日常のこととかオリジナル小説のこととか。
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ashita
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性別:
女性
職業:
地主(土地貸してます)
趣味:
漫画やアニメを見るのが好きです。最推しはフーディーニ ♡
自己紹介:
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ブログ、もう書かないと思ってました。
けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。
小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。
純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。
ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。
小説、ぼちぼちマイペースに書いてゆきます。
よろしくお願い致します。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
お知らせ。
イラストは現在「ナノハナ家の日常」に載せております。サイドバーにリンクあります。
また、「カラクリよろずや」にて無料のフリーイラスト素材配布もはじめました✩.*˚
フリーイラスト素材も増やしていく予定です(*'ᴗ'*)
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
模倣・無断転載などは、ご遠慮ください。
ブログの小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
小説・純愛偏差値に関しましては、武家名・貴族名(程度による) / 及び、武官の階級 / 扇子・羽子板・花札・百人一首・紙飛行機などのアイテム使用方法の模倣の一切を禁じております。
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X @kigenzen1874
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ブログ、もう書かないと思ってました。
けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。
小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。
純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。
ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。
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よろしくお願い致します。
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お知らせ。
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〈資格履歴〉
2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
→漢方コーディネーター 合格
→薬膳調整師 合格
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〈資格証明バナー〉

2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
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→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
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〈資格証明バナー〉

突然ですが、新しくブログを開設しました✩.*˚
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1つ目は《純愛偏差値》
ここには、これまで書いた色んな小説を載せていますが、純愛偏差値では本当に純愛偏差値オンリーのブログとなります。
また、ここで言うところの124話を1話とカウントして載せております。
興味のある方は是非(◍ ´꒳` ◍)
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
2つ目は《YOUSEIMURA》
具体的にサイト案内です。
いくらリンクに載せたとて、気付かない人もいると思うんですよね。
なので、まとめたサイト案内を作らせてもらいました。
試験的にザックリ作ったため、バナーは大雑把です(^▽^;)
また、良かったら一度見てもらえると助かりますm(_ _)m
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
名刺には、《雨の音を聴きながら》のQRコードを入れていたので、名刺の裏にサイト案内《YOUSEIMURA》のQRコードを入れました。
落ち着いたらバナーも変更したいなと思っています(*´︶`)
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1つ目は《純愛偏差値》
ここには、これまで書いた色んな小説を載せていますが、純愛偏差値では本当に純愛偏差値オンリーのブログとなります。
また、ここで言うところの124話を1話とカウントして載せております。
興味のある方は是非(◍ ´꒳` ◍)
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2つ目は《YOUSEIMURA》
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純愛偏差値 未来編 一人称版 128話
《ヨルク》
副委員長と博物館に着いて2階に上がった途端、ナミネに抱き着かれた。振りほどきたくない。けれど、ナミネはラルクを想っている。私がナノハナ家の使用人としてナミネを監視しているとも知らずに。
幼稚園の年長の頃、ナミネに婚約破棄をされた。2歳の時にナノハさんの推薦でナミネと婚約出来たことを心から喜び幸せを感じていたけれど、その想いも3年の夢だった。ナミネは泣きながらラルクのことが好きだから私とは結婚出来ないと訴えた。あの時はショックで寝込んだ。諦めようとも思った。けれど、諦めきれず何度もナノハナ家に足を運んだ。そんなナミネがどうして今、泣きながら私に抱き着いているのだろう。
「ヨルクの知り合い?」
副委員長は役者を目指している。が、何度もオーディションに落ちて、フェアリーZ広場でフラワー女優の真似事をしている。
「あ、えっと、近所の子」
幼なじみと言えなかった。婚約破棄された以上、妹のような存在と言うには虚しすぎるから。
「婚約者です! ヨルクさんの婚約者です!」
何の冗談だろう。ラルクにフラれて焼けになっているのだろうか。
「おい! 強気なナミネ! 勝手に動くな!」
落ち武者さんにラルク!?
「あ、セルファ〜!」
どうしてここにいるのだろう。
「はいはい、副委員長。行くぞ、強気なナミネ!」
落ち武者さんは私からナミネを引き離そうとしたが、ナミネは私にくっついたまま離れない。
「ナミネさん、焦らなくても大丈夫ですよ。時が来れば必ず元に戻れます」
って誰!? 新しい友達だろうか。頭良さそう。
「はい……。すみません、ヨルクさん。少し怖い夢を見ただけです」
ナミネは私から離れた。私は放っておけず、ハンカチを取り出しナミネの涙を拭いた。
「あ、副委員長。この子、僕と付き合ってるから」
何故嘘を言う。
「えっ、そうなの!? 何だか以外。セルファって歳上が好きだと思ってた」
歳上……か。そんな風にも見えるが、やたらとナミネに付きまとうのが気に障る。
「ねえ、どうしてそういう嘘言うの? ナミネ、好きな人いるから」
落ち武者さんはため息をついた。何のため息だ。
「じゃ、僕ら行くから」
落ち武者さんはナミネの手を取り階段を降り始めた。入れ替わるようにカナエさんとその友達がこちらへ来た。
「ヨルク! 元気にしていますか?」
最後に会ったのいつだっけ。
「一応元気です」
そう、一応。いや、元気とは言わないか。
「また、キクリ家へ来てください。カナエが料理を作ります」
カナエさん、本当に料理が好きなんだな。私もカナエさんがきっかけで家事をはじめたっけ。
「はい、きっと行きます!」
カナエさんは全然変わっていない。今でも私の姉のような存在だ。
「この人もヨルクの知り合い?」
そっか、副委員長には家柄のこと何も話してなかったんだっけ。
「キクリ家・4女、カナエと申します。高校1年生です」
カナエさん、小柄だから中学生と間違われてそう。
「はじめまして。中等部のタレリナです。歳上だったんですね」
やっぱり、ナミネやラルクくらいに思われてたかな。
「はい、姉は身長高いですが、カナエは小柄なのです」
カナエさんくらいの体型がちょうどいい気がする。個人的にだけれど身長が高い女子(おなご)は苦手かもしれない。けれど、ナミネは高校生からは身長伸びるんだっけ。中学生の頃より可愛くなって男からモテまくる。
そういえば、少し向こうで銀髪の女子(おなご)が泣いているような。カナエさんの知り合いだろうか?
「あの、向こうで銀髪の女性泣いてますよね? 何かあったのでしょうか?」
あの泣き用。何となく心配だ。
この時の私は、あの銀髪の女子(おなご)がラルクの想い人であることを全く知らなかったのである。
「少し行き違いがあったようです。先程、武官が現れまして助ける順番がおかしいと指摘されたのですが、カナエはカナエなりにみんなを助けようとしていました」
武官がこんなところに!?
「えっ、武官だなんて怖いわ」
副委員長も一般人。カナエさんと一緒に来ている人もそうなのだろうか。
「大丈夫だよ、副委員長」
私とて武家出身。カナエさんほど強くはないが、仲間を見捨てたりはしない。
その時、銀髪の女子(おなご)がこちらに近付いてきてカナエさんにペットボトルのお茶をかけようとした。
「カナエさん!」
咄嗟に私はカナエさんを少し突き飛ばした。
「大丈夫!? ヨルク!! あなた何なんですか!?」
どうしてカナエさんだけを狙ったのだろう。
「ヨルク! 大丈夫ですか? セレナール! いい加減にしてください! カナエはセレナールを見捨てようとしたことはありません!」
セレナール。はじめて聞く名前だ。
「あ、私は大丈夫です」
寧ろ、冷たいお茶で良かった。
「ヨルク、すみません。これを使ってください」
カナエさんは私にハンカチを渡した。カナエさんの持つハンカチ、今でも変わっていない。
「ありがとうございます」
私はカナエさんからハンカチを受け取った。
その時『そこまで』と聞こえた気がした。
ここはどこだろう。あ、番人部屋か。
「申し訳ありませんが、今はあの人たちと深く関わる時ではありません」
どういう意味だろう。
元々、今回の2番目の番人は弟だった。それが気が付いたら私になっていた。
「あの、状況がよく分からないのですが」
キクスケさんと会うのも久しぶりな気がする。
「率直に申し上げます。
ついこないだまで2020年だったところを事情があり、私(わたくし)が皆さんを2024年に飛ばしました。
あの博物館にいた人たちはみんなあなたの友達でした。
また、ナミネさんはあなたの婚約者でした。
私(わたくし)が話せるのはここまでです」
ナミネが婚約者!? 最近まで2020年って……。ダメだ。言っていることが分からない。
「あの、ナミネと私は本当に婚約者だったのでしょうか? だとしたら、ナミネは弟にフラれたショックでヤケになって私との縁談を決めたのでしょうか?」
やっぱりナミネのことは気になってしまう。
「今はお話出来ませんが、いずれ思い出します」
肝心なところだけ、いつも曖昧だ。
私は紅葉橋にいた。
あ、副委員長はどうなったのだろう。私はフェアホを取り出し、副委員長にレインを送った。
『副委員長、ごめん。休養が出来て。今、家に戻ってる?』
怒っているだろうか。
『何言ってるの。あの後、天候の悪化で警報が出て、あの場にいるみんながバスに乗り込んだじゃない。もうお風呂も済ませたわよ』
キクスケさんが辻褄を合わせてくれていたのか。とりあえず、副委員長が家に戻っているなら安心だ。私は、いつものようにナノハナ家へ向かった。
使用人の入り口から入り込み……。
「遅かったね? 副委員長と濃厚な時間でも過ごしてたわけ?」
え、どうして落ち武者さんが……。
「ねえ、どうして落ち武者さんは実家に帰らないの? ここ落ち武者さんの家じゃないんだよ?」
ナミネが落ち武者さんとのほうが親しいと思うと何だか複雑で嫌な気持ちになる。
「とにかく、第4居間行くぞ!」
私は何が何だか分からないまま、落ち武者さんに手を引かれ第4居間へ連れて行かれた。
懐かしい。ここでナミネとナルホさんと遊んでた。
「ヨルクさん……!」
振り向くなりナミネは立ち上がったが、座って私から顔を背けた。やはり、博物館での出来事は私の想い上がりだったのだろうか。そして、あの眼鏡の人、本当誰だろう。
「セレナール先輩どうでした?」
セレナールって、あの銀髪で髪が長い女子(おなご)だろうか? どうして、その人のことを気にするのだろう。
「カナエさんと一緒に来てた人なら相当泣いていてカナエさんにお茶をかけようとしてたが」
結果、私がかけられるハメになってしまったが。行き違いと言っていたが、どうもそうは思えない。その時、フェアホが鳴った。私が中を見ようとしたら落ち武者さんにフェアホを取られてしまった。
「ちょっと何するの! それ私のフェアホだから!」
何なの? ラルクも落ち武者さんも、どこか変。
「ふーん、男尽くしカナエとは連絡取ってんだ? でも、他とは仲良くするな」
は? 仲良くするなって、たまたま会っただけで、カナエさんとカラルリさん以外は全く知らないし。
「あのセレナール先輩は……」
セレナール、セレナールって、ラルクはあの女子(おなご)の何なんだ? ナミネを泣かせるような真似は見たくない。
「姉さんなら、セリル迎えに来て今は落ち着いてるらしいけど? 男尽くしカナエのことは相当恨んでるみたいだけどね?」
姉さんって、あのセレナールって人が!? 確かに銀髪は銀髪だが。あまり似てるようには感じない。
「落ち武者さんって、兄弟いたの?」
あのワガママさからして、てっきりひとりっ子かと。
「はあ。じゃ、聞くけどアンタは何人兄弟なわけ?」
ああ、そうか。武家のみが兄弟いるイメージだったが、普通に一般人にもいるのか。どういう暮らしかは知らないが。
「そっか。あまり似てないね」
いや、似てるか。どことなく自分中心なところが。
「そういうものですよ。僕もラルクさんがヨルクさんの弟だと教えてもらえなければ気付きませんでした」
え、私を知っているのか? けれど、私はこの人を全く知らない。
「じゃ、そこまで。
強気なナミネには忠告はしたけど、男尽くしカナエと今後も関わるなら、こっち側についてほしい。
今から言うこと、よく聞け!」
え、こっち側って何? 落ち武者さんは続けた。
「信じるも信じないもアンタの勝手。
けど、ついこないだまで僕ら2020年にいた。勿論アンタもね? けど、そこにいる金だけズームの姉ミネルナが……と言っても分からないか。キクスケが突然現れてミネルナ救うために僕らを2024年に飛ばした。
強気なナミネはアンタと交際してた。アンタの告白でな。それも、アンタは付きまとうように強気なナミネにくっついて、朝飯から弁当、晩飯まで作って一緒に風呂まで入って同じ布団で寝て空咲ばっかり……」
私は無意識に落ち武者さんの口を塞いでしまった。けれど、キクスケさんが言ってたことと同じだ。私は本当にナミネと交際していたのか? ナミネと深い関係になるくらいにナミネも私のことを好いてくれていたのだろうか?
