日常のこととかオリジナル小説のこととか。
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ashita
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女性
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地主(土地貸してます)
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漫画やアニメを見るのが好きです。最推しはフーディーニ ♡
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ブログ、もう書かないと思ってました。
けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。
小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。
純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
元々このブログは病気の記録用として立ち上げたものですが、小説載せるようになってからは、ここは出来るだけ趣味的なことを綴りたいと思っております。
病気の記録や様々な思いを綴るブログは移転済みなのです。
ただ、今は日記は個人的な徒然、或いはお知らせとして綴ることが多いかと思います。
小説、ぼちぼちマイペースに書いてゆきます。
よろしくお願い致します。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
お知らせ。
イラストは現在「ナノハナ家の日常」に載せております。サイドバーにリンクあります。
また、「カラクリよろずや」にてフリーイラスト素材について考えるブログはじめました✩.*˚
不定期に更新していく予定です。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
模倣・無断転載などは、ご遠慮ください。
ブログの小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
小説・純愛偏差値に関しましては、武家名・貴族名(程度による) / 及び、武官の階級 / 扇子・羽子板・花札・百人一首・紙飛行機などのアイテム使用方法の模倣の一切を禁じております。
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X @kigenzen1874
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けれど、去年から書き始めた小説によって、過去に書いてた小説も書き始め、ここに載せることにしたのです。
小説は、主に『時間と時間を繋ぐ恋の物語』と『妖精村と愉快な仲間たち』をメインに書いています。
現在は、中高生の武家・貴族・王族が過去を遡るジャンルはダークファンタジーの『純愛偏差値』という小説に力入れています。
純愛偏差値は私の人生を描いた自伝です。
終わることのない小説として書き続ける予定です。
純愛偏差値は今年100話を迎えました。
私にとって、はじめての長編です。キャラクターも気に入っています。
が、走り書きに走り書きしてしまったので、1話から書き直すことにしました。これまで書いたものは鍵付けて残しています。
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〈資格履歴〉
2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2012年10月25日
→環境カオリスタ検定 合格
2025年01月20日
→鉛筆デッサンマスター 合格
→絵画インストラクター 合格
2025年03月07日
→宝石鑑定アドバイザー 合格
→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
→茶道アドバイザー 合格
→お点前インストラクター 合格
2025年04月17日
→着物マイスター 合格
→着付け方インストラクター 合格
2025年05月19日
→サイキックアドバイザー 合格
→サイキックヒーラー 合格
2025年07月01日
→アンガーカウンセラー 合格
→アンガーコントロール士 合格
2025年08月04日
→漢方コーディネーター 合格
→薬膳調整師 合格
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〈資格証明バナー〉

2008年09月09日
→さし絵ライター3級 合格
2012年10月25日
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2025年01月20日
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2025年03月07日
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→鉱石セラピスト 合格
2025年04月07日
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〈資格証明バナー〉

純愛偏差値 未来編 一人称版 71話
《ミネス》
私はブランケット家の次女 ミネス。
父親は国会議員で母親は料理研究家をしている。小さい頃から私は知力に優れていて、勉強はとても得意だった。
末っ子ゆえ、周りからは可愛がられてきて、自分は恵まれていると思っていた。けれど、そんな思いは姉によって壊されてしまったのである。
お姉ちゃんは決して頭脳明晰ではなく、勉強も苦手で常に赤点。けれど、容姿端麗で、私がずっと片想いしているカンザシを奪った。カンザシとは幼なじみで、よくブランケット家に遊びに来ていた。そして、私のことを実の妹のように可愛がってくれていたのだ。でも、カンザシはお姉ちゃんに一目惚れをした。お姉ちゃんもまた表には出さないもののカンザシに恋愛感情を抱いていたと思う。お互いに初恋だったわけなのだ。
私はどうにかカンザシに振り向いて欲しくて、金銭面でカンザシを援助した。でも、カンザシが私を女として見てくれることはなかった。
田舎があまり好きではない私は、小さい頃に都会の虹色街の別荘で暮らしていた。成績も常に学年トップで委員長をたびたびしていた。クラスでは私は一軍女子で、困っている子には常に優しくしてきた。それも今思えば、満たせない心を自分で慰めていたのだと思う。
そんなある日、学校ではダサイとイジメを受けているお兄ちゃんが、学校外のあるグループと仲良くしていると聞いて、私はナノハナ家に行ってみた。
けれど、大したメンバーはいなくてガッカリした。更には、あれ程に女遊びしていたカンザシにナミネという本命が出来ていて私は物凄くショックを受けた。
ナミネはナノハナ家の5女で、2019年のミスコングランプリ。確かに容姿端麗ではあるけれど、まさかカンザシが私より若い中学1年生のナミネに本気になるとは思わず、私はナミネに会った瞬間から心を痛めた。
ナミネにはカンザシそっくりのヨルクという彼氏がいて、ラルクという幼なじみの親友もいて、芸能活動もしていて、私と同じ末っ子で、幼い頃から紅葉町のみんなから可愛がられていたそうだ。
私はナミネがヨルクから優しくされ、幸せそうにするたびに羨ましくて、次第に妬みの感情が生まれてしまっていた。
けれど、知らない間に第6王女のセナから嫉妬され、私は桜木町の料亭でセナが命令した武官から襲われた。そんな私のピンチを救ってくれたのはナミネの兄のナルホだった。ナルホに対しては自然と心が解放されていた。初対面で、ナルホに興味を持った私はナルホに付きまとった。
でも、ナミネがカンザシにラハルにはじめてを映画の中で捧げたと嘘をついて、傷付いたカンザシは環状線でレイプをし、カンザシを追い詰めたナミネが憎くなり、カンザシがイジワルしたのはナミネのせいとナミネを引っぱたいてしまった。
すると、ナミネから酷い暴力で返って来て、皇帝陛下にかけあうとも言われ、私はひたすらナミネに謝り続けた。けれど、ナミネは私を許さなかった。
その理由は正月の私の行動にあった。
正月にカンザシが1年前にイジワルした女の子が紅葉神社に来ている時、ヨルクを犯人だと叫び、私は知らぬフリをした。そこまでならよかったのだけど、料亭でヨルクはクレナイ家の顧問弁護士をカンザシの家に向かわせたと言い、私は咄嗟にブランケット家の顧問弁護士を向かわせると言ってしまった。けれど、この発言が問題視され、ナミネから犯人隠避と言われ、皇帝陛下に私の処分をくださせた。私は馬鹿の言い分は覆ると皇室に連絡をしたが、皇帝陛下の決断は変わらなく、イジワルされたくない私は、ただただナミネに謝り続けた。
ナミネからは
『○二度とカンザシさんを庇わない
○ヨルクさんに罪を着せたら赤花咲を行う
○ヨルクさんの安全を常に守る
○私とヨルクさんの関係を引き裂かない
○カンザシさんが私に1000年の恋の話題をしたら赤花咲を行う』
という厳しい書面を見せられ、サインしようとしたらナルホが書類を破ってくれた。その後もナミネからの攻撃はナルホが庇ってくれて、私は無自覚にナルホに惹かれはじめていた。
私は、ナミネのヨルクとのことはそっとしておいて欲しいという思いを全く理解してあげられる余裕がなかった。ただ、カンザシに認めて欲しくて、カンザシから褒められたくて、少しでもカンザシに好きになって欲しくて、周りの声が私には聞こえていなかった。グルグル妖精のマンションではカンザシを庇っていることを持ち出され、不利な立場に立たされ、私はひたすらナミネに謝り続けるしかなかった。皇帝陛下は常にブランケット家を優先してくれていたのに、ナミネの母親が皇帝陛下の想い人で皇帝陛下はナミネの意見を優先することを知り、私は素直に負けを認めた。でも、ナミネは許してくれず、ナミネは私を目の敵にし、何がなんでも許そうとせず、あろうことかアルフォンスを犠牲にし私のせいにした。
その後のことは覚えていない。ただ、セルファの兄がみんなの記憶を映画撮影の時まで戻してくれて、私はアルフォンスから責められることはなかった。
ただ、カンザシを庇う。
そこには犯罪名がついていて、ナミネの幸せを奪うことを知った私は改めてナミネに謝った。けれど、ナミネは私を侮辱するばかりで、どれだけ謝っても許してはもらえず、ナミネの取り巻きからも責められ、私はどうしていいのか分からなくなっていた。そんな時、セルファは私にフェアリーングをかけ、私の醜い部分を引き出した。
『お子ちゃまミネス、あんた強気なナミネに言葉で勝てると思ってただろ?強気なナミネはあんたより下だと思ってんだろ?』
『正直、ナミネは頭悪そうだし、私の上には立てないと思ってる。ナミネがどうこう足掻いても最後に勝つのは私だと思ってる。悪いけど馬鹿との話し合いで時間の無駄になって迷惑』
『へえ、それがあんたの本心か。散々強気なナミネに謝ってたのは全て嘘だったってわけ?次にカンザシが問題起こしたら顔だけヨルクに罪でも着せるつもり?』
『そうだね。本気で謝罪はしてない。馬鹿相手にそんなことしない。もちろんカンザシが助かるならヨルクに身代わりになってもらうし、私は私とカンザシだけ無事ならそれでいい!ナミネとヨルクの幸せなんか知らない!』
『あんた、随分悪だな。具体的に聞くけどカンザシがイジワルしたら、その罪、顔だけヨルクに着せるってことか?今後、強気なナミネに何するつもりだ?』
『そうだね。カンザシがイジワルしたらその罪はヨルクに被せる。カンザシのこと取ったナミネには適当に人雇ってイヤガラセさせるつもり。こんな馬鹿に出しゃばられたら溜まったもんじゃないもん』
自分でも醜いと思う。これをセルファは録音していて、伝書鳩に皇室に送らせ、私は皇帝陛下から赤花咲の処分がくだされた。
慌てて私がみんなに縋った時、お兄ちゃんの姿が薄れていた。
お兄ちゃんとカンザシの背中には勾玉のアザがある。カンザシは黒い勾玉でお兄ちゃんは白い勾玉。この2つの勾玉はつがいになっていて、カンザシに危険が迫るとお兄ちゃんにも危害が及ぶ。けれど、その逆はなしなのだ。
お兄ちゃんが消えそうになり、セルファはヨルクにダンゴロを呼び出すよう言い、ヨルクはダンゴロを呼び出し、お兄ちゃんの勾玉のアザと効力を消すようお願いした。ダンゴロはラルクとセレナールの復縁を条件に叶えてくれた。
お兄ちゃんは助かった。
これまでの私はカンザシへの恋愛感情に縛られすぎて周りが見えなくなっていたのだと思う。自分より強い人はいないと思い込み、お兄ちゃんの仲間をみんな馬鹿にしていた。
だから、カンザシには支援しないと言った。
ナミネからは、その後も許しはもらえず、利尿剤を飲まされ、お漏らしと罵られ、泣いただけでも脅され、最終的には妖精クリーンをかけられた。
たった、カンザシを庇っただけで。
私は悔しくてたまらなかった。
そして私はナミネの『ヨルクとのことはそっとしておいて欲しい』の言葉をずっと見落としていた。
ナノハナ家に戻るなりナルホは汚れた私をお風呂に案内してくれた。1人だと怖いと言ったらナルホも一緒に入ってくれた。
ナルホといる時は物凄く心が安らぐ。
「ナルホ……」
「僕は君が全て悪いとは思ってないよ。ただ、ミドリお姉様が無惨な形で亡くなってからナミネは病気になってしまったんだ。でも、君のことはいずれ理解すると思う」
ミドリ。私のことを見た目も性格も不細工な親の七光り野郎と言った時に見せてきた写真の人か。あれが、レイプされた人の死に様とは私もあの時はじめて知った。
ナミネとは反りが合わない。けれど、知り合って間もないのに、ナルホには軽蔑されたくない。
「ナルホ……私を1人にしないで……」
この時の私はカンザシが頼りなく、それでもカンザシが好きで、ナルホへの気持ちに全く気づけずにいた。
ボーッとしていたら、躓いて、私は勢いよくナルホの上に乗ってしまった。
「痛い!」
お湯を見たら血が混じっている。カンザシだけのために残していたはずだった。だけど……。
「とりあえず下りてくれるかな」
「あ、うん」
私はナルホから下りた。
ナルホの部屋では主治医の手当てを受けた。私は疲れて布団に寝転んだ。その時、第2母屋に行くよう声がかかった。
私とナルホは第2母屋へ向かった。
第2母屋の第1居間では、お母さんがいた。
「お母さん!」
その瞬間、私は引っぱたかれた。
え、一度も引っぱたかれたことなんてなかったのに……。
聞くところによると、私が完全に不利になる録音と映像をお母さんは見せられたらしく、まさかの動物園での映像までセルファは所有していた。あの防犯カメラの映像は消したはずなのに。どうして持っているのだろう。
「お子ちゃまミネス、あんた自分のしてること分かってんのか!」
「ごめん!もうカンザシとは関わらない!」
「いいえ、許しません!自分がセナ王女にイジワルされそうになった時は、騒ぎ立てたくせに、それなのにミネスさんはヨルクさんを穢そうとするのですか!皇帝陛下にかけあいます!」
どうしよう。これでまた私の信用が失われていく。
「本当に申し訳ありません。どうか、皇帝陛下に言うことだけは許してください」
お母さんはナミネに土下座した。いつも優しくて思いやりのあるお母さん……。上手(うわて)だからって何をしても許されるのだろうか。お母さんのこんな姿見たくない。
「なあ、あんた自分の娘なら何しても許されると思ってんのかよ!あんたが二度と料理出来ないよう腕の骨へし折ってやる!あんたの娘がしたことはそういうことなんだよ!」
セルファはお母さんの腕を掴んだ。
「きゃあああああああ!!!」
「お母さん!!」
セルファはお母さんの腕を離した。
「次は腕折る」
その瞬間、お母さんはまた私を引っぱたいた。
「あなたのせいで料理出来なくなるところだったじゃない!一生恨んでやる!」
え……怒ったことなんかなかったお母さんが別人になっている。
「ミネスさん、私とヨルクさんのことはそっとしといてください!!お願いだからそっとしといてください!!」
カンザシを庇っただけだった。それが、酷い暴行を受け、脅迫され、親まで呼ばれるとは思っていなかった。私は一発ナミネを叩いただけなのに、ナミネは親の前では被害者気取り。でも、ここで、私がナミネを攻撃したら、お母さんがどうなるか分からない。私は泣きながら堪えた。
「本当に申し訳ありません。どうか一度だけ許してください。ミネスが犯罪を犯していただなんて全く知りませんでした」
その時、誰かが来た。
「それで?あなたの馬鹿娘が私の息子の人生壊そうと計画してたのかしら?」
「本当に申し訳ありません。娘にはちゃんと言い聞かせます」
お母さん、謝ってばかり。
「ハッキリ言います!ミネスさん、ナミネから何かしましたか?全てあなたがナミネをイジメた結果ですよね?反省してもっと苦しんでください!」
ナミネからは……何もしてない……。私はラルクの正論に押し潰された。
「ナミネ、ミネスは十分に反省してる。だから許して欲しい」
「まるで彼氏気取りですね。もし何かあったらナルホお兄様が責任取ってくれるんですか?」
「うん、僕が責任取るよ」
ナルホ……。
「分かりました。一度だけ信じます」
やっと……終わった……。
「一件落着ってことで、ミハネ、今夜は飲むわよ!」
「飲もう飲もう!」
「私、おつまみ作ります」
「よろしくー!」
何時間にも渡るナミネの呪縛から解放された。
再びナルホの部屋に戻ると、ナノハナ食堂のご飯が机に置かれていた。朝からナミネに色々言われて何も食べていなかった私はご飯を食べた。ナルホに近付くと植物の香りがする。
そういえば、ナルホと交際するならナミネの許しも必要なんだ。どうしてこんなこと考えているのだろう。
その時、扉にノックが鳴った。
「カナエ」
「ナルホ、庭園を見せてください」
「うん、いいよ」
ナルホ、植物育ててるんだ。
「私もナルホの庭園見たい!」
「うん、いいよ。寒いから上着着て」
「分かった」
私は食べかけの食事を置いて、ナルホに着いて行った。
ナルホの庭園はとても広い。見たこともない植物も沢山育てている。この空間はまるで幻想的な世界のようだ。
「ナルホ、植物も増えましたね」
「うん、紀元前村にいた時に色々学んだから、帰る時に色々買ってきたんだ」
「カナエもキクリ家で薬草育てています」
「カナエは全て自分で採取してるんだよね」
何この2人、距離が近い。カナエってナルホのこと好きなのだろうか。
「そういえばカナエってアルフォンスからピル飲まされてるんだっけ?本当に愛してるならピルなんか飲ますかなあ?妊娠されたら困る女なんだよ、カナエって」
「そのように人を攻撃して憂さ晴らしすることでしか自分を保てないのですね。カナエはミネスを可哀想に感じます」
本当に愛しているならピルなんか飲ませたりしない。カナエはアルフォンスにとって遊びなのに、この余裕はどこから出てくるのだろう。
この時の私は、カナエがアルフォンスに見切りをつけようとしていることを全く知らなかった。
「じゃあ、アルフォンスにどうしてカナエにピル飲ませるのか聞いちゃおうかな」
「それでミネスの気が済むならどうぞご自由にしてください」
この女ムカつく。いかにも自分がマウント取ってますって感じで、人を見下している。私はカナエを後ろから突き飛ばすとカナエを踏み付けた。その瞬間、カナエは扇子で私を吹き飛ばした。
「愛されてないくせに!」
「愛がそれほどまでに重要でしょうか?カナエは1人なら別にそれはそれで構いません」
この人、セナやセレナールと違って要領がいい。セナはカラルリに依存しすぎて中絶薬盛られ裏切られ、セレナールは無防備に妊娠をカップル日記に書いてアルフォンスにトケイ草を盛られた。
学校では、クラスのみんなに頼られていっぱい褒められて毎日が楽しいのに、ここでは人間関係の作り方が分からない。それに力の強い人ばかりがいる。いつも一軍女子で人の上に立っている私がここでは惨めな人になってしまう。
「ねえ、ラルク。セレナールさんとは続きそう?」
って、ナミネいたのか。
「ズームさんの命かかってるから別れるわけにはいかないしな」
お兄ちゃんて、ここの人らには大切にされているんだ。
「そうだね。でも、リリカさんは納得してくれてるの?」
「納得はしてない。僕が結婚する時には妾として遠くで暮らして欲しいって言ってたらしい」
「難しいね。でも、結婚てまだまだ先だし、それまでにラルクが本当に好きになれる人見つけたらいいよ」
ナミネとラルクは庭園の端っこに体育座りしていた。距離はかなり近いというか、くっついている。
「もう恋愛はしない」
「そっか。ラルクの未来だもんね。どんなラルクでも応援してるよ」
「ナミネ、ミネスとは付き合いしないほうがいいです。さっきいきなりカナエに侮辱してきました」
「えー、ミネスさん最低!」
その瞬間、私の首に何かが巻き付いた。息が出来ない。その時、ナルホが助けてくれた。
「ナミネ、やめようか。ミネスは十分に反省してる。どうしてこんなことするのかな?」
私はナルホの後ろに隠れた。
「ミネスさんがカナエさんのこと侮辱したそうです」
「ミネス、本当かな?」
「侮辱じゃなくて意見しただけ!」
「ラルク、人のことなんてほっときゃいいのにね」
1人より2人の言葉のほうが効力は強い。特に人間関係を上手く作れない人にとっては。ナミネはラルクといると1人の時より断然に別人だ。
「まあ、人のこと干渉するほど暇人なんだろ」
ここでまた言葉したら私が悪者にされてしまう。どうして学校では一軍女子の私が、ここではいちいち人間関係に怯えなければならないのだろう。
「ごめん!悪気はなかった!カナエ、許して欲しい!」
「カナエは別に気にしていません。ナルホ、この植物ください」
「うん、いいよ。ここにあるの、適当に持って行って」
「ありがとうございます」
その瞬間、私はカナエを引っぱたいていた。そして、私はそのままカナエを植物の中に突っ込ませ、植物を台無しにしてしまった。
「カナエさん、大丈夫ですか?」
ナミネはカナエを植物の中から引っ張り出した。次の瞬間、ナミネは私にお手玉を投げた。お手玉は複数になり、猛スピードで私の周りを回転した。私がお手玉の外に出ようとするとお手玉は私を弾いた。私の身体は物凄い痛みが走った。
「ミネスは人にいやがらせしか出来ないのですね。今幸せですか?」
「お願い、助けて!」
「ミネス、どうしてカナエを叩いたのかな?」
どうしよう。あの時、カナエとナルホが親しげにしていたから思わず苛立ってしまった。
「わざとじゃない!許して欲しい!」
「ラルク、どう見てもわざとだったよね。この映像がそれを物語っているよね」
ここの人たち何?お兄ちゃんはどうしてここの人たちと付き合いしているの?
