日常のこととかオリジナル小説のこととか。
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ashita
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漫画やアニメを見るのが好きです。最推しはフーディーニ ♡
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ブログ、もう書かないと思ってました。
けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。
小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。
純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。
ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。
小説、ぼちぼちマイペースに書いてゆきます。
よろしくお願い致します。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
お知らせ。
イラストは現在「ナノハナ家の日常」に載せております。サイドバーにリンクあります。
また、「カラクリよろずや」にて無料のフリーイラスト素材配布もはじめました✩.*˚
フリーイラスト素材も増やしていく予定です(*'ᴗ'*)
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
模倣・無断転載などは、ご遠慮ください。
ブログの小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
小説・純愛偏差値に関しましては、武家名・貴族名(程度による) / 及び、武官の階級 / 扇子・羽子板・花札・百人一首・紙飛行機などのアイテム使用方法の模倣の一切を禁じております。
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X @kigenzen1874
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けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。
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現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。
純愛偏差値は今年100話を迎えました。
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が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
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〈資格履歴〉
2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
→漢方コーディネーター 合格
→薬膳調整師 合格
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〈資格証明バナー〉

2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2010年02月10日
→セルフ・カウンセリング
ステップ2 合格
2011年05月28日
→セルフ・カウンセリング
指導講師資格審査 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
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→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
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→鉱石セラピスト 合格
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2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
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〈資格証明バナー〉

純愛偏差値 未来編 一人称版 106話
《ナミネ》
数日後。
ヨルクさんによって、私の熱は下がった。そして、私たちはまたナノハナ家に移動した。
あの日、カラクリ家でカラルリさんが首を吊った時、デパートで宝石ショップから離れるべきではないと思わされたのである。
他人ごと。されど、カラルリさんにだってキクリ家の家族がいる。もし、カラルリさんが命を失っていたら、セナ王女は王女の称号剥奪だけでは済まなかっただろう。
私はカラルリさんを助けたいと思った。
そんな時、カラクリ家のポストに、原石採取のバイトのチラシが入っていた。マイナス50度の猛吹雪の中、崖を登りフェアリールナとフェアリーフォンの原石を採取する。
紀元前村の果樹園の崖よりも、もっともっと高くて難易度が高い。けれど、私は自分の力量を試してみたかったのだ。
モールでは、落ち武者さんの指示した、雪山登山服、雪山登山靴、耳まで隠れる帽子、ヘルメット、サングラス、手袋、ポシェットを購入した。私が薄紫色の雪山登山服を選ぶとヨルクさんも同じものを選んだ。
紀元前村では、カギで登っていたが、今回は苦無を使う。キクリ家ではよく使うが、ナノハナ家では殆ど使わない。けれど、雪山となればカギでは不十分だろう。
また、崖の高さが半端ないため、命綱は使えない。猛吹雪のため、テントも張れない。妖精救命エアクッションを使ったとしても吹き飛ばされる可能性が高い。
とにかく今回はサバイバル以上の命懸けのミッションである。
崖を登るのは、私とラルク、セナ王女、アルフォンス王子、カナエさん、カラルリさん、ナルホお兄様、ナナミお姉様、リリカさん、落ち武者さん、ミナクさん。
医療係は、ナヤセス殿。
炎の舞係は、ズームさんとミネスさんである。炎の舞は数式で行われるが、上まで届くかは分からない。
見学は、ラハルさん。
私が心配でヨルクさんも着いて行くらしいが、ずっと動かず止まったままなんて大丈夫だろうか。ラハルさんとて同じだけれども。
崖を登る人が多いから、運が良ければ多くの給料がもらえる。しかし、油断は禁物だ。
他の人は、一部は作業はするだろうけど、セレナールさんとかアヤネさんとかはナノハナ家の使用人の世話になりそうだ。
