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日常のこととかオリジナル小説のこととか。
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プロフィール
HN:
ashita
Webサイト:
性別:
女性
職業:
地主(土地貸してます)
趣味:
漫画やアニメを見るのが好きです。最推しはフーディーニ ♡
自己紹介:
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

ブログ、もう書かないと思ってました。

けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。

小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。

純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。

元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。

ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。

小説、ぼちぼちマイペースに書いてゆきます。

よろしくお願い致します。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

お知らせ。

イラストは現在「ナノハナ家の日常」に載せております。サイドバーにリンクあります。

また、「カラクリよろずや」にて無料のフリーイラスト素材配布もはじめました✩.*˚

フリーイラスト素材も増やしていく予定です(*'ᴗ'*)

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

模倣・無断転載などは、ご遠慮ください。

ブログの小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。

小説・純愛偏差値に関しましては、武家名・貴族名(程度による) / 及び、武官の階級 / 扇子・羽子板・花札・百人一首・紙飛行機などのアイテム使用方法の模倣の一切を禁じております。

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X @kigenzen1874

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〈資格履歴〉

2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
→漢方コーディネーター 合格
→薬膳調整師 合格

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
〈資格証明バナー〉

鉛筆デッサンマスター®認定試験資格取得証明
絵画インストラクター資格資格認定証
宝石鑑定アドバイザー資格認定試験資格取得証明
鉱石セラピスト資格資格保持証明
茶道アドバイザー資格認定試験資格取得証明
お点前インストラクター資格資格認定証
着物マイスター®資格認定試験資格取得証明
着付け方インストラクター資格資格認定証
サイキックアドバイザー®資格資格証明
サイキックヒーラー資格資格保持証明
アンガーカウンセラー®資格資格保持証明
アンガーコントロール士資格資格認定証
漢方コーディネーター®資格認定試験資格保持証明
薬膳調整師®資格認定試験資格保持証明
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純愛偏差値 未来編 一人称版 64話

《ヨルク》

昔のアヤネさんはミナクお兄様から別れを告げられた後、何度もミナクお兄様に許しをこうたが、ミナクお兄様はアヤネさんを無視した。
そして、アヤネさんの浮気が原因で、ミナクお兄様は髪を金髪に染め、黒いピアスをして、女遊びをするようになった。もう純粋だった頃のミナクお兄様はどこにもいなくなっていた。
彼女を作っては気に入らないことがあれば暴力をふるい、すぐに彼女を捨て、新しい彼女を作るの繰り返しだった。
一方、アヤネさんはミナクお兄様と別れてからもカラルリさんと会っていた。カラルリさんはアヤネさんがバイトを終わるまでレストランで待ってアヤネさんのアパートに行っていたのである。
『あの、私との結婚は考えていただけているのでしょうか?』
『もちろんだよ、アヤネ』
カラルリさんはアヤネさんに口付けをした。
ミナクお兄様が女遊びに明け暮れる中、アヤネさんはカラルリさんとの関係を続けていた。
『アヤネ、すまないが仕事が忙しくなってきて、しばらく会えそうにない』
『そうですか。私は気長に待っています』
アヤネさんはカラルリさんがセナ王女と婚約しているだなんて全く知らなかったのだ。
そして、間もなくカラルリさんとセナ王女の結婚式は行われた。
『新郎カラルリさん あなたはここにいるセナ王女を
病める時も 健やかなる時も
富める時も 貧しき時も
妻として愛し 敬い 慈しむ事を誓いますか?』
『私にとってセナさんはこの世に2つとない尊い存在で、どんなセナさんも愛し慈しみ生涯セナさんのみを愛することを誓います』
『新婦セナ王女 あなたはここにいるカラルリさんを
病める時も 健やかなる時も
富める時も 貧しき時も
夫として愛し 敬い 慈しむ事を誓いますか?』
『カラルリとは運命の絆で結ばれています。カラルリはどんな時も私を愛し支えてくれた。そんなカラルリを一生大切にすることを誓います』
2人は指輪交換をした。
ミナクお兄様とセナ王女が結婚式を挙げたことは妖精村新聞にも掲載された。
セナ王女とカラルリさんの婚姻を知ったアヤネさんは、二度とカラルリさんと会うことはないと思っていた。
しかし、カラルリさんは結婚して半年後、再びアヤネさんのアパートに来た。
『カラルリさん、結婚したんですね。すみませんが、もうここには来ないでください。不倫だなんて見つかれば私は支払う慰謝料もありません』
『アヤネ、大学のみんなはアヤネが孤児院育ちなことを知っているの?』
『いえ、知りません』
『私を拒んだら言いふらしちゃおうかな』
『やめてください、困ります!』
『万が一、慰謝料を請求されても私がアヤネの分も支払う。アヤネがいなきゃダメなんだ』
カラルリさんはアヤネさんを抱き締め、そのまま布団の中に連れ込んだ。
一方、キクリ家では。
『セナさん、今日もお疲れ様。ビーフシチュー作ったから』
『ありがとう、カラルリ』
セナ王女はカラルリさんに抱き着いた。
カラルリさんはアヤネさんとの不倫は続け、セナ王女にはいい夫を演じ続けた。
けれど、アヤネさんに彼氏が出来た時、アヤネさんは密かにアパートを移し、その後、カラルリさんと会うことはなかったのである。
映像はそこで途切れていた。

ミナクお兄様が女遊びをするようになったのは、アヤネさんの浮気が原因だったのか。全く知らなかった。アヤネさんも大人しそうに見えて、人って分からないものだな。
「そういうことか。セナ王女を騙して私の人生をめちゃくちゃにしたのはアヤネさんとカラルリさんだったのか。ハッキリ言って気分が悪い」
ミナクお兄様、めちゃくちゃ怒ってる。
「カラルリを信じていたのに。浮気されていたなんて全く知らなかった。こんなの許せない!」
セナ王女も、はじめて知る真実に混乱した。
「ごめんなさい、ミナクさん。ずっと謝ろうと思っていたのですが、何世紀も経ってしまいました。本当に申し訳なく思っています」
「申し訳なく?何が申し訳なくなんですか?申し訳なく思ってないからズームさんに恋してるんですよね!でも、この映像見てください!私はズームさんと交際していました!」
そうか。ナミネが何の力もない時にミナクお兄様に嫁いだ時のものだったのか。ナミネはアヤネさんにズームさんとの交際映像を送った。
「そ、そうですか。私とズームさんはただの友達ですので」
「そうですか。友達ならどんなアヤネさんでも受け入れてくれますよね?」
ナミネはアヤネさんに何かを大量に飲ませた。
数分後、アヤネさんが立ち上がろうとしたら、アヤネさんはトイレまで間に合わず下してしまった。ナミネはその様子をすかさず撮影していた。
「では、ズームさんに送りますかな」
「やめてください!慰謝料ならいくらでもお支払い致します!」
「金で解決する問題ですか!お母様に言いつけて皇帝陛下に掛け合ってもらいます!」
「どうか許してください」
アヤネさんはお腹を下しながら、ナミネに土下座した。こんな時、彼氏として私はどうすればいいのだろう。
「今、ズームさんにアヤネさんのキュートな映像を送りました!」
アヤネさんは嗚咽をあげながら泣いた。しかし、ナミネの怒りはここで収まらなかった。ナミネはアヤネさんの服を脱がし、汚れたパンツをアルフォンス王子の頭に被せた。
「アヤネ!お前何やってるのか分かってるのか!お父様に言いつけて罰してやる!」
「どうか、許してください」
アヤネさんは、ただただ謝った。アルフォンス王子は王室に紙飛行機を飛ばした後、お風呂へ行った。
「アヤネがお兄様を誘惑してセナさんを陥れるような人だとは思いませんでした!カナエは見損ないました」
「アヤネが……アヤネがミナクを裏切っていなければ私はミナクからDVなんて受けなかった!絶対に許せない!」
カナエさんもユメさんもアヤネさんを批難している。ナミネは、ナミネはどこに行ったのだろう。探すと机の下で眠っていた。私はナミネを机の下から出すとナミネを抱きかかえた。
その時、テレビからニュースが流れた。
『これまでは兄妹又は姉弟の婚姻は認めていませんでしたが、来年の2月から認められるようになりました。これでもう血縁者の禁断の恋はなくなりますね。兄妹、姉弟が今後、堂々と婚姻して幸せになってくれることを妖精村は願っています』
その瞬間、私の中で物凄い不安の種がグルグル回った。けれど、今はナミネを布団に寝かせなければ。私はナミネを抱きかかえ、2階へ上がった。

ナミネの部屋に入ると、私は布団にナミネを寝かせた。
ナミネ、疲れてたんだね。アヤネさん通してのミナクお兄様からのDV辛かったね。助けてあげられなくてごめんね。
ふと机を見るとラッピングしてあるプレゼントがあった。私はメッセージカードを開いた。

『ヨルクさんへ

メリークリスマス!
上手く編めてないけど、クリスマスプレゼントです。

ナミネ』

ナミネ……。
私は早速、プレゼント袋を開けた。すると、黒い手編みのマフラーが入っていた。とこほどころ穴が空いているが、ナミネが私のために編んでくれたかと思うと凄く凄く嬉しくて私は泣いた。
カップル日記に載せよう。
カップル日記を開くとナミネの投稿があった。

『トイレの中まで入って来たストーカーヨルクさん』
とても複雑な気持ちだが、それよりもナミネが私に手編みのマフラーを用意してくれたことが嬉しくて私もカップル日記に投稿をした。

『ナミネが手編みのマフラーをクリスマスプレゼントに用意してくれた。
物凄く嬉しいし、大切に使う。
ありがとう、ナミネ』
ナミネ、お疲れ様。
ゆっくり休んでね。

翌日になると、アヤネさんの件は保留になりみんな家に帰って行った。けれど、カナエさんの機嫌はまだ直らないのかカナエさんはキクリ家に戻って行った。そして、みんなの矛先はまたセレナールさんへと向いていったのである。
また、タルリヤさんは役場に生活保護の申請をしに行ったらしい。

「顔だけヨルク、飯」
えっ、落ち武者さん帰ってなかったの?
「ねえ、どうしていつも家に帰らないの?ナミネとの時間、邪魔されたくないんだけど!」
どうしていつも付きまとってくるのだろう。正直迷惑だ。
「あんたらは幼なじみ同士で家行き来してるのに僕だけ仲間外れなわけ?」
「そうじゃないけど、いくら何でもここまで付きまとわれるのはいや」
勝手にナミネの部屋で寝られるのもいやだし、いい加減普通の暮らしがしたい。
「おはようございます」
ナミネが起きてきた。朝ご飯作らないと。
「ナミネ、今朝ご飯作ってくるからね」
「はい」
私は部屋を出て階段を下りてキッチンに向かった。

キッチンにはカナエさんがいた。
「カナエさん、キクリ家に戻ってたんじゃなかったんですか?」
「キクリ食堂での仕事を終えたので、こっちに来ました」
「そうだったんですね」
アルフォンス王子のところには行かないのだろうか。私は3人分のお粥を作りはじめた。
「カナエはもうアルフォンス王子様を信じることが出来ません」
昔のアルフォンス王子の行動でカナエさんも不安になったのだろうか。
「でも、カナエさんはアルフォンス王子のことが好きなんですよね?」
「カナエが好きなのは遥か昔、カナエに優しくしてくれたアルフォンス王子です。今はすっかり変わってしまいました」
確か、遠い昔はみんなが助け合ってアルフォンス王子もセナ王女も純粋だったとナミネが言っていたな。
「すぐに答えを出す必要はないと思います。しばらく距離を置いてみてはどうでしょう」
「そうするしかありませんね」
「では、私は朝食を持って行きます」
天使の湖でのことはカナエさんはかなりショックを受けているようだ。私は作ったお粥を持って2階に上がった。

ナミネの部屋に入るとニンジャ妖精さんがいた。
「ナミネさん、結婚してください」
そうか。兄妹でも結婚出来るようになるんだっけ。
「カンザシさん、勝手に入って来ないでください。兄妹では結婚出来ませんし、私はヨルクさんと結婚します」
ナミネはまだ法律が改正されることを知らないんだ。
「兄妹で結婚出来るよう法律が改正されるんです。絶対ナミネさんを幸せにします」
カンザシさんは無理矢理ナミネを私から奪おうとするつもりなのか。けれど、そうはさせない。
「カンザシ、あんた紙切れ1枚で強気なナミネを縛るつもりか。幸せにする?ふざけんな!天使村で強気なナミネから顔だけヨルク奪ったのあんただ!あんたが毒殺したんだ!」
「そんな昔のこと知りません!今は今です!僕はナミネさんと結婚したいんです!」
その瞬間、ナミネがカンザシさんを引っぱたいた。
「いつも一方的で自分のことしか考えられないんですね!ヨルクさんを毒殺し、私とヨルクさんを雇った不良に無理矢理別れさせ、私、カンザシさんが憎くて仕方ありません!」
「どうして分かってくれないんですか!ナミネさんってワガママですね!自分さえ良ければそれでいいんですか!」
なんて強引な人なんだ。こんな人には絶対ナミネを渡せない。
「やめてくれないか!頼むからナミネに近付かないで欲しい!」
ナヤセスさん、来ていたのか。
「お願いです。ナミネさんを僕にください!」
「話にならないな!」
ナヤセスさんは無理矢理カンザシさんを部屋から出した。私は咄嗟にカンザシさんがナミネと婚姻しないようメールでキクスケさんにお願いをした。
「ナミネ、朝食だよ」
私はお粥を机に置いた。
「ありがとうございます、ヨルクさん」
ナミネは嬉しそうにお粥を食べた。ナミネの笑顔を見る瞬間はとても幸せを感じる。
「ナミネ、クリスマスプレゼントだよ」
私は昨日の夜押し入れの中で見付けた天使村の市場の星型のサファイアの石を渡した。
「わあ、これあの後現代まで眠っていたんですね!ヨルクさん、大切にします」
ナミネは箱に星型のサファイアの石を入れた。大切なものを入れておく箱だろうか。はじめて見る。
「ナミネ、今日はカフェに行こうか」
昨日は天使村のレストランで散々だったからナミネにはゆっくり美味しいものを食べて欲しい。
「はい、ではラルクとユメさん、委員長、カラン王子も誘います」
出来ればナミネと2人で行きたかったのだけど、落ち武者さんがいるからどの道無理か。でも、当たり障りないメンバーならまあいっか。あ、カナエさんも来ているから一応誘っておこう。