「もう確信犯だな。ここにある植物もダメになってしまったし、老害だな。とりあえず、落ち武者さんとズームさん呼べ!」
「分かった!」
ナミネはセルファとお兄ちゃんを呼び、2人はすぐに来た。そして、ナミネはお兄ちゃんに映像を見せた。
「ミネス!なんてことしてくれたんだ!」
「お兄ちゃん、わざとじゃない!信じて!」
この時の私はカンザシのことを好きながら、恋というものを何も分かっていなかった。それは未来に気付かされることになる。セルファは私にフェアリーングをかけた。
「お子ちゃまミネス、あんたなんで男尽くしカナエ叩いた」
「ナルホとカナエが親しそうにしてたから思わず叩いてしまった。悪気はなかった!」
「あんたカンザシと平和ボケなナルホどっちが好きなんだよ!」
「私はカンザシが好き!」
どうしよう。自分でも訳の分からないことを言ってしまっている。セルファは私のスカートをめくった。
「あんた、下着血がついてるけどどうしたんだよ、これ」
「お風呂に入ってる時、誤ってナルホの入った」
「へえ、あんた平和ボケなナルホに処女捧げたのかよ」
「うん。捧げた!ナルホに捧げた!」
フェアリーングを解こうとしても、足掻くほどに絡まってしまう。一度かけられたら解けないんだ。
「平和ボケなナルホ、あんた事故とはいえ、お子ちゃまミネスの処女奪ってどうすんだよ?」
「ミネスが僕に責任を求めるなら責任は取るつもりだよ」
気が付いたら、ナミネのお手玉もなくなっていて、セルファのフェアリーングも解かれていた。私はその場に泣き崩れた。ナルホは私を抱きかかえ部屋に連れて行き、私を慰めた後、私を布団に寝かせた。
この先、カンザシよりナルホを好きになることがあるだろうか。そうなって欲しい。けれど、私はカンザシのことを諦めきれない。
新たな春の訪れに私はあえて、それを凍らせてしまっていた。
……
あとがき。
ミネス視点でした。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
《ミネス》
私はブランケット家の次女 ミネス。
父親は国会議員で母親は料理研究家をしている。小さい頃から私は知力に優れていて、勉強はとても得意だった。
末っ子ゆえ、周りからは可愛がられてきて、自分は恵まれていると思っていた。けれど、そんな思いは姉によって壊されてしまったのである。
お姉ちゃんは決して頭脳明晰ではなく、勉強も苦手で常に赤点。けれど、容姿端麗で、私がずっと片想いしているカンザシを奪った。カンザシとは幼なじみで、よくブランケット家に遊びに来ていた。そして、私のことを実の妹のように可愛がってくれていたのだ。でも、カンザシはお姉ちゃんに一目惚れをした。お姉ちゃんもまた表には出さないもののカンザシに恋愛感情を抱いていたと思う。お互いに初恋だったわけなのだ。
私はどうにかカンザシに振り向いて欲しくて、金銭面でカンザシを援助した。でも、カンザシが私を女として見てくれることはなかった。
田舎があまり好きではない私は、小さい頃に都会の虹色街の別荘で暮らしていた。成績も常に学年トップで委員長をたびたびしていた。クラスでは私は一軍女子で、困っている子には常に優しくしてきた。それも今思えば、満たせない心を自分で慰めていたのだと思う。
そんなある日、学校ではダサイとイジメを受けているお兄ちゃんが、学校外のあるグループと仲良くしていると聞いて、私はナノハナ家に行ってみた。
けれど、大したメンバーはいなくてガッカリした。更には、あれ程に女遊びしていたカンザシにナミネという本命が出来ていて私は物凄くショックを受けた。
ナミネはナノハナ家の5女で、2019年のミスコングランプリ。確かに容姿端麗ではあるけれど、まさかカンザシが私より若い中学1年生のナミネに本気になるとは思わず、私はナミネに会った瞬間から心を痛めた。
ナミネにはカンザシそっくりのヨルクという彼氏がいて、ラルクという幼なじみの親友もいて、芸能活動もしていて、私と同じ末っ子で、幼い頃から紅葉町のみんなから可愛がられていたそうだ。
私はナミネがヨルクから優しくされ、幸せそうにするたびに羨ましくて、次第に妬みの感情が生まれてしまっていた。
けれど、知らない間に第6王女のセナから嫉妬され、私は桜木町の料亭でセナが命令した武官から襲われた。そんな私のピンチを救ってくれたのはナミネの兄のナルホだった。ナルホに対しては自然と心が解放されていた。初対面で、ナルホに興味を持った私はナルホに付きまとった。
でも、ナミネがカンザシにラハルにはじめてを映画の中で捧げたと嘘をついて、傷付いたカンザシは環状線でレイプをし、カンザシを追い詰めたナミネが憎くなり、カンザシがイジワルしたのはナミネのせいとナミネを引っぱたいてしまった。
すると、ナミネから酷い暴力で返って来て、皇帝陛下にかけあうとも言われ、私はひたすらナミネに謝り続けた。けれど、ナミネは私を許さなかった。
その理由は正月の私の行動にあった。
正月にカンザシが1年前にイジワルした女の子が紅葉神社に来ている時、ヨルクを犯人だと叫び、私は知らぬフリをした。そこまでならよかったのだけど、料亭でヨルクはクレナイ家の顧問弁護士をカンザシの家に向かわせたと言い、私は咄嗟にブランケット家の顧問弁護士を向かわせると言ってしまった。けれど、この発言が問題視され、ナミネから犯人隠避と言われ、皇帝陛下に私の処分をくださせた。私は馬鹿の言い分は覆ると皇室に連絡をしたが、皇帝陛下の決断は変わらなく、イジワルされたくない私は、ただただナミネに謝り続けた。
ナミネからは
『○二度とカンザシさんを庇わない
○ヨルクさんに罪を着せたら赤花咲を行う
○ヨルクさんの安全を常に守る
○私とヨルクさんの関係を引き裂かない
○カンザシさんが私に1000年の恋の話題をしたら赤花咲を行う』
という厳しい書面を見せられ、サインしようとしたらナルホが書類を破ってくれた。その後もナミネからの攻撃はナルホが庇ってくれて、私は無自覚にナルホに惹かれはじめていた。
私は、ナミネのヨルクとのことはそっとしておいて欲しいという思いを全く理解してあげられる余裕がなかった。ただ、カンザシに認めて欲しくて、カンザシから褒められたくて、少しでもカンザシに好きになって欲しくて、周りの声が私には聞こえていなかった。グルグル妖精のマンションではカンザシを庇っていることを持ち出され、不利な立場に立たされ、私はひたすらナミネに謝り続けるしかなかった。皇帝陛下は常にブランケット家を優先してくれていたのに、ナミネの母親が皇帝陛下の想い人で皇帝陛下はナミネの意見を優先することを知り、私は素直に負けを認めた。でも、ナミネは許してくれず、ナミネは私を目の敵にし、何がなんでも許そうとせず、あろうことかアルフォンスを犠牲にし私のせいにした。
その後のことは覚えていない。ただ、セルファの兄がみんなの記憶を映画撮影の時まで戻してくれて、私はアルフォンスから責められることはなかった。
ただ、カンザシを庇う。
そこには犯罪名がついていて、ナミネの幸せを奪うことを知った私は改めてナミネに謝った。けれど、ナミネは私を侮辱するばかりで、どれだけ謝っても許してはもらえず、ナミネの取り巻きからも責められ、私はどうしていいのか分からなくなっていた。そんな時、セルファは私にフェアリーングをかけ、私の醜い部分を引き出した。
『お子ちゃまミネス、あんた強気なナミネに言葉で勝てると思ってただろ?強気なナミネはあんたより下だと思ってんだろ?』
『正直、ナミネは頭悪そうだし、私の上には立てないと思ってる。ナミネがどうこう足掻いても最後に勝つのは私だと思ってる。悪いけど馬鹿との話し合いで時間の無駄になって迷惑』
『へえ、それがあんたの本心か。散々強気なナミネに謝ってたのは全て嘘だったってわけ?次にカンザシが問題起こしたら顔だけヨルクに罪でも着せるつもり?』
『そうだね。本気で謝罪はしてない。馬鹿相手にそんなことしない。もちろんカンザシが助かるならヨルクに身代わりになってもらうし、私は私とカンザシだけ無事ならそれでいい!ナミネとヨルクの幸せなんか知らない!』
『あんた、随分悪だな。具体的に聞くけどカンザシがイジワルしたら、その罪、顔だけヨルクに着せるってことか?今後、強気なナミネに何するつもりだ?』
『そうだね。カンザシがイジワルしたらその罪はヨルクに被せる。カンザシのこと取ったナミネには適当に人雇ってイヤガラセさせるつもり。こんな馬鹿に出しゃばられたら溜まったもんじゃないもん』
自分でも醜いと思う。これをセルファは録音していて、伝書鳩に皇室に送らせ、私は皇帝陛下から赤花咲の処分がくだされた。
慌てて私がみんなに縋った時、お兄ちゃんの姿が薄れていた。
お兄ちゃんとカンザシの背中には勾玉のアザがある。カンザシは黒い勾玉でお兄ちゃんは白い勾玉。この2つの勾玉はつがいになっていて、カンザシに危険が迫るとお兄ちゃんにも危害が及ぶ。けれど、その逆はなしなのだ。
お兄ちゃんが消えそうになり、セルファはヨルクにダンゴロを呼び出すよう言い、ヨルクはダンゴロを呼び出し、お兄ちゃんの勾玉のアザと効力を消すようお願いした。ダンゴロはラルクとセレナールの復縁を条件に叶えてくれた。
お兄ちゃんは助かった。
これまでの私はカンザシへの恋愛感情に縛られすぎて周りが見えなくなっていたのだと思う。自分より強い人はいないと思い込み、お兄ちゃんの仲間をみんな馬鹿にしていた。
だから、カンザシには支援しないと言った。
ナミネからは、その後も許しはもらえず、利尿剤を飲まされ、お漏らしと罵られ、泣いただけでも脅され、最終的には妖精クリーンをかけられた。
たった、カンザシを庇っただけで。
私は悔しくてたまらなかった。
そして私はナミネの『ヨルクとのことはそっとしておいて欲しい』の言葉をずっと見落としていた。
ナノハナ家に戻るなりナルホは汚れた私をお風呂に案内してくれた。1人だと怖いと言ったらナルホも一緒に入ってくれた。
ナルホといる時は物凄く心が安らぐ。
「ナルホ……」
「僕は君が全て悪いとは思ってないよ。ただ、ミドリお姉様が無惨な形で亡くなってからナミネは病気になってしまったんだ。でも、君のことはいずれ理解すると思う」
ミドリ。私のことを見た目も性格も不細工な親の七光り野郎と言った時に見せてきた写真の人か。あれが、レイプされた人の死に様とは私もあの時はじめて知った。
ナミネとは反りが合わない。けれど、知り合って間もないのに、ナルホには軽蔑されたくない。
「ナルホ……私を1人にしないで……」
この時の私はカンザシが頼りなく、それでもカンザシが好きで、ナルホへの気持ちに全く気づけずにいた。
ボーッとしていたら、躓いて、私は勢いよくナルホの上に乗ってしまった。
「痛い!」
お湯を見たら血が混じっている。カンザシだけのために残していたはずだった。だけど……。
「とりあえず下りてくれるかな」
「あ、うん」
私はナルホから下りた。
ナルホの部屋では主治医の手当てを受けた。私は疲れて布団に寝転んだ。その時、第2母屋に行くよう声がかかった。
私とナルホは第2母屋へ向かった。
第2母屋の第1居間では、お母さんがいた。
「お母さん!」
その瞬間、私は引っぱたかれた。
え、一度も引っぱたかれたことなんてなかったのに……。
聞くところによると、私が完全に不利になる録音と映像をお母さんは見せられたらしく、まさかの動物園での映像までセルファは所有していた。あの防犯カメラの映像は消したはずなのに。どうして持っているのだろう。
「お子ちゃまミネス、あんた自分のしてること分かってんのか!」
「ごめん!もうカンザシとは関わらない!」
「いいえ、許しません!自分がセナ王女にイジワルされそうになった時は、騒ぎ立てたくせに、それなのにミネスさんはヨルクさんを穢そうとするのですか!皇帝陛下にかけあいます!」
どうしよう。これでまた私の信用が失われていく。
「本当に申し訳ありません。どうか、皇帝陛下に言うことだけは許してください」
お母さんはナミネに土下座した。いつも優しくて思いやりのあるお母さん……。上手(うわて)だからって何をしても許されるのだろうか。お母さんのこんな姿見たくない。
「なあ、あんた自分の娘なら何しても許されると思ってんのかよ!あんたが二度と料理出来ないよう腕の骨へし折ってやる!あんたの娘がしたことはそういうことなんだよ!」
セルファはお母さんの腕を掴んだ。
「きゃあああああああ!!!」
「お母さん!!」
セルファはお母さんの腕を離した。
「次は腕折る」
その瞬間、お母さんはまた私を引っぱたいた。
「あなたのせいで料理出来なくなるところだったじゃない!一生恨んでやる!」
え……怒ったことなんかなかったお母さんが別人になっている。
「ミネスさん、私とヨルクさんのことはそっとしといてください!!お願いだからそっとしといてください!!」
カンザシを庇っただけだった。それが、酷い暴行を受け、脅迫され、親まで呼ばれるとは思っていなかった。私は一発ナミネを叩いただけなのに、ナミネは親の前では被害者気取り。でも、ここで、私がナミネを攻撃したら、お母さんがどうなるか分からない。私は泣きながら堪えた。
「本当に申し訳ありません。どうか一度だけ許してください。ミネスが犯罪を犯していただなんて全く知りませんでした」
その時、誰かが来た。
「それで?あなたの馬鹿娘が私の息子の人生壊そうと計画してたのかしら?」
「本当に申し訳ありません。娘にはちゃんと言い聞かせます」
お母さん、謝ってばかり。
「ハッキリ言います!ミネスさん、ナミネから何かしましたか?全てあなたがナミネをイジメた結果ですよね?反省してもっと苦しんでください!」
ナミネからは……何もしてない……。私はラルクの正論に押し潰された。
「ナミネ、ミネスは十分に反省してる。だから許して欲しい」
「まるで彼氏気取りですね。もし何かあったらナルホお兄様が責任取ってくれるんですか?」
「うん、僕が責任取るよ」
ナルホ……。
「分かりました。一度だけ信じます」
やっと……終わった……。
「一件落着ってことで、ミハネ、今夜は飲むわよ!」
「飲もう飲もう!」
「私、おつまみ作ります」
「よろしくー!」
何時間にも渡るナミネの呪縛から解放された。
再びナルホの部屋に戻ると、ナノハナ食堂のご飯が机に置かれていた。朝からナミネに色々言われて何も食べていなかった私はご飯を食べた。ナルホに近付くと植物の香りがする。
そういえば、ナルホと交際するならナミネの許しも必要なんだ。どうしてこんなこと考えているのだろう。
その時、扉にノックが鳴った。
「カナエ」
「ナルホ、庭園を見せてください」
「うん、いいよ」
ナルホ、植物育ててるんだ。
「私もナルホの庭園見たい!」
「うん、いいよ。寒いから上着着て」
「分かった」
私は食べかけの食事を置いて、ナルホに着いて行った。
ナルホの庭園はとても広い。見たこともない植物も沢山育てている。この空間はまるで幻想的な世界のようだ。
「ナルホ、植物も増えましたね」
「うん、紀元前村にいた時に色々学んだから、帰る時に色々買ってきたんだ」
「カナエもキクリ家で薬草育てています」
「カナエは全て自分で採取してるんだよね」
何この2人、距離が近い。カナエってナルホのこと好きなのだろうか。
「そういえばカナエってアルフォンスからピル飲まされてるんだっけ?本当に愛してるならピルなんか飲ますかなあ?妊娠されたら困る女なんだよ、カナエって」
「そのように人を攻撃して憂さ晴らしすることでしか自分を保てないのですね。カナエはミネスを可哀想に感じます」
本当に愛しているならピルなんか飲ませたりしない。カナエはアルフォンスにとって遊びなのに、この余裕はどこから出てくるのだろう。
この時の私は、カナエがアルフォンスに見切りをつけようとしていることを全く知らなかった。
「じゃあ、アルフォンスにどうしてカナエにピル飲ませるのか聞いちゃおうかな」
「それでミネスの気が済むならどうぞご自由にしてください」
この女ムカつく。いかにも自分がマウント取ってますって感じで、人を見下している。私はカナエを後ろから突き飛ばすとカナエを踏み付けた。その瞬間、カナエは扇子で私を吹き飛ばした。
「愛されてないくせに!」
「愛がそれほどまでに重要でしょうか?カナエは1人なら別にそれはそれで構いません」
この人、セナやセレナールと違って要領がいい。セナはカラルリに依存しすぎて中絶薬盛られ裏切られ、セレナールは無防備に妊娠をカップル日記に書いてアルフォンスにトケイ草を盛られた。
学校では、クラスのみんなに頼られていっぱい褒められて毎日が楽しいのに、ここでは人間関係の作り方が分からない。それに力の強い人ばかりがいる。いつも一軍女子で人の上に立っている私がここでは惨めな人になってしまう。
「ねえ、ラルク。セレナールさんとは続きそう?」
って、ナミネいたのか。
「ズームさんの命かかってるから別れるわけにはいかないしな」
お兄ちゃんて、ここの人らには大切にされているんだ。
「そうだね。でも、リリカさんは納得してくれてるの?」
「納得はしてない。僕が結婚する時には妾として遠くで暮らして欲しいって言ってたらしい」
「難しいね。でも、結婚てまだまだ先だし、それまでにラルクが本当に好きになれる人見つけたらいいよ」
ナミネとラルクは庭園の端っこに体育座りしていた。距離はかなり近いというか、くっついている。
「もう恋愛はしない」
「そっか。ラルクの未来だもんね。どんなラルクでも応援してるよ」
「ナミネ、ミネスとは付き合いしないほうがいいです。さっきいきなりカナエに侮辱してきました」
「えー、ミネスさん最低!」
その瞬間、私の首に何かが巻き付いた。息が出来ない。その時、ナルホが助けてくれた。
「ナミネ、やめようか。ミネスは十分に反省してる。どうしてこんなことするのかな?」
私はナルホの後ろに隠れた。
「ミネスさんがカナエさんのこと侮辱したそうです」
「ミネス、本当かな?」
「侮辱じゃなくて意見しただけ!」
「ラルク、人のことなんてほっときゃいいのにね」
1人より2人の言葉のほうが効力は強い。特に人間関係を上手く作れない人にとっては。ナミネはラルクといると1人の時より断然に別人だ。
「まあ、人のこと干渉するほど暇人なんだろ」
ここでまた言葉したら私が悪者にされてしまう。どうして学校では一軍女子の私が、ここではいちいち人間関係に怯えなければならないのだろう。
「ごめん!悪気はなかった!カナエ、許して欲しい!」
「カナエは別に気にしていません。ナルホ、この植物ください」
「うん、いいよ。ここにあるの、適当に持って行って」
「ありがとうございます」
その瞬間、私はカナエを引っぱたいていた。そして、私はそのままカナエを植物の中に突っ込ませ、植物を台無しにしてしまった。
「カナエさん、大丈夫ですか?」
ナミネはカナエを植物の中から引っ張り出した。次の瞬間、ナミネは私にお手玉を投げた。お手玉は複数になり、猛スピードで私の周りを回転した。私がお手玉の外に出ようとするとお手玉は私を弾いた。私の身体は物凄い痛みが走った。
「ミネスは人にいやがらせしか出来ないのですね。今幸せですか?」
「お願い、助けて!」
「ミネス、どうしてカナエを叩いたのかな?」
どうしよう。あの時、カナエとナルホが親しげにしていたから思わず苛立ってしまった。
「わざとじゃない!許して欲しい!」
「ラルク、どう見てもわざとだったよね。この映像がそれを物語っているよね」
ここの人たち何?お兄ちゃんはどうしてここの人たちと付き合いしているの?
「もう確信犯だな。ここにある植物もダメになってしまったし、老害だな。とりあえず、落ち武者さんとズームさん呼べ!」
「分かった!」
ナミネはセルファとお兄ちゃんを呼び、2人はすぐに来た。そして、ナミネはお兄ちゃんに映像を見せた。
「ミネス!なんてことしてくれたんだ!」
「お兄ちゃん、わざとじゃない!信じて!」
この時の私はカンザシのことを好きながら、恋というものを何も分かっていなかった。それは未来に気付かされることになる。セルファは私にフェアリーングをかけた。
「お子ちゃまミネス、あんたなんで男尽くしカナエ叩いた」
「ナルホとカナエが親しそうにしてたから思わず叩いてしまった。悪気はなかった!」
「あんたカンザシと平和ボケなナルホどっちが好きなんだよ!」
「私はカンザシが好き!」
どうしよう。自分でも訳の分からないことを言ってしまっている。セルファは私のスカートをめくった。
「あんた、下着血がついてるけどどうしたんだよ、これ」
「お風呂に入ってる時、誤ってナルホの入った」
「へえ、あんた平和ボケなナルホに処女捧げたのかよ」
「うん。捧げた!ナルホに捧げた!」
フェアリーングを解こうとしても、足掻くほどに絡まってしまう。一度かけられたら解けないんだ。
「平和ボケなナルホ、あんた事故とはいえ、お子ちゃまミネスの処女奪ってどうすんだよ?」
「ミネスが僕に責任を求めるなら責任は取るつもりだよ」
気が付いたら、ナミネのお手玉もなくなっていて、セルファのフェアリーングも解かれていた。私はその場に泣き崩れた。ナルホは私を抱きかかえ部屋に連れて行き、私を慰めた後、私を布団に寝かせた。
この先、カンザシよりナルホを好きになることがあるだろうか。そうなって欲しい。けれど、私はカンザシのことを諦めきれない。
新たな春の訪れに私はあえて、それを凍らせてしまっていた。
……
あとがき。
ミネス視点でした。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
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純愛偏差値 未来編 一人称版 70話
《ヨルク》
朝の8時頃、ナミネは病院のベッドの上で目を覚ました。けれど、昨日の夜、何があったのか私は何も覚えていなかった。
「あの、何があったのでしょうか」
ナミネはベッドから起き上がった。
「セリルが全部片付けたから、あんたは何も心配しないで、いつも通りに過ごしてろ!」
セリルさんが出るほどの事態があったのだろうか。だとしたら、知らないままは、それはそれで問題な気がする。
「落ち武者さん教えてください!」
「お子ちゃまミネスがカンザシがイジワルしたのはあんたのせいだとあんた叩いたんだよ。するとあんたはお子ちゃまミネスに殴り返した。皇帝陛下にかけあうと言ってな。お子ちゃまミネスは何度もあんたに謝ったけど、許さず、お子ちゃまミネスのせいにして平凡アルフォンスの切断したんだよ。その後、事態はおおごとになって、セリルが数式で映画撮影終えたところまで、みんなの記憶消したんだ。無論、あんたが悪いとは言わない。お子ちゃまミネスにも問題あったからな」
そんなことがあったのか。ナミネは純粋で人一倍優しくて困っている人を放っておけない。そのせいで、いつも自分が犠牲になって苦しんでいた。人を助けるほどに犠牲になった心は定期的に爆発し、今回のような事態を招いてしまう。
「そうでしたか……全て私が招いたことだったのですね」
ナミネ、それは違う!そう言おうとした時、ミネスさんとナルホさんが入ってきた。
「詳細はナヤセスから聞いた。二度とカンザシのことでナミネを攻撃しない。だから一度だけチャンスが欲しい」
ミネスさんは、昨日何回もこうやってナミネに訴えかけていたのだろうか。
「分かりました。ミネスさんとはせっかく知り合った仲ですし、私も極力ミネスさんの気持ちを汲み取る努力をします。ですが、カンザシさんのイジワルが私のせいなら動物園でカンザシさんがメスライオンにヨルクさんを襲わせたのはミネスさんのせいですよね?」
やはりナミネは簡単には許さない。それも無理もないかもしれない。ずっと私とナミネの関係を壊そうとしてきて、正月いきなり現れたかと思うとカンザシさんのイジワルを私に擦り付けようとしていただけに、ナミネは相当怒っていると思う。
「うん、そうだね。カンザシが2人に危害加えたら私が責任を取る。今後は二度と2人の関係をカンザシに引き裂かせない。約束する」
「信じられると思います?正月に犯人隠避しておいて、あのままヨルクさんが逮捕されていたらどう責任取ってくれたんですか!ミネスさんてお嬢様育ちだからワガママですよね!自分とカンザシさんさえ良ければ私とヨルクさんは不幸になってもいい。それなのにセナ王女からちょっと攻撃されただけで大声で泣いて、自分が不利な時だけ被害者気取り!そういう人間1番ムカつくんです!1週間以内に私の機嫌を取れないなら皇帝陛下にかけあいます!いいですか!皇帝陛下はお母様を世界で1番愛しています!だから私の意見が通ります!」
ダメだ。ミドリさんが戻ってきた安心感からなのか、今度は私との関係を極度に気にしはじめている。ミネスさんは、こちらの状況を殆ど知らない。けれど、ここでナミネに意見したらまたナミネがヒステリーを起こしてしまう。
「そうだね、私は狡い女だよ。カンザシに利用されているの分かっていて、それでもカンザシが好きでどうしようもなくて、周りの人間のこと見えてなかった。どうしたら機嫌直してくれる?ナミネが私に怒ってはじめて私は身勝手だと気付かされた。そんな生き方はもうしない。ちゃんと周りのことも考える」
「セナ王女とミナクさんの関係壊して、ヨルクさんをイジワル犯に仕立てあげようとして、カンザシさんが何かしたら私に怒鳴って殴って、今更許されるとでも思ってるんですか?」
「ナミネ、やめようか。ミネスは……」
「ナルホお兄様は黙っていてください!」
ナルホさんはナミネの怒鳴り声に黙り込んだ。ミネスさんはナミネに責められ続け、悪戦苦闘している。
「今からでもナミネの許しを請いたい」
「ミネス、妹は苦労してきたんだ。そんなナミネをイジメて僕もミネスが許せないし、ミネスのことは僕が訴える」
「なあ、お子ちゃまミネスあんた強気なナミネに嫉妬してんだろ!嫉妬で殴るとか最低だな!今度は僕が平凡アルフォンスの切断してやろうか?」
ナヤセスさんと落ち武者さんがナミネの味方をした。少し可哀想に思えてきた。けれど、今私が出来ることなんてあるのだろうか。
「ナヤセスが私を訴えたいならそうしてもらって構わない。それでも、私はナミネが許してくれるまで何度も許しを乞う。確かにカンザシの本命になれたナミネのことは羨ましい。でも、少し平手打ちしただけでアルフォンスが切断されるとは思ってなかった。そのセリルって人にもちゃんと説明するし、ナミネが望むことは何でもする」
これだけ謝っているのにナミネは少しも譲歩しない。いったい何をそんなに苛立っているのだろう。その時、ラルクが2つの扇子を重ね合わせパチンと鳴らせた。
「ナミネ、許してやれ。ナヤセスさんがIQ200ちょいとして、ミネスさんはとんでもないIQの持ち主だ。これまでナミネに許しを乞うフリをしながら頭の悪いナミネのこと心では笑ってたんだよ」
「違う!私は本当にナミネに謝罪してた!」
「そっか、私馬鹿だもんね。これまで私が怒ってるの見てミネスさん、私のこと馬鹿にしてたんだ。少しも気付かなかったよ」
ラルクのいらぬ言葉でナミネは泣きはじめた。私はナミネを抱き締めた。
「ナミネ、泣かないで」
「ヨルクさん、ここまで見下されて悔しいです」
ナミネは私の腕の中でワンワンと泣いた。
人は無意識に自分の人間関係にカースト制度を作り上げている。富と名誉がある人は上に行く。それよりも上回るのは頭脳明晰な人だ。ナミネは頭脳ではミネスさんに勝つことは出来ない。さっきまでの話し合いもミネスさんが有利だったからミネスさんは堂々としていられたのだろう。
