室というだけで毎度毎度ブランケット家の規模を感じさせられる。
三階の個室はとても広かった。
「お願い、来ないで!」
何これ、凄いアザ……。
「へえ、お姉ちゃんも隅に置けないなあー!」
ミネスさんはミネルナさんを追い詰める。
「やめて! 出てって!」
せっかく、カンザシさんを吹っ切ってロォハさんと幸せになれたはずだったのに。どうしてこんなことに……。
「みんな来たね。
ハッキリ言って、ミネルナがここに運ばれて来た時は酷い状態だったよ。第三にヒビが入ってて処置はしたけれど、子供は望めないと思う。何よりミネルナには大きなトラウマが残るだろう。来たくないかもしれないけど、週二回カウンセリング来てくれるかな?
後、カンザシはどうしてこんなことしたのか、今ここで話してもらえる?」
深刻になってきた。
「二人で話がしたいと言われたので、その気かと思いました」
たったそれだけの理由で!? 酷すぎる。私も、いつか分からない時代に同じことされたんだ。
「それにしては、暴行の跡が凄いけどどうしてかな?」
どう見たって無理矢理だ。ロァハさんとの幸せが許せなかったんだ。やっぱり、私、カンザシさんと友達は無理だ。
「ミネルナさんが転びました」
バレバレの嘘。もうミネルナさんの人生壊しただけでカンザシさんには虹色街に戻って欲しい。
「カンザシも病気だから、二人ともカウンセリングは受けに来て欲しい」
カウンセリング。そんなもので治るのだろうか。私はそうは思えない。カンザシさんの病気は明らか先天的のもの。後天的ならどうにかなったかもしれないけど、生まれてから発症してたなら、それはもうどうにもならないと思う。
「ミネルナ、大丈夫!?」
ロォハさん? 誰が連絡したのだろう。
「いや! 来ないで!!」
今のミネルナさんは話さえ出来ない状態だ。みんなもここから出ないと。
「僕がミネルナを治す! ミネルナのことは絶対に手放さない!!」
そうは言っても、これだけの深い傷を負ったら元に戻るのはほぼ無理だろう。ミネルナさんがたびたびトラウマに陥ってロォハさんが受け止められないくらいに悪化してしまう展開が見えている。
その時、ハル院長は無言でミネルナさんとカンザシさんに予約カードを渡した。
「で? ミネルナの血筋は、この状況どうでもいいわけ?」
落ち武者さんは、どうしてそんなこと聞くのだろう。いいわけないじゃない。
「僕はカンザシとは縁を切ります」
ズームさんは、相当滅入っている様子。姉想いなだけに。
「僕はミネルナにもその気はあったと思うよ」
ズルエヌさんは、どうしてそう感じるのだろう。実の妹がここまでされて悔しくないのだろうか。掛け布団の中だってどうなっていることやら。
「あの、ズルエヌさん。妹に向かって、そういう言い方ないと思います」
ズルエヌさんって、こんな人だっけ? もっと人思いだったはず。
「夜も更けてきましたね。
ミネルナさんは、完全純白でいなくてはなりません。理由は今は申し上げられませんが。よって、この穢された状況では妖精村が他の村の配下となりかねません。或いは、妖精村そのものがなかったということも。
皆さん、これまで色々ありましたが楽しいこともたくさんあったでしょう。しかしながら、ここで区切りです。皆さんにはミネルナさんを元に戻すため時空を超えてもらいます」
え、キクスケさん!? 時空を超えるってどういうこと!?
「おい、キクスケ! 俺らを過去に戻した時もそうだったけど、お前やること一方的すぎるだろ! ミネルナは俺が必ず治す!」
ハル院長……ハルミ先生のためにショウゴ先生と一度、過去に戻ったんだっけ?
「時間切れです」
その時物凄い光が私たちを包み込んだ。私は目を閉じた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
あとがき。
久々の更新ですね。
また戻っちゃう。
みんなと出会ったこと、なかったことになるのだろうか。
ここまで来て、どうしてリセット?
