日常のこととかオリジナル小説のこととか。
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ashita
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女性
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地主(土地貸してます)
趣味:
漫画やアニメを見るのが好きです。最推しはフーディーニ ♡
自己紹介:
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ブログ、もう書かないと思ってました。
けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。
小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。
純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。
ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。
小説、ぼちぼちマイペースに書いてゆきます。
よろしくお願い致します。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
お知らせ。
イラストは現在「ナノハナ家の日常」に載せております。サイドバーにリンクあります。
また、「カラクリよろずや」にて無料のフリーイラスト素材配布もはじめました✩.*˚
フリーイラスト素材も増やしていく予定です(*'ᴗ'*)
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
模倣・無断転載などは、ご遠慮ください。
ブログの小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
小説・純愛偏差値に関しましては、武家名・貴族名(程度による) / 及び、武官の階級 / 扇子・羽子板・花札・百人一首・紙飛行機などのアイテム使用方法の模倣の一切を禁じております。
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X @kigenzen1874
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けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。
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現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。
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が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
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〈資格履歴〉
2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
→漢方コーディネーター 合格
→薬膳調整師 合格
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〈資格証明バナー〉

2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
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→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
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2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
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2025年08月04日
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〈資格証明バナー〉

純愛偏差値 未来編 一人称版 139話
《ヨルク》
ナミネが幼稚園に上がる前、私とナミネは婚約していた。けれど、幼稚園の時に『ラルクが好きだから婚約破棄する』と言われ、ずっとそれを引きずっている。けれど、ナミネを諦め切れなくて、何度も縁談書を持って行った。ナミネもナミネで小学生の頃は、よく私の部屋に来てくれていた。でも、ミドリさんがあのようなことになり、ナミネは変わってしまった。
最初はどうにか励まそうとしたけれど、ナミネはしばらく学校に行けなくなり引きこもっていた。それでも、ナミネを幸せにすると何度も何度も、ひたすらナミネとの縁談まとめることだけを考えて生きて来た。
「あのね、ラルク。今回もカラン王子の食事会あるをだって! 私、そこでヨルクさんにプロポーズするんだ!」
ナミネ、ミドリさんのところへ行ったんじゃなかったのか。私は、カナエさんと後片付けがあるから残っているけれど、盗み聞きしているようで、いい気はしない。それでも気になってしまう。
「まあ、いいんじゃね? ナミネ、ヨルクお兄様と交際して落ち着きたいんだろ?」
気持ちは嬉しいけど、ナミネからじゃなくて、私からナミネに花束とプレゼント渡して告白したい。カラン王子って、次期国王の……だよね。
「青春ですね。カナエは、あの兄弟に恋愛感情そのものを奪われてしまったので、お二人が羨ましいです」
今のアルフォンス王子は、まともに見えるし、寧ろカナエさんに気があるように見えるけど。カナエさんは、もうコリゴリか。無理もない。最初がセイさんだったことが、とてもじゃないけど、信じられない。それが不幸のはじまりというか、カナエさんの恋愛にトラウマを与えてしまったのではと思うくらいに。
「カナエさんなら、いっぱいいるでしょう。あ、カナエさんはミドリさんとラハルさんの演奏聴かないのですか?」
ここは私一人で十分だ。
「カナエはカナエで練習しているのでかまいません。キクリ家との行き来ですが、どこにいてもカナエの役目はカナエがやるつもりです」
きっちりしている。カナコさんたちもそうだったな。あ、そういえば、私ってカラルリさんから嫌われているのだろうか。聞いてはいけない気もするけれど、やっぱりはっきりさせておきたい。
「あの、私ってカラルリさんに嫌われているのでしょうか? どうしてでしょうか?」
カナエさんは少し悲しそうな顔をしたように見えた。けれど、私には恨まれる見覚えは全くない。
「お兄様は、チャラチャラしているミナクを嫌っております。けれど、それとは別にコンプレックスがあるのです。クレナイ家はヨルクだけが似ていませんよね? お兄様は、ヨルクの整った容姿に酷く嫉妬しているのです。一方的なものですし、お気になさらないでください」
し、嫉妬!? でも、カラルリさんだってイケメンだし、勉強も運動も出来て、ラブレターだってたくさんもらっている。
「あの、カラルリさんこそイケメンですよね? 文武両道で学年の女子からモテていますし」
私は自分をイケメンだと感じたことはない。私は……ミナクお兄様に憧れていた。服装や髪型を真似しても、ちっとも様似ならなくて。自分は冴えないと思っていた。
「上には上がいます。人は表面上では何も決まりませんが、お兄様は表面的なものも、とても求めています。その一つが容姿なのです。一つのコンプレックスとでも言いましょうか。お兄様は、まだ自分の生き方を見つけられていないようにカナエは思います」
よく分からない。イケメンで文武両道でも悩むということなのだろうか。カラルリさんが、そのようなコンプレックス的なものを抱えていたとは全く知らなかった。
「ねえ、ラルク。さよなら、ごめん、でも……、どう思う?」
何故、今それを聞くのだろう。そもそも、二人はミドリさんのところには行くつもりないのだろうか。
「みんな同級生なら、知れた仲だろうけど、魔が差したんだろうな。仲間割れというより、元々そこまで仲良いメンバーではなかったと思うし、夜中の廃墟で助けを呼べない状況に後々のことは頭になかったと思うが」
そもそも、夜中に廃墟に行く時点でどうかと思う。廃墟だけでない。心霊スポットに行って似たような事件に巻き込まれている若者がたくさんいる。
「そうだねえ。実際かは分からないけど脚本では仕組まれた出来事になってるの」
仕組まれたって、あの事件は興味本位で廃墟に入ったはずだ。けれど、仲良しのグループと見なされ、黒鈴酷華もなかったと少年院にも入れることが出来なかったと書いてあった。
「まあ、そのほうが雰囲気出るしな。でも、良かったじゃん。ナミネまた女優業出来て」
そういう役を中学一年生のナミネが演じるのは正直不安だ。けれど、ナミネの夢も壊したくはない。
「ラハルさんだからだよ。女優とか全然興味ないけど、ラハルさんとなら演じられる、演じたいって思うの」
聞かなければ良かった。物凄く胸が痛む。あくまで演じるだけなのに、二人はそう遠くはない前世、本当に恋人関係だったから。
「まあ、ナミネが今の状況で少しでも、やりたいって思うことあるなら僕は応援する」
ここで話は途切れた。二人はどこかへ行ったのだろうか。
「アンタらミドリんとこ行かなかったのかよ。甘えセナが風呂で話したいことあるって。強気なナミネは行ったけど? ちなみにラルクは姉さんと合流した」
え、セレナールさんにとってラルクは初対面なのに混浴するの? しばし、理解し兼ねる。
「あ、カナエさん、行きましょうか」
他に誰がいるのか不安だし、ナミネまた素っ裸で泳いでるかと思うと早く行きたい。
「カナエはいいです。セナさんに転生ローン払ってもらえませんでしたし。お兄様と入ります」
仲良いんだな。私なら考えられない。姉と混浴とか地獄絵図だ。
「とにかく来い! アンタだけの現在じゃないんだからね? 話し合わなきゃいけないからね?」
落ち武者さんは抵抗するカナエさんの手を無理矢理引っ張った。
私は、慌てて着物を脱ぎ、水着に着替えると露天風呂に向かった。良かった、ナミネちゃんと水着着ている。
「あら、遅かったわね」
セナ王女と、ミナクお兄様と、ズームさん、ロォラさん。なんか微妙なメンバーだな。ラルクとセレナールさんは第二浴場だろうか。
「すみません、カナエさんと後片付けしていました」
てか、二人きりのほうがいいんじゃないのか?