行く時は、王室のフェアリーサラブラーに乗るが、毎日紅葉町に戻ることは出来ないから、氷河期町での仕事が終われば、隣町である春風町の宿を、しばらく借りることになるらしい。
崖は一度登って下りたら、その日の仕事は終わり。
鬼が出るか蛇が出るか。
分からないけど、やるしかない。
転生ローンなんて、ぼったくりもいいところだ。断れなかったカラルリさんもカラルリさんだが、お店側のやり方もやり方だ。そういうものを気にしない人もいるだろうけど、多くの人間は転生ローンなど組みたくはないだろう。
第4居間では、緊張感が溢れている。
そりゃそうだろう。私たちは、命懸けの仕事をするわけだから。それも、99%の人が命を落としている。そうまでして、売り出すハイブランドって何なのだろう。人の命より大切なのだろうか。妖精村の考え方も昔と随分と変わった。流されれば生きてはゆけない時代だ。
携帯はあれども、仲間うちの繋がりで、いざとなっても交番や病院に連絡することは出来ない。とにかく、みんなの無事を願うしかない。
「ナミネ、これ薄型だから使って」
「ありがとうございます、ヨルクさん」
私はヨルクさんからオムツを受け取った。簡易トイレは一応置くが、あんな雪山でズボン下ろせば全身が冷えきってしまう。
「セルファ、本当に行くの?」
流石のエルナさんも、命懸けのバイトとなれば、いてもたってもいられないだろう。
「行くけど?とりあえず、必要なものは全部、紙にまとめたから目を通しとけ!一度転落すれば死ぬからね?例え生きてても転落者は二度と崖を登るな!炎の舞係にまわれ!間違っても伝説ワイヤーを使うのは禁止。必ず苦無を使え!万が一のパラシュートも吹き飛ばされることを想定しろ!絶対気を抜くな!」
落ち武者さんは、みんなに必要事項をまとめた紙を渡した。
ネットでは、上に上がりきれなかった人の投稿しかなかったから、崖の高さがどのくらいあるのかは分からない。登りも下りも苦無だ。原石を無事に採取しても1回にどのくらいの時間がかかるのだろう。
「はい、必ず原石を採取します!」
言ってみたものの、私自身、疑心暗鬼だ。もし、誰も登りきれなかったら、カラルリさんの転生ローンを返すことが出来ない。
されど、不安なのは皆同じ。やるかやらないかである。
「上の状況分からないから、無線イヤホンマイクは付けろ!僕の指示には必ず従え!」
今回は、落ち武者さんが指揮を執るのか。
ただでさえ、妖精村全域停電なのに。私たちは命懸けのバイトをしなくてはならない。それも長期間。
これも武士の宿命なのだろうか。
夕方過ぎに、バイトの申し込みに行ったら遺書を書かされた。予想は薄々していたけれど、やはり会社側も責任は負いたくないのだろう。けれど、ネットによると、チラシの書き方が悪いから家族が亡くなったなど、たくさん苦情も寄せられている。
私たちは潔く遺書を書いた。
まるで、僧侶の百日修行だな。あの者たちは、死んだとしても悔いはないのだろうか。そこまで己を極めて、いったいなんになるのだろう。
ちなみに、遺書は、崖を登る者だけでなく、氷河期町に行く人全員が書いたのである。マイナス50度ともあれば、何もしなくても命を失う可能性が高い。それでも行くしかないのだ。
遺書を書き終え、ナノハナ家に戻ってきた私は既に疲れている。ああいうのは、メンタルに堪える。周りを見ると、みんなも似たような感じだ。
「ナミネ、今からカナエさんたちと夕ご飯作るね」
「はい」
ここでヨルクさんの手作りご飯を食べるのは明日の朝までだ。バイトをしている間は、しばらくここには戻れない。けれど、私は必ず生きて戻る。
これは私にとっての1つの試練なのだ。
「やっぱり私も行きます」
突然、アヤネさんが行くと言い出した。正直、ズームさんがいるからといって、それだけで行くのは無謀だと思う。
「あの、アヤネさん。見学とて命懸けなんです。今回は諦めてください」
お荷物を抱えるのはごめんだ。ただでさえ自分のことで精一杯なのに。
「僕は別にいいけど?けど、誰にも頼らず自分のことは自分でやれるならね?」
落ち武者さん、また無責任なこと言ってる。そういう問題ではなく、貴族のアヤネさんには持ち堪えられないから私は反対しているのに。
「はい、誰にも迷惑はかけません!」
そんな嘘、誰が信じるのだろう。
「じゃ、ここで遺書書け!書いたら紙飛行機にして飛ばす」
「分かりました」
アヤネさんは、落ち武者さんが渡した遺書を書きはじめた。
紀元前村でもナノハナ家でも何もしてなかったアヤネさんが氷河期町の過酷さに耐え切れるとは到底思えない。
行くと決めたのはアヤネさんだから私は責任など一切取るつもりはない。
「アヤネさん。行くなら行くで馬もご自分で乗ってください」
ナヤセス殿やラハルさんは仕方ないけど、アヤネさんは己のワガママで行くわけだから、誰かの重荷になるのはおかしいと思う。
「分かりました。すぐに武官を呼びます」
そう来たか。
アヤネさんは、無線でロリハー家に連絡をした。貴族と武士は、分かり合えないというか、時折、犬猿の仲にも思えてくる。
25分ほどすると、ロリハー家の特殊武官がナノハナ家に来た。
「ナミネ、馬見に行こうぜ」
「え、あ、うん」
正直、興味ないけれど、私はラルクに着いて行った。
ナノハナ家の前には黒い馬が一頭いた。武家は普通の茶色い馬だというのに、貴族は贅沢なもんだ。
「これエンジェルブェロッラだぜ!」
何それ。聞いたこともない。
「そんなの聞いたことないよ」
「フェアリーサラブラーほどでないけど、ギャロップで時速100キロ出るんだ」
武家だって、そんな馬置いてない。
「へえ、そうなんだ。貴族っていい気なもんだよね。高価な馬所有してさ」
私は少し拗ねていた。別に貴族になりたいわけではないけれど、この世はやはり暗黙に暮らしの階級が存在してる。
「まあ、貴族は優雅がモットーだからな」
努力しなくても、なんでも手に入る。そういうの私はあまり好きではない。けれど、貴族にとっては、お金さえあれば何でも出来てしまうそんな世界で住んでいるのだ。
「この馬、服着てないけど大丈夫なのかな」
アヤネさんは、言葉足らずの世間知らずだ。王室の馬は万が一の時のために防寒服を着せている。
「まあ、春風町の宿に置いとくからいいんじゃないか?」
「そうだね」
とは言えども、やはり気になってしまう。
私は、第4居間に戻るなりアヤネさんの前に立った。
「あの、アヤネさん。連れて来た馬、服着てませんが、少し無防備すぎませんか?」
「アヤネお嬢様に命令するのではなく、何かあれば、私にお申し付けください」
貴族って、本当に何もしないんだ。
「あの、お言葉ですが、武官は使用人ではありません!馬を所有しているなら、ご自身で点検するのが普通でしょう!」
私は思わず声をあげてしまった。
「ナミネ、やめようか。アヤネさんにはアヤネさんの家のやり方があるんだよね。ナノハナ家のやり方の押し付けはよくないよ」
ナルホお兄様までアヤネさんのこと庇って。本当なんなの!
