日常のこととかオリジナル小説のこととか。
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ashita
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地主(土地貸してます)
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漫画やアニメを見るのが好きです。最推しはフーディーニ ♡
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ブログ、もう書かないと思ってました。
けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。
小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。
純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。
ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。
小説、ぼちぼちマイペースに書いてゆきます。
よろしくお願い致します。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
お知らせ。
イラストは現在「ナノハナ家の日常」に載せております。サイドバーにリンクあります。
また、「カラクリよろずや」にて無料のフリーイラスト素材配布もはじめました✩.*˚
フリーイラスト素材も増やしていく予定です(*'ᴗ'*)
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
模倣・無断転載などは、ご遠慮ください。
ブログの小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
小説・純愛偏差値に関しましては、武家名・貴族名(程度による) / 及び、武官の階級 / 扇子・羽子板・花札・百人一首・紙飛行機などのアイテム使用方法の模倣の一切を禁じております。
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X @kigenzen1874
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現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
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が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
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〈資格履歴〉
2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
→漢方コーディネーター 合格
→薬膳調整師 合格
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〈資格証明バナー〉

2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
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2025年01月20日
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→絵画インストラクター 合格
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→鉱石セラピスト 合格
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〈資格証明バナー〉

純愛偏差値 未来編 一人称版 107話
《ナミネ》
結局、あのあと、ナルホお兄様がアヤネさんを説得し、再びナノハナ家に連れ戻したらしい。アヤネさんはアヤネさんなりに反省したそうだが、私はその現場を知らない。
ただ覚えているのは、ヨルクさんの紅葉の香りだけ。
第4居間では、氷河期町に行く人が既に支度をして、朝食を取っていた。私もヨルクさんの隣で朝食を食べはじめた。
「あの、ナミネさん。昨日はごめんなさい」
嘘っぽい言葉を朝から聞くと、いやな気持ちにさせられる。もう、アヤネさんとは同じ空間にいたくない。
「絶対許せません!氷河期町から帰ったら、私、ナノハナ家出ていきます!」
最初はこんなんじゃなかった。恐らく紀元前村からだ。
人は、ひとたび中身を見てしまうと嫌気がさすこともある。表面上は、いくら大人しくても、態度によっては苦手意識を持ってしまうものである。
「ナミネさん。本当に反省しています」
ズームさんがいるから、ここにいるだけの人。別に私とは仲良くしたいわけではないだろうに。
「ナミネ。停電で、お父様たちの任務も減ってきているし、ナノハナ家は部屋がたくさん余ってるから下宿にするつもりなんだよ。馬が合わない人がいるからって追い出すわけにはいかないよね」
だから、私のほうが出て行くって言ってるんじゃない。
「ですから、私が出ていきます!」
「ナミネ、そんなこと言わないで。ナミネが出て行ったら私がここにいる意味なくなる」
ヨルクさんは悲しそうに私の手を握った。
アヤネさんとヨルクさんは趣味で繋がっているから、いいかもしれないけど、私は何の繋がりもない。けれど、ヨルクさんと離れるのはいやだ。こんな矛盾、自分でも馬鹿げていると分かっているのに。私は転生するたびに大人になっていて、それゆえ、中身は大人なはずなのに、不思議なものだ。若いと自然に思考も幼くなるものなのである。
「努力はします。でも、アヤネさんと私は合わないと思います」
合わないものは合わない。それを我慢して同じ空間にいるか、離れるかは人それぞれだが。少なくとも私は同じ空間にいると苛立つタイプだ。