赤線町は……。
セナとシャムは……。
私も分からなくなってきました。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
現在、小説に関する模倣(程度による)の一切を禁じております。
詳しくはこちらを参照→ 禁止事項
無断転載もご遠慮ください。
《ナミネ》
私たちは紅葉神社の紫陽花祭りに来た。正直、ミネスさんから叩かれたことでカッとなってミネスさんに怪我をさせてしまったことに対して気持ちが不安定になっている。それでも、こんなふうにみんなで来ることなんて子供時代以来だから来たかった。
私がラルクに近付こうとした時、ミネスさんが近付いてきた。
「ナミネ、ごめん。私が悪かった」
いつまでも無視し続けるわけにもいかない。怪我させたの私だし。
「私も怪我させてしまい、すみませんでした」
これで胸のつっかえはなくなるのだろうか。
「もう大丈夫」
ミネスさんはカンザシさんの元へ走って行った。
あれ、ナノハお姉様も来てる。ズルエヌさんが来てるからだろうか。少し珍しい気がする。腕を組んでる二人を見るのはどことなくぎこちない。ナノハお姉様は恋愛はしない人だと思っていたから。
「ナミネ、褌一枚は無理だけど下に履いてる。機嫌直してほしい」
えっ、どうして泣いてるの?とはいえ、こちらも無視し続けるわけにもいない。そもそも泣くほどのことなのだろうか。
「あ、もういいです。ヨルクさん泣かないでください」
私はヨルクさんの使用済みパンツを袖から出しヨルクさんの涙を拭いた。
「ナミネのことは私が守る。誰にもナミネを傷付けさせない」
どうして突然そんなこと言うのだろう。今の私は強いし、ずっと強かった。一人の時もそれなりにやって来た。殆どカンザシさんに壊された遠い過去だったけど。それでも私なりに必死に生きてきたのだ。
「本当にもう気にしてません。せっかくの祭りですし紫陽花まんじゅうでも買いましょう」
私がヨルクさんの手を握った時、ラルクがこちらへ向かって来た。
「ナミネ、紫陽花まんじゅう完売前だったから買っておいた」
やっぱり人気あるよね。ラルクは気が利く。そう、いつもいつの時代もそうだった。
「ありがとうラルク」
私はラルクから受け取るなり半分に割って片方をヨルクさんに渡した。あれ……遠い昔、同じことしてた。でも、妖精村でも天使村でもない。もっと古い。いつの記憶だろう。思い出せない。けれど、大切なことを忘れている気がする。
「ヨルクさん美味しいですか?」
ここの屋台はどの食べ物も美味しい。祭りじゃなくても、たまに何かの屋台が出ていたりする。私はヨルクさんのパンツを再び袖に戻した。
「うん……」
褌のことだけで、こんなに泣くだろうか。目も赤いし何かあったのだろうか。
「あ、ヨルクさん、お守り買ってきます」
その時、ヨルクさんは私の手を掴んだ。
「私が買う」
ヨルクさん……。私はヨルクさんと手を繋いで社務所に行った。
お祭りだけど、みんな屋台の方に行って社務所はそこまで混んでいない。
あれ……あれは……。
「ヨルクさん、紅葉花です!あの時私たちがお揃いで持っていた紅葉花の番のお祭りです!」
どうして今売っているのだろう。ずっと、何世紀もなかったのに。あの時だけのものだったのに。
「このお守り番でください」
ヨルクさんはお守りを二つ手に取った。
「かしこまりました。二千五百円になります」
た、高い。昔は五百円ほどだったはずなのに。
「はい、ナミネ」
私のは黄色。ヨルクさんのはオレンジ色。
「ありがとうございます、ヨルクさん」
私は黄色のお守りを手に取った。そして、袖に入れてヨルクさんのパンツに挟んだ。
「ナミネ、好きなの買うからいっぱい食べて。夜食も買うね」