「ロォラ! さっき言ったこと今言え!」
ズームさん、裏表激しい。リリカお姉様ほどではないが。
「あ、ああ。だから、ミネルナさんの痴漢をアニキが助けて、その日に連絡先交換して、交際になって。ブランケット家で食事もしたらしい。アニキ、今は月城総合病院の研究員もしてて、貧乏だった家もすっかり景気良くなって、大学生になったら、医師と掛け持ちになるから、婚約も今年中にするとか」
急展開だな。けれど、カンザシさんと交際するよりずっといいし、幸せになれる気がする。カンザシさんには申し訳ないが。
「ふむふむ、運命ですな。ロォラさんとズームさんも交際したらどうですかな?」
ナミネはどうして真剣な話の時に茶化すのだろう。
「別にズームのこと好きじゃないから!」
今、思いっきり好きだと聞こえたのは気のせいだろうか。
「ロォラとはただの同級生ですよ」
ただの同級生が、ここまで来るだろうか。もう明らかズームさんのこと追いかけてきたよね。ロォラさんてグイグイいくほうなんだな。容姿端麗でスタイルもいい。私はセレナールさんよりロォラさんのほうが好みかもしれない。
「私もバイトしてるし、高卒で働くからアニキに頼らなくても大丈夫だと思う」
ロォラさんバイトしてるのか。
「どんなバイトだ? またパパ活か?」
ズームさんてナミネの話ではロォラさんに散々イジメられていたそうだけど、めちゃくちゃ気にかけている。
「商店街の魚屋。そこに就職する」
意外だなあ。アパレル業界かと思った。
「バイトはいいけど、大学くらい行け! 僕も兄さんも大学は妖精村学園だから!」
大学かあ。武家は基本、大学までは行く。就職の幅を広げるために。今とか就職氷河期だし、奨学金でも大学は行った方がいい気がする。
「うーん、アニキは結婚資金もあるし……」
ロォラさんて誰にも頼らない人なんだ。ナミネも少しは見習ってほしい。
「僕が出す! 出世したら返せ! ロォラならアパレル業界のほうが似合うし、就職ならいくらでも紹介出来る!」
もはや婚約者だな。それもロォラさんが魅力的だからだろうか。人として。
「えと、そろそろ良いかしら?」
そうだった。私たちは今後の話をするんだった。
「あ、ああ。私は正直何の記憶もないけれど、アニキによると私、結婚するらしい」
え、みんな飛ばされたんじゃなかったの? キクスケさんがそういう夢を見せたのだろうか。相手はズームさんだろうか。
「カナエは、お兄様を蔑ろにする時点でセナさんとは関わりたくありません」
カラルリさんも不運な人だな。けれど、ナミネの話ではセナ王女がカラルリさんと交際すれば、妊娠し、中絶薬を盛られてしまう。いくらルリコさんの計画とはいえ、カラルリさんは責任取る気などさらさらなかったのだろう。
「カナエさん、そのことは少し時間もらえませんか?」
ミナクお兄様もカナエさんのこと大好きだよな。夜のキクリ家で一人でトイレ行けないとカナエさん起こしてたっけ。カナエさんは少しも怒らずミナクお兄様をトイレに連れて行っていた。
「ミナク、カナエにとってお兄様は大切な人なのです。いくらセナさんが嫌っていてもカナエのたった一人の兄なのです! カナエはお兄様が幸せなら、それ以上は望みません」
そうだよな。カナエさんとカラルリさんは、まるで恋人のように、いつもベッタリくっついていた。それが羨ましかった。多分今も。
「男尽くしカナエ、焦るな! 僕だってエルナと別れてからずっと一人だけど? 恋人がいることが幸せとは限らない。今はアンタが幸せにしてやれ!」
エルナが本命か。カナエさんと仮交際してるけど、結局、現れてもいないエルナのこと気にしているし。落ち武者さんて恋愛に興味ないようで、めちゃくちゃ引きずっている。
「分かりました。話くらいは聞きましょう」
落ち武者さんもセレナールさんのことで手を焼いている。本音ではセナ王女のこと許せていないだろうな。
「で? 赤線町行きはなくなったからどうする?」
何が何だか頭がついていかないけど、2020年は赤線町に第二王室があることが分かり、セナ王女とアルフォンス王子の実の姉に会うために計画を立てていたけど、今は第二王室の存在の確認が取れていない。
「あ、私も森の湖行ってみたいです」
どうして敢えてそこなんだ。
「へえ、生身がいいってことかしら?」
けれど、セレナールさんが元々は純粋なら私も確認したい。
「いえ、私だけ行っていないので。セナ王女、もう少し離れてもらえませんか?」
惚気けたいのか、今後の話をしたいのか。
「離れたわよ」
セナ王女はビキニの上にタオルを巻いた。やっぱり、二人きりの方がいい気がする。
「あ、やっぱりさっきのほうが……」
はあ、ミナクお兄様がセナ王女の白梅もらったかも分からず、何だかモヤモヤしてしまう。てか、セナ王女のビキニ姿見るの今日がはじめてなのだろうか。それもナノハナ家のものじゃない。白い紐のレースビキニ。セナ王女って、あまり派手なの着ないタイプだろうか。着付け前も素朴な服だったような。
「今日はダメ。カラルリに見られたくないの。前みたいに」
ま、前……。この二人大丈夫だろうか。
「話戻すけど、僕も森の湖行きたい。もう一度、古代の姉さんと話したい。あと、この女優呼び寄せ出来る?」
最後のひと言がなければ姉想いの弟だったのに。呼び寄せって。いくらカナエさんとは仮交際でも、私はそういったものは好かぬ。
「ええ、どの子?」
落ち武者さんはフェアホをセナ王女に見せた。
「新人ね。別荘に呼び寄せ出来るわ。ミナクも来る?」
どうして試すようなことを言うのだろう。
「い、いえ、私はリビングで待ってます」
別荘には行くわけか。
「白梅咲かせていい?」
えっ……女優にとって白梅は命。見たところまだ学生のようだし、芸能生命に関わることはしないほうがいいと思う。
「ええ、契約書にサインしてくれたら構わないわ。それに、この子、白梅はまだだけど、それ以外ので枕営業してるわよ」
いくら清純そうでも、芸能界の裏側は分からない。
「セルファさんはセイ以下ですね!」
最初は落ち武者さんは恋とか知らないあどけなさが特徴だったけど、こんなに女たらしだっただなんて、まるでこれまでのミナクお兄様だ。
「弟をバカにしないで! バカにするくらいなら付き合ったりしないでよ!」
いや、古代のことを言われても誰も何も出来ない。案の定カナエさんは何も言わない。
「セナさん、いる?」
このタイミングでカラルリさんが入って来るとは。セナ王女は、咄嗟に結界をかけた。
「ナミネ、私は第二浴場にいるって言ってくれるかしら? ミナク、私についてきて」
セナ王女は下に降り始めた。てか、命綱なしなのか!? ナミネは結界を出てカラルリさんに近付いた。あんな格好で大丈夫だろうか。
「あ、カラルリさん。セナ王女は10分前第二浴場に移動しました」
そんな嘘は直ぐにバレる。
「分かった」
第二浴場はセレナールさんとラルクがいるんだっけ。
「セナ王女、無事に1階第四居間に着いたらしいですよ」
は、早すぎる。このまま別荘に帰るだろうか。
「なあ、セナ王女って運動神経いいんだな。ズームも運動したらどうだ?」
セナ王女は特別だから。武家でさえも引けを取るくらい優れた運動神経の持ち主だ。
「どうでもいいだろ!」
私もセナ王女くらいの力量ならナミネを守れただろうか。
「カラルリさんが戻る前に出ましょう!」
ナミネは結界を解いた。私たちは慌てて露天風呂を出た。今頃、カラルリさんはセナ王女がいないことに、また苛立っているだろう。
第四居間にセナ王女はいなかった。
「あ、セナ王女とミナクさん、ミドリお姉様のところにいるらしいです」
このままミドリさんのところで朝までいるか、それとも私みたいに使用人の部屋に隠れるか。ここまで来たら別荘に戻るのが安全だと思うけど。
「セナ見なかった?」
え、アルフォンス王子は今までどこにいたのだろう。
「さっきまでは露天風呂にいましたが、その後、カラルリさんが第一浴場に入って来て第四居間に移動し、今はミドリさんのところにいるそうです」
ミドリさんとラハルさんは、まだ演奏をしているのだろうか。
「そっか。セナ、カラルリから変なことされたらしくって」
変なこと? ずっとミナクお兄様と一緒じゃなかったのか?