「ナミネさん。本当に反省しています。今後は私から歩み寄ります」
それが出来れば苦労はしない。
それに、ナルホお兄様の言ってた下宿って何だろう。知らない人が、ぞろぞろとナノハナ家で暮らすのだろうか。それはそれでやりにくいものがあるだろう。
「もういいです!私が我慢します!どうせ、ズームさんと一緒になれず、どこかのおじさんと政略結婚する可哀想なアヤネさんですもんね」
あれ、ズームさんと一緒になれない。もしかして、アヤネさんは、遠い昔、私とズームさんが交際していたことに嫉妬しているのだろうか。女の敵は女と言うが、大人しい人も惚れた男のことになれば、冷静ではいられなくなるのだろうか。
「ナミネ。アヤネさんは、あのあと、氷河期町で過ごすための説明も読んだし、覚悟の上で行くんだよ。すぐにとは言わない。でも、せっかく縁あって、グループにいるんだから、大切にしたほうがいいよ。今の時間をね。青春なんてあっという間だから」
そんなの覚えていない。中学に上がるまでは早く感じたように思うけど、20代だって言ってしまえば青春ではないか。なにも、10代だけが青春というわけではないと思うが。
それに、覚悟ではなく、ズームさんと一緒にいたいだけでしょ。貴族って、どこまで脳内優雅なの。
「はいはい、分かりましたー!今後は、アヤネさんのこと透明人間だと思うことにしますー!」
私は、どこまでも素直になれない。だから、妖精村時代、何度もヨルクさんを失ったのだろう。自分では分かっている。でも、どうしようもないのだ。
「じゃ、出発する」
いよいよ、命懸けの仕事のはじまりだ。
私たちは、荷物を確認したあと、馬小屋の王室のフェアリーサラブラーとロリハー家のエンジェルブェロッラを外に連れ、馬を走らせた。
町から町を越え、春風町の宿を借りたあと、馬は宿の駐車場に置いて、氷河期町へ続く洞窟を歩いた。洞窟は約45分ほどだろうか。長すぎず短くもなく。けれど、作業があって終わるたび、春風町の宿に戻らなくてはならない。自転車屋で、自転車を借りた方がいいだろうか。
歩けば歩くほど、だんだんと寒くなってきた。私は帽子を被いてフードを被いた。尋常ではない寒さだ。身体が凍りそう。
「皆さん、大丈夫ですか?」
私は、みんなの安否を確かめた。
「僕は大丈夫だけど?」
「私も大丈夫だよ」
「私も大丈夫だ」
「カナエも大丈夫です」
「私も大丈夫よ」
崖登り係は大丈夫そうだけど、ズームさんやミネスさん、ラハルさん、アヤネさんは、かなり寒そうだ。
もうしばらく歩いていたら、洞窟の向こうが見えてきた。もうすぐ洞窟を抜ける。私たちは覚悟を決めた。
吹雪がここまで吹いてくる。
洞窟を抜けると、銀世界なんてものではない。
もはや何も見えないのである。全くというのは大袈裟かもしれない。掻い摘んで言うと、視界がかなり悪い。
地面は雪と言うより氷だろうか。何気に滑りやすい感じがする。
「では、テントは僕とミネスで張りますね」
テントなんて張れるのだろうか。
「あ、私も手伝います!」
こういうのは、みんなでしないと。
「僕たち含め、アンタも崖登り係だ。テントはズームとお子ちゃまミネスに張ってもらうぞ」
そうか。ここでは、無駄な体力は少しも使えない。
それにしても崖も氷で覆われていて、登れるかどうかも分からなければ頂上がどこにあるのかも見えない。
「テント張れましたよ」
え、もう張れたの?早くないだろうか。
私たちは、テントの中に入った。
「あったかい!」
思わず声に出してしまった。
「今年の秋にskyグループで売り出す予定なんです。恒星の光で温もっているので電池とか充電とか全くいらないんです」
skyグループ。やっぱり、規模が違う。恒星の光でも、充電式が多い中、このテントは多くの光を取り込んでくれるというわけか。
「妖精村が停電でもブランケット家は、電気で全部使えるよー!」
いいな。私も、お金持ちに生まれたかった。でも、武家も悪くないと思ってしまう。何不自由ない、何でも手に入る暮らしも大切だろうけど、私は私なりに手に入れてきたものもたくさんある。
「凄いですね。これなら、ナヤセス殿もヨルクさんもエルナさんも、凍えずに済みますね」
わざと、アヤネさんの名前を出さなかった。私の中では、もう仲間ではないからだ。
「ナミネ、本当に無理しないでね」
ヨルクさんは、崖は登れないけど私が心配で着いてきた。
「はい」
私はサングラスを付けようとした。雪山ゆえ、ほぼゴーグルだ。
「シャム軍医!?」
これまた珍しい人の名前が出た。
私は咄嗟にテントの外に出た。本当にシャム軍医だ。私は多分会ったことはないが、遠い昔、セナ王女の同僚だったのである。
「セナ元帥、お久しぶりです」
何だか、随分やつれている気がする。バイトで来たのだろうか。
「久しぶりね。シャム軍医も、バイト?」
私も、そこめちゃくちゃ気になる。
「いえ、ここに住んでいるんです」
ここに住んでる!?いったいどういうことなのだろう。
「え、どういうこと?」
本当、何がなんだか分からない。
「僕は、ここで生まれたんです。ここの住人は皆、最下層と呼ばれ、宝石の原石を採取させられています」
何それ!まるで、紀元前村の蓮華町ではないか。というか、それより酷い。妖精村にも、古代……いや、それ以外の暮らしをしている町があっただなんて。
「えっ、でも、こんなところ住めないじゃない」
とてもじゃないけど、このような寒いところで住めるわけがない。私は再びテントに入り顔だけ出した。セナ王女は寒くないのだろうか。
「ここから400mほどのところに、住人たちの家があります。政府から提供された家で、その中だと普通の暮らしが出来るんです。原石も採取出来ない人ばかりで、政府から賞味期限1年切れなどの食材は提供されています。僕は、医師としての知識はありますが、とてもじゃないけど、崖は登れません。だから、細々と生活しているのです」
酷い話だ。あんな崖、登れるわけがないのに、無理矢理に差別して、こんな町に閉じ込めて。
シャム軍医。顔はそこそこハンサムでエリート医師だったのに、現代ではこの有り様。まるで、ユウサクさんみたいだ。時代は分からない。武家に生まれたからといって来世でも武家というわけではない。
「ナミネさん、これを」
ベスト、だろうか。
「ありがとうございます、ズームさん」
私は早速ベストを着てみた。