桜木町の新しく出来たカフェに来たけれど、何故かカンザシさんもいる。話によると、ナルホさんが突き放しすぎるのも良くないとナヤセスさんを説得したらしく、この日はナミネを心配したナヤセスさんも着いてきた。
「ナミネ、どれにする?」
ここのカフェ、まるで……。
「何だか、昨日行ったレストランの料理みたいですね」
本当、昨日のレストランの料理みたいにキャラクターが浮かび上がっている。それでも、クオリティは昨日のレストランのほうが高かったような気もする。
「何だか、セナさんいないと気が楽だわ」
確かに、セナ王女がいると変に仕切られて場の空気が重たくなる。
「あ、カンザシさん、今朝は突き放してしまってすみません。ちょっと結婚とか言われて混乱したんです」
「僕こそごめんなさい。ナミネさんと一緒になりたい気持ちに急かされていました」
けれど、これって結局はナミネとの交際と結婚を望んでいるわけだよな。兄妹での結婚が出来るようになったのはとても不安である。
「カンザシさんのことは極力支えます。妹として。でも、結婚は出来ません。それと、兄妹での結婚が法律で認められた以上は、あくまで普通の兄妹としてしか接することは出来ません。ヨルクさんを不安にさせたくないんです」
ナミネは私との交際を選んでくれている。今のところカンザシさんとの婚姻は考えていない。安心してもいいのだろうか。けれど、この付きまとう不安はなんだろう。
「分かりました。ナミネさんのことはあくまで妹として接します」
「はい!あ、カンザシさんもミツメさんもドラマ出演決まったんですね」
ミツメさんは確かオーディション受かったんだっけ。
「はい、オーディションを受けたら偶然受かりました」
ナミネの前だから嘘をつくしかないのだろうか。ズームさんからは、ナミネに付きまとわないようドラマ撮影のスケジュール入れたと聞いているけれど。
「そうなんですね!頑張ってください」
「ナミネ、飛べない翼の続編映画、またラハルさんと出るの?」
「続編というか、姉妹策です。忘れられた翼で、歴史を変えられた2人の女性が妊娠して一方の記憶が戻った瞬間にパニックになり、譲渡で死産にしてしまう、セレナールさんとエミリさんがモデルになった内容です。セレナールさんは私、皇太子様はラハルさん、エミリさんはクノイチ妖精さんのヒトツメさん、アランさんはシュリさん、タルリヤさんはロクメさんが演じることになりました。飛べない翼は書籍化もしていますし、その流れで忘れられた翼も世に広めようということになったそうです」
姉妹策か。似たような内容ではあるが、飛べない翼がヒットしたからなあ。けれど、忘れられた翼は配役も多く大がかりになりそう。
「そっか。飛べない翼、書籍化されて良かったね。忘れられた翼もヒットするといいね」
ヒョンなところからナミネが突然芸能活動をしはじめた気がする。それに、今思い出したが、ナミネは2019年中学生部門のミスコングランプリに輝いたんだった。だんだんナミネが遠くなるようで時折寂しくも感じる。
「これ、強気なナミネのミスコングランプリの時の写真だ。欲しいヤツは持ってけ」
真っ先にカンザシさんが手に取った。ミツメさんもカラン王子もラルクもナヤセスさんも。私も手に取った。ほんのり化粧してマントを羽織ってトロフィー持ってるナミネ可愛すぎる。確か、この時、ナミネが優勝会見行ったんだっけ。色々ありすぎてリアルタイムでは見れなかったから、落ち武者さんから録画もらおう。
「私、クジラのクリームシチューにします」
「うん、一緒に食べようね」
「ユメ、この前食べられなかったタコのカレーライスにしよう」
「そうね」
カナエさんやカラン王子も海系のメニューにしている。よく見ると、壁に昨日行ったレストランのような写真がある。説明書きを見ると、天使村時代にあったレストランを妖精村半ば頃再現され、それを現代でも再現したのか。何だか歴史って尊い。
「あのね、ラルク。昨日、レストランでヨルクさんトイレの中まで入ってきたの」
何故、今それを言う。セナ王女たちがいなくて良かった。
「もう変質者だな」
「間違って入ったの!それに後ろ向いてたでしょ!」
どうして私を覗きみたいな言い方するの!
「でもね、あの後ヨルクさん……」
咄嗟に私はナミネの口を塞いだ。
「んーんー!」
「ナミネ、変なこと言わないで」
私はナミネの口から手を離した。
「あ、カナエさん、アルフォンス王子はどうしたんですか?」
何故、呼ばなかった人のことを聞く。
「カナエはもうアルフォンス王子様のこと信じられません!」
「何かあったんですか?」
「昔のアルフォンス王子様は綺麗な天使を口説いていました」
でもあれは、綺麗と言うより派手なような。
「でも、あの時代には恋愛感情がなかったそうです。子孫を残すことが使命みたいな」
本当にそうだろうか。私は天使村時代もずっとナミネのこと愛していたし、何より、カンザシさんがナミネをピンポイントで狙っていたのが何よりの証拠だ。あの時代に恋愛感情はあったと私は位置付けてしまう。
「好き合って交際したのに綺麗な人がいれば、その人と子孫を残したがるだなんて獣みたいでカナエはいやです!」
カナエさんってこんなに嫉妬深かったっけ。エミリさんも、あの後カラルリさんを許したのに。
「ラルクはどう思う?」
何故ラルクに聞く。
「まあ、ミナクお兄様がいかがわしいサイト見てるようなもんなんじゃないのか?」
「じゃあ、浮気じゃないね!カナエさん大丈夫ですよ。あの時代って原始時代みたいなもんですし」
原始時代って。それは少し違うだろう。現代だって彼女いても結局学年のマドンナ的存在に憧れている光景よく見かけるし。
「カナエは何度も許そうとしました。けれど、どうしても許せないのです!」
「うーん、難しいですね。でも、カラルリさんがテンネさんにコメントするようなものではないでしょうか」
それはそれで何かと問題ではないだろうか。
「あんな水着姿で歌手気取りなんてカナエには理解出来ません!それにチューリップ妖精さんて、写真会は水着の上からならお触りOKですよね。そんなの浮気なのです。ナミネはどうなのですか?」
「私は、2人でいる時に携帯ばかり見ていたらいやですが、ヨルクさんは私に隠れていかがわしいサイト見ていますので」
何故誤解を招く言い方をする。まるで私がフェアリーチューバーに入れ込んでいるみたいではないか。
「ナミネ、やめて!私、フェアリーチューバーなんて見てないし推しもいないから!」
「ラルク、ヨルクさん、メアラスさんの画像いっぱい保存してるのに推しいないんだって」
メアラスさんはプロの女優じゃない。それに私はドラマが面白いから見ているだけだ。
「どうしてそんな言い方するの!私、メアラスさんのドラマ好きだから見てるだけなの!」
「どんな画像だよ」
ナミネはラルクに携帯を見せた。
「人気女優みたいだしチューリップ妖精さんに比べたらジャンル違うんじゃないか?」
「同じだよ。だって、天使の湖で例えるなら両方推しじゃん」
ナミネは私がメアラスさんのドラマ見るのがいやなのだろうか。
「言い出したらキリがないわよ。現代は現代。天使の湖は水浴び中の天使にアルフォンス王子が声かけたからカナエは悩んでいるのよ」
あ、エルナいたんだ。落ち武者さんが誘ったのか。
「うーん、何だか分からなくなりました」
「あの後、アルフォンス王子は声かけた人とホテルに入っていきました。カナエは理解出来ません!」
そうだったのか。いくら昔のアルフォンス王子とはいえ、目の前でそんな場面見たら彼女としては複雑な気持ちになるか。
「あの、ナミネさん、このドラマのヒロイン演じていただけませんか?主役は僕なので」
カンザシさんはナミネにチラシを渡した。えっ、これって、本当に女優目指している人が出るようなドラマ……。
「すみません、こういうのは出来ません」
かなり昔から女優はドラマの中でリアルに本番をする人が多く、中には女優魂を見せるためにドラマで処女を喪失する人もいる。更には最後まで女優であったことを伝えるためにドラマの中で第3を喪失し、亡くなる女優もいた。現代もドラマで若くして亡くなる女優がいる。
カンザシさんはドラマを口実にナミネを抱くつもりだ。油断出来ない。
「こういうのやめてくれないか?ナミネはヨルクと交際してるんだ。ドラマとはいえ、ナミネが穢れる姿は見たくない」
ナヤセスさんかなり怒っている。正直私も苛立たしい。カンザシさんはどんな手を使ってでもナミネを自分のものにしようとしている。私はカンザシさんを信じられなくなった。

……

あとがき。

カンザシを放っておけないナミネ。
けれど、カンザシはナミネをヨルクから奪い取ろうとしている。

カナエもアルフォンスと仲違いしてしまったし。

現代編は色々忙しい。
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純愛偏差値 未来編 一人称版 63話

《ナミネ》

「はあー、スッキリしたあ。広いトイレですなあ」
えっ、どうしてヨルクさんがいるの!?一応後ろ向いてるけど。ヨルクさんは過保護だけれど、ここまで来ると、何だかもうストーカー。私は手を洗うと逃げるようにトイレを出ようとしたが、ヨルクさんに手を掴まれた。な、何?
「ナミネ、私といる時、楽しくない?」
どうして今そんなことを聞くの?私たち付き合ってもう5ヶ月過ぎたんだよ。
「た、楽しいです!ヨルクさんと趣味の話したり、一緒にいることそのものが楽しいです!どうしてそんなこと聞くんですか?」
「そっか、分かった」
何、この暗い雰囲気。
「わ、私、トイレ出ます」
「待って!」
え、何なの?
ヨルクさんは後ろから私を抱き締めた。そういえば、私、天使の湖に下着脱ぎ捨てたままだったんだ。ヨルクさんの紅葉の香りが強くなる。私はヨルクさんのことで頭がいっぱいになった。
私から離れるとヨルクさんは、私の手を握ったまま無言でトイレを出た。

テーブルに戻ったけれど、気まずい。
「強気なナミネ、あんた髪乱れてる。顔だけヨルク、腰パンになってる。ここレストランだ!弁えろ!」
落ち武者さんに指摘された私は咄嗟に髪を括り直した。ヨルクさんのせいなのに、どうして私まで怒られなきゃいけないの。私は恥ずかしくて俯いた。
「ナミネ、クジラのビーフシチュー可愛いね。分けてあげる」
ヨルクさんは何もなかったかのように料理の写真を撮った。ビーフシチューの上にクジラが浮かび上がっている。私も珍しくて写真に撮った。けれど、トイレの時は、あんなに縋るような態度だったのに、どうして今は普通でいられるのだろう。
「ラルク、食べあいっこしましょうよ」
「セレナール先輩、ストーカーはやめてください」
ラルクはセレナールさんのことを完全に拒否していた。
「セレナールさんて諦め悪いよね」
「ナミネ、今のイジメ兄さんに言いつけてやる!」
セレナールさんは私を目の敵にした。
「ラルク、獣がほざいてるね」
「欲情したメスゴリラだな」
私は思わず笑ってしまった。その瞬間、セレナールさんは水をテーブル全体にかけた。私と、ラルク、落ち武者さんはお皿を持って避けたが、他のメンバーの料理は水浸しになった。
「あーあ、メスゴリラさんやっちゃったね」
アルフォンス王子はカナエさんのこともあってか、セレナールさんを殴り付けた。
「何人の料理に水かけてんの?人の迷惑考えないのかよ!」
アルフォンス王子はセレナールさんを殴り続けた。
「ご、ごめんなさい。許して……」
落ち武者さんは扇子でアルフォンス王子を吹き飛ばした。セレナールさんは大声で泣きはじめた。
「セレナール、何がそんなに気に入らないのよ」
エミリさんはセレナールさんを追いつめる。
「これじゃあ食べられないわ。セレナールって気に入らないことがあればすぐにみんなに迷惑かけるのね」
セナ王女もせっかくの料理を台無しにされてかなり怒っている様子。
「あの、私とラルクと落ち武者さんの料理は無事なので、みんなで分けますか?」
「では、そうします」
「ユメ、そうしよっか」
「そうね」
「はい、僕もそれでいいです」
アヤネさんとユメさん、委員長、カラン王子は分けることに賛成したけど、他のメンバーは機嫌を損ね、注文し直した。オマケにセナ王女はセレナールさんに水をかけた。
セレナールさんはひたすら大泣きしていた。
私とヨルクさんの料理はアヤネさんに分け、落ち武者さんの料理はユメさんと委員長に分け、ラルクの料理はカラン王子に分けた。
はあ、せっかくシェフが一生懸命作ったのに、セレナールさんのせいで一口も食べない料理がいくつもあるよ。この店には申し訳ない気持ちだ。
しかし、セナ王女たちが料理を注文し直したところ、お店側はこちらの落ち度と見なし、注文拒否をした。セナ王女は王女である証を見せたもののお店側の意思は変わらなかった。
「セナ王女、ここはラルクから分けてもらいましょう。少しでも食べておかないと帰りが辛くなります」
「分かったわ」
ミナクさんの説得でセナ王女とミナクさんはラルクから分けてもらった。
「カナエは濡れた料理で構いません」
「私もカラルリと分けるわ」
カナエさんとエミリさん、カラルリさんも仕方なしに水浸しの料理を食べることになったが、アルフォンス王子だけが、納得せずセレナールさんを責め続けた。
「セレナール!水浸しになった料理は全部お前が食べろ!」
「分かったわ」
セレナールさんが水をかけたのは変わらないし、正直同情は出来なかった。けれど、何か引っかかる。セレナールさんが変わってしまったのは、紀元前村から戻ってきてからだ。
皇室にいる時までは誰よりも純粋な人だった。エミリさんも、カナエさんも。
タルリヤさんが元凶だとしか思えない。