「セルファさん、その呼び方では、まるで僕が金の亡者みたいですね。それに、その説明では伝わりませんよ」
この人が仕切っているのだろうか。武家には見えないが。
「じゃ、恵まれズーム」
恵まれ……王族だろうか?
「僕のこと覚えていないかもしれませんが、元々はラルクさんもそうでした。けれど、ラルクさんは今後の展開を、いえ、過去の展開を知り、カナエさんたちのグループには直ぐには近づかないことを決意しました。
元々は姉さんが、あなたに瓜二つの顔を持つ僕の幼なじみカンザシに黒鈴酷華されたことが原因でキクスケさんは現れ、姉さんは純白でいなければ妖精村は存続出来ないと言い出し、僕らは突然2020年から2024年のこの世界に飛ばされました。
前の記憶は覚えている人はナミネさんとセルファさんだけでした。また、ヨルクさんとナミネさんは交際していました。ナミネさんは心からヨルクさんを愛し、ヨルクさんもまたナミネさんを愛していました。
けれど、今の段階だと僕もカナエさんとのみ交流を持ち、他のメンバーとの交流はオススメ出来ません。現にあなたも戸惑っているように、元のメンバーにいきなりこれまでのことを話、仲間だと言ったところで信じてもらえない可能性が高いです」
確かに、にわかに信じ難い話だ。これを、カナエさんと一緒にいた人たちが信じるかと言えばそうではないだろう。けれど、落ち武者さんの話よりかは順序が把握出来た気がする。この人が言っていることが本当なら今までの私の時間は何だったのだろう。ナミネは本当に私を愛してくれているのだろうか? 分からない。けれど、ナミネが本当にラルクでなく私のことを想っていたなら、ちゃんと気持ちを伝えたい。
「そうですよね……確かに今のお話は……」
話している途中で落ち武者さんは遮った。
「男尽くしカナエに二重スパイさせるのもありだと思うけどね?」
カナエさんとて信じるだろうか。
「まだ4月です。少しオススメ出来ませんね。
あと、これフェアホに入っていたヨルクさんとナミネさんのお写真です。レインを教えていただけたら送ります。もし、僕たちの仲間になってもらえるなら番号も教えてもらえませんか?」
まるで、つい最近撮ったかのような、まるで恋人かのようなナミネとのツーショット! 私とナミネは本当に恋人だったのか!? 私は咄嗟にレインのQRコードを見せた。
「読み取りました。今送ります」
キクスケさんが私に接触したこともあるし、番号も教えておこう。私はレインからフェアホ番号とメールアドレスを送った。
レインの名前はズーム。さっき落ち武者さんが言ってた金のみズームなのだろうか。お武家連盟に加入している者の連絡先は全て入っているからナミネとラルクの連絡先はずっと入っている。落ち武者さんはクラスメイトだから連絡網用に連絡先は入っている。今回、ズームさんと連絡先交換を出来たから、事情の知っている者の連絡先は全て得たことになる。フェアホ番号とメールアドレスもレインから送られてきた。
「ありがとうございます。私はクレナイ家・次男のヨルクで中学2年生です」
と言っても、ズームさんは知っているわけか。
「改めまして、僕はブランケット家・次男のズームです。今年から高校1年生になりました。
僕が思うにこの世界は……」
また落ち武者さんに遮られてしまった。本当何なのだろう。
「顔だけヨルク、神様カード出せ!」
神様カード!? はじめて聞くし、そんなものあっていいのだろうか。
「そのような物、私は聞いたこともない」
すると落ち武者さんは、いきなり私のポシェットを取り、中身を見た。
「ちょっと! どうしてこんなことするの!」
本当信じられない。そのセレナールという者もロクでもない人間な気がする。
「あった! やっぱり、前の世界の引き続きだね?」
神様呼び出しカード……? 見たこともない。けれど、見てしまった以上、無くしてもいけない気がする。
「ヨルクお兄様、こちら側についてください。ナミネも僕がセレナール先輩と交際するためにタイミングが来たら仮恋人になって協力してくれますし」
ラルクとは長らく関わっていなかったけど、やはり命令癖は変わっていないか。それに仮恋人って、それではナミネがあんまりではないか。
「ねえ、どうしてラルクが命令するの? ラルクにとってナミネって何? ナミネを振り回さないで!」
ラルクは勉強も武術も私よりずっと上だ。本人は、弱く勉強の出来ないフリをし続けているが。
「とりあえず、こんな時間ですし、ヨルクさんはナミネさんとお風呂に入りますか?」
えっ、本当に前がそうしていたならそうしたいけど、私はナミネとそのような関係ではない。
「いえ、私は……」
今度はナミネに遮られた。
「私、いつもみたいにみんなと入ります! ヨルクさんも入るなら褌付けてください! いつもヨルクさんはそうしていました! 今年は赤い褌が流行るそうなので」
何故かナミネに六尺褌を渡された。って、この展開覚えている! 遠い遠い前世、ナミネとアパート暮らしをしていたら、ある日突然家では褌を付けるよう言われ、無理矢理履かされていた。やっぱりナミネは変わっていない! あの時のナミネだ! けれど、また私を好きという確証はどこにもない。
「褌など、私はそのような恥ずべきモノは履かない」
しまった。あの時を思い出して、つい……。ナミネは泣きはじめた。目が赤い。ずっと泣いていたのだろうか。そういえば、博物館の時も泣いていた。私は咄嗟にナミネを抱き締めた。
「ごめんね、ナミネ! 今日は何が食べたい?」
ナミネのことが心配で使用人としてナノハナ家に忍び込んでからナミネの食事は全て作っていた。お風呂も沸かしていた。
「いや、今は一刻を争う事態だ! 向こう側の人間が思い出すまでは一寸の油断も出来ない。顔だけヨルク、アンタはもう使用人なんかするな! こっちを手伝え!」
はあ、落ち武者さんも命令型だった。学校では、いつも笑顔で天然キャラ演じているのに。
「やっぱり、あの料理はヨルクさんが作っていたのですね! 私、待ちます! ヨルクさんが思い出してくれるのを待ちます! ヨルクさん以外の人とはお付き合いしません!」
何故か告白のようなことをされてしまった。今すぐ……今すぐ交際したい! もう誰にもナミネを取られたくない! けれど、そのみんなのいう『ついこないだ』を私は知らない。私の身勝手で直ぐに交際してしまえば逆にヒビが入りかねない。ちゃんと思い出そう。
「ナミネ! 私は……!」
どうして遮られるのだろう。
「じゃ、風呂行く」
え、ナミネも!? 結局私はナミネが心配でみんなと一緒にお風呂に入ることにし、私だけ露天風呂でナミネを見守った。いつも、あんな感じの水着着ているのか。地味だけれど、ナミネも歳頃だし何も身に付けないよりかはマシだ。
その時、フェアホが鳴った。
『ヨルク、大丈夫ですか? こんな時で申し訳ないのですが、適当なタイミングでキクリ家に来てもらえませんか? それと、出来ればカナエと親しくしているお友達とは関わらないでほしいのです』
カナエさんは知っている! 知らないはずがない。博物館の時は知らないフリをしていたのか。
「やっぱりね? 男尽くしカナエは全てを知っている!」
落ち武者さんも、その前の世界とやらのカナエさんを知っているのか。何だか、疎外感を抱いてしまう。
「カナエさんが覚えているのなら、こちら側の仲間にもなってもらったほうがいいでしょう」
それに越したことはないが、カナエさんはどのような選択をするだろう。その時、落ち武者さんは自分のフェアホを手に取った。
「あ、男尽くしカナエ? 僕だけど」
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あとがき。
古代編もカナエは不思議な力を持っていましたね。
ナミネとヨルク、両想いなのにもどかしい……。
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この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
現在、小説に関する模倣(程度による)の一切を禁じております。
詳しくはこちらを参照→ 禁止事項
無断転載もご遠慮ください。
《ヨルク》
副委員長と博物館に着いて2階に上がった途端、ナミネに抱き着かれた。振りほどきたくない。けれど、ナミネはラルクを想っている。私がナノハナ家の使用人としてナミネを監視しているとも知らずに。
幼稚園の年長の頃、ナミネに婚約破棄をされた。2歳の時にナノハさんの推薦でナミネと婚約出来たことを心から喜び幸せを感じていたけれど、その想いも3年の夢だった。ナミネは泣きながらラルクのことが好きだから私とは結婚出来ないと訴えた。あの時はショックで寝込んだ。諦めようとも思った。けれど、諦めきれず何度もナノハナ家に足を運んだ。そんなナミネがどうして今、泣きながら私に抱き着いているのだろう。
「ヨルクの知り合い?」
副委員長は役者を目指している。が、何度もオーディションに落ちて、フェアリーZ広場でフラワー女優の真似事をしている。
「あ、えっと、近所の子」
幼なじみと言えなかった。婚約破棄された以上、妹のような存在と言うには虚しすぎるから。
「婚約者です! ヨルクさんの婚約者です!」
何の冗談だろう。ラルクにフラれて焼けになっているのだろうか。
「おい! 強気なナミネ! 勝手に動くな!」
落ち武者さんにラルク!?
「あ、セルファ〜!」
どうしてここにいるのだろう。
「はいはい、副委員長。行くぞ、強気なナミネ!」
落ち武者さんは私からナミネを引き離そうとしたが、ナミネは私にくっついたまま離れない。
「ナミネさん、焦らなくても大丈夫ですよ。時が来れば必ず元に戻れます」
って誰!? 新しい友達だろうか。頭良さそう。
「はい……。すみません、ヨルクさん。少し怖い夢を見ただけです」
ナミネは私から離れた。私は放っておけず、ハンカチを取り出しナミネの涙を拭いた。
「あ、副委員長。この子、僕と付き合ってるから」
何故嘘を言う。
「えっ、そうなの!? 何だか以外。セルファって歳上が好きだと思ってた」
歳上……か。そんな風にも見えるが、やたらとナミネに付きまとうのが気に障る。
「ねえ、どうしてそういう嘘言うの? ナミネ、好きな人いるから」
落ち武者さんはため息をついた。何のため息だ。
「じゃ、僕ら行くから」
落ち武者さんはナミネの手を取り階段を降り始めた。入れ替わるようにカナエさんとその友達がこちらへ来た。
「ヨルク! 元気にしていますか?」
最後に会ったのいつだっけ。
「一応元気です」
そう、一応。いや、元気とは言わないか。
「また、キクリ家へ来てください。カナエが料理を作ります」
カナエさん、本当に料理が好きなんだな。私もカナエさんがきっかけで家事をはじめたっけ。
「はい、きっと行きます!」
カナエさんは全然変わっていない。今でも私の姉のような存在だ。
「この人もヨルクの知り合い?」
そっか、副委員長には家柄のこと何も話してなかったんだっけ。
「キクリ家・4女、カナエと申します。高校1年生です」
カナエさん、小柄だから中学生と間違われてそう。
「はじめまして。中等部のタレリナです。歳上だったんですね」
やっぱり、ナミネやラルクくらいに思われてたかな。
「はい、姉は身長高いですが、カナエは小柄なのです」
カナエさんくらいの体型がちょうどいい気がする。個人的にだけれど身長が高い女子(おなご)は苦手かもしれない。けれど、ナミネは高校生からは身長伸びるんだっけ。中学生の頃より可愛くなって男からモテまくる。
そういえば、少し向こうで銀髪の女子(おなご)が泣いているような。カナエさんの知り合いだろうか?
「あの、向こうで銀髪の女性泣いてますよね? 何かあったのでしょうか?」
あの泣き用。何となく心配だ。
この時の私は、あの銀髪の女子(おなご)がラルクの想い人であることを全く知らなかったのである。
「少し行き違いがあったようです。先程、武官が現れまして助ける順番がおかしいと指摘されたのですが、カナエはカナエなりにみんなを助けようとしていました」
武官がこんなところに!?