「もういいです!そうやって、周りに何もかもしてもらう人生送ればいいと思います!家が破綻したら何もかも失いますけどね!」
私が苛立っている間、結局、ロリハー家の武官が馬に防寒服を着せに行っていた。
「強気なナミネ、アンタ何そんなに苛立ってんのさ。人見下しアヤネは勝手にやってんだからいいと思うけどね?」
勝手にもほどがある。それに、落ち武者さんが必要事項をまとめた紙のものは持っているのだろうか。
「勝手にって。アヤネさんは、必要なもの、何も買ってなかったじゃないですか!」
「それなら、武官が全て持って来てくれました」
武官武官。本当に苛立つ。
「つまり、自分では何一つやってないってことですね」
準備もそうだけど、物ごとと言うのは自分がやらなければ、意味がない。自分の目で確認していないのなら、使い方だって分からないだろうし。現場で躊躇するのが目に見えている。
「あの、さっきから私のこと悪く言ってませんか?もうその手には乗りません。ナミネさんは、自分の価値観押し付けるだけ押し付けて自分が出来る人間だと威張りたいだけです。私からしてみれば滑稽です」
滑稽!?私はただ、自分で確認しろと言っているだけなのに。被害妄想もいいところだ。アヤネさんって、こんな人だったんだ。一見大人しそうに見えて、心の中では周囲のこと見下している。
けれど、家柄と現場で発する能力は別物だ。言っても分からないなら私はもう知らない。勝手にすればいい。
「はいはい、すみませんでしたー!」
あんな性格で貰い手なんているのだろうか。
「私もナミネが怒るの無理ないと思うわ。誰かにやってもらった。それって自分では何一つ確認してないってことよね。シュミレーションもせずに、ぶっつけ本番なんてありえないわ」
やはり、リリカさんも同じ意見。
私たちは失敗の許されない環境で育って来たから貴族とは価値観が異なってくる。
「僕もそう思うな。命懸けの場所に行くのに一度もシュミレーションしてないなんて、ちょっとどうかと思う。ナミネがどうして怒るのか、それさえ考えられない人間と行動するのは心苦しいね」
素人のラハルさんだって、ちゃんと心構えはしている。
「どうして、みんなして私を責めるんですか!」
さっきの強気な姿勢はどうした。結局、多数派に揺るぐほどの人間など、自分を持っていないにすぎない。
「みんな落ち着こうか。いくら正論でも、それが人を傷つけてしまうこともあるよね。現場では長時間の結界は使えないから、テントの中にいなければならないけど、アヤネさんのことはナヤセスさんが見ててくれるかな」
ナルホお兄様って甘すぎる。こんなことで、ナノハナ家の跡取りが務まるのだろうか。
「うん、分かった。春風町は洞窟抜けてすぐだから、いざとなれば春風町の医者も呼べるし、無理なら無理で宿で過ごしたらいいよ」
宿で過ごすなんて、何のために行くのか分からないじゃない。
「ねえ、ラルク。アヤネさんってワガママだよね」
「ナミネ、放っておけ」
「もうやめてください!」
アヤネさんは泣きはじめた。
その時、カナエさんたちが晩ご飯を運んできた。今日はお鍋か。季節外れだけれど、時経てば、よい思い出になるだろう。
「ナミネ、いっぱい食べて明日に備えてね」
「ありがとうございます、ヨルクさん」
ヨルクさんは、取り皿に私の好きなものを入れてくれた。
「ナミネさんだって、ヨルクさんに何もかもしてもらっているじゃないですか」
本当、何?私はもうアヤネさんに何も言ってないのに。執着が凄い。
「何があったか知りませんが、ナミネはヨルクを守り、ヨルクはナミネのお世話をしています。カナエは、それでいいと思います」
アヤネさんは、孤立しがちだ。ここへ来る前も友達とかいなかったのだろうか。
「この料理、庶民的ですね」
もう我慢ならない。私は扇子を取り出した。
「セルファ、やっぱり私も行く!」
エ、エルナさんも!?今から準備出来るのだろうか。
「だろうと思ってた。強気なナミネの部屋にアンタの用意してあるから、それ使え!」
落ち武者さんって、やっぱりエルナさんのこと好きなんだ。どうして復縁しないのだろう。こんなに好き合っているのに。
「ありがとう、セルファ」
「エルナさんだって土壇場じゃないですか!それでも私だけを責めるんですか?」
責めているんじゃなくて、アヤネさんの態度が強かだから、こちらも心穏やかでなくなるのに。
「エルナさんは、雪山の経験ありますか?」
貴族って何して暮らして来たのだろう。
「氷河期町ではないけど、氷町でしょっちゅうスケートしてたわ。どこもかしこも地面は氷だからホテルに着くまでが寒かったわね」