「ていうか、一度は許し合った仲なんだし、少しくらいいんじゃない?」
落ち武者さんて、どうしてこうも人を苛立たせるようなことを言うのだろう。
「カラルリ、トイレにカメラ仕掛けて、セナとミナクとの様子監視してたんだ。二人がトイレから出る時にミナクに痺れ薬かけて、セナをトイレに押し込めたんだけど結界かけられて逃げられたとか。今はミドリさんとこいないと思うんだよね」
ミナクお兄様もどうして、わざわざトイレまで入るのだろう。前も見られたとか言っていたし、監視カメラとかショックだっただろう。
「とりあえず、データは削除しました。あとはドローンを飛ばして……」
ズームさんの言葉を落ち武者さんは遮った。
「その必要はない。元はと言えば姉さん蔑ろにしたバチが当たったんだろ!」
落ち武者さんはセレナールさんの恨みから協力しようともしない。
「カナエ、転生ローンは私が払う。助けてほしい」
展開が変わりかけている。今、アルフォンス王子がカラルリさんの転生ローンを一括すれば、もう転生ローンのことはカラルリさんの中からもみんなの中からも消えてゆく。何より、カラルリさんにとって、カナエさんにとっても悪くはない話だ。
「本当に払っていただけるのですか? でしたら、前払いでお願いします」
アルフォンス王子は小切手をカナエさんに渡した。交渉成立だ。
「ふぅん、契約と違うけど? アンタとセイの交際写真、学園中にばら撒いてもいいわけ?」
古代のことまで持ち出すだなんて、どうしてそこまで人を許せないのだろう。ロォラさんは写真を手に取った。
「私もイジメしてたから人のこと言えないけど、これ後悔する」
そうなんだけどね。そうなんだけど、落ち武者さんにはまともな話が通用しない。ここまでシスコンだとは思わなかったけど。
「カナエは別に構いません! お兄様の境遇が少しでも良くなるなら、カナエの人生はどうなっても構いません!」
兄妹の絆。私には一生手に入らないもの。カラルリさんの人生もカナエさんの人生もまだ終わってはいない。
セナ王女とは無理でもカラルリさんなら恋愛なんてどうとでもなる。
「いい度胸だね? 今、僕が時間古代に巻き戻したらアンタらどうなる?」
どうして、いつも肝心なところで仲間割れするのだろう。ただ、セナ王女を探すだけじゃないか。カナエさんに扇子を突き付ける落ち武者さんにカナエさんも扇子を突き付けた。
「戻したいのならやってごらんなさい! カナエはセルファさんの脅しでは動揺なんかしません! そもそも古代に戻ればセルファさんは存在さえしていなくて、カナエたちはヨルクの神様呼び出しカードで現代に戻るまでです!」
ああ、そうか。その2020年とやらで所持していたから今も持っているんだっけ。けれど、神様はずっと同じではない。古代が今の神様とも限らないし。でも、神様なら番人以上のことが出来る。理不尽に古代に飛ばされたなら戻してもらえそうな気もするが。
「はあ、仮交際のアンタの償いは、もはや無しに等しく、姉さんは、あの時のアンタの結界で苦しむわけね? アンタ、中身悪魔だ」
カナエさんは悪魔なんかじゃない! そもそも、セレナールさんがカナエさんを陥れようとして、逆に閉じ込められたと聞いているが。どうして落ち武者さんはカナエさんにばかり当たるのだろう。
その時、床が光った。
ここはどこだろう。暗くて何も見えない。
「誰!?」
セナ王女の声だろうか?
「セナ王女! 私です!」
ナミネは炎の舞で明かりを付けた。廃墟になった写真館!? ナミネは確か、ここで私とのことを思い出したと言っていた。
「ナミネ……?」
廃墟とはいえ、本棚にはアルバムがたくさん並べられている。掃除をすれば、また使えそうな気もする。いつまで運営していたのだろう。天使村時代に、ここでナミネとの仮祝言の前撮り写真を撮ったことがある。その他、最後の紅葉橋前のナミネとの思い出も……。辛いから今は押し入れに仕舞ったままだけど。
「セナ王女、何があったのですか!」
パッと見るとミナクお兄様が泣いているセナ王女を抱き締めている。やはりカラルリさん絡みか。あの光はズームさんが数式を書いていたわけか。床に真新しい桜の花びらが落ちているのも、今納得した。
よく見ると足元に数冊積み上げられたアルバムがある。私は無意識に足元の古いアルバムを開いた。
これ、カラーで真新しい。まるで最近撮ったようなものばかりだ。薄い埃で古く見えたのか。確かに、本棚にあるアルバムと比べると色が全然違う。
私はアルバムのページを次々に捲った。まさか、2019年〜2020年までのものなのか!? 私は……私は……。
『ナミネ、私と結婚を前提に交際して欲しい。正直、恋愛感情があるわけではないけれど、未来の結婚相手として結婚を前提に交際して欲しい。ナミネはこのままラルクと交際を続けても口を挟まないしナミネの気になる人に対しても口を挟まなければ、ナミネのプライベートにも口を挟まない。出来れば今すぐ返事が欲しい』
私は、カラン王子の食事会にてナミネに告白をした。ダメ元だったし期待はしていなかった。それでも、あの時は、ただ伝えたかった。ナミネと交際したい気持ちで心が埋め尽くされていた。
『分かりました。その話、お受けしますぞ!』
断られると思っていたが、ナミネはあっさり受け入れてくれた。私は、星型のサファイアのネックレスをナミネに渡した。
その後、ぎこちない関係は続いたものの、私はナノハナ家でナミネのお世話をすることにした。
その後、今のグループと行動をするようになり、森の湖や天使の湖、女神の湖、人魚の湖など、色んなところへ、私たちの真実を求めに行った。紀元前村では電気も水道もない古代の暮らしを体験した。
カラルリさんの転生ローンを返すために、みんなで氷河期町で原石採取のバイトもした。フェアリーフォンは今は寝あがっている。ルナも。
ナミネとは、それなりには上手くいっていたと思う。けれど、あの日の紅葉神社にて全て変わってしまった。
ナミネも……ナミネも……、ここで私との真実を知った時、こんな気持ちだったのだろうか。きっと、ナミネに凄く寂しい思いをさせていただろう。私は思わず涙が溢れた。
「思い出した。全て思い出した。ナミネ、正式に交際してほしい!」
その瞬間、落ち武者さんに扇子で肩を叩かれた。
「アンタさ、今重要な話してんだろうがよ! 一人だけお花畑になってんな!」
あ、忘れていた。抜けた記憶を遡ることで精一杯で周りが見えなくなっていた。
「二人きりで話したいことがあって、ミナクとトイレにいたら生理来ちゃって、ミナクが下着持って来るって出て行った瞬間、カラルリが入って来たの。生理だし何もされないだろうと思っていたけどスカート捲り上げられて壁に押し付けられた。結界かけて逃げて倒れているミナク連れてここまで来たの」