「えっ、武官だなんて怖いわ」
副委員長も一般人。カナエさんと一緒に来ている人もそうなのだろうか。
「大丈夫だよ、副委員長」
私とて武家出身。カナエさんほど強くはないが、仲間を見捨てたりはしない。
その時、銀髪の女子(おなご)がこちらに近付いてきてカナエさんにペットボトルのお茶をかけようとした。
「カナエさん!」
咄嗟に私はカナエさんを少し突き飛ばした。
「大丈夫!? ヨルク!! あなた何なんですか!?」
どうしてカナエさんだけを狙ったのだろう。
「ヨルク! 大丈夫ですか? セレナール! いい加減にしてください! カナエはセレナールを見捨てようとしたことはありません!」
セレナール。はじめて聞く名前だ。
「あ、私は大丈夫です」
寧ろ、冷たいお茶で良かった。
「ヨルク、すみません。これを使ってください」
カナエさんは私にハンカチを渡した。カナエさんの持つハンカチ、今でも変わっていない。
「ありがとうございます」
私はカナエさんからハンカチを受け取った。
その時『そこまで』と聞こえた気がした。
ここはどこだろう。あ、番人部屋か。
「申し訳ありませんが、今はあの人たちと深く関わる時ではありません」
どういう意味だろう。
元々、今回の2番目の番人は弟だった。それが気が付いたら私になっていた。
「あの、状況がよく分からないのですが」
キクスケさんと会うのも久しぶりな気がする。
「率直に申し上げます。
ついこないだまで2020年だったところを事情があり、私(わたくし)が皆さんを2024年に飛ばしました。
あの博物館にいた人たちはみんなあなたの友達でした。
また、ナミネさんはあなたの婚約者でした。
私(わたくし)が話せるのはここまでです」
ナミネが婚約者!? 最近まで2020年って……。ダメだ。言っていることが分からない。
「あの、ナミネと私は本当に婚約者だったのでしょうか? だとしたら、ナミネは弟にフラれたショックでヤケになって私との縁談を決めたのでしょうか?」
やっぱりナミネのことは気になってしまう。
「今はお話出来ませんが、いずれ思い出します」
肝心なところだけ、いつも曖昧だ。
私は紅葉橋にいた。
あ、副委員長はどうなったのだろう。私はフェアホを取り出し、副委員長にレインを送った。
『副委員長、ごめん。休養が出来て。今、家に戻ってる?』
怒っているだろうか。
『何言ってるの。あの後、天候の悪化で警報が出て、あの場にいるみんながバスに乗り込んだじゃない。もうお風呂も済ませたわよ』
キクスケさんが辻褄を合わせてくれていたのか。とりあえず、副委員長が家に戻っているなら安心だ。私は、いつものようにナノハナ家へ向かった。
使用人の入り口から入り込み……。
「遅かったね? 副委員長と濃厚な時間でも過ごしてたわけ?」
え、どうして落ち武者さんが……。
「ねえ、どうして落ち武者さんは実家に帰らないの? ここ落ち武者さんの家じゃないんだよ?」
ナミネが落ち武者さんとのほうが親しいと思うと何だか複雑で嫌な気持ちになる。
「とにかく、第4居間行くぞ!」
私は何が何だか分からないまま、落ち武者さんに手を引かれ第4居間へ連れて行かれた。
懐かしい。ここでナミネとナルホさんと遊んでた。
「ヨルクさん……!」
振り向くなりナミネは立ち上がったが、座って私から顔を背けた。やはり、博物館での出来事は私の想い上がりだったのだろうか。そして、あの眼鏡の人、本当誰だろう。
「セレナール先輩どうでした?」
セレナールって、あの銀髪で髪が長い女子(おなご)だろうか? どうして、その人のことを気にするのだろう。
「カナエさんと一緒に来てた人なら相当泣いていてカナエさんにお茶をかけようとしてたが」
結果、私がかけられるハメになってしまったが。行き違いと言っていたが、どうもそうは思えない。その時、フェアホが鳴った。私が中を見ようとしたら落ち武者さんにフェアホを取られてしまった。
「ちょっと何するの! それ私のフェアホだから!」
何なの? ラルクも落ち武者さんも、どこか変。
「ふーん、男尽くしカナエとは連絡取ってんだ? でも、他とは仲良くするな」
は? 仲良くするなって、たまたま会っただけで、カナエさんとカラルリさん以外は全く知らないし。
「あのセレナール先輩は……」
セレナール、セレナールって、ラルクはあの女子(おなご)の何なんだ? ナミネを泣かせるような真似は見たくない。
「姉さんなら、セリル迎えに来て今は落ち着いてるらしいけど? 男尽くしカナエのことは相当恨んでるみたいだけどね?」
姉さんって、あのセレナールって人が!? 確かに銀髪は銀髪だが。あまり似てるようには感じない。
「落ち武者さんって、兄弟いたの?」
あのワガママさからして、てっきりひとりっ子かと。
「はあ。じゃ、聞くけどアンタは何人兄弟なわけ?」
ああ、そうか。武家のみが兄弟いるイメージだったが、普通に一般人にもいるのか。どういう暮らしかは知らないが。
「そっか。あまり似てないね」
いや、似てるか。どことなく自分中心なところが。
「そういうものですよ。僕もラルクさんがヨルクさんの弟だと教えてもらえなければ気付きませんでした」
え、私を知っているのか? けれど、私はこの人を全く知らない。
「じゃ、そこまで。
強気なナミネには忠告はしたけど、男尽くしカナエと今後も関わるなら、こっち側についてほしい。
今から言うこと、よく聞け!」
え、こっち側って何? 落ち武者さんは続けた。
「信じるも信じないもアンタの勝手。
けど、ついこないだまで僕ら2020年にいた。勿論アンタもね? けど、そこにいる金だけズームの姉ミネルナが……と言っても分からないか。キクスケが突然現れてミネルナ救うために僕らを2024年に飛ばした。
強気なナミネはアンタと交際してた。アンタの告白でな。それも、アンタは付きまとうように強気なナミネにくっついて、朝飯から弁当、晩飯まで作って一緒に風呂まで入って同じ布団で寝て空咲ばっかり……」
私は無意識に落ち武者さんの口を塞いでしまった。けれど、キクスケさんが言ってたことと同じだ。私は本当にナミネと交際していたのか? ナミネと深い関係になるくらいにナミネも私のことを好いてくれていたのだろうか?
「セルファさん、その呼び方では、まるで僕が金の亡者みたいですね。それに、その説明では伝わりませんよ」
この人が仕切っているのだろうか。武家には見えないが。
「じゃ、恵まれズーム」
恵まれ……王族だろうか?
「僕のこと覚えていないかもしれませんが、元々はラルクさんもそうでした。けれど、ラルクさんは今後の展開を、いえ、過去の展開を知り、カナエさんたちのグループには直ぐには近づかないことを決意しました。
元々は姉さんが、あなたに瓜二つの顔を持つ僕の幼なじみカンザシに黒鈴酷華されたことが原因でキクスケさんは現れ、姉さんは純白でいなければ妖精村は存続出来ないと言い出し、僕らは突然2020年から2024年のこの世界に飛ばされました。
前の記憶は覚えている人はナミネさんとセルファさんだけでした。また、ヨルクさんとナミネさんは交際していました。ナミネさんは心からヨルクさんを愛し、ヨルクさんもまたナミネさんを愛していました。
けれど、今の段階だと僕もカナエさんとのみ交流を持ち、他のメンバーとの交流はオススメ出来ません。現にあなたも戸惑っているように、元のメンバーにいきなりこれまでのことを話、仲間だと言ったところで信じてもらえない可能性が高いです」
確かに、にわかに信じ難い話だ。これを、カナエさんと一緒にいた人たちが信じるかと言えばそうではないだろう。けれど、落ち武者さんの話よりかは順序が把握出来た気がする。この人が言っていることが本当なら今までの私の時間は何だったのだろう。ナミネは本当に私を愛してくれているのだろうか? 分からない。けれど、ナミネが本当にラルクでなく私のことを想っていたなら、ちゃんと気持ちを伝えたい。
「そうですよね……確かに今のお話は……」
話している途中で落ち武者さんは遮った。
「男尽くしカナエに二重スパイさせるのもありだと思うけどね?」
カナエさんとて信じるだろうか。
「まだ4月です。少しオススメ出来ませんね。
あと、これフェアホに入っていたヨルクさんとナミネさんのお写真です。レインを教えていただけたら送ります。もし、僕たちの仲間になってもらえるなら番号も教えてもらえませんか?」
まるで、つい最近撮ったかのような、まるで恋人かのようなナミネとのツーショット! 私とナミネは本当に恋人だったのか!? 私は咄嗟にレインのQRコードを見せた。
「読み取りました。今送ります」
キクスケさんが私に接触したこともあるし、番号も教えておこう。私はレインからフェアホ番号とメールアドレスを送った。
レインの名前はズーム。さっき落ち武者さんが言ってた金のみズームなのだろうか。お武家連盟に加入している者の連絡先は全て入っているからナミネとラルクの連絡先はずっと入っている。落ち武者さんはクラスメイトだから連絡網用に連絡先は入っている。今回、ズームさんと連絡先交換を出来たから、事情の知っている者の連絡先は全て得たことになる。フェアホ番号とメールアドレスもレインから送られてきた。
「ありがとうございます。私はクレナイ家・次男のヨルクで中学2年生です」
と言っても、ズームさんは知っているわけか。
「改めまして、僕はブランケット家・次男のズームです。今年から高校1年生になりました。
僕が思うにこの世界は……」
また落ち武者さんに遮られてしまった。本当何なのだろう。
「顔だけヨルク、神様カード出せ!」
神様カード!? はじめて聞くし、そんなものあっていいのだろうか。
「そのような物、私は聞いたこともない」
すると落ち武者さんは、いきなり私のポシェットを取り、中身を見た。
「ちょっと! どうしてこんなことするの!」
本当信じられない。そのセレナールという者もロクでもない人間な気がする。
「あった! やっぱり、前の世界の引き続きだね?」
神様呼び出しカード……? 見たこともない。けれど、見てしまった以上、無くしてもいけない気がする。
「ヨルクお兄様、こちら側についてください。ナミネも僕がセレナール先輩と交際するためにタイミングが来たら仮恋人になって協力してくれますし」
ラルクとは長らく関わっていなかったけど、やはり命令癖は変わっていないか。それに仮恋人って、それではナミネがあんまりではないか。
「ねえ、どうしてラルクが命令するの? ラルクにとってナミネって何? ナミネを振り回さないで!」
ラルクは勉強も武術も私よりずっと上だ。本人は、弱く勉強の出来ないフリをし続けているが。
「とりあえず、こんな時間ですし、ヨルクさんはナミネさんとお風呂に入りますか?」
えっ、本当に前がそうしていたならそうしたいけど、私はナミネとそのような関係ではない。
「いえ、私は……」
今度はナミネに遮られた。
「私、いつもみたいにみんなと入ります! ヨルクさんも入るなら褌付けてください! いつもヨルクさんはそうしていました! 今年は赤い褌が流行るそうなので」
何故かナミネに六尺褌を渡された。って、この展開覚えている! 遠い遠い前世、ナミネとアパート暮らしをしていたら、ある日突然家では褌を付けるよう言われ、無理矢理履かされていた。やっぱりナミネは変わっていない! あの時のナミネだ! けれど、また私を好きという確証はどこにもない。
「褌など、私はそのような恥ずべきモノは履かない」
しまった。あの時を思い出して、つい……。ナミネは泣きはじめた。目が赤い。ずっと泣いていたのだろうか。そういえば、博物館の時も泣いていた。私は咄嗟にナミネを抱き締めた。
「ごめんね、ナミネ! 今日は何が食べたい?」
ナミネのことが心配で使用人としてナノハナ家に忍び込んでからナミネの食事は全て作っていた。お風呂も沸かしていた。
「いや、今は一刻を争う事態だ! 向こう側の人間が思い出すまでは一寸の油断も出来ない。顔だけヨルク、アンタはもう使用人なんかするな! こっちを手伝え!」
はあ、落ち武者さんも命令型だった。学校では、いつも笑顔で天然キャラ演じているのに。
「やっぱり、あの料理はヨルクさんが作っていたのですね! 私、待ちます! ヨルクさんが思い出してくれるのを待ちます! ヨルクさん以外の人とはお付き合いしません!」
何故か告白のようなことをされてしまった。今すぐ……今すぐ交際したい! もう誰にもナミネを取られたくない! けれど、そのみんなのいう『ついこないだ』を私は知らない。私の身勝手で直ぐに交際してしまえば逆にヒビが入りかねない。ちゃんと思い出そう。
「ナミネ! 私は……!」
どうして遮られるのだろう。
「じゃ、風呂行く」
え、ナミネも!? 結局私はナミネが心配でみんなと一緒にお風呂に入ることにし、私だけ露天風呂でナミネを見守った。いつも、あんな感じの水着着ているのか。地味だけれど、ナミネも歳頃だし何も身に付けないよりかはマシだ。
その時、フェアホが鳴った。
『ヨルク、大丈夫ですか? こんな時で申し訳ないのですが、適当なタイミングでキクリ家に来てもらえませんか? それと、出来ればカナエと親しくしているお友達とは関わらないでほしいのです』
カナエさんは知っている! 知らないはずがない。博物館の時は知らないフリをしていたのか。
「やっぱりね? 男尽くしカナエは全てを知っている!」
落ち武者さんも、その前の世界とやらのカナエさんを知っているのか。何だか、疎外感を抱いてしまう。
「カナエさんが覚えているのなら、こちら側の仲間にもなってもらったほうがいいでしょう」
それに越したことはないが、カナエさんはどのような選択をするだろう。その時、落ち武者さんは自分のフェアホを手に取った。
「あ、男尽くしカナエ? 僕だけど」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
あとがき。
古代編もカナエは不思議な力を持っていましたね。
ナミネとヨルク、両想いなのにもどかしい……。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
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純愛偏差値 未来編 一人称版 127話
《ナミネ》
いよいよ博物館へ行く日が来た。
ヨルクさんが作ったものでない朝ご飯が部屋に運ばれて来た。
今のメンバーだって一緒にいると幸せだけど、それはヨルクさんがいてこそのものだったと思う。
「朝飯、早く食べろよ」
早くって、まだ7時半じゃない。待ち合わせは10時じゃなかった? 早く着いて待つのも何だか気が引ける。私は朝ご飯を食べはじめた。え、これヨルクさんの味だ! でもどうして?