「軽くてあったかい!」
また思わず声を出してしまった。
「このベストは人が着ることによって温まるんです」
ズームさんとは、もう暮らしの規模そのものが違う。ズームさんのように、何もかも恵まれた人もいるのに、この町で不自由な民として暮らさなければならない人もいる。世の中というものは、こうも不公平なものなのか。
ズームさんは、崖登り係にベストを渡しはじめた。
「酷い話ね。シャム軍医は、あんなにもエリートだったのに。こんなところで暮らしているだなんて思ってもみなかったわ」
それは同僚の誰もが思っているだろう。
「じゃ、ズームからベストももらったことだし、崖登り係は原石採取に行くぞ!みんな、無線イヤホンマイク付けろ!」
私はリュックをテントの中に下ろし、ポシェットと無線イヤホンマイクを付けた。
「え、セナ元帥、あの崖登るんですか?」
やっぱり気になるよね。
「ええ、ちょっと事情があって」
セナ王女は苦笑していた。無理もないか。彼氏のローン返すためなんて言うに言えないものな。
「気を付けてください」
「大丈夫よ」
私たちは、崖の前に立った。もう後戻りは出来ない。
私は苦無を氷に突き刺した。分厚い氷ゆえ、崖までは刺さらない。けれど、問題は足元だ。滑り止めの靴は履いているが、踏み場は手探りになる。私は試しに1つ目に足をかけた。崖のとんがっている部分を覆う氷は確かに踏み場かもしれない。けれど、上まであるとは限らない。
私が止まっていると、セナ王女は、どんどん上に登りはじめている。やっぱり、セナ王女の力量は変わっていない。本当に元帥のままだ。
私も負けてられない。原石を採取しないと。私は、苦無を刺しては踏み場を見つけ、ゆっくり崖を登りはじめた。
アルフォンス王子とカラルリさんは、踏み場を見つけられないのか下で苦戦している。他のメンバーは、ゆっくりと登っていっているようだ。
「ねえ、ラルク。セナ王女、見えなくなっちゃったね」
こんな崖、プロでも苦戦するだろうに、セナ王女の姿は吹雪で、あっという間に見えなくなってしまった。
「まあ、場数が全然違うんだろうな」
それに、セナ王女はカラルリさんの責任も感じているのだろう。
「だねぇー。私たちも負けてられないね」
私たちは、とにかく登り続けた。この急過ぎて、頂上がどこか分からない崖を。ただただ、ひたすらに登り続けたのである。
踏み場が不安定な時は、近くの踏み場を探し、それもない時は、苦無を突き刺し、上の踏み場に足をかけた。命懸けの他、何ものでもない。けれど、これをクリア出来なければ、武士を極められない。
今は、ひたすら登り続けるのみ。
その時、カナエさんが踏み場を外し、パラシュートを開いた。されど、パラシュートは吹雪で吹き飛ばされ、カナエさんは咄嗟に岩の結界をかけた。
「男尽くしカナエ!アンタはテントで休んでろ!」
私たち、1時間半は登り続ている。カナエさんは、今日のところは休んだほうがいい。
「いいえ、カナエは登ります!お兄様をお救いします!」
カナエさんは、昔から根が強い。けれど、一度下りてしまったものを、1から登るというのは効率が悪い。けれど、カナエさんは、恐らくまた登りはじめている。
「ねえ、ラルク。頂上まで辿り着けるのかな」
こういう状況をチャレンジ精神と不安の隣り合わせとでも言うのだろうか。
「分からないな。ただ1つ言うなら、登りに3時間かかるなら、下りも3時間の合計6時間だ。上は温かいけど、下はかなり冷えてる。身体が使いものにならない前に下りるのが利口だ」
確かに、下は随分と冷えている。決して、マイナス50度を甘く見てはいけない。ズームさんとミネスさんが下で炎の舞を飛ばしてくれているが、上に行くほどに効き目が弱くなっている。
「平凡アルフォンス、一目惚れカラルリ。アンタら、結界係にまわれ!」
そうだ。結界をかけてもらえば、炎の舞で少しは温まるかもしれない。
「分かった」
最近のカラルリさんは、諦めが早いように思う。紀元前村では、それなりに粘っていたような記憶があるが。
「いや、私は諦め切れない。このまま、登れなかったら使いものにならない人間になってしまう」
アルフォンス王子も、遠い昔は強かったんだけどな。今となっては、プライド高いだけの人になっている。
カラルリさんが結界をかけてくれているのかもしれない。なのに、幅が狭くて、ここまでは届かない。
『結界かけた』
やっぱり、結界はかかってるんだ。でも、上までは届かない。ここまでくれば、時間の勝負だ。
『2時間半経ったよー!』
ミネスさんが時間を教えてくれた。
2時間半。紀元前村の果樹園の崖とは全然違う。
その時、ミナクさん、リリカさん、ナナミお姉様が結界をかけパラシュートで下りて行った。条件が厳しすぎる。
「悪い。僕もリタイア」
落ち武者さんまで、パラシュートで下りはじめた。
「ねえ、どうする?ラルク」
何だか、どうしていいか分からなくなってきた。姉が下りた時点で、私は諦めの気持ちを持ちはじめたのだと思う。
「僕はまだ登る。セナ王女1人で、このバイトは厳しいだろ」
確かに、セナ王女1人にさせるわけにはいかない。それだと、何のためにここに来たのか分からない。けれど、ナルホお兄様までパラシュートで下りて行った。
残されたのは、私とセナ王女、ラルクだけだ。
私、不安になっている。
『頂上よ!』
セナ王女の声。辿り着いたんだ。
『うーん。セナ王女で3時間15分21秒ってとこかな』
え、ズルエヌさん来てたの?
『アンタ、何でいんのさ』
てか、私たちはフェアリーサラブラーを走らせて来たと言うのに、ズルエヌさんは何で来たのだろう。
『ミネスから、氷河期町に古民家あるって聞いて興味本位で来ちゃった。てへ』
ズルエヌさんって、こんな人だったったっけ。朧気だけど、ズームさんとの結婚式では、物静かで大人しく口数も少なかったような。
「ズルエヌさん、僕たちも登るべきですか?」
どうしてラルクが聞くのだろう。
『登るべきだね。ラルクとナミネは残り124.5672……cm。この崖はまるで法則のようだ。40.6468……cmごとに踏み場があるよ。必ずしも真っ直ぐではないけどね。決められた位置のどこかに踏み場がある。だから、明日からはみんなが登れるよ』
法則?そんなふうには、とてもじゃないけど思えなかったが。124cmなら登るしかない!