落ち武者さんが支払いを終えた後、みんなは不機嫌そうにレストランを出た。
「じゃ、帰る」
みんなは、天使の湖へと向かいはじめた。
市場を通ると可愛らしいアクセサリーがいっぱいある。買いたいけど買えないのが残念。それにしても、古代でもこのように現代でも通用するような商品が手がけられているんだな。古代のハイテクさが伝わってくる。
天使の湖に通じる通路を通ろうとした時、伝説初級武官が現れた。えっ、60人はいる。
「セレナールをここから出すわけにはいかない」
セレナールさんが目的か。
落ち武者さん以外は咄嗟にセレナールさんから離れた。私もヨルクさんを庇いながらセレナールさんから離れた。
「みんな置き去りにしないで!助けて!」
正直置いて行きたい。でも、置いて行くとまた現代が変わってしまいかねない。
私は百人一首を全て投げた。しかし、百人一首が伝説初級武官の回りを回る前に伝説初級武官は百人一首を剣で切り、百人一首は全て地面に落ちた。
嘘でしょ。この時代の伝説初級武官強い。
「伝説武官は古代ほど任務が多かったから現代より強いんだ」
そんな……。いったいどうしたらいいの。
「強気なナミネはエルナと顔だけヨルクを天使の湖まで連れて行け!」
「はい!」
私はヨルクさんとエルナさん、ユメさん、委員長を連れて天使の湖の通路を通った。

天使の湖までは追ってこられない。ヨルクさんを安全な場所に連れてきたのだから戻らなければ。
「ヨルクさん、待っていてください」
「えっ、ナミネ行くの?どうして?ナミネ、ここにいて!」
ヨルクさんは私の手を掴んだ。
「ヨルクさん、全員でここを出なければなりません。私は必ず戻ります!」
私はヨルクさんに掴まれた手を振りほどいた。
「ナミネ、行かないで!!」
泣き出すヨルクさんをよそに私は天使村の町へ戻って行った。

「ラルク、どう?」
「ダメだ。何度百人一首投げてもすぐに落とされてしまう。これだと1人も拘束出来ない。それだけでなく、この時代の時計騎士によって時間進められて、後30分しかない!」
私たちはギリギリのところまで来ている。運が悪ければ、ここに取り残されてしまうかもしれない。私は伝説最上級武官の資格持っているのに伝説初級武官に適わないなんて。それほど現代に比べたら古代は武官を動かす頻度が高く毎日の任務で強くなっているのだろうか。
「みんな、拘束は考えるな!コイツらが怯んだうちにみんなで逃げるぞ!」
「はい、全力を尽くします!」
と行っても、この状況でどうすればいいのか分からない。その時、セナ王女が短剣1つで次々で伝説初級武官を気絶させて行った。後に続かないと!私とラルクとミナクさんは羽子板で伝説初級武官を叩いて気絶させていった。エミリさんは麻痺薬を塗った矢で、伝説初級武官を動けなくさせた。これで全員か。
「みんな、あと8分しかない!天使の湖まで走れ!」
私たちは天使の湖へ繋がる通路を抜けた。

天使の湖ではヨルクさんが泣きながら私の脱ぎ捨てた服を持っていた。あれ、カナエさんまでいたの?とにかく今は、あの途切れた橋まで行かないと!
「ヨルクさん、もう時間がありません!あの途切れた橋まで走りましょう!」
みんなは通って来た途切れた橋に向かって全力疾走した。
しかし、天使の湖を出て橋の近くまで来たところでセレナールさんが倒れた。
「きゃっ!みんな置いていかないで!」
「本当に面倒な女だな」
みんなが走る中、ラルクは吐き捨てた。セレナールさんのことは落ち武者さんが背負った。
残り12秒のところで、みんなは途切れた橋を渡り切った。
「寒っ!」
そうか、今真冬だったんだ。
「ナミネ、パンツ履いて」
「はい」
私がパンツを履いている間にヨルクさんは私に冬用のワンピースとコートを着せた。みんなも服を着ている。って、セレナールさんだけ着てない?
「姉さん、あんた服どうしたんだよ」
「忘れてきたわ」
その時、この寒さとレストランでみんなの水浸しになった料理を1人で食べたせいかセレナールさんはお腹をくだした。
「臭いな。この女迷惑ばかりかけて、今後はメンバーから抜けて欲しい」
カナエさんと仲直り出来ていないアルフォンス王子はセレナールさんを攻撃した。
「とにかく、寒いから早く電車に乗るぞ!」
私たちは天使の湖駅で切符を買い、駅員さんに判子を押してもらうと電車に乗った。

電車の中は温かい。
そうだ。気になることは今答えを知っておこう。私はスピーカーホンにしてタルリヤさんに電話をかけた。
『はい』
「あ、タルリヤさん、聞きたいことがあるんですけど……」
『何かな?』
「遠い昔、タルリヤさんはタイムマシンで皇室に来ましたよね?けれど、タルリヤさんが皇室に来るまでは、セレナールさんもエミリさんもカナエさんも恋愛は順調だったんです。私色々考えたんですけど、タルリヤさんが皇室に来て、みんなを紀元前村に連れて行ってから、セレナールさんたちの恋愛はおかしくなったように思うんです。知っていることがあれば話していただけないでしょうか?」
はぐらかされてしまうだろうか。それでも、今白黒つけないといけない気がする。
『君の言った通りだよ。貧しくてその日その日暮らしの僕の目の前に、ある日突然、未来の人が来た。バイトをすればお金をくれると言われ、僕はすぐに未来へ行った。現代からするとだいたい3500年後だと思う。未来の妖精村に連れて行かれた僕は、人口を減らすよう未来の人に命じられ、僕はタイムマシンで元の時代に戻り、妖精村のカップルを引き裂く任務に着いた。途中で逃げ出したくなったけど、皇帝陛下の命令だと言われ逆らえなかった。セレナールと皇太子様、エミリとアラン、カナエとセイも僕が関係を壊した。でも、生きていくためだったんだ』
あの頃の紀元前村の暮らしはかなり酷いものだった。何日も前のご飯を食べなくてはいけなかったし、さっきの天使村の人みたいに恋愛感情は一切知らず、成り行きで男女は関係を持ち、子孫を残した。
「そうだったんですか。タルリヤさんにも事情がおありだったのですね。今でも人口を減らす任務に就いているんですか?あ、今のターリャさんの写真送って来てもらえますか?」
『うん、今の紀元前村の実家も、あの時と何も変わってない。紀元前村は普通の村へとなって行き、一部の間では色んな研究もされている。けれど、僕が住む町はあの頃のまんまなんだ。だから、妖精村に引っ越した。姉さんはもうセレナールには似てないよ』
まさか、2019年なのに、タルリヤさんが暮らしている町だけ、あの原始的な生活を送っているだなんて!
その時、キクスケさんが現れた。
「お話聞かせてもらいました。タルリヤさんが遠い昔にしたことは規則に反しますので、あの日、皇室にタルリヤさんが来なかったよう書き換え致します。現代のカップル崩壊計画もこちらで阻止させてもらいます。
それと、初代天使村のヨルクさん毒殺事件ですが、調べたところ詳細が分かりました。カンザシさんとセレナールさんの共謀によるものでした。2人はナミネさんとヨルクさんの料理に少しずつ毒を混ぜ、2人が病気になったところでセレナールさんはヨルクさんの看病を、カンザシさんはナミネさんの看病をして、セレナールさんはヨルクさんとカンザシさんはナミネさんと結婚する計画でした。けれど、カンザシさんはヨルクさんの存在を妬み、独断で暗殺しました。カンザシさんはセレナールさんとラルクさんの留守中に家に忍び込み、頭痛に効く薬草を全て附子に変えてしまったのです。何も知らないラルクさんは頭痛を訴えるヨルクさんに煎じた薬をヨルクさんに飲ませ、その夜中、ヨルクさんは突然の心停止で亡くなりました。
それと、先程行かれた天使の湖でのことは、カンザシさんは前の晩にヨルクさんに特殊な惚れ薬と大量の性欲剤を飲ませセレナールさんに恋愛感情を抱き、ナミネさんと別れさせようとしました。けれど、2人が仲直りしたため、カンザシさんは不良を雇い、ある日、ヨルクさんとナミネさんに包丁を突き付け無理矢理別れさせました。
それでは私はタルリヤさんの過去の件を処理して来ますので、これにて失礼」
キクスケさんは去って行った。
横を見ると、ヨルクさんが泣いている。私はヨルクさんの手を握った。タルリヤさんのことはタルリヤさんも生活がかかっていたけれど、カンザシさんがしたことは許せない。私、カンザシさんのこと恨んでしまうかもしれない。実の兄なのに。
「セレナール先輩の人殺し」
「セレナールって最低ね!やっていいことと悪いことがあるでしょう!」
「セレナールが今後このグループに入って来てもみんなで無視する!」
「セレナールは悪魔なのです!」
「セレナールと一緒にいたくない!怖い!」
ラルクとセナ王女、アルフォンス王子、カナエさん、エミリさんはセレナールさんを批難した。
『もしもし、ナミネ?姉さんの画像届いた?』
あ、そうだった。タルリヤさんとの電話中だったんだ。私は慌ててメールを開いた。本当だ。髪は銀髪でショートヘアだけど、全然セレナールさんに似ていない。村の象徴であるセレナールさんは1人だけでなければならないということなのだろうか。それにしても現代のターリャさんは、お世辞にも綺麗とは言い難い。何だか可哀想。
「あ、はい、届きました。セレナールさんとは全然似てませんね。それと、さっきキクスケさんが来て、タルリヤさんはもう今の任務に就くことは出来ません」
『そんな……だったら僕はどうやって食べていけばいいんだ!』
「タルリヤさん、落ち着いてください!生活保護を申請すれば生活出来ます!方法は今送ります」
私は生活保護の手続きをタルリヤさんにメールで送った。
『考えてはみる。とりあえず一旦切るね』
タルリヤさんとの電話は切れた。
すると今度は再びキクスケさんが現れた。
「遠い昔、タルリヤさんが皇室に来たことはなかったことに修正しました。現代は紀元前村に置いてあるタルリヤさんのタイムマシンを回収して、タルリヤさんをカップル崩壊計画の任務から下ろしました。未来の番人にも話をつけ、皇帝陛下は子供を作らないよう呼びかける方針に変えました。以上が報告です」
これでタルリヤさんはもうタイムマシンでの移動が出来なくなる。タルリヤさんにとっては酷だろうけど、仕方のないことだと思う。
「あの、皇室にいたセレナールさんは純粋だったのに、途中からはどうして性格が変わってしまったのでしょうか?」
「妖精は『純』を表す生き物です。恨みや妬み、怒りなどの感情は殆ど持ち合わせていません。しかし、人間は表と裏があります。生きていくために汚い手を使ってでも我が身を大切にし、時に人より優れていると優越感に浸ったり、誰かを支配したりする生き物です。人間になってからのセレナールさんやエミリさんは妖精だった頃の感性を失われたと思われます」
そうなのか。妖精と人間ってそんなにも違うんだ。けれど、今の時代、妖精なんて見たことがない。時代と共に『純』は失われつつあるのかもしれない。
「そうですか」
私は何て答えていいか分からなかった。そして、キクスケさんは去って行った。
けれど、ちょっと待てよ。タルリヤさんは皇室に来なかったよう上書きされたんだよね。だから勿論私の記憶も変えられている。
タルリヤさんは、確かに皇室には来なかった。けれど、あの後、紀元前村から感染病が出たと妖精村に連絡が入り、応援を要求された。皇太子様自ら出向くことでセレナールさんとエミリさんたちも着いていき、紀元前村でセレナールさんたちはタルリヤさんと知り合うことになる。エミリさんはタルリヤさんと浮気をし、紀元前村から戻って来たカラクリ家での歴史は何一つ変わっていない。
番人が動いても歴史は変えられないんだ。
とりあえず私はナルホお兄様とナヤセス殿にキクスケさんから聞かされたことをメールした。
紅葉町駅に着くと、みんなはとりあえずナノハナ家に向かうことになった。