「これ、ヨルクさんの味ですよね? 届けてくれたのでしょうか?」
ヨルクさんは2020年を知らない。だとしたら、どうしてヨルクさんが作ったご飯がここにあるのだろう。
「たまたまだろ。顔だけヨルクは、アンタのことも何もかも覚えてない」
この時、落ち武者さんもラルクもズームさんも気付いていたが声に出さなかったことを私は知らなかった。
けれど、ヨルクさんの味を忘れるはずがない。
「でも……でも……!」
ヨルクさんと話したい。ちゃんと2020年のこと理解してもらいたい。
「ナミネ、今はセレナール先輩のことに集中してほしい。こんなのありふれた味だろ」
ラルクは2019年の時は、セレナールさんに冷たくしていた。今回も似たようなことにならなければいいけれど。
ラルクに協力すると決めた以上は私のことは二の次。辛いけど、早くヨルクさんと元の関係に戻りたいけど、2020年のラルクを思うと、2024年では幸せになってほしい。
「うん、分かったよ、ラルク」
セレナールさんのことだけでなく、セナ王女たちにも私たちは徐々に接触しなければならない。けれど、無理矢理現世も変えられない。あくまで自然的にことを進めなければ。
「アンタ、ラルクのことなら何でも協力するんだな」
どういう意味だろう。私は、落ち武者さんが困っていても助ける。差別はしたりしない。
「私、ラルクだけでなく、みんなのこと助けます!」
その時、私のフェアリーフォンが鳴った。出方が分からない。でも、画面にはラハルって出ている。もしかして、ラハルさんも覚えているのだろうか。
「セルファ」
あー、落ち武者さんに出られてしまった。
「あの、スピーカーにしてください」
私にかけたなら、私に用があるのだろう。
「りょーかい」
全く操作が分からない。
『ナミネ、聞こえてる?』
ラハルさんの声。ついこないだまで当たり前に聞いていたのに、かなり久々に聞いた気がする。
「はい、聞こえてます! あの、覚えてるのでしょうか?」
覚えていてほしい。
『厳密には完全じゃない。でも、身に覚えのない記憶は途切れ途切れに頭を流れ、ある時から毎日のようにナノハナ家で過ごしていた夢を見るんだ。ヨルクとはどうなった?』
う……、最後がそれか。けれど、ラハルさんは思い出すかもしれない。
「ラハル、アンタはいずれ思い出すだろうな。それ一昨日までのことだ」
記憶のない人が聞けば信じられない話だろう。
『一昨日!? そんなまさか!!』
そりゃ、びっくりするよね。
「で? こっち来れるわけ?」
どうして落ち武者さんばかり話すのだろう。
『今は仕事がかなり忙しくて、そっちに行けるのはいつか分からない。でも、セルファの言ってること本当なら僕も協力する! 二度と同じ過ちを繰り返してほしくない!』
2024年では、グルグル妖精っていつデビューしたのだろう。人気あるだろうな。ナナミお姉様が案の定また激ハマリだ。
「そのことだけど、アンタと強気なナミネが出演した『飛べない翼』『忘れられた翼』『43%の恋の涙』は2024年では古い形で残ってる!最近からの今だけど、繋がってるかもね?」
えっ、あの映画この世界にもあるの!?古い形ってことは、こっちの世界では半世紀前とかだろうか。
『そっか。今はまとまった時間は取れないけど、必ず夢で見た時みたいにナミネの日常の中の人物に戻るから! ごめん、今日はこれで』
電話は切れた。
「ナミネナミネって、ラハルもアンタしか見てないな」
今はそんなこと言っている場合ではないと思う。
「ねえ、今誰と電話してたの? ラハルの声聞こえたんだけど」
ナナミお姉様! いつからいたのだろう。
「あ、えっとクラスメイトです。あのナナミお姉様は……」
私が言いかけたのを落ち武者さんが遮った。
「ラハルは半年前にデビューした新人アイドルだろ! 通話なんて出来るわけないと思うけどね?」
割りと最近デビューしたのか。
「デビュー前からずっと見てたわよ! グッズも全部あるし!」
またあの部屋に逆戻りか。そうか、2024年でもグルグル妖精の駆け出し時代はあったのか。そんな中、私と接した時は売れっ子アイドル。何となくタイミングが悪いように感じる。
「今日、私たち出かけるので戻ってもらえませんか?」
誰かが加われば時間なんてあっという間に過ぎてしまう。
「ラハルからだったら覚えておきなさいよ!」
はあ、ミナクさんと交際するまでにどれだけかかるのだろう。それに、必ずしもミナクさんとナナミお姉様が一緒になるとは限らない。セナ王女かもしれないし、別の誰かかもしれない。
「はあ。何だか今が分からないし追いついていけないよ」
ミネルナさんには悪いけど、私はヨルクさんとの関係を壊されたくはなかった。
「姉さんは、まだカンザシに気があったんですよ。けれど、ロォハさんを裏切りたくないために抵抗しカンザシに殴られた……。姉さんが穢されたと言うより、姉さんの気持ちが問題だったのではないでしょうか」
やはり、思うことは皆似ている。幼なじみの時から両想いだったなら、祭りで口説かれた時、少しは揺れたかもしれない。
「あ、そうですよね。簡単には忘れられませんよね」
けれど、カンザシさんは今も私の実の兄なのだろうか?
「あの、カンザシさんは2024年の世界でも私の実の兄なのでしょうか?」
やっぱり気になってしまう。
「だと思うけど? コンビニで電子証明書出せるから博物館行く前にコンビニ寄って確認するか! なら、とっとと着替えろ!」
電子証明書!? 何それ。戸籍謄本って役場で出してもらうものなんじゃないの?
「あの、電子証明書って……」
ダメだ。全くついていけない。
「とっとと着替えろ!」
う……。私はしぶしぶ服を脱いだ。
「確認させます。ナミネさんは焦らなくて大丈夫ですよ」
やっぱりズームさんは優しい。
「アンタ、そんなダサイ下着着てんのかよ」
未来のようで、過去に戻っているのか。確かに、私はヨルクさんを完全に好きになるまではオシャレに疎かった。すっかり忘れていた。
「セルファさん。ヨルクさんに知られたら大目玉ですよ」
ズームさんは後ろ向いてる。
「僕と強気なナミネは恋人だったけど?」
それいつの時代だよ。私は夢で見ただけで、記憶には残っていない。
「ナミネ、地味な服着ろよ」
そっか、目立っちゃいけないのか。ロングヘアに、ダサイ下着、地味な服。ラルクを好きだった頃まんまじゃない。
「あ、そうだよね」
押し入れを開けると、見事にヨルクさんを好きだった頃のオシャレとは無関係の服ばかり並んでいる。私、こんなにオシャレに興味なかったんだ。
私はベージュのスムースワンピースを手に取り着た。春夏秋冬着れる服はとても便利だ。オシャレをしはじめた頃も、もう昔のことのように思えてくる。私はラルクとセレナールさんが交際するまで、髪は切れないし地味な服でいなくてはならない。でも、またみんなと仲良くするためには最初に戻る必要がある。
何事も順序というものが存在している。
「着たよ、ラルク」
全てなかったこと最初に戻っているけれど、私たちはまだやらなければいけないことがたくさんある。ここで諦めるわけにはいかない。
「アンタ、地味すぎ」
それだけセレナールさんはオシャレ系女子ということなのだろうか。落ち武者さんは、相変わらずお坊ちゃま系の服装。似合っていると言えば似合っているけれど。
「うーん、時間が変わったことによってか、2019年の時の服しかないんですよね」
私は髪型を三つ編みにした。
「ふーん、悪くないとは思うけどね?」
落ち武者さんってよく分からない。というか、様々こと引きずりすぎていて本当の気持ちが伝わってこない。
コンビニに入るとパラパラ雨が降りはじめた。
私は機械の前に立ち、落ち武者さんの言う通りに電子証明書を印刷した。パスワードが分からなかったけど、落ち武者さんのハッキングで、どうにか手続きが出来た。パスワードはラルクの誕生日になっていた。そうか、2024年の私もラルクのこと好きだったんだ。
私はゆっくり戸籍謄本を眺めた。
カンザシさんは2024年でも実の兄だった。
「ふーん、変わってないね?」
本心では赤の他人であってほしかった。実の兄とはいえ、母親は違うし、また貧乏な家庭で育ったのなら2019年の時の二の舞じゃないか。
「そういうものですかね」
運命は簡単には変えられない。変えようとすれば、それなりの努力が必要だ。そして、多くの人間は運命を変えられないまま人生を終える。
「じゃ、博物館行く」
もう9時前!? 今から行けば少しだけ待つ程度だろうか。
「ナミネさん、この傘使って下さい」
ズームさんは折りたたみ傘を私に渡した。
「ありがとうございます」
一緒に入ろうと言おうとして落ち武者さんが遮った。
「じゃ、僕も入る。ラルクとズームはこれ使え」
何なのだろう。落ち武者さんも折りたたみ傘持っているならラルクを入れればいいのに。
私たちはバス停で7分ほど待ったバスに乗った。
「ねえ、ラルク。コンビニに店員さんいなかったよね」
私の気のせいだろうか。会計の場所に機械が置かれていたような。
「ああ、2019年に新たな病が流行って人権削減して、今はどこも会計は機械だ。その病はまだ収束せず、潰れる店もある。けど、心配すんな。皇帝陛下は、機械を撤去して会計は店員さんが行い、バスの本数も電車の本数も元に戻すって言ってるし、僕もそうなると思う」
新たな病!? そういえば、バスに乗ってる人殆どマスク付けてる。コロディーのような病だろうか。
「皆さん、マスクどうぞ」
ズームさんって容量いいな。今もブランケット家の人間だろうか。今後もカンザシさんをサポートするのだろうか。
「ありがとうございます」
私たちはマスクを付けた。何だかこのマスク着け心地が違う。
「またskyグループの?」
そっか。根本的なことは変わっていないんだ。
「いえ、rainグループのものです。99.9%感染しないことが立証されています」
rainグループ!? 社名が違うだけだろうか。
「経営者は?」
やっぱり変わっていることもあるのだろうか。私は無意識に戸籍謄本をギュッと握り締めた。
「おばあ様です。skyグループは最先端技術のモノに視点を当てていますが、rainグループはどちらかというとあらゆる世代の男女が望むデザインに視点が当てられています。いわゆる趣味で作られた会社です」
おばあ様も会社を経営していたのか。やっぱり、ズームさんは同じ世界の人間とは思えない。マスクもよく見ると傘のマークになっている。
「skyグループとは相反する社名のrainグループってことね。アンタ本当にどこまでも恵まれてるな」
言われてみれば、skyとrain。似ているようで違う。そして、そもそも目的そのものが違うんだ。何だか羨ましい。けれど、私はやっぱり強さを求めてしまっている。
「ナミネ、新たな病は日本村から何らかの形で入れ込まれた陰謀説もある。病名はコラナで妖精村では治療薬が開発されてるんだ。けれど、もし日本村が何らかの形で入れたものならと治療薬の存在は伏せ、皇帝陛下も慎重になっている」
コラナ!? 日本村が入れ込んだ!? ダメだ。話についていけない。妖精村は太陽系ではないし日本村って何光年も離れている。どうやって入れ込むのだろう。何のために?