『得体の知れないズルエヌ、アンタ、千里眼の持ち主かよ?』
千里眼。それなら落ち武者さんだって生まれつき持っている。
『そうだよー。君のように先天的じゃないけどね。時計騎士の研修極めたら崖の中まで見えるようになっちゃった』
かなりのレベルの持ち主なのか。
『へえ、アンタ、僕より見えんだ』
千里眼も後から学んでもズルエヌさんみたいに奥の奥まで見ることが出来る人もいるのか。
『あの、それって女の子の下着も見えるのでしょうか?』
どうして、こっちが真剣な時にヨルクさんはそういうこと聞くのだろう。
『もう、それ飛び越えて骨の中まで見えるけどね』
レントゲンより上回っている。ズルエヌさんの能力があれば、骨の病気の早期発見に繋がるのだろうな。
とりあえず私はズルエヌさんの40cmを参考に目分量で足をかけた。確かに、40cm感覚のどこかに踏み場がある。
『ダメだわ。原石が全く見つからない』
え、時間かけて命懸けで頂上まで登ったのに原石がない!?でも、自分の目で確かめないと。
「セナ王女、私とラルクも行きます!待っててください!」
原石なしで帰れるものか。私は諦めない。
私は、ひたすら集中に集中を重ね、正確に登り続けた。すると、崖の終わりが見えてきた。やっと、やっとだ。みんなみたいに諦めてパラシュートで下りなくてよかった。
「ナミネ、頂上到着」
私は崖の上にあがった。けれど、確かに原石がない。バイトのチラシには崖の上に原石がたくさん転がってる写真付いていたのに。広告というものは実にややこしい。あのチラシに騙された人もわんさかいるだろう。
『強気なナミネ、原石はどうだ?』
全く、欠片さえもないよ。
「全くありません!」
せっかく苦労して、ここまで登ってきたのに、これでは何のための苦労か分からない。
『土の中だよ。君のいるところから右50.2485……cm。深さ32.6475……cm』
下にあるというわけか。けれど、何で掘ろう。苦無を使ってしまえば、降りる時に困るだろう。
見るとセナ王女は短剣で氷を掘りはじめた。
「ナミネ、羽子板使うぞ!」
「うん、分かった、ラルク!」
私は羽子板を取り出し氷を掘りはじめた。理不尽なものだ。土が氷で覆われているから、氷から掘らなくてはならなくて、どのくらいかかるのか分からない。それに、原石を傷付けてしまってもダメだ。
うーん、羽子板だと掘りにくい。そうだ、サバイバルナイフ持ってた。
「ラルク、サバイバルナイフのほうが効率いいよ」
私はサバイバルナイフで氷を掘りはじめた。
「そうだな。セナ王女も結構掘り進めてるしな」
セナ王女、本当早い。カラルリさんに対する責任感からそうさせているかもしれないけれど。
氷が固くて掘りづらい。それでも、何もなしに帰るわけにはいかない。小さいのでいいから入手しなくては。
けれど、惚れども惚れども氷。土に辿り着けない。でも、ここで諦めては全てが台無しになってしまう。
「あった、あったわ!」
2cmほどの青い石。それがチラシで募集しているものかどうかは鑑定士しか分からないけれど。とりあえず、1つゲットってことでいいのだろうか。
ふう、やっと土に辿り着いた。
ん?何か当たってる。私はサバイバルナイフを地面に置いて手袋をつけた手で土を掘った。すると、赤い石があった。と言ってもわずか2mmくらいだ。これだと、学校の運動場の土に混じっているのと、そう変わらない。けれど、私は赤い石をチャック付きのビニール袋に入れた。
「小さいな」
ラルクのも5mmにも届かないくらいの小ささ。
「私もだよ。セナ王女の大きいよね」
「でも、これで少なくとも3つは採取したことになる。原石が、この町にしかないってことは原石の可能性も高いしな」
確かに、この町にしかないのなら原石である可能性が高い。チラシで求めてるのでなくて他の宝石の原石だとしても高値で買い取ってもらえるかもしれない。
『じゃ、3人とも下りてこい。今日の作業は終了だ』
私たちは、落ち武者さんの指示に従い、苦無を取り出した。
「はい、分かりました!」
「分かりました」
「了解よ」
セナ王女、下りるの早い。ズルエヌさんのアドバイスでコツ掴んだのかな。けれど、確かに40cm置きという法則があるのなら、踏み場がない不安が経験されるかもしれない。ラルクも早く下りている。本当は、パラシュート使いたいけれど、ここは確実な手段を取るべきだ。苦無で下りる!
私は禅を使った。遠い昔では、みんな使ってたっけ。アルフォンス王子とか凄かったな。
行きと違って下りは何となく吹雪にも慣れている気がする。けれど、早く身体を温めないと。宿には露天風呂があったはず。
セナ王女は1時間半で下り、ラルクは2時間、私は2時間20分で下りた。
「じゃ、今日の作業終了。宿に行く」
うう、寒い。私はテントの中に入った。
「あの、少し休ませてもらえませんか?」
ノンストップでの登り下り。ここで休憩しないと身体が持たない。
「じゃ、30分休憩する」
よかった。私たちが外にいる間、みんなここで休んでたのか。何だか、狡いと思ってしまう。
「僕は、シャム軍医の家に泊まるよ」
え、ズルエヌさん、この町に留まるの?けれど、家が温かいなら別に問題はないか。
「あ、春風町からここまで歩きだと、それなりに時間もかかりますし、体力も使いますので、自転車借りませんか?」
自転車があれば、少しは早く着くだろう。
「じゃ、自転車借りる」
「あの、私、自転車乗れないんです」
また、アヤネさんは迷惑かけるつもりなのだろうか。
「だったら、ズルエヌさんとシャム軍医の家に泊まればいいだけの話ですよね」
「そんな……400mも歩けません」
私はかなり頭に来た。
「ナミネ、お茶飲んで。喉乾いたでしょ」
ヨルクさんはマグボトルを私に渡した。
「ありがとうございます、ヨルクさん」
私は、知らず知らずに喉が渇いていたのかマグボトルのお茶を一気に飲み干した。
時間とは早いものだ。あっという間に30分が経ち、ズルエヌさん以外は春風町の宿に向かう準備をしはじめた。
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あとがき。
しばらく時間空いてしまいました。
懐かしのシャム軍医ー!