確か2019年ではカラルリさんのほうからセナ王女に冷たい態度取っていたのが、2024年では先にミナクお兄様と交際したため、カラルリさんは孤立したというところだろうか。けれど、聞くところによると、それまではセナ王女とカラルリさんは互いの部屋を行き来していたとか。普通、何とも思っていない男の部屋に行くだろうか。好きでもない異性と部屋に二人きりだなんて私には考えられない。けれど、カラルリさんはまたセナ王女を襲うだろう。
「甘えセナ。アンタ血塗れなんだし、ここから一番近い紅葉病院行くぞ!」
落ち武者さんの提案と共に、みんなは立ち上がり、紅葉病院へと向かった。
紅葉病院……か。かつて、ナヤセスさんが働いていたっけ。
紅葉病院は少しも変わっていなくって、セナ王女を見るなり看護師さんが着替えを用意してくれた。今日はここに休むことになるだろう。けれど、明日は帰らなくてはならない。
「シャナ? シャナなの?」
シャナ? 生きていたのか!? ということはシャム軍医も……。一瞬、私の中にいやな空気が流れた。
「ナミネ……」
シャナはナミネを見たかと思うとベッドから出て、セナ王女に近付くなりセナ王女を引っぱたいた。
「シャナ、どうしたの!?」
何があったのだろう。そもそも、どうしてシャナはここにいるのかも分からない。
「兄さんが月城総合病院で医師として働きはじめた頃、好きな人が出来てセナ王女に何度も別れを告げたもののセナ王女は別れないの一点張りで、私は武官から集団黒鈴酷華を受けた。第二まで喪失したわ!」
どういうことだろう。私たちはそこまでは成長していない。そもそも、運命とも思われたシャム軍医とセナ王女が別れていたという事実には驚いた。
「シャナ、それいつのこと? 私たち、2020年から突然2024年に飛ばされたの!」
そう、私のように記憶を失ったものもいる。
「2023年よ! その後、突然今の世界に飛ばされたけど、私の白梅は元に戻っていないし、あのおぞましい記憶を思い出すたび何度も生きていることがいやになった。私の人生返してよ! 絶対許さない!」
人によって、飛ばされる時間軸が違うということなのだろうか。けれど、聞いている限りではセナ王女は変われていなかったというわけか。シャナを犠牲にするだなんて、いくらなんでも酷すぎる。
「で? シャムはどうしてるわけ?」
シャナがいるなら、当然シャム軍医もいるだろう。氷河期町で再開した時は、セナ王女とあれだけ運命を誓いあっていたのに。時の流れは残酷だ。
「兄さんは実家から妖精村学園に通っているわ。今は高校二年生よ。セナ王女にも同じ目にあってもらうわ! 私には後ろ盾がいるから、足掻いても無駄よ!」
後ろ盾? 誰だろう。シャナも神様呼び出しカードでも持っているのだろうか。
「悪いけど、私にはその記憶はない。2020年から2024年までのことは、皇帝陛下も罪に問わないと公表してるし、私は何も出来ないわ。後ろ盾だろうが、なんだろうが使えば?」
記憶がないから申し訳ないと思わないのだろうか。それとも、また別の理由だろうか。
これで、シャム軍医とセナ王女の恋愛はなくなったけれど、今度はミナクお兄様がナナミさんを好きになってセナ王女に別れを切り出さないか心配だ。
「シャナ、出来ることは何でもする。ただ、私もセナも2023年の記憶は別のものになっているんだ。許してほしいとか図々しいことは言わない。今の私には出来る限りのことをしてあげることしか術がないんだ」
アルフォンス王子は同情するような目でシャナを見た。
「シャナ! 遅れてごめん! セナ元帥……!?」
高校生姿のシャム軍医。考えてみれば、シャナがこんな状況なら毎日でも来るのが当然か。
「シャム軍医……」
セナ王女は切なそうにシャム軍医を見た。二人とも今何を思っているのだろう。
「すみません、セナ元帥。あの時、僕が心変わりしたばかりに、全てがダメになった。あなたを裏切るべきではなかった。後悔してもしきれません」
どうしてシャム軍医が謝るのだろう。恨むでなく、謝る。よく分からない。
「兄さん! どうしてよ! 私はこの女に人生奪われたのよ! 転生しても身体はそのままだった! 許せない!」
そもそもどうしてシャナだけ前の世界のトラウマが身体に残ったままなのだろう。
「シャナ。アンタ、時間飛んでないだろ? 何らかの方法で、いや、シャムが時間を巻き戻したのだろうけど、それが裏目に出たんだよ。記憶もそのまんま。身体もそのまんま」
落ち武者さんの推測が事実なら、シャナはどうして飛ばされたと嘘をついたのだろう。あれ、時間を巻き戻したのなら、どうして出会ってしまったのが2020年のセナ王女でないのだろう。妖精村はいったいどうなっているのだろう。
「でも、だったらどうしてシャナは2024年にいるの?」
私は落ち武者さんみたいに頭が良くないからサッパリ分からない。
「時間は確実に操作したのでしょう。けれど、シャム軍医が書いた数式は過去へ戻るものではなく、未来へ進むものだったのではないでしょうか?」
み、未来? それじゃ、シャナが余計に苦しむだけなのでは。過去だったとしてもシャム軍医がまたセナ王女以外の人を好きになってしまえば同じことの繰り返しだけれど。
「うん、僕は未来へ進ませた。それも80年先の。直ぐに転生してシャナを救ってあげたかった。けれど、番人が現れてルール違反だと記憶も身体もそのまま2024年に戻されてしまった。僕のせいでシャナは人生を失った」
キクスケさんが……。なんだか、残酷に思えて仕方がない。シャナの経験した2023年が、そのまま残った状態で更に若返り不幸を引き継ぐだなんて。
「そんな……兄さんが……」
でも、シャナを救おうとしたシャム軍医をシャナは恨めないだろう。シャナが恨んでいるのはセナ王女1人だ。けれど、2023年のセナ王女や私たちはどうなっているのだろう。
「あの、ズームさん。2023年の私たちはどうなっているのでしょう?」
話についていけない。私は結界は使えても数式に関しては全くの無知。時間というものが全く分からない。
「普通に存在しているでしょう。シャナさんの話が真実なら。成長した本人に会うなんてこともありえると僕は思います」
そ、そんなまさか……! 同じ人が二人!? 常識では検討も付かない。
「僕は未来の自分に会いたくなんかないけどね?」
私とナミネは、あの後結婚したのだろうか。
「うーん、でも、あの世界と今の世界は時間軸が違うので本人同士が出会うことはないと思うんですけど」
確かに私もそこが引っかかっていた。ナミネの言い分のほうが正しく思えるがどうなのだろう。
「兄さんが言ってました。どれだけ別の時間軸に存在していても、時として別々の時間が重なり合うこともあると。遠い昔、そういった事例があったんです。新聞も残っているかと」
ダメだ。また分からなくなってきた。私は、ズームさんや落ち武者さんの世界についていけない。
「セナ元帥! もう一度、僕とやり直してもらえませんか?」
……。何がどうなっているんだ……?