氷町。そんなところが存在するのか。やっぱり貴族は違うんだな。
「氷町はスケートの本場だからね?」
スケートかあ。小さい頃は、紅葉町のスケート場に連れて行ってもらったりもしていたけど、本場はスケート場とは比べものにならないくらい広いのだろう。
「あー、なんかいかにも貴族って感じですね」
私がお変わりしようとしたら、既にヨルクさんが2杯目を入れてくれていた。
「ナミネさんこそ、何でもヨルクさんがやっていて、ご自分では何もなさらないんですね」
こういう言われ方、本当に気分を害する。私はアヤネさんを無視した。
「貴族と言っても、結局は就職活動になれば、みんなと同じよ。兄は画家を目指してるけど、絵で食べて行けるかどうか分からないわ」
就職活動か。貴族だからといって、企業が優遇してくれるわけではないのか。そりゃそうか。有能でない人材など必要ないだろう。
「エルナ、お兄様いるの?」
ヨルクさんって、やっぱり世間知らず。
「あら、あなたに兄弟がいるように私にもいるわ」
「あ、そうだよね」
昔は、貴族も武家並に跡取りがいたが、今では貴族の跡取りは減りつつあるらしい。アヤネさんとか、ひとりっ子なんじゃないの。
「ねえ、ラルク。アヤネさんって、ひとりっ子っぽいよね」
「まあ、そう見えなくもないけど、分かんないな」
「末っ子って、みんなこうなのでしょうか?私には姉がいます」
ひとりっ子じゃないんだ。なんか意外。
「アヤネ、どうしたのですか!カナエもナミネもラルクも末っ子です。姉ということは、アヤネも末っ子ですよね?」
なるほど。そういう見方もあるか。
「2人姉妹に末っ子も何もありませんよね。あなた方の兄弟の多さに比べたら。ナミネさんのお父様なんて浮気してますもんね」
私は思わずアヤネさんに熱いお茶をかけた。
「熱い!」
ロリハー家の武官は私を取り押さえようとしたが、その前に私は花札を投げ、武官に扇子を突き付けた。
「弱い武官ですね。貴族なのに、強い武官も雇えないのですか?」
私の家族を馬鹿にするなんて許せない。私は自分が思う以上に苛立っていた。
「武官の拘束は解かない。明日行きたいなら人見下しアヤネ1人で行け!」
「そんな……あんまりです……。どうして私だけをイジメるんですか!」
ナナミお姉様が立ち上がった。
「アヤネさん。ナノハナ家にいてもらうのは構いませんが、人の家族の悪口はやめてもらえませんか?ナミネも混乱しちゃいましたし」
「すみません。カッとなってしまいました。お許しください」
どうしてナナミお姉様なら生意気な態度取らないの。こういう差別、私はきらいだ。私はラルクに抱き着いた。
「悔しいよ。ラルク、私こんなふうに馬鹿にされて悔しい」
気が付いたら涙がポロポロ零れていた。
「アヤネ先輩をメンバーから外そう」
ラルクはナノハナ家の武官を呼んだ。
「やめてください!お父様に言いつけますわよ!」
その瞬間、武官はアヤネさんを離した。
結局、有利なのはお金持ちだ。悔しい。どうして浮気とか他所の家庭を侮辱されなければならないのだろう。
頭がグルグル回る。気が付けば私は泣きながら部屋中のものを投げていた。そして、羽子板でアヤネさんを叩いた。
「痛い!許してください!本当にカッとなっただけで馬鹿にしたわけではありません!」
今更謝られても、もう遅かった。アヤネさんを無理矢理ナノハナ家から追い出したあとのことは覚えていない。
気が付いたら部屋の布団の中にいたことも。ヨルクさんが、お風呂に入れてくれたことも。ヨルクさんに抱き締められながら眠ったことも。
精神的なショックで私は虚ろになっていたのだ。
目を覚ますと時刻は4時。
私はラルクと水汲みをしたあと、雪山登山服に着替え、持ち物を何度も確認した。
いよいよ、命懸けバイトのはじまりの幕が開けた。
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あとがき。
最初に遺書書くとか、もう僧侶の百日行みたいですね。
ズームと一緒にいたさだけで、危険な場所に行くと決めたアヤネ。無謀だとナミネが指摘するものの、アヤネの態度がどんどん変わってゆく。
どうしてアヤネは孤立してしまうのでしょう。調和が取れないのでしょう。
せっかく気合い入れていたナミネがかわいそう。
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この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
《ナミネ》