「ナミネ、本当に違う!私、強気なナミネを見下してなんかいない!」
「お子ちゃまミネス、あんた人馬鹿にすんのもいい加減にしろよ!」
落ち武者さんはミネスさんにフェアリーングをかけた。
「お子ちゃまミネス、あんた強気なナミネに言葉で勝てると思ってただろ?強気なナミネはあんたより下だと思ってんだろ?」
「正直、ナミネは頭悪そうだし、私の上には立てないと思ってる。ナミネがどうこう足掻いても最後に勝つのは私だと思ってる。悪いけど馬鹿との話し合いで時間の無駄になって迷惑」
これがミネスさんの本心なのか。あれだけナミネに謝っておいて、全て演技で、心の中ではナミネのこと馬鹿にしていたのか。何て恐ろしい人だ。
「へえ、それがあんたの本心か。散々強気なナミネに謝ってたのは全て嘘だったってわけ?次にカンザシが問題起こしたら顔だけヨルクに罪でも着せるつもり?」
「そうだね。本気で謝罪はしてない。馬鹿相手にそんなことしない。もちろんカンザシが助かるならヨルクに身代わりになってもらうし、私は私とカンザシだけ無事ならそれでいい!ナミネとヨルクの幸せなんか知らない!」
「あんた、随分悪だな。具体的に聞くけどカンザシがイジワルしたら、その罪、顔だけヨルクに着せるってことか?今後、強気なナミネに何するつもりだ?」
「そうだね。カンザシがイジワルしたらその罪はヨルクに被せる。カンザシのこと取ったナミネには適当に人雇ってイヤガラセさせるつもり。こんな馬鹿に出しゃばられたら溜まったもんじゃないもん」
落ち武者さんはフェアリーングを解いた。その瞬間、みんながミネスさんを軽蔑したような目で見た。
「待って!今のは本心じゃない!」
「もう遅いんだよ、さっきのあんたの証言全部録音済みだ!バーカ!」
落ち武者さんはチップを伝書鳩に加えさせると窓から伝書鳩を飛ばした。やはり、宛先は皇室だろうか。
「ミネス、僕はナミネのことは小さい頃から可愛がってきた。僕が1番下だと思っていたからナミネが生まれた時は嬉しくて仕方なかったよ。ナミネは人一倍真っ直ぐで多くのこと1人で抱え込むからいつも心配してた。そんなナミネのことを侮辱した君とはもう関わらないよ」
「ごめん、ナルホ!でも、本当にさっきのは本心じゃなかった!ナルホにだけは誤解されたくない!ナミネには悪いことをしたと思ってる!信じて!」
ナルホさんはミネスさんを無視した。
さっきの落ち武者さんのかけたフェアリーングはミネスさんの本心なのだろうか。それともミネスさんが不利になるように別の部分の感情を引き出したのだろうか。どちらにしても、みんなの前であれだけのことを言ってしまえば家紋にも傷が付く。
その時、テレビからニュースが流れた。
『速報です。たった今、皇室に伝書鳩が送られてきました。録音を再生すると、ブランケット家の次女が自分の彼氏がイジワルしたら、その罪をクレナイ家の次男に着せると言っていたり、ナノハナ家の5女をイヤガラセさせる計画も立てている模様です。これに対して皇帝陛下は、ブランケット家次女の赤花咲処分を確定しました』
やはり落ち武者さんは皇室に伝書鳩を送ったのか。皇帝陛下のくだした決断は絶対だ。ミネスさんは守りたいものを守ろうとして、逆に全てを失った。
「待って!誰か助けて!」
ミネスさんが叫ぶものの誰もミネスさんに手を差し伸べようとはしなかった。例え、フェアリーングをかけられなくてもミネスさんの本心が悪い方向で定まっていたのであれば、いずれ同じ結果になっていただろう。ナミネはトドメにミネスさんに何かを飲ませた。
「ねえ、ラルク、紀元前村行くの楽しみだね」
「そうだな。でも、タルリヤさんの町だけ遠い昔と変わっていないなんて奇妙だな」
「あー、ミネスさんお漏らししてる!」
ナミネはミネスさんの写真を撮った。もうミネスさんに慈悲を与える者はこの中には誰もいない。
「いい歳して恥ずかしいな」
その時、ズームさんがミネスさんを引っぱたいた。
「お兄ちゃ……」
「ミネス!お前、ナミネさんを襲わせる気なのか!」
あれ、ズームさんの身体が透けている。
「お兄ちゃん、身体が……!カンザシに何言われたの!お兄ちゃん、しっかりして!誰か、お兄ちゃんを助けて!」
「顔だけヨルク、今すぐエロじじい呼び出せ!」
私は慌てて呼び出しカードを取り出しダンゴロさんを呼び出した。
「何?今、女神と遊んでたんだけど」
「ダンゴロさん、ズームさんの背中の勾玉のアザ、効力ごと消してもらえませんか?」
アザを残したまま回復させるより、根本的なものを取り払ってしまったほうがいいだろう。ズームさんとカンザシさんを引き離すことが出来たらカンザシさんの後ろ盾はなくなる。
「別にいいけど、君まだ未熟だから、ラルクとセレナールの復縁が条件ね」
みんなはラルクを見た。
「ズームさんが助かるならセレナール先輩と復縁します!」
「じゃ、消すよ」
落ち武者さんはズームさんのトレーナーをめくって確かめた。アザは消えている。
「頼みごとは聞いたから僕は戻るね」
ダンゴロさんは女神の湖に戻って行った。
「ズーム、あんたこれでもうカンザシには縛られない!これからはあんたの人生生きろ!」
その時、アルフォンス王子が目覚めたのか他のメンバーも入って来た。
「カンザシ、私、カンザシに利用されてると分かりながらもカンザシのこと好き。でも、家族のほうがもっと大事なの。今後はカンザシに片想いはするけど、カンザシの支援は一切しない。私、ここにいるメンバーと仲良くなる」
その瞬間、ナルホさんはコートをミネスさんに着せた。
「急にどうしたんだよ、ミネス。僕はミネスの助けがないとダメなんだ」
「カンザシ!僕ももう支援しない!今のマンション代も自分で払え!僕はこれからは自分の道を行く!もうお前に縛られない!」
あの勾玉のアザを消したことによってカンザシさんは巨大な後ろ盾を失った。同情は出来ないけど、これでよかったと思う。
「ズーム、何言ってんだよ。あんた高い家賃払えるわけないだろ!ズームが払え!後、ナミネさんとの婚姻、今すぐ手続きしろ!」
みんなは敢えてズームさんの背中の勾玉のアザが消えたことを言わない。
「リーダー、支払える安いアパートに引っ越しましょう。紅葉町のアパートは解約しましょう。でないと暮らしていけないです」
「馬鹿なこと言うな、ミツメ!あのマンションの契約を解除するつもりはない!ズーム、払わないとどうなるか分かるよな」
「勝手にしろ、カンザシ!」
アザ1つでここまで人間関係が大きく揺れるなんて。それだけ、カンザシさんはズームさんやミネスさんに感謝してこなかったのだろう。
「お漏らしミネスさん〜今後のカンザシさんの行動で、あなたの人生も決まりますよ〜!今、ブランケット家のご両親がナノハナ家に謝罪しに来ているそうです」
ナミネはミネスさんに画像を見せ付けていた。
「分かった。カンザシにナミネを傷付けさせない。信じて欲しい」
「私のこと馬鹿とか人雇って輪姦させるとか言ったお漏らしミネスさんには、一軍から降格してもらいましょうかね」
「待って!あれは本当に私の本心じゃない!信じてくれなくても構わない!私はナミネと友達になりたいと思ってる!だから、これからの行動で判断して欲しい!絶対に裏切らないから!」
一度表に出てしまった言葉を引っ込めることは出来ない。ナミネのことを罵ったミネスさんは本当に、今後ナミネの機嫌を損ねないか心配だ。
「あの、ミネスさん、私は彼女を侮辱されて気分を害してます。いくら後からあなたの本心じゃないと言われても落ち武者さんのフェアリーングは完璧ですし、ナミネのこと傷付けないで欲しいんです」
私も言葉に出さずにはいられなかった。
「今は信じてもらえないかもしれない。でも、私はナミネを襲わせようなんて思ったことない。カンザシの支援も今後はしないし、カンザシの犯罪も擦り付けるつもりはない。私は、お兄ちゃんが今いるグループの中に入りたい」
「お子ちゃまミネス、強気なナミネの機嫌損ねたら、あんたの父親の余命3年にするからね?」
「ミネス、今後ナミネをイジメることだけはやめてほしい」
「ミネス、僕も君の行動はどうかと思う。ナミネを貶めているようにしか見えない」
落ち武者さんに、ナヤセスさん、ラハルさんがミネスさんを警戒している。
「絶対にナミネの機嫌を損ねない」
ミネスさんは、後々からみんなに色々言われて涙が零れていた。
「泣き落としですか!皇帝陛下にかけあいますよ!」
「ごめん!もう泣かない!」
「おい、お子ちゃまミネス、あんた強気なナミネの機嫌損ねないって約束しただろ!」
落ち武者さんはミネスさんを突き飛ばした。
「ごめん!許して欲しい!」
「ミネス、みんながこれだけナミネを庇う理由分かるかな?君が犯人隠避をしたからだよ。許してと言われても泣かれても君のした行為は変わらないんだ。君のみを責めたくはないけれど、ヨルクをイジワル犯にしようとしたり、ヨルクを犯そうとしたり、そういうことをした以上は、ここにいる人の信頼を得るには相当な努力が必要だと思うんだよね。言ってしまえば君はセナ王女が君にしたことと同じことをしたんだよ」
ミネスさんは泣きながらナルホさんに抱き着いた。
「本当に悪いことをしたと思ってる!君の妹の幸せ壊そうとしたこと反省してる。二度と同じ過ちは繰り返さない!みんなの信頼を得る努力はちゃんとする!」
その時、ナミネがカンザシさんを殴り付けた。
「あ、すみません〜!ミネスさんに殴るよう頼まれました〜!ミネスさん〜泣いたらクラスの一軍から降格してもらいますよ〜!」
「そうですか」
「分かった!泣かない!」
ミネスさんは必死に涙を堪えていた。カンザシさんを庇うことがいかに人の心を壊すかミネスさんは分かっていなかったのだろう。ナミネは今度はカンザシさんの急所を蹴りつけた。
「すみません〜!ミネスさんに頼まれました〜!ミネスさん〜!ここでカンザシさんが私に攻撃したらミネスさんのせいですよ!それが犯人隠避をすることの責任というものなんです。あなたが馬鹿だから身をもって教えてあげてます!」
カンザシさんは無言でその場に蹲った。
「分かった、カンザシを庇ったことに対する責任は取る!カンザシ、ナミネを攻撃したり、ナミネの幸せ壊したら芸能界やめてもらう。カンザシを庇うことがみんなからここまでイジメられるとは思ってなかった」
「イジメたのはあなたでしょう!」
ナミネはミネスさんを押し倒し殴り続けた。
「ごめん!言葉間違えた!私が犯罪者庇ったからこうなった!殴らないで!痛い!」
「お子ちゃまミネス、あんた終わりだ!」
「待って!みんなが怒るのは私の責任!本当にごめん!」
ナミネは、ミネスさんに妖精クリーンをかけた。
「きゃあああああああああああ!!!!」
ナルホさんはコールボタンを押し、駆け付けた医師が処置をして、幸いミネスさんに大きな傷は残らなかった。ナミネを怒らせれば手の付けようがない。ミネスさんには悪いけど耐えきれなくなったらグループを抜けてもらうしかないと思う。
ナルホさんは無言でミネスさんにコートを着せた。
「ミネスさん、私に口答えしないでください!言ったでしょう!私からは何もしないと!私はただ、ヨルクさんとのことはそっとしといて欲しいんです!でも、ミネスさんはカンザシさんのイジワルをヨルクさんに擦り付けようとしました!だから、今後カンザシさんが何かすれば、今回みたいにあなたには十分な罰を受けてもらいます」
「ごめんなさい……もう犯罪者は庇わない……だから妖精クリーンをかけないで」
最後にナミネはミネスさんの横腹を思いっきり蹴った。ミネスさんはボロボロになっていた。
「耐えきれないならどうぞご自由にグループを抜けてください!とにかくヨルクさんとのことはそったしといてください!!」
「グループは抜けない……ナミネ……ごめんなさい」
「じゃ、そろそろナノハナ家戻る」
カンザシさんも着いてこようとしたが、落ち武者さんが拘束してカンザシさんを動けなくした。ラハルさんはナミネが心配だからとみんなとナノハナ家に向かうことになった。
あれこれ騒いでいる間に15時を過ぎていた。
ヘリコプターの中ではカンザシさんから、ミネスさん、ナミネ、ズームさんに大量のメールが来ていた。しかし、3人とも返すことはなかった。
ナノハナ家に着くと、みんなはクタクタな状態で第4居間に入った。服が汚れたミネスさんはナルホさんにお風呂に案内された。
ナミネの機嫌は少しは直っただろうか。
「ねえ、ラルク。カンザシさん、マンションの家賃どうするんだろうね」
「あのマンション、ひと月200万円くらいじゃなかったか?ニンジャ妖精さんて1人ひと月10万円も稼いでないんだろ。だったら払いきれないわな」
ナヤセスさんも似たようなマンションに住んでいたっけ。
「私ね、やっぱりミネスさんのこと許せない。カンザシさんのイジワルをヨルクさんのせいにしようとしたり、ヨルクさんをイジワルさせようとしたり。仲間とは思えないし、私防犯カメラの映像で見ちゃったんだよね。ライオンのオリの鍵、ミネスさんがカンザシさんに渡すのを」
私は大きな勘違いをしていた。カンザシさんが独断で鍵を開けたのではなく、ミネスさんがカンザシさんに開けるよう指示したのか。恐ろしい女だ。
「強気なナミネ、その映像今すぐ見せろ!」
「でも、ロックがかかっていて見れないんです」
「いいから貸せ!」
ナミネは落ち武者さんに携帯を渡した。落ち武者さんはすぐにロックを解除した。
映像はライオンがいるオリにミネスさんがカンザシさんを連れて行くところからはじまっていた。
『ミネス、どうしてもナミネさんが欲しい』
『カンザシ、メスライオンにヨルク犯させればいいよ。そうしたらナミネとヨルクの仲は完全に壊れる。運命なんてないんだよ。ナミネが欲しいならヨルクと引き離せばいいんだよ』
ミネスさんはライオンのオリの鍵をカンザシさんに渡した。カンザシさんはライオンのオリの鍵を開けた。
『これ、痺れ薬だから、ナミネに飲ませて、後はカンザシの好きにすればいいよ。カンザシには常に私がついてる』
ミネスさんはカンザシさんを抱き締めた。
『ありがとう、ミネス』
『カンザシ、幸せになって』
映像はそこで途切れていた。
「ブランケット家の両親まだここにいるなら、第2母屋に行って今すぐこの映像見せに行くぞ!」
落ち武者さんとナミネ、ラルクは第2母屋に走った。私も着いて行った。
私は世間知らずだったと思う。こちらから何もしなくても目を付けられてしまえばストーカーのように攻撃を受けてしまうこともありうる。
この世の人間の多くは穢れた心しか持っていない。これまでの甘い考えならナミネとの幸せが壊されてしまう。
この時から私は穢れた人の人生の土俵に無意識に上がるようになっていった。
……
あとがき。
ナミネがミネスに反撃する回でした。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
《ヨルク》
朝の8時頃、ナミネは病院のベッドの上で目を覚ました。けれど、昨日の夜、何があったのか私は何も覚えていなかった。
「あの、何があったのでしょうか」
ナミネはベッドから起き上がった。
「セリルが全部片付けたから、あんたは何も心配しないで、いつも通りに過ごしてろ!」
セリルさんが出るほどの事態があったのだろうか。だとしたら、知らないままは、それはそれで問題な気がする。
「落ち武者さん教えてください!」
「お子ちゃまミネスがカンザシがイジワルしたのはあんたのせいだとあんた叩いたんだよ。するとあんたはお子ちゃまミネスに殴り返した。皇帝陛下にかけあうと言ってな。お子ちゃまミネスは何度もあんたに謝ったけど、許さず、お子ちゃまミネスのせいにして平凡アルフォンスの切断したんだよ。その後、事態はおおごとになって、セリルが数式で映画撮影終えたところまで、みんなの記憶消したんだ。無論、あんたが悪いとは言わない。お子ちゃまミネスにも問題あったからな」
そんなことがあったのか。ナミネは純粋で人一倍優しくて困っている人を放っておけない。そのせいで、いつも自分が犠牲になって苦しんでいた。人を助けるほどに犠牲になった心は定期的に爆発し、今回のような事態を招いてしまう。
「そうでしたか……全て私が招いたことだったのですね」
ナミネ、それは違う!そう言おうとした時、ミネスさんとナルホさんが入ってきた。
「詳細はナヤセスから聞いた。二度とカンザシのことでナミネを攻撃しない。だから一度だけチャンスが欲しい」
ミネスさんは、昨日何回もこうやってナミネに訴えかけていたのだろうか。
「分かりました。ミネスさんとはせっかく知り合った仲ですし、私も極力ミネスさんの気持ちを汲み取る努力をします。ですが、カンザシさんのイジワルが私のせいなら動物園でカンザシさんがメスライオンにヨルクさんを襲わせたのはミネスさんのせいですよね?」
やはりナミネは簡単には許さない。それも無理もないかもしれない。ずっと私とナミネの関係を壊そうとしてきて、正月いきなり現れたかと思うとカンザシさんのイジワルを私に擦り付けようとしていただけに、ナミネは相当怒っていると思う。
「うん、そうだね。カンザシが2人に危害加えたら私が責任を取る。今後は二度と2人の関係をカンザシに引き裂かせない。約束する」
「信じられると思います?正月に犯人隠避しておいて、あのままヨルクさんが逮捕されていたらどう責任取ってくれたんですか!ミネスさんてお嬢様育ちだからワガママですよね!自分とカンザシさんさえ良ければ私とヨルクさんは不幸になってもいい。それなのにセナ王女からちょっと攻撃されただけで大声で泣いて、自分が不利な時だけ被害者気取り!そういう人間1番ムカつくんです!1週間以内に私の機嫌を取れないなら皇帝陛下にかけあいます!いいですか!皇帝陛下はお母様を世界で1番愛しています!だから私の意見が通ります!」
ダメだ。ミドリさんが戻ってきた安心感からなのか、今度は私との関係を極度に気にしはじめている。ミネスさんは、こちらの状況を殆ど知らない。けれど、ここでナミネに意見したらまたナミネがヒステリーを起こしてしまう。
「そうだね、私は狡い女だよ。カンザシに利用されているの分かっていて、それでもカンザシが好きでどうしようもなくて、周りの人間のこと見えてなかった。どうしたら機嫌直してくれる?ナミネが私に怒ってはじめて私は身勝手だと気付かされた。そんな生き方はもうしない。ちゃんと周りのことも考える」
「セナ王女とミナクさんの関係壊して、ヨルクさんをイジワル犯に仕立てあげようとして、カンザシさんが何かしたら私に怒鳴って殴って、今更許されるとでも思ってるんですか?」
「ナミネ、やめようか。ミネスは……」
「ナルホお兄様は黙っていてください!」
ナルホさんはナミネの怒鳴り声に黙り込んだ。ミネスさんはナミネに責められ続け、悪戦苦闘している。
「今からでもナミネの許しを請いたい」
「ミネス、妹は苦労してきたんだ。そんなナミネをイジメて僕もミネスが許せないし、ミネスのことは僕が訴える」
「なあ、お子ちゃまミネスあんた強気なナミネに嫉妬してんだろ!嫉妬で殴るとか最低だな!今度は僕が平凡アルフォンスの切断してやろうか?」
ナヤセスさんと落ち武者さんがナミネの味方をした。少し可哀想に思えてきた。けれど、今私が出来ることなんてあるのだろうか。
「ナヤセスが私を訴えたいならそうしてもらって構わない。それでも、私はナミネが許してくれるまで何度も許しを乞う。確かにカンザシの本命になれたナミネのことは羨ましい。でも、少し平手打ちしただけでアルフォンスが切断されるとは思ってなかった。そのセリルって人にもちゃんと説明するし、ナミネが望むことは何でもする」
これだけ謝っているのにナミネは少しも譲歩しない。いったい何をそんなに苛立っているのだろう。その時、ラルクが2つの扇子を重ね合わせパチンと鳴らせた。
「ナミネ、許してやれ。ナヤセスさんがIQ200ちょいとして、ミネスさんはとんでもないIQの持ち主だ。これまでナミネに許しを乞うフリをしながら頭の悪いナミネのこと心では笑ってたんだよ」
「違う!私は本当にナミネに謝罪してた!」
「そっか、私馬鹿だもんね。これまで私が怒ってるの見てミネスさん、私のこと馬鹿にしてたんだ。少しも気付かなかったよ」
ラルクのいらぬ言葉でナミネは泣きはじめた。私はナミネを抱き締めた。
「ナミネ、泣かないで」
「ヨルクさん、ここまで見下されて悔しいです」
ナミネは私の腕の中でワンワンと泣いた。
人は無意識に自分の人間関係にカースト制度を作り上げている。富と名誉がある人は上に行く。それよりも上回るのは頭脳明晰な人だ。ナミネは頭脳ではミネスさんに勝つことは出来ない。さっきまでの話し合いもミネスさんが有利だったからミネスさんは堂々としていられたのだろう。
「ナミネ、本当に違う!私、強気なナミネを見下してなんかいない!」
「お子ちゃまミネス、あんた人馬鹿にすんのもいい加減にしろよ!」
落ち武者さんはミネスさんにフェアリーングをかけた。
「お子ちゃまミネス、あんた強気なナミネに言葉で勝てると思ってただろ?強気なナミネはあんたより下だと思ってんだろ?」
「正直、ナミネは頭悪そうだし、私の上には立てないと思ってる。ナミネがどうこう足掻いても最後に勝つのは私だと思ってる。悪いけど馬鹿との話し合いで時間の無駄になって迷惑」
これがミネスさんの本心なのか。あれだけナミネに謝っておいて、全て演技で、心の中ではナミネのこと馬鹿にしていたのか。何て恐ろしい人だ。
「へえ、それがあんたの本心か。散々強気なナミネに謝ってたのは全て嘘だったってわけ?次にカンザシが問題起こしたら顔だけヨルクに罪でも着せるつもり?」
「そうだね。本気で謝罪はしてない。馬鹿相手にそんなことしない。もちろんカンザシが助かるならヨルクに身代わりになってもらうし、私は私とカンザシだけ無事ならそれでいい!ナミネとヨルクの幸せなんか知らない!」
「あんた、随分悪だな。具体的に聞くけどカンザシがイジワルしたら、その罪、顔だけヨルクに着せるってことか?今後、強気なナミネに何するつもりだ?」
「そうだね。カンザシがイジワルしたらその罪はヨルクに被せる。カンザシのこと取ったナミネには適当に人雇ってイヤガラセさせるつもり。こんな馬鹿に出しゃばられたら溜まったもんじゃないもん」
落ち武者さんはフェアリーングを解いた。その瞬間、みんながミネスさんを軽蔑したような目で見た。
「待って!今のは本心じゃない!」
「もう遅いんだよ、さっきのあんたの証言全部録音済みだ!バーカ!」
落ち武者さんはチップを伝書鳩に加えさせると窓から伝書鳩を飛ばした。やはり、宛先は皇室だろうか。
「ミネス、僕はナミネのことは小さい頃から可愛がってきた。僕が1番下だと思っていたからナミネが生まれた時は嬉しくて仕方なかったよ。ナミネは人一倍真っ直ぐで多くのこと1人で抱え込むからいつも心配してた。そんなナミネのことを侮辱した君とはもう関わらないよ」
「ごめん、ナルホ!でも、本当にさっきのは本心じゃなかった!ナルホにだけは誤解されたくない!ナミネには悪いことをしたと思ってる!信じて!」
ナルホさんはミネスさんを無視した。
さっきの落ち武者さんのかけたフェアリーングはミネスさんの本心なのだろうか。それともミネスさんが不利になるように別の部分の感情を引き出したのだろうか。どちらにしても、みんなの前であれだけのことを言ってしまえば家紋にも傷が付く。
その時、テレビからニュースが流れた。
『速報です。たった今、皇室に伝書鳩が送られてきました。録音を再生すると、ブランケット家の次女が自分の彼氏がイジワルしたら、その罪をクレナイ家の次男に着せると言っていたり、ナノハナ家の5女をイヤガラセさせる計画も立てている模様です。これに対して皇帝陛下は、ブランケット家次女の赤花咲処分を確定しました』
やはり落ち武者さんは皇室に伝書鳩を送ったのか。皇帝陛下のくだした決断は絶対だ。ミネスさんは守りたいものを守ろうとして、逆に全てを失った。
「待って!誰か助けて!」
ミネスさんが叫ぶものの誰もミネスさんに手を差し伸べようとはしなかった。例え、フェアリーングをかけられなくてもミネスさんの本心が悪い方向で定まっていたのであれば、いずれ同じ結果になっていただろう。ナミネはトドメにミネスさんに何かを飲ませた。
「ねえ、ラルク、紀元前村行くの楽しみだね」
「そうだな。でも、タルリヤさんの町だけ遠い昔と変わっていないなんて奇妙だな」
「あー、ミネスさんお漏らししてる!」
ナミネはミネスさんの写真を撮った。もうミネスさんに慈悲を与える者はこの中には誰もいない。
「いい歳して恥ずかしいな」
その時、ズームさんがミネスさんを引っぱたいた。
「お兄ちゃ……」
「ミネス!お前、ナミネさんを襲わせる気なのか!」
あれ、ズームさんの身体が透けている。
「お兄ちゃん、身体が……!カンザシに何言われたの!お兄ちゃん、しっかりして!誰か、お兄ちゃんを助けて!」
「顔だけヨルク、今すぐエロじじい呼び出せ!」
私は慌てて呼び出しカードを取り出しダンゴロさんを呼び出した。
「何?今、女神と遊んでたんだけど」
「ダンゴロさん、ズームさんの背中の勾玉のアザ、効力ごと消してもらえませんか?」
アザを残したまま回復させるより、根本的なものを取り払ってしまったほうがいいだろう。ズームさんとカンザシさんを引き離すことが出来たらカンザシさんの後ろ盾はなくなる。
「別にいいけど、君まだ未熟だから、ラルクとセレナールの復縁が条件ね」
みんなはラルクを見た。
「ズームさんが助かるならセレナール先輩と復縁します!」
「じゃ、消すよ」
落ち武者さんはズームさんのトレーナーをめくって確かめた。アザは消えている。
「頼みごとは聞いたから僕は戻るね」
ダンゴロさんは女神の湖に戻って行った。
「ズーム、あんたこれでもうカンザシには縛られない!これからはあんたの人生生きろ!」
その時、アルフォンス王子が目覚めたのか他のメンバーも入って来た。
「カンザシ、私、カンザシに利用されてると分かりながらもカンザシのこと好き。でも、家族のほうがもっと大事なの。今後はカンザシに片想いはするけど、カンザシの支援は一切しない。私、ここにいるメンバーと仲良くなる」
その瞬間、ナルホさんはコートをミネスさんに着せた。
「急にどうしたんだよ、ミネス。僕はミネスの助けがないとダメなんだ」
「カンザシ!僕ももう支援しない!今のマンション代も自分で払え!僕はこれからは自分の道を行く!もうお前に縛られない!」
あの勾玉のアザを消したことによってカンザシさんは巨大な後ろ盾を失った。同情は出来ないけど、これでよかったと思う。
「ズーム、何言ってんだよ。あんた高い家賃払えるわけないだろ!ズームが払え!後、ナミネさんとの婚姻、今すぐ手続きしろ!」
みんなは敢えてズームさんの背中の勾玉のアザが消えたことを言わない。
「リーダー、支払える安いアパートに引っ越しましょう。紅葉町のアパートは解約しましょう。でないと暮らしていけないです」
「馬鹿なこと言うな、ミツメ!あのマンションの契約を解除するつもりはない!ズーム、払わないとどうなるか分かるよな」
「勝手にしろ、カンザシ!」
アザ1つでここまで人間関係が大きく揺れるなんて。それだけ、カンザシさんはズームさんやミネスさんに感謝してこなかったのだろう。
「お漏らしミネスさん〜今後のカンザシさんの行動で、あなたの人生も決まりますよ〜!今、ブランケット家のご両親がナノハナ家に謝罪しに来ているそうです」