どうして急に人が変わったように優しくするのだろう。いつものヨルクさんじゃないと何だか逆に奇妙だ。
「おい、向こうでナクリたちが揉めてるぞ!」
ナクリお姉様が着てるの?もう退院したのだろうか。私はヨルクさんを置いて走り出した。
人をかき分けて進んだら、フェアリー焼きの屋台の傍でナクリお姉様とカナコさん、セリルさんがいた。
「カナコ、ここで脱いで」
ナクリお姉様……。憎いけど完全に憎みきれない。
「ナクリ、悪かったと思ってる。一生かけて償うわ」
ナクリお姉様はカナコさんに殴りかかろうとしたがカナコさんはさらりと避けた。
ミドリお姉様はナクリお姉様を憎んでいる。ナクリお姉様はミドリお姉様と同じ目にあってカナコさんを恨んだ。他者には入り込めない堂々巡り。
ナクリお姉様が決めるしかない。道を切り開いていくしかない。でも、妹として心配なのも事実なわけで。私はどうしたらいいのだろう。どうにかしたいのに言葉が出てこない。
「許さない。カナコ、いつかどん底に落ちるわよ」
ナクリお姉様には、もう何の力もない。
かわいそうとは思えない。でも、こんな人生あんまりだ。自業自得なのに、ただ夢を叶えたかっただけなのに、恨みにとらわれすぎたナクリお姉様。
「もう既に落ちてるし何度も落ちてる。それでも歩いていくのが人生よ」
カナコさんは強い。セリルさんと上手くいかなくてもカナコさんはどうとでもなる。でもナクリお姉様は違う。
人は平等ではない。
カンザシさんのように生まれた時点で運命が決まっている人もいれば、ナクリお姉様のように欲を出しすぎてダメになってしまう人生もある。
皆が皆、強いわけではない。世渡り上手なわけではない。
自分の道を切り開けない人間も確かに存在する。
「いつも綺麗事だものね。でも世の中綺麗事かしら」
中には綺麗事で上にあがってゆける人間もいる。綺麗事でなくても、その才能があれば綺麗事で乗り切れる人だっている。
「あの、私は一度決めたことを覆して、またそれを変更する。そのやり方が気に入らないです。カナコさんが生贄になったとしても、これまで通りの暮らししてゆけますか?」
思わず口にしてしまった。ナノハナ家もキクリ家も跡取りはどうとでもなる。カナコさんが緑風華してもだ。
「私だったら生きてゆけないわね。でも、そういう状況を作り出した人間にも問題あるんじゃないかしら」
さっき償うって言ってなかった?私の聞き違い?いくら強いからって人を見下す態度は気に入らない。私はこっそりテナロスさんにカナコさんの不利なものを受け取った。
「じゃあ、これ皆さんにも見てもらいましょうか?」
私はテナロスさんから受け取った古い写真をカナコさんに見せた。てか、カナコさんって本当に浮気してたんだ。なんかイメージつかないというか、カナコさんって、もっとビシッとした人間かと思っていた。
「返しなさい」
食い付いた。これは流石にカナコさんの名誉に関わる。プライドの高いカナコさんにとってかなり不利になるだろう。
「私、カナコさんのような上から目線の人嫌いなんですよね。ここで私に何かすれば無線でみんなに伝わりますよ」
祭りの紅葉神社は混むからズルエヌさんが無線イヤホンを持つようみんなに言い聞かせていた。
「あら、私に勝てるとでも?」
カナコさんは扇子を取り出した。速い。奪われてしまう。
「助けてください!」
ダメだ。カナコさんには敵わない。またテナロスさんに頼むしかない。その時、一瞬歪んだ。全てが歪んだ。
「カナコ、強さだけが全てじゃない。写真全部バックアップ取った」
落ち武者さん!時間を巻き戻したのか。
「セルファ!やめなさい!」
セリルさんは怒り口調で言った。
「やめて……お願い……」
カナコさんは急に弱気になった。時間を操るって一歩間違えたら怖い。
「カナコ、バチが当たったのよ。いい気味だわ」