数日後。
ヨルクさんによって、私の熱は下がった。そして、私たちはまたナノハナ家に移動した。
あの日、カラクリ家でカラルリさんが首を吊った時、デパートで宝石ショップから離れるべきではないと思わされたのである。
他人ごと。されど、カラルリさんにだってキクリ家の家族がいる。もし、カラルリさんが命を失っていたら、セナ王女は王女の称号剥奪だけでは済まなかっただろう。
私はカラルリさんを助けたいと思った。
そんな時、カラクリ家のポストに、原石採取のバイトのチラシが入っていた。マイナス50度の猛吹雪の中、崖を登りフェアリールナとフェアリーフォンの原石を採取する。
紀元前村の果樹園の崖よりも、もっともっと高くて難易度が高い。けれど、私は自分の力量を試してみたかったのだ。
モールでは、落ち武者さんの指示した、雪山登山服、雪山登山靴、耳まで隠れる帽子、ヘルメット、サングラス、手袋、ポシェットを購入した。私が薄紫色の雪山登山服を選ぶとヨルクさんも同じものを選んだ。
紀元前村では、カギで登っていたが、今回は苦無を使う。キクリ家ではよく使うが、ナノハナ家では殆ど使わない。けれど、雪山となればカギでは不十分だろう。
また、崖の高さが半端ないため、命綱は使えない。猛吹雪のため、テントも張れない。妖精救命エアクッションを使ったとしても吹き飛ばされる可能性が高い。
とにかく今回はサバイバル以上の命懸けのミッションである。
崖を登るのは、私とラルク、セナ王女、アルフォンス王子、カナエさん、カラルリさん、ナルホお兄様、ナナミお姉様、リリカさん、落ち武者さん、ミナクさん。
医療係は、ナヤセス殿。
炎の舞係は、ズームさんとミネスさんである。炎の舞は数式で行われるが、上まで届くかは分からない。
見学は、ラハルさん。
私が心配でヨルクさんも着いて行くらしいが、ずっと動かず止まったままなんて大丈夫だろうか。ラハルさんとて同じだけれども。
崖を登る人が多いから、運が良ければ多くの給料がもらえる。しかし、油断は禁物だ。
他の人は、一部は作業はするだろうけど、セレナールさんとかアヤネさんとかはナノハナ家の使用人の世話になりそうだ。
行く時は、王室のフェアリーサラブラーに乗るが、毎日紅葉町に戻ることは出来ないから、氷河期町での仕事が終われば、隣町である春風町の宿を、しばらく借りることになるらしい。
崖は一度登って下りたら、その日の仕事は終わり。
鬼が出るか蛇が出るか。
分からないけど、やるしかない。
転生ローンなんて、ぼったくりもいいところだ。断れなかったカラルリさんもカラルリさんだが、お店側のやり方もやり方だ。そういうものを気にしない人もいるだろうけど、多くの人間は転生ローンなど組みたくはないだろう。
第4居間では、緊張感が溢れている。
そりゃそうだろう。私たちは、命懸けの仕事をするわけだから。それも、99%の人が命を落としている。そうまでして、売り出すハイブランドって何なのだろう。人の命より大切なのだろうか。妖精村の考え方も昔と随分と変わった。流されれば生きてはゆけない時代だ。
携帯はあれども、仲間うちの繋がりで、いざとなっても交番や病院に連絡することは出来ない。とにかく、みんなの無事を願うしかない。
「ナミネ、これ薄型だから使って」
「ありがとうございます、ヨルクさん」
私はヨルクさんからオムツを受け取った。簡易トイレは一応置くが、あんな雪山でズボン下ろせば全身が冷えきってしまう。
「セルファ、本当に行くの?」
流石のエルナさんも、命懸けのバイトとなれば、いてもたってもいられないだろう。
「行くけど?とりあえず、必要なものは全部、紙にまとめたから目を通しとけ!一度転落すれば死ぬからね?例え生きてても転落者は二度と崖を登るな!炎の舞係にまわれ!間違っても伝説ワイヤーを使うのは禁止。必ず苦無を使え!万が一のパラシュートも吹き飛ばされることを想定しろ!絶対気を抜くな!」
落ち武者さんは、みんなに必要事項をまとめた紙を渡した。
ネットでは、上に上がりきれなかった人の投稿しかなかったから、崖の高さがどのくらいあるのかは分からない。登りも下りも苦無だ。原石を無事に採取しても1回にどのくらいの時間がかかるのだろう。
「はい、必ず原石を採取します!」
言ってみたものの、私自身、疑心暗鬼だ。もし、誰も登りきれなかったら、カラルリさんの転生ローンを返すことが出来ない。
されど、不安なのは皆同じ。やるかやらないかである。
「上の状況分からないから、無線イヤホンマイクは付けろ!僕の指示には必ず従え!」
今回は、落ち武者さんが指揮を執るのか。