ナミネはミネスさんに画像を見せ付けていた。
「分かった。カンザシにナミネを傷付けさせない。信じて欲しい」
「私のこと馬鹿とか人雇って輪姦させるとか言ったお漏らしミネスさんには、一軍から降格してもらいましょうかね」
「待って!あれは本当に私の本心じゃない!信じてくれなくても構わない!私はナミネと友達になりたいと思ってる!だから、これからの行動で判断して欲しい!絶対に裏切らないから!」
一度表に出てしまった言葉を引っ込めることは出来ない。ナミネのことを罵ったミネスさんは本当に、今後ナミネの機嫌を損ねないか心配だ。
「あの、ミネスさん、私は彼女を侮辱されて気分を害してます。いくら後からあなたの本心じゃないと言われても落ち武者さんのフェアリーングは完璧ですし、ナミネのこと傷付けないで欲しいんです」
私も言葉に出さずにはいられなかった。
「今は信じてもらえないかもしれない。でも、私はナミネを襲わせようなんて思ったことない。カンザシの支援も今後はしないし、カンザシの犯罪も擦り付けるつもりはない。私は、お兄ちゃんが今いるグループの中に入りたい」
「お子ちゃまミネス、強気なナミネの機嫌損ねたら、あんたの父親の余命3年にするからね?」
「ミネス、今後ナミネをイジメることだけはやめてほしい」
「ミネス、僕も君の行動はどうかと思う。ナミネを貶めているようにしか見えない」
落ち武者さんに、ナヤセスさん、ラハルさんがミネスさんを警戒している。
「絶対にナミネの機嫌を損ねない」
ミネスさんは、後々からみんなに色々言われて涙が零れていた。
「泣き落としですか!皇帝陛下にかけあいますよ!」
「ごめん!もう泣かない!」
「おい、お子ちゃまミネス、あんた強気なナミネの機嫌損ねないって約束しただろ!」
落ち武者さんはミネスさんを突き飛ばした。
「ごめん!許して欲しい!」
「ミネス、みんながこれだけナミネを庇う理由分かるかな?君が犯人隠避をしたからだよ。許してと言われても泣かれても君のした行為は変わらないんだ。君のみを責めたくはないけれど、ヨルクをイジワル犯にしようとしたり、ヨルクを犯そうとしたり、そういうことをした以上は、ここにいる人の信頼を得るには相当な努力が必要だと思うんだよね。言ってしまえば君はセナ王女が君にしたことと同じことをしたんだよ」
ミネスさんは泣きながらナルホさんに抱き着いた。
「本当に悪いことをしたと思ってる!君の妹の幸せ壊そうとしたこと反省してる。二度と同じ過ちは繰り返さない!みんなの信頼を得る努力はちゃんとする!」
その時、ナミネがカンザシさんを殴り付けた。
「あ、すみません〜!ミネスさんに殴るよう頼まれました〜!ミネスさん〜泣いたらクラスの一軍から降格してもらいますよ〜!」
「そうですか」
「分かった!泣かない!」
ミネスさんは必死に涙を堪えていた。カンザシさんを庇うことがいかに人の心を壊すかミネスさんは分かっていなかったのだろう。ナミネは今度はカンザシさんの急所を蹴りつけた。
「すみません〜!ミネスさんに頼まれました〜!ミネスさん〜!ここでカンザシさんが私に攻撃したらミネスさんのせいですよ!それが犯人隠避をすることの責任というものなんです。あなたが馬鹿だから身をもって教えてあげてます!」
カンザシさんは無言でその場に蹲った。
「分かった、カンザシを庇ったことに対する責任は取る!カンザシ、ナミネを攻撃したり、ナミネの幸せ壊したら芸能界やめてもらう。カンザシを庇うことがみんなからここまでイジメられるとは思ってなかった」
「イジメたのはあなたでしょう!」
ナミネはミネスさんを押し倒し殴り続けた。
「ごめん!言葉間違えた!私が犯罪者庇ったからこうなった!殴らないで!痛い!」
「お子ちゃまミネス、あんた終わりだ!」
「待って!みんなが怒るのは私の責任!本当にごめん!」
ナミネは、ミネスさんに妖精クリーンをかけた。
「きゃあああああああああああ!!!!」
ナルホさんはコールボタンを押し、駆け付けた医師が処置をして、幸いミネスさんに大きな傷は残らなかった。ナミネを怒らせれば手の付けようがない。ミネスさんには悪いけど耐えきれなくなったらグループを抜けてもらうしかないと思う。
ナルホさんは無言でミネスさんにコートを着せた。
「ミネスさん、私に口答えしないでください!言ったでしょう!私からは何もしないと!私はただ、ヨルクさんとのことはそっとしといて欲しいんです!でも、ミネスさんはカンザシさんのイジワルをヨルクさんに擦り付けようとしました!だから、今後カンザシさんが何かすれば、今回みたいにあなたには十分な罰を受けてもらいます」
「ごめんなさい……もう犯罪者は庇わない……だから妖精クリーンをかけないで」
最後にナミネはミネスさんの横腹を思いっきり蹴った。ミネスさんはボロボロになっていた。
「耐えきれないならどうぞご自由にグループを抜けてください!とにかくヨルクさんとのことはそったしといてください!!」
「グループは抜けない……ナミネ……ごめんなさい」
「じゃ、そろそろナノハナ家戻る」
カンザシさんも着いてこようとしたが、落ち武者さんが拘束してカンザシさんを動けなくした。ラハルさんはナミネが心配だからとみんなとナノハナ家に向かうことになった。
あれこれ騒いでいる間に15時を過ぎていた。
ヘリコプターの中ではカンザシさんから、ミネスさん、ナミネ、ズームさんに大量のメールが来ていた。しかし、3人とも返すことはなかった。
ナノハナ家に着くと、みんなはクタクタな状態で第4居間に入った。服が汚れたミネスさんはナルホさんにお風呂に案内された。
ナミネの機嫌は少しは直っただろうか。
「ねえ、ラルク。カンザシさん、マンションの家賃どうするんだろうね」
「あのマンション、ひと月200万円くらいじゃなかったか?ニンジャ妖精さんて1人ひと月10万円も稼いでないんだろ。だったら払いきれないわな」
ナヤセスさんも似たようなマンションに住んでいたっけ。
「私ね、やっぱりミネスさんのこと許せない。カンザシさんのイジワルをヨルクさんのせいにしようとしたり、ヨルクさんをイジワルさせようとしたり。仲間とは思えないし、私防犯カメラの映像で見ちゃったんだよね。ライオンのオリの鍵、ミネスさんがカンザシさんに渡すのを」
私は大きな勘違いをしていた。カンザシさんが独断で鍵を開けたのではなく、ミネスさんがカンザシさんに開けるよう指示したのか。恐ろしい女だ。
「強気なナミネ、その映像今すぐ見せろ!」
「でも、ロックがかかっていて見れないんです」
「いいから貸せ!」
ナミネは落ち武者さんに携帯を渡した。落ち武者さんはすぐにロックを解除した。
映像はライオンがいるオリにミネスさんがカンザシさんを連れて行くところからはじまっていた。
『ミネス、どうしてもナミネさんが欲しい』
『カンザシ、メスライオンにヨルク犯させればいいよ。そうしたらナミネとヨルクの仲は完全に壊れる。運命なんてないんだよ。ナミネが欲しいならヨルクと引き離せばいいんだよ』
ミネスさんはライオンのオリの鍵をカンザシさんに渡した。カンザシさんはライオンのオリの鍵を開けた。
『これ、痺れ薬だから、ナミネに飲ませて、後はカンザシの好きにすればいいよ。カンザシには常に私がついてる』
ミネスさんはカンザシさんを抱き締めた。
『ありがとう、ミネス』
『カンザシ、幸せになって』
映像はそこで途切れていた。
「ブランケット家の両親まだここにいるなら、第2母屋に行って今すぐこの映像見せに行くぞ!」
落ち武者さんとナミネ、ラルクは第2母屋に走った。私も着いて行った。
私は世間知らずだったと思う。こちらから何もしなくても目を付けられてしまえばストーカーのように攻撃を受けてしまうこともありうる。
この世の人間の多くは穢れた心しか持っていない。これまでの甘い考えならナミネとの幸せが壊されてしまう。
この時から私は穢れた人の人生の土俵に無意識に上がるようになっていった。
……
あとがき。
ナミネがミネスに反撃する回でした。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
純愛偏差値 未来編 一人称版 69話
《ナミネ》
セナ王女と別れたショックでテンネさんに注ぎ込み借金をしたカラルリさんのために、私たちは動物園の飼育員のバイトをすることになった。
私とラルクが羊さんのエサやりをした後、うさぎやモルモット、テグーなどの小動物が脱走したと聞いて、私とラルクは地図を見ながら小動物が入っていただろう場所まで辿り着いた。
すると、ヨルクさんがメスライオンの下で下着を下ろした状態でいた。目撃した瞬間、私は吹き出しそうになった。けれど、後からヨルクさんと気まずくなりたくなくて、私は必死に笑いを堪えた。
聞くところによると、ヨルクさんは小動物にエサをあげている時に、小動物に寄ってこられ、付きまとわれたそうだ。落ち武者さんによると全員メスだったらしい。
ヨルクさんは人間だけでなく、動物にまで好かれる。正直、動物園のバイトはヨルクさんには向いていないと思った。
けれど、1番引っかかったのは、ライオンのオリの鍵をカンザシさんが開けたかもしれないということである。カンザシさんはメスライオンにヨルクさんを犯させようとしていたのだろうか。もうカンザシさんのすることなすことが信じられなくなる。
ちなみに、動物園のバイトをしているうちに、セナ王女とミナクさんは仲直りしたようだ。ミネスさんも、セナ王女の謝罪で今回だけならと許したらしい。
そんな私たちはパンダの赤ちゃんにミルクをあげに来た。
「わあ、可愛い!」
私がパンダの赤ちゃんを抱っこしようとした時、大半のパンダの赤ちゃんはヨルクさんのほうへ向かって行った。結局メスの本能はみな同じか。
「ナミネ、パンダの赤ちゃん可愛いね」
ヨルクさんはメスのパンダの赤ちゃんに囲まれながらミルクをあげていた。
「ヨルクさんって、浮気性なんじゃないんですか?」
「ほら、ナミネも抱っこしてごらん」
私はヨルクさんから1匹のパンダの赤ちゃんを受け取ったが、すぐにヨルクさんの元へ戻って行った。全然可愛くない。
私はオスのパンダの赤ちゃんにミルクをあげた。
「終わったね、ラルク。他のところ行こうよ」
「そうだな。メスは誰かさんがやってくれるだろう」
「待って!1人にしないで!」
男なのに女々しいセリフに私は少し引いてしまった。
「でも、そのパンダの赤ちゃんたち、ヨルクさんのところにしかいないじゃないですか!」
「パンダの赤ちゃんですか」
ズームさん!その瞬間ヨルクさんにくっついていたパンダの赤ちゃんの4分の1がズームさんのほうへ向かって行った。動物は人間より正直だ。
「なあ、ズーム、あんたどう思う?」
「まだ確証は持てませんが、恐らくカンザシでしょう。近くに防犯カメラがあったと思うので、後で確認したら分かると思います」
本当にカンザシさんだったら、この先カンザシさんとどう接していけばいいのだろう。ヨルクさん、パンツまで下ろされていたし。
「なあ、ズーム、あのカンザシってヤツとは仲良いのか?」
今度はオスのパンダの赤ちゃんはロォラさんにくっついた。ここにいるパンダの赤ちゃん全然可愛くない。
「ロォラには関係ないだろ!」
「私聞いてしまったんだ。カンザシがあるドラマをナミネと共演させて欲しいってミネスにお願いしてたのを」
また1000年の恋だろうか。カンザシさんも諦め悪いな。
「どんなドラマだ!」
「痴漢に悩む中学生が痴漢した男と大恋愛するドラマだ」
今度は痴漢ものか。カンザシさんとだけは絶対共演したくない。
「強気なナミネ、そのドラマ、ラハルと共演しろ!」
「え、でも……」
私はヨルクさんを見た。
「私もそうしたほうがいいと思う。ラハルさんなら気を配ってくれると思うし、カンザシさんに現実を見せつけてナミネのこと諦めさせたい」
ヨルクさんがいいって言うならラハルさんと共演してみようかな。私は早速ラハルさんにメールをした。
この日、私と落ち武者さんラルク、ズームさん、ヨルクさん、ロォラさんが、ライオンのいるところの防犯カメラを確認させてもらったところ、鍵を開けたのはやはりカンザシさんだった。
このことは一応ミネスさんにも伝えたが、ミネスさんはカンザシさんは庇わないけど、カンザシさんを好きでいることは変わらないと、曖昧な発言をしていた。
動物園のバイトが終わった後、スーパーのレジ打ち、チラシ配り、コンビニの品出しと色々したが、カラルリさんの借金の額には届かなかった。そして、みんなはクタクタのままキクリ家で泊まったのである。
3日に虹色街のスタジオで、飛べない翼の姉妹作である忘れられた翼の撮影を終えた。そして、その2日後、カンザシさんが私との共演を望んでいた作品の撮影の日となった。タイトルは『43%の恋の涙』。今日が私の勝負の日だ。
スタジオに入ると私はすぐに半袖のセーラー服を着せられ、髪を2つ括りにしてもらった。ラハルさんはブレザーだった。ラハルさんってブレザーのほうが似合う気がする。
「ナミネ、可愛い。頑張ってね」
「ヨルクさんは今日もダサイですね!メスライオンとの交尾はどうでしたか?」
「私の意思ではないし交尾などしていない。何故私を侮辱する」
ヨルクさんって、自分の身も自分で守れないからこっちが不安になってくる。あの時、助ける人いなかったらどうなっていたのだろう。
「ナミネさん、一昨日映画撮影したばかりなのにまた映画撮影するんですか?」
ドラマと思っていたけど映画だったのか。
「はい、気が向いたもので」
私は少しずつカンザシさんから遠ざかりラハルさんのところへ行った。
「ナミネ、似合ってる」
「ラハルさんもブレザーのほうが似合ってますね」
「そっか。リアルもブレザーだよ」
「私の学校もです!」
そろそろ撮影がはじまる。私とラハルさんは配置に着いた。
「映画 43%の恋の涙 撮影スタート!」
撮影がはじまった。今のカンザシさんどんな顔してるだろう。
中学2年生の私は、いつも隣町の学校まで電車で通学していた。けれど、ひと月前から私は痴漢の被害に遭うようになった。
この日も満員電車の中で中間地点からお尻を触られた。叫んで助けを求めないと。なのに、こういう時に限って声が出ない。私は服の上から胸を触られ、制服の中に手を入れられた。
「やめてください」
声が小さくて聞こえなかっただろうか。
「やめてください!叫びますよ!」
私はもう一度、声を大きくして言った。けれど、周りは見知らぬフリで、痴漢は更にエスカレートした。
私は、下着の上から胸を触っている腕を掴んだ。
「この人痴漢です!」
私が言った瞬間腕は振りほどかれ、振り向いても誰もいなかった。
また逃げられてしまった。
痴漢されるドラマとかよく見るけれど、実際に自分が遭うと、怖くてどうしたらいいのか分からなくて自分1人では何も出来なかった。
そんなある日、私が図書館で本に手を伸ばしていると、誰かがその本を取ってくれた。
「この本かな?」
「はい、そうです!」
「歴史興味あるの?」
「とても興味があります!色んな資料調べてるんです!」
これが私とラハルさんの出会いだった。
そして気がつけば私とラハルさんは図書館で頻繁に会うようになっていた。
一緒に勉強したり、他愛のない話をしたり、互いの趣味の話をしたり。ラハルさんといる時間は私にとって楽しい時間となっていたのだ。
「ナミネ、交際して欲しい」
「はい、喜んで」
ラハルさんはアパートに一人暮らしで、私はよく泊まりに言った。その時に痴漢の被害に遭っていることを話した。
「そっか、辛かったね。車両の真ん中だと犯人も逃げやすいし、これからは端っこにいたらどうかな?」
「はい、そうしてみます」
「今、ココア入れるね」
ラハルさんは、困った時はいつも相談に乗ってくれて、勉強も教えてくれて、とても温かい人だった。この人となら上手くやっていける。私はそう信じて疑わなかった。
「はい、ココア」
「ありがとうございます」
ココアを飲んだら、私はソファーでラハルさんに抱き締められながらテレビを見た。
私とラハルさんは交際してひと月になる。
この日、私ははじめてをラハルさんに捧げた。
また、朝の満員電車。
私はラハルさんに言われたように電車の端っこに立った。窓はなくて、これなら犯人を壁に寄せて捕まえられると私は思った。
そして、この日もまた中間地点で私は痴漢に遭った。
けれど、この日はいつもと違っていきなり制服の中に手を入れられ、下着越しに胸を触られ、下は下着の中に手を入れられた。
「やめてください!!」
私は痴漢をしている人の両手を掴んだ。
「この人痴漢です!!」
しかし、またもや掴んだ手は振りほどかれ、別の車両に逃げられてしまった。何だか痴漢がだんだんエスカレートしている気がする。けれどこの時の私は、大きくは気にしていなかった。
その夜、私はラハルさんのアパートでまたラハルさんに相談をした。
「そっか。辛かったね。今度はトイレにずっといたらどうかな?」
なるほど。それなら、痴漢も出来ない。
「はい、そうしてみます!」
この日も私はラハルさんに抱かれた。
最近は会うたび抱かれている気がする。
朝の満員電車。
私はラハルさんに言われたようにトイレにこもった。トイレはボタン式のもので中は広かった。これで大丈夫と思った瞬間、いきなりトイレの扉が開いて扉が閉まるなり私は壁に押し寄せられ、制服の中に手を入れられた後、スカートに手を入れられ下着を下ろされた。私はいやな予感がした。壁に押し寄せられ、完全に後ろは見えなかったが、少し振り向き斜め目線で見ると痴漢の人も私のスカートの中で下着を下ろしていた。
そして、私はスカートの中で当てられた。
「や、やめてください!!だ、誰か助けて!!」
叫んでもトイレの中だから誰も気づくことはなかった。
私はそのまま後ろからことに及ばれた。腰を振られるたび私は酷い痛みに襲われた。
「痛い!お願いです!やめてください!」
ことが終われば、犯人は下着とズボンを着てトイレから出た。
(ちなみに、この時ラハルさんは最初から最後まで私のスカートの中で下着を下ろしていたため、私とのレイプシーンも含め視聴者からは一切見えていない)
犯人がトイレを出た後、私はその場に崩れた。地面には血が付いていて生々しかった。
私、イジワルされたんだ。痴漢だけに終わらずイジワルされたんだ。私は大粒の涙を零し、最後の駅でラハルさんに迎えに来てもらった。
「ナミネ!」
「ラハルさん……私……」
「何も言わなくていいよ」
ラハルさんはタクシーを拾ってアパートまで連れて行ってくれた。そして、私が泣き止むまで抱き締めてくれて、私が眠るとベッドまで運んでくれた。
その後、私は学校を休み、ラハルさんは私を励ますため、色んなところに連れて行ってくれた。
カフェや、水族館、美術館、博物館、キャラクターランド。ラハルさんといっぱいデートしているうちに私は少しずつ回復していった。ラハルさんは無理に学校に行かなくていいと言ってくれたけれど、私はまた登校することにした。
朝の満員電車。
怖いけど、私は勇気を出してつり皮を掴んだ。
中間地点から私はまた痴漢に遭った。私は恐る恐る後ろを振り向いた。
犯人はラハルさんだった。
「カット!OK!」
2時間に渡る撮影が終わった。
モニターでイジワルシーンを見てみたら、本当にイジワルされているみたいだった。けれど、ラハルさんは痴漢シーンもイジワルシーンも私の身体には触れなかったのだ。そんなラハルさんの優しさがあったからこそ、安心して最後までやり切れたのだと思う。
私とラハルさんは映画に対してのコメントを残した。このコメントはDVD化された時に最後に入るらしい。まずはラハルさんがマイクを手に持った。
「43%の恋の涙は3年前に出版されたノンフィクション小説が原作となっています。そう、これは実際に起きた事件が元になっているのです。もう20年ほど前でしょうか。電車の中でトイレに連れ込まれる女性を約35人もの人が見て見ぬふりをしました。助けないこと自体は罪には問われませんが、それは本当に正しいことなのでしょうか?僕は決してあってはならないことだと思っています。また、原作者は見て見ぬふりをした人の恋人がイジワル犯だったとしても愛せるのかということを当時見て見ぬふりをした人に小説を通して問いかけているそうです。僕もこの映画を通して視聴者の皆さんに今一度『見て見ぬふりの残酷さ』を考えて欲しいと思いました」
続いて私がマイクを手に持った。
「ラハルさんとは、飛べない翼 や その姉妹作である 忘れられた翼 で共演させてもらっています。今回は 43%の恋の涙 という新たな作品で共演をしました。この作品を演じるに当たってラハルさんとは事前に演じるシーンをどう見せるか何時間もかけて話し合いました。中にはリアルなシーンもありましたが、ラハルさんがリードしてくれたので安心して最後まで演じることが出来ました。今回ヒロイン役を演じた43%の恋の涙ですが、ヒロインは多くの同乗者に見て見ぬふりをされています。しかしながら、その見て見ぬふりをした人にも家族はいます。言うまでもなく犯人にも家族はいます。この奥行きの深さを視聴者の皆様には考えて欲しいと思うのです。何が正しくて何が悪いではない。一人一人が何をすべきかという課題の答えを、この作品を見た皆様一人一人が見つけられることを心から祈っております」
私とラハルさんは一礼をしてコメント撮影は終わった。
「はあ、疲れたあ」
私はラルクにもたれかかった。
「ナミネ、今回も共演してくれてありがとう」
ラハルさんがお茶を私に渡した。私は咄嗟にラルクから離れた。
「あ、こちらこそ毎回リードしていただきありがとうございます」
その時、カンザシさんが青ざめた顔で寄ってきた。
「ナミネさん、どうしてラハルと43%の恋の涙演じたんですか!イジワルシーンは本当にしたんですか?」
そっか、スカートに隠れていて何も見えないんだった。カンザシさんには残酷だけど、ここは嘘をつこう。
「はい、実際にあった事件ゆえ、ラハルさんと十分に話し合い、リアルさを出すために私、ラハルさんに処女を捧げました。ドラマであれ私はラハルさんに女にしてもらいました。後悔はしていません。これで、本当の女優魂が分かった気がします」
「そんな……そんな……あんまりです!」
カンザシさんは泣きながら走って行った。
「待って!カンザシ!」
「ミネス、もう暗くなるから外に出るのは危険だよ」
「ナルホ……」
これでいい。カンザシさんは私とヨルクさんの関係を壊そうとしている。そのような者の気持ちなど一寸も汲み取ることはない。
「ナミネも言うねえ。けど、カンザシにとってはいい薬だったかもね。今夜はニンジャ妖精もいないし、ゆっくりしていって」
「はい!」
私たちはラハルさんと共にグルグル妖精さんのマンションへ向かった。
グルグル妖精さんのマンションはいつ来ても広い。
今日まお手伝いさんいる。喉乾いたなあ。
「すみません〜!冷たいお茶お願いします〜!」
「かしこまりました」
テレビを付けるとニュースが流れてきた。
『現在、虹色環状線のトイレの中で立て続けに女子高生がイジワルされています。被害者は全員処女でした。犯人の特定はまだ出来ていません』
これって、まさかカンザシさんだろうか。ヨルクさんが罪を着せられてしまったらどうしよう。
「カンザシの野郎、またやらかしてくれたな。僕とラルクは環状線でカンザシ捕まえて病院連れてくから、みんなはここで待ってろ!」
「僕も行くよ。カンザシさんにはもうナミネと関わらないよう白黒付ける」
ラルクと落ち武者さん、ナヤセス殿は環状線へ向かって行った。早く見つけ出して病院に連れて行って欲しい。
その時、出前のピザが届いた。私はひと切れのピザを食べようとした。
「ナミネ、手で掴まないで!取り皿に入れるから!」
「はい」
何だかカンザシさんのことで、せっかく撮影やり切ったのに微妙な気持ちだ。ヨルクさんは三切れのピザを取り皿に入れて私に渡した。お腹がすいていた私は一気に食べた。
「お腹すいてます。もっと食べたいです」
「今日はたこ焼き器でホットケーキ作るからピザはほどほどにしたほうがいいよ。それから、カンザシのことは気にしなくていいから。自業自得としか言いようがない」
ラハルさん慰めてくれてるんだ。
「あ、はい……」
その時、チャイムが鳴ってラハルさんがドアを開けるとミツメさんだった。
「あ、ミツメさん」
「リーダーは……」
「今、落ち武者さんとラルク、ナヤセス殿が環状線に探しに行きました。病院に連れて行くそうです」
「そうですか。ご迷惑おかけしてすみません」
ミツメさん悪くないのに。イジワルをするだなんて信じられない。
「ナミネ、遅くなったけど、お疲れ様」
ヨルクさんは私に菜の花とかすみ草の花束を渡した。私の大好きな花束。
「ありがとうございます、ヨルクさん」
私が花束を受け取った瞬間、ミネスさんが花束をグチャグチャにし、私を引っぱたいた。
「カンザシが辛い時に何自分だけ幸せでいるの!カンザシの気持ち少しでも考えたことある?ナミネのせいでカンザシは苦しんでるんじゃない!」
ヨルクさんが買ってくれた花束が……。気づいたら私はミネスさんを押し倒し殴り付けていた。ミネスさんは悲鳴をあげた。ナルホお兄様はすぐに私を止めた。
「ミネスさん、カンザシさんに何かあれば私のせいなんですか?私からは何も攻撃はしないと言ったでしょう!それなのにミネスさんが花束壊したり私を攻撃したからこうなったんです!今から皇帝陛下にかけあって赤花咲の罰受けてもらいます!」
「ごめん!咄嗟に手が出た!許して!二度とナミネを攻撃しない!カンザシのことは心の中に留めておく!もう一度チャンスが欲しい!」
自分から殴っておいて自己防衛したら被害者気取り。人間というのは自分のことしか考えられない汚い生き物だ。私はただ、ヨルクさんとの関係をそっとしておいて欲しいだけなのに。
「ねえ、ミネス、カンザシのイジワルをどうしてナミネのせいにしたの?正当な理由言って」
「ナミネに嫉妬するあまりナミネのせいにしてしまった。本当に悪かったと思ってる!二度とナミネのせいにしない!」
「信じられません!今後はミネスさんが私を攻撃するたびにアルフォンス王子を犠牲にします!今回からのカウントです!」
その瞬間アルフォンス王子はミネスさんを殴り付けた。
「お前、いい加減にしろよ!カンザシのイジワルはナミネのせいかよ!」
「ごめん、許して!二度とナミネを攻撃しない!今回のことは慰謝料も払う!」
金で全て解決か。お金持ちにはそれなりの薬が必要だ。その時、落ち武者さんたちがカンザシさんを連れて戻ってきた。私はカンザシさんを殴り付けた。
「やめて!カンザシは関係ない!」
「これも攻撃と見なします。ではアルフォンス王子、儀式しましょうか」
「待って!どうしたらいい?ナミネのこと全て聞く!」
ミネスさんもようやく自分の汚さに気づいてきたのだろうか。それでも簡単には許せない。
私はナヤセス殿に抱き着いた。
「ナヤセス殿、カンザシさんがイジワルしたの私のせいだってミネスさんに強く殴られたんです!」
「ナミネ、大丈夫?ミネス、妹をイジメるのはやめてくれないかな?」
「本当にごめん!一度だけチャンスが欲しい!」
めちゃくちゃ苛立つし、ミネスさんを許せない。人は自分が危機に陥ってはじめて自分のみ助かろうとする。そんな汚い人間を私は小さい頃からたくさん見てきた。そして、その人らの汚さに触れるほどに自分も穢されるような気がしていた。だから、許せない。許せない。許せない!