ナクリお姉様は顔色悪いながらに強がった。
「正直カナコがナクリにしたこと理解出来ない。私やミドリのこと軽く考えてたんだなあて」
ラァナさん……。ラァナさんの事件も酷いものだった。ラァナさんは生きたけどトラウマは今でも残っている。
「カナコもカナコなりの思いがあってのことよ。ここでカナコを孤立させても何も解決しないと思う」
レイカさんも戻ってきた。確かにそうかもしれないけど、今のカナコさんは、どこか遠く感じる。昔のカナコさんなら、もっと正義感強かったのに。
「私、ここにいるの辛い……。ミドリと回る。カナコたちは好きにして」
ラァナさんはカナコさんが完全なる敵かのようにあしらった。
「待ってラァナ。もし何かあったら……」
レイカさんはラァナさんの手首を掴んだ。
「レイカだってカナコの味方じゃない。こんなの被害者はやり切れないよ」
そう、やり切れない。ラァナさんもミドリお姉様も一生残り続けるのだ。
「あの、カナコさんて……!」
言いかけてズルエヌさんが遮った。
「ナミネはここから離れようか」
どうして?姉が二人もここにいるのに私は関係ないみたいに言われると何だかモヤモヤする。
「あ、でも、ナクリお姉様顔色悪いですし」
今にも倒れそうだ。
「ズーム、ナミネをここから連れてって」
え、どうして……。話し合いはまだ終わっていない。ナクリお姉様は退院したばかりなのに。
って、こんな湖あったっけ?
「あの、ここは……」
桜が水面に揺れている。
「遠い昔、ナミネさんと来た場所です」
一時的に時間を巻き戻しているのだろうか。
「桜が緩てます。まるで滲んだ油絵みたいです」
そう、湖に揺れている桜が……桜が……。
「あの時もナミネさんは同じこと言ってました」
私とズームさん、ここに来たことあるんだ。
「すみません、全く覚えてません」
ズームさんとは桜木町のカンザシさんのコンサートで出会ったはずだが、紅葉町にも二人で来ていたのだろうか。
「そうですよね。相当昔ですから……」
ズームさんは俯いた。
「アンタら何やってんだよ」
え、落ち武者さん!?どうやって、この別の時空に入ってきたの!?
「あ、ズルエヌさんが私は関わらない方が良いと……」
どの道、私が介入しても春風神社でのことはどうにもならなかった。もう、あとの祭りなのだ。けれど、私はずっとモヤモヤしている。
「今から言うことよく聞け!隠してもいずれは知ることだろうから」
私に関わることなのだろうか。落ち武者さんの顔が悲しげになっている。
「あ、はい」
私は落ち武者さんを見た。
「時代はいつかは分からない。けど、ミドリの事件、本当はアンタが背負うはずだった。ずっとアンタが事件に巻き込まれてたんだ。そして、顔だけヨルクとの縁談はアンタが破談にしてアンタ赤線町で暮らした」
え、どういうこと!?ミドリお姉様の女子高生黒鈴酷華事件はナクリお姉様がミドリお姉様を陥れ……。ダメだ、話についていけない。
「あの……」
頭が真っ白だ。
「いつの村か分からない時代に、カンザシはナミネさんに何度もアタックし続けるもののナミネさんはヨルクさんと別れず、カンザシは仲間を連れナミネさんに黒鈴酷華をして無理矢理ヨルクさんとの関係を壊しました」
そんな……!そんな……。分からない。何がどうなっているのか全く分からない。私は何人いようと無抵抗にはならない。
「何者かがアンタの力量奪ったんだ。アンタは歳頃になるたびカンザシに人生を壊され、見かねたナノハはアンタからミドリにすり替えた。アンタが背負うこと全てミドリが背負うようになったんだ」
そう……だったんだ。何億年、何兆年前だったとしても許せない。私の幸せを壊したカンザシさんが。
もしかして、ヨルクさんが泣いていたのはこのことだったのだろうか。ヨルクさんは私に同情して……!