ナノハナ家に着くなり、セレナールさんはお風呂に入り、セレナールさんの汚れた水着は使用人が洗った。
第4居間ではみんながクタクタだった。
「じゃ、今からこれ見てもらう」
え、休めないの?見るって何を?
落ち武者さんは、映像をテレビで再生した。

映像は妖精村半ば頃だろうか。遠い昔の高校生くらいのミナクさんが映っていた。
ミナクさんは、同級生だろうアヤネさんと交際をしているようだった。ミナクさんは、いつも勉強をアヤネさんに教えていた。アヤネさんのアパートは築50年ほどの古い1Kのアパートだったが、それでも、ミナクさんもアヤネさんも幸せそうだった。
2人は外を歩く時は必ず手を繋いでいた。
アヤネさんはレストランのウエイトレスのバイトをしていて、アヤネさんがバイトで遅くなる日は、ミナクさんが合鍵でアヤネさんのアパートで料理を作りアヤネさんの帰りを待っていた。
学校でのお弁当も毎日アヤネさんの分もミナクさんが作っていて、アヤネさんはミナクさんの手料理を喜んで食べていた。
その関係はずっと続くかのように思われた。
けれど、ある日からアヤネさんは風邪で学校を休むようになり、心配になったミナクさんはドリスポや熱冷まし、その他ゼリーなどの差し入れを持って、合鍵でアヤネさんのアパートに入った。
するとアヤネさんは婚約後だろうカラルリさんと布団の中でことの最中だった。ミナクさんはその場に崩れ落ちた。
『嘘だろ……。アヤネさん、なんで?』
咄嗟にアヤネさんとカラルリさんは服を着た。
『ミナク、違うの。少し相談に乗ってもらっていただけよ』
アヤネさんが言うものの、ミナクさんはショックのあまり気を失いそうになっていた。
『アヤネさん、いつから?』
『ミナク、落ち着いて』
『いつからだったの?』
『本当に誤解だから!』
アヤネさんはどうにか誤魔化そうとしていた。
『アヤネさん、その人誰?何故私を裏切ったの?』
『ミナク、お願い信じて!何もしてない!』
『答えてアヤネさん。いつから私を裏切っていたの?理由は?』
アヤネさんは黙り込んだ。
『そっか、もういい』
『待って!2ヶ月前から!いっときの気の迷いだった!どうか許して』
アヤネさんはミナクさんにすがりついた。
『酷いねアヤネさん。もうここには来ないし学校でも話さない』
ミナクさんは合鍵を置いてアパートを出た。

……

あとがき。

レンタル屋さんに行くと、映画 タイムマシンの横に映画 タイムラインがあるんですけど、2つは相反する内容なんです。
私はタイムライン派でしたが、今となってはタイムマシンの深みが分かるようになってきたと思います。

何より、私の書く小説は絶対に歴史は変えられないようになっていますから。歴史を変える小説からはじまってからの今の小説。
私も年月が経って物事の考え方が変わったのかもしれません。

ちなみに、私はアドラー心理学よりフロイト学を信じているので、物語も過去を遡って答えを探すように進めています。

ミナクとアヤネの映像の続きは次回です。
純愛偏差値 未来編 一人称版 62話

《ヨルク》

エミリさんは殺人未遂で逮捕されたものの、ハル院長がエミリさんはセレナールさんに暴力行為はしていない診断書を紅葉町警察署の人に見せ、セレナールさんは子宮内胎児死亡と判断され、エミリさんは釈放された。
皇太子様は皇太子の称号を捨ててでもセレナールさんとの交際を拒み、セレナールさんと別れた。
セレナールさんは1人になってしまったのである。

その後、エミリさんはセレナールさんを訴え、裁判で戦ったものの、エミリさんがイジワルされたのはセレナールさんのせいとは断定されず、セレナールさんは無罪となった。
それでも、セレナールさんを許せないエミリさんは毎日のようにセレナールさんを殴り付け、誰もいない放課後の理科室でアランさんとセイさんにセレナールさんを襲わせた。

何もかも失い、マモルさんやアランさん、セイさんにイジワルされたセレナールさんは、再びラルクを頼りはじめた。しかし、リリカお姉様が阻止したのである。
エミリさんは、元々片想いしていたカラルリさんと交際しはじめ、セレナールさんに、たくさん幸せを見せ付けた。
セレナールさんは悔しさのあまり、何度も何度も泣いてラルクにひたすら助けを求めたのだ。

まだ立ち直っていないだろうに、カップル日記のエミリさんは、まるでセレナールさんに見せ付けるかのように幸せなことばかり綴っていた。

『カラルリと交際はじめました』
『カラルリにペアリング買ってもらった』
『カラルリとオシャレなカフェでデート』
『カラルリと温泉旅行』
『カラルリとモールデート』
『カラルリとイルミネーションの町を通る』
これだけ見ると幸せそうだ。実際どうか分からないけど、セレナールさんよりエミリさんのほうが穴埋め出来ている気がする。

しかし、セレナールさんはエミリさんを妬んでエミリさんのカップル日記にたくさんコメントをした。
『セレナール:私の子返して!』
『セレナール:この人殺し!』
『セレナール:いつか自分に返ってくるわ!』
『セレナール:自分だけ幸せになるなんて許せない!』
『セレナール:アランとはこれだけラブラブだったのね(画像)』
『セレナール:アランとエミリ応援(画像)』
『セレナール:アランとタルリヤの子(画像)』
『セレナール:自分の子を自分で殺したエミリ(画像)』
セレナールさんはかなりの頻度でエミリさんに画像付きでコメントしていたが、エミリさんはセレナールさんのコメントを消すなり幸せ投稿を続けたのである。

落ち武者さんは、エミリさんのアランさんとタルリヤさんの二股映像を学年中にばらまいた。エミリさんは落ち武者さんを通報したものの、映像からは落ち武者さんの指紋は1つも出てこず証拠不十分で落ち武者さんは逮捕されず、落ち武者さんは、毎日エミリさんの二股映像をエミリさんの学年にばらまき続けた。
それからエミリさんは学校をサボってカラルリさんと出かけるようになってしまった。

セナ王女とアルフォンス王子たちが真っ先に逃げた件は、結局、皇太子様が婚約破棄したニュースで上乗せされ、うやむやとなってしまったのであった。

エミリさんには同情したもののセレナールさんに同情は出来なかった。何かとラルクに頼られるのも迷惑だし。

ズームさんとミネルナさんはエミリさんの記憶が戻ったため、実家に帰って行った。ミネルナさんはロォハさんと仲間同士でたびたびバイクで出かけているらしい。また、大晦日には来るそうだ。

カンザシさんは、ドラマ撮影のため、こっちには来ていない。もっと仕事が入ればいいのに。

そんな私はクリスマスイブだというのに、天使の湖にいる。天使の湖は駅から近くで、森の湖の時とは移動が大違いだった。
天使の湖にいられる時間は2時間。それを超えてしまったら、この時代に取り残されてしまう。また、天使の湖は真夏のように暑いからナミネには下に夏用のワンピースを着せた。
それにしても、天使の湖なだけに、天使ばかりがいる。こういうところって観光客来るのだろうか。
私も半袖になった。
あれ、みんな水着で湖に入ってる。
「ラルク、私たちも水浴びしようよ」
「そうだな」
ナミネはワンピースを脱ぎ捨て下着のまま湖に入って行った。
「ナミネ、待って!」
私はナミネを追いかけた。しまった。水着を持ってくるべきだった。その時、ナミネが寄ってきた。
「ナミネ、下着姿で湖入らないで」
ナミネは私にイタズラをした。
「ナミネ、やめて!どうしてこんなことするの!」
私はナミネが心配で来たのに。
「ねえ、ラルク。ヨルクさん天使たちに興奮してるよ」
「仕方ないだろ!水浴びしてんだから」
どうして最近のナミネは私を侮辱するのだろう。その時、ナミネはピンクのショートヘアの女の子を連れて来て、私に手錠をかけた。
「ナミネ、やめて!手錠外して!」
「ここにいるカップル、みんな幸せそうでしょう」
え、どうしてそんな当たり前なことを聞くのだろう。
「はい、みんな仲良さそうだと思います」
「でも、実際は違うのよ。彼女持ちも含め、みんなセレナールに恋してるわ」
どういうことだろう。そんな様子は見られないが。
「あの……でも……」
「本心と核心は違うわ。みんな本心では彼女が好きだけれど、核心ではセレナールとの交際を望んでいるわ」
本心と核心。いったい何なのだろう。
「あの、言ってる意味がよく分かりません」
「ほら、あそこ見なさい!昔のあなたも同じよ」
え、昔の私が昔のセレナールさんを押し倒している!?昔のナミネと現代のナミネがいる。早く誤解を解かなくては!私はピンクのショートヘアの女の子を連れて走った。
「ヨルク……ここじゃダメ……」
「セレナールさん、綺麗……」
こんなの……こんなの私じゃない!
「ヨルクさん、やめてください!ヨルクさんは私のこと好きじゃないんですか?」
昔の17歳くらいのナミネは泣きながら訴えた。
「好きなのはナミネだよ。でも今はセレナールさんとの時間」
何それ……。どうして、どうして私がナミネを裏切るような真似をしているんだ?
「ねえ、ラルク。ヨルクさん、セレナールさんとイチャついてるよ」
「1人じゃ物足りないんだろ。ミナクお兄様のようにな」
違う。私の意思じゃない!私は昔のセレナールさんを扇子で吹き飛ばした。そして、昔のナミネの手を掴んだ。
「ナミネ、私の意思じゃない!私が好きなのはナミネだから!」
私が訴えるものの、昔のナミネは大泣きした。
「もうヨルクさんのこと信じられません。私、ヨルクさんと別れます!」
そう言うと昔のナミネは私を振りほどき、飛んで行った。
「言ったでしょ。本心と核心は違うって」
「それってどういうことなんですか?」
「人は子孫を残すためにパートナーを作るわ。もちろん、好きな人と。けれど、自分のパートナーより綺麗な人がいれば2つ目の恋心を抱くの。言ってしまえば、普段眠っている感情が目を覚ますわけね。あなたの時代はどうか知らないけど、少なくとも今は核心が表に出やすいわ。本心は変えられるけど核心は変えられない感情よ。自覚はないけど抱いている。それが核心よ」
つまり、現代で言うところの一瞬の綺麗だなと感じる気持ちが心に取り込まれてしまうのだろうか。ダメだ。やっぱり分からない。現代のナミネはさっきのを見てどう思ったのだろう。私に失望しただろうか。不安になった私はナミネを探した。するとナミネは下着を脱ぎワンピースを着て、ラルクと天使の湖の向こうにある抜け道に入って行った。私はナミネの脱ぎ捨てた衣類を1箇所にまとめるとナミネを追いかけた。
あれ、さっきまでいたカップルの天使たちがいなくなってる。
「別れたのよ。違う時代から来たあなたたちが原因でカップルの彼氏の核心が目覚め彼女と喧嘩になって別れたの。どの道別れていたでしょうけど」
私たちが来たから……?
「でも、それだと子孫残せませんよね。結婚さえ出来ませんよね」
「それでも男は求めるのよ、セレナールを。私の彼もね」
そんな……天使村はもっと平和だと思っていたのに、核心とか宗教のような感情に縛られているのか?
「昔のアルフォンス王子もクラフもセレナールにアプローチしていたわ。あなたの時代のアルフォンス王子とカナエの仲に亀裂が入らないといいけど。あなたとナミネもね」
そうだった。またナミネに破談を切り出されたら、とてもじゃないけど、耐えきれない。
「あんた、いつまで手錠かけてんのさ」
落ち武者さんは手錠を外した。
「昔の私が昔のセレナールさん押し倒してた!ねえ、本心と核心って何?」
「この時代の人らはまだ原始的な生活をしている。恋愛がまだ分からず子孫を残すことを重視している!簡単に言えばこの時代は子孫を残すことが核心なんだよ!とにかく、とっとと行くぞ!」
子孫を残すことが核心。ダメだ、余計に分からなくなっていた。