「ナミネ、ミネスは十分反省している。これ以上、ミネスを責めるのはやめてくれないかな?ミドリお姉様も戻ってきたのに何をそんなに苛立っているのかな?」
ナルホお兄様まで味方につけて何て汚い人なの。今に痛い目見させてやる。私は私自身のコントロールが出来なくなりつつありかけていた。
「ミネスさん、カンザシさんのイジワル、私のせいにしましたが、カンザシさんは動物園でわざと鍵を開けて、メスライオンにヨルクさんを犯させようとしました。だとしたら、これってミネスさんのせいですよね?」
「うん、私のせい。カンザシがする全ては私のせい。だから、どうか許して欲しい。二度とナミネを攻撃しない!」
「だったらどうして私を殴ったんですか!」
許せない許せない許せない!誰か助けて……
「アルフォンス王子、やはりミネスさんには反省ということが何か分からないようです。本当に残念です……」
私は武家オリジナルワイヤーでアルフォンス王子の儀式を行った。
「うわぁああああああああああああ!!!!!!」
アルフォンス王子の悲鳴と共に私は気絶した。
……
あとがき。
念の為、小説に登場した『43%の恋の涙』は個人的な事情で思いついたものです。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
《ナミネ》
セナ王女と別れたショックでテンネさんに注ぎ込み借金をしたカラルリさんのために、私たちは動物園の飼育員のバイトをすることになった。
私とラルクが羊さんのエサやりをした後、うさぎやモルモット、テグーなどの小動物が脱走したと聞いて、私とラルクは地図を見ながら小動物が入っていただろう場所まで辿り着いた。
すると、ヨルクさんがメスライオンの下で下着を下ろした状態でいた。目撃した瞬間、私は吹き出しそうになった。けれど、後からヨルクさんと気まずくなりたくなくて、私は必死に笑いを堪えた。
聞くところによると、ヨルクさんは小動物にエサをあげている時に、小動物に寄ってこられ、付きまとわれたそうだ。落ち武者さんによると全員メスだったらしい。
ヨルクさんは人間だけでなく、動物にまで好かれる。正直、動物園のバイトはヨルクさんには向いていないと思った。
けれど、1番引っかかったのは、ライオンのオリの鍵をカンザシさんが開けたかもしれないということである。カンザシさんはメスライオンにヨルクさんを犯させようとしていたのだろうか。もうカンザシさんのすることなすことが信じられなくなる。
ちなみに、動物園のバイトをしているうちに、セナ王女とミナクさんは仲直りしたようだ。ミネスさんも、セナ王女の謝罪で今回だけならと許したらしい。
そんな私たちはパンダの赤ちゃんにミルクをあげに来た。
「わあ、可愛い!」
私がパンダの赤ちゃんを抱っこしようとした時、大半のパンダの赤ちゃんはヨルクさんのほうへ向かって行った。結局メスの本能はみな同じか。
「ナミネ、パンダの赤ちゃん可愛いね」
ヨルクさんはメスのパンダの赤ちゃんに囲まれながらミルクをあげていた。
「ヨルクさんって、浮気性なんじゃないんですか?」
「ほら、ナミネも抱っこしてごらん」
私はヨルクさんから1匹のパンダの赤ちゃんを受け取ったが、すぐにヨルクさんの元へ戻って行った。全然可愛くない。
私はオスのパンダの赤ちゃんにミルクをあげた。
「終わったね、ラルク。他のところ行こうよ」
「そうだな。メスは誰かさんがやってくれるだろう」
「待って!1人にしないで!」
男なのに女々しいセリフに私は少し引いてしまった。
「でも、そのパンダの赤ちゃんたち、ヨルクさんのところにしかいないじゃないですか!」
「パンダの赤ちゃんですか」
ズームさん!その瞬間ヨルクさんにくっついていたパンダの赤ちゃんの4分の1がズームさんのほうへ向かって行った。動物は人間より正直だ。
「なあ、ズーム、あんたどう思う?」
「まだ確証は持てませんが、恐らくカンザシでしょう。近くに防犯カメラがあったと思うので、後で確認したら分かると思います」
本当にカンザシさんだったら、この先カンザシさんとどう接していけばいいのだろう。ヨルクさん、パンツまで下ろされていたし。
「なあ、ズーム、あのカンザシってヤツとは仲良いのか?」
今度はオスのパンダの赤ちゃんはロォラさんにくっついた。ここにいるパンダの赤ちゃん全然可愛くない。
「ロォラには関係ないだろ!」
「私聞いてしまったんだ。カンザシがあるドラマをナミネと共演させて欲しいってミネスにお願いしてたのを」
また1000年の恋だろうか。カンザシさんも諦め悪いな。
「どんなドラマだ!」
「痴漢に悩む中学生が痴漢した男と大恋愛するドラマだ」
今度は痴漢ものか。カンザシさんとだけは絶対共演したくない。
「強気なナミネ、そのドラマ、ラハルと共演しろ!」
「え、でも……」
私はヨルクさんを見た。
「私もそうしたほうがいいと思う。ラハルさんなら気を配ってくれると思うし、カンザシさんに現実を見せつけてナミネのこと諦めさせたい」
ヨルクさんがいいって言うならラハルさんと共演してみようかな。私は早速ラハルさんにメールをした。
この日、私と落ち武者さんラルク、ズームさん、ヨルクさん、ロォラさんが、ライオンのいるところの防犯カメラを確認させてもらったところ、鍵を開けたのはやはりカンザシさんだった。
このことは一応ミネスさんにも伝えたが、ミネスさんはカンザシさんは庇わないけど、カンザシさんを好きでいることは変わらないと、曖昧な発言をしていた。
動物園のバイトが終わった後、スーパーのレジ打ち、チラシ配り、コンビニの品出しと色々したが、カラルリさんの借金の額には届かなかった。そして、みんなはクタクタのままキクリ家で泊まったのである。
3日に虹色街のスタジオで、飛べない翼の姉妹作である忘れられた翼の撮影を終えた。そして、その2日後、カンザシさんが私との共演を望んでいた作品の撮影の日となった。タイトルは『43%の恋の涙』。今日が私の勝負の日だ。
スタジオに入ると私はすぐに半袖のセーラー服を着せられ、髪を2つ括りにしてもらった。ラハルさんはブレザーだった。ラハルさんってブレザーのほうが似合う気がする。
「ナミネ、可愛い。頑張ってね」
「ヨルクさんは今日もダサイですね!メスライオンとの交尾はどうでしたか?」
「私の意思ではないし交尾などしていない。何故私を侮辱する」
ヨルクさんって、自分の身も自分で守れないからこっちが不安になってくる。あの時、助ける人いなかったらどうなっていたのだろう。
「ナミネさん、一昨日映画撮影したばかりなのにまた映画撮影するんですか?」
ドラマと思っていたけど映画だったのか。
「はい、気が向いたもので」
私は少しずつカンザシさんから遠ざかりラハルさんのところへ行った。
「ナミネ、似合ってる」
「ラハルさんもブレザーのほうが似合ってますね」
「そっか。リアルもブレザーだよ」
「私の学校もです!」
そろそろ撮影がはじまる。私とラハルさんは配置に着いた。
「映画 43%の恋の涙 撮影スタート!」
撮影がはじまった。今のカンザシさんどんな顔してるだろう。
中学2年生の私は、いつも隣町の学校まで電車で通学していた。けれど、ひと月前から私は痴漢の被害に遭うようになった。
この日も満員電車の中で中間地点からお尻を触られた。叫んで助けを求めないと。なのに、こういう時に限って声が出ない。私は服の上から胸を触られ、制服の中に手を入れられた。
「やめてください」
声が小さくて聞こえなかっただろうか。
「やめてください!叫びますよ!」
私はもう一度、声を大きくして言った。けれど、周りは見知らぬフリで、痴漢は更にエスカレートした。
私は、下着の上から胸を触っている腕を掴んだ。
「この人痴漢です!」
私が言った瞬間腕は振りほどかれ、振り向いても誰もいなかった。
また逃げられてしまった。
痴漢されるドラマとかよく見るけれど、実際に自分が遭うと、怖くてどうしたらいいのか分からなくて自分1人では何も出来なかった。
そんなある日、私が図書館で本に手を伸ばしていると、誰かがその本を取ってくれた。
「この本かな?」
「はい、そうです!」
「歴史興味あるの?」
「とても興味があります!色んな資料調べてるんです!」
これが私とラハルさんの出会いだった。
そして気がつけば私とラハルさんは図書館で頻繁に会うようになっていた。
一緒に勉強したり、他愛のない話をしたり、互いの趣味の話をしたり。ラハルさんといる時間は私にとって楽しい時間となっていたのだ。
「ナミネ、交際して欲しい」
「はい、喜んで」
ラハルさんはアパートに一人暮らしで、私はよく泊まりに言った。その時に痴漢の被害に遭っていることを話した。
「そっか、辛かったね。車両の真ん中だと犯人も逃げやすいし、これからは端っこにいたらどうかな?」
「はい、そうしてみます」
「今、ココア入れるね」
ラハルさんは、困った時はいつも相談に乗ってくれて、勉強も教えてくれて、とても温かい人だった。この人となら上手くやっていける。私はそう信じて疑わなかった。
「はい、ココア」
「ありがとうございます」
ココアを飲んだら、私はソファーでラハルさんに抱き締められながらテレビを見た。
私とラハルさんは交際してひと月になる。
この日、私ははじめてをラハルさんに捧げた。
また、朝の満員電車。
私はラハルさんに言われたように電車の端っこに立った。窓はなくて、これなら犯人を壁に寄せて捕まえられると私は思った。
そして、この日もまた中間地点で私は痴漢に遭った。
けれど、この日はいつもと違っていきなり制服の中に手を入れられ、下着越しに胸を触られ、下は下着の中に手を入れられた。
「やめてください!!」
私は痴漢をしている人の両手を掴んだ。
「この人痴漢です!!」
しかし、またもや掴んだ手は振りほどかれ、別の車両に逃げられてしまった。何だか痴漢がだんだんエスカレートしている気がする。けれどこの時の私は、大きくは気にしていなかった。
その夜、私はラハルさんのアパートでまたラハルさんに相談をした。
「そっか。辛かったね。今度はトイレにずっといたらどうかな?」
なるほど。それなら、痴漢も出来ない。
「はい、そうしてみます!」
この日も私はラハルさんに抱かれた。
最近は会うたび抱かれている気がする。
朝の満員電車。
私はラハルさんに言われたようにトイレにこもった。トイレはボタン式のもので中は広かった。これで大丈夫と思った瞬間、いきなりトイレの扉が開いて扉が閉まるなり私は壁に押し寄せられ、制服の中に手を入れられた後、スカートに手を入れられ下着を下ろされた。私はいやな予感がした。壁に押し寄せられ、完全に後ろは見えなかったが、少し振り向き斜め目線で見ると痴漢の人も私のスカートの中で下着を下ろしていた。
そして、私はスカートの中で当てられた。
「や、やめてください!!だ、誰か助けて!!」
叫んでもトイレの中だから誰も気づくことはなかった。
私はそのまま後ろからことに及ばれた。腰を振られるたび私は酷い痛みに襲われた。
「痛い!お願いです!やめてください!」
ことが終われば、犯人は下着とズボンを着てトイレから出た。
(ちなみに、この時ラハルさんは最初から最後まで私のスカートの中で下着を下ろしていたため、私とのレイプシーンも含め視聴者からは一切見えていない)
犯人がトイレを出た後、私はその場に崩れた。地面には血が付いていて生々しかった。
私、イジワルされたんだ。痴漢だけに終わらずイジワルされたんだ。私は大粒の涙を零し、最後の駅でラハルさんに迎えに来てもらった。
「ナミネ!」
「ラハルさん……私……」
「何も言わなくていいよ」
ラハルさんはタクシーを拾ってアパートまで連れて行ってくれた。そして、私が泣き止むまで抱き締めてくれて、私が眠るとベッドまで運んでくれた。
その後、私は学校を休み、ラハルさんは私を励ますため、色んなところに連れて行ってくれた。
カフェや、水族館、美術館、博物館、キャラクターランド。ラハルさんといっぱいデートしているうちに私は少しずつ回復していった。ラハルさんは無理に学校に行かなくていいと言ってくれたけれど、私はまた登校することにした。
朝の満員電車。
怖いけど、私は勇気を出してつり皮を掴んだ。
中間地点から私はまた痴漢に遭った。私は恐る恐る後ろを振り向いた。
犯人はラハルさんだった。
「カット!OK!」
2時間に渡る撮影が終わった。
モニターでイジワルシーンを見てみたら、本当にイジワルされているみたいだった。けれど、ラハルさんは痴漢シーンもイジワルシーンも私の身体には触れなかったのだ。そんなラハルさんの優しさがあったからこそ、安心して最後までやり切れたのだと思う。
私とラハルさんは映画に対してのコメントを残した。このコメントはDVD化された時に最後に入るらしい。まずはラハルさんがマイクを手に持った。
「43%の恋の涙は3年前に出版されたノンフィクション小説が原作となっています。そう、これは実際に起きた事件が元になっているのです。もう20年ほど前でしょうか。電車の中でトイレに連れ込まれる女性を約35人もの人が見て見ぬふりをしました。助けないこと自体は罪には問われませんが、それは本当に正しいことなのでしょうか?僕は決してあってはならないことだと思っています。また、原作者は見て見ぬふりをした人の恋人がイジワル犯だったとしても愛せるのかということを当時見て見ぬふりをした人に小説を通して問いかけているそうです。僕もこの映画を通して視聴者の皆さんに今一度『見て見ぬふりの残酷さ』を考えて欲しいと思いました」
続いて私がマイクを手に持った。
「ラハルさんとは、飛べない翼 や その姉妹作である 忘れられた翼 で共演させてもらっています。今回は 43%の恋の涙 という新たな作品で共演をしました。この作品を演じるに当たってラハルさんとは事前に演じるシーンをどう見せるか何時間もかけて話し合いました。中にはリアルなシーンもありましたが、ラハルさんがリードしてくれたので安心して最後まで演じることが出来ました。今回ヒロイン役を演じた43%の恋の涙ですが、ヒロインは多くの同乗者に見て見ぬふりをされています。しかしながら、その見て見ぬふりをした人にも家族はいます。言うまでもなく犯人にも家族はいます。この奥行きの深さを視聴者の皆様には考えて欲しいと思うのです。何が正しくて何が悪いではない。一人一人が何をすべきかという課題の答えを、この作品を見た皆様一人一人が見つけられることを心から祈っております」
私とラハルさんは一礼をしてコメント撮影は終わった。
「はあ、疲れたあ」
私はラルクにもたれかかった。
「ナミネ、今回も共演してくれてありがとう」
ラハルさんがお茶を私に渡した。私は咄嗟にラルクから離れた。
「あ、こちらこそ毎回リードしていただきありがとうございます」
その時、カンザシさんが青ざめた顔で寄ってきた。
「ナミネさん、どうしてラハルと43%の恋の涙演じたんですか!イジワルシーンは本当にしたんですか?」
そっか、スカートに隠れていて何も見えないんだった。カンザシさんには残酷だけど、ここは嘘をつこう。
「はい、実際にあった事件ゆえ、ラハルさんと十分に話し合い、リアルさを出すために私、ラハルさんに処女を捧げました。ドラマであれ私はラハルさんに女にしてもらいました。後悔はしていません。これで、本当の女優魂が分かった気がします」
「そんな……そんな……あんまりです!」
カンザシさんは泣きながら走って行った。
「待って!カンザシ!」
「ミネス、もう暗くなるから外に出るのは危険だよ」
「ナルホ……」
これでいい。カンザシさんは私とヨルクさんの関係を壊そうとしている。そのような者の気持ちなど一寸も汲み取ることはない。
「ナミネも言うねえ。けど、カンザシにとってはいい薬だったかもね。今夜はニンジャ妖精もいないし、ゆっくりしていって」
「はい!」
私たちはラハルさんと共にグルグル妖精さんのマンションへ向かった。
グルグル妖精さんのマンションはいつ来ても広い。
今日まお手伝いさんいる。喉乾いたなあ。
「すみません〜!冷たいお茶お願いします〜!」
「かしこまりました」
テレビを付けるとニュースが流れてきた。
『現在、虹色環状線のトイレの中で立て続けに女子高生がイジワルされています。被害者は全員処女でした。犯人の特定はまだ出来ていません』
これって、まさかカンザシさんだろうか。ヨルクさんが罪を着せられてしまったらどうしよう。
「カンザシの野郎、またやらかしてくれたな。僕とラルクは環状線でカンザシ捕まえて病院連れてくから、みんなはここで待ってろ!」
「僕も行くよ。カンザシさんにはもうナミネと関わらないよう白黒付ける」
ラルクと落ち武者さん、ナヤセス殿は環状線へ向かって行った。早く見つけ出して病院に連れて行って欲しい。
その時、出前のピザが届いた。私はひと切れのピザを食べようとした。
「ナミネ、手で掴まないで!取り皿に入れるから!」
「はい」
何だかカンザシさんのことで、せっかく撮影やり切ったのに微妙な気持ちだ。ヨルクさんは三切れのピザを取り皿に入れて私に渡した。お腹がすいていた私は一気に食べた。
「お腹すいてます。もっと食べたいです」
「今日はたこ焼き器でホットケーキ作るからピザはほどほどにしたほうがいいよ。それから、カンザシのことは気にしなくていいから。自業自得としか言いようがない」
ラハルさん慰めてくれてるんだ。
「あ、はい……」
その時、チャイムが鳴ってラハルさんがドアを開けるとミツメさんだった。
「あ、ミツメさん」
「リーダーは……」
「今、落ち武者さんとラルク、ナヤセス殿が環状線に探しに行きました。病院に連れて行くそうです」
「そうですか。ご迷惑おかけしてすみません」
ミツメさん悪くないのに。イジワルをするだなんて信じられない。
「ナミネ、遅くなったけど、お疲れ様」
ヨルクさんは私に菜の花とかすみ草の花束を渡した。私の大好きな花束。
「ありがとうございます、ヨルクさん」
私が花束を受け取った瞬間、ミネスさんが花束をグチャグチャにし、私を引っぱたいた。
「カンザシが辛い時に何自分だけ幸せでいるの!カンザシの気持ち少しでも考えたことある?ナミネのせいでカンザシは苦しんでるんじゃない!」
ヨルクさんが買ってくれた花束が……。気づいたら私はミネスさんを押し倒し殴り付けていた。ミネスさんは悲鳴をあげた。ナルホお兄様はすぐに私を止めた。
「ミネスさん、カンザシさんに何かあれば私のせいなんですか?私からは何も攻撃はしないと言ったでしょう!それなのにミネスさんが花束壊したり私を攻撃したからこうなったんです!今から皇帝陛下にかけあって赤花咲の罰受けてもらいます!」
「ごめん!咄嗟に手が出た!許して!二度とナミネを攻撃しない!カンザシのことは心の中に留めておく!もう一度チャンスが欲しい!」
自分から殴っておいて自己防衛したら被害者気取り。人間というのは自分のことしか考えられない汚い生き物だ。私はただ、ヨルクさんとの関係をそっとしておいて欲しいだけなのに。
「ねえ、ミネス、カンザシのイジワルをどうしてナミネのせいにしたの?正当な理由言って」
「ナミネに嫉妬するあまりナミネのせいにしてしまった。本当に悪かったと思ってる!二度とナミネのせいにしない!」
「信じられません!今後はミネスさんが私を攻撃するたびにアルフォンス王子を犠牲にします!今回からのカウントです!」
その瞬間アルフォンス王子はミネスさんを殴り付けた。
「お前、いい加減にしろよ!カンザシのイジワルはナミネのせいかよ!」
「ごめん、許して!二度とナミネを攻撃しない!今回のことは慰謝料も払う!」
金で全て解決か。お金持ちにはそれなりの薬が必要だ。その時、落ち武者さんたちがカンザシさんを連れて戻ってきた。私はカンザシさんを殴り付けた。
「やめて!カンザシは関係ない!」
「これも攻撃と見なします。ではアルフォンス王子、儀式しましょうか」
「待って!どうしたらいい?ナミネのこと全て聞く!」
ミネスさんもようやく自分の汚さに気づいてきたのだろうか。それでも簡単には許せない。
私はナヤセス殿に抱き着いた。
「ナヤセス殿、カンザシさんがイジワルしたの私のせいだってミネスさんに強く殴られたんです!」
「ナミネ、大丈夫?ミネス、妹をイジメるのはやめてくれないかな?」
「本当にごめん!一度だけチャンスが欲しい!」
めちゃくちゃ苛立つし、ミネスさんを許せない。人は自分が危機に陥ってはじめて自分のみ助かろうとする。そんな汚い人間を私は小さい頃からたくさん見てきた。そして、その人らの汚さに触れるほどに自分も穢されるような気がしていた。だから、許せない。許せない。許せない!
「ナミネ、ミネスは十分反省している。これ以上、ミネスを責めるのはやめてくれないかな?ミドリお姉様も戻ってきたのに何をそんなに苛立っているのかな?」
ナルホお兄様まで味方につけて何て汚い人なの。今に痛い目見させてやる。私は私自身のコントロールが出来なくなりつつありかけていた。
「ミネスさん、カンザシさんのイジワル、私のせいにしましたが、カンザシさんは動物園でわざと鍵を開けて、メスライオンにヨルクさんを犯させようとしました。だとしたら、これってミネスさんのせいですよね?」
「うん、私のせい。カンザシがする全ては私のせい。だから、どうか許して欲しい。二度とナミネを攻撃しない!」
「だったらどうして私を殴ったんですか!」
許せない許せない許せない!誰か助けて……
「アルフォンス王子、やはりミネスさんには反省ということが何か分からないようです。本当に残念です……」
私は武家オリジナルワイヤーでアルフォンス王子の儀式を行った。
「うわぁああああああああああああ!!!!!!」
アルフォンス王子の悲鳴と共に私は気絶した。
……
あとがき。
念の為、小説に登場した『43%の恋の涙』は個人的な事情で思いついたものです。
……
この小説はフィクションであり、登場人物・団体名などは全て架空です。
純愛偏差値 未来編 一人称版 68話
《ヨルク》
紅葉神社に初詣に行ったら、私は見知らぬ人にイジワル犯に間違えられた。けれど、その時私はあまりに驚きすぎて言葉が出なくて身体が固まっていた。落ち武者さんがカンザシさんの指紋で私の無実を証明してくれたけれど、もし、あの場に私1人だったら、何も証明出来ず、犯人に仕立て上げられていたのかと思うと、とても怖くなった。
そして、ナミネは私のせいで傷を負った。
私は自分の無実を自分で証明出来ない情けない男かと思うと涙が零れていた。ナミネが傷を負ったことにより、私に罪を着せようとした人は現行犯逮捕となったが、私は自分のことなのに何もしていないことに対して自分に腹が立った。
紅葉町警察署を出たら、落ち武者さんは料亭に向かうのではなく、ミィミさんが言っていた桜木町の廃墟の並んだ場所に向かい、私たちは今そこにいる。ちなみに落ち武者さんの指示でみんなはイヤホンマイクを外した。
「ナミネ、大丈夫?私のせいでごめんね」
「大丈夫です」
ふと見るとナミネは真剣な表情をしていた。
「顔だけヨルク、今は少しでも手がかりになることを探せ!」
歩いていると、ミィミさんの言っていた何世紀も放置されていただろう古民家が見えてきた。それにしても、廃墟が立ち並ぶ中、一つだけ古民家があるのも不自然に感じる。
「証拠残さないよう、みんな手袋はめろ!」
私たちは手袋をはめた。
古民家の中は、まるで遠い昔にお店をやっていたような雰囲気だった。
「ここ、カンザシさんのコンサートが終わった後、よくズームさんと3人で来ていた居酒屋です」
ナミネの思い出の場所なのか。私たちは店内を歩いたがこれといったものはなく、古民家を出て再び廃墟を歩いた。
「あ、この廃墟、私とカンザシさんが住んでいたアパートです」
「じゃ入る。何号室だ?」
「確か7号室だったと思います」
私たちは廃墟になった元アパートの7号室に入った。それにしても何世紀も前のものが、まるでひと昔前のような古びれた建物として残っているのも奇妙だ。その後、改装されて再び廃墟になったとしか思えない。
7号室に入ると、ナミネの言っていた通り、ワンルームの狭いアパートだった。こんなところでナミネが暮らしていたかと思うと私は胸が痛んだ。
その時、ナミネは何かを手に取っていた。
「ナミネ、それ何?」
「ルビーのネックレスです。カンザシさんが私にくれるのは、いつもルビーでした」
まるで、私とは相反するプレゼントだ。
「そのネックレス、持って帰れ!」
「ちょっと待って!いくら廃墟だからって窃盗はよくないと思う!」
落ち武者さんはいつも無茶振りだ。ナミネもちゃっかりポケットに入れているし、2人は法律というものを知らないのだろうか。
「元々の持ち主が持っていて何が悪い!ここの当時の入居名簿とショップの購入者名簿入手すればなんとかなるだろ!」
何故強引にネックレスを持って帰ろうとする。
ふと、お風呂を見てみたが1人用の四角い木の浴槽だった。
「おい、ネックレスが入っていただろう箱あったぞ!」
私は慌てて落ち武者さんの元へ駆け寄った。
桜木ジュエリー。今でも存在するジュエリーショップだ。けれど、当時のジュエリーショップと関連しているのかは分からない。するとナミネが天井の木を1枚めくった。アルバム?