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
あとがき。
時間を戻す。これは禁忌だと考えちゃいます。
でも、本当にセナがシャナを……。
それにしても、やっとヨルクの記憶が戻ったのに、新たな問題が発生しちゃいましたね。
最後の告白はシャナにとって残酷……。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
また、程度によりますが模倣はご遠慮願います。
詳しくは《カテゴリ》→《説明事項》→《模倣のご遠慮願います》をご覧ください。
小説の無断転載もご遠慮くださいませ〜♪
《ヨルク》
ナミネが幼稚園に上がる前、私とナミネは婚約していた。けれど、幼稚園の時に『ラルクが好きだから婚約破棄する』と言われ、ずっとそれを引きずっている。けれど、ナミネを諦め切れなくて、何度も縁談書を持って行った。ナミネもナミネで小学生の頃は、よく私の部屋に来てくれていた。でも、ミドリさんがあのようなことになり、ナミネは変わってしまった。
最初はどうにか励まそうとしたけれど、ナミネはしばらく学校に行けなくなり引きこもっていた。それでも、ナミネを幸せにすると何度も何度も、ひたすらナミネとの縁談まとめることだけを考えて生きて来た。
「あのね、ラルク。今回もカラン王子の食事会あるをだって! 私、そこでヨルクさんにプロポーズするんだ!」
ナミネ、ミドリさんのところへ行ったんじゃなかったのか。私は、カナエさんと後片付けがあるから残っているけれど、盗み聞きしているようで、いい気はしない。それでも気になってしまう。
「まあ、いいんじゃね? ナミネ、ヨルクお兄様と交際して落ち着きたいんだろ?」
気持ちは嬉しいけど、ナミネからじゃなくて、私からナミネに花束とプレゼント渡して告白したい。カラン王子って、次期国王の……だよね。
「青春ですね。カナエは、あの兄弟に恋愛感情そのものを奪われてしまったので、お二人が羨ましいです」
今のアルフォンス王子は、まともに見えるし、寧ろカナエさんに気があるように見えるけど。カナエさんは、もうコリゴリか。無理もない。最初がセイさんだったことが、とてもじゃないけど、信じられない。それが不幸のはじまりというか、カナエさんの恋愛にトラウマを与えてしまったのではと思うくらいに。
「カナエさんなら、いっぱいいるでしょう。あ、カナエさんはミドリさんとラハルさんの演奏聴かないのですか?」
ここは私一人で十分だ。
「カナエはカナエで練習しているのでかまいません。キクリ家との行き来ですが、どこにいてもカナエの役目はカナエがやるつもりです」
きっちりしている。カナコさんたちもそうだったな。あ、そういえば、私ってカラルリさんから嫌われているのだろうか。聞いてはいけない気もするけれど、やっぱりはっきりさせておきたい。
「あの、私ってカラルリさんに嫌われているのでしょうか? どうしてでしょうか?」
カナエさんは少し悲しそうな顔をしたように見えた。けれど、私には恨まれる見覚えは全くない。
「お兄様は、チャラチャラしているミナクを嫌っております。けれど、それとは別にコンプレックスがあるのです。クレナイ家はヨルクだけが似ていませんよね? お兄様は、ヨルクの整った容姿に酷く嫉妬しているのです。一方的なものですし、お気になさらないでください」
し、嫉妬!? でも、カラルリさんだってイケメンだし、勉強も運動も出来て、ラブレターだってたくさんもらっている。
「あの、カラルリさんこそイケメンですよね? 文武両道で学年の女子からモテていますし」
私は自分をイケメンだと感じたことはない。私は……ミナクお兄様に憧れていた。服装や髪型を真似しても、ちっとも様似ならなくて。自分は冴えないと思っていた。
「上には上がいます。人は表面上では何も決まりませんが、お兄様は表面的なものも、とても求めています。その一つが容姿なのです。一つのコンプレックスとでも言いましょうか。お兄様は、まだ自分の生き方を見つけられていないようにカナエは思います」
よく分からない。イケメンで文武両道でも悩むということなのだろうか。カラルリさんが、そのようなコンプレックス的なものを抱えていたとは全く知らなかった。
「ねえ、ラルク。さよなら、ごめん、でも……、どう思う?」
何故、今それを聞くのだろう。そもそも、二人はミドリさんのところには行くつもりないのだろうか。
「みんな同級生なら、知れた仲だろうけど、魔が差したんだろうな。仲間割れというより、元々そこまで仲良いメンバーではなかったと思うし、夜中の廃墟で助けを呼べない状況に後々のことは頭になかったと思うが」
そもそも、夜中に廃墟に行く時点でどうかと思う。廃墟だけでない。心霊スポットに行って似たような事件に巻き込まれている若者がたくさんいる。
「そうだねえ。実際かは分からないけど脚本では仕組まれた出来事になってるの」
仕組まれたって、あの事件は興味本位で廃墟に入ったはずだ。けれど、仲良しのグループと見なされ、黒鈴酷華もなかったと少年院にも入れることが出来なかったと書いてあった。
「まあ、そのほうが雰囲気出るしな。でも、良かったじゃん。ナミネまた女優業出来て」
そういう役を中学一年生のナミネが演じるのは正直不安だ。けれど、ナミネの夢も壊したくはない。
「ラハルさんだからだよ。女優とか全然興味ないけど、ラハルさんとなら演じられる、演じたいって思うの」
聞かなければ良かった。物凄く胸が痛む。あくまで演じるだけなのに、二人はそう遠くはない前世、本当に恋人関係だったから。
「まあ、ナミネが今の状況で少しでも、やりたいって思うことあるなら僕は応援する」
ここで話は途切れた。二人はどこかへ行ったのだろうか。
「アンタらミドリんとこ行かなかったのかよ。甘えセナが風呂で話したいことあるって。強気なナミネは行ったけど? ちなみにラルクは姉さんと合流した」
え、セレナールさんにとってラルクは初対面なのに混浴するの? しばし、理解し兼ねる。
「あ、カナエさん、行きましょうか」
他に誰がいるのか不安だし、ナミネまた素っ裸で泳いでるかと思うと早く行きたい。
「カナエはいいです。セナさんに転生ローン払ってもらえませんでしたし。お兄様と入ります」
仲良いんだな。私なら考えられない。姉と混浴とか地獄絵図だ。
「とにかく来い! アンタだけの現在じゃないんだからね? 話し合わなきゃいけないからね?」
落ち武者さんは抵抗するカナエさんの手を無理矢理引っ張った。
私は、慌てて着物を脱ぎ、水着に着替えると露天風呂に向かった。良かった、ナミネちゃんと水着着ている。
「あら、遅かったわね」
セナ王女と、ミナクお兄様と、ズームさん、ロォラさん。なんか微妙なメンバーだな。ラルクとセレナールさんは第二浴場だろうか。
「すみません、カナエさんと後片付けしていました」
てか、二人きりのほうがいいんじゃないのか?