湖の向こうはこの時代の町並みが広がっていた。けれど、人々は服と言うより、下着も付けず簡易的な布を巻くだけだった。家も、石を積み上げた洞窟みたいなところで、現代の暮らしとは大きく異なっていた。
市場のところにナミネがいる。私はナミネに駆け寄った。
ナミネは星型のサファイヤの石を手に取っていた。
「ナミネ、それが欲しいの?」
その時、キクスケさんが現れた。
「残念ですが、この時代のものを現代に持ち込むことは禁じられています。時代の違うものは全て逆物質です。買うことも拾うこともいけません。万が一、逆物質を現代に持ち込んでしまったら、また何らかの形で現代が変わってしまうでしょう」
逆物質か。確かに、この時代のものをここで入手して現代に持ち込んでしまえば時代が変わりかねない。残念だけど諦めるしかないか。
「逆物質だって、ラルク」
「まあ、別の時代から来たから仕方ないわな。でも、現代でもバザーやオークションで売り出されてるんじゃないか?」
バザー。安値だったら、現代で入手出来るかもしれない。
「そうだね。でも、この時代の私とヨルクさん別れちゃったしなあ」
本当に別れたのだろうか。
「カナエ、機嫌を直してくれ」
「カナエは気にしていません」
え、カナエさん、めちゃくちゃ機嫌損ねてるし。ということはナミネも怒っているのだろうか。
みんな水着姿だから、男の人はやたらセレナールさんを見てる。

しばらくするとナミネが駆け寄って来た。ナミネは私に抱き着いた。
「どうしたの?ナミネ」
「この季節には夜がありません」
「そ、そうなんだ」
「カモメが飛んでいます。向こうには海があります」
ナミネは私の手をひっぱった。けれど、ここと天使の湖2つ合わせて制限時間2時間だから間に合うのだろうか。
「ナミネ、ここも含めて制限時間2時間なんだ。遠くに行くのはやめよう」
って、みんな海に向かってる?
「ここに入る時、私が時間遅らせました」
あ、そういう手があったか。時計を見るとまだ20分しか経っていない。これなら色々巡れそうだ。
「あ、ナミネ、天使の湖のことだけど、私の意思じゃないから!」
ナミネだけには誤解されたくない。
「ヨルクさんを信じます」
「ナミネ……」
私はナミネを抱き締めた。
「本心と核心は、一見核心のほうが強い感情に思えて、実際、この時代の人はそうだったのでしょうけど、この時代の人にはまだ『好き』という感情があやふやです。子孫を残したいあまり、結婚する人は少なく、男女共に多くの人と関係を持っています。この時代は1人を愛する概念がないのでしょう。しかし、現代は明確です。核心は推しで本心は恋人です。核心はそれだけ緩いもので本心は心変わりがあるので移ろいでゆくのです。現代も子孫を残したい本能があるので核心は付きまといます。この時代は原始的なので少しでも綺麗な人と関係を持って子孫を残してゆきます。核心は生きるために必要な感情なのです」
推しと恋人か。それなら何となく分かる気がする。現代では一般市民からしてみたら遠い存在の芸能人がいるし、簡単に関われないから憧れを持つことしか出来ない。けれど、この時代は芸能人レベルの綺麗な人とも簡単に関われてしまう。
けれど、人の心は移ろいやすいものだ。セナ王女とカラルリさんが別れたように交際しても長続きしないカップルは現代ではありふれている。
そして、この時の私は何も気づいていなかった。昔の私とナミネを引き離すために昔のカンザシさんが私に特殊な惚れ薬と性欲剤を飲ませていたことに。それだけでなく、天使の湖でのことは仲直りしたものの、カンザシさんの雇った不良が私とナミネに包丁を突き付け無理矢理別れさせていたことを。このことは後に誰かから聞かされることになる。
「ヨルク、市場で欲しいものがあるのなら、この時代のあなたが買うといいんじゃないかしら?本人なのだから運が良ければ巡りに巡って現代の家から出てくるかもね」
なるほど。そういう手があったか。
「じゃ、昔のあんた連れてくる」
落ち武者さんは、昔の私とナミネが同棲している家に行くなり昔の私を連れて来て『仲直りの記しに買え!』と星型のサファイヤの石を5つも買わせていた。
「多く買ったほうが、バザーに売り出される確率も上がるだろ」
そういうものなのだろうか。とにかく、ナミネに誤解されていなくて良かった。
少し先を見ると、昔のナミネが昔のカンザシさんと手を繋いでいる。私は凄くいやな気持ちになっていた。さっきの天使の湖の件で昔のナミネは昔のカンザシさんにもたれかかるだなんて。
「ヨルクさん、世の中見たまんまなんてことのほうが少ないです。ここで歴史を変えてしまえば、また現代に支障が出かねません。スルーして私たちも海に行きましょう」
いけない。また良からぬヤキモチを妬いてしまっていた。
「うん、そうだね」
私たちも海へ向かった。

海では多くのカップルが仲睦まじげに泳いでいた。海があるのなら、あの天使の湖はなんだったのだろう。
「エミリ、許して欲しい」
「カラルリって思った以上に面食いだったのね」
「カナエ、機嫌を直してくれないか?」
「しばらくカナエを1人にしてください」
うわー、些細なことで拗れてしまうのか。ナミネが私を信じてくれていて良かった。
「カラルリとアルフォンス様は天使の湖で綺麗な人に話しかけてたのよ。昔のだけど。クラフもね」
「ユメ!」
「そ、そうだったんですね」
結局この時代の人たちは交際しても長続きしないのだろうか。その時、ナミネがカモメを抱っこして駆け寄って来た。
「あんたら記念写真全然撮ってなかっただろ。撮ってやるから並べ」
私とカモメを抱っこしたナミネは並んで落ち武者さんに写真を撮ってもらった。そういえば、あの天使の湖のことで、ここで殆ど写真撮ってなかった。私は浜辺ではしゃぐナミネの姿を写真に撮った。
その時、皇帝陛下と皇后陛下が現れた。
ナミネとラルク、落ち武者さんはすかさず駆け寄った。

「なあ皇帝、この時代の核心ってなんだ?」
何故礼儀を弁えぬ。
「核心はセレナールに想いを寄せることだ」
「何のためにだ?殆どのカップル別れてるだろうがよ!」
「セレナールは、天使村の象徴だからだ。もっとも美しい女性として天然記念物となっている。余もセレナールを皇后に迎えたかったが断られて叶わなかった。けれど、毎日のようにセレナールのことを想っている」
その瞬間、皇后陛下が皇帝陛下を引っぱたいた。
「最低ですわ!」
「けどさ、強気なナミネとか甘えセナだってそこそこ美人だろ!なんで姉さんのみが奉られてんだ!」
そういえば、ナミネのほうがセレナールさんよりずっと魅力的だ。
「確かにナミネは有名ミュージシャンだから多くの男から人気を浴びている。けれど、初代皇帝陛下がセレナールを最も美しい女性と判断し、それが受け継がれている」
歴史というのは実にややこしい。日本村の平安時代なんかは、男ウケしない女性がモテていたと言われているが、妖精村、天使村は日本村とはかなり異なっている。現代でも美しい人がこの時代でも美しいと位置付けされているのか。
「へえ、あんたも含め、男って馬鹿だな」
何故皇帝陛下を侮辱する。そういえば、アルフォンス王子とカラルリさんが声をかけていた女性はどんな人なのだろう。
「あの、ユメさん。アルフォンス王子とカラルリさんが声をかけていた女性ってどんな人ですか?」
「アルフォンス様が声をかけていたのはあそこにいるタイ焼き食べてるピンクのロングヘアの人で、カラルリが声をかけていたのは浜辺で砂遊びしている水色の三つ編みしている人よ。ちなみに、クラフが声をかけていたのは海に入りかけている紫のウェーブの髪の人よ」
「ユメ!」
確かに3人とも芸能人並に美人だ。この時代は普通に話せていたのか。今の時代だと考えられない。学校でもマドンナ的な女の子がいても、アプローチする男の子は全てフラれていたりするし。
けれど、私は着飾っている美人より何も着飾ることなく、いつも可愛くて可愛くて愛らしいナミネのほうが好きだ。
「そうなんですね。確かに3人とも他の女性とは違うというか美人レベルが違いすぎますね」
「男の人ってみんな美人が好きですから」
アヤネさん。
「そういうものですかね……」
「年頃のナミネさんも男の人が放っておかない美人になりますし」
けれど、私は小さい頃からずっとナミネを見てきた。ナミネは成長とともに、どんどん可愛くなるが、少なくとも私は小さい頃からの素で接してくるナミネをずっとずっと好きだった。
「じゃ、レストラン行く」
レストランって、この時代にそんなものあるのだろうか。その時、昔のセレナールさんが駆け寄って来た。
「セルファ、戻ってきたの?」
戻ってきた?天使村以外の場所にいたのだろうか。
「まあね。姉さん、あんたもせいぜいラルクと仲良くしろよ。イケメンに惑わされていたらラルク失うぞ!顔だけヨルクにも近付くな!」
「もうっ、セルファったら何言ってるの!私はラルクだけよ」
女の浮気は男の浮気よりバレない確率が低いと言われている。この時代のセレナールさんも上手く誤魔化しているのだろうか。
「よく白々しい嘘付けますね、セレナール先輩。あなたには何の魅力もありません」
「まあ、小さい頃のラルク?可愛い」
「行くよ、ラルク」
ナミネはラルクの手をひっぱって海岸から離れて行った。

海から歩いてそれなりに経つけれど、レストランってどこにあるのだろう。
「ここだ」
え、これ何?皇室の前にあるのか?それにしても、民家は洞窟なのに、皇室とこのレストランはこの時代には不釣り合いな豪華さだ。
「ねえ、どうして庶民は洞窟で暮らしているのに、皇室とこのレストランはこんなにも豪華なの?この時代に不釣り合いだよね?」
「世の中金だからな。それが核心だ」
「世の中金です。それが核心です」
何故ハモる。つまり、この時代は皇室にお金が注ぎ込まれ、庶民は貧しい暮らしというわけか。

レストランに入ると、外の見渡しがとても良く、少しずつ回転していて現代でも見かけないほどの高価な飾り付けをしていた。
「ナミネ、どれにする?」
私はメニューをナミネに渡した。それにしても、このレストランに来ている人たちは貴族っぽい人ばかりだ。
「クジラのビーフシチューがいいです」
メニューを見てみるとクジラが浮かび上がっている。この時代にこのような現代的な料理があったとは。何だか、この時代の古代というものが分からなくなる。
「じゃあ、クジラのビーフシチュー、一緒に食べようね」
「はい」
ナミネは私といる時は、殆ど『はい』とか『分かりました』の相槌しか打たない。ラルクとはもっと話すのに。私といても楽しくないのだろうか。
「エミリもカナエもいい加減許してあげなさいよ」
その話題まだ終わってなかったのか。
「セナさんには分からないのです。昔のミナクはセナさんだけを見ていました」
「そうよ!ミナクはセナ王女だけを見てたけどカラルリはいきなり見知らぬ女口説いてたわ!あんなの浮気よ!」
ミナクお兄様は、この時代でも上手く誤魔化していたのか。何だか自分の兄を軽蔑してしまう。
「ラルク、おしっこ漏れちゃう」
「早くトイレ行けよ!」
「あんた、天使の湖の湧き水飲みすぎだろ。とっととトイレ行け」
もう、どうして早めにトイレ行っとかなかったの。
「ナミネ、トイレ行くよ」
私はナミネを連れてトイレに入った。

って、うっかり私も入ってしまった。私はナミネがトイレ終わるまで待っていた。

……

あとがき。

微妙に走り書きと違うけど、今回は割と合わせられたほうかも。
やっぱり、セレナールは天使村、妖精村の象徴なんですね。

この物語を書く時に必然的にそうなってしまったのもあるのですが、どのキャラがメインな時もセレナールはヒロインなのです。
元々はセレナールとレナードの話で、話を繋げてしまったら、色んなキャラクターが出てきて、武家メインになってしまったんですよね(笑)

もし、古代編でセレナールが紀元前村に行かず、皇室に留まっていたら全てが変わっていたかもしれません。
純愛偏差値 未来編 一人称版 61話

《ナミネ》

12月14日。
私たちは王室の別荘にて、セナ王女、アルフォンス王子、カラン王子の誕生日会を楽しんでいた。はずだった。
けれど、途中から、変な音がしてラルクと探すと爆弾があったのだ。爆弾はズームさんが解除したものの、肝心の主催者であるセナ王女とアルフォンス王子が爆弾が見つかるなり別荘から逃げ出してしまったのである。ミナクさんとカナエさんも一緒だ。

その後、私とラルクは落ち武者さんの千里眼で爆弾を仕掛けた犯人を捕らえ、聞き込みしたところ、過去にミナクさんに弄ばれた貴族が巻き込み自殺をしようとしていたのだ。すると、他にもミナクさんに弄ばれたという貴族がぞろぞろと出てきて、爆弾を仕掛けた貴族を擁護した。けれど、落ち武者さんは、爆弾を仕掛けた貴族を警察に突き出したのであった。