「そうですか。私は血筋とはいえ、カンザシさんを絶対に許しません!でも、一応聞いておきます。その時もカンザシさんの暮らしは辛いものだったのですか?」
例えそうだったとしても私は許さない。何がなんでも。
「はい、賤民の家庭に生まれましたが両親早くに亡くなり、似たような子供たちが集まるホームレス街と呼ばれるところで過ごしていました」
ホームレス街……そんなところあったんだ。けれど、どれだけ生まれが悪くても暮らしが辛くても人の人生を壊す権利など誰にもない。
私は溢れる涙をヨルクさんのパンツで拭った。
「アンタ、大事なの落ちてるぞ。ここに落としたら一生取りに戻れないからな!」
落ち武者さんは、ヨルクさんが番で買ってくれた紅葉花のお守りを拾った。
「あ、すみません」
危ない。悲惨すぎる話で悲しみと憎しみが混じり合い自分を見失いかけていた。
その時、ズームさんが私の手を握った。
「ナミネさん。僕はあなたに出会えて良かったと思っています。どれだけカンザシに関係を壊されても本当の愛を知ることが出来たのはナミネさんだけです。どうか無理だけはしないでください。幸せになってください」
ズームさん……。
今はカンザシさんを恨んでいる場合ではないのかもしれない。昔の永久(とこしえ)を、こんなふうに温めることになるとは思っていなかった。ズームさんのこと、今でも愛している。あの時と形は違えど確かに愛しているのだ。
けれど、やっぱり割り切れない。私は色んな仲間に支えられて、イケメンの彼氏もいて幸せなのに。幸せなのに、どこか虚ろになる。前に向くことも大事だけれど、過去に遡り根っこの部分を知る必要がある気がする。そして折り合いを付けたい。
「はい、皆さんと幸せになります。カンザシさんのことは許せないですが、ズームさんとの想い出忘れてません。私にとってもズームさんは大切な人です。それは、ずっと変わりません」
あれ、水面に映る桜が消えてゆく……。私、現代に戻るんだ。
「ナミネ、ここにいたの!? 問題起きた!! 今、ミネルナさんが救急車で月城総合病院に運ばれて行ったよ!」
え、いったい何があったの!? この僅かなひと時に。
「あの、いったい何があったのでしょうか?」
この世は問題ばかりだ。
「お姉ちゃんならカンザシに白梅咲かされたよー! もう彼氏とはやっていけないって嘆いてると思うよー!」
実の姉が黒鈴酷華されても何の心配もしないのか。それどころか、まるで嘲笑っているかのような……。とにかく月城総合病院に行かないと!
「月城総合病院に行きます!」
私はナノハナ家の運転手に連絡をした。
「じゃ、僕も行く」
落ち武者さんは、行くと。みんな行くだろうか。
「ごめんなさい。私はクラフと家に帰るわ」
そっか、ユメさんはサユリさんから手回しされたことがある。この世界ではないけれど、辛いものだったと思う。
「分かりました。委員長、ユメさんをよろしくね」
ナノハナ家運転手とブランケット家運転手の車が同時に来たようだ。
「うん、ナミネ追い詰めないでね」
今の私には痛い言葉だ。
私たちはユメさんと委員長と別れた後、月城総合病院へ向かった。
月城総合病院へ着くとズルエヌさんが受付でミネルナさんの居場所を聞いた。
ミネルナさんは、三階の個室にいるらしい。個室というだけで毎度毎度ブランケット家の規模を感じさせられる。
三階の個室はとても広かった。
「お願い、来ないで!」
何これ、凄いアザ……。
「へえ、お姉ちゃんも隅に置けないなあー!」
ミネスさんはミネルナさんを追い詰める。
「やめて! 出てって!」
せっかく、カンザシさんを吹っ切ってロォハさんと幸せになれたはずだったのに。どうしてこんなことに……。
「みんな来たね。
ハッキリ言って、ミネルナがここに運ばれて来た時は酷い状態だったよ。第三にヒビが入ってて処置はしたけれど、子供は望めないと思う。何よりミネルナには大きなトラウマが残るだろう。来たくないかもしれないけど、週二回カウンセリング来てくれるかな?