「ロォラ! さっき言ったこと今言え!」
ズームさん、裏表激しい。リリカお姉様ほどではないが。
「あ、ああ。だから、ミネルナさんの痴漢をアニキが助けて、その日に連絡先交換して、交際になって。ブランケット家で食事もしたらしい。アニキ、今は月城総合病院の研究員もしてて、貧乏だった家もすっかり景気良くなって、大学生になったら、医師と掛け持ちになるから、婚約も今年中にするとか」
急展開だな。けれど、カンザシさんと交際するよりずっといいし、幸せになれる気がする。カンザシさんには申し訳ないが。
「ふむふむ、運命ですな。ロォラさんとズームさんも交際したらどうですかな?」
ナミネはどうして真剣な話の時に茶化すのだろう。
「別にズームのこと好きじゃないから!」
今、思いっきり好きだと聞こえたのは気のせいだろうか。
「ロォラとはただの同級生ですよ」
ただの同級生が、ここまで来るだろうか。もう明らかズームさんのこと追いかけてきたよね。ロォラさんてグイグイいくほうなんだな。容姿端麗でスタイルもいい。私はセレナールさんよりロォラさんのほうが好みかもしれない。
「私もバイトしてるし、高卒で働くからアニキに頼らなくても大丈夫だと思う」
ロォラさんバイトしてるのか。
「どんなバイトだ? またパパ活か?」
ズームさんてナミネの話ではロォラさんに散々イジメられていたそうだけど、めちゃくちゃ気にかけている。
「商店街の魚屋。そこに就職する」
意外だなあ。アパレル業界かと思った。
「バイトはいいけど、大学くらい行け! 僕も兄さんも大学は妖精村学園だから!」
大学かあ。武家は基本、大学までは行く。就職の幅を広げるために。今とか就職氷河期だし、奨学金でも大学は行った方がいい気がする。
「うーん、アニキは結婚資金もあるし……」
ロォラさんて誰にも頼らない人なんだ。ナミネも少しは見習ってほしい。
「僕が出す! 出世したら返せ! ロォラならアパレル業界のほうが似合うし、就職ならいくらでも紹介出来る!」
もはや婚約者だな。それもロォラさんが魅力的だからだろうか。人として。
「えと、そろそろ良いかしら?」
そうだった。私たちは今後の話をするんだった。
「あ、ああ。私は正直何の記憶もないけれど、アニキによると私、結婚するらしい」
え、みんな飛ばされたんじゃなかったの? キクスケさんがそういう夢を見せたのだろうか。相手はズームさんだろうか。
「カナエは、お兄様を蔑ろにする時点でセナさんとは関わりたくありません」
カラルリさんも不運な人だな。けれど、ナミネの話ではセナ王女がカラルリさんと交際すれば、妊娠し、中絶薬を盛られてしまう。いくらルリコさんの計画とはいえ、カラルリさんは責任取る気などさらさらなかったのだろう。
「カナエさん、そのことは少し時間もらえませんか?」
ミナクお兄様もカナエさんのこと大好きだよな。夜のキクリ家で一人でトイレ行けないとカナエさん起こしてたっけ。カナエさんは少しも怒らずミナクお兄様をトイレに連れて行っていた。
「ミナク、カナエにとってお兄様は大切な人なのです。いくらセナさんが嫌っていてもカナエのたった一人の兄なのです! カナエはお兄様が幸せなら、それ以上は望みません」
そうだよな。カナエさんとカラルリさんは、まるで恋人のように、いつもベッタリくっついていた。それが羨ましかった。多分今も。
「男尽くしカナエ、焦るな! 僕だってエルナと別れてからずっと一人だけど? 恋人がいることが幸せとは限らない。今はアンタが幸せにしてやれ!」
エルナが本命か。カナエさんと仮交際してるけど、結局、現れてもいないエルナのこと気にしているし。落ち武者さんて恋愛に興味ないようで、めちゃくちゃ引きずっている。
「分かりました。話くらいは聞きましょう」
落ち武者さんもセレナールさんのことで手を焼いている。本音ではセナ王女のこと許せていないだろうな。
「で? 赤線町行きはなくなったからどうする?」
何が何だか頭がついていかないけど、2020年は赤線町に第二王室があることが分かり、セナ王女とアルフォンス王子の実の姉に会うために計画を立てていたけど、今は第二王室の存在の確認が取れていない。
「あ、私も森の湖行ってみたいです」
どうして敢えてそこなんだ。
「へえ、生身がいいってことかしら?」
けれど、セレナールさんが元々は純粋なら私も確認したい。
「いえ、私だけ行っていないので。セナ王女、もう少し離れてもらえませんか?」
惚気けたいのか、今後の話をしたいのか。
「離れたわよ」
セナ王女はビキニの上にタオルを巻いた。やっぱり、二人きりの方がいい気がする。
「あ、やっぱりさっきのほうが……」
はあ、ミナクお兄様がセナ王女の白梅もらったかも分からず、何だかモヤモヤしてしまう。てか、セナ王女のビキニ姿見るの今日がはじめてなのだろうか。それもナノハナ家のものじゃない。白い紐のレースビキニ。セナ王女って、あまり派手なの着ないタイプだろうか。着付け前も素朴な服だったような。
「今日はダメ。カラルリに見られたくないの。前みたいに」
ま、前……。この二人大丈夫だろうか。
「話戻すけど、僕も森の湖行きたい。もう一度、古代の姉さんと話したい。あと、この女優呼び寄せ出来る?」
最後のひと言がなければ姉想いの弟だったのに。呼び寄せって。いくらカナエさんとは仮交際でも、私はそういったものは好かぬ。
「ええ、どの子?」
落ち武者さんはフェアホをセナ王女に見せた。
「新人ね。別荘に呼び寄せ出来るわ。ミナクも来る?」
どうして試すようなことを言うのだろう。
「い、いえ、私はリビングで待ってます」
別荘には行くわけか。
「白梅咲かせていい?」
えっ……女優にとって白梅は命。見たところまだ学生のようだし、芸能生命に関わることはしないほうがいいと思う。
「ええ、契約書にサインしてくれたら構わないわ。それに、この子、白梅はまだだけど、それ以外ので枕営業してるわよ」
いくら清純そうでも、芸能界の裏側は分からない。
「セルファさんはセイ以下ですね!」
最初は落ち武者さんは恋とか知らないあどけなさが特徴だったけど、こんなに女たらしだっただなんて、まるでこれまでのミナクお兄様だ。
「弟をバカにしないで! バカにするくらいなら付き合ったりしないでよ!」
いや、古代のことを言われても誰も何も出来ない。案の定カナエさんは何も言わない。
「セナさん、いる?」
このタイミングでカラルリさんが入って来るとは。セナ王女は、咄嗟に結界をかけた。
「ナミネ、私は第二浴場にいるって言ってくれるかしら? ミナク、私についてきて」
セナ王女は下に降り始めた。てか、命綱なしなのか!? ナミネは結界を出てカラルリさんに近付いた。あんな格好で大丈夫だろうか。
「あ、カラルリさん。セナ王女は10分前第二浴場に移動しました」
そんな嘘は直ぐにバレる。
「分かった」
第二浴場はセレナールさんとラルクがいるんだっけ。
「セナ王女、無事に1階第四居間に着いたらしいですよ」
は、早すぎる。このまま別荘に帰るだろうか。
「なあ、セナ王女って運動神経いいんだな。ズームも運動したらどうだ?」
セナ王女は特別だから。武家でさえも引けを取るくらい優れた運動神経の持ち主だ。
「どうでもいいだろ!」
私もセナ王女くらいの力量ならナミネを守れただろうか。
「カラルリさんが戻る前に出ましょう!」
ナミネは結界を解いた。私たちは慌てて露天風呂を出た。今頃、カラルリさんはセナ王女がいないことに、また苛立っているだろう。
第四居間にセナ王女はいなかった。
「あ、セナ王女とミナクさん、ミドリお姉様のところにいるらしいです」
このままミドリさんのところで朝までいるか、それとも私みたいに使用人の部屋に隠れるか。ここまで来たら別荘に戻るのが安全だと思うけど。
「セナ見なかった?」
え、アルフォンス王子は今までどこにいたのだろう。
「さっきまでは露天風呂にいましたが、その後、カラルリさんが第一浴場に入って来て第四居間に移動し、今はミドリさんのところにいるそうです」
ミドリさんとラハルさんは、まだ演奏をしているのだろうか。
「そっか。セナ、カラルリから変なことされたらしくって」
変なこと? ずっとミナクお兄様と一緒じゃなかったのか?