「カラン、続きのパーティーの進行はあんたがしろ!アヤネ、あんたは王室とセイの家、クレナイ家、キクリ家、皇室にこの映像送れ!」
「分かりました、進行は僕がします」
「分かりました、今送ります」
カラン王子はパーティー会場の前に立ち、続きの進行を再開し、アヤネさんは落ち武者さんが撮影した映像を王室、セイさんの実家、クレナイ家、キクリ家、皇室に送った。
すぐにテレビでは新しいニュースが放送された。
『王室の別荘爆弾事件未遂ですが、これがセナ王女とアルフォンス王子、皇太子様の逃げる様子です。(映像)
この件に関しましては、王妃は〈私の息子は逃げたりしていない。逃げたのは私の子供ではないから王室とは関係ない〉と主張しています。また、今回のことで王室はセナ王女とアルフォンス王子の王女と王子の称号を剥奪するか考えているそうです。
また、一緒に逃げたのはクレナイ家の長男、キクリ家の4女です。14時からセナ王女とアルフォンス王子の実の母親、クレナイ家 母親、キクリ家 長女、皇帝陛下による謝罪会見が行われます。
爆弾の解除をしたブランケット家の長男には後日、皇帝陛下から感謝状が送られるそうです』
私は、ズームさんのお母様の手料理を食べながらテレビを見ていた。セナ王女とアルフォンス王子は庶子だから、王室はいつでも切り捨てられる。それに、クレナイ家も逃げたのはミナクさんだけなのに、お母様が謝罪会見をするなんて、後からどうなるか知れたもんじゃない。
その時、落ち武者さんが鷹を飛ばした。
「ナミネ、机に乗らないでって言ってるでしょ!」
ヨルクさんは私を机から下ろした。
「あんた、そんなこと言ってる場合じゃないだろ!この映像見ろ!」
これ、さっき飛ばした鷹が撮影しているんだ。落ち武者さんてペット飼っていたのか。いいな。ウチとこそういうのダメだし……。

映像は、皇太子様の別荘にクレナイ家のお母様とカナコさんが裏口から入って行った。クレナイ家のお母様はミナクさんを見るなり殴り付けた。
うわー、痛そう。
『お、お母様、申し訳ありません』
『白々しい。よくもクレナイ家に泥を塗ってくれたわね!』
クレナイ家のお母様はミナクさんを殴り続けた。
もう、ミナクさんボロボロだよ。
続いてカナコさんはカナエさんを見るなりカナエさんを殴り付けた。
『よくもこんな恥さらしな真似してくれたわね!』
『ごめんなさいです!』
『カナエの姉よ、連れ出したのは私だ。カナエに危害を加えないで欲しい』
『何なのこのヘタレ王子!』
カナコさんはアルフォンス王子を蹴り飛ばすとカナエさんを殴り続けた。
はあ、私も何か仕出かしたらナノハお姉様に殺されるんだろうな。
ミナクさんとカナエさんが気絶したところで、映像は途切れていた。

「はあ、まさか謝罪会見に行くのがお母様だなんて。本当、ミナクはよくも恥さらしなことしてくれたわね」
それにしても、ミツメさんを除くニンジャ妖精さんはどうやってここから脱出して、今どこにいるのだろう。
「ねえ、ラルク、ニンジャ妖精さんどこに行ったのかな」
「カンザシなら虹色街にいますよ」
えー!いったいどうやって虹色街に移動したの?
「ナミネ、カンザシとは縁を切ろう。手切れ金も上乗せするから」
でも、前は受け取らなかったんだよね。
「うーん、カンザシさんはどこまでも追ってくると思います。それに、突き放すともっと良くないことが起きる気がするのです」
「ナヤセスさんは少し落ち着こうか。ナミネが心配なのも分かるけど、今、ナミネと引き離したらカンザシさんは強硬手段に出かねないと思うよ」
そうなんだよね。これまでの歴史からしても、カンザシさんて私がいなくなった後、酒浸りとか人生放棄してるし。
「本当にカンザシは情けないな。いざという時に逃げられない人がいる中、逃げるなんて」
「僕も、リーダーにはもうついていけません」
その人の行動が人の信頼をなくす。ラハルさんは呆れ果てているだろう。ミツメさんはニンジャ妖精を抜けてソロで活動するかもしれない。カンザシさんの取った行動は、結局はエゴなんだ。後先など全く考えていない。
「ねえ、ラルク、せっかく来たんだし、楽しもうよ」
私は料理をラルクに渡した。
「そうだな。ミナクお兄様の行く末なんて知ったこっちゃないし」
「ズームさん、お疲れ様です。少しでも食べてください」
アヤネさんはズームさんに料理を入れたお皿とお箸を渡した。
「ありがとうございます」
人の恋心は時に残酷だ。ズームさんにはアヤネさんのようなお淑やかな人が似合っている。でも、必ずしも、性格だけで決まるわけではない。時に意外な人が、想い人の心を奪っていったりもする。
「ねえ、ラルク、可哀想だよね、カラルリさん」
「仕方ないだろ!ロォラさんのお兄様のほうが明らかイケメンなんだから!」
イケメン……か。顔だけで言うならどちらもそんな変わらないのに。
「ロォハは月城総合病院からもオファーが来てるよ。本人は医学の道には進まないって言ってるけど」
え、ロォラさんのお兄様って頭良いんだ。ミネルナさんとも初対面の僅かな時間に一気に距離縮まったし、ナヤセス殿とロナさんの時を思い出すなあ。
「ふむふむ、ロォハさんは頭がいいのですな。カラン王子は姫君が脱走して大変ですな」
「もうカナエさんに恋愛感情はありません。あの時のみの縁(えにし)でした。今はナミネさんが好きです。4つほどの前世は何かあるたびカナエさんが転生させましたが、ナミネさんは最後まで戦い続けました。そんなナミネさんの真っ直ぐで勇ましい心はずっと忘れません。けれど、恋愛を人生から完全に切り離していたナミネさんがヨルクさんの告白を受け入れ、タイミングを逃したと後悔しています。でも、今こうやって伝えられたことは後悔していません」
カラン王子、全然知らなかったよ。
「僕もナミネさんが好きです!ロクメもシュリもリーダーがいる手前言えないのでしょうけど、ナミネさんに過去の無罪を晴らしてもらって家族も救われてから、真っ直ぐなナミネさんに惹かれるようになりました」
ミツメさんまで!?
「あんた、モテるな」
どうしよう。またヨルクさん泣いちゃうかもしれない。それに、2人が私のこと好きだったなんて全く気付かなかった。ここで告白されるとも思ってなかった。
「ふむふむ、全く気付きませんでした。しかし、カラン王子と交際すれば、カラン王子は私を大切にするでしょう。そうなれば私も幸せになれたと思います。
ミツメさんの今の真面目で素直で揺るぎのない性格なら相性が合ったでしょう。
しかし、私はヨルクさんが好きです。だから、お二人の気持ちだけありがたくもらっておきますかな」
その時、ヨルクさんが走って会場を出て行った。
「ヨルクさん!」
私はヨルクを追いかけた。

ヨルクさんは廊下で泣き崩れていた。
どうしてこんなにすぐに泣くのだろう。まるで、夫に浮気された専業主婦みたい。
「ヨルクさんは泣き虫ですな」
私はヨルクさんの上によじ登った。
「ナミネ、前世だけでなく現世でもモテてるし、私なんかよりカラン王子と一緒になれば一生の富の幸せが保証される。私は経済力もなければ武士としての素質もない……私は……」
どうしていつもそうやって弱気になるの。
「前にも言ったではありませんか。私はヨルクさんに強さを求めていません。いつも優しくて私のこと大切にしてくれて美味しい料理を作ってくれるヨルクさんが私は好きなんです。他の人ではダメなんです。ヨルクさんじゃなきゃダメなんです。だからもう泣かないでください。信用されてないみたいで悲しいです」
「ごめん!信用してないわけじゃない!ただ、自分に自信がないから!ナミネに捨てられたくなくて」
私はヨルクさんから下りてヨルクさんに口付けをした。私たちはしばらく抱きしめ合っていた。ヨルクさんの精神状態も治まってきたし、私はヨルクさんと会場に戻ろう思った。
「あんたら、何してんのさ!姉さんがエミリに流産させられた。皇太子の別荘に往診に行った未練タラタラのハルが今会場に来てる。とっとと戻れ!」
セレナールさんが流産?朝見た時は妊娠してるなんて気付くような身体じゃなかったのに。いったい何があったのだろう。私はハル院長に詳細を聞くため、会場に走った。

会場では、端っこの椅子にハル院長、アヤネさん、ユメさん、委員長、エルナさん、ナヤセス殿、ロナさん、ナルホお兄様、ラルク、リリカさん、ナナミお姉様、カラン王子、ラハルさん、ミツメさん、ズームさん、ミネルナさん、カラルリさん、アランさん、タルリヤさんが固まって座っていた。
「説明するね。今日の午前まではセレナールが妊娠1週目でエミリが妊娠3週目だった。エミリはアランとタルリヤの子供を異父過妊娠していた。けれど、どうしてか、13時を過ぎた頃、2人の妊娠の速度は早まって、セレナールは妊娠37週目になっていてエミリは妊娠34週目になっていた。セレナールが産気づいた頃、エミリはこれまでの記憶を取り戻し、妊娠していることに対してパニックを起こしセレナールにお腹の中の双子を譲渡してしまったんだ。譲渡した双子は即セレナールのお腹の中で子宮内胎児死亡し、セレナールの妊娠した子も譲渡された弾みで窒息死したんだよね。往診に行った時は、3人の子はセレナールのお腹の中でなくなっていて、セレナールのお腹はギリギリの状態だったから陣痛促進剤を打って3人の子供を取り出した。3人とも死産だった。残念だけど、双子はエミリの子供でも産んだのはセレナールだから、セレナールが3人の子供の死産届と火葬許可証を発行してもらう必要があるよ。現代の法律では譲渡は裁かれることはない。エミリもセレナールも酷くヒステリーを起こして月城総合病院の閉鎖病棟にいるよ」
私は頭が真っ白になっていた。多分私だけでない。ハル院長の説明を聞いたここにいるみんなが混乱している。エミリさんが譲渡でセレナールさんのお腹の子供を殺すなんて想像もつかなかった。どうして、みんな幸せになれないのだろう。せっかく、飛べない翼も上映されているのに、また同じことが繰り返されるだなんて。そこへキクスケさんが現れた。
「歴史は変えられなくても、ひとたび手を下せば未来が変わってしまうものです。エミリさんは一刻も早く記憶を取り戻さなければいけない状態でした。現代の調和を保つため、エミリさんとセレナールさんの妊娠速度は早まったと思われます。エミリさんは記憶を取り戻した瞬間、パニックを起こし、セレナールさんを恨みました。そして、冷静でない状態で譲渡という形でお腹の子を死なせてしまったのです。二度と過去を変えようとしないでください」
ラルクが今回のことを招いてしまったのだろうか。エミリさんは、今後のお武家連盟会議でどのように対応するのだろう。セレナールさんは無事でいられるのだろうか。
3人もの尊い命が同時に奪われ、私は気が滅入ってしまった。もし、私がエミリさんの立場なら穢された恨みをセレナールさんにぶちまけると思う。冷静なんかじゃいられない。エミリさんが受けたのは立派なイジワルだ。
「なあ、キクスケ!なんで事後報告なんだよ!姉さんのお腹の子が生きてる時になんで知らせてくれなかったんだよ!」
「残念ですが、現代を変えたのはそちらでしょう。それにこちらも易々と個人情報は流せません」
あくまで、こちらの自己責任ということか。人の命消えても自己責任なのか。私は納得がいかなかった。
「キクスケさん。皇太子様はどうされたのかな?」
「皇太子様は、セレナールさんともエミリさんとも交際はなさらないようです。セレナールさんは悪意的に皇太子様を誘惑しましたし、エミリさんは記憶が失っているとはいえ、他の人の子供を妊娠してしまいました。今の皇太子様は一種の女性恐怖症に陥っています」
次の皇帝陛下になる人が、いざという時にここから逃げて、エミリさんの記憶が戻るなり、穢れたからとエミリさんを即捨てるだなんて。皇太子様は皇帝陛下になる器なんかじゃない。
「はあ、こんなことになるだろうと思ってたわ」
リリカさんはかなり呆れ返っていた。
「あの、タルリヤさんは今後エミリさんとはどうされますか?」
「正直冷めた。僕の子供を無断で殺すなんていくらなんでも酷すぎる。僕はエミリを支える気は一切ないよ」
やっぱりそうか。記憶を失っていたとはいえ、周りの人がいやだと感じれば離れていく。残酷だけれど。

気が付けば16時。
パーティー会場にいた貴族たちもみんな帰って行った。そして、セレナールさんとエミリさんのことで、14時からの謝罪会見は見れなかった。これは後で録画を見ればいいけれど。もはや、今はセナ王女たちの問題より、エミリさんの記憶が戻ったことが問題だ。この日は大雪で2階まで雪が積もっていたため、ハル院長もここに泊まることになった。
リビングに移動したみんなはしばらく無言だった。
「エミリの野郎、姉さんの子供殺して許せねえ!」
「セルファ、落ち着いて!エミリは既に全てを失ってるわ!」
セレナールさんも2回も子供殺されて可哀想だけど、何も知らなくてアランさんとタルリヤさんの子供妊娠して無自覚に皇太子様を裏切ってしまったエミリさんにも同情する。
その時、ヨルクさんからメールが来た。
『ナミネ、マフラー編んでくれてありがとう』
え、どうして知ってるの!?まさか!私はカップル日記を開いた。

『クリスマスプレゼントにはヨルクさんに手編みのマフラーを渡したい。下手だけど、ナノハナ家の編み物教室で少しずつ編んでる。ヨルクさん喜んでくれるといいな』
個人日記に投稿したつもりが、間違ってカップル日記に投稿しちゃってたんだ。めちゃくちゃ恥ずかしい。