「マスクってずっと付けていなきゃいけないの?」
治療薬があるとはいえ、感染症って怖い。
「マスクは向こうのグループに気付かれないために付けてるだけだけど? それでも治療薬はあっても、ほぼコロディーと似てるから、感染したら似たような症状に苦しむことになるけどね?」
コロディー……。結局歴史は繰り返されるのか。
「マスクが気になるようでしたら、skyグループでは透明マスクの販売もしてますので学校などではそれを使われてはいかがでしょう?」
2019年も最先端だったけど、本当に絶やさないものなんだな。それも経営者の能力だろうか。
「じゃ、透明マスクと感染しないマスク使う。いざって時は透明マスクから切り替えろ!」
逆にややこしい。けれど、教室では透明の方が助かる。マスクはどことなくぎこちない。
「では、戻ったらお渡しします」
やはり、とても高いものなのだろうか。庶民では買えないもの、それがskyグループの商品だから。けれど、感染するわけにもいかない。
バスを降りると私たちは、博物館に入り受付でチケットをもらうなり死角になる場所に立った。
9時半。30分でセナ王女たちは来る。私の中で緊張感が走った。
「あ、ラルク」
聞くのは怖い。でも、知るべきことは最初に知っておきたい。
「ミドリお姉様って、その……」
ダメだ……。あの時のリアルが蘇る。
「天然ラァナと同じだけど?」
え、どうして落ち武者さんが知っているのだろう。けれど、ラァナさんと同じって、それってミドリお姉様は……。
「ミドリさんは、最後の1人から黒鈴酷華を受ける前にナノハさんが助け、月城総合病院で治療を受けました。第2は修復出来ましたが第1は修復出来ず、ミドリさんはカウンセリングを受けながら引きこもり、大学生の今やっと学校に通うようになり、ピアニストを目指しています。けれど、ナクリさんが引きこもるようになりました」
ミドリお姉様は一命を取り留めたが、大きなトラウマが残り、ずっとカウンセリング受けていたんだ。ほぼ2020年の続きに思える。
「そうですか。どんな形であれ生きてくれたことは幸いです」
そう、本人はどれだけ辛くても生きていてほしい。もう二度とあんな思いはしたくない。
「ほら、主役らが来たぞ」
人と話していると不思議に30分という時間は早く感じる。あれ、セナ王女たちマスクしていない。
「あの、マスクしてませんよね?」
感染怖くないのだろうか。
「王室なら透明マスクもあると思うけど?」
ああ、そうか。そうだよね。私たち、とんでもないVIPと仲良くしてたんだ。
「行くぞ、ナミネ!」
尾行って何だか気が引けるけど、元に戻すためには私たちが動かなくてはならない。
「うん!」
私たちは、それなりの距離を取りながらセナ王女たちを尾行した。
「この石、可愛いのです」
みんなオシャレしていて羨ましい。
「カナエ、お土産コーナーにレプリカあるから買うよ」
え、アルフォンス王子ってユメさんと交際しているのでは!? やっぱり記憶が抜けているだけで根底のどこかでは、みんな遠い前世をそして2020年を思い出そうとしているのだろうか。
「アルフォンス! ユメさんを構ってあげなさいよ!」
うーん、私がラルクに協力する前はこうだったのだろうか。
「あ、セナさん、いいの。アルフォンス様の自由は奪えないから」
本心なのかな。別れる恋人を見ているのも返って胸が痛む。
「あのダイヤ、セナさんに絶対似合うよ!」
あれがダイヤなの? ただの石みたい。
「Zランクね。いかにも古代って感じがするわ」
ダイヤにランクなんてあるのか。それにしても、さっきからセナ王女とカラルリさんの手、何度も触れそうになっている。これって……
「完全に元に戻ってるね?」
やっぱりそうか。ミネルナさんとカンザシさんが最後にまともに話していた時間には意味があったのだろうか。あんなに殴られてまで話すことなんてあったのだろうか。
「ですね。もう運命まで最初からですね」
はあ、何だか気が遠くなる。
「あくまで、甘えセナの人生だからね? シャムとくっつけようなんて思うだけ無駄だからね?」
いや、分かってはいるけれど、2020年を知っている私からしてみれば残念で仕方ない。それも含めて『人生』と呼ぶのだろうか。だとしたら、残酷だ。
「それは分かっています。ただ、残念だなて」
分かってるよ。頭の中では分かっている。気持ちが先走ってしまうのだ。2019年・2020年の展開を知っているから。
「ナミネさん、どれだけ遠回りしても本当のその人が望む結果になるのなら僕はいいと思うんです」
うーん、ズームさんは多分そういう人生を送ってきたのだろう。そして、誰かの人生を私がどうにかすることも出来ない。
あ、セナ王女たち2階へ上がってゆく。あの時のように。私たちも、見つからないように2階へ向かった。
「案の定だね?」
武官!? 早過ぎないだろうか。いや、これくらいに出てきたような記憶もある。初級武官なら、武術してるなら余裕。でも、ユメさんやセレナールさんは……。
私たちは、ソファーの裏側に隠れた。ラルク、真剣に見ている。
「アルフォンス王子はカナエ先輩を助け、セナ王女はカラルリ先輩を助けている。ユメ先輩とセレナール先輩が……」
こうだったんだよ、ラルク。ずっとこうだったんだよ。セレナールさんは何度も訴えたけど、他の人はみんな助けるつもりでいたと後付けをする。弱い人から助ける平等はいつも却下。
「ラルク、みんな自分と自分の大切な人が助かればそれでいいんだよ。弱い人はいつも後回し。その例として、セレナールさん、遠い前世では一度廃墟になってる博物館で間に合わなかったでしょ?」
言っても分からないかもしれないけど、結局は同じ展開になってしまう。ここに来る予定のセリルさんが来ていない時点で、ある程度の運命は既に決まっているように思えてくる。
「残酷だな。セレナール先輩がかわいそうで仕方ない」
そうだけど、何だかまだ確定されていてされていないことがある気がする。教科書に載っている、妖精村初代の皇太子が処刑したのはセレナールさんだ。そして、セリルさんも。それなのに、セレナールさんは皇太子様と相思相愛になるのは、何か引っかかる。どれだけ遠い前世とはいえ。あの時計屋も行ってみる必要がありそうだ。
セレナールさんは初級武官に押し倒されたところでカラルリさんが助け、ユメさんは服に手をかけられたところでアルフォンス王子が助けた。
「納得いかないわ! カラルリならセナさんが助けなくても余裕じゃない! どうして私を後回しにするのよ!」
セレナールさんは泣きはじめた。そして、横でラルクはセナ王女に扇子を向けている。
「ラルク、アンタさ、リリカに依頼してんならそれでいいだろ」
そうは言えども、大切な人を真っ先に助けたい。人間の核心かもしれない。酷い時は、誰かを見捨てないといけないこともあるかもしれないし、あの時のカラルリさんは体育館でセレナールさんを見捨てた。
「分かっています。ただ、セレナール先輩を蔑ろにする周りのことが気に触りました」
はあ、本当に2024年のラルクはセレナールさんのことが好きなのだろうか。2019年の時とは大違いだ。
ふと、後ろを振り向くとヨルクさんとマドンナさんが仲良さげに2階へ上がってきた。私は無意識にヨルクさんの元へ走った。
「おい! 強気なナミネ、早まるな!!」
分かってるよ! でも、ヨルクさんは私の婚約者なの! マドンナさんには渡せない! 私は、落ち武者さんの手を振り払い、ヨルクさんの元へ駆け寄った。そして、ヨルクさんに抱き着いた。
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あとがき。
歴史も現世も運命も、そう簡単には変えられないように感じます。
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この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
現在、小説に関する模倣(程度による)の一切を禁じております。
詳しくはこちらを参照→ 禁止事項
無断転載もご遠慮ください。
《ナミネ》
いよいよ博物館へ行く日が来た。
ヨルクさんが作ったものでない朝ご飯が部屋に運ばれて来た。
今のメンバーだって一緒にいると幸せだけど、それはヨルクさんがいてこそのものだったと思う。
「朝飯、早く食べろよ」
早くって、まだ7時半じゃない。待ち合わせは10時じゃなかった? 早く着いて待つのも何だか気が引ける。私は朝ご飯を食べはじめた。え、これヨルクさんの味だ! でもどうして?
「これ、ヨルクさんの味ですよね? 届けてくれたのでしょうか?」
ヨルクさんは2020年を知らない。だとしたら、どうしてヨルクさんが作ったご飯がここにあるのだろう。
「たまたまだろ。顔だけヨルクは、アンタのことも何もかも覚えてない」
この時、落ち武者さんもラルクもズームさんも気付いていたが声に出さなかったことを私は知らなかった。
けれど、ヨルクさんの味を忘れるはずがない。
「でも……でも……!」
ヨルクさんと話したい。ちゃんと2020年のこと理解してもらいたい。
「ナミネ、今はセレナール先輩のことに集中してほしい。こんなのありふれた味だろ」
ラルクは2019年の時は、セレナールさんに冷たくしていた。今回も似たようなことにならなければいいけれど。
ラルクに協力すると決めた以上は私のことは二の次。辛いけど、早くヨルクさんと元の関係に戻りたいけど、2020年のラルクを思うと、2024年では幸せになってほしい。
「うん、分かったよ、ラルク」
セレナールさんのことだけでなく、セナ王女たちにも私たちは徐々に接触しなければならない。けれど、無理矢理現世も変えられない。あくまで自然的にことを進めなければ。
「アンタ、ラルクのことなら何でも協力するんだな」
どういう意味だろう。私は、落ち武者さんが困っていても助ける。差別はしたりしない。
「私、ラルクだけでなく、みんなのこと助けます!」
その時、私のフェアリーフォンが鳴った。出方が分からない。でも、画面にはラハルって出ている。もしかして、ラハルさんも覚えているのだろうか。
「セルファ」
あー、落ち武者さんに出られてしまった。
「あの、スピーカーにしてください」
私にかけたなら、私に用があるのだろう。
「りょーかい」
全く操作が分からない。
『ナミネ、聞こえてる?』
ラハルさんの声。ついこないだまで当たり前に聞いていたのに、かなり久々に聞いた気がする。
「はい、聞こえてます! あの、覚えてるのでしょうか?」
覚えていてほしい。
『厳密には完全じゃない。でも、身に覚えのない記憶は途切れ途切れに頭を流れ、ある時から毎日のようにナノハナ家で過ごしていた夢を見るんだ。ヨルクとはどうなった?』
う……、最後がそれか。けれど、ラハルさんは思い出すかもしれない。
「ラハル、アンタはいずれ思い出すだろうな。それ一昨日までのことだ」
記憶のない人が聞けば信じられない話だろう。
『一昨日!? そんなまさか!!』
そりゃ、びっくりするよね。
「で? こっち来れるわけ?」
どうして落ち武者さんばかり話すのだろう。
『今は仕事がかなり忙しくて、そっちに行けるのはいつか分からない。でも、セルファの言ってること本当なら僕も協力する! 二度と同じ過ちを繰り返してほしくない!』
2024年では、グルグル妖精っていつデビューしたのだろう。人気あるだろうな。ナナミお姉様が案の定また激ハマリだ。
「そのことだけど、アンタと強気なナミネが出演した『飛べない翼』『忘れられた翼』『43%の恋の涙』は2024年では古い形で残ってる!最近からの今だけど、繋がってるかもね?」
えっ、あの映画この世界にもあるの!?古い形ってことは、こっちの世界では半世紀前とかだろうか。
『そっか。今はまとまった時間は取れないけど、必ず夢で見た時みたいにナミネの日常の中の人物に戻るから! ごめん、今日はこれで』
電話は切れた。
「ナミネナミネって、ラハルもアンタしか見てないな」
今はそんなこと言っている場合ではないと思う。
「ねえ、今誰と電話してたの? ラハルの声聞こえたんだけど」
ナナミお姉様! いつからいたのだろう。
「あ、えっとクラスメイトです。あのナナミお姉様は……」
私が言いかけたのを落ち武者さんが遮った。
「ラハルは半年前にデビューした新人アイドルだろ! 通話なんて出来るわけないと思うけどね?」
割りと最近デビューしたのか。
「デビュー前からずっと見てたわよ! グッズも全部あるし!」
またあの部屋に逆戻りか。そうか、2024年でもグルグル妖精の駆け出し時代はあったのか。そんな中、私と接した時は売れっ子アイドル。何となくタイミングが悪いように感じる。
「今日、私たち出かけるので戻ってもらえませんか?」
誰かが加われば時間なんてあっという間に過ぎてしまう。
「ラハルからだったら覚えておきなさいよ!」
はあ、ミナクさんと交際するまでにどれだけかかるのだろう。それに、必ずしもミナクさんとナナミお姉様が一緒になるとは限らない。セナ王女かもしれないし、別の誰かかもしれない。
「はあ。何だか今が分からないし追いついていけないよ」
ミネルナさんには悪いけど、私はヨルクさんとの関係を壊されたくはなかった。
「姉さんは、まだカンザシに気があったんですよ。けれど、ロォハさんを裏切りたくないために抵抗しカンザシに殴られた……。姉さんが穢されたと言うより、姉さんの気持ちが問題だったのではないでしょうか」
やはり、思うことは皆似ている。幼なじみの時から両想いだったなら、祭りで口説かれた時、少しは揺れたかもしれない。
「あ、そうですよね。簡単には忘れられませんよね」
けれど、カンザシさんは今も私の実の兄なのだろうか?
「あの、カンザシさんは2024年の世界でも私の実の兄なのでしょうか?」
やっぱり気になってしまう。
「だと思うけど? コンビニで電子証明書出せるから博物館行く前にコンビニ寄って確認するか! なら、とっとと着替えろ!」
電子証明書!? 何それ。戸籍謄本って役場で出してもらうものなんじゃないの?