「ていうか、一度は許し合った仲なんだし、少しくらいいんじゃない?」
落ち武者さんて、どうしてこうも人を苛立たせるようなことを言うのだろう。
「カラルリ、トイレにカメラ仕掛けて、セナとミナクとの様子監視してたんだ。二人がトイレから出る時にミナクに痺れ薬かけて、セナをトイレに押し込めたんだけど結界かけられて逃げられたとか。今はミドリさんとこいないと思うんだよね」
ミナクお兄様もどうして、わざわざトイレまで入るのだろう。前も見られたとか言っていたし、監視カメラとかショックだっただろう。
「とりあえず、データは削除しました。あとはドローンを飛ばして……」
ズームさんの言葉を落ち武者さんは遮った。
「その必要はない。元はと言えば姉さん蔑ろにしたバチが当たったんだろ!」
落ち武者さんはセレナールさんの恨みから協力しようともしない。
「カナエ、転生ローンは私が払う。助けてほしい」
展開が変わりかけている。今、アルフォンス王子がカラルリさんの転生ローンを一括すれば、もう転生ローンのことはカラルリさんの中からもみんなの中からも消えてゆく。何より、カラルリさんにとって、カナエさんにとっても悪くはない話だ。
「本当に払っていただけるのですか? でしたら、前払いでお願いします」
アルフォンス王子は小切手をカナエさんに渡した。交渉成立だ。
「ふぅん、契約と違うけど? アンタとセイの交際写真、学園中にばら撒いてもいいわけ?」
古代のことまで持ち出すだなんて、どうしてそこまで人を許せないのだろう。ロォラさんは写真を手に取った。
「私もイジメしてたから人のこと言えないけど、これ後悔する」
そうなんだけどね。そうなんだけど、落ち武者さんにはまともな話が通用しない。ここまでシスコンだとは思わなかったけど。
「カナエは別に構いません! お兄様の境遇が少しでも良くなるなら、カナエの人生はどうなっても構いません!」
兄妹の絆。私には一生手に入らないもの。カラルリさんの人生もカナエさんの人生もまだ終わってはいない。
セナ王女とは無理でもカラルリさんなら恋愛なんてどうとでもなる。
「いい度胸だね? 今、僕が時間古代に巻き戻したらアンタらどうなる?」
どうして、いつも肝心なところで仲間割れするのだろう。ただ、セナ王女を探すだけじゃないか。カナエさんに扇子を突き付ける落ち武者さんにカナエさんも扇子を突き付けた。
「戻したいのならやってごらんなさい! カナエはセルファさんの脅しでは動揺なんかしません! そもそも古代に戻ればセルファさんは存在さえしていなくて、カナエたちはヨルクの神様呼び出しカードで現代に戻るまでです!」
ああ、そうか。その2020年とやらで所持していたから今も持っているんだっけ。けれど、神様はずっと同じではない。古代が今の神様とも限らないし。でも、神様なら番人以上のことが出来る。理不尽に古代に飛ばされたなら戻してもらえそうな気もするが。
「はあ、仮交際のアンタの償いは、もはや無しに等しく、姉さんは、あの時のアンタの結界で苦しむわけね? アンタ、中身悪魔だ」
カナエさんは悪魔なんかじゃない! そもそも、セレナールさんがカナエさんを陥れようとして、逆に閉じ込められたと聞いているが。どうして落ち武者さんはカナエさんにばかり当たるのだろう。
その時、床が光った。
ここはどこだろう。暗くて何も見えない。
「誰!?」
セナ王女の声だろうか?
「セナ王女! 私です!」
ナミネは炎の舞で明かりを付けた。廃墟になった写真館!? ナミネは確か、ここで私とのことを思い出したと言っていた。
「ナミネ……?」
廃墟とはいえ、本棚にはアルバムがたくさん並べられている。掃除をすれば、また使えそうな気もする。いつまで運営していたのだろう。天使村時代に、ここでナミネとの仮祝言の前撮り写真を撮ったことがある。その他、最後の紅葉橋前のナミネとの思い出も……。辛いから今は押し入れに仕舞ったままだけど。
「セナ王女、何があったのですか!」
パッと見るとミナクお兄様が泣いているセナ王女を抱き締めている。やはりカラルリさん絡みか。あの光はズームさんが数式を書いていたわけか。床に真新しい桜の花びらが落ちているのも、今納得した。
よく見ると足元に数冊積み上げられたアルバムがある。私は無意識に足元の古いアルバムを開いた。
これ、カラーで真新しい。まるで最近撮ったようなものばかりだ。薄い埃で古く見えたのか。確かに、本棚にあるアルバムと比べると色が全然違う。
私はアルバムのページを次々に捲った。まさか、2019年〜2020年までのものなのか!? 私は……私は……。
『ナミネ、私と結婚を前提に交際して欲しい。正直、恋愛感情があるわけではないけれど、未来の結婚相手として結婚を前提に交際して欲しい。ナミネはこのままラルクと交際を続けても口を挟まないしナミネの気になる人に対しても口を挟まなければ、ナミネのプライベートにも口を挟まない。出来れば今すぐ返事が欲しい』
私は、カラン王子の食事会にてナミネに告白をした。ダメ元だったし期待はしていなかった。それでも、あの時は、ただ伝えたかった。ナミネと交際したい気持ちで心が埋め尽くされていた。
『分かりました。その話、お受けしますぞ!』
断られると思っていたが、ナミネはあっさり受け入れてくれた。私は、星型のサファイアのネックレスをナミネに渡した。
その後、ぎこちない関係は続いたものの、私はナノハナ家でナミネのお世話をすることにした。
その後、今のグループと行動をするようになり、森の湖や天使の湖、女神の湖、人魚の湖など、色んなところへ、私たちの真実を求めに行った。紀元前村では電気も水道もない古代の暮らしを体験した。
カラルリさんの転生ローンを返すために、みんなで氷河期町で原石採取のバイトもした。フェアリーフォンは今は寝あがっている。ルナも。
ナミネとは、それなりには上手くいっていたと思う。けれど、あの日の紅葉神社にて全て変わってしまった。
ナミネも……ナミネも……、ここで私との真実を知った時、こんな気持ちだったのだろうか。きっと、ナミネに凄く寂しい思いをさせていただろう。私は思わず涙が溢れた。
「思い出した。全て思い出した。ナミネ、正式に交際してほしい!」
その瞬間、落ち武者さんに扇子で肩を叩かれた。
「アンタさ、今重要な話してんだろうがよ! 一人だけお花畑になってんな!」
あ、忘れていた。抜けた記憶を遡ることで精一杯で周りが見えなくなっていた。
「二人きりで話したいことがあって、ミナクとトイレにいたら生理来ちゃって、ミナクが下着持って来るって出て行った瞬間、カラルリが入って来たの。生理だし何もされないだろうと思っていたけどスカート捲り上げられて壁に押し付けられた。結界かけて逃げて倒れているミナク連れてここまで来たの」
確か2019年ではカラルリさんのほうからセナ王女に冷たい態度取っていたのが、2024年では先にミナクお兄様と交際したため、カラルリさんは孤立したというところだろうか。けれど、聞くところによると、それまではセナ王女とカラルリさんは互いの部屋を行き来していたとか。普通、何とも思っていない男の部屋に行くだろうか。好きでもない異性と部屋に二人きりだなんて私には考えられない。けれど、カラルリさんはまたセナ王女を襲うだろう。