ナミネはアルバムをペラペラめくりはじめた。かなり色褪せているけれど私との思い出の写真……。カンザシさんに見つからないように隠していたのか。ナミネはアルバムを袖に入れた。
その後、落ち武者さんは、今は廃墟の当時は桜木ジュエリーだった場所から当時の購入者リストを持ち出した。
「後はカンザシの聞き込みだな」
「僕としては、カンザシさんにはもうナミネと関わって欲しくない」
ナヤセスさんからしたらそうだと思う。カンザシさんはドラマでナミネと関係持とうとしているし、過去にイジワルもしている。すぐに縁を切って欲しいだろう。
「ナヤセス、強気なナミネとカンザシは何世紀も前からの付き合いだ。今、縁を切ろうとしても、それは無理なことだ。僕らは歴史を辿るしかないんだよ!」
切り離したくても切り離せない存在。それが自分にとって害を及ぼす人ならば……。2020年という新しい時代に私たちは生きているというのに、過去を掘り返さなくてはならない。私たちの背負った輪廻はあまりに重たすぎた。
料亭に戻ると、落ち武者さんは予約していた個室に入るなりイヤホンマイクでカンザシさんとズームさんを呼び出した。すると何故かナルホさんとミネスさんも来た。
「カンザシ、詳細全部話せ!」
「ラルク、お腹すいたよね」
「ナミネ、こんな時くらい我慢しろよ」
こんな真面目な時にどうして、いつもみたいにいられるの。
「エルナ、適当にみんなの注文しろ!」
「分かったわ」
エルナは、御膳をみんな分注文した。
「あれは、1年前でした。何もかもが上手くいかなくてムシャクシャしていたと思います。虹色街から、たまたま桜木町を歩いていました。懐かしい空気を吸いたかったのでしょう。その時に1人の制服着た女子高生が歩いていて魔が差したんです。気付いたら犯していました。怖くなった僕はその場から立ち去りました」
聞いていて私は言葉にならなかった。
「あんた、だったらなんで、神社で名乗り出なかった!まさか顔だけヨルクに罪着せるつもりだったのか?あんたのせいで強気なナミネは被害者から刺されたんだよ!どう落とし前つけてくれんだよ!」
カンザシさん、まさか私に罪を着せて自分は逃げ切るつもりだったのか?だとしたら、許せない。もし、私が捕まったとして、やっていないことをやったと言うまで出してもらえないだろう。『やっていないと主張した』という実話が元になった映画のように。私とナミネの関係を壊すつもりだったのだろうか。
「すみません。芸能界に入ることはずっと夢だったので、その夢を壊せなかったです。その思いが暗黙にヨルクさんが疑われてしまう原因になってしまいました」
「あんたとんでもねえ野郎だな。冤罪だったら、逆にあんたの人生壊れてたんだぞ!」
「そこまで考えが及びませんでした」
私に罪を着せようとしてまで芸能界にしがみつくというわけか。もうここまで来たら私も容赦出来ない。その時、エルナの注文した御膳が運ばれて来た。ナミネは適当なのを選んで、食べはじめた。
「カンザシさん、今、あなたのご実家にクレナイ家 顧問弁護士を向かわせました。カンザシさんを虚偽告訴罪で訴えます!」
「待ってください!実家は関係ないでしょう!取り下げてください!」
私はカンザシさんに無実の罪を着せられ、運悪ければ、私が少年院行きだったのに、いざ自分が不利な立場に立たされたら、慌てふためく。無様な光景だ。けど、私は私を陥れようとしたカンザシさんを許さない。
「カンザシ、大丈夫だよ。今、ブランケット家の顧問弁護士をカンザシの実家に向かわせたから」
この者は、どこまでもカンザシさんを庇う気か。例え犯罪だとしても。
「ミネスさん、あなたのしてることって犯人隠避罪ですよね?しかしながら、皇帝陛下はあなたを罪に問うています」
犯人隠避罪。犯人蔵匿罪とよく似ているが、犯人蔵匿罪以外で犯人の逮捕を妨げる行為だ。ナミネは皇室からの紙飛行機をミネスさんに見せた。
『ミネスを皇室の初級武官によって赤花咲に処する』
皇帝陛下が下した決断は絶対だ。
「へえ、ナミネって卑怯な手使うんだ」
ミネスさんは皇室に取り消すよう連絡をしたが、皇帝陛下の決断は覆らなかった。
「ミネスさん、今すぐ皇室で赤花咲してもらいましょうか。そして、私はその後もあなたには生きて償ってもらいます!ヨルクさんを陥れた人間を私は1人残らず排除します!」
ナミネ、こんな私を庇ってくれている。それなのに無力な私は自分を責めるしかなかった。
「待って!分かった!カンザシのしたことの慰謝料は支払う!だから取り消して!」
「でしたら、この書面にサインをしてください」
ナミネはミネスさんに書面を突き付けた。
『○二度とカンザシさんを庇わない
○ヨルクさんに罪を着せたら赤花咲を行う
○ヨルクさんの安全を常に守る
○私とヨルクさんの関係を引き裂かない
○カンザシさんが私に1000年の恋の話題をしたら赤花咲を行う』
かなり厳しい条件だ。ミドリさんは戻ってきたけれど、今度はナミネは私との関係を守ることに徹底している。
「これにサインしないなら、今すぐ皇室で赤花咲してもらいます!」
もうミネスさんの選択肢はないだろう。別にミネスさんが悪いとは思わない。ただ、ミネスさんを通して私やナミネに害が及ぶのは避けたい。
「分かった……」
「ナミネ、やめようか。今回の件はヨルクが向かわせた顧問弁護士だけで十分だよね。ここまでやるのは割に合わないと僕は思う。ミネスはブランケット家の顧問弁護士にキャンセルの歴史してくれるかな。君のさっきの発言は録音してあるから、今顧問弁護士を向かわせたら犯人隠避罪で捕まるのは君だよ?犯罪者を庇うことは良くなって君も分かるよね?」
ミネスさんは無言でブランケット家の顧問弁護士がカンザシさんの実家に行くことをキャンセルした。ナルホさんはナミネの書類を破り捨てた。
「ミネスさん、いくらお金持ちでも犯人庇うことは許されません。二度と同じ過ちはしないでください。でないと、私も次は取り下げません」
「分かった……」
ナミネの強気な押しにミネスさんは泣きはじめた。
「ナミネさん、カンザシのことは僕が何とかしますし、あなた方お2人の関係は壊させません。ミネスが間違ったことをしたら必ず僕が止めます。ナミネさんの現世での幸せは僕が守ります。だから、今回のミネスの未熟な判断は水に流してもらえませんか?」
ズームさんはカッコイイ。関わりたくないことに敢えて入っていって、ヒーローになる。ナミネのヒーローはズームさんだ。私はズームさんほどのことは出来ない。
「ナミネって狡い!私は別にナミネに危害加えようとしてないのに。実の兄を味方に付けて、彼氏とはラブラブで、私のお兄ちゃんに頼って、私からカンザシを奪って、卑怯にも程がある!誰も私には味方してくれない。不利な私をナミネは責め立てる。ナミネはヨルクが犯罪者でも庇わずにいられるの?」
ミネスさんはその場に泣き崩れた。その時、ナルホさんがミネスさんを抱き締めた。
「ごめんね、ミネス。決して君を孤立させようとしていたわけではないんだよ。ナミネは少しやりすぎなところがあるんだ」
「ミネスさん、あなたのお兄様が亡くなった日、私の姉も亡くなりました。これが姉の最後の姿です。こうなってでも、あなたはカンザシさんを庇いますか?」
ナミネはミドリさんの最後の写真を見せた。
人というものは残酷だ。真面目に生きている人ほど騙され道を阻まれやすく、悪意を持った人ほど上手く人脈を作り世渡り上手である。
「庇えない……」
「つまり、ミネスさんは、いざとなったらカンザシさんを見捨てて逃げる見た目も性格も不細工なカンザシさんに尽くすだけ尽くして利用されるだけの親の七光り野郎です!」
ナミネの言葉は時に人の心を壊してしまう。ナミネは真っ直ぐだけれど、失いたくないものを絶対に失わないために、相手を不利な立場に立たせてしまう。
「ナミネ、やめてくれないかな?ミネスはもう十分に反省している。今後はカンザシさんの犯罪は庇ったりしない。これ以上ミネスを攻撃しても誰も何の得もしないよ」
何となく、出会ったばかりなのにミネスさんとナルホさんの距離が近い気がする。その時、武官が現れた。武官はミネスさんに結界をかけるなり、ミネスさんの着物を脱がしはじめた。
「ねえ、ラルク、このえび天美味しいね」
「そうだな、料亭の味はやっぱり違うな」
もうっ、こういう時にどうしてナミネとラルクは何もしないの!
「ミネス!」
「お兄ちゃん!助けて!」
いったい、誰が何のためにミネスさんを狙ったのだろう。ミネスさんが、下着に手をかけられた時、ナルホさんが結界を解き、ミネスさんを救い出すとナミネとラルクが武官を拘束した。そして、カンザシさんは妹同然のミネスさんが、襲われているにも関わらず、何もしようとしなかった。
ミネスさんは泣きながらナルホさんに抱き着いた。
「ナルホ、怖かった……怖かった……!」
「ミネス、君がピンチな時は必ず助ける。君は1人じゃない」
ナルホさんは、ミネスさんの乱された着物を元に戻した。
「で?あんたらなんで、お子ちゃまミネス襲った」
落ち武者さんは羽子板を持っていた。武官は黙っていた。落ち武者さんは武官の1人に思いっきり羽子板を振りかざした。ナミネとラルクはまとめて拘束したから、1人を叩けば、全員に電流が流れるだろう。
「セナ王女に頼まれた。理由は知らない」
今度はセナ王女が悪魔と化されてしまったのか。これではキリがない。新年早々からもう厄年だ。
「ミネス、別の個室取るからそこに行こうか」
「ううん、どうしてセナがこんなことしたのか、私も聞く!」
ミネスさんて、意外に物事はハッキリさせるタイプなのか。襲われたばかりなのに、もう真剣な顔をしている。カンザシさんが日常の中にいなければ、本当は純粋な人なんだろうな。
「じゃ、セナとミナクここに呼ぶ」
落ち武者さんはセナ王女とミナクお兄様をここに呼んだ。
「セナ、どうして私を襲わせたの?私、セナに何かした?」
「ミナクを取るからよ!あなたも痛い目見れば人の男取らないと思ったのよ!」
やっぱりセナ王女は一方的すぎる。
「私がいつミナクを取ったの?証拠でもあるの?裁判になったら勝てるの?」
「屁理屈なお嬢様ね。私は一国の王女よ。私が取ったと言えば取ったの!」
何だ、その自己中心的なものの考え方は。
「その理屈は裁判で通用するの?」
「裁判裁判てあなた何様よ!今すぐお父様に言いつけるわよ!」
「言ってみなよ。ほら、今すぐ言ってみなよ」
どちらも1歩も引かない言い争い。その時、ナミネが私にご飯を一気に詰め込んだ。私はむせた。
「どうして真剣な時にこういうことするの!」
「今食べておかないと後でお腹すきます」
だからって何も一気に詰め込むことないのに。
「分かった」
私は少し機嫌を損ねながら冷めた御膳を食べた。
「なあ、ミナク、あんたはどうなんだよ?」
「私はセナ王女のみを愛している。ミネスのことは友達以上には思っていない」
「嘘よ!明らかミネスのことばかり見てたわ!ミネスもミナクも王室で裁いてやる!」
セナ王女の一方的な発言はいつまで続くのだろう。
「これ以上は無駄な口論だね。私はもうセナに何も聞かない。勝手にすればいいよ。けれど、自分のしたことは自分に返ってくるから」
ミネスさんはナルホさんの腕を組んで個室を出た。
「じゃ、僕らも次に行くか」
「待ってよ!問題が起きたらみんなで話し合うべきだと思うわ!」
その問題を起こしたのはどこの誰だ。という思いを私は口に出さずにいた。
私たちは、セナ王女とミナクお兄様を置いて露天風呂に向かった。
私がボーッと歩いている間にナミネとラルクは混浴温泉に入ってしまった。私は慌てて走った。
混浴温泉の脱衣所ではナミネが着物を脱ぎはじめていた。
「ナミネ、待って!混浴温泉じゃなくて女湯に入って!」
カンザシさんだけにはナミネを見られたくない。
「ねえ、ラルク、ヨルクさんて心狭いよね」
「もう束縛レベルだな」
どうしてそうなるの。とにかくナミネをここから出さないと。そう思っていたら、ミナクお兄様も入って来て、追うようにセナ王女も入って来た。
気付いたらナミネとラルクは裸のまま露天風呂に向かって行った。私は慌ててタオルを持ってナミネを追いかけた。
「ナミネ、せめてタオル巻いて」
私はナミネにタオルを巻いた。その時、ニュースが流れた。
『王室の第6王女はブランケット家の次女を武官に襲わせたとし、ブランケット家は現在、王室に講義中です』
流石はブランケット家。行動が早い。
「こんなことまでして許さないわ!」
セナ王女はミネスさんとミナクお兄様に結界をかけた。
「ミナク、ミネスを好きにしなさい!」
まさか、ミナクお兄様……。けれど、ミネスさんは平然としている。でも、ミナクお兄様はどんどんミネスさんに近付いている。その時、ナルホさんが結界を解いてミネスさんを連れ出した。
「ミネス、先に出てよう」
ナルホさんはミネスさんを連れて露天風呂を出た。
「ねえ、ラルク、露天風呂って久しぶりだよね」
「そうだな、小学生の社会見学以来だな」
もうっ、ナミネとラルクあんなにくっついて。
「あんた、ここでちょっとは休んでおけ。次の予定あるからな」
「え、次の予定って?」
「動物園の飼育員のバイトだ」
何それ。元旦にどうしてそんなことするのだろう。
「どうしてバイトなんかするの?」
「一目惚れカラルリがテンネに貢ぎすぎて借金出来たから、みんなでまたバイトすんだ」
それって、カラルリさんの問題じゃない。正直巻き込まれるのはいやだ。ナミネのことも説得して温泉上がったらナノハナ家に帰ろう。
「私、やらないから」
「あんたがしなくてもみんなする。進級すれば職場体験だってしなきゃなんない。それも兼ねてみんなするんだよ」
職場体験か。私は、ろう学校を考えているが。そもそも、どうして動物園の飼育員なのだろう。気乗りはしないが経験は多いほうがいいかもしれない。
「分かった」
露天風呂から上がると、お土産屋さんを少し見て、私たちはまた4班に分かれ、タクシーで動物園へ向かった。
正直、初詣は見知らぬ人に阻止されるし、料亭ではセナ王女が暴れてロクにご飯食べられなかったし、露天風呂もナミネが心配でゆっくり入れなかった。それに正月早々バイトだなんて、ハードすぎる。
動物園に着くと、私たちは制服に着替え、飼育員さんの説明を聞いてバイトを開始することになった。
えっと、まずは鍵を開けて、動物にエサをあげて……。あれ、突然動物たちが寄ってきた。私はエサから離れた。けれど、動物は私に付きまとってきた。私は咄嗟に逃げた。
すると小動物が私をずっと追いかけてくる。しまった、鍵をかけ忘れてしまった。戻らないと。その時、鍵がかかっているはずのところから一頭のライオンが私に近付いてきた。私は逃げようとしたが、ライオンは猛スピードで私に追いつき、私を押し倒した。どうしよう。殺されてしまう。私は扇子を取り出した。
え、ライオンが私のズボン脱がしてる。パンツも……。
誰か助けて!そう叫ぼうとしたが声が出ない。このままではメスライオンに犯されてしまう。誰か……。
「ねえ、ラルク、ヨルクさんパンツ脱いでるよ」
「ついに人間だけじゃ物足りずメスライオンに走ったか」
ナミネ、ラルク……。見てないで助けて。
「ラルク、羊さんのエサやり楽しかったね」
「そうだな、みんな大人しかったしエサやりもしやすかったな」
何故助けてくれない。
「あんた、動物園のど真ん中でなにやってんのさ」
「みんな見てないで助けて!!」
私は大声で叫んだ。
「ねえ、どうする?ラルク」
何故ラルクに聞く。
「まあ、メスライオンが恋人ってのも可哀想だし、助けてやるか」
ラルクが私の上に乗ってるメスライオンを扇子で吹き飛ばすと、元の場所に戻し、扇子で鍵をかけた。ナミネは私を起こしてくれた。
「あんた、流石に飼育員のバイト中にフリチンは不味いだろ」
落ち武者さんは私のパンツとズボンを上に上げた。すると、どこかから笑い声が聞こえてきた。
「ヨルク、お前よくこんなところでパンツ脱いでいられたな」
「本当、恥晒しだわ」
ミナクお兄様……セナ王女……仲直りしていたのか。
「ヨルクさん、大丈夫ですか?」
アヤネさん……。
「メスライオンにいきなり襲われまして……」
「それは怖いですね。パンダの赤ちゃん産まれたので見に行きませんか?」
赤ちゃんなら大丈夫か。
「はい、見に行きます」
私が歩こうとした時、逃げた小動物たちがまた私に付きまとってきた。どうして私にだけ寄ってくるのだろう。
「あんた、何ボヤボヤしてんのさ」
落ち武者さんたちは1匹ずつ私から引き離し、元の場所へ戻して行った。
正直、動物園のバイトはハードすぎる。メスライオンには本当に犯されるかと思った。こんなバイト二度としたくない!
「あまり言いたくないけど、ライオン入ってるオリの鍵開けたのカンザシだ」
「え……」
……
あとがき。
イケメンなヨルクは人間だけでなく、メス動物にも大人気。
それにしても、元旦からバイトって純愛偏差値には休みというのがありませんね。
カンザシはヨルクをハメようとしていたのでしょうか。
《ヨルク》
紅葉神社に初詣に行ったら、私は見知らぬ人にイジワル犯に間違えられた。けれど、その時私はあまりに驚きすぎて言葉が出なくて身体が固まっていた。落ち武者さんがカンザシさんの指紋で私の無実を証明してくれたけれど、もし、あの場に私1人だったら、何も証明出来ず、犯人に仕立て上げられていたのかと思うと、とても怖くなった。
そして、ナミネは私のせいで傷を負った。
私は自分の無実を自分で証明出来ない情けない男かと思うと涙が零れていた。ナミネが傷を負ったことにより、私に罪を着せようとした人は現行犯逮捕となったが、私は自分のことなのに何もしていないことに対して自分に腹が立った。
紅葉町警察署を出たら、落ち武者さんは料亭に向かうのではなく、ミィミさんが言っていた桜木町の廃墟の並んだ場所に向かい、私たちは今そこにいる。ちなみに落ち武者さんの指示でみんなはイヤホンマイクを外した。
「ナミネ、大丈夫?私のせいでごめんね」
「大丈夫です」
ふと見るとナミネは真剣な表情をしていた。
「顔だけヨルク、今は少しでも手がかりになることを探せ!」
歩いていると、ミィミさんの言っていた何世紀も放置されていただろう古民家が見えてきた。それにしても、廃墟が立ち並ぶ中、一つだけ古民家があるのも不自然に感じる。
「証拠残さないよう、みんな手袋はめろ!」
私たちは手袋をはめた。
古民家の中は、まるで遠い昔にお店をやっていたような雰囲気だった。
「ここ、カンザシさんのコンサートが終わった後、よくズームさんと3人で来ていた居酒屋です」
ナミネの思い出の場所なのか。私たちは店内を歩いたがこれといったものはなく、古民家を出て再び廃墟を歩いた。
「あ、この廃墟、私とカンザシさんが住んでいたアパートです」
「じゃ入る。何号室だ?」
「確か7号室だったと思います」
私たちは廃墟になった元アパートの7号室に入った。それにしても何世紀も前のものが、まるでひと昔前のような古びれた建物として残っているのも奇妙だ。その後、改装されて再び廃墟になったとしか思えない。
7号室に入ると、ナミネの言っていた通り、ワンルームの狭いアパートだった。こんなところでナミネが暮らしていたかと思うと私は胸が痛んだ。
その時、ナミネは何かを手に取っていた。
「ナミネ、それ何?」
「ルビーのネックレスです。カンザシさんが私にくれるのは、いつもルビーでした」
まるで、私とは相反するプレゼントだ。
「そのネックレス、持って帰れ!」
「ちょっと待って!いくら廃墟だからって窃盗はよくないと思う!」
落ち武者さんはいつも無茶振りだ。ナミネもちゃっかりポケットに入れているし、2人は法律というものを知らないのだろうか。
「元々の持ち主が持っていて何が悪い!ここの当時の入居名簿とショップの購入者名簿入手すればなんとかなるだろ!」
何故強引にネックレスを持って帰ろうとする。
ふと、お風呂を見てみたが1人用の四角い木の浴槽だった。
「おい、ネックレスが入っていただろう箱あったぞ!」
私は慌てて落ち武者さんの元へ駆け寄った。
桜木ジュエリー。今でも存在するジュエリーショップだ。けれど、当時のジュエリーショップと関連しているのかは分からない。するとナミネが天井の木を1枚めくった。アルバム?
ナミネはアルバムをペラペラめくりはじめた。かなり色褪せているけれど私との思い出の写真……。カンザシさんに見つからないように隠していたのか。ナミネはアルバムを袖に入れた。
その後、落ち武者さんは、今は廃墟の当時は桜木ジュエリーだった場所から当時の購入者リストを持ち出した。
「後はカンザシの聞き込みだな」
「僕としては、カンザシさんにはもうナミネと関わって欲しくない」
ナヤセスさんからしたらそうだと思う。カンザシさんはドラマでナミネと関係持とうとしているし、過去にイジワルもしている。すぐに縁を切って欲しいだろう。
「ナヤセス、強気なナミネとカンザシは何世紀も前からの付き合いだ。今、縁を切ろうとしても、それは無理なことだ。僕らは歴史を辿るしかないんだよ!」
切り離したくても切り離せない存在。それが自分にとって害を及ぼす人ならば……。2020年という新しい時代に私たちは生きているというのに、過去を掘り返さなくてはならない。私たちの背負った輪廻はあまりに重たすぎた。
料亭に戻ると、落ち武者さんは予約していた個室に入るなりイヤホンマイクでカンザシさんとズームさんを呼び出した。すると何故かナルホさんとミネスさんも来た。
「カンザシ、詳細全部話せ!」
「ラルク、お腹すいたよね」
「ナミネ、こんな時くらい我慢しろよ」
こんな真面目な時にどうして、いつもみたいにいられるの。
「エルナ、適当にみんなの注文しろ!」
「分かったわ」
エルナは、御膳をみんな分注文した。
「あれは、1年前でした。何もかもが上手くいかなくてムシャクシャしていたと思います。虹色街から、たまたま桜木町を歩いていました。懐かしい空気を吸いたかったのでしょう。その時に1人の制服着た女子高生が歩いていて魔が差したんです。気付いたら犯していました。怖くなった僕はその場から立ち去りました」
聞いていて私は言葉にならなかった。
「あんた、だったらなんで、神社で名乗り出なかった!まさか顔だけヨルクに罪着せるつもりだったのか?あんたのせいで強気なナミネは被害者から刺されたんだよ!どう落とし前つけてくれんだよ!」
カンザシさん、まさか私に罪を着せて自分は逃げ切るつもりだったのか?だとしたら、許せない。もし、私が捕まったとして、やっていないことをやったと言うまで出してもらえないだろう。『やっていないと主張した』という実話が元になった映画のように。私とナミネの関係を壊すつもりだったのだろうか。
「すみません。芸能界に入ることはずっと夢だったので、その夢を壊せなかったです。その思いが暗黙にヨルクさんが疑われてしまう原因になってしまいました」
「あんたとんでもねえ野郎だな。冤罪だったら、逆にあんたの人生壊れてたんだぞ!」
「そこまで考えが及びませんでした」
私に罪を着せようとしてまで芸能界にしがみつくというわけか。もうここまで来たら私も容赦出来ない。その時、エルナの注文した御膳が運ばれて来た。ナミネは適当なのを選んで、食べはじめた。
「カンザシさん、今、あなたのご実家にクレナイ家 顧問弁護士を向かわせました。カンザシさんを虚偽告訴罪で訴えます!」
「待ってください!実家は関係ないでしょう!取り下げてください!」
私はカンザシさんに無実の罪を着せられ、運悪ければ、私が少年院行きだったのに、いざ自分が不利な立場に立たされたら、慌てふためく。無様な光景だ。けど、私は私を陥れようとしたカンザシさんを許さない。
「カンザシ、大丈夫だよ。今、ブランケット家の顧問弁護士をカンザシの実家に向かわせたから」
この者は、どこまでもカンザシさんを庇う気か。例え犯罪だとしても。
「ミネスさん、あなたのしてることって犯人隠避罪ですよね?しかしながら、皇帝陛下はあなたを罪に問うています」
犯人隠避罪。犯人蔵匿罪とよく似ているが、犯人蔵匿罪以外で犯人の逮捕を妨げる行為だ。ナミネは皇室からの紙飛行機をミネスさんに見せた。
『ミネスを皇室の初級武官によって赤花咲に処する』
皇帝陛下が下した決断は絶対だ。
「へえ、ナミネって卑怯な手使うんだ」
ミネスさんは皇室に取り消すよう連絡をしたが、皇帝陛下の決断は覆らなかった。
「ミネスさん、今すぐ皇室で赤花咲してもらいましょうか。そして、私はその後もあなたには生きて償ってもらいます!ヨルクさんを陥れた人間を私は1人残らず排除します!」
ナミネ、こんな私を庇ってくれている。それなのに無力な私は自分を責めるしかなかった。
「待って!分かった!カンザシのしたことの慰謝料は支払う!だから取り消して!」
「でしたら、この書面にサインをしてください」
ナミネはミネスさんに書面を突き付けた。
『○二度とカンザシさんを庇わない
○ヨルクさんに罪を着せたら赤花咲を行う
○ヨルクさんの安全を常に守る
○私とヨルクさんの関係を引き裂かない
○カンザシさんが私に1000年の恋の話題をしたら赤花咲を行う』
かなり厳しい条件だ。ミドリさんは戻ってきたけれど、今度はナミネは私との関係を守ることに徹底している。
「これにサインしないなら、今すぐ皇室で赤花咲してもらいます!」
もうミネスさんの選択肢はないだろう。別にミネスさんが悪いとは思わない。ただ、ミネスさんを通して私やナミネに害が及ぶのは避けたい。
「分かった……」
「ナミネ、やめようか。今回の件はヨルクが向かわせた顧問弁護士だけで十分だよね。ここまでやるのは割に合わないと僕は思う。ミネスはブランケット家の顧問弁護士にキャンセルの歴史してくれるかな。君のさっきの発言は録音してあるから、今顧問弁護士を向かわせたら犯人隠避罪で捕まるのは君だよ?犯罪者を庇うことは良くなって君も分かるよね?」
ミネスさんは無言でブランケット家の顧問弁護士がカンザシさんの実家に行くことをキャンセルした。ナルホさんはナミネの書類を破り捨てた。
「ミネスさん、いくらお金持ちでも犯人庇うことは許されません。二度と同じ過ちはしないでください。でないと、私も次は取り下げません」
「分かった……」
ナミネの強気な押しにミネスさんは泣きはじめた。
「ナミネさん、カンザシのことは僕が何とかしますし、あなた方お2人の関係は壊させません。ミネスが間違ったことをしたら必ず僕が止めます。ナミネさんの現世での幸せは僕が守ります。だから、今回のミネスの未熟な判断は水に流してもらえませんか?」
ズームさんはカッコイイ。関わりたくないことに敢えて入っていって、ヒーローになる。ナミネのヒーローはズームさんだ。私はズームさんほどのことは出来ない。
「ナミネって狡い!私は別にナミネに危害加えようとしてないのに。実の兄を味方に付けて、彼氏とはラブラブで、私のお兄ちゃんに頼って、私からカンザシを奪って、卑怯にも程がある!誰も私には味方してくれない。不利な私をナミネは責め立てる。ナミネはヨルクが犯罪者でも庇わずにいられるの?」
ミネスさんはその場に泣き崩れた。その時、ナルホさんがミネスさんを抱き締めた。
「ごめんね、ミネス。決して君を孤立させようとしていたわけではないんだよ。ナミネは少しやりすぎなところがあるんだ」
「ミネスさん、あなたのお兄様が亡くなった日、私の姉も亡くなりました。これが姉の最後の姿です。こうなってでも、あなたはカンザシさんを庇いますか?」
ナミネはミドリさんの最後の写真を見せた。
人というものは残酷だ。真面目に生きている人ほど騙され道を阻まれやすく、悪意を持った人ほど上手く人脈を作り世渡り上手である。
「庇えない……」
「つまり、ミネスさんは、いざとなったらカンザシさんを見捨てて逃げる見た目も性格も不細工なカンザシさんに尽くすだけ尽くして利用されるだけの親の七光り野郎です!」
ナミネの言葉は時に人の心を壊してしまう。ナミネは真っ直ぐだけれど、失いたくないものを絶対に失わないために、相手を不利な立場に立たせてしまう。
「ナミネ、やめてくれないかな?ミネスはもう十分に反省している。今後はカンザシさんの犯罪は庇ったりしない。これ以上ミネスを攻撃しても誰も何の得もしないよ」
何となく、出会ったばかりなのにミネスさんとナルホさんの距離が近い気がする。その時、武官が現れた。武官はミネスさんに結界をかけるなり、ミネスさんの着物を脱がしはじめた。
「ねえ、ラルク、このえび天美味しいね」
「そうだな、料亭の味はやっぱり違うな」
もうっ、こういう時にどうしてナミネとラルクは何もしないの!