『私、ヨルクさんに編んでいるんじゃありません!』
『ナミネ、楽しみにしてる』
はあ、完成するかも分からないのに編みかけのマフラー投稿しちゃって、複雑な気持ち。ヨルクさんには商店街の服屋でセーターでも買おうかな。
それにしても、この沈黙は耐えがたい気持ちになる。私はカップル日記を見た。

『ミナクとFメモリイ♡』
『誕生日にミナクから世界に一つだけのブローチをもらった。
いつも私のこと考えてくれる素敵な彼氏♡』
セナ王女は相変わらずだ。

『誕生日プレゼントにカナエから手編みのセーターをもらった。
世界に一つだけの愛情のこもったセーター。
また1つ愛が刻まれていく』
カナエさんもどうなるんだろう。

『皇太子様とFメモリイꯁꯧ』
死産になる前のセレナールさんの投稿。今見ると胸が痛む。セレナールさんが騙したとはいえ、お腹の子には何の罪もないのだから。
そんな皇太子様はカップル日記を退会している。

『小学2年生からナミネに編んでいたマフラー。
今年は渡せて凄く嬉しい。
ナミネ、いつまでも仲良くしようね』
わあ、可愛いマフラーたち。ヨルクさん、ずっと私のこと想っててくれてたんだ。とても愛おしい。

その時、テレビからニュースが流れた。
『新たな速報が入りました。
カラクリ家の長女が皇太子様の婚約者の3つ子を殺害しました。その映像がこちらです』

映像は落ち武者さんの鷹が撮っただろうものだった。
皇太子様の別荘のリビングでエミリさんはセレナールさんに近付いた。
『よくもこんな仕打ちをしてくれたわね!セレナール!あなたのお腹の子供を死産にしてやる!』
エミリさんはセレナールさんに、自分のお腹の中の子供を譲渡した。
『きゃぁあああああああああ!!!!痛い痛い痛い!!!!助けて!!!!』
セレナールさんは耐えきれぬ痛みに悲鳴をあげた。
映像はそこで途切れていた。

『この後、地元の病院の院長が往診に来るものの、その時には既に皇太子様の婚約者のお腹の子供は3人とも死んでいたとのことです。皇太子様の婚約者は陣痛促進剤を打たれ3人の死産の子供を産みました。その後、皇太子様の婚約者は酷い精神状態となり地元の病院にいます。またカラクリ家の長女は何もなかったかのようにカラクリ家でテレビを見ていたところ、紅葉町警察は殺人の容疑で逮捕しました』

落ち武者さん、いつの間にリークしたのだろう。でも、これだけのことをするからには、今相当怒ってる。
皇太子様も婚約者と放送された以上はセレナールさんと簡単に縁は切れないと思う。その時、ナノハナ家、クレナイ家、キクリ家の全ての無線が鳴った。
『これよりキクリ家にて緊急お武家連盟会議を開きます。関係者は今すぐキクリ家に来てください』
おおごとになってしまった。けれど、エミリさんのしたことは殺人に変わりはない。記憶を失っていても殺人は殺人だ。人を殺しているのだ。

1時間後、お武家連盟会議の途中でナノハお姉様から連絡があった。レイカさんはセレナールさんは無理矢理エミリさんから皇太子様を奪った挙句、イジワルされ、譲渡では罪にならないと発言し、紅葉町警察署に詳細を話したところ、前世なんて有り得ないし譲渡もない、完全な暴行での殺人だと嘲笑われたらしい。
また、皇太子様は妖精村の恥にならないよう皇帝陛下がセレナールさんとの交際を続けるよう命じ、もし破れば皇太子の称号を剥奪すると言い、皇太子様は渋々セレナールさんと交際を続けることになった。

記憶を取り戻し、記憶を失っていた間に穢されたエミリさんは殺人の容疑で逮捕され、記憶を失っていた間に無理矢理交際させられていた皇太子様はセレナールさんと別れることが出来ない。
これでは、無理が生じてしまう。エミリさんと皇太子様はいつか耐えきれなくなり、セレナールさんの中に爆弾の種を植え付けかねない。
今の落ち武者さんは後先考えず行動している。無計画では物事は何も進められない。

数日後、ハル院長がセレナールさんはエミリさんから暴行を一切受けていない診断書を紅葉町警察署の人に見せ、紅葉町警察署は子宮内胎児死亡していたと判断し、エミリさんは釈放された。
皇太子様は好きでもないセレナールさんとの交際は続けられず皇太子の称号を剥奪されても良いからとセレナールさんとは別れた。

セレナールさんは全てを失ってしまったのである。

……

あとがき。

人を騙したり陥れたりすることで幸せになろうとしても、幸せどころか全てを失ってしまうんですね。

古代編ではあれだけ助け合っていたエミリとセレナールが憎しみ合うだなんて悲しいです。
けれど、皆が夢をひとつにしていた古代編と、別々の夢に向かう未来編では事情が異なってきます。
純愛偏差値 未来編 一人称版 60話

《ヨルク》

私はナミネとの2人の時間も大切にしたい。けれど、結構前から落ち武者さんが半ば邪魔をしてくる。クレナイ家にいてたらクレナイ家にいるし、ナノハナ家にいてたらナノハナ家にいる。
何故自分の家に帰らない。私はそれが不思議で仕方なかった。
ナミネは、交際当初とは比べ物にならないくらい私のことだけを好きでいてくれている。歩く時はいつも私のほうを見てくれるし、泣き虫な私をいつも慰めてくれる。カップル日記も定期的に更新してくれているし、もうナミネのことが可愛くて好きでたまらない。そんなナミネと2人でいられる時間もお風呂だけになった。私の唯一の楽しみの時間だったのに、落ち武者さんまで入って来た。
めちゃくちゃ苛立ったけど、ラルクが森の湖のセレナールさんに復讐したせいで、現代が変わってしまい、今度はまたセレナールさんが危なくなると知って、落ち武者さんを突き放すことは出来なかった。
しばらくはナミネと2人でいられないことは辛いけれど、今は目の前のことを1つずつ片付けていくしかない。
それにしても、セレナールさんは妊娠しやすい身体なだけに、今度は皇太子様に細工しただなんて、聞いて呆れる。
もし、エミリさんが記憶を取り戻して全てを失ったセレナールさんはまたラルクに頼るとか、本当勘弁して欲しい。そこはリリカお姉様に対処してもらわねば。
「ズームさん、ちょっと話があるんですけど……」
「分かりました。丁度僕もあなたに大切な話がありましたので行きましょう」
何の話だろう。凄く気になる。ナミネ、ズームさんに気があったりしたらどうしよう。
「ぼやぼやしてないで僕らも行くぞ」
え、行くってどこに?
落ち武者さんは私とラルクを連れて誰も使っていない客間に入った。

客間に入るなり、ラルクは結界をかけた。
えっ、これって良くないんじゃ……。ナミネが知ったら私を軽蔑するかもしれないし……。
「ねえ、こういうの良くないんじゃない?」
「あんた、何回立ち聞きしてたのさ。どうせ気になるんなら聞いとけ!」
何だか癪に障るけど、ナミネのことが心配で仕方ない私はナミネとズームさんの会話を聞くことにした。
少しすると、話し声が聞こえてきた。
『カンザシさんのこと嫌いとかではないんですけど、兄として見れないというか……。一緒にいる時はかなり距離を縮めてきて意見も一方的で、離れている時は1日に300通くらいメールが来るんです。昔の私はどうしてカンザシさんと交際していたのかなって。築50年のワンルームで、生活費は全部私持ちで、それでもカンザシさんの夢を叶えるために必死だったんです』
兄として見れないか。やはり、ナルホさんやナヤセスさんみたいに手紙とかで交流がなく、いきなり知らされたからだろうか。それにしても、1日300通とか、妹を心配する兄より、もはやストーカーレベルだな。
『人は、何かかが欠けてそれを埋めようとする生き物ですよ。昔のナミネさんは、例えカンザシでも彼氏にしてカンザシを支えることで欠けた何かを埋めようとしていたのではないでしょうか。メールは無理に返さなくてもいいと思います。現代ではカンザシがナミネさんに一方的な恋愛感情を抱いているので、カンザシとの気持ちの温度差が生じているのでしょう。今は結界がありますので、何かあった時に駆け付けることが出来ます。カンザシとの関わりは30分と決めてみたらいかがですか?』
ナミネは恋愛で空白の何かを埋めたいほど辛い状況だったのだろうか。だったら、その欠けた何かを私が埋めたかった。昔のカンザシさんはナミネのことを埋めてくれていたのだろうか。
温度差か。カンザシさんはどうしてナミネに拘るのだろう。他の女性ではダメなのだろうか。人のこと言えないけれど。
『そうですね。あの頃の私は、周りが彼氏と仲睦まじくする姿に憧れ、どうして自分だけが1人なのだろうかと寂しく感じていました。カンザシさんはヒモでしたが、それでも、気持ちは紛れていたと思います。流石に現世ではヒモは養えませんが。でも、どうしてカンザシさんはいっぱい女いるのに、あたかも私だけみたいに言うのでしょうか?』
ヒモ……。築50年のワンルームのアパートでナミネがカンザシさんと2人暮らしだったなんて、考えるだけで辛くなる。無理にでもナミネを引き取るべきだった。
『カンザシも最初はあなたに一目惚れでした。けれど、カンザシに尽くすあなたにカンザシはどんどんあなたを好きになり、カンザシの中であなただけは特別な存在になったんですよ。ナミネさん、言おうかどうかかなり迷ったのですが、今言います。初代天使村でヨルクさんを毒殺したのはカンザシです。元々あなたに好意を寄せていたカンザシはあなたが結婚して執着心を抱くようになり、ヨルクさんがいなくなればとずっと考えていました。けれど、あなたはヨルクさんが暗殺された3ヶ月後に亡くなり、カンザシは女遊びと酒浸りになったんです』
まさか、カンザシさんが私を毒殺して、その後のナミネの人生をめちゃくちゃにしただなんて許すに許せない。私とナミネの時間を返して欲しい。私は悔しさで涙が溢れていた。
『カンザシさんだったんですね。気づきもしませんでした。カンザシさんがヨルクさんを毒殺していなければ、妖精村時代もずっとヨルクさんと一緒だったかと思うととても辛いです。でも、過ぎた過去は変えられません。今は兄ですし。突き放すに突き放せません。可哀想で』
可哀想。そんな言葉で済ませていいのだろうか。私は納得がいかない。ナミネとの幸せを奪うだなんて本当信じられないし、毒殺なんて犯罪じゃないか。
『それは本当でしょうか?古代天使村でもまだ解明されていない事実で、現代の研究者も知らない事実です。どうしてはあなたは知っているのでしょう?』
え、キクスケさん!?まだ、誰も知らない事実なのか。それにしても、よく人を殺して誰にも見つからずのうのうと生きてこれたもんだ。私は絶対に許さない。
『はい、僕は小さい頃からカンザシを見てきました。ヨルクさんを毒殺したのはカンザシです。反対する僕を睡眠薬で眠らせ、起きた時には全てのことが終わっていました』
『そうですか。では、今一度、その時の番人も含めこちらで調べてみます。それでは』
『ナミネさん、カンザシが憎いでしょう。カンザシは昔のラハルさんとあなたの関係も引き離しました。そして、現世でもヨルクさんとの関係を引き離すつもりです』
やはりそうか。カンザシさんにとってナミネは妹なんかじゃない。1人の女なんだ。それも何世紀にも渡って恋をしてきた。ナミネとの関係は何がなんでも守らなくてはならない。
『憎いです。私とヨルクさんの仲を引き裂いたカンザシさんのこと憎いです。でも、私負けません。ヨルクさんのことは私が守ります!カンザシさんのことは許せないですが、やはり兄なので今の私には突き放すことは出来ません』
これも試練なのだろうか。カンザシさん1人を突き放したところで、そのツケはズームさんが一括して払うことになる。ズームさんのためにもカンザシさんに冷たい態度を取ることは危険だ。
『そうですか。ナミネさん、兄の命日にはいつもブランケット家のお墓に青いガーベラの花束が置いてあるんですよ』
今度は何の話だろう。ズームさんにはお兄様がいたのか。
『青いガーベラの花束ですか?』
『ナノハさんと兄はかなり前の前世から愛し合っていたんですよ。現世では不本意な形で兄はこの世からいなくなりましたが。兄はナノハさんに黄色いガーベラをナノハさんは兄に青いガーベラをプレゼントし合っていました。兄が死んだ時、ナノハさんは何度も自分を責めたんです。兄の遺体を見たナノハさんは泣き叫びました。ナノハさんは強い人です。でも、今も心を痛めていると思うんです。兄の死後、ナノハさんはブランケット家には来なくなりました』
あれだけ恋愛に興味を示していなかったナノハさんが、ズームさんのお兄様とだけ大恋愛を繰り返してきただなんて、全く気付かなかったし、信じるに信じられない。
『え、でも、ナノハお姉様は恋をしたことがありません!男の人好きになったことがないんです!とてもじゃないけど信じられません。でも、ズームさんもお兄様を亡くされていたのですね。私も1番上の姉を亡くしています。女子高生イヤガラセ放置事件で調べたら出てきます』
ミドリさんの事件は決して許されることではない。放置した友達も、ガラの悪いミドリさんの同級生も。無実でいることが苛立たしい。ナミネの幸せを奪う者はみんな消えて欲しい。
『酷い事件ですね。ナクリさんによく似たピアノが上手な方はミドリさんだったんですね。あなたも含めてナノハさんは姉妹全員でよくブランケット家に来ていました。けれど、ミドリさんが兄と親しげにピアノの話をしてからは、ミドリさんはあまりウチには来なくなりました』
『まさか、ナノハお姉様が嫉妬だなんてありえません!ナノハお姉様は誰にでも優しくて醜い感情なんて抱いていないです!』
だんだん話が分からなくなってきた。ナノハさんはピアノは弾かない。けれど、ミドリさんは唯一ナノハナ家でピアノを弾いていた人だ。
『人は誰しも裏あれば表もあるのですよ。嫉妬かどうかは分かりませんが、ナノハさんはよくミドリさんのピアノを批判していました。少し話しすぎましたね。ミドリさんの件は僕のほうでも調べておきます』
『私もズームさんのお兄様のお墓参り行きます!いつですか?』
『9月2日です』
こんな偶然ってあるのだろうか。
『ミドリお姉様の命日も9月2日です!』
『そうですか。では、僕もミドリさんのお墓参りに行きます』
ラルクは突然結界を解いた。話、終わったのだろうか。何だか、とても切なくて悲しい話だった気がする。ナノハさんが大恋愛していただなんて全く知らなかったし、その相手がズームさんのお兄様で、今は亡くなっているだなんて。私はナノハさんを哀れに感じた。