ただでさえ、妖精村全域停電なのに。私たちは命懸けのバイトをしなくてはならない。それも長期間。
これも武士の宿命なのだろうか。
夕方過ぎに、バイトの申し込みに行ったら遺書を書かされた。予想は薄々していたけれど、やはり会社側も責任は負いたくないのだろう。けれど、ネットによると、チラシの書き方が悪いから家族が亡くなったなど、たくさん苦情も寄せられている。
私たちは潔く遺書を書いた。
まるで、僧侶の百日修行だな。あの者たちは、死んだとしても悔いはないのだろうか。そこまで己を極めて、いったいなんになるのだろう。
ちなみに、遺書は、崖を登る者だけでなく、氷河期町に行く人全員が書いたのである。マイナス50度ともあれば、何もしなくても命を失う可能性が高い。それでも行くしかないのだ。
遺書を書き終え、ナノハナ家に戻ってきた私は既に疲れている。ああいうのは、メンタルに堪える。周りを見ると、みんなも似たような感じだ。
「ナミネ、今からカナエさんたちと夕ご飯作るね」
「はい」
ここでヨルクさんの手作りご飯を食べるのは明日の朝までだ。バイトをしている間は、しばらくここには戻れない。けれど、私は必ず生きて戻る。
これは私にとっての1つの試練なのだ。
「やっぱり私も行きます」
突然、アヤネさんが行くと言い出した。正直、ズームさんがいるからといって、それだけで行くのは無謀だと思う。
「あの、アヤネさん。見学とて命懸けなんです。今回は諦めてください」
お荷物を抱えるのはごめんだ。ただでさえ自分のことで精一杯なのに。
「僕は別にいいけど?けど、誰にも頼らず自分のことは自分でやれるならね?」
落ち武者さん、また無責任なこと言ってる。そういう問題ではなく、貴族のアヤネさんには持ち堪えられないから私は反対しているのに。
「はい、誰にも迷惑はかけません!」
そんな嘘、誰が信じるのだろう。
「じゃ、ここで遺書書け!書いたら紙飛行機にして飛ばす」
「分かりました」
アヤネさんは、落ち武者さんが渡した遺書を書きはじめた。
紀元前村でもナノハナ家でも何もしてなかったアヤネさんが氷河期町の過酷さに耐え切れるとは到底思えない。
行くと決めたのはアヤネさんだから私は責任など一切取るつもりはない。
「アヤネさん。行くなら行くで馬もご自分で乗ってください」
ナヤセス殿やラハルさんは仕方ないけど、アヤネさんは己のワガママで行くわけだから、誰かの重荷になるのはおかしいと思う。
「分かりました。すぐに武官を呼びます」
そう来たか。
アヤネさんは、無線でロリハー家に連絡をした。貴族と武士は、分かり合えないというか、時折、犬猿の仲にも思えてくる。
25分ほどすると、ロリハー家の特殊武官がナノハナ家に来た。
「ナミネ、馬見に行こうぜ」
「え、あ、うん」
正直、興味ないけれど、私はラルクに着いて行った。
ナノハナ家の前には黒い馬が一頭いた。武家は普通の茶色い馬だというのに、貴族は贅沢なもんだ。
「これエンジェルブェロッラだぜ!」
何それ。聞いたこともない。
「そんなの聞いたことないよ」
「フェアリーサラブラーほどでないけど、ギャロップで時速100キロ出るんだ」
武家だって、そんな馬置いてない。
「へえ、そうなんだ。貴族っていい気なもんだよね。高価な馬所有してさ」
私は少し拗ねていた。別に貴族になりたいわけではないけれど、この世はやはり暗黙に暮らしの階級が存在してる。
「まあ、貴族は優雅がモットーだからな」
努力しなくても、なんでも手に入る。そういうの私はあまり好きではない。けれど、貴族にとっては、お金さえあれば何でも出来てしまうそんな世界で住んでいるのだ。
「この馬、服着てないけど大丈夫なのかな」
アヤネさんは、言葉足らずの世間知らずだ。王室の馬は万が一の時のために防寒服を着せている。
「まあ、春風町の宿に置いとくからいいんじゃないか?」
「そうだね」
とは言えども、やはり気になってしまう。
私は、第4居間に戻るなりアヤネさんの前に立った。
「あの、アヤネさん。連れて来た馬、服着てませんが、少し無防備すぎませんか?」
「アヤネお嬢様に命令するのではなく、何かあれば、私にお申し付けください」
貴族って、本当に何もしないんだ。
「あの、お言葉ですが、武官は使用人ではありません!馬を所有しているなら、ご自身で点検するのが普通でしょう!」
私は思わず声をあげてしまった。
「ナミネ、やめようか。アヤネさんにはアヤネさんの家のやり方があるんだよね。ナノハナ家のやり方の押し付けはよくないよ」
ナルホお兄様までアヤネさんのこと庇って。本当なんなの!