「ミネス!」
「お兄ちゃん!助けて!」
いったい、誰が何のためにミネスさんを狙ったのだろう。ミネスさんが、下着に手をかけられた時、ナルホさんが結界を解き、ミネスさんを救い出すとナミネとラルクが武官を拘束した。そして、カンザシさんは妹同然のミネスさんが、襲われているにも関わらず、何もしようとしなかった。
ミネスさんは泣きながらナルホさんに抱き着いた。
「ナルホ、怖かった……怖かった……!」
「ミネス、君がピンチな時は必ず助ける。君は1人じゃない」
ナルホさんは、ミネスさんの乱された着物を元に戻した。
「で?あんたらなんで、お子ちゃまミネス襲った」
落ち武者さんは羽子板を持っていた。武官は黙っていた。落ち武者さんは武官の1人に思いっきり羽子板を振りかざした。ナミネとラルクはまとめて拘束したから、1人を叩けば、全員に電流が流れるだろう。
「セナ王女に頼まれた。理由は知らない」
今度はセナ王女が悪魔と化されてしまったのか。これではキリがない。新年早々からもう厄年だ。
「ミネス、別の個室取るからそこに行こうか」
「ううん、どうしてセナがこんなことしたのか、私も聞く!」
ミネスさんて、意外に物事はハッキリさせるタイプなのか。襲われたばかりなのに、もう真剣な顔をしている。カンザシさんが日常の中にいなければ、本当は純粋な人なんだろうな。
「じゃ、セナとミナクここに呼ぶ」
落ち武者さんはセナ王女とミナクお兄様をここに呼んだ。
「セナ、どうして私を襲わせたの?私、セナに何かした?」
「ミナクを取るからよ!あなたも痛い目見れば人の男取らないと思ったのよ!」
やっぱりセナ王女は一方的すぎる。
「私がいつミナクを取ったの?証拠でもあるの?裁判になったら勝てるの?」
「屁理屈なお嬢様ね。私は一国の王女よ。私が取ったと言えば取ったの!」
何だ、その自己中心的なものの考え方は。
「その理屈は裁判で通用するの?」
「裁判裁判てあなた何様よ!今すぐお父様に言いつけるわよ!」
「言ってみなよ。ほら、今すぐ言ってみなよ」
どちらも1歩も引かない言い争い。その時、ナミネが私にご飯を一気に詰め込んだ。私はむせた。
「どうして真剣な時にこういうことするの!」
「今食べておかないと後でお腹すきます」
だからって何も一気に詰め込むことないのに。
「分かった」
私は少し機嫌を損ねながら冷めた御膳を食べた。
「なあ、ミナク、あんたはどうなんだよ?」
「私はセナ王女のみを愛している。ミネスのことは友達以上には思っていない」
「嘘よ!明らかミネスのことばかり見てたわ!ミネスもミナクも王室で裁いてやる!」
セナ王女の一方的な発言はいつまで続くのだろう。
「これ以上は無駄な口論だね。私はもうセナに何も聞かない。勝手にすればいいよ。けれど、自分のしたことは自分に返ってくるから」
ミネスさんはナルホさんの腕を組んで個室を出た。
「じゃ、僕らも次に行くか」
「待ってよ!問題が起きたらみんなで話し合うべきだと思うわ!」
その問題を起こしたのはどこの誰だ。という思いを私は口に出さずにいた。
私たちは、セナ王女とミナクお兄様を置いて露天風呂に向かった。
私がボーッと歩いている間にナミネとラルクは混浴温泉に入ってしまった。私は慌てて走った。
混浴温泉の脱衣所ではナミネが着物を脱ぎはじめていた。
「ナミネ、待って!混浴温泉じゃなくて女湯に入って!」
カンザシさんだけにはナミネを見られたくない。
「ねえ、ラルク、ヨルクさんて心狭いよね」
「もう束縛レベルだな」
どうしてそうなるの。とにかくナミネをここから出さないと。そう思っていたら、ミナクお兄様も入って来て、追うようにセナ王女も入って来た。
気付いたらナミネとラルクは裸のまま露天風呂に向かって行った。私は慌ててタオルを持ってナミネを追いかけた。
「ナミネ、せめてタオル巻いて」
私はナミネにタオルを巻いた。その時、ニュースが流れた。
『王室の第6王女はブランケット家の次女を武官に襲わせたとし、ブランケット家は現在、王室に講義中です』
流石はブランケット家。行動が早い。
「こんなことまでして許さないわ!」
セナ王女はミネスさんとミナクお兄様に結界をかけた。
「ミナク、ミネスを好きにしなさい!」
まさか、ミナクお兄様……。けれど、ミネスさんは平然としている。でも、ミナクお兄様はどんどんミネスさんに近付いている。その時、ナルホさんが結界を解いてミネスさんを連れ出した。
「ミネス、先に出てよう」
ナルホさんはミネスさんを連れて露天風呂を出た。
「ねえ、ラルク、露天風呂って久しぶりだよね」
「そうだな、小学生の社会見学以来だな」
もうっ、ナミネとラルクあんなにくっついて。
「あんた、ここでちょっとは休んでおけ。次の予定あるからな」
「え、次の予定って?」
「動物園の飼育員のバイトだ」
何それ。元旦にどうしてそんなことするのだろう。
「どうしてバイトなんかするの?」
「一目惚れカラルリがテンネに貢ぎすぎて借金出来たから、みんなでまたバイトすんだ」
それって、カラルリさんの問題じゃない。正直巻き込まれるのはいやだ。ナミネのことも説得して温泉上がったらナノハナ家に帰ろう。
「私、やらないから」
「あんたがしなくてもみんなする。進級すれば職場体験だってしなきゃなんない。それも兼ねてみんなするんだよ」
職場体験か。私は、ろう学校を考えているが。そもそも、どうして動物園の飼育員なのだろう。気乗りはしないが経験は多いほうがいいかもしれない。
「分かった」
露天風呂から上がると、お土産屋さんを少し見て、私たちはまた4班に分かれ、タクシーで動物園へ向かった。
正直、初詣は見知らぬ人に阻止されるし、料亭ではセナ王女が暴れてロクにご飯食べられなかったし、露天風呂もナミネが心配でゆっくり入れなかった。それに正月早々バイトだなんて、ハードすぎる。
動物園に着くと、私たちは制服に着替え、飼育員さんの説明を聞いてバイトを開始することになった。
えっと、まずは鍵を開けて、動物にエサをあげて……。あれ、突然動物たちが寄ってきた。私はエサから離れた。けれど、動物は私に付きまとってきた。私は咄嗟に逃げた。
すると小動物が私をずっと追いかけてくる。しまった、鍵をかけ忘れてしまった。戻らないと。その時、鍵がかかっているはずのところから一頭のライオンが私に近付いてきた。私は逃げようとしたが、ライオンは猛スピードで私に追いつき、私を押し倒した。どうしよう。殺されてしまう。私は扇子を取り出した。
え、ライオンが私のズボン脱がしてる。パンツも……。
誰か助けて!そう叫ぼうとしたが声が出ない。このままではメスライオンに犯されてしまう。誰か……。
「ねえ、ラルク、ヨルクさんパンツ脱いでるよ」
「ついに人間だけじゃ物足りずメスライオンに走ったか」
ナミネ、ラルク……。見てないで助けて。
「ラルク、羊さんのエサやり楽しかったね」
「そうだな、みんな大人しかったしエサやりもしやすかったな」
何故助けてくれない。
「あんた、動物園のど真ん中でなにやってんのさ」
「みんな見てないで助けて!!」
私は大声で叫んだ。
「ねえ、どうする?ラルク」
何故ラルクに聞く。
「まあ、メスライオンが恋人ってのも可哀想だし、助けてやるか」
ラルクが私の上に乗ってるメスライオンを扇子で吹き飛ばすと、元の場所に戻し、扇子で鍵をかけた。ナミネは私を起こしてくれた。
「あんた、流石に飼育員のバイト中にフリチンは不味いだろ」
落ち武者さんは私のパンツとズボンを上に上げた。すると、どこかから笑い声が聞こえてきた。
「ヨルク、お前よくこんなところでパンツ脱いでいられたな」
「本当、恥晒しだわ」
ミナクお兄様……セナ王女……仲直りしていたのか。
「ヨルクさん、大丈夫ですか?」
アヤネさん……。
「メスライオンにいきなり襲われまして……」
「それは怖いですね。パンダの赤ちゃん産まれたので見に行きませんか?」
赤ちゃんなら大丈夫か。
「はい、見に行きます」
私が歩こうとした時、逃げた小動物たちがまた私に付きまとってきた。どうして私にだけ寄ってくるのだろう。
「あんた、何ボヤボヤしてんのさ」
落ち武者さんたちは1匹ずつ私から引き離し、元の場所へ戻して行った。
正直、動物園のバイトはハードすぎる。メスライオンには本当に犯されるかと思った。こんなバイト二度としたくない!
「あまり言いたくないけど、ライオン入ってるオリの鍵開けたのカンザシだ」
「え……」
……
あとがき。
イケメンなヨルクは人間だけでなく、メス動物にも大人気。
それにしても、元旦からバイトって純愛偏差値には休みというのがありませんね。
カンザシはヨルクをハメようとしていたのでしょうか。
純愛偏差値 未来編 一人称版 67話
《ナミネ》
2020年1月1日。
今日は正月だ。
私は朝起きるなり、ズームさんのお母様のお節が食べたくてそのまま部屋を出ようとした。
「ナミネ、あけましておめでとう」
「あけましておめでとうございます、ヨルクさん」
「今日はお節食べた後はすぐに初詣だから朝から着物着ようね」
「はい」
私はルームウェアを脱ぎ捨てた。
「ナミネ、ここは落ち武者さんもいるから無闇に下着姿にならないで」
ヨルクさんは昨日の夜用意してくれていたのか、私に淡いオレンジ色のかすみ草の着物を着せた。帯は淡い水色。補色って使い方難しいけど、ワンポイントなどは合う時もあったりする。
そして、セミロングの私の髪をヨルクさんは上手にまとめて菜の花の髪飾りを付けた。
「ナミネ、外雪だからこのケープ上に着て」
着物用の白いケープ。ヨルクさん買ってくれたのだろうか。私は嬉しくてヨルクさんに抱き着いた。
そういえば、遠い遠い昔もヨルクさんと初詣行く時、雪が降っていて、その時は今みたいにケープとかなかったから上に薄いカーディガンを羽織っていたんだっけ。ヨルクさんはいつも番傘をさしてくれていた。
「あんたら新年早々イチャついてんな!今日は混むから早めにここ出るぞ!」
ヨルクさんも着物を着て、落ち武者さんとエルナさんもヨルクさんに着物を着せてもらった。エルナさん、紫似合うなあ。落ち武者さんは髪が銀色なだけにやっぱり白い着物だね。
ちなみに、昨日の晩からナクリお姉様は部屋で引きこもっている。初詣にも行かないらしい。ミドリお姉様はカナコさんたちが迎えに来るそうだ。
第4居間に行くとだいたいのメンバーが揃っていた。そして、見知らぬ女の子が1人いた。私は女の子に駆け寄った。女の子はボブヘアで青いニットセーターに白いミニスカートを履いていた。
「あの、どちら様でしょうか?」
女の子は振り向いた。
「へえ、君がミスコングランプリ。大したことないじゃん」
えっ、初対面でこの対応何?
「第6王女は恋愛依存体質。その隣にいる黒髪の男は女遊びしまくり。第5王子は浮気体質。その隣にいる黒髪ロングヘアの女は男に尽くしすぎ。銀髪の君は精神年齢が幼い。その隣にいる金髪の女は未練ありすぎ。緑の髪の君は趣味にのめり込みすぎ。第7王子は1番を掴めない。銀髪のロングヘアの女はワガママ」
何故この世にこれ程に似た人がいるのだろう。落ち武者さんの親戚だろうか。私は落ち武者さんを見た。
「あんた、僕に喧嘩売ってるわけ?」
「実際そうじゃん」
この人、落ち武者さんの何を知っているのだろう。
「他人の家来ていきなり失礼な態度取るあんたほうが子供だけどね?」
星空レストランで全く同じことしていた人がそれを言うのか。それにしてもこの女の子誰だろう。てか、さっきから、ミナクさん、この女の子ばかり見てる?よく見ると女の子はかなり丈の短いスカートにニットセーターは露出が高い。少し動くと下着が見えてしまいそう。
「あのどちら様でしょうか?」
私はもう一度聞いた。
「へえ、今日は初詣行くんだ。私も着物着たいな」
ダメだ。話が通じない。その時、カンザシさんが入って来た。女の子は真っ先にカンザシさんの元へ走った。
「カンザシ!会いたかった!」
「ミネス、元気だった?」
「うん、元気だよ」
カンザシさんの友達か。って、ミネスさんて人、カンザシさんに抱き着いてる!
「カンザシ、私との交際いつになりそう?」
「ミネスのことはずっと妹として見てきたから、それ以上には見えないよ」
幼なじみだろうか。それにしてもカンザシさんがこういう綺麗系な人を妹以上に見れないだなんて意外。何だかミナクさんのミネスさんに対する視線がまた問題を引き起こしそう。
あれ、ミナクさんの携帯新しくなってる。いつ契約したのだろう。
「ミネス!またそんなはしたない格好して!今すぐ選んでやる!」
「キモイ!近付かないで!」
ズームさんに対してキモイだなんて、この人……。
「あのズームさんは……!」
「へえ、お姉ちゃん彼氏出来たみたいだけど、ただの貧乏人じゃん」
え、ミネルナさんの妹さんと言うことはズームさんの妹さん!?何だか3人とも似てないな。
「私の彼氏悪く言うのやめてくれる?将来は医師になるのよ。あなたこそ、いつまでも叶わない恋追いかけて惨めね」
「お姉ちゃんこそ、偏差値は低い、常に赤点、ピアノも何も弾けない、社交界では友達いない。ブランケット家に相応しくないと思うな」
私はお節を早く食べたくて、ラルクの隣に座った。
「あなた、言ってくれたわね!」
ミネルナさん、コンプレックス感じてるんだ。
「はい、ストップ!お子ちゃまミネスも初詣行くのか?」
「行くよ!カンザシに会いに来たんだもん!」
「この人数だから4班に分けて行動する。お子ちゃまミネスは3班ね」
「分かった。あ、一応みんな連絡先教えといて」
みんなはミネスさんと連絡先交換をした。
「ミネスは何年生?」
「3年生だよ」
「じゃあ、私と同じだな。今度食事にでも行かないか?」
「別にいいけど」
セナ王女がいるのにどうして他の女誘うの?てか、ミナクさん、ミネスさんに明らか一目惚れしてるよね。
「ナミネ、お吸い物と赤飯持ってくるね」
「はい」
私はお節を開けて玉子巻きを食べた。美味しい。もっと食べよう。
「あんたさ、なんで手で食べてんのさ。ちゃんと取り皿に入れろ」
ヨルクさんがいないと思ってたら落ち武者さんが指摘するなんて。それにしても、セナ王女、明らか怒ってるよね。ミナクさん、ずっとミネスさんに話しかけているし。
「ねえ、ラルク。どう思う?」
「まあ一目惚れな感じじゃないか?」
「それアウトじゃん」
その時、ヨルクさんとカナエさんが赤飯とお吸い物を持って来た。
「ナミネ、好きなものお皿に入れてあげる」
ヨルクさんは数の子とかイクラとかカマボコなど色々取り皿に入れてくれた。
「ありがとうございますヨルクさん」
私は一気に食べた。
「美味しいです。もっとください」
「ナミネ、初詣の後は料亭行くんだから、これ以上食べるとお昼入らなくなるよ」
「分かりました」
それにしても、ミネスさんがカンザシさんを好きなら一緒にならないとカンザシさんは一生1人な気がする。逆玉に乗れるチャンスなのに。
「私も着物着たい!」
「ミネス、私が着付ける」
「ねえ、ミナクは私の彼氏なんだから、いちいち邪魔するようなことしないでくれないかしら」
「ミナクが私に話しかけてきてるんだけど」
ズームさんの妹さんなだけあって気が強いなあ。
「僕が着付けるよ。他にも着物着たい人いたら言って」
ミネスさんの他にはナヤセス殿、ロナさん、アヤネさん、ユメさん、委員長、ロォラさんをナルホお兄様が着付けることになった。
「人混むから武家オリジナルイヤホンマイク1人1つ持ってけ」
落ち武者さんはみんなにイヤホンマイクを渡した。武家のイヤホンマイクはかなり遠くまで話し声が届く。音質の改良もされたし、話しかければ声はみんなに聞こえるけど、分かれて行動するから、持っていたほうが、みんなといるみたいで楽しいかもしれない。
「あの、ミネスさんってこれまで付き合った人とかいるんですか?」
「いないよ。カンザシが振り向いてくれるのずっと待ってる。何世紀も前からずっと」
何だかその忍耐力はまるでヨルクさんみたい。ミネスさんって、カンザシさんのこと本気なんだ。
「カンザシさん、悪いことは言いません。ミネスさんと交際しないと将来絶対損します」
「ナミネさん、ミネスはカンザシには渡しません」
そうだった。ズームさんが、大切な妹をだらしないカンザシさんに預けるわけないか。ミネスさんはいくらでもいるけど、カンザシさんと長く交際してくれる人がいないんだよな。
「お兄ちゃん、私とカンザシの恋愛に口挟まないでよ!お姉ちゃんはその貧乏人と付き合ってるじゃん!」
「カンザシと違ってロォハさんは優秀なんだ!姉さんとは真剣に交際してる!兄さんも戻って来たしまた時計騎士目指してる。お前もちゃんと将来のこと考えろ!」
そういえば、ミネスさんてこれまでの前世はどんな職業して来たんだろう。
「あ、ズルエヌ復活したんだ」
何故、1番上の兄を名前で呼ぶところまで落ち武者さんに似ているのだろう。私は小声でラルクに話しかけた。
「ねえ、ラルク。ミナクさん、ずっとミネスさんのこと見てるよ」
「もう完全に惚れてるな」
「セナ王女はどうなるの?」
「いっときの感情か心変わりで決まるんじゃないか?」
その時、落ち武者さんからメールが来た。
『あんたら話丸聞こえ』
落ち武者さんって耳良かったっけ。
『あの、ミナクさんとセナ王女どう思います?』
『2人はもうダメだろ。お子ちゃまミネス見てる時点で甘えセナを女として見れてないんじゃないか?カップル日記見てみろよ』
うーん、1日のことで、そこまで断定出来るものなのだろうか。私はカップル日記を開いた。
『ミナクがお昼作ってくれた』
『ミナクとフェアバ』
『ミナクと添い寝』
『ミナクとFメモリイ♡』
あれ、Fメモリイ頻度かなり減ってなくない?そういうものなのだろうか。でも、まだ付き合って3ヶ月なのに。あれだけ大々的な告白で別れるとか私だったらいやだな。でも、一度カラルリさんと別れてるか。
『カナエにスコーンを作った』
『カナエにブラックダイヤモンドの指輪を買った』
何だかこの2人も別れそう。カナエさんの投稿が全然ない。
『ユメとフェアバでクリスマス限定のドリンク注文』
あ、2つ並べるとハートの形になってる。
『ロォハとバイクで海に行った』
ミネルナさんもカップル日記はじめたんだ。
『ナミネが手編みのマフラーをクリスマスプレゼントに用意してくれた。
物凄く嬉しいし、大切に使う。
ありがとう、ナミネ』
ヨルクさん、投稿してくれてたんだ。
「じゃ、初詣行く。リストのメンバーで行動しろ!」
私がカップル日記見てるうちに、ミネスさんたち着物に着替えてる。ロォラさんて着物着ると雰囲気変わるなあ。
紅葉神社に着くと物凄い人混みだった。この神社、普段は全然人いないし、そこまで大きな神社ではないのに、この町の人は正月になれば、ここに来る。遠い昔は元旦でも人なんか殆どいなかったのに、時代も変わったもんだ。
「ラルク、おみくじ引きに行こうよ」
「そうだな」
私がラルクとおみくじを引きに行こうとした時、ヨルクさんは私の手を掴んだ。
「ナミネ、私たちは1班で行動するから勝手にはぐれないで」
「はい」
私はヨルクさんを見つめた。少し近い前世ならみんな着物着ていたのに、この100年ですっかり変わってしまって、今では西洋の文化が入って来て日常的に着物を着ている人は殆どいない。
ヨルクさんの着物姿を見れるのも今では正月くらいになってしまった。
「ねえ、ラルク、このまま歩いていても全然進まないよね」
「そうだな。お昼、料亭行けないかもな」
困ったな。お腹も空いてきた。私はナヤセス殿によじ登った。あ、商店街のおじさん屋台開いてる。私はこっそりメンバーから離れ屋台に近付いた。
「おじさん、あけましておめでとうございます!」
「ナノハナ家とこのナミネか。大きくなったな。これ、おじさんからのサービスだよ」
「ありがとうございます!」
私はイカ焼きを持って、再びこっそり1班に戻った。イカ焼き。とってもいい香り。
「ナミネ、何食べてるの?」
「イカ焼きです。屋台のおじさんからもらいました」
「料亭で昼ご飯食べれなくなっても知らないからね」
ヨルクさんはすぐにガミガミ言う。まるで嫁をいびる小姑みたいだ。その時、カンザシさんからイヤホンマイク越しに声が飛んで来た。
『ナミネさん、どうしてもあのドラマの共演はしてもらえないでしょうか?』
みんなに聞こえてるのに、どうして終わった話をまた言うの?