12月14日。
セナ王女とアルフォンス王子の誕生日がやって来た。明日がカラン王子の誕生日のため、カラン王子も今日、誕生日会をすることとなった。
真冬だから、ナミネのドレス用のコート買っておいて良かった。
しかし、この日はラハルさんとニンジャ妖精さんがいる。この前の今日なだけに、どうしてもいやなふうに見てしまう。
「じゃ、混む前にプレゼント渡しに行くぞ」
私たちはセナ王女たちにプレゼントを渡しに行った。ナミネはセナ王女とアルフォンス王子には安物の宝石を渡してカラン王子には自作の絵を渡していた。
というか、皇太子様も来ているのか。そうだよな。セレナールさんと交際しているもんな。エミリさんとアランさん、タルリヤさんも来ている。
「ヨルク、今日の料理は全てミミリ先生が作ってくれたものです」
「そうなんですね!凝っているなあと感じていました」
これだけの料理作るの大変だっただろうな。けれど、王室の頼みとなると断れないか。
「いかにも良い母親ですアピールしちゃって、いやな感じ。私食べない」
「あの、使用人に頼めば料理作ってもらえますよ」
「じゃあ、そうするわ」
反抗期なのだろうか。
「ラルク、美味しいよ。ラルクも食べなよ」
「ああ、そうする」
どうして机に乗るの。私がナミネを机から下ろそうとした時、落ち武者さんがナミネを下ろした。
「あんた、料理台無しにしたらどうすんのさ」
「ナミネ、机に登っちゃダメでしょ。私がお皿に入れるから待ってて」
本当、ナミネって手がかかる。私はナミネの分の料理をお皿に入れて渡した。
「美味しいです。もっとください」
「ナミネ、あまり食べ過ぎるとお腹壊すから、このくらいにしといて」
するとナミネは手で掴んで食べはじめた。
「ナミネ、やめて!これみんなの分だから手で掴んじゃ汚いでしょ!」
もう、どうしてこんな子になっちゃったの。
「ねえ、ラルク、ヨルクさんうるさいね」
「まあ、引きこもりだったから、社会を知らないんだよ」
何それ。いつも、ぶっ飛んだことしてるのナミネとラルクじゃない。何故私が悪者にされなければならない。
その時、入口のほうで、ズームさんと淡い赤色のロングヘアの女の子が立ち話をしていた。赤色って珍しい髪型だな。私はズームさんのところへ駆け寄った。
「ロォラ、こんなところに何しに来たんだ!今日は仲間はいないのか?」
友達だろうか。何だか今時の綺麗系の人って感じだな。
「ズームに会いに来た!この手紙渡しに来ただけだから、もう帰る」
「また僕のことハメようとしているのか?あの時のように!勝手にパーティー回ってろ!」
仲良くないのだろうか?
「ズーム、悪かったと思ってる。タイミング逃したんだ。手紙渡そうと思ってたけど、周りがズームのことダサイって言いはじめて、イジメの的にされるのが怖くて渡せなかった」
「だから僕をイジメたのか!最低だな!」
この2人にいったい何があったのだろう。
「ズーム、好きだ!付き合ってとも言わない。許して欲しいとも言わない。ただ、友達になりたい!」
い、いきなりの告白!?何だか、セナ王女たちの誕生日会というより、こっちがメインに見えてきた。
「またクラスの仲間と手を組んで僕をハメる気だろ!もうその手には乗らない!」
ズームさんのクラスメイトだったのか。でも、相手は真剣に告白しているように見えるけど、ズームさんは完全に信じられないのだろうか。
「待ってくれ、ズーム!」
「ズームさん、そろそろプレゼント渡し会はじまりますよ」
「今行きます」
え、ロォラさんはどうなるの?
「ズーム、彼女出来たのか?」
「お前には関係ないだろ!」
「あ、ズームさんのお友達ですか?私はロリハー家のアヤネと申します」
これは三角関係になるのか?
「ズームの彼女なのか?」
「いえ、ズームさんとは最近知り合ったばかりです」
「分かった、今日は帰る」
せっかく来たのにもう帰るなんてもったいない気がする。
「せっかく来たんだから午後過ぎまでいろ!」
やっぱりミネルナさんに似ているかもしれない。ズームさんて見かけによらず気が強いんだ。正直羨ましい。ちゃんと自分持った人だからかつてのナミネもズームさんのこと好きになったのだろうか。
「わ、分かった」
「あ、ロォラさん、料理も食べて行ってください」
私は取り皿を渡した。ロォラさんは無言でズームさんとアヤネさんの後を着いて行った。
「可哀想だよね、ラルク」
「まあ、こればかりは仕方ないな」
何の話だ?可哀想って誰が?ロォラさんなのだろうか?
「ナミネ、何の話?」
ナミネはまたミミリ先生の料理を食べたのか口元にソースがついていた。私はハンカチでナミネの口元を拭いた。
「ねえ、ラルク、どう思う?」
「まあ、鈍いわな」
何それ。ちょっと聞いただけなのに。
「あんた鈍すぎ」
「ねえ、鈍いって何?どうしてみんなして私を馬鹿にするの?」
ナミネたちは走ってプレゼント渡し会に行ってしまった。私も後を追った。

最初はセナ王女か。ミナクお兄様が青い薔薇の花束持ってる。
「セナ王女、お誕生日おめでとうございます。決して高価なものではありませんが、昔から親しくしている宝石店でオーダーしました」
ミナクお兄様はセナ王女に跪いて箱を開けた。
「まあ、素敵なブローチ!気に入ったわ!」
セナ王女はブローチと青い薔薇の花束を受け取った。
「ねえ、ラルク」
「探すしかないな。ナミネ、急げ!」
何があったのだろう。まだ、アルフォンス王子のプレゼント渡し会があるのに。ナミネが戻って来た。
「落ち武者さん、見つけ出しても今のラルクには無理です。爆弾処理班に連絡しましょう」
爆弾!?爆弾が仕掛けられているのか!?
「強気なナミネ、あんたがやれ!」
「分かりました」
ナミネでは無理だ。実践はやっていない。シュミレーションだけで、プロの仕事など出来ない。
「ナミネには無理だと思う。ナヤセスさん探してくる!」
「早く探せ!」
私は周りを見渡した。
「僕が解除します」
ズームさんが?経験あるのだろうか。ナミネはまた会場内を走り回った。
「ズーム、あんた本当に解除出来るのか?失敗したらこの別荘丸ごと吹っ飛ぶんだぞ!」
やっぱりナミネの言うように爆弾処理班に連絡したほうがいいんじゃ……。
「出来ます。姉さん!ここからみんなを出さないでください!」
「分かったわ!」
え、逃がすんじゃなくて出さないの?ミネルナさんは、パーティー会場の前に行き、無線を手に取った。
「これよりD会議を行います。パーティー会場にいる皆様はパーティー会場から出ないでください」
出口にはすぐに武官が配置した。
「ねえ、落ち武者さん、みんなのことは逃がして爆弾処理班呼ぼうよ」
「あんた馬鹿か?こんな大雪の中到着する頃には間に合わないだろうがよ!」
その時、ナミネとラルクが爆弾らしきものを抱えてこっちに向かってきた。
「落ち武者さん!ありました!」
ナミネは床に爆弾を置いた。ズームさんは中身を開けた。
15分!?短すぎないか!?しかも、赤、青、緑、オレンジ、白と5色もある。更には全ての色の線が複雑に絡まっている。
「ラルク、あんただったら、これを何分で解除出来る?」
「13分はかかるかと」
ギリギリだ。そもそも、どうして爆弾なんか仕掛けられているんだ。
「ズーム、何分で解除出来る?」
「7分もあれば解除出来ます」
7分。本当に間違いなく解除出来るのだろうか。落ち武者さんはズームさんにハサミを渡した。
ナヤセスさんが来た。てか、セナ王女はミナクお兄様を連れて、アルフォンス王子はカナエさんを連れてF938でここから逃げている。皇太子様もセレナールさんを連れてここから出ている。客は残して自分らだけ逃げるなんてなんて卑怯なんだ。
ナミネたちはズームさんを見てる。って、切るの早っ!まるで神業だ。実践経験があるのだろうか。
タイムリミットの時間が止まった。
「解除完了です」
「流石だな、ズーム」
「ズームさん、素敵です」
アヤネさん、残っていたのか。クラフとユメさんも。ズームさんを信じているメンバーのみが残ったってことか。アヤネさんはズームさんの額を拭いた。その時、ロォラさんがズームさんに抱き着いた。
「ズーム、無事で良かった」
「ズームさん、大好き!」
ナミネまでズームさんに……。
「アヤネ、あんた主催者と皇太子逃げたこと今すぐリークしろ!」
「分かりました」
アヤネさんは落ち武者さんから写真を受け取り、メモと共に、マスコミにFAXを送った。

数分後、テレビからニュースが流れた。
『本日、第5王子のアルフォンス王子と第6王女のセナ王女の誕生日会が王室の別荘で開かれていました。しかし、12時前にパーティー会場に爆弾が仕掛けられていることが発覚し、主催者であるアルフォンス王子は彼女を連れ、セナ王女は彼氏を連れ、更には皇太子様までもが来客を閉じ込めたまま別荘から逃げました。ちなみに、爆弾はブランケット家の長男 ズームさんが解除したようです。報道陣は今から主催者が逃げただろう皇太子様の別荘に乗り込むつもりです』
いくら王子王女だからって、自分らだけ逃げて、他の客を置き去りにするような人は痛い目あえばいい。
「はあ、ミナクまで逃げて、これじゃあ世間の笑い者ね」
リリカお姉様、来てたのか。
「ズームさんがいて良かったよね、ラルク」
「そうだな。まるで爆弾処理班並だな」
「小学4年生の頃、クラスに爆弾仕掛けられていた時はラルクが解除したね」
そうだったのか。全く知らなかった。
あれ、ミツメさん以外のニンジャ妖精さんもいない。どうやって逃げたのだろう。
「ズーム、よく見ろ!ここにいるメンバーがあんたを信じてたんだ!ロォラもな!」
「やはり、カンザシは逃げましたか」
その時、誰かが駆け寄って来た。
「ロォラ、大丈夫か!!」
誰だろう。またクラスメイトだろうか。
「兄貴、解除は終わった」
ロォラさんのお兄様か。よく見れば淡い赤色の髪で雰囲気も似ている。
「あら、あなたバイクで来たの?」
「そうだけど……」
ミネルナさんはロォラさんのお兄様に名刺を渡した。
「今度人数集めてバイクで出かけましょ」
まさかの展開……。でも、何だか似合ってる。
「分かった。ロォラ、帰るぞ!」
「ロォラ、これ持ってここから出ろ!帰りはタクシーで帰れ!」
ズームさんは皇室のF938をロォラさんに渡した。そっか、犯人捕まえるまでここから出れないんだ。
「分かった。ズーム、学校でな」
「これで後は犯人探しだな」
落ち武者さんの言葉にナミネとラルクは犯人を探しはじめた。
もし、ズームさんが解除出来ていなかったら、この別荘は吹っ飛んでいた。我が身大切さに逃げたセナ王女やアルフォンス王子も許せないけど、今は犯人探しに集中しなくては。いったい誰が何の目的で仕掛けたのか。
必ず突き止める。

……

あとがき。

やっぱり、別荘でパーティーは事件が付き物ですね。
それにしても、セナやアルフォンスが逃げるだなんて、後々どうなるのでしょう。

大まかなことは走り書きに寄せているけれど、でも、結構新たしいストーリーが入っていて混乱します。

果てして、爆弾を仕掛けた犯人とその目的は何なのでしょう。
Copyright (C) 2009 雨の音を聴きながら, All right Resieved.
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