かつてカラルリがライバル視してた人。
エリートがこんな町にいるなんて……。
でも、古代編が懐かしくなってきた!!
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この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
《ナミネ》
結局、あのあと、ナルホお兄様がアヤネさんを説得し、再びナノハナ家に連れ戻したらしい。アヤネさんはアヤネさんなりに反省したそうだが、私はその現場を知らない。
ただ覚えているのは、ヨルクさんの紅葉の香りだけ。
第4居間では、氷河期町に行く人が既に支度をして、朝食を取っていた。私もヨルクさんの隣で朝食を食べはじめた。
「あの、ナミネさん。昨日はごめんなさい」
嘘っぽい言葉を朝から聞くと、いやな気持ちにさせられる。もう、アヤネさんとは同じ空間にいたくない。
「絶対許せません!氷河期町から帰ったら、私、ナノハナ家出ていきます!」
最初はこんなんじゃなかった。恐らく紀元前村からだ。
人は、ひとたび中身を見てしまうと嫌気がさすこともある。表面上は、いくら大人しくても、態度によっては苦手意識を持ってしまうものである。
「ナミネさん。本当に反省しています」
ズームさんがいるから、ここにいるだけの人。別に私とは仲良くしたいわけではないだろうに。
「ナミネ。停電で、お父様たちの任務も減ってきているし、ナノハナ家は部屋がたくさん余ってるから下宿にするつもりなんだよ。馬が合わない人がいるからって追い出すわけにはいかないよね」
だから、私のほうが出て行くって言ってるんじゃない。
「ですから、私が出ていきます!」
「ナミネ、そんなこと言わないで。ナミネが出て行ったら私がここにいる意味なくなる」
ヨルクさんは悲しそうに私の手を握った。
アヤネさんとヨルクさんは趣味で繋がっているから、いいかもしれないけど、私は何の繋がりもない。けれど、ヨルクさんと離れるのはいやだ。こんな矛盾、自分でも馬鹿げていると分かっているのに。私は転生するたびに大人になっていて、それゆえ、中身は大人なはずなのに、不思議なものだ。若いと自然に思考も幼くなるものなのである。
「努力はします。でも、アヤネさんと私は合わないと思います」
合わないものは合わない。それを我慢して同じ空間にいるか、離れるかは人それぞれだが。少なくとも私は同じ空間にいると苛立つタイプだ。
「ナミネさん。本当に反省しています。今後は私から歩み寄ります」
それが出来れば苦労はしない。
それに、ナルホお兄様の言ってた下宿って何だろう。知らない人が、ぞろぞろとナノハナ家で暮らすのだろうか。それはそれでやりにくいものがあるだろう。
「もういいです!私が我慢します!どうせ、ズームさんと一緒になれず、どこかのおじさんと政略結婚する可哀想なアヤネさんですもんね」
あれ、ズームさんと一緒になれない。もしかして、アヤネさんは、遠い昔、私とズームさんが交際していたことに嫉妬しているのだろうか。女の敵は女と言うが、大人しい人も惚れた男のことになれば、冷静ではいられなくなるのだろうか。
「ナミネ。アヤネさんは、あのあと、氷河期町で過ごすための説明も読んだし、覚悟の上で行くんだよ。すぐにとは言わない。でも、せっかく縁あって、グループにいるんだから、大切にしたほうがいいよ。今の時間をね。青春なんてあっという間だから」
そんなの覚えていない。中学に上がるまでは早く感じたように思うけど、20代だって言ってしまえば青春ではないか。なにも、10代だけが青春というわけではないと思うが。
それに、覚悟ではなく、ズームさんと一緒にいたいだけでしょ。貴族って、どこまで脳内優雅なの。
「はいはい、分かりましたー!今後は、アヤネさんのこと透明人間だと思うことにしますー!」
私は、どこまでも素直になれない。だから、妖精村時代、何度もヨルクさんを失ったのだろう。自分では分かっている。でも、どうしようもないのだ。
「じゃ、出発する」
いよいよ、命懸けの仕事のはじまりだ。
私たちは、荷物を確認したあと、馬小屋の王室のフェアリーサラブラーとロリハー家のエンジェルブェロッラを外に連れ、馬を走らせた。
町から町を越え、春風町の宿を借りたあと、馬は宿の駐車場に置いて、氷河期町へ続く洞窟を歩いた。洞窟は約45分ほどだろうか。長すぎず短くもなく。けれど、作業があって終わるたび、春風町の宿に戻らなくてはならない。自転車屋で、自転車を借りた方がいいだろうか。
歩けば歩くほど、だんだんと寒くなってきた。私は帽子を被いてフードを被いた。尋常ではない寒さだ。身体が凍りそう。
「皆さん、大丈夫ですか?」
私は、みんなの安否を確かめた。
「僕は大丈夫だけど?」
「私も大丈夫だよ」
「私も大丈夫だ」
「カナエも大丈夫です」
「私も大丈夫よ」
崖登り係は大丈夫そうだけど、ズームさんやミネスさん、ラハルさん、アヤネさんは、かなり寒そうだ。
もうしばらく歩いていたら、洞窟の向こうが見えてきた。もうすぐ洞窟を抜ける。私たちは覚悟を決めた。