『カンザシ、どのドラマ?』
『1000年の恋だよ、ミネス』
1000年の恋というのか。それにしても、いくらドラマとはいえラブシーンでヨルクさんを裏切るようなことは絶対出来ないし、何より、私は綺麗な身体でいたい。
『カンザシ、まだ配役は未定だよね。ナミネ以外の女優となら交渉してあげる』
あの時、カンザシさん、もう主役決まったような言い方だったけど、全く決まってなかったんだ。嘘ついていたわけか。
『ミネス、どうしてもナミネさんと共演したい。頼む、契約して欲しい』
どうしてカンザシさんはそこまで私に拘るのだろう。
『ナミネとだけはダメ。どうしてもナミネと共演したいなら実力で主役勝ち取って。聞くけど、カンザシはどうして彼氏持ちのナミネと関係持とうとするの?』
実力で主役になられても私はヒロインは演じない。
『ナミネさんのことが好きだから。それにナミネさんは僕の実の妹だ』
『実の妹でも、婚姻が法律で認められた以上はナミネとだけは絶対ダメ』
女の勘というものなのだろうか。ミネスさんは昔のカンザシさんと私の関係に薄々気付いている気がする。今のカンザシさんにとって私が本命ならカンザシさんのことを本気で想ってるミネスさんが認めるわけがない。
「なあ、カンザシ、あんた強気なナミネの処女奪ってどうする気だ?あんた正気か?」
何か癪に障る言い方だけど、ミスコングランプリも取ったし表向きでは清純派装わないと。
『ナミネさんには、これから結婚まで僕のことを好きになってもらえたらそれでいいと思っています。1000年の恋では少し痛いかもしれませんが、ナミネさんとの愛の絆が欲しいんです。それをバネに芸能活動頑張りたいんです』
もはや、ものの考え方が狂ってる。一方的な恋愛感情など成立しない。カンザシさんのは愛でも友情でもない。ただのエゴにすぎない。
「ハッキリ言います!私は芸能人ではありません!ドラマのシーンとはいえ、穢れるのはいやなんです!私は綺麗な身体のままでいたいんです!私の彼氏はヨルクさんです!カンザシさんを男として好きになることはこの先ないでしょう!だから、このようなドラマを私に押し付けないでください!私はヨルクさんと幸せになるんです!」
今のカンザシさんには何を言っても伝わらないだろう。それでも、私はヨルクさん以外の人に抱かれたくない。ヨルクさんとの幸せは何がなんでも私が守り抜く。現世ではカンザシさんに幸せを奪われたりなんかしない。
『ナミネさんはまだ子供です!今処女を喪失したほうがより魅力的になります!僕がナミネさんを女にします!』
やっぱり何一つ伝わらなかった。私はカンザシさんを無視した。
行列は少し進んだみたいで賽銭箱が見えてきた。
「ラルク、賽銭箱見えてきたよ。お金入れようよ!」
「そうだな」
私とラルクは賽銭箱に向けてお金を投げ入れ、扇子で鈴を鳴らした。
「ラルクに素敵なお嫁さんが見つかりますように」
「なんで僕のこと願うんだよ。それに普通は声に出さないからな」
「でも、ラルクに幸せになって欲しいから」
「恋だけが幸せじゃないだろ!」
けれど、ラルクにはいいお嫁さん見付けて幸せな結婚生活を送って欲しい。これまでセレナールさんに騙されてきた分。
うーん、おみくじはまだ遠いな。お守りも買いたいけどそれもまた遠い。私は人混みに埋もれていた。
その時、前の高校生くらいの女の子が振り向いた瞬間悲鳴をあげた。
「この人、この人にイジワルされた!」
女の子はヨルクさんを指さしている。
「あの、それっていつのことですか?」
「1年前、桜木町の廃墟が並ぶ通路を歩いていたら、いきなり後ろから口を塞がれ古民家に連れ込まれそこで、この人に犯されたわ!この顔一度見たら忘れない!私の人生を壊した人。絶対に許せない!」
桜木町に廃墟なんてあるんだ。けれど、どうしたらいいのだろう。ヨルクさんが連行されてしまったら、ヨルクさんが責め続けられ、ヨルクさんは無実の罪を認めてしまうかもしれない。
「あんた、その時着ていた服は今でもそのまま保管してあるのかよ?イジワルしたのは1人か?」
「ええ、念の為保管してるわ。そう、この人のみに犯されたわ!」
「じゃ、警察に連れて行くのは1人でいいよな?本当にあんたが犯人と言ってるのが犯人か?それともこっちか?」
落ち武者さん、カンザシさんを連れてきてくれたんだ。女の子はかなり驚いた表情をしている。
「そんな……双子だなんて知らなかった」
何故そうなる。けれど、この人にはヨルクさんかカンザシさんか選んでもらわないと。
「ミィナ、どっち?」
「えっと……」
落ち武者さんは書類を出した。
「警察に連れて行くからには冤罪なんてことはあっては困るからね?もう一度言うけど連れて行けるのは1人だ!このうちのどちらかなんておかしいからな!万が一、間違っていた場合、名誉毀損であんた訴える。訴えられたくなかったら、この書類にサインしろ!」
落ち武者さん強気に出た。確かに間違っていたなんてことになれば、侮辱罪が成立する。被害者であろうと、関係のない人をイジワル犯に仕立て上げることは許されない。
「そんな……。被害者は私なのにどうしてこんな仕打ち受けないといけないのよ!あんまりじゃない!2人とも連れて行くわ!」
「あんた馬鹿だな。2人連れて行けば、無罪だったほうは名誉毀損であんたを罪に問えるし、あんた下手したらレイプ被害者どころか関係ない人イジワル犯に仕立てあげた加害者だろうが!だから、警察に連れて行くなら1人選んで、今この書類にサインしろ!」
私は落ち武者さんの書類に目を通した。
『万が一、警察署に連れて行った人物がイジワル犯でなかった場合は、85万円の示談金を支払う』
ミィミさんはとても悩んでいる様子。
「ミィミ、せっかく犯人見付けたんだから、ここで逃したらミィミが余計に辛くなるよ。辛いけど当時のことよく思い出して、どちらかを警察に連れて行こう」
やはり、レイプ犯は逃したくないわけか。誰だってそうだろうけど、犯人が2人のどちらか分からない状態での決断は無計画であると私は思う。何より、この人が持っている証拠は当時犯行現場で着ていた服のみ。
「分かった。私もここで逃したくないし、ちゃんと訴えて前に進む!当時は黒髪で身長もそれなりに高くて、服は柄のトレーナーにダボダボのカーゴパンツを履いていた。こっちの人よ!」
これでミィミさんはカンザシさんを訴えられなくなったか。柄のトレーナーにカーゴパンツなんてヨルクさんは着ない。この人、勢いあまりの無計画すぎる。せめて、普段の服装とか、髪はいつ染めたのか聞けばいいのに。
「じゃ、顔だけヨルクを連れて行く。みんな今から、1班は紅葉町警察署行くから、初詣終わった班は先に桜木町の料亭行ってろ!」
私たち1班は、突然現れたミィミさんとその彼氏と共に紅葉町警察署に向かった。
紅葉町警察署に着くと、ミィミさんが事前に連絡していた両親がミィミさんが当時着ていた制服を持って来た。そして、警察はミィミさんに当時のことを詳しく聞いた後、その時に着ていた制服の指紋を調べた。
結果は当然のごとくヨルクさんのものとは一致しなかった。
「なあ、この指紋と照合してみろよ」
カンザシさんが普段持ち歩いているティッシュだろうか。警察はすぐにティッシュについている指紋とミィミさんの制服についている指紋を照合した。
結果は見事に一致した。
「ミィミ、あんたをイジワルしたのは顔だけヨルクじゃなくて、もう1人のほうだったんだよ!示談金はきっちり払ってもらう!」
「そんな……そんな……こんな仕打ちあまりに酷すぎる!あなたたちには人の心というものがないの?」
「は?間違えたのあんただろ!イジワル犯の顔もまともに覚えられないのかよ!」
その瞬間、ミィミさんはカッターナイフを取り出し、暴れはじめた。私はすかさず扇子を私のほうに向け、その弾みでミィミさんは私に突っ込んだ。ミィミさんのカッターナイフは私の腕を刺した。警察は傷害罪で現行犯逮捕し、私は婦人警察の手当を受けた。
「待って!身体が勝手に動いたの!私は被害者よ!もう1人のほうを連れて来て!」
ヨルクさんに害を及ぼす者は芽から摘み取ってあげないと。誰であれ、ヨルクさんを貶める人は私が許さない。どんな手を使ってでもヨルクさんとの幸せは誰にも壊させない。
「じゃ、後はカンザシの動機聞くだけだな」
ヨルクさんは無言で泣いていた。私はヨルクさんの手を握った。
……
あとがき。
新年早々からハードモードなみんな。
《ナミネ》
2020年1月1日。
今日は正月だ。
私は朝起きるなり、ズームさんのお母様のお節が食べたくてそのまま部屋を出ようとした。
「ナミネ、あけましておめでとう」
「あけましておめでとうございます、ヨルクさん」
「今日はお節食べた後はすぐに初詣だから朝から着物着ようね」
「はい」
私はルームウェアを脱ぎ捨てた。
「ナミネ、ここは落ち武者さんもいるから無闇に下着姿にならないで」
ヨルクさんは昨日の夜用意してくれていたのか、私に淡いオレンジ色のかすみ草の着物を着せた。帯は淡い水色。補色って使い方難しいけど、ワンポイントなどは合う時もあったりする。
そして、セミロングの私の髪をヨルクさんは上手にまとめて菜の花の髪飾りを付けた。
「ナミネ、外雪だからこのケープ上に着て」
着物用の白いケープ。ヨルクさん買ってくれたのだろうか。私は嬉しくてヨルクさんに抱き着いた。
そういえば、遠い遠い昔もヨルクさんと初詣行く時、雪が降っていて、その時は今みたいにケープとかなかったから上に薄いカーディガンを羽織っていたんだっけ。ヨルクさんはいつも番傘をさしてくれていた。
「あんたら新年早々イチャついてんな!今日は混むから早めにここ出るぞ!」
ヨルクさんも着物を着て、落ち武者さんとエルナさんもヨルクさんに着物を着せてもらった。エルナさん、紫似合うなあ。落ち武者さんは髪が銀色なだけにやっぱり白い着物だね。
ちなみに、昨日の晩からナクリお姉様は部屋で引きこもっている。初詣にも行かないらしい。ミドリお姉様はカナコさんたちが迎えに来るそうだ。
第4居間に行くとだいたいのメンバーが揃っていた。そして、見知らぬ女の子が1人いた。私は女の子に駆け寄った。女の子はボブヘアで青いニットセーターに白いミニスカートを履いていた。
「あの、どちら様でしょうか?」
女の子は振り向いた。
「へえ、君がミスコングランプリ。大したことないじゃん」
えっ、初対面でこの対応何?
「第6王女は恋愛依存体質。その隣にいる黒髪の男は女遊びしまくり。第5王子は浮気体質。その隣にいる黒髪ロングヘアの女は男に尽くしすぎ。銀髪の君は精神年齢が幼い。その隣にいる金髪の女は未練ありすぎ。緑の髪の君は趣味にのめり込みすぎ。第7王子は1番を掴めない。銀髪のロングヘアの女はワガママ」
何故この世にこれ程に似た人がいるのだろう。落ち武者さんの親戚だろうか。私は落ち武者さんを見た。
「あんた、僕に喧嘩売ってるわけ?」
「実際そうじゃん」
この人、落ち武者さんの何を知っているのだろう。
「他人の家来ていきなり失礼な態度取るあんたほうが子供だけどね?」
星空レストランで全く同じことしていた人がそれを言うのか。それにしてもこの女の子誰だろう。てか、さっきから、ミナクさん、この女の子ばかり見てる?よく見ると女の子はかなり丈の短いスカートにニットセーターは露出が高い。少し動くと下着が見えてしまいそう。
「あのどちら様でしょうか?」
私はもう一度聞いた。
「へえ、今日は初詣行くんだ。私も着物着たいな」
ダメだ。話が通じない。その時、カンザシさんが入って来た。女の子は真っ先にカンザシさんの元へ走った。
「カンザシ!会いたかった!」
「ミネス、元気だった?」
「うん、元気だよ」
カンザシさんの友達か。って、ミネスさんて人、カンザシさんに抱き着いてる!
「カンザシ、私との交際いつになりそう?」
「ミネスのことはずっと妹として見てきたから、それ以上には見えないよ」
幼なじみだろうか。それにしてもカンザシさんがこういう綺麗系な人を妹以上に見れないだなんて意外。何だかミナクさんのミネスさんに対する視線がまた問題を引き起こしそう。
あれ、ミナクさんの携帯新しくなってる。いつ契約したのだろう。
「ミネス!またそんなはしたない格好して!今すぐ選んでやる!」
「キモイ!近付かないで!」
ズームさんに対してキモイだなんて、この人……。
「あのズームさんは……!」
「へえ、お姉ちゃん彼氏出来たみたいだけど、ただの貧乏人じゃん」
え、ミネルナさんの妹さんと言うことはズームさんの妹さん!?何だか3人とも似てないな。
「私の彼氏悪く言うのやめてくれる?将来は医師になるのよ。あなたこそ、いつまでも叶わない恋追いかけて惨めね」
「お姉ちゃんこそ、偏差値は低い、常に赤点、ピアノも何も弾けない、社交界では友達いない。ブランケット家に相応しくないと思うな」
私はお節を早く食べたくて、ラルクの隣に座った。
「あなた、言ってくれたわね!」
ミネルナさん、コンプレックス感じてるんだ。
「はい、ストップ!お子ちゃまミネスも初詣行くのか?」
「行くよ!カンザシに会いに来たんだもん!」
「この人数だから4班に分けて行動する。お子ちゃまミネスは3班ね」
「分かった。あ、一応みんな連絡先教えといて」
みんなはミネスさんと連絡先交換をした。
「ミネスは何年生?」
「3年生だよ」
「じゃあ、私と同じだな。今度食事にでも行かないか?」
「別にいいけど」
セナ王女がいるのにどうして他の女誘うの?てか、ミナクさん、ミネスさんに明らか一目惚れしてるよね。
「ナミネ、お吸い物と赤飯持ってくるね」
「はい」
私はお節を開けて玉子巻きを食べた。美味しい。もっと食べよう。
「あんたさ、なんで手で食べてんのさ。ちゃんと取り皿に入れろ」
ヨルクさんがいないと思ってたら落ち武者さんが指摘するなんて。それにしても、セナ王女、明らか怒ってるよね。ミナクさん、ずっとミネスさんに話しかけているし。
「ねえ、ラルク。どう思う?」
「まあ一目惚れな感じじゃないか?」
「それアウトじゃん」
その時、ヨルクさんとカナエさんが赤飯とお吸い物を持って来た。
「ナミネ、好きなものお皿に入れてあげる」
ヨルクさんは数の子とかイクラとかカマボコなど色々取り皿に入れてくれた。
「ありがとうございますヨルクさん」
私は一気に食べた。
「美味しいです。もっとください」
「ナミネ、初詣の後は料亭行くんだから、これ以上食べるとお昼入らなくなるよ」
「分かりました」
それにしても、ミネスさんがカンザシさんを好きなら一緒にならないとカンザシさんは一生1人な気がする。逆玉に乗れるチャンスなのに。
「私も着物着たい!」
「ミネス、私が着付ける」
「ねえ、ミナクは私の彼氏なんだから、いちいち邪魔するようなことしないでくれないかしら」
「ミナクが私に話しかけてきてるんだけど」
ズームさんの妹さんなだけあって気が強いなあ。
「僕が着付けるよ。他にも着物着たい人いたら言って」
ミネスさんの他にはナヤセス殿、ロナさん、アヤネさん、ユメさん、委員長、ロォラさんをナルホお兄様が着付けることになった。
「人混むから武家オリジナルイヤホンマイク1人1つ持ってけ」
落ち武者さんはみんなにイヤホンマイクを渡した。武家のイヤホンマイクはかなり遠くまで話し声が届く。音質の改良もされたし、話しかければ声はみんなに聞こえるけど、分かれて行動するから、持っていたほうが、みんなといるみたいで楽しいかもしれない。
「あの、ミネスさんってこれまで付き合った人とかいるんですか?」
「いないよ。カンザシが振り向いてくれるのずっと待ってる。何世紀も前からずっと」
何だかその忍耐力はまるでヨルクさんみたい。ミネスさんって、カンザシさんのこと本気なんだ。
「カンザシさん、悪いことは言いません。ミネスさんと交際しないと将来絶対損します」
「ナミネさん、ミネスはカンザシには渡しません」
そうだった。ズームさんが、大切な妹をだらしないカンザシさんに預けるわけないか。ミネスさんはいくらでもいるけど、カンザシさんと長く交際してくれる人がいないんだよな。
「お兄ちゃん、私とカンザシの恋愛に口挟まないでよ!お姉ちゃんはその貧乏人と付き合ってるじゃん!」
「カンザシと違ってロォハさんは優秀なんだ!姉さんとは真剣に交際してる!兄さんも戻って来たしまた時計騎士目指してる。お前もちゃんと将来のこと考えろ!」
そういえば、ミネスさんてこれまでの前世はどんな職業して来たんだろう。
「あ、ズルエヌ復活したんだ」
何故、1番上の兄を名前で呼ぶところまで落ち武者さんに似ているのだろう。私は小声でラルクに話しかけた。
「ねえ、ラルク。ミナクさん、ずっとミネスさんのこと見てるよ」
「もう完全に惚れてるな」
「セナ王女はどうなるの?」
「いっときの感情か心変わりで決まるんじゃないか?」
その時、落ち武者さんからメールが来た。
『あんたら話丸聞こえ』
落ち武者さんって耳良かったっけ。
『あの、ミナクさんとセナ王女どう思います?』
『2人はもうダメだろ。お子ちゃまミネス見てる時点で甘えセナを女として見れてないんじゃないか?カップル日記見てみろよ』
うーん、1日のことで、そこまで断定出来るものなのだろうか。私はカップル日記を開いた。
『ミナクがお昼作ってくれた』
『ミナクとフェアバ』
『ミナクと添い寝』
『ミナクとFメモリイ♡』
あれ、Fメモリイ頻度かなり減ってなくない?そういうものなのだろうか。でも、まだ付き合って3ヶ月なのに。あれだけ大々的な告白で別れるとか私だったらいやだな。でも、一度カラルリさんと別れてるか。
『カナエにスコーンを作った』
『カナエにブラックダイヤモンドの指輪を買った』
何だかこの2人も別れそう。カナエさんの投稿が全然ない。
『ユメとフェアバでクリスマス限定のドリンク注文』
あ、2つ並べるとハートの形になってる。
『ロォハとバイクで海に行った』
ミネルナさんもカップル日記はじめたんだ。
『ナミネが手編みのマフラーをクリスマスプレゼントに用意してくれた。
物凄く嬉しいし、大切に使う。
ありがとう、ナミネ』
ヨルクさん、投稿してくれてたんだ。
「じゃ、初詣行く。リストのメンバーで行動しろ!」
私がカップル日記見てるうちに、ミネスさんたち着物に着替えてる。ロォラさんて着物着ると雰囲気変わるなあ。
紅葉神社に着くと物凄い人混みだった。この神社、普段は全然人いないし、そこまで大きな神社ではないのに、この町の人は正月になれば、ここに来る。遠い昔は元旦でも人なんか殆どいなかったのに、時代も変わったもんだ。
「ラルク、おみくじ引きに行こうよ」
「そうだな」
私がラルクとおみくじを引きに行こうとした時、ヨルクさんは私の手を掴んだ。
「ナミネ、私たちは1班で行動するから勝手にはぐれないで」
「はい」
私はヨルクさんを見つめた。少し近い前世ならみんな着物着ていたのに、この100年ですっかり変わってしまって、今では西洋の文化が入って来て日常的に着物を着ている人は殆どいない。
ヨルクさんの着物姿を見れるのも今では正月くらいになってしまった。
「ねえ、ラルク、このまま歩いていても全然進まないよね」
「そうだな。お昼、料亭行けないかもな」
困ったな。お腹も空いてきた。私はナヤセス殿によじ登った。あ、商店街のおじさん屋台開いてる。私はこっそりメンバーから離れ屋台に近付いた。
「おじさん、あけましておめでとうございます!」
「ナノハナ家とこのナミネか。大きくなったな。これ、おじさんからのサービスだよ」
「ありがとうございます!」
私はイカ焼きを持って、再びこっそり1班に戻った。イカ焼き。とってもいい香り。
「ナミネ、何食べてるの?」
「イカ焼きです。屋台のおじさんからもらいました」
「料亭で昼ご飯食べれなくなっても知らないからね」
ヨルクさんはすぐにガミガミ言う。まるで嫁をいびる小姑みたいだ。その時、カンザシさんからイヤホンマイク越しに声が飛んで来た。
『ナミネさん、どうしてもあのドラマの共演はしてもらえないでしょうか?』
みんなに聞こえてるのに、どうして終わった話をまた言うの?
『カンザシ、どのドラマ?』
『1000年の恋だよ、ミネス』
1000年の恋というのか。それにしても、いくらドラマとはいえラブシーンでヨルクさんを裏切るようなことは絶対出来ないし、何より、私は綺麗な身体でいたい。
『カンザシ、まだ配役は未定だよね。ナミネ以外の女優となら交渉してあげる』
あの時、カンザシさん、もう主役決まったような言い方だったけど、全く決まってなかったんだ。嘘ついていたわけか。
『ミネス、どうしてもナミネさんと共演したい。頼む、契約して欲しい』
どうしてカンザシさんはそこまで私に拘るのだろう。
『ナミネとだけはダメ。どうしてもナミネと共演したいなら実力で主役勝ち取って。聞くけど、カンザシはどうして彼氏持ちのナミネと関係持とうとするの?』
実力で主役になられても私はヒロインは演じない。
『ナミネさんのことが好きだから。それにナミネさんは僕の実の妹だ』
『実の妹でも、婚姻が法律で認められた以上はナミネとだけは絶対ダメ』
女の勘というものなのだろうか。ミネスさんは昔のカンザシさんと私の関係に薄々気付いている気がする。今のカンザシさんにとって私が本命ならカンザシさんのことを本気で想ってるミネスさんが認めるわけがない。
「なあ、カンザシ、あんた強気なナミネの処女奪ってどうする気だ?あんた正気か?」
何か癪に障る言い方だけど、ミスコングランプリも取ったし表向きでは清純派装わないと。
『ナミネさんには、これから結婚まで僕のことを好きになってもらえたらそれでいいと思っています。1000年の恋では少し痛いかもしれませんが、ナミネさんとの愛の絆が欲しいんです。それをバネに芸能活動頑張りたいんです』
もはや、ものの考え方が狂ってる。一方的な恋愛感情など成立しない。カンザシさんのは愛でも友情でもない。ただのエゴにすぎない。
「ハッキリ言います!私は芸能人ではありません!ドラマのシーンとはいえ、穢れるのはいやなんです!私は綺麗な身体のままでいたいんです!私の彼氏はヨルクさんです!カンザシさんを男として好きになることはこの先ないでしょう!だから、このようなドラマを私に押し付けないでください!私はヨルクさんと幸せになるんです!」
今のカンザシさんには何を言っても伝わらないだろう。それでも、私はヨルクさん以外の人に抱かれたくない。ヨルクさんとの幸せは何がなんでも私が守り抜く。現世ではカンザシさんに幸せを奪われたりなんかしない。
『ナミネさんはまだ子供です!今処女を喪失したほうがより魅力的になります!僕がナミネさんを女にします!』
やっぱり何一つ伝わらなかった。私はカンザシさんを無視した。
行列は少し進んだみたいで賽銭箱が見えてきた。
「ラルク、賽銭箱見えてきたよ。お金入れようよ!」
「そうだな」
私とラルクは賽銭箱に向けてお金を投げ入れ、扇子で鈴を鳴らした。
「ラルクに素敵なお嫁さんが見つかりますように」
「なんで僕のこと願うんだよ。それに普通は声に出さないからな」
「でも、ラルクに幸せになって欲しいから」
「恋だけが幸せじゃないだろ!」
けれど、ラルクにはいいお嫁さん見付けて幸せな結婚生活を送って欲しい。これまでセレナールさんに騙されてきた分。
うーん、おみくじはまだ遠いな。お守りも買いたいけどそれもまた遠い。私は人混みに埋もれていた。
その時、前の高校生くらいの女の子が振り向いた瞬間悲鳴をあげた。
「この人、この人にイジワルされた!」
女の子はヨルクさんを指さしている。
「あの、それっていつのことですか?」
「1年前、桜木町の廃墟が並ぶ通路を歩いていたら、いきなり後ろから口を塞がれ古民家に連れ込まれそこで、この人に犯されたわ!この顔一度見たら忘れない!私の人生を壊した人。絶対に許せない!」
桜木町に廃墟なんてあるんだ。けれど、どうしたらいいのだろう。ヨルクさんが連行されてしまったら、ヨルクさんが責め続けられ、ヨルクさんは無実の罪を認めてしまうかもしれない。
「あんた、その時着ていた服は今でもそのまま保管してあるのかよ?イジワルしたのは1人か?」
「ええ、念の為保管してるわ。そう、この人のみに犯されたわ!」
「じゃ、警察に連れて行くのは1人でいいよな?本当にあんたが犯人と言ってるのが犯人か?それともこっちか?」
落ち武者さん、カンザシさんを連れてきてくれたんだ。女の子はかなり驚いた表情をしている。
「そんな……双子だなんて知らなかった」
何故そうなる。けれど、この人にはヨルクさんかカンザシさんか選んでもらわないと。
「ミィナ、どっち?」
「えっと……」
落ち武者さんは書類を出した。
「警察に連れて行くからには冤罪なんてことはあっては困るからね?もう一度言うけど連れて行けるのは1人だ!このうちのどちらかなんておかしいからな!万が一、間違っていた場合、名誉毀損であんた訴える。訴えられたくなかったら、この書類にサインしろ!」
落ち武者さん強気に出た。確かに間違っていたなんてことになれば、侮辱罪が成立する。被害者であろうと、関係のない人をイジワル犯に仕立て上げることは許されない。
「そんな……。被害者は私なのにどうしてこんな仕打ち受けないといけないのよ!あんまりじゃない!2人とも連れて行くわ!」
「あんた馬鹿だな。2人連れて行けば、無罪だったほうは名誉毀損であんたを罪に問えるし、あんた下手したらレイプ被害者どころか関係ない人イジワル犯に仕立てあげた加害者だろうが!だから、警察に連れて行くなら1人選んで、今この書類にサインしろ!」
私は落ち武者さんの書類に目を通した。
『万が一、警察署に連れて行った人物がイジワル犯でなかった場合は、85万円の示談金を支払う』
ミィミさんはとても悩んでいる様子。
「ミィミ、せっかく犯人見付けたんだから、ここで逃したらミィミが余計に辛くなるよ。辛いけど当時のことよく思い出して、どちらかを警察に連れて行こう」
やはり、レイプ犯は逃したくないわけか。誰だってそうだろうけど、犯人が2人のどちらか分からない状態での決断は無計画であると私は思う。何より、この人が持っている証拠は当時犯行現場で着ていた服のみ。
「分かった。私もここで逃したくないし、ちゃんと訴えて前に進む!当時は黒髪で身長もそれなりに高くて、服は柄のトレーナーにダボダボのカーゴパンツを履いていた。こっちの人よ!」
これでミィミさんはカンザシさんを訴えられなくなったか。柄のトレーナーにカーゴパンツなんてヨルクさんは着ない。この人、勢いあまりの無計画すぎる。せめて、普段の服装とか、髪はいつ染めたのか聞けばいいのに。
「じゃ、顔だけヨルクを連れて行く。みんな今から、1班は紅葉町警察署行くから、初詣終わった班は先に桜木町の料亭行ってろ!」
私たち1班は、突然現れたミィミさんとその彼氏と共に紅葉町警察署に向かった。
紅葉町警察署に着くと、ミィミさんが事前に連絡していた両親がミィミさんが当時着ていた制服を持って来た。そして、警察はミィミさんに当時のことを詳しく聞いた後、その時に着ていた制服の指紋を調べた。
結果は当然のごとくヨルクさんのものとは一致しなかった。
「なあ、この指紋と照合してみろよ」
カンザシさんが普段持ち歩いているティッシュだろうか。警察はすぐにティッシュについている指紋とミィミさんの制服についている指紋を照合した。
結果は見事に一致した。
「ミィミ、あんたをイジワルしたのは顔だけヨルクじゃなくて、もう1人のほうだったんだよ!示談金はきっちり払ってもらう!」
「そんな……そんな……こんな仕打ちあまりに酷すぎる!あなたたちには人の心というものがないの?」
「は?間違えたのあんただろ!イジワル犯の顔もまともに覚えられないのかよ!」
その瞬間、ミィミさんはカッターナイフを取り出し、暴れはじめた。私はすかさず扇子を私のほうに向け、その弾みでミィミさんは私に突っ込んだ。ミィミさんのカッターナイフは私の腕を刺した。警察は傷害罪で現行犯逮捕し、私は婦人警察の手当を受けた。
「待って!身体が勝手に動いたの!私は被害者よ!もう1人のほうを連れて来て!」
ヨルクさんに害を及ぼす者は芽から摘み取ってあげないと。誰であれ、ヨルクさんを貶める人は私が許さない。どんな手を使ってでもヨルクさんとの幸せは誰にも壊させない。
「じゃ、後はカンザシの動機聞くだけだな」
ヨルクさんは無言で泣いていた。私はヨルクさんの手を握った。
……
あとがき。
新年早々からハードモードなみんな。