「もういいです!そうやって、周りに何もかもしてもらう人生送ればいいと思います!家が破綻したら何もかも失いますけどね!」
私が苛立っている間、結局、ロリハー家の武官が馬に防寒服を着せに行っていた。
「強気なナミネ、アンタ何そんなに苛立ってんのさ。人見下しアヤネは勝手にやってんだからいいと思うけどね?」
勝手にもほどがある。それに、落ち武者さんが必要事項をまとめた紙のものは持っているのだろうか。
「勝手にって。アヤネさんは、必要なもの、何も買ってなかったじゃないですか!」
「それなら、武官が全て持って来てくれました」
武官武官。本当に苛立つ。
「つまり、自分では何一つやってないってことですね」
準備もそうだけど、物ごとと言うのは自分がやらなければ、意味がない。自分の目で確認していないのなら、使い方だって分からないだろうし。現場で躊躇するのが目に見えている。
「あの、さっきから私のこと悪く言ってませんか?もうその手には乗りません。ナミネさんは、自分の価値観押し付けるだけ押し付けて自分が出来る人間だと威張りたいだけです。私からしてみれば滑稽です」
滑稽!?私はただ、自分で確認しろと言っているだけなのに。被害妄想もいいところだ。アヤネさんって、こんな人だったんだ。一見大人しそうに見えて、心の中では周囲のこと見下している。
けれど、家柄と現場で発する能力は別物だ。言っても分からないなら私はもう知らない。勝手にすればいい。
「はいはい、すみませんでしたー!」
あんな性格で貰い手なんているのだろうか。
「私もナミネが怒るの無理ないと思うわ。誰かにやってもらった。それって自分では何一つ確認してないってことよね。シュミレーションもせずに、ぶっつけ本番なんてありえないわ」
やはり、リリカさんも同じ意見。
私たちは失敗の許されない環境で育って来たから貴族とは価値観が異なってくる。
「僕もそう思うな。命懸けの場所に行くのに一度もシュミレーションしてないなんて、ちょっとどうかと思う。ナミネがどうして怒るのか、それさえ考えられない人間と行動するのは心苦しいね」
素人のラハルさんだって、ちゃんと心構えはしている。
「どうして、みんなして私を責めるんですか!」
さっきの強気な姿勢はどうした。結局、多数派に揺るぐほどの人間など、自分を持っていないにすぎない。
「みんな落ち着こうか。いくら正論でも、それが人を傷つけてしまうこともあるよね。現場では長時間の結界は使えないから、テントの中にいなければならないけど、アヤネさんのことはナヤセスさんが見ててくれるかな」
ナルホお兄様って甘すぎる。こんなことで、ナノハナ家の跡取りが務まるのだろうか。
「うん、分かった。春風町は洞窟抜けてすぐだから、いざとなれば春風町の医者も呼べるし、無理なら無理で宿で過ごしたらいいよ」
宿で過ごすなんて、何のために行くのか分からないじゃない。
「ねえ、ラルク。アヤネさんってワガママだよね」
「ナミネ、放っておけ」
「もうやめてください!」
アヤネさんは泣きはじめた。
その時、カナエさんたちが晩ご飯を運んできた。今日はお鍋か。季節外れだけれど、時経てば、よい思い出になるだろう。
「ナミネ、いっぱい食べて明日に備えてね」
「ありがとうございます、ヨルクさん」
ヨルクさんは、取り皿に私の好きなものを入れてくれた。
「ナミネさんだって、ヨルクさんに何もかもしてもらっているじゃないですか」
本当、何?私はもうアヤネさんに何も言ってないのに。執着が凄い。
「何があったか知りませんが、ナミネはヨルクを守り、ヨルクはナミネのお世話をしています。カナエは、それでいいと思います」
アヤネさんは、孤立しがちだ。ここへ来る前も友達とかいなかったのだろうか。
「この料理、庶民的ですね」
もう我慢ならない。私は扇子を取り出した。
「セルファ、やっぱり私も行く!」
エ、エルナさんも!?今から準備出来るのだろうか。
「だろうと思ってた。強気なナミネの部屋にアンタの用意してあるから、それ使え!」
落ち武者さんって、やっぱりエルナさんのこと好きなんだ。どうして復縁しないのだろう。こんなに好き合っているのに。
「ありがとう、セルファ」
「エルナさんだって土壇場じゃないですか!それでも私だけを責めるんですか?」
責めているんじゃなくて、アヤネさんの態度が強かだから、こちらも心穏やかでなくなるのに。
「エルナさんは、雪山の経験ありますか?」
貴族って何して暮らして来たのだろう。
「氷河期町ではないけど、氷町でしょっちゅうスケートしてたわ。どこもかしこも地面は氷だからホテルに着くまでが寒かったわね」