吹雪がここまで吹いてくる。
洞窟を抜けると、銀世界なんてものではない。
もはや何も見えないのである。全くというのは大袈裟かもしれない。掻い摘んで言うと、視界がかなり悪い。
地面は雪と言うより氷だろうか。何気に滑りやすい感じがする。
「では、テントは僕とミネスで張りますね」
テントなんて張れるのだろうか。
「あ、私も手伝います!」
こういうのは、みんなでしないと。
「僕たち含め、アンタも崖登り係だ。テントはズームとお子ちゃまミネスに張ってもらうぞ」
そうか。ここでは、無駄な体力は少しも使えない。
それにしても崖も氷で覆われていて、登れるかどうかも分からなければ頂上がどこにあるのかも見えない。
「テント張れましたよ」
え、もう張れたの?早くないだろうか。
私たちは、テントの中に入った。
「あったかい!」
思わず声に出してしまった。
「今年の秋にskyグループで売り出す予定なんです。恒星の光で温もっているので電池とか充電とか全くいらないんです」
skyグループ。やっぱり、規模が違う。恒星の光でも、充電式が多い中、このテントは多くの光を取り込んでくれるというわけか。
「妖精村が停電でもブランケット家は、電気で全部使えるよー!」
いいな。私も、お金持ちに生まれたかった。でも、武家も悪くないと思ってしまう。何不自由ない、何でも手に入る暮らしも大切だろうけど、私は私なりに手に入れてきたものもたくさんある。
「凄いですね。これなら、ナヤセス殿もヨルクさんもエルナさんも、凍えずに済みますね」
わざと、アヤネさんの名前を出さなかった。私の中では、もう仲間ではないからだ。
「ナミネ、本当に無理しないでね」
ヨルクさんは、崖は登れないけど私が心配で着いてきた。
「はい」
私はサングラスを付けようとした。雪山ゆえ、ほぼゴーグルだ。
「シャム軍医!?」
これまた珍しい人の名前が出た。
私は咄嗟にテントの外に出た。本当にシャム軍医だ。私は多分会ったことはないが、遠い昔、セナ王女の同僚だったのである。
「セナ元帥、お久しぶりです」
何だか、随分やつれている気がする。バイトで来たのだろうか。
「久しぶりね。シャム軍医も、バイト?」
私も、そこめちゃくちゃ気になる。
「いえ、ここに住んでいるんです」
ここに住んでる!?いったいどういうことなのだろう。
「え、どういうこと?」
本当、何がなんだか分からない。
「僕は、ここで生まれたんです。ここの住人は皆、最下層と呼ばれ、宝石の原石を採取させられています」
何それ!まるで、紀元前村の蓮華町ではないか。というか、それより酷い。妖精村にも、古代……いや、それ以外の暮らしをしている町があっただなんて。
「えっ、でも、こんなところ住めないじゃない」
とてもじゃないけど、このような寒いところで住めるわけがない。私は再びテントに入り顔だけ出した。セナ王女は寒くないのだろうか。
「ここから400mほどのところに、住人たちの家があります。政府から提供された家で、その中だと普通の暮らしが出来るんです。原石も採取出来ない人ばかりで、政府から賞味期限1年切れなどの食材は提供されています。僕は、医師としての知識はありますが、とてもじゃないけど、崖は登れません。だから、細々と生活しているのです」
酷い話だ。あんな崖、登れるわけがないのに、無理矢理に差別して、こんな町に閉じ込めて。
シャム軍医。顔はそこそこハンサムでエリート医師だったのに、現代ではこの有り様。まるで、ユウサクさんみたいだ。時代は分からない。武家に生まれたからといって来世でも武家というわけではない。
「ナミネさん、これを」
ベスト、だろうか。
「ありがとうございます、ズームさん」
私は早速ベストを着てみた。
「軽くてあったかい!」
また思わず声を出してしまった。
「このベストは人が着ることによって温まるんです」
ズームさんとは、もう暮らしの規模そのものが違う。ズームさんのように、何もかも恵まれた人もいるのに、この町で不自由な民として暮らさなければならない人もいる。世の中というものは、こうも不公平なものなのか。
ズームさんは、崖登り係にベストを渡しはじめた。
「酷い話ね。シャム軍医は、あんなにもエリートだったのに。こんなところで暮らしているだなんて思ってもみなかったわ」
それは同僚の誰もが思っているだろう。
「じゃ、ズームからベストももらったことだし、崖登り係は原石採取に行くぞ!みんな、無線イヤホンマイク付けろ!」
私はリュックをテントの中に下ろし、ポシェットと無線イヤホンマイクを付けた。
「え、セナ元帥、あの崖登るんですか?」
やっぱり気になるよね。
「ええ、ちょっと事情があって」
セナ王女は苦笑していた。無理もないか。彼氏のローン返すためなんて言うに言えないものな。
「気を付けてください」
「大丈夫よ」
私たちは、崖の前に立った。もう後戻りは出来ない。