後、カンザシはどうしてこんなことしたのか、今ここで話してもらえる?」
深刻になってきた。
「二人で話がしたいと言われたので、その気かと思いました」
たったそれだけの理由で!? 酷すぎる。私も、いつか分からない時代に同じことされたんだ。
「それにしては、暴行の跡が凄いけどどうしてかな?」
どう見たって無理矢理だ。ロァハさんとの幸せが許せなかったんだ。やっぱり、私、カンザシさんと友達は無理だ。
「ミネルナさんが転びました」
バレバレの嘘。もうミネルナさんの人生壊しただけでカンザシさんには虹色街に戻って欲しい。
「カンザシも病気だから、二人ともカウンセリングは受けに来て欲しい」
カウンセリング。そんなもので治るのだろうか。私はそうは思えない。カンザシさんの病気は明らか先天的のもの。後天的ならどうにかなったかもしれないけど、生まれてから発症してたなら、それはもうどうにもならないと思う。
「ミネルナ、大丈夫!?」
ロォハさん? 誰が連絡したのだろう。
「いや! 来ないで!!」
今のミネルナさんは話さえ出来ない状態だ。みんなもここから出ないと。
「僕がミネルナを治す! ミネルナのことは絶対に手放さない!!」
そうは言っても、これだけの深い傷を負ったら元に戻るのはほぼ無理だろう。ミネルナさんがたびたびトラウマに陥ってロォハさんが受け止められないくらいに悪化してしまう展開が見えている。
その時、ハル院長は無言でミネルナさんとカンザシさんに予約カードを渡した。
「で? ミネルナの血筋は、この状況どうでもいいわけ?」
落ち武者さんは、どうしてそんなこと聞くのだろう。いいわけないじゃない。
「僕はカンザシとは縁を切ります」
ズームさんは、相当滅入っている様子。姉想いなだけに。
「僕はミネルナにもその気はあったと思うよ」
ズルエヌさんは、どうしてそう感じるのだろう。実の妹がここまでされて悔しくないのだろうか。掛け布団の中だってどうなっていることやら。
「あの、ズルエヌさん。妹に向かって、そういう言い方ないと思います」
ズルエヌさんって、こんな人だっけ? もっと人思いだったはず。
「夜も更けてきましたね。
ミネルナさんは、完全純白でいなくてはなりません。理由は今は申し上げられませんが。よって、この穢された状況では妖精村が他の村の配下となりかねません。或いは、妖精村そのものがなかったということも。
皆さん、これまで色々ありましたが楽しいこともたくさんあったでしょう。しかしながら、ここで区切りです。皆さんにはミネルナさんを元に戻すため時空を超えてもらいます」
え、キクスケさん!? 時空を超えるってどういうこと!?
「おい、キクスケ! 俺らを過去に戻した時もそうだったけど、お前やること一方的すぎるだろ! ミネルナは俺が必ず治す!」
ハル院長……ハルミ先生のためにショウゴ先生と一度、過去に戻ったんだっけ?
「時間切れです」
その時物凄い光が私たちを包み込んだ。私は目を閉じた。
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あとがき。
久々の更新ですね。
また戻っちゃう。
みんなと出会ったこと、なかったことになるのだろうか。
ここまで来て、どうしてリセット?
赤線町は……。
セナとシャムは……。
私も分からなくなってきました。
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