「甘えセナ。アンタ血塗れなんだし、ここから一番近い紅葉病院行くぞ!」
落ち武者さんの提案と共に、みんなは立ち上がり、紅葉病院へと向かった。
紅葉病院……か。かつて、ナヤセスさんが働いていたっけ。
紅葉病院は少しも変わっていなくって、セナ王女を見るなり看護師さんが着替えを用意してくれた。今日はここに休むことになるだろう。けれど、明日は帰らなくてはならない。
「シャナ? シャナなの?」
シャナ? 生きていたのか!? ということはシャム軍医も……。一瞬、私の中にいやな空気が流れた。
「ナミネ……」
シャナはナミネを見たかと思うとベッドから出て、セナ王女に近付くなりセナ王女を引っぱたいた。
「シャナ、どうしたの!?」
何があったのだろう。そもそも、どうしてシャナはここにいるのかも分からない。
「兄さんが月城総合病院で医師として働きはじめた頃、好きな人が出来てセナ王女に何度も別れを告げたもののセナ王女は別れないの一点張りで、私は武官から集団黒鈴酷華を受けた。第二まで喪失したわ!」
どういうことだろう。私たちはそこまでは成長していない。そもそも、運命とも思われたシャム軍医とセナ王女が別れていたという事実には驚いた。
「シャナ、それいつのこと? 私たち、2020年から突然2024年に飛ばされたの!」
そう、私のように記憶を失ったものもいる。
「2023年よ! その後、突然今の世界に飛ばされたけど、私の白梅は元に戻っていないし、あのおぞましい記憶を思い出すたび何度も生きていることがいやになった。私の人生返してよ! 絶対許さない!」
人によって、飛ばされる時間軸が違うということなのだろうか。けれど、聞いている限りではセナ王女は変われていなかったというわけか。シャナを犠牲にするだなんて、いくらなんでも酷すぎる。
「で? シャムはどうしてるわけ?」
シャナがいるなら、当然シャム軍医もいるだろう。氷河期町で再開した時は、セナ王女とあれだけ運命を誓いあっていたのに。時の流れは残酷だ。
「兄さんは実家から妖精村学園に通っているわ。今は高校二年生よ。セナ王女にも同じ目にあってもらうわ! 私には後ろ盾がいるから、足掻いても無駄よ!」
後ろ盾? 誰だろう。シャナも神様呼び出しカードでも持っているのだろうか。
「悪いけど、私にはその記憶はない。2020年から2024年までのことは、皇帝陛下も罪に問わないと公表してるし、私は何も出来ないわ。後ろ盾だろうが、なんだろうが使えば?」
記憶がないから申し訳ないと思わないのだろうか。それとも、また別の理由だろうか。
これで、シャム軍医とセナ王女の恋愛はなくなったけれど、今度はミナクお兄様がナナミさんを好きになってセナ王女に別れを切り出さないか心配だ。
「シャナ、出来ることは何でもする。ただ、私もセナも2023年の記憶は別のものになっているんだ。許してほしいとか図々しいことは言わない。今の私には出来る限りのことをしてあげることしか術がないんだ」
アルフォンス王子は同情するような目でシャナを見た。
「シャナ! 遅れてごめん! セナ元帥……!?」
高校生姿のシャム軍医。考えてみれば、シャナがこんな状況なら毎日でも来るのが当然か。
「シャム軍医……」
セナ王女は切なそうにシャム軍医を見た。二人とも今何を思っているのだろう。
「すみません、セナ元帥。あの時、僕が心変わりしたばかりに、全てがダメになった。あなたを裏切るべきではなかった。後悔してもしきれません」
どうしてシャム軍医が謝るのだろう。恨むでなく、謝る。よく分からない。
「兄さん! どうしてよ! 私はこの女に人生奪われたのよ! 転生しても身体はそのままだった! 許せない!」
そもそもどうしてシャナだけ前の世界のトラウマが身体に残ったままなのだろう。
「シャナ。アンタ、時間飛んでないだろ? 何らかの方法で、いや、シャムが時間を巻き戻したのだろうけど、それが裏目に出たんだよ。記憶もそのまんま。身体もそのまんま」
落ち武者さんの推測が事実なら、シャナはどうして飛ばされたと嘘をついたのだろう。あれ、時間を巻き戻したのなら、どうして出会ってしまったのが2020年のセナ王女でないのだろう。妖精村はいったいどうなっているのだろう。
「でも、だったらどうしてシャナは2024年にいるの?」
私は落ち武者さんみたいに頭が良くないからサッパリ分からない。
「時間は確実に操作したのでしょう。けれど、シャム軍医が書いた数式は過去へ戻るものではなく、未来へ進むものだったのではないでしょうか?」
み、未来? それじゃ、シャナが余計に苦しむだけなのでは。過去だったとしてもシャム軍医がまたセナ王女以外の人を好きになってしまえば同じことの繰り返しだけれど。
「うん、僕は未来へ進ませた。それも80年先の。直ぐに転生してシャナを救ってあげたかった。けれど、番人が現れてルール違反だと記憶も身体もそのまま2024年に戻されてしまった。僕のせいでシャナは人生を失った」
キクスケさんが……。なんだか、残酷に思えて仕方がない。シャナの経験した2023年が、そのまま残った状態で更に若返り不幸を引き継ぐだなんて。
「そんな……兄さんが……」
でも、シャナを救おうとしたシャム軍医をシャナは恨めないだろう。シャナが恨んでいるのはセナ王女1人だ。けれど、2023年のセナ王女や私たちはどうなっているのだろう。
「あの、ズームさん。2023年の私たちはどうなっているのでしょう?」
話についていけない。私は結界は使えても数式に関しては全くの無知。時間というものが全く分からない。
「普通に存在しているでしょう。シャナさんの話が真実なら。成長した本人に会うなんてこともありえると僕は思います」
そ、そんなまさか……! 同じ人が二人!? 常識では検討も付かない。
「僕は未来の自分に会いたくなんかないけどね?」
私とナミネは、あの後結婚したのだろうか。
「うーん、でも、あの世界と今の世界は時間軸が違うので本人同士が出会うことはないと思うんですけど」
確かに私もそこが引っかかっていた。ナミネの言い分のほうが正しく思えるがどうなのだろう。
「兄さんが言ってました。どれだけ別の時間軸に存在していても、時として別々の時間が重なり合うこともあると。遠い昔、そういった事例があったんです。新聞も残っているかと」
ダメだ。また分からなくなってきた。私は、ズームさんや落ち武者さんの世界についていけない。
「セナ元帥! もう一度、僕とやり直してもらえませんか?」
……。何がどうなっているんだ……?
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
あとがき。
時間を戻す。これは禁忌だと考えちゃいます。
でも、本当にセナがシャナを……。
それにしても、やっとヨルクの記憶が戻ったのに、新たな問題が発生しちゃいましたね。
最後の告白はシャナにとって残酷……。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
また、程度によりますが模倣はご遠慮願います。
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