私は苦無を氷に突き刺した。分厚い氷ゆえ、崖までは刺さらない。けれど、問題は足元だ。滑り止めの靴は履いているが、踏み場は手探りになる。私は試しに1つ目に足をかけた。崖のとんがっている部分を覆う氷は確かに踏み場かもしれない。けれど、上まであるとは限らない。
私が止まっていると、セナ王女は、どんどん上に登りはじめている。やっぱり、セナ王女の力量は変わっていない。本当に元帥のままだ。
私も負けてられない。原石を採取しないと。私は、苦無を刺しては踏み場を見つけ、ゆっくり崖を登りはじめた。
アルフォンス王子とカラルリさんは、踏み場を見つけられないのか下で苦戦している。他のメンバーは、ゆっくりと登っていっているようだ。
「ねえ、ラルク。セナ王女、見えなくなっちゃったね」
こんな崖、プロでも苦戦するだろうに、セナ王女の姿は吹雪で、あっという間に見えなくなってしまった。
「まあ、場数が全然違うんだろうな」
それに、セナ王女はカラルリさんの責任も感じているのだろう。
「だねぇー。私たちも負けてられないね」
私たちは、とにかく登り続けた。この急過ぎて、頂上がどこか分からない崖を。ただただ、ひたすらに登り続けたのである。
踏み場が不安定な時は、近くの踏み場を探し、それもない時は、苦無を突き刺し、上の踏み場に足をかけた。命懸けの他、何ものでもない。けれど、これをクリア出来なければ、武士を極められない。
今は、ひたすら登り続けるのみ。
その時、カナエさんが踏み場を外し、パラシュートを開いた。されど、パラシュートは吹雪で吹き飛ばされ、カナエさんは咄嗟に岩の結界をかけた。
「男尽くしカナエ!アンタはテントで休んでろ!」
私たち、1時間半は登り続ている。カナエさんは、今日のところは休んだほうがいい。
「いいえ、カナエは登ります!お兄様をお救いします!」
カナエさんは、昔から根が強い。けれど、一度下りてしまったものを、1から登るというのは効率が悪い。けれど、カナエさんは、恐らくまた登りはじめている。
「ねえ、ラルク。頂上まで辿り着けるのかな」
こういう状況をチャレンジ精神と不安の隣り合わせとでも言うのだろうか。
「分からないな。ただ1つ言うなら、登りに3時間かかるなら、下りも3時間の合計6時間だ。上は温かいけど、下はかなり冷えてる。身体が使いものにならない前に下りるのが利口だ」
確かに、下は随分と冷えている。決して、マイナス50度を甘く見てはいけない。ズームさんとミネスさんが下で炎の舞を飛ばしてくれているが、上に行くほどに効き目が弱くなっている。
「平凡アルフォンス、一目惚れカラルリ。アンタら、結界係にまわれ!」
そうだ。結界をかけてもらえば、炎の舞で少しは温まるかもしれない。
「分かった」
最近のカラルリさんは、諦めが早いように思う。紀元前村では、それなりに粘っていたような記憶があるが。
「いや、私は諦め切れない。このまま、登れなかったら使いものにならない人間になってしまう」
アルフォンス王子も、遠い昔は強かったんだけどな。今となっては、プライド高いだけの人になっている。
カラルリさんが結界をかけてくれているのかもしれない。なのに、幅が狭くて、ここまでは届かない。
『結界かけた』
やっぱり、結界はかかってるんだ。でも、上までは届かない。ここまでくれば、時間の勝負だ。
『2時間半経ったよー!』
ミネスさんが時間を教えてくれた。
2時間半。紀元前村の果樹園の崖とは全然違う。
その時、ミナクさん、リリカさん、ナナミお姉様が結界をかけパラシュートで下りて行った。条件が厳しすぎる。
「悪い。僕もリタイア」
落ち武者さんまで、パラシュートで下りはじめた。
「ねえ、どうする?ラルク」
何だか、どうしていいか分からなくなってきた。姉が下りた時点で、私は諦めの気持ちを持ちはじめたのだと思う。
「僕はまだ登る。セナ王女1人で、このバイトは厳しいだろ」
確かに、セナ王女1人にさせるわけにはいかない。それだと、何のためにここに来たのか分からない。けれど、ナルホお兄様までパラシュートで下りて行った。
残されたのは、私とセナ王女、ラルクだけだ。
私、不安になっている。
『頂上よ!』
セナ王女の声。辿り着いたんだ。
『うーん。セナ王女で3時間15分21秒ってとこかな』
え、ズルエヌさん来てたの?
『アンタ、何でいんのさ』
てか、私たちはフェアリーサラブラーを走らせて来たと言うのに、ズルエヌさんは何で来たのだろう。
『ミネスから、氷河期町に古民家あるって聞いて興味本位で来ちゃった。てへ』
ズルエヌさんって、こんな人だったったっけ。朧気だけど、ズームさんとの結婚式では、物静かで大人しく口数も少なかったような。
「ズルエヌさん、僕たちも登るべきですか?」
どうしてラルクが聞くのだろう。
『登るべきだね。ラルクとナミネは残り124.5672……cm。この崖はまるで法則のようだ。40.6468……cmごとに踏み場があるよ。必ずしも真っ直ぐではないけどね。決められた位置のどこかに踏み場がある。だから、明日からはみんなが登れるよ』
法則?そんなふうには、とてもじゃないけど思えなかったが。124cmなら登るしかない!