氷町。そんなところが存在するのか。やっぱり貴族は違うんだな。
「氷町はスケートの本場だからね?」
スケートかあ。小さい頃は、紅葉町のスケート場に連れて行ってもらったりもしていたけど、本場はスケート場とは比べものにならないくらい広いのだろう。
「あー、なんかいかにも貴族って感じですね」
私がお変わりしようとしたら、既にヨルクさんが2杯目を入れてくれていた。
「ナミネさんこそ、何でもヨルクさんがやっていて、ご自分では何もなさらないんですね」
こういう言われ方、本当に気分を害する。私はアヤネさんを無視した。
「貴族と言っても、結局は就職活動になれば、みんなと同じよ。兄は画家を目指してるけど、絵で食べて行けるかどうか分からないわ」
就職活動か。貴族だからといって、企業が優遇してくれるわけではないのか。そりゃそうか。有能でない人材など必要ないだろう。
「エルナ、お兄様いるの?」
ヨルクさんって、やっぱり世間知らず。
「あら、あなたに兄弟がいるように私にもいるわ」
「あ、そうだよね」
昔は、貴族も武家並に跡取りがいたが、今では貴族の跡取りは減りつつあるらしい。アヤネさんとか、ひとりっ子なんじゃないの。
「ねえ、ラルク。アヤネさんって、ひとりっ子っぽいよね」
「まあ、そう見えなくもないけど、分かんないな」
「末っ子って、みんなこうなのでしょうか?私には姉がいます」
ひとりっ子じゃないんだ。なんか意外。
「アヤネ、どうしたのですか!カナエもナミネもラルクも末っ子です。姉ということは、アヤネも末っ子ですよね?」
なるほど。そういう見方もあるか。
「2人姉妹に末っ子も何もありませんよね。あなた方の兄弟の多さに比べたら。ナミネさんのお父様なんて浮気してますもんね」
私は思わずアヤネさんに熱いお茶をかけた。
「熱い!」
ロリハー家の武官は私を取り押さえようとしたが、その前に私は花札を投げ、武官に扇子を突き付けた。
「弱い武官ですね。貴族なのに、強い武官も雇えないのですか?」
私の家族を馬鹿にするなんて許せない。私は自分が思う以上に苛立っていた。
「武官の拘束は解かない。明日行きたいなら人見下しアヤネ1人で行け!」
「そんな……あんまりです……。どうして私だけをイジメるんですか!」
ナナミお姉様が立ち上がった。
「アヤネさん。ナノハナ家にいてもらうのは構いませんが、人の家族の悪口はやめてもらえませんか?ナミネも混乱しちゃいましたし」
「すみません。カッとなってしまいました。お許しください」
どうしてナナミお姉様なら生意気な態度取らないの。こういう差別、私はきらいだ。私はラルクに抱き着いた。
「悔しいよ。ラルク、私こんなふうに馬鹿にされて悔しい」
気が付いたら涙がポロポロ零れていた。
「アヤネ先輩をメンバーから外そう」
ラルクはナノハナ家の武官を呼んだ。
「やめてください!お父様に言いつけますわよ!」
その瞬間、武官はアヤネさんを離した。
結局、有利なのはお金持ちだ。悔しい。どうして浮気とか他所の家庭を侮辱されなければならないのだろう。
頭がグルグル回る。気が付けば私は泣きながら部屋中のものを投げていた。そして、羽子板でアヤネさんを叩いた。
「痛い!許してください!本当にカッとなっただけで馬鹿にしたわけではありません!」
今更謝られても、もう遅かった。アヤネさんを無理矢理ナノハナ家から追い出したあとのことは覚えていない。
気が付いたら部屋の布団の中にいたことも。ヨルクさんが、お風呂に入れてくれたことも。ヨルクさんに抱き締められながら眠ったことも。
精神的なショックで私は虚ろになっていたのだ。
目を覚ますと時刻は4時。
私はラルクと水汲みをしたあと、雪山登山服に着替え、持ち物を何度も確認した。
いよいよ、命懸けバイトのはじまりの幕が開けた。
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あとがき。
最初に遺書書くとか、もう僧侶の百日行みたいですね。
ズームと一緒にいたさだけで、危険な場所に行くと決めたアヤネ。無謀だとナミネが指摘するものの、アヤネの態度がどんどん変わってゆく。
どうしてアヤネは孤立してしまうのでしょう。調和が取れないのでしょう。
せっかく気合い入れていたナミネがかわいそう。
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この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
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