「あの、電子証明書って……」
ダメだ。全くついていけない。
「とっとと着替えろ!」
う……。私はしぶしぶ服を脱いだ。
「確認させます。ナミネさんは焦らなくて大丈夫ですよ」
やっぱりズームさんは優しい。
「アンタ、そんなダサイ下着着てんのかよ」
未来のようで、過去に戻っているのか。確かに、私はヨルクさんを完全に好きになるまではオシャレに疎かった。すっかり忘れていた。
「セルファさん。ヨルクさんに知られたら大目玉ですよ」
ズームさんは後ろ向いてる。
「僕と強気なナミネは恋人だったけど?」
それいつの時代だよ。私は夢で見ただけで、記憶には残っていない。
「ナミネ、地味な服着ろよ」
そっか、目立っちゃいけないのか。ロングヘアに、ダサイ下着、地味な服。ラルクを好きだった頃まんまじゃない。
「あ、そうだよね」
押し入れを開けると、見事にヨルクさんを好きだった頃のオシャレとは無関係の服ばかり並んでいる。私、こんなにオシャレに興味なかったんだ。
私はベージュのスムースワンピースを手に取り着た。春夏秋冬着れる服はとても便利だ。オシャレをしはじめた頃も、もう昔のことのように思えてくる。私はラルクとセレナールさんが交際するまで、髪は切れないし地味な服でいなくてはならない。でも、またみんなと仲良くするためには最初に戻る必要がある。
何事も順序というものが存在している。
「着たよ、ラルク」
全てなかったこと最初に戻っているけれど、私たちはまだやらなければいけないことがたくさんある。ここで諦めるわけにはいかない。
「アンタ、地味すぎ」
それだけセレナールさんはオシャレ系女子ということなのだろうか。落ち武者さんは、相変わらずお坊ちゃま系の服装。似合っていると言えば似合っているけれど。
「うーん、時間が変わったことによってか、2019年の時の服しかないんですよね」
私は髪型を三つ編みにした。
「ふーん、悪くないとは思うけどね?」
落ち武者さんってよく分からない。というか、様々こと引きずりすぎていて本当の気持ちが伝わってこない。
コンビニに入るとパラパラ雨が降りはじめた。
私は機械の前に立ち、落ち武者さんの言う通りに電子証明書を印刷した。パスワードが分からなかったけど、落ち武者さんのハッキングで、どうにか手続きが出来た。パスワードはラルクの誕生日になっていた。そうか、2024年の私もラルクのこと好きだったんだ。
私はゆっくり戸籍謄本を眺めた。
カンザシさんは2024年でも実の兄だった。
「ふーん、変わってないね?」
本心では赤の他人であってほしかった。実の兄とはいえ、母親は違うし、また貧乏な家庭で育ったのなら2019年の時の二の舞じゃないか。
「そういうものですかね」
運命は簡単には変えられない。変えようとすれば、それなりの努力が必要だ。そして、多くの人間は運命を変えられないまま人生を終える。
「じゃ、博物館行く」
もう9時前!? 今から行けば少しだけ待つ程度だろうか。
「ナミネさん、この傘使って下さい」
ズームさんは折りたたみ傘を私に渡した。
「ありがとうございます」
一緒に入ろうと言おうとして落ち武者さんが遮った。
「じゃ、僕も入る。ラルクとズームはこれ使え」
何なのだろう。落ち武者さんも折りたたみ傘持っているならラルクを入れればいいのに。
私たちはバス停で7分ほど待ったバスに乗った。
「ねえ、ラルク。コンビニに店員さんいなかったよね」
私の気のせいだろうか。会計の場所に機械が置かれていたような。
「ああ、2019年に新たな病が流行って人権削減して、今はどこも会計は機械だ。その病はまだ収束せず、潰れる店もある。けど、心配すんな。皇帝陛下は、機械を撤去して会計は店員さんが行い、バスの本数も電車の本数も元に戻すって言ってるし、僕もそうなると思う」
新たな病!? そういえば、バスに乗ってる人殆どマスク付けてる。コロディーのような病だろうか。
「皆さん、マスクどうぞ」
ズームさんって容量いいな。今もブランケット家の人間だろうか。今後もカンザシさんをサポートするのだろうか。
「ありがとうございます」
私たちはマスクを付けた。何だかこのマスク着け心地が違う。
「またskyグループの?」
そっか。根本的なことは変わっていないんだ。
「いえ、rainグループのものです。99.9%感染しないことが立証されています」
rainグループ!? 社名が違うだけだろうか。
「経営者は?」
やっぱり変わっていることもあるのだろうか。私は無意識に戸籍謄本をギュッと握り締めた。
「おばあ様です。skyグループは最先端技術のモノに視点を当てていますが、rainグループはどちらかというとあらゆる世代の男女が望むデザインに視点が当てられています。いわゆる趣味で作られた会社です」
おばあ様も会社を経営していたのか。やっぱり、ズームさんは同じ世界の人間とは思えない。マスクもよく見ると傘のマークになっている。
「skyグループとは相反する社名のrainグループってことね。アンタ本当にどこまでも恵まれてるな」
言われてみれば、skyとrain。似ているようで違う。そして、そもそも目的そのものが違うんだ。何だか羨ましい。けれど、私はやっぱり強さを求めてしまっている。
「ナミネ、新たな病は日本村から何らかの形で入れ込まれた陰謀説もある。病名はコラナで妖精村では治療薬が開発されてるんだ。けれど、もし日本村が何らかの形で入れたものならと治療薬の存在は伏せ、皇帝陛下も慎重になっている」
コラナ!? 日本村が入れ込んだ!? ダメだ。話についていけない。妖精村は太陽系ではないし日本村って何光年も離れている。どうやって入れ込むのだろう。何のために?
「マスクってずっと付けていなきゃいけないの?」
治療薬があるとはいえ、感染症って怖い。
「マスクは向こうのグループに気付かれないために付けてるだけだけど? それでも治療薬はあっても、ほぼコロディーと似てるから、感染したら似たような症状に苦しむことになるけどね?」
コロディー……。結局歴史は繰り返されるのか。
「マスクが気になるようでしたら、skyグループでは透明マスクの販売もしてますので学校などではそれを使われてはいかがでしょう?」
2019年も最先端だったけど、本当に絶やさないものなんだな。それも経営者の能力だろうか。
「じゃ、透明マスクと感染しないマスク使う。いざって時は透明マスクから切り替えろ!」
逆にややこしい。けれど、教室では透明の方が助かる。マスクはどことなくぎこちない。
「では、戻ったらお渡しします」
やはり、とても高いものなのだろうか。庶民では買えないもの、それがskyグループの商品だから。けれど、感染するわけにもいかない。
バスを降りると私たちは、博物館に入り受付でチケットをもらうなり死角になる場所に立った。
9時半。30分でセナ王女たちは来る。私の中で緊張感が走った。
「あ、ラルク」
聞くのは怖い。でも、知るべきことは最初に知っておきたい。
「ミドリお姉様って、その……」
ダメだ……。あの時のリアルが蘇る。
「天然ラァナと同じだけど?」
え、どうして落ち武者さんが知っているのだろう。けれど、ラァナさんと同じって、それってミドリお姉様は……。
「ミドリさんは、最後の1人から黒鈴酷華を受ける前にナノハさんが助け、月城総合病院で治療を受けました。第2は修復出来ましたが第1は修復出来ず、ミドリさんはカウンセリングを受けながら引きこもり、大学生の今やっと学校に通うようになり、ピアニストを目指しています。けれど、ナクリさんが引きこもるようになりました」
ミドリお姉様は一命を取り留めたが、大きなトラウマが残り、ずっとカウンセリング受けていたんだ。ほぼ2020年の続きに思える。
「そうですか。どんな形であれ生きてくれたことは幸いです」
そう、本人はどれだけ辛くても生きていてほしい。もう二度とあんな思いはしたくない。
「ほら、主役らが来たぞ」
人と話していると不思議に30分という時間は早く感じる。あれ、セナ王女たちマスクしていない。
「あの、マスクしてませんよね?」
感染怖くないのだろうか。
「王室なら透明マスクもあると思うけど?」
ああ、そうか。そうだよね。私たち、とんでもないVIPと仲良くしてたんだ。
「行くぞ、ナミネ!」
尾行って何だか気が引けるけど、元に戻すためには私たちが動かなくてはならない。
「うん!」
私たちは、それなりの距離を取りながらセナ王女たちを尾行した。
「この石、可愛いのです」
みんなオシャレしていて羨ましい。
「カナエ、お土産コーナーにレプリカあるから買うよ」
え、アルフォンス王子ってユメさんと交際しているのでは!? やっぱり記憶が抜けているだけで根底のどこかでは、みんな遠い前世をそして2020年を思い出そうとしているのだろうか。
「アルフォンス! ユメさんを構ってあげなさいよ!」
うーん、私がラルクに協力する前はこうだったのだろうか。
「あ、セナさん、いいの。アルフォンス様の自由は奪えないから」
本心なのかな。別れる恋人を見ているのも返って胸が痛む。
「あのダイヤ、セナさんに絶対似合うよ!」
あれがダイヤなの? ただの石みたい。
「Zランクね。いかにも古代って感じがするわ」
ダイヤにランクなんてあるのか。それにしても、さっきからセナ王女とカラルリさんの手、何度も触れそうになっている。これって……
「完全に元に戻ってるね?」
やっぱりそうか。ミネルナさんとカンザシさんが最後にまともに話していた時間には意味があったのだろうか。あんなに殴られてまで話すことなんてあったのだろうか。
「ですね。もう運命まで最初からですね」
はあ、何だか気が遠くなる。
「あくまで、甘えセナの人生だからね? シャムとくっつけようなんて思うだけ無駄だからね?」
いや、分かってはいるけれど、2020年を知っている私からしてみれば残念で仕方ない。それも含めて『人生』と呼ぶのだろうか。だとしたら、残酷だ。
「それは分かっています。ただ、残念だなて」
分かってるよ。頭の中では分かっている。気持ちが先走ってしまうのだ。2019年・2020年の展開を知っているから。
「ナミネさん、どれだけ遠回りしても本当のその人が望む結果になるのなら僕はいいと思うんです」
うーん、ズームさんは多分そういう人生を送ってきたのだろう。そして、誰かの人生を私がどうにかすることも出来ない。
あ、セナ王女たち2階へ上がってゆく。あの時のように。私たちも、見つからないように2階へ向かった。
「案の定だね?」
武官!? 早過ぎないだろうか。いや、これくらいに出てきたような記憶もある。初級武官なら、武術してるなら余裕。でも、ユメさんやセレナールさんは……。
私たちは、ソファーの裏側に隠れた。ラルク、真剣に見ている。
「アルフォンス王子はカナエ先輩を助け、セナ王女はカラルリ先輩を助けている。ユメ先輩とセレナール先輩が……」
こうだったんだよ、ラルク。ずっとこうだったんだよ。セレナールさんは何度も訴えたけど、他の人はみんな助けるつもりでいたと後付けをする。弱い人から助ける平等はいつも却下。
「ラルク、みんな自分と自分の大切な人が助かればそれでいいんだよ。弱い人はいつも後回し。その例として、セレナールさん、遠い前世では一度廃墟になってる博物館で間に合わなかったでしょ?」
言っても分からないかもしれないけど、結局は同じ展開になってしまう。ここに来る予定のセリルさんが来ていない時点で、ある程度の運命は既に決まっているように思えてくる。
「残酷だな。セレナール先輩がかわいそうで仕方ない」
そうだけど、何だかまだ確定されていてされていないことがある気がする。教科書に載っている、妖精村初代の皇太子が処刑したのはセレナールさんだ。そして、セリルさんも。それなのに、セレナールさんは皇太子様と相思相愛になるのは、何か引っかかる。どれだけ遠い前世とはいえ。あの時計屋も行ってみる必要がありそうだ。
セレナールさんは初級武官に押し倒されたところでカラルリさんが助け、ユメさんは服に手をかけられたところでアルフォンス王子が助けた。
「納得いかないわ! カラルリならセナさんが助けなくても余裕じゃない! どうして私を後回しにするのよ!」
セレナールさんは泣きはじめた。そして、横でラルクはセナ王女に扇子を向けている。
「ラルク、アンタさ、リリカに依頼してんならそれでいいだろ」
そうは言えども、大切な人を真っ先に助けたい。人間の核心かもしれない。酷い時は、誰かを見捨てないといけないこともあるかもしれないし、あの時のカラルリさんは体育館でセレナールさんを見捨てた。
「分かっています。ただ、セレナール先輩を蔑ろにする周りのことが気に触りました」
はあ、本当に2024年のラルクはセレナールさんのことが好きなのだろうか。2019年の時とは大違いだ。
ふと、後ろを振り向くとヨルクさんとマドンナさんが仲良さげに2階へ上がってきた。私は無意識にヨルクさんの元へ走った。
「おい! 強気なナミネ、早まるな!!」
分かってるよ! でも、ヨルクさんは私の婚約者なの! マドンナさんには渡せない! 私は、落ち武者さんの手を振り払い、ヨルクさんの元へ駆け寄った。そして、ヨルクさんに抱き着いた。
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あとがき。
歴史も現世も運命も、そう簡単には変えられないように感じます。
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この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