『得体の知れないズルエヌ、アンタ、千里眼の持ち主かよ?』
千里眼。それなら落ち武者さんだって生まれつき持っている。
『そうだよー。君のように先天的じゃないけどね。時計騎士の研修極めたら崖の中まで見えるようになっちゃった』
かなりのレベルの持ち主なのか。
『へえ、アンタ、僕より見えんだ』
千里眼も後から学んでもズルエヌさんみたいに奥の奥まで見ることが出来る人もいるのか。
『あの、それって女の子の下着も見えるのでしょうか?』
どうして、こっちが真剣な時にヨルクさんはそういうこと聞くのだろう。
『もう、それ飛び越えて骨の中まで見えるけどね』
レントゲンより上回っている。ズルエヌさんの能力があれば、骨の病気の早期発見に繋がるのだろうな。
とりあえず私はズルエヌさんの40cmを参考に目分量で足をかけた。確かに、40cm感覚のどこかに踏み場がある。
『ダメだわ。原石が全く見つからない』
え、時間かけて命懸けで頂上まで登ったのに原石がない!?でも、自分の目で確かめないと。
「セナ王女、私とラルクも行きます!待っててください!」
原石なしで帰れるものか。私は諦めない。
私は、ひたすら集中に集中を重ね、正確に登り続けた。すると、崖の終わりが見えてきた。やっと、やっとだ。みんなみたいに諦めてパラシュートで下りなくてよかった。
「ナミネ、頂上到着」
私は崖の上にあがった。けれど、確かに原石がない。バイトのチラシには崖の上に原石がたくさん転がってる写真付いていたのに。広告というものは実にややこしい。あのチラシに騙された人もわんさかいるだろう。
『強気なナミネ、原石はどうだ?』
全く、欠片さえもないよ。
「全くありません!」
せっかく苦労して、ここまで登ってきたのに、これでは何のための苦労か分からない。
『土の中だよ。君のいるところから右50.2485……cm。深さ32.6475……cm』
下にあるというわけか。けれど、何で掘ろう。苦無を使ってしまえば、降りる時に困るだろう。
見るとセナ王女は短剣で氷を掘りはじめた。
「ナミネ、羽子板使うぞ!」
「うん、分かった、ラルク!」
私は羽子板を取り出し氷を掘りはじめた。理不尽なものだ。土が氷で覆われているから、氷から掘らなくてはならなくて、どのくらいかかるのか分からない。それに、原石を傷付けてしまってもダメだ。
うーん、羽子板だと掘りにくい。そうだ、サバイバルナイフ持ってた。
「ラルク、サバイバルナイフのほうが効率いいよ」
私はサバイバルナイフで氷を掘りはじめた。
「そうだな。セナ王女も結構掘り進めてるしな」
セナ王女、本当早い。カラルリさんに対する責任感からそうさせているかもしれないけれど。
氷が固くて掘りづらい。それでも、何もなしに帰るわけにはいかない。小さいのでいいから入手しなくては。
けれど、惚れども惚れども氷。土に辿り着けない。でも、ここで諦めては全てが台無しになってしまう。
「あった、あったわ!」
2cmほどの青い石。それがチラシで募集しているものかどうかは鑑定士しか分からないけれど。とりあえず、1つゲットってことでいいのだろうか。
ふう、やっと土に辿り着いた。
ん?何か当たってる。私はサバイバルナイフを地面に置いて手袋をつけた手で土を掘った。すると、赤い石があった。と言ってもわずか2mmくらいだ。これだと、学校の運動場の土に混じっているのと、そう変わらない。けれど、私は赤い石をチャック付きのビニール袋に入れた。
「小さいな」
ラルクのも5mmにも届かないくらいの小ささ。
「私もだよ。セナ王女の大きいよね」
「でも、これで少なくとも3つは採取したことになる。原石が、この町にしかないってことは原石の可能性も高いしな」
確かに、この町にしかないのなら原石である可能性が高い。チラシで求めてるのでなくて他の宝石の原石だとしても高値で買い取ってもらえるかもしれない。
『じゃ、3人とも下りてこい。今日の作業は終了だ』
私たちは、落ち武者さんの指示に従い、苦無を取り出した。
「はい、分かりました!」
「分かりました」
「了解よ」
セナ王女、下りるの早い。ズルエヌさんのアドバイスでコツ掴んだのかな。けれど、確かに40cm置きという法則があるのなら、踏み場がない不安が経験されるかもしれない。ラルクも早く下りている。本当は、パラシュート使いたいけれど、ここは確実な手段を取るべきだ。苦無で下りる!
私は禅を使った。遠い昔では、みんな使ってたっけ。アルフォンス王子とか凄かったな。
行きと違って下りは何となく吹雪にも慣れている気がする。けれど、早く身体を温めないと。宿には露天風呂があったはず。
セナ王女は1時間半で下り、ラルクは2時間、私は2時間20分で下りた。
「じゃ、今日の作業終了。宿に行く」
うう、寒い。私はテントの中に入った。
「あの、少し休ませてもらえませんか?」
ノンストップでの登り下り。ここで休憩しないと身体が持たない。
「じゃ、30分休憩する」
よかった。私たちが外にいる間、みんなここで休んでたのか。何だか、狡いと思ってしまう。
「僕は、シャム軍医の家に泊まるよ」
え、ズルエヌさん、この町に留まるの?けれど、家が温かいなら別に問題はないか。
「あ、春風町からここまで歩きだと、それなりに時間もかかりますし、体力も使いますので、自転車借りませんか?」
自転車があれば、少しは早く着くだろう。
「じゃ、自転車借りる」
「あの、私、自転車乗れないんです」
また、アヤネさんは迷惑かけるつもりなのだろうか。
「だったら、ズルエヌさんとシャム軍医の家に泊まればいいだけの話ですよね」
「そんな……400mも歩けません」
私はかなり頭に来た。
「ナミネ、お茶飲んで。喉乾いたでしょ」
ヨルクさんはマグボトルを私に渡した。
「ありがとうございます、ヨルクさん」
私は、知らず知らずに喉が渇いていたのかマグボトルのお茶を一気に飲み干した。
時間とは早いものだ。あっという間に30分が経ち、ズルエヌさん以外は春風町の宿に向かう準備をしはじめた。
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あとがき。
しばらく時間空いてしまいました。
懐かしのシャム軍医ー!
かつてカラルリがライバル視してた人。
エリートがこんな町にいるなんて……。
でも、古代編が懐かしくなってきた!!
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この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
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