現在、小説に関する模倣(程度による)の一切を禁じております。
詳しくはこちらを参照→ 禁止事項
無断転載もご遠慮ください。
純愛偏差値 未来編 一人称版 126話
《セナ》
妖精村学園の高等部に転校して、思いの外、友達は作れず、寧ろ避けられる日々だった。それでも私には双子のアルフォンスがいるし、それでいいと思っていた。 でも、ある日、私が体育の授業の後、1人で片付けていたら同じクラスのカラルリが手伝ってくれて、そこから友達になり、妹のカナエも紹介してもらって、今の人間関係が出来上がったのである。
ただ、アルフォンスはクラスメイトのユメさんと交際しているけれど、気持ちがないのに断らなかったことは失礼に感じてユメさんが時折可哀想に感じている。
私は……私は、ここのところカラルリのことが気になっている。というか、非現実的ではあるが前世というものが存在していてカラルリとは前世でも関わりがあったように感じるのである。けれど、前世なんて馬鹿げている。
でも、カラルリの優しさが私の胸を温める。
「今度、別荘でバーベキューするから来ない?」
何となく、ユメさんとアルフォンスには親睦を深めてほしい。
「セナさん、絶対行く!」
また胸が弾んだ。
「カラルリが行くなら私も行くわ!」
どうしてだろう。私、セレナールとは自然的な友達にはなれない気がする。そして、このモヤモヤ感が何なのか分からずにいた。
「楽しみだわ」
よし! ユメさんも乗ってきた。
もし、ユメさんがアルフォンスに告白しなければ、このグループにいなかったかもしれない。これも何かの縁だと思う。
私とカラルリが友達になったのも多分、特別なご縁な気がする。
「あ、セリルも誘いたいかも」
セリルはクラスメイトで副委員長をしている。更には成績が学年トップなのだ。銀髪でおっとりしていて、カラルリとは幼なじみで女の子にも人気がある。けれど、実はカラルリの姉にあたるカナコさんと恋人のような関係なのである。互いに好き合っていることは誰が見ても明確なのに、あれで交際していないなんて最初は耳を疑ってしまった。
「兄さんなら私が誘っておくわ」
カラルリより先にセレナールに答えられてしまった。またモヤモヤしている。
「え、ええ、お願い」
兄妹でこんなにも似ていないなんて。美男美女には変わりないけれど、セレナールが子供っぽく感じてしまって癪に障る。それに、妖精村1番の美少女と噂が流れているのも何だか応援出来ない自分がいる。それなのに、私はその理由が全く分からない。
「カナエ、勉強はどう?」
またカナエに話しかけている。どうしてもっとユメさんのこと構ってあげないのだろう。
「毎日、予習復習をしていますので勉強はついていけています」
カナエはキクリ家の4女でキクリ食堂の中級料理人の指導をしている。料理がビックリするくらい上手で王室の料理人になってほしいくらいのレベルだと感じた。セレナールと同い歳なのに控えめな性格に家事も勉強も運動も出来て、自分の意見はしっかり持っている。その辺はカラルリにそっくり。
「はいはい、カナエは成績優秀だから。アルフォンスはユメさんに勉強教えてあげなさいよ」
ユメさんは身長が高く細めな体型でショートヘアの可愛らしい女の子。けれど、勉強や運動は苦手みたい。後は、ミルケット伯爵令嬢。貴族なのだ。
「教えるには教えるけど、バーベキューするんでしょ?」
教える時間くらいあるでしょうに。カナエには勉強のこと聞いておいてユメさんの勉強のことは気にしないなんて、まるで恋人じゃないみたい。と言っても、友達のような関係からの約束で交際を受けたから、その辺はどうにもならないのかもしれないけれど。
数日後の学校帰りの別荘。
私は浮かれていた。明日は、みんなで博物館へ行くのだ。
「セナ、あまりカラルリのこと考えちゃダメだよ。セナには簡単に水花を捨ててほしくない」
どうしてカラルリのことを言うのだろう。それに私は誰かと交際しても簡単には白梅を咲かせるつもりはない。
「私、カラルリとはただの友達だし、今は恋人作るとか全然考えてないわ」
高校2年生。彼氏持ちは結構多い。けれど、私は彼氏なんていなくても別にいい。
「本当に? カラルリに1ミリも気持ちないって言い切れる?」
1ミリもって、友達なんだからそれなりの思いはあるでしょうに。
「何よ! あなたこそユメさんとまるで他人じゃない」
このままではユメさんが可哀想すぎる。
「ユメさんはそれでいいって言ってるから。それより、私は何となく嫌な感じがする。今のグループも必然的に作られたような……」
何それ。必然でも運命でも偶然でも楽しければそれでいいじゃない。
「アルフォンス、考えすぎよ」
アルフォンスは、昔から慎重な性格で小さい頃は少し臆病だったりもした。それにしても、まるで私とカラルリが親密になっちゃいけないような言い方が気になる。
使用人が作った夕ご飯を食べて、お風呂に入った後、私はクローゼットの部屋で明日来ていく服を探していた。
必然……か。この世は、アルフォンスが言うほど何かに縛られているものなのだろうか。自由に生きてきた私にはそうは思えない。私は王妃の娘ではないけれど、私なりに幸せに生きて来た。これからも私はずっと変わらないと思う。
前の学校は貴族ばかりで少し退屈だった。私が王族だから気を遣われると、その人間関係は上辺だけのものだし、私にも一般人のような何でも言い合える人間関係が欲しかった。簡単に言えば、境遇を変えるために転校したわけである。転校した当初は、私が王女というだけで周りは私を避け、中には妬んでイジメまがいのことをしてくるクラスメイトもいた。転校しても人間関係を作れないのだと落ち込んでいたけれど、カラルリのおかげで、私は今とても楽しい学生生活を送っていると思う。
妖精村学園は幼稚園からエスカレーター式だし、勉強が出来なくても大学までは通えるようになっている。将来の夢とか今の私にはないけれど、決まるまでは大学院までいるつもり。
「セナ、もう寝な」
まだ服決まってないのに。でも、せっかくのお出かけだから睡眠は取っておきたい。
「分かったわ!」
部屋に戻りベッドに入ると不思議と直ぐに眠りについた。そして私は夢を見た。
とても古い時代。みんな着物を着ている。そして、軍事基地から戻った私はカラクリ家でお世話になることになった。そこで知り合ったカラルリと私は直ぐに仲良くなった。
ある祭りにて、私はカラルリから告白をされた。
『セナさん、私はセナさんがカラクリ家に来て間もなくしてセナさんを見るとドキドキするようになった。セナさんがひいおじい様に師範以上の感情を持っているのは分かる。でも、私ははじめて女を見てなびいた。毎日セナさんを見ては胸が高鳴ってドキドキが止まらなくてこの感情が恋なのだと気づいた。私はセナさんが好きだ。セナさんの嫌がることはしないし、セナさんのペースに合わせる。返事は直ぐでなくて構わない。ただ、セナさんを好きになった以上、自分の気持ちをハッキリ伝えたかった。私に気持ちがないならハッキリ断ってくれて構わない』
カラルリはかなり緊張した様子だった。けれど、私は嬉しくてたまらなかった。
『まあ、素敵な花束。これ私のために用意してくれたの?』
私はカラルリの持っている薔薇の花束に目を向けた。
『あ、ああ』
カラルリは少し俯いた。
『頂くわ』
私はカラルリから薔薇の花束を受け取った。薔薇が50本あったことは多分その時の私は知らなかった。
『私もカラルリのことが好き。もちろん異性として。私もあなたを見た時からドキドキしていたの。私は小さい頃、確かに師範に想いを寄せていたわ。軍人時代は師範との思い出を思い返すことで乗り切れられたのだと思う。けれど、それはもう私の中では昔の縁(えにし)になっている。私はあなたと師範を重ねてあなたを好きになったんじゃない。あなたを見た時からドキドキが止まらなくて、あなたに触れられるたび心がなびいて、あなたに優しくされるたびどんどん好きになっていった。今ではあなたなしでは生きていけない』
きっと、本当の初恋なのだろう。私はカラルリを手放したくはなかった。どうしてもカラルリと正式に恋人になりたかったのだ。
『セナさん、私はセナさんほど強くない。セナさんを見た時、私はまだまだ修行不足だと気付かされた。でも、セナさんさえ良ければ私と結婚を前提に交際してほしい』
夢はそこで途切れていた。私は目を覚まし身体を起こした。あまりにもリアルな夢で混乱と共に、本当にあった出来事なのではとも感じてしまった。
けれど、夢は夢。最近、少しカラルリのことを考えていたから、少し行き過ぎた夢を見ただけ。私は必死にそう言い聞かせた。
1階では既にアルフォンスが朝食を食べはじめていた。私はアルフォンスに夢のことを話した。
「正直、セナには言いたくなかったけど、前世は存在していると研究者の間では、ほぼ確実な結論付けとなっていて、夢で思い出すことが多いらしい。聞いている限り、告白された神社は今も存在しているし、人間関係だって、ほぼ私たちの関わりある人物ばかり。前世の可能性は高いかもしれない」
前世……。本当に存在するのだろうか。いくらリアルな夢とはいえ、何の証拠もなしでは結論付が出来ない。
「うーん、それって私とカラルリは両想いだったってことよね。それもかなり愛し合っていた。でも、私はカラルリのことは友達だと思っている」
そりゃ、交際するならカラルリみたいな人がいいと思うことはあるけれど。現時点では夢と現実の差は空きすぎている。
「その夢が本当に前世だったとしたら、完全に愛し合っていたし、それ以上の関係だと思う。でもね、セナ。前世と現世(いま)は全く別物。もし、この先、カラルリを好きになることがあっても慎重になってほしい」
慎重……。どういう意味だろう。カラルリなら慎重にならなくても私を大切にしてくれると思う。あの夢みたいに。夢ではカラルリに全てを捧げた。水花もあんなに簡単に……。
「うーん、混乱して何だか冷静になれないわ」
異性として好きとかそうでないとかではなくて。私も将来的には夢のようなことをするのだろうか。夢では白梅までは咲かされてないけれど、でも、現代だと白梅咲になってしまう。それも雲リラなしで。とてもじゃないけど考えられない。いくら好きでも手を繋ぐ以上のことは直ぐには許せないと思う。それにカラルリのことを異性として見ているかなんて分からない。少しは見ていたとしても今の関係から変わりたくない。
「セナ、私はカラルリは友達止まりの方がいい気がする。兄妹であれ、あまり深入りしたようなこと言いたくないけど、セナには後悔してほしくない」
カラルリと交際すれば後悔するのだろうか。私にはそう聞こえた。
「うーん……」
言葉が見当たらない。別に現時点でカラルリとの交際は考えてないしカラルリもそうだと思う。
「昔は今みたいに色々なかったけど、今は寧ろありすぎるよね。もし、好きな人と交際したとして、その人がキュート女優にハマっていたらどうする?」
え……。夢の中の私は妖精村何とか雑誌を見ていて……カラルリは興味なくて、カラルリがその雑誌見てたとしても平然としていたと思う。でも、改めて聞かれると彼氏がキュート女優にハマるのは嫌かもしれない。彼女がいるのにキュート女優だなんて裏切りにも感じてしまう。
「私は嫌だわ。そもそも彼女がいるのにキュート女優にハマる男なんているのかしら? フラワー女優でさえありえない……」
どうしてあんな男を誘惑するような女優がいるのかしら。理解出来ないし、そういう雑誌見ている男だったら即別れると思う。けれど、似たようなのが物凄い昔にもあった気がする。夢の中のような時代に。この曖昧な記憶は何なのだろう。
「セナは恋愛は早いと思う。前世を思い出したら、その記憶に振り回されそうだし。だからこそ、気になる人が出来ても友達以上にはなって欲しくないと思ってる」
恋愛なんてしたことないから分からないけど、少なくとも今は彼氏を必要とはしていない。でも未来は分からない。それにやっぱり前世なんて信じられない。アルフォンスは覚えているのだろうか。その証拠もあるのだろうか。
「アルフォンスは前世の記憶があるの? あったとして証拠まで持ってるの?」
私は何を見ても信じられないかもしれない。
「あるけど、かなり曖昧。ただ、3日ほど前にフェアホを見たら、この写真があったんだ」
私はアルフォンスのフェアホを覗き込んだ。
とても古い写真。夢で見たカラクリ家だ! こんなことあるのだろうか。写真は本物なのだろうか。私たちの先祖たち? それとも……いや、やっぱり前世とか今の私には信じられない。
「先祖かしら。古い写真って残るものなのね」
写真に映っている私にそっくりな人が私であるはずがない。
「私は前世だと思っている。かなり遠い前世。保存状態は言いけれど、こういった建物は3世紀頃に多かったらしいから、3世紀から5世紀の間だと思う」
3世紀って。それが本当なら残ってるはずないじゃない。王室ならともかく。そもそもどうしてアルフォンスのフェアホの中に入っているのかさえ分からない。けれど、夢のことといえ写真のことといえ、その物事に触れるほどに気になってしまう。そのうち私も疑念を持つかもしれない。どこかのタイミングで王室の図書館に行こうかしら。
「セナ、あと30分で出るから」
もうそんな時間! 私は慌てて髪をポニーテールに結んだ。
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あとがき。
写真は古代編のラストの集合写真でしょうか。
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この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
現在、小説に関する模倣(程度による)の一切を禁じております。
詳しくはこちらを参照→ 禁止事項
無断転載もご遠慮ください。
《セナ》
妖精村学園の高等部に転校して、思いの外、友達は作れず、寧ろ避けられる日々だった。それでも私には双子のアルフォンスがいるし、それでいいと思っていた。 でも、ある日、私が体育の授業の後、1人で片付けていたら同じクラスのカラルリが手伝ってくれて、そこから友達になり、妹のカナエも紹介してもらって、今の人間関係が出来上がったのである。
ただ、アルフォンスはクラスメイトのユメさんと交際しているけれど、気持ちがないのに断らなかったことは失礼に感じてユメさんが時折可哀想に感じている。
私は……私は、ここのところカラルリのことが気になっている。というか、非現実的ではあるが前世というものが存在していてカラルリとは前世でも関わりがあったように感じるのである。けれど、前世なんて馬鹿げている。
でも、カラルリの優しさが私の胸を温める。
「今度、別荘でバーベキューするから来ない?」
何となく、ユメさんとアルフォンスには親睦を深めてほしい。
「セナさん、絶対行く!」
また胸が弾んだ。
「カラルリが行くなら私も行くわ!」
どうしてだろう。私、セレナールとは自然的な友達にはなれない気がする。そして、このモヤモヤ感が何なのか分からずにいた。
「楽しみだわ」
よし! ユメさんも乗ってきた。
もし、ユメさんがアルフォンスに告白しなければ、このグループにいなかったかもしれない。これも何かの縁だと思う。
私とカラルリが友達になったのも多分、特別なご縁な気がする。
「あ、セリルも誘いたいかも」
セリルはクラスメイトで副委員長をしている。更には成績が学年トップなのだ。銀髪でおっとりしていて、カラルリとは幼なじみで女の子にも人気がある。けれど、実はカラルリの姉にあたるカナコさんと恋人のような関係なのである。互いに好き合っていることは誰が見ても明確なのに、あれで交際していないなんて最初は耳を疑ってしまった。
「兄さんなら私が誘っておくわ」
カラルリより先にセレナールに答えられてしまった。またモヤモヤしている。
「え、ええ、お願い」
兄妹でこんなにも似ていないなんて。美男美女には変わりないけれど、セレナールが子供っぽく感じてしまって癪に障る。それに、妖精村1番の美少女と噂が流れているのも何だか応援出来ない自分がいる。それなのに、私はその理由が全く分からない。
「カナエ、勉強はどう?」
またカナエに話しかけている。どうしてもっとユメさんのこと構ってあげないのだろう。
「毎日、予習復習をしていますので勉強はついていけています」
カナエはキクリ家の4女でキクリ食堂の中級料理人の指導をしている。料理がビックリするくらい上手で王室の料理人になってほしいくらいのレベルだと感じた。セレナールと同い歳なのに控えめな性格に家事も勉強も運動も出来て、自分の意見はしっかり持っている。その辺はカラルリにそっくり。
「はいはい、カナエは成績優秀だから。アルフォンスはユメさんに勉強教えてあげなさいよ」
ユメさんは身長が高く細めな体型でショートヘアの可愛らしい女の子。けれど、勉強や運動は苦手みたい。後は、ミルケット伯爵令嬢。貴族なのだ。
「教えるには教えるけど、バーベキューするんでしょ?」
教える時間くらいあるでしょうに。カナエには勉強のこと聞いておいてユメさんの勉強のことは気にしないなんて、まるで恋人じゃないみたい。と言っても、友達のような関係からの約束で交際を受けたから、その辺はどうにもならないのかもしれないけれど。
数日後の学校帰りの別荘。
私は浮かれていた。明日は、みんなで博物館へ行くのだ。
「セナ、あまりカラルリのこと考えちゃダメだよ。セナには簡単に水花を捨ててほしくない」
どうしてカラルリのことを言うのだろう。それに私は誰かと交際しても簡単には白梅を咲かせるつもりはない。
「私、カラルリとはただの友達だし、今は恋人作るとか全然考えてないわ」
高校2年生。彼氏持ちは結構多い。けれど、私は彼氏なんていなくても別にいい。
「本当に? カラルリに1ミリも気持ちないって言い切れる?」
1ミリもって、友達なんだからそれなりの思いはあるでしょうに。
「何よ! あなたこそユメさんとまるで他人じゃない」
このままではユメさんが可哀想すぎる。
「ユメさんはそれでいいって言ってるから。それより、私は何となく嫌な感じがする。今のグループも必然的に作られたような……」
何それ。必然でも運命でも偶然でも楽しければそれでいいじゃない。
「アルフォンス、考えすぎよ」
アルフォンスは、昔から慎重な性格で小さい頃は少し臆病だったりもした。それにしても、まるで私とカラルリが親密になっちゃいけないような言い方が気になる。
使用人が作った夕ご飯を食べて、お風呂に入った後、私はクローゼットの部屋で明日来ていく服を探していた。
必然……か。この世は、アルフォンスが言うほど何かに縛られているものなのだろうか。自由に生きてきた私にはそうは思えない。私は王妃の娘ではないけれど、私なりに幸せに生きて来た。これからも私はずっと変わらないと思う。
前の学校は貴族ばかりで少し退屈だった。私が王族だから気を遣われると、その人間関係は上辺だけのものだし、私にも一般人のような何でも言い合える人間関係が欲しかった。簡単に言えば、境遇を変えるために転校したわけである。転校した当初は、私が王女というだけで周りは私を避け、中には妬んでイジメまがいのことをしてくるクラスメイトもいた。転校しても人間関係を作れないのだと落ち込んでいたけれど、カラルリのおかげで、私は今とても楽しい学生生活を送っていると思う。
妖精村学園は幼稚園からエスカレーター式だし、勉強が出来なくても大学までは通えるようになっている。将来の夢とか今の私にはないけれど、決まるまでは大学院までいるつもり。
「セナ、もう寝な」
まだ服決まってないのに。でも、せっかくのお出かけだから睡眠は取っておきたい。
「分かったわ!」
部屋に戻りベッドに入ると不思議と直ぐに眠りについた。そして私は夢を見た。
とても古い時代。みんな着物を着ている。そして、軍事基地から戻った私はカラクリ家でお世話になることになった。そこで知り合ったカラルリと私は直ぐに仲良くなった。
ある祭りにて、私はカラルリから告白をされた。
『セナさん、私はセナさんがカラクリ家に来て間もなくしてセナさんを見るとドキドキするようになった。セナさんがひいおじい様に師範以上の感情を持っているのは分かる。でも、私ははじめて女を見てなびいた。毎日セナさんを見ては胸が高鳴ってドキドキが止まらなくてこの感情が恋なのだと気づいた。私はセナさんが好きだ。セナさんの嫌がることはしないし、セナさんのペースに合わせる。返事は直ぐでなくて構わない。ただ、セナさんを好きになった以上、自分の気持ちをハッキリ伝えたかった。私に気持ちがないならハッキリ断ってくれて構わない』
カラルリはかなり緊張した様子だった。けれど、私は嬉しくてたまらなかった。
『まあ、素敵な花束。これ私のために用意してくれたの?』
私はカラルリの持っている薔薇の花束に目を向けた。
『あ、ああ』
カラルリは少し俯いた。
『頂くわ』
私はカラルリから薔薇の花束を受け取った。薔薇が50本あったことは多分その時の私は知らなかった。
『私もカラルリのことが好き。もちろん異性として。私もあなたを見た時からドキドキしていたの。私は小さい頃、確かに師範に想いを寄せていたわ。軍人時代は師範との思い出を思い返すことで乗り切れられたのだと思う。けれど、それはもう私の中では昔の縁(えにし)になっている。私はあなたと師範を重ねてあなたを好きになったんじゃない。あなたを見た時からドキドキが止まらなくて、あなたに触れられるたび心がなびいて、あなたに優しくされるたびどんどん好きになっていった。今ではあなたなしでは生きていけない』
きっと、本当の初恋なのだろう。私はカラルリを手放したくはなかった。どうしてもカラルリと正式に恋人になりたかったのだ。
『セナさん、私はセナさんほど強くない。セナさんを見た時、私はまだまだ修行不足だと気付かされた。でも、セナさんさえ良ければ私と結婚を前提に交際してほしい』
夢はそこで途切れていた。私は目を覚まし身体を起こした。あまりにもリアルな夢で混乱と共に、本当にあった出来事なのではとも感じてしまった。
けれど、夢は夢。最近、少しカラルリのことを考えていたから、少し行き過ぎた夢を見ただけ。私は必死にそう言い聞かせた。
1階では既にアルフォンスが朝食を食べはじめていた。私はアルフォンスに夢のことを話した。
「正直、セナには言いたくなかったけど、前世は存在していると研究者の間では、ほぼ確実な結論付けとなっていて、夢で思い出すことが多いらしい。聞いている限り、告白された神社は今も存在しているし、人間関係だって、ほぼ私たちの関わりある人物ばかり。前世の可能性は高いかもしれない」
前世……。本当に存在するのだろうか。いくらリアルな夢とはいえ、何の証拠もなしでは結論付が出来ない。
「うーん、それって私とカラルリは両想いだったってことよね。それもかなり愛し合っていた。でも、私はカラルリのことは友達だと思っている」
そりゃ、交際するならカラルリみたいな人がいいと思うことはあるけれど。現時点では夢と現実の差は空きすぎている。
「その夢が本当に前世だったとしたら、完全に愛し合っていたし、それ以上の関係だと思う。でもね、セナ。前世と現世(いま)は全く別物。もし、この先、カラルリを好きになることがあっても慎重になってほしい」
慎重……。どういう意味だろう。カラルリなら慎重にならなくても私を大切にしてくれると思う。あの夢みたいに。夢ではカラルリに全てを捧げた。水花もあんなに簡単に……。
「うーん、混乱して何だか冷静になれないわ」
異性として好きとかそうでないとかではなくて。私も将来的には夢のようなことをするのだろうか。夢では白梅までは咲かされてないけれど、でも、現代だと白梅咲になってしまう。それも雲リラなしで。とてもじゃないけど考えられない。いくら好きでも手を繋ぐ以上のことは直ぐには許せないと思う。それにカラルリのことを異性として見ているかなんて分からない。少しは見ていたとしても今の関係から変わりたくない。
「セナ、私はカラルリは友達止まりの方がいい気がする。兄妹であれ、あまり深入りしたようなこと言いたくないけど、セナには後悔してほしくない」
カラルリと交際すれば後悔するのだろうか。私にはそう聞こえた。
「うーん……」
言葉が見当たらない。別に現時点でカラルリとの交際は考えてないしカラルリもそうだと思う。
「昔は今みたいに色々なかったけど、今は寧ろありすぎるよね。もし、好きな人と交際したとして、その人がキュート女優にハマっていたらどうする?」
え……。夢の中の私は妖精村何とか雑誌を見ていて……カラルリは興味なくて、カラルリがその雑誌見てたとしても平然としていたと思う。でも、改めて聞かれると彼氏がキュート女優にハマるのは嫌かもしれない。彼女がいるのにキュート女優だなんて裏切りにも感じてしまう。
「私は嫌だわ。そもそも彼女がいるのにキュート女優にハマる男なんているのかしら? フラワー女優でさえありえない……」
どうしてあんな男を誘惑するような女優がいるのかしら。理解出来ないし、そういう雑誌見ている男だったら即別れると思う。けれど、似たようなのが物凄い昔にもあった気がする。夢の中のような時代に。この曖昧な記憶は何なのだろう。
「セナは恋愛は早いと思う。前世を思い出したら、その記憶に振り回されそうだし。だからこそ、気になる人が出来ても友達以上にはなって欲しくないと思ってる」
恋愛なんてしたことないから分からないけど、少なくとも今は彼氏を必要とはしていない。でも未来は分からない。それにやっぱり前世なんて信じられない。アルフォンスは覚えているのだろうか。その証拠もあるのだろうか。
「アルフォンスは前世の記憶があるの? あったとして証拠まで持ってるの?」
私は何を見ても信じられないかもしれない。
「あるけど、かなり曖昧。ただ、3日ほど前にフェアホを見たら、この写真があったんだ」
私はアルフォンスのフェアホを覗き込んだ。
とても古い写真。夢で見たカラクリ家だ! こんなことあるのだろうか。写真は本物なのだろうか。私たちの先祖たち? それとも……いや、やっぱり前世とか今の私には信じられない。
「先祖かしら。古い写真って残るものなのね」
写真に映っている私にそっくりな人が私であるはずがない。
「私は前世だと思っている。かなり遠い前世。保存状態は言いけれど、こういった建物は3世紀頃に多かったらしいから、3世紀から5世紀の間だと思う」
3世紀って。それが本当なら残ってるはずないじゃない。王室ならともかく。そもそもどうしてアルフォンスのフェアホの中に入っているのかさえ分からない。けれど、夢のことといえ写真のことといえ、その物事に触れるほどに気になってしまう。そのうち私も疑念を持つかもしれない。どこかのタイミングで王室の図書館に行こうかしら。
「セナ、あと30分で出るから」
もうそんな時間! 私は慌てて髪をポニーテールに結んだ。
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あとがき。
写真は古代編のラストの集合写真でしょうか。
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